06/01/27 第11回予防接種接種に関する検討会 議事録                         健康局結核感染症課予防接種係                                内線 2383                                  第11回予防接種に関する検討会 日時 平成18年1月27日(金) 10:00〜 場所 厚生労働省5階共用第7会議室 ○鈴木予防接種係長 それでは、定刻になりましたので、これより第11回予防接種に 関する検討会を開催いたします。  それでは、議事に先立ちまして、塚原結核感染症課長よりあいさつを申し上げます。 ○塚原結核感染症課長 おはようございます。塚原でございます。  第11回の予防接種検討会を開催するに当たり、一言ご挨拶申し上げます。委員の皆 様方におかれましては、お忙しい中御出席を賜りまして誠にありがとうございます。  現在、主に予防接種の制度的課題について御検討いただいているところですが、前回、 制度横断的な論点整理をして、幾つかの議題について御議論いただいたところでござい ますが、本日は残りました課題といたしまして3点ほどございます。この3点を中心と して御議論いただきたいと考えております。まず、予防接種の副反応のことでございま す。次に、都道府県の役割。現在、予防接種は市町村が中心になって実施していただい ておりますけれども、都道府県はもう少し広域的な観点から何か役割があるのではない かというような観点からの御議論でございます。それから、予防接種の勧奨ということ で、現在のやり方がどこに問題があるのか、あるいは厚生労働省以外の部門もどんなか かわり方をしていただくことが適当なのかというようなことも含めて御議論していただ ければと考えております。特に予防接種の副反応につきましては、非常に社会的な関心 が高まっているということについては御案内のとおりでございますけれども、本年4月 1日から麻しん及びお風しんの定期予防接種の制度改正によりまして、新しく薬事法上 の承認を受けました乾燥弱毒生麻しん風しんワクチンを用いることとしております。こ の新たなワクチンにつきましては、定期の予防接種を導入する際には、副反応につきま してもより慎重に観察をする必要があると考えております。このような背景も含めて本 日の御議論をいただければと考えております。  最後になりますが、忌憚のない御意見をいただきまして、活発な御議論をいただきま すことを併せてお願いをしまして、私からのあいさつとさせていただきます。本日はど うかよろしくお願いいたします。 ○鈴木予防接種係長 それでは、この後の議事の進行につきましては、加藤座長よろし くお願いいたします。 ○加藤座長 おはようございます。本日もどうぞよろしく活発な御議論をお願いいたし たいと存じます。  今日の検討会の進め方ですが、お手元の議事次第に従って進めてまいります。その前 に、事務局の方から資料の確認をしていただき、続いて前回の検討会の概要を事務局か ら御説明をいただきます。それが終わりましてから、議題に従いまして討議に入ります ので、よろしくお願いいたします。今日は若干、議論が早目に終わると思われますので、 予定よりも早く終了する可能性もございますが、熱い議論をよろしくお願いいたします。  それでは、資料の確認についてよろしくお願いいたします。 ○鈴木予防接種係長 それでは、資料の確認をさせていただきます。資料につきまして は、資料一覧にございますが、1ページに資料1といたしまして『「第10回予防接種に 関する検討会」の概要』。  2ページに資料2「予防接種における制度横断的課題」。  4ページに資料3「副反応報告の活用について(案)」。  また、6ページから参考資料1「麻しん及び風しんに係る定期の予防接種の積極的勧 奨に関する通知」。  10ページに参考資料2「これまでの予防接種に関する検討会における制度横断的課題 に対する主な意見」。  13ページに参考資料3「予防接種後副反応報告制度について」。  15ページに参考資料4「予防接種後健康状況調査実施要領」。  19ページに参考資料5「予防接種に関する勧奨等の法令及び通知」となっております。 不足等ございましたら、事務局まで御連絡願います。 ○加藤座長 ありがとうございました。各委員の方、よろしゅうございますか。  それでは、第10回の予防接種に関する検討会の概要につきまして、事務局から簡単 に御説明をお願いいたします。 ○伯野予防接種専門官 資料1『「第10回予防接種に関する検討会」の概要』をごらん いただきまして、まず「政省令改正について」ですが、前回、麻しん風しん予防接種に つきまして、保育園等にも勧奨するような通知の発出が望ましいという御意見及び自治 体に対しても積極的に勧奨するような通知は国から出しておりますが、再度、周知徹底 するような通知を出すべきであるという御意見をいただきました。参考資料1にお示し しておりますが、こちらで自治体及び都道府県の児童福祉施設に対して周知を再度お願 いしているところでございます。  2番目の「個人の予防接種記録の活用推進について」ですが、こちらは仮の名称でご ざいますが、予防接種手帳を作成することを検討する。ただ、一方で情報管理の手法や 母子健康手帳との関係の整理等、更に詰めるべきところはございますので、関係部局で 検討を加える必要があるということです。  3番目の「接種率の正確や評価をおこなえるような共通指標の構築について」ですが、 平成16年度から接種率については、年齢別に調査が行われておりまして、今後は累積 接種率等が出てくる予定でございますが、それまでの間は厚生労働科学研究等におきま して、累積接種率の調査を引き続き行っていくこと。また、予防接種台帳の方もしっか り定着させる必要があるということです。  4番目の「医療従事者・社会福祉施設等の従事者への予防接種勧奨について」ですが、 法的な枠組みがないところですが、院内感染防止の観点から感染症対策として、国も何 らかの方針を示す必要があるという御意見がございました。これに関しては、必要時に は疾病の感染症の特性だとか予防接種の有効性・安全性につきましては、十分な情報提 供を積極的に行っていく必要があると考えております。  5番目の「予防接種医師の知識・技能の向上について」ですが、これまでと同様に、 医師会等におきまして研修会・講演等で向上の啓蒙を図っていただいているところです が、今後も引き続きより一層の向上を図っていくことが必要であるという御意見でござ いました。 ○加藤座長 ありがとうございました。  それでは、皆さん確認がとれたと思いますので、よろしくお願いいたします。  それでは、早速本日の議題について議論していただきたいと存じます。まず、議題の 1番目、予防接種健康被害と予防接種後副反応報告について御議論をお願いいたします が、まず、事務局より御説明をお願いいたします。 ○伯野予防接種専門官 議題1の予防接種健康被害と予防接種後副反応報告についてで すが、こちらは資料3に事務局の案をまとめさせていただいておりますので御参照くだ さい。  まず、副反応についてですけれども、予防接種というのは当然のことですが、予防接 種の価値というのが実際にその感染症に自然罹患した場合と比べて、接種したときの副 反応の方が当然はるかに軽微に済むというところが価値でございます。したがいまして、 重篤な副反応というのは極めてまれでなければならないというところがございます。  しかし、一方で、予防接種後の副反応に関する報告を定期の予防接種の中でも行って おりますが、その報告の中には因果関係が特定されていない状態で上がってきておりま す。このため予防接種後の副反応に関する情報に関しましては、評価をすることがなか なか難しいという一面はございます。ただ、予防接種後に重篤な副反応あるいは副反応 の頻度が急激に増加した場合に、いかに予防接種の勧奨を継続すべきか、あるいは中止 すべきかという判断というものは必要になってきているところでございます。その中で、 判断が適切に行われるためには、現在の報告及び調査をいかに有効に活用していくかと いうところが重要な論点になってくるかと考えております。  現在の報告・調査についてですが、まず、定期の予防接種による健康被害の発生状況 把握については、平成6年から通知により実施されております予防接種後健康状況調査 と予防接種後副反応報告というものがございます。また、予防接種法に位置付けられて いる予防接種以外のものも含めた報告ですが、これは製造販売業者または医療関係者に よる薬事法上に基づく副反応報告というものがございます。  2番目に、予防接種後副反応報告の概要を簡単に説明させていただきます。予防接種 後副反応報告というのは現在、医師が定期の予防接種を行ったその後に健康被害を診断 した場合、または市町村が予防接種を受けた者あるいはその保護者から健康被害の報告 を受けた場合に、実施要領に基づきまして厚生労働省に報告するものでございます。こ の報告に関しては、予防接種との因果関係にかかわらず報告されておりまして、また、 集計も同様に行われているものです。したがいまして、定期の予防接種に起因する重篤 な副反応を必ずしも正確に反映しているわけではございません。ただ、定期の予防接種 の副反応の経年的な推移、動向を反映しているものとしまして有効に活用されていると ころです。  (2)としましては、予防接種後健康状況調査についてでございますが、これも予防接 種後健康状況調査実施要領というものに基づきまして、定期の予防接種を接種した者を 対象としましてアンケート調査を行うことにより、比較的軽微な副反応の発生時期や頻 度等について情報を収集しまして、これを国民の方々に提供することを目的としており ます。  これらの予防接種後副反応報告と予防接種後健康状況調査の問題点としましては、次 の指摘がなされているところでございます。まず、1つは、先ほども申し上げましたが、 予防接種との因果関係にかかわらず報告していただいているものなので、いわゆる偶発 的に、たまたま予防接種後に紛れ込んだような事例(紛れ込み事例)というものも含ま れているということです。  