06/01/17 労働政策審議会労働条件分科会 第49回議事録 第49回労働政策審議会労働条件分科会          日時 平成18年1月17日(火)          17:00〜          場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○西村分科会長 第49回労働政策審議会労働条件分科会を開催いたします。本日は久野 委員、石塚委員、小山委員、島田委員、谷川委員が欠席されております。また、渡邊佳 英委員の代理として尾形さんが出席されております。  本日の議題に入る前に、委員の異動がありましたので事務局から説明をお願いします。 ○大西監督課長 それでは前回の労働条件分科会以降、労働政策審議会労働条件分科会 の臨時委員の交代がありましたので御紹介いたします。1月13日付けにて山口洋子委員 が辞任され、後任として同日付けにて、日本サービス・流通労働組合連合事務局長の八 野正一様が労働者代表の臨時委員に御就任されましたので、御紹介いたします。 ○八野委員 こんにちは。サービス・流通連合で事務局長をやらせていただいています 八野と申します。出身は伊勢丹労働組合です。よろしくお願いします。 ○西村分科会長 本日の議題に入ります。最初に今後の男女雇用機会均等対策の女性の 坑内労働関係について報告をしていただき、その後、労働時間等設定改善指針(案)に ついて御議論をいただいた上で、労働契約法制の関係について議論をいただきたいと思 います。まず、今後の男女雇用機会均等対策について関係部分を事務局から報告をお願 いいたします。 ○石井雇用均等政策課長 貴重な時間を頂戴しまして、ありがとうございます。資料2 に基づきまして順次御説明させていただきます。労働政策審議会雇用均等分科会では、 平成16年9月から男女雇用機会均等のさらなる推進のための方策、これにつきまして御 審議いただいてまいりました。昨年12月27日、資料2−1の見出しにありますが、今 後の男女雇用機会均等対策について厚生労働大臣宛ての建議が行われています。この中 には女性の坑内労働の規制についての問題も取り上げられておりますので、経過も含め て若干御説明をさせていただきます。  均等法は平成9年の改正で、労基法の部分も見直されておりますが、そのときにも労 働基準法第64条の2の女性の坑内労働の禁止に関する規定は特段の見直しはなかった ところです。お手元の資料2−2をご覧ください。ここに関連規定を載せています。こ こにあるように、現行法ですが「使用者は満18歳以上の女性を坑内で労働させてはなら ない」と、こうした原則があります。ただ、昭和60年の改正で若干例外が入っておりま して、下のほうにありますが「臨時の必要のため、坑内で行われる業務で厚生労働省令 で定めるものに従事する者については、この限りではない」、こうした規定がございます。  そして、下のほうに規則を掲げておりますが、ここにあるような5種類の業務、医師 の業務等ですが、これが臨時のために行うことができる業務とされています。ただ、「妊 産婦」とありまして、これは妊娠中の女性と産後1年を経過しない女性ですが、妊産婦 については、その場合であっても規制がありまして、妊娠中の女性は一切就労禁止、産 後1年を経過しない女性については、使用者に申し出た場合に働かせてはならない、こ うした母性保護の規定になっているわけでございます。  ここで若干の補足をいたしますと、この規定は労基法制定当初からあったもので、そ の規制の中身自体はかなり前の昭和3年に遡ります。もともと念頭にありましたのは、 炭鉱などの鉱山坑内労働でした。ただ、現在鉱山は全国で19か所あり、そのうちの1か 所がなくなるという報道もなされております。そこで働く坑内労働従事者も1,000人程 度になっているわけですが、一方で坑内労働の規制はトンネル工事、水道、下水道、都 市土木にかかわるものも入っておりまして、そういう分野では今後ともまだまだ就労の 機会はあるわけです。鉱山だけではないというのが現状です。  そうしたことがありまして、次の資料2−3をご覧いただきたいと思います。女性の 坑内労働に係る規制改革の要望が平成16年、平成17年にわたって、東京都と日本経団 連から出ております。基本的に技術者についてですが、坑内工事の監督業務、管理業務 等に従事することができるように規制を見直してほしいというのが、共通の要望でした。  東京都からは発注者の立場で、水道工事等の検査、監督をする際に女性技術者に入っ てもらえないのは非常に困るということです。日本経団連からは、主としてこれは建設 業という施工業者の立場から、せっかく採用した女性技術者の活躍の推進を図りにくい、 採用、登用面で支障が生じるということでお話があったわけでございます。