06/02/17 平成18年2月17日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会 議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会議事録 ○日 時:平成18年2月17日(金) 13:57〜15:30 ○場 所:航空会館701会議室 ○出席者: 委 員  井上(達)委員(部会長)、大野委員、小沢委員、加藤委員、 志賀委員、豊田委員、中澤委員、米谷委員、山添委員 事務局  松本食品安全部長、伏見基準審査課長、長谷部課長補佐、 河村課長補佐、近藤専門官 関係省庁 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課 嶋崎班長       農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室 小峯専門官         ○議題:   (1)食品中の残留農薬等に係る残留規準設定について       ・フロニカミド(農薬)       ・ツラスロマイシン(動物用医薬品)       ・鶏大腸菌症不活化ワクチン(動物用医薬品)   (2)その他 ○事務局 それでは、若干定刻より早いわけでございますが、先生方はおそろいでござ いますので、これより「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会」 を開催させていただきます。 本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願い 申し上げます。 まず開会に当たりまして、松本食品安全部長からごあいさつを申し上げます。 ○食品安全部長 当部会の開会に当たりまして、一言ごあいさつ申し上げます。皆様方 におかれましては、日ごろより食品安全行政の推進につきまして、種々御協力をいただ いていることにつきまして、厚く御礼申し上げます。 食品に残留する農薬等に関するポジティブリスト制度につきましては、いろいろとこ の部会でも長時間にわたりまして御審議いただきましたが、いわゆる暫定基準を設置い たしました農薬等758 物質につきまして、今後、食品安全委員会に対しまして計画的に 食品健康影響評価を依頼することとしております。 現在、各年度に評価を依頼する物質の選定につきまして、本部会の先生方の御協力を いただきながら検討を進めているところでございますけれども、評価依頼計画書がまと まりました折には、また改めて御報告をさせていただきたいと考えております。 さて、本日は農薬フロニカミド並びに動物用医薬品ツラスロマイシン及び鶏大腸菌症 不活化ワクチンの食品中の残留基準につきまして、御審議をいただくこととしておりま す。 これらについては、ツラスロマイシンを除き、いずれも現行基準も暫定基準も設 定されていない新規の物質でございますが、今般、食品安全委員会におきましてADI の評価等がなされましたことから、科学的暴露評価に基づいた基準値案等につき御審議 をいただくというものでございます。 以上、簡単ではございますけれども、開会に当たりましてのごあいさつとさせていた だきます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○事務局 ありがとうございました。 本日は、青木委員、井上松久委員、下田委員、吉池委員より欠席の御連絡をいただい ております。農薬・動物用医薬品部会の委員13名中9名の御出席をいただいており、部 会委員総数の過半数に達しておりますので、本日の部会が成立しておりますことを御報 告いたします。 それでは、井上部会長に審議の進行をお願いしたいと思います。今後の御審議につき まして、よろしくお願い申し上げます。 ○井上(達)部会長 それでは、よろしくお願いいたします。 最初に資料確認の方をお願いいたします。 ○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。 まずお手元の資料でございますが、議事次第といたしまして、表紙、次のページに配 付資料の一覧、次のページに農薬・動物用医薬品部会委員名簿が添付されております。 また、続きまして資料1−1が農薬のフロニカミドについての資料となっております。 資料1−1は、1〜39ページまでとなっております。 続きまして、資料1−2が部会報告の案となっておりまして、ページ数で言いますと 41〜53ページまでとなっております。 次に、動物用医薬品ツラスロマイシンの評価結果の資料でございますが、こちらが資 料2−1といたしまして、1〜22ページまで。 資料2−2が部会報告案となっておりまして、23〜29ページまで。 続きまして、同じく動物用医薬品の鶏大腸菌症不活化ワクチンの評価結果の案。こら ちが1〜5ページまで。 部会報告の案が資料3−2といたしまして、7〜9ページまでとなっております。 参考資料1といたしまして、「国民平均、幼小児、妊婦、高齢者別の農産物・畜産物 摂取量」となっております。こちらはページ数で言いますと、1〜3ページとなってお ります。 参考資料2といたしまして「食品安全委員会への意見聴取及び食品健康影響評価結果 について」となっております。こちらは5から10ページまでとなっております。 落丁 等ございましたら、事務局までお願いいたします。 ○井上(達)部会長 それでは、過不足ありましたら、事務局の方にお願いします。 最初の食品中の残留農薬に係る残留基準の設定フロニカミドについてお願いします。 これは殺虫剤のようですが、どうぞ。 ○事務局 それでは、資料1に沿いまして、フロニカミドについて御説明申し上げます。 このフロニカミドという物質は今回新規で農薬の登録申請が行われていたものでござい ます。 資料の1ページ目からでございますが、これは資料1ということで、食品安全委員会 の方でまとめられました評価書で、今年の1月19日付で厚生労働省に届いたものでござ います。 41ページ目から資料1−2ということでございまして、これが本部会の報告 書の案ということで、事務局で作成させていただいたものでございます。 資料の説明に入らせていただきます。資料1−1の6ページ目でございますけれども、 左上の方から、これまでのこの物質についての新規経過が記載されております。2004年 5月27日に農林水産省の方に農薬の登録申請があったものでございまして、その後、必 要な資料が整ったということで、10月29日に厚生労働省から食品安全委員会の方に食 品健康影響評価というものを要請したところでございます。食品安全委員会の方で調査 会を開いて審議をいただきまして、今年の1月18日にこの報告書がとりまとめられたと いうことでございます。 この報告書につきまして、8ページ以降、簡単に御説明申し上げます。 8ページのところでフロニカミドの概要が書いております。この農薬は1994年にこの 申請者によりまして発見された殺虫剤でございます。アブラムシ、コナジラミ等の害虫 についてその摂食行動を阻害するということでございます。 海外の登録状況は、米国、英国ということでございます。ここで米国では、非食用作 物ということになっておりますけれども、ここにつきましては2005年8月に米国の方で も食用作物について登録されて、残留基準が設定されてございます。そこを補足させて いただきます。 このフロニカミドを評価するために各種試験が行われております。29ページに「III . 総合評価」ということでまとめられてございますので、そこに基づきまして要点につい て説明させていただきます。 まず代謝試験でございますが、ラットを用いた動物代謝ということで、排泄経路は尿 中ということで、大部分は本体フロニカミド。主要な代謝物としてはDということで、 これは代謝物が非常に多うございますが、代謝物一覧が33ページに出てございます。D でございますので、TFNA−AMという物質が代謝物で出ている。代謝経路としまし ては、シアノ基またはカルバモイル基の加水分解等ということが考えられております。 また、小麦、ばれいしょ、モモ等の植物を用いた体内運命試験では、残留した放射能 量はわずかだったということで、内容としまして、フロニカミド本体。主要代謝物とし てCということで、これはTFNGという物質、またEということでTFNAというも のが認められたということでございます。 土壌運命試験では、代謝物または本体ともに速やかに分解されるということでござい ます。 水中加水分解では、フロニカミドの半減期はpH7、50℃の条件下で578 日。またp H9.0、50℃のときで9日。pH9、40、または25℃で、それぞれ17.1日、または204 日ということでございます。 水中光分解試験の結果は、光分解については安定だったということでございます。 次に、各種毒性試験の結果ということでございます。