06/01/19 第2回運動所要量・運動指針の策定検討会議事録 第2回運動所要量・運動指針の策定検討会議事録          日時:平成18年1月19日(木)/10:00〜12:05          場所:経済産業省別館9階第944会議室  中野室長補佐 ただいまより、第2回運動所要量・運動指針の策定検討会を開催させ ていただきます。  本日は、芝山委員、下光委員、戸山委員、吉池委員の4名から欠席の御連絡をいただ いております。  また、藤村委員に関しましては、30分ほど遅れられるということで事前に御連絡をい ただいております。  次に、本日の配付資料の確認をさせていただきたいと思います。  まず、議事次第のホッチキスどめのものがございますが、その中に、委員の名簿、座 席表等が入っております。そして、資料1−1は運動所要量ワーキンググループの進捗 状況の報告について、資料1−2は運動基準についての冊子、資料2は運動指針小委員 会の進捗状況の報告でございます。そして、参考資料1は前回の第1回目のこの検討会 において資料12として出しました策定方針について、参考資料2は運動指針の小委員会 の方で前回資料としてお出しした骨子案を参考としてつけさせていただいております。  以上でございますが、もし不足・落丁等がございましたら、事務局までお申しつけい ただけますでしょうか。  よろしいでしょうか。  それでは、以後の議事に関しまして、富永座長にお願いをいたしたいと思いますので、 よろしくお願いいたします。  富永座長 それでは、ただいまから議事を進めたいと思います。  今日は議題が2つございます。最初の議題は、運動所要量ワーキンググループの進捗 状況についてでございます。これにつきましては、まず最初に事務局から簡単に御説明 をいただきまして、引き続いて、担当の田畑委員から詳細な御説明をお願いしたいと思 います。では、事務局から説明をお願いいたします。  中野室長補佐 それでは、引き続きまして、座って御説明をさせていただきます。資 料1−1と資料1−2の前半部分に関しまして御説明をさせていただきますので、ごら んいただければと思います。  まず、資料1−1でございますが、これまでの検討状況についての進捗状況報告とい うことでまとめさせていただきました。  まず、1の検討事項というのは、「最新の科学的知見を踏まえた運動所要量の見直し」 ということで、前回の資料の中でお出しいたしましたこのワーキンググループでの検討 事項ということで決定をいたしました内容でございます。  そして、2の委員の構成につきましては、次のページにございますとおりのメンバー で御意見をいただきながら、今回は非公開という形で進めさせていただいておりますの で、ごらんください。  そして、戻りまして、3のこれまでの検討状況でございますが、第1回目を9月16 日に開催しまして、11月2日、11月14日ということで3回、ワーキンググループの先 生方から御意見をいただきまして、それでその検討結果ということで、今回御提出させ ていただいております資料1−2という形で策定をさせていただいて、本日御意見をい ただきたいと思い、提出させていただいております。  続きまして、資料1−2でございます。最初のページの概要案の部分に関しまして私 の方から御説明をさせていただきまして、その後ろの報告書案のところからは座長であ る田畑委員に御説明をお願いしたいと思っております。  「運動所要量」という前回の名前から、今回は少しネーミングを変えまして、「健康 づくりのための運動基準(2005年)〜身体活動・運動・体力〜」と表題を変更させてい ただいております。このたび、この運動所要量を見直しまして、身体活動量と運動量の 基準値を設定したということで、具体的にわかりやすく考えた場合には、身体活動を主 体として健康づくりをする人については毎日8,000〜1万歩ぐらいが目安であって、運 動を主体とする人ではジョギングやテニスを毎週35分、速歩では1時間ぐらいの目安、 一般の方々に対してはこういった語りかけがわかりやすいのかなということでまとめた ものを出しておりますが、その下でございますけれども、今回の報告書については8月 8日に設置したこの検討会で検討をした内容で、それに基づきまして、今回、平成元年 に運動所要量を策定しておりますが、それとの違いをここで書かせていただいておりま す。  そして、その1つ目としましては、内外の文献を精査した(システマティック・レビ ュー)上で、身体活動量と運動量、体力、最大酸素摂取量の基準値をそれぞれ示してい るということが1つ大きな違いでございます。  2つ目といたしましては、生活習慣病予防と筋力を含むその他の体力との関係につい ても検討したこと。  そういったことを主なものとして2つ上げてございます。  そして、今回のメインの数値ということで、3と4でございますが、健康づくりのた めの身体活動・運動量の基準値ということで、身体活動量に関しましては、23METs・時 /週ということで、強度が3METs以上の活動で1日当たり約60分、歩行が中心であれ ば先ほど言いましたとおり8,000〜1万歩。それとあわせまして、運動量として4METs ・時/週ということで、こちらも先ほどお示ししました例えば速歩で60分、ジョギング やテニスで35分ということで、今回のまとめをつくらせていただきました。  そして、前回の所要量でもございました最大酸素摂取量についての基準値ということ で、内外の文献を精査した上で性・年代別に出すということは前回とも同じですが、以 下の表のようなデータということで掲げさせていただいております。  そういうことで今回は報告書を出したわけですが、今回、「2005年」ということをタ イトルに入れた理由といたしまして、5にありますとおり、科学的知見というものも今 後一層蓄積されていくわけですので、できれば今後とも定期的に改定をしていきたいと いうことでまとめております。  概要案ということで、今後、最終的な報告を作るときには頭にこの紙をつけまして報 告をしていきたいと考えておりますので、まずは概要について事務局から御説明をさせ ていただきました。  以上でございます。  富永座長 ありがとうございました。御意見がございましたら、後ほど田畑委員の御 説明が終わりましてから一括してお受けしたいと思います。  それでは、引き続きまして、田畑委員、お願いいたします。  田畑委員 運動所要量ワーキンググループの座長をさせていただいた国立健康・栄養 研究所の田畑でございます。今、中野補佐からお話がありましたが、その後についての 実務的なことをお話しさせていただきたいと思います。  「健康づくりのための運動所要量(平成元年)」では主に冠状動脈疾患を対象として いましたが、その策定から15年以上が経過し、国民の疾病構造に変化が見られ、現在で は、糖尿病、高血圧症、高脂血症等の生活習慣病が問題となっております。さらに、メ タボリックシンドロームといった疾患概念が、平成17年4月に関係8学会から示されま した。  今後、メタボリックシンドロームの考え方を取り入れた生活習慣病対策、特に身体活 動・運動施策を推進し、国民や関係者の「予防」の重要性に対する理解の推進を図って いくことが有効であると考えられます。  しかし、「平成15年国民健康・栄養調査」では、「健康づくりのための運動所要量」 の策定以後の国民の運動習慣を持つ者の割合は、男性では29.3%、女性では24.1%で、 「健康日本21」等の取り組みにもかかわらず、増加しておりません。  このように生活習慣病対策に関する国民的な関心が高まる中で、厚生科学審議会地域 保健健康増進部会において、「今後の生活習慣病対策の推進について(中間取りまとめ)」 がまとめられて、「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」という標語の もとに、身体活動・運動施策についても、より一層の推進が望まれるようになってきま した。  このような状態を踏まえまして、国民の身体活動・運動の改善を図り、国民が生活習 慣病に罹患せずに健康な生活を送るため、最新の科学的知見に基づき、国民の健康の維 持・増進、生活習慣病の予防を目的とした望ましい身体活動・運動及び体力の基準を示 すため、「健康づくりのための運動所要量(平成元年)」を改定することになっており ます。そのために、今回策定される「健康づくりのための運動基準」におきましても、 「生活習慣病の予防を健康づくりの目的として」と加えております。  身体活動・運動と生活習慣病や総死亡率に関する科学的研究は、この四半世紀に急速 に発展しております。冠状動脈疾患ばかりではなく、糖尿病等の生活習慣病罹患に対し て、身体活動・運動の予防効果が科学的に明らかにされております。特に、前回の所要 量(平成元年)策定以降、身体活動・運動による生活習慣病の予防においては、かなり のエビデンスが蓄積されております。したがって、今回の「健康づくりのための運動基 準」では、これらの蓄積されたエビデンスを対象にシステマティック・レビューを行い、 それをもとに、生活習慣病予防のために必要な身体活動量を示すこととしました。  また、最近の欧米の研究によりますと、身体活動量ばかりではなく、体力も生活習慣 病の独立した罹患予測因子であるということが示唆されております。一般に身体活動量 が多い人の体力は高ということが知られています。しかし、体力を高めるための運動強 度には下限があり、必ずしも総エネルギー消費量で定量化された身体活動と体力との相 関関係は高くないことも知られております。特に、日常生活における低い強度の身体活 動量が多くても、体力が高いとは限りません。  また、体力は遺伝的な要因も大きく影響しています。そこで、前回と同様に、今回の 健康づくりのための運動基準でも、身体活動・運動量に関する基準に加えて、体力に関 する基準も独立して定めました。  今お話ししたシステマティック・レビューということでありますが、これは基本的に 文献検索の方法でございます。健康づくりのための運動基準の主要素である身体活動、 運動、体力が生活習慣病発症に与える影響について検討した大規模なコホート観察研究 について検索を行いました。  対象としたデータベースは、欧米の大きなデータベースであるPub Med、そして日本 の医学中央雑誌等を対象としました。 対象とした期間は、2005年4月11日までの発表された全文献としました。  検索式は、身体活動、運動、身体トレーニング、体力、疾病ごと、追跡研究、観察研 究の前向き研究・後ろ向き研究・縦断的研究といった検索方法で行いました。  検索制限としては、人を対象とした研究に限りました。  対象とした報告は、オリジナリティの高い原著論文のみとしました。  年齢は、学童期(6歳以上)から高齢期までを行いました。  さらに、対象とした生活習慣病は、肥満、高血圧症、高脂血症、糖尿病、脳血管疾患、 循環器病による死亡、骨粗鬆症、ADL、総死亡などが上がっております。  これらの検索方法を用いた理由ですが、エビデンスに基づいた科学的な値を決定する には、なるべく高いエビデンスのものを用いるという考え方が上がっております。  