資料2-1
縦断調査について

  縦断調査室の設置
   平成17年度から「中高年者縦断調査」が創設され、「21世紀出生児縦断調査」、「21世紀成年者縦断調査」の3調査となるに伴い、3つの縦断調査を一元的に管理し、今後の調査項目及び分析手法の検討等を効率的に行うため、7月1日、社会統計課に縦断調査室が設置された。
 それぞれの縦断調査の位置付けは下図のとおりである。

3つの縦断調査の位置付け

3つの縦断調査の位置付けの図

  各調査の概要
 (1) 21世紀出生児縦断調査
  (1)  調査の目的
 21世紀出生児縦断調査は、21世紀の初年に出生した子の実態及び経年変化の状況を継続的に観察することにより、少子化対策等厚生労働行政の企画立案、実施のための基礎資料を得ることを目的としている。
  (2)  調査対象、調査時期及び調査方法
 全国の2001年(平成13年)1月10日から17日の間及び7月10日から17日の間に出生した子(合計約53,000人)を対象とし、1月出生児については8月1日、7月出生児については2月1日を調査日としている。この調査は、平成13年から開始しており、本年度は5回目(対象児年齢4歳半)の調査を実施中である。調査票の配布、回収は、厚生労働省と調査客体のいる世帯との往復郵送方式により行っている。
  (3)  回収率
 第1回調査から第4回調査までの回収率は、以下のとおり。
  1月生まれ 7月生まれ 合計
対象客体 回収客体 回収率 対象客体 回収客体 回収率 対象客体 回収客体 回収率
第1回調査 26,620 23,423 88.0% 26,955 23,592 87.5% 53,575 47,015 87.8%
第2回調査 23,391 21,923 93.7% 23,575 22,002 93.3% 46,966 43,925 93.5%
第3回調査 23,374 21,365 91.4% 23,523 21,447 91.2% 46,897 42,812 91.3%
第4回調査 22,439 20,699 92.2% 22,398 20,858 93.1% 44,837 41,557 92.7%
  (4)  主な調査事項
 過去の主な調査事項は、家族構成、ふだんの保育者、育児の状況、発育状況、父母の就業状況、子供への対応、子どもの状況、子育て感等である。
(詳細は、資料2−2「21世紀出生児縦断調査調査項目(第1回〜第5回分)」のとおり。)
  (5)  第4回調査結果(直近)の概況
 資料2−3「第4回21世紀出生児縦断調査結果の概況」のとおり。

 (2) 21世紀成年者縦断調査
  (1)  調査の目的
 調査対象となった男女の結婚、出産、就業等の実態及び意識の経年変化の状況を継続的に観察することにより、少子化対策等厚生労働行政の企画立案、実施のための基礎資料を得ることを目的としている。
  (2)  調査対象、調査時期及び調査方法
 平成14年10月末現在に20〜34歳であった男女を対象とし、平成13年国民生活基礎調査の調査地区内にいた者のうち約42,000人を抽出し、調査の対象とした。この調査は平成14年から開始しており、本年度は第4回目の調査を実施中である。
 調査時期は、毎年11月の第1水曜日である。
 調査方法は、調査員が配布した調査票に被調査者が自ら記入し、後日、密封方式で調査員が回収する方法としている(第1回調査以降に転出した者については、厚生労働省から郵送方式。)。
  (3)  回収率
 第1回調査から第3回調査までの回収率は、以下のとおり。
  対象客体 回収客体 回収率
第1回調査 33,689 27,893 82.8%
  女性票 16,725 14,150 84.6%
男性票 16,964 13,743 81.0%
第2回調査 29,683 24,393 82.2%
  女性票 14,874 12,483 83.9%
男性票 14,809 11,910 80.4%
第3回調査 25,330 21,564 85.1%
  女性票 12,899 11,083 85.9%
男性票 12,431 10,481 84.3%
(参考:第3回 配偶者票回収率)
  対象客体 回収客体 回収率
配偶者票(女性用) 479 393 82.0%
配偶者票(男性用) 1,634 1,463 89.5%
  (4)  主な調査事項
 過去の主な調査事項は、家族構成(婚姻及び子ども数の変化等)、就業の状況(就業形態の変化等)、家計の状況、健康の状況、出生意欲、職場における仕事と子育て両立支援制度の有無、子育て環境づくり(施策)の利用状況等である。
(詳細は、資料2−4「21世紀成年者縦断調査 1〜5回目の質問項目(案)」のとおり。)
  (5)  第2回調査結果(直近)の概況
 資料2−5「第2回21世紀成年者縦断調査(国民の生活に関する継続調査)結果の概況」のとおり。