フロニカミドの急性経口のLD5 0はラットの雄で884mg/kg体重、雌で1,770mg/kg体重/ 日、経皮のLD50はラット雌 雄で5,000mg/kg体重超ということでございます。吸入のLC50はラットの雌雄で4.90 mg/L超ということで、代謝物につきまして、これはCとEとDとFということでやって おりますが、急性経口LD50はそれぞれのラットの雌雄で2,000mg/kg体重超というこ とでございます。 ラットの急性神経毒性試験で、無毒性量は600mg/kg体重ということでございますが、 急性神経毒性は認められませんでした。 亜急性毒性試験での無毒性量は、マウスで15.3mg/kg 体重/ 日、ラットで12.1mg/kg 体重/ 日、イヌで20mg/kg 体重/ 日ということでございます。 ラットの亜急性神経毒性試験の無毒性量は、67mg/kg 体重/ 日ということで、急性の 神経毒性というのは認められませんでした。 マウスの発がん試験でございますが、ここでICRマウスというものを使った試験が 行われておりまして、そこで高率に認められる自然発症性の肺胞終細気管支上皮腫瘍と いうことが認められております。追加試験等々を行っております。肺腫瘍についてのメ カニズム試験等も行われておりますが、具体的なマウスの肺腫瘍を誘発したという機序 というものは解明できておりません。しかしながら、ほかの系統のマウスまたはラット、 代謝物を投与したICRマウスでの試験で、肺細胞の細胞分裂亢進はなかったというこ とや、遺伝毒性試験の結果が陰性である等々を総合的に勘案して、この発がんというも の自体の機序としては、非遺伝子毒性メカニズムのものであろうと。評価に当たって閾 値を設定することが可能だということで結論づけられてございます。 慢性毒性と発がん性試験で得られた無毒性量として、マウスでは10mg/kg 体重/ 日、 ラットで7.32mg/kg 体重/ 日、イヌで8mg/kg 体重/ 日ということでございます。 ラットを用いました2世代の繁殖試験におきまして、親動物に卵巣比重量の減少、ま たは性成熟の遅延というのが認められました。また、児動物の雌で子宮比重量の減少と いうのが認められておりますが、これらにつきましても繁殖能力に悪影響を与えるもの ではないという結論が下されてございまして、無毒性量としてラットで18.3mg/kg 体重 / 日というものが設定されております。 発生毒性試験では催奇形性は認められない。遺伝毒性試験では、先ほど言いましたけ れども、すべての試験で陰性ということでございます。 代謝物につきましても、復帰突然変異試験等を行ってございます。試験結果について は陰性ということで、代謝物C、D、E、Fというものについて行われてございます。 これらの結果が表にまとめられてございまして、31ページでございますが、各種試験 における無毒性量及び最小毒性量ということでまとめられてございます。 この中で最終的にラットの慢性毒性発がん試験104 週間のものでございますが、上か ら5つ目の欄でございます。雄7.32 mg/kg体重/日、雌44.1 mg/kg体重/日ということ でございますが、その雄の7.32 mg/kg体重/日という値を取りまして、これをADIの 設定根拠ということになってございます。 次のページでございますが、これらの結果で最終的にこの数字を安全係数100 で割っ た値ということで、0.073mg/kg体重/ 日という数字をADIということで設定してござ います。 以上が食品安全委員会の方でまとめていただいた食品健康影響評価でございます。こ の評価書に基づきまして、当事務局の方で作残試験等の結果等も含めまして、残留基準 値の案をまとめたものが資料1−2でございます。41ページからのものでございます。 先ほど申しましたとおり、フロニカミドは新規登録の申請がなされている殺虫剤とい うことでございます。項目5にいろいろな適用範囲または使用方法等が列挙されてござ います。フロニカミドは散布剤として使用されているということでございまして、今回、 ばれいしょ、なす、カボチャ、りんご、もも、いちご等作物について登録の申請が行わ れたということでございます。 それらにつきまして、作物残留試験が行われてございます。資料で行きますと、それ をまとめたものが48〜49ページに表になってございます。基本的には示されてございま す試験条件、剤型とか使用方法、使用量、回数等々で、使用した際、最も多く残留する と考えられる時期のデータ、つまり最大使用条件下での作物残留試験についてを最大の 残留として右の欄に記載してございます。 これらを用いまして、残留基準の案というものを策定するということになるわけでご ざいます。それが資料の50〜51ページということでございます。 戻っていただきまして、ADIの評価。これは先ほど食品安全委員会の方で評価して いたとおりでございますが、資料の45ページの項目の7というところに記載してござい ますが、ADI 0.073 mg/kg体重/日という値を取るということになります。 諸外国の使用状況ということで、コーデックス、米国、カナダ、EU、オーストラリ ア、シュージーランドについて調査したところ、米国において、ばれいしょ、りんご、 ほうれんそう、乳等について基準値が設定されている。これは先ほど申しましたように、 昨年2005年8月に登録され基準が定められたということでございます。 その他の国、地域、またはコーデックスの国際基準については、残留基準の設定はさ れていないということでございます。 基準値の案のところでございますが、まず残留の規制の対象というところでございま す。農作物につきましては、今回フロニカミド本体、TFNG、これは先ほどの毒性試 験の中で出てきましたCというものでございます。TFNA、これはEというものでご ざいます。農作物については本体とCとEということで、規制の対象としたいと考えて おります。 ただ、今回米国の方で基準を置いているということで、米国の基準値というものを参 考に残留基準を当てているところがございます。米国につきましては、この物質の対象 物質というものについては、この本体とC、EのほかにTFNA−AMというDという ものを含めて4物質を規制の対象としているというところがございました。 今回、TFNA-AMを対象にするかというところを一部の委員にもお聞きして検討さ せていただいたんですが、そのTFNA−AMというものが各作物残留の中で占めてい る割合が非常に少ないということや、また一部の作物でパーセンテージは多いものの、 使用していない対象検体でもそのものが検出されているようなデータであったというこ と等々から、3物質を対象物質においたとしても問題はないということで、今回の案で は3物質で置いてございます。 食品安全委員会の評価書おいても暴露評価の対象物質としてこの3物質で試算をして いるというところでございます。 ただ、畜産物、食肉等でございますが、それらにつきましては、米国の基準をそのま ま当ててございます。これは従来からそういったものがあるものについては参考にして 暫定基準設定のときに引用してございますが、それにつきましては米国の方でこの本体 とTFNAというものとTFNA-AMというものの3物質を規制の対象としていると いうことでございます。これらにつきましては、そのままその基準値を引っ張ってござ いますので、畜産物につきましては、その対象物をそのまま当て込むと考えてございま す。なので、農産物と畜産物によって、その対象が異なるということでございます。 これで基準値が先ほどの案で、50〜51ページで策定したものがその基準値案でござい まして、各作物または畜産物について値を示してございます。 これらの基準値案を用いまして、ADI比はどれくらいになるかと試算したものが46 ページでございます。暴露評価でございますが、1日当たりの摂取量のADIに対する 比率ということで、一般国民平均で行きますと12.7%、幼小児で24.4%、妊婦の方で1 1.6%、高齢者の方で14.6%というような結果になってございます。 いずれにしましても、ADIの範囲内に収まっているということで、この基準値案を 基準値と設定しましても、安全性には問題がないと考えてございます。 ということで、一応その答申案というもので最後の52〜53ページに、前ページの50 ページをまとめたものでございますけれども、整理したものが次のページでございます。 作物等または畜産物と分けてございまして、それぞれ対象というものがその下に書いて ございます。 以上でございます。 ○井上(達)部会長 フロニカミドについての御説明をいただきました。 早速御審議いただきたいと思いますが、食品安全委員会から送付されてきた安全性評 価の部分について、まず御質問等ございましたら、お願いいたします。 加藤先生、どうぞ。 ○加藤委員 「てにをは」に属するようなことが1つと、もう一つ、中身とちょっと関 連するかもしれないんですが、感じたことをお話ししたいと思います。 