一般的には、エビデンスというものについては、システマティック・レビュー、もし くはメタ解析といったデータ統合研究による研究が一番高く、さらに少なくとも1つの ランダム化比較試験による知見、次にランダム化比較試験による知見、次に分析疫学的 研究による知見、次に記述研究による知見、最後にデータに基づかない専門委員会や専 門家・個人の意見となっております。  したがって、本基準では、コホート研究のシステマティック・レビューによる知見に 基づいておりますので、エビデンスが最も高い方法で策定されたと考えております。  最も高いエビデンスであるランダム化比較試験をレビューに用いなかった理由は、予 備的な検索でよりエビデンスの高いとされている健常集団に対する介入による生活習慣 病発症の効果について、数年以上観察したランダム化試験による報告がほとんどなかっ たという理由と、健康な人を対象とした生活習慣病の一次予防に関する研究にランダム 化試験というのはそぐわない、なぜなら研究開始時において健康であると判断された人 に対しランダム化、すなわち本人の意向に反する場合もありますので、運動をさせたり しなかったりというように数年間に強制するのは倫理的にも難しいということがありま す。  したがって、本研究では、研究開始時にアウトカム疾患を有しない健康な人を対象と したコホート研究をシステマティック・レビューの対象としました。  たくさんのデータが集まりましたが、その中で採用した基準ですけれど、(1)原則とし て重度の疾病を有しない者(健康、または軽度の症状で運動が可能な者)を長期(原則 2年以上)観察し、死亡率や発症率を身体活動・運動量もしくは体力別に分析した研究。  (2)定量的方法で評価された身体活動・運動量に関する情報を明示した研究。  (3)定量的方法で測定された体力に関する情報を明示した研究。  (4)身体活動・運動量や体力の群分けや区分けの方法、カットオフラインの設定が論理 的にできている研究。  (5)身体活動・運動単独の効果を分析。つまり、そういう効果が出たとしても、性・年 齢・喫煙・代謝性危険因子等を統計的に補正した研究。  (6)対象者の人数は分析法や測定精度等から判断しました。  その結果、先ほどの式を入れてPub Medにやりまして、その後ヒットした件数という のは8,134件という多い数になりました。 さらに、タイトルと抄録による一次スクリーニング――タイトルと抄録を見ましてそ れを判断するわけですが、それで794本に絞りました。 これらの全文を取り寄せて精読したところ、今まで私が述べました採択基準に該当す る文献数が84本あり、そういうものを対象にしました。  次に、4ページに戻りまして、身体活動・運動量の定量化という点では、そういう文 献を使いましてシステマティック・レビューを実施した結果、以下のような基準を策定 しました。  その際、強度が3METs以上の身体活動の場合と、強度が3METs以上の運動を対象とし た場合と、別々に基準値を定めました。  そして、身体活動・運動量においては基準値を「METs・時/週」という表現で決定し ました。  「METs・時」については参考資料の15ページの7)にその説明がありますが、ここで 申し上げますと、METs・時とは、運動強度の指数であるMET値に運動時間(時間)を掛 けたものです。METというのは、当該身体活動におけるエネルギー消費量を座位安静時 代謝量(酸素摂取量で約3.5?/kg/分に相当)で除したものです。つまり、安静時の 値の何倍で身体活動を行っているかというものですが、これに時間を掛けたものがMETs ・時となります。  運動の強度が、例えば速歩ですと4METsですが、それを1時間やると4METs・時、2 時間やれば8METs・時です。例えば7METのジョギングを3時間行えば7×3で21METs ・時となります。酸素1リットルの消費を5.0kcalと考えますと、1MET・時では体重 70kgの場合は74kcal、60kgの場合は63kcalと計算できます。  このように、標準的な体格の場合、1MET・時の値は体重とほぼ同じエネルギー消費量 となる、つまり、1MET・時の場合は、60kgの人は60kcal程度、70kgの場合は70kcal 程度となり、METs・時が身体活動を定量化するときによく使われております。  METs・時というのは、身体活動・運動量、酸素摂取量から換算されたエネルギー消費 量と等価な値となってきます。  エネルギーという点からいいますと、食事摂取基準等で用いられているカロリーとい うものがよく知られておりますが、カロリーというものをここの基準で用いなかった理 由というのは、システマティック・レビューで採用された論文はかなりの部分が欧米の 研究で、日本人に適用するにはそれを補正する必要があると考えたからです。また、健 康づくりのための運動基準は専門指導者向けに書かれていますが、そのような指導者が 体重の異なる対象者に個別に身体活動・運動量の指導を行うために定めました。  今回、委員の能勢先生より、「とはいっても、栄養士等にイメージを持っていただく ためには、やはりカロリー表示も」という御指摘を受けましたので、本文中にカロリー 表示も示してあります。  ということで、METs・時というものが出てきたわけですが、再び4ページに戻ってい ただきまして、そのようなことで、23METs・時/週ということとしたわけです。  まず、ここで「身体活動」の定義ですが、参考資料の10ページの2)にありますよう に、「身体活動とは、骨格筋の収縮を伴い安静時よりも多くのエネルギー消費を伴う身 体の状態である」と一般的には定義されております。その中には、日常生活活動におけ る労働・家事等や余暇における運動・スポーツ活動等が含まれております。ただし、今 回の基準におきましては、強度が3METs以上の身体活動を対象としました。  この理由というのは、一般の国民で意識ができて、これまでの研究で対象とされてい るのは3METs以上の強度の身体活動であるということです。つまり、覚えていることが 可能、裏を返せば目標を持つことが可能な身体活動という意味で、3METs以上の強度の 身体活動というもので基準を定めました。  先ほど申しましたシステマティック・レビューにより、生活習慣病発症予防に効果の ある身体活動の下限値は約19METs・時/週から約26METs・時/週の間に分布しているこ とが示されました。  この「下限値」という表現を説明いたしますと、例えば対象のコホート、つまりある 共通の属性を持つ人間集団――今回のシステマティック・レビューでは数千から数万人 の対象者をやっておりますが、それを論理的に分類し、例えば身体活動の量がMETs・時 /週であらわされるとしますと、全く運動していない人を0としますが、その最も下か ら身体活動の量が25%の群、さらに50%の群、75%の群、それ以上というように4群に 分けた場合に、最も身体活動の少ない群と比べて、各生活習慣病の罹患率が有意に低下 する群を統計的に明らかにしました。  ある論文、ある疾病では、身体活動が一番下の25%よりも、すぐ上の群で罹患率が低 下するということが出た場合には、その25%の値を下限値としております。しかし、あ る場合には、中間値の群でも統計的な差が見られるその群の中で最も身体活動をやって いる4分の1の群で差が出たとしますと、75%の値を下限値と決めました。  そのような値というのを先ほど紹介したシステマティック・レビューで探していった ということであります。つまり、いろいろな身体活動量の人を分けて分析したときに、 そのちょうど境界の値というものを探していったということになります。  そして、性・年齢別に検討した結果、65歳まで性・年齢別により区別する根拠は見当 たらなかったため、性・年齢別にかかわらず、同一の身体活動量を基準値としました。  どうしてこの「基準値」という言葉を使ったかということですが、この委員会は運動 所要量のワーキンググループということで、もともとは一番最初と同じように運動所要 量ということでありましたが、これについては前のこととの違いがその中に入ってきま す。前回の運動づくりのための運動所要量で用いられた「所要量」とは、平成元年の第 四次改定「日本人の栄養所要量」における所要量の概念、すなわち「国民が心身を健全 に発達させ、健康の保持・増進と疾病予防のための標準となるエネルギー及び各栄養素 の摂取量を摂取対象別に1日当たりの数値で示したもの」ですが、前の「運動所要量」 では、「健康を維持するために望ましい運動量の目安」と定められております。  最近では、栄養分野で食事摂取基準の考え方を採用したことから、「栄養所要量」と いう表現はなくなり、従来のrecommended dietary allowance(RDA)は「推奨量」 という表現になっております。  そこで、用語に関して栄養分野の整合性を図るために、今回は、前回用いた「所要量」 という用語を用いずに、「基準値」という用語を使うことにいたしました。  先ほど申しました23METs・時/週というのは、3METsの強度、例えば普通歩行では1 日当たり54〜74分という幅があります。しかし、国民にとって3METsに該当する運動 を判別することは容易でなく、20分の幅というのは十分に認識できないと考えます。そ こで、身体活動量の基準というのは国民によりわかりやすい1つの値、すなわちシステ マティック・レビューで抽出された論文の各値の平均値を基準としました。国民は、現 在の身体活動に応じて基準値を上回ることを目指すようにする、それにより生活習慣病 の発症のリスクは低くなるということが期待されております。  強度が3METs以上の身体活動としては、後のところで出てきますが、日常的な歩行、 買い物、通勤など、床掃除や子供と遊ぶといったことが上げられております。日常的な 歩行を初めとするこれらの活動の強度というのは3METs・時/週ですので、23METs・時 /週というのは1日当たり約60分に相当いたします。  ここでは、身体活動は必ずしも歩行を伴うとは限りませんが、一般に3METs以上の強 度の身体活動の多くは歩行を伴っておりますので、歩行を中心の活動で構成される場合 を考えますと、1日当たり60分、10分当たり1,000歩に相当しますので、1日60分 で約6,000歩となります。日常生活の中では低強度で意識されない歩数が2,000〜 4,000歩あると報告がありますので、1日当たりの歩数の合計としてはおよそ8,000〜1 万歩に相当すると計算されます。  また、先ほど言いましたように、この身体活動は、体重60kgの場合は週当たり約 1,450kcal、70kgの場合は1,700kcalというエネルギーに相当するということになりま す。  次に、運動量です。「運動」については、基準値とその範囲をそれぞれ4METs・時/ 週、2METs・時/週〜10METs・時/週としました。  運動というのは身体活動の一種でありますが、特に体力を維持・増進させるために行 う計画的・組織的で継続性のあるものと定義しました。  本基準においては、身体活動量と同様に、速歩やジョギング、ランニング、自転車乗 り、水泳、テニス、バドミントン、サッカー等の強度が3METs以上の運動を対象にし、 ストレッチングのようなそれ以下の強度の運動は対象としないとしました。  