06/03/01 第7回腎臓移植に関する作業班議事録   腎臓移植に関する作業班(第7回)   議 事 録      開催日:平成18年3月1日(水)      場 所:厚生労働省共用第7会議室 ○高岡主査 定刻になりましたので、ただいまから腎臓移植に関する作業班(第7回) を開催させていただきます。  皆様にはお忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。  本日は議事に即しまして、横浜国立大学の辰井助教授及び日本臓器移植ネットワーク の菊地チーフコーディネーターを参考人としてお呼びしております。  御議論いただく前に、臓器移植対策室長よりごあいさつをさせていただきます。   ○片岡室長 臓器移植対策室長の片岡でございます。  本日は雨の中、お越しいただきまして大変ありがとうございます。  昨年、もう1年データが出そろったところでもう1度議論をしましょうということで あったかと思いますが、そういうことから、今回、開かせていただいております。   ○腎移植については、一昨年に比べて昨年は若干少なかったような状況でございまして、 まだまだ努力していかなければいけないと思っております。今回のレシピエント選択基 準とは直接関係するものではございませんが、移植医療の推進に向けて今後ともどうぞ よろしくお願いいたします。   ○高岡主査 それでは、大島班長に議事進行をお願いいたします。   ○大島班長 1年前にこの会議を開きまして、もう1年たってしまったのかという感じ ですが、新しいレシピエント選択基準を用いて、それなりのデータも出てきました。先 生方は学会とかいろんなところで見られて、その辺の状況については御存じだと思いま すが、この検討会で決めたことが具体的な国の方針につながっておりますので、改めて この検討会で客観的なデータをシェアして、現時点でどのように考えるのかというコン センサスを得たいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  最初に、事務局から資料についての説明をお願いします。   ○高岡主査 それでは資料の確認をいたします。  まず議事次第、資料一覧、座席表、班員名簿がございます。  資料1 腎臓移植レシピエント選択基準について、これは9ページまであります。  資料2 レシピエント選択基準変更前後のHLA不適合抗原数・ドナー年齢・阻血時 間等について、これは現在の腎臓移植実施状況について記しているものでございます。 これが全部で8ページあります。資料は以上です。   ○大島班長 続けて、論点についてお願いします。   ○高岡主査 資料1の腎臓移植レシピエント選択基準について御説明申し上げます。  1.経緯ですが、平成7年に制定されました腎臓移植レシピエント選択基準は、阻血 時間短縮のために都道府県内配分を中心とすること、小児患者と長期待機患者の優先度 を上げることを目的として、平成14年1月に選択基準を改正しました。  変更後は、平成16年12月に臓器移植委員会、平成17年1月に腎臓移植に関する作業班 の前回の会議において議論がなされました。  2.現状につきましては、後ほど臓器移植ネットワークの菊地コーディネーターに説 明していただきます。  3.検討のポイントですが、搬送時間の状況について、小児患者の評価について、待 機年数・透析年数の評価について、生着率・生存率等の移植成績について、透析離脱不 能及び移植後1年以内の死亡事例について、HLA適合度の評価について、都道府県内 配分の状況について、その他の事項について検討していただきます。  2ページに、今まで先生方に御議論いただきました主な意見を記載しておりますので、 参考になさっていただければと思います。  4ページに腎臓移植レシピエント選択基準骨子(案)をつけております。これは平成 13年9月の臓器移植委員会の資料ですが、平成14年1月に腎臓移植レシピエント選択基 準が改定された時にどのようなことがポイントとなったかということが記載されていま す。  5ページ、6ページは現行の選択基準をおつけしています。  7ページ以降は旧基準をつけております。  次に資料2の現在の腎臓移植実施状況について、菊地さんから説明をお願いいたしま す。 ○菊地参考人 スライドを用いて説明いたします。  旧基準につきましては1995年4月1日から2002年1月9日までの総数1,074名の分析 です。これは昨年報告したものと同じです。  新基準につきましては、2002年1月10日から2004年12月31日までの442名の分析を行 っています。  まずレシピエント選択基準変更前後のHLA不適合抗原数・ドナー年齢・阻血時 間の比較です。上段が旧基準、下段が新基準になっています。  HLAのミスマッチ度ですが、DRについては旧基準は0.12、新基準は0.56±0.54と なっています。ミスマッチの数は新基準の方が多いということになります。ABについ ては旧基準は1.28、新基準は2.24です。  ドナーの年齢ですが、旧基準では平均45.4歳、新基準では47.9歳です。  WIT(温阻血時間)ですが、旧基準では7.86分、新基準では7.06分で、余り差はあ りません。  TIT(総阻血時間)ですが、搬送時間の短縮という面ではここが基準になるかと思 います。提供病院と同一県内に所在する移植病院に登録されている移植希望者へ80%の 腎臓がシッピングできるようにという目標のもと、この基準を策定しました。旧基準で は総阻血時間が14.3時間だったのが新基準では12.1時間で、総阻血時間約2時間短くな っています。 ○飯野班員 有意差はあったんですか。   ○菊地参考人 すべて有意差はないです。  レシピエント選択基準変更前後のシッピング・レシピエント年齢・待機時間・透 析時間についてです。  旧基準では、HLAの6マッチはブロック外を含めたフルマッチの希望者にシッピン グするという基準でした。  ここで言う同一県内とは、提供いただいた施設と移植を実施する施設が同一県内であ ったもので28.8%、新基準では、先にも説明しましたが同一県内に腎臓をシッピングす る確率を80%近くにするという基準を策定しましたが、現時点では76.3%です。  ブロック内の県外のシッピング、つまり提供施設が存在する県外へのシッピングです。 旧基準では58.1%、新基準では22.0%で激減しています。  ブロック外は、旧基準ではHLAの数が6つともあった場合は県ブロック内外を問わ ず、フルマッチの方にシッピングするというルールがありましたので、旧基準では13.1 %。