06/01/26 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 平成18年1月26日議事録        薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成18年1月26日(木) 14:00〜   厚生労働省共用第7会議室 2.出席委員(10名)五十音順    青 柳 伸 男、 井 上 和 秀、 岩 崎   学、 谷川原 祐 介、    土 屋 文 人、◎永 井 良 三、○長 尾   拓、 長谷川 紘 司、    樋 口 輝 彦、 村 勢 敏 郎 (注) ◎部会長 ○部会長代理    他 参考人1名   欠席委員(4名)    堺   秀 人、 首 藤 紘 一、 田 島 知 行、 早 川   浩 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、    川 原   章(審査管理課長)、 山 田 雅 信(安全使用推進室長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、    浦 山 隆 雄(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、    森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、   坂 本   純(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、   牧 野 ゆり子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、   田 中 克 平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長)  他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催 いたします。本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。当部 会委員数、14名のうち9名の委員に御出席いただいておりますので、定足数に達してお りますことを御報告いたします。本日御欠席の委員は、堺委員、首藤委員、田島委員、 早川委員です。  では、永井部会長、以後の進行をよろしくお願いします。 ○永井部会長 まず事務局から配布資料の確認と資料作成に関与された委員の報告をお 願いします。 ○事務局 では、配布資料の確認をいたします。机上に議事次第、座席表、委員名簿を 置いてあります。議事次第にあります資料1〜6までがあらかじめお送りした資料です。 資料5は希少疾病用医薬品の指定の諮問書ですが、薬事法の条文引用のミスがありまし たので本日差し替えさせていただきます。  資料7は、医薬品優先対面助言品目の指定についてです。資料8は、審議品目の薬事 分科会における取扱い等の案です。資料9は専門委員のリストです。  平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく資料作成に関係された委員の確認で すが、本日の審議事項の議題1、塩酸セルトラリン、ジェイゾロフト錠について樋口委 員が関与されておりますので、樋口委員におかれましては議題1の審議の間は別室で御 待機いただきます。よろしくお願いします。また、本日議題1の参考人として、名古屋 市立大学大学院医学研究科教授の古川壽亮先生にお越しいただいておりますので、御紹 介申し上げます。 ── 樋口委員退室 ── ○永井部会長 本日は審議事項が5議題、報告事項が2議題となっております。では、 議題1について機構から概要の説明をお願いいたします。 ○機構 それでは議題1、資料1、医薬品ジェイゾロフト錠25mgほかの製造承認申請の 可否等について、医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。この品目につ きましては、旧審査センター時代に審査が開始されており、その後、引き続き機構で審 査を行っていたものです。  ジェイゾロフト錠は、塩酸セルトラリンを有効成分とするセロトニン再取り込み阻害 薬(SSRI)でございます。今般の申請はうつ病、パニック障害の効能・効果に関する ものです。本剤は既に米国、欧州諸国等108か国で承認されております。なお、申請当 時には販売名は「ゾロフト錠」でしたが、消化器官用薬である「ソロファール」と名称 が類似しており、医療過誤の観点から変更するよう求め、販売名は審査の過程で「ジェ イゾロフト錠」に変更されております。  本申請の専門委員といたしましては、資料9に記載されております11名の委員を指名 いたしました。  品質、毒性、薬理、薬物動態につきましては特に大きな問題はないと判断しておりま す。  臨床成績について詳細に説明させていただきます。まず、うつ病についてです。国内 で第II相及び第III相試験が最高75mgまでの用量で当初実施され、ある程度の有効性も示 唆されておりましたが、最終的には第III相試験として実施されたトラゾドン、アミトリ プチリンとの非劣性試験において非劣性は検証できませんでした。この結果を受けて、 旧審査センターとの協議を踏まえまして、最高用量を100mgとしてプラセボを対照とし たランダム化治療中止試験が国内で再度実施され、プラセボに対する本剤の優越性が検 証され、安全性についても特に大きな問題は認められませんでした。また、最長52週間 までの長期における有効性の維持と安全性、高齢者における有効性及び安全性について も別途試験が実施され確認されております。  次にパニック障害についてです。後期第II相試験として、2用量とプラセボとの比較 試験が実施され、最終全般改善度でプラセボとの有意差は認められませんでしたが、別 の主要評価項目として設定されていたパニック発作回数においては、プラセボに対する 有意差が低用量群で認められました。この結果を受けて、旧審査センターとの協議を踏 まえまして、有効性は示唆されるものの再度確認が必要ということで、最高用量を100 mgとして、プラセボを対照としたランダム化治療中止試験が実施されました。その結果、 主要評価項目でありました再燃率においてはプラセボに対して優れる傾向が認められま したが、統計的には有意差は認められておりません。一方、最終全般改善度、パニック 発作回数ではプラセボに対する優越性が示されております。安全性につきましては他の SSRIと同様、特に大きな問題はないと考えております。  再燃率において本剤のプラセボに対する有意差が認められなかった理由を詳細に検討 した結果、レスキュー時に併用可能としていたロラゼパムの服用が本剤群よりもプラセ ボ群で有意に多く、その結果、設定していた再燃の定義ではプラセボ群で生じた症状の 悪化をうまく同定できなかったためと考えられました。  したがいまして、国内臨床試験においては明確な形で本剤のパニック障害に対する有 効性が示されていないものの、客観的な評価項目と考えられるパニック発作回数につい ては本剤のプラセボに対する優越性が示されており、その他の多くの指標においても本 剤による改善が示唆されていること。それから、国内で実施されたランダム化治療中止 試験では、主要評価項目であった再燃率においてプラセボに対する統計的な有意差は認 められなかったものの、その原因は海外の試験とは異なり、ロラゼパムの併用を可能と していたことによるもので、原因がある程度特定されており、実際に得られた Kaplan-Meierプロットからも本剤の有効性を示唆する傾向が認められていること。また 海外では複数の臨床試験で本剤の有効性が検証されており、このSSRIをパニック障 害に対して使用することについては、国内外で既にある程度のコンセンサスが得られて いると考えられること。以上のことから、本剤のパニック障害に対する有効性は示され ているものと判断し、安全性についても国内外での臨床試験結果、海外での使用状況等 から特に大きな問題はないと考えられ、パニック障害に対する効能・効果を承認して差 し支えないと機構は判断しております。  