06/02/24 国際協力事業評価検討会(第6回保健医療分野)議事録 1 日時 平成18年2月24日(金)10:00〜11:40 2 場所 厚労省専用第17会議室 3 出席者 【会員】  青山温子会員(名古屋大学大学院)             上原鳴夫会員(東北大学大学院)             小林廉毅会員(東京大学大学院)             田中耕太郎会員(山口県立大学)             中村安秀会員(大阪大学大学院)       【専門会員】大山真未会員代理(加茂下祐子)(文部科学省)             國井修専門会員(長崎大学)             石川典子専門会員(国立国際医療センター)             建野正毅(国立国際医療センター)             水嶋春朔専門会員(国立保健医療科学院)             橋爪章専門会員(国際協力機構)       【事務局】 妹尾国際課長、金井国際協力室長、今井補佐、日置専門官 4 議事 ○今井補佐「国際協力事業評価検討会(第6回保健医療分野)」を開催させていただき ます。はじめに妹尾国際課長からご挨拶申し上げます。 ○妹尾課長 おはようございます。国際課長をしております妹尾と申します。去年の8 月の末からいまのポストにきておりますが、この検討会に参加させていただくのは初め てになります。今回のこの検討会はすでに3年間にわたり、平成15年から検討を続け ていただいていると聞いております。この検討会は保健医療分野で検討をお願いしてい るわけですが、同時並行的に他の分野、厚生労働省が扱っているODA事業の他の分野 についても評価のあり方なり、どのようにその結果の評価を政策に活かしていくかとい う観点で検討を進めていただいています。  他の分野というのは労働の分野、水道の分野の3分野です。来月3月15日にその3 分野の合同の検討会を予定しており、そこで分野合同の検討会の最終会となっています。 先生方にはこれまで、ご多忙中にもかかわりませず参加いただいた点、多々お知恵をお 貸しいただいた点について、まず御礼を申し上げたいと思います。  ODAに関しては私から申し上げるまでもなく、政府の中でもいまODAのあり方に ついて非常に大きな議論がされているところです。この検討会を行っていた間だけを見 ても、例えば、ODA大綱、あるいはODA中期政策が策定されてきています。去年の 6月に閣議決定された経済財政運営の構造改革に関する基本方針の中でもODAプロジ ェクトの評価、あるいは戦略的な実施の重要性について盛り込まれたところです。  保健医療分野について見ても、これも去年の6月ですが、国際目標であるMDGs達 成に向けたイニシアティブが策定されてきています。保健医療分野のODAに関する国 際的な我が国に対する期待が非常に大きいのだろうと思っています。私どもとしてはこ の保健医療分野の報告、あるいはほかの分野の報告をいただき、そういうものを参考に しながら、今後の行政の円滑な運営、あるいは効果的な運営に努めてまいりたいと考え ております。  本日はそういう意味で最終報告の取りまとめになりますが、是非よろしく議論をお願 いしたいと思います。 ○今井補佐 ありがとうございました。続きまして本日ご出席の皆様の紹介をさせてい ただきます。座長の中村先生です。会員の先生方ですが青山先生、小林先生。上原先生、 田中先生は少し遅れていらっしゃいます。専門会員の先生方ですが、文部科学省から加 茂下様、長崎大学から國井様、国立国際医療センターから石川様、国立保健医療科学院 から水嶋様、国際協力機構から橋爪様です。オブザーバーで国立国際医療センターから 建野先生です。事務局を紹介します。 ○金井室長 国際協力室長をしている金井要と申します。よろしくお願いいたします。 ○日置専門官 専門官をしている日置と申します。よろしくお願いいたします。 ○今井補佐 私、国際協力室の今井と申します。よろしくお願いいたします。  次に配付資料の確認をいたします。議事次第、出席者名簿、座席表、資料1「国際協 力事業評価検討会(保健医療分野)最終報告(案)」、資料2「ASEAN・日本社会保 障ハイレベル会合について」、資料3「ASEANエイズワークショップについて」、以 上ですが、資料の不足等がございましたら、挙手をお願いします。  事務連絡ですが、先生方にご発言いただく際は、そのままマイクに向かってご発言い ただければ、音声が大きくなるようになっております。それでは座長の中村先生、進行 をお願いいたします。 ○中村座長 座長をさせていただく中村です。いよいよこの国際協力事業評価検討会も 第6回で、今日で一応最終回です。初めは何をするのかと、見通しがうまく利かないと ころもありましたが、お蔭さまでいろいろな形が出てきたと思います。今日は限られた 1時間半の中で、最初に厚生労働省の国際課のODA事業の評価をして、次にいままで ずっと私たちがやっていた検討会の最終報告案についてお話をします。そして、折角の こういう機会ですので「その他」として、ここのところで少し時間をできたらキープし て、保健医療分野のODA事業のやり方に関して、いろいろな大局的な観点から皆さん 方のご意見をいただいて、と考えておりますので、その辺り、議事進行のご協力をよろ しくお願いいたします。  早速ですが議題2「厚生労働省国際課ODA事業」ですが、これは初めて聞かれる方 も多いかと思います。これは私たちの検討班は国際協力事業評価の検討会です。そうい う意味では国際課のODA事業の評価ということで、これに関してまず事務局から説明 していただけますでしょうか。 ○今井補佐 まず資料2です。「ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合について」ご 説明いたします。厚生労働省では2003年からASEAN10カ国から社会福祉と保健医 療政策を担当する行政官を日本に招聘して、ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 を開催しております。  1.発足の経緯です。1996年のリヨンサミットにおいて、我が国は「世界福祉構想」 を提唱し、この構想を実施に移すために同年沖縄で開催された東アジア社会保障担当大 臣閣僚会議において、定期的に高級事務レベル会合を開催していくことが合意されまし た。これを受けて東アジアを中心とする地域協力が重要という認識の下に、1997年から 2002年まで、東アジア社会保障行政高級事務者会合を開催して、公衆衛生も含めた広義 の社会保障分野における協力関係の強化を図ってまいりました。  その実績を踏まえて2003年から、特にASEANの地域に焦点を当てて、社会福祉 と保健医療の分野における緊密な関係をさらに発展させ、またそれらの分野の人材育成 を強化するために、ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を開催しております。  2.テーマです。第1回会合は2003年11月、東京において開催し、各国の社会福祉・ 保健医療サービスにおける人づくりの役割を議論しました。この会合では、今後も福祉 と医療の人づくりをテーマとして取り上げ、福祉と医療の関係者間の連携、協力などを 含む議論を通じて、日本と各国間の協力関係を強化していくことが合意されました。  第2回会合は2004年8月から9月にかけて葉山、横浜において開催いたしました。 アジア地域で近い将来、共通する社会問題となることが予想されております高齢化と福 祉・医療の人づくりとのかかわりをテーマに議論を行いました。会合では今後、ASE AN諸国が高齢化対策に取り組む際に参照し得る枠組みが提言されました。  第3回会合は昨年8月から9月にかけて、厚生労働省において開催しました。第3回 会合のテーマの選定に当たり、ASEAN諸国からの提案、この後ご説明するASEA N+3保健大臣会合や、社会福祉開発大臣会合の議論などを踏まえて、特にASEAN において対応の強化の必要性が認識されている母子保健福祉と障害者保健福祉を中心に、 パートナーシップと人づくりをテーマに選定しました。  次頁です。3.ASEAN+3保健・社会福祉担当閣僚会合への報告です。2000年ご ろからASEAN側においても保健医療と福祉の分野で日本、中国、韓国との協力関係 を模索し始め、2004年4月にマレーシアにおいてASEAN+3保健大臣会合が、また 12月にはタイでASEAN+3の社会福祉開発大臣会合が開催されています。