06/01/25 今後の労働時間制度に関する研究会 第17回議事録 第17回今後の労働時間制度に関する研究会          日時 平成18年1月25日(水)          10:00〜          場所 厚生労働省専用第21会議室 ○諏訪座長 定刻となりましたので、ただ今から「第17回今後の労働時間制度に関す る研究会」を開催します。お忙しい中お集まりいただき、大変ありがとうございます。  さて、前回は報告書案についてご議論をいただき、委員の皆様から様々なご意見をい ただきました。そこで、これを踏まえて事務局に報告書案の修正をお願いしました。ま ず、前回の報告書案から変更されている点について、事務局から簡単に説明をお願いし ます。 ○安藤監察官 資料の変更点について説明します。まず、全体にわたり表現の適正化を 図っている所があります。例えば副詞で十分にというフレーズがあったわけですが、そ れについては全体をもう1度再精査しまして、文章の適正化を図っています。そこにつ いては説明を省略させていただき、主な修正点について説明します。  まず、本日提出した資料の8頁の「新たな労働時間制度の在り方」以降の所で、12頁 以降の「自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価され ることがふさわしい労働者のための制度」の所について、前回委員の皆様方からご意見 をいただいたところについて、大きく文案の構成自体も変えている所がありますので、 その点を簡単に説明します。  13頁の新しい自律的な労働時間制度の要件の(1)勤務態様要件@)ですが、ここについ ては前回自己の業務量について裁量があることについてという意味合いについて、ご議 論がありました。そこでまず@)の要件については、職務遂行の手法や労働時間の配分 について、使用者からの具体的な指示を受けず、かつ自己の業務量について裁量がある ことといった形で、自己の業務量について裁量があることと明記した上で、その趣旨が 分かるような形で本文を書きました。  13頁の真ん中辺りから(2)本人要件といった形で始まりますが、そのうちの@)一定水 準以上の額の年収が確保されていることという部分については、なぜこの要件が必要な のかを明確にする意味合いから、年収額の水準が相当程度高いことは、本人の同意が真 意によるものである、そして、労働時間規制による保護を与えなくても、自律的な働き 方を決定できると考えられるための重要な要素となるため、一定水準以上の額の年収が 確保されていることが必要である、という形で書いています。15頁の導入における労使 の協議の合意では、例えば純粋持株会社の事例を入れています。  また、前回大きな議論があった18頁以降の労使の協議の役割の所については、前回の ご意見を踏まえ、具体的な在り方を記述するのではなく、新しい自律的な労働時間制度 における労使の協議においては、対象労働者の具体的な範囲の画定などを行うこととな るため、労働者の意見を適正に集約するとともに、労働者の交渉力を補完することによ り、労使が実質的に対等な立場で協議を行う仕組みを担保することが重要であるという 形で書きました。  また、なお書きの所で具体的な在り方については、現行制度における労使の協議の在 り方も含め検討することが必要であると考えられるとしました。  あとの部分については、いろいろと文案を直す過程でご意見を出された委員の方々と も相談し、適宜訂正をしています。簡単ですが、以上で終わります。 ○諏訪座長 それでは、これについてご質問、ご意見をいただきたいと思います。報告 書案の内容は大変多岐にわたったものですので、前回の研究会で議論が足りなかったと 思われる点や言い逃した点がありましたら、どうぞご自由にご意見をいただければと思 います。 ○荒木様 1つは細かい点、もう1つは大きい点ですが、15頁の真ん中辺りに、「その 際例えば、純粋持株会社のようにほとんどの労働者が企画・管理業務に従事している場 合」のあと、「対象労働者等の割合の上限を設けることが不適切と考えられるケースもあ る」とありますが、これは要するに、新たな自律的労働時間制の比率の要件を定めるの が不適切な場合があるという趣旨だと思われます。新たな自律的労働時間制と企画管理 業務はイコールではなく、ここで問題としているのは、新しい制度の適用対象者がほと んどであるような持株会社もあるので、その点に留意すべきだ、ということですので、 表現としては、「ほとんどの労働者が新たな自律的労働時間制の要件を満たしている場合 など」とする方が適切ではないかと思います。  もう1つは、19頁の下に太字で、「要件・手続きに違背があった場合の取扱い」とい う項目がありますが、現在書かれているのは、「新しい自律的労働時間制度の運用に当た り、法律で定める要件または手続に違背があった場合の民事上、労働基準法上の効果に ついては、次に整理することが適当である」として、新しい制度の違反があった場合に は、いずれも法32条等違反となるという整理をしています。  