もう一つは、予防接種後副反応報告につきましては1年に1回、予防接種後健康状況 調査に関しては1年に2回の検討が行われておりますが、その頻度が十分ではないとい う御指摘もございます。   副反応報告というものが通知という形で行われておりますので、すべての副反応が 報告されていない可能性があるということです。  また、報告書というものを副反応報告に関しましても、健康状況調査に関しましても 作成しておりまして周知はしておりますが、広くは周知されていないという御指摘も受 けているところです。  3番目に関しましては、薬事法に基づく副反応報告ですが、製造販売業者等に関しま しては、薬事法77条の4の2第1項の規定によりまして、独立行政法人医薬品医療機 器総合機構に報告、厚生労働大臣に報告しなければならないという規定がございます。 また、医師、薬剤師等の医療関係者に関しましても、副反応等によるものと疑われる疾 病、障害等の発生を知った場合におきましては、保健衛生上の危害の発生または拡大を 防止するために必要があると認めた場合には、厚生労働大臣に報告しなければならない という規定がございます。  4番目ですが、これらの状況をかんがみまして副反応を早期に察知する方法の強化に ついてということで、こちらが事務局案でございますが、1つは、今年4月1日より定 期の予防接種としまして乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチンが導入されます。新規の ワクチンの導入ですので、より慎重に副反応の状況を把握していく必要があると考えて おります。勿論これ以外のワクチンに関しても同様に、副反応に関しては十分に状況を 把握していく必要があると考えております。  現行の副反応に関する各報告及び調査における問題点、先ほども申し上げましたが、 これらの問題点をかんがみまして、次のような対応を考慮しております。(1)副反応報告 及び健康状況調査の結果を定期的に、例えばWeb上に公開して広く周知をする。もう 一点は、(3)に書いてありますが、副反応及び健康状況調査の評価回数、先ほど副反応報 告に関しては1年に1度、健康状況調査に関しては1年に2度と現状はなっております が、その評価回数を例えば年に4回に増やし、その評価を受けて定期的にWeb上等に 公開をしていくとです。  3番目としましては、(2)ですけれども、その公表の際には、これは評価の際とも言い 換えることができますが、因果関係が否定される紛れ込み事例等を可能な限り精査する。 また、逆もそうだと思います。因果関係があるかないかというところ、厳密には、なか なか副反応報告書の中では読み取れない点は多々あるかと思いますけれども、できるだ けそういう医学的な意味のある情報を提供するということです。  もう一点ですが、(4)薬事法上の副反応報告等につきましても、医薬食品局安全対策課 とも適宜情報交換を行いまして、情報を共有していくということを考えております。  以上のような対応を行うことによりまして、予期せぬ重篤な副反応あるいは予期せぬ 頻度で副反応が生じた場合に、早期にかつ正確に把握しまして、予防接種の継続・中止 等に関して適切な対応を行うことができるかと考えております。  また、副反応につきましては、広く周知することが可能となり、国民が予防接種のリ クスとベネフィットに係る正確な情報を得ることが可能になると考えております。  今申し上げた対応以外にも、今後継続的に検討することが必要かと思っていることに 関しましては、すべての副反応が報告されているわけではないということを先ほど申し 上げましたが、その可能性が高い状況でございますので、例えば、今回のように新しい ワクチンが導入されたという場合には、医療従事者の方々の注目度が高いため、そうい う場合にやはり副反応の報告の件数自体も医療関係者の方々も注意して見ておりますの で、そういう関係で頻度が上がってくる可能性がございます。いわゆる見掛け上の副反 応発生率が増える可能性がございますので、そういう頻度の情報の影響を科学的に評価 するために、定点で副反応の類似の事例を含む疫学的な比較等の調査を行って、副反応 のベースラインを確定していくという必要もあるかと考えております。また、情報の公 表に関しては、情報の評価の方法等についても検討を行う必要があると考えております。  以上です。 ○加藤座長 ありがとうございました。  ただいま事務局から健康被害と予防接種後の副反応についての報告の方法、それから、 今後の展望について御説明がございました。もう既に御承知と思いますけれども、平成 6年の法改正の際に、予防接種後の副反応報告書を提出するという通知がなされており ます。今、御説明いただきましたとおり、この「副反応」という言葉遣い自身が私個人 としては若干違うかなと、誤解を受けるかなというところは心の中で思っておりますけ れども、そのときの法改正でこういう言葉遣いになっておりますので、これが続いてご ざいます。そのことの善しあしは別といたしまして、この予防接種後副反応報告書とい う報告書は、平成6年の法改正のときに今日御出席の宮崎委員が担当されまして、この 骨子をつくったというのが実情です。すなわち、定期のワクチンを接種いたしまして、 一定の時期に一定の症状が出た場合には、予防接種との因果関係あるなしにかかわらず、 随時どなたでも報告することができるというシステムでございます。したがって、報告 しなければいけない義務も特にあるわけではない。それから、因果関係があるというわ けでもない。いずれにしても、その3つを満たしたものに関しては報告をしていただき たいという通知がなされて現在に至っているというのが現状でございます。  そういうことを反映いたしまして、現状のままでよろしいかどうかということが今、 事務局から御説明になった事例であろうかと思いますが、この件に関しましてどなたか、 御意見を求めたいと思います。  平成6年につくった後の効果といいますか、有用性または活用性について、そのとき の担当だった宮崎先生、何かコメントはございますか。もくろみどおりだったか、また はちょっと予定とは外れたか、または今後、今、厚労省からお話しになったように何か 是正すべき点があろうかどうかというようなところで御意見はありますか。 ○宮崎委員 2つ制度があるわけですけれども、予防接種後副反応報告書は、アメリカ で当時既にワクチンに関連する副反応、アドバ−ンスイベントの報告のシステムがあっ て、それを基本的にはまねをしたわけです。比較的広くひろう、つまり主治医が因果関 係があるかないかということを厳密に判断してあげるということにしなかった一つの理 由は、平成元年から接種されたMMRワクチンが平成5年に中止に追い込まれたという ことの反省がやはりあったわけです。あのときは平成元年の4月から接種が行われて、 髄膜炎が多いなということが世間的に広がっていったのは9月ぐらいでした。半年ぐら いのタイムラクがあったんです。いつもサーベイランスを敷いておけば、もう少し早く 上がってきたのではないかということが1つです。  もう一つは、ワクチンの臨床試験がずっと行われていく中で、昔は副反応として数が 出ていたものが、だんだん有害事象という考え方が出てきました。主治医の判断をさて おいても接種後一定期間にどの程度の健康の変化が出てくるかという有害事象という考 え方が出てきたということも少しバックグラウンドにあったかと思います。いずれにし ても、何か変化が起こったときになるべく早くキャッチしたいというのがあったわけで す。その点に関して言えば、今のシステムは余り早くなくて、少なくとも私たちの目に はかなり遅れて、しかも、数字としてしかわからないという不十分さがあるだろうと思 います。  昨日も、厚生労働省の最近ホームページ上に平成8年からまとめた数を眺めていたん ですけれども、やはり靴の裏から足をかくような感じで、一例一例がわかりませんし、 紛れ込みがどこかもわかりませんから、非常に分析するのは難しいところがあるので、 やはりもう少し早くということと、報告は生で出されても評価ができないので、やはり そこにはある評価が入るべきだろうと思っています。  幸いにしてといいますか、不幸にしてといいますか、最近10年間新しいワクチンは 余り出なかったものですから、このシステムの有効性というのは今から新しいものが出 てくれば、よりはっきりしてくるのだろうと思います。  もう一つ、通常起こり得る副反応をキャッチしている予防接種後健康状況調査ですが、 これはどちらかといえば感染症サーベイランスのまねをしたと言ったらいいでしょうか。 特に日本はいろいろなメーカーのものが混在していますし、時々改良が行われていまし て、この件に関しては、例えば平成5年辺りからゼラチンによるアレルギー反応が話題 になったんですけれども、確かにゼラチンらしいということがわかって各メーカーが急 いで改良を加えたら、ここで出てくる副反応がストンと落ちてくる、あるいは局所反応 がぐんと落ちるという非常にはっきりとした変化が出てきているので、やはりそういう ワクチンを客観的に評価していく上では結構いい指標になっているのではないかと思い ます。 ○加藤座長 ありがとうございました。  宮崎委員は、健康状況調査は、それほど急ぐ報告書ではないけれども、疫学的には有 用なデータが出ている可能性が高いという御意見です。それに対しまして、副反応報告 書の方は実際問題としては迅速性がないということと、数字だけが上がっているので、 現実的な意味合いがなかなかわかりにくいという御意見でございますが、この副反応報 告書に関しましては年1回委員会が開かれてございまして、この委員会の当初の申合せ 事項により、提出された副反応報告書を分析いたしまして、それに対して各担当委員を つけまして、その担当委員がそれをチェックして確認するという作業をして報告をする という約束事ができ上がってございました。