新基準ではそのルールはなくなりました。この1.7%というのは膵腎同時移植で、 膵臓と一緒に腎臓がブロック外の移植施設にシッピングされた%を示しています。  小児に移植されたのは旧基準では総数で2.7%でしたが、新基準では8.3%でした。  レシピエントの平均年齢は旧基準44.6歳に対して新基準では45.9歳。待機期間は6.7 年から14.1年と2倍以上に増加しています。  透析年数の平均は旧基準では10.1年であったのが、待機期間の増加に伴い16.4年と増 加しています。  小児移植件数・移植希望者数の推移です。  2001年にこのルールが用いられてから小児献腎移植数は10件、13件、13件、10件と以 前に比べて増加しています。待機患者数についても徐々に減少傾向にあります。2001年 の24名から28名、22名、23名、17名というのは年間登録数を示しています。小児献腎移 植の待機患者は減少傾向にあります。  生存率ですが、旧基準、新基準の1カ月、3カ月、6カ月、12カ月を示しました。 旧基準では98.2%、97.3%、96.8%、95.3%、新基準では96.7%、94.8%、94.3%、93. 4%になっています。  以前こちらでお話をした時に2002年の生存率が非常に悪かったのですが、2003年、20 04年を比べてみますと、12カ月生存率については90.2%が96.6%となり、かなり改善が みられています。   ○木村班員 2003年、2004年の数はどのくらいなんでしょうか。   ○菊地参考人 提供者数が90名前後ですので、移植数は200名弱になります。   ○寺岡班員 2004年が170、2003年が150、2002年が122ぐらいですから、そんなもので すね。   ○木村班員 2004年の生存率というのは、2003年に移植を受けた方のフォローアップデ ータですね。   ○菊地参考人 2003年に受けた方を追跡して、データを集めたものです。  続きまして生着率です。旧基準では1カ月が91.8%、3カ月が89.5%、6カ月が 87.9%、12カ月が85.1%でした。新基準では1カ月が91.2%、3カ月が88.8%、5カ月 が87.8%、12カ月では旧基準を追い越して86.4%となっています。  先ほどと同じように年次推移でみますと、初年度の生着率はここに示すとおりです。 2003年、2004年と進むにつれて生着率、生存率ともによい成績になっています。  選択基準変更前後に移植を受けられた方の待機年数と透析年数を示すグラフです。 ピンクの棒グラフが旧基準、グリーンが新基準です。  左の待機年数は旧基準では0〜5年が多かったのですが、新基準では11〜15年、16〜 20年までの方の移植が多くなっています。  透析年数は旧基準では0〜11年の方が多かったんですが、新基準になりますと11〜20 年近で移植を受ける方が多くなっています。  待機日数と透析日数を比べてみますと、旧基準では待機日数の平均が2,446.8日、新 基準では5.120.3日、年数にしますと6.3年と14年近くになります。透析日数は旧基準で は3.677日ですので10年近く、新基準では6.178日ですので16.9年、17年近く透析を受け た方が移植を受けているということになります。  ○ 移植後のNFK(ノンファンクション・キドニー)・透析期間・死亡・生着率に ついてです。  離脱不能例ですが、旧基準では8.2%、新基準では8.8%でした。  PNF(プライマリー・ノーファンクション)は、旧基準では2.8%、新基準1.4%に なっています。  ここで言う透析期間とは、移植を受けてから移植腎が機能して、透析をしなくてもよ くなった日までの日数です。旧基準では15.1日、新基準では13.1日と減少しています。  移植後死亡は3カ月、6カ月、12カ月で、旧基準の2.7%、3.2%、4.7%に対して新 基準では5.2%、5.7%、6.6%と少し高くなっています。これは先ほどの2002年の生存 率が低かったことが原因しているものと思われます。  生着率は先ほど説明しましたので割愛いたします。  透析離脱不能例とその原因です。  離脱不能は、旧基準では1,074名中88名(8.2%)、新基準では422名中37名(8.8%) でした。  PNFの比率は、旧基準では2.8%、新基準では1.4%となります。新基準では37名の うちPNFが6名、血栓が8名、拒絶反応が7名、手技的合併症が2名、状態悪化は0 名、死亡が10名、薬剤性のものが1名、不明が3名となっています。旧基準に比べて、 血栓の症例、手技的合併症が相対的に多くなっています。  移植後1年以内の死亡とその原因です。  旧基準、新基準ともに5カ月以内に亡くなった方の比率が高くなっています。旧基準 では8カ月、9カ月、10カ月の死亡も多いのに対して新基準ではこの数は少なくなって います。  その原因ですが、肺炎/呼吸器不全が旧基準では18名、新基準では7名。敗血症が4 名と6名、脳血管障害が7名と2名、消化管出血/穿孔/その他が7名と1名、心筋梗 塞/心不全/その他が5名と5名、移植術関連合併症が2名と3名、肝不全が4名と0 名、MOF(多臓器不全)が0名と1名、上腸間膜動脈血栓症が0名と1名、自殺が1 名と1名となっています。  腎臓移植希望登録者の年齢です。これは18年1月4日現在のデータです。  先ほど移植を受けた方の年齢は平均40歳前後と申しましたが、このあたりの年齢の方 が移植を受ける比率が高くなっています。  腎臓移植希望登録者の待機年数です。4年未満が4,821名、5〜9年が4,212名と なっていますが、待機の平均が約14年でしたから、このあたりの方がたくさん移植を受 けていることになります。  腎臓移植希望登録者の透析年数です。献腎移植を受けられた方の平均年数が約16 年〜17年ですから、このあたりの方がたくさん移植を受けているというのが現状です。 以上です。 ○大島班長 ありがとうございました。ただいまの説明も含めて、御質問、御議論をい ただきたいと思います。   ○飯野班員 今の発表でよくわかったんですが、こういう議論をする時に有意差がある かどうかというのが重要だと思うんですね。有意差がないものでふえた減ったというと 傾向だけしかわからないような気がするので、その辺を議論のベースに置いておいた方 がいいのではないかという気がします。   ○大島班長 根拠という時には今の御意見はもっともなことだと思います。数からいけ ば有意差検定は十分できますよね。   ○菊地参考人 はい。検定していただいて、生着率、生存率、その他は有意差はないと いうことです。   ○両角班員 選択基準見直しのためのデータをいただいたわけですが、何を基準として 書いていくことを議論するかという方向性がはっきりした方がいいと思うんですね。移 植がふえていくことが一番望ましいというのが背景にあると思うんですが、それ以外に 成績ということが出てきますよね。成績についていうと、死亡がふえてるというのは気 にはなるんですが、経年的に減ってきたということですね。間違いなくそう理解してい いのか、その辺は大丈夫なんでしょうか。2004年度に行われた移植まではそうなんです が、2005年も同様に低いのかどうか。  移植を受けている患者さんのバックグラウンドが、透析を17年近く受けてる患者さん が一番ピークになっています。しかも現実には20年以上の患者さんが非常に多いわけで す。1年の生存率、生着率を見せてもらったんですが、このルールの中で長期に考えた 時に、これは妥当かどうかということもどこかで検証しなくてはいけないと思うんです ね。その話が出てこないと、1年間だけの生存率、生着率だけで判断していいとしたけ ど、長期という視野を入れない限りは難しいと思うんです。   ○寺岡班員 おっしゃるとおりで、これは2004年ですから、昨年3月に集計したものを 示したわけですよね。2005年度に関しては1月末ぐらいから準備をしてフォローアップ 調査が3月ぐらいに終了すると思いますので、今の段階では出ないということです。1 年のデータしか出ないということがまず一つあるということです。  これは長期に透析しているということが効いてるのか、あるいはそれによって高齢者 になってるということが効いてるのかということで、5年以内、5〜10年、15年上につ いて50歳以上と50歳以下に分けて前回お示ししたと思うんです。どの待機期間とも年齢 によるものが大きい。待機期間が15年以上であっても年齢の若い人はいい、待機時間が 短くても年齢の高い人は悪いという傾向が出ています。  長期の場合は、その中に高齢者がどれだけ含まれているかによって決まると思います。 レシピエントの年齢に関しては旧基準と新基準では差はありませんでしたね。今出まし たのは新基準の方が生存率、生着率ともちょっと悪いんですが、2002年度の成績が非常 に悪かった、死亡が多かったということです。2004年度は、1995年以前の各年度ごとの 生存陸と生着率を全部比較しましたが、成績は一番いいです。2004年度は突出していい んですね。ただ、一つ一つの有意差は比べておりません。各年度のカーブを全体として 有意差を見ておりますので、それでは有意差はありません。  先ほど飯野先生から御指摘がありましたが、2002年度の生存カーブと2004年度の生存 カーブを1対1で比較すれば有意差は出ると思います。きのう夜中だったものですから、 全部まとめてしか有意差が出せませんでした。   ○飯野班員 年齢が効いてるか透析が効いてるかというと、年齢が効いてるということ なんですが、死亡が10例、10例なんですね。ここで平均年齢と平均透析期間がどのくら いなのかがわかれば、死亡の場合は年齢と透析とどっちが効いてるかというのがわかっ てくると思うんですが、その辺はいかがなんですか。   ○寺岡班員 10例、10例というのは、ノンファンクションの原因として10例、10例です よね。ですから全死亡とはちょっと違いますよね。ノンファンクションの中で特に初年 度において死亡が占める率が多かったということですね。   ○飯野班員 全体の死亡ではどうなんですかね。年齢が高い人の方が死亡率は高いんじ ゃないでしょうか。   ○寺岡班員 そうです。特に61歳以上がよくないですね。61歳以上は3年以降の生存率 カーブは急速に低下していきます。   ○柏原班員 2002年の成績が悪いというのは、先ほどから言われているレシピエントの 条件が移植医にとっても不慣れであった。だんだん年を経るに従って成績がよくなって るというのは慣れの現象というか、そういうこともかなり効いてるんじゃないかという 気がするんですが、その辺はどうでしょうか。   ○寺岡班員 一つはそれが否定しきれないと思いますね。慣れというのは因子として分 析しにくいですよね。  もう一つは、2002年から新しい免疫抑制剤が使われ始めたということがありますね。 2002年5月以降に免疫抑制剤ができたわけですが、その免疫抑制剤だけで見てみますと、 2年で92%の生着率があります。これだけ死亡が多い中で、92%の生着率が得られてい るというのはすごいことだと思うんですね。さらにバシリキシマグ、カルシニューリン ヒビター、そしてマイコフェノレイト・モフェチル、この3剤の組み合わせで見てみま すと、その3剤を使ったものに関しては3年生着率が95.5%.Nは96です。多施設のト ライアルで、心停止下での腎移植で3年生着率が95.5%というのはすばらしい成績です。 2002年に出された免疫抑制剤がだんだん定着していって、皆さんが使い方を覚えてきて、 それが成績の改善に貢献しているということだと推定されます。  もう一つは、最初は20何年とか10何年の透析の方が候補者となり、短時間のうちに移 植術前のエバリュエーションが十分にできないということが成績に影響していたと推定 されますが、それに対する対策を十分立てられたことが成績の改善につながったのでは ないかと考えられます。ただ、これを立証することは難しいと思います。  先ほど申し上げましたように、カルシニューリンヒビターと2002年5月以降に使われ だしたバシリキシマグ、それにマイコフェノレイト・モフィチルを使った組み合わせで は3年生着率は95.5%が得られています。これは生体腎移植並みですよね。そういった ことが効いてきてるんだと思います。   ○柏原班員 ドナーの原疾患の種類、頻度というか、その辺は旧と新でそれほど差はな いんでしょうか。   ○寺岡班員 大きくは変わってなかったと思います。ドナーの原疾患別では、一番いい のが脳血管死以外の内因死、つまり心疾患あるいは呼吸器疾患が成績が一番いいんです ね。その次が頭部外傷です。その次が脳血管障害、その次が頭部外傷以外の外因子、つ まり溢頸とか中毒になっています。その割合はそんなには変わってなかったと思います。   ○両角班員 今のルールですと、移植をされる先生方はものすごく難しくて、ストレス が多いというのは事実ですね。