06/01/30 第28回労働政策審議会職業能力開発分科会 議事録について           第28回労働政策審議会職業能力開発分科会 日時 平成18年1月30日(月)10:00〜 場所 厚生労働省省議室(9階) ○今野分科会長 定刻になりました。定足数にも達しておりますので、ただいまより第28 回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたします。お忙しいところをお集まりいた だきまして、ありがとうございます。  本日は所用により、中馬委員、小栗委員、中村正武委員、中村紀子委員がご欠席です。  それでは議題に入りたいと思います。本日の議題は、お手元の議事次第にありますよう に、「第8次職業能力開発基本計画の検討について」です。前回は基本計画の総論につい てご議論いただきました。本日はそれを踏まえて、より具体的な施策の方向について議論 していただきたいと思います。  それではまず事務局から説明をお願いいたします。 ○杉浦総務課長 それでは私の方からご説明させていただきます。資料1−1ですが、第 8次職業能力開発基本計画の構成(案)ということで、全体の構成をこういった形で考え ているというものです。第1部の「総説」と第2部の「労働力需給の動向等」については、 まだご議論いただいていませんが、新しい数字等を入れて、3月になってから31回以降の 分科会でご審議をいただきたいと思っております。  第3部の「職業能力開発施策の実施目標」については、前回の分科会でご議論いただき ました。参考資料の1に同じ資料を付けておりますが、これについては前回のご審議を踏 まえて、3月以降の総括的なご審議のときにこちらのほうで提案させていただいて、ご議 論いただきたいと思っております。  本日は第4部の「職業能力開発の基本施策」の部分を2回に分けてやりたいと思ってい ますが、前半の部分についてご審議を賜りたいと思っております。  それから※にあるように、前回の議論で副題を付けたほうがよいのではないかというこ ともありましたので、並行してこれについても検討してまいりたいと思っております。  資料1−2は、いま申し上げた第8次の計画と、現行第7次の計画の目次と申しますか、 柱立ての比較表です。基本的に大きな柱立ては変わっておりませんが、第3部及び第4部 の項目について、現在のところこういった形で構成を考えているということです。  そこで、資料2について本日ご議論をいただきたいと思うのですが、第4部の基本とな るべき事項の構成案ということです。最初の※に書いてあるように、それぞれの項目につ いて、「現状」「課題」「現時点で考えられる今後の方向性」といった見出しを付けて、 それぞれに記述していますので、これを基に後ほどご意見を頂戴したいと思っております。  それではご説明をいたします。第1の柱である「労働市場のインフラ(経済社会基盤) の整備について」ですが、まず第1に、教育訓練インフラの整備ということです。教育訓 練に伴う各種施策の現状としては、1(○の中に1)から4(○の中に4)にあるように、 教育訓練給付にかかる講座指定等において、大学・大学院における高度な教育訓練機会を 提供するとか、あるいは公共職業訓練の委託先の選定等による就職の促進とか民間教育訓 練、それから事業主等の行う認定職業訓練の支援、それから公共職業訓練における訓練コ ースのニーズに即した設定及び見直し等ということで取り組んでいるものです。  課題の整理としては、産業構造の変化や多様化する利用者ニーズを踏まえた教育訓練と いうことで、今後とも多様な教育訓練の提供を促進していくということが課題であります。 今後の方向性としては、教育訓練給付の講座指定に当たって、その能力評価等の状況を勘 案し、訓練の質の向上を図る。求職者のニーズを踏まえた選択を可能とする公共職業訓練 を実施、充実する。それから、今回制度を改正して実施しようとしている「実践型人材養 成システム」の実施のための事業主の支援、それからeラーニングの手法を活用した能力 開発の推進というようなことが、今後の方向性ではなかろうかということです。  (2)の「能力評価インフラの整備について」は、とりあえず今回資料としてお付けし ましたが、実は後で出てくる技能の振興との関係とも絡みますので、主な議論としては、 また次回にお願いしたいと思っております。概略を申し上げると、現行の取組みとしては、 技能検定職種の見直しとか、能力評価基準の整備、ホワイトカラーの能力評価の推進等で す。課題の整理としては、この能力評価制度が外部労働市場と内部労働市場を結び、円滑 な労働移動を可能とするインフラとしての役割を果たすということで、いろいろな活用状 況の把握をした上で、ニーズを踏まえた整備の充実が課題です。  2頁の「今後の方向性」については、そういった各種ニーズに応じた検定職種、能力評 価基準の整備・充実、ビジネス・キャリア制度におけるユニットの大括り化による整理等 ということで、制度を活用しやすいようにするということです。  3番目が、「キャリア形成支援システムの整備」についてです。これは、現行の取組み として、キャリア・コンサルティングにかかる専門家の養成とか、技法の開発・普及、情 報の収集・整理・普及、ハローワーク等における求職者等に対するキャリア・コンサルテ ィングの実施。さらにはキャリア形成促進助成金の活用等による事業主への支援等という ことです。  課題の整理ですが、今後このキャリア・コンサルティングの重要性が増すと見込まれる 中で、そういったニーズに合ったものとなるよう、キャリア・コンサルタントの養成を図 ること。それからその質の向上や活用機会の拡大、能力発揮を図るということが課題です。  同時に、働く者の生活全体の設計とか、メンタルヘルスなども視野に入れて、キャリア ・コンサルタントの役割、様々な業種や規模の企業における普及ということも課題である と考えます。  「今後の方向性」としては、この民間におけるキャリア・コンサルタントの実践力を強 化するための体制整備、メンタルヘルスなどのいろいろな問題に対して適切な専門家と連 携を図りつつ、支援を行うことのできる体制整備の促進。それから、能開法の改正に伴い 「キャリア形成支援指針」を見直すこと。それから改正内容の周知啓発等による、キャリ ア・コンサルティングの役割の明確化。あるいは好事例の提供といったようなことを、方 向性として挙げております。  4番目が、「情報システムの整備について」です。これについては、現在今年度から 「キャリア情報ナビ」という、情報等を提供するサイトを始めましたが、この運営や、あ るいは各種調査の実施及び結果の普及。それから教育訓練講座の検索システムの運営等の 実施を行っているところです。  課題の整理としては、この「キャリア情報ナビ」について、雇用労働者や求職者だけで はなく、例えば出産・育児・介護等による、そういったキャリアを中断した方々などへの 情報提供。それから、能力開発に資する取組みを活性化し、より充実するということで、 相互に情報交換できるシステムづくりというものも課題であると思われます。 今後の方向性としては、1人1人の働き方が、自らのキャリア形成に資する情報を効果的 に得られるよう、そういった潜在求職者向けの情報をわかりやすく整理する。それから、 欧米のこういった情報提供システムの状況も踏まえながら、職業訓練関係者相互の情報交 換の場を提供する機能を付加するなどの内容や質についての改善を図っていきたいという ことでございます。  5番目が、「労働市場のインフラの整備・充実を図るための官民の協力」ということで す。これは、今後の方向性ということで、現行の取組みについては特に書いておりません けれども、課題の整理として、こういった教育訓練インフラや、評価インフラの整備充実 を図っていくためには、官だけではなくて、現場の状況に精通した民間との協力を円滑に 進めることが課題です。  さらには、こうしたインフラ整備の担い手となるべき専門家集団の動きが十分でないと いうことから、そういった社会的ニーズを把握・反映するために、その集団の育成、施策 の推進に活用することが課題であろうと思われます。  今後の方向性としては、教育訓練インフラについては、「実践型人材養成システム」を、 いわゆる就労・就学に次ぐ第三の選択肢として定着させていくために、実践を担う企業と 理論面を教える教育訓練機関との適切な連携を公的に支援していくということです。  評価の関係のインフラについては、例えば能力評価基準の整備に係る企業・業界団体の コーディネートを政策的に進めていく。さらにその専門家集団の活用については、そうい った方々が教育訓練カリキュラムや能力評価基準策定や運営に関して、技術革新あるいは 社会的ニーズの状況を踏まえながら、その役割を果たしていってもらいたいということで す。  次が大きな2番目で、「働く者一人一人の生涯を通じた持続的なキャリア形成への支援」 です。前書的に数行書いてありますが、これまでいろいろ議論していただいた関係の部分 ですが、例えばニート、フリーターの増加とか、「現場力」の問題、それから長時間労働 者の増加に伴う少子化の進行や、メンタルヘルスなどの問題の深刻化というようなこと。 さらには地域のコミュニティの教育機能の低下というような、「市場の歪み」が深刻化し ているということでこれらに向けた職業キャリアの段階に応じた支援の強化、あるいは職 業的自立の支援といったような事柄を進めていくということです。まず第一に、「職業キ ャリア形成の段階に応じた支援の充実」ということです。  イとして「準備期における支援」、特に若者対策ということですが、現行の取組みとし ては、「若者自立塾」におけるニートの自立支援、ヤングジョブスポットにおけるフリー ター等の支援。就職基礎能力速成講座の実施とかYESプログラムといったような施策。 それから「日本版デュアルシステム」の実施、若者向けキャリア・コンサルタントの養成 とか活用について、というようなことをやっております。  課題の整理ですが、都市化とか自営業者の減少等に伴う動機付け、職業についてのそう いった機会が不足すること。それから職業意識が希薄化していること。目的意識に欠けた 進学に伴う就学意欲の喪失、実践的資質を持った若者の進路をめぐる問題、全体としての コミュニケーション能力や働く意欲の低下などが課題ということです。  今後の方向性としては、初等・中等教育段階からキャリア教育とか職業と触れ合う機会 の創出、それから「若者自立塾」とか、日本版デュアルシステムの実施、キャリア・コン サルタントの活用による若者向けカウンセリングの充実を推進すること。さらに、第三の 選択肢としての「実践型人材養成システム」の普及・定着。来年度から考えている、「地 域若者サポートステーション」による地域の若者支援機関のネットワーク化。NPO等と の協働による、若者の目線でキャリア支援を行う担い手の育成といったようなことが、方 向性として書いてあります。  