12ページの小麦の主要代謝経路、植物体内運命試験での代謝経路が書いてあるんです が、ここで上から4行目「フロニカミドのシアノ基及びカルバモイル基の加水分解」、 その次に全く同じことで、シアノ基のことをニトリル基の加水分解と言って、ここだけ がニトリル基で、ほかは全部シアノ基なので、ここを文章上の問題として統一された方 がいいのではないかという感想が1つ。 もう一点なんですが、これは規制対象にもなった代謝物について、通常では余りやら れていない90日の亜急性毒性の試験までやられているのに、総合評価のところでは急性 毒性と変異原のことだけで、亜急性のことは一切抜けているのは何か非常に奇異な感じ がします。その2点です。 ○井上(達)部会長 2点の御指摘ですが、最初の点はよろしゅうございますね。事務 局、いかがですか。 ○事務局 シアノ基のところは確認をして、食品安全委員会の方にそのように伝えたい と思います。 ○井上(達)部会長 亜急性の方についてはいかがですか。それも問い合わせますか。 ○事務局 問い合わせます。 ○井上(達)部会長 では、そういうことでお願いします。 ほかにはいかがでしょうか。何か御意見が出るまでに、肺腫瘍の話が出ておりました が、この評価書では、つつましく余り先走った書き方をしていないのであれですが、こ れはICRというマウスを使っておりまして、それでICRというのは先天的に自然発 生性の肺腫瘍をつくりやすい系統のマウスでございまして、それが前倒しになったよう な、そういう形でもってプロモーション効果のようなものが出てきたと考えられますの で、評価内容は事務局の御説明ないしは食品安全委員会の記載で問題ないということで ございます。ついでながら御参考までに。 ほかにはございませんか。米谷先生、どうぞ。 ○米谷委員 確認だけさせていただきたいんですが、例えば、30ページの下から3行目 のところに、よく出てくる文章なんですが、各種試験結果から、これこれの暴露評価対 象物質をこれこれとするというのが出てまいります、これの意味するとこですが、食品 安全委員会の方が評価されるのはADIで、規制の方は当然厚生労働省のこちらの方で すので、何を対象物質として、どう規制するかはこちらで決めるものであって、ここの 文章は参考のために書いてあるといいますか、暴露評価するときにこういう対象物質を 使うというような考えで書いてあるのでしょうか。その辺を食品安全委員会がどういう おつもりで書いておられるのかというのは、向こうに聞かないとわからないのですが、 ちょっとお聞きしたいと思いました。 ○事務局 この食品安全委員会の評価書の中でも、作残のデータを用いました暴露評価 というのをされている部分がございますので、そのときにこの3つの物質を使用したと いう形というふうに認識してございます。 ○米谷委員 ですから、基準を決めるときに何を対象とするかはここで決めればいいと いうことですね。 ○事務局 最終的に規制対象を決めていただくのは、ここの部会でこの代謝物の毒性試 験とかそういったものを御判断いただいて審議いただくと認識しております。 ○井上(達)部会長 食品安全委員会の方はあくまでも毒性を評価する参考条件として 出しているというふうに理解するんですかね。 ほかにはいかがでしょう。もしよろしいようでしたら、それから出てくるADIの設 定と、それに基づく残留農薬の設定基準についての御意見を伺いたいと思います。いか がでしょうか。 加藤先生、よろしいですか。 ○加藤委員 特にございません。 ○井上(達)部会長 豊田先生、どうぞ。 ○豊田委員 事務局の方に教えてほしいんですけれども、ここの50ページのフロニカミ ドの基準値設定のところがございますけれども、この中でずっと上から見ていくと、ホ ウレンソウのところが9.0 と高く、これがそのままアメリカの9.0 の外国基準値を持っ てきて、方法論的にはこれでいいと思うんですけれども、よく見ると日本の方ではホウ レンソウにはこの農薬は使わない、対象外ですね。そこら辺の理由と、向こうでこれを 使っている理由、日本で使わない理由、また若干ホウレンソウで、残っている量が多い のかどうか。ちょっと高めになっている理由を教えてほしいです。 ○井上(達)部会長 よろしいですか。 ○事務局 輸入食品の兼ね合いもございますので、従来から日本で適用がなくてもこう した基準を設定しています。ただ、申請者の方で、日本でなぜホウレンソウの適用を外 しているのかという理由は、確認はしておりません。 9 ppmということで、ほかよりもちょっと高いわけですけれども、それにつきまして はデータを再確認させていただきたいと思います。 ○井上(達)部会長 では、そういうふうにお願いいたします。 ほかにはございませんか。小沢先生、よろしいですか。 基準値そのものについても御検討いただきたいと思いますし、作残の導き出し方、そ の結果等についても御意見がありましたら承りたいと思います。 ○事務局 先ほどの豊田先生の、ほうれんそうの9ppmのところでございますけれども、 作残試験をみますと、ホウレンソウにつきまして、作物残留試験が6例やられてござい まして、高い方で7.84という数字が出てございますので、それを取って高い数字になっ ているということでございます。 ○井上(達)部会長 どうもありがとうございます。 ほかにはございませんか。よろしいようですと、この基準値案を御承認いただくとい うことでございますが、よろしゅうございますか。 (「はい」と声あり) ○井上(達)部会長 ありがとうございます。 それでは、これからの取扱いはどのようになりますか。後でまとめてしますか。 ○事務局 はい。 ○井上(達)部会長 それでは、次の剤は2つ動物用医薬品が続きますが、ツラスロマ イシンをお願いいたします。 ○事務局 それでは、本日の資料2−1にございます動物用医薬品のツラスロマイシン について御説明申し上げます。 資料は農薬の資料に続きまして、通し番号で言うと54ページ目になるのでございます が、こちらをごらんください。 1枚めくっていただきまして、3ページ目でございますが、こちらにございますとお り、本品につきましては昨年8月1日に食品健康影響評価の依頼を行っております。 食品安全委員会におかれましては、その後の審査を終了しておりまして、昨年12月22 日から本年1月18日まで、パブリックコメントを求めております。ただ、現時点におき ましては、まだ食品安全委員会の方から評価結果はいただいていないという状況でござ いまして、1ページ目にございますように評価結果に(案)というものが上段に付して あるものでございます。 評価結果の中身について御説明をいたします。4ページ目をごらんください。こちら がツラスロマイシンの食品健康影響評価の案でございます。本件につきましては、半合 成のマクロライド系抗生物質となっております。また、2種類の構造異性体が入ってお ります平衡混合物となっておりまして、溶液中で動的に平衡している場合の異性体比は 約九対一という形になっております。 この作用機序につきましては、他のマクロライド系抗生物質と同様に細菌細胞のリボ ソームの50S サブユニットに結合いたしまして、いわゆるタンパク質の合成を阻害する というものでございます。 このような効果があるということで、牛あるいは豚の肺炎の起因菌に対して有効性が あるということでございまして、動物用医薬品としましては、肺炎の治療薬という形で 使われているものでございます。 本品の承認状況につきましては、その下の「(3)その他」に書いてございますが、 米国、欧州等、等と申しますのはこれ以外にもスイス、トルコという国で承認を得てお ります。これらの国でも牛、豚という畜種に承認が得られておりまして、細菌性肺炎の 治療を目的として使用されているというものでございます。 用法・用量につきましては、2.5mg/kgの用量となっておりまして、牛は皮下注、豚は 筋注という形になっております。投与は単回投与でございます。休薬期間につきまして は、米国では牛は18日、豚は5日、欧州につきましては牛は49日、豚は33日となって おります。なお、スイスとトルコにつきましても、欧州と同様な休薬期間を設定してい るところでございます。 安全性評価につきましては、我が国ではまだ承認がございませんので、諸外国で評価 が行われております。FDAでは2005年、EMEA、ヨーロッパでございますが、こち らでは2003年において既に評価がなされているというものでございます。 1ページめくっていただきまして、5ページに「2.毒性評価の概要」がございます。 まず吸収・分布・代謝・排泄という部分でございますが、吸収・排泄につきましては、 投与後いずれにおきましても肺の濃度が最も高くなるという特徴を有しております。 主たる排泄経路でございますが、それ以降にございますとおり、糞、尿が主たる排泄 経路という形になっております。牛に関しましては5日以内で47.8%、47日後では68. 7%、こちらが糞尿経路で排出をされております。