一方、ここ にも記載がございますが、建設現場の安全・衛生のレベルが上がってきている、女性の 土木技術者も増加傾向にあるということがありまして、男女の雇用機会均等と職域拡大 の観点から要望があったということです。  そうしたことから、男女雇用機会均等のさらなる推進のための方策の検討項目の中に、 この問題も挙がってきたという経過がございます。この部分は幸い労働者側委員からも、 内部の組合からも規制緩和の要望が出ているといったようなお話もございまして、意見 の対立はさほどなかったわけです。資料2−1に戻っていただきたいと思います。これ は建議の頭文ですので、次の頁にいきまして、これは雇用均等分科会から労働政策審議 会に宛てて出された報告です。ここでは坑内労働の部分ではありませんが、若干意見が 付いているということが示されております。  坑内労働のところですが、4頁の8の項目をご覧ください。「女性の坑内労働について、 女性技術者が坑内の管理・監督業務等に従事することができるよう、妊産婦が行う坑内 業務及び一部の業務(作業員)を除き規制緩和を行うことが適当である」という内容を 頂戴したわけでございます。また、この項目では併せて労基法上の母性保護規定につい ても取り上げておりますが、この点につきましては科学技術的な知見に照らして、今後 とも引き続き検討というふうにされているところでございます。  この建議の中では法的整備の内容として、坑内労働以外にも7つの項目に亘って取り 上げられている項目がございます。この建議全体を受けまして、いま次期通常国会に所 要の法案を提出すべく検討を進めているところでございます。御報告の内容は以上でご ざいます。 ○西村分科会長 ただいま事務局から報告いただいた事項につきまして、何か御質問が あればお願いしたいと思います。  特にないようですので、次の議題に移ります。次の議題である、労働時間等設定改善 指針(案)及び同指針案に関する今後の予定について、事務局から説明をお願いします。 ○坂本企画課長 お手元の資料No.3をご覧ください。この「労働時間等設定改善指針 (案)」につきましては、先に一度項目案の形で御審議をいただいたところですが、その 際にさまざまな御意見を頂戴いたしたところです。今回はそれを踏まえてこの指針案を 作成したところです。  指針案の全体の構成についてですが、基本的には項目案を踏襲して、前文、Iの「労 働時間等の設定の改善に関する基本的な考え方」、IIの「事業主等が講ずべき労働時間等 の設定の改善のための措置」の大きく3つに大別していまして、さらにIIの部分につい ては設定改善法の第2条第1項から第4項までの区分に基づいて、「1 事業主が講ずべ き一般的な措置」、「2 特に配慮を必要とする労働者について事業主が講ずべき措置」、 「3 事業主の団体が行うべき援助」、「4 事業主が他の事業主との取引上配慮すべき 事項」の4つに区分をしています。順次、簡単に指針案に即して御説明させていただき ます。  1頁の前文の部分です。前回の御議論では、「これまでの建議等に即して、経緯などに ついて少し丁寧に記述をしていただきたい」という御意見を頂戴いたしたところで、そ れを踏まえてこれまでの経緯、昭和62年からの労働基準法が改正された以降の経緯等に ついて、あるいはその後の取組、現状と問題点、さらには今回の法律の改正の趣旨等に ついて、順次1頁から2頁にかけての前文のところで記述しています。  2頁です。「I 労働時間等の設定の改善に関する基本的な考え方」についてです。こ れについては建議等を踏まえて4つの項目について掲げています。1番目は「労働時間 等の設定の改善を図る趣旨」で、労働時間等に関する事項について、労働者の生活と健 康に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへ改善することが重要であること 等について記載しています。  2点目として、その中においても労働時間短縮の必要性、重要性について触れていま す。3番目に、労働者の生活と健康に係る多様な事情を踏まえた労使による自主的な取 組の推進ということについての必要性、4番目として、少子化対策など他の法令、計画 等との連携の必要性等について記述しているところです。  3頁です。「II 事業主等が講ずべき労働時間等の設定の改善のための措置」の部分で す。1として「事業主が講ずべき一般的な措置」で、7項目にわたって記載しています。 3頁(1)の「実施体制の整備」です。(2)にあるように労働時間等設定改善委員会をは じめとする労使間の話合いの機会の整備の問題、あるいは次の頁の(5)にあるように、計 画的に取り組む必要性等々について記載をしています。