06/02/08 第11回医師の需給に関する検討会議事録 第11回医師の需給に関する検討会議事録 日時 平成18年2月8日(水)                               14:00〜                      場所 経済産業省別館1020号会議室 ○矢崎座長 定刻になりましたので、第11回「医師の需給に関する検討会」を開きた いと思います。お忙しい中を委員の先生方にご出席いただき、ありがとうございました。 実は医事課長の中垣さんのお父様が逝去され、急遽、出席できないということで、この 検討会を代表し中垣さんのお父様のご冥福をお祈りしたいと思います。そういうことで 課長不在ですが、有能な宮本課長補佐がいますので彼に進行をお願いしたいと思います。 事務局から委員の出席状況について、よろしくお願いします。 ○宮本補佐 本日の出欠ですが、池田委員、泉委員、江上委員、山本委員がそれぞれご 都合により欠席との連絡をいただいています。長谷川委員は所用のため後ほどいらっし ゃるとの連絡をいただいています。 ○矢崎座長 資料の説明をお願いします。 ○宮本補佐 資料1から3、参考資料1、2があります。資料1は本田委員からの提出 資料です。資料2は「『医師需給に係る医師の勤務状況調査』実施状況報告」です。資 料3は長谷川委員からの提出資料です。参考資料1は「医療法25条に基づく立入検査 結果(平成16年度)について」です。参考資料2は「医療施設従事医師数の年次推移、 年齢階級・業務の種別」です。1枚紙で厚労省による産業別・就業時間別就業割合とい うことで、総務省統計局の労働力調査年報の一部のデータを机上配布しています。 ○矢崎座長 大変興味深い資料をご用意いただきました本田委員から、資料1の説明を よろしくお願いします。 ○本田委員 資料1を説明させていただきます。今日は、こういう資料を発表させてい ただく機会をいただき、ありがとうございます。こういうことに慣れていないのでお聞 き苦しいと思いますが、よろしくお願いします。  この研究は、東京大学先端科学技術研究センターで行われている医療政策人材養成講 座で実施したものです。この講座のメンバーは社会人がほとんどで、医療政策をどう考 えるかというテーマで集まったものです。その中から、この医師の地域および診療科偏 在の実態について問題意識を持っているメンバーが集まって調査しました。メンバーの 背景は、ジャーナリストや病院の勤務医などで、行政関係者にも意見をいただいたりヒ アリングをしたりしながら行いました。  研修医に対するアンケート調査をしているのですが、2004年度から必修化された臨床 研修制度で、2年目を迎えた研修医全員、約7,000人に対して、3年目以降にどういう 所で働きたいかなど、そういう動向についての意識調査を行いました。その動向という のは、今後、医師の偏在が深刻化していくのか、それとも是正されていくのかを見る上 で、興味深いのではないかと考えました。  調査依頼の方法ですが、2年目の全研修医7,756人の個人データはわからないので個 人に送付できませんから、マッチングの表から各研修病院に何人の研修医がいるか調べ て、病院に人数分の調査票をお送りし、回答をお願いしますという形で行いました。研 究費もない中でやったので、催促もできず回答は441人と少ないですけれども、一応、 傾向はうかがえるのではないかと思って報告させていただきます。  まず、回答者の傾向ですが、大学病院での研修医が44.4%、市中病院研修者が5 5.6%で、男性が68%、女性が32%でした。4の「進みたい診療科を決めている か」をご覧ください。これは2年目の研修医の6月、7月ごろの状況ですが、「だいた い絞っている」という人を含めると9割を超えました。  では「進みたい診療科はどこですか」ということですが、3頁の棒グラフをご覧下さ い。私たちの研究はこの赤い棒グラフです。これを見ると、医師不足が指摘されている 小児科を希望している方がとても多く、私たちも実は驚きました。ただ、これは、まだ 実際のローテで小児科に行っていない時期だったかもしれません。そこから、私たちは 実は潜在的に小児科を希望している研修医は多いのではないか、一方で経験してみると 余りに大変で実際には選ばないということが多いのではないかというふうに見ていま す。黄色が東京大学医学部の中での状況ですが、皮膚科、放射線科、麻酔科が軒並増え ていて外科系が減っているということも、これからのトレンドが現れていると思います。  4頁の(5)の「診療科を選ぶ基準は何か」という問いです。これも研修医2年生という ことで聞いていただきたいのですが、青い棒の「やりがい」と回答した方が、全体の8 割もいます。特に小児科を選んでいる人の97%が「やりがい」と答えています。一方 でいろいろな見方があるかもしれませんが、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科の順で「忙しす ぎない」ことを重視する人が多かったという結果になりました。  6の「将来、最も大切にしたいものは何か」という問いでは、「診療技術」に次いで 「余暇・家族」が大変多かったというのが特徴だと思います。男女で見ると、特に女性 の場合は「余暇・家族」の回答が「診療技術」に肉迫してます。医師だから社会貢献を して当然だとの意見もあるかと思いますが、そういう感覚で医師偏在対策を考えると、 これからは違うのではないかというか、もう少し一般の労働という観点で医師の労働の あり方を見るべきではないかと、私たちは考えました。  小児科希望者についてみると、先ほどの問5で「やりがい」を挙げる研修医がとても 多かったのですが、5と6を見比べていただくと、将来、最も大切にしたいものに、「余 暇・家族との自由な時間」を挙げる人も相当に多いので、小児科を希望していてもロー テなどで実際に経験するとギャップを感じてしまっているという現実も、少なからずあ るのではないかと思います。  5頁の7の「専門医や認定医の資格を取得したいか」の問いでは、大学医局入局希望 の方が全体の65%と多いのですが、ただこれは将来という意味での入局希望です。い ずれにしても専門医・認定医の資格は取得したいという人が増えていると思います。8 で、入局希望の理由を見ると、「専門的技術を習得したい」、「大学院進学(研究・博 士号取得)」と続きますが、基本的には専門技術を身に付けることを大学医局に期待し ている現状があると思われます。  6頁の11は「地域偏在を是正・緩和するため、研修先や勤務地について一定期間の 制限設定は賛成か」という問いです。「賛成」と「是正・緩和するためには仕方ない」 という答えが合わせて45.5%、「反対」が37.9%で、若干、地域偏在のことに関しては、 理解をしなければいけないという姿勢が見てとれるのではないかと思いました。一方、 12の「診療科偏在を是正・緩和するため、診療科選択時の制限設定について賛成か」 という問いに対しては、「反対」が過半数を占めています。どういう診療科に就くかに ついては、自分の決定のもとで働きたいという意識ではないかと思います。  7頁の13の「医師不足を抱える地域で、条件によっては将来働いてもよいと思うか」 という問いに対しては、「長期間働いても良い」という方と「短期間なら働いても良い」 という方を合わせると9割を超えました。 その9割の方に、「どのような条件が整えば働いても良いと思うか」と問うと、「複数 の医師が勤務するなど休暇が取れる」が最も多く、次に「給与」が挙がっています。  かなり前に戻って申し訳ないですが、2頁の2の「出身地、研修先及び将来の勤務先」 についての考えでは、3年目以降に東京や東京近県など都市圏を希望している人が多く、 医師の都市集中はまだまだ起きる状況にあるのではないかと私たちは考えました。何分 人数が多くないのですが、傾向としてはそういうことです。  最後に、こういう結果から私たち医療政策人材養成講座の研究チームとしては、どう いう方法で今後、是正策をとっていくべきかというロードマップを考えましたので、簡 単に紹介させていただきます。15頁に簡単にステップを書きました。ステップ1として、 大学は医師派遣基準(労働条件を含む)を作成して公表する。都道府県は大学と協力し て、再編・集約・機能分化の計画と医師配置計画を作成する。医師不足県では、県と市 町村が共同で医師派遣機構を設立して、大学の派遣機能を補完。一緒に協力して地域医 療を担うということです。公立病院の地元医大出身医師枠の拡充。医大の「地域枠」の 拡充。これをステップ1として考えました。  その上でステップ2として、住民への情報公開と教育。これは医療のかかり方とか病 院へのかかり方ということを含めてです。大学と医師派遣機構は、医師配置計画に基づ き配置。派遣基準を満たせない中小病院などへの派遣中止、ベッド数削減。臨床医教育 や地域医療への協力に対する診療報酬上の評価。医師派遣機構を側面支援するため、地 方財政再建特別措置法などの改正です。  ステップ3として、再編による規模縮小などによる病院の一時的損失に対する国の財 政的支援。再編した公立病院の経営統合です。  ステップ4として、労働基準法の厳格適用です。労働環境の改善と、それを可能にす る医療機関の再編というものを併行して進めるべきではないかということ。ポイントは、 人事権をどう行使していくかというところではないか。人員配置基準は緩めないほうが いいのではないかということを提言しました。拙い発表で恐縮ですが、また読んでいた だければと思います。ありがとうございました。 ○矢崎座長 ありがとうございました。大変興味深い資料ですが、委員の方で何かご意 見はございますか。 ○水田委員 大変興味ある報告と思います。答えた人の特定はできないのですね。 ○本田委員 答えた人はわからないです。 ○水田委員 せっかくですから、それが最終的に3月にどう変わっているか、というの がフォローできたらいいなと思います。特に小児科などは、気持としては希望者が多い けれど現実としては少ない。というのは、研修制度が悪いというのでなく労働が過重な のです。みんなイメージで、いままでは子供はかわいいということで小児科をしようと 志望した人が多かったのですが、ローテーションで全部回ると、労働条件という点で小 児科というのは過重労働だということがわかって、とてもできないと言ってやめる人が います。今年の入局者は現実に減っているのです。まだ3月になっていませんが、いま のところ小児科希望者は減っています。だから、そういうのがわかればと思います。 ○本田委員 そうですね。本当はその比較ができればよかったと思っていますが、個人 を特定しないということで、オンライン上のホームページでパスワードを割り振って回 答してもらって集計したもので、そういう変化を追うことができません。 ○水田委員 どういうふうに気持が変わっていくかということです。全体の数としては 最終的に3月には全部わかるはずです。 ○矢崎座長 そのほか、いかがですか。この医師派遣機構の設立と謳っているのは、小 山田委員が前からおっしゃっていました。 ○小山田委員 これ以外にないのだろうと思うのですが、これを実際にどうするかとい うのが喫緊の課題なのです。後ほどまたお話したいと思いますが、この前、医療部会に 医師全体に対して、開業あるいは現状の資格にするという案が出されましたが、今回の 医療法の改正には出なくなりました。  そうすると、では本当に地域偏在、診療科偏在をどうするか。実際は全体としての医 師について義務化ということがなかなか難しい。となると自治体病院では人事権を持っ た自治体の首長、県なら県の知事です。その人たちがやるべきはないかという方策を私 どもは出して実際に進めつつあります。 ○本田委員 地域ということもあると思いますが、大学の医局も人を出すときに県と一 緒に地域医療のことを考えて、病院の再編も見越した上での人の派遣のあり方をやって いけないのかと思いました。 ○小山田委員 先週、実は厚労省の母子保健課の厚生研究の中で、東北地方の6大学の 産科の6人の教授の方々が、どのように産科の集約化を図るかというので集まったので す。そこに私も出させていただき東北地方のデータも見ました。東北地方6県の教授は 状況が全部わかっているわけです。ここは集約しなければならいとか、集約するには自 治体病院だけで集約できるとか、自治体病院だけで集約できないデータが出てきたので す。  私が申し上げたのは、これは強制的ではないので、できる所から、本当に必要な所で あればできるので、東北6県のいくつかのブロックで、できる、できないということを 振り分けて欲しい。その中でまずやらなければならない地域、やれそうな所を出してく ださいと言いました。その後はどうするかというと、私は産科の集約と同時に小児科と のセットでないとなかなか難しいので、小児科とのパイプをどうするかと言ったのです が、これはなかなか難しいのです。  これをやるにはどうするか。小児科学会の本部からの支援をもらって、行政にも働き かけ、東北地方の小児科の6教授に集まってもらい、産科で作った、ここはできそうだ、 ここは今やらなければいけないという所を検討してもらい、小児科のほうも賛同し、賛 同できた所だけ行政にも入ってもらい、私たちも入り、実際にそこでやるための条件づ くりをする。どの病院とどの病院がするかをやりましょうということです。産科と小児 科についてはそのような進捗状況で、これは東北ですけど、これが全国のモデルになる ような形で進めたいということで、お願いしています。 ○本田委員 是非、取材させてください。 ○矢崎座長 そのほか、いかがですか。 ○吉新委員 偏在解消の本当に素晴らしい処し方だと思いますし、ひとつの考え方だな と思います。この仕組みがあれば医師の総数というのはかなり読めるし、医師需給の本 当の姿というのも見えてくるのではないかと思います。ただ、私は自治医大の卒業生と して言わせていただくと、我々がとても落胆するのは、行政がある日、Aの施設にお前 は行けという予定が、わからないところで決定されて、突然Bに行くことになったり、 僻地勤務が3月に終わるというのが、ある日突然半年延びたり、そういった不平等感と いうか、自分たちが決定のメカニズムに参加できないところがあります。  小山田委員が進められているワーキンググループというか、産科・小児科の問題もそ うですが、突然計画が変更されたりする。それが自分が納得できることであればいいの ですが、行政の都合だったり全く理由がわからなかったりする。そういったことでみん なやる気をなくすというか、難しい問題を含んでいると思いますので、その辺を十分納 得して事業を進めることが、とても大事なことではないかと思います。 ○小山田委員 いまのご発言ですが、いかにそのような状況を納得してもらうか。そし て行きたくないと言っても、「しようがない、行ってやろう」というのを誰がやるかと 言ったら、その教授たちが「行政よりも私たち6人のほうが人間関係も全部わかってい るし、私どもがまずそこで理解を深めていくのがいちばんいいのではないか」というこ とでした。私どもは教授がそうやってくれれば大賛成です。 ○吉新委員 よくわかりました。そのとおりだと思います。行政が握るとなかなか難し い点があるということです。 ○小山田委員 そうですね。 ○矢崎座長 ただ、いままでも大学の医局というのは結構、医局の都合で人事を回して いました。行政だけがそうではなくて大学もそうですよね。 ○水田委員 いままで諸悪の根源は医局と言っていたのが、突然、また医局にと言うの ですかね。何かおかしいのではないか。私はずっと医局が悪いことないと言ってきたの ですが、いままできちんと育てて、それは中には悪徳代官のような人もいたかもしれな いけど、そういう人ばかりでなくて、きちんとプログラムに沿って育てて回していたと いうのが現状です。ただ、それがオープンでなかったということで、世間の方が認知し ていないということは私は認めますけれど、そういうことをきちんとして、どういう基 準でということにすれば、あまり問題ではないのではないかと思います。 ○矢崎座長 そうですね。全くおっしゃるとおりで、いま本田委員が言われた大学は医 師派遣基準を作成して公表する。どの人が、どういうふうにキャリアパスで動くかとい うことがある程度読み取れればいいわけです。それが今までは情報があまり病院側に来 ていなくて、ある日突然医師が消えてしまい、教授から戻れと言われたからということ になって、誤解が誤解を呼んでいるところがあるのです。だから本田委員の言われた情 報公開は、行政に限らず大学も含めて、みんながその地域でしっかりキャリアパスを作 って、情報公開して医師を採用するということをしないと、なかなか難しいです。 ○本田委員 もちろんそうだと思います。私は大学の医局だけが諸悪の根源だとは思っ ていませんが、おっしゃったように今までわからない中でのことと、大学もいろいろあ って、地域医療をどう支えるかということを本当に考えているのかどうか、すべての大 学がそうあるべきでないのかもしれないのです。逆に大学の役割分担みたいなことがあ ってもいいのだと思います。だけど、そういう中で地域医療を支えていくという教育の あり方と、行政やその地域と一緒になって、どういうふうに病院を連携させていくか。 そういうことがお互いにオープンでなかったし、その辺がまずは欠けているかなと思い ます。 ○土屋委員 いまの小山田委員のお話にあった方策が機能すれば、それは1つの有効な 手段となると思います。いま、医局制度を廃止してしまっている大学が18です。その 流れは確かにあるみたいです。ですから、昔日の医局制度を少し中身を変えて透明化し ようとしても、もう戻らないという部分があるのではないかと考えられます。  それと入局しないということがあります。今日のデータなどを拝見すると、大部分の 者はまだ使命感を持って、勉強もしたいという人が大勢いるということは大変心強い限 りですが、しかし、研修をどこでやるかということについても大学病院と市中の病院は 半々ですし、すべて大体半分半分ぐらいですね。今回のいろいろなデータを見てもそう いうふうに見えます。そうすると、市中の病院に研修に出た人たちの研修後のあり方に ついて、彼らが今のところはそんな難しいことを考えないで、いわゆる卒後研修という ものに乗っかっていくのがいちばんいいのかな、ぐらいに思っているのだろうと思いま す。  しかし、ではその後はどうするのかという考えは全くないわけです。だから、そのあ たりもきちっとしたプログラムを提示して、それぞれ事情はまちまちでしょうし、志向 するところもいろいろだと思います。それを昔みたいに、ただ入局して、教授に「行け」 と言われて行って、ある時期がきて家業として跡を継がなければいけない、あるいは自 分で新たに開業ということになる。何か先の予定まで立ててそんなことをする人はほと んどいないみたいですね。一方では、そういう医局関連の方策に乗らない人が半分ぐら いいるということで、それを考えてやる必要があるのではないかと思います。 ○水田委員 医局もだいぶ変化してきております。オープンになっています。また、卒 後すぐに医局の関連の方策に乗らない人も、何年かして大学院に入学して研究をしたい 人が出てくる可能性は有るわけです。そのような場合、大学はいつでも誰でも受け入れ ようと考えております。専門医研修に対しても大学だけでするのでなく、関連病院と一 緒にプログラムを作ってしようという動きもありますから、少し大学も変わってきてい るということは認めていただきたいと思います。 ○土屋委員 特に医師の3年後、15年後というのは地域性があるみたいです。水田先生 の九州のほうは、むしろ3年、15年経つと増えるのです。九州王国ではあまり外へ出た がらないというか、どうもそういう傾向が見られます。九州は従来どおりのものをさら に改善していくことによって、数字の上からもより良い方策が見つかるように感じます。 ○矢崎座長 そのほか、いかがですか。1つは、大学と地域で1つのコンソーシアムみ たいなものを作って医師を育成するシステムを作って、それが一方では医師の派遣機能 も満たすということになると、いま医師臨床研修の後の、いわゆる後期臨床研修の、何 か整備をすることによって、このステップ1というのが、ある程度形が見えてくるよう な感じがします。 ○吉新委員 そうしますと、出せる医師数が大体決まってきたり、階層分断とか年齢に よって所属する公立、国立を含めて、そういったdistributionを調整する機関ができると、 いろいろな分断が起こるのではないかと思います。それを避けて、必要病院に行く人も いるでしょうし、ある意味では、逆に供給できる数が決まると派遣先が自ずと決まって きますのから、病院の統廃合が相当進むと思います。両面でやっていかなければいけな い。  実際、いま自治体の統廃合が起こっていて、病院の合併問題というのは必ず一緒に話 されるのですが、相当難しい問題があると思います。そういう意味では、どういうレベ ルでプランニングするか。計画を実施する前提を毎年なり、一定期間ごとに再評価して いただかないといけない。これは各都道府県の地域医療審議会が行うのだと思いますが、 相当強い権限を持たないと、医師数と派遣先のコントロールがうまくできないと思いま す。 ○矢崎座長 わかりました。本田委員から具体的な課題と、その基になる資料を提示し ていただきましてありがとうございました。この課題についてはここで結論は出ません ので、次の課題を検討している間に、また元に戻って理解を深めていきたいと思います ので、またよろしくお願いします。 ○本田委員 ありがとうございました。 ○矢崎座長 続きまして、資料2の「医師需給に係る医師の勤務状況調査」の結果につ いて、種田先生、よろしくお願いします。 ○種田先生 今回の勤務状況調査の事務局を担当させていただいた、国立保健医療科学 院政策科学部の種田と申します。よろしくお願いします。今回の調査にあたり、委員の 先生方に大変ご協力いただいたことを心より感謝申し上げます。ありがとうございまし た。早速ですが、資料の説明をさせていただきたいと思います。  お手元の資料の1頁から説明します。回答数ですが、医師数約6,000人の方に回答い ただき、約175施設から参加いただきました。回収率の平均が約70%です。属性です が、男性医師が5,000名弱、女性医師が1,000名です。それぞれ平均年齢が男性42歳、 女性が35歳です。診療科についてですが、内科が3割、外科が約3割、産婦人科が4 %、小児科が5%、精神科が5%、麻酔科が6%、病理が1%、放射線科が4%、その 他が11%となっています。  常勤・非常勤についての割合ですが、常勤の方が4,000名余で、約75%の方からご回 答をいただいています。調査を行った病院以外での勤務時間について、1週間当たりの 平均的な時間を聞いたところ、常勤の方々が約6.3時間、非常勤の方が約20時間とい う回答でした。役職についてですが、初期臨床研修医の方が6.3%、管理職(医長以上) の方が約40%、管理職以外のスタッフ医師の方が約37%、研究員という方が2.3%、大 学院生が4.4%、その他が9.9%という割合になっています。  2頁ですが、家庭環境についても伺いました。独身の方が約4分の1です。配偶者が ある方が約6割、要介護の家族がある方が2%、中学生以下のお子さんがいらっしゃる 方が36%、夫婦共働きという方が約4分の1いて、そのうちフルタイムで働いている方 が約68%という具合でした。  調査を行った病院で、3年以上勤務している方が約半数で3,000人います。その方た ちに3年前と比較して勤務負担がどうなっているか。変わらないのか、減っているのか、 増えているのかという形で聞いたところ、「変わらない」が約4分の1、「減っている」 が5%、「増えている」がかなり多くて約7割でした。「増えている」と「減ってる」 と答えた方たちに理由について聞いたところ、「外来患者数の増加(または減少)」を 挙げている方が約半数です。「外来患者1人に費やす時間」が増えているという回答が 約3割です。「入院患者数の増加(または減少)」という回答が3割、「入院患者1人 に費やす時間」も増えているという回答が約3割、「教育・指導」にかかる時間が増え ているという回答が約半数で50%余りありました。「病院内の診療外業務」が増えてい るという回答が6割、「その他」が25%という割合です。  3頁ですが、1週間当たりの勤務時間を集計しました。これは調査票の中で実際に仕 事を始める始業時間と終業時間を聞いていますので、それから算出した1週間当たりの 勤務時間です。常勤の方のみの集計を紹介しています。全体で常勤の方が3,000名余り いて、平均が66.4時間、最大は152時間で、その分布図はここに示したとおりで、ほ ぼ正規分布になっているということで、特に大きな偏りはないように思います。性別で 見ていくと、男性が平均で約67時間、女性が63.6時間ということで、4時間ほど女性 の方が少ない形になっています。それぞれの分布についてはお手元の資料のとおりです。  4頁ですが「勤務時間の内訳」についてもお聞きしました。月曜日から金曜日まで毎 日、外来診療に使っている時間、入院診療に使っている時間、自己研修、教育、研究、 休憩、その他とあります。その他というのは、医局でのカンファレンス、院内での会議 等に参加する時間を例として挙げています。  内訳を見ると、平日に関しては、外来診療にかけている時間が大体3時間前後です。 入院診療にかけている時間が4時間前後ということで、診療そのものに関しては平日、 大体8時間以内の割合という報告でした。それ以外に自己研修が約1時間弱、教育が平 均で大体30分です。研究に関しても平均して約30分、休憩が1時間弱、その他に関し て会議等が1時間ちょっとあるということです。週末に関しては、土曜日が外来診療は 1時間、入院診療は1.7時間です。日曜日に関しては外来診療が0.4時間、入院診療に 関しては1時間程度かけているというのが平均です。  毎日診察している患者の数についても聞いています。常勤の先生方のみの回答ですが、 外来で診察している患者数は平日で大体18名前後。受持の入院している患者について は毎日大体11名前後いるということですが、その中で実際に診察している患者が12名 ということで、受持患者数より1名ほど多いのですが、これに関しては入院している他 の受持でない患者についても、コンサルテーション等で診察しているためです。1日に 退院する患者が約0.5人ということですから、2日に一遍、患者が1人退院しているよ うな状況です。  いちばん最後の質問で、On-callの有無について聞きました。1週間を通して、およそ 3割の方がOn-callを担当しているという回答です。  以上の結果から、さらに少し詳しい分析をしたのが5頁からです。分析1は勤務時間 と回収率についての分布図です。この点1つ1つが回答いただいた方々の勤務時間と回 収率の分布を表わしていますが、横軸が回収率、縦軸が1週間当たりの勤務時間です。 例えば横軸の回収率で100%のところを見ると、100%の回収率の病院から回答いただ いた方々の1週間当たりの勤務時間は、少ない方でゼロに近いところから数時間、多い 方で120〜130時間前後という分布です。同様に回収率40%のところを見ると、回答い ただいた方々の1週間当たりの勤務時間は、少ない方はゼロに近いところから、多い方 は150時間ということです。  この分布に関して、回帰線を統計的に引いたのが中ほどで、大体60〜70時間の間に 引かれている薄い曲線になっています。この曲線が回収率と勤務時間当たりの関係を示 していると考えていただければいいのですが、これを見ると、回収率にかかわらず勤務 時間がほぼ60時間〜70時間の間ということで、回収率の差によって勤務時間の割合の バイアスはかかっていないと考えています。したがって今回の勤務時間に関しては、例 えば非常に回収率の多い病院から、勤務時間の非常に多い方だけに回答いただいている という結果ではなく、比較的平均的にバイアスのない形で回答いただいた結果だと考え ています。  6頁の分析2ですが、1週間当たりの平均勤務時間を男性と女性に分け、さらに年齢 区分別に分類した表です。例えば男性で30歳未満の方は平均で77時間働いています。 頻度というのは、この30歳未満の男性の方が214名いるということです。同様に他の 数字に関してもご覧いただければと思います。おおよそ年齢が上がるに従って勤務時間 が徐々に減っているということです。女性に関しても同様です。  7頁の分析3ですが、これは病院における1週間当たりの勤務内容別に、具体的には 外来診療にかけている時間と、入院している在院の患者にかけている時間と、それぞれ の患者数についての分布を表わした表です。例えば男性で年齢30歳未満の方々は、外 来診療に1週間当たり平均して13時間かけている。その中で診ている患者が1週間当 たり60名余です。入院に関しては1週間に37時間かけていて、その中で診ている患者 が約70人ぐらいという状況です。  8頁の分析4ですが、最後に非常勤の女性医師の勤務時間について少し詳しく分析し ました。卒業される女性医師を医師1人としてのマンパワーとして、これから将来を推 計するに当たって計算していいかどうか、ひとつの手掛りになるのではないかというこ とで、このような分析をしています。