この運動の基準を4METs・時/週、その範囲を2METs・時/週から10METs・時/週と した理由ですが、同じように、先ほどのシステマティック・レビューによって得られま した運動量の値が約2METs・時/週〜10METs・時/週の値に分布しておりました。それ らの平均値が4METs・時/週であったからです。  現在の運動量に応じて、基準値あるいは基準値の範囲の値を上回るように目指すよう にすることが求められます。すなわち、全く運動習慣のない人では2METs・時/週を目 安にし、運動量が基準値以下の人は、基準値を目指して、さらに基準値よりも運動量が 多い人は10METs・時/週を目指すようにするということであります。その結果、生活習 慣病の発症リスクは低くなることが考えられております。  具体的な運動の例としましては、速歩、体操、ジョキング、ランニング、水泳、球技 など、3METs以上の強度の運動が含まれております。例えば、速歩は4METsの強度です ので、速歩の場合は週当たり60分となります。同様に、ジョギングやテニスは強度が7 METsですので週当たり35分に相当するということであります。  さらに、このような運動に要するエネルギー消費量というのは、体重60kgの場合は週 当たり250kcal、体重70kgの場合は約300kcalと計算されます。  次に、5の健康の維持・増進に必要な体力です。  体力と生活習慣病の関係を示す内外の文献について、同じようにシステマティック・ レビューを実施した結果、体力では全身持久力の指標である最大酸素摂取量について以 下のような基準を策定しました。なお、筋力については、定量的な基準値を策定する根 拠が少なかったので、定性的な記述としました。  まず、最大酸素摂取量です。最大酸素摂取量というのは、個人が摂取できる単位時間 当たりの酸素摂取量です。1分当たり何L、または体重当たり1分当たり何mLいう値で すが、その最大値であります。  運動中の酸素摂取量というのは、活動筋でのエネルギー産生量を反映しております。 その最大値、すなわち最大酸素摂取量が大きいほど多くのエネルギーを産生することが でき、より高い強度の運動をより長い時間実施することができます。つまり、持久力の 指標となっております。  最大酸素摂取量と生活習慣病との関係を示す内外の文献について、同じようにシステ マティック・レビューを行い、性・年齢別に最大酸素摂取量の基準値とその範囲を測定 しました。そして、生活習慣病の発症リスクが最も高い群に比べて、生活習慣病の発症 リスクが増加する群の最大酸素摂取量の境界値として示されました。  そして、そういう値がある中で、これらの各性別・各年代別の間にいろいろな値が出 てきたわけですが、体力基準としましては、その最低値と最高値の間に多分基準がある のだろうと考えて基準を決めております。そこで、それらの平均値を求めまして、最大 酸素摂取量の基準としました。その範囲というのは、システマティック・レビューによ り得られた生活習慣病の予防の効果のある最大酸素摂取量の最低値というものの範囲を 示したものであり、最大酸素摂取量による生活習慣病の予防効果に少なくとも一つの研 究で明らかになった値の範囲であります。  したがって、最大酸素摂取量がこの範囲よりも低い場合は、まずこの範囲mL/kg/分 に入ることを目指す必要があります。その範囲としては、例えば男性の20歳だと33〜 47、女性では27〜38mL/kg/分となっています。これは一つ一つの研究で明らかにされ た、先ほど申したようなやり方で得た値であります。  もう一回言いますが、この最大酸素摂取量が、さらにこの範囲よりも低い場合には、 例えば男性ですと33mL/kg/分に向かって最大酸素摂取量をふやす必要がある。また、 この中にあっては、基準値を目指すようにする。さらに基準値よりも高い場合は、この 47mL/kg/分の値に近づけていくことをしますと、体力向上による生活習慣病予防の効 果が確実になると考えられます。  また、この最大酸素摂取量の日本人の標準値というのは、委員の小林先生等が発表さ れています日本人の最大酸素摂取量の平均値よりもやや低い値であります。したがって、 この値は体力が低くて生活習慣病の発症リスクも高い国民が目標とする基準値として は、平均値ですので、実現可能であり、妥当な値と考えております。  そこで、今回の改定で用いられる基準値というのは、生活習慣病予防という観点から、 身体活動量と体力の低い国民が生活習慣病予防に関する身体活動と体力の重要性を認識 し、実現可能性のある値として妥当と考えられます。もちろん、身体活動量と体力がそ の値よりも多い人は、さらに高い値を目指すようにするということが考えられます。  申しおくれましたが、最大酸素摂取量というのは、性・年齢別で値が異なっておりま すので、これについては身体活動や運動とは異なり、性・年齢別で基準値とその範囲を 示したとなっております。  次は、体力の中でも筋力です。筋力と総死亡リスクの減少との関係についての複数の 文献によりますと、男性では、ほとんどの研究で筋力が低いほど総死亡リスクは高いと いうことが示されておりますが、女性では、筋力と総死亡リスクとの間には関連が見ら れない、つまり、筋力は高くても総死亡リスクは低くならないということがありました。 また、男女両方をあわせて検討した結果、すべての研究では筋力が低いほど総死亡リス クは高いということが示されました。  筋力といいましても、先ほどの最大酸素摂取量とは異なりまして、測定方法が非常に 多岐にわたっております。しかし、どの筋力測定値も、それぞれの論文の中で、それぞ れの集団のおおむね平均以上の値を有する者で有意に総死亡リスクは減少する、または 骨粗鬆症、骨折という点からも、一定の筋力を持つことは重要であると考えられます。  筋力・筋量というのは加齢によって低下します。また、総死亡や骨粗鬆症を伴う骨折 のリスクの減少は、おおむねそれぞれの研究の集団における平均以上で見られることか ら、定性的ですけれど、筋力を日本人の各年代の平均値以上に保つということを一つの 基準とすることが可能であると考え、筋力についても運動基準の中で示すということに しました。  骨粗鬆症に伴う骨折に関しては、平衡性及び敏捷性にすぐれた者でリスクの減少が認 められております。しかし、死亡率の低下や生活習慣病の予防という観点からの研究報 告はありませんでしたので、その他の体力についての定量的な数値基準の測定を行いま せんでした。  これで今回の運動基準におけます身体活動・運動・体力についての基準の策定方法と その値をお示ししました。もちろん、6に書いてありますように、過度な運動というの はかえって健康を害するということがありますので、十分な注意が必要であり、疾病を 持っている者が運動を行う場合には医師の指導のもとで行う必要があると考えます。  さらに、これらのシステマティック・レビュー及び今回の基準についての案を出すに 当たりまして、今後、「健康づくりのための運動基準」に沿って行われた国民の身体活 動・運動の実践効果について、一定期間後に評価を行い、その結果と新たな研究成果を 取り入れて、定期的に運動基準を改定していくことが必要であると痛感されました。  今後は、日本人を対象とした身体活動や体力(筋力、筋量を含む)と生活習慣病に関 するエビデンスの蓄積、身体活動の評価法の標準化、今回は小児と高齢者については示 しておりませんが、性別・年代別及び対象生活習慣病の身体活動や体力の評価、筋力・ 筋量の具体的な指標の検討、健康づくりのための身体活動の上限値の検討(これについ ては示しておりません)、身体活動・運動による医療費適正化の効果判定というものに ついても行っていく必要があると思います。  以上です。  中野室長補佐 済みません、ここで、今、追加配付をした資料について説明をさせて いただきたいと思います。事務局の手違いで、最初にお配りした資料1−2の19ページ の部分で文献が欠落しておりました。IIの1.の(1)とありますが、そのIIの1.の 部分の文献が抜けておりましたので、そこの部分を今回追加をしております。そして、 (1)というのが2.となりまして、21ページの(2)は3.と変更させていただいて いるだけです。ということで、文献の方が欠落をしていたので、今回、差しかえをさせ ていただきました。傍聴の方々については、帰り際に受け取っていただきたいと思いま すので、よろしくお願いいたします。  富永座長 ありがとうございました。  各委員からいろいろ御意見を伺いたいと思いますが、最初に私の方から1〜2御質問 をさせていただきます。  今回は、田畑先生のワーキンググループに大変御努力いただきまして、システマティ ック・レビューで8,000数百の文献からだんだんと選んで84本にまで絞り込んで、この データに基づいていろいろな基準値をお示しいただいております。この文献を見ますと、 ほとんどすべてが外国の研究者のものでございまして、日本人の研究者は、最初に配付 されたもので計算しますと5編だけで、しかも、澤田先生は3編書かれておりますから、 事実上、3人の研究者の報告になっております。  新薬の安全性の検討などでは、特に日本人と外国人の体質の差などがありますので、 第1相試験は日本人でもう一度やり直しすることになっております。そして、このいろ いろな身体活動あるいは基準のほとんどは外国人のものによっていると思いますが、そ れでよろしいのかどうかというのが一つの質問です。  もう一つは、大変大事なことで、最後に今後の検討課題及び方向性のところでも触れ られていますけれど、今回は平成元年の指針と同じで、成人を対象にして60歳代で切れ ておりまして、70歳代、80歳代などの高齢者がございません。それで、15ページの「健 康日本21」の表を見ますと、御承知のように、「健康日本21」では、普通の成人と高齢 者を2つに分けてそれぞれの数値を設定しております。高齢者もそれなりの数値が出て おりまして、「健康日本21」では高齢者が含まれておりますので、できることなら高齢 者の基準をつくってもらえるといいのですが、これは今は間に合わなくて、将来の検討 課題になるのでしょうか。  つまり、いろいろ言いましたけれど、日本人の基準として、この文献は妥当かという ことと、70歳以上をどうしていただけますかということの2つでございます。  田畑委員 確かに先生の言われるとおりで、私たちも7,000数件を見ましたけれども、 その中に日本人のデータは非常に少ないということに驚きました。ここに上がっている ものについては、全部で81文献のうちわずか8文献です。もともとの8,000件の中にお いても非常に少なかったということで、このような大規模なそういう観察研究というも のが日本において非常に少ないということが明らかになりました。 しかし、運動による糖尿病の予防についての効果につきましては、大阪ガスを対象と した岡田邦夫先生のデータとか、体力については澤田先生のグループが最大酸素摂取量 の群分けによる各種、私が担当した糖尿病とかそういう値については、非常にいい値を 出されております。それについては欧米の文献とそれほど差がないということもあるの で、今回は日本人と外国のデータを一緒にして出したということで、ないものはないの で出せないということで、それはもう仕方ないということです。