(資料2)
今後の児童家庭相談体制のあり方に関する研究会
報告書(素案)

平成18年3月23日

 はじめに(研究会設置の趣旨、報告書の位置付け)

 児童虐待相談件数の急増等により、緊急かつより高度な専門的対応が求められる一方で、育児不安等を背景に、身近な子育て相談ニ−ズも増大している。このような状況の中で、平成17年4月から施行されている平成16年改正児童福祉法においては、児童家庭相談における市町村の役割を明確化するとともに、都道府県(児童相談所)の役割を困難事例への対応や市町村の支援に重点化するなど、地域における児童家庭相談体制の充実が図られたところである。

 よりきめ細かな児童家庭相談体制を構築するためには、平成16年改正児童福祉法が目指す市町村における相談体制の強化は必須の方向である。その際、国においては、細部にわたる規定や指針を示すのではなく、大枠やモデル・先進例を示し、あとは市町村の実情に合わせ、各々の市町村がより有効な検討を行うことが必要である。一方で、児童虐待や少年非行問題への対応など、児童の権利に重大な影響を及ぼし、その援助プロセスにおいて法的枠組みが重要な意味を持つものについては、共通の基盤整備や理解が図られなければならない。

 そのためには、法的な対応やより深刻な問題に対応する都道府県(児童相談所)レベルのシステムと、より住民に身近な地域で対応する市町村レベルのシステムをつなぐ新たなシステムが必要である。児童家庭相談においては、単に相談だけでなく、そこから始まる実際的な援助や援助終了後のフォロ−アップなども重要な意味を有する。

 平成16年改正児童福祉法の趣旨に沿って地域における児童家庭相談体制を構築するためには、このような全体状況を視野に入れつつ、国としての大枠の仕組みの提示や支援、都道府県、市町村それぞれのレベルでの主体的な取り組みが求められる。

 本研究会は、各地域における取組の実践に学び、また、現場の実態や感覚を踏まえた議論・検討を積み重ね、その具体的な課題として、国および地域の取組を促すためのメッセ−ジを織り込み、発信することを目的として平成17年2月に設置された。

 以来、議論を重ね、平成17年8月に、都道府県(児童相談所等)における児童相談体制の整備を中心に「中間的な議論の整理」を行ったところであるが、それ以降「市町村における児童相談体制の整備」のあり方を中心にさらに議論を進めるとともに、市町村における児童家庭相談体制の実情調査なども行い、今般、研究会としての「報告」を取りまとめたものである。


 都道府県(児童相談所等)における児童家庭相談機能の強化

(1) 児童相談所の必要な職員体制の確保
 ここ数年、児童虐待相談件数の大幅な増加や困難事例の増加など児童相談所を巡る厳しい状況を踏まえ、職員配置の充実が図られてきている。今後、市町村の児童家庭相談体制の充実も期待されているが、それでもなお、ほとんどの児童相談所の現場および本庁所管課においては、現下の児童相談所の体制についての厳しい認識が示されている。また、児童虐待に関する相談のみならず、非行相談などについても十分な対応が求められている。こうした状況を踏まえ、地域の実情に配慮しつつも、引き続き、児童相談所の体制の充実に向けた努力が求められる。

 首長のリーダーシップにより、大幅な体制強化が図られたという実践例もあり、行財政改革の大変厳しい状況下において、首長を含めた全庁的な理解の下に児童家庭相談体制の整備が進められることが望まれる。
<実践例>
 青森県は、平成8年から平成14年にかけての6年間で、児童福祉司が16名から57名に、また児童心理司は7名から22名に増員された。これは当時の知事が児童問題に非常に力を入れ、「県内から虐待をなくそう」という目標を立て、「そのためには児童相談所の体制強化が必要である。」という知事の考えが大きく反映された結果と言われている。

 他方、現在の児童相談所業務においては、直接の対人援助以外のケ−ス記録作成などにかなりの労力がかかっている。
 平成15年度から北海道、大阪府及び神戸市においてIT化促進事業を実施しているが、こうしたIT化の推進によるケースの進行管理や記録のデータベース化など、業務省力化の工夫も求められる。
<IT化促進事業の概要>
 児童相談所における子ども虐待への対応力を向上させるため、IT(インフォメーション・テクノロジー)を活用したモデル事業を実施。(1)情報を入力する際、対応プログラムに沿ってケースの情報を入力することができ、さらに、その際に、援助の方向性を示すガイド的機能(ナビゲーション機能)を持っている、(2)個々のPCから簡単な操作で入力することができ、その情報が、サーバーに吸い上げられ、整理され、実践にフィードバックしやすいデータベースとして蓄積される、という特色を持っている。

 (1) 児童福祉司
 ○  児童福祉司は、本来、虐待ケ−スであれば、初期の緊急対応から、子どもの自立支援や家族再統合に向けた親子の支援に至るまでの支援を行うことまでがその役割であるべきであるが、相談ケ−ス数の多さや相談内容の困難化から、初期対応で手一杯な状況にある。こうした状況に対応し、近時、児童福祉司の増員が図られているところであり、また、児童福祉法施行令の改正により児童福祉司の配置基準の改善が図られたところであるが、現場においては、引き続き、配置の充実が必要との認識が強い。平成17年4月から市町村が児童家庭相談の第一義的な窓口となったことを踏まえても、児童福祉司の不足は依然深刻な状態にあり、今後、政令改正も踏まえたより一層の児童福祉司の配置の充実が望まれる。例えば、児童福祉司の担当ケース件数や児童数など、人口以外の要素を基本とした標準を示すべきである。(P)
 ○  児童福祉司の大幅な増員が図られた自治体においては、その増員効果として、初期調査の充実や予防的取り組みの充実により、早期対応が図られているほか、複数対応が可能となり、職員のストレスが軽減されるなど大きな効果を挙げていることが報告されている。こうした取組実践に学ぶことも期待される。
<実践例>
 青森県は、児童福祉司及び児童心理司が増員された効果として、(1)「初期調査の充実」については、複数での訪問調査が可能となり、ひいては48時間以内の安否確認が可能となったこと、(2)「職員の精神的ストレスの軽減」については、複数で相談に当たることによって職員一人一人のリスクが分散されたこと、(3)「予防的取り組みの充実」については、児童環境づくり担当の児童福祉司の配置により、地域支援活動が充実されたこと、(4)「関係機関との連携強化、指導の充実」については、施設訪問を毎月行えるようになるとともに、ネットワーク会議の充実・スーパーバイズ機能の強化などが図られたこと、などが報告されている。

 (2) 児童心理司(心理職)
 ○  児童心理司には、従来の判定業務に加え、一時保護中の子どもの心理療法、心理面からの援助方針の策定、施設入所後のケアの評価などにも積極的に関わることが求められていることから、配置の充実が必要である。
 ○  児童相談所が介入と支援の両方の役割を担わなければならない中で、家庭での虐待を受けた子どもの支援をする際に子どもの発達や子どもの心理状況を丁寧に把握する上での心理職の重要性とともに、特に子どもを分離保護した後の親指導・支援には、心理職の関わりが重要である。
 ○  児童心理司については、児童福祉司と異なり、配置基準が明確になっていないが、国による配置基準の明確化は多くの自治体からも要望されており、基本的に、正規職員の児童心理司と児童福祉司がチ−ムで対応できる体制であることが望ましいことから、少なくとも児童心理司:児童福祉司=2:3以上を目安に、さらには児童心理司:児童福祉司=1:1を目指して配置すべきである。
<実践例>
 島根県では4か所の児童相談所に、児童福祉司13名、(常勤の)児童心理司11名という体制である。また、福井県でも2箇所の児童相談所に、児童福祉司12名、(常勤の)児童心理司8名という体制であり、児童心理司の配置割合が高くなっている。

