06/03/09 社会保障審議会介護給付費分科会第40回議事録 社会保障審議会 第40回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所 : 平成18年3月9日(木) 午前3時から5時まで           霞が関東京会館 ゴールドスタールーム 2 出席委員:池田、石井(代理:森岡参考人)、井部、漆原、大森、沖藤、 神田(代理:浜野参考人)、喜多、木下、木村、見坊(代理: 斎藤参考人)、田中(雅)、対馬、永島、野中、花井、村川、矢 野、山本、横山の各委員 3 議題  (1)療養病床の再編等について  (2)その他 ○渡辺認知症対策推進室長より資料1の説明。 (大森分科会長)  医療のところで、診療報酬の区分によって変えたということだが、どのくら い下がったか説明してほしい。 (三浦老人保健課長)  診療報酬の関係について、今回は慢性期入院医療に関わる評価ということで、 ADLの区分が3段階、それと医療区分が3段階の、3掛ける3のマトリック スになっている。  基本的な報酬としては療養病棟入院基本料という名称で、その中で医療区分 が一番高い部分では、ADLに関係なく1日当たり1,740点で、医療区分が一 番低い部分、かつADLの区分が一番薄い部分については764点になっている。 (木下委員)  提出資料1ページの下の表「医療保険適用、介護保険適用、それぞれに入院 する患者の状態」で、35.4%、37.8%が「容態急変の可能性は低いが一定の医 学的管理を要する」とあるが、「一定の医学的管理を要する」という部分を今 回は全部切り捨てて、老健や在宅でという言い方をされている。急変の可能性 はなくても慢性期の医療というのは必ず必要なので、それをどこでやるかとい う議論を真剣にしなければいけないのに、それなしで介護療養型医療施設の廃 止が決まって、利用者に迷惑がかからないかという議論が全くされていない。  それから、前に在宅サービスが充実されるかどうかというシミュレーション が全くされていないが、どういう予測をしているのかという質問をしたが答え てもらっていない。医療や介護で働くスタッフの数が減ってきて、介護の職員 が集まらないという現状で、野中委員が指摘されている在宅サービスがどれだ け充実するかという議論が全くされていない。その分が施設に入っていること を前から指摘されているが、その予測がされていないことに不安を覚えている。  介護の現場にどんどん人を引っ張り出すということも言われているが、そこ をむやみに引っ張り出すということは長期的に見れば少子化に拍車を掛け、国 にとってマイナスの要因になるので、そういうバランスも考えていく必要があ るのではないか。  介護保険が介護の社会化ということが目的で挙げられていたが、施設をなく して在宅充実ということでかえって家族に負担をかけているのではないかと いうことが沖藤委員から指摘されていたと思う。しかしながら、その議論が全 くされないで、一方的に介護療養型を廃止して在宅に放り出してしまっていい のか疑問である。  前回、介護保険3施設の比較で、特別養護老人ホームの1か月当たり、1人 当たりの費用が31.9万円、老人保健施設が33.3万円、介護療養型医療施設が 44.2万円という数字が出ていたが、この積算根拠を示してほしい。同時に、特 別養護老人ホームの外出しの出来高部分の医療費がどれぐらいかかっている かというデータも出してほしい。  また、前回資料で療養病床は他の介護保険施設に比べ1人当たりの費用が高 く、療養環境においても長期の療養を前提とするものとはなっていないという 文章がある。介護療養型医療施設の基準は事務局の提案によって当分科会で決 めた基準に沿って運営されているわけで、前提となっていないという責任を取 るのは、少なくとも現場の者ではない。  今日私が出した資料の1ページ「療養病床の環境および人員配置状況等につ いて」の1に4床室当たり平均平米数が書いてある。これは昨年の9月に659 病院で調べた調査で、1人当たり8平米以上確保しているのが全体の42%あり、 介護療養型医療施設が長期の療養を前提とするものではないといった文章に は怒りを覚えているので、事実に基づいた言葉に変えるべきである。  資料「療養病床の再編成」の2ページ真ん中の表で、一番左に療養病床医師 3人、看護・介護6と書いてあるが、これは最低基準で、あえて低い方の基準 だけ書いてあるのはおかしい。  また、介護保険適用13万床、医師3人、看護6対1、介護6対1と書いて あるが、これも5対1、4対1という報酬上の基準があるのに、それを書いて いないのは不正確な資料である。