06/03/08 第29回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第29回厚生科学審議会科学技術部会  議事次第 ○ 日  時  平成18年3月8日(水)10:00〜12:00 ○ 場  所  厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階) ○ 出 席 者   【委 員】 矢崎部会長         今井委員 垣添委員 加藤委員 金澤委員 北村委員 倉田委員         笹月委員 佐藤委員 永井委員 長尾委員 長谷川委員 松本委員         南委員 【参考人】 高坂委員(ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会) 【議 題】 1.厚生労働科学研究の成果目標等について  2.ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(案)について 3.厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(案)について  4.遺伝子治療臨床研究について  5.研究開発機関の評価結果について  6.戦略研究課題の進捗状況について  7.厚生労働科学研究における不正に対する今後の方針について  8.「独立行政法人に係る改革を推進するための厚生労働省関係法律の整備に関する    法律案」について 【配布資料】  1.厚生労働科学研究の成果目標等について  2.ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(案)について 3.厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(案)について  4.遺伝子治療臨床研究実施計画の申請について(札幌医科大学附属病院)  5.研究開発機関の評価結果について(国立がんセンター研究所)  6−1.厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患等総合研究事業      (糖尿病予防のための戦略研究)の進捗状況について  6−2.厚生労働科学研究費補助金 こころの健康科学研究事業      (自殺関連うつ対策戦略研究)の進捗状況について  7−1.厚生労働科学研究費補助金における不正経理等の取扱いについて(案)  7−2.研究上の不正に関する対応について(案)  8.「独立行政法人に係る改革を推進するための厚生労働省関係法律の整備に関する    法律案」について 参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿 参考資料2.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針 ○林研究企画官  おはようございます。時間になりましたので、ただいまから「第29回厚生科学審議会 科学技術部会」を開催させていただきます。まず、後ろで傍聴しておられる方々にお知 らせをいたします。傍聴に当たりましては、すでにお配りしております注意事項をお守 りくださるようお願いいたします。  委員の先生方には、ご多忙の中お集まりいただきまして御礼を申し上げます。本日は 井村委員、岸委員、黒川委員、竹中委員、中尾委員、橋本委員から事前にご欠席の連絡 をいただいております。委員は全部で20名ですが、出席委員が過半数を超えております ので会議が成立いたしますことを、まずご報告させていただきます。  本日は、議題2で「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(案)」の審議がござ います。その関係で、「ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会」か ら高坂委員に参考人としてご出席をいただいております。  続きまして、本日の資料の確認をさせていただきます。机上に配付いたしました資料 のいちばん上が座席表、その下が第29回厚生科学審議会科学技術部会の議事次第です。 本日の配付資料は資料1〜8、そして参考資料が2つございます。資料1は、厚生労働 科学研究の成果目標等の資料です。2が、ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針 (案)。3が厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(案)。4が、札 幌医科大学附属病院から申請のあった遺伝子治療臨床研究実施計画の資料。5が研究開 発機関の評価結果ということで、国立がんセンター研究所の評価結果の資料です。6− 1と6−2がそれぞれ、糖尿病予防のための戦略研究、自殺関連うつ対策の戦略研究の 進捗状況の資料。7−1と7−2が厚生労働科学研究費補助金における不正経理等の取 扱い(案)、研究上の不正に関する対応についての案です。8が独法関係の法案の説明 ペーパーです。それに参考資料が2つです。そのうち資料1と「部外秘」と書いた委員 限りの資料は、明日開催される内閣府総合技術科学会議の基本政策専門調査会の第4回 ライフサイエンス分野推進戦略プロシジェクトチームで配付される予定の資料です。こ れはまだ未定稿でして、後者の部外秘の資料は、内閣府より、明日の会議の開催まで部 外秘扱いとされているため、委員限りの配付として、会議後に回収してほしいと要請さ れております。したがいまして、傍聴者の皆様には配付できませんので、ここであらか じめお断りさせていただきます。  また、本日配付させていただいた資料として、「Nature Medicine」のカラーコピーが あります。これは矢崎部会長からいただいた、糖尿病戦略研究に関するペーパーのコピ ーで、これは後ほど、戦略研究の議論のところでご紹介いただけるものと思っておりま す。配付資料は以上ですが、資料の欠落等がございましたら申し出ていただきたいと思 います。以降の議事進行は、矢崎部会長にお願いいたします。 ○矢崎部会長  おはようございます。期末の大変忙しい中、ご参加いただきありがとうございました。 早速、議事に入りたいと思います。議題1は「厚生労働科学研究の成果目標等」ですが、 まず事務局から説明をお願いします。 ○林研究企画官  資料1をご覧ください。まず1頁の下のスライドですが、前回2月1日にご審議いた だいた厚労科研のライフサイエンス分野などの成果目標を、部会後、私どもから内閣府 に提出いたしました。内閣府では、各省から提出された成果目標等を取りまとめて、現 在、政府全体の第3期科学技術基本計画における分野別推進戦略を検討中です。  2頁の上ですが、分野別推進戦略というのは、第3期科学技術推進基本計画の中で科 学技術の戦略的重点化を図るとされた政策課題対応型研究開発について、この下の図に あるように、ライフサイエンス等重点推進4分野と推進4分野という8つの分野を選択 し、さらに2に書いてあるように、分野内での重点投資ということが求められています。  同じ2頁の下のスライドは、分野別推進戦略の検討状況です。上のほう、◆印がある 所は重要な研究開発課題ごとに、最終的な社会・国民への目標、つまり成果目標を設定 し、重要な研究開発課題に対する各省の研究開発の推進が、政策目標の実現に貢献する ことが期待されております。その下にライフサイエンス分野の重要な研究開発課題とい うことで、白い四角で囲ってある所ですが、がん、免疫、アレルギー疾患等の国民を悩 ます重要な疾患に関する研究開発を例に取りまして、下の研究開発目標例から成果目標、 政策目標へとつながる一連の流れを示しております。これはあくまでも例示ですので、 今後の総合科学技術会議での議論によって変更が入ることはありますが、一応、例とし て挙げさせていただきました。  3頁の上のスライドは、分野別推進戦略の検討状況の2つ目、戦略重点科学技術と推 進方策についてご説明いたします。まず上の◆印ですが、重要な研究開発課題の中から 戦略重点科学技術というものを絞り込みます。戦略重点科学技術というのは、括弧の中 にあるように、基本計画期間中の5年間に集中投資の必要がある研究開発のことを言い ます。これに該当するための要件が、その下に3つ書かれております。1つは、社会・ 国民が直面する課題に対し、迅速・的確に対応するためのものであるかどうか。2つ目 が国際競争に勝ち抜く上で不可欠なものかどうか。3つ目の国家基幹技術と申しますの は、例えばスーパーコンピューティング・システムや宇宙輸送システムなどの国家的大 規模プロジェクトのことで、厚労省関係では該当はございません。  2つ目の◆印ですが、「活きた戦略」とするための推進方策というものを検討してい ます。例えば、個別分野ごとの人材育成政策、制度的隘路の解消といったことがその中 で並行して検討されています。  3頁の下のスライドは、今後の予定です。次回3月22日の総合科学技術会議本会議で、 分野別推進戦略が決定される見込みです。決定後は、平成18年4月から関係府省におい て、分野別推進戦略に沿って政府研究開発を戦略的に推進していくという運びになりま す。4頁に基本計画及び分野別推進戦略の検討スケジュールを付けてあります。  次に資料1の委員限り配付の「部外秘」と記されている資料をご覧ください。1頁が いま説明したライフサイエンス分野の戦略重点科学技術(案)です。戦略の理念は4つ あり、(1)が生命のプログラムの再現、統合的全体像の理解で生命の神秘に迫る。(2)、こ れは厚労省も大いに関係する部分ですが、研究の成果を創薬や新規医療技術などに実用 化するための橋渡し。(3)が革新的な食糧・生物生産技術の実現、(4)が世界最高水準の基 盤の整備です。  2頁以降は、各戦略重点科学技術の具体的な候補と内容、それから選定理由。