06/03/15 国際協力事業評価検討会(第2回分野合同)議事録 1 日時 平成18年3月15日(水)14:00〜16:00 2 場所 厚労省専用第15会議室 3 出席者 【会員】       (保健医療分野)小林廉毅会員(東京大学大学院)               田中耕太郎会員(山口県立大学)               中村安秀会員(大阪大学大学院)               長谷川敏彦会員(国立保健医療科学院)       (労働分野)  今野浩一郎会員(学習院大学)               中村正会員(日本ILO協会)               野見山眞之会員(国際労働財団)               松岡和久会員代理(小野修司)(国際協力機構)       (水道分野)  北脇秀敏会員(東洋大学大学院)               眞柄泰基会員(北海道大学創成科学研究機構)               村元修一会員(日本水道協会)       【専門会員】       (保健医療分野)山本太郎専門会員(外務省)               國井修専門会員(長崎大学)               大山真未専門会員代理(吉田尊徳)(文部科学省)              石川典子専門会員代理(建野正毅)(国立国際医療センター)               野崎慎仁郎専門会員(国際厚生事業団)               水嶋春朔専門会員(国立保健医療科学院)               橋爪章専門会員(国際協力機構)       (労働分野)  藁谷栄専門会員(外務省)               田中伸彦専門会員(厚生労働省)               釜石英雄専門会員代理(佐藤まゆみ)(厚生労働省)               久知良俊二専門会員(厚生労働省)       (水道分野)  新田晃専門会員(厚生労働省)               山本陽一専門会員(国際協力銀行)               野崎慎仁郎専門会員(国際厚生事業団)       【事務局】   妹尾国際課長、金井国際協力室長、今井補佐、搆補佐、               日置専門官、辻井専門官 4 議事 ○今井補佐 定刻も過ぎましたので、国際協力事業評価検討会(第2回分野合同)を開 催させていただきます。初めに、妹尾国際課長からご挨拶を申し上げます。 ○妹尾課長 国際課長の妹尾でございます。我が国の国際協力を取りまく情勢は、この 50年間、劇的に変化してきました。特にこの10数年間は、新たなODA大綱やODA 中期政策の策定に見られるように、我が国のODAのあり方が大きく問われてきました。  このような状況の中、国際課では、平成15年度より、厚生労働分野の国際協力事業 について、これまでの実績などを踏まえ、評価のあり方などを検討し、また、その結果 を政策立案実施に移していく体制のあり方について検討するため、会期3年間を目処と して、国際協力事業評価検討会を設置しました。具体的には、保健医療、労働及び水道 の3分野にわたって協力事業がいかにあるべきか、どういう点で評価すべきかという点 をご検討いただいてきたわけです。いずれも2003年にはスタートし、今年になり先月、 今月あたり各分野とも分野ごとの最終的な報告という形でおまとめいただいたところで す。  本日はその分野ごとの報告を基にして、分野横断的にクロスオーバーしたご議論を各 先生方から頂戴しようということで、開催させていただきました。3分野いずれも独特 の分野、あるいは哲学なり考え方を持った分野ですけれども、3分野を見渡した議論を していただくことで、今後の厚生労働省としての国際協力のあり方について非常に大き なご示唆、あるいはご教授をいただけるものではないかと考えております。是非よろし くお願いしたいと思います。  本日いただきましたご議論を基にして、私どもとしては厚生労働分野の国際協力がさ らに充実したものになるよう、あるいはご承知のように政府全体としてODAのあり方 について大きな議論がされておりますが、その政府全体の流れの中で、よりグローバル 化に資することのできるような事業を行いたいと考えております。是非よろしくお願い したいと思います。簡単ですがご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたしま す。 ○今井補佐 ありがとうございました。続きまして、本日ご出席の皆様をご紹介させて いただきます。まず座長の先生方です。保健医療分野、大阪大学大学院 中村教授。水 道分野、北海道大学 眞柄教授。労働分野は座長代理で学習院大学 今野教授です。  続きまして、各分野の委員の先生方をご紹介させていただきます。保健医療分野は東 京大学大学院の小林教授。山口県立大学の田中教授。国立保健医療科学院の長谷川部長 です。  次に労働分野ですが、東京大学の末廣教授が少し遅れていらっしゃいます。日本IL O協会の中村会長。国際労働財団の野見山副理事長。水道分野ですが、東洋大学大学院 の北脇教授。日本水道協会の村元部長です。  続きまして、専門会員の皆様をご紹介させていただきます。保健医療分野ですが、外 務省開発計画課の山本課長補佐。長崎大学の國井教授。国際厚生事業団の野崎部長。国 立保健医療科学院の水嶋部長。国際協力機構の橋爪技術審議役。労働分野は外務省技術 協力課の藁谷課長補佐。厚生労働省職業安定局雇用政策課の田中課長補佐。厚生労働省 雇用均等児童家庭局総務課の三富調査官は遅れていらっしゃいます。厚生労働省政策統 括官付労政担当参事官室の久知良室長補佐。水道分野は厚生労働省水道課の新田課長補 佐。外務省開発計画課の西村補佐は遅れていらっしゃいます。国際協力機構の安達調査 役も遅れていらっしゃいます。国際協力銀行開発セクター部の山本調査役。代理でご出 席いただいている皆様をご紹介します。保健医療分野は文部科学省国際課から大山室長 の代理で吉田様、国立国際医療センター国際医療局石川課長の代理で建野課長に来てい ただいております。労働分野は国際協力機構松岡理事の代理で小野様に、厚生労働省職 業能力開発局海外協力課の釜石補佐の代理で佐藤様にご出席いただいております。  最後に事務局の紹介をさせていただきます。妹尾国際課長、金井国際協力室長、国際 協力室搆補佐、日置国際協力専門官、辻井国際協力専門官、そして私が国際協力室の今 井と申します。  次に配付資料の確認をさせていただきます。議事次第、国際協力事業評価検討会分野 合同メンバー表、座席表、資料1「国際協力事業評価検討会(保健医療分野)最終報告」、 資料2「国際協力事業評価検討会(労働分野)報告書」、資料3「国際協力事業評価検討 会(水道分野)報告書」、別添1「水道分野国際協力人材確保・育成WG報告書」、別添 2「総合援助手法検討WG報告書」、参考資料「水道分野の国際協力事業の実績の整理」 です。不足がありましたら挙手をお願いします。  会議中のご発言の際は、そのままマイクに向かって発言いただきますと、音声が大き くなるようになっております。よろしくお願いいたします。 ○妹尾課長 それでは本日の会議の内容に入っていきたいと思います。本日の議事進行 ですが、従来の分野ごとの検討会では各分野の座長に議事進行役をお願いしていただい ておりましたが、本日は3分野合同ですので、私が厚かましくも議事進行をさせていた だきますので、よろしくお願いいたします。  それでは、議事次第の2.です。各分野の最終報告について、座長からご紹介いただく ことにしております。最初に保健医療分野について中村座長、よろしくお願いいたしま す。 ○中村座長(保健医療分野) 大阪大学の中村です。今回はこの国際協力事業評価検討 会保健医療分野の座長を仰せつかってまいりました。資料1に基づいて説明します。大 体10分ぐらいでまとめてお話させていただきたいと思います。この保健医療分野は3 年間にわたり6名の会員とともに、専門会員として外務省、文部科学省、JICA、国 立国際医療センター、国際厚生事業団、国立保健医療科学院など、国際保健医療にかか わる日本の大きな機関をすべてほとんど網羅したような形で、一種オールジャパンの形 で保健医療分野にかかわる国際協力について検討してきました。  平成16年10月に会期前半の成果として、3つのことを挙げました。1つは国際協力 に携わる人材の養成についての検討です。もう1つは国際協力データバンクの構築の必 要性でした。そして国際協力の将来あるべき方針についても検討し、結果を整理させて いただきました。このことに関しては昨年の分野合同会議で、すでに報告済みですので、 今回はそれ以降の話について主に報告します。  この保健医療分野の報告はそういうわけで、前半のところで大体中間報告として何が 必要か、どういうことが求められているかを大体まとめ、後半は実際に報告書を作るた めに活動するのではなくて、むしろその報告書の内容を受けて、実際に走りながら考え るオペレーショナル・リサーチの形で、研究班を走らせて、その中で実際に何が必要か、 そしてどういうことができるのか、そういうことをやっていこうというのがこの保健医 療分野の評価検討会の趣旨でした。  まず最初に、国際協力に携わる人材の養成ですが、これに関しては国立国際医療セン ター所管の研究委託事業として、「国際医療協力に携わる人材養成および登録システムの 構築に関する研究」というのが、平成17年度より3年間の予定で始まっています。こ れは国際医療協力に携わる人材の養成のあり方を体系的に検討するとともに、実際に効 果的に活用するための登録システムを構築しようということを目的にしています。  もうすでに平成17年度は、学生や院生に対するニーズの調査、そして国際保健医療 学会がありますから、ここの学会との共同作業、そして全国の医学部・看護学の大学に 関するアンケート調査などを現在実施しています。片方ではそういうニーズを把握する とともに、学生人材養成の実践活動も行っています。今後平成17年度以降は中長期的 なニーズを把握し、国際保健に従事したい潜在的な人材とそれらの人材を求める側のマ ッチング・システムの仕組みを考えていきたい。それを実際にオペレーショナル・リサ ーチの形で実施していきたいと考えています。  来年度以降はセミナーやスタディ・ツアーを実施し、効果的な研修やキャリアパスの あり方を探る計画がもうすでに進んでいます。具体的には、大学の研究者やJICAの プロジェクトなどで学生を受け入れてもいいような先生方、あるいは医療のプロジェク トに問い合わせ、学生からは具体的にどこに行きたいのか、例えばラオスの障害児のこ とをやりたいとか、バングラディシュでリプロダクティブ・ヘルスをやりたいなど、学 生のほうが希望を出す。そして受け入れる側もどういう人なら受け入れられるかを出し て、それをマッチングしていく。