そして、そのときに各担当の委員が自分な りのコメントを入れないこと、要するに、これは副反応報告書として上がってきている けれども、「明らかに紛れ込みだと私は思います。」というようなコメントを一切入れな いという約束事で始まってございます。その後、私が委員長を引き継ぎましたので現在 もそのとおりやっております。したがって、今は宮崎委員がおっしゃったとおり、報告 をまとめて、それを各担当の委員がその報告書としてまとめ、数字が出ているだけにす ぎないわけでございます。したがって、今日の議論にもなるかと思いますけれども、そ こに予防接種との間の因果関係がありそうであるか、なさそうであるか、または全くな いかどうかというようなことが問題になろうかと思います。  実は、この制度が一番最初にできたときに、日本脳炎の予防接種をした後で脳炎にな ってしまいましたという報告が出たときに、新聞にバンと出ましたね。日本脳炎ワクチ ンを接種したら脳炎と出たんです。そうすると、これは一般の方が見ますと、日本脳炎 ワクチンを接種すると日本脳炎になってしまうと読まれてしまう可能性があった。それ から、DPTワクチン接種した後で細菌性髄膜炎で死亡したという事例が実際にありま した。それもやはり新聞に出ましたね。DPTワクチンを接種した後、髄膜炎で死亡。 でも、実際はワクチンとの間には因果関係は医学的に考えるとないんですね。だけれど も、報告書は約束事で事実は事実として報告しましょうということになっておりました ので、そのとおり報告してございます。したがって、それをわかって読む方と、わから ないで読む方と、とぼけて読む方と3種類に分かれてくるわけです。ですから、どのよ うにでも利用できる。読み方によっては、どのようにでも読めるという報告書になって いるということなので、もう少し血と涙のある報告書にしてはいかがであろうかという ことが、先ほどの伯野専門官からの御説明の中にも多少入っていたのではなかろうかと 思いますが、そのようなことに関連して、雪下先生、岡部先生も委員でおられますので、 御意見をいただけたらと思います。 ○雪下委員 副反応のそれらしいというのが発生して、確かに現場でおかしいなと思っ て他の様子を知ろうとしても、そのまとまった報告というのがやはり年1回ということ だと、既にその疑いが終わった段階になってしまうということで、今これをWeb上等 で報告することは是非とも必要なことだと思っております。  それから、紛れ込みの判定、明らかな紛れ込みを分けてということは大切だと思って おりますが、その紛れ込みかどうかという判定がなかなか難しいところもあるのは事実 です。岡部先生が委員長でやられている審議会では、どういうふうにそれを補償してい くかという議論がされています。いろいろ段階があるわけですが、基本的にそれと関係 のありそうなものは、なるべく健康被害にしてあげようじゃないかという、その辺の考 えがまた判定を難しくしています。ただ、そこで好意的にほとんど関係ないんだけれど も、それと時期を同じくしているので何とか補償だけはしてあげようというようなこと で判断したものも、今、座長が言われたように、マスコミでちょっと取り上げられると それが大変な問題になり、ワクチンが直接の健康被害を起こしたかのような印象を与え、 大騒ぎになるというようなことがありますので、その辺のところをどうするかは、これ からまた先生方の意見を聞きながら決めていくのだと思います。 ○加藤座長 ありがとうございます。  当初から危惧はしておったのですけれども、この副反応報告書というのは先ほどお話 しした3つの枠に当てはまるものはすべて報告してくださいという通知なのですが、ど うも世の中が、副反応報告書を提出したものは、すべて健康被害の届けに提出するべき であろうという流れに移りつつある。したがって、今の報告書の中には健康被害の届出 とは全く無関係の報告書でありますということをアンダーラインを引いて明記してあり ます。それはあえてそうしているわけですけれども、中にはやはり報告書を提出したか らには、健康被害届けを出して救済制度に乗せるべきであろうと短絡的に結びつける事 例もございます。そういたしますと、今、雪下先生がお話しになったように、非常に話 が複雑になってまいりますので、この辺のところも整理が必要ではなかろうかというよ うな気もいたしておりますが、岡部委員何か御意見ございますか。 ○岡部委員 今、予防接種後副反応報告の話と思ったんですが、もともとこれは余り過 小評価をしないようにして、もし、あるクラスターのようもので出てくるならば早くと らえようというのが目的だと思うんですけれども、過小評価をしないために少し過大評 価的にというか乗せていくわけですが、しかし、世の中に出ると、その過大が過剰にな っていくという傾向がちょっと問題になるのではないでしょうか。それについては、き ちんと説明をする必要があるんですけれども、非常にその仕組みが複雑なのでわかりに くいことがあると思います。  それから、もう一つは、迅速性については私と神谷先生が委員に要請されたときは、 年1回だけの会議ですから、そこで死亡例が1あるいは2というものが出ても、それが どういうものであるかはとっくの昔に終わっていることで、「そうですか」と言うだけで 原因の追究にもならない。また、もしそれが集積したような場合にも速やかに対応はで きないというようなことで、これは結核感染症課の方でもやはりその評価はなるべく早 くした方がいいということで、私と情報センターの多屋が委員になったときに、報告書 を委員として先に見るということになりました。それで、もし緊急性がありそうな場合 には早く調査をするといったことでそれを拝見するようになったので、多少早く利用で きるようになりました。  それから、もし、そういう問題点ができたときに、これは私たちの感染研の検定等の 部門で集積している情報を利用し、例えばあるロットの集積があるかとか、検定データ と関与があるかというようなことを本当は情報交換をした方がいいんですが、それにつ いては情報をほかの目的に出すということに制限があるので、それは実際上にはできな い。委員である私が、何でほかの人に伝えたのかというようなことにもなるので、実際 はその辺はストップが掛かるわけです。そこら辺がシステムとして許されるということ であるならば、早い対応に結びつくのではないかと思っているところです。勿論、幾つ かの取り決めがなくてはいけないけれども、これをやる目的と、それでどういう反応を すべきかというようなことは、一つルールとして決まってきた方がいいんじゃないかと 思っています。 ○加藤座長 ありがとうございました。  先ほど宮崎先生からお話がありましたように、日本では定期の予防接種をした後で、 紛れ込みも全部ひっくるめてですが、どのような副反応が生じるとか、または、健康状 況が変わるかというデータが平成6年まではゼロだったわけです。要するに、国が持っ ているデータがゼロということです。いわゆる厚生労働省の研究班等がばらばらに出し ているデータはあったけれども、国として保持しているデータがゼロであるということ です。一方では、いろいろなワクチンにかかわる訴訟問題を抱えていた時代でしたので、 そのときに国として全く対応する能力がなかったわけです。そこで、こういう報告シス テムを2つつくることによって、何らかの情報を国が持つということ、それが10年経 てば一つの成果としてでき上がるであろうということを期待して、この制度ができたと いうのが現状です。したがって、もう既に10年経っておりますので、ある程度の方向 性はできている。しかも、先ほどお話しになったとおり、以降新しいワクチンが全く出 ておりませんので、今まであるワクチンに関しては紛れ込みもすべてひっくるめて、い わゆる副反応と言われるものは大体どのくらいあります、健康状況の変化はどのくらい ありますというデータは国は既にお持ちだろうと私は判断しているので、この制度が全 く意味がなかったとは思っておりません。大変有意義な制度であったと思いますが、こ れをよりよくするためにどうするかという議論でございまして、今、御意見が出ました けれども、1つには、ここまで基礎的なデータが出たからには、もう少し迅速的な報告 がなされてよろしいのではなかろうかと。特に、今度新しいワクチンが出るに当たりま して、平成5年のときのようなことが起きないように、迅速に注意深く見ていくには年 1回だけの検討では少し迅速性に乏しいのではないかという御意見だと思われます。  それから、もう一つは、数字としてだけ表れているので、これは雪下先生の御意見と 重なりますけれども、判断基準がこれはワクチンによるものであるのか、誰にもわから ないグレーゾーンもあるわけですが、私はあえて言うならば、白黒をはっきりさせる必 要もないのではなかろうかと思います。グレーであっても、それはグレーですよという ことを申し述べてもよろしいのではないかと私は思っておりますが、各委員の御意見を お伺いしたいところですけれども、その2つぐらいの点が問題点ではなかろうかと思っ ております。  また、後で御意見を伺いますが、その次のこれは同じ厚労省内の問題だと思いますが、 薬事法に基づく副作用報告というものがあるというところが、私たち予防接種ワクチン をやっている者にとっては、非常にこの問題を複雑化させております。それは、あると ころで予防接種をいたしまして副反応が起きますと、少し大きな健康被害が起きたらし いということが入りますと、担当医がメーカーを呼びます。そうすると、メーカーがそ れをすぐ報告しなければいけないというシステムがあるようでありまして、先行してい くんですね。したがって、ほかのお薬と違いまして、予防接種に関しては他方では副反 応報告制度というものがあって、もう一方では、薬事法に基づく報告があるということ で、同じ省の中で報告が2つあるんです。片方は義務なんです。一方は通知で行われる 報告なので、どちらが強いかと言われると非常に困るんです。ですから、これは厚労省 の方にあえてお聞きしたいところですけれども、ワクチンの副反応の報告に関しては、 同じ省の中でもう少しお話し合いをうまくしていただいて、できれば統一して一本化す るような報告制度にしていただきたいというような気もいたしますけれども、委員の 方々の御意見は何かございませんか。 ○岡部委員 薬事法上の規定なので、ここで議論してもなかなか進まない部分ではある と思うんですけれども、もともと添付文書をつくるときには、専門家を交えてかなり議 論をして、それについてのデータの医学的な根拠あるいは根拠がなくても必要だという ようなことを議論したうえで添付文書に書かれてくるわけですね。でも、これが薬事法 上の報告によって、あるワクチンを接種したらある事象が起きた。それについては、今 度は専門委員あるいはその添付文書に携わった人たちの議論がないとは言わないんです けれども、実質的にはあまりなく、最終的にはメーカーと厚労省との総合的な話し合い によって、こういうものが出ましたというのが載ってしまうんです。きちんと理解され ていれば、それはそれでいいことだと思うんですが、それが重大な副反応の可能性があ るとか、極めてまれにこういう事象が起こるということが記載される。その次の2例目 が出てきたときに、非常に社会的にも混乱が及んでしまう。ついこの間の抗インフルエ ンザウイルス薬に関する問題というのは、極めてそれに類したものなんですけれども、 もう少し注意を促すという意味と医学的な判断をするといったことは、やはりどこかで 明確な説明が要るのではないかと思います。  結局、さっきも言ったような過大に評価し過ぎると取りこぼしがあるというのがある のですが、余りその辺のバランスが崩れてしまうとどっちかに大きく動いてしまう。今 はちょっとこっち側に動き過ぎているような感じもあります。そのシステムに関しては、 両方がデータを有効に使えるようなことが必要ではないかと思います。 ○加藤座長 ありがとうございます。  特にワクチンに関しましては、ちょっと一般の医薬とまた違うシステムがあるという ことが、まさに一般薬と違うところでございまして、このところがダブルの報告制度が できているというところに若干混乱が生じてきている。健康被害に関しましても、私ど もが審議する前に各担当の製造業者が担当医と話し合いを済ませてしまっているという ような事例も時々見られます。非常に審議をやっていく上でやりにくくなってきている 状況もございます。メーカー側の気持ちもよくわかりますけれども、そういうシステム がある以上はそうせざるを得ないのであろうかと思いますが、そういうような制度その もの自身を省の中でなるべく協調するといいますか、十分お話し合いをしていただいて、 整合性がとれたような報告制度にしていただきたいというようなことを今後考えていた だきたいと座長としては考えるところでございますが、この件に関しまして、全般的に ほかに御意見ございますか。 ○雪下委員 健康被害の補償の問題ですけれども、これは公的な接種で一般的には国で の補償ということになると思いますが、これは機構法に御報告するというのは薬事上こ ちらで問題になったのは、独立行政法人での補償ということになっているのでしょうか。 ○加藤座長 定期の予防接種の場合には、医薬品機構からの補償とは関係がございませ んで、ただ、これは厚労省に確認いたしますけれども、ここに報告しなければいけない ということだけですね。補償とは関係ないことですね。 ○伯野予防接種専門官 補償とは別です。そこと因果関係のところはまた別かと思われ ますので。 ○雪下委員 明らかに薬自身に問題があったというような場合でも、健康被害の方は健 康被害とそのまま法的に国でということでいいんですね。 ○伯野予防接種専門官 医薬品医療機器総合機構法に基づく健康被害に関しては、メー カーからも出資して、そこから救済されているということです。これは薬事法上に基づ く救済制度ではなくて報告の方ですので、また別な話かと思います。 ○雪下委員 わかりました。 ○加藤座長 そういうように、薬事法と予防接種法の中でいろいろ混乱が生じているこ とは事実なのでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように、できる ならば省庁の中で十分に意見の統一を図って、同じような方法で進んでいただきたい。 こちらはこちら、こちらはこちらでやりますでは非常に難しい問題、これは私どもも大 変ですし、メーカー側も大変ではなかろうかと考えております。  ほかにこの件に関して、副反応についていかがでしょうか。御意見ございませんか。 制度そのものについて。 ○宮崎委員 今日の議論とは直接は関係がないかもしれませんけれども、こういう調査 というのは方法によって頻度が変わるんですね。大きく言えば、前向きに調査をしてい く接種したところから追い掛けていく調査、あるいは何かイベントが起こって報告をい ただくという後ろ向きの調査、もう一つは、報告が上がってくるのを待つ、いわゆる受 身的な調査と、調査に積極的に行くというアクティブな調査があって、この組合せによ って頻度が変わるんですね。任意接種のワクチンに関しては、メーカーに上がってきて それを報告される、どちらかというと受身的で事後的な報告になりますし、今、通常起 こり得る副反応でやっている定点を設けての調査というのは、あらかじめ保護者に調査 用紙を渡してやっていますから、どちらかというと前向きで積極的な調査で、これが一 番よく頻度的には上がってくるだろうと思うんです。MMRワクチンのときもそうでし たし、ムンプスワクチンの髄膜炎の頻度などもそうなんですけれども、こういう方法で とったらこういう頻度が出る、こういう方法ではこうと、その辺も少し皆さんに理解し ていただいて、読み方といいますか理解していただければいいなと思っています。例え ば、国が今、任意接種のワクチンの定期化を考えるときに、そういうアクティブな調査 を先にやっておけば、ふたを開けて定期化してアクティブ調査でやったらどんと増えた というような混乱はなくなるのではないかと思っております。 ○加藤座長 ありがとうございました。  今の先生の御意見は、健康状況調査の方は前向き調査であって、副反応報告書では後 ろ向きであるということですね。だからといって、この副反応報告書を前向きの方向に 直しても、健康状況調査と同じことになる可能性もあるので、この副反応報告書自身は なかなか難しいんですね。 ○宮崎委員 私が今申し上げたのは、今の副反応報告書を前向きにしろということでは ありません。それをしようとすると全員を調査しないと前向きにするというのは不可能 ですので、やはりまれな副反応は起こったときに報告を受けるというシステムとする。 しかし、その代わり今よりも少し迅速性を高めるということ。通常起こり得るものは、 解析はそれほど急がなくてもいいけれども、しかし、きちんとした数字が前向きで定点 で、ある一定数とれますから、今のシステムでかなりいい数字がとれていると思ってい ます。 ○加藤座長 ありがとうございました。  ほかに御意見いかがですか。 ○雪下委員 もう一つ、ちょっと確認ですが、例えば、薬事法上の問題があるなという ことで、医者がどうもワクチン自身に問題があるのではないかと思った場合には、製造 販売業者に医者の方はおかしいじゃないかと言うのでしょうか。その後に、これは保健 衛生上の危害の発生または拡大防止のために必要があると思ったときに厚生労働大臣に 報告するのでしょうか。その辺のところ、薬がおかしいなと思っても、薬だけの問題で はないと判断した場合に厚生労働大臣に言うのでしょうか、その辺のところは医者が現 場にいた場合に、どうすればいいのか。 ○加藤座長 これはワクチンだけにかかわらず、すべての医薬品、私ども日常使ってい るときに、それが使われている医薬品によるものの疑いがあると考えた場合には、やは りメーカーに連絡するという仕組みになっておると私は考えています。その後の対応は、 メーカー側が対応をどうするかを決定するというシステムになっているのではなかろう かと思います。 ○雪下委員 でも、実際は、健康被害が確かにワクチンを接種したことによって起こっ たなと思った場合に、医師はメーカーに報告する義務はないですよね。報告するわけじ ゃないですよね。 ○加藤座長 そこのところが両股かかわっていると私が先ほど来お話ししていることで して、接種医がワクチンによって因果関係があると考えて、そのワクチンに由来するも のであるということを考えた場合には、それを保護者に伝えて保護者が市町村の予防接 種担当官にワクチンによって健康被害を受けた可能性があるので審議をしていただきた いという申し届けをします。これが正式な健康被害に対する手続でございます。その間 にもう一つ薬事法というものが入るために、メーカー側がそういうことが起きた瞬間に 場合によってはこういうことが起きましたということを医薬品機構に報告している可能 性があるということで、全く別の機構が同時に進行している可能性があるので、できる ことであれば同じ省内の中で情報交換をして整理ができないものかと申し上げていると ころでございます。  ほかにいかがでございますか。それでは、時間もございますので、この件に関しまし ては、また後ほど御意見がございましたら補足していただきます。  続きまして、第2番目の議題で、都道府県への積極的な役割を求めることにつきまし て、事務局から御説明をいただきます。 ○伯野予防接種専門官 まず、現状ですが、予防接種は市町村が実施主体でございます が、予防接種率の向上、個別接種の推進、学校を初め関係機関との連携等の課題に関し ましては、広域的・総合的に対応するためには、小規模の市町村においては人材やノウ ハウの点で限界があるという御意見もございます。そのため、都道府県の関与を求める 御意見がございます。  また、市町村の圏域を超えた相互乗入れ方式を行っていただいている都道府県もある と聞いておりますが、そのような方式を採用して、できるだけ、かかりつけ医で接種を 受けられる体制の確立が求められているところです。  また、昨年幾つかございましたが、予防接種による事故の発生がございます。