ロの「発展期」においては、現行の取組みとして、企業における能力開発の支援、これ は認定訓練とかキャリア形成促進助成金の活用です。2つ目が、企業内における自己啓発 環境への整備の支援ということで、能力開発休暇の取得や、自己啓発のための時間の確保。 キャリア・コンサルタントの活用による自己啓発に関する情報提供といったような事柄。  3(○の中に3)として、失業等により、職業キャリアの中断を余儀なくされた者への 支援として、能力開発施設における離職者訓練の実施等です。4番目が、出産・育児・介 護等により職業キャリアを中断した方々への支援として、これらの方々の円滑な再開に必 要な情報の提供です。  それから、積極的な転職とか企業を目指している方々への支援として、5頁ですが、ハ ローワークの中で、キャリア・コンサルタントによる相談援助、あるいは多様な職業訓練 機会を提供する。「創業サポートセンター」における支援などがあります。  課題の整理としては、企業における能力開発投資が重点化していること、労働時間分布 が二極化していること、働く者の意識やニーズの多様化が進展しており、こうした変化に 対応した職業キャリアの持続的発展に向けた支援ということを課題として書いております。  今後の方向性として5つほど書いてありますが、1つ目は、企業が中長期的視点に立っ て人材育成に取り組むことが、企業だけではなくて、労働者のキャリア形成について、あ るいは社会全体についてもつながるものであるということで、認定職業訓練制度とかキャ リア形成促進助成金制度を活用した計画的なOJT、OFF−JTの推進。それから事業 主の求めに応じた公共職業能力開発施設の開放や指導員派遣等の推進ということです。  2つ目は「企業内における自己啓発の環境整備」ですが、能開法、今回の改正の中で、 勤務時間の短縮等の導入促進とか、あるいはキャリア形成促進助成金の時間単位での支給 などを可能とする見直しを行ってまいりますが、企業内におけるキャリア・コンサルティ ングの更なる普及とか、企業外におけるキャリア・コンサルタントの活用も進めてまいる ということです。  3つ目が、「失業等によるキャリアの中断を余儀なくされた方への支援」ですが、雇用 のセーフティネットとしての公共訓練の充実、あるいはハローワークとの一層の連携強化 による円滑な再就職の実現です。  4番目が、「出産・育児・介護等によるキャリアを中断した方々への支援」ですが、キ ャリア情報ナビ等による情報の提供とか、関係分野との連携によって能力開発の施策の対 象となる方々が、必要な情報を得ることができるように努めていくということです。  それから、積極的な転職・起業を目指している方々についての支援ですが、引き続きハ ローワーク等による相談・援助とか、多様な教育訓練機会の提供、創業サポートセンター による支援を行っていきたいということです。  ハとして「円熟期における支援」、いわゆる高齢者の方々中心ですが、このキャリアの 円熟期にある方々が能力を有効に活用して活躍し続けることが課題で、同時に地域のコミ ュニティとか家族のあり方が変容する中で、そういったいろいろな能力を持った高齢者の 方々が、そういった課題に対して社会的貢献を果たし得る環境を整備していくことも求め られているのではないかということです。  今後の方向性として、職業的自立に向けて課題を抱えた若者、それから障害者への実習 などへの支援も含めて、こうした方々が地域社会に貢献できる分野の幅を広げていく。そ の際、マルチライフ支援事業等の勤労者福祉施策等をはじめ、社会教育施策等と効果的に 連携する方策について検討していくということです。  また、キャリアの円熟期を控えた雇用労働者のうち、地域貢献活動を希望する方々が円 滑にそういったことに移行できるよう、NPOへの委託訓練の活用とか、再就職準備休暇 の導入の促進、あるいはライフキャリア全般を見据えたキャリア・コンサルティングの充 実ということを書いております。  (2)として、「福祉から自立に向けたキャリア形成の支援」で、主に障害者の方や母 子家庭の母等の方々への対策です。まずイとして、「障害者への支援」ですが、現行の取 組みとしては、障害者職業能力開発校における訓練の充実、それから一般の職業能力開発 校におけるバリアフリー化や障害者向け訓練の実施。さらには民間教育訓練機関、NPO、 社会福祉法人等への委託による多様な職業訓練の推進等があります。  課題の整理としては、障害者の自立支援、とり分け福祉から雇用・就労への移行支援が 強化される中で、障害の重度化、多様化が進んでいるという現状を踏まえますと、各種分 野、行政分野との連携を強化しながら、障害者の自立支援を行っていくことが課題です。  今後の方向性としては、障害者能力開発校において、重度の障害者を対象にした訓練の 実施。それから一般の能力開発校において、ノーマライゼーションの一層の推進のほかに、 政令指定都市との連携の強化など、様々な地域レベルでの取組みを強化して、委託訓練の 効果的な実施を図っていくということです。  さらに、福祉施設が再編される中で、すぐに雇用に結び付かない障害者に対して、福祉 と雇用の中間領域における就労を活用するなどによって、雇用に向けたキャリア形成支援 を図っていくということです。  ロとして、「母子家庭の母及び生活保護受給者への支援」ですが、現行の取組みとして は、母子家庭の母等に対して、訓練受講期間中の生活支援のための訓練手当の支給。自立 支援プログラムを通じた「準備講習付き職業訓練」といったようなことを実施をしており ます。  課題の整理では、こういった方々は増加傾向にあって、自立に向けた効果的な支援が課 題となっております。特に母子家庭の母に対しては、訓練の受講に当たって保育面につい ての配慮が必要であろうということです。  今後の方向性は、これらの方々の職業的自立が図られるよう、保育の問題など、対象者 の置かれた状況に配慮しつつ、積極的な能力開発機会の提供を図っていくということです。  3つ目として、「人を育てる環境の再構築」ということで、まずイとして、職業キャリ アの持続可能性をめぐる課題への対応です。課題の整理ですが、雇用就業形態の多様化の 一方で、いわゆる非正社員から正社員への移行が難しくなるといったような傾向とか、あ るいは、いわゆる非正社員の中に、職業キャリアの形成に向けての意欲と能力を有するに もかかわらず、十分な能力開発機会が得られないという傾向が指摘されております。こう いった、いわゆる非正社員であっても、意欲や希望に応じて、そういった能力開発、向上 ができる環境を整備するということが課題として書いてあります。  また、長時間労働に伴って、自己啓発の時間を確保できないとか、キャリアの将来に不 安を抱くといったような人が増加する中で、メンタルヘルスをめぐる問題も深刻化してい るということです。さらに、働く人々の仕事・家庭・地域の生活のバランスを保つことが、 企業や働く者自身のキャリアの持続可能性だけではなくて、社会全体の持続可能性の観点 からも重要である。そのためには、各年齢層の「バランスのとれた雇用機会と労働時間の 配分」が必要であろうということです。  今後の方向性としては、以下のような点について検討することが必要ではないかという ことで、まず事業主が作成する職業能力開発計画におけるパートタイム労働者等の位置づ けについて、いわゆる非正社員のキャリア形成に対する職業能力開発推進者の関わり方に ついて、多様な就業形態の人に対する能力開発に関する情報提供や相談援助の在り方につ いて、好事例の情報提供について、といったようなことについての検討の必要性を書いて おります。  8頁にいって、長時間労働に伴う職業キャリアをめぐる問題ということでの方向性です が、職業キャリアの持続可能性の確保の観点から、企業内においても、社会全体としても、 自己啓発や子育て等の生活時間とバランスのとれた労働時間の在り方について、労使はじ め社会全体として議論を深めていくということです。  ロが「地域貢献活動分野の創出と関連する能力開発施策の推進」です。課題の整理です が、青年団とか子ども会、商店街、中小企業集積など、若者の職業意識とか人間力の涵養 に役割を果たしてきた、そういった地域のコミュニティが変容していることにかんがみて、 「生活の場に近い圏域における人を育てる環境の再構築」ということで書いております。  今後の方向性としては、地域における、そうした様々な地域貢献活動の推進、地域に、 企業による雇用以外の就業分野をつくり出すとともに、若者や高齢者、障害者等を受け入 れることによる多様な人材の活躍の場の提供。例えば高齢者が身近な地域で若者に対して、 いろいろ学習の実践教育とか心身双方にわたる生活指導などを進めるといった好循環をつ くり出していく。こういったことを可能とするために、NPOに対する委託訓練、「若者 自立塾」などの自立支援、それから能開法改正による再就職準備休暇の実施などの施策を 進めていくとともに、勤労者福祉施策としてある、「マルチライフ支援事業」における勤 労者の情報提供も進めていくということです。  ハとして、「よりよく『生きる』ことを求める意義」ということで、イとかロで見てき たような取組みを進めることの意義の再整理ということですが、この仕事と生活のバラン スがこれまでも、それほど重視されてこなかった傾向がありますが、人口減少社会を迎え る中で、こういったことについて考え、よりよく生きるということを求めていくための支 援を充実させていくことが課題として書いてあります。このために、仕事と生活の調和を 図ること、生活の場に近い圏域において、社会貢献活動の機会の提供といったようなこと で、様々な展開の機会を提供することが可能となるのではないか。  こういった取組みについては、働く者の生活の充実だけではなくて、地域社会、あるい は社会保障などの面での国民的負担といったことにも資するものにもなるということです。  大きな3番は、「雇用失業情勢や産業分野の動向に応じた職業能力開発の促進」です。 これについての現行の取組みとしては、第7次計画の策定をした時期は、非常に景気も悪 かったこともあって、離職者の早期再就職のための能力開発を重点に書いてありました。 特に雇用の安定拡大に向けて、IT分野とか介護分野、環境分野、その他の新規成長分野 における能力開発とか、ホワイトカラーの能力開発といったことに重点を置いて書かれた ものです。  次の計画を見据えた場合には、雇用失業情勢については、地域や年齢によっては厳しさ があることから、引き続きこのセーフティネットとしての機能を果たす能力開発を実施し ていく必要があると思われます。それから、地域の産業構造やニーズに対応した能力開発 も引き続き重要な課題です。  今後の方向性としては、委託訓練を含めた公共訓練の実施に当たっては、いろいろな労 働需要に的確に対応した訓練を行うとともに、安定行政との連携協力によって、訓練受講 者に対する一貫した再就職の支援を行うこと。