また、(2)ですが、「労働者の 多様な事情及び業務の態様に対応した労働時間等の設定」として、業務の繁閑、労働者 の多様な事情を踏まえて、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制等の活用、 その検討といったことについて記述しています。  5頁です。(3)の「年次有給休暇を取得しやすい環境の整備」です。年次有給休暇を 取得しやすい雰囲気づくりや労使の意識改革を図ることの必要性、あるいは計画的な年 次有給休暇の取得の促進といった事項について記載しています。また、その下の(4) の所定外労働の削減」ですが、「ノー残業デー」等による所定外労働時間の削減、限度基 準の遵守等について記載しています。  その他、6頁にかけて、「(5)労働時間管理の適正化」、「(6)ワークシェアリング、 在宅勤務等の活用」、「(7)国の支援の活用」等について、それぞれ先の項目案等に即し て記述しているところです。  なお、この6頁の(7)の「国の支援の活用」の部分、9頁に出てくる(P)という ことで、ペンディングと記載していますが、政府の予算案としてはまとまったところで すが、指針案について財務省等との協議がまだ行われていないこと、また今後、予算委 員会等、国会の審議が始まりますので、その関係等もありまして、とりあえずペンディ ングとさせていただいていますが、こういった文言についても最終的にはきちんと整理 をしたいと思っています。  次に「2 特に配慮を必要とする労働者について事業主が講ずべき措置」です。6頁 以降に具体的な類型ごとに配慮が必要な具体的事項について記述しています。主な点の みを御説明させていただきます。7頁「(1)特に健康の保持に努める必要があると認め られる労働者」のところです。労働安全衛生法に基づく労働時間の短縮、あるいは深夜 業の回数の減少など、必要な場合にはそういった措置を取っていただきたい旨、あるい は病気休暇から復帰する労働者については短時間勤務から始める等の配慮について記載 しています。  また、その下の「(2)子の養育又は家族の介護を行う労働者」については育介法に基 づく諸措置の導入、それらの制度を利用しやすい環境の整備などを図っていただきたい 旨が記載してあります。  8頁の「(3)妊娠中及び出産後の女性労働者」の項目です。この部分は先の項目案に は記載しておりませんでした。(2)の「子の養育又は家族の介護を行う労働者の類型」 の中で記載を考えていましたが、かなり煩雑にもなりますし、長くなるので、独立させ たほうがいいかと考えまして、新たに項目として建てています。内容的には産前産後休 業の取得の問題、申請があった場合にこういった方々に対しての時間外労働等の免除措 置、母子保健法に基づく保健指導等を受けるための時間の確保、といった必要な配慮事 項について記載しています。その他、「(4)単身赴任者」、「(5)自発的な職業能力開発 を図る労働者」、「(6)地域活動等を行う労働者」等について、各々一定の配慮事項につ いて記載をしています。  最後の9頁ですが、「3 事業主団体が行うべき援助」、「4 事業主が他の事業主との 取引上配慮すべき事項」についても、配慮すべき事項を簡単に記載しているところです。 以上が指針案の概要です。なお、今後のスケジュールですが、本日、当分科会において 指針案がおおむね問題ないということであれば、今後は法律の規定に基づいて関係省庁 との協議を行わなければいけないことになっています。また、都道府県知事の御意見を 聴取する必要がありますので、その両措置を行いたいと思っています。その結果を踏ま えて、次回に御報告いたしたいと考えています。以上です。 ○西村分科会長 ただいまの事務局からの説明について、御質問、御意見がありました らお願いします。 ○田島委員 基本的には分科会で議論してきた中身の指針案だろうと思いますし、こう いう方向になるのかなと思います。しかし一つは指針と直接かかわるかどうかわかりま せんが、賃金不払残業の問題が毎年たくさん出ているという状況の中で、法令遵守とい うか、他の法令との関連などは出ていますが、賃金不払残業をなくすような指導がこれ から求められるのかと思います。  それから、基本的には「設定」と言いつつも、労働時間の短縮があるわけですし、そ ういう意味では、以前に「仕事と生活の調和に関する検討会議」でデータとして出され ていたのが、例えば残業の割増率25%ですが、人を1人新たに雇用する場合と残業の場 合の均衡が52%ぐらいの水準だったと思いますが、そういう意味では割増率があまりに も低いために時間外があって、長時間に結び付いているという問題があります。そこで、 割増率の改善なども今後は検討の中に入れていく必要があるのかと思うのですが、その 点については厚生労働省側で割増率について検討されているかどうかをお聞きしたいと 思います。 ○大西監督課長 割増率についてですが、「厚生労働省側で」というお話でしたが、現在、 今後の労働時間の在り方に関する研究会が行われていまして、1月11日の研究会として の報告の素案の中には、一部長時間の過重労働、そういう残業をなくすための割増率に ついて工夫する、増やすことも含めて、あるいは代償休日もどうかという提言は入って いました。これについては、次回研究会で報告をまとめていただくことになろうかと思 いますので、ここで言うのは気が早いかもしれませんが、その後、こちらの審議会に報 告させていただいて、御議論を深めていただければと考えています。 ○新田委員 この案について言えば、法律そのものもそうなのですが、率を上げるとい うことは労使協議というか、現場の話合いが大変重要な位置付けになると思っています。 時短促進法のときに、我々は労使で目標を定めながら進んできたという経過があります。 そういう意味ではこの法律が施行されるときにこの指針が提示されていくわけですが、 そこにも明確に「労働時間の短縮というものが大変重要なのだ」と明記されています。 時短の重要性についてはまさに議論もありましたし、ここにあるように企業の実態とい うか、そのことと働く側の現実というか、そのことをきちんと突き合わせをしながら作 っていくことが必要です。そういう意味ではもちろん時短も目標の大きな一つとして、 労使間で掲げられると思います。ここに書いてある取組をやってみてはどうか、取り組 んでみてくださいという項目について、きちんと話合いをされるということをこれから 指針として提示されていくときに、何よりも強く出していただきたいというのが第一で す。  それから、こういう「である」というような書き方ですし、ズラズラ書いてあります から読みづらいこともあります。また、労使間で具体的に話し合っていくときに、より 議論しやすい形、あるいは「このような例があります」「実効を上げている方法はこのよ うなものがある」というのを例示してもらうとか、分かりやすく工夫したパンフレット も提示していくことをぜひやっていただきたいと思います。  私は議論の経過からしても、まさに法律で罰則があってどうのこうのということでは ないわけですから、その労使の協議そのものが実効を上げていくために大変重要だとい うことを重ねて強調したいと、そのための努力をしていただきたいということをお願い したいと思います。 ○奥谷委員 いつも労働組合の方のお話を聞いていて感じるのは、労働を時間で計算す るというか、これから非定期労働となってきますと時間でカウントできないわけです。 アウトプットで成果が問われるわけです。そうしますと、24時間、365日、グローバル な中で労働するとなってくると、土曜、日曜、例えば休日出勤すると時間外労働の手当 が50%アップとか、普通の残業手当が25%アップということ自体がナンセンスで、むし ろ年俸制とか、そういった形で、アウトプットした形で給与をどう出していくかという 形で、時間単価でどうのこうのという時代ではなくなってきつつあるわけです。それを いつも時間で、1時間単価いくらでそれを25%アップする、50%アップする、それをも っと上げろとか、工場労働とか時間で計れる労働ならいいですが、ソフトの場合は成果 がいちばん重要なわけで、時間では計れないものなのです。それを時間で区切ってしま うのかということは問題というか。  労働時間の短縮ということをおっしゃっていますが、むしろこれから労働者の人口は 減っていくわけで、そうなってくると生産性を上げていくために、労働時間の短縮より も、どうやって効率的に時間を有効的に使って生産性を上げていくか、そういう流れの 方向にいくわけです。ですから、従来の労働時間短縮という、先ほど女性の坑内労働の 問題もありましたが、ああいったものももう全くナンセンスなことで、できる女性は坑 内でも何でも入ってやればいいことであって、そういった規制、保護することが差別を 生むわけで、労働時間云々ということも、時間で労働を計るということの考え方を改め てほしいという気がします。 ○新田委員 いまのお話で「ナンセンス」という言葉も出たのですが、具体的にどこで どのような規制があるために女性への差別の原因になっているとおっしゃっているのか を聞かせていただけますか。 ○奥谷委員 ですから、先ほどの女性の職域拡大ということがあります。その職域拡大 ということで、坑内に入れない、いま土木関係にいく男性がかなり少ないわけで、そこ にチャンスがあって女性が土木関係にいって業務監督をやろうとする、しかし坑内に入 れないので、監督職の仕事が女性に与えられないわけです。