さらに、 昨年11月にはASEAN+3社会福祉・開発高級事務レベル会合が開催されています。 我が国もこれらのASEAN+3の枠組みに積極的に参加をしているところです。  ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合は、これらのASEAN+3の保健や福祉 の大臣会合を支える事業ということで、関係国間で位置づけられており、第1回から第 3回会合の結果は、これらのASEAN+3の大臣会合のほうに報告され、高い評価を 得ると同時に、今後の会合への期待が表明されています。  また、10ページに飛びますが、2003年12月に合意された「日・ASEAN行動計画」 という中にも、保健と社会福祉サービスにおける人材育成ということが掲げられており、 この実施に資する会合ともなっています。  3頁です。昨年開催した第3回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合の結果の概 要を説明します。テーマは「社会福祉・保健におけるパートナーシップと人づくり」と いうことで、母子保健福祉と障害者保健福祉を中心として議論しました。2.開催概要で す。会合にはASEAN10カ国からハイレベル行政官を中心に、副大臣級2名を含む 29名が参加しました。また、JICAやASEAN事務局、WHOの南東アジア地域事 務局からも基調講演の講師や議事の進行役などで参加していただき、我が国からは厚生 労働大臣、厚生労働審議官ほか障害者や母子健康福祉分野の専門家の参加を得て行いま した。  3.プログラムです。第1日目は我が国の政策の紹介の一環として、東京の中心に位置 している身体障害者授産施設、身体・知的障害児通園施設、母子保健センターなどの視 察を行いました。2日目には全体会合で障害者サービスや母子保健福祉サービスの現状 と将来のあり方などに関する議論を行いました。全体会合では6つの演題について講演 と質議応答、意見交換が行われました。まず、当省からこの会合の意義、我が国のAS EANに対する支援などについて紹介して、続いてASEAN事務局からASEAN地 域におけるコミュニティ構築の展望などについて紹介がありました。日本の障害者保健 福祉分野の政策、制度の現状と、戦後の変遷などについて、淑徳大学総合福祉学部教授 の多々良教授からご講演をいただきました。  4頁です。WHOの南東アジア地域事務局からSEARO地域のコミュニティにおけ る保健と福祉の活動状況について講演をしていただきました。さらに国立国際医療セン ターから、我が国における母子保健福祉をめぐる現状と戦後の著しい進展、アジア諸国 への国際協力などについて講演をいただきました。最後にタイにおける障害者の就労機 会の開発支援、中国における理学療法士や作業療法士の育成支援という2つのODAプ ロジェクトについて、そのプロジェクトを実施されているNPOの方、JICAの方に 講演をいただきました。  3日目についてはグループ討議ということで、「母子保健とコミュニティーサポート」 「障害者・児のための福祉・保健サービス」の提供という2つのテーマについて、分科 会を開催しました。分科会においては初めに各国から現状や施策についてプレゼンテー ションをしていただき、その後、福祉と保健の連携、官民の協力、人材開発の3つの項 目についてASEAN各国に共通の問題点やニーズを抽出し、対応策や今後の課題に関 する議論、モデル事例の共有を行いました。さらにこれらの議論を踏まえ、日・ASE AN諸国間の今後の国際協力の可能性、というものについても意見交換をしました。  4日目はグループ討論の結果を統合して、今後のフォローアップのための枠組みの提 言を取りまとめていただきました。  4.議論の概要です。母子保健福祉分野、障害保健福祉分野における福祉と保健の連携、 官民の協力、人材開発について各国の状況や対応策、モデル事例が紹介され、参加国間 で情報・経験の共有がなされました。また今後、ASEAN諸国がこういった分野の政 策に取り組む際に参照し得る枠組みが提言されました。その提言の中では特に今後の国 際協力の方向性として、保健と福祉を統合した計画を立案するシステムを開発すること、 NGOなどとのパートナーシップやネットワークを強化すること、地域レベルにおける サービス提供を改善すること、技術移転のための国境を越えたネットワークを構築する こと、優れた事例や教訓について共有を図ること、専門的な人材の能力開発を強化する ことなどが提案されました。  5.会合の参加者からの評価を把握するために、会合3カ月後に、参加者全員にアンケ ートを送付し調査しました。その結果がここにまとめてあります。回収率は参加者29 人中19人という結果でした。アンケートは大きく(1)アジェンダの適切性、(2)成 果、(3)成果の政策への展開、(4)ASEANと日本との連携、(5)その他という5 項目について質問を行いました。  質問項目は4頁の下からです。今次会合のアジェンダは自国の開発ニーズにとって適 切であったか。成果については、自国の能力開発にとって有効だったか。今次会合の提 言の内容は有効だったか。今次会合の内容は有効であったかについて質問したところ、 このような結果が得られています。  成果の政策への展開については、今次会合を踏まえ、自国内において何かアクション はあったか、又は計画中かという質問に対して、「障害者により良いサービスを提供する ため、福祉分野と保健分野のメンバーからなる合同委員会を設置」そのほか「コミュニ ティーに基づく福祉プログラムの実施を増やす政策を策定」などという回答が得られま した。  6頁です。会合の成果を自国の政策に活かすために、次回会合への提案はあるかとい うことを質問したところ、「福祉と保健の連携という観点から、成功例を共有する」「国 際的なドナー組織やNGOとの協調」「会合の成果を実施に移すためのパイロットプロジ ェクトが必要」「各国が、国内で会合の成果を共有するため、少なくとも1つの国家委員 会を設置すべき」などの回答が得られています。ASEANと日本のハイレベル行政官 が一堂に会して本会合を行うニーズは自国にあるかという質問をしたところ、ここに書 いてあるような結果でした。その他として、本会合の感想や提案については、「各国のプ レゼンテーションの時間が限られており、幅広に効率よく自国の状況を提示することが できない」「成功例のプレゼンテーションを増やすべき」「参加者を増やしてほしい」と いうような要望が出ていました。次回会合のアジェンダへの要望について聞いたところ、 ここに示してありますような回答がありましたので、今後の参考にしたいと思っており ます。  参考資料の7頁ですが、第1回のASEAN+日本社会保障ハイレベル会合の概要、 8頁には第2回会合の概要、9頁にはASEAN+3保健大臣会合で合意された保健分 野におけるASEAN+3の協力可能な分野、ASEAN+3社会福祉開発大臣会合に おいて合意された社会福祉分野におけるASEAN+3の協力可能な分野を紹介してい ます。資料2については以上です。 ○中村座長 引き続いて資料3もやっていただいて、少し議論の時間をキープしたいの で、短めにまとめていただければと思います。 ○今井補佐 資料3です。「ASEANエイズワークショップについて」紹介します。1. 経緯です。厚生労働省国際課では、平成8年からエイズワークショップを開催しており、 ここに書いてあるようなテーマで、行政官を対象に実施してきておりました。平成15 年からは国立国際医療センターによる企画立案・実施に係る全面的な協力を得て、AS EAN諸国からHIV/AIDS対策行政官、医療従事者等を招聘し、ASEANエイ ズワークショップを開催しています。会合は、WHOが2003年に発表した3by5政 策に即し、ASEAN各国におけるHIV/AIDSケア・治療の促進を支援すべく、 経験や知識の共有を通じて行政官、医療従事者等の関係者の能力開発を図ることを目的 にしています。  2.これまでのテーマです。2003年は12月に東京で、「ARV拡大を含むHIV/A IDSケア計画開発のためのトレーニング」ということで開催しています。2004年は 11月に東京で開催して、「HIV/AIDSケア・治療の促進」をテーマにしました。 昨年は神戸において6月から7月にかけて開催し、「HIV/AIDSケア・治療の進展」 をテーマに議論しました。  3.国際会議への報告です。