説明の中でも、経過型のところには医師2人、 看護8対1、介護4対1と書いて、介護を厚くするということであったが、現 に4対1という介護も存在し、そこは医師数が減って看護師数が減っている基 準ということになる。  私が出した資料の1ページ「介護療養型医療施設の看護・介護職員配置状況」 を見れば、実際に現場では4対1が566病院で545病棟、5対1、6対1はほ とんどないという状況にあることを認識してほしい。  あと看護、介護について、看護においては125%、介護においても115%の 加配が行われている事実についても認識してほしい。  2ページ「患者100人当たりの人員配置と1人にかかわる時間」では利用者 1人当たりで実際にどれぐらいの時間のケアを受けられるかということを表 しおり、直接ケア、間接ケア、記録、準備等の時間がすべて入ったもので、医 師については医療療養では9分、老健では3分、看護職員については医療では 74分、老健で30分、介護職員も同じような数字が出ている。これだけ差があ るものを一気に転換すると、最終的には、医師の関わりは3分の1、看護と介 護を合わせても3分の2の時間しか関われないことになる。こういう状態で介 護療養型医療施設を利用している患者の医療やケアが十分にできるかどうか ということは今後慎重に検討しなければいけない。  老健の医療の在り方については検討するようにと書かれていますが、以上の ような資料から医療提供の在り方については慎重に考えないと、悪くすると社 会混乱を起こす可能性もあるので、そこは慎重に審議していただきたいと思い ます。  かつて認知症ケアには回廊式でなければならないと言われ、最近になってそ れは否定されている。介護療養型医療施設についても介護保険が始まって6年 で廃止という、前に言ったことを否定する動きが出ている。  ユニットケアについても今、盛んに言われているが、これも廃止と言いかね ない。ユニットケアを進めるのならばどういう介護の状況の人にユニットケア がいいのか、あるいは費用対効果のデータを出さなければいけないと思ってい るので、その辺も含めて今後の審議をお願いしたい。 (三浦老人保健課長)  在宅サービスの充実ということで、前に質問いただいた部分については今後、 介護保険事業計画などを含めて計画的にその整備を進めていくというのが基 本的な考えであると思っているが、一方で今回の介護療養病床の廃止、療養病 床の再編成という観点から在宅医療をどういうふうに考えるかという点につ いては、現に入っておられる人を追い出すような形で在宅で受けていくという ことでは決してない。むしろこの再編成は6年間かけて転換先を確保しながら、 ゆっくりと行うべきだと考えている。入院患者が追い出されるというような事 態が生じないようにするということを大前提として考えている。  それぞれの施設の医療の在り方などをどう考えるかについては、今回国会に 提出されている法案の中にも附則として入っていて、今後検討していくことに なると考えている。  資料の中での人員配置の体制などについては、まず最低基準としてどう考え るかを示しているところであって、実態としてそれを上回って整備されている 施設があるということは言うまでもないし、手厚い対応をとっている実態があ るということも無視しているわけではない。あくまでも最低基準をどこに置く かというところがまず基準になるので、その対応について示しているところで ある。 (木下委員)  最低基準を書くだけでは実態を示していないので、ここは変えてもらいたい。 最低基準で介護6対1というものを4対1に変えるということで、介護の基準 を厚くするというような説明はとんでもないと考えている。 (大森分科会長)  先ほどの8対1、4対1というのは、この中では変わっていないけれども、 相対的に介護の方を厚くしたという説明で、従来と比べて介護を厚くしたとい う意味ではないのではないか。 (木下委員)  恣意的に介護を厚くしたというような言い方をされるのは不満である。最低 基準だけ示しておけばいいというものではなくて、現状を把握してもらわない とおかしいと思う。報酬上も3区分あり、それに基づいたケアが行われている という事実は認識してもらわないと、ここにも最低基準とは書いていないので 表現の仕方としては不適切だと思う。 (三浦老人保健課長)  実態として様々なものがあるということは指摘のとおりだと思うが、制度上、 最低基準によってある程度定義してしまうので、最低基準を基本に置かざるを 得ないということを理解いただきたい。 (木下委員)  それならば、最低基準という言葉をここに入れないとこれが標準と理解して しまう。 (大森分科会長)  今後現場がどうなるかという指摘で、いろいろ検討すべきであるという話で あるが、附則を見ると、政府が検討をすると書いてあるので、結局ここで検討 することになるのではないか。 (三浦老人保健課長)  今後、国会での審議でこの部分についても議論していただくことになると考 えていて、国会での議論などを踏まえて今後の方向について考えていきたい。 (野中委員)  大きな問題は検討の仕方のステップだと思う。平成18年度に施設を必要と される方が平成24年度に減るのであればわかるが、実際には増えるはずなの に、どうしてこういうことを考えていくのか。施設に入っている人以上にこれ から施設に入る予定の人をどうするのかという議論がない。結局費用を削減す るだけの話では、国民に迷惑がかかる。  そこで、在宅を充実しようということは十分理解しているが、一方で施設の 入所判定をしたときに、ある家族が言ってきたことは、今度孫娘が結婚するの で同居したい。今在宅にいる親を施設に入れれば娘と同居できるから入れたい、 あるいはもう介護は疲れた、この介護を続けるのであれば離婚するしかないと か、病状とは関係なく施設を利用されていた現実がある。  そのことに対して国がそれを解決しようとしたか。平成12年度に介護療養 型医療施設とか、あるいは介護3施設でそういう方を引き受けたのではなかっ たか。これから高齢者が増えていく実情の中でどうしてこういうことを考える のか。在宅、地域で暮らすために、家族が一番苦労しているのは、人間関係で あり、そして経済的な問題ではないだろうか。  介護保険部会で前に提出された資料の中で医療経済研究機構調査があって、 在宅生活への復帰または継続を可能にする条件という図があり、調査対象の 332名のうち入院・入所のきっかけがあって入院・入所されたのが41名で、そ の中から在宅復帰された方が10名とある。在宅復帰を可能とするための条件 としては、本人の症状、在宅支援体制、本人の意欲、家族の協力と書いてあり、 在宅支援体制に対してはサービスの増加・充実とか、24時間対応、医療的ケア でありこれは理解できるが、家族の協力というのはその解決方法について並行 して考えていかなければ、おかしいのではないか。2月2日の日経新聞にも、 社会的な入院についての記事があり、病状が安定して入院の必要性が低いのに、 家族の事情や地域の福祉体制の不備で療養先がないといった理由で入院を続 けている状態と書いてある。  この状況は、先ほど施設の入所判定をしたときに出た状況と何ら変わってい ない。病院が本来とは違った形としてやったことがいいかどうかは別としても、 行政が福祉で対応すべき部分を医療保険で代替えしていたという事実もある ので、社会的な入院を全部医療関係者の悪だというのであれば、それをつくっ た責任はどこにあるのか。その検討をした上で、療養病床の廃止について話し 合うのであれば理解できるが、その施設の入所を止めようということであれば、 それは行き場所を失って難民をつくるだけではないか。高齢者がこれからはも っと増える中で、なぜその行き場所を閉鎖するのか。病院から出ていくことを 医療従事者、病院とか施設だけに任せるのではなくて、国民が皆で協力して取 り組むべきである。  だから、今回の提案では不足であり、国民に対してひどい仕打ちだと思って いる。これから厚労省が社会的な入院に対して、家族の協力や本人の意欲をど うやって増すように努力するのか示してほしい。 (三浦老人保健課長)  現に入っている方を在宅に追い出すというような形でこの転換を進めると いうことでは決してないということを理解いただきたい。  医療の必要性に着目しながら、医療の必要性の低い方をどういう形で施設で 継続して預かっていただくかということから考えれば、その場が病院でなく、 例えば老健等の施設に転換しながら、引き続きそれらの方の入所を図っていく ことがまず第一義にあると考えている。  その上で在宅に戻れる方がいるのであれば、その支援のために在宅サービス の充実にも努めていくことが必要であり、現に介護療養型に入っている方をす べて在宅に振り向けていくということでは決してない。むしろ引き続き施設入 所が必要な方については引き続き入っていただくこととし、これから高齢化が 進む中で施設ニーズそのものは数としてはますます増えるだろうと思ってい る。そういう意味で、施設の整備については計画的に進めていく必要があるの ではないかと考えている。 (野中委員)  中村前老健局長と話したときに、共通した認識で残念だと思ったのは、昭和 26年に在宅で死亡した方は75%であったが、平成8年の調査ではわずかに 13%だった。