これは 先ほど申し上げた、社会・国民のニーズに迅速・的確に対応するものであるかどうか、 国際競争に勝ち抜くために不可欠なものであるかどうか、そのいずれに当たるかという ことがここに示されております。  7頁以降が推進方策です。例えば(1)として、臨床研究推進のための体制整備とい うことで、支援体制等の整備・増強、臨床研究者、臨床研究支援人材の確保と育成等が 記載されております。  14頁からは、内閣府が各省から提出された研究開発目標や成果目標等を取りまとめた 資料です。この研究開発目標あるいは成果目標の所を見ますと、それぞれ文末に括弧書 きで関係する省の名前が書かれておりますが、下線を引いてある部分が前回本部会でご 審議をいただき、厚労省のほうから提出した部分です。以上研究開発目標、成果目標か ら戦略重点科学技術推進方策まで、現在、内閣府を中心に進められている第3期科学技 術基本計画分野別推進戦略について説明いたしましたが、本日は、特に戦略重点科学技 術と推進方策を中心にご意見を賜り、いただいたご意見は、総合科学技術会議にフィー ドバックいたしたいと考えております。なお、内閣府側の資料がまだ未定稿ということ で十分固まっておらず、昨日も遅くまでやり取りをしたもので、事前に送付したものか ら多少変わっていたりするので大変ご迷惑をおかけしますが、ご審議のほど、よろしく お願いいたします。 ○矢崎部会長  膨大な資料にちょっと目を通してご意見をいただくというのは甚だ困難なこととは存 じますが、本日はたくさん議題もありますので、委員の方で何かお気付きの点があれば コメントをいただければと思います。 ○笹月委員  資料1の3頁の上のスライドで、戦略重点科学技術という所のいちばん下に「活きた 戦略」とするための推進方策を検討、個別分野毎の人材育成政策や制度的隘路の解消と 書いてありますが、これは私がいつも申し上げている、いわゆる基礎研究を本当に患者 に届くプロダクトにするためには、その間の支援組織が出来ておらず、それを是非作ら なければいけないのではないか。今日の「部外秘」の資料の中のどこかにも「橋渡し研 究」という言葉が出てきますが、この具体的な橋渡し研究というのは一体何なのかとい うこと、その組織づくりが非常に重要だと思いますので、その点を何か明確に一言述べ ていただければと思います。 ○長尾委員  ライフサイエンス戦略をパラパラめくっているだけで何ともわからないのですが、臨 床研究推進体制には治験も入ることになっているのかどうか。治験は治験でいろいろな 問題があるとは思うのですが。「臨床試験は実態として空洞化」と書いてありますが、 そこでそういうキーワードがあるのと無いのとでは、ちょっと違うかもしれないという 気がします。 ○林研究企画官  治験もこの中に含まれております。 ○長尾委員  2頁に「審査体制の充実」とありますが、これは人材確保につながるようなことが想 定されているのでしょうか。あるいは「体制」のほうにウェイトがあるのか。いま体制 はかなり充実しているとは思うのですが、ここで何か突っ込んでいることがあるのか、 あるいは体制のほうでもっとやろうと言うのか。いま「体制」よりは「充実」、人材育 成の方向に行こうとするのかというのは何かお考えがあるのでしょうか。これを書いて おけば全部入るという意味なのでしょうけれど。 ○林研究企画官  これは内閣府の資料なので、どこまで説明できるか分かりませんが。いま先生から、 体制はかなり整備されてきているということでしたが、今までの内閣府の議論の中で必 ず言われているのは、欧米に比べると、まだまだ少ないところもあるのではないかとい うことです。ですのでそこの更なる強化、それから人材の育成ということは併せてやっ ていくことであると理解しています。 ○矢崎部会長  人材には質の問題と量の問題があります。 ○長尾委員  それをどう育成するかということもありますね。 ○矢崎部会長  ご議論がまだまだあると思いますが、もしご意見があれば、事務局のほうにおっしゃ ていただければ大変ありがたく思います。それから、今回いただいたご意見は事務局に まとめていただいて、総合科学技術会議等に対応していただければと思います。また、 その結果はこの部会で報告させていただきますので、よろしくお願いいたします。  それでは議題2「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(案)」に移ります。事 務局から、まず説明をお願いします。 ○関山疾病対策課長  資料2に基づいて説明いたします。まず1頁に専門委員会の位置付け等について記載 してあります。ヒト幹細胞を用いた臨床研究指針の策定に当たりましては、平成13年2 月の本科学技術部会において、「ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委 員会」の設置が了承されました。当専門委員会においては、体性幹細胞を用いる臨床研 究を検討の対象としております。主な検討事項ということで、検討の範囲の中に3点ほ ど書いてありますが、こういった点を中心としながらご議論を深めていただいたわけで す。  検討の経緯ですが、平成14年1月に第1回が開催され、かなり全般的な議論をしてい ただきました。2年半の長期にわたって議論がなされてきたわけですが、第22回の平成 17年2月3日から第24回の同年9月21日にかけて、それまでの議論を整理していただ き、その最大の論点であった胎児由来のヒト幹細胞の研究利用について集中的に議論を 行っていただきました。その結果、胎児由来のヒト幹細胞の研究利用については、生命 倫理上の観点などから慎重な議論を要するという意見がありました。まずはそれ以外の 幹細胞の利用に関しての議論を行ってそれを指針とし、取りまとめ、それを施行し、そ の後に胎児から採取されたヒト幹細胞を用いる臨床研究について議論を再開しようでは ないか、ということで議論が取りまとめられました。  それ以外の体性幹細胞の利用をどのように具体的に進めるかということで、指針素案 を策定するためにワーキンググループを専門委員会内に設置し、数次にわたって議論を していただきました。その結果、今年2月22日に専門委員会を開催して指針素案につい て了承され、専門委員会として、本日お示しさせていただいた指針(案)が取りまとめ られたわけです。  3頁目が専門委員会の委員名簿です。中畑委員長を中心として、また、高坂先生にワ ーキンググループの座長の任を担っていただいて数次にわたる議論を深めていただきま した。  ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(案)の概要が4頁にございます。概括的 に説明いたしますと、まず総則としてその目的を規定しております。目的としては、ヒ ト幹細胞を用いる臨床研究が社会の理解を得て適正に実施されるよう、個人の尊厳と人 権を尊重し、かつ、科学的知見に基づいた有効性及び安全性を確保するために、当該研 究に関わるすべての者が遵守すべき事項を定めるといったものです。  指針の適用範囲は、疾病の治療のための研究を目的として、人の体内に移植または投 与する臨床研究を対象とすることとし、先ほど述べた今後の課題、胎児から採取された ヒト幹細胞を用いる研究はこの指針の対象としないこととしております。しかし、対象 としないということは、行為も禁止ということではなく、あくまでも対象としないとい うことです。  指針の対象疾患の範囲は3点ほど書いてあります。すなわち、(1)で治療の必要性 の高い疾患であり、(2)と(3)に明記されているような研究価値のあるものです。  基本原則としては、倫理的及び科学的観点から当該臨床研究が適正に実施されるため に以下のような7点を設けており、この7点を踏まえて研究の体制または必要な施設基 準を設けております。  研究体制については、研究者等の責務を設け、また、研究を実施する場合あるいは重 大な事態が生じた場合は研究機関の長がその対応を取っていくわけですが、当該研究機 関の倫理審査委員会のほかに厚生労働大臣の意見も聞く、という二重審査体制を設けて おります。また、ヒト幹細胞の利用に当たりましては、細胞加工の視点として採取・調 整・移植又は投与という三段階の工程がありますので、この三段階の工程に応じて必要 な施設基準を設けています。特に、加工する調整段階については、医薬品臨床試験の実 施基準に関する省令(GCP省令)で求められる水準を基準として設定しております。  ポンチ絵が見開きで5〜6頁に書いてありますが、研究の実施については、研究責任 者が実施計画書を作成し、研究機関の長が許可等の決定を行うことになっていますが、 それに際して先ほどの審査体制を活用していくこととなっています。また、重大な事態 が生じた場合は、研究機関の長がその対処方針を関係者に聞き、そして決定していくこ ととなっています。進行状況等についても逐次報告し、研究が終わったら、研究責任者 は総括報告書の提出を行う、という流れです。  7頁はヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の本体。8〜9頁が指針の目次の構 成です。ざっとご覧になっていただいて、最後の39頁に今後の策定スケジュールという ことで、案ですが、本日このようにお示しさせていただき、パブリック・コメントを実 施し、それを受けて5月ないしは6月の当部会において議論していただき、大臣告示の 公布、施行を8月1日を予定として考えております。これはあくまでも予定で考えてお りますので、ご議論いただければ幸いです。 ○矢崎部会長  ワーキンググループの座長を務められた高坂先生が見えておられますので、補足の説 明をお願いいたします。 ○高坂委員(ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会)  現時点では、只今の疾病対策課長に伝えていただいたことに特に付け加えることはご ざいません。 ○矢崎部会長  この件に関して、ご意見はございますか。 ○北村委員  ヒト幹細胞を用いた再生医療に指針を作っていただいたことを大変ありがたく、うれ しく思っています。そこで、13/39頁の「基本原則」の1の最下行で「ヒト幹細胞臨床 研究は」と臨床研究が主語になっていますが、「有効性及び安全性が予測されるものに 限る」となっています。そして14/39の4の「品質等の確認」で、主語はヒト幹細胞と なりますが、同じく「ヒト幹細胞臨床研究に使用されるヒト幹細胞は、その品質、有効 性及び安全性が確認されているものに限る」となっています。有効性と安全性が予測さ れるという所と、有効性と安全性が確認されていなければならないという所です。結局、 トランスレーショナル・リサーチは安全性を確保するのは当然ですけれども、「臨床研 究」が主語になる場合と「幹細胞」が主語になる場合とで変えられるものなのか、そこ を教えてください。 ○関山疾病対策課長  基本原則で有効性、安全性を謳っております。また、先ほどご指摘の「基本原則1」 の有効性及び安全性の確保については、ヒト幹細胞臨床研究について、どのような疾患 を対象とするかということで、研究価値のあるものとなっています。研究価値のあるも のとして、現在可能な方法と比較して優れていることが予想され、あるいは不利益を上 回って利益があるであろうというようなことも踏まえてここで謳っておりますので、若 干予測性が出てまいります。一方、それを取り扱うヒト幹細胞については安全性等が。 ○北村委員  安全性はわかりますが、「有効性を確認されて」となると、それを確かに予測してや る臨床研究はどうなるのかです。 ○関山疾病対策課長  そこについては、一般的な薬事上のルール、ここは基本的には安全性の確保ですが、 そういった細胞組織利用医薬品等の基準及び使用に関する基本的考え方なども参考にし ながら整理していただいています。 ○北村委員  「有効性が確認されている」というのは臨床研究を通しての結果論で、臨床経過の所 は「有効性が予測される」だったら大変結構です。しかし、ここでこうしてしまうと矛 盾を感じるのです。 ○関山疾病対策課長  高坂先生にも補っていただきたいと思いますが、臨床研究ですから、その前に動物研 究も付随してあるのだと思います。したがって、そういうことも踏まえてやってほしい わけです。 ○北村委員  動物実験ではプレクリニカル・スタディは当然行うべきで、また、行われていて、安 全性及び有効性はありますが、ヒト幹細胞は用いていない場合があるのです。ところが、 品質の確認の所には「ヒト幹細胞」と明記されていますので、そこを疑問に感じており ます。 ○高坂委員  北村委員がおっしゃることは非常によく分かりますが、我々としては、思いつきでこ ういう研究をしてもらっては困る。ある一定期間、サルやネズミの実験も含めて基盤研 究をきちっとやった上で、科学的な根拠に基づいて、こういうことをやれば有効なので はないかと。逆に言いますと、その患者にとって得られる利益が不利益を上回るであろ うと予測されるものが対象となると考えております。  言葉上のことで非常に申し訳ないのですが、「有効性、安全性が確認されているもの」 ではなく、「有効性及び安全性が予測されるもの」というのは、実験の結果からそうい ったことが予測されるということだと思うのです。 ○北村委員  そうしていただくことも可能なのですか。 ○高坂委員  はい。もう1つは、実は、この指針を作るに当たって他の指針とかなり整合性を図っ ているのです。そして、この文章は遺伝子治療臨床研究のほうでも使われていまして、 他の指針とは整合性を図る必要があるだろうということでこの文言を使ったということ がございます。  もう1つのご質問ですが、1のほうは研究全般にわたるものであって、4の品質等の 所は、あくまでも使う細胞の品質をきちっと確保しなさいということで、別個明記した わけです。これも他の指針との整合性を図るために、これは薬事法の適用を受けないの ですが、薬事法の適用を受けている生物由来原料基準、細胞組織利用医薬品等の取扱い 及び使用に関する基本的な考え方に準じて品質管理をきちっと行って、そこに書いてあ る「安全性がきちんと確認されていること」と別立てとして書かせていただいたわけで す。 ○北村委員  よく分かるのです。ベンチャー企業等がこういう再生医療の細胞を提供するような場 合であれば、これでいいと思うのです。しかし、医師主導の臨床研究で行われている場 合に、安全性と有効性が確認されているというのは、臨床研究を通してそれを見ていく わけですので。基本原則1は大変結構ですが、4は少し言葉を付けていただいたほうが いいのではないかと思います。ご検討いただいたらいいのですが。 ○高坂委員  有効性という言葉でしょうか。 ○笹月委員  1は北村先生がおっしゃるとおり、いいと思うのです。しかし、それに使うものは、 有効性も安全性も、ヒトを通してはやったことがないからこそヒトを通してやろうとい うのが臨床研究です。だから、品質についてはin vitroなのかあるいは動物実験なのか、 そのレベルでの有効性、安全性と明記すれば、いまのようなことは明らかになるのでは ないかと思います。 ○北村委員  現在の再生医療では、自己の体性幹細胞のことだけが先行しています。そのときに、 自己細胞なのか。あるいは体外においてマニピュレーションを受けていない直接的な細 胞の注入とか注射、それからアロなども含めて一緒になっているのでしょうか。 ○高坂委員  この指針が対象としているのは、いまおっしゃった両方なのです。アロもあるし、オ ートもあるしということですが、基本的には、おそらく1回体外に取り出したものを何 らかの形でマニピュレーションするという作業が入ることを想定して作っております。 ○加藤委員  質問が2つあるのです。10/39の「用語の定義」の(1)の項目、「ヒト幹細胞とは、 ヒトから採取された細胞又は当該細胞の分裂により生ずる細胞であって、多分可能を有 し」と書いてあるのですが、タブンカの「カ」は、「可」ではなくて「化」ではないの ですか。 ○高坂委員  それは変換ミスです。 ○加藤委員  わかりました。もう1つの質問ですが、これ全体があまりにも漠然としていて、どう いう事態を防止するためのガイドラインであるか、というガイドライン全体の目的がは っきりしない感じがするのです。どういうことが起こったら困るからこういうガイドラ インを作ったのか、という大まかな説明をしていただきたいのです。 ○関山疾病対策課長  大まかな説明といいますと、一部の機関では、もう骨髄細胞移植による血管新生療法 等も含めて高度先進医療の中で行われつつあると思うのです。ところが、臓器あるいは 細胞によってその進展度が随分違います。少し遅れている分野に関しては、いま申し上 げたように、科学的な根拠が十分ではないのに既に先行しているようなところも見られ、 これについては、きちんとした科学的根拠に基づいて指針を示し、それに則ってやって ほしいということが1つございます。ですから、性悪説ではないのですが、皆さんがき ちっとした倫理的観念あるいは科学的根拠に基づいた研究をやってほしいということ が、1つ大前提としてあると思うのです。 ○加藤委員  何を防ごうとしているのか。例えば、人体組織の思いつき的、乱発的な利用を防止し たいという程度のことは分かるのですが、具体的にこういう事例は困るというイメージ が分からないし、あまりにも全体が茫漠とした文面から出来上がっているような印象を 持つのですが。 ○関山疾病対策課長  例えば8/39を見ていただきますと、そこに項目だけずっと書いてあるわけです。基本 原則や研究の体制、それから2章第2の厚生労働大臣の意見(中央審査)、あるいは採 取の際に我々が気をつけなければならない点(インフォームド・コンセントを含む)、 それから今非常に大事な個人情報との関係、そういった一つひとつの項目について、各 機関ごとに果たして十分な体制がとれているかという点について、大部分の所はとれて いると思いますが、そうでない所もあるかもしれない。そういったところで、極端な例 を申し上げますと、倫理審査委員会がないような機関で数名の研究者が勝手にやってし まう、というようなことも無きにしも非ずなので、全般的にこういった、守るべきは守 っていただきたいという趣旨でやっているわけで、こういうことが起こると、まずいか らという指針ではないと思います。 ○笹月委員  その点で大事な点は、幹細胞を遺伝子操作してはいけないということは、どこかでメ ンションしていますか。その点は非常に重要なポイントだと思いますが。あるいは遺伝 子操作したものでもよろしいのか。 ○関山疾病対策課長  その点については15/39頁を見ていただきたいのです。これは遺伝子解析の場合です が、提供者からのヒト幹細胞を用いて遺伝子解析を行う場合に当たっての倫理指針が既 にございますので、そういうものについては当該倫理指針を適用していくということは ございます。 ○笹月委員  解析ではなくて、遺伝子を導入したり、改変したりすることを許しているのかどうか です。 ○関山疾病対策課長  仮に遺伝子治療をおやりになる場合については、他の指針で定められているものを適 用しながら、合わせてやっていただくことになろうかと思います。具体的に言ってどう いう事例になるかはあれですが、考え方としては、遺伝子操作をやるような場合につい ては導入に関する遺伝子治療指針がございますので、それを適用しながら、そして、当 該ヒト幹細胞を利用した指針も合わせて適用対象としていくということです。ちょうど、 この指針の12頁でも、適用範囲の中でそのような他の指針の適用の考え方の整理をして おります。 ○笹月委員  遺伝子治療の場合、例えば骨髄の幹細胞に遺伝子を導入するという治療をやっていま すが、その場合に白血病が生じたというような事例もあります。これはその他のものも 対象に入っているわけですが、そういう場合に一概に遺伝子操作は駄目だとは言わない。 