ASEAN+3保健大臣会合や、社会福祉大臣会合に加え、 昨年7月に開催された「第7回アジア・太平洋地域エイズ国際会議(ICAAP)」にお いて、ASEANエイズワークショップ2005の結果を含め、過去3年間のエイズワー クショップの取りまとめを報告しています。  また、最後の頁に記載しましたが、日・ASEAN行動計画にも感染症対策というこ とで、「日本は感染症対策のため日・ASEANエイズワークショップの開催も検討する」 ということが盛り込まれており、この実現に資するものになっています。  2頁です。「ASEANエイズワークショップ2005の結果の概要」を簡単に報告しま す。テーマは「HIV/AIDSケア・治療の進展」で、ASEAN9カ国から計25 名、各国の保健行政当局のHIV/AIDS対策の責任者、拠点病院のエイズケア・治 療の責任者、第一線でHIV/AIDS患者へのケア・治療に協力しているスタッフの 方々に参加していただきました。プログラムは第1日目は全体会合において、WHO本 部とWHOベトナム事務所から専門家をお招きして基調講演をしていただき、その後、 参加者によるカントリーレポートの発表を行いました。  2日目はグループワークを行いました。職業別と国別というグループワークを行い、 職業別では行政(公衆衛生)、臨床、最前線分野という3つのグループに分けて、各国共 通の課題や違い、成功例について討議しました。国別では国ごとにグループをつくり、 ケア・治療へのエントリー、ケア・治療・サポート、モニタリング、財源、人材という 5項目について、過去3年間の進捗を総括するとともに問題点と課題を抽出し、2005 年以降の見通しについて討議しました。  最終日については総括ということで、参加各国から今後の取組みの計画についてプレ ゼンテーションがあり、最後に過去3年間のエイズワークショップの取りまとめが発表 されました。  4.議論の概要です。ここに掲げてある4点になろうかと思います。まず、参加各国に おけるHIV/AIDSケア・治療や政策上の問題点や対処法に関する議論、ケア・治 療の拡大に関する進展のレビュー、今後の取組み計画に関する紹介などを通じて、経験・ 情報の共有が図られました。  特に今回のワークショップの特徴としては、次の2点が挙げられるかと思います。1 点目は、国際的な3by5政策の推進に伴って、各国の状況が急激に変化していく中で、 周辺各国との情報や意見交換、経験の共有を行う機会というものは、各国の効果的かつ 効率的な政策の策定や実施に当たって非常に重要ということが認識されてはいますが、 実際にはそういう機会が少ないという中で、今回のワークショップで、過去3年間の各 国における進展を共有できたこと。WHOなど外部のリソースパーソンの方々に、より 広い観点から最新の情報や知識のアップデートをしていただいたこと。2点目としては 国別のグループワークで自国の現状の把握と展望をまとめてもらうとともに、職業別の ディスカッションにより分野ごとの課題の討議や経験の共有が行われました。  議論の内容ですが、ASEAN各国におけるHIV/AIDSケア・治療について著 しい進展が見られるとともに、実施体制の脆弱さ、服薬遵守の確保の難しさ、検出率の 低さ、抗レトロウイルス薬の品質の確保などの問題が存在することが確認されました。 また、参加各国からは今後の支援の継続にも期待が表明されました。  4頁です。第7回のICAAPサテライトシンポジウムにおいて、過去3年間のエイ ズワークショップの成果や取りまとめについて、国立国際医療センターから発表をして いただきました。また、ASEAN各国からは、各国の治療拡大の進展と将来の展望に ついてプレゼンテーションがありました。  次に参加者からの評価です。これは会合中にアンケートを実施して、終了後回収して います。回収率は参加者25名中21名ということでした。アンケートは(1)今次ワー クショップのプログラムの評価。これは議論のテーマの範囲、レベル、議論の深さ、時 間の割振りのバランス、期待を満たすものであったか、今次ワークショップで得た技術 や知識の自国における適用性について聞いたところ、このような結果でした。(2)今次 ワークショップへの意見としては、「カントリープレゼンテーション、デイスカッション の時間が少ない」「トピックを1つか2つに絞るべき」というような意見がありました。 (3)の今後のワークショップへの提案は、例えば「成功プログラムのプレゼンテーシ ョン」「フィールドトリップによる情報・教訓の共有」という提案がなされました。  6頁は参考資料です。ASEANエイズワークショップの2003年と2004年の結果の 概要を簡単に紹介しています。以上、エイズワークショプについて説明しました。  冒頭、課長のご挨拶にもありましたが、近年ODA評価の充実とODA事業の戦略性 や効率性の向上が謳われており、国際課としてもそういった政府の方針に沿った事業の 実施に取り組んでいきたいと考えていますので、先生方に今ご説明しましたような事業 の形体、内容などについて、参加者からのコメントも参考にしていただきながら、全般 的なコメントをいただければと思っています。よろしくお願いいたします。 ○中村座長 今井補佐、どうもありがとうございました。この2つの事業を中心に、ご 出席の会員の方や専門会員の方からご意見、具体的な提案、あるいは質問をいただけれ ばと思います。時間もあまりないので、細かい事業のディテールについては置いておい て、何か大きな部分でご質問、ご意見があればお願いします。 ○水嶋専門会員 基本的なことを教えていただきたいのですが、国際課独自でハンドリ ングされているODAの規模、額的なものや、事業の案件数がどのくらいあって、その 中でいまご紹介いただいたのはどのような位置を占めるのかについて、教えていただき たいと思います。 ○今井補佐 国際課は保健医療だけではなくて、水道分野、労働分野等ほかの分野もあ りますが、保健医療分野についていえば、国際課が所管しているのはこの2つです。J ICWELSに両方とも委託して実施しています。予算的な額ですが、JICWELS への委託費としては保健医療と水道を合わせて大体7,000万〜8,000万円です。 ○水嶋専門会員 ありがとうございます。 ○中村座長 ほかにはいかがでしょうか。 ○國井専門会員 こういった評価には、特にハイレベルの場合、いくつかの観点がある と思います。そのトピックが非常にタイムリーであるか、その時期にハイレベルで議論 することが妥当なものか、それを行うインパクトがどうかという。今回、評価をご報告 いただきましたが、その評価の観点を事前にいくつか作っておかれるといいかと思って います。  特にハイレベル会合はいろいろな所でいろいろなドナーがやっていますが、最近はや ることに意義があるのではなくて、それをやって次に何につながるかが重要になってい ます。最近政府とWHOが開催した鳥インフルエンザの東京会合は、まさにタイムリー で、タイミングはよく話題性もあったと思います。いくつかの観点で見直しをされると いいかと思います。  特にエイズのワークショップも3by5の話とか、いくつかあると思うのですが、ど ちらかというと日本は世界的には後手に回っているているので、国際的に通用する新し い概念を作っていくとか、概念を作った後各国でどのように行政的に執行するかという 部分など、フォーカスを絞っていったほうがよいと思われます。ほかでもやっている一 般的なものを繰り返してはもったいないと思います。ですから、ハイレベルとしてやる ものと、人材育成につなげるものと、ある程度中堅技術者を呼んで各国で広げていくも のと、会合というのは全部ポイントが違うと思うので、どこに照準を合わせて、それが 何につながるかというシナリオとその評価方法を作っておきながらやっていくといいか と感じました。 ○今井補佐 ありがとうございました。 ○青山会員 最初の社会保障の会合について、母子保健と組み合わせて議論したようで すが、むしろ介護と組み合わせた方がわかりやすいのではないかと思われます。日本の 介護保険はロングタームケア制度として海外にも知られており、ASEANの国などに は非常に参考になるのではないかと思います。母子保健は、また違う分野のような印象 をもっています。  それから6頁に「もっと人数を増やしてほしい」という参加者の意見がありましたが、 ハイレベルと実務者が一緒に参加することに意味があるというご意見もありましたもの の、それと別に、やはり実務者に対してはきちんと実務的な議論のできる会合が必要で はないかと思います。