そして、実際に学生たちを若いときからフィールドの アーリー・エクスポージャーをしていく。そういうマッチング・システムが現在すでに 動こうとしています。  最終的な登録システムは現時点ではいろいろな所に人材バンクが存在しています。J ICAにもありますし、日本にもいろいろな所に人材バンクはあります。ただ、それら の人材バンクは一般の国際協力をやりたいという人を広く集めるための人材バンクには なっていますが、高度な経験を持った人の人材マッチング・システムにはまだなってい ないというのが現状です。  例えば、アフリカのHIVの母子感染に強い人材がほしいといったときに、そういう 人がどこにいて、何をしているかというのはなかなか情報としては出てこない。そうい う人材のマッチング・システムに現在ある程度成功しているのがUNHCRのシステム です。そういう既存のシステムの方法論を学びつつ、では日本の中でどのようにしてい けるか、そういうモデルを考えていきたいと思っています。  現在は先週、ここにいらっしゃるユニセフの國井さん、外務省の山本さんなどを含め て10数人が集まり、将来の国際保健医療を考える会という合宿を行いました。その中 で人材養成のための援助はどうあるべきか、求められる人材を考える。そして学問とし ての国際保健医療学はどうあるべきか、ここで専門医療のあり方を考える。人材育成、 人材開発についてどうあるべきか、こういうディスカッションを行っています。  今日の夜からになりますが、医学部、看護学の学生24名を集めて、修善寺で学生の ためのトレーニング合宿として、若手の育成も研究班の中で一緒にやっていく。やって いく中でどのような育成の仕方がいいのかを私たちも、その結果を見ながら考えていっ て、こういう学会や行政にフィードバックしていきたいと考えています。  続いて、国際協力データバンクの構築について説明します。中間報告の中で国際保健 医療協力にかかる事業の実績評価や改善に役立つ情報データバンクの設置の必要性が指 摘されました。これを受けて現在、国際医療協力研究の指定研究である「技術協力プロ ジェクトの効果的実施に関する研究」が、上原鳴夫先生の下で分担研究課題、「情報デー タベースの入力システムと維持・活用に関する研究」ということで、案件データバンク のパイロットモデル作りを担当することになっています。上原先生はこの評価検討会の 会員でもありました。  そして、この研究は案件データバンクの基本的指針を叩き台にして、保健医療分野協 力事業の実績評価と改善に役立つ案件情報の項目や、案件の分類方法について検討する。 すでに実施中の案件と完了した案件を対象にデータを入力して、パイロット・スタディ を実施して改訂を進めていく、実際に案件データバンクのデザインをどう維持管理する か、こういうことを具体的な提案としてやっていこうというものです。  現在はこのデータバンクの設計の進行中というところですが、利用者と利用目的の明 確化が必要で、目的に沿った情報を抽出するためのデータ項目を検討する必要がある。 そしてデータをどう定義するか、データがどこにあるか、その所在と入力の方法、それ を実際に入力するのも定期的にしないとなかなかメンテナンスできませんから、そのメ ンテナンスの方法などを含めて検討中です。非常に重要な課題なので、すでにこれは動 いていますが、今後、18年、19年のさらなる発展に期待が寄せられています。  続いて、国際協力の将来あるべき方針という3番目の課題に関して説明します。ちょ うど日本政府が平成17年6月、保健分野におけるMDGsの達成に向けた我が国の取 組みを示した「保健と開発に関するイニシアティブ」というのを公表し、この中にいろ いろな意味で本検討会の考え方も反映されたと考えられています。そして、今年の2月、 国際課が直接実施している保健医療分野の国際協力事業として、平成15年より実施し ている「ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合」及び「ASEANエイズワークシ ョップ」に関して検討しました。今後はこのような国際機関、地域機関を通じた協力と 二国間協力の適切な連携、いわゆるマルチ・バイ連携を活用することなどが必要だと考 えられました。  また、国際課の役割として我が国の保健医療のリソースがいろいろあるわけですから、 この我が国のリソースと海外のリソースをどのように活用し、連携させていくか。橋渡 しの機能も重要だということが検討されました。短いですが、以上報告をさせていただ きました。 ○妹尾課長 ありがとうございました。3分野をクロスオーバーしたご議論はいちばん 最後にいただきますが、ただいまの中村座長の報告に関し、ご質問がありましたらいま 伺いたいと思いますが、何かあるでしょうか。よろしゅうございますか。それでは、い まの座長の説明の間にいらっしゃった先生のご紹介をお願いします。 ○今井補佐 保健医療分野で国立保健医療科学院の水嶋部長においでいただきました。 先ほど代理で出席の皆様の紹介が遅れて、大変失礼しました。労働分野で国際協力機構 松岡理事の代理で小野様にご出席いただいています。保健医療分野、文部科学省国際課 から大山室長の代理で吉田様にご出席いただいています。国立国際医療センター国際医 療局石川課長の代理で建野課長に来ていただいています。労働分野は厚生労働省職業能 力開発局海外協力課の釜石補佐の代理で佐藤様にご出席いただいています。 ○妹尾課長 それでは分野別の次の報告をお願いします。労働分野で今野座長代理、お 願いします。 ○今野座長代理(労働分野) 座長の吾郷さんがタイでいま仕事をされていまして参加 できませんので、私が代わりに報告させていただきます。代理ということですので、代 理の特権で少し短めにやらせていただければと思います。もともと検討会を始めるとき には評価手法をどのように開発し、どう使うかという問題と、協力方針をどうするかと いうことと、協力にかかわる人的資源の問題をどうするかということの3つについて、 いろいろ議論をしようということになったのですが、実際にやってみますと、この報告 書にもありますが、事業評価に専ら議論が集中し、先ほど言いました協力方針の問題と、 協力にかかわる人的資源の問題についてはかなり議論が薄くなっていますので、今日は いちばん最初の事業評価の問題を中心にお話をさせていただければと思います。  折角報告書がありますので、報告書に沿いながら話をさせていただきます。3頁か4 頁に目次がありますので、その目次の3と4を中心に報告させていただきます。いちば ん問題になったのは労働関係の協力事業についての評価をどうするかということでいろ いろ議論しました。いろいろな評価手法があるので、その検討をいろいろしたというこ とです。結論的には資料8頁に(3)「試行結果を踏まえた評価手法の改善」というとこ ろがありますが、その中のイの1行目から2行目にありますが、基本的には既存のPC M手法を検討しましたが、これは使えるぞという結論に達しました。その結論に達する までに、実際にその手法を使い、能力開発の分野と、労使関係と労働基準の分野の2つ のテーマについて試行的に評価をやってみました。そして使えそうだということが重要 な結論の1つです。  ただ少し泣き言を言わせていただくと、例えば特に労使関係というのはどうやって評 価するのかという問題が、いつも付いて回る。能力開発もそうです。能力開発をしたけ ど結果はいつ出るのかということで、非常に評価がしにくいという泣き言はあるのです が、いろいろな限界がある中でも、基本的には使えるだろうということになりました。 ただ、いくつかの留意点があるということで、(ア)から始まりますが、1つは事業の性 格によって評価を変えなくてもいいのかという点です。労働分野ですと、制度設計をす る事業と、実際にオペレーションをする事業があるわけです。例えば既存の人材と既存 のノウハウを使って、被援助国の人材を養成します。この場合には専らオペレーション の問題ですから、当該期間のインプットに対して当該期間のアウトプットを考えれば、 評価ができるとなるわけです。制度設計の場合は制度を設計したときにインプットをし ているわけですが、その効果の期間は長いわけです。例で言いますと、訓練をしました、 4億円のお金を使って制度設計しました、その制度の下で試行的に訓練しました、10人 の訓練が終わりました。そのときにアウトプットを10人にして、インプットを4億円 にすると、1人あたりの費用が極めて高く、効果のない援助となってしまいます。それ はおかしいということで、8頁の箱の中に例示がありますが、例えば制度設計で使って いるお金は、これは実際に行われた例ですが、インプットは4.3億円、その中の77%が 設計開発に使われました。21%はそれを運営するための指導員の養成に使われました。 2%がオペレーションに使われました。単純に評価すると2%の部分で養成された人間 がアウトプットになってしまうわけで、これはおかしいということになります。そうす ると、いま言ったここでいくと、(1)、(2)のような一種の投資的な経費については効果期 間にわたって、配分して投入を計算しないと合わないとなります。  考えてみると、経営では当たり前のことなのです。設備投資をしたときに、投資した その期に全部費用計上しないで、例えば機械の耐用期間が10年だったら10年にわたっ て費用計上をする。それと全く一緒なのですが、そういうことをしないと正確な評価は できません。ですから、これは非常に重要な1つの留意点だと思うのですが、そういう ことを考えて、プロジェクトの性格に従って、評価の仕方を考えなさいというのが留意 点だということです。  しつこいようですが労働分野では、こういう制度設計的なものが多いものですから、 そういう評価の仕方をしないと、適正な評価はできないということになると思います。 それが第1番目の留意点です。  第2番目の留意点は9頁の(ウ)あたりから書いてあります。先ほど私は泣き言を言 いましたが、労働分野、特に今回試行した中で労使関係の分野は成果を測定するための 評価指標化が非常にしにくい分野です。しかも成果が短期で上がるという問題でもない ので難しい。ただ、そうであったとしても、できる限り目標設定や指標化への努力はす べきであるし、ODAが効率的に行われているのかという国民の理解を得る観点からも、 長期であっても段階的な目標設定をするということの努力は非常に重要であるというこ とを、ここに書いています。これが評価の留意点なのですが、ついでに労使関係の問題 が9頁の下の絵にあります。労使関係のプロジェクトは、政治的な問題と絡み、非常に 難しく、単に効率、効率といかない面もあるので、着実に1歩1歩やっていく以外にな いという性格のものかと思っています。  もう1点留意点があるということで、10頁の(ウ)の1行目に「上位目標が極端に高 く設定され、事業実施者の影響が及ぶ範囲を超えていた事業もあったが、このような場 合は事業実施段階における評価が適切に行えない」。