それを慣れと技術でカバーしながら、もう一つは新しい 免疫抑制薬が出てきたということでいい成績になってるんですけど、ストレスが大変強 いという話を伺ってことがあります。20年以上の透析の患者さんで高齢になった方とい うとつなぐ血管がなくて、通常の定型的な手術ができない患者さんの比率がふえてませ んか。   ○寺岡班員 血管をつないでも血流が流れないで、もう一回それを流して、腸骨動脈を 切開して、内膜剥離術を行い、その上でつないで、やっと流れるということもありまし た。  また、私どもが経験しましたのは、移植までに2日ぐらい余裕があったからわかった んだと思うんですが、検査をしてみますと右腸骨間にマスがあるということで、それを 調べましたらツベルクーマで、結核の肉壊死があった。その患者さんには辞退していた だきましたけど、長期の間にいろいろな隠された病気があって、しかも短期間にエバリ ュエーションしなければいけないという難しさは確かにあると思います。その辺はかな りストレスだろうと思いますね。   ○柏原委員 移植後1年以内の死因のところでも、新規の方で心筋梗塞の例が旧より高 いとか、上腸間膜動脈血栓症があるとか、動脈硬化の症例がふえているので、術後管理 は大変だろうなと思いますし、その辺にレシピエント選択の一つのポイントがありそう な気がします。   ○寺岡班員 透析期間が長いと、カルシウムとリンの積が高い場合は、血管内に石灰化 が起きている。そういう症例は、腎動脈をつなぐところがない。つないでも流れにくい。 そのためには非常に苦労をしてグラフトを断ったりいろんなことをしなければいけない。 また、腎移植が技術的にうまくいったとしても、心筋梗塞などを起こしたりする確率が 高いというのはまぎれもない事実です。  上腸間動脈に関しても、CTで見ると石灰化で、これでよく詰まらないなという狭窄 があることが多いですね。透析期間が長いということ、現在の透析はカルシウムが高く なりますから、カルシウム、リンが高くなってきて、血管系のいろいろな問題につなが ってるんだろうと思います。   ○両角班員 もともとのルールを見直しをしたいという時に、搬送時間を短くするため に搬送距離を短くるということに関しては県内80%が目標で、76%強だったですから、 ほぼ達成されたということでよろしいですね。  組織構成でHLAのミスマッチがDRに関してもABに関してもミスマッチの数がふ えてるんですけど、最近の免疫抑制薬に関していえば、リジェクションがふえたとかバ リアになってないということで、それもクリアできたわけですね。そうすると残るのが 患者さんの死亡のところになってくると思うんですね。1対1対1という3つをほぼ同 じポイントでという形で動いたわけですけど、登録後の期間が長いということをどう考 えるかというのが一番の問題点だと今は理解していいのか。ディスカッションすべき他 の因子があるんでしょうか。   ○飯野班員 選択基準は3つのポイントがあって、搬送時間、HLA、待機日数ですよ ね。HLAの適合度を少し低くして、待機日数のウエイトが少し大きくなったためにこ ういうふうになったわけですね。手術のやりやすさとか、成績を中心に考えるのか、あ るいは患者さんの公平、公正を担保するにはどうすべきか、そういうウエイトの問題に なってくると思うんですね。   ○木村班員 新しい免疫抑制剤が出てきたために、ほかのファクターを同じにしていて も予後がよくなってしまった。どういうところに重点を置いてディスカッションしなく てはいけないかというのが難しくなってしまったような状況にありますね。2003年、20 04年以降だけに絞ってみて、阻血時間の長さによって予後がどう変わったかとか、透析 期間がどのくらいで予後が変わるかとか、そういう解析をやらないと、ディスカッショ ンのデータが出てこないように思います。   ○大島班長 長期の透析患者に移植をやればリスクが高まる。リスクが高まれば、より 高度な技術が要求される。より高度な技術が要求されるということは、成績もある程度 落ちることは覚悟せざるを得ないというストーリーが、あらかじめ読めるわけですよね。 その時の一番基本的な議論は、公平とは何なのかということで、個人にとっての公平を 考えた場合にそれを担保するのはウェイティングタイムしかないのではないかという話 で、1対1対1という形にしたのが前回の議論の結果だったと思うんですね。  個人の公平性を担保することと成績というのは同じ土俵では議論できないような感じ がするんですね。同じ土俵に上げるとすれば、提供された臓器を公共財と考えた時に、 公共の財をいかに無駄なく有効に使うかというところで、成績が悪いものよりも成績の いい方向に有効に使うべきではないかという議論があるのかなと思って聞いてたんです が、辰井先生、いかがですか。   ○辰井参考人 大島先生がおっしゃったように、成績と公平性を同じ土俵で論じるのは 難しいと思います。公共財を有益に使うという観点でも、有益にということの根拠が成 績にあるわけですよね。そのために犠牲にするというのは難しいと思います。  最初の方のお話を伺っていて、年齢が高いとか待機期間が長い場合、移植を行わない 場合と行った場合を比較して、行った場合に本人が得られる利益は余り大きなものでな いかという判断ができるのではないかという感じがします。長い間お待ちになった患者 さん本人にとって移植をすることは他の人がやる場合に比べてよくないということが言 えるのであれば、その点は考慮できるのではないかという感じがします。   ○寺岡班員 その方がその時点でさらに透析をやる場合と移植をやる場合との生存率を 検討しなければいけませんよね。その人がそのまま透析をやった場合は生存率が非常に 悪いですから、そこだけからは言えませんよね。短い方に比べてその方は生存率が悪い から移植をやるのがいいかどうかというのはすぐには言えないと思うんです。その方が その後も透析を続けた方がいいのか、その時点でも移植を受けた方がいいのかという観 点で話を進めないといけませんので、そういう視点も加えていただければと思います。   ○両角班員 前回、ルールの見直しをして、変更するかもしれないという前提で見直し をしてると思うんですが、変更したものの評価は何で評価をしたのかというのが決まっ てないものですから、それがない中でどうやって変えていくのか。ディスカッションを どうするのか非常に困ってるのは、それに対する評価はだれがどのようにするのかとい うことについてはどのように理解したらいいんでしょうか。   ○大島班長 考えられる事態としては、全く思いもしなかった結果が出たという場合が あって、これは考えようじゃないかというのは全体の中ですぐコンセンサスができる話 だと思うんですね。今の事態は想定内の範囲の話だろうと思うんですが、想定内の話で あるとすると、次に動く時にどういう基準をもってくるかというのが重要な話になって きますが、そこの議論は全くされていません。   ○両角班員 日本の中だけのルールを考えていればいいのか。ネットワークの制度がど んどん育っていって非常にふえていった時に、米国はこうです、ヨーロッパはこうです という成績の比較をすることを想定しているのか。今のシステムの結果は長期になると 成績が悪いので、日本のキャダベリックの成績は長期に悪いということが予測されるシ ナリオになる可能性があますよね。それを想定しなければいけないのか。そうではなく て、今は日本の献腎の制度を育てていく段階でのことであって、あくまでもテンタティ ブなものと理解するのか。始まってから結構な年数がたってきたわけですから、そろそ ろ考えなければいけない状況だと思います。  移植の成績に関していうと、免疫抑制薬とか技術の進歩については行きつくところに きてますから、これ以上よくなることは難しいですよね。   ○大島班長 もともとアロケーションのシステムを変えた時の問題点というのは、遠方 へ送ることによって成績が悪くなってきてるというのが1つですよね。もう1点は、全 国シップのために不公平さが出てきて、地域のアクティビティが顕著に落ちてきてる。 そのことによって全体の臓器提供数にも影響が出てきてる。それが2つの大きな問題点 だったんですね。  それを解決しようということで今のシステムにして、何が解決できたかというと、地 方に腎臓が集中したというのは解決ではないんですね。システムを変えることによって 臓器提供がふえてよかったというのは解決なんですね。ただ、県内で80%確保されたと いうのは、その次のステップにつながります。今のところは落ちがとどまったなという 段階から、少しずつ上向きかかってるかなというところです。  もう一つの成績の方は、かなりリスクは高いんだけど、前回と比べて有意差が出るほ ど悪い状況ではない。成績の方は1年前が少し落ち始めたということがあったので、満 足できないという議論もあるかもしれませんけど、そんなにひどい状況にはないという 判断ではないかと思っています。   ○寺岡班員 2004年度に関しては、95年以来、生存率、生着率とも一番いいんですね。 ただ、旧基準で今の免疫抑制剤をやればもっとよくなったと言われれば、そうかもしれ ませんね。  もう1点、最近は登録者が減ってるということがありますね。今の制度ではいけない んじゃないかという一つの根拠に、今は10年、15年待たないと移植が受けられないとい うことで、新しい人が登録をしなくなってきてる。前回もそういう議論が出ましたね。 そういうファクターも一つあるだろう。  さっき大島先生が大事なことを言われましたが、この配分ルールになって献腎の状況 がどうなってきてるかというと、このルールになって、今までほとんど出なかった県で かなりふえてきてる。ところが非常に大きく出ていた県で減ってきているという逆転現 象があります。これまで年間平均1件未満のところ、2件未満のところがかなり出るよ うになってきているところもあります。そういう意味では県の中でやるということのイ ンセンティブがかなり効いてきていることは事実です。それが今まで多かったところが 減った分を完全にカバーするほどまでにはまだいってない。この傾向がどうなるのかと いうことも見ていく必要があると思います。  さっき両角先生が言われた待機期間の点数を低くすることが県のこの動きを阻害する ことにはなりませんが、だからといって今の点数の配分を少し動かすことに関して私は 阪大と申し上げてるわけではないんです。もう一つのファクターは、登録者の数がどん どん減ってきているのがどうなのかということもあるだろうと思います。  これをコピーしていただけますか。   ○菊地参考人 資料2の最後のページに登録者の推移を添付してございます。   ○飯野班員 登録者が減ってるというのは分析すると、待機日数がふえてることが一番 大きいんですかね。待機日数が長いからというよりも、出ないからじゃないでしょうか ね。中国へ行ってやる人がいるとか、ああいうことが起こってくるというのは、そうい う面もあるんじゃないかなという気がします。   ○菊地参考人 登録を取り消される方のコメントの中には、10年も20年も待てないと言 われる方もおられます。   ○飯野班員 改正の方向性としては、待機日数のウエイトを減らすべきだと思います。 それから若い人に優先的にやる。これは前に否定されましたけど、この前の腎移植学会 でもイギリスではそうやってたという話がありました。50歳までは点数のウエイトをつ けていくというやり方だと思います。社会的なリソースとしてそういうものを使うとい う意味では十分理由づけができると思うんですけど、反対の方もいらっしゃると思いま す。   ○寺岡班員 いろんな方々の御意見があったので、簡単に紹介していいですか。その一 つとしては、腎移植にも医学的緊急性を入れたらどうだろうか。5年ぐらい前に黒川班 で医学的緊急度をどうやってつけるかということをやりましたけど、イギリスでは移植 しかできない患者さんには高い点がついて、そういう方は優先されるということがあり ます。そういうものをつけるかどうかという意見があったことは事実です。  ワンキープ、ワンシェアということを強くおっしゃってる方もいらっしゃる。ワンキ ープ、ワンシェアだと露骨なので、提供した施設で登録している患者さんのポイント数 を上げるべきだという意見もあります。いろんな意見があって、それに対して話は賛成、 反対というよりも、幅広い意見があった方がいいと思いますので、御紹介しておきます。   ○大島班長 前回の鬼怒川でのシンポジウムの時に患者団体から、とにかく臓器の提供 をふやしてほしいという要望がありました。臓器提供をふやすことが移植を受けるチャ ンスが広がることになるので、一見、個人の権利とか患者の権利を抑制するような形で あっても、臓器提供をふやす政策を優先的に取り上げることによって、とにかく絶対数 をふやす。もともと移植を受けることが目的ですから、そういう考え方の方が、現状の ように少ない状況では優先度が高いのではないかという意見を患者団体から言われて、 確かに意味があるなと思いました。  