06/02/08 労働に関するCSR推進研究会第4回議事録 第4回労働に関するCSR推進研究会                  日時  平成18年2月8日(水)                      14:00〜                  場所  厚生労働省専用17会議室 ○奥山座長 ただいまから第4回労働に関するCSR推進研究会を開催したいと思います。  ご承知のとおり、前回の第3回研究会では、国内の労働団体として連合様からヒアリン グを実施いたしましたが、本日は、使用者団体としまして日本経団連様からヒアリングを 実施させていただきたいと思っております。事務局より事前に委員と調整いたしまして、 ヒアリング項目事項がわたっていると思いますので、それを踏まえながらお話をしていた だければと思います。では本日ご出席いただきました方について、事務局からご紹介くだ さい。 ○労働政策担当参事官室室長補佐 ご紹介させていただきます。日本経済団体連合会の社 会本部長の田中様でございます。同じく、日本経済団体連合会の労働法制本部長の讃井様 でございます。ちょっと議事次第の肩書が誤っていまして申し訳ございません。 ○奥山座長 どうもありがとうございます。早速ですが、ご説明をいただければと思いま す。一応伺っております時間は40分ほどですが、そこは適宜自由にしていただいて結構で すので、よろしくお願いいたします。 ○田中社会本部長 こういう場にお招きいただきまして、ありがとうございます。今日、 讃井と私田中でまいりましたが、分担をしていまして、私のほうは社会本部と申しますが、 CSRや企業倫理全般、日本経団連としての全般的な取組みを検討する委員会の事務局を 担当しておりますので、私が今回のヒアリング事項ということからいえば、最初の2つ、 3つぐらいのところをカバーし、労働の点については基本的には讃井から発言をさせてい ただくことにいたします。  私から、最初に日本経団連としてのCSRに関する取組みというものを説明するかたが た、このご質問のヒアリング事項に答えられるものについてお答えしたいと思っておりま す。お手元にお配りしたものは「CSR(企業の社会的責任)に関するアンケート調査結 果」と「企業行動憲章及び実行の手引き第4版」と「CSR推進ツール」の3種類です。  まず、産業界を代表して日本経団連がどの程度CSRというものに応えられるかですが、 ご存じのように日本経団連は、個別の企業としては1,350前後と約300の団体で構成され ています。東証の1部、2部の上場企業の中に占める数としても非常に限られています。 私どもの会員1,300のうちのおそらく900ぐらいかと思っていますので、まず大企業対象 といっても限界があります。いわんや中小企業というところから考えると、カバーするの は少し苦しい部分があることをご承知ください。ただし、日本経団連の活動としては産業 界全体のためにという活動目的がありますので、当然その取引先を含めた中小企業とか、 産業界全般という意味での視野というものを強く意識してやっております。若干主体とし ては違っている部分があるのはご承知おきください。  そういう日本経団連から、例えば企業のCSR活動をどういうふうに見ているのか、ま たはどう進んでいるかの点について申し上げます。資料の「CSRに関するアンケート調 査結果」は、私どもの会員企業1,324社に去年春にアンケートをして、572社からの回答 を得たものです。私どもの認識としては、産業界、日本の企業を特にCSRという点で見 ると、この数年非常に取組みが進んだのではないか、また意識が進んだのではないかと思 っています。  その1つの例として見れば、アンケート調査の2頁目の図1に、CSRを意識して活動 している企業は430社、75.2%の比率になっています。これはたぶん東商さん、日商さん 等のお話だと、中小企業はCSRという言葉はあまり知らないというアンケート結果も伺 っています。私どものアンケート結果は大企業中心で、特に日本経団連企業はやはりCS Rというものを知っている方々が多いという結論ではないかと思います。  具体的にどうしているかというと、3頁目のグラフでは、「トップダウンで数年前から取 り組みを進めている」とでております。それを具体的に裏打ちするものとしては、結局ど う社内体制を整備していくかが問題になります。5頁以降をご覧下さい。「CSRを推進す る社内横断的な機関などの設置」が半数の224社、「設けていない」が4分の1、「検討中」 が約2割弱です。このような形で大企業としては、連結会社を含めてかなりの程度カバー しようという体制を取っています。どのような専門部署を設けているのか、専任の担当者 を設けているのかは、それぞれですが、6頁に若干触れています。  「CSRを推進する」にあたり、どのようなアウトプットをしているのかについて見る と、7頁の、報告書を発行しているかどうか、またはアニュアル・レポート等で別の形で 発表できていると考えているか、この辺どう取り組まれているかということで、何らかの 報告書を発行してが55%、発行していないが28%、アニュアル・レポート等でカバーして いるが11%です。アニュアル・レポートとかそういうものではなく、報告書という意図的 に出したものについてだけを調べると、「環境と社会に関する報告と一体として出してい る」が52%で、「環境に関する報告のみ」が44%、「環境と社会を別々に報告している」が 1.3%です。若干日本企業のCSR全般に関わる意識の置きどころの違いかと思っています。 いまの日本の企業がどう認識をし、どういう形で体制整備といいますか、進めているかを 簡単にご紹介しました。結論として言えば、ある程度の規模の企業はCSRを意識した活 動をここ数年非常に強めていると理解できるのではないかというのが、お答えです。  具体的に、日本経団連としてCSRを進めるという意味で、「企業行動憲章」というもの を出しました。これは資料2−2の企業行動憲章実行の手引きですが、元々は企業倫理の から発生したものです。4枚目をめくっていただくと、「序文と企業行動憲章」が出てきま す。これが、日本経団連の企業行動憲章の本体にあたるもので、それ以外のものは、実行 の手引という、1つの参考資料の扱いとなっています。これはコピーですが、本物はブル ーの冊子で、憲章本体が見開きになっていて、残りは参考資料です。  私どもは、先ほど申し上げたように、元々は企業倫理から発生して、不祥事をどのよう に企業経営者として受けとめ、その企業倫理の浸透徹底を図るために会員の申し合わせを 作ろうということで、1991年に作ったのが最初です。1996年、2002年、2004年の改訂と、 形を変えてまいりまして、2004年の改訂のときに、CSRという視点で2002年版を少し 見直して作ったものです。例えば、児童労働、強制労働を含めて人権問題や貧困問題など に言及しています。労働問題では、少子高齢化に伴う多様な働き手の確保など、新しい課 題も生まれているというような指摘をするなど、CSRの観点を盛り込んだ改訂を行いま した。これが基本的に、私ども日本経団連の申し合わせで、これを各会員の方が展開し易 いように、「実行の手引き」を作っています。この手引きは、各条に対して解説と具体的な アクションプラン例ということで、企業行動全般に関わる例示をしています。  2004年版はそういう形でやっているのですが、CSRを全般的に進めるという意味で、 もう少し企業の実例を集めたものができないかという話になり、その後、憲章の改訂をし た後にまた検討を行い、約1年かかって昨年秋に、資料2−3の「CSR推進ツール」と いう形で、こういう実例等を集めました。「実行の手引き」はこの憲章本文の10条、1つ 1つの本文に当たるものを解説し、アクションプランにしていますが、それを問題項目ご と主要要素ごとといいますか、イシューごとに整理し、なおかつステークホルダーごとに どのような課題があるかを整理してみよう、その整理したものを、実例を集めてみようと いう形で作り直してみました。  「CSR推進ツール」の2枚目をめくると、横長の「CSR主要要素のマトリックス」 となっています。左側に、主要要素といいますか、イシューを6つ例示しています。それ でステークホルダーを横軸に取り、それぞれのマスに「企業行動憲章の実行の手引き」の いろいろな項目を当てはめてみました。若干補足しているものもありますが、基本的には、 実行の手引きで出しているものを入れ込んでいます。これに、それぞれのマスに沿って各 社の実例を集めようということで集めたものが、次頁以降のテーブルになっています。社 名が出ている所と、出てない所がありますが、基本的に社名が出てない箇所は、大企業で あれば、一般的にやっているはずだというようなものです。実践実例で社名が出ているも のは、他社、産業界の中から見ても、なかなか特徴がある取組みではないかと、皆さんが 思っている所でそのまま社名を出しています。  日本経団連としては、この「企業行動憲章」というのは企業行動全般に係わる話で、元々 はそれぞれのパートごとに取り出し、それがCSRというのではなくて、企業経営全般に 係わる要素としてそれぞれの企業が選択して、企業戦略の中で取り上げていくものだろう と考えています。そういう形で企業行動憲章及び実行の手引きを作り、CSR推進ツール を作っているということです。それをまず申し上げて、次は讃井に任せます。 ○讃井労働法制本部長 少し労働分野に焦点を当ててお話をさせていただきます。