この在宅死ということに関しては大切なことだと思うが、現実に は病院で亡くなることを選択せざるを得なかった状況の中で、療養病床がほか の施設と違う点としては、療養病床は3人の医師の中で当直があって、24時間 体制で看取っているところである。老人保健施設や特別養護老人ホームはまだ 完全な体制ではないので、簡単に療養病床の役割を見失うのはいけないし、療 養病床では3日に1人が亡くなる状況があるので、その施設の役割を再度認識 すべきである。医師の当直が無駄という話になるのかは最終的には国民が決め るべきことであり、今後どう検討していくのかということを答えてほしい。 (三浦老人保健課長)  例えば在宅で亡くなられるから医療がないかというと必ずしもそうではな いだろうし、施設であれば医療があるかというと必ずしもそうではないだろう。 問題は、医療が必要な方に的確に医療が提供される仕組みが重要なのではない かと考えているので、野中委員が言われた視点から今後の検討の中でどういう 形で医療提供をしていくのかについても議論になるものと考えている。 (野中委員)  在宅で死を看取る医療がないと言われたら憤慨するが、最終的には国民がど こで死ぬかという選択をしているのかを理解してほしいと思う。やはり家で死 にたいとか、そういう状況になるということは大事なことだが、その途中の議 論をしていないということについてもっと考えてほしい。  高知県の医師の話であるが、高知県は療養病床が全国に比べて非常に多いと ころであり、高知県の人にとって療養病床で人生の最期を全うするのが文化だ と言っていた。  そのことが正しいとは思っていないし、それが間違っているならば間違って いると直したいが、今のやり方で直るのかということを聞きたい。そのために はもっと時間が必要ではないかと思っているので、その辺はよく理解してほし い。 (喜多委員)  療養型病床群をつくっていけというのは市町村が関わったような発言があ ったが、その部分は訂正をしていただきたい。これは国の医療行政と介護保険 をつくるときにその整理が十分にできていなかったから、今この議論が始まっ ている。  それから、看取りの場所については、私みたいに戦争中に育った人間からす れば自宅で死にたいが、若い世代はそうは思っていない。それは住宅事情もあ るし、また自分たちが苦労しなくても簡単に病院に入れてそこで看取ってもら えるということもある。  初めに、介護施設はうば捨て山にならないかという議論があり、そういう可 能性があることは言っていたし、また、お金があれば親を捨ててもいいという 風潮になった戦後の教育自体に問題がある。  療養型病床群の患者が医療、介護のどちらかという議論が一番初めの老健審 の時にあり、それは医療であれば医療でやるものと主張していたし、もともと 私の信念は1枚の保険証でやってほしいと考えていた。しかし、医療と介護と 分けるならばどちらになるのか、そのときに、医療と介護の区別はできるとい う説明があった。  今回出ているデータを見れば、介護型も医療型もほとんど変わらない。そう したら、あのときの議論は何だったのかと思う。  現在は医療と介護2つの制度があるから、介護だけ考えるということになれ ば医療の部分は外して医療から見ればいい。介護は介護だけでやるならば介護 型の療養型病床群は要らない。当初から要らないと言っていたが、その辺の議 論が足りないと思う。  今度はまた75歳以上の後期高齢者の保険証もつくるようだが、なぜそんな に混乱した制度にするのか。もっと一本化ですっきり整理するとか、社会保障 審議会で十分に検討してほしいと思う。 (池田委員)  先ほど野中委員からも言われたように、これから高齢者が増え、要介護高齢 者も増えて、施設ニーズも増えていく。これは間違いのないことだと思う。現 在3施設で80万床、それに特定施設、グループホームを入れて15万、そのほ かに高優賃等含めて、施設居住系サービスは100万くらいあるだろう。  欧米と比較してみると、欧米は基本的に6%から7%居住系サービスを持っ ていて、平成24年を考えると高齢者3,000万人と見ると200万くらいの数に なる。  日本の場合は三世代同居がかなりまだ残っているので、欧米並みと考えても 施設居住系サービスのニーズは150万くらいまでいってしまうと考えるのが普 通だろうと思う。  ここで問題なのは、居住系サービスというとどうしても施設を考えてしまう が、ヨーロッパ、アメリカで施設というのは有料老人ホームで、ケア費用しか 出していない。そういった意味では日本の施設と比べるのはもともと間違って いるということである。  