06/01/27 平成17年度第1回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 議事録 平成17年度第1回薬事・食品衛生審議会 医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録                  日時 平成18年1月27日(金)                     10:00〜                 場所 経済産業省別館1111号会議室 ○事務局 定刻になりましたので、平成17年度の「第1回医薬品等安全対策 部会安全対策調査会」を開催させていただきます。本調査会は、ご覧のとおり 公開で行うこととさせていただいておりますが、カメラ撮りは議事に入る前ま でとさせていただいておりますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、 ご協力をお願いいたします。  本日ご出席の先生方におかれましては、お忙しい中をどうもありがとうござ います。この調査会、本日は初めての会合ですので、まず五十音順で委員の先 生方をご紹介させていただきます。慶応義塾大学の医学部長で、医薬品等安全 対策部会の部会長代理をされていらっしゃる池田康夫先生です。東京医科歯科 大学歯学部附属病院の薬剤部長の土屋文人先生です。国立医薬品食品衛生研究 所医薬安全科学部長の長谷川隆一先生です。国際医療福祉大学教授で、医薬品 等安全対策部会の部会長をされている松本和則先生です。  本日は議題別に参考人の先生方にご出席いただくことになっておりますが、 議題別に参考人の先生をご紹介させていただきます。「ペモリンに関する肝障 害について」は、国立精神神経センターの精神保健研究所精神生理部長の内山 真先生、国立精神神経センター武蔵病院長の樋口輝彦先生です。  次の議題の「塩酸パロキセチン水和物に係る『18歳未満の患者(大うつ病 性障害患者)』の取扱いに関する検討の結果について」は、参考人の先生は、 まだ控えの席にいらっしゃるところですが、九州大学大学院医学研究院精神病 態医学教授の神庭重信先生です。ペモリンと重複しますが、国立精神神経セン ターの武蔵病院長の樋口輝彦先生にも、パロキセチンについてはお願いしてお ります。  3つ目の議題の「リン酸オセルタミビルを服用した小児及び成人の死亡例に ついて」は、東京大学大学院医学系研究科小児医学講座教授の五十嵐隆先生、 国立国際医療センター国際疾病センター長の工藤宏一郎先生にお願いしてお ります。  最後の議題の「個人輸入されるサリドマイドに関する取扱い等について」は、 国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部第一室長の三宅真二先生にお願い しております。  続いて事務局側をご紹介させていただきます。安全対策課長の中垣俊郎です。 安全対策課安全使用推進室長の山田雅信です。本日は第1回目ですので、座長 を決めさせていただきたいと思いますが、事務局側としては、医薬品等安全対 策部会長をしておられる松本先生にお願いしたいと考えておりますが、いかが でしょうか。 (異議なし) ○事務局 それでは松本先生に座長をお願いいたします。以降、議事に入らせ ていただきますので、カメラ撮りはこれまでとさせていただきたいと思います。 よろしくお願いします。それでは議事進行を松本先生にお願いいたします。 ○松本座長 座長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。そ れではまず事務局から本日の資料の確認をしてください。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。先生方のお手元には、議事次第 の1枚紙、出席者一覧と書いた1枚紙、資料一覧と書いた2枚をホッチキスで 留めた紙以降に、資料ナンバーの付いた資料の束を用意しております。  資料1は、「医薬品等安全対策部会及び医療機器安全対策部会への調査会の 設置について(概要)」と書いた紙です。  資料2のシリーズは「ペモリンに関する肝障害について」の資料で、右上に 資料2と書いた資料に続いて、参考資料No.2−1という英文の資料。参考資料 No.2−2という右側に三和化学研究所と書いた資料。参考資料No.2−3と書い た衆議院予算委員会の第3分科会の会議録の資料。No.2−4は、参議院決算委 員会の議事録です。  資料No.2−5は、ベタナミン錠の添付文書です。資料No.2−6は英文のCY LERTというペモリン製剤の米国添付文書です。参考資料No.2−7は「今日 の治療指針」のコピーです。参考資料No.2−8は、文献のコピーですが、この コピーについては、傍聴者の方々には省略させていただいているところです。 資料の名前とどの雑誌に掲載されたものかということは、資料一覧に書いてお りますので、傍聴者の方で必要な方は、またこの文献を図書館等でコピーして いただければと思います。  次に資料3のシリーズです。資料3は「塩酸パロキセチン水和物に係る『18 歳未満の患者(大うつ病性障害患者)』の取扱いに関する検討の結果について」 という資料です。参考資料No.3−1は、パキシル錠の添付文書です。参考資料 No.3−2は、スライドが5枚ほどプリントされた資料です。参考資料No.3−3 は、FDAのホームページのコピーです。参考資料No.3−4は、日本児童青年 精神医学会からの要望書のコピーです。参考資料No.3−5は「パキシルの使用 上の注意改訂案」というA4横の資料です。  その次に資料4のシリーズに移って、資料4は「リン酸オセルタミビルを服 用した小児及び成人の死亡例について」の1枚紙。参考資料No.4−1は「リン 酸オセルタミビルについて」、参考資料No.4−2は、症例の一覧を示した横長 の資料です。これが小児のほうで、参考資料No.4−3は成人の症例の概要をま とめた一覧です。参考資料No.4−4は右側に「タミフル」についてと書いてあ って、左側に「新型インフルエンザに関するQ&A(抜粋)」と書いた資料で す。  参考資料No.4−5は「新型インフルエンザに関するQ&A(改訂案)」の横 長の資料です。参考資料No.4−6は、米国での評価結果(概要)と書いた資料 です。参考資料No.4−7は「プレスリリース」と書いた資料です。参考資料No. 4−8は「日本小児科学会におけるタミフルに係る事項についての見解」と書 いた資料。参考資料No.4−9は「医薬品・医療用具等安全性情報」のコピーの 資料。参考資料No.4−10は、タミフルの添付文書のコピーです。  参考資料No.4−11は「市販後調査実施結果報告書『1歳未満インフルエン ザ患者』に対する治療実態に関する特別調査」の資料です。この資料は委員の 先生方と参考人の先生方に限り配布させていただきます。というのは、この資 料一覧に書いてあるとおり、この内容については、平成18年4月に日本小児 科学会で公表予定ということで、会議後また回収させていただきたいと考えて おります。平成18年、今年4月に小児科学会で発表されるので、そのときに 内容についてはオープンになる予定です。  次に資料5のシリーズで、「個人輸入されるサリドマイドに関する取扱い等 について」。参考資料No.5−1は厚生労働省からの安全対策課長名の通知のコ ピーです。参考資料No.5−2は、監視指導・麻薬対策課長名の通知のコピーで す。参考資料No.5−3は「今までにサリドマイドを個人輸入したことのある医 師各位」という宛先が書いてある資料です。参考資料No.5−4は、安全対策課 長と監視指導・麻薬対策課長の連名の通知のコピーです。  参考資料No.5−5は「サリドマイド使用実態調査結果について」という資料 です。参考資料No.5−6は「サリドマイド使用実態調査票」という資料です。 参考資料No.5−7は「サリドマイド使用登録システム(SMUD)の運用イメ ージ」という資料です。  以上が本日用意させていただいた資料で、一部今の参考資料No.5−5に差し 替えがありますので、「参考資料No.5−5一部差し替え」と右上に書いた資料 を用意させていただいております。これで本日の資料はすべてですので、もし 資料で足りないものがありましたら、お知らせ願えればと思います。 ○松本座長 資料のほうはよろしいでしょうか。よろしいようでしたら、まず この調査会の設置について、事務局のほうから説明をお願いします。 ○事務局 資料1に基づいて、この調査会の設置について説明させていただき ます。この調査会は、資料にも一部書いてありますが、緊急の案件等を調査審 議する、すなわち専門家の先生の意見を聞かなければならないというようなこ とがありますので、そういった緊急の案件を調査審議するときのために、薬事 分科会規程に基づいて、薬事分科会長の同意を得て設置しております。資料1 のいちばん下に設置年月日が書いてありますが、分科会長の同意を得て、昨年 12月1日付けで調査会を設置させていただいているところです。  委員は、先ほど本日ご出席の委員の先生方の名前をご紹介させていただきま したが、4名の委員で構成されております。委員に加え、緊急の案件を調査審 議いただくということなので、その案件の内容や性格に応じて、参考人の先生 方にご出席いただき運営させていただくということで考えております。この調 査会は、緊急の案件について専門家の先生のご意見をいただくということです ので、緊急な場合には、夕方以降や休日などにも先生方にお集まりいただいて、 ご意見を伺うということもあり得ますので、その際には先生方にはよろしくご 協力いただければと思います。このような形で、医薬品等安全対策部会の下に 安全対策調査会を設置させていただいているところです。  医療機器の分野においても、同じく医療機器安全対策部会の下に、安全対策 調査会を設置して、4名の委員と案件に応じた参考人の先生方に参加していた だき同様の形で運営するということで考えております。