2年前 の委員会でもヒアリングがございました。そのときに出席をしたときと同じようなことを お話するかもしれませんが、基本的な考え方はそうコロコロ変わるものではございません ので、以前も委員をなさっていた方にはちょっと繰り返しになるかもしれませんが、ご容 赦いただきたいと思います。  いま田中から説明がございましたように、CSR(企業の社会的責任)というのは、企 業が主体的自主性に取り組むものであるということ、それからその企業戦略の中でどの部 分を先行してやっていこうか、どの部分に力を入れていこうかとか、取組み方や表現の仕 方にも当然企業による多様性があり、ステークホルダーとの関係の中で出来上がっていく ものです。したがって、進化していくというか、固定のものではなく、変化していくもの だと思います。ステークホルダーの価値観の変化あるいは成長に伴って、企業の対応も変 わっていく。そういう進化するものだということが、基本的な性格だと思うのです。その 辺に照らし合わせながら話をさせていただきたいと思います。  労働分野のCSRについて、日本企業がどういうふうに取り組んでいるかということで すが、人によっては、CSRの中でも労働分野は遅れているのではないかとおっしゃる方 もいるのですが、私は決してそのようには思ってはおりません。CSRという名称、言い 方は、特にこの数年多くなってきました。そういう名前は使ってきませんでしたが、日本 の経営は、いわゆる従業員重視といいますか、私どもの組織では「人間尊重の経営」とい う言い方をしてまいりましたが、それが脈々とつながってきたわけです。それを今流に言 えば、「労働のCSR」ということになるのではないかと思うわけです。  企業別組合を背景に健全な労使関係というのを築き、そして労働条件に係わる交渉とい ったことだけに限らず、経営の分野にもわたるような、広範な分野について、労使協議を するというのも一般的です。これは組合がある所だけではなく、そうでない所も、やはり 従業員と経営とで話合いをする、情報を共有するということが広く行われてきたわけです。  このようなことから、ステークホルダーとの関係を重視した経営というのをやってきた のではないかと思っているわけです。ですから、あまり労働のCSRというふうに大げさ にいうと、ちょっと戸惑いも感じるというのが、企業の実際に人事などを担当している方 の感触ではないかという気がします。ですから、いままでの人事施策とか、労務管理施策 という中で、従業員を大切にしようというところは行われてきたのではないかと思ってい ます。ただ、それが従来のままでいいかどうかというところは、また時代に応じてどんど ん中身はリファインしていかなくてはいけないということがありますので、それは状況の 変化に応じて中身あるいは形は変わってくるかもしれませんが、根本的な人間尊重の経営 とか従業員重視の経営を追求していくことが、労働のCSRになるのではないかと思って おります。  日本経団連でどういう取組みをしているかについてですが、先ほども話のありました「企 業行動憲章」の5枚目が、企業行動憲章本体です。この4番目は、「従業員の多様性・人格・ 個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する」 と表現しています。簡潔な文章の中に、いま求められているものを入れるとすれば、こう いうことなのではないかと書いているわけですが、それをもう少しブレイクダウンしたも のは何かというと、手引きに書かれています。この手引きの19頁以下、「4」の見出しの 下に6つほどの項目を挙げています。例示ですので、これだけに限定するということでは ありませんが、まずスタートラインとしてはこういうことかなということで挙げた6つの 項目は、順次めくっていただくとおわかりかと思いますが、「多様な人材が能力を十分に発 揮できるような人事処遇制度、雇用における差別を行わず、機会の均等を図る。安全と健 康のため快適な職場環境を実現する。従業員の個性を尊重し、従業員のキャリア形成や能 力開発を支援する。従業員と直接、あるいは従業員の代表と誠実に対話、協議する。児童 労働・強制労働は認めない」です。  国際的な視点も入れ、いわゆるグローバル・コンパクト、あるいはILOの98年の「労 働における基本的な原則と権利に関する宣言」に代表される4つの原則も入れて例示をし て、各企業の取組みを支援するという形になっています。  19頁は冒頭の話につながる所ですが、ステークホルダーとしての従業員に対してどうい う考えで臨むべきか、少し思想的な部分というか、背景が書かれています。先ほどご説明 した、人間尊重の経営を現代にふさわしい形にしていくことが課題であろうということ、 そして現代はどういう課題があるのかについては、日本の経済、社会を見ますと、少子高 齢化への対応が必要になっている。労働力人口が減少していく中で、企業にとって重要な 人材をいかに確保し、個々人にいかに能力を発揮してもらうか。そういうことが、いま重 要になっている。次に多様化です。働く人の属性あるいは働き方も多様なものを認めるこ とによって、ダイナミズムを生み出していく。そのためには、多様な人材が活躍できるイ ンフラといいますか、いろいろな働き方の選択肢を提供していくことが根本的に必要であ るということを言っております。さらにグローバルな潮流の中で企業のステークホルダー もグローバル化をしています。株主・消費者それから従業員のグローバル化、そういった 中でやはりグローバルな価値観も取り込んでいくことが必要であろうということを背景と して述べています。あとは、具体的にこういうことができるのではないかという例示をし ています。  これはスタートラインですので、基本的にはその考え方を基に、それぞれの企業が自社 の従業員の声を聞きながら、労働におけるCSRをどのように進めていくかを一生懸命考 えるべきであると思います。  そうした中で、今回のこの研究会では、労働に関するCSRを推進するためにはどうい ったものがいいのか、行政の役割としてはどういったものが考えられるのか、が大きなテ ーマであろうかと思います。その辺についても少しお話したいと思います。企業が主体的 に行うCSRについて、行政の支援ということも重要であろうかと思いますが、どういう 形が望ましいか。やはりあくまでも主体ではなく、サポート役ですので、企業が十分にC SRに取り組めるような環境を整備するといいましょうか、そういったところが行政の役 割ではないかと思うわけです。そうなりますと、まず第1は法律の執行ではないかと思い ます。CSRの基礎は、まず法令遵守ということで、それが出来た上で、さらに新たな付 加価値をどうやってつけていくか、これがCSRの取組みだと思います。  その法令遵守の部分については、やはり行政の担う役割が大きいのではないかと思うわ けです。CSRは企業が自らの持続的発展、そして社会の持続的発展、この両方をにらん でやっていく活動ですので、すでに企業の中にこれを進めていこうという、動機というの があるわけですから、そのエンジンに火がつけば、企業が自力で走るということができる のではないでしょうか。先ほどの説明のとおり、まだまだ十分ではないと思いますが、や はり各企業の中でCSRに対する取組み、あるいはその体制がどんどん整いつつあるとい うこともございます。私ども団体としても、それをサポートするためにいろいろな工夫を し、憲章を作るだけではなく、その後のフォローアップもやっているということで、まさ に運動としてCSRの取組みが進んでいる、進化をしているのではないかと思うわけです。 そういう企業の自主的な取組みを支えるために、根底にある法令遵守のところを、行政に はしっかりやっていただきたい。餅は餅屋というのでしょうか。いちばんそれぞれが効果 的に自らの機能を発揮できるのは何かと考えますと、やはり基礎になる法令遵守の部分は 行政にしっかりやっていただき、さらにそれに付加価値をつけていくところは、民間にお 任せいただくというのがいいのではないかと思っているわけです。企業が参考にするべき 文書、基準、いろいろなツールというものは、もちろん国際機関等も発行しています。民 間レベルでもいろいろなことをやっています。その上に、さらに何か二重に行政が付け加 えることが必要なのだろうかという気がいたします。  もう少し私どもの取組みをご紹介いたします。いま紙でご説明しましたが、このCSR については日本経団連のウェブサイトにも専用のページがあり、こういった資料はすぐに ご覧になれますし、ダウンロードができるようになっています。ちなみに先月1月分のC SRの部分についてのヒット数を調べたところ、大体合計で2万6,000件ございました。 もちろん1人の人が見ているのが複数計上されたりとかもございますから、この数字をど う見るかは難しいと思いますが、正月もはさんで稼働日も少なかった1月で、これだけヒ ット数があったということは、皆さんの関心がかなり高くなっているのではないかなとい う気がするわけです。  それから労働関係の方はよくご存じだと思いますが、春期の労使交渉に向けて、「経営労 働政策委員会報告」を毎年出しています。この中にも、経営者の姿勢として、「企業の社会 的責任が重要である」というくだりに、そのウェブサイトのアドレスを紹介するなど、一 生懸命周知に務めているところです。この本が7万部出版されています。