それは遺伝子治療の指針とこれとを合わせれば解決する問題なのか、あるいは体性幹細 胞特有の問題があるので、そこにおける遺伝子操作をどこかで検討する必要はないのか、 というのが私の質問なのです。 ○高坂委員  専門委員会の中では、いまおっしゃったように、例えば間葉系幹細胞等を遺伝子操作 あるいはマニュピュレーションすることは、ある程度想定しておりました。それについ ては、いま課長から申し上げたように、遺伝子治療の指針に則って、要するに細胞の品 質管理のところですが、安全性を確保していただく。また、それ以降の臨床研究、それ を用いた臨床研究に関してはこの指針でカバーしていくという考え方にはなっていたと 思うのです。ただ、おっしゃったように、遺伝子操作をするということを明確に想定し た議論は深めていなかったことは事実だと思います。 ○矢崎部会長  いろいろご議論があると思いますが、この指針については今後パブリック・コメント でオープンに議論していただく。今いただいた委員の方々のご意見も参照され、再度当 部会へ報告していただきたい、ということでよろしいでしょうか。 ○永井委員  私もこの専門委員会に最初の頃参加していたのですが、この問題の背景には胚性幹細 胞の問題があります。たぶん、今回は最終的にはそこまで踏み込めなかったのだろうと 思います。まず体性幹細胞についてガイドラインを作って整理する。また、既に行われ ているいろいろな治療についても十分監視していくということが大事なのだろうと思い ます。ですから、まずこれを立ち上げておいて次の課題に行かないといけないのではな いかと思います。 ○今井委員  いま伺っていてもそうなのですが、走り出して、走りながら次々に出てくる事例ごと に、この安全性はこういう部分をというように今までもしてこられたと思うし、これか らもそうなるのだろうと思います。いま先生方のご質問を伺っていると、そこから視点 が外れた部分を質問されています。全体像から言うと、例えば食品衛生管理のための安 全性については、既に出来上がっていると思うのです。それは有害なもの、人体に影響 を及ぼすような化学物質が入っているかどうか、それから細菌学的にどうなのか、あと は賞味期限的にどうなのか、遺伝子組換食品の場合には安全性はどうなのか等、全体を 見た形で一つひとつを挙げているという形になると思うのです。  今後、幹細胞に関しても、つい最近ですと、親知らずの萌芽細胞の神経と肝と骨に対 する実験が成功している、というようなことがあると、今度は自分の親知らずを子ども のうちに取っておいて、大人になって何かあったらそれを使おうか、という発想まで出 てくるようになると思うのですが、そういうことになってくると、賞味期限的なものも 必要になってくる。しかしこれはそういうところに関しての安全性は言っていない、と いう形になるので、トータルとしての安全性を考えたとき、安全管理に関して食品衛生 のほうを見るというのは、要は、雛形をどこかから取って合わせていったほうが全体的 に分かりやすくなるのではないかと思います。 ○関山疾病対策課長  雛形はどこからかというお話ですが、まず、この中で安全性をきちっとおやりになっ ていただくという行為については、細胞を加工する段階がまさに安全性の確保が重要な 段階ですが、ここは医薬品の取扱い等の仕組みがございますので、そういった仕組みを ベースとしてご検討いただきました。食品と医薬品とは少し性格が違いますが、そうい う形でご検討いただく。そして、臨床研究が終わったからそれでいいのかということで はなくて、臨床研究が終わった後も、どういう事象が出てくるか分かりませんので、ヒ ト幹細胞にとって必要なその後の対応について一定期間フォローアップ体制も敷きまし ょう。また、それに必要な試料や記録を少なくとも10年は保存しておきましょうと、そ のようなことも併せて議論し、整理していただいたという状況です。 ○笹月委員  1つ大事なことがあるのですが。5頁の流れ図の中に倫理審査委員会というのがあり ますが、これは中央の倫理審査委員会を意味しているのか。IRBですか。 ○高坂委員  はい。 ○笹月委員  IRBに関する委員の資格は、どこかで規定しているのですか。 ○高坂委員  規定しております。 ○笹月委員  IRBですと、倫理委員会は研究責任者の所属する機関の長の下に位置づけられるの ではないですか。機関の長の諮問で倫理委員会が行われ、機関の長と厚労大臣との間で やり取りがあるということではないかと思いますが。 ○関山疾病対策室長  それは図の書き方なのですが、もし、そのほうが見やすければ、そのようにいたしま す。 ○高坂委員  先ほどのご質問について、そういった事態がいろいろ想定できると思うのですが、時 代の流れに応じて新しい問題が起こってくることも十分考えられますので、当分、中央 審査体制といいますか厚生労働大臣の意見を求めるという形で進行していくと思いま す。それで、これは新規性があるとか、これはしっかり審査したほうがいいというよう な場合には、厚生科学審議会の中に別途そうした専門委員会のようなものを作っていた だいて、そこでもう一回審査をする。そして、その意見をまたIRBに投げ返す、とい うようなことがなされますので、その都度、チェックができる機能は持たされていると 思います。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。それでは、先ほども申し上げたように、パブリック・コメント をいただいて最終的な案を作っていくということで、よろしくお願いします。どうもあ りがとうございました。                   (高坂委員退席) ○矢崎部会長  それでは議題3「動物実験等の実施に関する基本指針」について、説明をお願いしま す。 ○林研究企画官  事務局から、資料3に沿って説明をさせていただきます。まず、資料3の1頁です。 1の策定経緯は(1)にあるように、動物の愛護及び管理に関する法律が平成17年6月 に一部改正され、平成18年6月1日から施行される予定です。この改正により、実験動 物に関しては国際的に普及している「3R(苦痛の軽減、利用動物数の削減、代替法の 利用)の原則」が整備されております。  (2)が法改正に伴う関係省の動きです。まず環境省は、主に動物愛護について定め た「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」の改定を、中央環境審議会小委員会にお いて検討中です。  一方、文部科学省は、科学技術学術審議会の作業部会において、「研究機関等におけ る動物実験等の実施に関する基本指針(案)」を取りまとめて、2月末までということ でパブリック・コメントの募集が行われているようです。  その下が(3)厚労省における基本指針の策定ですが、文科省が取りまとめた「研究 機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(案)」は文科省所管の研究機関を 適用対象としていることから、厚労省としても、文科省の指針を参考にして、厚労省の 関係機関等においても適正な動物実験が実施されるよう基本指針を策定することといた しました。  2頁に厚労省の基本指針素案の概要を示してあります。まず「目的」ですが、科学的 根拠に基づき、かつ、動物愛護に配慮した動物実験等が実施されるよう、動物実験等に 携わる者が遵守すべき事項を定め、適正な動物実験等の実施の推進が図られることを目 的とする。  「適用範囲」は、厚労省の施設等機関のほか、独立行政法人、公益法人、さらには厚 労省所管の事業を行う営利法人として製薬企業等も対象に含めることとしております。  「実施機関の長の責務」ですが、1番目のポツの所に「基本指針を踏まえた機関内規 程の策定」があります。この部分に関しては、その下の*で書いてあるように、各機関 が機関内規程を策定する際に参考となるガイドラインの策定を、文部科学省は日本学術 会議に依頼しており、厚労省も同じように日本学術会議に対して依頼したいと考えてお ります。その他「動物実験責任者の責務」「動物実験委員会の役割等」「動物実験等の 実施上の配慮」といった内容を定めることとしております。  2頁のいちばん下、3「今後の予定」ですが、この部会が終わりましたら、今月中な いし下旬から1カ月の予定でパブリック・コメントの募集を行い、その後本部会におい てパブリック・コメントを踏まえた見直し案のご審議をいただき、動物愛護法の施行日 である本年6月1日に同時に施行できるようにしたいと考えております。3頁から後ろ に、文科省の基本指針案をベースにした厚労省版基本指針素案の現時点での案を付けて あります。説明は以上です。よろしくお願いします。 ○佐藤委員  適用の範囲ですが、厚生科学の補助金等で行われている研究でここにないものについ て対象にするのかどうか、そこはいかがでしょうか。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。これについて、文科省の指針はどうなっているのでしょうか。 ○金澤委員  おっしゃるとおりでして、今までは各大学なり、各研究所なりにそれぞれ文科省から の通達があったものですから、それに則って、一応頑張ってやっているわけです。とこ ろが、外国から見たときに、国全体を通しての1つのガイドラインがない、というとこ ろがポイントでありまして、それを作るべきだということを学術会議から提案されたわ けです。それを受けて、文科省は先ほどのようなものを作り、厚労省も今、そういうも のを作っているわけです。それをもう一回学術会議に返して、具体的なガイドラインの 原案のようなものを作るようにという指示をいただいているところなのです。  実は、学術会議の第2生命科学部会でお預かりしているのですが、その中で議論があ り、文科省はこの範囲、厚労省はこの範囲、というのはおかしいではないか。