オランダなどでは、要するに高齢者向けの集合住宅で、2DKくらいの間取 りで、ベッドルームとゲストベッドルームとリビングが付いている。そこで必 要に応じて要介護状態になった場合、外付けもしくは準内蔵型と言った方がい いかもしれないが、建物にホームヘルパーセンターやデイセンターが付いてい てそれを利用する。  そうすると、6年後に今の施設系サービスを1.5倍に増やしていくというの は非常識な話で、財政的にももたないということははっきりしている。今度の 療養病床再編というのは居住系サービスをどう充実していくかということが 重要な問題であって、その居住系サービス充実の具体的なイメージとプロセス が明確にされる必要があるのではないか。  第2点目に、特別養護老人ホームの待機者の実態について、3分の2くらい は施設で待っている。つまり老健や療養型病床群で待っていて、老健は第2特 養、療養型病床群は第3特養という構造になっている。これはもう一回整理し なければいけないし、先ほど高知の療養病床が文化と言われるのは理解に苦し むが、確かに高知県は最も少ない宮城県の13倍療養病床があり、それは異常 な多さとしか言いようがない。  療養病床が文化的な高知のお年寄りが幸せで、宮城県では療養病床がないか ら高齢者は途方に暮れているという話は聞いたこともないわけで、端的に言っ て療養病床の医療型はきちんと残していくわけだから、そこで療養型病床の意 味は残っていくと思う。  給付分析を私はずっとやっていて、高齢者の元気度というものを調べてみた。 高齢者の元気度というのは、重度要介護者の年齢補正をした出現率が大体わか るもので、一番元気度が高いのは香川県、次に福井で、元気な老人が多いとこ ろは介護保険給付は低いだろうという仮説を立てるが、全く相関関係はない。  では、一体どこに相関関係があるのか調べてみたところ、非常に高い相関関 係を示したのは医療系施設の給付が高いところが高い。医療系施設が介護保険 の財政に大きな圧迫を与えているのは間違いないし、野中委員がお金の問題だ けで見てはいけないと言うのもそのとおりだと思っている。  一方で、財政的に見ても療養型病床群の問題は早晩手をつけなければいけな い。問題はこれから居住系サービスをどうやって政策誘導的につくり上げてい くか、これが厚生労働省に望まれることだと思う。  最後に、施設と在宅というのはどこが違うかについて、巡回型サービスや小 規模多機能サービスを使うと、基本的に施設の地域化という構造を持っている から、それで施設の機能は大体カバーできるが、たった1つだけできないもの として、介護保険は家族の代行をできない。欧米では子どもは外に出るから、 残っている親には社会的な介護が入りやすい。  ところが、三世代同居では、本人のケアという問題のほかに家族のストレス という問題があり、これを施設は家族から分離することによって解決している。  それをうば捨て山とは言えないし、基本的にそういう方向は否定できないと 思うが、家族の負担をどう軽減するかがセットされていないと、施設志向とい うのはそう簡単に止まるわけではないし、居住系サービスも家族との分離とい うことをきちんと考えてやらないと、絵にかいたもちになってしまうのではな いかと感じている。 (山本委員)  療養型病床で介護と医療と分類すべきであるというのは、当初から言ってい る。  高齢者になるといつも病気があるような感じになり、高齢者しか介護を受け ないという一つの世界があるから、どうしても介護を受けると病人のようにな ってしまう。そこで医療と介護が一緒になってしまうというようなことになっ たのではないかと思われる。そこをきちんと分離すればよかった。  それからもう一つは、社会的入院というのは昔からあったもので、たしか50 年くらい前からあったと思う。  例えば老夫婦がいて、妻が病気で入院したら、主人一人では生活できないか らという理由で一緒に入院していた。帰っても一人で生活ができないというこ とで社会的入院という病名がつくられた。  介護保険をつくるときに、社会的要因で入院している人たちが10万人いて、 この人たちを解放するために介護保険をつくるという話を最初のころに聞い た。当時は病気でない人を病院に入れているということだから、今の介護とい うものが必要になってきたんだという理解をしていた。介護保険制度ができて 5万人の社会的要因で入院している人たちが介護に転換をしていった。まだあ と5、6万くらい残っているという実態があるとするならば、介護でいいもの を何で医療と介護を同居させながらやるのか、理解ができなかった。  私は当初から介護も医療も一緒になって報酬を支払うべきではないという 主張をしてきた。