また、本剤のパニック障害に対する効能・効果は海外の多くの国で既に承認されてお り、本剤が本邦で承認された場合には、パニック障害の患者に対しても使用されること が想定されます。そのため適正使用を推進し、製造販売後の調査等を適切に実施する上 でも、本剤のパニック障害に対する効能・効果を承認することは妥当と考えております。 なお、パニック障害に対する本剤の有効性を再確認するため、製造販売後臨床試験を実 施するよう申請者に指示しておりまして、パキシル錠を対照とした比較試験、非劣性試 験が実施される予定です。  以上の審査を踏まえまして、本剤の製造を承認して差し支えないとの結論に達し、本 第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新有効成分含有医 薬品であることから、再審査期間は6年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品 及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会 には報告を予定しております。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。これに関しましては参考人として古川先生に おいでいただいております。位置付けや特徴、あるいは問題点など御指摘いただければ と思います。 ○古川参考人 名古屋市立大学大学院の医学研究科精神認知行動医学分野の古川と申し ます。一臨床精神科医として発言させていただきます。このジェイゾロフト、セルトラ リンが対象としているうつ病、パニック障害を中心とした不安障害というのは大変頻度 の高い病気で、精神科の臨床でも患者数が大変多い病気であります。これらの病気に対 しては、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、あるいはセロトニン及びノルアドレナリ ン再取り込み阻害剤と言われるSSRI、SNRIによる治療が現在世界では主流とな っております。  ところが、現在日本で認められているSSRI、SNRIはパロキセチン、フルボキ サミン、ミルナシプランの3剤しかなく、世界から大きく取り残された状況となってお ります。アネクドートではあるのですが、実は私はコクラン共同計画でSSRI、SN RIのメタアナリシスをやっているのですけれども、イギリス及びイタリアの共同研究 者とこういうのを順番にやっていこうという話をしたときに、「日本ではパロキセチン とフルボキサミンしか認可されていないので、それを私たちがやりましょうか」と言っ たら絶句されてしまいまして、どういうことなんだと言われてしまいました。  パロキセチンはある程度世界的にもよく使われているお薬ですが、フルボキサミンと ミルナシプランは必ずしもそうではないわけです。しかもこのパロキセチンは、先生方 も御存じかと思うのですが、ここ1、2年に離脱症状やもともと知られていた薬物相互 作用の多さ、それからごく最近になって催奇形性等、幾つかの問題が指摘されていまし て、大変使いにくい状況となっております。そのため、現実にたくさんの患者さんがい らっしゃるうつ病、不安障害に対して、SSRI、SNRI系統のお薬の選択肢が増え るということは、臨床現場でも極めて重要なことと考えております。実際、セルトラリ ンは世界でも2005年度には一番よく使われるSSRIとなっているようですので、臨床 データは今機構から御紹介があったとおりではあると思いますが、臨床の立場からは日 本でも是非使えるようにと期待しているところであります。以上です。 ○永井部会長 外国でもパニック・ディスオーダーについて、かなり広く使われている のでしょうか。 ○古川参考人 はい。パニック・ディスオーダーに対しては、クラスとしてはベンゾジ アゼピン系の抗不安剤とSSRIの二つが大きなチョイスです。日本ではどうしてもベ ンゾジアゼピン系がよく使われるのですが、これは御存じのとおり薬物依存、離脱の問 題がありまして、やはりSSRIが世界的にも推奨されていると思います。 ○永井部会長 本日御欠席の堺委員からのコメントが届いております。「セルトラリン については、前期第II相試験で高血圧性クリーゼが1例、第III相試験精神科領域で低血 圧が1例、長期投与試験で血圧上昇210、126が認められている。用法・用量による可能 性はあるが、いずれにしても添付文書中で現行案のように重大な副作用としてセロトニ ン症候群を挙げることに加え、投与中は血圧を反復測定することを明記すべきかと思わ れる」とのことでございます。 ○機構 堺委員のコメントに補足させていただきます。堺委員の御指摘ですが、認めら れているセルトラリンでの血圧変動については、審査の過程でも慎重に評価しておりま す。血圧変動は他のSSRIとほぼ同様の発現率で、重症度についても特に重症なもの はないと考えております。何例か認められている例では、直接的に血圧変動を起こすと いうより、むしろセロトニン症候群が発現した結果血圧の変動が起こっているのではな いかと考えております。セロトニン症候群については既に添付文書に重大な副作用とし て記載しております。  もう一つは海外でございますが、急性の心筋梗塞患者あるいは不安定狭心症を伴う患 者を対象としてセルトラリンとプラセボの比較対照試験が実施されております。既に Journal of American Medical Association (JAMA)誌で発表されておりますが、その結 果この薬での血圧変動はプラセボと同様か、むしろプラセボよりも若干低いとなってお ります。この薬で循環器系への直接的なリスクがあるとは我々は判断しておりませんで、 現時点でこの薬に限って何らかの特別な注意喚起は必要ないと考えております。その点 については堺委員に既に説明させていただき、御了承はいただいております。この点に つきましては、製造販売後に計画をしております使用成績調査、特定の長期調査の中で 更に検討してまいりたいと考えております。 ○永井部会長 ありがとうございました。以上の点を踏まえまして、委員の先生方から 御意見を頂きたいと思います。 ○岩崎委員 統計学なのですが、これは海外でも15年ぐらいの実績があって、しかも日 本でも割と長期にわたって開発が行われていると思います。しかし、先ほど機構から話 があったように、統計的に見ると余りすっきりした結果になっていないと思うのです。 そういった海外との違いとか、あるいは我が国でも10年前と今とではかなり違ってきて いると思うのですが、これが承認されて果たして実際に医療現場でうまく使われるかど うか、その辺についてお伺いしたいと思います。 ○古川参考人 実際に発売になったとき、医療現場でどのぐらい使いやすいかという御 質問かと思いますが、先ほど言いましたように離脱や薬物相互作用という観点から見て も、むしろ使いやすいお薬であろうと思われます。海外データをどの程度理由としてお 話していいのか分からないのですが。 ○岩崎委員 統計的には余りクリアカットになっていないわけですが、それは海外と日 本との治療の実態が違うのかということです。先ほど言われたように海外では広く使わ れているわけですけれども、どの辺が違っているのか。あるいは日本の医療現場が大分 変わってきて、これを出すことによって患者にメリットがあるのかをもう一回確認した いということです。 ○古川参考人 これは私見ですが、今回の申請データがクリアカットでないのは、やは り古いデザインで行われた試験という面もあるのかなと思われます。実際に医療現場に 出たときは、例えばパニック障害に限って言いますと、ベンゾジアゼピンという本来望 ましくない副作用が多いお薬に代わって、安全性の高いSSRIクラスのお薬の選択肢 が増えることは極めて好ましいことだろうと考えています。 ○岩崎委員 どうもありがとうございました。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○岩崎委員 市販後に試験を計画されていると言われましたが、どういった位置付けに なるのでしょうか。やはり確認という形になりますか。 ○機構 補足させていただきます。