日本の保険制度などは大変進んでおり、ASEANの国々は非常 に関心があると思いますので、別途、そういった具体的な実務に関する議論のできる場 が必要ではないかと思います。ハイレベルの会合は、ディシジョンメーカーに対するも のとして実施していけばよいのではないかと思います。  もう1つのエイズワークショップも、ASEANを対象としていますが、ASEAN の国の中でタイなどはエイズ対策にかなり成功してきています。エイズはもちろん大切 な課題なのですが、先ほどもお話があったように、ASEANの国々では、SARSや 鳥インフルエンザといったエマージング・ディジーズも起こっており、対応に追われる ことがあります。エイズを取りかかりにして、そこからさらに、サーベイランス・シス テムや薬剤などのロジスティックス、あるいは法的枠組みや倫理的な問題を議論し、感 染症対策全体の枠組みをきちんと作っていくような方向に発展していくとよいのではな いか、ということを思いました。 ○田中会員 エイズのほうなのですが、各国から政策レベルと実際の現場でコーディネ ートするレベル、あるいはNGOレベルというレベルの違うグループを、それぞれ各国 から招聘して、それぞれの各国横断的な各レベル別の会合を一旦やっておいて、それか ら後に今度は各国別にレベルの違う人たち同士でディスカッションで、もう1回各国の 対応を違うレベルの現場同士でグループディスカッションさせる、という方法が大変有 効だったのではないかと思います。おそらく、だんだんこういうグループワークの手法 も国際会議でもかなり一般的になりつつあるのだろうと思いますが、意外と日本もそう ですが、国内でもレベルの違う人たちがオープンに同じ立場で議論をするというのは、 意外とありそうで機会は少ないので、国際的な会議の場でこういう手法は非常に有効だ ったのかと、会議の様子は実際に見ていませんが、各国にとってクリエイティブだった のかと思って、報告論のことですがちょっと気が付きましたのでコメントします。 ○中村座長 ほかはよろしいですか。事務局から何かありますか。特になければ、私か ら1点だけお聞きします。先ほどの國井さんからの話とつながるのですが、特に政策と してこういう事業をしたときに、その後何につなげていくかというところが、やはり大 きな問題かなという気がしています。いまJICWELLSでこれを基に、その後具体 的な動きとしてかなり動いていらっしゃるのでしょうか。 ○今井補佐 まずASEAN・日本社会保障ハイレベル会合のほうについては、取りあ えず4年計画ということで始めました。来年度に過去4回の会合の取りまとめを行って、 各国で実施に移すことが重要という指摘を受けています。各国の事情に合わせて実施す るのに役立つようなガイドライン的なものをまとめたらどうか、という提案もASEA Nから出ておりますので、そういった提案を踏まえて、来年度の会合を計画しようと思 っています。  エイズワークショップについては、3年間の計画ということで2003年から2005年ま で行い、今年からはこれまでの成果と問題点を踏まえて、参加者から出ている意見など も参考にして、新しく考えて検討していきたいと思っていますので、医療センターの先 生方と相談させていただいているところです。 ○中村座長 わかりました。 ○金井室長 いまのところ構想として持っているのは、JICAなりで海外で行ってき たプロジェクトを見る場を作れればというので、今年はタイでワークショップを実施し て、実施するからにはタイ側に半分ホストとしていただく形になります。フィールドト リップなりで、実際にエイズのNGOなり政府なりが絡んできた案件を見るような場を 最初に持って、その中身を見た後で各国の方々にワークショップをやっていただこうか と。そして、海外のフィールドを活用しながら、意見交換をしていきたいと思っていま す。 ○中村座長 わかりました。このような分野は本当に日本に関する期待も大きいし、先 ほど青山さんがおっしゃいましたが、介護の分野などもいま各国から実際に来ています。 ちょうど私の所にも厚生労働省のOBの方もいるのですが、そこにもやはり外国から聞 きに来ますから、本当にそういう意味では関心が高い。そういうリソースを持っていら っしゃるわけですから、それを上手にまとめ上げることが大きいという気がします。そ して、ワークショップと会合が最終のターゲットでないわけですから、そこから後に何 を作っていくか、それでできたものが向こうの国に裨益するかということで、最後が決 まるわけです。その辺のインプリメンテーションをJICWELLSの方、あるいは医 療センターなどと協力して、実際のインプリメンテーションにつながるようなものをお 願いしたいと思っています。  一応議論はこの辺りで終えまして、今後の事業の改善にしていただければと思います。  早速ですが、次の議題に移りたいと思います。議題3です。これは保健医療分野の最 終報告、本日のメインテーマなので、時間が半分以上過ぎていますので、まず駆け足で 説明をしていただいて、ディスカッションという形にしたいと思います。説明について 中間報告以降のところはみんな知っています。その後のところも皆さん共通でかなり知 っているので、すみません、事務局の説明は最小限にしていただいて、議論の時間を確 保させていただけますでしょうか。 ○今井補佐 最終報告の構成ですが、中間報告で打ち出された「国際協力に携わる人材 の養成」「国際協力データバンクの構築」「国際協力の将来あるべき方針」というこの3 点について、その後の会期後半の活動を取りまとめ、最後に中間報告を付けて最終報告 (案)としてお配りさせていただいています。  「国際協力に携わる人材の養成」については中村先生に作成していただき、「国際協力 データバンクの構築」は上原先生に作成いただきました。これはそれぞれ研究の概要を 示していただいていますが、今後も引き続き実施をしていただく予定になっています。 ○中村座長 一応こういう中間報告に基づいた部分で、国際協力に携わる人材の養成と 国際協力データバンクの構築という2つの事業が、実際に動いています。これに関して は資料1の5頁、別添1に「国際医療協力に携わる人材育成および登録システムの構築 に関する研究」ということで、私がさせていただいているものです。本日ここに出席し ていらっしゃる多くの先生方にもお世話になっています。  保健医療分野の国際協力に関するどのような人材が必要なのかというニーズを把握し て、実際に研修やキャリアパスに関してもオペレーショナル・リサーチをして、人材を 求める人と、人材を提供する人との間のネットワークを構築したいということで、研究 をしています。現在17年度はすでにいろいろな研修や、この3月には國井さんなどを 中心に、合宿形式でみんなで今後のことをディスカッションするというのも計画してい ます。実際に医学部の学生などを中心として、2泊3日で研修をしてというようなのも やっています。そういう意味ではかなりオペレーショナル・リサーチの形をとっていま す。最終的には登録システムのモデルを作って、実践的な提言ができればいいと考えて います。  続いて上原先生からなのですが、上原先生がまだお見えにならないので、私が説明し ましょうか。国際協力データバンクの構築ですが、情報のデータベースの入力システム と維持とか、いろいろなことで結局現在実施中の案件と完了した案件の両方を一緒にし た案件のデータバンクを作って、みんなでODAに関する山のような情報を、いろいろ な方が使えるような形で整備しようということで、案件データバンクの設計を行ってい るところです。案件分類などなかなか難しいところもあるそうですが、現在着々と進行 しているということです。  そういう意味ではこの2つの事業がうまくいけば、人に関する部分のいろいろなノウ ハウと、私たちは実際に国際協力で実施した案件に関する部分の情報がきちんと出る。 あとはこれを組み合わせて、どう政策決定するのかという、ここがその後に残ってくる 課題だということになるわけです。  3頁です。3.国際協力の将来あるべき方針に関して事務局から説明していただけます でしょうか。 ○今井補佐 これは中間報告において、目標、システム、リソースという3つの観点に おける論点と、その戦略を示していただき、こういった論点や戦略が、今後我が国の国 際保健医療分野における援助戦略などの検討の中で活用されていくことが望まれる。