第2章  ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果

1. 初動体制並びに家族への脳死判定等の説明および承諾
 6月29日8:00頃、自宅で倒れているところを発見。9:28救急車にて臓器提供施設に搬送される。画像上、小脳の広範囲に梗塞を認め、同日、外減圧術を施行。
 7月3日19:50、家族より意思表示カードの提示あり。
 7月4日4:07、病院は臨床的に脳死と診断。家族がコーディネーターの話を聞く意思があることを確認し、同日4:56、病院はネットワーク西日本支部に連絡。
 同日6:13、ネットワークのコーディネーター1名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価等を行っている。その後、都道府県コーディネーター1名とネットワークのコーディネーター2名が病院に到着。
 同日9:57、ネットワークのコーディネーター2名と都道府県コーディネーター1名が家族(患者の姉、義兄、いとこ)に面談。主治医、看護師同席の下、脳死判定、臓器提供の内容、手続き等につき文書を用いて説明。その際、家族構成等を十分に確認している。
同日11:04に患者の姉が代表して脳死判定承諾書、および臓器摘出承諾書に署名捺印。家族の総意であることを確認し、コーディネーターがこれらを受理している。

【評価】
 ○   コーディネーターは、病院から家族への臓器提供に関する説明依頼を受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を迅速かつ適切に行っている。
 ○   家族への説明についても、コーディネーターは、脳死判定、臓器提供等の内容、手続きを記載した文書を手渡してその内容を説明し、家族から承諾書を受理している等、コーディネーターの家族への説明等は適正に行われたものと評価できる。

2. ドナーの医学的検査およびレシピエントの選択等
 7月4日12:41に、心臓、肺、肝臓のレシピエント候補者の選定を開始。膵臓と腎臓についてはHLAの検査後、同日16:57よりレシピエント候補者の選定を開始している。
法的脳死判定が終了した後、7月5日1:16より心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓の各臓器別にレシピエント候補者の意思確認を開始。
心臓については、第1候補者、第2候補者の移植実施施設側が心臓の移植を受諾し、順位通り第1候補者に心臓の移植が実施されている。
 肺については、第1候補者の移植実施施設側が両肺の移植を受諾。第2候補者は、リンパ球直接交差試験が陽性であったため意思確認を実施せず。第3候補の移植実施施設側が片肺の移植を受諾し、順位通り第1候補者に両肺の移植が実施されている。
 肝臓については、第1候補者の移植実施施設側が一旦肝臓の移植を受諾するも、最終的に、開腹後の最終評価にてドナー肝に中等度の肝炎、胆管炎、膿瘍を認めたため、移植の適応なしと判断し肝臓の移植が見送られることとなった。
 膵臓・腎臓の同時移植については、第1候補者の移植実施施設側が膵臓・腎臓の同時移植を受諾。第2候補者は、上位候補者がすでに移植を受諾しており、移植を受けられる可能性が低いことを理由に、膵臓・腎臓の同時移植を辞退し、順位通り第1候補者に膵臓・腎臓の同時移植が実施されている。
 右腎臓については、第1候補者、第2候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾。第3候補者は、体調不良で体力に自信がないとの理由により腎臓の移植を辞退。第4候補者は、リンパ球直接交差試験が陽性であったため意思確認を実施せず。第5候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾し、順位通り第1候補者に腎臓の移植が実施されている。
 また、感染症検査やHLAの検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されている。

【評価】
 ○   今回の事例においては、適正にレシピエントの選択手続きが行われたものと評価できる。
 ○   ドナーの医学的検査等は適正に行われている。

3. 脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
 7月5日0:34に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。
また、同日、ネットワークのコーディネーターより家族に対して、肝臓については医学的理由にて移植が見送られることとなった旨を報告している。

【評価】
 ○   法的脳死判定終了後の家族への説明等に特に問題はなかった。

4. 臓器の搬送
 7月5日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料2のとおり搬送が行われた。

【評価】
 ○   臓器の搬送は適正に行われた。

5. 臓器摘出後の家族への支援
 臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、7月6日に病院関係者等とともに御遺体をお見送りしている。
 7月7日、ネットワークのコーディネーター2名と都道府県コーディネーター1名が告別式に参列。
 7月9日、ネットワークのコーディネーターより家族へ電話にて移植後の経過を報告。
 7月24日、ネットワークのコーディネーターより家族へ電話。四十九日の法要に合わせて訪問することとなる。
 8月21日、ネットワークのコーディネーター1名と都道府県コーディネーター1名が親類宅を訪問。厚生労働大臣の感謝状と心臓のレシピエントからのサンクスレターを手渡し、移植後の経過報告を行う。今後の経過報告については、良い報告も悪い報告もしてほしいと希望される。
 9月21日、ネットワークのコーディネーターより家族へ電話。心臓のレシピエントが退院されることを報告。
 前記した連絡、報告以外にレシピエントの退院状況や近況報告等、ネットワークのコーディネーターが適宜対応と報告等を行っている。

【評価】
 ○   コーディネーターにより、御遺体のお見送り、家族への報告やサンクスレターの送付等適切な対応がとられている。

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