これは技術的に問題があると思うが、介護かあるいは医療か という診断を一体だれがどうやるかということが一番気掛かりである。医療で この人はやればいい、こちらは介護だけでいいという診断もしくは判断をどう するか。本当の意味での介護と医療との分離はできないのではないだろうか。 そういう意味では、むしろ療養型病床だけやっておけばいいという人も中には いると思う。本来の診療所としての役目を果たさないで療養型だけやっておこ うということも聞いたことがあるが、ここは検討する必要があると思う。  当初から、そういう診断のやり方等に問題点があって今日こういう議論をし なければならないようになったのではないかと思うが、この際、医療と介護は きちんと分けるべきだと思う。介護は介護でやり、医療は医療でやる。その技 術的な方法については厚労省が真剣に考えて、専門家の知識を借りながらつく り上げていくことが必要ではないか。  今日の資料に幾つか例示してあるが、一つの目安として出されているもので、 これにこだわって議論をする必要はないと考えている。一番いいのはどれかと いうことをお互いが見出した上で議論をして積みかねていけば一番いいもの ができるのではないだろうか。これが出されたからこれでどうだというよりも、 むしろこれよりもより高度なものを我々は考えなければいけないと思う。  厚労省側もまだ法律が国会で審議中で、内容についてきちんと言えない立場 もあるので、それは理解しているが、療養型病床については医療と介護をどう 分類していけばいいのか、また技術的にはどういう方法でやれるのかという資 料を出した方が、今日のイメージ図を出すよりも効果的だったと思う。次回は そういうことで話が進められるように取り計らってもらいたい。 (井部委員)  医療と介護をはっきり分けるというのは、看護は医療にも関わり、介護にも 関わっているので非常に線引きが難しい。  まず在宅医療の充実についてどうするかという問題がある。介護療養病床の 再編は6年間の移行期間があるが、この期間に地域の療養環境の整備、特に在 宅医療の支援体制が十分に推進されないと、多様化する施設や在宅において適 切なサービスが受けられない利用者が出てくるのではないかと思う。療養場所 に対する利用者のニーズの把握、それから居住系サービスを含む在宅医療の充 実が前提になるし、利用者に対して病床転換の方針等を正確かつ迅速に説明し ていかなければならないと考えている。  次に、利用者へのサービス提供に関わる看護・介護職員の支援について考え なければいけない。利用者のサービスの提供の中心的な役割を担っている看 護・介護職員の異動がスムーズにできる体制の整備が必要であり、特に看護職 員については介護療養病床から医療必要度の高い重度者を受け入れる病床に 移行する必要が生じるので、そのための情報提供あるいは研修体制などの整備 が必要と考えている。医療必要度の高い重度者を集中して受け入れることにな る医療療養病床の職員の質と量の確保についても検討する必要がある。  今日の資料で経過型介護療養施設の配置の人員が最低基準となっていると いう説明があったが、ここで看護は8対1という基準が示されており、医療保 険の適用が看護は4対1で、経過措置の施設が看護は8対1となっている。ど ういう考えからこの数値が出てきたのか説明をお願いしたい。 (三浦老人保健課長)  療養病床については医療法上は6対1、診療報酬、介護報酬では5対1ない しは6対1となっている一方で老健施設は書きぶりが少し難しいものになっ ていて、看護、介護で3対1を確保した上で、おおむねその7分の2は看護職 員とされており、これを純粋に当てはめると10対1程度になる。そこで介護 保険適用の6対1、老健施設の10対1から考え、適当な体制という形で8対 1を示している。 (井部委員)  医療保険では実質配置という考え方で、6対1とか8対1が実質的にはどの くらいの入居者を受け持つことになるのかというと、かなり多人数の世話をし なければならない状況になるので、経過措置といえども看護の8対1というの は低過ぎるのではないかと思っている。 (沖藤委員)  死に方の文化の問題については男性と女性とでは随分考え方が違うのでは ないかと思っている。  多くの場合は、老夫婦になって1人残るのが女性で、男性の独居が増えてい るとはいえ、やはり圧倒的多数が女性であり、療養型病床群の8割以上は女性 が入っていると思う。我が家で死にたいと思っても不可能な状況にある。  家族と言っても家族が高齢化しているわけで、更に親としての見栄があり、 うちの親は息子、娘孝行であったと言われたいという親の思いは非常に強烈な ものがある。  