そのよ うなことから、都道府県が例えば市町村に対して助言できる体制の構築等も求められて いるところです。  課題としましては、都道府県の市町村、これは自治事務になってございますので、そ の辺の都道府県への関与というのはかなり積極的な理由が必要であるということです。 その必要性、制度上の問題点について、やはり慎重に検討する必要があるというところ です。  以上です。 ○加藤座長 ありがとうございました。  都道府県の積極的な役割がどうあるべきかということでございますけれども、何か御 意見がございましょうか。  1つには、いつも医師会から話題が出ております市町村の間での予防接種の乗入れの 問題がありまして、市と市との間で乗入れがなかなか難しいところがあるので、これは 県が関与していただくと乗入れという問題が解決するのではないかという議論も中には ございますけれども、竹本委員はその辺のところはいかがでしょうか。 ○竹本委員 日本小児科医会では、市町村の相互乗入れ、ゆくゆくは全国的どこでも接 種できるようにという意見が主流なんです。ただ、私の考えを述べさせていただくと、 川崎市の場合には医療機関が開業するときに、まず予防接種についての説明会を受けな ければ認可をしないということになっていて、あとは毎年予防接種をするに当たっては 講習会を開いて、それに出席しなければできない、いわゆる制度が改正になったり、あ るいは専門の先生に講演してもらってやっているので、新しい知識がどんどん入ってい くということなんですけれども、全国的に見てみると、そういう制度が全然ない。それ から、ほとんどが手挙げ方式なので、どの科の先生でも予防接種ができる。そうなって くると、今度は接種率は上がるかもしれないけれども、事故率の方も心配だなというこ とがあるので、その辺のところがいつも小児科医会のセミナーなどでも問題になってい るところです。ですから、できるだけ講習会であるとか講演会あるいは説明会等を徹底 してやっていただいて、同じ制度になればどんどん進むのではないかという感じがいた します。 ○加藤座長 県の市町村に対する役割についてのお考えはいかがでしょうか。 ○雪下委員 相互乗入れについては、今、竹本委員が言われたとおりいろいろそういう 問題がありますが、具体的に一番問題になっているのは、一部負担金の格差の問題であ ります。あと事務上の相互のやりとりが大変だということで、隣接している市などでも なかなかそれを実現しないということ。それから、もう一つ、今、竹本先生が言われた、 やはり市としての制度管理を徹底してやりたいということで、講習会を開いたりして、 それを受けない者に対しては参加を認めない等の規則を作っているところでは、ほかの 市の先生方には任せられないというような理由があると思います。でも、特に九州地区 等の、西の方ではかなり積極的に行われているようで、結果としては市民の方は喜んで おられるということで、これも何とか積極的に進めたいと日本医師会では考えておりま す。  それから、もう一つ問題は、例えば今のMRワクチン採用に当たっての移行措置の問 題等で、これは日医としては何度も厚労省とは打ち合わせをさせていただいて大体のコ ンセンサスを得ているつもりですが、国から都道府県担当課長会議を通じての、市町村 への通達が徹底していないということがあります。そのために、都道府県から肝心の実 施主体としての市町村へ連絡が行かないで、肝心の実施主体の市町村が理解しないまま に騒いでいるということが、まだまだ現実にあります。やはり都道府県が関与して、私 は都道府県から市町村への連携を十分してもらって指導をしてもらうということ、これ が大事だと思っております。何しろ自治体の自覚が余りない。自分たちが実施主体なん だという自覚がない。その予算は勿論、初めのころは国からの予算で来た時期があると 思うんですが、今はもう自治体が自主的にやる仕事として何らかの公的な財政措置はさ れているわけですから、それをしっかりと自覚すべきだと思います。それを国の方から も徹底してほしいと思っております。 ○加藤座長 ありがとうございました。  ほかに御意見いかがでしょうか。 ○宮崎委員 福岡県でも実はやっと広域化になったんですけれども、厚労省では全国的 な広域化の把握というのはされているのでしょうか。 ○伯野予防接種専門官 現在は把握していないところです。 ○宮崎委員 なかなか実現までに時間が掛かった理由は、先ほど先生がおっしゃったよ うに接種費用の問題だったんですが、結局は、接種費用は統一しないといけない。その 自治体の接種費用でこちらに移ってもやるということで結局はまとまったわけで、私も その方がまとまりやすいのではないかと思うんですね。やはり市町村によって随分接種 費用が違っているというところの調整がなかなか難しいようですので、個人的にはその ように思っています。  それから、もう一つは先ほど言われましたように、県というのは非常に中途半端なと ころにあるなと私たちも思いまして、実際に自分でやるわけではないけれども、指導し ないといけないような、しかし、お金を持っているわけでもないという非常に中途半端 なところにあって、市町村の数はすごく多いですから、確かに県がある程度中間的に指 導していただければ助かると思いますが、県に専門家がいるかというと、余りおられな いのではないかという気もするんです。  ちょっと前になりますけれども、福岡県でポリオワクチンが一時接種が止まった時期、 あれは福岡県で2例たまたま副反応かなという事例が出たときそうなったんですが、私 たちは全然知りませんでした。そういうことが起こっていることも相談も来ませんし、 県の担当者だけで悩まれたのだろうと思いますけれども、結果的にはふたを開けたら、 あのときは2例とも因果関係はなかったということになったかと思います。何か起こっ たときに県だけでは恐らく対応できないだろうと思いますから、やはり感染研なり何な り専門家がきちんとおられるところときちんと協議して、何か検討して考えるというこ とが、何かイベントが起こったときは大事かなと思いますし、広域化の問題もなかなか 医師会やいろいろな利害が関係するので、県だけの指導力では進まないところもあるの かなと思っています。  もう一つは、とにかく国があって県があって市町村があるわけですから、そこがきれ いに流れるには、やはり制度そのものがわかりやすくなくてはいけないと思うんですね。 今回のいろいろな改正はちょっとわかりにくかったので、混乱を助長したところがある のではないかと思いますので、むしろすっきりした制度を国がつくっていくということ が、結果的にはうまくいくのではないかと思っています。 ○加藤座長 ありがとうございました。  確かに今のお話にありましたように、県には国から通知が行きますが、私もこういう ことに携わっている関係でかなりいろいろな市に、特にMRの話題がこのごろ出ますの で、御解説を兼ねてお話に行くわけですけれども、現在も2月に入らんとしているとこ ろでも、市単位ではまだお役所の方も先生方も十分に把握していないところがかなりご ざいますね。それをちょっと私自身は危惧いたしているところです。頭の中ではわかっ ていても、実際にどうしていいかというのは戸惑っている方々がたくさんまだおられる のではないか。例えば、MRワクチンは2回接種できますということで、4月1日にな りまして小学生に入る方々はみんな受けられると思っている方々がまだ本当はたくさん いるんです。実際はそうではないのですけれども、そういうこともまだ隅々まで知られ ていないという、そういうところから恐らく県の役割というものがもう少しあってよい のではないかという問題提起であろうかと思います。  また、もう一つには、例えば相互乗入れ、広域化の問題ですけれども、かかりつけ医 の先生が道を1つ隔てて市が違っているような場合、極端な例を挙げて恐縮ですが、そ ういう場合は勿論ございます。そうすると、予防接種のときに限っては、かかりつけ医 の先生では予防接種は受けられないということも生じてくる場合もあるわけです。それ は、竹本先生がおっしゃったように、日本小児科医会ではすべての日本じゅうで相乗り ができるようなシステムを構築していきたいと、また、雪下先生もそうお考えだと思い ますけれども、現実ではなかなかそのシステムが進みにくいところもございます。全部 費用の問題であろうと思います。住んでいるところで賄うのか、または接種したところ で賄うのかという問題がいつも出てまいりまして、これが何年経っても解決していない というところから、広域化で今、宮崎先生がおっしゃったように県単位で、例えば、接 種する登録医が手を挙げるというような形も考えられるのではないかというようなこと も含めて、県の市町村に対する役割というものがいかにあるべきかという問題の投げ掛 けであろうかとも思いますけれども、全体的にいかがでございますか。 ○岡部委員 その財政的なことも含めたメカニズムはよくわからないんですけれども、 自治体側からすれば、制度は決まったけれども、その財政的な裏付けがないから動きよ うがないというような意見が非常に多いです。あるルールが決まった後、それに対する 予防接種の費用だけではなくて、それにかかわる諸々の費用についての予算措置をやら なければいけないのにある程度の時間が掛かる。でも、その時間を待っていられない時 間の余裕がないので、制度の方はいついつからスタートさせなくてはいけないといった ようなことが、自治体側としてはうまく動けない状況だということもよく話に聞きます。  それから、臨床医側あるいは多くの人にとって予防接種制度、定期接種というのは公 費負担制度であると理解している人の方が多いと思うんですね。でも、国の説明は、い や、これは公費負担制度ではなくて、定期接種としての責任とそれにかかわる費用を持 つ制度であるという説明で、実にそのとおりなんですけれども、結局それが広域化とか あるいは財政負担のところにかかわってくるのではないかと思うんです。