また、豚につきましては5日以内に7 1%、35日までにおきましては95.8%、こちらが糞尿経路で排出をされているという形 になっております。 次の6ページでございますが、6ページの後半に「(2)代謝」というものが記載さ れております。代謝につきまして、まず牛でございますが、こちらはC14標識ツラスロ マイシンを用いて測定がなされております。牛につきましては、いずれの時点でも肝臓 が最も濃度が高いということが示されているところでございます。 次の7ページ目をごらんいただきますと、豚における体内の分布というものがござい まして、豚につきましては腎臓が最も濃度が高かったということが記述されております。 また、中段には牛及び豚の代謝物についての記載がございまして、いずれにしても未 変化体の残留がその大半であったということが示されているものでございます。 続きまして、7ページ目の下の部分でございます。「2-2 毒性試験」でございます。 まず「(1)急性毒性試験」。こちらがラットとビーグル犬の2種を用いて行われて おります。ラットにつきましては経口投与、こちらでは2,000mg/kg体重までの単回投与 で死亡は認められておりません。静脈内投与につきましては、11.3mg/kg 体重で単回投 与で死亡は認められておりませんが、33.8mg/kg 体重では全例が死亡したということが 報告されております。 また、ビーグル犬につきましては、経口投与では1,000mg/kg体重まで、静脈内投与で は30mg/kg 体重までの単回投与で死亡が認められていないという報告となっておりま す。 次に8ページ目でございます。こちらの「(2)亜急性毒性試験」が報告されており ます。こちらはラットとビーグル犬の2種を用いております。ラットにつきましては、 1か月の亜急性毒性試験、または3か月の亜急性毒性試験というものが実施されており ます。 まず1か月の亜急性毒性試験につきましては強制経口投与。用量といたしまし ては10〜200mg/kg体重/ 日で投与が行われております。影響といたしましては、投与群 のうち200mg の投与群につきまして、血液学的検査、臓器重量、血液生化学的検査につ いて影響が認められているということでございまして、本試験におけるNOAELは50 mg/kg 体重/ 日であったと報告されております。 ラットの3か月の試験におきましては、15mg投与群の雄におきまして、血液生化学的 検査について影響があったということが報告されております。これに基づいてNOAE Lにつきましては5mg/kg 体重/ 日ということが報告されております。 次にビーグル犬の1か月の亜急性毒性試験について御説明をいたします。こちらにつ きましては強制経口投与、用量といたしましては5〜50mg/kg 体重/ 日というもので投 与が行われております。結果といたしましては、50mg投与群の雌雄ともにおきまして、 血液生化学的検査及び臓器重量または血圧という点に影響が認められているということ でございます。 これを基に9ページ目の上段に書いてございますが、NOAELにつきましては、15 mg/kg 体重/ 日であるということが示されております。 3か月のこれもビーグル犬でございますが、亜急性毒性試験。こちらにつきましても 投与が行われております。結論といたしましては、17mg投与群の雌におきまして、血液 生化学的検査に影響があったということが報告されております。 その3か月試験のちょうど中段になるわけでございますが、眼の検査についての報告 がございます。こちらの検査におきましては、限局性で片側性の小さな銀色点が複数、 網膜の壁紙タペタム、結合部付近に認められたということが報告されております。 これらの試験の結果といたしましては、NOAELが5.7mg/kg体重/ 日という形で報 告されているものでございます。 次に9ページの下の部分でございますが「(3)慢性毒性試験」。これはビーグル犬 でございますが、これで試験が行われております。 結果といたしましては、一般的な臨床症状観察におきまして、投与群で散発的な流涎 が認められておりまして、5mg以上投与群でわずかに頻度が高く、特に雌で顕著であっ たという旨が報告されております。 これらの結果に基づきまして、本試験におけるNOELにつきましては、2mg/kg 体 重/ 日であったという報告となっております。なお、本試験におきましては蓄積性につ いても検討がなされております。25mg投与群につきましては、長期投与による蓄積があ ったという報告でございます。しかしながら、2mg投与群につきましては蓄積性は確認 されていないということが報告されております。 10ページ目をごらんください。こちらに「(4)発がん性試験」が書いてございます。 この試験につきましては実施はされておりません。これにつきましては、以後、変異原 性の部分で御説明申し上げます。 次に「(5)繁殖毒性試験及び催奇形性試験」が報告されております。こちらにつき ましてはラット及びウサギを用いた試験となっております。試験結果といたしましては、 血液尿素窒素、いわゆるBUNでございますけれども、この低値が15mg以上の全投与群 の雄の18週で認められたということが報告されております。 また、肝臓の絶対重量、相対重量の減少がF0 世代雌雄の15mg以上の全投与群、F1 世代におきましても相対重量の減少が雄の15mg以上の全投与群で認められたというこ とでございます。 病理組織学的検査におきましては、肝臓を含め、検査したいずれの臓器にも異常は認 められなかったというものとなっております。 繁殖に関する影響につきましては、いずれも認められなかったという結論となってお ります。 本試験における親動物の一般毒性に対するLOAELにつきましては、結果から15mg / kg体重/ 日となっておりまして、生殖発生毒性に対するNOAELにつきましては1 00mg/kg体重/ 日以上であったという結論となっております。 催奇形性試験が10ページ目の一番下に書いてございますが、ラット、ウサギともにお いて実施されているわけでございますが、いずれにおいても催奇形性は認められなかっ たということが報告されているところでございます。 次に11ページをごらんください。こちらの後段部分の「(6)遺伝毒性試験」の結果 が報告されております。変異原性に関する各種のin vitro及びin vivo の試験の結果 がまとめられておりまして、in vitroにつきましてはこちらの表にございますように、 Ames、染色体異常試験、前進突然変異試験が実施されております。いずれも代謝活 性化の有無にかかわらず陰性を示したという結論となっております。 また、in vivo 試験につきましては、小核試験が実施されておりまして、2種類を用 いたin vivo の小核試験でも結果は陰性ということが報告されているところでござい ます。結論といたしましては、in vitro、in vivo いずれの試験におきましても陰性と いう結論を得ておりまして、ツラスロマイシンは遺伝毒性を有さないものと考えると報 告されているところでございます。 12ページの下の部分に「(7)その他特殊試験」というものも実施されております。 その1つといたしまして、皮膚の感作性試験が実施されておりますけれども、次の13 ページの文章の末尾になるわけでございますが、結論といたしましてはアレルギーの惹 起は用量依存的であると考えるところでありますけれども、臨床使用と比較して食品を 介した暴露量が著しく少ないということが想定され、食品を介して生体にとって問題と なるアレルギー反応が生じる可能性が無視できる程度であると考えられてるとされてお ります。 また、本品につきましては、腸内細菌に対する影響、いわゆるMICでございますけ れども、こちらについても検討がなされております。その検討結果が13ページのちょう ど中段にございます「(8)微生物学的影響に関する特殊試験」という形で示されてお ります。 まず?としまして、最小発育阻止濃度、MICでございますけれども、こち らにつきましては表の下段にございますように、調査された範囲ではビフィドバクテリ ウム属が最も感受性が高い細菌種であり、その10の6乗ないし8乗CFU/spotにおける MIC50の値は1μg/mLであったということが報告されております。 続きまして、?といたしましては、in vitro gut modelにおきます最小発育阻止濃度 が報告されております。結論といたしましては、擬似消化管液中におきましては20mg/m L までのツラスロマイシンは細菌の増殖に影響を与えなかったということが報告されて おります。 14ページの「?ヒトの糞便に対するツラスロマイシンの結合活性の検討」という部分 でございます。こちらにつきましては、その?の文章の最後の部分でございますが「ツ ラスロマイシンはヒトの体温に近い37℃でよりヒト糞便溶液に対しより高い結合活性 を示した」ということが示されているところでございます。 