男性と女性とでは死に方のロマンが違うと考えていて、先ほどの高知県の先 生が言われたのは女性のことを考えてくれているのではないか。それに対して 違和感を持つのは男性のロマンで考えているのではないかという気もした。  最期まで女性が一人暮らしで我が家で一人で死ねるかというと、私は自信は ない。最期の何か月間かはどこかに入らないと、その精神力がもたない。もし この政策を通していくのならば、精神力を鍛えるところから始めないとうまく いかないのではないかという気がするし、余りそういうところは鍛えられたく ないと思う。  先ほど池田委員から、療養型病床群は第3特養になっていると言われたが、 老健も療養型病床群も特養に入るための待機場所になっているという現実は 否定できないと思うのに、特養を増設して整備していこうという明確な姿勢が 感じられなくて不安に思っている。  今日のテーマは療養病床の再編成であるが、長期療養とその死に方のところ を区分して、一体女性高齢者はどこで死ねばいいのかということを教えてほし い。特養の増設計画に力を入れてもらわないと、安心してこの案は了解できな いと考えている。 (川尻計画課長)  特養については、全国的に見て整備されてきたが、都市部で不足していると いうことは確かである。  これから特養を全国的に増やしていくことは考えているが、その中でも整備 が進んでいる地域とそうでない地域があるので、足りない地域ではつくってほ しいということで介護保険事業計画あるいは支援計画を立てるときの考え方 でも示しているし、三位一体改革で特養に対する助成金が都道府県の判断とい う形になったが、都道府県でも適切に判断されるものと思っている。 (矢野委員)  6年をかけて実行していくことについては、既にある状況を変えていくこと になるので、試行錯誤があると思う。その間に、配慮しなくてはならないもの として、国民の意識、地域の事情、患者・利用者の状態、病院の実態等がある。 いろいろ配慮しながら、複雑な計画をつくって実行していかなければ、実現が 難しいだろうと思う。  ある程度の試行錯誤は避けられないので、年次計画をつくって、それを基に、 その都度検証していくプロセスが必要ではないだろうか。その中身については 公表をして、いろいろな人の意見も聞くことによって、実現性が高まっていく だろうと思う。 (漆原委員)  施設ニードに関して、まず施設不足の時期には特別養護老人ホームをつくる のに補助金が必要で、年に1、2個しか各都道府県や各市町村ではつくること ができなかったが、その当時老健施設や療養型病院は長期療養の場として期待 されていたのは当然で、地域によっては、特養の整備よりも老健の整備の方が 先に進んだ、あるいは療養型病床の数が増えていったという背景があるという ことを理解してほしい。  老健の機能について、確かに在宅支援の機能を最優先に押し出そうというこ とはどこでも言っているが、地域のニードということで考えるならば、老健施 設での長期入所のニードが相当高いということは言わざるを得ない。  昨年10月に居住費、食費が自己負担化されたときに、個室、室料、ユニッ トケアの議論があった。昨年の11、12月頃に老健施設の個室に空床が目立つ 時期があったが、もっと費用負担の高い特定施設やグループホームの個室は埋 まっていた。  その理由としては、老健施設はたった2、3か月しかいられないから、個室 料まで払って入れたくない。だから、老健がずっと預かると言った途端に空き 部屋は埋まっていく。  そういうニードがあるから施設をどんどん増やせというのもだめな話だが、 施設があると入ってしまうから施設をやめさせるというのも変な議論だと感 じている。国民の施設に対するニードについて考え直さないといけないと思っ ている。  老健が第2特養化しているという話であるならば、ショート利用も家族のニ ードを考えると、いつかは特別養護老人ホームに入りたいと思っている。在宅 で続けていってもらうには、家族の負担をどう減らしていくかを考えないとい けないのではないか。家族の一番重い負担というのは喜びがないことで、例え ば感謝の言葉や反応がないとかであり、そういうデリケートな部分を制度の中 に入れるのは難しいが、施設の議論をするときには必要だと思っている。  今回の療養の再編問題については、利用者が困らないようにしていくのが第 一と思う。今後、いろいろな仕組みがあるので一概には言えないが、相当数の 病院は閉院するのではないかと考えられるので、老健に転換するとか、ベッド の名前が変わるといったことだけでは解決しないのではないかと思っている。  先ほどターミナルケアの話が出ていたが、転換先とされる老健施設がターミ ナルケアまで担えるようにするには、施設、設備、人員基準について十分議論 すべきだと思う。  