私ども直接の会 員というのは、先ほどお示しした数ではありますが、各県にも経営者協会がございますの で、春になりますと、私どもはこのような春期労使交渉に向けてのパンフレットを持って 各県を回り、いろいろとご説明をするわけです。当然、その中にCSRについての注意喚 起といいますか、皆さんにも関心を持っていただきたいというお話をしています。そうい った形で、いま一生懸命私どももCSRへの企業の取組みを促進しようということで動い ていることを、ご紹介させていただきたいと思います。  先ほど法令遵守というところを申し上げたわけですが、世の中がやはり変わるにつれて、 労働法の分野もいろいろ動いております。「改正高齢者雇用安定法」はこの4月から施行さ れますし、「労働安全衛生法」も改正されました。もうすぐ「男女雇用機会均等法」も法案 が上がってくるということで、この労働の世界というのも変わりつつある中で、法律とい うのもいろいろに変わっています。企業の担当者がそれを真剣に受けとめて対応していく というのも、かなり大変な作業なのではないかと思うわけです。知らずに法令違反をする というのは、いちばん残念な状況だと思います。新しい法律なり何なりを周知し、それを 確実に執行していくことが基本にあってこそ、それ以上の付加価値を生む企業の活動が生 きてくるかと思います。私としては、まずその基礎固めのところに、行政に大いに役割を 担っていただきたいと思っている次第です。以上で、簡単ではございますが、一通りのお 話を終わらせていただき、あとはご質問にお答えすることで進めさせていただければと思 います。 ○奥山座長 どうもありがとうございました。それでは、いまのお2人のご説明、日本経 団連としてのCSRに対する取組みの基本的な理念と申しましょうか。そういう位置づけ と、それから具体的にこれまで実行していただいた、いろいろ検証に基づく行動。それか ら、実際にこれはツールでしたでしょうか。CSR推進ツールということで、具体的に各 傘下の企業が行っている事例などもご紹介いただきました。必ずしもそういうご報告にと らわれる必要はないと思いますが、この際いい機会ということで、他の観点からもお尋ね してみたいということがございましたら、これからはフリーディスカッションといいます かフリートーキングで、どなたからでもご質問等、もちろんご意見も含めてありましたら、 お願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○寺崎委員 質問といいますか、いまお話を伺っていて、おそらく日本経団連の会員企業 は、おっしゃられたとおり大企業が中心なので、改めて労働CSRとは言わずとも、昔か ら人間尊重の経営をやってきて、人材を有効に活用してきたのだと。会社もハッピーにな って、従業員もハッピーになれるような施策というものを、ずっと摸索してきたのだと。 これはたぶんそうなのだろうと、私もコンサルの現場から思うのですが、やはり日本経団 連の会員企業ではない、中小、中堅、零細のところですね。こういったところでは、プラ スアルファの人を活かす施策以前の問題で、やはりどちらかといえば労働法に関するコン プライアンスというものがなかなか整備されていない状況だと。コンサルティングで入る と、そういった規模の会社の経営者の方などから、どうやったら残業代を払わずに済むの だとか、どうやったら三六協定を越えて働かせることができるのだとか、「そんなことを私 に言われても困るのですが」という質問を受けることが結構多いのです。正直な話、そう いう経営者の方、ある意味で利益を最初に確保したいという経営者の方に、CSRどころ か労働法令も遵守しろ、というのを行政のほうだけでやっても、なかなかそれはできない のではないかという気が、実は個人的にですがしていて、そんなときに例えば日本経団連 さんが、これをやっていいかどうかは私はわからないのですが、会員企業の取引先である 中小、中堅、零細企業に対して、そのようなことの啓蒙活動を行ったら、さらに行政と連 携して労働コンプライアンス、CSRの本当にベースになるところというのが、より実現 可能になるのではないかと思ったりするのですが、その辺の取組みだとか、会員企業外の ところに対してはどのようにしたらいいか。何か取組みをされていることがあれば、ぜひ お聞かせいただきたいと思います。 ○讃井労働法制本部長 先ほど報告書の例を引いて説明を申し上げましたが、直接の会員 だけではなくて、私どもは地方の組織も通じて、なるべく裾野を広く、いろいろな方にこ の考え方をわかっていただきたいということで、一生懸命やっているつもりです。  ウェブサイトのヒット件数のお話もしましたが、会員の方には、企業行動憲章ができた ときに、すぐにご覧いただいていると思いますし、冊子もお配りしているので、いまいろ いろなアクセスがあるというのは、会員外の方ということも多々あるのではないかと思っ ています。  まさしくご指摘になったように、まずスタートラインといいましょうか、コンプライア ンスというのでしょうか。そこを徹底するというところが非常に重要だと思います。それ で、いま「その部分が行政ではできない」というようなご発言があったのですが、でもそ れをするのが本当は行政なのではないか、と私は思うのです。もちろん企業が補完的に推 し進めるということはできるかもしれませんが、既存の法令についてきちんと適用し、執 行していくというのは、行政の役割ではないかと思いますし、やはりまずそこをお願いし たいと思います。  先ほどの繰り返しになりますが、細かいことをいろいろ知らないがために法令違反にな ってしまう、というのがいちばん不幸なことだと思うのです。厚生労働省の例を取ってみ れば、ホームページなどをいろいろ拝見していると、中にはすごく親切なページがあるの です。例えば改正高齢法の「再雇用の仕組みをどうやって作るのか」とか、Q&Aのペー ジなどはものすごく情報量が多くて、そういうのを見ていただくと、とてもよくわかって いいのではないかと思うのですが、現実に地方などを回ってみると、そういうページがあ るということを知らない方も、ものすごくたくさんいるのです。  いまのは非常に使いやすいといいましょうか、そういうページだったのですが、厚生労 働省のウェブサイトによっても、局によってずいぶん作り方が違うのですね。使う方にユ ーザー・フレンドリーなページがあって、企業というところで入ればパッといろいろ出て くる、というところもありますし、公的な施策がズラッと書いてあるのだけれど、「では企 業はどうしたらいいの」というところが、全然見えないところもございます。それはごく 基本的なところだと思うのですが、そういうところでやはり情報を上手に提供していただ くこと、それから各出先の労働局などできちんと周知をするというようなことをやってい ただく、ということが必要なのではないかと思います。まず地盤固めといいましょうか、 インフラ作りといいましょうか、その辺のところを徹底してやっていただいたらいいので はないかと思っています。 ○田中社会本部長 補足として申し上げると、先ほどCSRというか、そういうものに対 する取組みが大企業で進んできていると申し上げましたが、いまご指摘のような、いわゆ る取引先の関連で、とりあえず例えば自社内の法令遵守、または自社で考えるCSRの取 組みの方針を徹底し、それを取引先も含めてご理解いただいて、実践していただこうとい う運動を、いま始めているというか、やっているのですが、やはり特にご指摘にあるよう な法令遵守については、自社内も含めてうっかりしている部分というか、ミスをしている 部分等も含めて、まだまだ徹底が足りない部分があるとのお考えが多いようです。したが って、そこは繰り返しやらないといけない。CSRの観点を踏まえて、取引先も含めてい ま広げているというところであり、全くやりません、業者にお願いしますということには なりません。しかしそれはやはりある程度の限界と、スピードがどうしても遅くなるとい うことを、ご理解いただきたいと思います。 ○寺崎委員 ちょっと私も誤解を受けるような発言といいますか、質問をしたかもしれま せんが、取り組まれていることは重々承知な上で、知らずにうっかりやってしまっている というのは、これはきっちり啓蒙していきましょう、周知徹底しましょうと、ちゃんと厚 労省のウェブサイトのほうまで見てもらうような工夫をしましょうということ、これは必 要だと思いますし、これは行政のほうでやっていただきたいと思います。  いちばん私が懸念しているのが、知っていて法令遵守、コンプライアンス違反をする。 もしくはグレーゾーンを探して、そこで法の精神を全く無視したことをやってしまう。こ の辺が行政だけではやはり厳しいところであって、そこを日本経団連さんのような影響力 のあるところが啓蒙していっていただけると、より良いものが出来るのではないかという 趣旨でした。  本当にベース固めというところと、周知徹底というところは、やはり行政がしっかりや っていただかないと困るところですが、いちばん怖いのは、やはり経営者のマインドがつ いてきていないところをどうしたらいいのか、というのが私はいちばん怖いと思います。 答がどこにあるかというのは、当然これから考えていかなくてはいけないところだと思う のですが、そのようなこともちょっと視野に入れていったらいいのではないかと思います。 ○奥山座長 これもわからないので、ちょっと教えてほしいです。