我々がよく議論してるのは、Aという病院で臓器が出た場合、1つの腎臓は提供した 病院に優先的に使う権利を与えるというやり方をすると、その病院が頑張って提供に努 力をする。それが日本全国に広がれば、全体としては大きな底上げになるのではないか。 しかし患者は自分で病院を選ぶのではなくて、この病院でやってもらいますということ になるので、患者の権利が狭められるかもしれない。けれども移植のチャンスは広がる 可能性が高い。そういう考え方もあるんですね。  こういう事を移植医が言うと一時、社会からぼろくそにたたかれたんですが、「あな た方は患者のためだと言ってるけど、自分たちが移植をやりたいだけの話だ、自分のや りたいことをやろうとするために患者を利用してるだけじゃないか」という言い方で社 会からたたかれた。当時は患者団体も社会のそういった考え方と一緒になって移植医を たたいたことがあって、そういうことを言うのはタブー視されてるんですね。  世界で最も臓器提供の多いスペインでは、臓器提供に努力をした病院、移植医はまず 最初に臓器を使う権利があるというシステムをつくり上げて、世界で最も多い臓器提供 数を誇ってるという状況があるのも事実なんですね。このような考え方をどう考えたら いいんだろうかというのが1点です。  もう一つは、今のように膠着状態になってる時に、こういう問題もある、ああいう問 題もある、どちらを選んだらいいんだろうかと議論をして、ここで決めろといえば何か 結論は出てくると思うんです。しかし顔ぶれを見てみるとみんな移植関係者ばかりで、 移植関係者の集団が方向性を勝手に決めちゃったということになると問題が大きいよう な感じがするんですね。ある方向性を決めていく時の決め方として、どういう枠組みで 決めたらいいかということについてお考えがあれば伺いたいと思います。   ○辰井参考人 2番目はとても難しそうな話なんですが、1番目については前回の時に 県ごとにするということについて、それは公平という観点から問題があるのではないか と申し上げながら、しかし過渡期であって、とにかく数をふやすことが優先されるとい うことで言えば許容範囲ではないかというお話をした記憶があります。病院ごとにした 方が顕著に数がふえることが見込まれる場合には不可能ではないような気がします。そ の場合は、県内の患者は自分はどの病院で登録したいということは選べないことになる んですか。   ○寺岡班員 選べます。   ○大島班長 A、B、Cと病院があって、100人の患者がいて、60人がA病院に登録し て、30人がB病院に登録して、10人がC病院に登録してる。しかし60人が登録してる病 院ではほとんど臓器提供がない。年間を通して0に近い。10人しか登録してないC病院 では年間20例の臓器提供がある。こういう状況が起こる可能性があるんですね。  10人しか登録してない病院に提供が出た場合、1腎はその病院が優先的に使うことに なると、そこに登録している10人に優先的に移植するという選択肢もありますし、ネッ トワークが決めたら、当たった患者はA病院にいるかもしれない。A病院でやりたいと いってるにもかかわらず、1腎は優先的にC病院で移植するというルールにすると、A 病院にいる人にC病院に行って移植をするかと聞いて、嫌だといったら次の人に回しま すという話になりかねないということが起こりますね。   ○辰井参考人 余りよく理解できなかったので、これ以上、この点はお話ししなくても よろしいでしょうか。   ○大島班長 登録した病院で必ず移植ができるとは限らないということです。ネットワ ークで当たったとしても、自分の登録している病院で移植が受けられるかどうかはわか らない。   ○辰井参考人 それはどの程度問題なんですか。   ○大島班長 地域によって随分違うと思います。ほとんど一致する場合もあるし、50% 以上、あるいはもっと一致しない場合もあります。   ○飯野班員 問題点は、患者は病院を選べないかもしれないということと、当たったの を自分が使えない可能性がある。その2つの面があるんじゃないですかね。   ○寺岡班員 輪番制を組み合わせるとそうなるんですね。ネットワークが始まる前は地 方腎移植センターというのが全国に14カ所あって、そこが登録リストを持ってたんです。 各施設も自分のところで血液型ごとにデータベースを持ってたわけです。ある病院が摘 出に行った時には、そのうち1つの腎臓は中央で全体的な選択基準に乗せてやってたん ですね。そこへ行くと、患者も希望する病院でできるわけです。摘出に行った病院の医 師は自分のところへ持って帰って、1つは権利があるわけですから、自分のところのデ ータベースで1位の人に移植するわけです。ですからワンキープ、ワンシェアそのもの は患者は自分の病院を選べるわけです。  名古屋では輪番制といって、当たった患者が順番にいろんな施設でやるようになって るんですね。そのこととは問題が別かもしれませんね。ワンキープ、ワンシェアそのも のが患者が自分の希望する病院でできないということとは違いますけど、ほかにそうい うシステムを加えれば、そういうところもあるということです。ネットワークが発足す る前、1995年3月31日まではそういうシステムで日本で移植がやられてたんです。そう いうシステムのもとでも1989年をピークにしてどんどん減ってましたよね。両角先生が おっしゃったように、確実にふえる方法じゃないかといわれてるのがそういったことだ と思うんですね。   ○両角班員 ワンキープ、ワンシェアで提供施設あるいは提供した施設に関連するとこ ろで使えることになったら移植が劇的にふえるということが起きるとすると、どういう モチベーションだったのかということになる。   ○大島班長 移植医が移植をやりたいというのは何がいけないんですか。   ○両角班員 それで本当にふえるとするなら、どのくらいふやすように努力をしたんで すかということが問われるのが1点と、これでふえなかった時に、いったい何だろうと いう問題が出てきますよね。これは保険医療の枠内で行ってるわけですから、ドネーシ ョンに対して協力することが病院や国にとって有利になることがトータルの医療として 有利なわけですから、それが一番望ましいとみんな思ってるわけです。それが劇的に変 わるのが一番早くふえる道だと思うんですけど、どっちがふえるかというと、ワンキー プ、ワンシェアでふえるかどうか、僕はとても疑問を持ってるんです。その時に起きて くる「これでも変わらないの?」ということが、ふえても言われそう、ふえなくても言 われそうで、ほとんどわからない。   ○大島班長 愛知県でワンキープ、ワンシェアをやってた時には、年間60腎を出してた という実績が事実としてあるわけです。ネットワークが発足した時に、愛知県方式を日 本中に広げるべきだ、広げることによって臓器提供はふえるという主張を私はしたんで すが、圧倒的に少数で、あなたは何を考えてるのかとマスコミからも社会からも袋たた きにあった。移植医が自分たちがやりたいために患者を利用しようとしてるんだと言わ れて、患者側も露骨にそういう言い方をしましたね。そのためにそれが実現できなくて、 愛知県はポシャッてしまった。  大阪もワンキープ、ワンシェアだったんですね。大阪も患者団体からぼろくそにやら れて、やられた結果、その方式がとれなくなって、愛知県と大阪が全国で1番、2番と いう腎臓提供だったんですが、両方ともだめになっちゃったという経緯があるというの も事実です。   ○辰井参考人 移植をしたいというモチベーションは均一に広まっているのですか。移 植医側の移植医療をたくさんやりたいというモチベーション自体が病院や県によって違 うということになると、余り見込めないというか。   ○大島班長 人が何で動くかということだと思うんですね。心臓をやってる外科医が心 臓のいい手術をしたいと思うのと同じで、そのことが患者さんにとってもいいことだし 社会にとってもいいことであって、個人の動機がそれと一致すれば何がおかしいのかな というのが私の考え方なんですが、ある状況によってはそれが受け入れられない。移植 医が「私は移植がやりたいんです、そのために一生懸命努力するんですといって何がい かんのだ」と居直ったら、本当にぼろくそにやられましたよ。   ○飯野班員 僕は内科医なんで、きょうも外来をやって移植の患者さんを何人も診てま すけど、移植の患者さんは喜んでますね。きょう来た人は20何年ついてますけど、そう いう方は喜んでらっしゃるし、透析導入もうちの病院では毎週何人もありますから、そ ういう方に血液透析と移植とCAPD、その3つをきちっと説明します。そうすると移 植を希望する方もだいぶいらっしゃいます。ただ、なかなか当たらない。あるいは出な いということで血液透析に入る方のほうが多いことは確かです。条件が整えば患者さん は希望すると思います。   ○大島班長 大げさにいえば国全体の問題を、どういう形で選択していくのか。外科医 の心情を含めて、いろんな利害というか葛藤というか思いというか、そういったものが 錯綜しながら意思決定の方向に向かっていかざるを得ない部分があると思うんですね。 どういう決め方をしていったらいいのかですね。移植関係者がいるところだけで国全体 の問題を決めるというのは問題があるというのはわかるんですが、どういう場で、どう いう人たちの意見をどういう形で吸い上げながら決めていくのがいいのだろうか。   ○辰井参考人 移植医療を推進するというか、腎臓の移植がたくさんできた方がいいと いうこと自体ははっきりしているわけですから、必ずしもデータとして出てきていなく ても、何かこういう要因があり得るのではないか、長期的にはこういうことが考えられ るということを一番よく御存じなのは実際にかかわっておられる方々だと思いますので、 その方々が中心になって決めること自体には問題はないと思います。単に成績を上げる という以外に若干考慮すべき要素もありますから、そういうものは、私のような者だけ ではなくて、ほかの方がいらして話をするということは必要だと思いますが、数として 半々にしろとか、そういう話ではないのではないかと思います。   ○柏原班員 2002年の成績と同じような傾向がずるずると続くというのだったら何か検 討する必要はあると思いますけど、さっき発表があったように、むしろ成績はよくなっ てる。問題点はいくつかあるにしても、特に変更をする点ではないのではないか。腎移 植をやってる関係者から問題点が指摘されるかどうかということと、社会的な要求とい うか、そういうところの論点が煮詰まって、変更を検討するというあたりかなと思いま す。   ○飯野班員 数が増加しないのは、このルールがあるからだと考えてるかどうかですよ ね。ルールを変えることによってインセンティブが増すのかどうか。もし増すのなら、 大島先生の責任でドラスティックに変えていくというのもありますよね。批判は覚悟で。 中国へ行って移植を受けるとか、そういう問題が起こってきてるわけですから、何か対 応しなくてはいけないんですね。ここでマイナーチェンジして、そのままでいったら社 会から批判を受ける可能性は十分ある。どの程度の批判を受けるかだと思うんですけど。   ○片岡室長 そもそも臓器移植法で移植を受ける機会は公平に与えられなければならな いというのがあります。その場合の公平というのはいろいろな考え方がありますが、基 本的には組織適合性とか医学的な適応など医学的な観点からと医学的に緊急度に応じて ということと、それ以外には待機日数のポイントということだろうと思います。  移植が進まないからレシピエント選択基準で移植をふやすことも考えなくてはいけな いのではと、この作業班においてそういうことも議論しなくてはいけないのではとお考 えいただくこと自体、申しわけないと思っておりまして、移植をどうやってふやすかと いうのは別のところで議論しなければならない問題だと思います。移植を進めなければ いけないというのは痛切に感じておりますが、この作業班の中では基本的には公平な機 会をどうするのか、ネットワークが配分する時にどれが公平かという形を念頭に御議論 いただければありがたいと思います。   ○大島班長 室長の言われるとおりですが、年間に2千例ある時の公平と、今のように 少ない時の公平とがどうなのかというところできょうは議論が白熱したのだろうと思い ます。1年、2年、3年たってみて、すぐに大きく変更しなくてはいけない理由は見当 たらないのではないかということでまとめさせていただいてよろしいでしょうか。  両角班員 長期の成績については必ず追跡していただきたいと思います。短期に関し ては全く問題ないと思います。   ○飯野班員 待機日数だけウエイトを少し下げた方がいいんじゃないかという気がしま す。   ○大島班長 10年以上待たないと移植が受けられない。そうすると自動的にリスクも高 くなってくる。公平、公正が何なのかという議論をし始めるとややこしい話になります が、点数を下げることによって新しい人にもチャンスを広げるという枠をふやしたらど うかという御意見ですが、いかがですか。   ○両角班員 何をもって1対1対1にしたかということですが、1対1対1で選んだは ずの待機点数が高いのではないかという印象はあります。少し下がった方が妥当かなと いう気はします。   ○寺岡班員 10年目までは1点ずつポイントがふえる。10年目以降のカーブをどうする かということで3種類ぐらい選んで、ネットワークでシミュレーションをしたんでした ね。それをここへお持ちして、この辺が妥当だろうというので一番低いのを選んだわけ です。最高点が15点ぐらいでしたね。小児が14ですから、待機日数のポイントが多いの は確かです。UNOSでもHLAとかいろんなものを2〜3年ごとに見直して、比重を 28%を30%にしたりやってますから、その辺の小さな調整はやってみていいのではない かと思うんです。 菊地さん、コンピュータでその辺を変えるとすると、かなりお金がかかりますか。   ○菊地参考人 見積もりをとってみないとわかりませんけど、少ない金額で済むような ものではないと思います。   ○寺岡班員 もしルールを変えるとすると、コンピュータの改変の予算は今さらおそい でしょうか。待機ポイントの比重を少し下げたらどうかということでは皆さん一致して いるのではないかという気がするんですね。それをやると、コンピュータをかなりつつ かなくてはいけなくなると思います。コンピュータを中途半端につついて、変な形で出 てくると大問題になりますのでね。その辺はいかがでしょうか。   ○片岡室長 予算は18年度まで決まっておりますので、補助金の額をふやすことはでき ません。必要なのでやることになった場合、ネットワークの中の予算で対応できるかど うかという御相談になるかと思います。   ○辰井参考人 その場合に変えるというのは、平成14年1月に選択基準を改正した時と 同じ考え方ということですか。ただ、その時は上げ幅が少し大きすぎたので、上げ方を 少し下げるという微修正ということですか。   ○寺岡班員 皆さんがおっしゃってるのはそういうことだと思います。ただ単に感覚的 にどのくらい下げようということではなくて、いくつか案を出していただいて、手計算 で計算してみて、どういうふうになるのか。前は、待機年数が25年になるとHLAの0 ミスマッチが2ミスマッチを上回るとか、そういう形で少し重みづけをやったんですよ ね。   ○菊地参考人 そのためにデモ環境を作成しないといけないので。   ○寺岡班員 シミュレーションをやりませんと、感覚的にやっただけでは軽率ですから。   ○大島班長 変えるということになると簡単な話ではないので、きょうはかなり強力に そういった御意見が出たというところでとどめたいと思います。お金がない、お金がな いといってるところで、マイナーチェンジ、マイナーチェンジで随分お金を使いながら、 全体としてはお金を使った分だけの利益が出てこないというのが心苦しいような感じが します。   ○寺岡班員 ルール改正の時に、ドナーがHCV陽性の場合はHCV陽性のレシピエン トの中から検索して、インフォームド・コンセントの上でリスクをお話しして十分に了 解が得られれば移植していいということでしたね。  最近問題になっておりますのは、待機者の中には酵素抗体法で測定してカットオフイ ンデックスが低い方がかなりいらっしゃるんですね。厚生労働省の基準で示されていま すが、カットオフインデックスが5以下の方の場合、ほとんどウイルスはいない。つま り抗体は陽性であってもウイルスは陰性であるということになります。抗体だけでプラ スからプラスへといった場合、ドナーが高力価になって、レシピエントが低力価になっ て、実際には陰性の方に移植してしまうこともあり得る。そうすると新たな感染をつく る、場合によっては劇症肝炎を起こす。  ここ3年間は幸いにしてそういうことはありませんでしたが、そういうことも起こし 得ますので、その点を今後どうやって対処していくか。お金のかかることですので万全 の対策法はないと思いますが、そういう危険なこともあり得るのだということを頭の中 に入れておいた方がよろしいかと思いますので、よろしくお願いします。今の段階では レシピエントに移植する時によくインフォームド・コンセントを行って、そういうリス クも含めて御了解いただくしかないと思いますけどね。   ○大島班長 医学的に違ったカテゴリーをつくり上げるしかないんじゃないですか。プ ラスからマイナスに移植するというのは許されることではないけれど、限りなくマイナ スに近いわけでしょ。   ○寺岡班員 ほとんどウイルスはいないんですよ。本当はプラスからマイナスになっち ゃうんですよね。抗体検査上はプラスからプラスですけど、ウイルス上はプラスからマ イナスへの移植になっちゃうんですね。そういう危険性をかなり含んでる。   ○飯野班員 もし本当に危険性が高いとすると、C型肝炎は使わないということにする しかないんじゃないですかね。   ○寺岡班員 今は使うことになってますので、今の段階では十分なインフォームド・コ ンセントを行って、時間的余裕がある場合はレシピエントのウイルス検査もやる。訂正 は1日ぐらいで出ますから、マイナスの場合には、それをお伝えすれば、レシピエント 候補者は辞退すると思うんですよ。   ○両角班員 以前から懸念はされていたことなんですね。   ○寺岡班員 今どうするということじゃなくて、そういう問題があるということだけは ……。   ○大島班長 学会からきちっとしたコメントを厚生労働省に出してもらって、エビデン スのある事実として、きちんとした基準をつくるしかないんじゃないですかね。これは 危ないよという危険情報として寺岡先生から話が出たけど、学会のコメントとして出し てもらうというルートをつくった方がいいんじゃないですかね。   ○飯野班員 今のUNOSではどうなんですか。前はUNOSはC抗体(+)ドナーから C抗体(+)レシピエントは大丈夫だったんですよね。   ○寺岡班員 今はローカルの判断でやってますから、ほとんどやってるんじゃないです かね。ただ、ディスカードされてるのも結構ありますよね。腎臓は合計千いくつぐらい あるんでしょ。その中にHCV陽性のものもかなりある。それはケース・バイ・ケース でやるしかないと思うんですね。   ○大島班長 次の会議が4時からということですので、中途半端な感じですけど、これ で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。                                    (終了) 照会先:健康局臓器移植対策室 高岡 内線 :2363