 (3) 医師・保健師
 ○  虐待かどうかの判断や重症度判断に当たっては、医学的判断が不可欠であり、また、虐待ではないケ−スを虐待として判断してしまう「虐待の誤診」を防止する観点からも、児童相談所に医師(児童精神科医や小児科医)を配置することは不可欠であり、求められる迅速性等を考慮すれば、常勤で配置されることが強く求められる。
<実践例>
 医師を常勤で配置している児童相談所がある自治体として、東京都、三重県、広島県、高知県、札幌市、横浜市、名古屋市、大阪市及び神戸市が挙げられる。
 ○  また、児童相談所に隣接した場所に子どもの心の診療を担う診療所を設置してこのような医学的な機能を果たしている事例もあり、こうした工夫も検討する価値がある。
<実践例>
 児童相談所に隣接して子どもの心の診療を担う診療所が設置されている児童相談所として、宮城県中央地域子どもセンター、仙台市児童相談所、静岡県中央児童相談所、京都市児童相談所、和歌山県子ども・障害者相談センター、広島市児童相談所がある。
 ○  医療機関や保健機関との連携強化の観点からは、連携の窓口として、児童相談所に配置された(常勤)医師が担うほか、児童相談所の中に保健師を配置することも有効と考えられる。加えて児童相談所に配置された保健師には、一時保護中の虐待を受けた子どもに対し、健康面の初期評価を行うことも期待される。
 ○  なお、厚生労働省において別途「子どもの心の診療医の養成に関する検討会」が開催されており、先般、その方向性が取りまとめられていることから、今後は、この検討会取りまとめに沿って、子どもの心の診療医が養成、確保されることが期待される。

(2) 児童相談所職員の専門性の向上
 (1) 採用・研修
 ○  児童相談所の業務を遂行するために必要な専門性を確保するために、児童福祉司や児童心理司などについては専門職採用が必要である。(P)
 ○  ただし、専門職採用だけで職員の専門性を確保しようとしても不十分であり、継続的かつ実践的な現任研修を制度化することが必要である。専門職採用は現任研修の効果を上げるためにも必要であり、専門職採用を行っていない場合であればなおのこと、現任研修の充実は不可欠である。

 (2) 人事配置・人事異動
 ○  現場においては、児童福祉司に必要な専門性を確保するためには、5年から10年程度の経験が必要であり、さらに、指導的立場に立てる職員を育成するためには、より多くの経験を必要との声も多くある。
 ○  採用のあり方とあわせ、人事配置・人事異動のあり方についても、各自治体において、積極的な検討がなされることが望まれる。特に、指導的な立場に立てる職員を育成することは容易ではなく、実践を積むために、活発な活動をしている自治体の児童相談所において、長期の現場研修を経験するといった方法も考えられる。なお、大変ストレスの大きい業務であることから、適度な異動をはさむことを考慮することも必要である。

(3) 児童相談所の組織体制
 最近、虐待対応については、従来の地区担当制によらず、専従の組織を設けて対応する児童相談所が増えている。こうした組織体制のあり方については、職務上のストレスが高すぎる、個人の経験が狭まるというキャリア形成上の課題などがあるものの、担当する職員が子どもとその家族全体を支援する上で十分な専門性や経験を備えていることを前提に、虐待対応の緊急性・困難性からは特化することも有効と考えられる。
<実践例>
 各児童相談所に虐待対応の専従班を設けている事例としては、宮城県の虐待対応推進チーム、茨城県の児童虐待対応チーム、東京都の虐待対策班、滋賀県の虐待・DVサブグループ、京都府の未来っ子サポートチーム、大阪府の虐待対応課などがある。
 また、非行対応については先般「児童自立支援施設のあり方研究会」において、「児童自立支援施設は、少年非行全般への対応が可能となるセンター機能を設け、非行問題等に対する総合的なセンター施設として運営されることが望まれる」との報告がなされており、今後、児童自立支援施設の動向を見据え相互理解のもとに連携・協力体制を強化していくことが望まれる。
 児童相談所における専門性を確保する観点からは、基本的には、後述する(郡部)家庭児童相談室の関係なども含め、専門職員を分散配置するのではなく、できる限り、児童相談所に集約化していくことが望ましい。

(4) 児童相談所の適正配置
 現在、児童相談所は全国で187か所設置されているが、国が策定した児童相談所運営指針で示されている「人口50万人に最低1か所程度が必要」という目安にしたがうと設置数は依然として不足している。
 児童相談所の設置か所数については、最終的には、地域の実情を踏まえた地域の主体的判断にもよることや、本年4月から市町村が児童家庭相談体制の第一義的な窓口となったことを踏まえる必要があるものの、全体として見れば、児童相談所設置数の増加が必要である。
 設置の目安としては、先の児童福祉法改正において、中核市規模の市について、児童相談所の設置が可能とされたことを踏まえれば、おおむね人口30万人規模を念頭に、緊急対応やケ−スワ−クの効率性を考慮し、たとえば1時間程度で移動が可能な範囲を管轄区域として想定するなど、人口以外の要素も加味した標準を具体的に示すべきである。
<実践例>
 平成16年の児童福祉法改正において、子育て支援から要保護児童対策まで一貫した児童福祉施策の実施という観点から、中核市程度の人口規模(人口30万人以上)を有する市を念頭に置きつつ、政令で個別に指定した市については、児童相談所の設置を認めることとしたところである。また、児童相談所設置市に指定された市については、従来、都道府県・指定都市が行っていた児童福祉法等に基づく事務(施設の入所措置等)を行うこととされたところである。
 これにより、平成17年11月には、横須賀市と金沢市の2市が児童相談所設置市として指定されている。
 設置(増設)されるべき児童相談所は、本所の指揮の下に動く支所、出張所のような形態ではなく、あくまで、自立的に措置権を行使できるものであることが望ましい。
 児童相談所に求められる専門性を確保していく観点、また、本年4月から市町村が児童家庭相談の第一義的な窓口となったことを踏まえると、支所、出張所への人員配置よりも、自立的に措置権を行使できる児童相談所の設置数を増やしつつ、かつ、そこに職員を集約化する方が望ましい。