説明は以上です。 ○松本座長 ただいまこの調査会の設置について事務局から説明していただ きましたが、何かご質問ご意見等ありませんでしょうか。よろしいですか。よ ろしいようでしたら、次に進ませていただきます。議題の(1)は「ペモリン に関する肝障害について」です。この議題の参考人として先ほど事務局から紹 介していただいたとおり、この分野の専門家であられる内山先生、樋口先生の ご両人に出席をお願いしております。よろしくお願いします。  それではまず、ペモリンに関する肝障害について、事務局から説明をお願い します。 (内山参考人・樋口参考人着席) ○事務局 資料2に沿って「ペモリンに関する肝障害について」ご説明させて いただきます。背景ですが、平成17年10月、米国食品医薬品局(FDA) において、「注意欠陥多動性障害」(ADHD)の治療薬である「ペモリン」に よる肝障害が報告されていること、また小児のADHDの治療薬が複数あると いうことから、ADHDのペモリンによる治療を代替治療薬に移行すべきとい う勧告を受けております。それが参考資料No.2−1です。  それを受けて、昨年11月に厚生労働省として、関連企業に対し、各医療機 関に米国における肝不全の発生等について情報提供するように指導をしてお ります。それが参考資料No.2−2です。そのような状況において、厚生労働省 としては、今後のペモリンに関する肝障害についてどのように検討したらよい か、今回調査会のほうでご検討いただきたいと考えております。  まずペモリンについてですが、参考のところを見ていただきたいのですが、 製造販売業者は三和化学研究所、商品名は「ベタナミン錠」。効能・効果とし て、現状ではうつ病とナルコレプシーをもっております。経緯として、昭和 35年に、うつ病ということで承認されていましたが、昭和48年4月に再評価 指定を受けると同時に、4社から販売されていましたが、各社が承認を取り下 げたという経緯があります。  それで市場からなくなるということで、ナルコレプシーの患者の会である 「なるこ会」からの陳情があって、参議院・衆議院等で議論になりました。そ れを受けて、三和化学のベタナミン錠について再評価の申請がなされて、昭和 54年に、うつ病の再評価の結果、ナルコレプシーに関しては一変申請がなさ れ、同年6月にナルコレプシーの承認を得ているというものです。  次の頁で「日本、米国におけるペモリンの効能・効果等」の比較です。日本 においては、先ほど申し上げたように、効能・効果についてはうつ病とナルコ レプシーがあります。アメリカにおいては注意欠陥多動性障害の効能をもって おります。こちらのほうの参考資料No.2−5、6に、日本とアメリカの添付文 書を付けさせていただいております。  副作用に関しては、日本においてはペモリンにおける副作用等報告はこれま で行われておりません。海外においては、参考資料No.2−8のほうに文献を紹 介させていただいております。2000年以降に報告されている文献がこれでし て、この報告内容も1975年から90年代の報告です。古い内容ではあります が、ペモリンの服用後に肝障害を起こしたという紹介をしております。詳細な データではありませんが、ラインリストとして9例ほどの重篤な症例が報告さ れております。  次に、日本とアメリカにおけるナルコレプシーの治療状況です。日本におけ るナルコレプシーの治療については、日中の睡眠発作に対して中枢刺激薬、夜 間にレム睡眠関係の抗うつ薬、睡眠分裂のときはベンゾジアゼピン系睡眠薬と いうものが使われているようです。その中枢刺激薬については、現在、日本で は塩酸メチルフェニデートとペモリンが使用されているということです。これ は今日の治療指針2004年版の抜粋として、参考資料No.2−7ということで付 けさせていただいております。  一方アメリカのほうですが、中枢刺激薬としては、主にアンフェタミンとモ ダフィニルが使われているようです。こちらについては、どちらも日本では承 認されておりません。  このようなことを踏まえて、効能・効果や主な使用患者群がアメリカとは違 っているということ、国内においては副作用報告がないということ、そして日 本においてナルコレプシーの治療が極めて限られている、ということから、警 告欄を設けてさらなる注意喚起を図るという安全対策の事務局案です。  次に3頁の「使用上の注意の改訂(案)」です。警告のほうに、「海外の市販 後報告において、重篤な肝障害を発現し死亡に至った症例も報告されているこ とから、投与中は定期的に血液検査等を行うこと」ということで、案を示させ ていただいております。ご検討をお願いいたします。 ○松本座長 ただいまペモリンに関する肝障害について説明をいただきまし たが、今日ご出席いただいた内山先生、樋口先生、ご意見等まずございません でしょうか。 ○樋口参考人 それでは私から意見を述べさせていただきます。今の事務局か らの報告にありましたように、この薬剤については、我が国ではうつ病とナル コレプシーが適応になっております。うつ病に関しては、昨今、SSRIとい うような新しい抗うつ薬も日本に登場しましたし、従来からの抗うつ薬も含め て、それなりの種類、数を私たちは臨床の場で手にして使うことができる状況 にあります。したがって、このベタナミンという薬は、多分、現状ではうつ病 そのものに対する使用量はさほど大きいものではないだろうかと、私自身の経 験も含めて考えるわけです。  しかしながら、ナルコレプシーという病気に関しては、今の説明にありまし たように、この薬とメチルフェニデートの2種類しかございません。それで、 おそらくこれは内山先生が専門ですので、後でコメントがあると思いますが、 ではメチルフェニデートだけで、すべてカバーできるかというと、やはりメチ ルフェニデートによって生じてくる副作用等があって、使えないという患者さ んがございます。そうなったときに、ほかにもう選択する余地がない。しかも、 ナルコレプシーという病気は、睡眠発作で非常に苦しむ、日中の眠気で日常生 活がうまくできない。しかし、それをコントロールすれば、普通の社会生活は おできになるわけです。そういう観点からすると、昭和51年のときにこうい った取下げがあったときに、私はちょうど医者になりたてで、数年経ったとこ ろで、この経験をしておりまして、やはりこれは絶対必要な薬だということを、 その当時に言われております。  したがって、現在でも、残念ながらほかに新しい新規のナルコレプシーの薬 が開発されていない現状においては、これは患者さんにとっては、なくなって は非常に困る薬です。ただし、肝障害ということは、我が国では幸いなことに 出ておりませんが、外国で報告されていることを鑑みると、やはりこれは十分 な注意と定期的な肝機能の検査等を行うという、こういう点については重々注 意した上で、引き続き使えるようにしていただければと私は思います。 ○松本座長 内山先生、いかがでしょうか。 ○内山参考人 ナルコレプシー及び関連の過眠性疾患についての使用の状況 についてお話いたします。現在、ナルコレプシーあるいはその関連疾患の過眠 症といわれる病態については、精神刺激薬で眠気を抑えるということが中心に なっております。メチルフェニデートが、日本の場合にはまずファーストチョ イスとなっていて、ペモリンはセカンドチョイスとなっております。樋口先生 がご指摘になられたように、メチルフェニデートは、1つには自律神経症状や、 急激に血中濃度が上がるというようなPKの特性とか、もう1つは、幻覚妄想 が出てくるケースがまれにある。あるいは、緊張が非常に高まって、患者さん はテンションが高まるというような形で、気分が高揚してしまうというような ことがあり得ます。こういった副作用が出たときに使う薬としてペモリンがあ ります。  もう1つは、これは全くPKの問題ですが、メチルフェニデートは大体1時 間から2時間くらい効いていて、そこから急激に眠気に対する作用が消えてき ます。こういった人たちに何度も投与していると、上がったり下がったりを繰 り返すということで、非常にコントロールが難しくなるので、必ずしもメチル フェニデートが駄目だった人に使うというよりも、むしろペモリンの場合には、 非常に穏やかではありますが、実際に投与してから8時間くらい効いています ので、ベースをこれでつくって、なるべくリタリンによって起こってくる副作 用を防ぐという意味でも、かなり使われていると思います。  アメリカにおいては、モダフィニルという新しい薬ができて、アンフェタミ ンはほとんど使われておりませんで、臨床における過眠症治療はモダフィニル 一色に、なっております。ADHDに関しては、メチルフェニデートと、もう 1つは徐放性製剤のメチルフェニデートがあって、メチルフェニデートのすぐ 効いて代謝されて効果がなくなる、という面について改良した薬剤が出ていま す。そういった面では、ペモリンがすでにこういった役割を果たし終えて中止 になったということは納得できるところです。こういった意味で、ナルコレプ シーを代表とする過眠性疾患の治療に、是非日本でペモリンを、少し長目のP Kをもつモダフィニルが出るまでは、少なくとも必須の薬剤と思われますので、 十分に注意して使うということで、警告を入れていただいて、使わせていただ くようにしていただければよろしいかと思います。 ○松本座長 この点に関して、委員の先生方、ご意見ご質問等ありませんか。  これを小児に使う頻度というのは多いのですか。 ○内山参考人 私がお答えします。日本ではADHDに対してはほとんど使わ れていないと思います。ナルコレプシーは大体14歳から16歳くらいでの初 発が多いので、こういった意味で、いちばん若いところで14、15歳くらいか ら使われる場合もあると思います。 ○松本座長 ほかにご質問等ございませんか。そうしますと、やはりここに、 警告欄に、このような文言を入れて使用することが必要ですね。