そ ういうご議論がこれまでの会合の中でありました。例えば日本政府は昨年6月、「保健と 開発に関するイニシアティブ」を公表していますが、本検討会における考え方もこうい った中で活かされたものと考えています。 ○中村座長 ありがとうございました。これが今回この国際協力事業評価検討会の最終 報告ということで、事務局と相談させていただいて現在考えている案です。皆さんご意 見、あるいは質問がありましたらどうぞ。 ○橋爪専門会員 報告(案)そのものは何の異論もございませんが、要はこれを具体的 にどう実施していくかということなので、議事録に残すという形で発言させていただき ます。マルチは別として、2国間ODAの場合はどうしてもやっていることは相手国政 府のマネジメントに介入するということなので、ここで人材のマッチングや人材養成の 枠組みについて書いてあります。どういう人材が具体的に求められているかというと、 行政に強く介入する2国間ODAの場合は、行政的センスを持った人材をいかに養成す るか、というのが具体論に入ってくると思うのです。行政的センスというのは行政を経 験することでいちばん効率的に養成されます。大学の先生はなかなか行政を知らない。 医療センターも行政との人事交流はありますが、医療センターにいるだけではなかなか 行政は学べない。だから、もっと行政当局との人事交流、大学の先生や国際協力人材に なろうとする人は、行政の場に何らかの形で人事交流なり、何らかの形で激しく人事交 流するような仕組みができれば、次のステップにいくと思うのです。  ただ、これは言うばかりで、具体的に人事というのは非常に難しい課題なので、こう いう報告(案)に盛り込むこと自体は具体的な展望がない以上難しいかもしれませんが、 念頭には、国際協力人材の養成は行政的センスを持った人間をいかに養成して、国際舞 台に送り込むかというのが鍵なので、議事録上に残させていただけたらと思います。 ○建野課長 本当におっしゃるとおり、行政的なセンスを持っていないと全然駄目だと いうのは事実です。それも是非盛り込んでほしいのですが、それと同時に行政的なセン スを持っているだけでは駄目なので、開発というものに関心がないといけない。両方な いといけないということで、我々もいま意識的に行政の勉強を、オンザジョブ的な形で やっています。そういう形でやっているのは事実ですが、本当に行政と開発の両方がわ かった人、行政だけ知っている人は、ほとんど使いものにならないというのも事実です ので、その辺も考えていただければと思います。 ○水嶋専門会員 いま医師臨床研修の新しい制度の中で、2年目に地域保健、地域医療 の1カ月コースがあり、プログラムによっては3カ月とれるのです。保健医療科学院で は篠崎院長の音頭取りで厚生労働省・科学院1カ月コースというのを全国にオープンし ています。そこできちんと手を挙げる方に対しては、フィリピンやフィンランドでの研 修も入れ込むという方向で検討しています。年間7,500人の医学部卒業生がいますので、 一部でもそういう方々が経験すると、将来関心のある人に対して経験いただける機会に なるかと思い、情報提供としてお伝えさせていただきました。 ○中村座長 貴重な情報をありがとうございました。國井さんどうぞ。 ○國井専門会員 人材に関しては、いまの行政のことにも関連しますが、前に班会議で いろいろ議論してきました。もとめられる国際保健の人材として、現地の保健省なり地 方の行政なりに入って、行指導やアドバイスをしていく人、日本のODAやNGOなど で現地で具体的なプログラム・プロジェクトを作っていくという企画調査的なもの、最 近のSWAPsやPRSPなどのいわゆる援助戦略を作っていく人、またある分野に特 化した専門性、SARSや鳥インフルエンザ、母子保健などで途上国に技術指導したり 援助プロジェクトを作っていく人など、様々です。人材の問題はここで議論を終える、 また班会議に任せられるものではないと思います。いまも水嶋先生からお話があったよ うな、いろいろな機関でいろいろな人材育成、コースがあるのですが、実はかなり重複 があったり、初級コースだけで中級がなかったり、また中級をやってもその後のキャリ アパスにつながっていかなかったり、様々な問題があって、班会議で提言する程度では 無理だと思うのです。できれば厚生労働省が音頭を取っていただき、できるだけ文部科 学省、外務省も一緒に加えて議論と具体的な対策を推進する必要があると思います。こ こに中間報告の提言として「国際保健医療協力に関わる人材連絡会議を設置する」と書 いてあるのですが、こういう形のものをもう少し上のレベルで作っていただけるといい のかなと。そういったところにFASIDやJICAなど関係機関も呼んで、トレーニ ングコースの重複を無くして、またそれをどういう形で広げていくかといった、全体的 な調整も必要になってくるのかなと思っています。 ○中村座長 ほかにご意見はいかがですか。 ○青山会員 全体的にというか、今後の課題として、今回の検討会を通して思ったよう なことでもよろしいですか。 ○中村座長 ちょっと全体的な話はこのあとにして、一応この最終報告に関しての議論 を。 ○小林会員 最初の4頁ぐらいまでの話ですが、まず、いくつかの箇所でこの検討会が 平成17年度からとなっています。平成15年度からですよね。これが多分何箇所かある と思います。  それから、1番目の人材の養成のところで、内容的にはかなり曖昧なというか、漠然 とした印象を受けます。人材の養成ということであれば、まず量が十分なのかどうか、 アンダーサプライなのかオーバーサプライなのか。もしオーバーサプライだとすると、 クオリティーの問題なのかミスマッチなのか。ちょっとその辺のところを、もしかした らこれから解決すべき問題なのかもしれませんが、中村座長のところで解決していただ くにしてもそのようなところを、少し量と質の問題に触れてもいいような気がします。  2番目のデータバンクのところ、これは質問なのですが、3頁の2.の最後の5行ぐら いで「参考までにMDGs関連保健分野事業の案件調査を試みたところ、ワーキング・ グループで試作した案件分類案でうまく区分できない案件があるため」と書いてありま す。ワーキング・グループでは、MDGsにそっくりそのまま分類を作ったのです。そ うすると、ここで書いてある文章はむしろ案件のほうがMDGsに即してないというふ うにしか取れないのですが。つまり、案件そのものがMDGsと名乗りながらMDGs ではないというふうにしか取れないのです。ワーキング・グループはMDGsの分類を そのまま使ってチェックボックスを作ったのですから、もう少しここは正確な表現にし てください。もう少し正確に書けると思います。  3.は、分量的にほかの2つに比べると、行数があまりにも少ないような気がします。 ここは、もう少し内容を入れてもいいような気がします。7、8行で終わってしまって います。中身がないという印象を受けます。以上です。 ○今井補佐 データバンクのほうの小林先生のご質問は、上原先生が来られてからお聞 きしてもよろしいでしょうか。 ○小林会員 はい、わかりました。 ○國井専門会員 データバンクについてですが、これも今後どのように使っていって標 準化したものとしてまとめるのかという話だと思います。これは、政府やその関連機関 の中でも、分類がちょっと違っていて、かなり情報に関して混乱している部分があると 思います。この辺りを、特に保健医療分野では厚生労働省のほうでいろいろ助言をされ たらいいと思いますし、やはりパッとこの情報が欲しいと言って、昨年度分のものぐら いはすぐに出てこないといけないと思います。できるだけ政府の中で統一して、情報を システムとして管理して標準化していくことは重要なんだというところを徹底して、特 にJICA、外務省、JBICの中でもそのようなデータを管理するところがあると思 いますので、なるべく標準化して使えるような形にしてもらうといいと思っています。 ○建野課長 國井先生が言われたことは確かにそうなのですが、非常に難しいんですね。 データバンクに関しては、いままでも何回もいろいろな取組みがあったと思いますが、 ほとんど利用されていない、できないというのが非常に大きな問題です。我々も何回も いろいろなデータバンクを作りましたが、作ることに意義があるだけで、利用すること に全然利用できないということが多過ぎました。やはり、是非利用できるものを作るに はどうすればいいかということで、今回我々の委託研究で行っていることは、まず利用 できるようなものを作ろうというところからスタートしています。  