(5) 都道府県(郡部)家庭児童相談室のあり方
 都道府県福祉事務所の大半に設置されていた家庭児童相談室については、これまで郡部(町村部)における身近な児童家庭相談窓口としての役割を果たしてきたが、児童福祉法の改正により、市町村が児童家庭相談の第一義的な窓口となったことから、基本的な役割が重複する面がある。
 こうした状況を踏まえると、相談機関としての都道府県(郡部)家庭児童相談室は、基本的には整理される方向にあると考えられるが、これまで家庭児童相談室が担ってきた町村のサポ−ト機能や福祉事務所と児童相談所との連携機能の必要性そのものがなくなるわけではなく、こうした機能やこれまで蓄積されてきた都道府県(郡部)家庭児童相談室の知見を何らかの形で継承していく必要がある。
 たとえば、
(1) 都道府県(郡部)家庭児童相談室の職員を児童相談所に集約(配置換)する、
(2) (郡部)家庭児童相談室の体制を強化し児童相談所とする、
(3) 児童家庭相談の第一義的な窓口となった市町村に出向あるいは転籍させるなどの職員派遣を行う、
ことなども考えられる。また、当分の間、児童相談所とともに、市町村サポ−トの拠点機関あるいは市町村における相談機関として活用することも考えられる。
<実践例>
 三重県では、平成10年4月に、県民局の充実強化・組織の総合化の流れの中で、11か所の保健所、7か所の福祉事務所、5か所の児童相談所を統合し、9つの生活創造圏ごとに県民局保健福祉部を設置。その際、家庭児童相談室が廃止された。また、組織のフラット化による意思決定の迅速化、組織を出来るだけ大括りにすることによる柔軟な組織運営、職員の能力を活かすためにグループ制が導入された。
 平成14年には、9つの県民局のグループのうち、要保護性の高い相談に専門特化した児童相談チーム等が設置された。さらに平成17年度から、急増する児童虐待等困難事例に適切に対処し、児童福祉法改正に伴う市町村支援を的確に行うため、(1)全児童相談所を一体的、地域横断的にマネージメント可能な、(2)児童相談現場を助言・指導できる、(3)子どもの安全の確保と保護を効果的に行い、(4)職員の人材確保と資質の向上を図り、(5)子どもの新たな問題に対応できる組織として、三重県児童相談センターを設置した。
 大阪府では、市町村における児童家庭相談体制確立を支援するため、市町村の児童家庭相談窓口に大阪府子ども家庭センターのケースワーカーを2年間派遣するとともに、児童家庭相談体制整備に要する経費の一部を助成(年間上限400万円)する「市町村児童家庭相談体制強化モデル事業(平成18年度〜)」実施することとしている。
 派遣市町村については、おおむね子ども家庭センター所管ごとに1市町村が想定され、平成18年度については、6市町村が予定されている。また、派遣職員の業務内容は、児童家庭相談体制の整備・総合調整、相談担当者の育成・実務指導、要保護児童対策地域協議会の設置・運営への支援、市町村と子ども家庭センターの連携モデルづくりを行うこととしている。

(6) 一時保護のあり方
 虐待を受けている子どもを保護者から分離して保護するほか、虐待の重症化を抑えながら在宅で支援を実施していくためにも一時保護機能の充実が求められる。
 一時保護所では、虐待・非行など様々な背景や問題を抱えた幅広い年齢層の子どもを保護しなければならず、男女の問題も含め生活援助の場面での分離対応が必要であるが、設備的にも体制的にも不十分な状況であり、職員配置の充実をはじめとした改善が急務である。特に、非行の問題(とりわけ触法少年による重大事件)について、児童福祉の観点を踏まえ、児童福祉の機関が引き続きしっかりと関わっていく観点からも対応力の強化が望まれる。その際、行動の自由の制限のあり方についても、具体的な指針を策定することも含め、さらに十分な検討が必要である。
 一時保護の期間は、単に保護を行うのみならず、その後の子どもの自立支援や家族支援に向けたアセスメントを行う期間である。そのため、一時的な保護のみが目的ではなく、子どもの心身のケアをしつつ、個々の子どもの状況に応じた最適の支援内容を判断するアセスメント機能を充実させるべきであるという認識の下に、心理療法職員を配置するなど職員体制の強化をはじめとした一時保護所の機能の充実・強化が必要であり、そのためには名称変更も含め、一時保護所独自の設備・運営に関する基準を作ることについても検討すべきである。
 現下の一時保護所の状況を踏まえれば、施設や里親への委託一時保護についても、ある程度進めていく必要があるが、その際には、施設や里親との十分な連携の下、しっかりとしたアセスメントを実施することが必要である。また、委託一時保護を推進するためには、一時保護委託費の充実を図るべきである。
 なお、職権による一時保護のほか、柔軟で多様な形態の受け皿を拡充することにより一時保護の機能を充実していくことも必要である。たとえば今後、市町村が児童家庭相談の第一義的な役割を担う中で一時保護の目的によっては、ショ−トステイ事業や一時保育の実施など、市町村の子育て支援事業の活用も考えられる。

(7) 児童福祉施設の適正配置・里親委託の推進
 児童相談所からは、虐待を受けた子どもの保護の受け皿となる児童養護施設や情緒障害児短期治療施設などの児童福祉施設の不足を訴える声も大きい。例えば、児童養護施設については入所率が全国平均でも90%を超え、自治体によっては定員を超える受け入れを要請しているところもある。また、情緒障害児短期治療施設については、子ども・子育て応援プランで全都道府県での設置を目標に掲げているにもかかわらず、平成17年2月現在で19府県の設置にとどまっている。このため、一時保護所の体制充実とあわせ、児童福祉施設の適正配置により、支援の受け皿が適切に確保されることが必要である。
 また、ケアの個別化・小規模化、治療機能の強化、家族全体を視野に入れたケアなど児童養護施設等の児童福祉施設に期待される役割が変化しつつある。このような状況に対応した児童福祉施設最低基準の見直しも検討すべきである。
 また、市町村等との連携を図る観点から地域住民に開かれた地域子育て機能を発揮することが求められている。こうした変化等に対応できるよう、児童福祉施設の機能が強化されることも期待される。
 あわせて、家庭的養護の担い手である里親の登録数を増やすとともに、研修等の充実により養育技術の向上を図り、児童相談所に里親委託推進員を配置する等により、積極的に里親への委託を進めていくことが必要である。


 児童相談所と関係機関・専門職種との連携強化

 児童虐待ケ−スを始めとする複雑な問題を抱えるケ−スに適切に対応していくためには、関係機関・専門職種との連携強化が不可欠である。しかしながら様々な形でネットワ−クは形成されているものの、援助の基本方針の違いなど、必ずしも相互理解に基づく有機的な連携が十分に図られているとは言いがたい状況にある。今後、相互理解に基づく実質的な連携確保をいかに形成していくかが課題である。
 地域における関係機関の有機的な連携を促進するため、平成16年改正児童福祉法により、要保護児童対策地域協議会が設けられたところである。今後、市町村において、この要保護児童対策地域協議会の設置促進、およびその活用が図られる必要がある。
 また、以下の関係機関・専門職種との連携については、児童相談所との直接的な連携とともに、市町村を中核とした同協議会を通じた連携強化が図られることも期待されている。児童相談所はそうした市町村を中核とした関係機関の協議会の構築に向けた環境づくりについて積極的に支援していくことが求められる。