私はやはり定 期接種としてやる場合には、困っているときだけお金を出せますよというような制度そ のものに非常に問題があって、今は子どもが大切だ、大切だと言っているときに、その ぐらいのことをみんなで負担するようなことをきっちり決めて、一つの少子化対策とし て予防接種制度はあるんだということをもっと打ち出しても、国としては十分説明のい くことではないかと思うんですけれども。 ○加藤座長 ありがとうございます。  県の市町村に対する役割というものでございますけれども、国が都道府県に対してい ろいろ通知等をなされておりますので、それを受けて都道府県が今よりもなお更に強固 に、その通知を地方自治体、市町村に対して正確に、かつ、迅速に伝える使命もあるし、 そういう権限も与える必要があるのではなかろうかと問題点をとらえていったらいかが かと考えます。各論に入りますと非常に難しい問題がたくさんございますので、この検 討会では総論的なことにとどまるかと思いますけれども、ほかに何か御意見ございます か。 ○蒲生委員 読者というか保護者のことを考えますと、自分の住んでいるところでしか 予防接種を受ける際の負担金が受けられないということなので、勿論、道を隔てた向こ う側の違う市区町村のかかりつけ医の先生にしていただけないという問題もありますし、 引っ越しをした場合に受けにくくなってしまうという、御相談がとても多いという現状 をお伝えしておきたいと思います。  それから、MRについて今、私どもの雑誌で間に合うように2月に発売するもの、そ れから、1月に発売したものに関してMRのこと、それから、その前に麻しんと風しん をどうするのかという特集をしている中で、実際のお母様方にお会いしてお話を聞くと、 MRのことは多くの方が御存じありません。「それは何ですか」「4月になるとどうなる んですか」「私たちの子どもはどうなるのか」と。私たちが「4月から変わりますよね」 というお話をして「変わるんですか?」という質問が返ってくる。それも私たちが今お 会いしているのは首都圏にお住まいの方々ばかりですので、情報網は発達しているはず なんですけれども、実際のお母様には伝わりにくいということを先回も申し上げました けれども、そこについてはもうちょっと危機感を持って、私たちも雑誌ではやっていま すが、買っていただく方にしかお知らせすることはできません。通知を出したからおし まいでは、一人一人には伝わりにくいんだということをどうしても今日はお伝えしなく てはと思っておりました。 ○加藤座長 ありがとうございます。  今、蒲生委員がお話しになったことは大変大切なことでして、最後の討論のところで 予防接種の勧奨という項目がございまして、そこのところで是非、蒲生委員から御意見 を伺おうかと思っていたところですので、また同じことになるかと思いますけれども、 そのときにまた御議論いただきたいと存じます。  県に対する積極的な役割についての御意見は、ほかによろしいでしょうか。  それでは、都道府県への積極的な役割の求めにつきましては、この程度で議論を打ち 切りまして、続きまして、予防接種の勧奨についての最後の議題について議論をいただ きたいと存じますので、これは厚労省から簡単に御説明をお願いいたします。 ○伯野予防接種専門官 予防接種の勧奨についてですが、現状としましては、市町村ご とに接種対象者の人口格差や周知方法、接種体制が異なる等の地域の事情によりまして、 接種率には地域格差がかなり出ているというのが現状です。  課題ですが、厚労省やほかの関係各課、関係省庁から通知等で既に予防接種に関する 周知だとか勧奨の通知というのは出されているところですが、十分に実施してされてい ないところもあるとは聞いております。公衆衛生上、必要な予防接種について行政が担 当する上では、副反応等についても十分に周知することによって、結果的に接種率の維 持、信頼性の確保、接種率の向上等が図られるものと考えているところもございます。  また、勿論、副反応以外のワクチンの有効性・安全性、疾病の特性等についても、よ りわかりやすく正確な情報を提供する必要があると考えております。  以上でございます。 ○加藤座長 ありがとうございました。  予防接種の勧奨、広く伝えるための方法についてということで、御説明を簡単にいた だきましたけれども、この方策について何か御意見がございましたらお願いいたします。 先ほど蒲生委員から、一般の方々はほとんど御存じないという、一般の方々の反応はそ うであるという御意見もいただきました。それから、先ほど私もお話しいたしましたよ うに、一般の方々だけではなくて、実際の医療従事者もまだ十分に周知徹底して理解を していないというのが2月に入る直前の現状でございますので、かなりこれは深刻に考 える必要があろうかと思っておりますが、何か勧奨について御意見ございませんか。 ○竹本委員 蒲生先生がおっしゃったんですけれども、まず、MRについては各医療機 関にそれだけのポスターを配布しているし、それから、保育園や何かでもMRに変わり ますよというポスターが十分に配布されているので、医療機関を受診している人だった らポスターを見ればそういうのがあるということ自身はわかるのではないかと思うんで す。ですから、全然知らないということはちょっと疑問視するんですけれども。  それから、これはまた川崎市になってしまうんですが、川崎市は今まで90か月だっ たのが24か月以下になってしまうということで、もう既に昨年のうちに90か月未満の 対象者、接種している、していないにかかわらず、全年齢対象の人たちに対しては、来 年4月1日からMRになってしまうので、片一方接種している人あるいは片一方罹患し た人に対しては、3月31日までに接種してくださいということを全家庭に手紙を出し ております。ですから、ここへ来て風しんの駆け込みは非常に医療機関で多くなってお りますので、それだけの対応はしていると思うんですね。ただ、それだけの通知をする ということは非常に大変ですから、予算的な問題もあると思いますけれども、少なくと もやっている地域もあるということはお話ししておいた方がいいのではないかと思いま す。 ○雪下委員 これは、国の弁護にもなると思いますけれども、既に報告されているよう に、各市町村から対象者に個別通知を出しているかどうかのアンケート調査を厚労省は されておりまして、その中でまだ実施されていないのは400ちょっとくらいの市町村だ と思いましたが、それについては再通知を全部していただきたいというように承知して おりましたが、これはされているはずですよね。  だから、400を抜きましてもほとんどのところでやられているということで、なかな かそれ以上の通知というのは難しいと思うんですよね。一軒一軒行くわけにもいきませ んし、一応、一軒一軒通知が行っているということが大部分を占めているということで すから、子どもをお持ちの方々も少し自覚してもらいたいと思うんです。接種開始期間 は変わりないわけですから。但し3月31日までの対象者については、従来の方法で全 部やるようにということでポスターもつくっておりますし、これは各医療機関、竹本委 員が言われたとおり全委員に通知を出しています。座長は医者の方も知らないと言われ ますけれども、更に徹底しますが、全然聞く耳のない人に広報するのは難しいので、該 当するお母さん方はやはりその辺のところは気をつけてほしいとこちら側からもお願い する次第です。  それともう一つ、引っ越しで受けられないことはあるんですか。 ○伯野予防接種専門官 対象年齢であれば当然、定期の予防接種として受けられます。 ○雪下委員 住民票が移れば受けられますよね。 ○蒲生委員 負担金が変わる、時期を逃すという意味で。 ○雪下委員 負担金はだから市町村によって違うんです。 ○蒲生委員 引っ越したら必ずしも全員が受けられないというお話ではないんですけれ ども、例えば、集団接種だった場合などに、引っ越しで時期を逃してしまって、受けに くいとか、受けるためには以前住んでいた所よりお金がかかったと……。 ○雪下委員 そんなことはないと思いますよ。 ○蒲生委員 それは、ちょっと私も……。 ○雪下委員 あるいは安くなるところだってあるわけですよ。市町村によって違うんだ から。 ○蒲生委員 そうだと思いますけれども。 ○雪下委員 だから、それは移って、そこでどういう体制になっているかをやはり調べ なければ、そのくらいの努力はしてほしいと思うんですよ。法的に受けられないとか、 個人負担になるとか、多少の金額の差は出ますけれども、ものすごい個人負担になるな どということはあり得ないと私は思っていますけれども。 ○雪下委員 そういう事例がありましたら教えてください。対応したいと思います。 ○蒲生委員 御相談のお電話をしたときの対応の仕方だったりとか、大きな制度の中で はうまくできていることが、個々のお母様方にいったときになかなか上手にいっていな い、理解してもらえないということなのではないかと思うんです。通知も読んで理解で きる方と、医院に張ってあるポスターをきちんと読む人と、赤ちゃんが高熱を出してい れば多分、壁などは見ないでお帰りになったりとか、いろいろな状況があるのではない かと。私は別に皆様が何もしていないということではなく、現状として知らないお母様 がこれだけいるとは私も思っておりませんでしたので。 ○雪下委員 蒲生委員のおっしゃることはわかります。ただ、影響が大きいですから、 その辺のところは正確に情報を把握して、実際の医療機関については私どもがいろいろ 通知したり、注意したりしますので報告してほしいと思います。 ○加藤座長 ありがとうございました。  いろいろと例外的なことを挙げていきますと切りがございませんので、総論的なとこ ろでのお話をお願いしたいと思います。 ○岡部委員 通常の場合の勧奨と制度が変わろうとするときの勧奨のやり方では随分違 うと思うんですけれども、制度が変わってある時期を決めれば、その時期までに100% 周知徹底というのは無理な話だと思うんですね。交通ルールでもある日に変わって、右 側を歩いていけないと突然変わったというようなことは確かにあるわけで、周知徹底し ていくためにはある程度時間がありますが、特に健康を守るための規則であるので、あ る時期からずれてしまった人は、もう法律から外れたんだからだめだという考え方がま ずいと思うんです。