要するにマネジメントの仕 事が与えられないということは差別になってくるわけで、むしろマイナスになるわけで す。それよりもフリーにさせることによって、できる人はやればいいわけであって、全 ての女性に対して保護する必要はないと、できる人がやればいいということです。 ○新田委員 その他の具体例はありますか。 ○奥谷委員 他の具体例は、例えば今では残業規制はかなり緩くなりましたが、いまま で女性に残業規制なり、深夜労働規制がありましたが、その規制があるために女性が管 理職になれなかったとか、そういったこともあったわけで、その規制は取り外されまし たが、深夜労働を含めて、そういった超過勤務も含めて、そういった規制があるために 女性が管理職になれなかったという部分はかなりあったわけです。むしろこれは労働組 合が女性差別をあえてするという、男性保護のほうに走っているという感じがしました。 能力のない男性が管理職に就いてしまう場合がかなりあったわけです。 ○八野委員 私の業種は百貨店、また小売りというところですから、いま言われたよう なところはかなり昔には見受けられました。しかし現在ではかなり変わってきているの ではないかと思います。それと、時間と生産性は常に課題になるところであって、生産 性の計り方は非常に難しい問題であるのではないかと思います。確かに社会経済生産性 本部で調べられたものもありますが、それが本当にイコールマッチングしているのかと いうところが、かなり疑問点が出てくるところかと思います。  こういう指針は業種、業態もさまざまなところ、または現場の労働者やそこで出てく る指揮命令者が、どういう業務を把握し、それを指示命令し、それをそこで働く労働者 がどういう意識でやっていくのかということが非常に重要なのではないかと思います。 ただし、ここの前文で書かれているように、時短が進んでいるわけではなくて、ここで 出てきている労働時間の二極化ということが統計でも出てきています。これがいま日本 が抱えている大きな問題点なのではないかと思います。それと、人口減少になったとき にどう働いていくべきかということは、これは政労使が真剣に考えていく問題でしょう し、少子化の問題でも大きくかかわる問題ではないかと思います。  私の意見としては、こちらで指針が出されているのですが、これを各企業に徹底して いこう、また労働組合の中でも徹底していこうとなったときに、まだまだ指針の文面か らは読み取れないところがあります。先ほども意見が出ましたが、もう少しモデル例を 出していただくとか、設定改善委員会がどういう機能を果たすのかということが明確で はないように思います。私のイメージするところでは、労使の中の協議で、お互いに時 間に関してどういう考え方を持ってやっていくのか話し合うことや業務の把握からやっ ていくべきだとは思うのですが、労働組合がないところなどについては、もう少し明確 なものがないと全体が進まないのではないかと思います。ですので、労働時間等の設定 の改善にかかわる措置に関する計画も、わかりやすいようなモデルを別途作っていただ くようなことができれば、大変ありがたいと思います。 ○坂本企画課長 今の御意見等を踏まえまして、この指針の周知、施行の段階におきま しては、なるべく労使の自主的な取組に資するように、例えばモデル例等もお示しして いくなど、分かりやすい形でやっていきたいと思います。そうはいえども、労使の自主 的な話合いにおいていろいろ決まるところもありますので、私どもとしては分かりやす く考え方を説明するという努力をしていきたいと思っています。 ○西村分科会長 より理解しやすいパンフレットなどもということですね。その他に何 か御意見はございますか。 ○平山委員 前回この指針についての議論のときは欠席していましたので、すごくプリ ミティブな質問になるかもしれません。2頁に設定の改善に関する基本的な考え方が4 点出ていまして、これは従来から議論してきたとおりだと思います。3点目に「個々の 労使による自主的な取組を進めていくことが基本だ」と。その次の3頁から「事業主が 講ずべき一般的な措置」というのは、非常に具体的に並んでいるわけです。指針がどう いう表現で出されるのかというのはありますが、全部事業主が講ずべき一般的な措置の 結語が、「何々すること」となっています。  ほとんどが「何々すること」になっているのですが、中身としては「こういうふうに したほうが望ましいですよ」とか、「こういう例があります」とか、労使が自主的に取り 組むときの、あくまでも指針としてこのような方策があるのですと、そういうものが示 されていると理解してよろしいのですねという質問です。