むしろ全 国的に、農水省なども全部含めた形でガイドラインの原案を作れないかということで、 今スタートしたところでして、たぶん全部をカバーできるものになると思います。 ○矢崎部会長  最終的には一本にまとまるということですね。 ○金澤委員  ガイドラインといっても細かいことを決めるのではなくて、少なくとも、それぞれの 研究機関ではこういうことを含めたものを作ってほしいと。つまり、それぞれの大学な り、それぞれの研究所なりで自主的に作っていただくためのガイドラインなのです。や はり、自分たちで作ったということがないと、まずいのではないかというのが基本的な 姿勢です。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。 ○垣添委員  3つのRのうち、リダクションと言うのでしょうか、使用動物の削減と、リプレース メント、他の手段に移行するという、もっともな趣旨だとは思いますが、これはこの指 針が施行されたとき、どこかの時点で日本全体として動物実験がこのように減っている とか、内容がこのように改善されたということを評価するような考えはおありなのでし ょうか。 ○林研究企画官  この3Rの考え方については、私どもの承知している範囲では、すでにOECDの動 物実験のガイドラインなどに基づいて具体化されつつあると思っています。それから、 代替法については、まだ完全にいいものが開発されてはいなかったと思いますが、それ もいま調査研究が行われているということですので、このガイドラインの策定と並行し てやられているという理解で、この指針が出たから何かやるということではないと思っ ています。 ○矢崎部会長  これも今後パブリック・コメントを行って、その結果を踏まえて、再びこの部会で報 告をいただくことになると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  次の議題「遺伝子治療臨床研究実施計画について」の札幌医大の申請書の説明をお願 いします。 ○林研究企画官  遺伝子治療臨床研究実施計画の実施について、資料4です。これは毎回の繰り返しで すが、遺伝子治療臨床研究に関する指針において、臨床研究の実施施設の長から遺伝子 治療臨床研究の実施に関して厚生労働大臣が意見を求められた場合は、複数の有識者の 先生方のご意見を踏まえて、その臨床研究のベクター、遺伝子投与方法または対象疾病、 遺伝子治療の方法などが新規性を有するか否かをご判断をいただいて、その上で新規性 を有するとされた場合には、この部会のご意見を聞くというルールになっています。そ こで、今回もその有識者として笹月先生、永井先生、早川先生の3名の先生方のご意見 をお聞きしましたところ、今回の札幌医大附属病院から申請のあった遺伝子治療臨床研 究に関しては新規性有りということでしたので、本日の部会にお諮りするものです。  それでは札幌医大病院の申請について、資料4に沿ってご説明いたします。資料4の 3頁からが臨床研究の実施計画申請書です。昨年10月28日に申請があったのですが、 その後この資料の文言の整備などをいたしまして、本日の部会にお諮りさせていただく ものです。  実施施設は札幌医科大学附属病院です。遺伝子治療臨床研究の課題名は血管内皮増殖 因子(VEGF)・アンジオポエチン(Ang1)との遺伝子プラスミドを併用した末 梢性血管疾患(慢性閉塞性動脈硬化症・ビュルガー病)の治療のための遺伝子治療臨床 研究ということです。  4頁からが臨床研究の実施計画の概要書です。研究実施期間は承認されてから3年間 の予定です。総括責任者は札幌医科大学医学部外科学の第二講座の森川助教授です。5 頁の下に「研究の目的」という欄があります。本研究は閉塞性動脈硬化症・ビュルガー 病の患者に、血管新生因子であるヒト血管内皮増殖因子(hVEGF)と、ヒトアンジ オポエチン1(hAng1)遺伝子プラスミドを筋肉内注射して、その有効性、安全性 を検討するということで、本臨床研究は臨床試験の第I、II相に位置するというもので す。  6頁で、「対象疾患及びその選定理由」です。対象は安静時疼痛、虚血性皮膚潰瘍を 有する重症のASO・ビュルガー病で、血行再建術の適応が無く、内科的薬物治療によ り改善が見られず、将来下肢切断が予想される患者ということです。「Isnerらは」と いう言葉で始まるパラグラフですが、IsnerらはVEGFを100人以上の患者に筋肉内 投与したところ、浮腫は認められたが、比較的良好な治療成績であったこと、今回の申 請者の研究グループによる動物実験でAng1プラスミドとVEGFプラスミドを併用 することで、VEGF単独投与時における浮腫の副作用が軽減され、高い血管新生効果 が得られることを見出したとしています。  7頁、「遺伝子の種類及びその導入方法」です。導入する遺伝子はhAng1ないし hVEGF遺伝子を挿入されたサイトメガロウイルスのエンハンサーとニワトリのベー タアクチンプロモーターに連結したプラスミドDNAということです。  遺伝子の導入方法は、プラスミドDNA遺伝子の筋肉内投与で、申請者はラットで導 入遺伝子の発現を確認するとともに、ウサギ下肢虚血モデルを用いまして、hAng1 とhVEGFプラスミドDNAの筋肉内導入が、浮腫の副作用も少なく、側副血行の誘 導効果も優れていることを見出したということです。  その下の「安全性についての評価」です。VEGFプラスミド導入による臨床研究が 既に実施されていますが、浮腫など軽微な副作用の報告があるのみであるとされていま す。他に安全性に関わる問題として、1)プラスミド導入によるがん化の可能性とか、 2)VEGFとAng1によるがん促進、血管腫及び糖尿病性網膜症悪化の危険性が想 定されるけれども、本遺伝子治療臨床研究のための安全性確認試験として、ラットの単 回筋肉内投与毒性試験や反復投与毒性試験を行って、hAng1とhVEGFプラスミ ドDNAの単独あるいは併用投与における安全性を確認したとされています。  8頁の頭です。Ang1及びVEGFプラスミドは共同申請者の名古屋大学の施設と 方法によって、米国FDA等の基準に基づき精製されるということです。その次のパラ グラフです。がん促進及び糖尿病性網膜症悪化の危険性を低減させるため、循環血中で のAng1及びVEGFの増加を避けうる「ウイルスベクターを用いずプラスミドDN Aのみを導入する方法」を用いたということと、さらに微小がんを促進したり網膜症を 悪化させる危険性を有する患者は本臨床研究の対象から除外することとされています。  次に、「遺伝子治療臨床研究の実施が可能であると判断する理由」です。先ほども申 し上げたタフツ大学のIsnerらによるVEGF遺伝子を用いた末梢性血管疾患の遺 伝子治療臨床研究で、100人以上の患者に対して治療が終了し、比較的良好な成績が報 告されており、その一方で予期できない副作用は認められなかったということと、申請 者が行った前臨床試験の結果からAng1とVEGFを併用すると血管新生作用が、V EGF単独のときよりも強かったということから、効果が期待できると考えているとい うことです。  9頁の頭ですが、左側の欄が空欄になっていますが、ここは「遺伝子治療臨床研究の 実施計画」という項目名が入ります。この部分ですが、本遺伝子治療臨床研究では安静 時疼痛または虚血性皮膚潰瘍を有するFontaine分類III度またはIV度に相当する 患者で、血行再建術の適応が無く、最低4週間の内科的薬物治療により改善が見られず、 将来下肢切断が予想される患者10名を対象とするということです。対象患者の認定は札 幌医大附属病院の小委員会によって判定されます。遺伝子の導入はタフツ大学の試験に 準拠して、hAng1ないしhVEGFプラスミドDNAを投与間隔をあけて、罹患肢 の4カ所の筋肉内に注射することを何度か繰り返すという方法をとるということです。  いちばん下のパラグラフです。治療遺伝子投与開始後、1年まで症例の観察・検査を 行って、効果判定のための評価を行いまして、さらに1年の観察期間が終了しても、可 能な限り長期の経過観察を行うということです。研究の実施期間は3年間ということで す。  10頁です。被験者の同意取得については、本臨床研究について充分な説明を受け、そ の内容と期待される治療効果及び危険性を十分に理解し、自主的に同意した上で、同意 書に署名するということです。本臨床研究に関わる個人情報は札幌医大附属病院のガイ ドラインに従って、適切に扱われるということです。  12頁から被験者への説明文書が付いていますが、これは説明は省略させていただきま す。  今回はいまご説明した内容につきまして、倫理面を含めて総合的なご意見をいただき まして、それを今後、末梢性血管疾患遺伝子治療臨床研究作業委員会にお伝えして、作 業委員会において科学的事項を中心に詳細にご検討いただきます。その結果をまた本部 会にご報告させていただくこととなります。資料4の28頁に作業委員会の名簿をお示し しています。これに関して、これまで作業委員会の委員長を北先生にお願いしていまし たが、先生が非常にご多忙であり、引き続き委員長を務めることが困難であるという申 し出がありまして、後任の委員長について矢崎部会長ともご相談させていただいて、永 井先生にお引き受けいただくこととなりましたので、ご報告申し上げます。29頁には参 考として、現在我が国で実施中の遺伝子治療臨床研究の一覧表を付けています。  あと、いつも遺伝子治療臨床研究実施計画をご審議いただくときには、カルタヘナ法 に基づく第一種使用規程の承認申請についても併せてご審議をいただくケースが多いの ですが、プラスミドはカルタヘナ法の対象外ですので、今回はカルタヘナ法に関する審 議はありません。事務局からの説明は以上です。 ○矢崎部会長  永井先生、大変お忙しいのに誠に申し訳ありませんが、よろしくお願いします。作業 委員会でご検討いただく際に、特に委員の方でコメントはありますか。いまご説明いた だいた内容で、作業委員会でさらに詰めていただいて、その後、また当部会でご報告い ただくことになると思います。 ○金澤委員  先ほど新規性について永井先生、笹月先生のところでご検討になったと伺いまして、 そしてこれを拝見していて、この方々はしっかりした方々ですから大丈夫だと思うので すが、動物実験で両方やったときによかったということが、ピアレビューのジャーナル できちんと審査されたのかが、これだけを見たのではわからないのです。そこが非常に 大事なところなのですが、そういうのは申請の中には出てこないのですか。 ○林研究企画官  作業委員会ではその辺の詳細な資料も含めて、全てご検討いただく予定です。 ○佐藤委員  細かい点ですが、22/39頁の検査スケジュールを見て気がついたのですが、5番で「血 清保存」とだけ書いてあって、これでいいのかどうかが1点です。それから、悪性腫瘍 が出るか出ないかというのはこういうところでは非常に大事なことなのでしょうけれど も、そのチェックシステムとして、これでいいのかどうか。ちょっとご検討いただけれ ばと思うわけですが、PETがいいかどうかはともかくとして、どこにいろいろな悪性 腫瘍が出るかわからないときに直腸診とか、婦人科、胸部X線であるとか、またマーカ ーは取ってあるのですが、これで十分なのかどうかをご検討いただければと思います。 ○矢崎部会長  ただいまお受けした委員のご意見を踏まえて、作業委員会でさらなる詳しい科学的、 あるいは倫理的な面も含めてご検討いただきたいと思いますので、よろしくお願いいた します。次に、研究機関の評価結果についてお願いします。 ○林研究企画官 最初に事務局から簡単にご説明させていただきます。議題5の「研究 開発機関の評価結果」については、参考資料2として、「厚生労働省の科学研究開発評 価に関する指針」をお配りしています。この指針の15頁の「第1章」の下線部に書いて あるように、「研究開発機関は、各研究開発機関における科学研究開発の一層の推進を 図るため、機関活動全般を評価対象とする研究開発機関の評価を定期的に実施する」こ とが定められており、その評価結果が本部会にも報告されているところです。  今回は国立がんセンター研究所の評価結果のご報告をいただくということで、国立が んセンター研究所の廣橋所長、若林副所長にお出でいただいていますので、廣橋先生、 ご説明をお願いします。 ○廣橋所長(国立がんセンター研究所)  お手元には最終的な報告書が配られていますが、それ以外に実際の評価の過程で使っ た資料を回覧します。報告書の1頁目からご覧ください。国立がんセンター研究所はが ん克服を目指した研究の推進がそのミッションで、がんの本体解明、発がんの要因の把 握、がん予防法の開発、診断治療法の開発を目指しています。  そこで、1頁の下の図の左側、研究所と病院、研究所と予防・検診研究センターとの 連携が極めて重要であるということです。右側には研究所の中の組織が出ていますが、 疾病ゲノムセンターから、腫瘍プロテオミクスプロジェクトまでのところが研究所の本 体で、12部、4室、7プロジェクトからなります。それ以外に柏に研究所支所、予防・ 検診研究センターの中にも予防研究部、情報研究部というのがあります。これらはいず れも研究職が構成する研究組織ですので、これまで一緒に評価を受けてきています。  この中でプロジェクトというのは耳慣れないと思うのですが、これはもともと省令に 定められているような組織があるわけではなくて、部の中の室長のポジションを使って、 独立させてPI(Principal Investigation)としての自覚をもって研究に取り組むと、大 変エンカレッジされるということで、研究を推進するのに役立っています。  次の頁は、評価体制です。全て外部委員からなる研究所評価委員会を設けています。 2の2にメンバーが出ていますが、常任委員は5名、専門委員を各年2名お願いし、7 名の方に評価をいただく形になっていまして、人選をご覧いただきますように、基礎か ら臨床まで、そして公衆衛生までを含んだ幅広い方々のご意見をいただくことになって います。前の頁でお示ししましたように組織が大きいものですから、これを3つのグル ープに分けて、十分な時間議論ができるようにということで、毎年1グループずつ評価 をしています。  平成14年度は分子生物学を基盤とした研究グループ、平成15年度は発がん要因とが ん化のメカニズム、ゲノム構造解析を行っている部門、平成16年度には疫学や情報部門、 病理部門などの部門というように評価を受けてきました。各グループ30分発表をして、 10分の質疑を受ける、厳しいディスカッションをして評価を受けております。  回覧している資料のいちばん上に載っているものは、毎年どの部門が評価を受けたと いうプログラムが載っていまして、その中に各部がどのような研究目的を持ってやって いるか、成果、そしてこれからの課題、どういう研究方針であるかということを整理し ておきまして、コメントをいただくことになっています。評点の評価も受けていて、各 部平均すると4点を超えたいい点をもらっていますが、中には厳しいところもありまし て、研究各部門についての具体的なアドバイス、点数などは各部に戻して活かしてもら うことにしています。  全体としては、毎年Annual Reportというものを作っていまして、1年 ごとの研究成果、それから今回3年間の研究評価のまとめができたので、5年間どのよ うな研究を各部門でやってきたのかをレビュー風にまとめて、シェーマも付けてまとめ る形で全体像がわかるようにして評価を受けました。  全体的な評価としては次の頁の3の2に示すような、幅広く独創性の高い研究テーマ がバランスよく進められていて、がんセンターの研究所として相応しいのではないかと。 特に早い時期から精神腫瘍学研究部、緩和ケアなどに関する研究も推進したのは大変よ かったのではないかという指摘を受けました。  4頁です。3の1の2で「試験業務の実施状況と成果について」です。これはどこま でが試験業務かというのは難しいのですが、考えてみると例えば保健所での活動を通し て、疫学研究を進めていること、あるいは情報発信、臨床試験のデータセンターも運営 していることなどは、多少試験業務という意味合いがあるかもしれません。多くの部門 で息の長い努力を必要とするような研究が進められているというのは大事ではないかと いう指摘もいただきました。  次に3の3で研究費の問題です。研究資金については、競争的研究資金の他に、研究 所の運営費として、治療研究費、事業用器具費がいただけるわけですが、この部分が一 般会計繰入れ額の減少に伴って大変厳しい状況になっています。競争的資金の一部には 間接経費も導入されましたので、そういうものを活用しながらやっていくということで すが、多施設共同研究や臨床試験など、事業的な予算の必要な部分もあり、この辺はさ らに働き掛けていかなければいけないところだと思っています。  組織について申し上げますと、この3年の間に7人の新しい研究部長が就任していま す。7人のうちの2名は外部から選出されて、あと2名は先ほど申し上げましたプロジ ェクトのリーダーになって、さらに成果を上げて昇格した者です。現時点で40代の前半 がいちばん多い部長のポピュレーションになりまして、大変若返ってきました。  6頁です。人員の面では必ずしも十分ではないのですが、職員に加えてリサーチ・レ ジデント、その他の外来研究員なども含めて研究を推進しています。しばしば研究員の 硬直化が問題になるのですが、任期付きの研究員についても積極的に取り入れて、主に 若手の育成型ですが、一部に招へい型も含めて任期付き研究員が約20%になっていま す。  施設については建築以来20数年が過ぎて非常に老朽化してきましたが、補正予算で2 年をかけて全面的に改築して、新しい機能を持つ研究所に生まれ変わりました。  また、8、9頁に倫理的な問題について書いてありますが、研究所のプロジェクトと いう組織を使いまして、連携研究支援プロジェクトを立ち上げて、研究所に入ってくる 病院からの試料あるいは臨床情報は、完全に匿名化されて研究所に入る仕組みを厳密に 作り上げました。倫理のところを先に申し上げますと、独自に動物実験に関するガイド ラインも策定して、動物実験倫理審査会で審査のとおったものだけが実験に入れるとい う体制も整えています。  戻って7頁です。情報基盤は先進的にインターネットに取り組んできており、充実し てます。研究所の成果なども論文が出る度にホームページに出まして、Pub Medのアブ ストラクトまで飛べる状態で情報発信に努めています。情報発信に対するアクセスは研 究所の日本語部分でも月に6万件、英語ページに対して4万件となっています。  研究支援体制の中で、これからもさらに強化していかなければいけないものとして、 知的財産権の取得があります。3年間で計53件の申請がありますが、今後さらにTLO ヒューマンサイエンス技術移転センターなどの協力を得て、ここを強化していかなけれ ばいけないと考えています。  8頁の上に書いてありますが、研究所での基礎的な研究成果を臨床に、予防の現場に 実用化することについての取組みをさらに強化すべきだと指摘されました。そのために は民間との共同研究の推進も必要である、あるいはトランスリレーショナル・リサーチ の枠組みをもっときちんと強化すべきである、JCOGとして臨床試験の体制ができて いますが、それをさらに強化すべきであるという指摘をいただきました。これは臨床研 究を強化していくという体制の問題でもあり、我々のところだけではなくて大きな問題 として、これから議論し、取り組んでいかなければいけない課題だと思っています。  10頁に、こういういろいろな評価を受けたことに対する対応が載っています。幸いに も「第3次対がん10か年総合戦略事業」をお認めいただいて、いま推進している中で、 その中で大きな成果を出そうと取り組んでいるところです。息の長い、他ではできない 研究にきちんと取り組むべきであるという意味もあって、がん予防・検診研究センター 内に情報研究部と予防研究部を設置して、そういう研究をより強化しました。