そういうこと で、このペモリンについては、資料にあるとおり警告の項を設けて、さらなる 注意喚起の徹底を図ることにするということでよろしいですか。ではそのよう にさせていただきます。両先生、どうもありがとうございました。 (内山参考人退席・神庭参考人着席) ○松本座長 それでは議題(2)の「塩酸パロキセチン水和物に係る『18歳 未満の患者(大うつ病性障害患者)』の取扱いに関する検討の結果について」 に移らせていただきます。参考人として神庭先生と、引き続き樋口先生にお願 いしております。よろしくお願いいたします。  それではこの塩酸パロキセチン水和物に係る18歳未満の患者(大うつ病性 障害)の取扱いについて、事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 資料3に基づいてご説明させていただきます。「塩酸パロキセチン 水和物に係る『18歳未満の患者(大うつ病性患者)』の取扱いに関する検討の 結果について」。まず国内で禁忌になった経緯です。塩酸パロキセチン水和物 は、以下「パロキセチン」と言いますが、平成12年9月にうつ病の効能で承 認されて、同年11月より「パキシル錠」という名前で販売されております。 平成15年6月、EU・アメリカを中心にして、小児・青年期を対象としたプ ラセボ対照比較臨床試験において、有効性がこのときには証明されなかったと いうこと、自殺念慮/自殺企図のリスクがプラセボ群より高かったということ を受けて、イギリスでは18歳未満の大うつ病性障害患者について禁忌とされ ました。  一方、FDAにおいては、データの精査が必要だということで、添付文書の 改訂はないものの、18歳未満の大うつ病性障害患者に投与すべきではないと いう旨の勧告が出されております。これを受けて我が国では、同年7月、薬事・ 食品衛生審議会医薬品等安全対策部会副作用検討会において検討されて、18 歳未満の患者への投与は禁忌とすべきというご意見をいただいて、添付文書の 改訂の指示をしているところです。  その後の欧米における取扱いでは、まずアメリカの方ですが、勧告の後、デ ータの詳細な解析として、抗うつ薬全般のデータ解析をして、その結果を踏ま えて、抗うつ薬全般の取扱いとして、「大うつ病性障害及び他の精神疾患を有 する小児等の患者において、自殺念慮及び自殺企図のリスクを高める」という 旨の公表をしております。  一方EUの方ですが、パロキセチンの18歳未満の大うつ病性障害等につい て、各国共通ではありませんで、イギリスでは禁忌ですが、他国では禁忌にさ れておりませんでした。そこでイギリスの規制当局から、欧州の規制当局に検 討が依頼されて、欧州医薬品庁(EMEA)で検討を行った結果、平成17年3 月、18歳未満の患者の取扱いについては、禁忌の項ではなく「特別な使用上 の注意」の項に、パロキセチンを小児等に関しては「使用しないこと」と記載 されていますが、英語では「should not be used」ということですので、正確 には「使用すべきではない」という感じの訳になろうかと思います。EMEA の評価に従い、イギリスでの改訂がなされているところです。  その後、3番目ですが、日本児童青年精神医学会からの要望書が4月に出さ れて、要望としては、SSRI、SNRIについては有効性・安全性の面で患 者ごとに反応性が異なるということで、幅広い選択肢が必要だということ、現 場の先生方から、非常に困っているという声を聞いているということ、今現在、 イギリスが外れたので、禁忌になっているのは日本だけになってしまったとい うことから、禁忌の見直しに対する要望書が出されております。  そこで、医薬品医療機器総合機構のほうで検討を行っておりまして、まずF DAで評価した結果について、再度検討が行われました。FDAでの評価の結 果ですが、FDAではSSRI、SNRI等の抗うつ薬全般について小児等の 患者を対象とした臨床試験データの解析を行っています。こちらのほうが参考 資料No.3−2で、これがアメリカの諮問委員会において評価を行ったときの抜 粋です。それを見ると、抗うつ薬全般の24のプラセボ対照比較臨床試験を包 括的に検討しております。その中で、スライドのいちばん最後の方ですが、す べての試験、すべての適応を見た場合の「自殺行動/自殺念慮」発現のプラセ ボに対する相対リスクについては、1.95、信頼区間でいうと1.28から2.98と いうことで、統計的に有意な差をもって、リスクが高まったということが示さ れております。  一方、大うつ病に限って、大うつ病性障害患者を対象にSSRIを投与した 試験に限ると、相対リスクが1.66、信頼区間が1.02から2.68ということで、 統計的にも有意となっているところです。  薬剤ごとの検討の評価について個別に見ますと、参考資料No.3−2の4枚目 のスライドになりますが、パキシルは上から3つ目のカラムです。リスクが 2.15、信頼区間が0.71から6.52とばらつきが大きく、統計的な有意差は認め られておりません。以上のことから、アメリカのFDAにおいては、小児等の 大うつ病性障害患者に対するパロキセチン投与の自殺企図、自殺念慮のリスク は、他の抗うつ剤とほぼ同等であるということを評価して、参考資料No.3−3 にあるような旨を公表、添付文書の改訂の指示をしているところです。  これにより、抗うつ薬全般として、大うつ病性障害等の小児等の患者で自殺 企図、自殺念慮のリスクが高まるというような旨を添付文書の方に記載するよ うな指示をしております。  一方、日本におけるパロキセチンの18歳未満の患者における自殺関連の事 象の報告ですが、まず使用成績調査において、本剤の承認から、平成16年12 月10日までの間、これは直近の報告ですが、自殺関連の報告についてはあり ません。また、副作用報告についても、自殺関連のものについては報告されて いないというのが現状です。  次に、18歳未満の患者における有効性ですが、平成16年12月10日まで の使用成績調査の結果です。14歳までの有効性については、7例中6例が有 効だったということで、85.7%、15歳から17歳までについては29例中20 例ということで、69%に有効だったということです。これは、禁忌になる前 までに使用されたものの有効性と思われます。一方、文献報告等ですが、平成 15年7月、副作用検討会が行われた以降に報告された国内外のプラセボ対照 比較臨床試験はありません。ただ、国内において、比較臨床試験ではありませ んが、有効性を示唆するような報告が3例ほど報告されているというような現 状です。  そのような結果、まず国内において、承認以降18歳未満における自殺関連 の報告がないということ。エビデンスは低いというものの、パロキセチンを 18歳未満の大うつ病性障害患者に投与した場合に、有効性を示す報告があっ たということ。日本児童青年精神医学会から、治療の選択肢を広げるためには パロキセチンが必要だという要望書が提出されているということ。アメリカ・ 欧州においても、現在の段階で禁忌にされていないというようなことから、我 が国においても禁忌の項に記載する必要はないと考え、また国内での使用経験 がまだ少ないということもあって、有効性・安全性が確認できるまで、厳重な 注意喚起が必要だろうということから、警告の項を設けて、注意喚起をするこ とが必要だと考えております。  また、入念的に、18歳未満の大うつ病患者における安全性・有効性に関す るプロスペクティブ調査の実施が望まれるという検討結果が機構からきてお ります。  まず添付文書の改訂案ですが、資料No.3−5です。まず「効能・効果に関連 する使用上の注意」以降、破線部、点線部に書かれている部分ですが、これは、 今年1月13日、パロキセチンを含む抗うつ薬全体の注意として、アメリカの 評価を踏まえて、18歳未満の患者では、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加 するとの報告があるので、抗うつ薬の投与に当たっては、リスクとベネフィッ トを考慮する等の横並びの注意喚起の改訂の指示をしたものです。  今回ご審議いただきたい部分については、禁忌を外すという、より上の部分 で、禁忌の項の5番目に、「18歳未満の患者、大うつ病性障害患者」と記載さ せていただいているところです。これについて、これを削除するときに、警告 欄を設けるということです。海外で実施した7歳から18歳の大うつ病性障害 の患者を対象としたプラセボ対照試験において有効性が確認できなかったと の報告、また自殺に関するリスクが増加するとの報告もあるので、本剤を18 歳未満の大うつ病性障害患者に投与する際には、適応を慎重に検討するという ものを追記して、注意喚起を図りたいと考えているところです。 ○松本座長 ご質問ご意見等お願いしたいのですが、まず参考人としてご出席 いただいている神庭先生、樋口先生、ご意見等ございましたらお願いいたしま す。 ○神庭参考人 今ご説明がありましたように、平成15年の英国での禁忌とい う動きを受けて、日本の副作用検討会でもまだ実態がよくわからない、十分な 情報がまだ開示されていない段階でしたので、英国に習って禁忌としたわけで す。その後、日本でもかなりの議論が専門家の間で行われて、これに関しては 相当熱いディスカッションがなされてきました。  平成17年、今度はFDAのほうがコロンビア大学と共同で、詳細に入手で きる臨床試験のデータ、生データから調査して、1例1例、その危険性につい て評価し、新たに報告してきたのが、先ほどご説明がありましたFDAリポー トの中の相対リスクの表になったわけです。  その結果、パロキセチンが際だって自殺念慮、自殺企図を増やすということ はないということが認められて、英国の方も、禁忌を外したということになり ますので、私たちのほうでも、また再度検討させていただいて、これだけ十分 なデータとその解析結果があれば、この時点で禁忌を外すことは問題なかろう という結論になりました。