それを受けて次の段落は「このため、 事業評価における目標設定に当たっては、評価の範囲を原則として事業実施段階と関連 付け、案件目標を事業実施者の活動により達成可能なものとすべきである」という文章 があります。今回、我々がいろいろなプロジェクトの結果を評価したときに、こういう 問題があります。例を挙げると教育訓練の援助をします。上位目標は失業率を下げるこ とです。失業率を下げることをターゲットにされて、事業実施者は能力開発をする。そ んなターゲットを言われても実施者は何をやっていいかわからないわけです。こういう 目標設定の仕方が意外にあるのです。例を挙げると、会社の社長が、我が社の目標は株 価向上だと言ったときに、工場に対して株価向上の管理目標を与えても、工場は何をし ていいかわからない。株価の向上で、工場のパフォーマンスを評価されても、工場の人 は困るというのと全く一緒なのです。  ですから、このように事業実施者の目標設定と、政策レベルの計画者の目標設定の違 いを、もう少し意識して設定をしないと、正確な評価はできませんということです。非 常に基本的なことなのですが、こういうことを留意点として、きちんと持つべきである ということが、我々の議論の中でまとまってきました。このような結果を踏まえて、10 頁の4の「労働分野の協力方針の検討課題」ということを議論しました。そこで(1) と(2)あたりに、基本的には既存の評価手法を、こういう留意点もありながら、改善 を加えれば使えるということなので、今後評価の知見を集積するために、こういう手法 を使いながら評価を実践していただいて、評価指標の引続きの改善をしていただきたい と考えて、そういうことを書いています。  11頁の(3)では、政策レベルの問題を扱っています。政策評価法がすでに導入され ているので、そういうことを考えると政策ベースの評価は非常に重要です。今後一層議 論をしてほしいという検討課題として残してあるということです。  同じように(4)は協力方針の策定についてです。何度も言うように、事業ベースの 評価についてずっと議論してきたものですから、7回検討会をやって6回ぐらいからや っと、この協力方針について議論を行うようになったものですから、またまだ中途の段 階であります。今後さらに検討してほしいと思いますが、短い範囲内でこんなことが必 要だということを我々の範囲内で作ったものが、別添資料11で整理していますので、 後ほどご覧ください。  以上が全体の報告書のまとめなのですが、何度も言いますように、事業レベルの評価 手法について我々は集中しましたので、大きな目標の1つである協力方針の問題と、協 力にかかわる人的資源の問題については、まだまだ議論が不十分ですので、今後さらに 検討していただきたいと考えています。 ○妹尾課長 ありがとうございました。ただいまの労働分野の報告、説明に関して何か ご質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは分野別報告の最後にな りますが、水道分野を眞柄座長、よろしくお願いします。 ○眞柄座長(水道分野) お手元に水道分野の報告書と別添1で水道分野国際協力人材 確保・育成WG報告書、総合援助手法検討WG報告書と、参考資料として水道分野の国 際協力事業の実績の整理の4点が水道分野で検討された結果です。参考資料の水道分野 の国際協力事業の実績の整理をご覧いただきますと、後ろに表があり、この10年間だ けで、水道分野はこんなにたくさんの案件があったかと思われる方々も多いかと思いま す。事実OECD−DACの国の中で、ODAとして水道と衛生の分野に注ぎ込んでい る公費は、我が国がいちばん多いというのが実態です。  しかし、よくよくご覧いただきますと、そのODAの額の中で圧倒的に多いのは円借 款で、技術協力あるいは無償資金協力というのは、有償資金協力に比べて少ないという 問題点があります。このようなことを踏まえ、外務省でも今週末から皇太子殿下が我が 国の代表としてご参加される「水フォーラム」がメキシコで開催されますが、そのおり に外務省としての水イニシアティブというものを内外に明らかにすることになっており、 その我が国の水イニシアティブの中でも、水と衛生がミレニアムゴールに対して、どう 貢献していくかというアプローチも記述されています。  そういう意味で、この厚生労働省での我々の分野の検討会は、政策的にも反映されて いくものと期待しています。詳しいことは時間の関係があり申しませんが、まず最初に この報告書の3頁を見ていただきますと、国際協力事業の実績の整理というところから 始まっており、事業の実績をどう振り返るかということから検討会が始まっています。  JICA、JBICのものは後ほど申し上げることにして、厚生労働省でのいわゆる この分野の事業は、国際厚生事業団を通じていろいろな形で研修、あるいはJICA等 で行われた事業の事業評価をどう進めるかということを、具体的に調査するための事業 を行ったり、あるいは厚生労働科学研究費と連携して、保健医療の分野の先生とご一緒 にヒ素の対策を行って、その結果、ヒ素による健康障害がどの程度少なくなるかという 事業を行っていたり、あるいは官民連携で今後、この分野のODAとしてふさわしい事 業がどこの国にどの程度あるかという調査を行ってきています。そういう意味ではJI CA、JBICにつながるような事業が厚生労働省の直轄事業として行われています。  8頁に掲げられているのは、WHOとの関係です。いわゆる分担金とは異なりまして 特定の目途を持っている拠出金を我が国はWHOに支出しており、特にWater Sanitation and Healthのプログラムに関しては拠出金を出しており、我が国の水道の 水質基準と大変深くかかわっています。WHOが加盟各国に勧告している飲料水水質ガ イドラインの策定に、10年来かかわってきています。この拠出金あるいはそれに関係す る分野のWHOとの関係は大変深いものがあります。現にガイドラインが出版されると、 必ず日本政府のことがアクノレッジメントとして出てきている実績があります。先ほど 妹尾課長がおっしゃられましたが、予算的な問題があり、実は来年度、あわや切れかか ったということがあり、慌ててお願いをして来年度も拠出金を出していただけるように なりましたが、そういう意味でJICAやJBICとは別に、先ほど労働分野でILO との関係の話がありましたが、国連機関との連携は、絶えず注意しながら、連携を保つ ようにしていくことが、特に厚生労働省では重要でないかと考えています。  11頁です。水道ビジョンにおける政策提言があります。これは平成16年に健康局水 道課が水道ビジョンを示し、今後20年あるいは30年先を目指した水道のあり方につい てのポリシーペーパーを出しています。その中の「安心」「安全」「持続」「環境」という キーワードに加えて、「国際」がキーワードに入っています。その水道ビジョンの国際と いう言葉を受けて、人材育成とか総合援助の問題を考えているわけですが、この報告書 の中では具体的に記述されていません。検討会の中では2007年問題で団塊の世代が抜 けていった後、我が国の水道施設のオペレーションをする人材をどう確保するかという ことが、ODAとの関係で議論されています。これは報告書には入っていませんが、保 健医療分野のパラメディカルな分野でも同じような流れがあるわけで、この問題につい ては報告書には書いてありませんが、いずれ厚生労働省の水道の分野でも真剣に考えて いかないと、具体的に現場で働く人をどう確保するかというのは、国際的な連携にかか わっているということです。  しばらく飛んで44頁に、今後の課題という事柄を踏まえて、いくつか書いてありま す。まず1つは都市水道に関する援助の重要性の問題です。ODAの実績を見ていくと、 都市水道に対する援助案件がだんだん減ってきています。これは水道事業が世銀を含め て国際的には民営化の方向に走っており、民営化された水道事業に対して、我が国はO DAの対象にし難いという政策が出されていることから、都市水道に対する援助案件が 減っているという問題点があります。  しかし、例えばタイの首都であるバンコクの水道は、我が国が円借款でずっと整備を してきた水道です。その後、タイ政府の方針でこれが民営化されています。しかし、タ イはいまでも人口増に悩んでいるので、いわゆる違う形での援助が必要であるとか、あ るいは円借款で中国の多くの都市の水道を整備していますが、中国政府は整備された水 道を担保として民間の企業とジョイントで水道施設の拡張をするというような政策を採 っています。つまり、長期的なマスタープランに基づいた水道事業の円借款を含めたO DAを今後考えていかなければならないという問題点が挙げられるかと思います。  しかし、それに比べ、カンボジアのプノンペンでは、我が国政府のODAでマスター プランが作られ、そのマスタープランに基づいて我が国を含めて多くのドナーと協力を しながら、プノンペン水道の整備を進めてきています。  その結果、少なくともプノンペン市内の水系感染症の症例はどんどん下がってきてい る。連携をすることによって援助効果が上げられるという問題点があるということがわ かっています。しかし、都市水道といっても、開発途上国の都市は、いわゆるスラムを 含めて周辺地域での人口増が非常に大きいということで、そこの整備がどのような効果 を生み出すかというような検証が今後必要であると考えています。  村落給水ですが、現在はODAとして村落給水に特にサハラ地域を含めて、どんどん 事業量が多くなってきていますが、しかし、実態としては地下水にヒ素やフッ素が入っ ている地域では、援助のリスクが高いということで、なかなか踏み込まれていない事例 もあるということです。  いずれにしても事業評価を短期間で行うのではなくて、長期的な視点で事業評価を行 うべきである。そのときには厚生労働省なので感染症や乳幼児死亡率、あるいは期待余 命等の長期的な公衆衛生のトレンドを把握しながら評価をしていくべきではないかと考 え、そういう意味での他分野との連携によるモニタリングが重要であるということが46 頁に書かれています。  現に我が国でも憲法25条で、公衆衛生条項が書かれて、感染症が少なくなったのは 1970年に水道の普及率が70%、屎尿の衛生処理率が70%に達して、はじめて目に見え るようになってきたということなので、そういう意味では長い期間をかけたいわゆるヘ ルスデータのモニタリングと連携していく必要があるのではないかということです。  それと同じように、総合的な援助の必要性という意味では、ミレニアムゴールの貧困 の分野、あるいは保健衛生、地域開発の他のセクターと連携をして、事業を展開してい かなければならないと、総合援助手法の検討会では強調されています。  