それから、地域の産業構造や雇用失業情勢 を十分に踏まえながら、委託訓練の積極的活用、人材のニーズに応じた公共訓練の設定見 直し、地方自治体における産業施策との連携を通じて、産業分野の動向に応じた能力開発 の推進を図っていくといった事柄です。  以下、4番の「現場力の強化と技能の継承振興」の問題、5番目の「国際化に対応した 職業能力開発」、6番目の「能力開発施策の推進体制」については、次々回でまたご審議 をいただきたいと考えておりますので、今回の分野としてはその大きな1から3のところ でご意見を頂戴したいと思っております。  引き続いて、資料3で、前回のご審議の中で、質問されたことについて、データ等を調 べましたので、ご報告させていただきます。まず、「企業における人材投資と経常利益の 関係」ということですが、従業員の能力開発について積極的である企業ほど経常利益が増 加している企業の割合が多くなっている。これは以前にも1度お出ししておりますが、経 常利益と従業員の能力開発の相関関係みたいなことで、どちらが先かという問題もあろう かと思いますが、能力開発について積極的な企業のほうが経常利益が増加しているという 全体的な傾向があるという数字です。  2頁、3頁が、ニートといわれる方々の数値の違いです。厚生労働省で出している労働 力調査からの推計では、64万人。内閣府が出している就業構造基本調査からの推計では85 万人という数値です。対象者の範囲については、細かいことはいろいろありますが、下の 「定義」のところで、左側の赤枠で囲ったほうが、非労働力人口のうち、1(○の中に1) と2(○の中に2)のすべての要件を満たすということで、年齢が15歳から34歳、これは 右と同じです。2(○の中に2)のところで、「家事と通学をしていない者」ということ で、こちらが家事のほうが入っております。これに対して、右側の内閣府の調査では、1 (○の中に1)の「年齢、通学」については同じですが、3(○の中に3)「卒業者」と 4(○の中に4)の「未婚である」ということが要件として書いてあります。ですから、 「家事」が入っているかいないか。それから右側の「卒業者」、未婚の方が入っていない かどうかということで、その数字の差が出てきているのですが、次の頁をご覧いただくと、 上のほうの円グラフですが、左側の労働力調査のほうだと、男女比が62.5対37.5に対して、 内閣府の調査では、ほぼ同じであり、女性のほうがやや増えております。こういった、男 性と女性の比率などを考えると、主に家事の方々が入っているか入っていないかというこ とで、この差が出てくるのではなかろうか。これは厳密には、もちろん分析してあるわけ ではありませんが、考えられる要因としていちばん大きいものは、家事をしている人が入 っているかどうかということで、この差が出てきているのではないかと思われます。  以上がご説明ですが、あと、参考資料として、前回お出しした第3部の実施目標等につ いての同じ資料と、参考資料の2として、いま私がご説明した各種施策の概要、現状等に ついて資料をお付けしていますので、後ほどの議論の参考にしていただければと思います。 ○今野分科会長 主に資料2でご説明いただきましたが、大きく言うと1頁目の1の「労 働市場のインフラ」の部分と、これが3頁くらいまで続きます。あと、3頁目から、2の 「働く者一人一人の生涯を通じた持続的なキャリア形成の支援」、これが長いのですが、 3頁目から9頁目まで続いています。  最後に9頁目に、「雇用失業情勢や産業分野の動向に応じた職業能力開発の促進」とい うことで、大きくいうと今日はこの3つの分野について議論をしていただきます。  全体をきちっと議論していただきたいと私は思っております。まず申しわけないのです が、進め方で、いま言った大きな1、2、3の順番で進めさせていただいて、最後にもう 一度全体についてご意見をいただくというような段取りで進めさせていただければと思い ます。  それでは早速ですが、1頁目から3頁目までの「労働市場のインフラの整備」というと ころにかかわる点で、ご意見、ご質問をいただければと思います。いかがですか。 ○鈴木委員 1つお尋ねします。2頁の(4)の「情報システムの整備」のところに出て くる1(○の中に1)の「キャリア情報ナビ」、平成17年度から整備が始まったと先ほど ご説明があったように思いますが、これは安定局がやっておられる「しごと情報ネット」 との住み分けというのは、どういう形になっているか。その辺は相互に関連すると思うの で、何かうまく双方が機能するとよいのではないかと思うのですが、その辺はいかがでし ょうか。 ○亀島基盤整備室長 安定局の「しごと情報ネット」のほうは、主に求人者と求職者のマ ッチングという観点からつくられているシステムです。「キャリア情報ナビ」は昨年11月 にスタートしたもので、現在、充実中段階ですが、能力開発やキャリア形成に関する情報 を、いろいろな形で収集し整理し、提供していく。そういうふうにご理解をいただければ よろしいかと思います。  もちろん、そのキャリア形成の中には、マッチング(適職選択)をどうしていくかの問 題もありますので、そこは相互にリンクを張って対応するという形をとっております。 ○今野分科会長 私、見たことがないのですが、「キャリア情報ナビ」というのは、何が 載っているのですか。 ○亀島基盤整備室長 能力開発に関するポータルサイトという位置づけをしているのです が、いろいろな所に点在していた様々な職業能力開発関係の情報を、まずは第1段階とし て整理しているところです。ですから、私どもは今いろいろな所と提携して、いろいろな 形でリンクを整理させていただいているのがスタート時点である第1段階の状況だと思い ます。さらにこれから、私どもにも、職業能力開発に関する数々の研究調査結果がありま すので、そういったものを年度内に整理して、皆様方にわかりやすい形でご提供したいと 思っています。  また、来年度にはさらに、参考資料の14頁にお示ししているように、各利用者ごとの区 分に応じた情報の提供の仕方をさらに検討して、充実させるということや、それから能力 開発の関係者がいろいろいらっしゃるのですが、そうした方々のネット上でのやり取りの 場がなかなかなかったものですから、そういった情報交換についても出来るようにして、 職業能力に関するポータルサイトとして発展させていこうと考えております。 ○今野分科会長 ほかにご意見ご質問ございますか。 ○西原委員 質問ですが、3頁の「労働市場のインフラ整備」のところで、ここで課題の 整理、それから今後の方向性のところに、「専門家集団」という言い方があるのですが、 これはどういったところを専門家集団と見ているのですか。 ○今野分科会長 どなたかいかがですか。私もちょっとお聞きしようかなと思ったのです が。この3頁目の中程に、「専門家集団」という言葉がありますが。 ○草野審議官 これは考え方として、例えば技能検定などをやる場合に、技能検定委員と いうことで、業界の方を集めて、アドホックに集めてやっているわけですが、本来、国が そういうコーディネートをして技能検定をつくるときに集めるというだけでなく、そうい う、本来技能検定委員になられるような、業界におられる専門的な知見をもった方々が集 まって、そういう方々が集団として、自分たちでお互いに研鑽し合いながら評価基準をつ くるなり、教育訓練システムをつくる。それでそこの機関がいろいろなものを認定してい くとか、アメリカではそういう仕組みがかなり発達していますけれども、我が国でも、そ ういうことを目指して専門家集団を育てていくべきではないか。そういう考えがあるわけ です。  キャリア・コンサルタントについては、キャリア・コンサルタントの養成等を行ってい るいろいろな民間機関、会社が集まって、自主的にそういう評価基準を統一していく。音 頭取りは国が始めましたが、そういうことを始めております。「キャリア協議会」と言っ ていますが、これは1つのモデルになり得るもので、ほかの職種についても、やはりそう いったものをつくっていって、いつまでも国がやるというだけでなく、そういう集団が自 分たちの業界に属する職種についてやっていく。そういう姿を目指していくべきではない か。そういう考えから、こういう書き方をしているわけです。 ○西原委員 専門家集団という言い方は非常にわかりにくい。いま言われた、例えば、官 民の連携とか、あるいは例えば民の中で、情報の部分なのか、どういった形の役割を期待 するのかということも、もうちょっと明確にしないと、どこまでかというのが、期待する 部分と方向性が見えないので、いま言われたことをもうちょっとここへ出していただける と、少しイメージが湧くかなという感じがします。 ○今野分科会長 例えばいまだと、業界団体に、業界団体全体ではないですが、業界団体 の一部の機能として、こういうことも求めている部分というのはあるわけですね。そうい うこれまでのスキームと、新たに、例えば職業能力開発プロフェッショナルの人たちの、 こういう専門家集団との関係というのは、どうなっていますか。 ○草野審議官 いまのところ、いわゆる技能とか知識というのは、企業内に蓄積されてい て、外部化はしていないわけですが、やはりある程度労働力が移動とか流動化していった 場合、職種によってはかなり外部市場みたいなものが少しずつできてきて、そこで専門家 が集まって研鑽し合うとか、そういうことが出てくれば、企業内部にあったものが少し外 部化してくる。外部化してきた場合には、そういう専門家集団のようなところは、外部化 された知識とか技能の蓄積を担って、そこに一定の役割をもってもらう。こういうことが 可能となってくると思っていまして、まだそこまでなかなかいっていないのですが、一部、 そういうもののFP(ファイナンシャル・プランナー)やキャリア・コンサルタントなど については、できてきつつありますので、そういうものについては、外部化されればそこ に一定の権限を与える。そういうことで、これは特に能力評価基準とか、教育訓練のレベ ルの認定とか、そういうことには非常に大きな役割を果たし得るだろうと思います。 ○今野分科会長 イメージですね。 ○草野審議官 部分的にまあ、ちょっとアメリカみたいなシステムを念頭に置いています けれども。 ○今野分科会長 ほかにございますか。 ○草浦委員 2頁目のキャリア・コンサルティングの重要性が一層高まるということは非 常によくわかるし、これからキャリア・コンサルティングの専門家の役割が大きくなって いくと思うのですが、こういうことで、数が利用者ニーズに合ったものとなるようにとい うことと、質の向上等を図っていくということなので、これは、言われていることはよく わかるのですが、大体どんなイメージの数、質というレベルなのでしょうか。それをもう 少しご説明いただければと思います。 ○半田キャリア形成支援室長 いま私どもはご案内のように、キャリア・コンサルタント に関しては、平成14年度から開始した、当時の坂口大臣の、「5年間で5万人計画」に基 づいて、行政と民間と一緒になってやっているわけですが、内訳として、やはりいちばん ニーズが高いのは、企業であろうと思っています。企業の内部、例えば一部上場企業など には、そういった体制を十分とっていただきたいと思っていますし、その他の企業に関し ても、外部のキャリア・コンサルティングサービス機関、そういったものが育成されてき てほしいと考えております。  それから、たびたび申し上げているように、キャリアの問題は、その人の、言うなれば 一生全体に関わるようなお話になってきますので、教育訓練過程におけるキャリア・コン サルティングというのも非常に重要です。さらに、労働市場から引退した後のことも視野 に入れた支援等も重要だと思います。  そういったことを諸々考えていくと、実は、まだ粗々の試算ですが、6万からもうちょ っと上の数字になるのかなと考えております。5万人計画に照らして、4年目が終わろう としている現在、官民合わせて約3万3,000人ということで、概ね5万人計画は予定どお りいっているということですが、全体から見ますと、まだまだ不足しているかと思います。  さらに、キャリア・コンサルティングの実態などを見ていると、質の向上などを早急に 進めていく必要があるということを感じていまして、そういったことを期している次第で す。 ○今野分科会長 ほかにございますか。それでは、また最後に全体の討議をしたいと思い ますので、これが多いものですから、その次の大きな2にまいりましょうか。それではお 手元の資料2でいくと、3頁目からになりますが、大きな2の「働く者一人一人の生涯を 通じた持続的なキャリア形成支援」、3頁目から9頁目くらいまで続くのですが、この部 分でご意見なりご質問をお願いいたします。 ○黒澤委員 これは全体にかかわることですが、先ほど2頁目の「情報システムの整備に ついて」のところで、安定局の仕事情報ネットとの関連はというご質問がありましたが、 それと似たような形で、4頁の「若者準備期における支援」における、例えばジョブカフ ェとかの関連ですが、そういった、この構成案、この第4部のところで、同じ目的を達成 するための厚労省内の他局、あるいは他省庁の実施している施策との関連というようなも のをもう少し、例えば、「今後の方向性」の中ででも触れていただければ、よりわかりや すくなるのではないかと感じました。  もう1点は、5頁目の、ロの「発展期における支援」のところですが、ここに、教育訓 練給付制度が入っていないことに、ちょっと違和感を感じたのですが、それはなぜなので しょうか。以上2点伺います。 ○亀島基盤整備室長 安定局との、各施策との関係については、ご指摘のとおり、日頃か ら具体的にそういう連携の話をしてきておりますので、そういったところについて、少し 整理させていただければと思います。 ○今野分科会長 もう1つ、2つ目のご質問について。 ○久保村能力開発課長 いまの点で補足的に申し上げますと、ジョブカフェについては安 定局サイド、経産省の政策が入っているわけですが、能力開発局としても連携しています。 平成17年度から、委託型のデュアルシステムを都道府県経由で行うということになりまし て、ジョブカフェで主体的に活用できるような仕組み、具体的には、ジョブカフェでの受 付を可能にするというようなことを行っております。  それから、就職促進の実践講座といいますか、就職基礎能力速成講座ですが、これにつ いても、ジョブカフェなどで、1つのメニューとして活用していただけるようにというこ とで、平成17年度から新規に要求して、これもやはりジョブカフェで受付けをすることが できるように仕組みを改善し対応しております。  個別的にはそういう形で、施策の連携は行っておりますのが、今後ともそういうことは やっていきたいと思っております。 ○今野分科会長 黒澤委員のご意見は、そういうことをもう少し前面に出して書かれたほ うがいいのではないですかということだと思います。 ○久保村能力開発課長 その辺は検討させていただきます。 教育訓練給付の件も、教育訓練給付としては、いちばん最初の部分にまとめて書いてある のですが、壮年期だけではなく、いろいろなところに全部絡んでくる問題ではありますが、 どこかにうまく入るかどうかについては、まだ検討しています。 ○玄田委員 4頁の(1)のイの「準備における支援」の「課題の整理」のところで、質 問ではなくて意見ですが、ちょっと課題がズレていると思うのです。確か、意識の希薄化 とか、就学意欲の喪失という問題も、全くないとも言えませんし、この実践的な能力を持 っていながらも、進路が定まらないという問題もあるのですが、ちょっと調べればわかる と思うのですが、いま最大の問題は、基本がなっていないということです。多分後で、実 践型人材養成とも関係すると思うのですが、前々回も言いましたが、基本ができていない ということを、みんな言うはずです。ちょっと調べていただいて、一生懸命能力開発に取 り組もうと思っている企業も、結局、若者の基本ができていないケースがたくさんあるの ではないかと思うのです。  具体的にどういうことかというと、挨拶ができないとか、時間どおりに来れないとか、 60分間、人の話を聞くことができないとか。基本なのです。意識の問題ではなくて、そこ ができていないと、多分みんなおっしゃるはずです。ただ、問題意識として、意欲を変え ようという言い方ではなくて、やはり高度な人材養成をするための基本的な能力を蓄積す ることを、まず大前提にやっていかないと、意識を変えるという言い方は、あまりヒット しないというか、いまの重要な問題とちょっとズレている感じがするのです。  去年でしたか、体操男子日本が復活したのも、結局は基本に徹底的に戻って、ピンチに なっても、パニックになっても基本ができている人間はエラーしないという、あれですよ。  ただ、基礎能力とか基本、どちらの言葉がいいかちょっとわかりませんが、いま抱えて いる問題は、そこなのではないかという仮説の下に、もう1回実際の現場の企業の声とか に戻っていただいて、そこをやはり今の準備期の課題と訴えたほうが、合うのではないで すか。鈴木委員、どうでしょうか。 ○杉浦総務課長 課題の整理というところでは、そういった形での記述がちょっと薄いと 思われる。やっている仕事の中で、基礎能力速成講座とか、あるいは後ろのほうの方向性 の中で、初等中等教育からのキャリア教育とか、いろいろ書いてありますが、またその辺 も含めて記述を検討します。 ○玄田委員 言葉の問題は大きいと思うのです。ニートのところも、一応気をつけている のは、「ニートと言われる人々」という言い方はちょっと微妙なので、少なくとも、JI L−PTの研究所もそうだと思いますが、ニートというのは状態として呼んでいるので、 「ニートといわれる人々」というと、すぐレッテル貼りだみたいな形になって、対応する ことでかえって逆差別になるみたいなことになるので、例えばニートという状態にある人 々とか、それは別に、誰かの肩書きではないみたいなことは、少し念頭に置いて文章を作 っていただいたほうが、多少こういう問題に関して、過剰に反応される方々もいらっしゃ るので、少しご留意いただければと思います。 ○杉浦総務課長 はい、わかりました。 ○五嶋委員 3頁の2、働く者一人一人の生涯を通じた、持続的なキャリアの形成への支 援のところについて、実践型人材養成システムの概念の問題提起ですが、現在、文部科学 省のほうで、専門学校の「日本版デュアルシステム」を進めているわけです。厚生労働省 のほうは、実践型人材養成システムを創設して進めているわけですし、今後も厚生労働省、 それから文部科学省とも、引き続き現在の日本版デュアルシステムを同時並行していくも のと思っております。  そこで、やはり新しい制度の実践型の人材養成システムと、現在の日本版デュアルシス テムとの関係をどう整理するのか、両者の概念をどう区別するか、どう位置づけるのかと いうことを、やはり明確にする必要があるのではないかと思っています。  つまり、今後、実践型人材養成システムを、日本版デュアルシステムの中の発展型とし て位置づけるのか、あるいは、日本版デュアルシステムとは全く別の、新たな制度として 位置づけるのかということですね。  いずれにしても、この2つの政策を、今後国民の理解を得て広く全国への定着を図ろう とするなら、それぞれの位置づけや違いを明確にする。行政や企業、学校や学生などにわ かりやすいものにして、実際に取り組みを進める現場に誤解あるいは混乱を生じさせない ようにすることが肝要だなと考えております。  すでに実践型人材養成システムの基本型については、現在、デュアルシステム・コーデ ィネート事業において、日本版デュアルシステムとして先行して取り組んでいることもあ ります。それへの対処も含めまして、適切な処置を講じていただければと思います。以上 です。 ○杉浦総務課長 昨年来のご議論の中でも頂戴をしておりまして、計画の中にどこまで詳 細に書き込むかということはあると思いますが、これまでもご説明していますように、い まやっている日本版デュアルシステムと言われるやり方の大半は、どちらかといえば短期 の早期就職型の委託訓練を中心としたもので、これはこれで1つの成果を上げていると認 識をしています。しかし、今後この実践型人材養成システムということで、現場の中核的 人材になり得る人を養成することとは、ねらいという面では違っている部分もありますの で、そこについて別に日本版デュアルシステムを止めるわけでもありませんので、その辺 の性格のわかりやすいというか、誤解のないような仕分けと申しますか整理については、 今後よく検討してまいりたいと思います。計画の中でもでき得る限り反映したいと思いま すが詳細には全体のバランスもありますので、そこだけを細かく書くわけにはいきません けれども、誤解が生じないような書き方を工夫してまいりたいと思っています。 ○亀島基盤整備室長 位置づけ違い等については先ほど総務課長から説明したとおりの状 況ですが、デュアルシステム・コーディネート事業についてはその実施により分かってき た部分もありますので、そういったことを十分に踏まえまして実践型に移行されるものも ありましょうし、私どもとしても実際の状況をよくお伺いをして進めて参りたいと思って おります。 ○今野分科会長 よろしいですか。本当は、文科省との関係もあると思います。みんな 「日本版デュアルシステム」という言葉を使っているから、わかりにくいですね。文科省 がやったり厚労省がやったり。厚労省の中もいろいろなタイプがあって。 ○杉浦総務課長 いまご案内のとおり、関係5省庁ぐらいで若者に対する全体的な自立・ 挑戦プランを一昨年ぐらいからやっていますが、その中であのときは景気もいま以上に悪 かったこともありまして、早期にやっていくということで日本版デュアルシステムを打ち 出してやってきて、文科省は文科省なりのやり方でやっていますので、そこは今後、我々 のこのシステムを進めていく中でもまたよく話をして、言葉の使い方もあるかもしれませ んし、進め方についてもよく協議してまいりたいと思います。 ○井上委員 質問です。6頁の今後の方向性で、マルチライフ支援事業というのが書かれ ています。私には初めて聞いた言葉なので、それを1つ教えていただきたいのと、(2) の障害者への支援のところで、今後の方向性に福祉と雇用の中間領域における就労を活用 とありますが、具体的にどういう内容なのかというのを教えていただければと思います。 ○久保村能力開発課長 障害者について申し上げます。いま福祉から雇用就労へという流 れが非常に強くなっていまして、これまでですと一般雇用とか、そういうことを目指さな かった障害者たちも自立を目指して、労働市場に出てくることが予想されるわけです。そ ういう中で、私どもとしては職業訓練という形での支援を展開していくことを考えている わけですが、結果的に一般雇用に結び付かないケースもあるわけで、そういう場合に例え ば福祉の世界に帰るとか、いろいろな形態があるわけですが、その中で就業という形態も 1つの選択肢として、きちんと位置づけていく必要があるのではないかと思っています。  そういう意味ではいろいろなことが考えられますが、当面考えられることで申し上げま すと、重度の身体障害者で非常に移動が困難な場合に、在宅で仕事をされたりというケー スがあるわけですが、私どもとしてもこれまで2年間ほど、eラーニングの障害者に対す るモデル事業をやってきましたが、来年度に向けては委託訓練の中にきちんと位置づけて いけないかということも検討しています。そういう意味でいうと在宅就労的な部分での新 しい分野というものは当然、想定していかなければいけないことになろうかと思います。 それがさらに発展していく形で、現在の段階ではなかなか明確には申し上げられない部分 があるわけですが、境界的な福祉と雇用との間の部分で今後、可能性が広がってくるので はないかということも考えられるわけで、その辺についてはできるだけ積極的に取り組ん でいかなければいけないのではないかと思います。 ○今野分科会長 もう1点は、マルチライフ支援事業ですね。 ○村山調査官 マルチライフ支援事業については、今後の回で是非、関係の資料もお配り して詳しく見ていただければと思いますが、ここにも書いていますように雇用労働者が定 年等を迎えられたあとに、その地域のボランティア活動などに移行していくようなモデル とか、そういったことの合意形成なり具体的な好事例の発掘なり、いろいろなやり方につ いて形にしていこうというものです。具体的な部局としては労働基準局の勤労者生活部の ほうで地方の経営者協会をはじめとする、経済団体の大変なご参画なりご協力をいただい て、ボランティア活動をされている方々とか各県単位の関係団体の方々が参集して、いろ いろな協議をしています。何年間かのいいモデルを作っていこうということを事業化して いますが、今後の施策的展開は勤労者福祉施策だけの枠では難しいところもあろうかと思 いますので、そうした点にはキャリア支援という観点から部局間同士の話合いも含めまし て、今後具体化させていきたいと思います。3月の成文になる段階までに関係部局とよく 詰めて、関係の施策の進捗状況のご説明なども併せて、こういった場でもさせていただけ ればと思います。今日のところは以上です。 ○草野審議官 付け加えます。マルチライフというのは、仕事を持ちながら同時にNPO 活動とか地域貢献もやっていて、いきなり定年退職で切り替えるというのは難しいので、 少しずつそういうことをやって、だんだん軸足を移していくことが可能になるように情報 提供でありますとか、企業に対しては経済団体がボランティア休暇の普及とか希望する方 を募るとか、NPO集団のほうはその受け皿の整備とか希望する方に対する情報提供とか、 いま申しましたような少しモデル的な講習だとか、そういうことをやっています。ゆくゆ くはマッチングまでを想定していたのですが、なかなかそこまでいかないで現在は情報提 供、あるいはモデルを作ることに止まっています。これから、もう少し踏み込んでいくこ とが課題になっているという状況です。 ○今野分科会長 その点に関連して、円熟期で書いてあることをずっと見ると、特に今後 の方向性を見ると、半分は本業から引退に入っているというイメージですね。そうすると、 どういう感じですか。書くときにある程度定義してあげないと、読み手は円熟期がわから ないですよね。例えば定年した人。50歳代ぐらい以降の人とか、いろいろな想定ができる わけで、もし50歳代以降ぐらいの人だと、今後の方向性がこれだけでは寂しいよね。もう 現役から去れということだよね。「もっと頑張るぞ」という人もいるのではないかと思う し、60歳以降の人も、雇用延長で頑張るぞという人もいるわけで、その辺のことはあまり 視野に入っていない気がします。 ○玄田委員 関連していいですか。第一部のほうで言うべきかを迷ったので言わなかった のですが、第八次基本計画の目玉の1つは60歳到達者が大量に出ることに、いったい能力 開発行政としてどういうアクションを取るのかということの答えが欲しいと思います。も ちろん、ベースとしては65歳までの継続雇用ということがありますから、それを大前提と してそこで引退と切るのではなくて、少なくとも65歳まで働けるように最大限、労使で努 力することが大前提であるのは当然だと思います。ただ、それはあくまでも労使の合意に よって再雇用だったり継続雇用になるわけであって、そこで一旦いま居る企業をやめて、 何か別のことにチャレンジする場合に、そこに何かの能力開発行政としての取組みがある のか。それとも、既存の高齢者雇用に関するさまざまな助成措置で対応できると考えるか。 それとも2007年問題と言いますが、考えれば2007年だけに起こる問題ではなくて、従来 なかったぐらいの大規模な60歳到達者がしばらく続くときに、能力開発としてどう取り組 むかがいちばん聞かれているわけで、私自身の読み方は円熟期というのは円熟と言ってい るけれども、60歳のことをイメージしているのだろうなと思って読んだものですから、あ とから出てくる技能継承で2007年問題と書いてあるので、そこで広く取り扱うか先ほどの 第一部の労働市場の整備のところになるかはわかりませんが、「どうするの、60歳。これ から来るとき」ということをもう少しはっきり書いていただかないと、読み手は「いった い何が書いてあるの」と思われるのではないでしょうか。 ○草野審議官 私が答えるのかどうかですが、そういうことは全く抜けていますので、抜 本的にこれは書き直しをします。これは当然、引退期定年延長もあります、継続雇用もあ りますし、短時間で働く年金との話であるということもありますし、貢献活動というのも あります。おそらく団塊の世代の方は非常に元気ですから、いろいろな形でこれから活躍 していただかないといけないし、その受け皿というのを多様な形で整備することが最も中 心の課題だろうと思います。そこが全く抜けていますので、これは抜本的に書き直しをし ます。 ○今野分科会長 いかがですか。折角の機会ですから、そういう観点ではこういう能力開 発政策をしたらどうかというご意見、アイデアがあったら、皆さんから出していただこう と思います。 ○長谷川委員 いま言われましたように、今年の4月1日から高年齢者雇用安定法が改正 されまして、特に60歳から65歳、年金開始年齢までの間の雇用継続をすることが義務づ けられましたよね。希望する者全員ですから、いろいろあると思いますが、そのときに労 働組合の取組みはどういう制度を選ぶかというのは、それぞれの単組で決めてくれという ようにしています。  もう1つは、そのときに働き方はいろいろですよと。いまのまま雇用継続する場合もあ るだろうし、別な会社に出向や転籍という方法もあるだろうし、労働時間もそのままの8 時間なのか6時間なのか、4時間4時間なのか。ヨーロッパの場合は、例えば午前中に同 じ仕事をAさんが4時間やって、午後から4時間やってとか、1週間のうちの半分がAさ んがやって、半分がBさんがやるというワークシェアリングだと思いますが、いろいろな 取組みがあったと思います。ただ、現在いまのところ、あまり仕事の分かちあいとか、ど の程度働いていくとか、どういう仕事をするかはあまり議論されていなくて、とにかくこ のまま延長しようという雰囲気が強いのですが、今日議論になった60歳以降の働き方とか 社会の関わり方ということと、どういう能力が必要なのか、能力開発や職業訓練をどうし たらいいかというのは、本当は重要なテーマなのではないかと。でも、前回はNPOだけ を言われたので、60歳を過ぎたらいきなりNPOだけをしなければいけないと言われると 私もムッとしたのですが、60歳以降にどういう働き方をするのかは非常に重要で、そのと きの能力開発をどうやってやるべきかはもっと開発しなければいけないと思います。そう いう意味では、企業や労働者や専門的なことをなさってきた方々が、もう少し何か協議し て開発していくことが必要なのではないかと思います。  1に戻ってしまうと思いますが、先ほど専門家集団の話が出ました。専門家集団という のは評価だけの集団ではなくて、ある意味では企業、雇う方と雇われる労働者と、いろい ろな技能を持っている専門家がもう少し評価だけではなくて、どういう技能の訓練が必要 なのかとか、高齢者の場合はどういう訓練の仕方があるのかが必要なのではないかと思い ます。例えば、私もだんだん自分でわかってきましたが、キーボードを叩くときでも若い ときと同じようにならないわけですよね。そういうときに、どういう仕方があるのかとか、 電気1つ押すとしても、若いときと違うわけですよね。それと、何かものを始めるときの 瞬時の能力が若いときと違うわけで、そういう意味では高齢者というか、特に60歳以降の 職業訓練をいままでとは違う観点で開発することが重要なのではないか。  もう1つは、5頁の発展期における支援の1(○の中に1)3(○の中に3)5(○の 中に5)はそのとおりだと思います。しかし、1(○の中に1)に事業主の求めに応じた 公共職業能力開発施設の開放や指導員派遣と書いてありますが、それだけではなくて先ほ ども言ったように、企業が求めているものと労働者がどういうものを自分で能力開発しな ければいけないか。どういう技術を付けなければいけないのかという話と、指導員の人た ちが、もっとこれらの問題についても単なる施設の開放だけではなくて、どうあるべきか について、特に地方の意見を聞きながら行うことが必要だと思います。画一的な霞ヶ関か ら作ったものではなくて、地方において地方の企業がどういうものを要求しているのか。 どういう能力を必要としているのか。