回答率70%以上の病院を対象として、バイアスが ないことは分かっているのですが、厳密にさらにバイアスのかからないような形で、回 答率のよかった病院からのデータのみを分析したところ、女性医師の中で非常勤で勤務 している方が約35%いました。その非常勤の女性医師の勤務時間が28.7時間でした。  このような結果から、中ほどの*に書いてありますように、病院で働く女性医師の約 35%が非常勤の方々で、その勤務時間は1週間当たり約29時間です。これは常勤の男 性医師の約42%の勤務時間に相当します。同様に男性の非常勤の医師の方も結構いて、 計算すると、男性医師の約28%が非常勤だったわけですが、この方々たちは常勤の医師 の34.5%の勤務時間に相当する時間を病院で働いているということです。  下に参考データとして示したのは、回答率を考慮せずすべてのデータを使った結果で すが、いま紹介した結果とあまり大きくは変わらないということです。以上です。 ○矢崎座長 ありがとうございました。水田委員の言われるとおり、男性の医師も女性 の医師もフルタイムでは勤務時間は全く変わらないというデータです。何か質問はあり ますか。 ○小山田委員 大変貴重なデータで、驚いたのは平均で週60時間以上だということで す。それはそれでわかるのですが、この地域偏在、領域別偏在ということになるとわか らないと思うのです。ただ、これは都道府県別にやるとまた同じようなデータが出るの で、都道府県であっても私どもが問題にしている地域条件の悪い所は、今回の調査でわ からないでしょうか。もう少し分析できないですか。例えば1つの県でよろしいのです が、その1つの県でも県庁所在地と、そうでない所でどうなのでしょうか。 ○種田先生 調査に参加いただいた各病院は全国から参加いただいていますので、1つ の県になるとかなり数が小さくなる可能性はありますが、少し県別なりの形で数字を示 すことは可能ではあると思います。どれだけ参考になるかは疑問なところがありますけ れども。 ○土屋委員 伺いたいのですが、当直業務の時間もこの中に入っているわけですか。 ○種田先生 今回は、「当直していますか」という質問は入っていなくて、実際に勤務 をしたかどうかについて絞って回答していただいています。 ○土屋委員 と申しますと、この時間の中に当直業務も入っているのですね。 ○種田先生 当直業務も入っています。 ○土屋委員 これは1週当たりと言っても、週休2日制の所とそうでない所とあります ので、同じ1週間と言ってもちょっと違うと思います。それについてはどうですか。 ○種田先生 病院によって、確かに土曜日も午前中働いている所はまだかなり多いので はないかと思いますが、今回の結果に関しては、それはすべて平均した形になっていま す。ただし、調査の期間に関しては、少なくとも祭日が入っていない1週間で参加いた だいていますから、11月から12月にかけての調査なので、多少年末の忙しい時期にか かりつつある時期ではあったと思いますが、皆様の平日の業務を比較的反映しているの ではないかと考えています。 ○矢崎座長 そのほか、いかがですか。大変なお手間を各病院におかけしてご協力いた だき、回答も予想した以上にいただいたということで、大変感謝申し上げたいと思いま す。 ○種田先生 ありがとうございます。 ○矢崎座長 この1枚紙は宮本さんですね。 ○宮本補佐 机上配布させていただいています。これは総務省統計局労働力調査の一部 を抜粋したものです。労働力に関する調査は二通りあって、事業所を通じて調査するも のと、お配りしている労働者個人を通じて調査するものとあります。この調査結果を見 ると、これは週35時間以上ですからフルタイムの方の勤務時間分布なのですが、週60 時間以上という方も、いちばん下の全産業の中で見ると16%ほどいます。産業別で見て いくと、飲食店、宿泊業、運輸業といったところについては3割弱の方が60時間以上 働いています。産業によってはかなり長時間労働という傾向があるのかなということで、 参考までに配布したものです。 ○吉村委員 7頁ですが、非常に高齢の男の方が100名とか、女性の方も外来が600名 ということですが、これは何か病院の特性が違うのですか。 ○種田先生 詳しいところまでは今回は見ていませんが、また次回、詳しく調べてみた いと思います。 ○吉村委員 週に600名というと、ものすごいです。これは回答している方が1名だけ です。だからスーパーマンがいるのです。 ○矢崎座長 そのほか、いかがですか。 ○水田委員 大学別とか、病院の種類によって分けていないのですか。分けないほうが いいということ。 ○種田先生 今回のお示ししたデータに関しては分けていません。機能や規模別に分け て分析することも考えていますが、今日お示ししたデータはすべて含んだ形です。ただ、 皆様の病院にお願いするときには、日本のさまざまな病院にできるだけ均等に参加いた だけるような形で、我々のほうも努力して皆様にお願いして参加していただいた状況で すので、特別規模の大きい病院だけに参加いただいたり、特に忙しそうな急性期の病院 だけに伺ったということではありません。 ○土屋委員 中間報告的に、いま私は伺ったのですが、そうすると、さらにいまお尋ね したようなことについても、分析した結果をお示しいただけるわけですか。 ○種田先生 はい、検討したいと思います。 ○土屋委員 例えば、同じ病院と言ってもいろいろですので、あるいは地域的な問題も あるでしょうし、できるだけそういうものは次の段階としては、みんな知りたいと思い ます。大変でしょうけれど、是非お願いします。これに診療所も加わってくるというこ とですので、併せてお願いしておきたいと思います。 ○種田先生 はい。 ○矢崎座長 2頁で、いま病院でいちばん問題になっているのは、勤務負担が増加して いるということが大きなポイントです。意外に思ったのは、例えば入院患者1人に費や す時間が高度医療で大変になったろうと私は予想していたのですが、教育・指導、ある いは病院内の診療外業務が非常に大きなウエイトを占めています。これは臨床研修の必 修化でそうなったのか、そしてまた医療安全ということで、病院内の意識改革、安全教 育、安全意識の向上と。これを見ると、そういうことで忙しくなったと理解してよろし いのですかね。 ○種田先生 複数回答をしていただいておりますので、そういったことも含まれている というようにお考えいただければ、皆様が感じていらっしゃるということです。 ○矢崎座長 メインがどこかという質問ではないわけですね。 ○種田先生 はい。失礼いたしました。複数回答です。 ○矢崎座長 よろしいでしょうか。あとで資料を出されたのから見ると、医師が特別忙 しい職業、ほかの業種もそういう人たちがいるということですね。 ○宮本補佐 補足しますと、それぞれの平均時間があり、大雑把に言うと各産業50時 間前後ぐらいになっておりますので、そういうものと単純に比較していいかどうかとい うのはちょっとよくわからない点がありますが、やはり平均時間としてはちょっと多い のかということです。 ○矢崎座長 医師の場合、確かに週60時間以上というのが平均ですからね。これを見 ると、パーセンテージからすると医師のほうが多いかもしれない。その議論はまたあと で詳しくするということで、一応、勤務状況の調査を出してご説明いただき、種田先生、 どうもありがとうございました。いま委員からご要望のさらなるサブ解析は、母集団が 少なくなると信頼性がどんどん落ちていきますが、もし可能であれば出していただけれ ば大変ありがたいと思います。よろしくお願いします。  資料3の長谷川委員からの需給モデルの提案ですが、わかりやすいようにポイントを 絞ってご説明していただけるとありがたいです。よろしくお願いします。                (パワーポイント開始) ○長谷川委員 去年御発注ということで、いちばん最後の会議でも素案をご紹介してお りましたが、もう一度それの復習から始めて、前半部分、実は供給のほうの推計はしま したので、結果も併せてご披露いたします。モデルの前提として、2つのレベルがある のではないか。つまり、国レベルの意思決定と個人レベルの意思決定。これまで診療科 や地域の偏在といったとき大議論がありましたが、それは実は個人個人の意思の意思決 定の上に積み上げられて現れてくる表現ですので、これまでいろいろご議論があって、 基本的な政策も決定されておりますから、むしろ今回は国全体のレベルで議論するとい うように考えております。  例えば具体的には、国レベルの場合、医師の数を増やすのは実は2つしかなくて、医 学部定員を増やすのは時間がかかりますが、もう1つは外国人の医師を連れてくる。生 産性の向上については、院内の生産性を向上する、あるいは外来を診療所に移行してい く、あるいは他職種の方にさまざまな業務を移行していくといった方法があるのかと。 需要のほうは人口のこと、あるいは技術革新、アクセスといったことを勘案しながら考 えるのかと思っております。  個人選択も実はモデルがあって、これはもう既にこの検討委員会で何度も議論があり ましたが、個人のキャリアパスのさまざまなステップの所で、それぞれ自分に応じてや っていくのかと思っておりますので、今回はこれは全く扱いません。  国際的な研究のモデルを見ると、有名なのはGEMNAC、Cooperモデルです。両方と もアメリカのモデルですが、GEMNACは国のCOGMという委員会、正確には国ではな くて国がお金を出している審議会が提案したモデルで、診療科別に想定数を積み上げて 計算したのですが、外れておりました。大変評判が悪いモデルであります。それに対し てCooperモデルは、最近ウィスコンシン大学の学長をされたCooperさんという方が、 そういうニーズをいくら積み上げても、実際には必要な医師は出てこないのだと。