続きまして「?糞便とpHの細菌の増殖に対する影響」というものが報告されており ます。こちらの結論につきましても、14ページの一番最後の文章でございますが、糞便 に対する結合により抗菌活性が低下することが示唆されているところでございます。 15ページをごらんください。こちらにつきましては、?といたしまして、豚における in vivo の知見というものが報告されております。この結論といたしましては、第2パ ラグラフのちょうど中段以降になるわけでございますが「ブタの試験において、攻撃試 験時のsalmonella排泄にin vitroで求められたMICより数十倍と推定される濃度の ツラスロマイシン存在下でも影響は認められておらず、in vitroにおいて示された種々 の要因による抗菌活性低下はin vivo においても認められることが示唆された」と記さ れております。 次に「(9)ヒトにおける知見について」でございます。こちらにつ きましては、文章に書いてございますとおり、ツラスロマイシンのヒトの臨床における 使用歴はないわけでございますが、マクロライド系という系列における抗生物質は古く からヒト臨床において利用されているものでございます。 マクロライド系の抗生物質による重篤な副作用はまれにしか起こらないとされている が、エリスロマイシンではここに書いてございますように、胆汁うっ滞性肝炎があると され、初期の特徴は悪心、嘔吐、腹痛とされております。その他、経口、静脈投与で特 に高用量の場合には腹痛、悪心、嘔吐、下痢を呈することがあるとされております。エ リスロマイシンについては米国NTPにおきまして、マウスを用いた発がん性試験が実 施されておりますけれども、発がん性は認められなかったとされております。 また、ツラスロマイシンと同じ15員環マクロライドであるアジスロマイシンの臨床試 験及び市販後の副作用調査で頻度が高かったのは血液検査値、特に肝酵素への変動、消 化管への影響等であったとされております。 以上の報告をとりまとめたものが15ページの一番最後でございます「3.食品健康影 響評価について」というものでございます。 薬物動態につきましては、先ほど御説明いたしましたとおり、1年間の慢性毒性試験 におきまして影響が見られているというものでございます。また、報告された多くの試 験の中で筋肉、脂肪、肝臓、腎臓よりも肺において最も高い濃度の残留が認められてお りますけれども、報告された各種の毒性試験におきまして、特に肺に対する毒性所見と いうものは認められておりません。 16ページをごらんください。こちらの表題にございます「繁殖毒性及び催奇形性につ いて」でございます。こちらに催奇形性等のとりまとめがなされております。 生殖発生毒性につきましては、先ほど御説明しましたとおり、ラットを用いた2世代 繁殖試験、ラット、ウサギを用いた催奇形性試験というものが実施されております。2 世代繁殖試験におきましては、いずれにしても試験物質の投与による影響は認められな かったとされております。 しかしながら、一般毒性につきましては、肝臓の絶対重量の減少等が認められており まして、NOAELは得られなかったと判断され、LOAELは15mg/kg 体重/ 日と考 えられているものでございます。 催奇形性につきましては、ラット、ウサギともに影響は認められなかったわけでござ いますけれども、ラットにおきましては15mgの用量において雌雄の胎児重量に低値が認 められたため、NOAELが得られなかったと判断されております。なお、LOAEL につきましては、15mg/kg 体重/ 日と考えられているところでございます。 続きまして「遺伝毒性/発がん性について」でございます。こちらは先ほど御説明し ましたとおり、発がん性試験につきましては、実施がなされておりません。しかしなが ら、in vitro及びin vivo の試験におきまして、いずれの結果も陰性であったというも のでございます。 また、亜急性、慢性毒性のいずれの試験においても、全腫瘍性病変あるいは増殖性病 変は認められておりません。更にマクロライド系の抗生物質につきましては、比較的長 いヒトの臨床における使用歴がありますけれども、副作用としての腫瘍の発生は知られ ておらず、代表的な薬剤であるエリスロマイシンの発がん性試験では発がん性が認めら れていないというものでございます。 これらのことから、発がん性試験を欠いたとしてもADIの設定は可能であると判断 されているところでございます。 続きまして、毒性学的影響のエンドポイントにつきましては、その文章の後段にござ いますとおり、慢性毒性試験で毒性影響と認められた指標は、血液生化学的検査におけ る幾つかのパラメーターの変化で、NOAELは5mg/kg 体重/ 日であった。 一方、ラットの2世代繁殖試験及び催奇形性試験において、それぞれの肝臓重量の減 少及び胎児体重の低下が最低用量群で認められたため、NOAELは確定できない。い ずれもLOAELは15mg/kg であった。なお、催奇形性はラット、ウサギともに認めら れなかったという結論となっております。 従来このような毒性を評価する場合におきましては、微生物学的影響というものを見 ているわけでございますけれども、本剤につきましては、先ほど御説明しておりますと おり、腸管内における抗菌活性の低下ということが確認され、そして報告されていると ころでございます。 この知見に基づきまして判断をすれば、17ページの一番下の3行になるわけでござい ますけれども「抗菌活性の低下に関する知見を定量的に評価することはできないものの、 ヒト腸管内ではin vitroの条件と比較して、控えめに見ても1/10程度に抗菌活性が低 下するものと考えられる。抗菌活性の低下を考慮した微生物学的ADIの試算値は0.04 mg/kg 体重/ 日程度である」とされております。この数字は最終的にお話をいたします 食品健康影響評価のツラスロマイシンのADI値よりも高い値となっておりまして、こ の値は採用されていないものとなっております。 最終的に18ページでございますが、こちらに「一日摂取許容量(ADI)の設定につ いて」が記載されております。 内容といたしましては、ツラスロマイシンにつきましては、遺伝毒性や発がん性を示 さないと考えられることから、ADIを設定することが可能であるとされているところ でございます。毒性学的影響につきましても、最も低い容量で低い被験物質に関連した 毒性影響は慢性毒性のNOAEL5mg/kg 体重/ 日となっておりますけれども、これに 100 を考慮した0.05mg/kg 体重/ 日が1つに考慮されるわけでございますが、それ以降 にございますラットの2世代繁殖試験及び催奇形成試験、最も長期の慢性毒性試験。こ れらを考慮した場合に安全係数100 に加えて更に係数10を考慮いたしまして、0.015mg /kg体重/ 日というものが適当であると判断されているところでございます。 末尾でございますが、一方、微生物学的影響につきましては、現時点で利用可能なデ ータからは、定量的な評価は困難であるが、毒性学的影響から導かれるADIと比較し て十分安全域であると考えられているところでございます。そして、最終的にツラスロ マイシンのADIの評価結果につきましては、0.015mg/kg体重/ 日というものが示され ているところでございます。 続きまして、部会の報告案につきまして御説明をさせていただきます。ページ数は23 ページになります。 こちらにお示ししておりますとおり、ツラスロマイシンという物質につきましての用 途につきましては、牛、豚における細菌性肺炎の治療というものでございます。 「(3)化学名」。こちらは2種類の異性体の平衡混合物でございますので、こちら が併記してございます。 24ページでございますが、こちらに「(4)構造式及び物性」というものを記載して ございます。 また「(5)適用方法及び用量」。これは現在、承認を得ております米国、欧州、ス イス、トルコを含めたものとなっております。牛につきましては、休薬期間が18日、豚 は5日、欧州につきましては、牛49日、豚33日という形になっているところでござい ます。 次に「2.対象動物における残留試験結果」につきましては、分析対象の化合物はツ ラスロマイシンというものでございます。分析法の概要につきましては、牛については HPLC/MS 法を用いておりまして、豚におきましてはHPLC/MS/MS法が使われているところ でございます。 次の25ページをごらんいただきますと、残留試験結果が記載されているところでござ います。こちらに牛、豚という形に分けまして、臓器といたしましては筋肉、脂肪、肝 臓、腎臓そして肺というものを記載してございます。これらの結果をとりまとめ、また 各国の休薬期間に照らして整理したものが26ページの上段の表にございます一覧表と いう形になっております。最終的にはこちらの残留量を勘案し、残留基準の案を提案し ているところでございます。 