全体的な大きな枠を作るというのは、いままで何回も取り組まれていてなかなかそれ が利用できないのはなぜだろう、というところからもう少し考えてみてもいいのではな いかという気がします。いろいろなところで標準化されていないというのは、やはり何 か理由があるわけですよ。そのようなところで、どのようにそれを標準化していくかが なかなか難しいところがあります。少なくとも、いま医療センターや厚生労働省が利用 できるものはどうだろう、という形でまず取り組んで、それから広げていくのはどうだ ろうということで、今検討しているところですが。その辺はいかがでしょうか。 ○國井専門会員 ちょっと難しいと思います。利用という前に、政府としては白書など を発行するためにも、統計上の準備をしておくことは最低限不可欠なものだと思います。 いまのところは、それぞれの機関でそれぞれの方式で統計を取って出していると思いま す。ですから、JICAとしてはその報告書に掲載するために必要な統計がありますか ら、その方針で。外務省のODA白書に掲載する統計はその方式で、それぞれやってい るようです。どこかもう少し上のレベルでその辺を標準化しようという意思がないと、 利用するしないの問題ではなくて、国の統計としての信頼性や透明性などが損なわれる のかなという気がします。  実務レベルでの利用という意味では、今回行った試作品を一応厚生労働省と医療セン ターで作ったものを叩き台にして、JICAなりに持っていって、こういうものを作っ てこういう形で使えるけれども、そちらの分類との齟齬をどうしたらいいかというもの を、叩き台があるのとないのと全然話が違いますので、持っていかれるといいのかなと 思っています。 ○中村座長 まさにそういう意味では、この情報の問題は政治の問題だと。今回もJI CAがどういう形になるか、いろいろな機関でディスカッションされています。そのよ うなときにこそ、新しい情報管理のシステムをその前に作っておいて、今度は新しい組 織等ができたときにパッと使えるという形を、今後考えていかれるといいのではないか と思います。 ○國井専門会員 JICAでは案件を作る際に、JICAなりの区分で、このプロジェ クトはエイズ配慮があるとか母子保健の分野であるとかいうチェック項目をつけて、最 終的な分類をしていますよね。ですから、終了した案件を見てこれは地域保健に入るの か、母子保健に入るのかなどの分類に頭を悩ませることは少ないと思います。ただし、 分類にはじめからない区分で分類しようとすると、これは人材育成なのかシステム構築 なのかなど、終了案件を後からそのサマリーなどを見ながら検討していては、本当にこ んがらがってしまいます。ですから初めの案件形成のときに、JBICもJICAも他 のODA案件でも、チェック項目を標準化して決めておく必要があると思います。それ がそのまま統計として広く使えるというものになっていかなければならないと思います。 過去の案件を見直して新たに分類していくのでは毎年相当の労力がかかってしまいます。 ○中村座長 データバンクというのは、そういう意味での利用の仕方を考えていただい たもの。 ○水島専門会員 研究成果データベースなどは、まさにそういう作りになっていますね。 科学院に科研費報告書のデータバンクがありますが、キーワードでコード化してやって いますので、それは大いに工夫ができるのではないでしょうか。 ○中村座長 そうですね。では、その辺りのことで今後またいろいろと意見もあるかと 思いますが、各先生方からいろいろな意見をいただきましたので、一部修正、あるいは 補足します。国際協力の将来あるべき方針のところももう少し増すというような修正に 関しては、事務局と座長に一任させていただいてよろしいでしょうか。 (異議なしの声) ○中村座長 それでは、本日いただいた意見を基に、この辺りの修正をして最終報告書 とさせていただきたいと思います。  折角これだけの皆さんが集まって、また最終報告書も一応こういう形でまとまりまし たので、今後の国際課の国際協力の事業に関して、あるいはもっと大きな部分に関して、 何か皆さんからご意見などをいただければと思います。 ○青山会員 今日は最後にこれまでのものを踏まえて議論するとのことでしたので、今 後の課題としてこういうものが残っているのではないかということを、4点ほど申し上 げたいと思います。  まず1点目として、連携の仕組みというものが、まだできていないのではないかとい うことです。もちろんいろいろな努力はされていますが、仕組みとして十分確立されて いないようです。例えば、円借款を含めてODAが一元化される計画があるようですが、 それでもまだODAと国連機関を通しての支援や、各国連機関に対する日本の出資金な どとの連携が、仕組みとしてまだきちんと機能するには至っていない部分があるのでは ないでしょうか。  それから、セクター間の連携です。同じ厚生労働省の管轄の中でも、労働と保健が一 緒に何かをするのはなかなか難しいですし、まして、ほかの分野となると、日本側も途 上国側も、連携するのはかなり困難です。例えば今回話題になっている鳥インフルエン ザなどは、保健セクター、農業セクター、経済産業セクターなどが非常に緊密に連携し なくてはならない分野だと思いますが、病気のサーベイランス一つとっても人間と動物 は別々に動いているところがあり、それはどこの国でも同様だと思います。ですから、 そういった他のセクターとの連携の仕組みを、今後作っていかなければなりません。ま た、円借款がJICAの管轄に入ってくるようですが、そうなると財務関係ともさらな る連携が必要になるのではないでしょうか。財務大臣の会議やサミットなどでも、経済 問題のみならず保健が話題になっていると聞きますので、そういうところに対しても専 門的観点から連携していく方法を、今後考えていかなければならないと思います。  2点目は、先程来話題になっている人材に関してです。先ほど国際協力の人材には行 政の経験が重要とのお話がありましたが、日本はまだ終身雇用の考え方がありますので、 人材を流動化する仕組みを作るのは、なかなか難しいのではないかと思います。例えば、 厚生労働省の方に大学に来てもらおうと思うと、国立大学も法人化したので、辞めて来 てもらわなければならず、退職金などの点で不利になってしまいます。JICA、民間、 行政官、大学や国連機関などの間を人材が流動化できるような仕組みを作ることに、退 職金や年金・保険などの仕組みも一緒に考えながら、今後長期的に取り組まなければな らないのではないでしょうか。もしそういう仕組みができれば、いろいろな経験を持っ た人材が、国際協力の場で活動できる下地ができていくのではないかと思います。  3点目は、日本の国際協力は、これからは金額よりも質が問われていく時代になって いくだろうということです。そうなると、やはり日本独自のイニシアティブ、すなわち、 わかりやすく皆が納得できるようなものを、発信していくことが大事なのではないかと 思います。現在、人間の安全保障が、日本発信のイニシアティブの1つとして進められ ていますが、ちょっと難しいというか分かりにくいところがあって、ときどき議論にな っているようです。それから、橋本イニシアティブのあとに出てきた「保健と開発」は 大変よいものなのですが、キャッチワードとするには、当たり前のような感じがして、 あまり注目をひきにくいのではないかと感じます。わかりやすく、注目を集めやすい、 日本発信のイニシアティブのようなものを作っていけるよう、専門家の話合いのできる 場が必要なのではないかと思います。  4点目として、先ほど少しいろいろな経験を持った人材が必要だということを話しま したが、日本独自のものや世界的イニシアティブなどについてよく理解したうえで適切 に活用できるよう、視野を広げる経験が必要なことです。組織というものの動き方は共 通しているので、日本での行政経験は外国でも役立つだろうと思いますが、他方、かな り日本独特なところもあると思います。ですから、必ずしも日本のやり方が通用するわ けではありませんので、外国や国際機関の仕組みや働き方についての知識も持っている ことが必要だと思います。そういった点での国際感覚を備えた人材を育てていくという ことが、今後また課題になってくるのではないかと思います。  この検討会では、いろいろな論点を議論できたので、大変意義があったと思います。 今後も残された課題をまた検討していくような場が設けられていくとよいのではないか と思います。 ○橋爪専門会員 非常に問題点を体系的に整理していただきました。国際協力分野の人 は抽象的な議論をする方が多くて、人間の安全保障の観点が大事とか連携が大事とか、 本当に大事なことを歴史的に長年言われ続けています。ただJICAは現場なので、そ れをいかに具体的な形に落とし込むかという仕事をしていまして、特に日本のイニシア ティブです。私は、長くJICAにかかわっていて、日々いちばん悩んでいることを全 部指摘していただきました。  おそらく、それぞれの課題についていかに具体化するかというのが本当の課題で、言 われ続けていることは言われ続けていることで、具体化するところに全然進展がありま せん。これは、もう私が悩み続けていて何となく見えてきたものがちょっとありますの で、國井先生も言われたのですが、ASEANのエイズワークショップなどで何か新機 軸を打ち出してこれが日本のやり方だというものが、私がいちばん悩み続けながら事業 を運営していることです。  日本のやり方というのは、日本の厚生労働省の保健行政の進め方など、非常に独特な ユニークなものがあって、それを国際協力の舞台に持ってくるという考え方ができるの ではないかと。最近出された保健医療改革の新機軸などでもキーワードになっているの が、地域連携クリティカルパスです。これは、アメリカから導入された概念のように言 われていますが、オリジナルは日本の母子健康手帳で、地域連携クリティカルパスのす ごい歴史とノウハウを持っています。最近日本の施策でクリティカルパスの概念を導入 したやり方を持ってきていますが、実はこれが国際社会でいちばん不得手なところです。 HIV/AIDSに関しては、VCTやVCTをやっているNGOがある、ドナーがい る、ARTはARTで、母子の垂直感染はそれで一生懸命やっている。断片として1つ ひとつのケアは他のドナーなどがやっていて、ここに先ほどの連携のキーワードがある のですが、連携していないことのいちばんの被害者は裨益者なんですね。  あるドナーが母子垂直感染防止事業というものを一生懸命やっていて、子供には感染 しないようにしたが肝心のお母さんをARTに繋いでいないといった断面の協力ばかり がどんどん進展していって、それがメニューとして並んでいます。それを垂直に母子健 康手帳のように串刺しするような協力が、実は欧米系のドナーは不得手ですし、ART の機関も不得手です。しかし、そこに日本の特色があるのではないかということを、私 のいままでの悩みの中で感じてきました。  最近新規案件を形成するときには、クリティカルパスの概念を入れようとしているの ですが、そのような地域連携クリティカルパスが日本の特色なのです。一度見付けたH IV/AIDSの感染者はクリティカルパスを作って、きちんとそれをモニタリングし てやるという仕組みを行政に導入するのが日本の協力なのですよというのは、まさに新 機軸だと思いますし、それがいちばん重要なところだと思います。やはり、日本の厚生 労働省は歴史的にも非常に高いパフォーマンスを達成してきたという特色をもう一度見 ていただいて、良いところをいかに他国の行政に活かすかという観点で、新機軸を打ち 出してそれをODAの中身に入れていくと。  先ほどの連携の問題、それから人間の安全保障は、まさに1人ひとりに着目してその 人を最後までケアするという概念なのです。ですから、そういうものを入れていただく といま先生の言われた、抽象論で歴史的に言われてきたことを具体化して落とすのに役 立つのではないかと思っています。 ○中村座長 どうもありがとうございました。ほかにいろいろな方にご意見をお聞きし たいと思いますので、どうぞ。 ○田中会員 いま橋爪会員が非常に重要なことをおっしゃいましたので、それに関連し て1つだけ。いまご指摘いただいたように、以前から日本の経験をどう活かせるかとい うことは、ずっと私自身の問題意識の中にもあります。ただそれをやるためには、日本 は海外の比較研究については非常に長い伝統をもってやってきていますが、母子保健や 社会保険など日本が成功したモデルの実証的な分析については、驚くほどしていないん ですね。ですから、日本がどのような経済、社会状況の中でどのような日本特性の下で、 このような成功あるいは失敗をしたという普遍性と特殊性は何なのか、というベースを きちんとしておかないと、客観的に海外にモデルとして示すことはできません。やはり、 そこを意識した研究を国際協力も意識しながら、しかし日本のレビューをきちんとやる ということをベースとしてもっとやって、最低限英語文献でそういうものを発表してい くような蓄積がないと、実際にはなかなか難しいのかなと思います。  それから、この検討会の関連で2、3申し上げます。1つは、最初にスタートすると きに当時の国際課長にどういう問題意識でこれを動かそうとしているかという、行政の 問題意識を伺いました。そのときのお答えは必ずしもはっきりしていなくて、皆さんの 自由な意見の中から課題を見付けていきたいというような話でした。先ほど小林会員か らも指摘がありましたように、おそらく第3説の戦略のところがなかなか書き込めてい ないというのは、やはり行政当局自身のかなり切実な問題意識というか、批判も含めて 具体的にこういうものを打ち出そうというところは、やはり少しパワーが足りないのか なということを率直に思います。報告書としてのまとめ方は中村座長と相談いただけれ ばいいと思いますが、やはりそれを明確に打ち出していかないと、紙に書いた抽象的な 文章が残っていくだけというようなことになり兼ねないのかなと思いました。  それから、1.と2.の関係についてですが、先ほどデータベースの話はいくつか指摘 がありましたが、そのとおりだと思います。ある意味では、1.と2.はこの検討会の場 として答えが出せなかったところ、あるいは宿題を次の2、3年間の研究会に委ねると いう形になるだろうと思います。この成果も含めて、最終的にはこの検討会の成果にな るだろうと思います。そういう意味では、中村座長と上原会員は大変ですが、皆さんで 是非いいものを作っていただきたいと思います。データバンクは先ほど國井専門会員や 建野さんがおっしゃったようなことも含めて、大変は大変だろうと思いますが力を込め て皆さんが経験をレビューされれば、私は今回は従来とはひと味違う、ステップになる ものはできるのかなと思います。  おそらく、1.の人材のところがいちばん難しいと思います。例えば、感染症対策のよ うに日本の現場の専門家、行政当局あるいは国民も含めて、組織もあり、そして日本に とっての当事者意識が極めて強い問題というのは、あまり国際協力の分野でも苦労がな いと思います。しかし、そうでない臨床協力や制度設計にかかるようなところは、やは り個々の人材をどういう所が抱えているのかという組織の論理と、援助に関わる援助機 関の論理、あるいは財政的なものを支える分野の論理というものはなかなかかみ合いま せん。そこは大きなところだけでもいいですので、しっかりどういう論理でどういう組 織がどういう人材を、大学も含めてですが、育成していて、その論理の中でどういう協 力ができるかということを、少し機関タイプ別に分析をして、実践的なプログラムを作 っいかないと、おそらくはまた絵に描いた餅になり兼ねないと思います。  いちばん大変だとは思いますが、これが要ですので、是非良いものを作っていただき たいと思います。それを実際に動かすためにも、やはり厚生、外務、文部の3省がこの 分野も要になるわけですので、行政レベルでも常時連携を取って、本当に率直な情報交 換と現場を支えていくシステムが作れるようなネットワークというか、緊密な連携体制 を行政レベルでも是非しっかり作っていただきたいと思っています。以上です。 ○中村座長 どうもありがとうございました。 ○小林会員 あまり大きな意見ではありませんが、いままでの議論を聞いていますと確 かに日本のシステムを海外と情報交換することは非常に重要だと思います。しかし1つ 引っ掛かるのは、日本の厚生労働省が優れているのは結果的にはそうだと思いますが、 それは、行政が優れていたのか、あるいは国民が非常に行政施策に協力してうまくいっ たのか、あるいは運がよかっただけなのかということは、評価がない限り第一者だけの 評価では断定できないと思います。その点で、日本でいちばん遅れているのは、研究よ りもむしろ行政資料の公開だと思います。それがない限り、第三者から見てそれがよか ったのかどうかということを評価することはほとんど不可能です。  