そこからずれた人に対しても、どうやって同じように病気を防ぐと いうチャンスをつくっていくのか、あるいはそれを与えていくか。これが先ほどから言 っている少子化対策に非常に重要なところだと思うんです。1人の子どもでも皆で大切 にしようというのがあるならば、接種漏れの子どもでも何とか、その制度から外れるけ れども、従来だったらこうこうであるというようなことができる、つまり経過措置や何 かでできるだけの多くの人への感染予防ができることを考えるべきと思うんです。どっ ちみち決めなければいけない時期はあるわけですが、そこがないとある一定期間でぽん と、そこの前後をどうやって工夫していくかという部分で実際に温かくなるか、冷たく なるかという大きい差が出てくると思うんです。勿論、理解されない方はいずれのとき でもあると思うんですけれども、では、その人たちを放っておいていいかというと、そ れらのアナウンスなどを見なかったものが悪いんでしょうというわけにはいかないと思 うんですね。でも、最近の国の説明ですと、それは見なかった国民の責任ですという言 い方をぱんとされる方もおられる。ということは、やはり私は問題があるのではないか と思います。  通常の勧奨がこれはもう粘り強く、いろいろな方法をやっていかなければいけないし、 後で学校保健法の資料などもついていますけれども、あるいは定期健診とかそういうよ うなものを使って、今度はプロ側がきちんとその制度に基づいた説明を継続してやって いくということが必要だろうと思います。 ○加藤座長 ありがとうございます。  厚労省も感染症課のみならず、種々の担当局の方から都道府県または各地方自治体の 方にMRに関してですけれども、報告は流していることは事実ですので、国としてでき ることは最大限行われているのでなかろうかと思います。。それを受け止めた側が、先ほ ど川崎市ではそれを徹底的にやっておられるというお話でしたが、それが全国的なレベ ルでの市町村で行われているかどうかというところに一つの問題点があろうかというこ とで、それがまた先ほどの話に戻りますと、県側がどれだけの権限を持って、更に市町 村に指導を掛けるかということにも、また同じような意見が集約してくるかと思います。 したがいまして、これも雪下先生ではありませんけれども、国の肩を持つわけではあり ませんが、かなりのことは国としてはやっておられるのではなかろうかと。あとは実際 に移す側がどれだけ啓発ができているかという問題ではなかろうかと私自身はとらえて おりますけれども、特にMRがこれから入ることに関係いたしまして、勧奨ということ についてほかに何か御意見ございませんか。 ○宮崎委員 平成6年の法改正のとき義務接種から努力義務に移すときに、どう進める かということがある意味では大問題だったわけですね。説明と同意がないと受けてもら えない。だったら、どう効果と副反応を正確に提供するかという話になって、先ほど加 藤先生が言われたように、ナショナルデータがない中でやはりデータをつくっていかな いといけないということで副反応報告システムもつくられたし、一番初めの予防接種の ガイドラインや保護者への説明の文書は、例えばワクチンの治験のときのデータを載せ ざるを得なかったものが、今はリアルタイムに起こっていることを数字として載せられ るようにはなってきたわけですよね。ですから、やはり勧奨ということは基本は、麻し んも風しんも去年本当に流行が沈静化してきて、怖さというものがどんどん今からもっ と薄れていくわけですから、それに倍するぐらいのきちんとした説明なりキャンペーン がないと接種率が維持できないということは、恐らく日本だけでなくすべての先進国の 共通の問題だろうと思いますし、アメリカなどは入学するときに結構縛りを厳しくして いますけれども、それ以外にかなり現場でのキャンペーンというものをやっておられる という話も聞いています。  それから、日本で難しいのがマスコミがなかなか使えないというか、使った経験がな いですよね。副反応報告は出ますけれども、接種を勧奨するという意味では、いわゆる 広告的な記事は新聞が広告屋さんが間に入ってつくることはありますが、マスコミ自体 が制度改正のときにキャンペーンをすることは余り見たことがないし、今回も余りそう いう動きはないですよね。ですから、マスコミとどう付き合っていくかというのは大き な課題になるかなと思います。  もう一つ申し上げたいのは、先ほど岡部先生もちょっと言われたんですけれども、国 は基本的に予防接種法を公権力の行使としてとらえる考え方が強いんですが、基本的に 長い予防接種の歴史の中では、受ける方あるいは接種する側としては、安全に、安心に、 できるだけ安く受ける制度、そういうものを保障する制度として私たちは獲得してきた という気持ちがあるんですね。そこと国とのずれが今あるのではないかと私は常々最近 思っています。ですから、やはり税金を払っている者として、自分の健康を守りたい。 そのために役立つ予防接種法であってほしいとは思っています。 ○加藤座長 ありがとうございました。  ほかにいかがでしょうか。 ○雪下委員 今、先生が言われたけれども、マスコミを使っては毎年予防接種について のPRを日本医師会は出しているんです。これは有料で、個人の広報活動として実施し ていますが、それに協力して一部の新聞社等は宣伝してくれているというものもありま す。勿論、新聞とかテレビが一番有効かもしれませんが、でも、やはり私は特に努力義 務にもなったということもありますし、それなりの国民も最低の努力義務はあるのでは ないかと思うんです。例えば今のMRにつきましても、これはより良い制度に変えまし ょうということで国も日医も運動を開始しましたが、実施までに半年間あるんです。開 始までの該当者については、半年間あるから、そこで従来の方法でやってくださいとい うのに、実施できなかった子の移行措置はどうかとか、そのときの健康被害はどう補償 するのかというものばかり責められているのです。従来の方法で1才になったらなるべ く早期に接種するということが守られ麻しんにつきましても蒲生委員、4〜5年前には 30万人あったものが今は1万人を割るところまで来ているわけです。それだけの効果が あるわけです。大部分の国民の方もみんな努力して注意しておられる、その成果が出て いるわけです。ポスターを貼っても広告を出しても無関心の人は見てくれないのですが、 みんなで努力し接種率をあげることが大切であることを国民にPRしていくということ は、これからもやはり大事なんじゃないかと私は思っています。 ○蒲生委員 麻しんについては3年ほど前から、私どもの雑誌では1歳になったら、ま ず何よりも麻しんを受けましょうという特集記事を何度も何度も繰り返し掲載しており ます。それから、3月に行われる予防接種週間については、それも3年ほど前から毎年 毎年必ずこういうキャンペーンがあるので是非利用しましょうという記事を掲載してお ります。そして、改正されてMRになるということについても雑誌の中では、改正され た後の赤ちゃんについては、その制度に従って受けていただけるのでいいかなと思うん ですけれども、改正されるときのはざまにいらっしゃる、麻しんを受けてしまった、急 いで風しんを受けなければいけないという方たちに対して、こういうふうに変わるんだ から必ず3月31日までに受けないといけないんだということを、特集の記事の中で紹 介しておりますし、それから、予防接種全般に関しての付録を大体毎年50ページぐら いのものを年に1回か2回つけます。その付録は非常に好評で、それだけ一般の皆さん が知りたがっている情報と私たちはとらえていて、なるべくわかりやすくということで 岡部先生や多屋先生に非常に御協力していただいて、作っております。そして、私ども の雑誌だけではなく、同じように赤ちゃんをお持ちのお母さんを対象にしたほかの雑誌 でも、今回のMRの改正については特集もしておりましたし、一生懸命やっているのは 皆さん同じだと思うんですけれども、なかなか伝わらない、伝え切れない。病院に行っ てくださる、健診に行っているお母さんはいいというのと同じように、読んでくれるお 母さんはいいんだけれども、そうではない方たちに関して、岡部先生がおっしゃってい ましたけれども、麻しんだけ受けて風しんはどうしたらいいのかなというお子さんも出 てしまうのか、その辺はとても心配だなと思うと同時に、また、マスコミの役目として 私たちは新聞のように大きな媒体ではないので、本当に買ってくださる方にしかお伝え することができないんですけれども、表紙だけでもはっとしていただけるような、予防 接種が変わるからこれを読まなくちゃと思っていただけるようなことをもっとしなくて はいけないなともっとしみじみ感じております。 ○加藤座長 MRに関連してですけれども、今年の4月からの変更ですので、今、蒲生 委員がお話しになったとおり、今のガイドラインを持っている方々にはわかりにくいん です。次の年から生まれる方は恐らくガイドライン自身が新しくなりますので、それは 意識の徹底がなされていきますので理解がしやすいと思います。しかし、今年4月より 前に『予防接種と子どもの健康』をいただいているお母様方には、必ずしも100%周知 徹底がなされていないということであろうかと思います。事実、まだそのガイドライン もできておりませんし、『予防接種と子どもの健康』もまだつくられておりませんから、 当分の間混乱する可能性は十分にあると思います。  私は個人的に厚労省の方にお願いしたいのは、できることであれば、これは政府広報 としてテレビでやっていただきたい。いろいろなテレビでスポットでコマーシャルが政 府広報として出ますね。例えば「世界の国々にワクチンを」とよく出ます。私はあれを 見ていて、それはよくわかるんだけれども、そんなことを今、厚労省は言っていないで しょう。厚労省は日本のはしかをなくそうと言っているのではありませんか。あれは一 体何省がやっているんでしょう。