厚生労働省発表 平成18年3月6日 |
【照会先】
厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課
児童福祉専門官 | 佐藤 東 | (内線7884) |
課長補佐 | 吉田 利巳 | (内線7882) |
電話 03-5253-1111
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「児童自立支援施設のあり方に関する研究会」報告書のとりまとめについて
厚生労働省雇用均等・児童家庭局
家庭福祉課
○ | 設置の経緯等
近年、児童自立支援施設の状況をみると、入所している子どもの長期的減少傾向が続く中、一方では、虐待を受けた経験や発達障害等を有する子どもの割合が増加する傾向にあり、また、寮舎の運営形態においては多数を占めていた伝統的な小舎夫婦制が減少し、交替制へシフトする施設が増えるなど、施設の様相が大きく変化しつつある。また、相次いだ年少少年による重大事件への対策として、従来、14歳未満の触法少年等については児童自立支援施設等の児童福祉領域が対応してきたものを、少年院における処遇にも道を拓くことに改めようとするなどの少年法及び少年院法の改正の動きがある。
児童自立支援施設は、このような変化や動向の中で、改めてその存在意義が問われており、将来を見据えた今後のあるべき方向について根本的な見直しをすべき時期にきていることから、「児童自立支援施設のあり方に関する研究会」(座長 津崎哲郎花園大学社会福祉学部教授 別紙)を設置。
本研究会においては、児童自立支援施設機能の充実・強化などについて、幅広い専門的見地から8回に亘り議論・検討を重ね、2月28日に報告書がとりまとめられた。
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○ | 報告書のポイント
・児童自立支援施設における支援については、子どもの健全な発達・成長のための最善の利益の確保など子どもの権利擁護を基本として、子どもが抱えている問題性の改善・回復や発達課題の達成・克服など、一人ひとりの子どものニーズに応じたきめ細かな支援を実施することが重要。
・こうした認識の下、(1)施設における自立支援機能の充実・強化、(2)施設の運営体制の充実・強化、(3)関係機関等との連携、(4)児童自立支援施設の将来構想について、当面早急に取り組むべき課題や方向性を整理したもの。 |
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(1)支援技術・方法について
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・アセスメント及び自立支援計画策定のあり方については、子ども自身や親(保護者)の意見・意向も聴きながら、定期的かつ必要に応じてケース検討会議などを開催するといった児童自立支援施設と児童相談所との協働による計画策定のためのシステムづくりを行うことが必要。
・被虐待経験や発達障害等を有する特別なケアを要する子どもの支援・援助のあり方については、支援技術・方法の向上を図るべく、個々の子どもの特性・ニーズに適合した支援方法や問題性に対する効果的な改善・回復方法などの検討や精緻化、専任医師の配置や外部の医療機関との連携・協力体制などの整備、常勤の心理療法担当職員の複数配置や心理療法室の設置などが必要。
・自らの行った非行行為と向き合う取組を通じた自立支援のあり方については、加害行為を行った子どもについて、自らの行った非行について振り返りを行い、きちんと向き合うことが自立の上で必要であるとともに、被害者への配慮という観点からも重要。取組に当たっては、子どもの心の成長・発達状況などを慎重に見極め、状況に応じて、実施内容・方法、実施スタッフを決めることが重要。また、少年院における取組の成果の活用や児童自立支援施設のこれまでの実践の検証・評価など、充実に向けた検討・研究が必要。
・アフターケアのあり方については、子どもが地域社会で自立した生活を送るための支援体制が必要であり、児童相談所、学校、市町村、要保護児童対策地域協議会、児童委員・主任児童委員、自立援助ホーム、職業指導等を行う里親、地域の任意団体・NPO等と連携して取組むことが必要。
・親(保護者)支援・家族支援のあり方については、児童相談所との連携・協力が重要であり、親(保護者)子への支援の内容・方法、関わり方について、充分な意思疎通・連携を図り、取組むことが必要。また、被虐待経験等を有する子どもの場合には、親(保護者)自身や親(保護者)子関係を支援・調整の対象とするケースがあり、児童相談所等の関係者をはじめ、医療・心理・福祉等の施設スタッフが緊密な連携を図り、それぞれの機能に応じた役割を担い、支援・援助を行うことが必要。
・子どもの権利擁護のあり方については、施設は、子どもの権利擁護を基本にすえた運営理念・基本方針を明確にし、研修等により職員全員に徹底するとともに、権利擁護を推進するための計画の策定と実施が必要。
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(2)学校教育について
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・学校教育のあり方については、学校教育の実施の積極的な促進、子どもに応じた個別の学習プログラム・教育計画に基づく個別支援の充実、地方公共団体の所管部局や教育委員会、前籍校(原籍校)などとの緊密な連携が必要。また、学校教育導入後のこれまでの実施状況について検証・評価を行い、あり方についての検討が必要。
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(3)施設機能の拡充について
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・相談機能については、施設がこれまで蓄積してきた非行相談等の知見や経験を生かし、地域の子どもの非行や生活について相談援助を実施し、社会的な要請に応えていくことへの期待は大きく、施設との連携が可能な場所に児童家庭支援センターなどを設置し、相談援助を行うような取組が考えられる。
・通所支援機能については、今後、充実を図っていくためには、例えば退所直後の子どもを家庭から一定期間施設に通所させて、家族調整などを行いながら円滑な社会生活への移行を図るような取組などをモデル的に実施していくことが必要。また、通所支援の多様化を視野に入れた通所支援ニーズの把握やあり方についての検討が必要。