人材確保と育成のことについては、どこの分野でも共通であろうかと思いますが、特 に水道分野はこれまで地方公共団体の職員の方々に専門家として働いていただいてきた わけですが、地方自治体の財政状態、それから、先ほど申し上げた2007年問題を考え ると、これまでと同様に地方自治体の方々に人材を期待することは難しいと考えられる ことから、民間企業の人材にも、ODAにかかわる人材として参画していただくような 制度、あるいは工夫が必要であるということが、人材確保・育成のWGからの報告書の 中に盛り込まれています。  以上ですが、報告書の中にはいくつか書いてありますが、ここにいらっしゃる北脇先 生、あるいは立命館大学の山田先生は教育の一環として学生をフィールドへつれて行っ て、事業評価に参加させるというような活動も行っておられます。私もバングラディシ ュでヒ素の調査や実験に大学院の学生をつれて行っていますが、なかなかその後の就職 口が難しい。学生たちは意欲があっても、すぐ大学院の修士を卒業したぐらいですと、 JICAもほかのコンサルもまともな人件費をくれないので、そんなのは雇えないと言 って、断られるのが多いということです。私の教え子からも実は「どうしてもODAを やりたい。先生どうしたらいいですか。」と聞かれて、私は「厚生労働省に入りなさい。 補佐ぐらいになったら、きっとどこかに行けるよ」と申しましたが、そういうのが我が 国のODAにもっと参加したいという若者に対する職場及び環境だと思います。その点 は報告書には書いていませんが、今後検討していくべき課題ではないかということです。 ○妹尾課長 ありがとうございました。ただいまの水道分野の報告に関して、何か質問 はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは3分野それぞれの報告をいた だきました。3分野を横断的な議論ということで、これから自由な活発な意見交換をお 願いしたいと思います。いかがでしょうか。 ○國井専門会員 いまニューヨークのユニセフにいるのですが、以前外務省におりまし て、いわゆる日本の保健医療協力がどれだけ現地にインパクトを与えたかという評価を しようとした場合、例えば下痢症の現象の話があったと思うのですが、まさに水道分野、 こういった水環境、そして保健が絡み合って結果を出すと思うのです。なかなか保健だ けで評価をするとそれだけのファクターだけでしか測れません。まさにそういった水道、 環境と一緒に評価ができたらいいなと常々思っていましたので、今回この評価を見せて いただいて、非常に我々と似ている部分もありますので、今後一緒にやっていけたらと 思います。  もう1つは、日本の中でのセクター間連携を口では言うのですが、なかなかできない のです。どういうことかというと、できれば水道分野、環境分野、そして保健分野が案 件形成のときに一緒に行って、同じ地域でこんなことをやろう、あんなことをやろうと 話せればいいのですが、いつも大体別々にやります。あとは有償と円借款と無償も全く 別の調査が行って、同じ水道でもおそらくそうだと思うのですが、保健医療でもJBI CでやるのとJICAでやるのと全く別に調査を行う。そして実施も別で評価も別とい う形です。日本の中でさえも、1つのセクターの中でもバラバラなところがあるので、 今後本当にこれはJBICとJICAが一緒になっていけば、有償、無償も一緒に、ま た、できればセクター間でも一緒に案件形成が、できれば同じ地域で実施・評価ができ ればいいなと。まさに今日のこの会というのは、ほかのセクターで話合いをしており、 今後そういう可能性を模索していけたらと思っています。そういう意味ではいい機会だ と思います。 ○眞柄座長 先ほど私、WHOのことをお話しましたが、ミレニアムゴールに向かって 世界各国がWater Sanitationに対して、どれだけプログレスしているかという調査につ いては、人口と施設についてはWHOとユニセフがやっているのです。  ところが、感染症のデータと全然リンクしないのです。WHOは感染症のデータベー スを持っているのですが、それが例えばバングラのダッカの周辺で、Water Sanitation がこのぐらい進んだと。その地区での感染症のデータがどうなのか、というところのリ ンクがとれていないのです。そういう意味では、こういう仕事こそWHO、あるいはそ ういう国際機関でやれる部門ではないか。それがあれば、我が国だけではなくて、ほか のドナーも大変有益なツールを持つということで、是非これは厚生労働省がイニシアチ ブを取って進めていただきたいお仕事かなというように存じております。 ○中村座長 いまのお話に関連して、国立国際医療センターの学際的評価という研究班 で、3年間やってまいりました。国連機関もいろいろ回って、学際的な評価のあり方を 見たのですが、結論はいろいろな所で学際的評価が必要だと、すべての機関が言うので すが、実際にやったのかというと、ほとんど出てこないというのが現状です。私たちが 開発した方法は、多くの所では現状で学際という名の寄せ集め弁当でしかない。要する に、水の人が行って、その後、別のときに保健医療の人が行って、今度別のときに教育 の人が行って、同じ場所で別々の報告書が出ると。別々の評価をする。3つを合冊にし たら、学際評価書だと。でも、これでは絶対学際にならないので、私たちがやったのは、 同じ期間に経済と保健医療と人類学と社会学の人が一緒のマイクロバスに乗って、一緒 に動く。全部、行程も一緒にする。でも、もちろん別のものを書くわけです。そうする と、非常にハーモナイズされたのが出てくるというような形でした。  今後ですが、大きな機関同士の学際というのは本当に難しいのですが、厚生労働省の 中で、このように労働と水道と医療などができているので、國井先生がおっしゃったよ うに、期間が始まるときに、3日でも4日でもいいですから、同じときに、私たちは「呉 越同舟アプローチ」と呼んでいますが、呉越同舟する機会を強制的に作っていただくこ とが、たぶん学際の第一歩ではないかという気がします。 ○國井専門会員 まさに日本国内として現地に評価しに行く場合は、いまのような形で やられることがいいと思います。ただ、ご参考までになのですが、いま実はMDGs、 国際的な開発目標に関して、いままでデータが散逸していたという先生のご指摘のとお りなものですから、いまユニセフとWHOとワールドバンクとゲイツ・ファンデーショ ンなどがかなり議論をしていて、MDGsのためのインフォメーションシステムを作ろ うということをやっています。その中には、教育、水、いわゆるMDGsの8つのゴー ルと48のインディケーターのうちの全部とは言わないのですが、かなりのものを網羅 しようとしていて、広い地域でコンパティビリティーとスタンダダイゼーションをして やろうとしております。実はこういったデータを集めていく、またそれの信頼性や妥当 性を作っていくことに関して、政府もドナーとして発言していき、そういったところに お金を付けていくことも必要ですので、この辺も厚労省に是非お願いしたいと思います。 ○小林会員 別の話題になりますが、労働分野からの報告を非常に興味深く伺いました。 特にその中で上位目標の設定と実際の事業評価のジレンマの話は、非常に関心を持ちま した。というのは、対象者あるいは裨益者の設定と国際協力の理念が深くかかわる場合 があります。例えば保健医療分野で言うと、ちょっと極端な言い方ですが、都市の富裕 層に多いような疾病対策と農村の感染症対策を国際協力の理念から考えると、大雑把な 括りでいくと、やはり農村の感染症対策というのがプライオリティーが高いということ になると思います。保健医療分野では以前からそういうことが言われて、いまはその方 向に来ていると思います。先ほど出たミレニアム開発目標も、ある意味でそういうとこ ろを狙っているのではないかと思うのですが、労働分野でもおそらくそういうことがあ るのではないかと思います。例えば高等教育を受けた層への能力開発と、初等教育程度 の人たちを対象にした能力開発です。その場合だと、むしろ成果は初等教育対象の能力 開発のほうが難しいかもしれません。でも、その場合にはやはり上位目標を常に念頭に 置きながら、国際協力を考える必要があると思います。コメントですが、もし意見を伺 えればありがたいです。 ○中村会員 この点を言い出したのは私だった、というのは労使関係のプロジェクトを 実際にやっているものですから。この場合、視点が医療分野とやや違うような気がする のです。労使関係の場合だと、上位目標は労使関係の安定となるけれども、それは1つ のプロジェクトで達成できることではない。政治的要素もあり、経済的要素もあり、い ろいろな影響を受ける。また、労使関係プロジェクトの具体的目標を枠組みでいくのか、 人の教育でいくのか、何だといろいろなことがある。どこに目標を設定するのか、上位 目標をにらみながら、具体的にこのプロジェクトはこの程度で、この対象はここにある と決めていくと。そういういろいろな段階が必要だなということを考えながらやったの です。ですから、先生がいまおっしゃった、やはり医療などとは次元が違うのかなとい う印象で、お答えは全然できません。 ○小林会員 見当違いの質問だったかもしれません。 ○中村会員 いや、見当違いということではなくて、援助の分野によって目標の設定の 仕方は大きく違うのだなというのが私の印象です。 ○今野座長代理 例えば人材育成や能力開発といったって、国民はいっぱいいるわけで すから、誰にターゲットを当てるかというのは非常に重要なことで、それはそれぞれ戦 略目標としてあると思うのです。おっしゃるようなことがあると思うのです。ただ、我々 が主に議論していた中心的なポイントは、もしそこが決まったとしても、事業までどう やって目標をブレークダウンしていくのかということです。そこを上手にブレークダウ ンしないと、事業実施段階の評価は適正にできない。ですから、いまの労使関係でも本 当に事業評価をしようとすると、労使関係の安定とかがいちばん最初にあってもいいの ですが、労使関係の安定といっても多様なファクターが効いているわけですから、それ をうまく目標をブレークダウンして、このプロジェクトに合った範囲の目標にどう持っ てくるのかということが非常に重要だということです。  いまおっしゃった点は、我々の報告書で言うと政策レベルで、どこにターゲットを当 てるかということに関連すると思いますが、何となく我々のグループはいま言った前者 のほうにすごく興味があって、そちらのほうを議論してきたということです。やってみ ると難しいのです。ただ、難しくてやめてしまうと、評価はできないということになっ てしまいますので、少し精度は落ちても、どうにかブレークダウンして、実施主体の目 標になり得る目標をどうやって設定するかということだろうと思います。