ご説明がありましたように、「警告」に書かせてい ただくことで対応していく。そう申しますのは、思春期児童のうつの患者さん については、一説には数が増えていると言われていて、彼らに対して、成人で 有効で安全性が認められているこういう薬が使われるということは、相当のベ ネフィットも考えられる。この辺も考え合わせて、こういう結論に至ったと思 います。 ○松本座長 樋口先生、いかがですか。 ○樋口参考人 基本的には今の神庭先生のご説明と同意見ですが、少し補足さ せていただくと、抗うつ薬全体に関して、パロキセチンにかかわらず古くから 使われている抗うつ薬も含めて、うつの方のごく初期に、不安とか焦燥感とか を、こういう薬は抑えていく方向に働けばいいのですが、初期にそれを少し煽 るということは前からよく知られています。これは、SSRIが出てきたとき にもそれが指摘されて、したがって初期投与についてはかなり慎重に観察をし ながら使うこと、ということは教科書等にも書かれているところです。  そういうことがあるので、特に自殺念慮、うつ病というのはご承知のように、 すべてではありませんが、死にたくなる病気というふうに理解していただいて よいと思うのですが、その死にたくなるという気持ちを、これらの薬は全体と しては改善していく方向に働くわけです。しかしながら、そのごく初期の不安 とか焦燥とかを一過性に増強させることで、逆に自殺念慮のようなものを煽る ことがある。それがここに書かれている米国FDAの検討の結果、全体として 見ると抗うつ薬はすべてそういうものをもっているということが言われてい る。  ですから、そこのところは私たち臨床家としては、常に注意深く観察してい くことが必要ですし、特にそういう自殺念慮のある方の初期治療にこれを用い るときには、かなり慎重にすべきである。そういう観点からすると、このパロ キセチンについても、警告という形で注意喚起をする。慎重に状態を観察しな がら用いるということは、非常に重要であるということが1点です。  もう1点は、この小児に関しての有効性ということが、これは我が国だけで はありませんが、一般的に治験のレベルで、なかなか検証ができないというこ とがあります。これは、例えばプラセボを使うことはどうなのかという、倫理 的なことも含めてです。したがって、ほとんどすべての薬といってもいいかも しれませんが、小児の適応を確認するということは非常に困難である。そうい う意味では、たまたまパロキセチンについては海外で行われた試験で有効性が 示されないということがありましたが、ほかの抗うつ薬すべてが、まだ小児に ついて検証されていないという現状がありますので、これは今後の課題として、 我が国でも何らかの形で検証するようなステップが是非必要であろうと思い ます。  しかし、実際の経験からいうと、日本児童青年精神医学会からの要望にある ように、子どもの抑うつ状態に関しても、実際の場ではSSRIが有効であり、 ケースによって非常に効果があるということが言われておりますので、全くの 禁忌にしてしまうのではなくて、非常に慎重に観察しながら投与するという今 回の措置は、私もそれでよろしいのではないかと思います。 ○松本座長 この点に関して、委員の先生方、ご意見ご質問等ございませんか。 ○長谷川委員 警告の位置づけですが、今ご説明があってよくわかりましたが、 警告の最初の文章のところで、有効性を確認できなかったという、この内容そ のものを警告の最初のところにもってくるというのは、何かバランスが少し悪 いような気がするのですが、いかがなものでしょうか。 ○松本座長 私もそれに関連してお聞きしようと思ったのですが、一応この薬 剤を使用する場合に、こういうことを説明した上で患者さんに使われるかどう かなのです。もしこれをインフォームドコンセントで説明した場合に、実際使 用されることがあり得るかどうかについて、治療されている先生方のご意見を お聞きしたいと思っているのですが、いかがでしょうか。 ○神庭参考人 有効性が確認できなかったというのは、プラセボ対照の比較試 験でのことでして、この薬が有効でないということが確認されたということで はありません。実際には、症例報告等、臨床医の実感としては有効であるとい う形でご説明するのだろうと。ただ、そういうスタディでは、差は出なかった。 そういう形で説明していくのだろうと思います。 ○松本座長 そうすると、文章に関してはこのままでよろしいでしょうか。こ れに関して、事務局の方はいかがですか。 ○事務局 警告欄については、当初は禁忌になった経緯等を踏まえて、18歳 未満大うつ病性障害が禁忌になった経緯が、1つとしては有効性が確認できな かったということ。それと、リスクが増加するということを明確に警告の欄に 表記して、その上で注意深く使っていただきたいということで、本案を提出さ せていただいております。 ○松本座長 この点に関していかがでしょうか。よろしいでしょうか。やはり プラセボ対照試験というのは意味をもつわけです。実際上、小規模でやってみ ると、有効性のある例が見つかっているということと、副作用に関しても、自 殺に関するリスクが増加するという事実もないということですか。そういうこ とでよろしいですか。  委員の先生方、よろしいでしょうか。これを禁忌から注意喚起に変更する今 回の改訂に関して、ご意見ありませんか。 ○池田委員 現実にどれくらいの方たちが、こういう処置をして警告というこ とにすると、使われる可能性がありますか。例えば100人18歳未満の人がい たとして。現実問題として。なかなか難しい質問かもしれませんが。 ○樋口参考人 これは実際には、例えばこのパキシルのほかに、SSRIとい われているものが日本ではもう1種類市販されております。それも、結局、今 回リスクに関しては横並びで、有効性もまだ確認されていない。しかし、現場 ではやはりそれは使われているわけです。適応外使用ということになりますが、 使われているという現実があります。それについては、これは児童青年期を専 門にしておられる先生方に伺いますと、子どもにおけるうつ病に関しては、か なりの率で使われているのです。  ですから、これがパキシルも、今まではパキシルはほかのSSRIと違って、 「リスクがより高いのです、だからこれは禁忌です」という話になっていたわ けですが、それがほかのSSRIも同じ程度のリスクですよということになれ ば、これは専門の医師がそれを説明しやすくなる。禁忌は絶対使えないという ことですが、警告であれば、こういう問題を抱えつつも使うことが可能である、 という説明をすることが可能になる。そこは非常に大きいことではないかと思 っています。 ○松本座長 1つだけ心配なのは、これまでは18歳未満の患者さんにおいて は、禁忌になっていたわけですから、18歳未満の患者さんには使われなかっ た、使われる頻度が少なかったのではないか。そういうことによって、このよ うにリスクが低かったのではないかという解釈も成り立つと思っているので すが、そういうことは大丈夫でしょうか。一応やはり、この薬がかなり効果が ある方がおいでになるということは、事実なわけですか。 ○樋口参考人 このパキシルそのものについては、禁忌になる前に使われたと いうのは、ごく短い期間でしたので、ほとんど経験がないわけです。ですから、 他のSSRIということになろうかと思いますが、他のSSRIに関しては、 ある程度実際の場で、先ほど申し上げたように適応外使用ではあるけれども、 子どもに対して、18歳未満に対して投与されているという現実があります。 その中では、特にそのことにより非常にリスクが増大しているというようなこ とは、これも本当の意味での調査とか、そういったものが正式な形ではなされ ておりませんが、それは報告が出ておりませんので。  そういう意味で、これが、今パキシルが使えない、禁忌であるという現状の 中では、他のSSRIが使われる。これから先、まだ現在開発中のSSRIも ありますので、そのうち市販されると思うのですが、それも使われるようにな ると思います。そのときにも含めて、SSRIのもつこういった焦燥不安を高 めるという、そこについては重々いろいろな形で注意を喚起していく必要があ ると考えますが、パキシルが禁忌から外れたから、そのリスクが非常に高まる というふうには考えにくいだろうと思っています。 ○土屋委員 データがきちんと取れるようになるということは、非常に大きな ことだと思いますので、そういった場合に、市販後調査とか、そういうことも 対象にした調査とか何かは考えられるのでしょうか。 ○事務局 検討結果のところに記載させていただいておりますが、資料3の3 頁の「検討結果」の後ろのほうですが、「18歳未満の大うつ病性障害患者にお ける安全性及び有効性に関するプロスペクティブ調査を実施することが望ま しい」ということで、企業の方と調整させていただいております。 ○松本座長 土屋先生、よろしいですか。 ○土屋委員 はい、結構です。 ○池田委員 これは日本児童青年精神医学会が、こういう要望を出されている ということですので、おそらくこの学会に属している方でしか、ほとんど使わ れないというふうに考えてよろしいでしょうか。 ○神庭参考人 児童思春期の疾患は、かなり専門性が求められますので、多く の方はこの学会に属されていると思います。 ○池田委員 ということは、ほとんど今回の処置で、適応外使用ではなくて使 うということになれば、その患者さんたちというか、投与した例はほぼ補足さ れると考えてよろしいですか。 ○神庭参考人 そうですね。大半は当たっていますね。 ○池田委員 そういうことであれば、おそらく、これはどの薬剤でもそうだと 思うのですが、学会がこういう要望書を出すのはこの頃非常に多いですね。や はり使わせてほしいと。それは、患者さんを実際に診ている立場の先生から言 うと、これがあれば非常に役に立つんだという、本当に現場の声を反映してい るので、私は学会がそういう声を出すのは非常に大事なことだと思うのです。  