たぶん、いまのご質問、 ご意見等と関連してくると思うのですが、労働のCSRと考える場合、CSRの中身とし ていろいろな理念を踏まえた方策があると思うのですが、とりあえず労働のCSRに的を 絞ってお話すると、どの状況というかレベルをつかまえてCSRを展開していこうかとい うのは、いろいろ議論があるだろうと思います。例えば大企業ですと、日本経団連さんに 加盟されているある程度の規模ですと、こういうことを別にお役所が引っ張っていかなく ても、ある程度、時代の流れの中で他社や外国の企業などを睨みながら、国際情勢を睨み ながら、自らの力でおやりになるようなことも十分あり得るだろうと思います。一方で、 いま出ていた傘下に入っていない小さな企業、零細の企業などについては、そもそも国内 法の中での、いわば合法的なレベルがあるのに、それさえも守られない、いろいろな事情 があって、あるいは守らないという問題もあります。そういうところでしたら、まず何は ともあれ法令遵守ということは、法令で定められている最低の基準をきっちり守ってもら わなければ困ると、そういうことがCSRの、いわば最初のスタートラインみたいなとこ ろがありますよね。それについては、やはり行政自身が直接の担当として、きちんとやっ ていただきたいということはある。それはおっしゃるとおりだと思います。  問題はそれ以降。では、労働のCSRというのはそこからスタートしなければいけない とか、すべきだということではなくて、それはある意味で最低限のこと、誰もが守らなけ ればいけないこと、その上でおそらくCSRというのは労働場面でも、もっとそういう保 護法規の基準よりもいいものに。働きやすい多様な、公正な労働を、企業にとっても働く 側にとっても作っていこうというのが、おそらくCSRの中身だろうと思うのです。そう いうことを考えて、これからの展望みたいなところで何かお考えいただいているところが ありましたら、教えていただきたいのですが。  先ほどちょっとご紹介いただいたアンケートの調査結果ですね。これは日本経団連の傘 下企業に対して、何社でしたか。 ○田中社会本部長 1,300社です。回答が572社。 ○奥山座長 それを見たときに、非常に取り組む割合が高くなった。では、どういうとこ ろを中心に取り組んでいるか、というのが8ページに出ているわけですが、優先的な取組 みの分野としてずっと挙がっていますね。コンプライアンス、法令遵守はやはり昨今いろ いろ議論の問題も出ているので、そういうこともたぶん非常に意識されているのだと思う のですが、いまちょっと話題にしている雇用・労働とか、それから人権問題もおそらく雇 用の中に入ってくる。平等の問題とか、児童労働、強制労働の禁止、こういうのも人権の 問題になって絡むでしょうけれど、このいくつかの項目からすると、それほど取組みの優 先課題的といいますか、やっていらっしゃるところでは大きくない。先ほど見ていたら、 7番目か8番目くらいのところできているのですね。ですから、そういう中小や零細の企 業ということでしなくても、ここの調査企業、対象企業の中でも労働のCSRの分野とい うのは、やっていらっしゃらないということではなくて、こういう表で出てきた調査のタ ーゲットからすると、必ずしも大きな枠で出てきていない。これがどうしてなのかな、と いうのがおわかりになりましたら教えていただきたいことと、それからこういういろいろ な項目がある中で、これをもっとコンプライアンス、法令遵守と並んで、労働環境や制度 の充実というものと同じような、いわば比重をもっと上げていこうとするときに、何かお 考えになっているようなことがあるのか。その辺を教えていただけたらと思います。  8番目か9番目くらいなのですね。法令遵守が1番目で、2番目が環境。CSRと環境 というのは、最近のエコの時代ではないですが、イメージとしてはよく理解できますから、 なされることが多いのでしょうけれど、あとは何でしょう。個人情報保護、これはそうい う法律が出来たからたぶん関心が高いということも、ちょっと説明になりましたし。 ○田中社会本部長 事務局として申し上げますと、これは初めてやったものであるため、 あまり詳細に詰めきれたアンケートではないものですから。 ○奥山座長 田中さんのお考えのところを、感想でも結構ですので。 ○田中社会本部長 これは非常にザックリとアンケートしようということだったものです。 皆さん、いろいろなところからアンケートが山のようにくるのですが、日本経団連の調査 がそういうのと一緒になると困るので、日本経団連としてCSRはみんなどういう方向を 向いているのかというのを調べてみよう、ということにしたわけです。いまおっしゃった ように個々に見るとどうしてだろうというのがあって、確かにこのいちばん最後のグラフ は、我々の中でもどう見たらよいのだろうという議論がありました。  ですから先ほどご指摘のように、日本の雇用や労働のところは昔から一生懸命やってい る割にどうして低いのだろうといったら、これは当たり前だから、そもそもそんな重点課 題にしなくても、もうPDCAの中に組み込まれ、当たり前だからそれほど意識していな いという感じなのではないか、という解説をする人もいれば、CSRという切り口だから こういうふうに少し落として回答したのではないかとか、環境のほうがやはり。 ○奥山座長 相対的なもの。 ○田中社会本部長 人権のところは、確かにCSRの担当者の意識が、強制労働や児童労 働にやや意識があります。これは日本で当然禁止されているので、それはサプライ・チェ ーンの関係で、海外で事業活動をするならともかく、自社としてはあまりそういうことは 問題にならないのではないかという回答になったのではないか、というようにここの解釈 は実はまだ我々の中でも定まっていません。もう少し調査しなければいけなかったな、と いうのは反省点です。 ○讃井労働法制本部長 別の観点から言いますと、アンケートをどう読むかというところ は、それこそそれぞれの方に聞いてみないとわからないと思うのですが、日本の企業がC SRということで、やはり意識してスタートしたのは環境だと思います。ですから環境報 告書というのが多く発行されるようになっています。ただ最近の傾向では、それをCSR 報告書というように模様替えをして、中に社会的なもの、労働や雇用の分野も含めて情報 を提供する、というようになってきているところが増えているので、そういった意味では やはりCSRとして考える分野の中に、きちんと労働や社会分野というのも入れていかな ければいけないという風潮、傾向になってきていると思います。それで十分、というとこ ろまではいっていないかもしれませんが、傾向値としてはそのようになっているのではな いかと思います。 ○奥山座長 そのときに、要するに環境から始まって、環境報告みたいなことで始まって きたCSRという中に、もっと「いや、これは実は広いものだ」と。企業として行動計画 を立てていくときには、もっと企業の、いわゆる社会的な一員として、もっと広い観点か らCSRという問題は論じられているわけだから、ということで雇用の分野も人権の分野 も入ってきたとしたときに、これは今後の、いわば企業さんがこういう問題について考え ていくときのスタンスの問題だろうと思うのですが、あくまでも雇用の分野におけるCS Rというのは、労働に関する法律の遵守、それをギリギリやっていく。つまり違反がある ようなものを、違反をなくしていくという意味での遵守ということで、そのCSRの中身 を考えているのか。あるいは、もっとそれ以上のものとして考えているのか。そうなった ときに、いまちょっと最近の労働立法を挙げられましたよね。中高年齢者の雇用確保の問 題、労働安全衛生法の改正、いまこれから国会に出す均等法の改正、こういうものについ ては最低の基準、育介法なども含めて最低の基準はあるわけです。その最低の基準以上に 多様な働き方、個人と生活の両立支援みたいなものを考えていくと、それは最低の基準だ からもっとそれを超えたところで、労使協議でもいいです。団体交渉でもいいです。そう いうものを通して上げていこうとするときに、その幅はどのくらいのところでとらえられ るのか。要するに先ほどの話ですと、まず何よりも違反に対する基準を高めようと、それ は行政にお願いしなければ、その上では労使の自主的な取組みということをおっしゃった わけです。 ○讃井労働法制本部長 はい。 ○奥山座長 だからお聞きしたいことは、その労使の自主的な取組みというのが日本経団 連さんの中で、あるいはその傘下企業の中で、あるいは傘下ではない中でもある程度地域 の経営者協会を通して啓発をされていくわけですから、それをどのスタンスとして日本経 団連さんは考えていらっしゃるのか。具体的なものでなくても。 ○讃井労働法制本部長 ですから先ほどの推進ツールなどを見ていただくと、具体的な例 として挙がっているところというのは、やはり法令プラスアルファのところですよね。か なりたくさん挙がっているので、やはりそういうのを見ながら、皆さん参考にしていただ きながらということです。どこまでやるべきかという「べき論」ではないと思うのです。 ○奥山座長 もちろん、そういう「ここまでやらなければいけない」ということは考えて いなくて、要するにスタンスとしてどのようなところの方向づけと枠を考えられているの か。あるいは、いまではなくても。 ○田中社会本部長 そういう意味で申し上げると、要するに日本経団連として、それぞれ の分野について目標設定をして、それに向かって皆さん一緒にやりましょうということに はならないわけです。