そして、それは5年後、 10年後にデータが出てくればそれを使ってやるということもできますが、それはできな いということであります。  それから、高齢者についてですが、体力と身体活動量については非常に重要だと思わ れますが、「健康日本21」でも高齢者の方はふえる状況であるということもありますが、 データがなかったということがこれを定めなかった一番大きな理由であります。体力と 筋力等について、それが生活習慣病の予防という点においてはなかったということです。 介護予防とかADLについては幾つかありましたけれど、今回対象とした生活習慣病予 防という観点ではなかったということで、今回は高齢者については値を得ることができ なかったということです。ですから、介護予防という点でいえば、今後はできる可能性 もあります。  富永座長 ありがとうございました。特に後者の方、つまり70歳以上は、介護予防も ありますけれど、「健康日本21」できちんと高齢者向けの数値目標も設定しております ので、データがないものは仕方ないですが、この委員会ですぐには対応できませんけれ ど、今後、厚生労働省の方で系統的にこのようなデータを得るための調査・研究をやっ ていただいて、それに基づいて再度見直しをする必要があるのではないかと思います。  中野室長補佐 今の田畑委員の追加ということで、私も事務局として田畑先生にいろ いろな研究をお願いをしたり、システマティック・レビューの研究をお願いをしたり、 今回の基準値の策定に深くかかわっていただいている中で、富永座長の御指摘のような 年齢の上限というところも、どういう年代で設定をするのかということで議論をしてい くと、60歳以降についてのデータというのが少ない。70歳、80歳の人たちも研究の中 ではあるのですが、ただ、そこのデータをきちんと70歳代とか80歳代という形でいう にはまだ難しいだろうという結論に至ったということもありましたので、追加としてお 話しさせていただきたいと思います。  また、今お話しいただきましたようなエビデンスの蓄積ということに関しまして、今 までも粛々とやってはいましたが、18年度以降につきましては、今、新規公募課題を厚 生科学研究費の中で締め切りましたけれども、若手研究ということで、運動についても 若手の研究者を育成しようということで、運動というテーマで18年度から予算をとって 研究を開始して、次の運動基準の更新のときには、そういったデータが間に合えばいい ですし、また、間に合わなくても次の次という形で、徐々に研究者の育成をしながら日 本人のデータを蓄積していくという形で、行政側としても支援をしてこの基準値をより いいものに更新をしていくという方向に考えておりますので、先生方におかれましても、 そういう意味で、日本人のデータを蓄積していただくことについて、7ページの7)に も書いておりますような課題をいろいろな方々に御指摘をいただいて、こういう課題を クリアできていく方向づけについて御協力いただきたいと思っておりますので、よろし くお願いいたします。  富永座長 わかりました。ありがとうございました。ぜひお願いします。  それでは、委員の先生方、御質問等をどうぞ。  泉委員 日本ウオーキング協会の泉でございます。私はふだん人間ドックで運動指導 をしております。今の富永先生のお話の前段のお話ですけど、「糖尿病というのは、い わゆる欧米系の糖尿病と日本人の糖尿病では明らかにインシュリンの分泌動態が異な る」、「内臓脂肪の状態が異なる」というふうに最近わかってきました。策定に至る経 緯のところで「メタボリックシンドロームの考え方を取り入れた生活習慣病対策」とい う風に書いてあります。そこで、この基準案は結果的に主に外国の文献を参考にしてで きたものであるという記載をきちんとしていただきたい。さらにこれから、日本でも科 学的根拠にのっとった研究を行って随時修正していくということを明文化しておく必要 があります。一度基準ができると、つい我々は、今までの数値とこんなに変わったから これでいこうというふうに短絡的になるんですね。  内臓脂肪ということばが出てきていますが、身体活動や運動による内臓脂肪とインス リン抵抗性の変化の推移を正確に検討できるデータを継続して蓄積していけば、日本人 独自の有用なデータが作成できると思います。日本人の糖尿病の場合は、必ずしも肥満 を伴っていませんので、例えば糖尿病に対して運動療法する場合は、体重が全然減少し ていなくても改善している症例は結構あります。それが外国人と日本人との最大の相違 で、さらに運動の効果の最も大きな特徴であり、有益な点ですので、そこのところも強 調していただきたいと思います。  富永座長 報告書の記述のところでその注意をきちんと書けばいいわけですね。  泉委員 そうです。明確にしておいていただければと思います。  富永座長 ありがとうございました。  ほかに、御質問や御意見がございましたら、御遠慮なくどうぞ。  能勢委員 これは確認事項ですけれど、最大酸素摂取量を基準値の中に用いられたと いうことは、生活習慣病の罹患率あるいは死亡率が最大酸素摂取量の初期値が高い人は 低いということですね。  田畑委員 はい。  能勢委員 同じように、どれぐらいのトレーニングをすればそういう罹患率なり死亡 率が下がるかということも、運動所要量で決められたわけですね。どれぐらいの運動を 負荷している人は......。  田畑委員 負荷というか、どれぐらい身体活動をやっている方はどうだったというこ とです。先ほど申しましたように、「あなたは運動しちゃいけないよ」とか、「フィッ トネスクラブに3日行きなさい」とか、そういう形の論文がなかったということです。  能勢委員 そうですね。そうすると、最大酸素摂取量とそのトレーニングの連携につ いては、運動指針で明らかにするというふうに判断していいんですね。  田畑委員 それは私の口からは言えませんけれど、ぜひそのような......。この2つは、 ある意味、身体活動と体力というのは別々なわけですが、最大酸素摂取量をふやすよう な方策というのはぜひ書いていただきたいと思います。  小林委員 東京大学の小林です。今、日本人のデータがエビデンスベースでないとい うお話でしたが、実は私は体育関係から参っておりまして、健常な高齢者を初め、日本 人のデータというのは、物すごく縦断的な測定も含めて、健康な人についてはかなりの 数ずっとあるんですね。これは栄養研究所の方もずっとまとめてありまして、膨大な数 があって、恐らく日本人の一番きちっとしてデータが出ていると私は思っています。  しかし、ここで文献検索でやったのは、生活習慣病あるいは不健康な人を対象にして、 その人がどうなったかということを基準にレビューした結果を出しておられるので、日 本人の場合だと、こういう体育関係の人は病気の人は扱ってはいけないということにな っているので、体育関係者の方ではそういうデータを扱えないわけです。それはお医者 さんの領域だということで、今まで、ある意味では体育関係者はタブーになっているの で、そういう部分のデータが日本人についてないというわけではない。しかし、お医者 さんの方で、病院や治療という目的で、生活習慣病を対象にしたこういう最大酸素摂取 量や運動の療法の経過ということについての研究は幾つかは行われていますが、こうい ったレビューにマッチングしたものはないというわけです。  そこで、健常人のデータは全く無視した形で基準を健康づくりというふうにするなら ば、日本人全体の枠で健康増進ということを考えた場合には、底辺のところを基準にし て、そのすれすれのところでいろいろな話をするという、そういう考え方になってきま す。  そうしますと、タイトルが「健康づくりのための運動基準」ということですが、これ はある意味では生活習慣病予防のためのとか、生活習慣病改善のための運動の基準なり 指針であると、そういう考え方をきちんと出すべきだと思うわけです。そうしないと、 非常に大きな誤解が生じてきます。高齢者でも元気な人はたくさんいるわけですから、 これはそういう生活習慣病にかかわる人たちの体力の運動に対する指針だというふうに 考えると、それはそれで成り立つと考えてはいますが、そこのところが混乱が起きない ように、明確に対象をこういうためのものだということをもうちょっとはっきりうたっ てほしいと思っております。  富永座長 後ほど田畑委員にもお答えいただきますが、私の方から先にコメントさせ ていただきますと、田畑委員がレビューされました文献は必ずしも生活習慣病の人がど うだということではなく、一般集団を対象にして身体活動あるいは最大酸素摂取量と、 その後、生活習慣病にかかる確率、これの関係を見ているのでありまして、必ずしも生 活習慣病の人だけではないんです。ですから、健康人だけで、生活習慣病との関係は一 切調べないと、それは何のための身体活動かということになりますので、身体活動ある いは最大酸素摂取量と健康度、あるいは生活習慣病にかかるリスクの関係を見ないと、 この種の基準はできないと思うのです。  もう一つ、完全に健康な人だけではなく、厚生労働省は昭和22年から毎年、今は国民 健康栄養調査を日本国民から無作為に抽出しまして、それにつきまして栄養あるいは食 生活の調査に加えて、歩行数とかいろいろ調べておりますので、そういう集団を使って、 その後どうなったかということを調べれば、ある程度日本人の基礎データは得られるん じゃないでしょうか。  田畑先生、補足されるコメントがございましたら、どうぞ。  田畑委員 今、富永座長からほとんどお話があったわけですが、私たちも小林先生が 御指摘されたことを考えておりまして、まず、この運動基準というのが専門家向けであ るということです。一般の人がこれを読んで云々でそれを間違うということではなく、 これは専門家の人がよくわかって使ってもらうことを期待しているということです。で すから、ここに書いてありましたように、まずは、一番低いところを目指しましょうと。 そして、そういう基準を目指しましょうと。そして、このぐらいだったらほとんど病気 にかからない、そこも目指しましょうということで、これはある意味では政策的なこと ですけれど、まずは生活習慣病にならないということを基準に、さらに上も目指しまし ょうと、そのように指導者の方にわかって使っていただく。それが国民に出ていくとい うことになっています。  この値がある意味非常に低い値ならそういうことも言えますけれど、1万歩というの も日本人では達成されておりませんし、運動習慣2回というのも3割ぐらいしかやられ ておりませんので、それほど低いのだということで、この値が一般の人にも使えるんじ ゃないかというのが私たちの考え方です。  増田委員 運動に限らずに、日本の場合、エビデンスのちゃんとしたデータというの は日本人のデータがないというのは、この間、福井先生もおっしゃっていたのですが、 今度、まさしく介護保険の中で、介護の給付の対象外の人は基本的に市町村に戻して、 市町村の保健事業の中でいろいろな指導を行うということを介護保険の中で言っている わけですから、市町村がどれぐらいのレベルでやるかは別にして、せっかくこれから前 向きのそういうエビデンスを何十年かかけて集めるチャンスがあるわけですから、そう いう一つの運動指導の基準を市町村に示して、今後こういう基準に役立つようなデータ を集めていただくということをこれから考えていただきたいなと思います。  