それと同時に、やはり、学会の責任として、これが今後使われた後にどうい う結果をもたらしたかということも一緒に、学会はやはり責任をもってやって いただけるような形になりますかね。それが日本の学会の、私はいつも問題点 だと思うのですが、要望は非常にたくさん出てくるのですが、学会としてその 後のフォローアップ調査みたいなものを、きちっと学会も責任をもってやって いただくという形になると、おそらく非常に納得しやすいのではないかと思う のです。 ○樋口参考人 今のパロキセチンに関しては、今後どういう取組みになるかと いうのは、まだ具体的にはなっておりませんが、他のSSRIに関しては、我 が国でもやはりきちんとした有効性の検証の試験を行うべきであるというこ とで、今その準備をしているところと聞いております。ですから、それも、パ ロキセチンも含めて、そういった日本における検証試験のようなことを、学会 もその中に中心的に加わっていくことは当然必要だと思います。それは是非こ の場でも要望していただければと思います。 ○松本座長 その辺については事務局の方からも、学会の方にお願いしていた だけますか。ほかにご意見ございませんか。これは、日本児童青年精神医学会 からの要望もありますし、ただいまの意見を聞いておりますと、禁忌から注意 喚起に変更するということには、大きな異論はないように思いますが、いかが でしょうか。委員の先生方よろしいですか。ということであれば、この塩酸パ ロキセチンについては、現状の「禁忌」を「警告欄等による注意喚起」に変更 する添付文書の改訂を了承するということにしたいと思います。どうもありが とうございます。神庭先生、樋口先生、本当にありがとうございました。 (神庭参考人・樋口参考人退席五十嵐参考人・工藤参考人着席) ○松本座長 それでは続いて議題(3)「リン酸オセルタミビルを服用した小 児及び成人の死亡例について」に移ります。参考人として、この分野の専門家 である五十嵐先生、工藤先生にご参加いただきます。どうもありがとうござい ます。よろしくお願いいたします。 ○安全使用推進室長 資料4に基づいて「リン酸オセルタミビルを服用した小 児及び成人の死亡例について」ご報告させていただきます。まず、リン酸オセ ルタミビルについてですが、概略が参考資料No.4−1のほうに記載されていま すので、ご確認いただきたいと思います。販売名がタミフルカプセル75、同 ドライシロップ3%ということで、中外製薬株式会社が製造販売しております。 カプセル剤については、成人及び年長の小児におけるA型、B型インフルエン ザの治療及び予防の効能。それから、ドライシロップ剤については、小児のA 型、B型インフルエンザの治療効能をもっております。広く使われている薬剤 で、参考資料No.4−1の下に記載がありますが、平成16年度冬のインフル エンザシーズンにおいて、約860万人分国内に供給されたということです。  資料4に戻っていただいて、リン酸オセルタミビルを服用した小児及び成人 について、死亡例が報告されているわけですが、専門家の意見を聞いたところ、 小児の事例については、すべての事例について、リン酸オセルタミビル、すな わちタミフルと死亡との因果関係は否定的であるとされております。  また成人の事例については、中毒性表皮壊死症(ライエル症候群)及び腎不 全による死亡2例については、その因果関係を否定できないものの、それ以外 の成人の事例については死亡との因果関係は否定的であるとされております。  また、この中毒性表皮壊死症及び腎不全がごくまれに現れることについては、 添付文書の「使用上の注意」に記載して、注意が喚起されております。  以上のようなことから、厚生労働省としては、現段階でリン酸オセルタミビ ルの安全性に重大な懸念があるとは考えていないということです。  これらの死亡事例については「新型インフルエンザに関するQ&A」として、 厚生労働省のホームページに掲載させていただいておりますが、小児の事例に ついては昨年11月30日、成人の事例については昨年12月15日に公表した ところです。  以下、参考資料ですが、参考資料No.4−2が小児の症例の個別の表です。そ れから参考資料No.4−3が成人の症例の個別の表ですが、1頁目のNo.1と2の 2症例については、因果関係が否定できないとされた事例、2頁以降が、因果 関係が否定的とされた事例です。  「新型インフルエンザに関するQ&A」については、参考資料No.4−4に示 させていただいております。小児の死亡例については、1頁めくっていただい て、下の頁が15頁というところですが、IV−6、「タミフルを服用した後の 異常行動等による小児の死亡例が報道されていますが、厚生労働省としては、 タミフルの安全性についてどのように考えているのですか」という問いに対す る答です。同様に、成人の死亡例については、その下にIV−7として、「タミ フルを服用した後の成人の死亡例も報告されているようですが、厚生労働省と しては、タミフルの安全性についてどのように考えているのですか」という問 いに対する答です。  参考資料No.4−5ですが、本日の調査会を踏まえて、このQ&Aの改訂を若 干させていただきたいと考えておりますので、内容について簡単に説明いたし ます。小児の方ですが、1頁目は新旧対照になっており、右側が改訂案です。 昨年11月30日の時点で小児の死亡症例は13例ということでしたが、その後 1例増えましたので現時点では14例ということです。追加された1例につい ても同様に評価をいただき、因果関係は否定的ということになっています。参 考資料でも紹介しておりますが、11月30日時点から後に、日本小児科学会の 見解が公開されておりますので、その内容を付け加えております。さらに、本 日の調査会においても確認をいただいたということで、その旨の記載を追加し たいということです。  成人も同様で、本日の調査会での意見をお聞きしたという内容を追加するこ とと、昨年12月15日の公表以降、2例の死亡例が追加報告されていますの で、若干数字が変わっております。その2例についても、同様に因果関係は否 定的という評価がされております。Q&Aの改訂については以上です。  以下の参考資料ですが、米国のFDAの小児諮問委員会、EUのEMEA、 先ほど少し触れた日本小児科学会で検討が行われ、その見解が公表されていま す。参考資料No.4−6がFDA、No.4−7がEMEA、No.4−8が日本小児科 学会で、それぞれの見解が提示されております。参考資料No.4−9はリン酸オ セルタミビル(タミフル)の使用上の注意の改訂が行われたときの医薬品・医 療機器等安全性情報を抜粋したものです。No.4−10は添付文書です。以上が 死亡例に関することです。  参考資料No.4−11は死亡例とは直接関係ありませんが、参考までに配付し たものです。2004年から2005年にかけてのインフルエンザシーズンにおい て、タミフルを製造販売している中外製薬株式会社において、プロスペクティ ブな調査として、1歳未満のインフルエンザ患者を対象とした特別調査が行わ れており、その結果の報告書です。この調査はプロスペクティブな調査という ことで、登録された医療機関において、調査期間中に診療がなされたインフル エンザの患者のうち、1歳未満の患者すべてを登録し、この調査を行ったもの です。したがって、リン酸オセルタミビル(タミフル)を投与された患者とそ うでない患者とが両方登録されております。ただ、タミフルの投与がかなり一 般化してきている関係上、対象となった症例については、5頁の表1に治療パ ターンの分布がありますが、全症例1,674症例中の約4分の3の1,284症例が タミフルの投与症例で、残りはタミフルを投与していない症例ということです。  タミフルの関係で若干問題にされていた、「精神障害」「神経系障害」に係る 有害事象の発現状況が表にまとめられています。この場で紹介いたしますので、 12頁の表5をご覧ください。この表によると、タミフル投与症例1,284症例 中、精神障害、神経系障害に分類される有害事象の発現件数が12件、発現率 が0.93%。抗インフルエンザ薬以外の薬剤を投与された症例が349症例中、 同様の有害事象の発現件数は4件で、1.15%となります。症例数の偏りはかな りありますし、この結果だけから結論を付けることはなかなか難しいと思いま すが、この結果から見ると、タミフル投与症例で精神障害、神経系障害に係る 有害事象の発現率が上昇しているとは、少なくとも認められないということが 言えます。 ○松本座長 本日、参考人としてご出席いただいております五十嵐先生、工藤 先生、ご意見等があればお願いいたします。 ○五十嵐参考人 小児科から意見を述べさせていただきます。ただいまのご説 明に関しては、大変もっともだということで、私どもは正しい判断だと思って おります。小児の精神神経症状、中枢神経症状というのは、もちろん評価がな かなか難しいのですが、インフルエンザに罹患すると、2つの大きなカテゴリ ーに分けられると思います。インフルエンザそのものによって起きてくる、い わゆる「インフルエンザ脳症」という非常に重篤な病気があります。これは熱 が出て、早い場合には数時間で脳症に陥ってしまいますから、なかなか難しい 病気です。特に、夜間に症状が起きると患者の様子がわかりませんので、大変 難しいです。  もう1つ、この病気は高熱になりますが、高熱になると、非特異的な症状で もありますが、高熱によるせん妄状態が、特に年少の子どもと老人に起こりや すい。これは熱が出たときも起こりますが、熱が下がってからも出ることがあ ります。特に基礎疾患があるような場合は、このような精神神経症状が出やす いと言えると思います。薬剤を飲んで起きたのかどうかということと、原疾患 によるものかということの判断がなかなか難しいという点が1つあると思い ます。  