要す るに国民がどのぐらい医者を雇えるのかという経済的なモデルを考えるべきだというご 提案をされて、いまアメリカでは非常に流行っているのです。もう1つ、WHOでも、 これは主に発展途上国を中心に使われておりますが、需要と供給の両面から資源を考え るという方法です。  今回、私どもは、Cooperさんのご議論を考えつつ、GEMNACモデルではなくて、W HOモデルに近いもの。つまり、需要と供給をそれぞれ算出して、そのバランスを見る、 というようにしました。これは前回のモデルで、2020年ごろに需要を供給が上回るとい う推計です。  まず供給モデルですが、前回は生命表に基づいて、かつ就業率を勘案している。今回 は3師調査に基づく卒後の就業率を見ております。幸いにして1年ごとのコホートがわ かりますので、かなり細かい分析ができます。前回は5歳階級で、しかも年齢階級でや っているというところで、あまり細かいことは分析できなかった。大変重要なことです が、前回は2010年から70歳の定年制を導入する、70歳以上の人は働かないという前 提だったのです。今回は定年は入れておりませんが、いくつかのシナリオパターンとし て、70あるいは75歳というのを導入可能です。  最後に供給の重みなのですが、前回は女性の労働だけを議論して、0.9や0.8などと いう議論があったのですが、今回は性年齢全部に、幸いタイムスタディをやりましたか ら、あれを使いながら重み付けをしようと。残念ながら、診療所がまだできておりませ んので、今回は重み付けはできませんでした。需要と需給のバランスについてはあとで 申し上げます。  これは前回の就業率で、5歳階級で大雑把に示しておりますが、今回は人数×時間、 タイムスタディで出した時間、患者数も入院と外来を足し合わせたもので、患者の重み 付けをしよう。やはり高齢者のほうが手間がかかる。実は患者数が単に増えるというだ けでなくて、手術件数、あるいは高齢化が進んでおります。そして、一応、提案として は年齢階級別の医療費で重み付けをしたらどうかと思っております。  供給シュミレーションをやってみました。前回は年齢階級ですから、今回は免許登録 後のコホートを想定して、研修をして、大半の方は病院に行かれて、病院から診療所の ほうに移行する。そして、一時、休業したり、他分野に出られたりしてまた帰ってきて、 死亡という永久に出られることもあるというモデルです。やりますと、こうなりました。 左側は男性、右側が女性です。1998年から2004年までの間、6年間ですが、4点あり ます。ほとんど就業割合が変わらないと。これより前から、傾向としては高齢者の医師 の働く方が増えているということなのですが、この4点についてはほとんど就業の割合 は変わりませんでした。  したがって、平均をするとこういう形になります。女性は家庭に入られたりする方が 多いということなのですが、逆にまた高齢者が働いている方が多いというのは、寿命が 長いと考えることができると思います。ちなみに、免許取得時、医師登録時の年齢は、 男性が平均で26歳、女性が平均で25歳でした。男性のほうが浪人や留年などが多いと いうことなのでしょうか。  全医師数を見ると、次のようなシュミレーションになります。総医師数はこのような 感じで、2030年ごろまで順調に増加をし、2030年以降、横ばいになる。このブルーが 井形委員会の推計です。井形委員会は2010年から70歳で定年を導入するということで す。しかし、先ほど申し上げましたように、近年では70歳を超しても、80歳を超して も実はかなりの方が働いておられるということがありました。  2005年に70歳の定年を導入するというシュミレーションで見ると、非常に井形委員 会のモデルに似ております。ちょうど5年間ずらすとあれに重なると思うのですが。 ○矢崎座長 先生、下の年というのが、ちょっと違うのですけれども。 ○長谷川委員 すみません。このごろパワーポの調子が悪いのです。 ○矢崎座長 皆さんに配っている資料でよろしいですね。 ○長谷川委員 はい、配っている資料では桁は変わりません。すみません。いくつかの 資料がこのように。 ○矢崎座長 結構です。手元の資料で見ます。 ○長谷川委員 30数万人です。3万2,000人ではなくて32万人です。70歳定年という ことで、2005年から導入しておりますのでこうなるので、ほぼ井形委員会の推計と同じ ということになります。ですから、ちょっと違うようなシュミレーションをやったので すが、結果はあまり変わらないということです。ただ、70歳定年というのは大きな違い になります。  続いて、全人口当たりの医師数を見たのですが、これは全人口を全医師数で割ってお りますから、何人の人口を1人の医者が診るかということです。全人口に関してはブル ーの線で、このように下りてまいります。それに対してピンクの線は、25歳のコホート 人口を各年の医師登録数で割り返す。だから、同じバースコホート、出生コホートの人 間の何分の1、もしくは逆に言うと何人の人間を診るかということですが、2015年以降 は150前後。最後、2050年ごろには130、120ぐらいの差があるということです。  女性医師数に関してシュミレーションしました。大変興味深いデータで、1990年代の 後半まで、順調にというか、かなり急激に割合が伸びていたのですが、過去10年間ぐ らい横ばいになって、過去数年間は下がっております。入試選考において、何らかの人 為的なことが加わった可能性があるのかというように、どういう人為でもってかよく分 からないのですが、かなり見事に下がっております。シュミレーションとしては、現在、 正確に33%ですので、33%が続行した場合というものと、2050年に50%までが女子医 学生になるという想定と、両方をやってみるとこんな感じです。30%そのままですと、 あまり増えません。しかし、2050年までいくとなるとかなり増えますが、諸外国と比べ てそれほど割合が多くないのかという印象です。  年齢別推計をするとこうなって、これから20年間ぐらい、2025年ぐらいまでの間に 増加するのは、ほとんどが高齢者ということになってまいります。端的には55歳、あ るいは60歳以上の医師で、30年ごろ以降はもう人口割合が非常に安定して、高齢者の 割合も多くなるということです。もう少し詳しく見るために、こういうのを見てみまし た。これは免許取得後の1歳階級で、何人医者をやっているかということをシュミレー ションできますのでやってみましたら、なかなか見事です。2025年には若人では女性が 多く、高齢者では男性が多い。そして、全体として高齢者が増えると、こういう図にな ります。少しわかりにくいのですが、おわかりでしょうか。毎年、毎年の免許取得後の 部分の医師数をシュミレーションしたものです。これが2005年、現在と言ってもいい かもしれない。これが2025年で、女性の2025年の女性はこうなって、現在の女性はこ うなっております。したがって、若人では女性がこのように増えて、高齢者では男性が 増えるという構造になっております。  病院診療所別ですが、これもまた病院と診療所別の就業率の割合は、この6年間あま り変わっておりません。ただ、卒後13年以降の病院から診療所への移行、移管につい てのスピードが少し早まっており、皆さん方のご指摘の開業医志向はあるのかと思いま す。しかし、統計的にそれが大きな項に出てくる話ではありませんので、一応、1998 年から2004年の6年間の平均の就業割合を掛けてシュミレーションしました。  そうすると、何と病院はほとんど増えない。増えるのは診療所ばかりだと。理由は、 これを見るとわかりますように、高齢になればなるほど、病院から診療所に開業されま すから、高齢者が増えると、どうしても診療所の人数が増えるということになります。 もちろん、病院から診療所への移行を止める政策を打つ場合には、当然この割合は変わ ってくるということです。  最後に医学部定員増の場合どうなるかということですが、かなりショッキングです。 10%、20%というのはそう少ない数ではなくて、約750名、10%で740名、20%にな ると1,500名の定員増ですから、かなりの増です。そうしても2030年ごろまでは、あ まり有意義な増加を見ない。例えば10%では、1万人増えるか、増えないか。20%ぐら いで、やっと2万人。逆に30年以降コンスタントに増えて、ずっと増え続けるという 構造になっております。  そこで、20%、上のシュミレーションを10年間だけやってみると、当然かもしれま せんが、1万人ちょっとしか増えません。それも2020年か2025年ぐらいに、やっと意 味のある数字になってくるという形になっております。極論を言えば、40%ぐらい、あ るいは50%増やして5年間で止めるなど、そのぐらいドラスティックなことをして、増 やしたら止めないと、ずっと増え続けるということです。ただ、そうなると社会不安を 呼ぶ。5年間だけ医学部定員が1.5倍になるというのは、ちょっと想像がつきませんが、 そうしないと増えないという感じです。以上が供給でした。  需要ですが、需要については、前回モデルでは、入院は在院、横断的な入院患者数を 見ておりますが、今回は退院でやろうと思っております。それから、前回は入院外来は 重みを付けずに、そのまま年齢階級は全く一緒で、入院は在院患者数の数だけをシュミ レーションしております。人口に伴う数値の増加です。今回は退院した上に年齢階級別 に重みを付けております。これは何を付けるか難しいのですが、私は一応、医療費か何 かでやるとどうかと思ってやっております。  前回は老人保健施設と、かなりきめの細かい在宅の医師などを積み上げていろいろ議 論したのですが、誤差の範囲内でしたので、今回は推計しておりません。  