資料3

評価委員会における主な意見(第4回)


議題:総合施設の教育・保育の内容に関するガイドラインの在り方

1 ガイドラインの基本的な考え方

 (1) 総合施設の教育・保育の理念の観点

 幼・保連携施設の中には、モデル園にも存在するが、園と園とが3km離れている例もある。その中で一体性を判断するには、共通の理念なりが求められると思う。一つの視点は、他の委員も述べているが、「子どもの最善の利益」であろう。

 家庭・地域との連携を視野に入れた「生活の連続性」は重要な概念だが、保育所側からの意見としてよく聞くことは、「幼稚園は預かり保育の時間をオプションとして位置付けすぎる。」とのものである。預かり保育の時間を含めた、1日を通して子どもの生活を見ていく視点が大事。

 「理念」は大事だが書き方が難しい。4類型での展開を考えるとき、理念をどうガイドラインに示していくか。理念として考えられるのは、教育基本法や、児童福祉法や、子どもの権利条約などに示され、また、それらの理念を踏まえて幼稚園教育要領や保育所保育指針も出来上がっているので、それらで示された理念を示していけばいいと思うが。ただし、あまりにも様々な形態があるので、どこまで理念でしばっていけるかが課題か。

 理念については、合同検討会議の審議のまとめや評価委員会の中間まとめに、審議を尽くして反映してある。ガイドラインにおいてもその考えを踏まえてほしい。

 以前、評価委員会の別の委員とともに、幼・保一体型施設における合同保育の研究を行い、合同保育の指針について示したことがある。生活の連続性、発達の連続性、子育て支援などを整理してきたが、全体をコーディネイトしていくことが重要であると認識された。まとめるに当っては、保育所保育指針の構成を基礎とした。自分は保育所指針の関係者でもあるので、保育所保育指針において様々な子ども、生活の多様性について配慮しながら策定してきた経緯も踏まえて、総合施設ガイドラインに当っては、保育指針を踏まえてイメージ化できるのではないかと思う。
 今回の論点整理のペーパーが、もう少し文章化されている方が、議論がしやすいと思ったが、ほかに考えられる理念としては、
 ・ 子育て支援を通して親の育ちを支える。
 ・ 子どもの集団活動の効用
 ・ 保育に欠ける子も、欠けない子も、よりよい育ちを支える、
などがある。

 (2) 多様な実施形態(4類型)を踏まえた観点

 柔軟な実施形態が想定される中、以前にも意見が出たが、それぞれの施設が「自己評価」を行うこと、さらに、それが「第三者評価」にまで広がっていくことが大事。これは強制的な制度ではなく、保育の質を高めるために行うべきもの。施設の職員一人一人が共通の認識を持ち、組織の中で評価し、その評価を次の取組に活かしていくこと。

 形態の多様性の中で、質を担保することが一番大事。親へのサービスも大事だが、子どもの育ちをどう支えるかが最も大切。その質を具体的に示していくことが必要であり、それを、自己評価、他者評価、第三者評価などで支えていく。
 他の委員も言っているが、子どもの視点に立った評価を推進してほしい。

 私も基本的に同じ考え。ガイドラインは、子どもの育ちに寄り添った形にしてほしいし、その中で、早期教育の問題などにも触れてほしい。


2 教育課程・保育計画及び指導計画の在り方

 「教育課程」・「保育計画」、「指導計画」は、総合施設の教育・保育の基本である、名称も含め、概念を整理していってほしい。

 総合施設を作っていく中での、プロセスが大事である。私が関わった一体化施設の中で、幼・保双方の職員が在り方を議論していく中で、例えば早朝保育を「おはようタイム」、「共通の時間」を「わくわくタイム」、午後の保育を「ゆったりタイム」などと整理し、その各々についての課題を整理していく中で、早朝保育における課題などが明確化された効果があった。
 また、そうした総合施設検討における課題整理が、既存の幼稚園や保育所の保育内容の課題整理につながり、保育の向上につながる。こうした効果があるので、総合施設設計におけるプロセスを大切にすべき。