これは少なくとも、指針とし て出るということで、事業主が講ずべき一般的な措置ということで表現されて、「何々す ること」というのが出ますので、こういう議論をした経緯をわかっている人は意味合い がわかるかもしれませんが、これがこのまま出ていくと解釈が違ってきます。自主的に 取り組むということの解釈の違いが起こるかもしれません。私のような理解でよろしい のでしょうか。 ○坂本企画課長 委員の御意見のとおりです。 ○田島委員 確かに指針ですから、そのとおりだと思います。しかし、例えば9頁に「事 業主の団体が行うべき援助」ということで「時間短縮をするために事業主団体に対して 国が行う支援制度を利用できる」と、こういう形で予算措置も付くわけですから、確か に一つの指針ではあるけれども、政府には、労働時間短縮の実効性を上げるような、あ るいは上がるような施策をぜひお願いしたいと思います。 ○西村分科会長 労働時間についてはいろいろと御意見が出まして、今後この点につい ては議論を進めていくことになるのでしょうが、労働時間等設定改善指針(案)につい ては、これでおおむね妥当と考えてよろしいでしょうか。 (異議なし) ○西村分科会長 そのようにさせていただきたいと思いますが、この後、関係省庁協議 と都道府県からの意見聴取を行い、次の本分科会において諮問の上、報告・答申を行う ことが妥当ではないかと考えられますが、それでよろしいでしょうか。 (異議なし) ○西村分科会長 それではそのようにさせていただきます。  次の議題に移ります。労働契約法制の関係について、いままで労働関係の実態を踏ま えていろいろと議論をしてきたところですが、本日新たに解雇・退職についてと、有期 労働契約等についての資料を事務局で用意していただいています。この点について、ま ず解雇・退職についての資料から説明をお願いしたいと思います。 ○大西監督課長 お手元の資料のNo.4について御説明させていただきます。資料No.4が 分科会長から御紹介いただいた解雇・退職についてと、有期労働契約等についての資料 です。資料No.4の参考資料1と書いているのが、「労働関係の実態について」ということ で、前回までの審議会でお出しした資料を編綴したものですので、議論のときに御参照 いただければと出したものですので、こちらの説明は省略させていただきます。資料No. 4の参考資料2が、前回、労使協議についてということと、個別の労働者の同意につい ての参照条文について補充するということで御指摘いただきましたので、それをとりま とめたものです。資料No.4の参考資料3が、いまから御説明する予定の解雇・退職につ いて、有期労働契約についての参照条文です。資料No.4の参考資料4については、「諸外 国における有期労働契約に係る法制度の概要」ということで、これも御指摘を受けて用 意したものです。  資料No.4の本文の解雇・退職についての部分を御説明いたします。1頁です。平成16 年における離職者の離職理由別の割合です。個人的理由が70.4%、契約期間の満了が 13.1%、経営上の都合が8.1%、定年が4.9%というものです。上段の棒グラフですが、 合計、一般労働者、パートタイム労働者に分けて、それぞれなっています。個人的理由 について一般労働者が65.4%、パートタイム労働者については79.6%という結果になっ ています。  1頁の下の段です。平成17年7月〜9月において雇用調整を実施した事業所の割合に ついて、これは全体の13%であったということです。下の棒グラフは残業規制が5%、 配置転換が5%ということで、その他のものがそれぞれあるというような状況です。  2頁です。ここ5年間において、正規従業員を解雇(懲戒解雇を除く)したことがあ る企業が20.2%、解雇をしたことのない企業は77.6%でした。企業規模別が出ています が、大体同じぐらいとなっています。あと組合の有り無しでも統計が出ています。  2頁の下の段は解雇の理由です。経営上の理由が49.2%で一番多く、仕事に必要な能 力の欠如が28.2%、本人の非行、職場規律の紊乱のそれぞれが24%程度となっています。 その後の分析については、経営上の理由の部分を「整理解雇」と呼んでいまして、その 他の理由によるものを「普通解雇」ということで、さらに調査を進めています。  3頁の5です。ここ5年間に普通解雇をした企業のうち、普通解雇に先立って、警告 をした企業は51.3%、是正機会の付与をした企業が46.3%、他部署への配転打診をした のが24.5%で、これは複数回答ですが、そのような結果になっています。  3頁の下の段で解雇に当たっての手続としては、解雇理由を明示するとした企業が 83.9%、解雇日を明示するとした企業が73.5%となっています。また、従業員本人から の意見聴取をするとした企業が49.5%、退職金の額及び支払時期を明示するとした企業 が44.4%となっています。  