「3.許容一日摂取量(ADI)評価」でございますが、こちらに評価結果を記載し ております。こちらは食品健康影響評価の案そのものでございますので、説明の方は割 愛をさせていただきます。 27ページでございます。こちらにおきまして「4.諸外国における使用状況」という ものがございます。また、基準の設定状況を記載しております。 米国におきましては、基準値といたしましては最も残留の高い臓器をターゲット臓器 といたしまして、牛につきましては肝臓、豚につきましては腎臓というものを基準値と して設定しているところでございます。 次に「5.残留基準値」の案でございますけれども、次の28ページにその案が記載し てございます。28ページにございますとおり、上から順番に牛の筋肉が0.3ppm、牛の脂 肪が0.2ppm、牛の肝臓が5ppm 、牛の腎臓が3ppm 、牛の食用部分が3ppm 、豚の筋肉 が2ppm 、豚の脂肪が0.3ppm、豚の肝臓が4ppm 、豚の腎臓が9ppm 、豚の食用部分が 5ppm という数字を提案しているところでございます。 なお、食用部分につきましては、一般的に外国では内臓を食べる習慣が余りないとい うことでございますが、我が国におきましては肺という部分も、これはいわゆるホルモ ンという形で摂食をされるという実態もございますので、この食用部分につきましては 肺の残留値を参考といたしまして、基準値を設定させていただいているところでござい ます。 「(3)ADI比」でございますが、こちらが国民平均につきましては10.31 %、小 児につきましては22.6%、妊婦につきましては10.7%という数字になっておりまして、 いずれにおいてもADIを十分下回っているということとなっているところでございま す。 部会報告案についての説明及び評価結果の案の説明は以上でございます。 ○井上(達)部会長 ありがとうございます。御説明いただきましたが、毒性部分につ いて、もし何かありましたら、御意見を伺いたいと思います。 これは加藤先生はよろしいですか。 ○加藤委員 はい。 ○井上(達)部会長 ほかにはいかがでしょうか。 お願いします。 ○大野委員 食品安全委員会の報告について、余りけちをつけたくないと思っていたん ですけれども、どうもけちをつけざるを得ないというところで、このツラスロマイシン の最初の構造式が載っている4ページのところで「欧州等」という言葉を使っています けれども、これはEUのことですね。 ○事務局 はい。 ○大野委員 EUとしないと非常に紛らわしいので。ほかにも欧州という言葉を結構使 っているんですけれども、それを変えた方がいいと示唆してください。 7ページの「ブタにおける代謝物」という項目がありますけれども、毒性試験の前の ところです。そこのところで体内分布試験のところで、その後の「資料53,40」と書い てありますけれども、この報告書にはこの資料は付いていませんので、これをカットし た方がよろしいでしょうということです。 12ページの一番下の行なんですけれども、これは感作性試験をやったときに、最初に 感作を処置して、その後にチャレンジして、そういう作用があるかどうか見ているわけ ですけれども、そのチャレンジを「攻撃した」という言葉を使っていますね。それを別 の部位に処置したとした方がいい。誘発処置というものがありますけれども、処置でも いいと思います。いずれにしても、言葉を注意してくださいということです。 ○井上(達)部会長 ありがとうございます。大野先生には、ついでにと言ってはあれ ですが、この繁殖毒性試験及び催奇形性試験でNOAELが取れませんでしたけれども、 それに基づいてLOAELを採用していますけれども、この辺の考え方について解説し ていただければと思います。 ○大野委員 申し訳ないんですけれども、記憶がないです。 ○井上(達)部会長 事務局の御説明にもありましたように、取れなかったのは単なる 事実ですけれども、それに基づいてLOAELから導き出すという点で、ADIの算定 のときに10掛け算してあるようですので、そのことは御説明にありましたけれども、改 めて申し上げます。 ほかにはございませんか。事務局、どうぞ。 ○事務局 今、大野先生の方から、欧州ではなくEUという形で御指摘いただいており まして、部会報告案の方にも欧州と書いてありますので、そこも含めて修正をさせてい ただきたいと思います。 ○井上(達)部会長 お願いいたします。 ほかにはいかがでしょう。小沢委員。 ○小沢委員 次の基準値の方でよろしいでしょうか。 ○井上(達)部会長 どうぞ。 ○小沢委員 幾つか素朴な質問があるんですが、日本では使用されていないということ で、これは輸入する肉のインポートトレランスと考えてよろしいかと思うんですが、休 薬期間でEUと米国で休薬期間が随分差があって、米国は例えば、牛だと18日でEUは 49日と、この辺の基本的な考え方というのは、こういったもの全体にあるのかどうか。 あるいはこの薬剤について特徴的なことなのかというのが1つあります。 27ページの残留基準値のところなんですが、米国は肝臓と腎臓のところを2つ記入が あるわけで、先ほどの御説明のターゲット臓器という考え方が私はよくわからなかった んですが、これはこの2つさえクリアーできていれば、ほかは全部食べてOKという考 え方なのかどうかがよくわからなかったです。 あとはその表の下のところに米国がマーカー残留物のこれで基準を設定しているので、 補正係数をかけているというので、そういう計算になっていると思うんですが、アメリ カがそういうふうにマーカー残留物で計算する理由というのがあるのかどうかというの が、どの辺で考え方の違いがあるのかということがよくわからなかったんです。 28ページのところの各組織ごとにおける残留の基準値案そのものなんですが、これは 残留マーカーではなくてツラスロマイシンとしての数字になると思うんですが、このツ ラスロマイシンそのものというのは総残留物の濃度なのか、未変化体なのか、代謝物か ら換算したものか、その内訳というのがよくわからなくて、最終的にツラスロマイシン として規制するときの残留の規制対象の中身というのは一体どれのことを言っているの か、分析法があれば多分わかる話になるのかと、素人の私としては思うんですが、よく わからなかったです。 結局(2)の残留基準で基準値案を現行のポジティブリストで決めたものからすると、 増やしているものが散見されて、確かに恐らく残留試験成績というか、輸入ということ を考えると、例えば、26ページにあった米国の休薬期間18日で筋肉から出てくるppm を見ると、結局0.1 だとぎりぎりで際どいなということで、0.3 にしてしまえというよ うなことなのか。その辺の関係が丸め具合というか、消費者からすれば、これはやはり 低く規制されてしかるべきだと思って、余り輸入に合わせて上限値をいくというような ことというのは、ちょっとわかりにくいかなと思いました。 長くなりましたが、以上でございます。 ○井上(達)部会長 的を得た鋭い御指摘をいただきましたので、食べる場所だとか休 薬期間のギャップのことなどから、順々に御説明いただきます。お願いいたします。 ○事務局 小沢先生からの御質問にお答えいたします。 まず米国とEUの方で休薬期間の考え方が随分違うのではないという御指摘でござい ます。これは多分その国ごとの考え方の違いがそのまま反映されているものと考えてお ります。特に何の理由があるのかというところまでは、今この場で御説明をするのは困 難でございますが、経験則から申し上げますと、やはりヨーロッパの方が米国等に比較 しまして休薬期間は長いということが見受けられているところでございます。 2番でございますが、米国の場合は、牛には肝臓のみ、豚には腎臓のみという形にな っております。これは適正に使用した場合におきまして、ターゲットとなるこの臓器が この基準値より下回っているという具合であれば、それは当然ながら適正に使用された ものと解釈されますので、それ以外の基準値が設定されていない臓器につきましても、 当然ながら肝臓がOKであれば、牛はそれ以外の筋肉とかそういう部分もよろしいでし ょう。豚につきましても同様の考えであったということで取り扱っております。ですの で、米国の筋肉、脂肪等の部分につきましては、現在のところは基準はございません。 3番でございますけれども、これもその分析を何でやるかという点でございます。確 かにアメリカの場合には、マーカーというものを用いております。ヨーロッパ等におき ましては、これはたしか親化合物、ペアレント化合物と言いましょうか、それで測って おります。 いずれにしましても、基準値におきましては、今般我々の従来から取り扱っておりま すとおり、親化合物という形で測るものと考えており、従来からの整理の流れに従い、 親化合物というもので記載をさせていただいているところでございます。 また、基準値でどういうものを測っているのかということでございます。