富永座長 これは指導者向けの指針あるいは報告書ではありましても、当然それは市 町村へ返してきちんと全国民に応用されるべきことだと思いますね。ありがとうござい ます。  斎藤委員 このすばらしい、8,000件も集めて分析して、コンピューターのない時代 にはこんなことはできなかったと思いますが、これは経営者や文科系の人はわからなく ても仕方ない、専門家向けということでお作りになったということなのですけれど、た またま私は理科系出身で、10年ほど化学をやっていたので、わかろうと思って2回ほど 読んで、何とか追いついたつもりでいるのですが、その結果としての意見なのですけれ ど、一つは、小林先生がおっしゃったようなことが事実だとすれば、今後、こういうこ とが今喫緊の課題になっているということを厚生労働省あるいはこの委員会から発信し て、ぜひ体育系の先生と医学系の先生の共同研究に補助金を出すなり促進するなりして、 そういうデータを蓄積すると。これは田畑先生が今おやりになっていることに私たちも 協力しているので知っていますけれど、ぜひそういう方向にしていただきたいと思いま す。  それから、2ページでしたか、内臓脂肪を減少することでそれらの発症リスクの低減 が図られるという考え方を基本としていると。ここから出発していると思うのです。そ れで見てみると、身体活動として基準値を23METs・時/週とか、運動量として云々と書 いていますね。それから、ここについても、はっきり言って、運動量としてということ になると、運動している人は、私なんかテニスをしていますけれど、35分なんてあり得 ないんですね。それでは1ゲームで終わりですから、1ゲームでやめろという方が難し いと。ですから、やっている人とやっていない人の差というのはもっと大きいというこ となので、これは平均としてはこうかもしれないけれど、ですからこれは専門家向けの 数字の話だということだとこれでいいのですが、現実味があるかどうかですね。そうい うことがちょっと気になりました。  それで、むしろ身体活動量というのが、毎日60分くらい歩く、要するに普通の意識さ れない歩数の2,000〜4,000歩にプラスして6,000歩歩くというのは結構難しいと思うの です。その辺のところをどうやって実現していくか。これは運動指針の方でまた検討す るのだと思います。  それから、私はこの研究で非常に評価したいのは、筋力というものが重視されてきた ということなので、これを素人でもわかる測定法なんていうのはあるものかどうか。私 のような素人では、筋力ということは多分基礎代謝量にかかわってくるので、内臓脂肪 をふやさないために筋力があった方が基礎代謝が上がって、内臓脂肪をたまりにくくす るということなのだとすれば、この理解でいいのかどうかということも私はよくわかり ませんが、ここに目をつけてくれたというのは非常にすばらしいと思います。  それから、これは医学とかの学会ではありませんから、フィットネス関係の世界のコ ンベンションへ行ってみると、「60歳からでも遅くない、70歳からでも遅くない」とい う筋力トレーニングのデータなどをカイザーなどが、あそこは社長がどうも技術屋らし くて、結構発表したりしているんです。先ほど60歳以上のデータがないということです ので、高齢になるとおっかなび作りになるのですが、その辺は安全な方法でやれること があるんじゃないか。探せば、そういうデータもあるんじゃないかという気がします。  もう一つは、これは基準値ですからこれでいいのでしょうけれど、運動し過ぎて悪い ことはないと。前の小委員会でも私は申し上げたのですが、運動しないで管につながれ て薬漬けになって死ぬよりは、運動していてその最中に死ぬ方が僕はいいと思っている んです。ですから、運動し過ぎて何か問題があるのかと。必ずこの1行か2行は書いて いますね。実施上の注意事項として、「運動をし過ぎたときは医者と相談して」と。け れど、し過ぎて死ぬ例というのはデータをとりにくいかもしれませんが、そういう研究 データってあるんですかね。やり過ぎて死ぬ問題点と、やらなくて死ぬ問題点。どうせ やるなら、やり過ぎて死んだ方がいいと、そういう研究というのは不見識でやらないの かどうか。そういうデータというのはあるものかどうかですね。  小林先生と一緒に出た前の文部省関係の委員会で、戦後、とにかく今は運動をしなく なっているということを考えると、今ここで大きく運動させる方にかじを切らなければ ならないのではないか。歩くのは大変ですけれど、おっかなび作りしているよりは、う んと運動させる方にかじを切る何か施策が必要なのではないかと私は個人的には思って いますが、その辺はいかがかなと思います。  富永座長 私も同感です。7ページには、今後の検討課題のところの最後から2つ目 に、健康づくりのための身体活動の上限値の検討とありますが、検討でございまして、 必ずしも上限値を設定するとかとは言っておりませんので、斎藤委員のような御意見が ありましたら、もっとやってもいいんじゃないかということに落ちつくのではないかと 思いますし。  斎藤委員 責任を負わされても困るんですけれど、学者の先生方にその辺のことはお 願いしたいと思います。  富永座長 これはよく昔から常識的に知られているのは、ジョギングをやり過ぎてひ ざを痛めてしまったとかという例はありますので、やり過ぎるとというのはありますの で、適切な身体活動をしないといけないと思いますけれど。  ほかにいかがでしょうか。  田中委員 小林委員と斎藤委員の御意見に対して、コメントをさせていただきたいと 思います。  システマティック・レビューでこれだけ厳しい基準でここに採用されたものというの は、やはり限られたものなんですね。そして、体育が決して無視されていません。21ペ ージの例えば2の健康の維持・増進に必要な体力決定に参考とした文献の中で、外国人 のものなのですが、ほとんどブレアのグループなんです。彼は体育です。  それから、採用された5編の日本の論文のうち、3編は体育の澤田らの論文です。ど ういうことを意味しているかというと、こういう体力に関する貴重な研究はほとんど体 育ということになります。しかし、これだけしか載らないというのは、この種の研究は 極めて難しい。膨大な努力と金がかかります。それと、それを理解してくれる被験者で すね。澤田たちの研究は、本当に彼の個人の努力ででき上がったものであって、金銭的 にも随分苦労しながらやってきたものなんですね。ですから、斎藤委員がおっしゃるよ うに、このような大事な課題に対して積極的に研究費をかけるということは重要なこと ではないかと思います。今、少なくとも日本の澤田たちは国際的に高い評価を受けてい ますし、とりわけ、がんと体力との関係に関しては、完全に欧米と食生活の異なる日本 人でこれだけきれいなデータが出たというところで、運動の意味合いが強く意識される 結果になったと思うのです。  そういう意味では、日本には研究ができる基盤がある。あとは、そういう環境だと思 いますので、ぜひそういう研究を進めるべく環境を整備していただければと思います。  藤村委員 日本医師会の藤村です。この運動指針の策定自身はそれなりに大変意味の あることだと思うのですが、一般健康な国民に対して、あるいは多少肥満があるか、多 少高脂血症があるか、しかし、一般に健康と認められる国民を対象にしたものであり、 かつ、運動専門家あるいは指導者を対象としたガイドラインであるようですね。  ただ、我々が非常に心配するのは、先ほど斎藤委員からも御意見がありましたが、運 動というのは当然効用は非常に大きいものですが、その反面、リスクが必ずある。その リスクがあるということを認識してやらなければいけないのではないか。当然、個人差 を考えなければいけないのですが、ここでは個人差というのは性・年齢程度に限られて おります。しかし、個人差というのはもう少しきめ細かにやるべきものでありまして、 例えば先ほどから指摘のあった高齢者が抜け落ちております。ということは、指導者が この報告書を見て、そのとおりにやってリスクが起こらないかどうかということも考え なければいけないと思うのです。  個人に見合った、例えば高齢者で、病気ということではないけれども、ひざが痛くて 運動が制限されている者の運動とか、肥満があって運動習慣が全くない者にどうやって 運動を指導していくかという意味で、この策定が大変役に立つとは思いますが、もう少 し個人差ということを考えてきめ細かい運動指導をやらなければいけない。  例えば筋力の問題ですが、筋力が国民の平均以下で総死亡リスクが高いとすると、そ れを聞いた運動指導員などは、じゃあ、筋力は平均以上にさせなければいけないんじゃ ないかと、上限がなくなってくるんです。筋力がある程度ついてきたら、その上を、そ の上をと、これはリスクにつながりますから。そういう意味で、リスクを考えて上限の 範囲というものをある程度策定すること、こういうことが同時に必要ではないかと思い ます。  富永座長 ありがとうございました。大変貴重な御意見でございます。今後、引き続 き、田畑先生を中心にしてその点もぜひ検討していただきたいと思います。  ほかにいかがでしょうか。  鈴木委員 日本栄養士会を代表としますので、用語については管理栄養士も理解でき る用語が使われているのでちょっと安心したのですけれど、この基準値と基準値の関連 性を教えていただきたいのですが、例えば、6ページのところで、最大酸素摂取量の範 囲がこれ以下の方に関しては、ここになるように目標を定めて達成するようにというこ とを明示しなさいということが書かれていて、では、この運動づくりのための身体活動 と運動量の基準をいつもちゃんと達成しなさいよと指導したならば、この最大酸素摂取 量の下限の方がここまでの標準範囲内、基準値内に入るということの関連性があるのか ないのか。ただ基準であって、もし最大酸素摂取量の範囲内に達していない方というの は、この活動量・運動量、プラスアルファー何かやらない限りはこの範囲内に達成しな いのだよと考えるべきなのか。  それぞれ個々というものの基準に関してはとても理解ができるのですけれど、この基 準値と基準値の関連性について教えていただければと思います。  田畑委員 この最大酸素摂取量基準値というのと身体活動量・体力というのは別個に 作成されていて、このシステマティック・レビューにおけるエビデンスという点では全 く別個のものです。ですから、関係はありません。  先ほど述べましたように、関係はないのですけれど関係があるということですが、そ れについては、これは運動基準ということなので、身体活動・運動量ということで大き く中心に書きましたけれど、もちろん体力というものも身体活動量とは独立の体に関す る危険因子、例えばある量のコレステロールを食べているとか食べていないとか、そう いう意味での独立した予測の数値です。ですから、ちょっと責任逃れですけれど、それ についてはこの後で行われる指針の方にお任せしたいと考えております。  富永座長 ありがとうございます。今、指針という言葉がありましたので、申しわけ ありませんが、今日は議題の2が残っておりますので、これを十分議論し尽くすことが できません。したがいまして、運動所要量に関しまして本日の報告に関して何かさらな る御意見あるいは御質問がございましたら、ぜひとも厚生労働省の生活習慣病対策室の 事務局あてにお送りいただきたいと思います。