(1) 医療機関
 医療機関は、産科においては妊娠産褥期におけるハイリスク者の発見、産科・小児科においては親への養育支援、診療を通じて虐待が疑われる事例の発見など、その役割はきわめて大きい。
 例えば、虐待が疑われる事例の判断において、医学的診断は極めて重要であるが、虐待の確定診断を下すためには、家族背景なども含めた総合的判断が不可欠である。こうした点からも、しっかりとした連携体制を構築することが必要である。
<実践例>
 北海道札幌市では、児童虐待に結びつく可能性の高い要因を有する妊婦及び親子を医療機関と連携し情報提供を依頼することによって早期に把握し、保健センター等が育児を支援する体制を整備している。連携がとれている医療機関は25か所に上っている。
 しかしながら、医療機関からの虐待の通告については、ためらいが見受けられるケースも報告されている。特に、開業医などの場合、通告者が特定されてしまうことなどの問題が指摘されている。こうした課題に対し、たとえば、広島県の「子ども虐待等の相談・診療に関する協力基幹病院」などの先進的な取組も参考にしながら、それぞれの地域において医療機関とのスム−ズな連携を可能にするようなシステムづくりが期待される。
<実践例>
 広島県では「子どもの虐待等の相談・診療に関する協力基幹病院」として、小児科を有する県内32病院を指定している。地域の一般医療機関(かかりつけ医)からの相談に応じ、協力基幹病院を通じた通告、診断書作成、虐待が疑われる子どもの入院を受け入れるなど地域の医療機関や児童相談所と連携したネットワークを構成している。
 また、先駆的な医療機関においては、様々な診療科や多様な専門職種による児童虐待予防と治療のための院内チームを構築し、協議とアセスメントの手順を定めて対応しているところもある。現時点ではこうした体制を構築している医療機関は数少ないが、養育支援や虐待対応には複眼的な視点での判断を要し、地域の関係機関とのつながりを確保しながら対応していく必要性があることを考慮すると、こうした取組をさらに進める必要がある。
 なお、これらの業務には多くの時間と人手を要することも事実であり、これを支援するため、診療報酬上の評価などについて検討すべきである。
<実践例>
 国立成育医療センターでは、院内に子どもの虐待対策委員会を設置し、その下にSCAN(Suspected Child Abuse & Neglect)チームという多職種(内科系・外科系医師、放射線科、看護師、MSW)からなるチームを置いている。職種は問わず、スタッフが虐待を疑ったらMSWに連絡を入れ、MSWがケースに応じて必要なメンバーを集め、そこからSCANチームが緊急の活動を開始する。
 具体的には、(1)必要な検査に関する主治医へのコンサルト、(2)必要な情報収集、(3)リスクの判定、(4)通告の必要性の決定、(5)告知への参加、(6)地域との連携、(7)フォローの方法の決定、(8)司法への対応、などを迅速に行っている。また、月1回定例ミーティングを行い、ケースの振り返りと介入方法の改善などを行っている。
 また、国においては、医療機関が虐待ケ−スについて、具体的にどう動いていくか、ということについての詳細なマニュアルをつくり、示していくことも必要である。

(2) 弁護士、弁護士会
 弁護士、弁護士会は法的な観点からの判断をバックアップする存在として、少なくともサポ−トを得られる体制を構築する必要がある。弁護士、弁護士会との連携は、進みつつあり、とりわけ一部の地域では相当程度連携が図られてきているが、地域によっては児童家庭福祉に関心のある弁護士が限られているなど、全国的な協力システムづくりが課題である。
<実践例>
 大阪府では弁護士47名、医師16名からなる「大阪府児童虐待等危機介入援助チーム」を設置し、子ども家庭センター(児童相談所)と連携しながら、子どもの権利擁護を図っている。具体的には、このチームを通じ、(1)立入調査、一時保護、児童福祉法第28条申し立て等に関し適宜助言を得ることで虐待事例への適切な対応ができる、(2)警察への告発、児童福祉法第28条申し立ての際の代理人を依頼することにより迅速な手続が行えるなどの効果が現れている。
 香川県では、児童相談所が立入調査や一時保護を行う際に、内容に応じて弁護士の立ち会いや助言を得るため、平成17年3月に県弁護士会と協定を締結し、県から協力要請があった場合には、県弁護士会は特別の理由がない限り協力するものとされている。これまで実際の事例はまだないが、35名の弁護士が賛同し、双方の勉強会なども開催されている。

(3) 保健所、市町村保健センタ−
 市町村保健センター等の保健師は、母子健康手帳交付時、新生児訪問、乳幼児健康診査等の場で周産期・出生時から親子に向き合う機会も多い。これを活かし、児童虐待のリスクの高い家庭への支援などを行う過程で児童相談所と連携を深めることにより、児童虐待の発生予防、早期発見が期待される。
<実践例>
 高知県中村市(現四万十市)では、もともと医療機関と保健所、保健センター職員の自主的な交流会を開催していたことを活用し、妊婦のハイリスク者へ対応するために、医療機関、児童相談所、保健所、福祉事務所が連携し、母子健康手帳交付申請時や妊婦健康診査時に要支援妊婦を把握し、育児支援家庭訪問事業を実施している。
 保健指導面について、保健所等の保健師は精神保健相談に応じるとともに、精神科等の医療機関との日常的な連携体制を構築していることから、児童相談所との連携を深めることにより、虐待を行った家族等への支援の一端を担うことが期待される。なお、こうした精神保健分野の問題については、各都道府県におかれた精神保健福祉センターの活用も期待される。

(4) 児童家庭支援センタ−
 児童家庭支援センタ−は、児童相談所からの指導委託を受けて、ケ−スに対応することができる機関である。しかしながら現状では、全国51か所と絶対数が少ないこともあり、活動が地域に限定されがちであるなど、十分な活用が図られているとは必ずしも言いがたい状況にある。
 市町村が児童家庭相談の第一義的な相談機能を担うこととなったことも踏まえ、今後は、センターの相談・支援機能の一層の充実を図るべく、夜間対応など24時間相談体制を強化するとともに、心理療法担当職員等による個別心理療法・グループワークや子育て支援セミナー等の地域支援事業をさらに充実していくことが期待される。また、本体施設のトワイライトステイ・一時保護・ショートステイ等を積極的に活用するなど、児童福祉施設に付置される機関としての特性を十分に活かした包括的で継続的な相談・支援活動の展開が期待される。児童家庭相談に関する市町村との役割・位置付け等については、さらに検討を深めることが必要である。
<実践例>
 埼玉県加須市の愛泉こども家庭センターでは、平成10年の開設以来、(1)地域を限定しない24時間365日の電話相談受付、(2)同一法人の地域子育て支援センターと共同でグループ相談等を実施、(3)隣接市町への幼児健診への職員派遣などに取り組み、地域密着型の相談援助事業を展開するとともに、地域子育て支援の機能を発揮している。

(5) 里親、児童福祉施設
 里親委託や施設への入所措置を行った子どもについての自立支援計画の見直しについては、多くの児童相談所では、年1〜2回程度の訪問、相談といった対応にとどまっているのが現状である。今後は、子どもの自立支援や家庭復帰支援に向け、児童相談所が積極的に里親や児童福祉施設と連携を図り、本人の意向も踏まえつつ、自立支援計画を適時見直し、自立支援計画に基づく支援を行っていくことが必要である。
 特に、里親については、児童相談所から指導担当者を定期的かつ継続的に訪問させることなどにより、委託した子どもの養育について必要な助言・指導を行う機能を強化することはもとより、里親が困難に直面した場合の養育相談や里親養育をサポートする者の派遣、レスパイト・ケアなど里親自身への支援の充実が望まれる。