その辺が先ほ ど例で言いましたが、プロジェクトの目標は失業率を下げることだといっても、それは どう見たって目標にならない。それが間接的に影響する将来の最終的な目標であったと しても、事業実施者にとっては目標とするのは無理ですね。そのようなことがあるので、 そこをもう少しきれいに整理ができないかということで、頭を悩ませたのでしょうかね。 正解があるというわけではないのですが、悩ませたということです。 ○小野氏(松岡会員代理) JICAのほうとして、小林先生からのお答えになるか、 労働分野の中で特に職業能力開発の場合は、今回のミレニアム目標の中には1つのター ゲットとして、若年層の雇用をどうにかしようということがあるわけです。そこに対す るプロセスとして、やはりまず基礎教育で2015年まで就学率を上げようという大目標 がありながらも、基礎教育のあとには中等教育、高等教育が当然つながってくるわけで すから、そこのところでどのような技能を提供していくかというところで、技能教育、 技術教育のプロジェクトと基礎教育をどのように結び付けていくかというような、評価 する場合でも5年などよりももうちょっと長いスパンの1つの視点の取り方が重要にな るのかなと。そういった場合、例えば技能教育の場合には、基礎教育のほうで日本では 理数科教育に力を入れて、その理数科の力をもって、ものづくりなどのところの技能を 高めていくというような、評価の幅といいますか、視点の期間の取り方という言い方が 反対に別にできるのかなということを感じました。所感です。 ○北脇会員 私はいま水道分野というところでお話するのですが、日本の厚生労働省の 場合、水道分野と労働分野が一緒にいると。これは世界的に見ても、わりとユニークな 状況ではないかと思うのです。そこで、先ほどセクター間の協調という話が出ておりま したが、これを考えてみると、我々水道プロジェクトは、アーバンでもルーラルでも、 どちらでも結局、料金徴収のところとかお金がない、willingness to payが低い、 affordabilityがない、そういう問題に突き当たるわけです。そうすると、それを解決す るためには、貧困の問題やインカムジェネレーションの問題というところに突き当たる わけなのです。そういうところで、保健もそうですが、インカムジェネレーションにつ ながるような、プロジェクトとしてはミクロな話になってしまうのですが、そういう分 野で労働分野と水道分野、保健衛生分野が協力し合えないか。そうすると、世界的にも 非常にユニークなことができるのではないかと思いました。 ○搆補佐 労働を担当しています搆です。今いただいたご意見に対しては、私どもも同 感です。私どもも常日ごろから考えておりますのは、感染症のように直ちに生命に及ぶ ような分野は、おそらく単独で最優先課題になるだろうが、そうした当面の危機を乗り 切った状況で問題となる分野、例えば母子保健の分野や、生活の質をもうちょっと高め たいというところに達した段階で、保健医療にしても水道にしても、当事者の収入がど のぐらい確保されているかが大きな問題になってくるということです。そうした段階で、 雇用を確保したり、技能を習得させることによって、生活手段を安定させた上で、水道 分野なり保健医療分野なりで協力が成果を結ぶだろうと思います。  先ほど小林先生からのご指摘の中で、私どものほうからもちょっと補足したい点があ り、労働分野からのこれまでの議論を踏まえた説明というのは、いままで労働分野の先 生が言われたとおりなのですが、一方で小林先生からのご指摘というのは、私どもがタ ーゲットを設定するときに、決して達成が易しいところばかりに偏ってはいけないとい うご指摘であり、現状に照らして困難と思われる高い目標であっても、それによって得 られる成果が高い部分はしっかりやっていかなければいけない、ということだと思いま す。そのときに、我が国以外の他の協力国が、今後どういう協力をしていく見込みがあ るか、受益国自身が本来行うべきこと、あるいは放っておいても優先して取り組むであ ろうこととの比較で分析した上で、放っておいては立ち行かない、10年経ってもうまく いかないという部分を洗い出し、我が国の協力として適切かどうか、すなわち今後の我 が国の協力の方向性をしっかり検討するという点で、私どもの今後の検討に反映させて いきたいと思います。 ○中村会員 私のほうから今度は質問なのですが、私の対面の中村先生にお伺いしたい のです。先ほど人材の開発の中で、対象が学生・院生ということで、若い方を対象とし た人材育成の話をされていました。私が年をとっているせいで我田引水と疑われるかも しれませんが、労働問題、特に労使関係などは、労働者の対応や労働組合の対応など、 相手の経済発展レベルというものに見合った労使関係みたいなものがあるわけです。そ うすると、日本の昔の経験を踏まえて援助をしなければならない、アドバイスをしなけ ればならないということから言うと、援助する側の人材は将来のためには若い人があた る必要は認めますがいま時点の援助にはむしろ昔の経験を持った、少し年をとった人の ほうがいいかもしれないという場合があるのです。医学の場合は、医学がどんどん進歩 しているから、いまの人をすぐ現場へ持っていっても使えるのか、そこに違いがあるの かなという気がしましたが、医学の場合には中年・高年の方が、援助のための人材とし てはあまり価値がないのでしょうか。 ○中村座長 別に価値がないというつもりではないのですが、今日は学生のところを主 眼に置きましたが、私たちは人材養成を考えるときに3つのことを考えています。1つ は人生のライフステージに沿った国際協力というのがあるはずだと。この点の日本の大 きな問題点は、先ほど水道分野でもありましたが、学生のときは、やりたいと言う人が ものすごく多いのです。看護婦などは、10%ぐらいは国際協力をやりたいから看護婦に なっているというわけです。残念ながら、それが大学教育の中で、そしてまた卒後教育 の中で、ほとんど皆さん初志をどこかで、もしかしたら私たち大人の社会が彼らの思い をどこかで挫けさせているのではないかと、そういう反省はすべきだと思います。そう いう中、少数の人が残ってやっていく。そのときに、今度その人たちがキャリアアップ していく方法がまた少ないと。自分で見つけて、自分でどこかへ行って戻ってくる。そ こから先、それをサポートするきちんとしたシステムがない。この中で、いろいろな所 では国連に行く人はいないと言うのですが、国連に行く人を育てるためのシステムをき ちんと作ってこなかったのではないかという気がします。これが1点です。  第2点は先ほどおっしゃったような日本の歴史といいますか、特に戦後の国際保健医 療の歴史をどう途上国に活かすか、これは1つの大きなテーマで、実は2年ぐらい前に 厚生労働省で、日本の戦後発展の経緯を国際保健医療に活かすという3年間の研究班が できたのですが、厚生労働省は普段なかなかこういう研究をさせてくれない。いまの医 療進歩はどうだと言うのですが、昭和20年代、30年代、何をしたか。そんなものを研 究してどうするのだと。10年に1回つくか、つかないか。できたらこういうところをも っときちんと分析して、それを途上国に伝えるような形というのが必要なのだと。それ を経験談で語るだけでは、途上国の人は付いてきません。それを普遍的な形で、むしろ いまのMDGなどの流れに沿った形で、日本の経験をどう分析するかという、そこの作 業が要るのだろう。これなしでは、日本の経験を言っても、むしろ押し付けだけだとい うように、医療分野などでは捉えられることが多いような気がします。  3点目は、そういう中で、私がいまの若い人たちが優れているなと思うのは、時代も インターナショナルで、語学力も優れているし、コンピューターもあるし、途上国でも 若いジェネレーションは本当に育っています。ものすごく優秀な人たちが育っています。 その人たちと一緒にしないと駄目なので、そういうときには私は日本の若い世代の人が 途上国の若い世代の人たちと一緒になって、途上国の本当に貧しい必要な所に行く、そ れをサポートするシステムづくりが必要なのだと思っています。 ○村元会員 私は水道分野を担当したのですが、特に人材のほうを中心にやらせていた だきましたので、いまの意見に大賛成です。水道分野では、先ほど眞柄先生がおっしゃ ったように、日本の国の中で水道に携わる人材が育成できない時代になってしまったと 考えています。黙ってどこかから人材を確保して援助に活用しようというのが、たぶん できないのだと思うのです。もしかしたら、これはどこも同じかもしれないということ で、そういう仕組みを真剣に考えないと、援助どころか、自分の国の事業も思いいかな いと。  もう1つ、OJTでやらなければ人材が育成できないというのは、水道だけかもしれ ないのですが、かなり長期にわたり一緒に仕事をしないと育成できないという仕組みに なっていて、いままでのような援助の仕方なり、人材の活用ではなくて、一緒に働く人、 そういうメンバーも必要になるとか、人材に非常に多様なニーズが求められるというこ とです。そういう中で、日本の国の実情と、途上国なり、いろいろ援助を受ける国々の ニーズをマッチングして、どこかに書いてありましたが、そういうことを真剣に考える ときかと思いますので、意見として述べさせていただきました。 ○野見山会員 いわゆる国際協力の分野別の連携の問題で、私の体験を含めて紹介して、 質問をしたいと思います。私はいまNGOの国際協力の仕事をやっておりますが、以前 タイのほうに雇用政策の専門家で行っておりました。先ほどの評価ではないのですが、 そのときの目標設定で、いちばん大きくいけば失業率の低下という命題がスーパー目標 として挙がりました。それといまやっている具体的な仕事、例えばハローワークの業務 の改善に当面取り組んでいくこと、あるいは失業保険制度を導入する、そういうものと 失業率がすぐつながっていくかというので私は非常に悩みました。それは中期的目標と してはつながっていくにしても、とにかく当面ハローワークの利用率を高めることによ って、できるだけ賃金労働者の雇用機会を増やしていくということを中心に進めたわけ です。そういう意味で、上位目標と具体的な政策アドバイザーのあり方というのは、非 常に悩んだ点でもあります。  その中で、分野別連携で1つ私が取り組んだのは、例えばタイの場合、職業経験のな い女性が東北タイからどんどんバンコクに流れてくる。そういう人たちはバンコクで構 えている人買業者みたいなのがいて、それがいわば夜の世界の仕事に連れ込んでいくと いう状況があったわけです。これをどこかでストップさせなければいけないということ で、私は昔40年ぐらい前に行政の経験で、例えば出稼ぎ相談センターというものが東 京に作られて、東北地方から出てくる人たちに対して、上野あたりで沈没しないように していこうという対策をスタートした経験もありました。