 (3) 中高年者縦断調査
  (1)  調査の目的
 団塊の世代を含む全国の中高年世代の50〜59歳の男女を追跡して、その健康、就業、社会活動について、意識面・事実面の変化の過程を継続的に調査し、行動の変化や事象間の関連性等を把握し、高齢者対策等厚生労働行政施策の企画立案、実施、評価のための基礎資料を得ることを目的としている。
  (2)  調査対象、調査時期及び調査方法
 平成17年10月末現在に50〜59歳である男女を対象とし、平成16年国民生活基礎調査で設定された調査地区内の当該男女約43,000人を抽出し、調査の対象とした。
 この調査は本年が初年度であり、調査時期及び調査方法は、21世紀成年者縦断調査と同様である。
  (3)  主な調査事項
 主な調査事項は、家族状況、健康状況、就業状況(資格、能力開発等を含む。)、社会活動、住居・家計状況等である。
 (詳細は、資料2−6「第1回中高年者縦断調査 中高年者の生活に関する継続調査票」のとおり。)

  縦断調査の課題
 (1) 共通的課題
   【 蓄積データの集計・分析及びそれに基づく調査対象事象にかかる因果関係の解明について】
   縦断調査は、同一対象を継続的に調査し、その実態や意識の変化を捉えることにより、行動のタイミングや因果関係を明らかにしようとする調査である点に特色を持つ。
 当部の実施している縦断調査は、上記のとおり、本年度、出生児縦断調査については5回目、成年者縦断調査については4回目の調査を実施しており、蓄積データの集計・分析を通して、調査目的である少子化の要因の特定や、従来の施策効果の検証、さらには新たな少子化にかかる施策に反映・寄与していくことが期待されているところである。
 しかしながら、我が国においては縦断調査の事例は未だに少なく、とりわけ政府統計においては当部の3調査が初めての事例となるため、蓄積データの管理方法及び集計・分析方法については、十分な知識・経験を有していないのが現状である。
 このような状況を踏まえ、当部としては、平成16年度、17年度において、厚生労働科学研究費補助金における統計情報高度利用総合研究事業として、

 「パネル調査(縦断調査)のデータマネジメント方策及び分析に関する総合的システムの開発研究」・・・・・(資料2−7)
 主任研究者:金子隆一氏(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部長)

を実施し、集計・分析手法等の検討を進めているところである。
 今後、この研究を踏まえて、3つの縦断調査について、順次、蓄積データの集計・分析を行っていくこととなるが、これらの集計・分析には、縦断調査について知識を有する研究者との共同作業が必要となることが想定されるため、各種研究費等の活用等も含め、今後の集計・分析体制について検討していくこととしている。

 (2) 個別調査の当面の課題及び問題点
  (1)  21世紀出生児縦断調査における当面の課題及び問題点
 出生児縦断調査に係る学齢期の調査項目と調査方法について
 出生児縦断調査は、調査客体が学齢期に入り、子供にとって学校での生活が大きな比重を占めることとなるが、子供の健全な成長を把握する観点からどのような調査項目を設定すべきか。
 また、学校での生活を把握する必要があるとした場合、家庭を対象としている本調査においては、有効な調査手法が考えられるか。
 同調査に係る調査客体の二つのグループ間の差異について
出生児縦断調査は、1月出生と7月出生の二つのグループを客体として設定し、1月生まれについては8月、7月生まれについては翌年の2月に調査を実施し、2回の調査を併せて集計・分析しているが、調査開始6年経過後(19年度・第7回調査)に、生ずる2つのグループの間の就学児童と未就学児童の差異(以降、二つのグループは学年が異なる)についてどのように考えるか。