そして、できましたら1月26日あたりま でに、生活習慣病対策室の誰あてにしましょう。  中野室長補佐 私か、大澤までお願いいたします。日程調整をお送りしているものに 返信でいただければと思います。   富永座長 あれにファックス番号もお名前も出ておりますので、とりあえず中野先 生か大澤さんかどちらかあてに、eメールかファックスかお手紙か何かでお知らせいた だきたいと思います。本日、委員の先生方からいただきました御意見はまだいろいろ手 を入れなければいけないと思いますが、あるいはその後、1月26日までに送られる御意 見を考慮しまして、再検討をして報告書を完成したいと思います。そして、今回はこの 報告書が完成しますと、後の手続としまして地域保健健康増進栄養部会に諮ります。そ こでもまたいろいろ意見が出るかもしれませんが、そういう手順がございます。  それで、本日はこれでOKということではなく、今日の御意見を踏まえて少し修正が 必要だと思いますし、今後に残された課題、データの蓄積とか、個人差のこと等々ござ いますので、それも書き加えまして報告案を作りまして、部会の方に上げさせていただ きたいと思います。したがいまして、この事務手続の方は座長の私と事務局にお任せい ただければありがたいのですが、よろしゅうございますか。申しわけございません。  それでは、そういう方法で手続を進めさせていただきます。  次は、運動指針小委員会の進捗状況でございます。これも先ほどと同じように、まず 事務局から御説明いただいた後で、委員長の太田先生から後ほど詳細に御説明いただき たいと思います。  中野室長補佐 それでは、御説明をさせていただきたいと思います。まず、資料2を ごらんください。  運動所要量と同様な形で進捗状況報告を作成させていただきました。検討事項として の運動所要量に基づいた健康づくりのための運動指針の見直しということ、そして委員 の構成に関しましても、次のページにございますとおり、本検討会のメンバーの先生方 と重複はかなりありますが、以下のメンバーで小委員会を構成させていただいておりま す。こちらの委員会は公開ということで、これまでの検討経緯として、11月16日、12 月19日の2回、現在、委員会を開催して検討させていただいております。  そういう中で、12月の第1回目の委員会については各委員からのコメントをいただい て、第2回目でそれらをある程度踏まえながら、骨子案というものを事務局から国民向 けのものを提出させていただきました。参考資料2にそのときの資料を参考としてつけ させていただいております。ただ、これはそのときの御意見を踏まえておりませんので、 この骨子を踏まえて今後修正をしていくということでございます。そういった扱いでご らんいただければと思います。  基本的な点としましては、まず、国民向けに関しての意見と、全体の発言を簡単に御 紹介させていただきますと、委員会での発言の主な要点としましては、運動所要量と整 合性をとるべきではないかということで、運動基準が今回資料1−2で提示されました ので、こういったものをもとに、今後、小委員会で整合性をとりながら指針をつくって いくという作業になろうかと思っております。  そして、その次の大きな意見としましては、個別に運動する人たち向けの実施手法、 そういった個々の人に合った運動実践のサポートをするような指針の方向性であるべき ではないかという御意見がございました。  そして、継続性が必要であるということで、継続性につながるような内容にすべきで はないかという意見もございました。  そして、行動変容の必要性ということで、実際に運動の嫌いな方、余り運動をしない 方々にどういう形で運動をしていただくかという方向づけも、この指針の中の一つのキ ーワードではないかという意見もございました。  それから、大きな話としては、指針の目的と対象とする人の違いもあるので、国民向 けと指導者向け、サポートする人たち向けという、2つ別々に考えて方向づけをしてい くべきではないかという意見がございました。  そういったことで、そういう意見をもとに、今回、まず指針ということですので、国 民向けについて参考資料2のような形で出させていただくとともに、こういった御意見 がございましたが、主には国民向けの指針については今のところ構成としては標語を中 心に考えて、あとは、参考資料2の3ページ以降が例示ということで、標語の例として、 「歩こう、一日一万歩!」とか「運動もバランス良く」とかということは書いておりま すが、こういったものをもとに小委員会で意見をいただいております。  「これだけだと、なかなか......」という意見が多かったので、これを大きくまた変え ていきたいと考えておりますが、事務局としてこういった形で出させていただいて意見 をいただいておりますし、また、後半の6ページからは、有酸素運動の例、レジスタン ト運動の例、柔軟性運動の例を挙げて、いろいろな説明をしつつ、5番目としましては、 身近な人を例にしてどういう身体活動・運動をしていったらいいのかというのが簡易的 にわかるような形を考えております。  例えば、太郎さんというのはサラリーマンの方ですので、サラリーマンの方が見られ たら、この1行だけではなく、これからまたさらにいろいろな特徴を入れたり、あるい は今の運動基準というところに照らし合わせると、今後どういう運動をどれぐらいして いかなければいけないのかということをこの中に入れていきまして、簡単に自分はどの 人に例示が合うのかなというところで見たときに、自分は今の生活習慣であればこれぐ らいのことを今後改善して運動していかなければいけないのか、身体活動を増やしてい かなければいけないのか、そういうことが簡単にわかるような形でお示しをしていけれ ばいいなと、そういう方向づけを今のところ事務局なりには考えて、このバージョンア ップについて作業をして、小委員会の一部の委員ともお打ち合わせさせていただきなが ら作業を進めている次第でございます。  そういうことで、今後はこうした小委員会での意見をいただきながら、国民向けにつ いての方向づけの作成を順次急ぎながらやっていきたいと思っておりますし、さらに、 指導者向け、サポートする人たち、そういった人たち向けに、余り指針ということには ならないかもしれませんが、ガイドライン的な位置づけで方向性を作成していくような 形で進められればいいなと考えておりますので、それに関しまして、この検討会の先生 方におかれましても、こういう方向でやっていくべきと。また、前半のところで、能勢 委員をはじめ先生方からも指針の方向にサジェスチョンをいただくような御意見もいた だきましたが、この検討会の委員の先生方におかれましてもそういった視点で御意見を 賜ればと考えております。  簡単でございますが、以上でございます。  富永座長 ありがとうございました。  それでは、太田先生にお願いしたいと思いますが、時間が押しておりますので、でき ましたら20分以内ぐらいをめどに御説明をいただけますか。お願いいたします。  太田委員 それでは、手身近に申し上げます。  参考資料1は、ざっとごらんいただければわかりますように、所要量と指針がリンク した話であるということと、現状での総論の枠組み、対象者のイメージ、そういうもの が多分書かれているのだろうと理解をしています。  次に、参考資料2ですが、これが指針の2回目に出てきました、1回目の意見をある 程度反映し、そして基準をもとにして出てきた一つの案でございます。これをもとにか なりいろいろな意見が出てきております。  この骨子案を簡単にざっとお話ししますと、2ページに策定の趣旨がございますが、 こういうことが書いてあります。  それから、考え方というところで、繰り返しますけれど、所要量と指針ということと、 国民にわかりやすいということが書いてありますし、対象も先ほどと同じように高齢者 の部分が必ずしもエビデンスがないということから、そこのところに対する論議は相変 わらず少し残っております。  それから、基本的な考え方の中で、キャッチフレーズでわかりやすい、あるいは成功 例を出していくとか、こういういろいろな工夫をしていこうという意見が出ています。  効果につきましては、ここにありますような身体的な効果のみならず、精神的とか社 会的とか、あるいは経済的なことも含めて考えながらつくっていこうということでやっ ております。  次に、3ページですが、指針の例示ということで、これは本当にたたき台のたたき台 ぐらいの感じでつくっていただいたのだと思いますが、例えば、「歩こう、一日一万歩!」 というような標語であるとか、その下に書いてある具体的な(1)〜(6)のような、どの程度 のものなのかとか、ある程度感触が得られるようなサポートもこれについて考えてあり ます。  それから、「運動もバランス良く」と書いてありますが、有酸素運動が次に(1)で書い てありまして、具体的に「週1回息のはずむような運動」ということが書いてあります が、こういう運動の中の有酸素運動という要素と、次の4ページにありますように、先 ほどもありました極めて重要な筋力の問題についても「貯筋」という言葉が書いてあり ます。それから、ストレッチング等の話も含めて、下の図の中である程度位置づけをは っきりさせていると思います。  その次の5ページに少し留意点がありますが、1)で、まだいろいろなエビデンスも 含めてこなし切れていないところが個別性の部分の、特にライフステージとか高齢者と か、そういう部分での落としどころが必ずしもエビデンスをしっかり担保しようとする と苦しいというのが現状だと、そういう話がディスカッションされていると感じており ます。  6ページ以降は参考資料ですが、かなりわかりやすいイメージで、一番上は身体活動 とかいわゆる運動というもののイメージを重ね合わせて、なおかつ強度をMETsという形 で表現して、いろいろな意味で資料になってくると思います。  それから、その下の有酸素運動の事例というものもございます。  7ページにはレジスタンス運動の事例もありますが、こういうものも絵で示さないと 全くわからないし、普及しないのだろうということで、書かれております。  5のところですが、具体的な事例を少し挙げると自分の場合に当てはめることもでき るのではないかという意見もありますし、こういうこともやっていきたいという意見が 出てきております。  この話と今から申し上げる話が少し錯綜する話になりますが、私自身が今まで運動指 針に過去3回ともかかわっていまして、今回の指針というのはかなり実効性を高めるよ うなところに相当意見が出てきていて、そういう意味ではすごく楽しみな部分が多いな と思っております。  一方で、活発な建設的な意見が出ていますので、その中で、先ほどありましたような 動機づけ、継続のところを物すごく大事にすべきであると、そこをしっかり考えるべき だという御意見、それから、個別的な配慮に対しても御意見が複数出てきたと思います。  それから、皆さんがかなり納得されている部分として、指導者というのでしょうか、 支援者というのでしょうか、そういうサポーター向けの資料、あるいは指針というので しょうか、そういうものも必要なのだろうということで、そのあたりの話が出てきてい ます。  