これは28 ページの上の表の基準値の案の数字でございますけれども、これは今お話ししましたと おり、親化合物の数字でございます。では、親化合物は何をはかっているのかと、本日 まだ試験法をお示しできておりませんので、何を測っているかが見えないというところ でございますが、試験法の中では今回この化合物は平衡混合物となっておりまして、2 種類の異性体が含まれております。この2種類の異性体の親化合物を分析対象といたし まして、基準値の案としてお示しをしているものでございます。 光学異性体なものですので、これは分析上で区別することがなかなか困難ということ もございまして、分析法の中では、現時点ではその平衡混合物両方を同時にはかるとい うことで考えているところでございます。この辺は米谷先生の方が多分お詳しいのでは ないかと思っているところでございます。 あとは基準値を設定するときの考え方でございますけれども、これはあくまで残留デ ータに基づいて設定しているところでございます。ポジティブリスト制度を御審議いた だいた際には、その数字を設定するときに諸外国の基準を参考とするという形で基準値 を置かしていただいておりました。 そのため、例えば、米国のような値の部分につきましては、参照とする国の基準が休 薬機関に関係なく値のあるものを取ってきたという形になっておりまして、その場合、 スイス、これはEUですけれども、0.1 という数字がありましたので、そういうところ を引用してきています。 今回、作残のデータというものを改めて確認させていただいたところ、やはりその0. 1 という数字で置くのは残留結果から見てかなり厳しいのではないかという観点から、 基準値を今回見直しをさせていただいているというところでございます。 基本的にはその残留量の平均値に標準偏差を加えまして、その標準偏差を十分カバー できる値であろうと思われる値を案として今、提示しているところでございます。 以上でございます。 ○井上(達)部会長 ありがとうございます。それぞれお答えいただきましたけれども、 米谷先生、少し御説明をいただければ。 ○米谷委員 分析法の方からの御説明でございますけれども、1つは米国の方がマーカ ー残留物であるCP-60,300 を使っているということですけれども、多分これは酸で加水 分解してはかっていると思いますので、親化合物だけではなくて代謝物も含めてはかっ ていると思います。それが米国の方法ですけれども、EU等では親化合物だけではかっ ているということで、我が国におきましても親化合物でいくというような方針のようで ございます。 親化合物が溶液中では動的に平衡にあるということですけれども、分析するときに分 けられないということですので、全体として基準値を設定するというのはリーズナブル だと思っております。 質問なんですが、27ページの残留基準のところで、これはポジティブリストのものだ と思いますけれども、中間辺りに「筋肉(豚)」というものがございまして、その値が 0.1 です。28ページの案の方では、今度は「筋肉(豚)」ですと2という値になって います。そのほかの臓器を見ていますと両者大体似たような値なんですが、そこだけが けたが1つ違っていまして、20倍違うんですが、この元のポジティブリストの0.1 とい うのはどこから来たんでしょうか。0.1 と2の違いがどこから来たのかというのを御説 明いただければと思います。 ○事務局 ポジティブリストの中でこの暫定基準を設定する際に、先生方にもいろいろ 御助言をいただいているわけでございますが、基準値を設定しているときに、その基準 値がはまっていないところ、これについてどう取り扱うのかという点でございまして、 やはりその薬物動態の分布とか残留性とかを考えた場合には、内臓と筋肉を同じに見る ことはなかなか難しいのではないかという御意見をいただいております。 その際に筋肉につきましては、脂肪と同じ形の方がよろしいのではないかと。あと肝 臓、腎臓はまた別のグループとして見た方がいいのではないかという御示唆をいただい ているところでございまして、今回その暫定基準の0.1 という数字は、このEUの脂肪 から引っ張ってきておりまして、それで0.1 という形が現在は入っているところでござ います。 今回は残留性のデータがきちんと提示されておりますので、これに基づいて、その値 を置かしていただいたというものでございます。 ○井上(達)部会長 ありがとうございます。 ほかにはいかがでしょうか。 ○山添委員 今回の案は、使用の目的が皮下投与あるいは筋注での投与ということにな っております。ただ、実験のデータにはほとんどが経口投与の毒性のデータが出ていま す。今回の場合には、その使われる食肉というのは何らかの形でこの使用方法というの はどこかで限定をされる、あるいは確認ができるという方法が1つはあるのかどうかと いうことが1つお伺いしたいということなんです。 ○井上(達)部会長 その点はいかがですか。 ○事務局 使用方法につきまして、確かに牛の場合には皮下、豚の場合には筋肉という 形になっておりまして、それが各国で使用基準というような法的規制があるかどうかと いう点につきましては、確認をさせていただければと思います。基本的にはあるものと 認識しているんですけれども、それは確認させていただきたいと思います。 ○井上(達)部会長 では、お調べいただきます。 ○山添委員 もう一つ、これは先ほどの食品安全委員会の案の16ページのところで、こ こで言うのはどうかなと思うんですが、遺伝毒性/発がん性のところで、基本的に発が ん性の試験のデータがないために変異原性等のデータで補強しているところがありまし て、そこでマクロライド系の抗生物質については比較的長いヒト臨床に使用歴があると いうことが書かれていて、それはいいんだと思うんですけれども、例えば、代表的な薬 剤であるエリスロマイシンが発がん性試験では発がん性は認められていない。逆に言う と市販している薬に発がん性があったら使えていないはずなので、これは論理的にはち ょっと矛盾すると思うので、ここの最後のところは副作用と使用の発生は知られていな いというのであればいいんですけれども、そこのところはむしろ取っておいた方がいい のではないかというふうに御連絡いただければと思います。 ○事務局 食品安全委員会の方には、その旨連絡したいと思います。 ○井上(達)部会長 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。 お願いします。 ○大野委員 先ほど、ちょっと読みが浅かったかなと思ったんですけれども、井上先生 から御指摘があった生殖毒性試験の評価に基づいて、そのADIを決めるところの文章 なんですけれども、このツラスロマイシンの案の「3.許容一日摂取量(ADI)評価」 というところなんですけれども、この文章を何回か読んだんですけれども、わかりにく くて、そのページの下から5行目から「最も長期の慢性毒性試験でNOAELが得られ ているが、これとは質的に異なる生殖発生毒性試験」のところがその前の文章で言って いることの繰り返しなんです。 だから、そこをそういうふうに言わなくて「設定される。」から、すなわち慢性毒性 試験から得られるADIよりも、これとは質的に異なる生殖発生毒性試験から得られる ADIの方が低値である、と来て、最後の下から2行目の「ことから」につなげた方が すっきりすると思います。 ○井上(達)部会長 了解いただけましたか。 ○事務局 はい。 ○井上(達)部会長 では、御指摘に従って直してください。どうもありがとうござい ます。 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。 そうしますと、ツラスロマイシンの食品健康影響評価及び、これに対する基準値設定 の御提案については御了解いただけますでしょうか。 (「はい」と声あり) ○井上(達)部会長 ありがとうございます。 3つ目は、鶏の大腸菌症不活化ワクチンについての御審議をいただきます。 御説明をお願いします。 ○事務局 続きまして、本日の2品目の動物用医薬品でございます、鶏大腸菌症不活化 ワクチン。製品名といたしましては、京都微研ポールセーバーECというものでござい ます。 資料は3−1になります。1枚めくっていただきますと、2ページといたしまして、 審議の経緯等が書いてございます。本品につきましては、平成18年1月10日に農林水 産大臣及び厚生労働大臣から食品健康影響評価についての要請を行っております。 また、本年1月26日〜2月22日まで国民からの意見情報の募集、いわゆるパブリッ クコメントとなっておりまして、現在パブリックコメントが行われているという段階で ございます。このため現時点において評価書は私どもには提出されていないという状況 になっております。 次の3ページ目からが食品健康影響評価についての文章でございます。これは評価結 果をいただいておりませんので、案という形にさせていただいております。 