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(1)施設長・児童自立支援専門員等の資格要件と人事システムについて
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・施設長の資格要件・人事システムのあり方については、児童自立支援施設の長などの管理職に対する研修の義務化や資格要件に児童相談所の児童福祉関係経験者を加えて専門性を確保することが必要。また、地方公共団体は、児童自立支援施設等の児童福祉関係経験者の一定期間継続した配置への配慮が必要であり、国においても地方公共団体に対する助言・指導が必要。
・児童自立支援専門員等の資格要件・人事システムのあり方については、児童福祉に関係したことのない職員が任用されることのないよう児童福祉施設最低基準の改正、国立児童自立支援施設における研修等の充実、児童自立支援専門員資格の取得に向けた支援等を行っていくことが必要。また、機能が充実している施設を有する地方公共団体や国立児童自立支援施設から、地方公共団体のニーズに応じて、一定期間出向させる仕組みをつくることなどが求められる。地方公共団体は、経験の蓄積により、より専門的で効果のある支援が図られるよう在任期間について考慮することが必要。
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(2)寮舎の運営形態について
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・小舎夫婦制の維持・充実・強化のあり方については、家庭的な形態の小舎夫婦制の維持・強化を図っていくことが重要であり、幅広い人材を対象とした養成や小舎夫婦制における参考事例のとりまとめなど、小舎夫婦制の人材確保や職員の養成を強化していくことが必要。また、将来的に、非行少年に対する養育を行ってきた専門里親を活用する仕組みの検討が必要。
・交替制寮舎の充実・強化のあり方については、交替制に移行する際は、子どもの発達保障という観点からの検討を尽くし、子ども集団の構成・適正規模や居室等の生活環境に配慮するとともに、子どもの諸ニーズに適切に対応できる職員体制の整備が重要。また、すでに交替制で運営を行っている施設の視察や研修派遣の取組が求められ、国においては、職員間の連携・協働のあり方などについての参考事例の収集や提供が必要。
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(3)設置運営主体について
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・設置運営主体のあり方については、児童自立支援施設は、家庭裁判所の保護処分により入所してくる子どもや自傷・他害を伴う行動傷害を有する子どもなども入所しているなど極めて公共性の高い施設であり、子どもに対する適切な対応を図っていくためには、施設運営の安全性・安定性・継続性に加えて職員の専門性の確保が不可欠である。運営の民営化を検討の視野に入れる場合には、少年非行対策へのスタンス、公としての責任・対応、民営化する場合の施設機能の維持・強化などの検討が必要であり、特に、財政的基盤のあり方、現行と同等以上の支援の質を確保するための人的配置、公的支援・連携システム、とりわけ、運営に支障が生じた場合の設置者としての責任を持った回復・サポート体制などの諸課題を満たすことができるのかどうかについての検証が不可欠。
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(1)児童相談所との連携について
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・児童相談所との連携のあり方については、児童自立支援施設と児童相談所の双方の専門性の向上が図られるとともに、児童相談所と緊密に連携して、入所の円滑化、親(保護者)への関わり方、退所後のアフターケアの充実を図っていくことが必要。相互理解を深め、信頼関係の構築を図るためには、積極的に人事交流や合同研修などを行うことが必要。
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(2)学校・市町村等地域との連携について
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・学校・市町村等地域との連携のあり方については、学校教育の導入の推進や教育内容の充実を図るためには、地方公共団体の所管部局と教育委員会との連携、被虐待経験や発達障害等を有する子どもなどが適切な診断を受けるための医療機関との連携、家庭復帰後のフォローアップ体制を構築する上での地域の関係機関との連携を深めることが重要。
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(3)児童福祉施設・少年院との連携について
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・児童福祉施設・少年院との連携のあり方については、児童自立支援施設と少年院相互において、それぞれの支援技術・方法や連携のあり方についての情報交換、共同研究、合同研修、人事交流を行うことが必要。また、子どもの退所先として児童養護施設の地域小規模児童養護施設や自立援助ホームを活用するなど新しい連携の仕組みを検討していくことが必要。
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(4)家庭裁判所・警察との連携について
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・家庭裁判所・警察との連携のあり方については、児童自立支援施設と家庭裁判所が情報交換等により相互理解・認識を深めておく必要があり、裁判官や調査官との定期的な連絡会・合同研修会の開催や時には事例検討会を行うなど、連携・協力体制を構築していくことが重要。また、児童相談所などとともに行う警察との連携は、地域における子どもの健全育成、非行の防止及びその啓発はもとより、退所した子どもの立ち直りを見守る上でも重要であり、地域における児童福祉の観点から協力・連携体制の充実が必要。