特にCSRというのは、経済、環境、社会の調和を図っていくとい う中で、先ほど讃井が申し上げたように、企業が自主的、主体的に取り組んでいくものだ ということになると、まさに環境への取組み、社会貢献分野、例えば従業員との関係、地 域との関係とかが包含されます。先ほどの経労委報告だと、顧客・従業員と取引先と、た しか株主と社会という、この地域という、その大きな5つのステークホルダーとの関係で、 それぞれそれらの視点を取り入れながら経営をしていきましょうということになります。 例えば従業員に報いることを非常に重く置かれる企業の方もいれば、そうではなくて企業 は株主のものだ。株主に利益を還元するというか、株主のことを見て経営するのが中心に なるという経営の方もいます。ですから、そこはそれぞれなので、その戦略を決めていく のがCSRなのであると。ただ、私どもとしてはそういう中でそれぞれが多様な取組みを する中で、ベースがコンプライアンスという話になりましたが、それを超えるものについ て、どのように多様な取組みがあるかというものを、まさにツールで実例を示していく。 ですから雇用労働についてもいろいろなそれぞれの企業の取組みがなされていて、その企 業でこれは進んでいるなと皆さんがおっしゃる所と、自分の所はこれは無理だ、自分の所 はそういう業種でもないし、業態でもないし、目的は違う。自分たちの労働はある部分は 違う目標を立て、環境を中心にする経営をするとか、そのようになっているので、座長が おっしゃる日本経団連として何となく目標があって、そっちに向かってという感じになっ ていないのです。 ○奥山座長 おっしゃるとおりだと思うのです。最終的には企業の規模や業種を問わず、 基本的には企業がその企業を取り巻くステークホルダーに対して、どういう姿勢を示して いくのか。その姿勢を示すときに環境の問題もあるでしょう、平等の人権にかかる問題も あるでしょう。従業員との調整の関係も出てくる、労働条件のいわば改善等の問題もある でしょう。それは最終的にはその企業自身が労使と共同の間でもそうだし、企業自身が自 らのイニシアティブでそれをつなげていくところもあるでしょう。だから最終的には企業 の自主的な判断と、取組みの問題だと思うのですが、例えばヒアリングの事項で出してい る5番目、6番目、労働に関するCSRについては法令遵守にかかわる部分と、これを超 える部分とがとりあえず出てくるわけではないですか。6番目も同じく法令遵守であって も、企業を取り巻く経営活動の中では、必ずしも労働法規ではないほかの証券関係の法律 も、それぞれが係わっている業種に関する法令もあるわけではないですか。だから法令と いってもいろいろなものがあるわけです。  労働の中で考えますと、いわゆる労働関係法規があります。一口に法規といっても一般 的に少し違うわけではないですか。この前のホテルがいま問題になっているときとか、ラ イブドアの問題など、かかわる法規は違うわけです。そういう分野の法規の遵守と、従業 員との関係で出てくる労働条件保護に関するような法規もあるわけです。その法規の最低 の基本を守るということと、それ以上のところでやっていけるかどうか、あるいはいくべ きだという議論も、最終的には各企業の問題ですが、出てくるわけではないですか。その ときに、例えば5番目、6番目でいいのですが、法令遵守の最低の遵守にかかわるような 部分と、それを超えていくような部分とでは、少し性格的に違います。6番目は労働関係 の法規とそれ以外の法規のところでも少し違うような気がするわけです。  こういうところで日本経団連がいろいろな取組みや調査もやられて、その調査の中で各 企業がいまCSRの枠の中でやっていらっしゃることのいわば具体的なツールを出して、 まとめてくださっているわけです。これは各企業に対するアンケートであり、その企業で やっているいい例のまとめです。ここで失礼な言い方でかんべんしていただきたいのです が、日本経団連としてはこういうCSRの枠組みを考えているときに、何か1つ、各企業 の調査を見るだけではなくて、日本経団連としてその傘下にある企業とそれ以外の企業と、 ある程度方向をして、こんな形で動いていったらいかがですかみたいなことの大きな枠み たいなものはお考えではないのですか。そういうことをお聞きしたかったのです。 ○田中社会本部長 労働のところは少ないです。CSR全体ということでいうと、座長が いまおっしゃったとおり、私どもとしてはこれを質問項目でいただいていますが、何らか の格好で枠組みまたはチェックリストみたいな形で提示はできないというのが、我々の基 本的な考え方です。ですから、それに代わるものとしてツールであり、実例であり、我々 の手引きということになります。それでチェックリストみたいなものを作ったとしても、 我々のツールでさえも、たぶん先ほど讃井が言ったように進化していく。私は「発展性」 と呼んでいますがどんどん例が変わってくるだろうと。そうすると、何かこういう目標み たいなものをポッと、こうしましょうと言ってやったとしても、次の日に実は変わってし まうという、そしてそのリストがどんどん増えていくのだろうと思うのです。ですから、 我々としてもこのツールをどれだけコンパクトにしながら、使い勝手のいいものにするか というのが次の課題になっていまして、これでもわかりにくいという声があり、なおかつ まだ中小企業はこれではとても人が割けないのでできないという声もあったのです。実例 は非常にいいけれども、なかなか難しいのですよねという、ではどうすればいいのだとい うのが、まだ我々にも答えがないのです。  ですから、座長のご質問に率直に答えると、我々としてはコンプライアンスのところは 法律で決められたものは守りなさいというのは当然やらなくてはいけなくて、それはなか なか難しいというところは問題なのですが、それを超えたものについてのそういう大枠、 またはチェックリスト的なものは、おそらく作れない。1つの分野でもなかなか作れない、 環境でも作れないというのが我々の中で議論した結果として、私どもはこのような形の取 組みをしているということです。 ○奥山座長 といいますと、6番目などで自主点検用チェック指標の項目のうち、情報開 示項目とすることは適当でないと考える項目はあるかとか、こういう質問はあまりに意味 をなさないですか。 ○田中社会本部長 ですからそういう意味で率直にいうとお答えできないということにな ってしまいます。ただし、先ほど環境報告書とか、いろいろなCSRの報告書の話が出ま したが、やはり企業として説明責任、情報開示の責任が以前に比べて非常に重くなってき ている。それをどのような形で情報開示をするか、専任になったのか、専門部署になった のかわかりませんが、皆さん非常に悩まれているのは、そういう報告書を1回出して、い ろいろなステークホルダーの方に見ていただいて、ご批判をいただいているのです。それ をどうやって改善しようかといって、この2年、3年と試行錯誤でやっていて、なかなか 皆さんにご満足いただけないと言って悩んでいるというのが実際の担当者です。  だからといって、ではA社とB社とC社の方々がみんな同じ項目をやっていますという のであれば、まずそれはそもそもCSRの概念に反します。それぞれの企業が工夫して情 報開示していくということにも反することになります。あとステークホルダーのほうから 見て、それは単に金太郎飴のような説明になりますと、それではNGOにとって、この企 業にはこれを聞きたいのに何も答えてくれていないという話で、彼らはこの項目をきちん と書いてください、この企業にはこの項目を書いてくださいという注文を出していますか ら、そこをどう答えるか、または答えられないかというのが、いま企業の方々が報告書を 作るときに悩まれているところです。  そこでいうと、先ほどの質問になると、私どもとしてはこれは抽象的にはわかるのです が、実態的には少し難しいのではないかと感じている項目です。 ○足達委員 環境報告書については、たしか2年前に会員企業の発行する環境報告書を3 年で2倍という、ある意味の目標、呼び掛けのようなものを出されていると理解している のですが、その進捗みたいなものを把握しておられれば、ご披露いただきたいことと、中 にいまの時代の流れとしては社会的側面、あるいは労働の問題というものが入ってくるの が当然だという意見はあると思うのですが、いま日本経団連の内部の議論として、会員企 業に対して呼び掛けを行っていく脈絡の中で、社会性を重視しようとか、労働の問題にも 触れたほうがいいでしょうねというような見解みたいなものをお持ちなのか、そこはいま のご説明のように、各社にお任せするしかないというスタンスなのか、その辺りもよろし ければお伺いします。 ○田中社会本部長 日本経団連が行っている会員企業へのアンケートを見る限り、この1年で 環境報告書を作成する企業の比率は上がってきています。しかし、まだ倍増とまでは言えない状 況です。環境報告書作成にあたっては、内容的にはこれを入れてくださいとか、そういう話 はしていませんので、要するに環境への取組みを日本経団連としては重視していますとい うメッセージはあります。それはなぜかというと、地球温暖化防止の関連でCO2の排出 量の削減はまさに京都議定書に基づいて、産業界としてどの程度削減するかという目標が はっきりと決まっていますので、それを我々としてはコミットしている。それを各40団体 が参加して、それぞれまたコミットしていただいて、その参加企業が自分たちはどういう ことをやっているか、業種団体では数字がまるまってしまうので、各企業がどうやって取 り組んでいるかというのをわかるという意味では、そういう環境報告書に、それぞれ自主 的にやっていただくしかないということになるのです。  