これを使ってみようというこ とで、バンコクの北部バスターミナル、ここが大体、夜行バスで東北タイからやってく る人たちが多いのですが、そこで相談センターをつくることによって、まず第一歩をそ こで受け止めて、住宅のない人については、バンコクにある宗教系関係のNGOの施設 に入れる。職業相談をやるなどということを含めて、そこでとにかくワンストップの相 談をやろうということで、これはJICAのほうに相談をして、草の根協力でそれをや ってよろしいということで、スタートしたわけです。  職員を2、3人置いたぐらいですが、そのあと東北タイに出かけたときに、エイズ関 係のNGOがあって、そこで話し合っているときに、そのような形でエイズの予防対策 の一環にもつながるという話も聞いたわけです。労働問題とエイズといった問題とのつ ながりといいましょうか、そういうことも一応、実感した。そういう意味では分野別と いうことに限らず、幅広くテーマを取り上げていけば、出稼ぎという視点からでも、総 合的な取組みができるかなと。これはこれからもまだまだ考えていかなければいけない 問題です。  質問ですが、報告を伺って、保健医療分野、あるいは水道分野についても、人材育成 の面について非常に詳しいご報告をいただきました。実は労働分野も、第1回目の検討 会で、人材育成の問題についても非常に意見が出ました。しかし、課題は評価である、 事業評価の問題だということで、結果的には人材分野のあたりの検討はこれからの問題 ということになったわけです。その中で、私としていちばん関心があるのは人材バンク の問題で、保健医療の分野、あるいは水道の分野における人材バンクの問題は非常に進 んでいるなと感じて、労働分野は私は寡聞にしてこれほど進んだものはなくて、かなり 旧来的な手法で官の伝を選んでくる、あるいは民でも一応よく知られたところの民の人 たちに依頼するというような、極論すれば勘と経験に頼るところがまだまだ残っている なと思っておりますので、労働分野についても相当改善をする必要があると思います。  そこで、むしろこれからの問題ですが、厚生労働省のほうで折角こういう保健医療や 水道の分野の人材バンクについて、さまざまな手法が進められておりますが、労働分野 についても、ここまでは行かないにしても、今後、検討していくお考えがあるのかさら に必要な方々で意見をとられる必要があると思います。ちょっと伺えればお願いします。 ○妹尾課長 私どもへの質問ですが、担当が考えると思いますので、先ほど今野先生の お手が挙がったようでしたが。 ○今野座長代理 同じ趣旨なのですが、少し具体的に質問したかったのは、医療保健分 野で人材バンクを考えているときに、需要サイドというか、つまり何人の職があるのか。 言っている意味はわかりますか。人材バンクでマッチングするときのマッチング先とい うのは、どの程度のサイズかということなのです。それはストックとフローがあると思 います。例えば極端な例を言うと、ストックが小さいのに、大きい戦艦大和のマッチン グシステムを持ってきてもしょうがないわけですから。大きければ、あるいは多様だっ たら、何かシステムを入れる必要があると思います。私の参考のために、大体どのぐら いのサイズなのですか。一種マーケットの大きさでしょうか。その辺はどのぐらいなの かと思って、質問しようと思ったのです。 ○中村座長 先日、「将来の国際保健医療を考える会」という合宿の中で出た意見で、ま だ全員のコンセンサスが全部出たわけではないのですが、現在考えられているのは、大 きく言って4つのリソースがあるだろう。1つはODAです。JICA、JOCVも多 いですから、これも含めたところのリソースで、これがJICA、ODA、本当は外務 省、厚生労働省、そういうところにももっと人材がほしいのですが、この辺でJOCV のほうの協力隊が500人規模ぐらい。それ以外のところでは大体300〜400ぐらいかと 思います。この辺また変更があったら、國井さんのほうで補足してください。現在、国 連では保健医療分野が100人以下ぐらいなのですが、これは国連関係者も、どうしても もっとほしい、200人ぐらいいるのではないかと。  もう1つは大学ですが、この大学がいま大きく変わりつつあって、私たちの大阪大学 でも海外教育研究拠点があります。全国の大学で、いま100近い海外研究拠点があって、 海外に駐在している。そういう意味では、大学が今後200〜300人ぐらいの規模で、こ こが1つの人材のフローというか、ストックになる部分ではないかと。そして、将来、 NGOとコンサルですが、いま医者でコンサルなどというのは2人か3人で、ものすご く限られているわけですが、今後やはりこれが増えるのではないか。NGO、コンサル の所で200人ぐらい、こういう人材が働けるようになったら、かなり大きいなと。大体 このぐらいの規模を現在考えています。  付け加えたら、我々のところもずっと勘と支配意思の世界みたいなところがあったの ですが、それではこれだけの数はもう回らなくなるだろうというのが、今回のバンクの 基本発想でした。 ○妹尾課長 先ほどの野見山先生のご質問について、担当から説明します。 ○搆補佐 ご指摘ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりで、労働分野では協 力の成果を上げるため、協力の枠組みが決まった段階で、それにいちばん適した人材は どういう人がいるかということを検討して、その中で最大限の成果を出せるような人材 の選定を行ってきている。まさに勘と経験に依存する状況で、それはどういうことにな るかというと、JICAの協力事業においても、私どもの独自事業のどちらにも言えま すが、結局、有識者なり専門家なり、人材の能力、手腕に、事業の成否が相当影響され てしまうということがあります。これは長期的に体系的な協力を行っていく観点からは、 見直さなければならないことです。  また、分野によっては、我が国ではこれまで行政しかノウハウを持ってきていなかっ た分野もあります。もちろんそうでない分野も多くあるのですが、それらをしっかり分 析して、当面の対策としては、民間の人材の中でノウハウを持っているけれども行政的 な視点が欠けている、あるいは語学の面でちょっと自信がないといった部分を補完する ことで対応したいと思います。国際協力を行うには、直ちには派遣できないけれども、 どこか手当てをすれば十分通用する人材というのは我が国にたくさんいるはずで、そう いう人たちを集めて協力いただくことを第1に考える必要があると思います。  それから、長期的には、そもそも国際協力を担う人材が我が国に不足していることは 間違いなく、例えば国際機関にしても、ILOの中では非常に日本人職員が少ないとい う現状にあります。こういった状況は長期的に改善していく必要はありますが、それに はただ待っているだけでは駄目で、若い人たちに実践で経験を積んでもらって、あるい は帰国後国内でもさらに知見を積んで、今度は熟練を積んだエキスパートとして送り出 す必要があり、これは行政の責任でもあると思います。  いまのところ、例えば国際機関の職員になる人材の育成ということでは、私どもは国 際協力の一環で、人材養成プログラムを数年前に立ち上げたところです。決して十分な 規模ではないのですが、長期的な視点に立って人材を育てることによって、我が国から の労働分野の人材をしっかり輩出していくシステムの第一歩となるものです。その過程 でデータバンクを作って、個人の能力にあまり依存しないような協力の仕組みを確立し ていきたいと思います。この過程においては、保健医療、水道等、もう既にだいぶ進ん でいると聞いておりますので、部内においても参考にさせていただきながら進める所存 です。 ○建野課長(石川専門会員代理) 国立国際医療センター国際医療協力局の建野です。 保健医療の分野で、我々の厚生労働省は非常に特殊で、国際協力を本来業務としてやる セクションが、いま我々の所に置かれております。医者、看護師なのですが、スタッフ が50人いて、それは本当に国際協力を専門としてやっている集団です。だから、半分 ぐらい海外で長期に出ていると、そういう非常に特殊なグループができています。1986 年に始まったのですが、よくこういうものをつくってくれたなと思って、我々は非常に 安心してやっているという状況です。  最近よく思っているのは、国際協力の人材というのは、片手間ではできないような時 代になってきたのだと。本来業務を何か持っていて、それで片手間に国際協力をやると いう時代はもう過ぎてきているのではないか。やはり本来業務として行うあるグループ がいて、それプラス片手間に本来業務を中断して参加するという、両方が必要ではない かという気がしております。そういう意味では、やはり本来業務として国際協力に専念 するような組織を作っていかないと、日本の国際協力のクオリティーは良くならないの ではないかという気がしております。  従来、専門家というのは、ある意味では専門家を何人投入したという1つの成果の時 代があったのですが、最近では専門家投入というのはインプットでして、インプットし て、それでどのぐらいの成果が出たかというのを問われている時代になっております。 ですから、是非そういう専門グループと、片手間というか、本来業務を中断してやると いうグループと、両方の人が必要ではないかという気がしております。いま50人と申 し上げましたが、JICAの事業の中で、我々が保健医療分野のところで4分の1から 5分の1ぐらいを担っているという状況なのですが、そういう意味ではあと4、5倍の 人数のそういう本来業務をする人がいて、また別に片手間にやっていくという組織が必 要ではないかという気がしております。  ただ、厚生労働省は保健医療分野では本当に例外的で、こういう組織があるのは世界 でも非常に珍しい、あまり見ない組織です。ですから、そういう組織をもっと活かせれ ば、日本のODA事業はもっと良くなっていくのではないかという気がしております。 ただ、残念なことに、なぜか厚生労働省の中の予算の区分けからいきますと、我々のと ころの予算はODA事業に入っていないのです。国立病院部の中の予算でして、国際課 のODA事業というと、JICWELSのいくらいくらとか、今日みたいな会議ぐらい しかなくて、本来いちばん予算を使っているところの事業がODAの中に入っていない という、何かちょっとおかしい状態にはなっているのです。そういうわけで、保健医療 分野では少なくとも50人の専門である集団がいるということで、我々としては非常に 恵まれているという感じです。 ○野崎専門会員 話はいまの人材バンクの件ですが、中村先生のほうから国際医療協力 研究でデータベースを試みに入れるという話は出ておりましたが、実はその下請で、試 みに1998年度から2002年度までの5カ年にJICAで出された、長期・短期の専門家 2,038名のデータベースを作りました。