海外臨床試験の成績と今回日本でやった試験で一番 違うのは、併用薬の影響であろうと考えております。この試験を実施した当初における 国内と海外の一番の違いは、日本は多剤併用される傾向にあるということでした。それ が今は大分変わってきて、なるべく単剤で使いましょうという方向に変わってきていま す。このような時代背景の中で行われた試験だと御理解いただきたいと思います。ロラ ゼパムについては、海外では完全に併用禁止薬として想定されていたのですが、日本で は併用可能薬という形で試験が実施されたために結局こうなってしまったけれども、ロ ラゼパムを併用していた割にはそれなりの結果が出ているのではないかと我々は考えて おります。  製造販売後にやる試験としては、今パキシルとの非劣性試験を考えておりますが、こ れは我々としては一応確認ということです。有効性については今のところデータで得ら れているので、この薬の有効性は認められていると考えますが、先生が御指摘のとおり、 国内の臨床試験を見る限りは統計的にすっきりとした結果が出ていないということです ので、その点を再度確認するために実施していただくという位置付けになろうかと思い ます。 ○永井部会長 報告書の4ページに、この薬は1991年から第I相臨床試験が開始された と書いてあります。随分時間が掛かってここまでたどり着いているわけですが、その辺 の経緯について古川先生は何か御存じでしょうか。 ○古川参考人 私の知っている限りでは、SSRIは海外では適応がもっと広いお薬で、 例えば神経性過食症、強迫性障害、全般性不安障害など、たくさん認められています。 ファイザー社はそれを一挙にやろうとして、かなりの数の治験を同時に進めようとされ たというのが時間の掛かった一つの理由かなと、私の個人的な想像ですが、そう思って います。 ○永井部会長 機構から何か追加はございますか。 ○機構 国内での開発になぜ時間が掛かっているかというのは、旧GCP下で試験実施 施設が限られていて、その中で1施設でいろいろな効能・効果の試験を2、3本やって いる経緯が確かにございました。そのために患者のエントリーに相当時間が掛かってい るというのも一つです。実際にこの申請が出てきているのは平成10年ですので、1998 年には一度申請されているということです。  ただ、旧審査センター時代に、これだけの結果で承認することは困難だということで、 新GCP下でwithdrawal試験を2本、それぞれうつ病とパニック障害に実施して、その 再試験結果をもって再度審議した結果、今このステージにたどり着いたということでご ざいます。当初の1991年から1998年の間を見る限りは、彼らの想定範囲内だったと思 いますが、その後のいろいろな治験環境の変化、審査センターでの協議の結果というこ とで、ここまで15年という月日がたってしまっているのではないかと思います。 ○審査管理課長 資料のイ-15〜16ページを御覧いただきますと、英国承認1990年、米 国承認1991年とございますが、1991年後半ぐらいから単回投与の第I相などがスター トしてきております。先ほど機構からも説明がありましたように、かなりいろいろな試 験が同時に走って、平成10年ごろに1回終わったような形にはなっていますが、そこで きちんとしたデータが出なかったということです。臨床開発自体もアメリカ、イギリス での承認後に始まっているという事実もあるようでございます。 ○永井部会長 委員の先生方、何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。もし よろしければ承認可ということで分科会に報告させていただきます。それでは古川先生、 どうもありがとうございました。 ── 古川参考人退席、樋口委員着席 ── ○永井部会長 それでは、続きまして議題2、医薬品キューター注射用、セトロタイド 注射用の輸入承認の可否について、機構から審査概要の御説明をお願いいたします。 ○機構 それでは議題2、資料2、医薬品キューター注射用0.25mg、同3mg、セトロタ イド注射用0.25mg、同3mgについて、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。  本剤の有効成分である酢酸セトロレリクスは、ドイツのASTAMedica社により開発され たゴナドトロピン放出ホルモンアンタゴニストです。このゴナドトロピン放出ホルモン は視床下部から分泌され、下垂体ゴナドトロピン受容体に結合することにより、黄体形 成ホルモンや卵胞刺激ホルモンの放出を引き起こします。本薬は下垂体ゴナドトロピン 受容体に対して、内因性ゴナドトロピンと競合的に結合することにより、ゴナドトロピ ン分泌抑制作用を示します。  本品目の開発において、国内では第I相及び第III相臨床試験が実施されました。用法 ・用量としまして、海外では3mg単回投与及び0.25mg反復投与の2種類が設定されてお ります。国内第III相臨床試験は、この各用法・用量による2試験が実施されました。こ れらをブリッジング試験と位置付け、ブリッジング対象試験の成績との比較に基づいて、 海外で実施された他剤との比較臨床試験等を外挿する臨床データパッケージで承認申請 がなされました。  海外では、体外受精/胚移植などの生殖補助医療技術施行に伴う卵巣刺激下における早 発排卵の防止を目的として、本剤は平成17年11月時点でEU、米国を始め計92か国で 承認されております。国内における同種の医薬品としてはゴナドトロピン放出ホルモン アゴニストが承認されておりますが、生殖補助医療分野における開発はなされておりま せん。  本品目の審査に関しまして、専門委員として資料9に記載されている12名の委員が指 名されました。  次に機構における審査の概略を説明いたします。品質、毒性、薬理及び薬物動態につ いては、審査の過程において申請者から適切な対応がなされ、特に問題はないと判断い たしました。  臨床試験について、ブリッジング試験として実施された国内第III相試験2試験は、い ずれも治験実施計画書からの逸脱例が多数認められ、機構は当該試験をブリッジング試 験として海外臨床試験を外挿することはできないと判断いたしました。  本剤の有効性に関して、国内第III相試験の最終的な有効性解析対象集団における主要 評価項目であるhCG投与率の成績、また、妊娠率等は、同時期の国内体外受精及び海 外臨床試験成績と比較して大きくは異ならないことは示唆されるものの、多数の逸脱例 があった当該試験成績からは、至適用量も含め申請効能・効果における有効性が十分に 確認されたとは言い難いと考えられました。  安全性に関して、提出された資料では、臨床使用にあたって重大な問題となる有害事 象は認められていませんが、国内症例数は少なく、主要な副作用の発現率等については、 海外データとも比較可能となる規模の調査結果に基づいて評価する必要があり、妊娠及 び出産に関する情報収集とともに市販後に十分な検討が必要であると考えられました。  一方で、本薬については海外において一定の評価が既に確立されているものと判断さ れ、また参考として援用できる海外臨床試験成績などもあります。また、薬理作用や海 外の使用実績等から、本薬が早発LHサージを抑制し、早発排卵を防止する作用は明確 であると判断できると考えられました。さらに、この領域の専門家により卵巣刺激法の プロトコルが選択され、使用医薬品の用法・用量も患者の反応性に応じて個々に調整さ れるものであることから、この申請用法・用量において臨床的に大きな問題が生じる可 能性は少ないと考えられました。  本品目については、関係学会からも早期承認を求める要望書が提出されております。 生殖医療における選択肢を提供する必要性にも鑑み、十分な質を確保した追加臨床試験 の実施は必要ではありますが、この追加臨床試験成績の提出までの間は市販直後調査終 了後も同様な調査を継続することとし、現在までに得られている情報に基づいて本剤を 使用することは可能であると判断いたしました。  なお、販売名「キューター」につきましては、類似名称のものが存在することから変 更が検討されております。承認時には類似名称のないものに変更される予定です。  