もう1つ、小児の場合は先天性のいろいろな疾患があります。例えばダウン 症の子どもが気管支炎や肺炎になっただけでも、非常に抵抗力が弱いので亡く なってしまうことがあります。先天性代謝異常の場合は代謝性のアシドーシス という状態になり、全身状態が非常に悪くなって亡くなってしまうこともあり ます。このように基礎疾患がある場合にインフルエンザになると、死亡率も大 変高くなります。小児の場合、そのようなバックグラウンドがあることを考え た上で、実際に相当な数の薬剤が使われているという現状から考えると、上が ってきた死亡例の報告を拝見して、明らかに薬剤との関係が濃厚であるという ものはありませんでした。小児科学会でも検討しましたが、そのようには考え られないということですので、厚生労働省の判断は正しいのではないかと小児 科サイドは考えております。 ○松本座長 小児に関して、1歳未満のこの調査に関して何かご意見があれば お願いいたします。 ○五十嵐参考人 最初、製薬会社から通常量の500倍の薬剤を投与したとき に、動物実験では動物の脳に薬剤が蓄積するということで、できれば使いたく ないという話があったわけです。現場サイドでは、現実に9カ月、10カ月ぐ らいの赤ちゃんが親と一緒にインフルエンザになることは非常によくあるの で、そのような子どもたちに対して、動物実験のデータだけで一律に使えない というのは大変困るということで、いろいろな所に相談し、現場サイドで判断 し、親御さんによく説明をしてから薬剤を使うようにと添付文書が変えられた わけです。その結果、製薬会社主導型でこのような副作用調査が行われました が、その結果を見ても、この薬剤が1歳未満の乳児にも精神神経症状を起こす というデータでは明らかになかったと思います。1歳未満であっても、それ以 上の小児であっても、この薬が精神神経症状を明らかに誘導することはないと 考えております。 ○松本座長 工藤先生、よろしくお願いいたします。 ○工藤参考人 今、五十嵐先生から小児科におけるインフルエンザの疾患の一 般的な危険性というものが指摘されましたが、インフルエンザというのは成人 でも、風邪とは違い、この疾患にかかると亡くなる病気であるという認識が非 常に大事だろうと思います。特に、高齢者の場合はいろいろな基礎疾患を持っ ていますから、インフルエンザに罹患すると死亡率が非常に上がるというのは ご承知のことと思います。そのような中で、この薬が使われたときにいろいろ な事象が起きているわけですが、その背景を考えて、薬との因果関係を考慮し 判断したのだろうと思います。そのような意味で、今厚生労働省から示された 見解は、私は妥当と考えております。  小児科の方では死亡例との直接の因果関係は認められないとのことでした が、成人の場合は二十数例のうち2例の死亡で因果関係が指摘されております。 タミフル薬剤自体のいろいろな副作用というのはそれなりに存在するわけで すから、死亡は指摘されている副作用に由来するものではないかと判断されま す。1例目は80歳の男性で、この薬剤の使用後、肝障害、肺障害、腎障害と 多臓器不全的に出ておりますが、腎障害というのはタミフルの1つの重要な副 作用として指摘されていますから、これはそうだろうと疑わざるを得ない症例 だと思います。2例目の50歳の男性は「中毒性表皮壊死症」ですが、これも この薬剤の副作用として、非常にまれですが指摘されていますから、薬との因 果関係は否定できないと判断されます。  その他の症例については、背景も非常に複雑であり、一般的な印象として、 高齢のためいろいろな疾患を持っていることから、さまざまな薬が処方、服用 されており、そこへこの薬が入り、この感染症が加わって亡くなっている状況 なので、この薬との因果関係は積極性が見い出せないと判断いたしました。 ○松本座長 ただいまの参考人のご意見を含めて、ご質問等があればお願いい たします。 ○池田委員 五十嵐先生にお伺いします。1歳未満の症例は非常に大事な視点 で、実際にお母さんがかかった場合、新生児や1歳未満の小児がかかるのは避 けなければいけないと思います。脳内濃度が非常に高濃度になった場合の動物 実験のデータがあると言われましたが、薬物相互作用として何か問題はありま すか。実際に使う場合は単独では使わないと思いますが、1歳未満の場合、ど のような薬と一緒に使いますか。 ○五十嵐参考人 いちばん頻度が多いのは、おそらくアセトアミノフェンとい う解熱薬だと思います。ただ、これは1日3回以内と制限しておりますし、タ ミフルと併用した場合、血中濃度が上がるようなことはないと思います。もし 使うとしたら、抗ヒスタミン薬、風邪の症状を多少呈することもあるので、気 管支拡張薬、痰を切る薬など、いわゆる風邪薬は入るかもしれませんが、これ らについても血中濃度あるいは臓器への蓄積を増やすことはないと思います。 ○池田委員 通常使われる併用薬は、おそらくタミフルの血中濃度には影響が ないと考えてよろしいのでしょうね。 ○五十嵐参考人 はい。あと抗生物質につきましては、最近はインフルエンザ はキットでその場で診断できますので、何か特別な合併症がない限りは、おそ らく抗生物質は使わないと思います。抗生物質の場合、エリスロマイシンなど は肝臓に対する作用で血中濃度を上げるということが言われていますが、タミ フルについてはまだそのようなデータはないのではないかと考えております。 ○松本座長 小児に関しては日本小児科学会からの意見書もありますし、ただ いまの五十嵐先生のお話から、現在のところ、関係は否定的であるということ でよろしいかと思いますので、「新型インフルエンザに関するQ&A」のIV− 6の「タミフルを服用した後の異常行動等による」のところの改訂に関しては、 このような改訂でよろしいですか。特にご異議ございませんか。 (了承) ○松本座長 成人に関しては、2例は因果関係があるとのことですが、それ以 外に関しては因果関係は否定的である。突然死というのがかなり多いようです が、工藤先生、その辺を検討するのはかなり難しいところがありますか。 ○工藤参考人 突然死というのは数例あるのですが、特に、高齢者でない方に そのようなことがあります。診断はインフルエンザ、先ほども述べたように、 インフルエンザ自体で亡くなることがあることと、あまりにも情報がないので、 それをもってタミフルのせいだとはなかなか判断できないことが1つの根拠 になっているのだろうと思います。したがって、情報不足でわからない、この 疾患自体が亡くなることがあるのだという認識で、タミフルが原因だというこ とは疑いにくいと思います。 ○松本座長 成人についても、ただいまの工藤先生のご意見でよろしいですか。 症例の一覧表を評価した結果、本調査会としては「新型インフルエンザに関す るQ&A」の改訂案を了承することにしたいと思いますが、よろしいですか。 (了承) ○松本座長 五十嵐先生、工藤先生、ありがとうございました。 (五十嵐参考人・工藤参考人退席 三宅参考人着席) ○松本座長 次に議題(4)の「個人輸入されるサリドマイドに関する取扱い について」に移ります。 ○池田委員 その前に事務局にちょっと伺いたいのですが、米国の小児諮問委 員会に、日本の症例も確認していただいたわけですね。 ○事務局 米国で評価されたものは厚生労働省から送ったわけではなくて、米 国のFDAに米国のロシュ社から提供された情報で、その中に日本の症例が含 まれているということです。 ○池田委員 ちなみに、何例ぐらい入っていたのですか。 ○事務局 ここで言っている死亡例のうち昨年12月15日までのものが入っ ています。 ○池田委員 こちらから主治医に情報をもう1回もらい直して、英訳して送っ たということではなくて、日本の症例をロッシュ社が把握し、それをそのまま FDAに送った、そのようなやり方ですか。 ○事務局 そうです。FDAもアメリカでタミフルを承認していますので。 ○池田委員 わかりました。 ○松本座長 それでは議題(4)に入ります。参考人として、サリドマイドの 使用実態調査結果を集計されました三宅先生に出席していただいております。 まず、個人輸入されるサリドマイドに関する取扱いについて、事務局から説明 をお願いいたします。 ○事務局 資料5に従い、説明いたします。「個人輸入されるサリドマイドに 関する取扱い等について」ですが、1番目として「多発性骨髄腫に対するサリ ドマイドの適正使用ガイドラインの周知と個人輸入における取扱い」というこ とです。多発性骨髄腫に対するサリドマイドの適正使用ガイドラインについて は、厚生労働省から日本臨床血液学会にお願いし、とりまとめていただいてお ります。日本臨床血液学会では池田委員が委員長となった委員会で検討いただ き、このガイドラインをまとめていただきました。周知依頼の通知については、 参考資料No.5−1で紹介しております。サリドマイドを医師等が個人輸入する 際に、このガイドラインを参考にサリドマイドを厳重に管理することを誓約す ることなどを記載した必要理由書を提出させることを、平成16年12月14日 付けで厚生労働省から地方厚生局に通知しているところです。その文書は参考 資料No.5−2で、「記」のように、ガイドラインを参考に適正に使用すること、 厳重に管理することを誓約していただいているところです。  参考までに、現在は平成17年度ですが、平成16年度までの医師によるサ リドマイドの個人輸入量を紹介すると、平成14年度は合計44万454錠、平 成15年度は53万958錠、平成16年度は53万8,538錠となっています。資 料5に戻り、昨年12月に、サリドマイドが適正に管理されていないことが私 どもの知るところとなりましたので、12月14日付けで、今までにサリドマイ ドを個人輸入したことがある医師に対して、サリドマイドを厳重に管理し、適 正に使用してくださいということを、厚生労働省から個人輸入した医師に改め て通知しております。その文書が資料5−3です。厚生労働省の課長2名の連 名で通知を出しております。  