ですからそういう意味では、廃棄物やCO2の関係では、日本経団連としての条約に基 づくコミットメントですから。 ○足達委員 根拠があるからですか。 ○田中社会本部長 ええ、あるからということです。そこで、ではCSR報告書を出しま しょうということになっていなくて、CSRには取り組みましょう、ただCSRをやるの であれば、説明責任というのが非常に重要になりますということを申し上げていますので、 説明責任をどうやって果たすかというのが、各企業によって取組方が違ってきます。です から、ある企業は報告書は出します、または報告書というのはせいぜい20〜30頁が限界だ と。であればウェブページでもっと詳細なものを出したいと考える企業。自分はそんなに 全国レベルとか国際的なレベルでの活動ではなくて、非常にローカルなビジネスを考えて いるので、ローカルな方々とのコミュニケーションをフェース・ツー・フェースでやると いうので十分だとお考えのところもあるわけですから、説明責任の中で考えると、別に環 境報告書は要らないわけです。何とかCSR報告書は要らなくて、そういうフェース・ツ ー・フェースのときにきちんと説明をすればいいというような取組みがされていて、そこ は日本経団連としては各企業の工夫をしてください。ただし、いまのCSRという観点で は説明責任は非常に問われる時代になっていますということは申し上げています。 ○讃井労働法制本部長 少し話が離れてしまうかもしれませんが、CSRが重要であると いうことと、それは本当に経営の課題として重要だということ、そしてそれを情報公開し ていくことは重要だということは縷々説明をしているわけですが、ではそれをどうあらね ばならないのかということについては、まさしく企業がそれぞれ考えることであって、ワ ンサイズ・フィッツ・オールというのはないと思うのです。法令を超えた部分については、 企業の経営戦略なり基本理念みたいなものに照らして、それぞれが創意工夫をしていく。 それこそが企業の競争になって、本当に経営に跳ね返っていくところだと思うのです。そ れぞれが創意工夫ができるように事例などを示して参考に供するという形で私どもは進め ているというか、支援をしているということです。  先ほど先生がご質問になりましたチェック指標についてですが、当然CSRというのは 経済、社会、環境のバランスのとれたものでなければいけません。例えば労働だけを取っ たときにそこだけ突出していればいいのかということもちょっと疑問ですし、労働分野で もいろいろありますがそれを満遍なくやっていなければいけないのかというと、それも結 局何があるべき姿かというのはステークホルダーとのコミュニケーションの中で何を望ん でいるか、何を大切にしているかということで明らかになってくると思います。プリセッ トにこういうものがあって、これを全部やってください。ここは欠けているから駄目です ねという話とは、ちょっと違うのではないかという気がします。 ○奥山座長 それは十分わかります。私は何もそこを全部一緒にまとめてすべての企業が 利益も度外視して全部やらなければいけないということを言っているわけではなくて、こ ういう制度の中で企業として経営活動をやっている側がステークホルダー、株主もいるで しょうし、従業員もいるでしょうし、その他社会の一般の人たちもいるでしょう、そうい う人たちに対してこれからの企業のあり方や海外活動のあり方について理念と、行動の規 範を作るときに単に環境だけではないでしょう、人権の問題もあるでしょう、また職場の 中の労働の環境や制度の整備もあるでしょう。そういうものについてどこを中心に置くか は各企業の自由な選択の問題だと思うのです。しかし、一応トータルを見ますと、そうい うものがCSRの中の重要な課題になっている、項目になっている。そのときに日本経団 連としては環境は条約があるので環境の整備とかはある程度重視されるという意識の呼び 水というか、示唆というか、その辺の言葉はわかりませんがお願いをしていく、あるいは 理解を求めていくような啓発をするわけです。  労働についてはそれがどういう形で考えられているのかというところが、少し私は知り たかったのです。先ほどはちょっと言葉が足りなかったかもしれませんが、そういうこと を少し聞きたかっただけのことです。そういうときに私どもがこれからかかわって考えて いこうとするときに、労働のCSRの部分で何か各企業に対して、労働のCSRの部分で は、こういうところがある程度大事なことなのではないでしょうかというときに、チェッ クリストを作って、こういうところを重点的におやりになるのも非常に効果的なものでは ないでしょうかということを考えるときの何か示唆みたいなものがありましたら、考えて いらっしゃることがあれば教えていただきたいと個人的に思っていたものですから、そう いう質問になりました。  先ほどの調査のところで雇用、人権問題、リスク、この辺は広い意味では労働のCSR の枠の中に入ってきているかというつかまえ方とすれば、リスクマネジメントというのは 具体的な中身がわかれば教えていただきたいのですが、どういうことが中身になっている のでしょうか。 ○田中社会本部長 これも先ほど言ったように調査するときにもう少し定義をはっきりす ればよかったなと思っています。 ○奥山座長 危機管理ですから、どういうものをターゲットにしてそういうものを入れた かですね。 ○田中社会本部長 これはたぶんそのときの皆さんの回答は、事故、地震、災害、不祥事 が起きることによって、会社全体がとまってしまうようなものとか、何となく聞いている 感じでは、そういうことを想定されていたはずなのです。だから私どもも、もう少し細か くしておけばよかったなと思ったのですが、ざっくり聞きましょうという話になったもの ですから、お答えできません。 ○奥山座長 わかりました。揚げ足を取ったみたいで恐縮です。リスクマネジメントとい うと、ある意味何でも入ってくるではないですか。そういういわば事故に遭ったときに企 業としての経営活動をどうしていくか、あるいは例えば私たちがやっている分野ですと、 アメリカなどではいろいろありましょうけれども、雇用差別の問題で人種差別、女性差別 など雇用の分野でいろいろな差別の形態があります。そういう差別の訴訟を回避していく ために、普段から研修などを通して日本の均等法に当たるようなものをアメリカではタイ トルセブンという法律があるのはご承知かと思いますが、ああいうものの法令の、いわば 啓発や遵守をやっていく。つまり差別訴訟を回避するという意味でもリスクマネジメント で、それをやることによって負けたとしても損害賠償額を減らしていくなど、いろいろな 意味でそういうことの対応もリスクマネジメントの一環だという形でいろいろ説明された りすることがあります。ですから、このリスクマネジメントという言葉が持つ具体的な対 応はものすごくある意味では幅が広いかなと思ったものですから、この調査の中ではこの リスクマネジメントというのはどのようなことをイメージされて入れられているのか、わ からなかったものですから。先ほども言った差別訴訟に対する企業としての対応となれば 労働のCSRの問題にも入り得る可能性があると考えたものですから。 ○田中社会本部長 その辺は詳しく中身も分けていないので、今回は。 ○奥山座長 結構です。それだけがおわかりであればということだったものですから、あ りがとうございました。 ○足達委員 いまのことに関連してなのですが、つい昨日の新聞でしたか、新会社法の政 令が公表になりました。内部統制システムの構築というものの基本方針を決定するという 話が出てきました。CSRの脈絡で考えたときにも、ここには関連性がいろいろな側面で ありそうです。例えば労働のCSRでいっても、サービス残業があった、賃金の不払いが あった、昨今も事後にお金を払いなさいというようなことになって企業が実際に払ってい るケースはあります。これは財務諸表上考えると、内部統制システムがきちんとしていな かったがゆえに、過去の財務情報がおかしかった。つまり本来計上されるべき費用が計上 されなかったというところまで拡大解釈をすればできる話にもなりかねないわけです。実 際に5月から法律が動いたときにどうするかという問題を実務的に解決していかなければ いけないのですが、例えばいまのような問題が1事例として上がります。新会社法でいう 内部統制システムとこのCSR的なリスクマネジメントをどう結び付けるべきか、あるい はこういうところまで解釈しようとか、そうした議論というのはいま日本経団連の中では あるでしょうか。今回のパブコメに対して何か意見を提出されたなどあればお知らせくだ さい。 ○田中社会本部長 それはないです。事務局レベルではその辺の整理をしないといけない かもしれないなという問題意識はあるのですが、具体的にはまだ進んでいません。まさに コーポレート・ガバナンスの問題と統制の問題とCSRはどういう関係にあるのかという のを、もう一遍整理しないといけないのではないかという議論はありますが、ややディメ ンションが違うというか、方向が違うというか、少し生い立ちが違うので、うまく共通の 議論の場がいま設けられないというところが産業界の中でもあります。 ○八幡委員 3つほど伺いたいと思います。