多分、外務省とかユニセフとかその辺が絡んでやって おられるに違いないんだけれども、これは力関係があるのかどうかわからないけれども、 ここは一発、厚労省にどうしても頑張ってもらって、今年の4月からはもう12か月か ら24か月までの間に定期でのMR接種になりますよという政府広報をスポットで1週 間ぐらい原則どうしても、これは予算がもう決まってしまったかもしれないけれども、 どうしても座長としてはお願いしたい。これをやりませんと、これは蒲生委員が幾ら足 を使って本を売っても間に合わないし、医師会が莫大な広告料を出して新聞に載せても、 見ない人は見ない。テレビというのは意外と見ています。私もポリオとそれより前はエ イズでしたよね。ぱっと出ますね。あれは誰でも見るんです。本当にスポットでも見ま す。是非その辺のところを、もしお考えになるとすれば、これは違法では私はないと思 っておりますので、是非省の方でお考えになっていただいて、こんな意見も検討会では なされたということをお考えいただきたいと思っております。  勧奨についてのお話になりますが、ほかに何か御意見ございますか。 ○伯野予防接種専門官 麻しん風しんの制度改正につきましては、御指摘のとおりかな り複雑になっておりまして、十分に周知されていないおそれがあるということから、こ ちらとしましては、まず、自治体の方に通知を行うよう再度勧告という形で出させてい ただいたところですが、併せて2月にテレビだとか新聞、ラジオなどのメディアを使い、 また、加藤先生と岡部先生にも御協力いただきまして、政府広報を用いて今回のMRに 関しては報道をさせていただく予定ではあります。 ○加藤座長 ありがとうございました。  特に全体を通じて御発言はございますか。 ○宮崎委員 本日の資料に予防接種率には著しい地域格差が出ているのが現状というこ とが書いてあります。1つは、地域的にそういう差があるということの認識も今まで余 りなかったのが、最近、接種率自体を議論するようになって、よくよく調べてみると非 常に差があるということがわかってきたわけですね。結局、予防接種法は疾患の制圧と いうことを目指しているわけですから、基本的には疾患が減るということが一つの有力 な指標ですし、その裏返しとして接種率が上がるということですね。接種率が上がって 疾患が減ればよく効いているということになりますし、相関しなければ効いていないと いうことがわかるわけですから、非常に接種率というものをどうとらえるかというのは、 前回も議論になったようですけれども、大事なことだと思います。県のかかわりから言 えば、県の中にいろいろ市町村があって、県自体が市町村の接種率の差というものを認 識して、うまくいっているところ、いっていないところの原因を議論していけば、県の 役割も出てくるし、実質的な接種率の向上にもつながるのではないかと思います。  それから、もう一つは、勧奨として先ほどポスターを見る、見ないというお話もあり ましたけれども、やはり正確な情報を出すだけでもなかなか接種行動につながらないと いうのは、この会議でも何回か出てきているところで、やはり現実になかなか接種行動 に結びつかない方をどう行動に結びつけていくか。これは宣伝ということもそうですし、 接種機会なりをどうするか、恒常的にどうするか、あるいは、こういう移行措置のとき にどうするか、いろいろな課題があると思いますけれども、そこを総合的に考えて、社 会のいろいろなカバーから漏れがちなところを、どう一人一人救っていくかという議論 を今後も粘り強くやっていかないといけないのかなと思います。 ○加藤座長 ありがとうございました。  ほかにいかがでしょうか。 ○岡部委員 全体でよろしいでしょうか。予防接種の副反応ですけれども、先ほどから 座長がおっしゃっているように、きちんとしたモニタリングができていろいろなものが 集積してきた。これは国際的にもなかなかこういうことができるところは少ないので非 常に誇るべきことだと思いますし、是非それはいろいろな面でアピールをしていった方 がいいと思うんですけれども、先ほどもちょっと申し上げたように、それに対するアク ションをどうするかという部分を、今度は制度としてつくっていって、どういう対応を した方がいいのかということを入れていった方がいいのだろうと思うんです。  ただ、そういう制度が全くないわけではありません、いつだかの委員会でも申し上げ たんですけれども、ポリオによる副反応例が福岡で問題になったときに、そのときに急 にポリオをストップということでいろいろな混乱があったわけですが、その反省で、当 時は公衆衛生審議会だと思いますけれども、その中で予防接種の副反応が起こったとき に備えて専門家のリストをつくっておいて、この予防接種の臨床は誰それ、基礎的なと ころでは誰それというリストをつくって何かあった時に相談できる、いわばコンサルタ ント制度というようなものをスタートしてあります。実際にはその後大きい事件がなか ったから、恐らくは使われずに済んでよかったことは良かったと思うんですけれども、 そういう制度は最近何か起きたときに、全く活用はされていなかった。同じような混乱 が時々起きているので、その制度をどういうふうにするかという議論はどこかで是非や っておいていただいて、私はそれを復活させた方がいいと思っています。 ○加藤座長 ありがとうございました。  いろいろ議論は尽きないこととは存じますけれども、一定の時間になりましたので、 本日は細かい事項については、なかなかまとめにくいところもございますが、議論はこ の辺りで終了させていただきまして、まとめというわけではございませんけれども、予 防接種の健康被害と副反応報告に関しましては、現在年に1回程度の会をつくって報告 をしているわけでございますが、時節柄年1回では先ほどお話が出ましたような迅速な 対応がし切れないのではなかろうかというようなこともございます。また、副反応の件 数だけを報告するということではなくて、その病状であるとか、または科学的な意味合 い、または医学的な意味合いの知見についても十分検討した上で、それを書き込んだ上 で、できれば迅速な対応としてWeb上でも公表できるような制度に変更していくべき ではなかろうかと本日の検討で感じたところでございます。  また、それと同時に、重篤な副反応が一定程度以上出てまいりましたり、また、予期 せぬ頻度で副反応が生じるような場合も想定いたしませんと困りますので、今、岡部先 生がお話しになったと全く同じことですけれども、ワクチンの安全性に疑問が生じた場 合の対応方針というものについて確認しておくという作業も必要かと思います。  また、薬事法の件ですが、薬事法の報告についても適時、医薬食品局との情報交換と いうものを健康局も十分に行っていただいて、幅広く副反応の報告の活用をしていただ きたいということが今日の議論の総括ではなかろうかと考えました。  また、都道府県の積極的な役割については、かなり難しいところではございますが、 予防接種率の問題点もございますので、十分都道府県が主体となりまして、市町村に対 して適切な指導を現在行っているところではございますけれども、より適切に、より強 力に定期の予防接種の体制を整えるような指導を都道府県にはこの検討委員会としては 求めるというところで取りまとめておきたいと存じます。  また、予防接種の勧奨については、興味がない方に対してまでも勧奨するのは難しい という御議論もございました。これは確かにございましたが、今日の資料からもおわか りのとおり、できるところは既にやっておるわけでございます。すなわち、疾病の特性 やワクチンの有効性・安全性等を周知しておく必要は勿論ございますけれども、今日の 資料にもありますが、厚生労働省のみならず文部科学省、母子保健課、または自治体等 の関係部局や関係機関との連携をきちんと保って広報して通知を出しておるところでご ざいますので、するべきことは既にされておるのではなかろうか。あとは、先ほど申し 上げたとおり、それを受けていかに県が指導力を発揮して、地方自治体そのものがいか に積極的に動いていただけているかどうかということに掛かってくるのでありますが、 ただ、通知を出せばよいということだけではなくて、より具体的な勧奨というものもマ スコミ等を通じてやっていただきたいと。同時に、できることであるならば、政府広報 を通じてこの数か月の間に、特にMRに関しては周知徹底をしていただける機会を設け ていただくように御努力いただきたいというところでございます。  1年後に関しましては、予防接種ガイドラインが新しくできると思もわれますし、ま た『予防接種と子どもの健康』というものも座長の考えといたしましては、やはり厚労 省監修のもとにある程度権威あるものとしてつくっていただくことが、よりベターなガ イドラインであろうと考えます。それは、各学会であるとかいろいろな組織がガイドラ インをつくりましても、たくさんのガイドラインができてしまいまして、どのガイドラ インを指標としていいかわからない、解説書のようなものがたくさんできてしまうとい うようなことになりかねませんので、やはり私個人としては、厚労省が最終的には法的 にも十分見極めていただいた上でのガイドライン的なものを今までどおりおつくりにな っていただいて、そして、周知徹底して予防接種の勧奨をしていただきたいと考えてお るところでございます。  うまくまとめにくいところもございましたけれども、本日の議論の取りまとめは以上 のようにさせていただきたいと考えます。  それでは、そろそろ予定いたしました時間になりましたので、本日の討論はこれで終 了させていただきますけれども、事務局から何かございましたら御説明をお願いします。 ○鈴木予防接種係長 本来でありますと、この場で次回の検討会の日程を御連絡差し上 げるところなんですが、まだ調整がついておりません。改めて御連絡申し上げますので、 その際は御協力をよろしくお願いします。  以上です。 ○加藤座長 どうも本日はお忙しいところを熱心に御討論いただきまして、ありがとう ございました。これをもちまして本日の検討会を終了させていただきます。  どうもありがとうございました。