さらに、 そのトランスリレーショナル・リサーチを強化すべきということで、研究所の支所を東 病院の中に組み入れて、医療職にして、臨床開発に特化した研究センターにすることの 制度更新もされました。バイオインフォーマティクスの専門家を育てることも大事です ので、それにも取り組んでいますが、そういったものも含めて、患者さんの声もあって 実現に向かっている「がん対策情報センター」の中で、取り組んでいきたいと思ってい ます。 ○矢崎部会長  委員の皆様から何かご意見はございますか。 ○笹月委員  私の質問はがんセンター特有の問題ではなくて、我々を含めてナショナルセンターの ことです。科学研究開発の評価というときに、科学研究開発機関としたときに、センタ ー全体を見たほうがいいのか、研究所だけでいいのかというのを最近疑問に思いまして、 例えば「厚労科研費をもらっているものが対象」と指針には書かれていますので、本来、 病院に所属する研究者も外部評価の対象にするほうが病院の研究の活性化、評価、セン ター全体の成果の評価という意味では相応しいので、私どもはそのように考えを少し切 り替えるべきではないかと考えているところがあって、ご意見を賜りたいと思います。 ○廣橋所長  私も常々そう思っています。国立がんセンターにおいてはこの研究所で行われている 研究評価委員会の他に、各部門の総合的な活動に関して全体的に高所大所からご意見を いただく顧問会議を開いております。しかしナショナルセンターとしては、臨床研究の ための人員も確保して、臨床研究体制ができる状態をつくって、それをきちんと評価す るというのが非常に重要なのではないかと思います。基礎研究だけではなくて、臨床研 究も含めて全体が評価されるようになるのが望ましいと思います。 ○長谷川委員  評価を実際に行った評価委員会の委員長がご説明になる、というのがすんなりくるの ですが、どうしてそうなっていないのでしょうか。 ○林研究企画官  いまご報告をいただいた中に入っていたかと思いますが、これは評価をいただいて、 それに対する研究開発機関の対応もいちばん最後に入っていたと思いますので、そこま でを含めて機関の方からご説明をいただいたということです。 ○長谷川委員  この前、文科省関係のすごく大きなお金のプロジェクトに関する評価委員会で、外国 人も含めてのもので全部英語で評価をする委員会があったのですが、そのときも同じよ うな体制で、評価委員会が、こういう報告を受けてうちはこうだったということを、そ の長が説明していました。外国人委員も含めて、そのやり方に違和感を感じた人はたく さんいました。それは独立して同じところに2人が同席せずに両方話すのが筋ではない かと、この件だけのことではないのですが、そのやり方自体も検討いただけたらと思っ ております。 ○矢崎部会長  大変貴重なご意見だと思いますので、今後もまた事務局と検討させていただきたいと 思います。廣橋先生、若林先生、ありがとうございました。 (廣橋所長、若林副所長退席) ○矢崎部会長  次に議題6、戦略研究課題の進捗状況のご報告をお願いします。 ○林研究企画官  平成17年度からスタートした戦略研究について、進捗の報告をします。具体的には循 環器疾患等総合研究事業における、糖尿病予防のための戦略研究と、こころの健康科学 研究事業における自殺関連うつ対策戦略研究の2つが開始されています。  昨年6月の第25回の本部会で、それぞれの戦略研究の研究実施団体について報告させ ていただきましたが、その後、各財団でシンポジウムを開催するなどして戦略研究のリ ーダーの公募、選定が行われて、現在各リーダーの先生方が研究の準備を進めていると 聞いています。詳細については資料6−1、資料6−2に沿って説明させていただきま す。 ○中野補佐(生活習慣病対策室)  矢崎部会長から配付いただいたカラー刷りの資料で、『Nature Medici ne』に関して簡単にご説明します。こちらに関しては糖尿病戦略研究に3つの課題が ありますが、その1つの課題の研究リーダーである東大の門脇教授と、主任研究者であ る財団の中に置かれた運営委員会の委員長である矢崎先生が、『Nature Med icine』に投稿され、取り上げられた内容ということで、日本における糖尿病の戦 略研究をご紹介いただいたものと理解させていただいています。簡単なご説明で申し訳 ありませんが、事務局からの説明に関しましては配付資料6−1に基づいてご説明をさ せていただきます。  最初の上の枠の中に、これまでの進捗状況を取りまとめたものがあります。これを詳 しく説明したものが以下の枠内に順次お示ししています。2頁の上の枠をご覧ください。 本年度から実施されていて、今年度は約8億円で国際協力医学研究振興財団が主任研究 の団体となって実施しています。5年間の実施予定の研究で、本年度は1年目というこ ともあり、また初めての試みですので、透明性、公平性という観点から、しっかりした 実施体制をつくることに主眼を置いて実施させていただいています。  その体制に関して2頁の下の枠以降にイメージ図で説明しています。これは昨年3月 18日の本部会で提出した資料4の「戦略研究創設に係る検討状況報告」という資料に基 づき作成したものです。  また、戦略研究の特徴である成果、アウトカムと研究方法に関しては3頁の下の枠に あります。本部会の委員でもある黒川先生が主任研究者となった「戦略的アウトカム研 究策定に関する研究」を基に、そういったベースに昨年の部会での資料を事務局から提 出させていただき、アウトラインについてご了承いただいたところですが、その具体的 な内容に関して4頁の上の枠にあります。ただいま、その黒川班のもの、あるいはこの 部会でご了承いただいたものをベースに、研究のリーダー及び財団の事務局とで、最終 的な具体的な内容に落としていく作業をしているところです。  その内容としては、まず研究課題は3つあります。1つはアウトカムが耐糖能異常か ら糖尿病型への移行率の半減、それを基に地域・職域の指導者を対象に生活習慣の介入 をしていく。2番目が、糖尿病患者の治療の中断率を半減するという成果目標で、地区 の医師会のかかりつけ医で治療する2型糖尿病患者を対象として、「診療支援群」と「通 常診療群」ということで割付をして、医師会で対象としたパイロット研究から開始して いくという段取りです。3番目が、糖尿病合併症の進展を30%抑制していくというアウ トカムを基に、研究方法としては糖尿病専門医を擁する病院に通院する高血圧、高脂血 症を合併した2型糖尿病患者を対象にしています。「強化治療群」と「通常治療群(コ ントロール群)」に割付をして、強化治療群では厳格なコントロールをして糖尿病合併 症の進展に及ぼす効果を検証していくという内容で考えています。そういった研究の概 要のイメージ図が下のものです。  続いて、これまでの経過に関して、5頁の上のような経緯で研究のリーダーの選考・ 決定をして、順次研究を進捗させている状況です。具体的には研究リーダーとしては、 研究課題1は国立病院機構の京都医療センターの院長である葛谷先生、課題2は富山大 学の病院長である小林先生、課題3に関しては東京大学の教授である門脇先生が選考さ れています。  それぞれの課題ごとの詳細な進捗状況を示したのが6頁です。研究リーダーのアドヴ ァイザー委員会を開催したり、プロトコールを提出したり、黒川班とのヒアリング説明 会、リーダーの公募説明会、支援組織の公募等々、上から順番に流れていくような形で、 日にちが入ったものについてはすでに実施されています。予定のものも含めて、この中 に記しています。  こういった現在の進捗状況について、今回2月6日に開催された循環器疾患等総合研 究事業の成果発表会において、国際協力医学研究振興財団より発表がありました。その 発表を受けて、循環器疾患等総合研究の中に設置している中間・事後評価委員会からコ メントをいただいて、評価をいただいているところです。  その評価としては、大きく評価できる点、推進すべき点と、疑問点、改善すべき点、 その他助言等があります。評価できる点のほうが多くコメントをいただいています。具 体的には「アウトカムの目標値を設定した介入研究の方法は評価に値する」「初めての 大規模研究であり、よく計画されている、成果が期待できる」「これだけの作業を行っ た研究は初めてであり、今後の成果を期待したい」というコメントがありました。一方 で改善すべき点に関しての助言は、「研究課題1の進捗が遅れている」「計画と組織が かなり複雑であり、もう少し簡略化できるといいのではないか」というコメントがあり ました。特に課題1と課題2については、「プロトコールを第一線の研究分担の先生方 に十分に周知をする必要があるのではないか」というコメントをいただいています。こ のコメントに関しては財団にお伝えさせていただき、今後戦略研究の推進に役立ててい ただくようにと考えています。以上で終わります。 ○矢崎部会長  次にうつの説明をお願いします。 ○黒木主査(精神保健福祉課)  こころの健康科学研究事業の戦略研究課題の進捗について説明させていただきます。 資料6−2をご覧ください。背景と経緯ですが、我が国の自殺者数は年間3万人を超え る高率で、横這いの状況が続いています。自殺率は世界10位で、G7の中でも最高率で、 自殺数減少に向けた取組みが重要かつ緊急の課題であると言われています。そのため、 全国各地の先駆的な取組みの経験を踏まえて、大規模多施設共同研究で効果的な支援方 法に関するエビデンスを構築し、今後の政策立案に役立てることが必要です。また、地 域特性に応じた複合的自殺予防プログラムの開発、自殺企図者の再発防止策の開発が必 要となっています。  資料6−2の3頁のパワーポイントの図を中心に説明させていただきます。そのため 研究課題として2つ挙げています。