そして、この参考資料2の中には私が今申し上げたようなことがかなりいろいろなと ころに盛り込まれた形で少しずつ入っていますが、それをさらに上乗せするような形の 建設的な意見が出ていて、大変活発な小委員会になっています。  この骨子の案をたたき台にして今いろいろな意見が出てきておりますが、意見自身が かなり集約されつつあるようなイメージを持っておりまして、内容の妥当性のことと、 普及の可能性あるいは実効性の問題の両方ともがかなりクリアできそうなイメージを持 っています。指針と所要量との関係というのがいつも出てきておりますが、ここのとこ ろは指針の理論武装として所要量というものがあると思っていますので、そこのところ の調整をしっかりやりながら、先ほど申し上げましたような妥当性があって実効性が高 いものができていけばなと期待をしています。  以上です。  富永座長 ありがとうございます。大変手短に御報告いただきました。  今、太田委員から御説明いただきました健康づくりのための運動指針、まだ骨子案で ございますが、これを見ますとかなり具体的で、日常生活での身体活動は何をどのよう にすればいいかが非常にわかりやすいですね。ですから、先ほど田畑委員から御説明い ただきました運動所要量の方は、むしろ整合性というよりも、それを達成するためには どのような運動をすればいいかという指針と見ると、これが末端では非常に重宝がられ るのではないか。その根拠として、運動所要量でこういうデータが出ているからこれだ けの運動が必要なのではないか、ということになろうかと思います。  まだ少し時間がございますので、忌憚のない御意見をどうぞお述べいただきたいと思 います。  加賀谷委員 今、座長がおっしゃったように、基準と指針の両方が一緒になってやっ ていくのが効果的だと思いますので、前の基準値のときに藤村委員から意見がありまし たような個人差とかリスクとかということについて、この留意点のところで書かれてい ますので、ここをもう少し膨らませていただいて、個人差に対応できるようにとか、運 動を初めて始める人のやり方とか、そういうことを書いていただければうまくいくので はないかなと思います。勧めるからにはリスクをきちんと明示しておかないといけない と思いますので、それについてはぜひ入れていただきたいと思いますし、特に筋力トレ ーニングが入りますので、よろしくお願いいたします。  それから、ちょっと気になっているのは、3ページに、これはまだ途中だと思います が、柔軟性を取り入れているわけですね。柔軟性については、健康増進のためにという ことで書かれていますけれど、基準値の方ではそれが出てきていないので、入れること はいいと思いますけれども、その辺のところをどうするかということをお考えいただき たいと思います。  富永座長 太田先生、何かお答えはございますか。  太田委員 全くおっしゃるとおりで、勉強させていただきます。  富永座長 それから、先ほど気がつきましたけれど、7〜8ページの事例ですが、こ ういうものがあるというのを1〜2行ずつ書いてありますが、7ページの3)の一郎さ んの場合は75歳男性、8ページの5)の次郎さんは15歳、さらに9)の三郎さんは10 歳ですから、この運動指針は小児・成人・高齢者のすべてを対象にした指針ということ になるのでしょうか。  太田委員 理想的には多分そういうことなのだろうと思うのですが、エビデンスに基 づいてどこまで広げられるかというところで、正直言って難しい部分があると思ってお ります。さりとて、何もないような状況ではどうなのかなとも思いますし、その辺をど ういう形で、例えばもう少し高齢の方に対してどういう表現でやっていったらいいのか とか、やれるのかとか、そういうことを少し検討すべきではないかと思いますが、一方 で、確実にエビデンスがあって目的をはっきりさせていこうという最初のフレームの参 考資料1とか、基本的な考え方でいくと、さっき小林先生からも御意見がありましたが、 生活習慣病の予防とか、もっと最近の言葉でいえばタメルシンドロームのようなものを 考えていく限定版の方が理論武装はしっかりしていると、その辺は両方感じておりまし て、ぜひ御意見をいただければと思っております。  富永座長 私は先ほど事例のところで年齢を問題にしましたけれども、以前、厚生労 働省では「健康づくりのための食生活指針」を作りまして、対象を特性別に小児・成人 ・高齢者・母子と分けて指針を作りましたが、食生活では小児と高齢者では随分違いま すから当然分けた方がいいのですけれど、この運動指針におきましても、例えば3ペー ジの標語例1の「歩こう、一日一万歩!」ですと、高齢者では到底達成するのは無理で はないかと思いますね。標語例2の「運動もバランス良く」はいいかもしれませんけれ ど、事例で高齢者が挙がっているのだったら、年齢などを考慮した方がいいと思います ので、できることなら、小児向け、成人向け、高齢者向けぐらいに分けた指針を出して もらうと非常にいいと思いますが、いかがでございましょうか。  太田委員 現時点ではっきり言えることは田畑先生がレビューしてくれた部分だと思 うのですけれど、それに高齢者の部分でかなり元気な方をどこまでどのようにインクル ードできるのかというのが、現時点でやれるのかやれないのかという部分が出てくると 思います。  それから、エビデンスが出てきたりすることによって、もっと高齢者の幅広い範囲ま でやれるのかどうかということも出てくるかもしれません。一方で、全く違う話ですが、 僕は介護予防の評価委員会の委員もやっていますが、そこの中でまた介護予防のための いろいろな仕組みが動いていまして、給付以外にモデル事業や支援事業のようなことも 行われようとしていますので、そういう意味で、現状でどこまで高齢者にどういう形で 踏み込むのかというのはなかなか難しいなと感じています。  書きぶりで、60歳代までのエビデンスはこれで何とか担保できたとして、そこを超え た場合に、安全性を考えながらバクッとした表現で書いておくべきなのか、今回は余り はっきり書かないのか、ぐらいなのかなというところで正直言って迷っています。  一方で、先ほど斎藤委員からもありましたように、生きがいの問題などを考えると、 物すごく大事な部分がありますので、少なくとも将来いろいろな形で高齢者の運動所要 量指針のようなものが出てくるべきだとは思いますが、現状でどこまで書けるのかとい うと、結構厳しいというのが正直なところです。  富永座長 ありがとうございました。もちろんきちんとしたデータに基づいて指針を 作るのは高齢者向けは大変難しいと思いますが、4月から介護予防で支援事業などを市 町村が始める段階になっておりますので、これからデータを収集して、3年とか5年か かってデータが出て、それからというのはちょっと遅過ぎますので、今ある資料に基づ いて、余り理想的ないいデータではなくても、それなりのデータに基づいて、暫定的で もよろしいから高齢者向けの指針もあった方が、介護予防事業との関係を考えると非常 に必要性が高いのではないかと思いますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。  太田委員 介護予防の中でも、データの収集と分析あるいは追跡みたいなことが重要 だという意見がありまして、実際に16年に行ったモデル事業をフォローしているような データを作り始めているようなんです。したがいまして、これはいろいろな調整を事務 局の方でお願いしていくようなことがまず一つは必要になると思いますが、一方で、今 回の基本的な所要量指針という考え方の中で、対象をどのようにしていくのか、そして その根拠としてどういうものがあるのか、あるいは今回はどうするのかとか、そういう ことはまたここで委員の先生方の御意見を伺えればと思います。私はその指針の方の小 委員をやっていますが、かなりつながってくる話なものですから、そういう意味では、 正直なところ、苦しいなという部分もございます。  田中委員 今のことに関連しまして、久野先生が中心になって、6年間にわたり科学 振興調整費で大型プロジェクトが行われたわけですが、その中で私どもも参画させてい ただきまして、その後も続けていますけれど、500名ぐらいの高齢者、上は94歳まで介 入しておりますが、歩数の方は今ちょっと記憶がないのですけれど、やはり1万歩を目 標ということを掲げています。  それから、有酸素運動ですけれど、週1時間というのは、この委員会でも発言させて いただきましたが、ちょっと少な過ぎる感がするのですけれど、週1時間「以上」と入 れていただきたい感じがするのですが、私たちが介入すると、平均すると8METs・時/ 週いっているんです。それを楽しくやっているんです。ですから、ここで掲げてある目 標というのは、高齢者90代まででいいんじゃないかという気がします。  富永座長 特に健康な高齢者ではないわけですね。  田中委員 例えば、要介護1まで入っております。特に石川県根上町でやったのは120 名ですが、それは介護認定者以外の高齢者についてランダムで抽出した方々です。  斎藤委員 この運動指針の場合、特に標語などはハイリスクアプローチとポピュレー ションアプローチを厚生労働省でも分けて考えていて、これはポピュレーションアプロ ーチだと思います。ですから、少し威勢のいいものを出してもそんなに問題はないんじ ゃないか。  運動の場合、やり過ぎることのリスクというのは結構皆さんもおっしゃるし、もちろ んこういう研究会ではそれに触れるのは必要なのかもしれませんが、やり過ぎると疲れ ちゃうんですよね。ですから、一番簡単な自覚症状としてそのサインをどう考えるかと いうことも、一般人に何METsと言うよりは、「疲れたらやめましょう」とか、疲れても やらせる自動運動機などにかかっている人はいないと思うので、それはハイリスクアプ ローチで介護の人にやるのは専門家がきちっとついてやっているので、それは都道府県 できちっと指導を受けた人がやっているわけですから。  ただ、太郎さん、花子さんのところで、うつ病だった人をどうするかとかいろいろあ りましたけれど、この辺になるとハイリスクアプローチっぽいこともあるので、この辺 が細分化していった場合、そこにはやはり注意が必要だろうという気がします。  それから、我々以上の世代というのは、戦中戦後の大変な時代を知っている人たちが 多くて、逃げ回ったり食べ物が少なかったりして耐えてきて、今、健康寿命も上がって、 平均寿命を保っているのはその人たちではないかと思っているんです。むしろそういう 人たちよりも次の世代、あるいはその次の次の世代が高齢者になったときに、もっと下 の人が支え切れるかと。支えられる方も支える方ももうどうしようもないという状況に ならないように、ターゲットというのはその辺なのかなと。  そうすると、「働き過ぎのあなた」とか、「残業ばっかりのあなた」とか、40代ぐら いの男の人とか、あるいはゲームで家に閉じこもって運動もしない30歳前後の男の連中 とか、秋葉原に行くとうようよいますけれど(笑)、大体ブクブクと太っていますよ。 そういう人たちに対する脅しですね。  