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(5)児童自立支援事業に関する広報・啓発について
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・児童自立支援事業に関する広報・啓発のあり方としては、児童自立支援施設の実践や児童自立支援事業について国民一般に理解をしてもらうことが必要であり、児童自立支援施設の実践等を紹介する出版物の定期的な発刊、あるいはホームページの開設などにより広報啓発を行うことが必要。
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(1)各児童自立支援施設の地域におけるセンター化及びブロックの設定について
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・児童自立支援施設のセンター化及びブロックの設定のあり方としては、将来的には、各施設に少年非行全般への対応が可能となるセンター機能を設け、非行などの行動上の問題のある子ども、支援の難しい子ども等に対して総合的な対応ができるセンター施設として運営していくことが望まれる。また、地方公共団体の範囲を越えた地域ブロックを設定し、ブロックごとの連携・支援システムにより特徴ある施設運営や取組が期待される。
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(2)国立児童自立支援施設の総合センター化について
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・国立児童自立支援施設の総合センター化としては、国立児童自立支援施設は、支援技術・方法の開発や精緻化及び相談・通所・短期入所・一時保護機能の拡充などについてのモデル実施など、機能の充実・強化に向けた積極的な取組が必要。また、人材の養成や派遣、及び現在のニーズに対応できる職員の専門性の強化のための養成・研修機能の充実・強化が必要。さらに、児童自立支援事業などの児童福祉や少年非行に関する情報発信センターとしての機能が求められる。
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○以上を踏まえ、児童自立支援施設は、子どもの健全な発達・成長のための最善
の利益の確保を目指し、取り組むべき課題について着実に一つ一つ解決し、具体
的な成果を上げることが期待される。その上で、今後の取組の状況や将来構想を
踏まえつつ、継続的に検討を行いながら、児童自立支援事業を推進していくこと
が必要。
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児童自立支援施設のあり方に関する研究会委員名簿
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委員名 |
役職 |
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岩田 久 |
東京都立萩山実務学校長 |
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小木曽 宏 |
淑徳大学総合福祉学部助教授 |
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瀬戸 則夫 |
大阪弁護士会弁護士 |
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津崎 哲郎 |
花園大学社会福祉学部教授 |
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野田 正人 |
立命館大学産業社会学部教授 |
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服部 朗 |
愛知学院大学法学部教授 |
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藤岡 淳子 |
大阪大学人間科学部教授 |
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山内 稔 |
国立武蔵野学院長 |
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吉岡 一孝 |
埼玉県立埼玉学園担当部長 |
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(敬称略、五十音順、○は座長) |
【開催経過】
研究会開催 | |
第1回 | 平成17年 7月29日(金) |
第2回 | 平成17年 8月29日(月) |
第3回 | 平成17年 9月28日(水) |
第4回 | 平成17年11月 4日(金) |
第5回 | 平成17年12月14日(水) |
第6回 | 平成17年12月27日(火) |
第7回 | 平成18年 1月25日(水) |
第8回 | 平成18年 2月28日(火) |
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「児童自立支援施設のあり方に関する研究会」
報告書
平成18年2月
目次
● | 報告書(本文)
はじめに
おわりに
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● | 別添
○ | 児童自立支援施設のあり方に関する研究会検討課題 (PDF:20KB) |
○ | 児童自立支援施設の施設数、定員、現員の推移 (PDF:45KB) |
○ | 児相相談件数・警察少年相談件数・児童自立支援施設在籍数・少年院新収容者数 (PDF:276KB) |
○ | 児童自立支援施設における家庭裁判所の決定による措置児童の割合 (PDF:19KB) |
○ | 児童自立支援施設における中卒児童数の推移 (PDF:24KB) |
○ | 児童自立支援施設における施設長等の任用資格要件及びその任用状況 (PDF:45KB) |
○ | 小舎夫婦制の施設数(推移) (PDF:18KB) |
○ | 児童自立支援施設のあり方に関する研究会開催経過 (PDF:8KB) |
○ | 児童自立支援施設のあり方に関する研究会委員名簿 (PDF:13KB) |
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