それで、どういう能力開発を必要としているのかに ついて官と行政はおそらく厚生労働省の出先と、地方自治体と学で言えば大学というとこ ろがあると思いますし、それから企業と、もっとそういうものができる施策が必要なので はないかと思います。それは前回に出されたフリー討論のときのペーパー、今日の参考資 料の1の7頁に、具体的なところでニーズを踏まえたカリキュラム等の見直しや地域の企 業ニーズに即したオーダーメイド型訓練とか、地域の企業の施設開放とか指導員の派遣と か、指導員と地元企業の技術・技能者の交流機会の確保とか、産・官・学というのが書い てありますが、これがここにきちんとはまり込んでいないことと、1にもはまり込んでい ないわけで、これをもう少し1やここにもきちんとはまり込んだ具体的な施策が必要なの ではないかと思います。 ○今野分科会長 1はどこですか。 ○長谷川委員 今日の資料2の1の労働市場のインフラのところと、現在の5頁の両方に きちんと書くことが必要なのではないか。具体的に何かを作ることが必要だと思います。 ○今野分科会長 いま2点ほどご意見をいただきましたが、何かご意見はありますか。お っしゃられた趣旨は、1点目も2点目も近いですか。 ○長谷川委員 そうですね。 ○杉浦総務課長 公共職業能力開発施設における進め方については、いまご指摘のとおり 総論で書いた部分が、まだ十分こちらの各論にも反映されていない部分もあります。今回 はまだ議論のところに入っていないのですが、目次として出してある最後の「推進体制の 整備」にも関係していますので、次々回以降の全体の中で見ながらよく調整をして、また 触れたいと思います。 ○半田キャリア形成支援室長 2つ目にご指摘のありました専門家集団のところに関しま して、先ほど審議官からもご説明しましたが、キャリア・コンサルタント関係の協議会の 状況を簡単にご説明しておきます。  本来ならば、キャリア・コンサルタントそのものの職能集団として育成していきたいと 考えていますが、まだそこまで育っていませんので、現在は養成機関、試験機関を束ねて やっていこうとしていますが、協議会が目指しているものは能力評価だけではありません。 まず、養成のあり方をきちんと自主的に、より品質の高いものにしていこうという共同の 取組みをやっていこうとしています。その上で評価をして、資格を出すといったところを 統一的にやっていこうと考えています。さらに、そういったキャリア・コンサルタントの 皆さんが、それぞれの場所できちんと活動できるようにバックアップをしていく。例えば、 職業情報や経済情報等々、そういったものをきちんと流すような仕組みをつくっていこう。 あるいは研修、スーパービジョンといった後方支援、直接・間接の支援をやっていくこと を考えています。  さらには、こういったキャリア・コンサルタントのニーズに応じまして、キャリア・コ ンサルタントを求める側、企業であったり学校であったりすると思いますが、そういった ところのマッチングも視野に入れていこうとしていまして、かなり大きな構想を持ってや っているものです。ここで言っている専門家集団というのは、他の似たものとしては審議 官が申し上げましたようにファイナンシャルプランナー等々がありますが、こういったも のは職能集団ごとに、いくつか育成されていくことを期待しているということです。 ○久保村能力開発課長 いろいろな対策の対象となる方たちに、どういう訓練を実施して いったらいいかに関しては、基本的には先ほどの資料に書いてありますように、私どもと しては公共職業訓練の場合ですが、地域の労働市場の状況を踏まえて各地元の業界団体な どを回りまして、どういう訓練ニーズがあるのかということを毎年把握をしまして、その 中で大体全体の4分の1ぐらいは廃止したり改善をしたりという形で、新しいものに変え ていくことはやっています。  ただ、私どもが困っているというか、どう対応したらいいかについて知恵を拝借したい ところがあります。例えば、実際に訓練を行う場合に私どもは職種で設定していますので、 訓練校などを視察いただければおわかりになりますように、同じ科目でも非常に若い方か ら高齢の方まで一緒に受けておられる実態があるわけで、そのことがいろいろな面での刺 激をお互いに受け合うみたいなところもあって、必ずしも悪いことではないと思っていま して、同じ属性の方を集めるやり方はあまりやっていません。そういうことをやろうとす ると、特定の職種について訓練をやるわけですので、属性までを合わせて訓練をやらなけ ればいけない話になって、なかなか訓練の構成自体が難しくなる。あるいは選択の幅が狭 まってくることがありまして、そういう意味では高齢者向けの訓練とかパート向けの訓練 とか、女性向けの訓練というような物の言い方がなかなかしづらいところがあります。し たがって、外形的な部分で訓練時間の問題とか、そういう問題で対応することで、できる だけ配慮していきましょうということでいままでやってきているわけですが、そういう意 味でどういう対応の仕方があるのかについてのアイデアを今後考えていくに当たって、い ろいろご示唆をいただければありがたいと思っております。 ○今野分科会長 先ほど、長谷川委員が言われた点で重要な点の1つは、どういう能力開 発をするかということもありますが、その前にどんなニーズが発生するかの整理をしたほ うがいいのではないかということだと思います。働き方がどうなるかわからない。そこを 想定しないと、どういう能力開発をするかというのが設計できないですよね。そこから少 し整理をしなければいけないのかなと思います。そこが決まったあとに、どうやって訓練 するかで、いまおっしゃられた問題があると思います。おっしゃられるように、もしかし たら高齢者向けを作らないほうがいいかもしれないし、作ったほうがいいかもしれないし。 それはハウツーというか実施の段階で、もう一度考え直せばいい気がします。 ○江上委員 2のところと1にも少し関連しますが、今回の能力開発基本計画はかなり個 人支援ということに大きく軸足を移す骨子になっていると思います。そのときに、このキ ャリア・コンサルタント、キャリア・コンサルティングはより大きな柱になってくると思 います。今回、議論の中でもいろいろとありましたが、生活設計とかメンタルヘルスとか ライフキャリアとか、いろいろと守備範囲が膨らんできています。実際に、いまのキャリ ア・コンサルタントの実状を見ましても、労働市場の動向に詳しい、採用情報に詳しい、 職場の実務能力に詳しいキャリア・コンサルタント、働く動機について心理学的なアプロ ーチをするコンサルタント、あるいは生活設計の年金までを考えるようなキャリア・コン サルタントといろいろと幅広い人たちが出てきて、類型化されていくと思います。このキ ャリア・コンサルタントの概念を少しここで、将来的にはこういう専門性によって類型化 されるみたいなことも触れておかないと、非常に幅が広い期待がここに書かれているかと 思いますので、その辺が気になります。  もう1つは、今回の計画で能力開発行政の役割というものを大きく情報提供と専門家集 団育成と、民とNPOへの実施の移行ということで、ずいぶん大きな切り替えが見受けら れると思います。それに当たって、従来持ってきた能力開発行政の実施機関の役割をどう するのかが見えてこない感じがします。以上です。 ○今野分科会長 いま、2点のご質問がありました。 ○半田キャリア形成支援室長 キャリア・コンサルタントの類型化について、まずお答え します。江上委員のご指摘のとおりの部分もありますが、私どもが気になっているのは類 型化、階層化をしますと、キャリア・コンサルタントの皆さん方が企業内キャリア・コン サルタントの資格を取ろうとか、それに加えて学校キャリア・コンサルタントの資格を取 ろうとか、あるいは初級から中級、上級を目指すといったそちらの方へのインセンティブ を妙に煽るところがあります。もとよりすべてができる方がいらっしゃるわけがないこと も承知していますので、むしろそこの部分は後方支援とか研修の中である程度差を付けて いくのがよろしいのかなと考えているところではありますが、ご指摘も踏まえまして総務 課と相談して、書き振りは検討してみたいと思います。 ○草野審議官 2点目は、企業内の部分を十分書けていないので、切り替えというご判断 をなさっていると思いますが、企業が中心であることには変わりがないわけで、企業を中 心に能力開発をやっていただけるように支援していく公的機関、訓練機関の役割はますま す重要になる。むしろ、市場から自分で把握してやるのも重要ですが、民間と一緒にデュ アルなんかもそうですが、企業と一緒に訓練をやるとかオーダーメイド的な訓練も最近は 広まっていますし、離職者訓練にしても選択ということを意識して離職者訓練をやってい くとか、民間企業と一緒にやるとか市場や民間というものを意識した訓練のやり方という のが中心になってくると思います。  ただ、企業の中だけで収まらない、いろいろな幅広いキャリアということを考えますと、 地域の能力開発における役割や、これから先を見ますと少し景気が良くなってきましたか ら、おそらく労働移動というのも出てくる。そうしたときに、専門家集団、職種的な横断 的な市場ができてくる分野というのも少しずつ出てくるだろう。そういう部分は専門家集 団的なことを考えて育成していく手法だろうと思いますし、企業が中心で、そこがあまり 書かれていないのを、もう少し書き込まなければいけないというのを聞いていて感じまし たが、そこが中心ではありつつも、労働市場の横断的なところが少し出てくると、そこに 専門家集団を作ったり、裾野ということで地域の教育とか、そういうものも視野に入れて 拡大していくつもりでした。決して切り替えたつもりではなくて、いままでの延長の上と いうことですが、書き方としては確かに企業から切り替えたみたいに見えるところもあり ますので、そこはしっかり企業内のこともご指摘いただきながら書いていきたい。訓練機 関の役割とも企業との関連は重要だと思います。 ○江上委員 8頁の地域貢献活動の分野で、高齢者対象でいうといままでシルバー人材セ ンターというのがあって、1990年代後半にかなり利用数が伸びて活気を呈していた時期が あったのですが、その辺に触れていないのですが、どうなのでしょうか。 ○杉浦総務課長 確かに、シルバー人材センターが高齢者の方々の半ば生き甲斐とか、簡 易な作業ということで実績も上げていることは事実です。確かに、能力開発という観点で どこまで関連性を持たせて触れられるかは検討してみたいと思います。正直言って、あま り書く段階で念頭に置いていなかったものですから、その辺は実態も踏まえて考えてみた いと思います。 ○山野委員 6頁の「今後の方向性」については書き直していただけるということで、い まお話がありましたが、多分私が知らないことだと思うので教えていただきたいのですが、 「再就職準備休暇の導入」と書いてあるのは前からあったことなのでしょうか。それとも、 今回新しく出てきたことなのでしょうか。