4頁の上の段の棒グラフです。従業員を解雇する際の手続の定めがあるかどうかとい うことで、手続を定めている企業は全体の50.7%で、これは50人未満が45.4%ですが、 あとのところは企業規模が大きくなると増えているという感じではないかと考えていま す。4頁の真ん中の段で、「従業員を解雇する場合の手続は何で決めているか」というこ とで、就業規則が97.1%となっています。  4頁の下の段です。解雇の予告をいつ頃行っているかを聞いています。1〜2か月程 度前に本人に対して解雇する旨を通告する企業が68.1%となっています。普通解雇と整 理解雇で分けてみますと、下の棒グラフのようになっていて、整理解雇の場合は84.4% となっています。解雇予告手当の支払いを行った企業は全体の30.4%です。  5頁の真ん中ですが、解雇に当たり特に労働者側と協議をしなかったという企業が 69.2%ですが、労働組合のある企業においては68.2%の企業が労働組合と協議を行って います。  次の頁です。組合員の解雇につき、同意、協議等、何らかの関与を行っている労働組 合の割合は84.6%で、これは同意、協議、意見聴取、事前通知、事後通知、その他の関 与を全部足すと84.6%になるということです。  6頁の真ん中ですが、ここ5年間に正規従業員を解雇したことがある企業のうち、解 雇をめぐって解雇した従業員との間に紛争が起こったことのある企業が11.9%で、なか った企業は85.5%ということです。紛争が起こった企業のうち、解決のためにとった特 別な措置については、解決金の支払い38.0%、退職理由の変更というのが13.4%、解雇 のとりやめというのが1.6%となっています。  7頁の下の段は裁判所で争われ、平成13年〜平成15年の3年間に終結した解雇紛争 を対象とした調査によると、解雇無効を判決として、復帰してそのまま勤務を継続して いる者が41.2%で21人、一方で、一度復帰したが離職した者とはじめから復帰しなか った者の合計は54.9%で28人ということです。その方々のうち89.3%の方は解決金の 支払いを受けているということが8頁の上の段に書いてあります。解決金の支払いがあ ったかなかったかということで、あった人が25人、なかった人が3人ということです。 解決金の状況についてですが、これはお答えいただいた方だけの話ですが、8頁真ん中 の表にあるような分布になっています。  8頁の下の段です。和解について見てみますと、復帰又は再雇用を認める前提で和解 した者は21.1%、復帰又は再雇用を認めない前提で和解した者は78.2%ということです。 解決金の支払い状況については、あった者が86.7%、なかった者が13.3%となっていま す。  9頁は解雇に関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出件数、あっせ ん申請受理件数で、平成16年度の相談が全部で49,031件ありまして、これは全体の相 談の27.1%を占めています。助言・指導が1,736件、あっせん申請の受理件数は2,519 件で、あっせんの申請内容全体の40.5%を占めているということです。それぞれ円グラ フと棒グラフが10頁と11頁にあって、10頁の真ん中に、解雇に関する助言・指導申出 の受付件数、11頁の上から、解雇に関するあっせん申請の受理件数です。  個別の事例ですが、11頁のいちばん下の段ですが、これは顧客からのクレームを理由 に、配置転換をする慣習がないため解雇せざるを得ないとして解雇通告を受けた者が復 職又は補償金の支払いを求めたものです。会社側は、配置転換に関する規定はあるが配 置転換を行った事例はないとか、他の労働者は顧客との良好な関係を築いているため配 置転換はできないという形で主張しているものです。  その他、12頁は、普通解雇に関して事前の警告がなかったことが紛争の背景にある事 例、普通解雇に関して勤務状況改善のための話合いが行われていたが紛争となった事例 です。あるいは整理解雇に関して人選が問題になった事例、整理解雇に関して解雇回避 措置がなかったこと、労働者への事前説明がなかったことが紛争の背景にある事例です。  13頁は解雇に関する判例です。多数あるわけですが代表的なものを紹介します。13 頁の上の段は、裁判例として、使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由 を欠き社会通念上相当として是認することができない場合は権利の濫用として無効にな ると示されています。これは昭和50年の日本食塩事件です。判決では「使用者の解雇権 の行使も、それが客観的、合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することがで きない場合には権利の濫用として無効になると解すのが相当である」と判断されていま す。