内容といたしましては、本品は大腸菌症に効くワクチンとなっておりまして、まず大 腸菌の説明がございますが、大腸菌自体はグラム陰性通性嫌気性の桿菌となっておりま して、健康なヒトや動物の腸内細菌にも常在しているものでございます。 ただ、御存じのとおり、ある種の大腸菌というものが、ヒト及び家畜の病原体となる ということが古くから知られているところでございまして、これらは病原性大腸菌とい う形で呼ばれているところでございます。 主な区分といたしましては、その作用機序が違うことに伴うのですが、腸管毒素原性 大腸菌、腸管侵入性大腸菌、腸管病原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、腸管接着性大腸菌 というものに区分されているところでございます。 鶏の大腸菌症というものにつきましては、病型がさまざまでございまして、肉用鶏で 多発し、敗血症に陥ると高い死亡率を示して被害が大きいというものでございます。感 染経路は主として大腸菌を含む塵芥を吸入することによる呼吸器感染ということが考え られているところでございます。 本日の御審議をいただく鶏大腸菌症不活化ワクチン、ポールセーバーECでございま すが、これにつきましての説明が2.となっております。本品につきましては、国内の 発病鶏から分離をいたしました大腸菌を継代培養いたしました株、株の名前がKAI-2 株 となっております。これを破砕いたしまして、ホルムアルデヒドで不活化したものを主 剤としております。また、アジュバント等が添加されております。 使用方法といたしましては、0日齢以上100 日齢以下、こちらの鶏に0.03mLを点眼 摂接種して使用するものです。効能・効果は鶏の大腸菌症の発症の軽減となっておりま す。なお、その類似品といたしましては、既にF繊毛あるいは毒素を主剤とした不活化 ワクチンが国外では種鶏や採卵鶏に対する注射剤として存在しているものでございます。 アジュバントの種類としましては、水素添加レシチン、コレステロール、塩化ジステ アリルジメチルアンモニウムが使用されております。このうちコレステロールにつきま しては生体成分であること、他の二者は経口剤ではないものの化粧品の成分として汎用 されているほか、性状についても水素添加レシチンは水素添加した脂肪酸の混合物であ り、CSTEE、こちらはEUの毒性に関する科学委員会でございますけれども、こち らにおきまして、遺伝毒性、発がん性とも認められず、現状の暴露状況で特にリスクは ないと評価されているものでございます。 また、本剤につきましては、いずれの成分も1羽当たり15〜90μg が点眼投与される に過ぎないというものでございます。不活化剤として使用されておりますホルムアルデ ヒドがあるわけでございますが、これが1羽当たり0.09μg 含有される可能性がござい ますけれども、含有量と動物体における代謝というものを考慮した場合に、これらが食 用部に残留することはないと考えられているところでございます。 また、保存料としてゲンタマイシン、こちらが1羽当たり0.9 μg 使用されることと なりますが、これにつきましては過去に動物用医薬品専門調査会におきまして、既に設 定されておりますADI、または使用実態から影響は無視できる範囲と評価されている ところでございます。 次に4ページ目の安全性に関する知見でございます。まず「(1)ヒトに対する安全 性について」でございますが、本ワクチンにつきましては、ヒトに対する直接的な病原 性等の検討は行われておりません。主剤の大腸菌株は鶏に対して病原性を有し、その血 清型はO78ということになっております。O78自体はヒトのETECから分離される場 合がある血清型でございますが、今回のワクチンに対して使用される製造用株につきま しては、易熱性毒素、耐熱性毒素、ベロ毒素、いずれの毒素も生産しないということが 確認されているものでございます。 また、ヒトに対する病原性大腸菌としては認められないものでありまして、本ワクチ ンに含有される主剤はホルムアルデヒドにより不活化されているというものでございま す。そして、添加剤投与につきましても、その性状、使用量から含有成分の摂取による 健康影響の可能性は無視できるものと考えられております。 次に「(2)鶏における安全性試験」でございます。こちらではワクチンを0日齢の SPFの鶏に単回点眼で投与されております。その結果といたしましては、病理組織学 的検査で免疫応答活性化との関連性が示唆される所見が認められたほか、特にワクチン の投与に起因した異常、特に大腸菌症に関連した異常は認められておりません。 本ワクチンは点眼接種され、アジュバントの局所残留は認められません。安全性試験 において眼球及び眼瞼に特に異常は認められておりません。 「(3)臨床試験」でございますが、こちらにおきまして、ワクチン接種に起因する 異常は認められておりません。 最後に「(4)その他」でございますけれども、主剤の不活化の確認、他の細菌等の 混入の否定、鶏を用いた安全試験等が規格として設定されており、試作ワクチンにつき まして、それぞれ試験が行われ問題のないことが確認されております。 最終的には「4.食品健康影響評価について」でございますが、こちらにつきまして は、当ワクチンの主剤は大腸菌KAI-2 株を破砕し、ホルムアルデヒドで不活化したもの である。製造株は毒素を生産せず、また不活化されて生菌を含まないため、主剤のヒト への病原性を無視できると考えられております。 また、製剤に使用されているアジュバント等の添加剤につきましては、物質の性質や 既存の毒性評価とワクチンの接種量を考慮した場合に、含有成分が食品を介して摂取す る可能性は極めて低く、健康影響は無視できるものと評価されております。 このことから、当生物学的製剤が適切に使用される限りにおきまして、食品を通じて ヒトの健康に影響を与える可能性は無視できるものと評価されているところでございま す。 当部会の報告案でございますが、こちらが7ページとなっております。 「1.概要」といたしまして、品目名、鶏大腸菌症不活化ワクチン。商品名といたし ましては、ポールセーバーECというものでございます。 「(2)用途」は鶏の大腸菌症の発症の軽減でございます。 「(3)有効成分」は、超高圧破砕処理大腸菌KAI-2 株というものでございます。 「(4)適用方法及び用量」は先ほど説明したとおりでございます。 「(5)諸外国における使用状況」につきましても、先ほど来、説明を申し上げてい るところでございます。 「2.残留試験結果」につきましても、先ほど来説明申し上げておりまして、食用部 位に残留する可能性、これはホルムアルデヒドでございますけれども、このものが食用 部位に残留することはないと考えられているところでございます。 「3.ADIの評価」につきましては、先ほどの食品安全委員会の評価結果そのもの でございます。 「4.残留基準の設定」というものが8ページに記載してございますが、結論といた しましては食品安全委員会における評価結果を踏まえ、残留基準を設定しないことと考 えているところでございます。 以上につきまして、御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○井上(達)部会長 ありがとうございます。御説明のあったもろもろの条件下にあっ ては、健康影響は無視できると考えられる。したがって、それに基づいて残留基準は設 定しないということでございますが、御質問、コメント等ございましたら、お願いしま す。 ホルムアルデヒドも問題ないという御説明ですね。 ○事務局 はい。 ○井上(達)部会長 では、これについてはもう単純明快に御承認いただいたというこ とで、ありがとうございます。 そうしますと、本日御審議いただきました食品中の残留農薬に係る残留基準の設定に ついて、3つ御審議が終わりました。今後の取扱いについての御説明をお願いします。 ○事務局 本日御審議いただきました農薬1品目につきましては、食品安全委員会から の通知を受けております。報告案を部会報告書とさせていただきたいと思います。 また、動物用医薬品2品目につきましては、食品安全委員会からの通知を待ちまして、 部会報告書とさせていただくことといたします。 なお、今後の手続につきましては、食品衛生分科会にお諮りするとともに、パブリッ クコメント、WTO通報の手続を進める予定としているところでございます。 以上でございます。 ○井上(達)部会長 では、よろしくお願いいたします。 議題は次に「(2)その他」になりますが、何かございますか。 ○事務局 特段ございません。 ○井上(達)部会長 それでは、本日の議題は全部終了したようでございます。 皆様お忙しいところ、委員の先生方には御参集いただきまして御審議いただき、あり がとうございました。これで終了いたします。 照会先:医薬食品局食品安全部基準審査課乳肉水産基準係、残留農薬係 (03−5253−1111 内線2489、2487) 1