これは国ではなかなか書けないのだったら、この間の小委員会でも申し上げたのです が、川柳でも年1回やって、それは国が書くのじゃなくて、応募した人が書いたのだと いうことで、「こんなことしたら死んじゃうよ」とか、どぎつい川柳をどんどん集めて、 それは皆さんが応募したものだということで発表していくという手法もあるんじゃない かなという気がします。もっと激しく脅す必要があるんじゃないかと思います。  富永座長 両刀遣いですね。ありがとうございました。大変いい御意見です。  泉委員 今と同じような感じなのですが、一般向けのハイリスクのいうところのイメ ージがはっきりしないんですね。ですから、まず運動指導を始めるときには、現在の身 体活動をきちんと見てから指導を行うことが大切です。特に専門家の場合はですね。例 えば、1日1万歩歩く場合であっても、今現在2,000歩しか歩いていない人が行う1万 歩と、6,000歩の人が行う1万歩では全然異なります。5ページの運動量の基準値のと ころや6ページの最大酸素摂取量の基準値のところは、3段階あって、一番低いところ に属するところは、まず、第1段階へ、第1段階の人は基準値(第2段階)へ、現在第 2段階の基準値付近の人は最上の第3段階へと層別しています。  一方、身体活動のところだけは、基準値を23METs・時/週の一つだけで、歩行 中心の場合は1万歩となっています。ここのところも例えば4000歩以下の人はひとまず 4000歩を目指して、4000歩の人は6000歩を目指して、6000歩できている人はさらに上 へと上記に合わせてほしい。実際は4,000歩以下の人というのが15〜20%いるわけです ね。ここに属する人にかなり病気があるので、この4,000歩の人が6,000歩に行けばか なりよくなるんです。ですから、今自分はどれくらい歩いているかというベースライン をはっきりしてから指導を開始することが大切です。 それから、生活習慣病やメタボリックシンドロームが指導の対象となりますが、メタ ボリックシンドロームにもかなり治療の対象に近いメタボリックシンドロームと最近メ タボリックシンドロームになったばかりの人がいます。ですから、健診で運動が必要だ と言われたら、健診施設でメタボリックシンドロームも含めて検査成績についてきちん と書面で記載してもらい、運動の専門家へ伝達していくことが重要で、そこもちゃんと 把握してから運動指導することが必要となります。  何しろ一番大事なことは、幾らいい目標とか指針をつくっても、実行できなければ何 もならないんですね。今、確かに1万歩というのはほとんどの人が常識的に知っている のですが、ほとんど守られていないんですね。そのような状況で、また1万歩といって も、何らアピールがない。  ですから、僕は、かえって「1,000歩でいい」と言っているんです。そういうふうに インパクトのあるように、「できない人は少しでもいいんですよ」と、入り口をもっと 広くしてほしいんです。それから目標を徐々に上げてほしいと思います。 それから、文章に記載する場合には、参考資料2の3ページのところに「歩数を増や すヒント」がのっていますが、ここのところに、「全然やっていない人は1,000歩でも よくなります」とか、そういうフレーズをやってほしいんです。少しでもやった人では、 歩かない生活から歩き始めた生活に至る前後の差はすごく大きいです。いったん歩き始 めた人がだんだん歩数を増やしていくのは簡単なんです。ですから、身体活動が全く不 活動の人がわずかでも活動的な世界へ行くにはどうしたらいいかということも、この指 針にはすごく大事ではないかと思います。  富永座長 大変いい御意見だと思います。ありがとうございます。  樋口委員 何をやるとか、どういう年齢層でやるとか、そういうことはここの中に入 っていますけれど、どこでとか、具体的に自宅でやれそうなものもあるし、公的な体育 館でやるのもあるし、フィットネスクラブでもあるし、そういうのはどこでやればでき ますよみたいな、そういうことをもう少し具体的に盛り込んでいただいた方がいいと思 うのです。イメージがもっとはっきりできると思います。  塙委員 現場で指導している中で、ここでは「運動しましょう」ということが指針な ので示されているのですが、頑張り過ぎてしまっている人とかをとめるとか、体調が悪 いのに頑張ってやり過ぎてしまうという人もいるので、留意点などに、「痛いときには やめるのだ」とか「風邪をひいているときはやめるのだ」といったことも1項加えてい ただいた方が、現場ではそういうときのとめですごく苦労しているので、そういうのが あった方がいいなと思っています。  富永座長 ありがとうございます。  ほかに御意見はございますか。  加賀谷委員 確認ですが、運動の基準と指針とは整合性があるものと考えていました が、座長もおっしゃいましたけれど、指針を出しているところは、高齢者の運動という のは需要としては今ぜひ必要なところだと思うのです。それは、日本人のデータはいろ いろあるけれども、こういうレベルの高いものにひっかかってこないというので、基準 の方では今出せないわけですね。それを指針の方では出すということについて、それは いいということの了解でしょうか。それは出すということなのでしょうか。基準値の方 には出せないけれども、指針では出すということはしていくという方向なのかどうか。 それを確認したかったのですが。もちろんいろいろなデータはいっぱいありますし、私 などもあると思っていましたけれど、実際にはそういう基準でやると、ないということ なのですね。ですから、指針を出すときに何を根拠として出すかというところを......。  富永座長 ですから、指針の方は、ちょっと苦しい言い方ですけれど、2つあると思 います。1つは、ハードなデータがあるものに基づいて出すもの。もう1つは、それほ どハードなきちんとしたデータはないけれども、それなりの指針を作るという方向でと りあえずスタートして、弱いところは後で補強してまた見直すという手順をとらないと いけないのではないかと思いますけれど。何年も待っていたらまずいと思いますので。  加賀谷委員 そうなんです。今、絶対必要だと思いますので。  富永座長 この委員会でいろいろ御意見をお聞きしましてそういう方向に持っていけ ばいいと思いますが、運動指針の小委員会の方は今日は中間報告でございまして、骨子 を御説明いただきましたので、まだ所要量などの最終報告案が出てくると思いますので、 今日の御意見を考慮していただいて、太田先生には無理難題がたくさん行きますけれど、 それを考慮に置いて、報告書で少し補強していただければよろしいのではないかと思い ますが、いかがでしょうか。  太田委員 作りたいというそれはよくわかりますし、それはそうなのですけれど、責 任のあるデータとか、いろいろな情勢を含めてどうなのかなというところで、また小委 員会の中で検討させていただきたいと思います。  富永座長 それでは、小委員会で事務局ともすり合わせしながら御検討いただきたい と思います。  それでは、予定の時間が参りましたので、本日の検討会はこれで終了させていただき ます。先生方、どうもありがとうございました。  中島参事官 本日は、本当にありがとうございました。最後に事務局の方からコメン トをさせていただきます。  今日いただいた御意見ですが、例えば70代以上のエビデンスが必ずしもないという御 意見もあり、それは事実としても、小児・成人・高齢者向けという形でということもあ ったわけです。今後、太田先生の方とも相談をさせていただきますけれど、ある意味で は、私ども事務局の認識としては、今度の運動指針というのは過渡期の運動指針なのだ ろうという認識がありまして、今後、私どもの省としてはメタボリックシンドロームの 対策を充実強化させていきたいということなので、中心は成人の人に対してメタボリッ クシンドロームの有病者、予備群にならないようにどうしていくかということがあるわ けです。  一方で、今日の御意見に出たように、介護予防、まさに骨・運動器的な廃用症候群に なっていくという点では、筋力といっても重要になってくるのだろうし、そういう運動 をするときには柔軟性みたいなものも要るのだろうということがあって、その意味では そこの部分が、運動所要量のところでも運動指針のところでも、芽は出しているけれど も、必ずしも十分にはなっていない。それはデータ不足等もありますし、私どもの役所 の中で生活習慣病予防と介護予防としてのトータルのグランドデザインというものが必 ずしも描き切れていないところがあります。  そういうところがあるのですが、そういうこともきちっと目配りしているのだよとい うことを示す意味で、ホワッと筋力について定性的に書き入れてみたり、高齢者のこと も運動指針においては少しは念頭に置いているということですが、今回の運動指針につ いて、また、所要量についても、成人層を対象にしたメタボリックシンドロームという ところに主眼を置くということ、ここだけはまずしっかりしておきたいということでご ざいますので、そこもまた太田先生と相談をさせていただいて進めさせていただきたい というのが1点です。  2点目は、藤村先生の方からは個人差をどう考えるのだという極めて重要な御指摘を いただきましたし、泉先生からは、身体活動量の少ない人、運動習慣のない人をどうす るのだというところもあって、そういうところも踏まえてやっていかなければならない と思っておりますが、実は、個人差なり個々の人に対してどのようにしていくかという のは、まさに健診結果を踏まえてのハイリスク者についての個々の保健指導になってく ると思うわけです。  今回の運動基準、さらには運動指針の策定を踏まえて、厚生労働省としてはメタボリ ックシンドロームに着目をして、新たにどういった健診、そしてどういった保健指導の プログラムを組むべきなのかということについて検討させていただきたいと思っており まして、そうしたものの保健指導のプログラムの中で、学習教材などもいろいろとサン プルとしてもお示しをして、その中で、個人に対応した保健指導というものをどうして いくのかという手法等々を提示したいと思っておりまして、近々にでもこの検討会を立 ち上げたいと思っております。  その前提となるものとして、まず運動面では運動所要量であり、運動指針ということ をお示しいただいて、こうしたある意味での基本的な知識、または基本的なメッセージ といったことを踏まえながら、新たな健診・保健指導プログラムの中で個人差、さらに はハイリスクの対応に応じた形での個別指導の学習教材などを提示したいと思っており ますので、ある意味では、そこの個別の部分についてはこれから検討会を置かせていた だいて検討させていただくことに委ねていくのかなという考え方の整理をして取り組ま せていただいているというところも、御理解いただければと思っております。  そういう形で、今後また太田先生のお力も借りながら、事務局としても運動指針をよ りよいものにまとめていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  以上でございます。  中野室長補佐 次回の日程に関しましては、また事務局で日程調整させていただきま すので、よろしくお願いいたします。  本日は、どうもありがとうございました。                                    −了−  (照会先) 厚生労働省健康局総務課 生活習慣病対策室 内線2974,2338 - 38 -