最後に需給です。供給モデルを作って、需要モデルを作って、需給を比較するという ことですが、前回は単純に比較しています。5%ぐらいはさまざまなスキルミックス等 で緩衝可能ということですので、緩衝帯を設定して判断したほうがいいのではないかと 思っているのと、例えば女子医学生が増える、増えない、入学定員が何人増える、増え ない、定年制を導入する、導入しないなど、組合せは多数出てまいりますが、いくつか のシナリオを考えて評価したほうがいいのではないかと思っております。ただ、先ほど 申し上げたように、診療所はタイムスタディが未了ですので、今回は分析不可能という ことになっております。以上です。                (パワーポイント終了) ○矢崎座長 どうもありがとうございました。事務局で、参考資料2を一緒に説明して いただいたほうが理解が深まるのではないかと思いますので、お願いします。 ○宮本補佐 参考資料2は、前回も紹介した「医師・歯科医師・薬剤師調査」を4回分 再構成したものです。前回説明したものがちょっと分かりにくいというお叱りをいただ き、もう一度お示しすることにしたものです。2枚目のグラフは、平成10年から平成 16年の4回を、年齢階級ごとにそれぞれ棒グラフにしたものです。この結果は当然、1 枚目と同じなのですが、厳密なシュミレーションを行わなくても、これを見るだけで将 来の医師の供給が大体わかるというものになっております。というのは、30〜39歳は 10年後には当然、次のその右側の40〜49歳に入りますし、40〜49歳の方は50〜59歳 と、このように1つずつずれてまいります。50〜59歳の方が60〜69歳に移る際には、 当然、退職分も含まれますので、少し減るわけです。ただ、かなりの方は働いていらっ しゃるということもありますので、イメージとしてはやはりそこを移してもいいのかと いうところです。  30〜39歳、いちばん薄い色のブルーのところは、40〜49歳よりも少し低い。ここは 大学の入学定数を削減したことにより、少し頭が下がっているわけですが、この部分が 40〜49歳に移ることにより、少し人数が減るだろうということです。さらにその上の世 代については、40〜49歳のブルーの方が50〜59歳に移りますので、大体、現在の差の 分だけ増えるだろうといった形になります。同様に、50〜59歳の人が60〜69歳に移る と、そのブルーの差の分よりは小さくなると思われますが、やはりその分増えるという ことです。これはいまご紹介いただきましたように、今後10年間で増えるドクターの 年齢の分布というのは、増える部分は50〜59歳、60〜69歳といったところが中心にな って増加する部分だということが予想されるところです。それが1つ目の紹介です。  2つ目は、次の3頁と1頁のデータを合わせて見ていただきたいのですが、一般の病 院と医育機関の附属病院と診療所、医療機関としてはこれだけ、どこかに所属して働く ということですが、現在までのところ平成10年〜平成16年、下から上に見ると、それ ぞれの施設で順調に増加しているように見えるというところです。ただ、先ほど説明い ただいたとおり、年齢が上がるに従って、だんだんと診療所に移行していくという傾向 があり、1頁の表3−1〜表3−5まで、10歳刻みの年齢階級の中で、年齢が上がるに 従って、だんだんと診療所に移行していく。ただ、移行していく割合はここ8年間、6 年間の中ではほとんど変わらなくて、例えば50〜59歳の方の中で、診療所に勤務され る方は半分という割合はほとんど変わっていないといったところです。  その中で特徴的なものを1つ抜いているのですが、30〜39歳では、ちょっといまの話 とは違った特徴のある動向が出ております。下から上に見ると、定員削減の効果がだん だんとこの年代に及んでいますので、全体の数が少しずつ減ってきています。その数は 表3−1に書いてあるとおり、総数は平成16年は2万5,960人でしたが、平成10年で は2万6,874人と、この分減っているということです。その中身ですが、診療所の勤務 の方はほとんど変わらないわけですが、医育機関附属病院に勤務する方が少しずつ増え て、平成16年では2万377名、平成10年当時は1万8,586名で、2,000名弱増えてい るといった状況です。そうすると、全体が減っているにもかかわらず、医育機関で人が 増えていますので、これは当然、差引きですが、一般の病院は平成10年が4万598名 であったところ、平成16年は3万6,602名と4,000余減っているということになりま す。これは単純な差引きです。  1頁に戻って、このような動向です。それから、29歳以下についてはご案内のとおり、 医師臨床研修制度の導入により、大学のほうから市中病院に出たという傾向があります ので、市中病院が出ている。そのような動向を合わせて見ると、少なくとも若い部分に ついては、今後の動向の中でパイとしては変わらない。むしろ、定数削減している人が 少し減った中で、大学側の割合が少し増えてここまできているということで、病院側全 体からして見ると、若い働き盛りの人がほしいといいますか、そういう要望があっても、 そこのプールは今後も変わらない。または大学側の動向によって少し減るかもしれない。 そういうのが今後の供給側の動向としては読み取れるというところです。これは、いま 長谷川委員から説明いただいたこととほぼ同じといいますか、オーバーラップしている と思うのですが、少なくともここまでのデータを見る限りにおいてはこういった内容で あるということです。以上です。 ○矢崎座長 この図ですが、50代に比べて40代が2倍近く多いというのは、新設医科 大学を卒業して、定員がどっと増えたためになるのですね。 ○宮本補佐 そうです。 ○矢崎座長 それがいまのままだと、わずかに定員削減の影響が出ているけれども、こ れが順々に右側に行くから、医師の総数としてはどんどん増えていくということですね。 ○宮本補佐 はい。 ○矢崎座長 どうでしょうか。長谷川委員のデータと、いまの算出調査の結果と照らし 合わせて、何かご意見はありますか。 ○吉新委員 前回の井形委員会では、最後は保健所が1,000人とへき地が2,000人など と、積み上げて決まったのです。但し書には、調整が必要だとか、いろいろ出たと思い ます。やはり総数の部分とmaldistributionはどう解決するかという部分は不可分だと思 うのです。そういうまとめ方は、実際に可能なのでしょうか。先ほど本田委員が言った ような機構も、検討が必要であるというのも、総数の議論とほとんど同じぐらいの重要 な重みがある。 ○長谷川委員 そうですね。いちばん簡単な方法は、違うモデルで推定してみるしかな いのではないでしょうか。そして、個人が意思決定するわけですので、個人の意思決定 に影響する誘因をモデル図でお互いに調べる。今回は日本全体としてどのぐらいの医師 が必要かですので、例えば繰り返して恐縮ですが、医学部定員を増やす、あるいは医師 を導入する、などという意思決定のために必要なモデルを考えております。ですから、 やはり診療所や病院全体などで、どのぐらいの人数が必要かと。 ○吉新委員 そうすると、distributionを変えるような仕組みについては全く別というこ とで。 ○長谷川委員 極めて重要で、逆に申し上げると、ここで意思決定をして医師数を増や しても、しばらくの経験では率の改善にならないというのが結論ですから、全く別のモ デルで政策決定する必要があるのではないかと。 ○吉新委員 はい、わかりました。ありがとうございます。 ○矢崎座長 先ほどのレベル1、レベル2、国レベルと個人レベルと、これを何か不可 分だけれど重要だと。 ○吉新委員 前回はどちらかというと、積上げばかりになってしまって、推計の70歳 定年制を導入するかどうかということがとても重要だったのですが、全体が全く変わっ てしまっていますので。でも、やはりdistributionをどう調節するかということも、毎回 これも議論になっていたので、そこをどう考えていくのかということは重要なポイント かと思います。 ○矢崎座長 ですから、まとめる場合には国レベル、日本全体としてどうかというのと、 いま提示された個人レベルでどうするかという。 ○吉新委員 意思決定の部分ですね。どのように影響するのかという。 ○矢崎座長 個人レベルは、なかなか難しいですね。 ○吉新委員 難しいです。ですけれども、何か委員会として出すべきではないかと。 ○長谷川委員 多くの国々で、個人ないしは診療科別のニーズを積み上げてやった例が ありますが、全部ことごとく失敗しています。 ○矢崎座長 ニーズから積み上げるというのは、なかなか難しいですね。 ○長谷川委員 何度も同じことを言うのですが、やはり意思決定が個人にあるので、い くらニーズを積み上げてきても、そのようにいかないのです。 ○矢崎座長 いかがでしょうか。どちらが鶏で卵かわかりませんが、どちらかある程度 モデルを決定しないと、次もなかなか回答が出ない感じですね。 ○長谷川委員 私の感想で言うと、現在、特に病院中心に医師不足だと思うのですが、 それを解決するのに医学部の定員を増やしても、2030年ごろにならないと影響がないと いうことなので、そのほかの対策を考えなければいけないというのが私の印象です。 ○矢崎座長 また、一旦増えたときに、削減が難しいですね。ブレーキが効かないとい うところ。いろいろな立場の委員の方がおられると思いますが。 ○川崎委員 いまから約20年前に最初の日本のモデル、佐々木モデル、次で前川モデ ルや井形モデルがありましたね。それで、定員120名の学校を全部100にしなさいとい うことで、厚労省からの指導で文科省が、私学の場合は許認可の条件にして、国立の場 合は一斉に120をなしにして100にしました。