今まで個人輸入した医師にはこのようなお願いをしたのですが、さらに、こ れからサリドマイドを個人輸入しようとする医師に対して、先ほど紹介したよ うに、ガイドラインができたときに地方厚生局に1度通知しているのですが、 サリドマイドに係る薬監証明発給時に、サリドマイドを厳重に管理し、適正に 使用することを周知することを、昨年12月に地方厚生局長宛に厚生労働省か ら再度通知しています。その文書が参考資料No.5−4になります。このように、 厚生労働省から各地方厚生局長宛に通知し、資料No.5−4の2頁目、「これ からサリドマイドを個人輸入しようとする医師各位」としてガイドラインに基 づき、サリドマイドを厳重に管理し、適正に使用することの徹底をしておりま す。  資料5に戻り、サリドマイドの使用実態調査について紹介いたします。昨年 7月から12月にサリドマイドを個人輸入した医師を対象に、調査票を配付し、 サリドマイド使用対象患者の疾患やガイドラインの遵守状況等について調査 を実施いたしました。そのとき配付した調査票は、参考資料No.5−6にありま す。このような調査票を、個人輸入の手続きの際に医師に渡し、返送してもら っています。返送されたものを集計しており、参考資料No.5−2のところに、 「本年1月6日時点の結果は、参考資料No.5−5のとおり」と書いてあります が、これはミスで、集計をした研究所からの資料のほうが正しく、1月17日 時点の集計結果です。参考資料No.5−5に国立医薬品食品衛生研究所の医薬安 全科学部から、まとまった集計結果として届いております。  本日付けでいただいている資料ということで、参考資料No.5−5を紹介し たいと思います。先ほど述べたように、本日参考人でご出席の三宅先生が中心 となって、研究所でとりまとめていただいたのですが、調査期間、対象として は、平成17年7月から12月までにサリドマイドを個人輸入すべく薬監証明 を取得した医師です。調査方法としては、薬監証明発給時に調査票を配付し、 ファックス、郵送で回答を集めているところです。回収された調査票は、1月 17日時点で177となります。参考までに、この調査期間中に個人輸入すべく 薬監証明を取得した医師の数は355名です。集計結果は次頁以降にあるよう な状況ですが、後ほど紹介したいと思います。また、1月17日時点で返送さ れた調査票を集計したので、17日以降も返送される可能性があるから留意が 必要とのことを、その他として記載してあります。  次頁以降の集計を紹介します。これらの設問は厚生労働省で検討し、調査票 を配り、集計を研究所にお願いしたのですが、研究所から参考資料No.5−5 のいちばん下(注)にあるように、「本調査は、これからサリドマイドを個人 輸入しようとする医師を対象としているにもかかわらず、サリドマイドを初め て輸入する場合には回答することが困難な設問があるなど、設問の一部に回答 者の混乱を招きかねない項目があったことに留意が必要である」との指摘をい ただいております。  どのようなことか具体的に申し上げますと、例えば参考資料No.5−5の3 頁の4「服用記録簿、残薬回収等について」の4.1、4.2のように、「作成 している」「指導している」といった聞き方をしている設問があり(注)に書 いてあるように、これからサリドマイドを個人輸入しようとしている医師にと っては、現に今している、あるいは指導している、作成しているという聞き方 が適切でなく、実際に回収してみて、設問の設定の仕方が適切でなかったとい うことがあります。同じ頁の問4.5を見ると「回収することとしている」と なっていますが、現にいましているのではなくて、することとしているという ことですので、これから輸入しようとする人も回収しようとしていることにな るので、そういった設問の仕方も1つの案だったのかもしれないと思います。  そのようなことに留意して集計結果を紹介すると、1頁目の1.3を見ると、 ガイドラインで学会の会員に使用することをお願いしているのですが、1.3 の1)輸入医師が日本臨床血液学会又は日本血液学会の会員である、というこ とについては89.7%となっています。学会員でない場合は、同じ診療科に学 会員がいる場合もあるので、1.3のいちばん下に(注)がありますが、学会 員と同じ診療科に学会員がいる、他の診療科に学会員がいるというのを合わせ ると、合計で93.7%という状況です。  1頁の2.サリドマイドをどのような目的で使用しているかについては、1) 多発性骨髄腫がほとんどで、93.7%となっています。2頁目の「ガイドライン の遵守状況」については、参考資料No.5−5の「一部差し替え」のものを配布 させていただいております。ガイドラインの全体として、日本臨床血液学会に 作っていただいた「多発性骨髄腫に対するサリドマイドの適正使用ガイドライ ン」と、それとは別に、国立ハンセン病療養所所長連盟がハンセン病のために 作成した「サリドマイドの取扱いに関するガイドライン」の2種類があります。 2つのガイドラインのうち多発性骨髄腫のガイドラインを遵守しているのは 97.7%、ハンセン病のガイドラインを遵守しているのは2件あり、1.1%とい う数字がまとまっています。2頁のII.遵守内容、どのような内容を遵守して いるのかについては、2.同意をどのような形で取得しているのかを見ると、 下に(注)がありますが、文書同意を取っているということで、文書を使って 同意を取っているのが全体として98.8%です。  3頁の3.「登録について」、ガイドラインでは日本臨床血液学会事務局に登 録することになっているのですが、これが36%という数字になっています。 服用記録簿、残薬回収等についてを見ると、4.1の「患者ごとの服用記録簿 を作成している」、4.2の「必ず記帳するように指導している」というものに ついては、「することとしている」という表現が適切であったかということも あるかもしれないのですが、このような数字が出ているということです。ただ、 薬がどこかに行かないようにということで、余った薬は回収する、他の人の手 に渡らないようにという意味で「回収することとしている」を聞いている4. 5の回収については、91.1%で、余った薬は回収されているという状況にある ようです。  先ほど述べたように、この調査票は作成後、回収し、集計していただいてわ かったことですが、回答者の混乱を招きかねない設問があったことに留意して、 ご覧いただければと思います。  最後に、参考資料No.5−7は資料5のいちばん下の3「サリドマイドを輸 入した医師の登録システムの開発」というタイトルで書いてありますが、この 新しいシステムの紹介をしたものです。これは平成17年度の厚生労働科学特 別研究で、東京大学医学部の久保田潔先生を主任研究者として、「未承認医薬 品の管理・安全確認システムに関する研究」という研究を行っていただいてお ります。その中でサリドマイドの使用登録システム(SMUD)を検討してい ただいているのですが、これは大学病院の医療情報ネットワーク(UMIN) を利用し、サリドマイドを個人輸入した医師が、薬剤の使用状況などを登録で きるようなシステムを検討していただいています。このシステムは今年度の研 究班で研究していただいています。  参考資料No.5−7で簡単に説明すると、いちばん上にあるとおり、UMI Nのシステムを使ったサリドマイド使用登録システム(SMUD)は、右には 医療機関がありますが、まず個人輸入した医師がシステムに登録する。登録し た医師は、登録内容を閲覧できる。登録内容としては、多発性骨髄腫の患者に 投与しているとか、いつ投与を開始したかなどといった使用状況を登録する形 になります。また、妊娠がわかったり、重大な副作用が出るようなことがあれ ば、またこのシステムに登録できます。登録の内容については、多発性骨髄腫 のガイドラインで、日本臨床血液学会に登録することになっているので、学会 員の登録内容については、右から2番目の下に「患者登録受付」とありますが、 日本臨床血液学会に連絡がいくような形で検討が行われています。  左から2番目の下に書いてある「緊急報告受信」は、万が一サリドマイドを 服用していた患者が妊娠したといった重大な事象が起きた場合は、緊急報告と して、厚生労働省にも連絡がいくような形で検討が行われています。個人輸入 した医師がこのシステムに登録した場合、当然、登録した医師数などが集計で きますので、そのような集計結果をインターネットで一般の市民や患者が見る ことができるようなシステムにしようということで、今研究班で順次検討を行 っております。  この図の中で、登録した学会員の情報が日本臨床血液学会にいくとご説明し ましたが、サリドマイドの適正使用ガイドラインに、多発性骨髄腫の患者に使 うときには日本臨床血液学会に登録票を送付することが書いてあります。現時 点で日本臨床血液学会にどのぐらい登録票が送付されているのかを確認した ところ、登録票は1患者ごとに書くことになっていますが、平成17年12月 7日現在で、278件の登録があるとのことでした。サリドマイドに関する説明 は以上です。 ○松本座長 参考人としてご出席の三宅先生はサリドマイド使用実態調査も 集計されているようですが、ご意見等があればお願いいたします。 ○三宅参考人 私どもの方で安全対策課に送られてきた調査票を集計してお ります。明らかに三者択一で、絶対どこかに丸が付くべきところに回答がない 場合に、電話連絡をして確認しておりますが、その際に聴いた話や欄外に書き 込まれたコメントを見たところでは、「これから使い始める人には回答できな い項目」と、逆に「ガイドライン制定前から使用している場合対応できない項 目」があったと思います。たとえば、学会のガイドラインができる前から使用 している患者については、事前登録するという考え方はなかったので「次回使 う機会から登録する」といったコメントが書かれていたりしました。