以上のような検討を行いました結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、 医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は 原体及び製剤共に劇薬に該当し、再審査期間は6年、薬事分科会へは報告を予定してお ります。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。では、委員の先生方から御質問、御討論をお 願いいたします。  報告書の2ページに第III相試験で逸脱例が多かったということがありますが、この内 容について追加で説明いただけますでしょうか。 ○機構 国内第III相試験におきましてGCP不適合症例が多数認められました。第III相 試験では2試験ございまして、審査報告書の49ページに記載しておりますが、3mg単回 投与試験では58例中18例が逸脱例でした。両試験合わせて115例中43例と、約3分の 1の症例に違反であり、主な逸脱としては選択・除外基準違反、投与・処置の違反があ りました。内容を御説明しますと、過去に体外受精を4回以上実施した例、FSHの基 礎値検査が未実施であった例、また、移植の胚の数も実施計画書等で決まっていたので すが、それよりも多い胚を移植してしまったり、生殖補助医療では複数の医薬品を使用 しますが、そのうちの幾つかは市販品を使ってしまったとか、そういった違反がござい ました。 ○永井部会長 そういう背景のあるお薬ですが、よろしいでしょうか。問題ないでしょ うか。 ○岩崎委員 全例に近いものが有効であると判断されていますが、有効であるというこ とは基本的には国内データではなく海外データから示唆されたということですか。ある いは医学上公知であるとか、そう考えればよろしいですか。 ○機構 ここまでたどり着いた大きな根拠は、やはり海外でのかなりな実績があること です。コクランライブラリー等の有名な総説等においてもGnRHアゴニスト同様、引 用されております。卵巣刺激法のプロトコルの中での一つの薬剤として位置付けられて いることは、そういった海外の実績等からも推察されました。薬理作用もかなりクリア なものですので、そういった意味で有効性についてはほぼ公知と言えるのではないかと いうことです。海外ではアゴニストも承認されていますので、それとの比較試験も複数 ございます。  国内の成績では主要評価項目とされたHCG投与率、排卵誘発の施行率も全例成功し ております。基本的には海外での実績、成書等での記載がメインになっておりますが、 国内でも同じようなことが期待されるであろうという大きな根拠があります。専門協議 等も経て専門家の意見もお聞きしておりまして、3mg単回投与、0.25mgの反復投与につ いて同じ用法・用量で、もう一度同じ成績が出るということを日本人で確認する必要が あるということになっておりますので、これらの試験を併せて今後実施し、その間は安 全性に気を付けるということで、市販直後調査と同様の調査を継続する形で現場に出し ていくというのが最終的な判断でございます。 ○岩崎委員 ありがとうございました。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○谷川原委員 審査結果のところに、ブリッジング試験として「海外臨床試験を外挿す ることはできないと判断した」と書かれていますし、審査報告の経緯でも書かれていま すが、添付文書の書きぶりで、臨床成績が「国内ブリッジング試験」と書いてありまし て、ちょっと混乱を招くような表現ではないかと思うのですが。 ○新薬審査第ニ部長 添付文書の記載については「ブリッジング」という言葉を使わな いように修正させます。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしよろしければ承認 可ということで分科会報告とさせていただきます。ありがとうございました。  それでは議題の3、デトロールカプセル輸入承認の可否につきまして、機構から概要 を御説明ください。 ○機構 議題3、資料3、医薬品デトロールカプセル2mg、同4mgについて、医薬品医 療機器総合機構より御説明いたします。  本剤の有効成分である酒石酸トルテロジンは、カビ・ファルマシア社(現ファイザー株 式会社)により開発されたムスカリン受容体拮抗薬です。本剤は過活動膀胱を対象に1日 1回投与の徐放性カプセルとして開発されました。過活動膀胱は尿意切迫感を必須とし、 通常は頻尿及び夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴うこともある状態と定義されており ます。従来、本領域の疾患は尿流動態検査等の専門的な検査により診断を行っておりま したが、過活動膀胱という疾患概念により、自覚症状に基づいて診断がなされるように なりました。  本品目について、日本人及び欧米人における薬物動態試験及び臨床試験成績を評価し た結果、外国臨床データの本邦への外挿は可能との判断に基づき、これら試験に国内外 で実施された臨床試験を加えた臨床データパッケージにより承認申請がなされました。  海外では、平成17年9月現在、徐放性カプセルは欧米を中心に約40か国、1日2回 投与の速放性の錠剤が約75か国で販売され、いずれの製剤も過活動膀胱の適応を有して おります。同種同効のムスカリン受容体拮抗薬として、不安定膀胱等の適応で塩酸オキ シブチニンと塩酸プロピベリンが承認されております。  本品目の審査に関しまして、専門委員として資料9に記載されております10名の委員 が指名されました。  続きまして機構における審査の概略を説明いたします。品質、毒性、薬理及び薬物動 態については、審査の過程において申請者から適切な対応がなされ、特に問題はないと 判断いたしました。  臨床試験について、第III相臨床試験は過活動膀胱患者を対象とし、日本及び韓国共同 で実施されました。本臨床試験において、徐放性カプセル4mg1日1回投与は、主要評 価項目とした尿失禁回数についてプラセボに対して優越性を示し、対照薬である塩酸オ キシブチニン9mg1日3回投与に対する非劣性が示されました。また、試験全体の成績 と日本人での成績も同様な結果であり、海外第III相臨床試験の成績も含めた評価により、 申請用法・用量での有効性及び安全性は示されたと判断いたしました。しかしながら、 徐放性カプセルの第III相臨床試験は海外至適用量のみで実施され、国内の至適用量に関 する検討は必ずしも十分ではなく、また用法・用量は、通常1日1回4mg、患者の忍容 性に応じて減量するとされていますが、減量した場合の1日2mgの位置付けについて提 出された資料からは明確ではありません。この点に関しては、市販後の調査において重 点的に検討する必要があると判断いたしました。  安全性に関して、過活動膀胱は自覚症状に基づいて診断されることから、類似の症状 を示す疾患の除外診断が重要であること、認知症等の患者で自覚症状を明確に認識でき ない場合は本剤の投与対象とはならないこと等を注意喚起するとともに、本薬による認 知機能障害悪化例が報告されていることから、認知症、認知機能障害のある患者は慎重 投与としており、市販後の情報収集についても必要であると判断いたしました。  なお、販売名につきましては、「デトルシトールカプセル」に変更する予定でありま す。  以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬 品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は原体 は劇薬に該当し、製剤は毒薬又は劇薬のいずれにも該当せず、再審査期間は6年、薬事 分科会へは報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございます。「overactive bladder」というのだそうですけ れども、尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁に対する効能が認められるお薬ということで す。 ○機構 本品目につきまして、本日御欠席の堺委員から御指摘いただいております。