 総合施設の制度化とともに幼・保を巻き込んだ大掛かりな取組が始まる。これが既存の幼・保に良い影響を与えてほしいと思う。しかし現実には、総合施設化には、保育所側は後ろ向き、幼稚園側についても保育所側ほどではないにせよ及び腰だと聞く。総合施設化を推進するなら一定のインセンティブが必要。

 (1) 総合施設に特有の課題を踏まえた観点

  ア 合同保育

 幼・保の合同保育や合同活動などの連携について、園行事中心に行っている施設と、完全に合同保育している施設とに大別される。

 基本としては、行事だけの連携でなく、一緒に生活させるべきであろう。
 ガイドラインに「合同の保育が基本」くらいには書けないものか。


  イ 利用時間の長短と幼児への影響

 視察した園で、長時間児への配慮として、短時間児が降園するときに預かり保育室の窓をカーテンで仕切って長時間児に見えないようにしていたが、過剰反応のような気がする。預かり時間が極端に長い場合は別として、8時間程度の保育なら、子どもへの影響はそれほど出ないと思う。受け入れる側が発想を転換する必要があるかもしれない。

  ウ 登園日数の違い

 休業をどうするのか、休園の条件などについて、整理してほしい。全国でばらばらな展開になってしまう。

  エ 生活スタイルの違い(給食など)

 給食については、食育の観点を踏まえ、整理が必要。給食についてモデル事業各園で取り組みが様々。そこに、まとまった考えを整理すべき。

  オ 異年齢交流

 さまざまな形態で行われている。クラス単位での相互交流もあれば、3〜5歳児についてクラスそのものを異年齢編成にしている園もある。モデル園ではないが、0〜5歳児を異年齢編成している園まである。また、オープンスペースの活用の仕方も園によりまちまち。

  カ その他

 保育の内容を考えるとき、保健的なこと、例えば感染症対策とか、こうした保健や健康について、幼・保で意識のズレがある。長時間保育を行うに際しては、こうした視点が大切なので、子どもの命を守る観点からの整理も必要。


 論点に整理されていないが、障害児への対応、特別支援教育の関連も盛り込むべき。

 (2) 保育者のかかわり方

 職員が共通理解にたって保育、子育て支援を行うことが大事。

 (3) 発達や生活の連続性を踏まえた教育・保育環境の構成

 遊具について、特に幼稚園にあっては、低年齢児(0〜2歳児)用の遊具についての経験等が不足している。こうした点について事例集等で示すのが効果的。
 遊具について、モデル園で観察したところ、低年齢児についての物的環境づくりの問題もあるが、一方で、広い園庭があるに関わらず、遊具を意図的に配置していない、固定遊具が絶対的に不足しているなどの例もあった。さまざまな取組があるので、これも事例集等に整理することが必要かと思う。
 いずれにせよ、子どもが長い時間過ごす可能性がある施設なので、物的な環境について示すべき。

 午睡は、保育所では中核となるものだが、実態としては、4〜5歳児については午睡を取らすべきかどうか要検討。特に5歳児には午睡を取らせる必要があるのか検討する必要がある。

 幼稚園は低年齢児の受入れについて、経験が不足していることから、環境の構成に不安がある。以前にも、満3歳児の受入れについて、幼稚園は試行錯誤しながら取り組んできた。総合施設では0〜2歳児も受け入れることになるが、実施各園での総合施設化の準備は、急がないで準備していってほしいと思う。一歩一歩分かりながら準備を進めるのが大切。低年齢児は自分で自分の体重を支えられないことも多いので安全面の配慮が特に必要。