この中身を教えていただきたいのです。 ○村山調査官 とりあえず事実関係だけをご説明します。  昨年の夏から冬にかけて、建議をお取りまとめいただくご議論の過程の中で、キャリア の発展期とか円熟期ということで、キャリアの段階に分けていろいろなものを整理し直そ うというご議論をいただいたところです。そういった中で、昨年12月にお取りまとめいた だいた建議の中でも、職業キャリアの円熟段階において退職後の再就職とか就業とか、地 域活動などに向けた準備を行うための休暇制度について、職業能力開発促進法における事 業主が講じる措置の1つとして、訓示的な規定のひとつとして追加するという建議をいた だいたところです。その過程があったものですから、言葉自体は説明なく使ってしまって 大変誤解なり、わかりにくかったところがあったらお詫び申し上げますが、そのことを念 頭に置いて書かせていただいたもので、こういったものの具体的な進め方や、どんなふう にやっていったら世の中は広まるかという点は、また分科会のご議論でより深めていただ くとありがたいと思います。雑駁な説明で恐縮です。 ○西原委員 先ほどの円熟期による支援に戻ってしまうかもしれませんが、言葉としては NPOを基本にした考え方みたいなところをもう少し整理できないかと思います。なぜか というと、例えば能力開発に関わる部分でNPOに期待する部分もあるし、ある面は雇用 として、働くという場所としてNPOに期待する部分がある。それと、地域という部分。 この辺がかなりあちこちに出てきまして、ここをもう少し整理して表現できないかと。  8頁に地域貢献活動分野がありますが、NPOの活動自体は別に地域貢献だけではなく て非常に幅広い社会貢献分野。そこでの能力開発の部分みたいなところもありますし、前 に玄田委員が言われていたと思いますが、例のNPOを担う人たちの育成なり、そういっ た部分をどう考えるかという論議もあったと思いますが、そういう面で幅広くやっている 部分と地域の部分が出てきたり、あちこちに出てきてしまって、もう少しNPOは積極的 に捉えてもいいのではないかと。例えば、かなり企業に近いような、仕事という部分では 雇用あるいは雇用吸収的な部分で見ても、相当に担い得るNPOが育っている部分があり ますし、かなり幅広く活動分野も広がっていることを考えたときに、そことの関わりみた いなものをある面、もう少し一項を起こしてやってもいいぐらいではないかという感じが します。意見として申し上げます。 ○杉浦総務課長 確かに、いろいろな活動をNPOでされていますので、それぞれ乱暴な 扱い方をあちこちでしているかもしれませんので、その辺はよく各箇所を見て、一項を起 こす必要があればそこも含めて検討したいと思います。 ○西原委員 いま申し上げたのは、いまNPOの人たちと話すと、NPOと通常の企業と の違いは、かなり目的達成型で、相当そこに集中して活動するという特性と、企業活動と 意識的な面で担っている人たちの考え方なり行動の意識が相当違うなというのが1点。た だし、NPOで困っているのは、ある面で求めているのは企業の中での技能とか何らかの 財務的な、あるいは経理の知識だとか、企業の中で通常養成されてきたような知識がもう 少しNPOの中に入ってもらえると、NPOの活動自体も充実できる。そこの連携みたい な期待なり希望を結構聞くケースが多いのです。ただ、単純にそこまでいくと、かなり認 識のギャップがあって、企業で学んできた行動意識のままでNPOに飛び込むと、うまく いかない、逆に個人的に浮いてしまう状況があるので、そういったところの状況も含めて、 この辺はNPOごとにいろいろあるのでしょうけれども、そういう部分では整理みたいな ところがうまくできれば、もう少しお互いNPO自身もさらに発展的な形で、健全な形で 育成というか拡大できる余地はまだまだ大きい感じがするものですから、ちょっと申し上 げました。 ○今野分科会長 いまの点は、ご意見ということでよろしいですか。 ○西原委員 はい。 ○今野分科会長 まだご質問があるかとは思いますが、もう1点。先ほどお約束しました ように、9頁の3の「雇用失業情勢や産業分野の動向に応じた職業能力開発の促進」とい うモジュールが残っていますので、これを一度議論していただきまして、それでまた全体 に戻りたいと思います。9頁は非常に短い部分ですが、この点についてご意見、ご質問が ありましたらよろしくお願いします。特にありませんか。そしたら、もうフリーにします。 この部分は短いからいいですね。それでは、どこでも結構ですので。 ○谷川委員 先ほど円熟期の教育のところをもう一度書き替えられて、2007年の問題等々 の対応ということをおっしゃいました。ただ、雇用失業情勢とか産業分野の動向というの は2007年問題がまさにそれになっていますので、そこのところの切り分けが逆に気になっ てきたのです。 ○今野分科会長 すみません、もう一度お願いします。私、よくわかりませんでした。 ○谷川委員 先ほど、円熟期の職業教育のところに団塊の世代の問題をというお話をされ ていたのですが、雇用失業情勢は、まさに団塊の世代の問題なので、ここで逆に出てくる のかなと考えていたものですから、ここには直接的に触れられていませんが、そういう意 味ではタイトルを少し工夫するか何かをしないと、2007年問題をまだ使われると混乱を生 じるなというのが意見です。 ○杉浦総務課長 特に、2007年問題に関わる技能の継承というのは、9頁の4のところの 現場力の強化と技能の継承・振興で中心的に書こうという予定をしていましたので、次々 回はその辺を含めて全体を見て、訓練の実施等と合わせてバランスを取ってみたいと思い ます。 ○今野分科会長 もう全体で議論したいと思いますので、どこでも結構です。 ○黒澤委員 これは私があまりよくわかっていないので変な質問かもしれませんが、その 場合は許してください。地方自治体に関することですが、先ほど国として整備すべき施策 の実行に当たって、地域の情報を非常に詳しく把握する必要があるという話が出てきたの ですが、それ以外にここに掲げてあるいろいろな目的を達成するために、国と地方自治体 が連携をしなくてはいけないとか連携したほうがより有効性が増すとか、あるいは地方自 治体に望む点というか求める点も多々あるのではないかと思うのですが、そういうものが あまり盛り込まれていない印象を受けるのです。これは、きっと故意に、これは国の能力 開発施策なので、地方自治体に対して踏み込むようなことをしてはいけないということが あるのだとは思いますが、例えば地域密着型の人材育成環境の重要性が非常に強調されて いるあたりや、現実にいくつかの都道府県ではワンストップセンターという形で、地方自 治体とハローワークが連携することによって職業紹介と能力開発の一体化が行われて、そ の有効性が高まっているような例もあると思いますが、そのあたりがあまり入っていない。  明示的に入っているのは、9頁の3に産業施策というのが、地方自治体における産業施 策との連携が必要だというところと、障害者への支援のところで政令指定都市との連携の 強化という文言は出てくるのですが、ほかのところではほとんど見受けられない。特に4 頁の地域若者サポートステーションは、それこそ自治体との連携だと思いますが、あえて その自治体という言葉を入れていないのかどうか。そのあたりを質問させていただきたく 思います。 ○草野審議官 あえて入れていないというのは、6の最後で関連施策とか国と地方との関 係で明示的には書いてありませんが、ここで取り上げて整理するつもりでいたのです。こ れは全部、障害者対策もそうですし、まして地域貢献分野は地域が主体ですから関わる話 なのですが、個別のところで入れる。最後にまとめて整理して書こうとは思いますが、 所々にも入れる必要であれば、文章表現も考えたいと思います。 ○今野分科会長 こうしたらどうですか。次回は6までやって、それでもう一度前に返っ て、必要だったら前に入れるし、必要でなかったら入れないしという対応でいいのではな いでしょうか。 ○草野審議官 全体的に抜けているところがたくさんありましたので、総論との関連もあ りますし、次々回になりますがもう1回整理して全体像をご覧になっていただいて、それ でまたご意見をいただくことにしたいと思います。今日いただいたご意見は、それを踏ま えてこのときに、また再整理をしたいと思います。 ○長谷川委員 前回のペーパーの論点の2頁の1で、働く者を対象とした職業能力開発が 指摘されていて、現実的にはこれまでには求職者と雇用労働者を主たる対象として構築さ れてきた。職業能力開発施策の枠組みでは、必ずしも十分に対応できていないということ がまずここで指摘されたのです。ずっと指摘されていて、そうだなと思って聞いたのです が、そのときに2頁の「雇用と自営の中間的な働き方をする者が増加しており、そうした もののキャリア支援のあり方について検討していく必要がある」、ここは重要な指摘だと 思います。私は「曖昧な」という言い方をしますが、雇用なのか自営業者なのかがわから ない中間的、そういう人たちの能力開発は必要だと思います。これから就労ということを 考えれば、必ずしも雇用だけではないわけですから、それらの人たちの能力開発をどこか で触れなければいけないと思ったのです。8頁の「よりよく『生きる』ことを求める意義」 も、理念だけであって具体的なことがなかったわけですが、どこかの項目でこのことにつ いても触れなければならないのではないかと思ったのです。それが1つです。  もう1つは、先ほど先生がおっしゃったように、単なる推進体制だけの話ではなくて、 これからの能力開発職業訓練というのは、官は厚生労働省と地方自治体、もう1つは先ほ ど若者のところで言われた文科省との連携とか、経済産業省もジョブカフェをやった。そ この連携が必要なのです。省庁の連携と地方自治体の連携が非常に重要で、例えば地方は 私が青森に行ったときに聞いたのですが、青森の知事は青森でどういう産業、どういうこ とをやればいいかを必死で考えていて、研究所の誘致や作業の誘致は知事の所でやってい るわけです。そこが必要としているものと、能力開発や職業訓練というのはマッチングさ せることが必要だと思います。したがって、官というときは文科省もあるだろうし、経産 省もあるだろうし地方自治体、ここがとても重要。それと民と、学は大学とか地方にある 私立大学とか公立の大学とか国立大学とか、あとは高校だと思いますが、そことの連携が 今回はもっと見えるというか、見えて政府が一丸としていくという構成が必要なのではな いか。その2つです。 ○今野分科会長 いかがですか。いまご質問が2つありました。2つ目は実施体制の問題 ですので、ご意見として伺って、また次々回に実施体制のことがあります。1つ目はどう ですか。雇用と自営の真ん中というものです。 ○杉浦総務課長 確かに総論に書いてあって、各論のほうであまり触れていない部分もあ りますので、どういったところに盛り込めばいいか、あるいはどういう施策を具体的に考 えていかなければいけないかという問題もありますので、工夫してみたいと思います。 ○今野分科会長 基本的には難しい。どうやるのだろうと。確かに非常に重要です。久保 村課長がおっしゃられたように、訓練としては別に通常の訓練に入ればいいではないかと いうことになってしまうかもしれません。では、入れるようにサポートしようと思うと、 どうやってサポートするだろうかと難しいと思いますが、お考えください。 ○鈴木委員 いまのお話にも関連してきますが、先ほどの審議官のお答えの中で、あくま で企業を中心としたという発言がありましたが、企業をはじめとして国、地方自治体、連 携も含めていろいろな環境を整備したとしても、行き着くところは本人がそれに応えられ るだけの気持を持っているかどうかになると思います。したがって、個人の役割なり責任。 実際に自分の能力を高めていこうという意識がなければ、いくら環境を整えてもなかなか その辺は難しいのかなと思います。参考資料の2を拝見しても、キャリア形成促進助成金 で、ずいぶんいろいろな施策をやっておられますが、その中には実際にあまり数も伸びて いないし、果たして本当にそれが意味のあるものなのかどうなのかというのもあるように 見受けられます。環境整備することも大事ですが、まずは社会全体で自分自身を高めてい く気持を持たせない限り、折角のものが空回りに終わってしまうのではないかというニュ アンスも、どこかこの中に是非訴えてほしいと思った次第です。以上です。 ○今野分科会長 ご意見として伺っておけばよろしいですか。先ほどの玄田委員の意見と、 非常に近いご意見だと思います。ほかにありますか。 ○玄田委員 基本計画にメインテーマがあるかどうかはよく知らないのですが、前にあっ た失業なき労働移動みたいな言葉が非常に印象的だったような気がするのですが、今回第 八次で謳うとすれば、一言で言うと何なのですか。目次と資料1を見てみますと、個別的 1人ひとりという面とか、持続的ということとか、連携というのが若年対策と包括的とい う言葉で使われたりして、そういう意味では個別的、持続的、包括的な支援を充実させる というニュアンスでいいのか。現場力という言葉もかなり新しいので、個別にいろいろな こともありますが、おそらくいま非常に難しいのは第三部にもありましたが、かつて産業 とか地域というのを特定化すれば、ある程度、対策の方向性が見える時代ではなくなって いるという危機感が何か謳えるといいかなという気もします。  あまり細かいことを言ってもきりがないのですが、今回メンタルケアみたいなことがキ ャリア・コンサルタントへの重要な課題とあったのですが、実際にいま就職支援でいちば ん大変なのは、障害者とも認定されていないけれども、就職に非常に困難を抱えているよ うな人たちに対して、誰がどういう支援をするかに大きな課題があるわけです。メンタル ケアももちろん大きな問題ですが、本当はもう1つが問題で、かつて対応しなかったのは 心のケアではなくて、ある意味では外見上のケアが必要な人がたくさんいて、そういうこ とに対して何も策がないのです。つまり、心をなんとかすればいいというのではなくて、 山野委員が詳しいかもしれませんが、ある程度いろいろな外見上のハンディを抱えていて 社会へ飛び出すことが難しい人に対しては、それまでは何の手立てもなかったわけで、そ ういうのは能力開発とは別の問題として切り離していいのかようにということがあったり、 ニートという言葉で込めた思いもありますが、実際には1990年の入管法改正のときに入っ てきた日系のブラジル人の方で日本で生まれた人たちが10代後半になるときに、非常に苦 しい問題を抱えているとか、ある部分で本当に個別支援ということで謳うとすれば、全体 的な平均像としては非常によく描かれている印象があるのですが、いま本当にこの部分に 対して能力開発行政として重点的な施策をある特定の個人なりグループに対してしていか ないと、言い方が大げさかもしれませんが、社会がある部分をメルトダウンする可能性が あるのだという危機感も、もしかしたら共有する時代なのかなと。ただ、それをあまり謳 うと、そのグループの人たちが何か大きな問題がまたあるのだという逆差別につながる可 能性もあるので、非常に言い方が難しい。  先ほどの60歳問題でも、私は個人的には再就職支援ビジネス等が今回、ある程度活用す る余地があるのかなと思いますが、再就職支援ビジネス等にもし行政として助成するので あれば、65歳継続雇用と矛盾するのではないかという意見も出そうだし、何を言っている のかが自分でもよくわからなくなるのですが、非常に難しい対応が個別に迫られているの は事実なので、そういう面ではいまは個別支援の充実ということが重要だけれども、いま は大きな問題を抱えていることをある種きちんと表現することが、鈴木委員が言われたよ うな個人個人が対応する問題は大きいのだということの背景にもなるような気がしますの で、いろいろ言って申し訳ありませんが、まず全体として大きな方向性が今回は何かとい うことと、第三部がうまく捉えきれるようにすれば、産業や地域という枠組みでは捉えら れない問題が出てきているのだという目線をどこかで表現すべきではないかというのが印 象です。以上です。 ○草野審議官 前回の第七次の計画のときに雇用失業情勢が非常に悪かったということで、 インフラを作って労働市場を作って、移動が的確にできるということがメインのテーマで あった。今回は、これからの5年間を見た場合に、もちろん労働市場というものを機能さ せるという部分で補わなければいけないことはたくさんあるとは思いますが、全体として 非常に崩れてきている。これは競争社会の中で、長時間働く人は働くし、逆に労働時間が 短い人も出てきているということがあります。  それから「現場力」の衰退という非常に高学歴になってきて、逆に現場に入る人がいな いというアンバランスとか、世帯ごとに見ても20代から40代はものすごく働いているけ れども、若年部門と高齢者はそうでもない。教育も含めた環境が、それに見合っているか。 適正にキャリアが持続するように見合っているかというところは必ずしもできていない。 そうしますと、1人ひとりにおいてきて見ると、全体としてみると持続可能性という点で 問題が出てきている。働いている人も非常に不安を感じてきているところはあると思いま す。そのためには、持続可能な仕組みを考えていかなければいけない。そのときに競争セ クターが非常にハードルが高い、それに対して失業という二極があって、その間に中間的 な分野が必要ではないかとか、現場力が衰退していることに対して、もう少し現場へのバ ランスを取るとか、世代間の働き方のバランスを取るとか、そういうバランスということ を考えて1人ひとりがうまくキャリアを持続可能にしていくといいますか。 ○玄田委員 ロハス(Lifestyles Of Health And Sustainability)な労働市場ではどう でしょう。 ○草野審議官 そこのところは、うまく言葉でどう表現するかを考えたいと思いますが、 とにかく5年前と違ってそういう問題が出てきて、大きな環境的なところまでを見ながら バランスを取っていくことをしていかないと、キャリアというのはうまく円滑にいかない。 能力開発はうまくできない。そういうところであろうと思います。抽象的で恐縮です。 ○今野分科会長 いまの点について、いずれにしても前回のこの審議会でも副題を作ろう ということをここで委員は決議したと思います。ですから、それは事務局に原案を考えて いただきますが、我々もいいアイデアを出さなければいけないと思いますので、計画全体 としてはどういう基本コンセプトとして表現するかは重要だと思います。  ほかにありますか。 ○江上委員 今回の計画を見ていると、1990年代の柔軟化、弾力化、多様化、成果対応型 という方向で労働基準法の改正をやり、派遣業関連の法改正をやり、いろいろなものの結 果、ある意味それが派遣業も5倍近く伸びたとか、いろいろな形で法の狙ったとおりに市 場は動いてきている感じがします。その1つの結果として、3頁にさまざまな市場の歪み が深刻化している。これは、もちろんいろいろな観点のところからの複合的なことで市場 の歪みという表現をされたのだと思いますが、この部分を能力開発行政で一生懸命に底上 げ、補正をしようというスタンスが今回はあると思いますが、市場の歪みというのはいま まで文言で出てきていましたか。昨今、市場原理主義の行きすぎとか、いろいろな言葉が 言われていますが、この市場の歪みというのを適切に記述しておく必要があるのかなと思 います。  もう1つは、7頁の3のイの最後の文章で、「企業内において若年、壮年、高齢層のバ ランスが取れた雇用機会と労働時間の配分を実現していくことが必要である」と書かれて いますが、確かに大企業ですとこういう配慮は十分に可能ですし、現実にもやっているか と思いますが、社会全体でのバランスが取れればいいのかなと。産業とか企業規模とか、 企業の成熟度とか業種・業態によってだいぶ違いますので、ここまで企業内において必要 であると言い切るのが妥当なのかというのを疑問に思いました。 ○草野審議官 企業内において、全体としてバランスが取れることを前提として社会全体 に必要だと思いますが、企業内においても能力開発をしていく人材を育成していくために、 極端な層だけを取って若年を抑えるということをやっていると、全体としてうまくいかな くなる関連みたいなものがあります。ですから、ある意味では若年、壮年、高年のバラン スは企業内におけるキャリアの発展性や持続可能性というところでは必要な部分ではない か。もちろん、中小ではなかなかできないわけですが、ややバランスを崩すような形のも のが続いてきたので、反省を込めてといいますか、私が言うのもおかしいですが、そうい うことは意識してもいいのではないかと思います。  歪みということは初めてなので、ここは昨今、所得格差云々という議論がなされていて、 所得格差の問題は直接書いていませんが、現実に起こっていることは起こっていることで 問題点として書いて、それに対する対策は講じなければいけないだろう。その表現として、 市場の歪みが適切かどうかは、もう少し議論をさせていただこうと思います。 ○今野分科会長 まだご議論はあるかと思いますが、今日はこの辺にいたします。本日の 議事録の署名は、労働側は井上委員、使用者側は鈴木委員にお願いします。  最後に、事務局から次回以降の日程について説明をお願いします。 ○村山調査官 次回は、大変お忙しい中恐縮ですが、2月1日の15時からお願い申し上げ ます。議題は、職業能力開発促進法等の改正法案の要綱についてですので、是非よろしく お願い申し上げます。以上です。 ○ 今野分科会長 本日は終了します。ありがとうございました。 【照会先】厚生労働省職業能力開発局 総務課 企画係 (内5313)