ちょっとブレーキをかけるのが早すぎた のではないですか。結局、私は早すぎたのだと思います。当時、厚労省の医事課長さん に、女医も増えてきているし、当時私はイギリスが女医が増えて、GPが不足して困っ ている状態を見てきたものですから、定数のことはもっと考えなければいけないのでは ないか、ということを申し上げたことがあるのです。しかし女医の話はタブーだから、 ハラスメントだから、絶対してくれるなということで、その課長も次の課長もその話に 乗られませんでした。  5年前にイギリスに行ってみましたら、イギリスは大変なことになっている。イギリ スはサッチャー政権で医療費を抑制する、学校も医療も国営ですから、そういうことが できたのでしょうけれども、結局ブレア政権になって大変だというので、一挙に5割、 医学部の定員を増やしているのです。現場は大変なことですが、まだ卒業生が出ていな いのです。もう過去の委員会の失敗を言ってもしょうがないでしょうけれども、この皺 寄せがこれから5年、10年このまま放っておいて出てきたときに、どうしようもない。 人口が減ってくることを考えてもこの先10年、20年、もちきれないのではないか。  病院では、医師も看護師も疲れ果てております。疲弊して、悪循環で病院から医師も 看護師も去っていくような状態にいま、なっていますから、この際、何か良い方法を考 えないと。この委員会に対して、いろいろな関係の方が期待をしておられると思うので、 このままでいいなどという結論を出すと大変。実は文科省も、いま医学教育の改善と見 直しの委員会があって、そこでも、この委員会の答申を待って検討しようという状態で すので、座長、よろしくお願いいたします。 ○矢崎座長 わかりました。 ○長谷川委員 過去の委員会が間違ったかどうかというのは、大変難しい判断だと。と いうのは、ご指摘のイギリスもアメリカも、やはり減らそうということで、90年代やっ てきたのは間違いないことなのです。ですから、イギリスとアメリカは減らすというよ うになった大きな理由は、外国人の流入。特に英語圏ですので、いろいろな所から入っ てしまうと、国際的に非難を浴びているのが大きいところだと思うのです。したがって、 ひっくり返すと、長期的なことは予測が難しいということで、しかし長期的なことをや らないと、医師需給の予測は難しいと。何度も言いますが、30年後ぐらいに影響が出て まいりますので、30年後ぐらいの社会をいろいろ構想するのはなかなか難しいことで、 諸外国においても、日本においても、90年代の委員会の判断が現在と違っているという ことになるのかと思います。 ○水田委員 女性医師につきましては、入学試験でどうこうと言うよりは、女性医師が 仕事ができる様な環境を整備すればよいわけです。女性医師は子どもがいても仕事もし たい人がほとんどです。しかし、子どもを預かってくれるところが無いために、止めざ るを得ない人が大部分です。全国の大学に院内保育所の整備をサポートするような予算 を考えていただけると良いと思いますが・・ ○小山田委員 他の職種は、300人以上抱えた所はつくらなければならないとなってい るのです。ドクターだけが除外されているのはおかしいです。 ○水田委員 看護師は優先なのです。ドクターはそうではないというのはね、やはりお かしいのではないかと。 ○古橋委員 いまの水田委員のご意見で、いま日本そのものが少子化問題で悩ましいわ けですが、フランス、あるいはヨーロッパのほうで、少子化問題に成功した所というの は、やはり保育体制が非常に充実しているというデータが出ているのです。日本の保育 所整備や子育ての社会化では課題が大きいですね。看護師は比較的、子供を生みながら 勤務を継続している人も多いです。もちろんそうでないのがあったり、あるいは看護管 理者は育児休業の代替の職員がなかなか得られなくて、看護職確保には難儀をしていま すが、それでも全体的には前へ行っています。  やはり女性医師が増えてきているというのは、事実、現象なわけです。専門職になっ た人たちというのは、その仕事をしないことに、ある種の悩みを持ち続けるわけですね。 何か罪悪感すら持っていたりします。ナースもそうです。ですから、やはりもっと保育 環境を整える。特に女性医師の場合、なおそこをもっと大きな対策でやったほうがいい と思います。前回参考人のご発言がありましたが、院内の小さな規模ではなくて、もっ と対策施策として、そこを整えることは大事ではないかと思います。 ○矢崎座長 おそらくこの検討委員会の中の重要な項目に入るのではないかと思いま す。また、その際によろしくお願いします。そのほか、いかがでしょうか。 ○長谷川委員 タイムスタディのほうを見ると、意外と病院で働いている女性の医師は、 男性とあまり変わらず働いておられるということ。 ○矢崎座長 意外とというのではなくて、当然。 ○長谷川委員 時間的には、90%ぐらいの時間でやっておりますね。したがって、一遍 就職すると働かざるを得ないのだろうと。私の感じとしては、女性医師に限らず、医師 全体の労働コンディションをどのようにしていくかということが大きな課題で。先週、 地方の病院に行ったのですが、院長先生が随分工夫しておられて、例えば当直なども6 時から12時に切って、12時以降とシフトにして、夕方に少し年配の方にして、当直の ほうは若人にするなど、組合せをいろいろ考えてやっておられました。そこは非常に医 者の数が少ないのですが、そういった病院経営上のさまざまな工夫が要るのかと感じま した。だから、医師の定員に関しても、あまり近々の影響はない、あるいは外国人の導 入についてもいろいろ問題があるというのだとすれば、いまの病院のシステムをどう効 率よく運営するかという課題が浮かび上がってくると思うのですが、その工夫が必要か と感じました。 ○水田委員 ちゃんと就職というか、仕事をしていたら、確かに同じように働くのです が、いまそれが女性医師が就職できないわけです。そこがいちばん問題なのです。だか ら、みんな辞めているわけですね。働きたいけれども、預ける所がない、誰も見てくれ ないから辞めているというのが現状であって、やはりそこは少し考えないといけないの ではないかと思うのです。 ○長谷川委員 M字カーブのあの部分ですね。 ○水田委員 そうです。 ○長谷川委員 現在、日本の数でいうと数千人です。M字カーブの部分は2,000〜3,000 人です。男性と同じく働かせるとすれば、2,000〜3,000人の労働力は帰ってくる。しか し、医師と結婚している方が多いので、今度は男性の医師のほうがへこんでくる可能性 もある。 ○吉新委員 前回は女医の勤務特性を出して、何となく0.7を掛けたという印象が私の 頭に残っているのです。あれを0.6にすればよかったのにという話も聞いたことがある のですが、結局、女性医師の稼働率を何パーセントで見るかがこの委員会のポイントだ、 みたいなことをいう方もいらっしゃって。そういう言い方をすると、また水田委員に叱 られてしまいますけれども。私の所の病院では、3人の子育て中の女医が保育所に預け ています。その場合はきちんと勤務してもらっているのをわかっていますが、いまはち ょっと当直はお願いできない状況です。そういう意味で、保育所整備が大事ですし、女 性医師は0.7、0.6ではなくて、もうちょっと上に稼働率を上げられると思うのです。そ こもこの委員会で少し提案なさるといいのではないでしょうか。 ○矢崎座長 そうですね。女性医師の課題は、個人というよりは国レベルのモデルに入 るわけですね。 ○吉村委員 いま水田委員から、保育所をつくればいいのではないかというお話があり ましたが、保育所をつくって女医がいても、いまは数の問題ではないのですよ。むしろ 女医が働くようになって、その方が小児科や外科など、きつい所に行ってくれるかとい う問題だと思うのです。ですから、いま医師は毎年8,000人出ておりまして、純増でも 4,000人ずつぐらい新しい医師がどんどん出ていくわけですから、その先生方がいかに そういった小児科なり、救急なり、外科なりに行くか。救急も足りないと思うのですが、 実は全科で足りないのです。というのは、若い人がいなくなったということが大きいと 思います。若い人がいなくなったということは、若い人はだんだん育っていくわけです から、その養成がうまくいかないと、いくらシステムを作っても、基になる専門医とい いますか、しっかりと働ける方々が足りないわけです。  ですから、例えばいま十分充足している科があったとしても、若い人が入ってこない と、やがてはそこも足りなくなってくると思います。数の問題ではなくて、やはりそれ をバランスよく育てるための専門医といいましょうか、その中にいま総合診療医という のが話題になっていますが、総合診療医の専門医を50%にしたらいいのか、20%にした らいいのかという議論は全くないのです。当面、総合診療医を20%ぐらいつくりましょ う。残りの専門医はバランスよく、外科に何パーセント、内科に何パーセント、小児科 に何パーセントというように、それをいかにインセンティブをつけて、そういう医者を 育てていき、なおかつ絶えず下から上に向かって育っていくシステムがないと、折角あ る瞬間的に育ったとしても、それは若い人が入ってこなければ、続いていかないわけで す。若い人が入るから、また次の人がdistributionしていくわけです。何かそのシステム の良い工夫があればいいのではないかと思うのですけれども。 ○矢崎座長 これはまた中間まとめのところに戻ってしまうのですが、いま大学病院を 中心に、若い人がいなくなっているというお話で、先ほどのデータでは若い世代、特に 30前の世代、あるいは30代前半の世代は、多くは医育機関病院に行っている。だから、 大学に人がいなくなったというのは、卒後2年の研修医が、たまたま2年間外に出てい るということで、逆にそのために大学が外の病院から人を吸引したということも、重な っている可能性もあるのではないでしょうかね。