1つは海外の経営者団体との連携というか、 特にCSRの話に限ってなのですが、ヨーロッパやアメリカの経営者団体との交流等があ ると思うのですが、その辺でいま世界の動きがこうなっていて、だから日本はこうなのだ という話なのか、それともまだそういう交流がほとんどないものなのか、その辺の事情を お聞かせいただきたい。2番目に、海外進出企業のことが書いてあったのですが、回答で は触れられていなかったので、お聞きしますが、在外企業協会は1970年代に、東南ア ジアでいろいろあった時に、我が国企業の発展途上国向け直接投資における企業行動のあ り方についての指針(ガイド・ライン)を定めて、それを実行するためにつくられた団体 でもありますが、その辺がいまはどのような形で変わろうとしているのか、特にCSRと いう視点から見ていった場合にどうなのか、その辺をお答えいただければと思います。  3つ目にはそのSRIというか、企業への投資の面でCSRの状況を評価し格付けして、 公表する動きがありますね。そういうものに対して、いま日本経団連はどう位置付けよう と、考えておられるのか、これから企業にかなり大きな影響を与えるのではないかと私は 思いますが、その辺はいかがなものでしょうか。 ○田中社会本部長 私の知る限り、CSRそのものについて海外の経営者団体とは直接具 体的に議論をするということはしていません。 ○讃井労働法制本部長 個別のどこということではないですが。IOE、国際使用者連盟 という組織がありまして、各国の経営者団体が入っているのですが、そこにとってはやは りCSRというのは非常に大きな課題ですので、やはり経営者としてこの問題をどう考え るかということで、たびたび議論をしております。それはもちろん前向きにとらえて、結 局これは経営戦略の1つですから前向きにとらえてやっていこうということと、先ほどお 話したことにも関連するのですが、ともすると、そのCSRということを使って、企業と 政府の責任の境界線みたいなものをぼんやりさせてしまうということが起きているのでは ないか。例えば途上国などですと、労働法にしてもそうですが法律がきちんと整っていな いということで、進出企業に対して、政府ができない部分、グローバルなルールに照らし た部分を、きちんとやれというようなリクエストが非常に大きくなっているわけです。こ れについてはやはりあくまでも責任の主体はどちらにあるのかということはきちんと考え よう、企業が補完的な役割を果たすことはできるけれども、やはり法令の整備という一定 のことは地元の政府がきちんと本当は責任を負わなければいけないのだということを明確 にしようと、そういったようなことも話しています。やはり各国の経営者にとって、CS Rというのは非常に重要な課題になっていると思います。  日外協の海外投資行動指針についていまどういう動きがあるかということについては、 私どもは承知はしておりません。ただ、国際的な事業展開については私どもの企業行動憲 章の8番、ここでも注意喚起をしているところです。 ○田中社会本部長 その点でいえば、日本経団連の姉妹団体である海外事業活動関連協議 会、CBCCと言っていますが、そこで投資先の地域でのよき企業市民となるべき活動の あり方とはどういうものかというのを、長い間アメリカから始まってやっているところな ので、最近はそのCBCCが中心となって東南アジア、中国等を訪問して、投資先におい てこういうCSR的な観点で現地社会との共生というか、ともに発展していきましょうと いうような啓発活動をしている。それとともに当然日本にある本社にそのような意識を持 っていただかなければいけないというので、CBCC、それと当然本体である日本経団連 の取組みとしてこういう企業行動憲章を呼びかけているとなっています。  SRIについては私どもは特にポジティブでもネガティブでもないという感じですかね。 特にコメントしたことはないと思います。この企業行動憲章の2004年改定するときに、そ ういうような商品の選別や企業の評価に際してCSRでの取組みに注目している人々が増 えていると序文に書いているのですが、まさにSRIという視点もありますよということ を入れたということです。ではそのSRIに対して日本経団連としてポジティブなのかネ ガティブなのかというのは、特にコメントとしてはないです。  会員企業の多くの方というか、SRIを実際に組まれているところも会員金融機関の中 にあるわけですから、そういう意味では私どもとしては、特にいいも悪いも申し上げてい ないということです。 ○八幡委員 そのCBCCの話で企業行動憲章、国によってはある種のガイドライン的な 部分もあると思うのです。例えば年少労働とか、国際的に見ると法は整備されていないけ れども、その辺はきちんとやったほうがいいでしょうというような、特に途上国などはそ ういう問題もあるのではないかと思うのです。そうした場合に、ある種のガイドライン的 なものが出されているということですか。そうではなくて、あくまでも規範としてこうで すよという形で示すだけなのですが。 ○田中社会本部長 CBCCの活動は日本経団連が姉妹団体と申し上げたとおり、基本的 なスタンスはこの企業行動憲章であり、日外協がお作りになったようなものを参考にして、 現地社会に溶け込んでください、またはそういう中で違法なことは行わないでくださいと いう言い方というか、主張を投資先の社会、企業にいろいろ申し上げているということで す。だから何となくガイドラインがあるということではないです。 ○八幡委員 国にもよりますが以前は、進出している現地の日本人商工会議所などが、あ る種のガイドラインを設けて、それを守りましょうねと横の連携が結構あったと思うので すが、だんだんそういうことを今はやらなくなっているということですか。 ○田中社会本部長 いや、昔も今もそうですが、CBCCは特にそういう。 ○八幡委員 CBCCの現地での活動はないのですか。 ○田中社会本部長 現地のですか。 ○八幡委員 現地で。 ○田中社会本部長 それはどうでしょうか。いま現地はやはり現地で。 ○八幡委員 現地での日本人商工会議所みたいなところですけどね。 ○田中社会本部長 私どもは直接そういう具体的なご相談を受けるときはそんなに多くな いので、そういう話はあまり聞いていません。国際担当部門に確認はしてみますが、あま りそういうことは聞いていないと思います。 ○八幡委員 流れが変わっているのかなという感じがしたものですから。 ○奥山座長 在外協などは私が少しお手伝いをしたことがあるのですが、アメリカの差別 の州法や連邦法で一時、日本の企業がある程度危惧されてちょっと言われたような時代で 在外協が現地に出ている法人に対してアメリカのそういう法令やアメリカの法律に対する 国民の考え方をパンフレットを作るお手伝いをしてお配りしたのです。そのころはまだC SRというようなイメージというか、理念はなかったものですから、それとは直結ではな いのでしょうけれども、そういうものでの現地の法人などに対して、そこで日本から行か れている人に対して、理解を求めて、できるだけそちらの中である程度溶け込む、現地の いわば制度とか風土、精神、基本的な国民性に溶け込む中でやっていくということも、1 つのガイドラインでもないのですが、情報提供みたいなものですがそれをおやりになって いたというのです。それがいいかどうか、最近の在外協は全然わかりませんが、CSRの 枠組みなどで考えられているということはあまりないのですか。直接日本経団連とお付き 合いというか、そういうことは。 ○田中社会本部長 あまり聞いていないですね。 ○奥山座長 あまりないですかね。 ○田中社会本部長 ええ。 ○奥山座長 おそらくおっしゃっているのも、現地などの中でそういう文化に対する問題 とかは、いまはそういう観点からのものはないのですかね。 ○寺崎委員 少し話が飛んでしまうのですが、個別具体的なコンテンツとして、2つ質問 があって、1つは従業員ステークホルダーにしたCSRで、よくシェアリング・プランが あるかないかというところがあるかと思います。シェアリング・プランというのは会社の 利益なり、企業価値に連動して従業員に何か還元するような仕組みがあるかどうか。プロ フィット・シェアリング、日本でいえば賞与があるか、それがプロフィット・シェアリン グではないかみたいなものもあるとは思うのですが、明確に会社がこれだけ利益が出たら 何パーセントを従業員に還元しましょうというプランであったり、ストックのほうのシェ アリング・プラン、ストック・オプションであったり現物株を従業員の方に支給して、株 価が上がったり配当金という形でシェアリングしていきましょうなどというのが、1つあ ると思います。そういったものを日本経団連ではどうとらえているのか。別にそれはそれ で全く違う世界ですよというのであれば、それでもかまわないので、お考えを伺いたいと いうのが1点です。  もう1つは、雇用の創出というのがマトリックスの中のコミュニティのところに入って いるのですが、雇用の維持、こういうご時勢なので雇用維持も非常に経営努力でやってい るところはすごいよねって賞賛されていいかと私などは個人的に思うのですが、そういっ た雇用の維持というものを日本経団連のマトリックスの中で、いま現在どのようにとらえ られているのか。当然進化していく中で、将来的にこれもこうでするというのかもしれま せんし、ある意味雇用の維持自体は当たり前といえば当たり前なのだから、あえてここに 出さなくてもいいのではないかというのもあるかもしれないし、その辺のところのお考え を伺いたいと思います。 ○讃井労働法制本部長 シェアリング・プランというか、スキームというのでしょうか、 それについては特段言及しているということはありませんで、企業によって賞与が業績連 動式になっているというところも結構ありますので、そういうのは実態としてどうなって いるかというのをご紹介するとか、そういうことはしていますがどうあるべきだというよ うなことは言っておりません。むしろCSRから話が飛んでしまうかもしれませんが、春 の労働条件の交渉なり協議に関して、先ほどご説明した経営労働委員会報告では生産性の 三原則というところをもう一度再認識しましょうと言っており、ここのところでは雇用の 維持、拡大、労使間の協力、成果の公正配分というのが日本生産性本部ができたときの生 産性三原則と言われているところです。振り返ってみれば、いままでの日本の企業という のは、こういうことを重視してきたと思うのですが、ここでもう一度それについて再認識 をしましょうということはメッセージとして謳っているので、非常に抽象的なお答えにな りますが、基本的な考え方としてはそういうことだと思います。 ○田中社会本部長 いずれにしても基本的に日本経団連としてはそこはやはり各企業が決 めるべき話なので、日本経団連団体として何か方向性を出すということにはならないとい う。ただ、讃井が申し上げたように従業員を大切にしましょうとか、そういうことを強調 するということはあり得るかもしれない。  雇用の創出は確かに我々としては明言はしなかったですね。 ○讃井労働法制本部長 これは何かもうインプリントされているのですね。 ○田中社会本部長 途上国において雇用創出に努力しているということを書くことは考え ましたが、日本国内での雇用維持への努力というのは、自明でもあり、記述することにあ まり拘らなかったというのが正直なところです。 ○讃井労働法制本部長 それは日本も失業率が5.4%までいきましたが、そこで止まった というのが企業の雇用の維持に対する非常な努力だったと考えています。どうしても仕方 がなかったケースというのも多々あったかと思いますが、その中でも雇用を抱えながら踏 ん張ってきたというところが、いままでの姿なのではないかと思います。 ○寺崎委員 これはジャスト・インフォメーションで独り言みたいなものなのですが、あ る大手企業の社長がCSRをやっていこうという中で、うちの会社は海外では雇用は創出 しているのだけれども、国内ではちょっとリストラをやり過ぎたのかなという、これはC SRとしていかがなものなのでしょうかということを、よく言われたりするのです。そう なので、非常にこれを入れ込むのは難しいのだろうなということは、私も一応重々承知し ています。おそらくインプリントはされていて、皆さんは努力されているのだろうなとい うことですね。 ○小畑委員 1つお伺いしたいと思います。海外の取引先の問題と関連して、先ほどIO Eのお話におよびましたので、そこを確認させていただきたいのです。CSRの問題とい うのはある意味では既存の国家の行政や国家の法律ではカバーしていないところにも及ん でいる問題だということは自明です。例えば途上国と呼ばれている国においての児童労働 や強制労働のような問題があっても、日本の政府がそこまで行って、監督して何かサンク ションすることは全くないわけですね。しかしながら、多国籍企業のガイドラインとして は、そういった問題に何とか対処すべきではないかということで、OECDも動いたとい う経緯があって、しかもIOEにとってもCSRというのは非常な関心事だというお話が あります。その日本経団連のほうではそういう問題は地元の政府が本来やるべきことであ って、企業は補完的な役割を果たすことはもちろんあるけれども、というお話をされたと 思うのです。推進ツールの17頁では東芝の事例として人権・労働への配慮を要請している ということを調達方針としての宣言とともに、そのような参考事例として載せられている わけです。そうした非常に基本的な人権問題、誰しもが何とかすべきだと考えるような問 題であるけれども、しかしながら我が国の守備範囲でない問題に対しては、企業はグロー バル化の中でどんどん国境を越えていく存在ですが、そうした企業の代表的な団体である 日本経団連として、それに関して例えばそれこそ京都議定書のような推進力があって、温 暖化防止のために何らかの目標を立てて頑張るというような、そのようなムーブメントみ たいなものが、これからあり得るかということに関しては、国際的なそういった動きや条 約のようなものが新たに急浮上したらあり得るけれども、そうでない限りは特にはないと 考えてよろしいのでしょうか。 ○讃井労働法制本部長 児童労働とか強制労働といった分野に、もしお話を限定するので あれば、手引きの25頁にもありますように、労働の分野というか、従業員関係のところで 1つ大きな項目として、6つ挙げている中の1つに、基本的な人権であるところの児童労 働と、強制労働の廃止を組み込んで、グローバル活動をしていくにあたっては、こういう ことにきちんと配慮すべきであるということは申し上げているつもりです。 ○小畑委員 そうすると、例えば海外の取引先との関係でいうと、児童労働や強制労働の 問題は是非とも最優先でやるべき課題であるけれども、そうでないそれ以外の問題は、そ れよりは優先順位が低くというように、ちょっと色合いの違うものがあると考えたらよろ しいのでしょうか。 ○讃井労働法制本部長 それ以外のものというのは具体的にはどういうものですか。 ○小畑委員 例えば日本だとこんなにたくさん働かせることはまずないというような問題、 強制労働に入るかもしれませんが、いわゆる時間外労働の問題であったり、そういうのが 日本の常識では考えられないほどの長時間労働であれば、それがそこの現地の国にとって 別にどうということはないということであれば、それは全然オーケーという、そういうよ うな問題と児動労働、強制労働のような問題だと、児動労働、強制労働のようなものは非 常に深刻な問題だからということで、ケア配慮が非常に重要だけれども、それ以外のとこ ろについてはそれほどでもないというような意識でよろしいのでしょうか。 ○讃井労働法制本部長 それほどでもないというのかどうかは別ですが、ただ労働の分野 でも、基本的な人権にかかわるものと、もう少しそれの周辺になるものがあろうかと思い ます。特に基本的な人権にかかわるものについては、先ほども述べましたがILOが98 年に定めた宣言で示した4つの基本的な原則と権利があります。コアのものとして、まず ここからスタートするというのは、国連のグローバル・コンパクトにも言及されています し、そういう共通の認識というのがあるのではないかと思います。ですから、そこは踏ま えておかなければいけないということで、この手引きの中にも4つは盛り込んであります。 その他の部分についても、当然重要な問題ですので、それこそ現地の重要なステークホル ダーである従業員の期待やニーズに答えるような形で、やっていくというのは別にどこの 国に行っても、変わりはしないと思います。当然現地の文化などは尊重しなければいけな いと思いますが、ダブルスタンダードでいいというわけではないと思います。 ○小畑委員 ありがとうございました。 ○奥山座長 そろそろ予定していた時間が迫ってきているのですが、特にほかにお尋ねし たいということがありましたらどうぞ。よろしゅうございますか。それではまた何か特に 是非ここの部分について研究会で作業を進めるときにお尋ねしたいところがありましたら、 事務局を通してでも、またお尋ねすることがあるかもしれませんが、その節はよろしくお 願いいたします。どうも今日は本当にお忙しい中を、貴重な時間をいただきましてありが とうございました。感謝しております。 ○労働政策担当参事官室室長補佐 それでは次回以降についてご説明させていただきます。 これまで第3回、第4回とそれぞれ連合さん、そして本日は日本経団連さんにヒアリング をさせていただいたわけですが、どうしても国内の問題に集約してしまうといううらみが あるということで、海外の日系企業なり、あるいは日本企業の調達先の関係、あるいは国 内で活動している外資系企業の方々からヒアリングを行ってはどうかというようなご意見、 あるいはこういったチェック指標や開示項目について、具体的な検討を行うにあたって、 こうした先ほどの海外へ進出する企業の場合等も含めてというご趣旨かと思いますが、個 別企業においてどういったCSRの取組みをやっているか、その実態を把握しておきたい、 そういったような意見があったところです。  前回の連合からのヒアリング、本日の日本経団連からのヒアリングの中で明らかになっ た問題意識も踏まえて、次回以降、いくつかの企業からヒアリングを行うこととして、事 務局としてヒアリング先、あるいは事項の案を作成して、各先生にご相談させていただき たいと考えている次第ですので、よろしくお願いいたします。 ○奥山座長 では次回は個別企業に対するヒアリングということで、対象は事務局で準備、 調査していただいて、それで委員の皆さんに流していただければと思います。 ○労働政策担当参事官室室長補佐 それでは日程についてはヒアリング先の関係もありま すので、また別途調整させていただければと考えています。よろしくお願いいたします。 ○奥山座長 わかりました。それでは教えてくだされば、協議をして進めていきたいと思 います。ほかに予定がなければ、本日はこのくらいにいたしたいと思います。どうもお忙 しい中をありがとうございました。 21