 (4) 小学校教育との連携

 指導要録の扱いを総合施設でどうするのか、ぜひ検討を。指導要録等の送付をガイドラインで示せないか。

 小学校との連携についても、学校行事における連携が多い。連携がどうあるべきかを含めて示してほしい。

 私も指導要録等の送付は賛成。また、内容的な連携も進めるべきで、カリキュラムの連携も必要。

 小学校教員を初任者研修や10年目研修で幼・保で実習させるなど、相互理解の取組も進めるべき。

 (5) 研修、保育者の資質向上

 低年齢児や長時間児への配慮について、専門的な人的配置を心がけることは、すでに中間報告で打ち出されている。しかし大事なことは、ただ専門家を配置すればいいのではなく、幼・保それぞれの専門家同士が交流し、相互に理解に努めることだ。総合施設においては、チーム・ワーク、人的交流がとても大事になってくる。こうしたことを、ガイドラインや事例集等で打ち出していくべき。
 また、幼稚園の世界では、保育所と連携していくに当たり、従来型の研修時間などを守りたいという意識が強いが、一方で保育所側ではローテーション勤務もあり、幼児の世話を離れて園内研修をする時間などが幼稚園と比較して不足しているのは事実であるので、幼・保連携にあっては、相互に配慮することも必要。例えば、ある連携施設では、夏季休業中は、幼稚園の先生も保育士の代わりに低年齢児保育を担当させた。すると、それが幼稚園教諭への研修効果があり、低年齢児の世話をすることで子どもの発達への理解が深まった。

 総合施設の職員が、幼稚園関係者の研修、保育所関係者の研修の両方から排除されることのないような扱いを。

 研修の中核は園内研修かもしれないが、園外小学校との連携についても、学校行事における連携が多い。連携がどうあるべきかを含めて示してほしい。

 論点整理に記述がないが、総合施設が幼・保連携機能を高めるものなら、職員の資質向上とともにマネージメント能力が要求される。その意味で、園長の果たす役割について整理すべき。

 幼稚園教諭については教員免許更新制が検討されている。保育士はどうするのか。この点も検討すべき。

 (6) 保護者・家庭との連携

 親の子育て力を高めることに関してコーディネイトする力が求められる。

 視察した園で聞いた話だが、保護者との連携を進める中で、就労している親に対しても、趣旨などをよく説明し理解を求めると、休暇をとって園行事に参加もしてくれているという。いま、働き方の見直しを企業に求めていく中、幼稚園の活動にも父親の参加が増えている。働き方の見直しの議論とも連動していってよい。

3 子育て支援の在り方

 ガイドラインの中で、子育て支援のメニューや、在り方を示すべき。

 以前、他の委員が指摘した「アウトリーチ」の発想、在宅の子育てについて、園側からアウトリーチを図ることについても、連携の在り方として、検討されたい。

 子育て支援を担当する職員の資質向上も大切である。

 私は中間まとめの表現に不満がある。今の職員体制でも園児の育ちを支えるのが大変な中で、内部の職員に研修を受けさせるだけで子育て支援も担当させるように読める。子育て支援を担う担当者の在り方も、示すべきである。

 子育て支援の人員配置等が不明確なまま、子育て支援が必須となり、スタートしてしまう。このことに懸念。
 子育て支援の頻度などについても、「多くやれ、たくさんやれ」と強要せずに、園がだんだんと力を付け、あわせて人的配置を検討した上で、段階的に発展させればいいのではないか。

 今、小児科への親の相談が多く、小児科医がパンク寸前と聞く。子育て支援の充実により、別な形で親をサポートできればよいと思う。

 地域の子育て支援の活用についても、地域の人材が「入ってくる方が望ましい」というような形で示してもらった方がよい。

 地域の人材以外に、地域の様々な機関との連携も示すべき。

4 その他

 (1) 評価について

 何らかの「評価」について考えていく必要がある。

 柔軟な実施形態が想定される中、それぞれの施設が「自己評価」を行うこと、さらに、それが「第三者評価」にまで広がっていくことが大事。保育の質を高めるために行うべきもの。

 形態の多様性の中で、質を担保することが一番大事。その質を具体的に示していくことが必要であり、それを、自己評価、他者評価、第三者評価などで支えていく。

 (2) 園長資格

 園長資格の問題は、どうするのか。総合施設で保育に従事する職員に対しては併有を求めるなど高い専門性を要求しているのなら、同様に、園長についても高い資質を求めるべきではないか。園長は誰がなってもいいのか。

 (3) 安全配慮等

 インフルエンザの蔓延や、台風などの際に、休園にするのかしないのか、そうした整理もして、現場に示していってほしい。

 (4) 園庭・運動場の在り方

 公園を代替するケースなどについて、議論が深まっていない気がする。ガイドラインにおいて一定の整理ができないか。

 (4) 被虐待児対応

 論点に整理されていないが、総合施設化の中で、この視点も意識すべき。
【以上】

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