(6) 学校、教育委員会
 学校の教職員には、虐待の早期発見に努めることが特に期待されており、児童相談所への通告についての意識を高めるとともに、責任の明確化を図ることが必要である。また、学校の教職員においては、虐待の通告にとどまらず、これを契機に他機関とともに、虐待を受けた子どもと家族への支援を連携して行うことが必要である。
<実践例>
 滋賀県では、平成16年度から全ての公立小中学校に児童虐待対応教員を配置し、各学校において、早期発見、通告、関係機関との適切な連携を図るため、児童虐待対応教員担当者連絡協議会を開催し、研修を行っている。
 また、各学校からの児童虐待の通告については、県教委が作成した様式に基づき、学校での子どもの様子や家庭の状況などを含め、文書による通告を行う。それともに、各校長が、児童相談所や福祉事務所など関係者を招集してスバック会議(学校問題行動対策会議)を開催するなどの取組を行っている。

(7) 警察
 立入調査や緊急対応を要するケ−スなどについては、警察との積極的な連携が重要であることはいうまでもない。しかしながら、福祉と警察では、ケ−スのとらえ方や視点が異なる面があることから、例えば、非行ケ−スの調査などにおいて、どこまでを警察が対応し、どこまでを児童相談所が対応するのか、といったガイドライン的なものを検討するなど、その線引きについては、十分に議論を深めることが必要である。

(8) 家庭裁判所
 家庭裁判所は、児童福祉法第28条第1項及び第2項に基づく承認を行う機関であるが、家庭裁判所及び児童相談所における一般的な児童虐待事例の取扱いの実情について定期的に積極的に情報交換するほか、児童福祉法第28条第1項、第2項の申立について、必要であれば、申立の前後を問わず積極的に意見交換を行うことが重要である。

(9) 児童委員・主任児童委員
 児童委員・主任児童委員については、虐待の通告ケ−スにおける周辺調査や在宅支援ケ−スにおける見守りなどで一定の役割を担っている。しかしながら、近年、家族をめぐる問題の複雑化や地域のつながりの希薄化などに伴い、地域でもっとも身近な関係者としての、期待と役割はますます大きくなってきており、研修の充実等を通じた積極的な連携・活用が望まれる。
 また、児童相談所の地域担当と児童委員・主任児童委員が日常的な情報交換を行うことのできる関係になることにより、地域の関係機関や住民から相談される存在になることも重要である。

(10) 民間(NPO)団体
 各地において、民間(NPO)団体のそれぞれの特性を活かした様々な連携の取組が進められている。今後とも、より一層の連携の強化が望まれるが、虐待防止のための電話相談などを行っている、いわゆる児童虐待防止の民間ネットワークのほか、つどいの広場事業など親子や親同士の交流、一時預かりなどの子育て支援事業を実施しているNPO団体なども含めた幅広い団体との効果的・具体的な連携が期待される。
<実践例>
 NPO法人「子どもの虐待防止ネットワークあいち(CAPNA)」は、児童虐待防止に関わる関係機関向けのセミナー開催を愛知県から委託されるとともに、愛知県内の児童相談所が受けた児童虐待相談に係る法律上の問題について会員弁護士が助言を行っている。
 NPO法人「子どもNPO和歌山県センター」は、つどいの広場キッズルームを和歌山市から委託され開設しているが、その常設のメリットを活かし、子どもからの電話相談(チャイルドライン)にも応じるなど、虐待の予防に積極的に取り組むとともに、市の虐待防止ネットワークにも参加し、児童相談所、保健所などとの連携も密に行っている。

(11) 都道府県児童福祉審議会
 平成9年改正児童福祉法により、児童相談所における子どもの権利擁護機能を強化し、援助決定の客観性の確保と専門性の向上を図るため、都道府県児童福祉審議会の意見聴取規定が盛り込まれており、援助決定の客観性・透明性の確保には一定程度、効果を発揮している。
 都道府県児童福祉審議会は児童家庭相談に関心・見識を持つ委員から構成されていることが通例であることから、委員に医師や弁護士を含めて構成し、定例的に開催するなど、児童福祉法第28条措置に関する意見等を聞くだけにとどまらず児童相談所をバックアップする機関として活用することも各都道府県において検討すべきである。
<実践例>
 滋賀県では、児童福祉審議会を年5回程度開催し、ケースの概況報告と困難事例の対応方法についての検証を行っている。また、ケース・マネジメント・アドバイザーとして、弁護士8名、臨床心理士8名を登録し、ケースに対する専門的な検証を行っている。


 都道府県(児童相談所等)と市町村との連携の推進、都道府県(児童相談所等)による市町村に対する支援

 平成16年改正児童福祉法を受け、各都道府県においては、地域の実情を踏まえた都道府県独自の市町村向け相談マニュアルの作成や市町村向けの研修などの市町村支援に取り組んでいる状況にある。
<実践例>
 滋賀県では、市町村のケース検討会議において専門的な助言を受けられるようケース・マネージメント・アドバイザー(弁護士8名、臨床心理士8名)を登録し、市町村支援のための独自の制度を設けている。
 大阪府では、国版市町村児童家庭相談援助指針の中から必要な事項を抽出するとともに、大阪府子ども家庭センターにおける実際の相談援助のノウハウを詳細に記載し、市町村の相談担当者が日常的に参考にしやすい内容で編集した「大阪府市町村児童家庭相談援助指針〜相談担当者のためのガイドライン」(平成17年6月)を発行している。内容は、市町村における児童家庭相談体制や組織のあり方、児童家庭相談の種類・内容・具体的相談内容とそれぞれに応じた援助方法や留意点及び記録方法や統計、虐待通告・相談への具体的な対応方法(調査・安全確認手法・進行管理等)、市町村と子ども家庭センター(児童相談所)の連携方法、要保護児童対策地域協議会の設置・運営方法、関係機関一覧・児童記録や虐待通告受理票等の様式類)。また、ブロックごとに市町村の担当課長を対象とした説明会を開催するとともに、ガイドラインをテキストとして市町村相談担当者向け研修を行う(年10回開催)など、内容の定着にも寄与している。
 北海道では、道内206市町村における相談体制の整備を図るために、平成17年度から3か年の予定で以下の研修事業(市町村児童相談体制整備支援事業)を計画している。
(職員育成研修)
 市町村の職員を対象に、8か所の児童相談所が研修プログラムを作成し、2日間にわたる相談の基本に関する集中研修を実施。
 1日目は、主に市町村児童家庭相談援助指針に基づく相談援助活動の実際、児童や保護者の理解、関係機関の役割や支援等に関する講義を中心に実施。
 2日目は、(1)虐待通告を受けた際の電話による対応方法、(2)子どもの保護後、保護者からの強引な引き取り要求に対する対応方法についてロールプレイを交えて具体的な対応を体験する機会を設定している。
 参加した市町村職員からは「顔が見えない一般住民から虐待の状況を聴取するむずかしさ」や「子どもの安全確保を最優先し保護したことを保護者に説明し理解を得ることの困難性」を演技の中で実体験し非常に有意義であったとの感想が寄せられたとのことである。
(移動総合相談)
 移動総合相談は、児童相談所が現地に出向き、主に市町村で抱える支援困難事例ケースについて相談・判定を行い、その際に市町村職員が同席し、実地に相談に参加してもらい、技術的対応のノウハウを伝えることで、職員の相談技術の向上に加え、関係機関の役割や相互の連携など要保護児童対策地域協議会の必要性や重要性の認識に役立っている。
 しかしながら、市町村の取組や意識には相当のばらつきがあることから、個々の市町村の力量に応じ、当面は、市町村において対応が困難と判断したケ−スについては、積極的に児童相談所が対応する姿勢が必要である。
 また、ケ−スの当初の振り分けは、高い専門性を必要とし、その後の援助にも大きく関わることから非常に重要である。これについては、市町村におけるケ−スへの主体的関わりを維持しつつ、児童相談所が積極的にケ−スの見立てや進行管理などの支援を行うことが必要である。
 児童相談所と市町村を始めとする関係機関との連携をうまく機能させるためには、共通のアセスメントシートを作成するなど各機関が同じような枠組みでアセスメントや援助方針の作成を行うことが必要である。
<実践例>
 千葉県では、平成17年3月に作成した「市町村子ども虐待防止ネットワーク対応マニュアル」の中で、市町村と関係機関が共通の認識の下で、子どもや家庭の見立てや、必要な援助を具体的に検討する際に使用する「子ども虐待対応判断のフローチャート」及び「地域ネットワークにおける事例検討のためのアセスメントシート」を示し、各関係機関の対応に差が生じないよう、その活用を促している。
 市町村における相談体制の整備や要保護児童対策地域協議会(ネットワ−ク)の設置について、児童相談所長など都道府県が中心となって、管内各市町村の首長に働きかけを行っている例もある。こうした働きかけ、特に自治体のトップに対し、理解を求めていくことも有効と考えられる。