この考え方には2つあると思います。一つは、新しい制度の要件を満たしていない場 合、実労働時間、つまり労働基準法32条の世界に戻るという考え方で、戻る場合には実 労働時間の世界ですから、実際の労働が8時間、40時間を超えているかというのが、次 に吟味されなければいけなくて、当然32条違反があるわけではない。したがって、新し い自律型労働時間制の適用がなければ、実際に法定労働時間以上の労働がなされたかど うかという吟味があって、そして初めて32条違反となるという書き方をするのが1つで す。  もう1つの考え方は、あとの方で割増賃金の所にも書いてあるように、新しい自律型 労働時間制度は、使用者も労働時間を把握しない、本人に委ねるとすると、実労働時間 が法定労働時間を超えたかどうかが分からない。そこで、もう32条の世界に戻すのでは なくて、新しい制度、例えば新条文が41条の2だとすると、その条項違反の中で完結さ せる。即ち、新しい労働時間制度の違反に対して、32条に相当するような罰則を設ける。 割増賃金もあとで書いてあるように、いわばこの時間働いた、あるいはこの時間の割増 賃金請求権が発生したとみなしてしまう、そういう自己完結的処理に徹し、32条とは別 に処理をする、という考え方があると思います。  そのいずれをとっているかがよく分からないのです。新しい制度の手続違反等があれ ば当然に32条違反になるというのは、両方の考え方がちょっと混在しているような気が しますので、これはいずれかの整理をした方がいいのではないかと考えています。 ○諏訪座長 それは、どちらかにここで決めるのではなくて、そういうことがあるとも う少し分かるように、報告書の中に書かれている方がいいという意味ですね。 ○荒木様 そうです。 ○諏訪座長 普通に読むと、ここは32条等違反となっているので、等の中にそういう意 味が含まれていると強弁すればできなくはないでしょうが、もうちょっと分かりやすく 書いた方がいいというご趣旨だと思います。 ○水町様 私はこれまでの議論では、その点は前者の方だと思っていまして、新しい制 度の要件を満たさない場合には、原則に実労働時間の問題に戻って37条違反で、32条 違反の問題が生じたり37条の問題が出てくる。もし後者の制度を選択するとなると、ま たかなりきちんと制度設計をしないと、そこで非常に大きな問題が生じる可能性がある。 実際上はとにかく新しい労働時間制度に入れておいて、その場合は別の罰則と別の効果 ですが、効果の決め方によっては、例えば1千万円とした場合に、実際上は何時間働い たかはチェックしないですが、違反があった場合には1,100万円にしますと決める場合 には、もし32条や37条の世界に戻った場合は、実労働時間で計算するともっとすごく 働いていて、25%、35%の計算にすると2,000万、2,500万の世界になるかもしれない ですが、そちらに入れておいて、法違反があっても1,100万円で済む世界をつくるには 制度設計をもっとちゃんとしないと大変なので、私はずっと前者の方だと思って議論を していたので、もし後者の選択があり得るとすれば、それはまた非常に大きな議論です し、そういう前提で私は議論をしていなかったということを言っておきます。  もし、前者の書き方にするとすれば、20頁の上の所が法32条違反等の問題が生じる というようになるのかなと思います。 ○諏訪座長 ほかの委員はいかがですか。 ○山川様 私も今水町委員の言われた前者の理解だと思っています。前回に問題になっ たみなしと法違反の場合の金銭支払が割増賃金に代わるものとみなすという取扱いです と、それは別の法律効果を別の規定で定めることになるので、後者のような考え方の方 が、おそらく整合性があり得ると思います。  もしそうでないとすると、32条違反の原則に戻ることになるので、おそらく前者の考 えの方が比較的多かったのではないかと思います。あとは書き方の問題で、おそらくこ の趣旨は今言われましたように、実労働時間で計算した場合には32条違反になり得ると いうような趣旨で書かれているのかなと思います。 ○諏訪座長 それでは、ここは考え方が2つあることがもう少し分かるようにした上で、 全体のこれまでの議論の流れを反映した文章にしたいと思いますが、それでよろしいで すか。 ○水町様 考え方が2つあるということは、場合によってはこの報告書が、後者の制度 だと解釈されて後者の制度設計につながることもあり得る、ということですか。 ○諏訪座長 先ほど申し上げましたように、そこの部分に関してはどちらかでないとい けないという議論は、まだしていないですね。 ○水町様 後者だと大変だというので、前者の制度設計の問題をいろいろ議論してきた わけなので、前者ではなく後者の制度設計をすることになれば、それはまた新しい議論 が必要で、この研究会では、その点についての合意は得られていないと理解しています。 ○諏訪座長 この点に関しては、どちらかという議論はしていないと思います。32条に なったときにどうなるかという議論はしましたが、32条の違反の問題として処理しなけ ればいけないという議論はしていません。  同じように今荒木委員がご指摘のような方向で、処理をしなければいけないという議 論もしていないと思います。したがいまして、そのような考え方がありますが、これま での議論の流れを反映した文章で修文をしたいと思います。 ○水町様 具体的な修文は、どういう形になりますか。 ○諏訪座長 修文ですから、そんなに大きくは変わらないだろうと思います。 ○松井審議官 今荒木委員が言ったように、実労働時間が把握できないために、新たに 32条違反に相当するような新しい枠組というものも考えられるがとか、それを少し入れ て流すなど、検討したのはこちらの方ですから、そういう整理ではないということを明 示すれば、よろしいのではないでしょうか。全く新しく考えるということもありますが、 このように考えましたということで。いずれにしても整理をはっきりということで、荒 木委員は言われたと思います。 ○水町様 何とかするがという留保は入るとしても、ここに残っている文章の流れとし てはどうですか。 ○松井審議官 変わらないと思います。 ○水町様 例えば20頁の法32条等違反となるという20頁の一番上の行ですが。 ○松井審議官 ここが今言われている法32条違反等の問題が生じるという書き方でず っと通してきてはいます。 ○水町様 この流れは、荒木委員がおっしゃった前者の方の考え方に乗った考え方です か。 ○松井審議官 整理されていることになるのでしょうか。 ○水町様 そのあとのポツで、前回はみなしや推定が入っていましたが、それが抜けて、 みなしなのか推定なのかがはっきり分からないようなよりシンプルな形の文章になって いますが、前回までの流れを考えて、荒木委員がおっしゃった前者の枠組だとすると、 ここは32条や37条の枠組で考えた場合にはみなしの効果が生じるというのは、非常に 理論的に大きな問題がありますので、この流れの中では、基本的にはみなしという形に すると問題があることは、1つ申し上げておきたいと思います。 ○荒木様 先ほど2つの考え方があると言ったのは、後者を読むと前回は推定という整 理でしたが、そういう表現にはなっていない。その考え方を貫徹すると、後者の考え方 で書かれているのではないかと私は読みました。 ○水町様 そこがちょっと。 ○荒木様 ですから、その点で問題提起をしたわけです。このペーパーを客観的に読む と、後者の考え方のように読める、しかし、基本的には実労働時間に戻すのであれば、 実労働で何時間労働したかを実証して、それに従って通常の法的効果が発生する。その どちらかを整理しなければいけないのではないか、そういう趣旨で発言しました。 ○諏訪座長 ほかの委員からは、何かございますか。 ○山川様 後者の考え方については、今審議官がおっしゃられたようなことで整理する とすれば、これまでの議論に、むしろ整合的だと思います。  20頁の1行目に、適用除外の効果が認められずとありますので、適用除外の効果が認 められないということは適用されるという前提での話になって、もし独自の違反を考え るとすれば、適用除外は除外としたままであるということになるかと思いますので、前 者のように読んだ上で、審議官のおっしゃられたことが書かれるとすれば、むしろ全体 として整合的なものになる感じがします。 ○松井審議官 もう1点、水町委員のご指摘と荒木委員の話ですが、先ほど言いました ように、実労働時間が把握できないことについて、新しい32条相当のような枠組を作る ことも考えられるが、と少し入れて全体を流していくと、21頁の(2)に不適正な取扱いが なされた場合における労働に従事したと考えられる時間、ここは明確に逆に、労働に従 事したと推定される時間をと書いておけば、推定方法ということで既存の法律に戻ると いう枠組でずっと書いたというイメージが強くなると思います。その代わり、全く改め るという世界は別に考えますがとすれば、調和できます。ここで両方とも読めるように ぼかすことが、ひょっとして解釈の錯綜ということになれば、整理できると思います。 ○諏訪座長 今審議官は21頁の(2)を考えられると曖昧な書き方になっている所を、推定 されると変えたらどうかという新たな提言をされましたが、この点について委員の皆様 はいかがですか。 ○荒木様 32条の世界に戻るのであれば、推定と書く方が理論的には整合性があると思 います。 ○諏訪座長 前回にもう少し考えられると大議論した部分を、議論の流れに反映したよ うな書き方に少し変えるということで、修文したいと思います。  ほかにご質問、ご意見はございますか。 ○西川様 ちょっと細かいことですが、19頁の(6)適正な運用の確保、苦情処理措置 の最後の方に、「企画業務型裁量労働制の苦情処理措置の運用実態や問題点を踏まえて、 企画業務型裁量労働制における見直しの方向性に沿って検討を加えるべきである」とい う文章がありますが、この企画業務型裁量労働制における見直しの方向性というのは、 具体的に何か実際に見直しが行われているのかどうか。もしそうでなければ、今後この 新しい制度が導入されることによって、企画業務型裁量労働制の比重は下がってくると 思いますので、企画業務型裁量労働制における見直しの方向性に沿ってという文章は、 もういらないという気もしますが、いかがでしょうか。 ○大西監督課長 これを記述したのは、実は22頁に現行の裁量労働制との関係というこ とで、企画業務型裁量労働制については廃止することは考えられるが、一部組み直して 残すことも考えられるという議論があります。これは22頁に記述があるという注意的、 指示的に19頁に書き起こしたという趣旨ですので、19頁の文章そのものが何か意味を 持つというよりも、別の所に書いてある見直しの方向性に沿って検討すればいいと。廃 止するようになったのは、それはそれで流れがいくということを、ちょっと注意的に書 かせていただいたという趣旨です。 ○西川様 それなら分かりました。 ○諏訪座長 ほかによろしいですか。それでは、これまで17回にわたり研究会を開いて きましたが、大きな枠では皆様の議論がほぼ収斂をして、このような形の報告書案にま とまりました。  ただ、一部分趣旨をはっきりさせた方がいい、あるいは文章の書き方を工夫した方が いいというご指摘もいただいたので、その点についてはもう1度見直しをして、その限 りで修正をした上で、最終報告としたいと存じます。  そこでご提案なのですが、以上のような条件の下で、可能でしたら私の方で事務的に 対応させていただければと思いますが、ご一任をいただけますでしょうか。                  (異議なし) ○諏訪座長 それでは、そのように処理をさせていただきます。  朝早くからお集まりいただいたのに、あまりにも早く終わるのは恐縮ですが、これで 今後の労働時間制度に関する研究会を終了します。ここで審議官の方からご挨拶がある ということですので、お願いします。 ○松井審議官 本来ならば局長からご挨拶するべきですが、所用のため出られませんの で、私の方から申し上げます。  今後の労働時間制度に関する研究会においては、昨年4月から17回にわたりまして、 自律的な働き方に相応しい新しい労働時間制の在り方や所定外労働の削減、あるいは年 次有給休暇の取得促進といったことについての具体策について、非常に多岐にわたる議 論をいただき、大変貴重なご意見をいただいたと思います。委員の皆様にはご多忙の中、 事務局により気ままで勝手な時間帯を設定して、本当にご迷惑をかけたと思いますが、 今日このような形で報告書をとりまとめさせていただき、本当にありがとうございまし た。  今後の運用ですが、報告書の中にもありますように、審議会で実際関係労使の方々に 研究会の成果をぶつけて、実現のための具体策をご議論いただくことにしたいと思いま す。  具体的には、労働政策審議会にお諮りしたいと思っていますし、併せて報告書の中に ありましたように、できれば契約法制などと一体のものとしてご議論をいただくのがい いのではないかと思っていますので、ここで出していただいた意見が十分反映されるよ うな審議会運営ができれば、それを労使の方にお願いしていこうという形でやっていき たいと思います。  いずれにしましても、皆様方には本当に長らくご協力をいただき、ありがとうござい ました。今後ともこの労働時間制度を始めとして、労働行政全般についてのご理解、ご 支援を引き続きお願いしたいと思っていますので、今後のお願いということも申し上げ ながら、本日の御礼にさせていただきたいと思います。本日は本当にありがとうござい ました。 ○諏訪座長 今後の日程ですが、最終報告書については、このあと時期を見て新聞発表 させていただくことにしたいと思っています。是非事務局の方には、この研究会の提言 及び趣旨の理解を得て、実現できるようにいろいろご尽力をいただければと思っていま す。  それでは、参集者の皆様には大変ご多忙の中を熱心にご参集いただき、かつ高度な議 論を展開していただき、心よりお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。                    照会先:厚生労働省労働基準局監督課調整係                    電話 :03-5253-1111(内線5522)