御 指摘の内容は、尿閉、頻尿、その他の副作用症状に対する処置方法が添付文書の2ペー ジの右側の「過量投与」のところに記載されているのですが、重篤症状に対する治療法 等は禁忌事項に次いで、少し注意を引きやすい形式で記載した方がよろしいのではない かということです。この点について本省等とも検討をさせていただき、一般的な注意喚 起にも係ることですので、今後添付文書の記載方法に関する一般的な検討を随時行って いく中で対応していきたいと考えております。この点につきましては堺委員にも御説明 し、了解いただいております。 ○永井部会長 それでは御意見、御質問をお願いいたします。 ○青柳委員 教えていただきたい点が幾つかございます。この製剤は最初速放性製剤で 開発されて途中で徐放製剤になっていると。日本では最初から徐放製剤として承認を得 るように申請している経緯があるのですが、製剤設計の記述が不十分で、よく理解でき ないところがたくさんあります。  例えば、この製剤は4mg/日で通常製剤が使えて、徐放性製剤も結果的には4mg/日と なったと。普通の私たちの理解ですと、徐放製剤というのは1日1回投与したのだから 量が増えてもいいだろうという感じがするのですが、結果的には同じ用量になっている。 4mg/日は日本人では効果はなかったけれども、徐放製剤にしたら結果的に効果があった という記述になっています。こういう結果オーライのところを見ますと、そもそもなぜ この製剤を徐放製剤にしたのかという思想が分かりません。徐放製剤にする場合にはそ れなりの理由があると思うのですが、速放製剤でどういう不都合があったのかというこ とが明確に記述されていないということがございます。徐放製剤にする場合に、もう一 つは薬効の持続をねらったのか、副作用の発生抑制をねらったのか、目的がよく理解で きません。この製剤は口内乾燥が大きな副作用になっていますけれども、かなりの頻度 で出てくるということですから、その抑制を目的としたのかと思ったらそうでもなさそ うだということで、徐放製剤の設計の思想が理解できないところがあります。  これに関連しまして、徐放製剤を開発する場合は通常有効血中濃度を頭に置いて作る のですが、その概念が記載されていないので、どういうふうにそれを考えて設計したの かということが理解できませんでした。通常、速放製剤のCmaxを目安として、それ を超えないように血中濃度を維持しようなどと、何か考え方があると思いますが、それ について文章を読む限りでは理解できなかったということがあります。  それから、副作用は未変化体で起きるのか活性代謝物で起きるのか、両方かもしれま せんが、そこのところも一体どちらなのかが分からないということがあります。  また外国では遺伝的多型があって問題になっているのですが、遺伝的多型がある場合 には、普通、プアメタボライザーですと消失半減期がすごく長くなります。この場合で もプアメタボライザーの場合にはエクステンドメタボライザーより4倍半減期が長くな っています。大体こういう場合には徐放性製剤を投与するのは適当ではないのです。し かしそれについて何も書かれていないとなると、日本では問題ないと思いますが、プア メタボライザーに対して徐放製剤を投与してよいと考えているのかどうかが問題になり まして、血中濃度は多分7、8倍高くなると思います。そういう場合に副作用が心配に なるということで、プアメタボライザーにどう対応するように考えて設計したのかとい うことが分かりません。  それから、この徐放製剤は恐らく血中濃度は高濃度で長時間維持すると思います。そ の場合に、データを見る限りでは速放製剤とCmaxは同じぐらいになっていますが、 長く血中濃度を維持した場合には多分副作用の発現頻度が多くなると思います。それか ら見た場合、速放製剤と比べて本当に利点があるのかどうかという点が分かりません。 なぜ速放製剤の用量を増やして駄目なのかということが気になっていまして、そこのと ころが分かりません。それで、同じ用量で徐放製剤にした場合は日本人で効果が出て、 速放製剤では効果が出なかったという裏付けとなる根拠が分かりません。  また、この製剤を開発する場合に必要とする投与量と残尿量の関係を調べていて、投 与量と残尿量の間に相関性があるから、それを基に徐放製剤にして用量を増やそうとい う考え方があったのですが、普通徐放製剤を作る目安は用量ではなくて血中濃度だと思 うのです。そことの考え方はどうリンクしているのかということもちょっと理解できま せんでした。  先ほど副作用のことを言いましたが、この文章を読む限り、途中から口内乾燥という 副作用はCmaxと関係があるということを言いまして、6mg以上は投与しないように しようということで4mgにしていると思うのですけれども、最初からCmaxと副作用 との関係は分かっていなかったのだろうかと疑問に思いました。それが分かっていたら 最初から高用量は開発しないでやったと思いますが、その場合の設計の思想は一体どう なっているのかということが分かりません。  それから、この医薬品は初回通過がかなり大きいと予測されるのですが、このような 医薬品は徐放化するとどんどん分解されてしまうので、普通は徐放化してはいけない薬 です。幸いに活性代謝物があるものですから、活性代謝物が有効血中濃度の維持を考慮 していると考えて徐放化したのかどうか。そこも明確にしてもらいたいところがありま す。  それから、徐放製剤の放出速度をどういう根拠で決めたのかということが読んでいて 理解できませんでした。普通は徐放製剤を設計する場合に1日で80%を放出させる、何 か根拠を持って作ると思うのですが、その根拠が出てきていなくて、見た限りでは分か らないので、そこのところをきちんとしてもらいたいということがあります。  また、徐放製剤を作る場合は、普通はあらかじめ吸収部位に特異性があるかどうかを 調べるのですが、それについてのデータがないのです。結果的に48時間吸収されている から、よく全域にわたって吸収されているということで、結果オーライのデータになっ ています。ここの検討をきちんとされて製剤設計をしたのかということです。多分デー タはかなり持っていると思うのですが、それが表に出てきていないというところがあり ます。  それからオメプラゾール投与です。Cmaxはかなり増加しているのですが、その場 合には一応AUCは変化がないのでバイオアベイラビリティは問題ないと言っているの ですが、Cmaxが増加すると口内乾燥という副作用に結び付きます。それについて何 も考察しないで、バイオアベイラビリティは変化がないからオーケーだと言っているの は、私にとっては理解できません。  いろいろ言いましたが、結局は結果オーライとしていますね。製剤設計の思想と流れ と、血中濃度と副作用、薬効と副作用との関係をどう考えているのか、そして結果的に 同じ用量になってしまったのはなぜなのかということが理解できなかったのです。  この医薬品は非常に安全で、徐放化して血中濃度が高くなっても問題ないだろうと思 いますが、副作用の点からは心配になります。それから投与期間が3か月、6か月と長 くなると累積の副作用の発現率がかなり増えてきますから、それに関して少し心配して いるところがあります。製剤設計を考えたとき、欠陥があってはいけないということで、 長くコメントさせていただきました。 ○永井部会長 ありがとうございました。 ○審査管理課長 まず本省からコメントさせていただきます。製剤設計の根本のところ が不明確という御指摘ですが、そこのところは十分理解いたしました。通常ですと臨床 試験、特に検証的な試験などを行う前にその辺の製剤的な話はきちんとしておくべきだ ろうと思います。機構における審査の段階でその辺の話があったかどうかというところ だと思います。  それから、徐放性製剤については日本でも一応開発の関係でのガイドライン的なもの は作っていただいていたと思いますので、その辺がどうだったかということです。細か い部分は、今機構の審査担当者が全部答えられるかどうか分かりませんが、製剤設計に ついて最初から徐放化をした理屈、理由といった精神的なところ、また臨床の開発の段 階と徐放化とのタイミング等について審査担当者から現在説明できる部分があればお願 いしたいと思います。