だから、端的に大学から若い医師がい なくなったというのは、必修化の2年の半分ぐらい、従来は70%ぐらいいたのが半分ぐ らいになったという。それは大学の先生の実感として、どうなのでしょうか。 ○吉村委員 大学に50人なり70人なり入れば、その中から皆さんいろいろな科にも行 くと思うのですが、それが3人や10人となってしまうと、どうしても幅広く全科には わたらないわけです。若い人が行ってこそ、初めて循環がいくわけです。ですから、い ま大学に一種、引き上げているというお話がありましたが、それは瞬間的には大学はも つかもしれませんが、その下がまた入ってきませんと、そのまま皆さんが疲弊しきって しまう。 ○水田委員 帰ってくるでしょう。 ○矢崎座長 帰ってくるというロジックで必修化。 ○吉村委員 帰っていただければよろしい。ですから、2年以降の指定施設というのは、 大学だけではありませんが、基幹病院と大学と連携したところで、やはり指定していた だくと。もちろん、初期研修はどこでもよろしいと思うのです。総合診療はどういう所 でやりましょう、あるいは外科とか内科は、こういう所でしっかり研修しましょうとい うシステムを作っていただければいいのではないかと思うのです。それが育っていって、 初めて供給がうまくいくのだと思います。 ○小山田委員 感じとしては、私などは特に医師が不足だという声をいっぱい聞いてま すし、実感しています。しかし、これまでいただいたデータから、本当に医師数全体と して足りないのかというデータは、なかなかないのではないかと思うのです。大学の医 局の問題を取り上げても、この前出された産科のデータを見ると、平成18年度に入局 を予定しているのが全国で193名。そうすると、大学病院の産科で、入局者がゼロの病 院が、もういくつも出てくるわけです。それは大変だということになる。  先ほど国レベル、個人レベルということで、国レベルではやってもあまり効果がない ということですが、しかし、いまのような状態を放っておいて、個人レベルだというこ とでやったら、いけないのではないか。どうしても国レベルで最小限、確保しなくては ならないものだけはしっかりと提示をして、それに対してどうするかということを国レ ベルで決めておくことが大事ではないかという考えを持っております。 ○長谷川委員 いまのことで誤解があるようですので、明確にしたいと思います。私は モデルとして、意思決定のモデルが国と個人とが違うと言っているのであって、個人の 意思決定について、国が政策を打つことは絶対に必要です。皆さん方がご議論されてい るように、国として個人の意思決定にいくつかの政策を考えましょう。それは国で何人 の医者を養成するか、あるいはどのように効率化するかという全体の課題と同じぐらい 重要です、ということで確認していくことですので、今日ご提案したのは、モデルが違 うということだけです。その辺、誤解なきようによろしくお願いします。 ○矢崎座長 でも、本田委員の資料によると、数は少ないのですが、個人のレベルの決 定というのは、これが大勢になると、医師の数を増やしても産婦人科に人が行くという のは、いま言われた国の施策として何かやらない限り、この傾向は難しいですね。 ○本田委員 そういう感じで、そのままやはり。 ○矢崎座長 これを放置したままでは、なかなか難しいですよね。 ○本田委員 ただ、働き方を指摘する声が多くあるので、その辺もポイントになるのか と思っていたのですけれども。 ○土屋委員 いままで出てきた話かもしれないのですが、トータルとしてどうか。人口 10万対比で200を超えたと。206.いくつをさらに超えて、211台になったというような、 めでたい、めでたいという話ではないということを、私は冒頭で申し上げたことがあり ます。少なくとも10万単位の医師がどれだけいるかという話は、1なるものが非常に 不正確ですので、まずこれは少なくともこの検討会では、その考え方は全くナンセンス で採らないということが必要です。  もう1つは過日の医師・歯科医師・薬剤師の調査を見ると、医師不足と言われている 診療科も、小児科医や麻酔科医は確実に増えているのです。でも、確実に減っているの は産科の医師なのです。ですから、産婦人科というひとまとめにして、いろいろな統計 を取っていますが、産科の医師は減って、婦人科の医師は増えているのです。というの は、産婦人科と称していた先生たちが、産科だけやめて、いま婦人科だけやり出してし まったものですから、これを分けて考えなければいけないということです。  産科の医師は確実に減ってきています。ということは、入局者も減るのでしょうし、 それをどう確保していくかということは、女性医師なり、あるいは産科・小児科の医師 の就業の環境整備といっても、そもそももうそれを志す若いドクターたちが確実に減っ てきています。そこから考え直さない限り、医師の需給といっても、漠然とトータルの 話ではなくて、診療科の偏在、あるいは地域の偏在、あるいは時間帯における偏在等い ろいろ考えられますが、少なくとも診療科におけるその部分はもう少し掘り下げて、な ぜ産科の医師を志す者が少ないのかと。ますますこれは減っていく傾向にあり、これは いまのままだとこの傾向はちょっと止められないみたいです。  産科の医師は医事紛争的なものが非常に多いので、それを問われるから嫌うのだとか、 確かにそれも1つの原因かもしれませんが、単純にそれだけではないと思うのです。そ こを我々の側も、あるいは医育機関の先生方も、あるいは行政も考えないと、これはち ょっと先が見えてこないのではないかと思います。小児科の医師は、これは確実に増え ています。ただ、病院の小児科の医師としての勤務が大変で、これでは自分の専門性も、 あるいは自分の身体そのものももたないということで、開業してしまおうかということ のようです。ですから、小児科の医師の開業医は、このところ増えているのです。軒を 連ねて開業してしまったという地域があるぐらいです。  病院医師で、特に産科なり小児科の医師が、なぜそれだけのハードな過重労働を強い られるのかということ、それはやはり医師の数だと思うのです。産科の医師が5人以上、 あるいは小児科の医師が10人ぐらいいれば、それが上手にローテーションしていけば いい。ところが、なぜそれができないかというと、やはりそれは制度の問題であり、そ の背景は医療費の問題だと思うのです。それだけのドクターを雇用できるだけの診療報 酬体系になっていない。医療機関としては、院長、その他の管理者の立場の人はみんな 考えているのでしょうけれども、特定の個人医師に負担がかかってしまう。3年も頑張 ると、もうこれ以上頑張れないということで、消えていくというのが実態ですので、そ の辺りのところまで考えを及ぼさないといけないのではないですかね。  だから、単に診療報酬で、小児科の診療報酬を上げなさい、あるいは産科を上げなさ い、麻酔科を上げるということは、過日の政府・与党の大綱にも出ています。わずかで すがそうなるのかもしれませんが、それはその道を志すための何のインセンティブにも ならないですね。院長としてはちょっと収入が増えるのでいいかもしれませんが、産科 なり小児科のドクターだけ特別に厚遇するわけにまいりませんので、そうするとますま す忙しくなる。ですから、そうではなくて、もっと根本的なところをみんなで考えない と、この診療科別の医師不足、医師偏在という問題は、解決できないのではないかと思 います。 ○矢崎座長 ありがとうございました。本当に小児科も診療報酬を上げていっても、そ れが病院にとどまっていただかなくて、かえって開業されるインセンティブになってし まうということで、なかなか診療報酬では解決できない、非常に大きな問題を抱えてい るということで、よくわかりました。もう時間ですので、一応今日の議論はここで留め 置いて、最後に参考資料1について、事務局から説明してください。 ○宮本補佐 参考資料1の紹介だけさせていただきます。これは指導課のほうでまとめ たもので、いわゆる医療監視と言っておりますが、立入検査の結果をまとめたものです。 検査項目がいくつもあるわけですが、その中で医師の適合率、定数が満たされているか どうかということも入っております。3頁と4頁に概要がまとまっており、全体として 見ると、全国では平成16年度83.5%が適合していたということで、平成15年度に比べ て2.2ポイントですが上昇している。  そのほか、地域別や病床区分別で見ても、ごく一部、少し下がっている所もあります が、押し並べて見ると、ほぼ適合率が上昇している傾向はあるということです。非常に 簡単ですが、こういったデータがありますので、紹介させていただきました。 ○矢崎座長 今日は大変いろいろな宿題を出されて、これにどう取り組んでいったらい いか、また委員の方々とご相談しながら、何とかこれをまとめていかないといけません ので、何とぞご協力のほどお願いいたします。今日は熱心にご検討いただき、ありがと うございました。事務局から次回のスケジュールをお願いします。 ○宮本補佐 次回ですが、3月6日(月)の15時からでお願いいたします。場所につ いては、後ほど連絡させていただきます。 ○矢崎座長 それでは、3月6日、何とぞよろしくお願いいたします。どうもありがと うございました。    −了−                                       照会先                      厚生労働省医政局医事課                      課長補佐 井内(2563)                      指導係長 丸尾(2568)                      代表 03−5253−1111