これは保健医療分野の報告書の28頁にある会員 情報データベースという様式に当てはまったデータベースを1年間で作るようにという ご指示をいただき、この報告書にあるように、データがなかったり報告書が飛んでいた り、いろいろなことがあったので、かなり乱暴な入力でありましたが、一応2,038名の データベースを作り上げました。  その結果として、MDGsとの関係で申し上げると、かなり乱暴ですが、この5年間 に出された専門家の93%の方が妊産婦死亡率の低減、乳幼児死亡率の低減、感染症対策、 この3つの分野だけに集中して、日本の保健医療協力はなされていたというデータが出 ております。もちろんこの2,038名については、1週間行った人も、1年行った人も、 みんな綯い交ぜになっておりますので、データがどこまで有効かという問題はあります が、一応そのようなデータもできております。あとはこういうデータをどこが引き続き 運営・維持・管理していくのかというところと、先ほど中村先生もおっしゃっていまし たが、データが非常に散逸していて、全データがなかなか揃わないという問題は、これ から解決していったらいいなと思っております。以上です。 ○水嶋専門会員 国立保健医療科学院人材育成部長の水嶋でございます。人材育成部と いった変わったNIPHの部門で、いまのご討議は非常に参考になりました。人材バン クの関係で少し申し上げると、建野課長が言われた専門家について、プロとして長期に 張り付けるぐらいレベルが高い人と、パートタイム的といいますか、片手間といいます か、本務は日本をベースにしていて、短期でちょっと行く、あるいは受入可能だと、2 種類あるというご議論には賛成です。  後者に関して、ちょっと情報提供させていただくと、私が厚労省の国立保健医療科学 院に来たのは昨年からで、それまでは東京大学の医学教育国際協力研究センターという 所におりました。これは文部科学省が進めている国際協力の戦略拠点センターの1つで、 国際教育協力センターを各領域で作っております。初等・中等教育に関するものは、広 島大学と筑波大学が、法学部に関するものが名古屋大学、農学部がまた名古屋大学です。 工学部が豊橋技術科学大学、医学部関係は、医・歯・薬・看護・保健・栄養、幅広な医 学教育を東大に作って、私はそこで主に国際協力に資する人材のデータバンクを作るこ とも担当させていただきました。  これはあくまで建野課長の定義によると片手間軍団ですが、貴重な大学で働いている 教員の皆様で、国際協力に関心のある方がどのぐらいいらっしゃるのか、あるいは実際 に行った方はどのぐらいいらっしゃるか。2000年の時点で調査して、2,000名の方に登 録していただいています。主な目的は、各省庁ごとでいろいろなODA案件がきたとき に、どういう人がいいだろうといったことをコメントする際の参考資料とさせていただ いて、あくまでも個人情報ですから、いろいろな人が勝手に見るわけにはいきません。 契約の下で、我々が管理していました。  ここで感じた問題点は、大学の人間は、特に保健医療分野というのは動くのです。あ るときは大学の講師、翌年は国立病院の医長だったりするわけです。そういう流動性を どうやって見ていくか。また、更新をしていかないと、今年は2006年ですから2000 年の話はかなり古くて、もうリタイアした人もいたりします。そういう意味で、人材バ ンクを作成する場合には、フォローアップできるような形、あるいはある程度、公的な 所が個人情報管理の観点からきちんと見ていく必要があるのではないか。メインは、プ ロ級の人たちというのはやはり皆さんがご存じの世界のところで、わかっているはずで はないかという印象を持っていますので、条件が整えば行ってもいいという人をきちん とリクルート、あるいは確保しておいて、その人たちのロジのバックアップをプロ集団 がやっていくというのが、全体の氷山を上に上げて、2%の人だけだったのを7、8% まで上げる1つの工夫ではないかという印象を持っております。 ○田中(耕)会員 先ほど建野さんがおっしゃったこと、それから、これまで議論され たことの中で、私自身にもまだ答えがないところがたくさんあるのですが、折角こうい う横断的な議論なので、少し問題意識を共有しておいたほうがいいかと思って申し上げ ます。確かに建野さんがおっしゃるような、自前で政策をやっている役所が傘下の団体 の中に直轄の作業部隊を持つというのは、ある意味で非常にシンプルだし、動きやすい のだと思います。おそらく比較的、援助の分野では日本でその辺の供給と政策がシンプ ルに動いてきた水道分野が、これまでで言えばまさに1つの見本で、厚生省が非常に強 力な補助金を通じた関係を持っている市町村、水道事業者が中核になった供給源だった というのは、ある意味ではこれまで水道分野はやりやすかった。  しかし、それぞれの組織がそれぞれの存在目的を持っていて、それぞれのためにお金 をもらって活動しているわけで、その中に国際協力がどこまで位置づけられるかという のは、おそらくそれぞれ組織の性格によって違うのです。水道事業体がまさにそうで、 これまで大きくて余裕があったからやってきたけれども、これがどんどん厳しくなって、 供給元が減っているという状況がありますし、国立国際医療センターがいまの5倍の税 金を使って、国立病院全体の中で直轄部隊で全部を賄っていくのは、おそらく幻想に近 い。今後はNGOも含めた多様な供給主体から、さまざまな分野の専門家、あるいはさ まざまなかかわり方を持った専門家をコーディネートする力を持っていかないと、決し て国際的なニーズに対応できる人材は確保できないだろうと思っています。  そう思ったときに、私は人材バンクのほうが難しいだろうと思っていたのですが、前 提になるデータベースのところぐらいは、確かにそれぞれの組織のエゴイズムもあるし、 それぞれの計算もありますから簡単ではない。しかし、例えば保健医療協力だけを見て も、いま全体像をつかめている人が誰もいない。外務省も駄目だし、厚労省も駄目だし、 現場も大きな母体だけでも、国立病院系と大学系がバラバラでやっている。全体をつか めていないので、それはお互い困っているわけだから、シェアするためのデータベース を作ろうということで、この議論がスタートしたと思うのです。  結果的に、このまとまった中身をご覧いただいたらわかるように、中間報告その他で、 データベースをこういう方向で構築しましょうというのは、援助案件の採択、あるいは 政策決定にまで役立つような包括的なデータベースを、省庁の垣根を越えて作ろうと。 そのために、この会議自体にも各省庁の代表者、各援助機関・実施機関の代表者に入っ てもらってやってきているのに、結果的にこれからの具体化の宿題として残っているデ ータベースの構築の研究費に委ねている部分を見ていくと、当座、関係機関を超えた協 力というのはできないから、医療センターが持っているデータベースの構築をやりまし ょうみたいな、結局、従来と同じようなレベルの話しか残っていない。このままいけば、 おそらく2年後に、みんなが一生懸命議論してきたものというのは、おそらく全く形に ならないで終わって、また数年後のこういう検討会で同じことを繰り返すことになるだ ろうと思います。私はこのスタートのときに、これまで何回もこの種の検討会で指摘さ れているわけだから、本当に何をしたいのかと、2年前に当時の課長に申し上げて、結 局あまり具体的な意欲というか、決意というのは聞かれなかったのです。ちょっときつ いことを言いますが、このままいくと、おそらく数年後にお互いに困って、せめてデー タベースのレベルで、お互い困っているわけだから組織のエゴを超えて、どこまでシェ アできるのか、どこまではシェアできないのか、どのように使い合うのか、もうちょっ とこの会議をスタートさせられたわけですから、強いリーダーシップの下で、現場機関 も含めて、関係省庁も含めて、もう1回きちんとやってもらわないと、何のために議論 してきたのか、数年後に同じことをやってしまうだろうし、それすらできなければ、況 んや人事にかかわるような問題の人材の供給バンクなどというのはシェアできるはずが ないと思っていますので、簡単でないことは百も承知の話だと思うのですが、是非どう やったらお互いが助かるのか、要するに、共通のユーザーのためにお互いが何ができる のか。もうちょっと真剣に機関の壁を超えてシェアしていかなければいけないのではな いかという気が強くしたので、言葉は荒っぽいですが、是非受け止めていただければと 思います。 ○眞柄座長 人材バンクのことですが、水道分野でも、人材バンクのことについては、 いろいろ議論をしたわけです。そのときに、2つの問題点が浮かび上がってきたわけで す。1つは、いまお話がありましたように、地方自治体の職員がいままでいわゆるOD Aの専門家なりとして働いてきた。人材バンクに、例えば横浜市と登録するのか、横浜 市の何の誰べえが登録させるかという、個人か組織かという問題が1つあります。例え ば組織でいった場合には、横浜市に必ず来年何名だとか、3名だという枠付けがあらか じめ来るのか、来ないのか。個人が登録したときに、登録したけれども、本当に来るの か、来ないのかという、まさに登録しても登録しただけであって、本当に専門家として 行ってくれるかどうかという、要請が来るかどうかという確実性が担保されないとバン クに登録する人はいないだろうということがあります。  そういう意味では、水道分野に限ってかもしれませんが、派遣先が地方自治体である とすれば、3年か5年先に要請が来るような形の、要するに援助の全体のプログラムを、 いまの年度ごとではなくて、もう少し長目のスパンで、水道分野の、ある国に対しては プログラムを作っておいていただかなければ、人の手当てができないということが浮か び上がってきたということだけ申し上げます。 ○小林会員 情報交換の機会ですが、先ほどの中村先生の人材データバンクの質問の答 えの補足ですが、保健医療分野はある意味でかなり資格と専門分野に細分化されていま す。例えば資格だけですと、医師、薬剤師、看護師、保健師等、10を超える国家資格が あり、それはほかの国でもかなり共通な分類になっています。  同じ資格でも、主にシステム構築を扱う公衆衛生系と、実際の現場の技術を移転する 臨床、例えば特に国際協力だと母子と感染症ぐらいには分けたほうがよさそうです。そ うすると、おそらく年間の専門家のニーズは数十ぐらいだとは思いますが、細分化を考 えるとその数十倍。先ほど1,000人、あるいは2,000人という数字が出ていましたが、 バンクのほうとしてはそういう数が必要になってくるのではないかと考えます。あとは 結構異動が多い分野ですので、正確な情報で、しかも個人情報を担保した上で、そのバ ンクを維持することが重要かと思います。