もし今ここでの説明が難しいということであれば、後刻、先生の 方に報告させていただくということでよろしいでしょうか。 ○青柳委員 はい。 ○永井部会長 それでは機構からお願いいたします。 ○機構 今、審査管理課長からお話がありましたように、先生から頂いた項目を後ほど こちらで整理し、また申請者にも確認をして答えさせていただきたいと思います。  製剤設計については、機構の審査チームとしてもこの製剤の日本での開発に関しては 先生に御指摘いただいた問題もあるとは思っております。まず、海外では1日2回の速 放性製剤が開発され、Cmax、薬物動態の詳細等は後ほど確認させていただきますが、 得られている成績を見る限り、口内乾燥等の抗コリン作用に基づく副作用軽減のために、 やはりCmaxを下げていこうとの判断です。また、薬理効果については海外の用量設 定試験で解析を行っており、AUC等との関係があるだろうというインフォメーション も出ております。そういった点から徐放化をしたという海外の流れがございます。  一方、国内の開発は速放錠で行われていましたが、用量を確認する第II相試験の段階 で失敗しております。その当時は全般改善度を用いた臨床試験を行っておりまして、プ ラセボに対して1日1mg、2mg、4mgの用量が設定されており、プラセボに勝っており ません。  その間にも、海外では徐放性カプセルの開発がどんどん進んでおり、用量設定試験と されているTOCR-002試験で徐放性カプセルについても4mgが至適用量だという判断に なっておりました。そのようなインフォメーションがあり、会社としては日本での速放 錠の開発はやめて徐放性カプセルに切り換えるという方針になったと説明しておりま す。  機構の審査でも問題としておりまして、審査報告書に記載し、市販後にも十分検討し てもらうことになっていますが、日本人での用量の検討が十分なされず、海外での4mg という用量を持ってきて第III相試験を実施したために、このようなパッケージになった という経緯です。日本では、先ほど先生から御指摘があったような考え方で、速放錠の 開発、徐放性カプセルの開発という具合にステップワイズにやってきたものではないと 言えると思います。 ○新薬審査第ニ部長 追加させていただきます。資料概要のイ-22〜23のところに外国 における使用状況が載っております。右が速放錠で、承認の年月日を見ると分かるよう に、最初は速放錠で承認を取り、それから徐放性カプセルの承認を取って来たわけです。 徐放性カプセルの方で世界的に承認を取り始めた後に日本での申請ということになって いまして、イ-19の特徴のところで申請者も一番最初に「1日1回投与により」と言っ ておりますし、1日1回投与の薬剤の方が臨床現場で好まれていたということもあった と思われます。世界的に切り替わっている新しい製剤の方の開発になったという流れが あると言えると思います。 ○永井部会長 ありがとうございます。青柳委員、いかがでしょうか。 ○青柳委員 私は徐放製剤にすること自体には反対していないのですが、一番最初に疑 問に思ったのは、なぜ徐放性製剤が速放性製剤と同じ4mgになっているのかということ なのです。疑問を持って読んでみたら、結局は製剤開発の経緯が全然分からないと。普 通徐放製剤は必ず量が多いものですが、それが同じになっています。それで製剤設計の 流れが全然読み切れないのです。恐らくデータは持っているかもしれませんが、それを きちんと出してくれないと分かりません。日本の徐放製剤の設計ガイドラインは20年前 に作ったもので非常に古いのですが、そのガイドラインにさえマッチした答えが出てい ないのは問題ではないかということで一応指摘させていただきました。それをきちんと 述べておかないと、後でこれを見た場合ちょっとまずいのではないかと思います。 ○永井部会長 この点に関していかがでしょうか。 ○審査管理課長 御指摘のものでまだ回答し尽くせていない分については、後ほど個別 に御報告することで御了解いただいたものと理解いたします。 ○永井部会長 はい、谷川原委員。 ○谷川原委員 青柳委員がおっしゃったところで、私も幾つか疑問に思っているところ もありましたので、もし後日追加の情報を頂けるのでしたら私どもにも頂戴したいと思 います。よろしくお願いいたします。 ○審査管理課長 承知いたしました。 ○谷川原委員 新たな質問をお伺いします。審査報告書の中で、日本人における用量設 定が不十分だということは書かれているのですけれども、確かに海外は超音波で測定す る薬力学試験でプラセボに対して明確に実薬群の有効性は明らかになっていますが、第 II相で日本で行われた方は、主要評価項目は「排尿日記」ということで、その結果プラ セボと実薬群とで差がないという結果になっています。こういう結果があって、結局外 挿可能と判断された根拠はどこにあるのですか。 ○機構 先生に御指摘いただきました試験は、全般改善度で実施した速放錠の用量設定 試験の方になるかと思います。 ○谷川原委員 第II相試験というものですか。 ○機構 速放錠の国内用量設定試験(OATA-023:ト-1)です。こちらに関しては速放錠の 情報ですので、機構の審査としては参考情報として用いております。ブリッジング試験 として評価したものは、日本と韓国共同で実施されました第III相試験(URO-025:ト-4) になります。同様な試験デザインの海外試験におけるプラセボと実薬との比較に基づい て評価いたしました。 ○谷川原委員 審査報告書の図1に第II相で並べて書いてありますが、よく見るとこれ は製剤が違うのですね。評価のエンドポイントが違うから、これが特段の比較の対象で はないということですか。 ○機構 はい。 ○谷川原委員 ありがとうございました。ニ番目ですが、韓国と日本との比較という部 分が臨床試験や薬物動態の方でも議論されているのですが、いわゆるICH三極以外の リージョンに入る韓国のデータというのは、こういう場合はどのように位置付けて考え られているのですか。 ○機構 この品目については韓国にGCP査察に行っております。幾つかの施設に行っ ておりまして、GCPに関しての検討を行った上で、日韓の成績を併せて、また、日本 人での成績について評価し、最終的にこういった結論となっております。 ○谷川原委員 分かりました。今までと取扱いが違うデータが出てきましたので、その 背景をお伺いしたかったのですが、実際に査察に行かれてデータの信頼性も確認された ということですね。そういうことをすれば、これからICH三極以外のリージョンで得 られたデータも使えるという判断でよろしいのですか。 ○審査管理課長 アジアンスタディみたいな話もだんだん動いておりますので、それで よろしいと思います。ただ、日本と韓国で行われた第III相試験が正式に評価データとし て出てきたのは今回が初めてだそうです。そういう意味では、余り見たことがないデー タの形だというのは、先ほどの谷川原先生の御指摘のとおりでございます。 ○谷川原委員 今まで前例がなかったものですから質問させていただきました。  もう一つ別のことです。副作用の一つでQT延長に与える影響が一部書かれておりま して、非臨床試験でも報告され、臨床試験でも報告があったと。先ほどの添付文書の「過 量投与」でも、「過量投与の際にQT間隔の延長が観察された」という記載があるので す。昨年の9月に出たE2Eの考えにのっとってみると、カテゴリー的にはポテンシャ ルなリスクとして考えられるのではないかと思うのですが、これに対して審査側がどの ように評価されて、具体的に何か特段の市販後のアクションプランがあるのか、それと も通常の使用成績調査の中の自発報告として受けていくことになるのか、市販後の問題 も含めてどのようにお考えなのでしょうか。 ○審査管理課長 審査報告書では53〜54ページにかけて記載があるようですが、今の御 指摘について総合機構の方で追加の御説明を頂ければお願いします。 ○谷川原委員 「十分な注意喚起を行う必要があると考える」ということですが、今で もそのお考えには変わりないということでしょうか。添付文書のどこに書かれているか というと、使用上の注意の「慎重投与」の第七番目にあります。こういうステージにあ る副作用についてどの程度注意喚起するかというところも考えなければいけないと思う のです。 ○新薬審査第ニ部長 重要な基本的注意の(5)として、「QT延長症候群患者」につい ての項目を起こしております。 ○谷川原委員 そうですね。それから最後の方に、市販後の計画で主に日本人でデータ の少ない2mgの投与例に関して安全性、有効性等を集めるといったような書きぶりがあ るのですが、当然こういう項目もその中に観察項目として調査データが入るわけでしょ うね。 ○新薬審査第ニ部長 報告書の62〜63ページにかけて書いてありますが、63ページの (3)にありますように、使用成績調査では、心疾患を伴う患者における副作用発現状況も 情報収集する項目としてあります。循環器系は重点項目として調査すべきものと考えて おります。 ○谷川原委員 分かりました。では重点項目として調査していただけるということです ね。ありがとうございました。 ○永井部会長 QT延長関係で「Brugada型症候群」というのが最近注目されています。 必ずしもQTは延びていなくて突然不整脈を起こすナトリウムチャンネルの異常なので すが、これに対する影響はどうなのでしょうか。Brugada型症候群は結構多いのです。 1A3の抗不整脈薬を投与中の方には慎重投与ということですから、たぶんナトリウム チャンネルにも影響を及ぼす可能性があると思います。その辺は後ででも結構ですから、 情報を提供いただければと思います。 ○審査管理課長 調べまして、もしあれば報告させていただきたいと思います。 ○岩崎委員 男女の性差があると思うのですけれども、ベースライン値がかなり違って いると思うのですが、そういうのはありませんでしたか。 ○新薬審査第ニ部長 それも確認いたします。 ○永井部会長 いろいろ御意見が出ておりますが、いかがでしょうか。今の点につきま しては後日御報告いただくということで、経緯はともかく結果はよかったということな のです。添付文書の注意等は少し手直しも必要かと思いますが、取りあえず承認可とい うことで分科会に報告させていただいてよろしいでしょうか。それでは、そのように進 めさせていただきます。ありがとうございました。  次に議題4、ボスデール内用液の製造承認について説明をお願いいたします。 ○機構 それでは議題4、資料4、医薬品ボスデール内用液の製造承認について、医薬 品医療機器総合機構より御説明いたします。  ボスデール内用液10及びボスデール内用液10協和(以下、本剤)は、MRI用経口消 化管造影剤でありまして、250mL中に有効成分として塩化マンガン四水和物を36mg(マン ガンとして10mg)含有する内用液剤であります。  膵臓や胆道系疾患の診断のためにMRI検査を行う際には、T1強調画像で対象臓器 の位置を同定し、次にMRCP(磁気共鳴胆道膵管造影)を実施いたします。MRCP実 施の際は、T2強調画像で膵液、胆汁が白く造影されますが、胃、十二指腸等の消化管 内の消化液等も白く画像化され、胆嚢、胆管、膵管と重なるため、これらの臓器の識別 が困難になるという問題があります。本剤は、T2強調画像で陰性造影効果を示し、経 口投与によって読影上不都合な胃、十二指腸、空腸といった消化管を黒く画像化するこ とにより、胆嚢、胆管、膵管の描出能を向上させ、膵、胆道系の診断を容易にすること ができます。  本申請の専門委員としては、資料9にあります6名の委員が指名されております。  本剤にはマンガンが10mg含まれておりますが、マンガンは日常の食物や飲料水から摂 取されている金属であり、日本人の食事摂取基準(2005年度版)におきましては、成人に おける1日の上限は11mgであること、及び本剤が診断薬であり、通常1回のみの投与で あることから、特段の問題はないと判断しております。非臨床試験でも、大きな問題は ありませんでした。  次に、臨床試験成績等について説明いたします。有効性に関して、後期第II相試験に おいて至適用量として設定された塩化マンガン四水和物36mgについて、第III相試験で投 与された106例での投与後撮像の方が投与前撮像よりも優れているとされた率は90.5% で、本剤の有効性は認められたと判断しております。一方、安全性については軟便、下 痢などの軽度の副作用は認めるものの、重篤な有害事象及び副作用はこれまで認められ ていません。  専門協議では、委員から本剤が腹腔等に投与されないように注意すべきとの指摘があ り、機構は申請者に対し、経口投与以外に投与してはならないことが明確になるよう添 付文書の記載の修正を求めております。  以上のような検討を行った結果、効能・効果を「磁気共鳴胆道膵管撮影における消化 管陰性造影」と整備した上で本申請を承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会 で審議されることが妥当と判断いたしました。  本剤の再審査期間は4年とすることが適当であると判断しております。なお、本剤は 生物由来製品、特定生物由来製品には該当せず、原体、製剤ともに毒薬及び劇薬のいず れにも該当しないと判断しております。  なお、販売名につきましては類似名称のものが存在することから変更することが検討 されており、承認時には類似名称のないものに変更される予定です。薬事分科会へは報 告を予定しております。御審議よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。たまたまエンシュア・リキッドを飲んでいた 患者で、消化管が造影されたという経緯のようですが、いかがでしょうか。よろしいで しょうか。 ○土屋委員 些末なことですが、ブランド名がありながら会社名を書くという形での処 理が1社においてされていまして、93号通知との関係もありますので、名称変更をする ときには是非その辺も含めて御検討いただきたいと思います。  それから、これを見ますとわざわざ内用液が細くなっていて、もう少し目立つ記載に するのだという先ほどの話とは相反するデザインになっているかなということが気にな りますので、そういったところも含めて御注意いただきたいと思います。 ○審査管理課長 そこの点は注意して、今後の事務処理に活かしたいと思います。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。よろしければ承認可ということで分科会報告とさ せていただきます。ありがとうございました。  それでは議題5にまいります。アルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)のオーフ ァンへの指定について、医薬品医料機器総合機構から御説明をお願いいたします。 ○事務局 審査管理課から御説明いたします。議題5、資料5、アルグルコシダーゼア ルファ(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否についてでござい ます。先ほど資料の内容の説明のときにございましたが、諮問書の書換えがありました ので、本日は表紙だけ配付させていただきました。申し訳ございませんでした。説明は 元の資料5に基づいていたします。  右に「審査報告書」というタブがございます。本申請に関し、医薬品医療機器総合機 構が事前評価を取りまとめておりまして、対象者数、医療上の必要性について、及び開 発の可能性についての3点に基づき、希少疾病用医薬品としての該当性に関する事前評 価を行っておりますので御説明いたします。  名称はアルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)でございます。予定される効能・ 効果は、糖原病II型(以下「ポンペ病」)。申請者名がジェンザイム・ジャパン株式会社 でございます。本申請は平成17年12月16日に行われております。  1.対象者数についてですが、本申請の対象疾患であるポンペ病について二つの資料を 基に概算しております。一つ目は、特定疾患対策研究事業「ライソゾーム病の病態の解 明及び治療法の開発に関する研究班」による全国疫学調査(200床以上の医療機関を対象 にした調査)において29例の患者が報告されております。また二つ目に、民族的に日本 人に近い中国人の発症率(5万人に1人)を参考にした場合、2,400人程度と推定されま す。