   【 今後の調査方法(案)】
第7回調査から年1回(11月)同一調査日として実施する方法
  第6回調査 第7回調査 第8回調査 第9回調査 第10回調査
1月
出生児
調査日 平成18.8.1 平成19.11.1 平成20.11.1 平成21.11.1 平成22.11.1
年齢 5歳6ヵ月
(幼稚園、保育所)
6歳9ヵ月
(小学校1年)
7歳9ヵ月
(小学校2年)
8歳9ヵ月
(小学校3年)
9歳9ヵ月
(小学校4年)
7月
出生児
調査日 平成19.2.1 平成20.11.1 平成21.11.1 平成22.11.1 平成23.11.1
年齢 5歳6ヵ月
(幼稚園、保育所)
7歳3ヵ月
(小学校1年)
8歳3ヵ月
(小学校2年)
9歳3ヵ月
(小学校3年)
10歳3ヵ月
(小学校4年)
概況発表 平成19.12 平成21.9 平成22.9 平成23.9 平成24.9

   【 変更内容(案)】
調査日を年2回(8月、2月)から年1回(11月)へと変更する。
調査項目の設定及び結果のとりまとめを、同一年齢から同一学年へと変更する。




 例えば、1月出生児の平成19年11月調査と、7月出生児の平成20年11月調査を、第7回調査として同一調査項目の下に行い、調査結果は平成21年9月を目処に発表する。



7月出生児については、平成19年度は、住所確認等の軽微な連絡に留め、調査は行わない。
(留意点)
 ・ 二つの集団の調査時差が現行の6ヵ月から1年に拡がること。
 ・ 二つの集団の調査時の年齢に6ヵ月の差が生じること。
 ・ 結果の公表までの期間が現行の1年4月から1年10月に拡がること。
  (2)  21世紀成年者縦断調査における当面の課題及び問題点
   【 調査客体の加齢に伴う問題点】
 成年者縦断調査は、調査対象となった男女の結婚・出産・就業等の実態及び意識の経年変化の状況を継続的に観察することにより、少子化対策等厚生労働行政施策の企画立案、実施等のための基礎資料を得ることを目的として実施されていることから、調査項目のかなりの部分が結婚・出産に関するものとなっている。
 調査開始時の調査対象年齢も20歳から34歳として、結婚・出産年齢を幅広くカバーしているが、調査開始から一定の年限が経過すると、最上部の年齢層では調査項目にそぐわない状況が出てくることが想定される(例えば6年経過すると最上部の年齢層は40歳に到達し、結婚・出産に係る項目はなじまなくなる。)ことについて、どのように考えるか。

  参考: 結婚件数に占める妻の年齢階級別結婚件数の割合
・  〜19歳   2.9%     ・20〜24歳   21.3%
・25〜29   43.2%     ・30〜34   20.6%
・35〜39   6.5%     ・40〜   5.4%
出生数に占める母の年齢階級別出生数の割合
・  〜19歳   1.7%     ・20〜24歳   12.6%
・25〜29   35.2%     ・30〜34   36.4%
・35〜39   12.4%     ・40〜   1.6%
(資料)平成15年人口動態統計

   【 今後の調査方法(案)】
 40歳に到達した年齢層の客体を除外しつつ、一定時点(例えば調査開始時から10年後等)に調査の分析結果をまとめ、それを基に、別個の新たな調査客体を設定して、次の成年者調査を始める。
 40歳以降においても、結婚・出産の事実や就業等の状況は把握することができることから客体の除外は行わず、40歳以上の客体については調査項目を変更(結婚・出産に関する項目から意識に関する項目を削除、就業等に関する項目を追加)して調査を継続する。
 アと同様、40歳に到達した年齢層の客体を除外しつつ、平成20年度に20歳から25歳の年齢層の新たな客体を抽出して追加し、調査を継続する。(6年ごとに新たな客体を追加することとなる。)
 5歳階級で表章することが一般的だが、抽出を国民生活基礎調査の大規模年のデータから行うためには3年の倍数の年齢層とする必要がある。(解析との関係で問題がないか検討を要す。)

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