最後に、療養型も老健の場合も、地域格差の問題があるので、この辺のとこ ろも配慮するべきと思っている。 (花井委員)  介護保険ができれば社会的入院がなくなるということが強調されたが、そう ではなかったというのが資料の数字だと思う。一番の問題は医療の必要ない方 が医療機関にいるということ。医療機関は治療をする場であって生活する場で はない。そこで六百何十日以上も生活をしているということが、本当に高齢者 の尊厳という観点からあるべき姿なのだろうかと。  ただ、日本の福祉が非常に貧しくて基盤整備が追いつかなかったので医療機 関が受けざるを得なかったとも理解できるので、転換に当たっては先ほど矢野 委員の指摘のように年次計画を立てる等、丁寧にやっていく必要があると思っ ている。  最期の場所は、医療と介護がきちんと提供される施設であれば、もう少し広 いスペースの中で選びたいと思っている。  それから、追い出しが起こるのではないかという点について。入っている方 も不安を持っているので、そこに対してはそうではないというメッセージをも う少し強く出してほしい。 (木下委員)  今日は療養病床の再編ということが議題になっているが、今後の課題として 介護保険施設一本化でその中でどういうサービスをしたらいいかということ も検討してもらいたい。 ○ 渡辺認知症対策室長より資料2に沿って説明 (山本委員)  療養病床再編成の資料3ページの一番下の枠の中に「市町村交付金の実施」 と書いてあるが、こんなことを書かれて市町村は受けるわけにはいかないと思 っている。  恐らくこれは三位一体改革で、この部分は一般財源化に変えた部分を含めて 言っているのではないかと思っている。それでは、市町村の方で責任を持って そういうものはやれというのと同じである。国が今までどおりやっていくなら ばこんな文句は使わないはずなので、三位一体で施設費の一般財源化は決まっ ているが、それとはどういう関連があるか教えてほしい。 (川尻計画課長)  市町村交付金の関係については今後御相談しようと思っているが、療養病床 の再編を進めるための国の助成金ということで、特段市町村に負担をお願いす るということは考えていない。都道府県交付金は廃止されたので、市町村の助 力は得るが、負担はない形で、療養病床の再編を進められないかと考えている。 (山本委員)  それはだめでしょう。問題として提示しておくので、覚えておいてください。 (喜多委員)  これは三位一体ではなくて四位一体である。 (野中委員)  資料2の最後のページの、医療提供の在り方は大事な認識と思っている。  ただ、この検討の提案が早急過ぎて、本当にこれをきちんと検討してくれる のか不安である。先ほど喜多委員が言われたように、医療が必要な人には医療 が適切に提供されて、生活を支える部分では介護を提供するということが大事 であり、そういう中で施設の在り方を考えるということは重要なことだと思う。  ただし、施設にとって資金を投入して新たな形態にすることが本当に適切か どうか疑問に思う。各々の施設がどういう機能を果たしてもらうかということ を余り協議しないで、施設の人員や設備基準等を協議していることはおかしい。 施設は病気や障害を抱えた人にとってどういう役割をするのかということを 協議してほしい。 (大森分科会長)  先ほど池田委員からも、居住系サービスをどう充実させるかという発言があ り、木下委員からも施設の今後についての発言があり、いろいろ給付費のこと を考えるときも前提になることがどう定まっていくかということが重要であ るが、本日のように各委員から意見が出てきたので、それを国もきちんと受け 取って、いろいろな意味で検討を進めていくことになると考えている。  次回がいつになるかは国会によるが、多分国としては介護療養型医療施設の 経過型類型について諮問があるのではないかと予想している。もしそうなれば 分科会を開かなければならないと考えているがどうか。 (三浦老人保健課長)  今、分科会長から話があったとおり、次の分科会については法案が成立した 後、この場で諮問したいと考えている。 (沖藤委員)  最後に1つだけ要望事項であるが、訪問介護の機能や福祉用具については、 それを利用している人、実際に介護している人、事業者等多方面に関わる調査 研究であってほしい。 (古都振興課長)  今後の検討の参考にしたい。 ○大森分科会長より閉会の宣言 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係 TEL03(5253)1111(内3948 3949)