以上ニ点から、数値の開きはございますが、本邦の患者数について正確な推定はで きないものの、いずれにしても希少疾病用医薬品の指定要件である「国内対象患者数5 万人以下」を満たすものと判断しております。  2.医療上の必要性についてですが、対象疾患であるポンペ病は常染色体劣性遺伝によ り全身の組織細胞のα-グルコシダーゼが欠損する遺伝病です。発症年齢、罹患臓器の症 状の程度及び進行速度により、乳児型、小児型又は成人型の三つの類型に分類されます が、そのすべての型で、多くの患者が心不全や呼吸不全を呈し死に至ることから、生命 に重大な影響がある疾患と判断されます。また、現在のところ本邦にはポンペ病を対象 とする医薬品として承認されている医薬品は存在せず、苦痛緩和や対症療法が中心に行 われている状況にあります。さらに、これらの療法では病状の進行を抑えることができ ません。以上より、対象疾患の重篤性及び既存の治療法として十分なものがないことか ら、医療上の必要性があるものと判断いたします。  3.開発の可能性についてですが、本剤は欠損する酵素を補うことを目的として開発さ れた遺伝子組換え製剤であり、有効成分である酵素が活性を保ったまま標的細胞組織に 適切に分布するのであれば、薬理学的に有効性を示すことが期待されます。実際に、乳 児型の患者を対象とした海外臨床試験において、生存期間及び人工呼吸補助なしの生存 期間の評価項目において、既存対照群(ヒストリカルコントロール群)に比較して顕著な 延長が見られ、有効性が示唆されております。以上より、民族差、至適用量、長期予後 等について不明な点が多いものの、本剤の開発の可能性はあると判断しております。  なお申請者は、海外の他試験において日本人への適用例があることから、国内での追 加の臨床試験を行わないこととしていますが、国内にも少数例ではあるものの患者が存 在することから、承認を取得するまでの間に安全性等を確認するための日本人を対象と した臨床試験の実施可能性について、今後検討することが適当であると考えております。  以上、オーファン指定のための3要件、対象患者数の観点、医療上の必要性の観点、 今後の開発の可能性の観点から考えて、希少疾病用医薬品としての要件を満たすという ことで判断いたしました。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは御意見、御質問をお願いいたします。  同じような疾患でファブリー病に対する酵素補充療法が行われていますが、これで何 か問題が起こったという報告はございますか。 ○審査管理課長 特には聞いておりません。現在、酵素補充療法は3種類ぐらい、ゴー シェ病とファブリー病、その他幾つかあります。やはりゲノムとかこの辺の研究がかな り進んできて、遺伝子の欠損や、人によっては酵素の活性が残っているケースもあった り、個人個人によりまして病気のシビアさの現れ方は違うようですが、そういう薬剤の 開発がかなり進んできて、日本からも海外に行って治験に参加するようなケースも出て きていることもあるようです。ポンペ病の薬自体は欧米で申請はしておりますが、まだ 世界のどこでも承認は下りていない状況です。 ○新薬審査第一部長 若干補足をいたしますと、こうした酵素補充療法の薬剤はかなり の高分子でして、抗原性の問題、打った後間もなくのアナフィラキシーショック等の反 応が問題になっております。実際に、決して低い頻度ではなくそういう報告が出ており ますので、十分な対応ができる環境で使われるべきだと言われているのが現状です。た だし、これらの疾患はほかに治療の手だてがないということで、患者も十分理解した上 で治療が行われているというのが実情のようです。 ○永井部会長 委員の先生方はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ 指定可ということで分科会報告とさせていただきます。どうもありがとうございました。  それでは、報告事項として議題が二つございます。説明をお願いいたします。 ○事務局 報告事項の議題1、希少疾病用医薬品の取消しについて資料6に基づいて報 告させていただきます。1枚おめくりいただくと今回指定を取り消す品目がございます。 名称が「レボカルニチン」、対象疾病が血液透析患者におけるエリスロポエチン抵抗性 腎性貧血、申請者が味の素株式会社です。本剤は平成15年7月に希少疾病用医薬品とし ての指定をさせていただきました。3ページ以降に指定及び取消しに至る経緯がまとめ てありますが、平成15年7月の指定後、第II、第III相試験において本剤を24週間投与 した後のヘモグロビン増加量を主要評価項目として有効性(貧血改善効果)を調べたとこ ろ、本剤の有効性が認められませんでした。会社としては、これ以上開発を行ったとし ても承認申請に足るデータの収集は困難であると考え、この品目の開発を中止すると判 断し、希少疾病用医薬品試験研究中止届書が提出され、所定の手続きを経て今回の指定 手続で取消しに至ったということでございます。以上でございます。 ○事務局 優先対面助言品目指定の結果について資料7で御報告いたします。優先対面 助言品目指定制度というのは、治験品目の中でも医療上の有用性が特に高いと期待され る品目について優先的に対面助言を行い、その開発の迅速化を図ろうというものです。 その品目は優先審査品目の選定の考え方に準じまして、指定の時点までの国内外の試験 に基づいて、その疾患の重篤性、医療上の有用性を総合的に評価して決めていきます。  今般、当部会の関連品目として1品目を指定いたしました。指定品目は田辺製薬株式 会社のインフリキシマブ(遺伝子組換え)、商品名は「レミケード」です。本剤は抗ヒト TNF-αキメラモノクローナル抗体であり、本邦ではクローン病及び関節リウマチの適 応で既に承認されております。潰瘍性大腸炎の適応につきましては、米国で2005年9月 15日に承認されており、EUでは現在承認申請中です。  指定審査結果の概略ですが、疾患の重篤性に関して、「潰瘍性大腸炎」の中でも既存 の治療で効果不十分なものについては手術以外に有効な治療方法がないことから、生命 に重大な影響がある疾患に該当すると判断いたしました。  医療上の有用性については、既存治療では効果不十分あるいは不忍容であった患者を 対象とした海外臨床試験において高い有効性が認められていることから、既存の薬剤に 比べ優れた有効性が期待されると判断いたしました。  以上より総合的に判断して、本剤の有用性は既存の薬剤に比べ優れることが期待され ると判断し、本品目を優先対面助言品目として指定したものです。以上でございます。 ○永井部会長 委員の先生方から何か御質問はございますか。よろしければ、御報告い ただいた事項について御確認いただいたということで進めさせていただきます。本日の 議題は以上ですが、何かございますでしょうか。 ○事務局 次回の日程について一言御案内申し上げます。次回の第一部会は、既に御案 内のように、2月23日木曜日の午後2時から開催させていただきますので、よろしくお 願いいたします。以上でございます。 ○長尾部会長代理 青柳委員からの徐放製剤の話ですが、徐放製剤にする理由は二つあ って、一つ目はピークを下げて副作用を減らすためです。これは吸収がいいものについ てはよくやる手だと思います。二つ目は持続を非常に長くしようということで、この場 合は多分錠剤の量は増やすのです。ピークを抑えるときには必ずしも量は増やさないケ ースが結構あって、私も昔経験があるのですが、ハルナールでもそういう製剤になって います。今回のh-63を見るとその前後ではピークがすごく抑えられているので、恐ら く副作用を軽減するためにやられたのかなと思います。開発している方はもっときれい に説明されると思います。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。それでは終わらせていただきます。本日はどうも ありがとうございました。                                   ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 1 -