 市町村における児童家庭相談体制の整備

(1) 市町村の児童家庭相談の役割
 (1) 市町村が担う機能について
 ○  市町村は、平成17年4月から第一義的な児童家庭相談窓口となったところであり、単なる児童相談の初期窓口の役割を果たすだけではなく、個別ケースの援助方針を関係者と決め、実際に援助を行っていく役割を果たすことが求められる。すなわち、(1)相談・通告の受付、(2)受理会議(緊急受理会議)、(3)調査、(4)ケース検討会議、(5)市町村による援助、児童相談所への送致等、(6)援助内容の評価、(7)相談援助活動の終結といった、児童家庭相談におけるすべての過程において、市町村が第一義的な役割を担うことが必要である。
 ○  虐待を受けた子どもなど要保護児童の適切な保護を図るために必要な情報の交換を行うとともに、要保護児童等に対する支援の内容に関する協議を行う要保護児童対策地域協議会(以下「協議会」と略す。)の調整機関・事務局は市町村の児童福祉担当課や福祉事務所が担っている場合が多く、協議会としてこれらの過程に取り組むことも各市町村において検討すべきである。

 (2) 都道府県との役割分担・連携について
 ○  市町村が第一義的な児童家庭相談の窓口となって約1年が経過した。当面は都道府県が市町村との関係で相当程度の役割を果たすこともやむを得ないとしても、市町村合併により平成18年4月1日には市町村数が1,820となり市町村規模が大きくなることも踏まえ、今後は、市町村のケースに対する見立ての力や対応力を高め、児童福祉法第27条の措置を要する場合や医学的・心理学的判定を要する場合など児童相談所に送致する場合を除き、市町村が中心となって対応するケースを増やしていくべきである。
 ○  ただし、その際、市町村には、一時保護や立入調査、児童福祉施設への入所などの措置権限がないことも踏まえ、児童相談所が担っている機能をそのまま担うことを期待するのではなく、地域子育て支援サービスや母子保健事業の実施主体であるなど日常的に住民と接し、身近な機関である市町村の特性を踏まえ、子育て支援や虐待予防の観点を重視した取組を進めることが想定される。
 ○  その際、市町村は受容的な関わりを基本とするケースが多いものと思われるが、ケースの進展によっては、都道府県と密接な連携を取り、戦略的なケースワークを行う必要がある。

(2) 市町村の相談体制
 (1) 市町村の相談窓口
 ○  市部においては、福祉事務所に設置された家庭児童相談室は、児童家庭相談の重要な役割を担っており、近年、新たに設置する自治体が増加している。こうした市家庭児童相談室については、これまでの児童家庭相談の経験を基に、市の児童家庭相談の中核となることが期待される。また、今後、市町村合併により一定の人口規模の市が多く誕生することに伴い、さらに設置が促進されることが期待される。
 ○  一方、町村部においては、法施行に対応して役場に相談窓口が設置されたケースが多いが、いずれにせよ「主たる相談窓口」が児童家庭相談を責任を持って受け止められるよう、組織、人材など必要な体制を各市町村で構築すべきである。
 ○  なお、法施行後間もないことから、プライバシーが確保され安心して相談できる部屋がないなどハード面においても不十分な市町村が見られるが、今後は相談室の確保などハード面においても必要な整備を進めることが必要である。
 ○  さらに、中期的には、児童福祉司任用資格相当の職員の確保に努めることが望ましい。(P)
<実践例>
 神奈川県相模原市は、従来、通告機関を福祉事務所としていたが、平成17年4月に、児童家庭相談体制の充実や、改正後の児童福祉法、児童虐待防止法に対応するため、新たに「こども家庭支援センター」を設置した。センターには、これまで保健・福祉の総合相談窓口に配置されていた家庭相談員を配置換えし、子どもとその家庭についての相談窓口を明確化した。
 福岡県水巻町では、教育委員会に「児童少年相談センター(ほっとステーション)」を設置し、4名の相談員体制で、0歳から19歳までの子どもの発達段階に応じた本人と家族からのあらゆる問題・相談に対応している。
 福岡県中間市は、主たる相談窓口が庁内の「明るい街づくり課」(平成18年1月1日より機構改革により「子ども育成課」となる)であり、課に隣接する部屋(6名程度の収容可能)を専用の相談室(課と行き来ができるドア有り)として設置し、対応している。

 (2) 受理会議、ケース検討会議などの体制について
 ○  受理会議やケース検討会議について、平成17年6月1日現在の調査では、半数程度の市町村が開催しておらず、特に町村では相談に関して相談担当者個人に委ね、組織的な判断や対応がなされていない状況が多々みられることから、各市町村、特に町村部において、組織的な判断や対応を行うことのできるような体制を早急に整備する必要がある。

 (3) 夜間・休日等の体制について
 ○  夜間・休日等の対応について、平成17年6月1日現在の調査では、半数の市町村が対応しておらず、夜間・休日の対応体制の整備が急務である。
 ○  体制の整備に当たっては、相談件数の多寡や相談内容、自治体の規模、職員体制等を勘案して、複数市町村で合同して体制整備をするなど、それぞれの自治体に応じた体制とすべきである。
 ○  なお、その際には、各自治体の住民が、その自治体の夜間・休日等の連絡先を把握できるよう、住民向けに周知を徹底することが必要である。