まず1つは、複合的自殺対策プログラムの自殺企図 予防効果に関する地域介入試験、もう1つは自殺企図の再発防止に対するケースマネジ メントの効果、多施設共同による無作為化比較研究を行うとしています。  1つ目の地域介入試験の内容です。地域特性に応じた1次から3次までの様々な予防 対策を組み合わせた複合的自殺予防プログラムを介入地区で実施して、通常の自殺予防 対策を行う対照地区と比して、自殺企図の発生予防に効果があるかどうかを検証いたし ます。また、近年の急激な自殺の増加が見られる首都圏や阪神圏などの大都市部におけ る、自殺企図に対する効果的な介入のあり方についても開発し、その有効性を明らかに していきます。  9頁の進捗の図をご覧ください。この1つ目の研究課題については、昨年10月に研究 リーダーとして慶應義塾大学の大野先生、サブリーダーとして岩手医科大学の酒井先生 を選出して、その後に研究班会議を計3回行っていまして、研究プロトコールを作成し ています。  2番目の自殺企図の再発防止に関するケースマネジメントの効果に関しては、救急医 療施設に搬送された自殺未遂者に対して、精神的な診断及び教育と共に、ケースマネジ メントやITを利用した情報提供を行い、通常の対応と比較して自殺企図再発の防止に 効果があるかどうかを検証します。また、自殺未遂者の研究登録時点での精神科的状況 (診断・治療の有無、薬物治療状況、社会適応状況)などについても調査します。こち らについても昨年10月に研究リーダーとして横浜市立大学の平安先生、また戦略研究顧 問として昭和大学の有賀先生を選出し、昨年12月から計4回研究班会議を行い、研究プ ロトコールを作成しています。これによって、研究の推進により地域における利用可能 な複合的自殺予防プログラム、自殺企図の再発防止方法を確立することによって自殺率 の減少を目指すこととしています。  9頁の研究実施工程です。現在、地域班計画書、救急班計画書の評価委員会、倫理委 員会による評価を受けていまして、その後に研究が実施される予定となっています。以 上です。 ○矢崎部会長  プロトコールとアウトカムを決めて研究を進展させる初めての試みの戦略研究、2つ のテーマについて進捗状況をご報告いただきましたが、コメントはございますか。よろ しいでしょうか、これから本格的に始まるということです。今後も随時報告申し上げる ということで、よろしくお願いします。  次は厚生労働科学研究における不正に対する今後の方針についてお願いします。 ○林研究企画官  資料7−1、資料7−2をご覧ください。まず資料7−1です。厚生労働科学研究費 補助金における不正経理等の取扱いについての案で、「経緯」のところです。厚労省で は、競争的研究資金の不合理な重複及び過度の集中の排除等に関する指針、競争的研究 資金の関係省庁申し合わせというものですが、これに基づいて競争的研究資金の不正経 理等の取扱いの検討を進めてきましたが、今回各府省における本件の取扱いも参考にし ながら、以下に記載のとおり、平成18年度の厚労科研費補助金の取扱い規程の改正を行 うこととしています。  「要点」です。第1点目は、厚労科研費補助金の交付の決定が取り消され、しかもそ れが補助金の他の用途への使用が認められた場合には、すでに補助金の返還が命じられ た翌年度から2〜5年間補助金を交付しないとなっていますが、今回その年数について、 どういう場合に何年とするのかという具体的な考え方を定めることを考えています。そ の下の表に、補助金の他の用途への使用の内容と、対応する交付しない期間を示してい ます。これは文科省がすでに示している基準と横並びの基準となっています。  2頁です。第2点目は、他府省または独立行政法人が所管する競争的研究資金におい て、一定期間交付しないこととされた者については、それと同じ期間、厚労科研費から も補助金を交付しないこととするというものです。これも関係府省の申し合わせの指針 の中で、関係府省と不正経理等を行った者等の情報交換をすることとなっておりまして、 これに基づいて厚労省も他の競争的研究資金において研究費を交付しないこととされた 期間、厚労科研費補助金の交付をしないという扱いにするものです。文科省もすでにこ ういう方針で検討中であることを承知しており、それに合わせる方向で改正を行うもの です。  資料7−2です。こちらは研究上の不正に関する対応についての案です。まず「現状」 です。平成17年12月27日に答申のあった第3期科学技術基本計画(案)の中で、総合 科学技術会議は、研究上の不正に対して「国及び研究者コミュニティ等は、ルールを作 成し、科学技術を担う者がこうしたルールに則って活動するよう促していく。ルール形 成に当たり総合科学技術会議は関係府省と連携をとりつつ、先見性をもって基本ルール 作りに関与する」ということが書かれています。  その下で、平成18年2月28日の総合科学技術会議本会議において、「研究上の不正 に対する適正な対応について(案)」というペーパーが検討されて、その中で各省に対 しては、不正が明らかになった場合の研究費の取り扱いを、所管の研究機関に対しては、 研究上の不正に関する規定の策定及び不正の防止に向けた対応を本年の夏までに結論を 得ることとされています。これを受けて厚生労働省では、「厚生労働省の考え方」とい うところで、内閣府、関係各省と連携しつつ、基本方針を検討して、その結果は本部会 で改めてご審議いただいて、最終的には基本方針を我が省で所管している競争的研究資 金等の関係規程に盛り込むとともに、所管の各機関に対しても基本方針の内容に沿った、 研究上の不正に関する規程の策定等をお願いする予定だということです。  次に「他省庁の状況」ということで、参考で書いています。すでに文科省、日本学術 会議では、こういった不正に対する対応に関して検討中、あるいはこれから検討しよう としているところであるとか、理化学研究所でも研究上の不正行為への基本的対応方針 が、すでに制定され、公表されていますので、そういったものも参考にしながら我が省 でも検討していきたいということです。説明は以上です。 ○矢崎部会長  この件に関していかがでしょうか。 ○北村委員  研究上の不正経理と、研究上の不正の処分のあり方はよくわかりましたが、これと各 機関における行政的な処分の関係は、何かつくるのか、あるいは各施設、大学であれば 大学の特別委員会の判断に任せるのか。例えば不正経理等で5年間支給されない場合に は、それ相応の行政上の処分を考えるのか、教えていただきたいと思います。 ○林研究企画官  その点は今後の検討の課題の1つだと思っているのですが、それぞれの処分は独立し たものとして行われることが基本になると思います。ただし、それぞれが全然懸け離れ たものであるというのもおかしな話ですので、そこはどういう整理をするのかをよく考 えて、こちらのほうの研究費の取り扱いも決めさせていただきたいと思っています。 ○垣添委員  例えば厚生科学研究費をいただいた主任研究者は取り扱いに従うと、どのようにすれ ばいいのですか。つまり、厚生科学課にこういう例があるということを申請するのか、 疑惑の研究者の取り扱いをどうすれば実効をもたせられるのかを教えていただきたいの ですが。 ○林研究企画官  まず不正経理の話と、後でご説明した捏造とか、研究上の不正とは分けてご説明させ ていただきたいのですが、まず不正経理のほうは主任研と分担研とが連座することには なっていません。不正を働いた方に対して、研究者個人に対して処分を考えることにな ります。それから研究上の不正に関しては、まだ未整理でこれから検討させていただき たいと思います。 ○矢崎部会長  難しい課題で、これから対応をしっかり考えていくことになると思います。その他に はよろしいでしょうか。次の課題の独立行政法人に係る法律整備に関する検討です。 ○林研究企画官  独法関係の法案のご説明です。平成13年4月に独法制度がスタートして、第1期目の 中期目標、中期計画期間の5年間の期間が、平成17年度で終了しました。対象となる独 法の業務全般について見直しが行われてきました。資料8です。厚労省関係では3つの 独立行政法人が対象となります。産業安全研究所、産業医学総合研究所、国立健康・栄 養研究所です。この3法人が見直しの対象となりまして、今般の法案策定の運びとなっ たものです。  法案の内容は1頁の枠の中にあります。今後の行革の方針等に基づいて、1つは産業 医学総合研究所を産業安全研究所に統合して、独立行政法人労働安全衛生総合研究所に するということです。2番目として労働安全衛生総合研究所と国立健康・栄養研究所を 非公務員型の独立行政法人に移行すると、これは官民の交流を盛んにするためです。本 日の午前中に衆議院厚労委でも審議が行われているところで、施行期日については1頁 の下にあるように平成18年4月1日の予定です。資料8の2、3頁にそれぞれの独法の 概要を付けています。説明は以上です。 ○矢崎部会長  ただいまの説明に何かご意見はございますか。今後ナショナルセンターも独法化とい う話もありますが、これは4月1日からですね。 ○林研究企画官  資料8に挙げている3法人については、既に平成13年から独法化をされていて、今回 の統合あるいは非公務員化の見直しが、この法律の施行に伴って行われるということで、 それが4月1日からだということです。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。それでは本日の議題はこれで終了いたしますが、事務局から連 絡事項をお願いします。 ○林研究企画官  次回は4月19日(水)の午前10時から12時で、場所は今日と同じ省議室を予定して います。正式なご案内は詳細が決まり次第お送りさせていただきますので、よろしくお 願いします。 ○矢崎部会長  今日は大変たくさんの議題を検討していただきまして、誠にありがとうございました。 これで終了いたします。 −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 1 -