その点で、先ほどいくつかそこの問題点が出 ていたと思います。 ○今野座長代理 いまの点で、厚生労働省との関係で言えば、いまおっしゃられた人材 バンクというのは、言ってみると職業紹介なのです。それと同じなのです。ですから、 職業紹介が上手にいくためには非常に重要な要件というのがあって、いちばんの重要な 要件というのは、必要な人材のスペックがきれるかということですね。こういう人材が ほしいというのをちゃんと表現できないとマッチングできません。日本は意外にそれが モヤモヤッとしていたわけですが、そこをはっきり伝えるかということと、もう1つは 働きたいという人の能力も、ちゃんと表現できるかということです。  比較的、保健医療分野は資格などがはっきりしたのでやりやすそうかと思ってお話を 聞いていたのですが、そこが決まれば、あとはマッチングの仕組みは大したことないで すよね。それこそ厚労省の職業紹介をやっているところに行けば、ちゃんとしたシステ ムがあるから、そこであまり苦労する必要はないのではないか。そっちのいまおっしゃ られたデータをメンテナンスするというのは、要するにこういう人がいるという情報を、 いつもどうやって持っているか、こういう人がほしいという情報をどうやって表現する かということだと思います。そのような印象を持ちましたので、マッチングのシステム の仕掛け自体で苦労されることがあったら、厚労省に行ってお聞きになったらどうかと 思います。 ○長谷川委員 いちばん最初にご議論があった課題に戻るのですが、折角3分野の報告 書が出て、それぞれの分野は大変ご努力してお書きになったと思うのですが、この会と しては今後3つをまとめていく方向にいくのかどうかということ。もしいくのであれば、 かなり新しい軸をいくつか考えなければいけないのか。確かに3分野を1つの所でやっ ているとユニークだと言われましたが、それだけではなかなかくっつかない。別のコン セプト、例えば地域開発などというものが入ってくる必要があるのか、ないのかという ことも気になりました。また、もう少し時間軸ですね。つまり、これからの日本が高齢 化をしていって、例えば先ほどの人材の課題にしても、団塊の世代がみんな職を失って、 溢れてくるわけです。そして、海外に出ていくチャンスも増えてくるでしょうし、ある いは東アジアにおける日本の位置が随分変わってくる。中国の台頭とか、MDGが国際 的には言われているものの、国際的な位置づけで、日本とアフリカの関係、日本とアジ アの関係というのは、これから5年、10年でものすごく変わってくるのではないかとい うような時間軸の課題。  それから、実はつい最近知ったのですが、結構こういうことが世界各国で行われてい るみたいで、イギリスのODAは、いま援助のあり方を見直すというのをやっていて、 叩き台を作ってヒアリングをして集めてやっているみたいです。それに関連して、10か 15ぐらいの論文が集まっていましたが、そこで議論がされているのは、やはり非援助国 の声をどう反映していくのか、援助側のコーディネーションをどうしていくのか、テー マをどのように扱っていくのかというような、比較的、援助のあり方、方法論の課題で すが、3分野共通となると、そういう課題も出てくるのか。もし総合的に考えるとすれ ば、少しこれまでとは違う軸で考えていく必要があるのではないかと感じたので、お話 申し上げました。 ○妹尾課長 ほかにありますでしょうか。本日は本当に活発なご議論をありがとうござ いました。今日のご議論は、大まかに言うと、最後に長谷川先生におっしゃっていただ きましたが、折角3分野一緒の研究をしたわけですので、横断的な切り口、あるいは協 力してやれることがもう少しあるのではないかというお話がありました。保健医療分野 の協力をする際の収入確保のための雇用開発、貧困克服と雇用開発、あるいは水道の料 金を払うための労働、そういうご指摘が1点です。後半のほうでは、主に国際協力のた めの人材確保という観点からのご議論で特に人材のデータバンク、事業のデータベース の作成についてのご意見をいただきました。  どの課題もなかなか難しいと思っておりますが、特に3分野で折角このように検討を 深めていただいたわけですので、私どもとしては今回の報告書の中で、さらに検討を深 めるべきだというようなご提言があった点について、今日のご議論の中でもありました が、来年度以降、新たな研究会を設置し、またご議論を深めさせていただければと思っ ております。そのほか、特にすぐにでも取りかかるべきようなこと、あるいは取りかか ることのできるような部分もあったように思いますので、それについては議論を重ねる というよりも、すぐやっていけることはやっていきたいと思っております。時間も過ぎ ておりますが、折角のご指摘等ありましたので、各担当から一言ずつでもお願いします。 ○今井補佐 保健医療分野の先生方におかれましては、人材育成、データバンク、国際 協力の方向性という大きな3つの分野について、いろいろご議論いただき、論点を整理 して大きな方向性を示していただいたという点で、大変意義があったと思っております。 保健の分野と他の分野の連携の話、日本の経験に基づく独自性の発揮といったご意見も、 これまでの議論の中でいただいており、今後の事業の企画・実施の中で活かさせていた だきたいと思っております。どうもありがとうございました。 ○搆補佐 私からは、感想的なことと、今後に向けての抱負を少し述べたいと思います。 検討会が始まったときの設置の考え方を確認してみたわけですが、当初設定されたもの が適切かどうか、それから達成できたかどうか、自分なりに考えてみました。当初の目 標は、評価を行うこと、重点分野を決めること、長期的に人材を育成することでありま したが、これらはまさに時宜を得たものであって、正しい設定だったと思います。労働 分野について事務局の自己評価をしてみると、評価の部分に議論の重点が置かれたとい うことでありますが、これは3つのうち1つですので、形式的にはせいぜい3分の1、 30点にしかならないということです。しかし、この検討会を通じて形式的な評価でなく て、内容をしっかり分析して質的に評価することを学びましたので、改めて、重点分野、 人材の検討には、まず評価手法の確立が不可欠と分析し、基礎を確立したという意味で は、何とか60点ぐらいいただけるかなと思っています。  評価については、当初私どもは国民に対してアカウンタビリティを持つ義務感で試行 始めました。しかしその過程で、実は行政というか、私ども事業計画者、実施者が抱え る苦労を、有識者の方々にわかっていただく機会を得ました。つまり、評価はなかなか 専門的で説明しづらい事項を平易に説明するツールであり、こういうものを得たという 点で、私どもは非常に心強く思っております。評価の試行も決してまだ完成したもので はないと思いますが、今後活用していくことによって、幅広く助言、指摘をいただくツ ールができたということで、非常にありがたいことだと思っています。  今後の抱負についてですが、当初、それぞれの分野でスタートして、独自に検討した 上で分野合同で意見交換をする形をとりましたが、新年度からは、まず厚生労働分野全 体を見わたす形で検討してから各論に移るということであり、共通のテーマである「人 を柱とする行政」に着目したいと思います。さしあたって思いつくのは、例えばグロー バル化にどのように対応していくかということで、当省が扱う以上、経済発展の理想論 に陥ることなく、グローバル化によって影響を受ける人々の視点に立った協力がどうい うものかを考えるのが重要だと思っています。  もう1つは、究極の目標として、人間らしい暮らしをしていくためにどういう協力が できるかという共通の目標をもつことだと思います。それは職域であっても、保健分野 であっても、生活のインフラとして必要なものであっても、結局、受益者は同じである という点に尽きるわけで、その中の連携が不可欠だというのは当然のことだろうと思い ます。折角こういう機会を得ましたので、共通して進めていく部分と、いずれかの分野 が持っているノウハウをほかでも活かしていきたいと思います。ありがとうございます。 ○日置専門官 水道を担当しております日置でございます。この水道分野、期間が3年 間とありましたが、事実上1年半で、駆け足でまとめさせていただきました。その間、 回数で割ると1カ月に1回ぐらいは会議を開いて、水道分野に携わっていただいた眞柄 先生をはじめ、会員の先生方、専門家の先生方、いろいろご協力いただきまして、どう もありがとうございました。報告書の中にいろいろご提言いただいた中で、すぐにやれ ること、やれないこと、いろいろ散りばめられております。これらについてはそういっ たレベルを整理して、国際課のほうでJICWELSに予算付けしている企画物の事業 もありますので、そういった中で役割分担をしていきながら、また国際課のほうでも、 こういった研究会なり委員会なりを追って開くなりして、議論を深めていきながら、こ の報告書をより良い方向に活かしていきたいと考えておりますので、今後とも引き続き ご協力のほど、よろしくお願いします。以上です。 ○金井室長 国際協力室長をしております金井と申します。3年間にわたる長期にご協 力いただき、ありがとうございます。最初に國井先生から指摘がありましたように、セ クターが共同で行うこと、また長谷川先生からご指摘のありました3分野が合同で行う という非常にユニークな会であるということ、我々もそう思っております。経済協力の 面では、1つの分野だけで動くものでなく、貧困の削減のためには当然、医療の分野、 生活基盤が改善されること、また職業の機会があるということが大切だと思っておりま す。現実的には、ケニアで学校保健を通じて寄生虫対策を行うという案件、またラオス で社会福祉と連携した労働政策など、現実的に動いているものもあります。また、セク ターワイドな取組みについては、皆様のご協力を得る部分が必要かと思っております。 今後ともよろしくお願いいたします。 ○妹尾課長 先生方のご指摘を踏まえて、私どもがどう受け止めるかということで、説 明をさせていただきました。時間もきております。以上で今回の研究会を終わらせてい ただきたいと思います。本当に貴重なご意見をありがとうございました。最後に今回の 議事録等について、事務局から説明申し上げます。 ○今井補佐 本日の議事録ですが、速記録ができ次第、先生方に送付させていただき、 必要な修正を行い、厚生労働省ホームページ上で公表させていただきます。また、各分 野の最終報告書についても、最終的に確認を行ったあと、ホームページ上で公表させて いただきます。 ○妹尾課長 それでは、以上でございます。本当にありがとうございました。 (了) (照会先)  厚生労働省国際課国際協力室   室長補佐   今井   協力企画係長 吉村   03-5253-1111(内線7305)