(3) 市町村の職員体制の確保・専門性の向上
 (1) 必要な職員の確保について
 ○  平成17年6月1日時点の調査では、市町村の相談担当職員の7割は兼務である。また、相談担当職員の37%は一般行政職であり、児童福祉司は5%強、社会福祉士は2%にすぎないなど、各市町村とも人材確保に苦心している状況である。特に小規模な町村では、一人の相談担当職員で他の業務と兼務しながら対応している例も多く、相談窓口の人事ローテーション、専門性の確保が難しいとの指摘もある。
 ○  当面、市町村において現有勢力で対応せざるを得ない場合には、保健師、保育士など子どもとその家族に対する直接援助について基礎的な素養のある者を優先的に充てるなどの工夫をすべきである。その際、児童家庭相談には子どもの成長発達や家庭背景を含めてアセスメントするなど専門的な知識や対応が求められることから、市町村においては、母子保健分野に一定程度の経験を積んだ保健師を配置することが望まれる。
<実践例>
 神奈川県相模原市は、前述のとおり、平成17年4月に新たに「こども家庭支援センター」を設置したが、センターには、これまで各機関で児童虐待対応に当たっていた職員を集約する形で、専任の保健師、福祉職、保育士などの多職種の正規職員とともに、非常勤職員の家庭児童相談員や心理相談員を配置している。
 福岡県中間市は、平成元年度から専任(正規)の相談担当職員を1名配置。女性からの相談が比較的多いという観点から、女性の職員を充て対応している。さらに警察OBを3名、嘱託職員としており、非行相談にも力を入れている。

 (2) 専門性の向上、対応力の強化について
 ○  平成17年6月1日現在の調査では、4割の市町村において、相談担当職員が資質向上のための研修を受けておらず、少なくとも、こうした職員に対して研修を受講する機会を確保すべきである。
 ○  なお、市町村において児童家庭相談を担当する職員の資質向上を図ることを重視し、全国社会福祉協議会が実施している「児童福祉司資格取得通信教育研修」の受講対象が、現行の都道府県・指定都市・児童相談所設置市の職員に加え、平成18年度から市町村の職員まで拡大されるので、こうした研修も活用することが重要である。
 ○  また、研修を行っても市町村の担当職員がすぐに人事異動してしまうという課題も指摘されており、都道府県が市町村職員向けに研修を行う場合には2〜3年周期で研修プログラムを組む必要がある。
 ○  市町村職員が児童相談所で数日間、短期的な研修を行うことや、児童相談所の援助方針会議への参加などに取り組む市町村もあり、市町村と都道府県・児童相談所との人事交流(1〜2年程度)が市町村の相談担当職員の人材育成に効果的と考えられるため、こうした工夫を各市町村で採用すべきである。
 ○  また、市町村の対応力に関し、例えば、業務マニュアルを作成している市町村が現状では5割程度にとどまっており、それぞれの自治体に適した業務マニュアルの作成が必要である。
<実践例>
 神奈川県横須賀市は、平成17年度から、児童家庭相談担当職員を1人あたり4日間、県の児童相談所へ研修させており、ケース検討会議への出席や児童福祉司との同行訪問など、実践での児童相談所の動きについて研修している(横須賀市は平成18年度から児童相談所設置市)。
 神奈川県相模原市は、平成15年度から2年間の人事交流を実施し、市職員が児童相談所で保護所職員および相談員として勤務した。また、平成17年度には、児童相談所の援助方針会議に市職員が1人ずつ参加し、児童相談所における組織的な判断について研修している。
 東京都葛飾区では児童家庭相談を担当する職員を、順次、児童相談所へ派遣し研修を受けさせている。研修期間は4か月から2年までと様々であるが、家庭訪問、面接、通告時の対応等を体験している。児童家庭相談の中でも特に虐待相談の場合、家庭状況の把握、児童との面接、リスク判断、援助の組み立て等において実践的な技術を要するため、児童相談所での研修は大いに役立っている。
 また、研修は技術の習得とともに、児童相談所の行う行政権限の発動(一時保護等)を伴う対応がどのような場合に可能であるか等、児童相談所の判断基準や機能に関してケースを通じて体験する事で、児童家庭相談における市町村が担うべき役割の確認ができている。
 ○  前述したが、市町村と児童相談所とが共通のアセスメントシートを用いるなど、アセスメントのための共通指標を用いることも検討すべきである。
<実践例>
 神奈川県相模原市では、市が児童虐待として関わっている約400件の全てのケースについて、通常の対応とは別に、ケースの状況と支援の効果を確認するとともに、今後の支援方針を検討する定例ケース会議を半年に1回開催しているが、その際に共通の認識でケース検討をするためのツールとして、育児困難家庭のための支援評価シートを独自に作成し活用している。
 ○  なお、外部人材の活用は町村では9割以上が、市部でも約8割が行っておらず、民間有識者の任期付き採用や、市町村児童福祉審議会の活用などによる外部人材の活用にも取り組むべきである。

(4) 要保護児童対策地域協議会(ネットワーク)による取組
 (1) 要保護児童対策地域協議会の設置等について
 ○  協議会の設置率は平成17年6月1日現在で5%に届かず、協議会又は児童虐待防止ネットワークのいずれかの設置率で見ても50%強であるのが現状である。
 ○  協議会又はネットワーク(以下「協議会等」と略す)を設置していない理由として「人材の確保が困難」とする自治体が多く、調整機関のコーディネータなどの人材確保や資質向上が課題ではある。しかしながら、複雑な要因が絡み合って発生する虐待などについては、多様な関係機関、関係者の情報と援助方針の共有化、また、それを踏まえた支援が不可欠であることから、各市町村は早急に協議会の設置を検討すべきである。その際、小規模な市町村においては、他の協議会との合同開催や事実上の共同設置を行うことも考えられる。
 ○  なお、協議会やネットワークを設置した後も、具体的なケースを扱っていないところが見られるが、児童相談所の協力も得て、事例研究会を行うなどにより参加者間でケースの取扱いについての共通認識を形成していくことが、ネットワークを機能させていく上で重要である。
<実践例>
 三鷹市では、市の子ども家庭支援センターが中核機関となって、子どもと家庭に関するあらゆる相談に応じるほか、児童相談所をはじめとした地域の援助機関やサービスをネットワーク(三鷹市子ども家庭支援ネットワーク)でつなぎ、市全体の子ども家庭支援システムを強化してきた。17年度中には、このネットワークが協議会に移行する予定である。

 (2) 要保護児童対策地域協議会の役割について
 ○  協議会を設置している市町村においては、代表者会議や実務者会議よりも、個別ケース検討会議を開催している市町村数が多く、個別ケース対応に協議会活動の重点が置かれている様子がうかがえる。協議会等が担うべき役割や、協議会等と市町村の相談窓口との関係については、一様に定められるものではなく、各市町村の実情に応じて組み立てていくべきことがもとより基本である。しかしながら、個別のケースについて地域資源を総動員しながら対応することが効果的であると考えられることから、市町村の相談窓口でケースを受け付けた上で、協議会等で受理会議(緊急受理会議を含む)、調査、援助方針の決定とこれを踏まえた継続的な援助など、個別ケース対応についての役割を担うという取組について各市町村で検討すべきである。
 ○  一方、児童相談所との役割分担の明確化なども課題として挙げられており、個別ケースを(要保護対策地域)協議会等が担う場合でも、児童相談所との関係をルール化する必要がある。
<実践例>
 大阪府泉大津市の「泉大津市虐待防止ネットワーク(CAPIO)」では、具体的なケースに即応することに活動の主眼を置き、虐待の通報や相談があった場合、まず事務局(市児童福祉課)に情報が集められ、その後、事務局、児童相談所及び実務者会議座長の三者で緊急度判定会議を開催、必要に応じて臨時実務者会議を開催し、対応チームを編成する仕組みを取っている。