本来であ れば、アンケートに答える人を、ガイドライン制定前から使っている人、今使 っている人、これから使い始める人ぐらいに分けた方がよかったのかもしれな いと思いました。そのようなこともあって、回答率が低いのではないかと思い ました。  もう1つ、多発性骨髄腫のガイドラインを遵守していないという方が4名い て、その中でハンセン病のガイドラインを遵守というのにも項目が入っていな いのが2件あったので、電話連絡で確認してみたところ、1件については、全 部遵守した場合に記入するものと読んでしまったので、遵守せずのほうにチェ ックしてしまったとのことで、確かにその方の回答票には後ろの項目で遵守項 目の記入がありました。もう1件は明らかに白紙だったのですが聞いてみると、 その方は大きな病院に勤めていて、このようなアンケートに答えるには院内の 許可がいると理解していたので、コンセンサスを得る暇がなかったから不遵守 と答えたとのことでした。この2人については再度調査票を送り、調査して最 終的な結果としてまとめたいと思っております。 ○松本座長 この分野の専門家である池田委員、ご意見があればお願いいたし ます。 ○池田委員 学会でサリドマイド使用のガイドラインを作ったわけですが、い ちばん問題となるのは、多発性骨髄腫以外にどれぐらい使われているのかとい うことで、私どもとしても大きな関心事だったのです。血液学会は多発性骨髄 腫を扱っていて、その他の固形癌などに使っている方々はあまり会員になって いないということで、そこはどれぐらいなのかと思っていたわけです。今回の アンケートを見ると多発性骨髄腫に使用されている割合が94%近く、多発性 骨髄腫以外で使っている方が非常に少なくなっているという点では、固形癌で サリドマイドが有効であるというエビデンスがまだないのです。多発性骨髄腫 についてはエビデンスがあるので使っていこうということですが、多発性骨髄 腫の患者を中心に、血液学会が責任を持ってこのガイドラインを遵守するよう な方向にもう少し努力しなければいけないのかなと思いました。  もう1つ、薬品の管理や服薬記録、あるいは残薬の回収等はいちばん大事な 問題であり、それについてはかなり厳しいガイドラインを作っているのです。 大方の先生方はその点の理解はあるのですが、一般的に薬物の管理というもの に慣れていないこともあって、ここについてはもう少し徹底が必要ではないか ということで、この結果を踏まえて、学会を通して会員に周知徹底させること が必要ではないかと思っております。  もう1つ、事務局から、12月7日現在日本臨床血液学会に登録している数 が278件という話がありました。アンケート調査では177人の調査票があり、 学会に登録しているのは36.4%、実際の登録状況はどのぐらいか、登録して いなくても、ガイドラインはきちっと守っている方がほとんどだということは 十分わかるのですが、登録をすることを通じて、何か事が起こったときにきち っと追跡できるという格好をとっておくことが大事だと思いますので、やはり 登録をもう少しエンカレッジする、促進させることが必要だと思います。  厚生労働省がこのような新たな登録システムを作ったことで、どのぐらい登 録が増えてくるかについては、私どももこれを機に学会のほうにフィードバッ クしなければいけないのではないかと思っております。日本臨床血液学会では、 登録は紙ベース、ファックスで事務局に送るという格好です。三宅先生も言わ れたように、今まで使っていた方々は登録していない可能性がある、新しく使 った方々だけが登録しているということがあるので、登録のパーセンテージが 上がらなかったのではないかという気がします。このデータを基に、サリドマ イドの適正な使用、管理というものを一層徹底させていく。普通だと90何パ ーセントというと、ガイドラインの遵守率にしては非常にいいと考えるわけで すが、薬物が薬物ですので、100%にしなければいけない種類の薬物だと思い ますから、やはり学会のほうにはフィードバックさせる必要があるのではない かと思っています。 ○松本座長 他に何かご意見があればお願いいたします。 ○土屋委員 サリドマイドについては、私は最初にやった厚生科学研究の分担 研究者でもありました。この薬は使用すること以外に、きちんと管理をするこ とが極めて重要であり、管理状況として、医療機関であれば薬剤部等でやると かなり厳格に、むしろ厳格過ぎて困っている、困っているというのは、後処理 をどうしたらいいのかなどで困っていたという実態が当時ありました。今回の アンケートにおいても、責任薬剤師を置いている場合、服薬指導しているかど うかという設問に答えるときに、既に薬剤部のほうにいってしまっているので、 その先生自体がすぐ答えられない部分もあったのかなということがありまし たから、今後このような調査をするときには、責任薬剤師を置いているか、置 いていると言ったら、そこに対して別紙の質問を用意することも必要ではない かという気がしました。逆に、置いていなければより厳しく、管理をきちんと やることがわかるような仕組みをとることが必要だと思います。  そのような意味で言えば、参考資料No.5−7で示された使用登録システム のような、全体として管理するシステムが非常に重要だと思いますので、まず これに登録してもらい、その結果などを見ながら、今後よりきちんとした管理 を進めていくことが必要だと思います。こういったシステムをきちっと運用し、 そこで把握されていないものがないように、全数がきちんと登録されているよ うな環境をつくっていくことがいちばん重要ではないかと思います。 ○安全対策課長 土屋委員が言われましたが、参考資料No.5−7にある新しい 登録システムを研究班の力を得て立ち上げようとしております。もちろん、シ ステムの内部を検討することも重要ですが、この運用に当たり、登録をいかに してもらうかというのがキーであることは委員が指摘されるとおりだと思っ ております。運用開始に向けて、個人輸入の際には薬監証明と言われる証明書 を地方厚生局で出すことになっていますが、薬監証明の発出に絡めた形で、法 律ではないので義務づけることはできませんが、この登録に関してそれに近い ことをやれないだろうかと頭をしぼっているところです。先生方のお知恵も拝 借したいと思いますので、よろしくお願いいたします。  実態調査結果について、事務局から質問をするというのも甚だ恐縮ではあり ますが、実態調査結果の2頁目、今日差し替えたBのI、すなわち最初のガイ ドラインの遵守及び準用で、不遵守が2例ある。これについては三宅先生から 実態的に再度調査をしているという説明があったのですが、もう1点聞かせて いただきたいと思っていたのは3頁目の2.5です。サリドマイドですから胎 児の催奇形性というのがいちばんの危険、リスクになろうかと思いますが、こ の回答結果をどのような形で解釈すればいいのか。先ほど来、三宅先生からも 指摘されたように、設問の仕方にもう一工夫、二工夫あればということは、我々 も重々反省しなければいけない、今後に活かしていかなければいけないと思っ ているわけですが、このデータ自体をどのように解釈すればいいのか、もし先 生方からご示唆があれば賜りたいと存じます。 ○松本座長 三宅先生、何かあればお願いいたします。 ○三宅参考人 この項目について、妊娠可能な女性に処方していないために妊 娠検査という語を見た段階でこの項目をスキップした方がかなりいました。こ れは四択のうち必ずどこかにチェックが入る設問なので、電話で確認して、2 名を除いて回答を得ています。その結果、妊娠可能な患者には使わないと院内 で決めている病院が多いようでした。妊娠可能な女性の場合は検査することと しているという所でも、実際は該当がないので、2番目と3番目が合計すれば いちばん大きくなり、やはり妊娠の可能性がある患者には使わない方針だとい ったような設問を付けたほうがわかりやすかったと感じています。残りの2名 は残念ながら連絡がつかなかったのですが、「妊娠可能な患者でも検査などは しない」といった病院は絶対ないだろうと思いました。 ○池田委員 この点については、ガイドラインでもいちばん問題にしていると ころですし、皆様のいちばん大事な関心事だと思います。この設問だと、該当 患者はなく、例えば妊娠可能な女性患者を検査するか未定だというと、医者が そのようなことを無視して使うのではないか、そのように捉えようとすると、 これはやはり違うのではないかと思います。 ○三宅参考人 未定というのは、院内で明確に、このような場合は検査をする といった手順になっていない所は皆これになっていますので、そもそも原則と しては、妊娠可能な女性には使わないことにしているというところでは、この 項目になるわけです。 ○池田委員 そうだと思います。妊娠可能な女性には使わないことになってい ますし、仮に可能性がないとしても、念のためということで検査する所もある やに思いますが、ここについては基本的に使わないことをポリシーにしている かとか、それをきちっと守っているかなどと聞かれた方がはっきりわかるので はないかと思います。 ○松本座長 集計結果を誤解しやすくなりますから、もう少し考えてやってい ただきたいと思います。先ほど課長からも話がありましたが、個人輸入される サリドマイドに関する取扱いについては、厚生労働科学研究による新しいシス テムを適正に運用できるように検討していただきたいということでよろしい ですか。 (了承) ○松本座長 次に、その他の議題として事務局から何かありますか。 ○事務局 特にありません。 ○松本座長 全体を通じて、何かご意見があればお願いいたします。三宅先生、 どうもありがとうございました。 (三宅参考人退席) ○松本座長 本日はこれをもって調査会を閉会とさせていただきます。長い間 どうもありがとうございました。 (照会先) 医薬食品局安全対策課 渡邊 (内線2748) 鬼山 (内線2753) TEL03-5253-1111(代表) 1