アメリカなどは何十年か経つと行政資料を公開しますが、日本はまだその辺が確実に なっていないところがあります。そういう意味で、国際協力もある意味で行政ですので、 今回のデータバンクはその1つの足がかりになると思いますので、是非インターネット 等で公開して、最低限の情報だけでも見られるような形にしていくことが非常に重要だ と思っています。 ○中村座長 ものすごく貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございます。 ○國井専門会員 今回3つのテーマがあったと思いますが、実は3つ目の「国際協力の 将来あるべき方針」というのがとても重要だと思います。これは、例えば厚生労働省で はWHOも管轄しているわけで、それに対して日本がどういう意見を言い、どのような 方針、態度をもっているかということも、実は評価の対象であるべきだと思います。も う少し外務省なども含めますと、グローバルファンドなどに対しての日本政府としての スタンスはどうなのか。  実は、国際協力はいまどんどん変わってきています。援助協調に対しても完全に反対 だった日本が、最近ではそれもやむを得ないと。そうでないとアフリカの援助はできな いというぐらいになっています。今回タンザニアで、今後保健に関するセクターワイド などにも参加してくるかもしれませんので、そういう1つひとつの事例、またはベトナ ムのようにいろいろなお金が入っていながら混沌としている所に対して、日本がどのよ うに援助をしていくか。  実は、現場ではいろいろなことが起こり、リージョンによって、また国によって全然 違った国際協力のあり方があると思います。その中で、やはり1つひとつの事例をきち んと見ていって、日本としてどのようにしていくのかということや、将来あるべき姿と いうよりは、むしろ現実に各国で作っている国別援助政策の中でどのようなものを作っ ていくのかというのが、ほとんど日本の中ではわからずに現場で作られています。その 中に、実は保健の専門家が非常に少くなかったり、本当に最前線の所でなかなか我々に はタッチできないところがあります。このような大きな評価会もいいのですが、できる だけ勉強会を自由につくっていただいて、WHOの総会があったらその報告を含めて議 論するとか、それ以前に知恵をいただくというものも必要だと思います。  最近では、やはりお金の貢献、人的貢献のほかに知恵の貢献、政策など具体的なもの を国際舞台の中で作っていく。そのためには、いろいろな会議に出てその情報を吸収し て広げるとともに、そこに伝えていかないといけない。そのときに、厚生労働省、外務 省の人たちでは行けないぐらいの多くの会議がありますので、できれば外部で数人でも 結構なので政府の代表または代理として、ハイレベルでなくてもいいのですが、参加し てある程度日本を代表して話をしたり、また意見を吸収してくると。そこにプレゼンス がないといけないような会議がたくさんありながら、なかなか参加できないこともたく さんありますので、その中で数人の政府の代理として行けるような有識者もつくってお くといいのかと思います。 ○中村座長 どうもありがとうございました。時間もオーバーしていますが、上原先生 がかけつけてくださいましたので、2、3分で現状の報告をお願いします。 ○上原会員 遅くなってすみませんでした。いちばんの問題はどこにあるかといいます と、これは我々ワーキング・グループで小林先生などと一緒にやりまして、基本的に日 本の保健医療分野の案件について、その当時はMDGのことやこれから評価報告を出さ なければいけないときに、ほとんど案件の実績がありませんでした。次にいろいろない い案件を作っているときに、過去の案件を活用できないという問題がありました。それ をワーキング・グループで検討しまして、そういったものを出せるようなデータバンク を作ろうということです。  いちばん重要なことは中身を作ることで、データバンクをデザインするということは、 どういう情報を誰がいつどのように入力して、データをどのように情報を返すか、この 判断が出てきますので、これはどの案件に相当するということを判断しないといけない わけです。ですから、その仕組みをどう作るかということがデータバンクの設計なので す。それができれば、あとハードに落とすのはコンピュータ屋さんでもやってくれます。 それがいちばんの目的でしたので、一応関連機関のステークホルダーの専門家パネルを もって、実際に使う人が何を必要とするかということを洗い出すということです。  私は一昨年MDGの評価の手伝いをしましたが、本当に日本はこういう案件データバ ンクは必要なんですね。そういうことを検討していただきたいと思います。 ○金井室長 3頁の、参考までに分類を試みたところ、うまく区分できなかった、とい うところについて、先程指摘がありました。 ○上原会員 これは、一応ワーキング・グループで考えまして、すべてに合うようなも のは作れませんので何とか使えそうな仮のものを作ろうということで出しました。それ を実際に分類しようと思いますと、どういう評価を想定しているのかということにより ますので、研究班等を立ち上げてその中で使う人たちがどういう情報を欲しいと思われ るか、あるいは政策的にどういうものを拾い上げたいとなる可能性があるかということ を拾い出して作り直そうということにしました。  その1例として、MDGsの評価のときに突き合わせをしてみましたが、MDGsは MDGsに合うような分類の作り方を、ご承知のようにゴールがありますから、3、4、 5を中心にしたゴールに従って案件をマーキングするという作業を、MDGs評価の中 でやりました。その中で、このデータベースに入れるとしたらどういう分類ならそれに 関してはいくだろうかと。ただ、それはMDGsに関してならいいのですが、そうする と今度は感染症のイニシアティブになるとまた別の切り口で、もう少し感染症の細分化 が要るかもしれません。  そういった意味で、外務省やJICA、厚労省など使う必要のある人が、こういうこ とに関して拾えるようにしておいてほしいというものを、まず初めにユーザのニーズを 出して、それから情報を作るということをしなければいけないという意味です。 ○中村座長 どうもありがとうございました。研究班は今後も続きますので、またその 辺りのことを含めて国際協力のデータバンクの課題は重要なところですので、今後の発 展を期待しています。それでは、時間もかなり押していますので、私の感想だけ最後に 一言だけ述べさせていただきます。やはり厚生労働省の中の国際課というポジションが、 この国際協力を行ううえで、日本のリソースと海外のリソース両方とのブリッチになる という、非常に要のポジションなのだろうと。今日の話でもそうですが、日本の中には 人材もありますし、情報のシステムもあります。人材に関しても、人材もいますし養成 システムもあり、いろいろな研修も行っています。また、実際いろいろな医療機関があ ります。そのリソースを管轄している官庁として、海外でもいろいろな問題がオンゴー イングに起こっていることを、どのようにして要のポジションとして両方にとっていい ような形、即ち日本の人たちにとっても海外の人たちにとってもメリットになるような 形で、いろいろな情報や人を動かしてネットワークしていく機能、連携の仕組みという 話が青山先生からもありました。そういうことが、今後大きなことで必要になってくる のではないかと思います。この検討会はこれで終わりますが、今後いろいろな形で、国 際協力の事業が引き続いていくことを期待しています。  一応これで今日の議題を終わりましたので、事務局に戻したいと思います。各先生方 に関しては、3年間いろいろとご協力ありがとうございました。 ○今井補佐 どうもありがとうございました。最後に、事務的な連絡をさせていただき ます。本日の議事録ですが、速記録ができ次第各先生方に送付させていただき、必要な 修正を行ったうえで、ホームページ上で公表させていただきます。  また、次回ですが、最後に分野合同の検討会の開催を予定していまして、3月15日 午後2時から4時まで、場所は厚生労働省専用第15会議室です。 ○中村座長 ほかに何かありますか。では、これで今日は終わりにしたいと思います。 どうもありがとうございました。 (了) (照会先)  厚生労働省国際課国際協力室   室長補佐 今井   協力企画係長 吉村   03-5253-1111(内線7305)