 (3) 要保護児童対策地域協議会の人材について
 ○  市町村には、繰り返しになるが、児童相談の初期窓口としての役割を果たすとともに、個別ケースの援助方針を関係者と決め、実際に援助を行うという役割を有している。
 ○  そのためには、個別ケースの援助方針を決めるために協議会の開催の事務や、個別ケースの支援の実施状況の把握等を行うことが不可欠であり、調整機関のコーディネータは、こうした事務を担い協議会の活動の要となることが期待される。しかしながら、協議会を設置している市町村のうち、常勤で配置されているのは約6割にとどまり、非常勤では適時適切に協議会の開催事務を行うことが困難であるため、常勤での配置が必要である。
 また、コーディネータには個別ケースの援助方針を関係者と決め、援助状況の把握等を行うことも求められており、その力量アップのためにスーパーバイザーを確保することや、専門職の雇用等の人材確保も、検討すべきである。
<実践例>
 三鷹市子ども家庭支援ネットワーク(平成17年度中に(要保護児童対策地域)協議会への移行を予定)では、精神科医、小児科医、弁護士、臨床心理士、精神保健福祉士など8名の外部専門家からスーパーバイザーとして助言を受けている。

(5) 子育て支援サービスの活用による総合的支援の実施
 (1) 地域子育て支援サービス、母子保健事業などにおける予防、早期発見・早期対応、親子への継続的支援
 ○  市町村は新生児訪問や乳幼児健康診査などの母子保健事業等を通じて、全ての親子を視野に入れた予防・早期発見を行うことができ、また、支援を要する家庭に対し、育児支援家庭訪問事業などにより家庭へ訪問することや保育サービス等を活用して継続的な支援を行うことができる。
 ○  具体的には、まず、次世代育成支援対策推進法に基づき、全ての市町村は平成17年3月中に次世代育成支援・子育て支援に関する市町村行動計画を作成することが義務付けられているが、この行動計画に基づき、つどいの広場(「子育てサロン」「ふれあい親子サロン」なども含む)や地域子育て支援センターなど地域の子育て支援拠点を整備する市町村も多い。つどいの広場は、親子が気軽に集い、スタッフとの身近な子育て相談なども可能であり、また、地域子育て支援センターに市町村の児童家庭相談体制の一端を担わせている自治体もあることから、こうした地域子育て支援拠点において、児童虐待など児童家庭相談の発生予防、早期発見等の役割を担うことが期待される。
<実践例>
* 調整中
 ○  また、市町村の母子保健事業は母子健康手帳交付時や新生児訪問から親子と関わりがあるため、虐待の発生予防、早期発見と重症化予防という役割は大きい。特に、児童虐待により死亡に至った事例では生後4か月以下の乳児が占める割合が高いが、現状では新生児訪問の訪問率は20%程度に過ぎないため、医療機関との連携の強化、新生児訪問の活発化、乳幼児健康診査の未受診者把握など市町村において母子保健事業に改めて積極的に取り組むことが望まれる。
 ○  こうした事業により気になる家庭と出会った場合には、育児支援家庭訪問事業が、家庭に入って個別具体的かつ継続的に支援することにより対象者の課題解決を目指すことから、効果的と考えられる。しかしながら、現状では育児支援家庭訪問事業に取り組む市町村は約○○○市町村にとどまっており、未実施各市町村においては育児支援家庭訪問事業の事業化を検討すべきである。
 ○  加えて、一時保育などの保育サービス等を活用して継続的に親子を見守り、支援することや、ファミリー・サポート・センター事業の紹介、さらには緊急一時保育、ショートステイ、トワイライトステイといったレスパイトサービスの提供もこうした家庭に対する支援として有効と考えられるので、市町村は児童家庭相談窓口を担う部門と協力しながら、このようなサービス提供を行うべきである。
 ○  こうした育児支援家庭訪問事業や、保育サービス、レスパイトサービスなどの整備を行うことにより、親子の抱える問題や重要度に応じた身近なサービス基盤を市町村において確保していくことは、市町村の相談への対応力を向上させることにつながるものであり、その面でも有効と考えられる。
 ○  なお、民生委員・児童委員、主任児童委員についても、地域の親子の把握・支援という観点から、その役割が期待される。
<実践例>
 東京都目黒区では、児童虐待等の通報があった場合、児童相談所や子ども家庭支援センター(東京都の単独事業)から主任児童委員に調査の依頼がある。主任児童委員は、当該区域を担当する児童委員と共に実態調査や見守りを行い、緊急対応が必要な事例は、児童相談所が即対応し、継続的な支援が必要な事例については、子ども家庭支援センターで関係者会議を開催し、役割分担を行う。
 児童相談所の指導により見守りや支援については、関係者による月1回のモニタリング会議で情報交換と経過状況などの確認を行っている。

 (2) 市町村児童家庭相談窓口等との連携、要保護家庭の支援
 ○  地域子育て支援サービスや母子保健事業等において、気になる相談があった場合や気になる親子と出会った場合には、適切に市町村の児童家庭相談窓口や児童相談所等につなぐ工夫が必要である。
 ○  特に、自治体によっては、母子保健と児童家庭福祉を担当する組織が分かれている場合は、両者が同じ土俵に立てない、専門用語が異なる(P)などとの指摘もなされていることから、こうした地域子育て支援サービスや母子保健事業に従事する機関を含めて協議会を活用してケースの見立て方や援助方針を共有化する等の工夫も検討すべきである。

(7) 政令市の扱い
 指定都市の7割は、各「区」が設置する「子育て支援室」、「 家庭児童相談室」等の窓口と児童相談所が重層的に対応しており、効率的な児童家庭相談を進める上では、「区」を第一義的な相談窓口して活用することを検討すべきである。その際、児童相談所においても、区を支援する専門部署(区の啓発、研修、個別支援などを担当)を置くことも検討すべきである。
<実践例>
 横浜市においては、各区の児童家庭相談の中核を担う保健師が、児童相談所の支援により「『不適切な養育』気づきと支援マニュアル」を作成している。これは、母子保健事業の中から「虐待探し」ではなく、養育者の抱える問題や子どもの育てにくさなどに、気づきと共感の姿勢で支援するためのチェックリストであり、危険性が高いと判断されたものは児童相談所が対応し、それ以外は区が対応することとしている。

(8) 個人情報保護との関係
 都道府県や市町村が、個々の児童家庭相談に係る各種の調査を進めるに当たって、個人情報保護法を盾に調査を拒否する機関や個人が存在するとの指摘が少なからずある。しかしながら、個人情報の保護に関する法律では、「児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」(法第16条第3項第3号、第23条第1項第3号)は、個人情報の利用目的による制限や第三者の提供の制限から除外していることから、こうした場合には個人情報保護法上、許容されていることを、国において周知すべきである。

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