真ん中の段にあるのが昭和52年の高知放送事件と呼ばれているもので、放送事故を 理由とする普通解雇が解雇権の濫用に当たり無効とされた例です。いちばん下の段から 次の頁にかけてあるのが東洋酸素事件で、これは昭和54年の高等裁判所の判決ですが、 整理解雇の効力についての判断が示された事例で、14頁にその内容が書かれています。  15頁です。ここ5年間において個別に正規従業員の希望退職の募集その他の退職勧奨 をしたことがありますかと聞いたところ、全体の14.8%でしたことがありました。1,000 人以上の企業規模においては29.8%ありました。15頁の下の段ですが、退職勧奨の際の 手続については特に労働者側と協議はしなかったとする企業は55.5%、一方、組合のあ る企業では72.7%の企業で退職勧奨の際に労働組合と協議をしたということです。  16頁です。退職勧奨に当たって退職者に対する特別な措置としては、退職金の割り増 しを行った企業が38.4%、再就職先のあっせんを行った企業が22.4%、退職前の特別休 暇の付与が13.8%となっています。16頁の真ん中ですが、ここ5年間に退職勧奨を行っ たことがある企業のうち、これに労働者が応じなかったことがあるとした企業が20.0% です。この場合の対応ですが、応じた人数だけ退職させたのが39.7%、労働者が応じる までさらに説得したというのが30.4%、指名解雇に切り替えたというのが23.1%となっ ています。  17頁で、ここ5年間に退職勧奨を行ったことがある企業のうち、退職勧奨をめぐって 従業員との間に紛争が起こったことのある企業は8.7%ということです。この解決方法 として話合いで解決したというのが72.4%ということです。  17頁の下から始まっていますが、早期退職優遇制度がある企業は全体の5.4%です。 その場合の退職金の加算については18頁の真ん中と下の表に書いてあります。  18頁のいちばん下ですが、従業員が自己都合退職する場合の手続を定めている企業は 全体の68.5%で、従業員1,000人以上の企業では97.8%であるということです。手続を 定める形式としては、就業規則が96.8%となっています。従業員が自己都合により退職 する場合の事前の申し出の時期については、1か月より前とする企業が33.8%というこ とで、20頁に棒グラフがあります。1か月より前というのが33.8%といちばん多いので すが、2週間程度前というのも30.0%、1か月前というのも28.3%あります。企業別に 見ると、1,000人以上の大規模の企業ほど2週間前程度というのが数としては増えてき ているということです。  20頁の下のほうですが、従業員が自己都合退職を申し出た後に、取消の意思表示をし た場合の取扱いについては、ケース・バイ・ケースで対応しているというのが63.8%と なっています。  21頁は、退職勧奨、自己都合退職に関する個別の紛争の推移です。平成16年度にお ける相談件数は退職勧奨が12,614件、自己都合退職は9,378件ということで、助言・指 導申出受付件数とあっせん申請受理件数もそれぞれそこのグラフに書いてあるとおりで す。  最後の22頁ですが、これは退職に関する事例ということで、上に書いてある事例は、 労働者が退職を申し出るメールを社長に送ったが専務から慰留を受けて、撤回するメー ルを社長に出した。労働者としては今後も業務を継続する意思だったが、その4か月後 である決算終了時に、以前の退職を希望するメールを辞表として受理したので、退職す るのですねということにされて、退職の希望は撤回したということを言ってもメールは 法的に通用するとして聞き入れられなかったということで補償金を求めたものというこ とです。会社側は、2通目のメールを労働者が退職を決算業務終了まで延期したものと 受け止めたと主張しているということです。こういった事例を22頁の下にも挙げていま す。これが資料No.4の説明です。 ○西村分科会長 いまの資料につきまして、何か御意見、御質問がありましたらお願い します。 ○山下委員 2頁ですが、この資料の中の3の項目で、ここ5年間において正規従業員 を解雇したことがある企業が20%ということになっておりまして、労働組合があるとこ ろは12%、労働組合がないところが21%ということのようです。ここ5年間の日本のマ クロな経済状況ですとか、日本企業のいろいろな財務的な問題を考えた場合、私個人的 にはこの数字はある意味では驚きだったのです。かなり少ないという印象を持ちました。  合計で20%、労働組合有りであれば12%、ないところは21%という数字をどのよう に解釈していいのか。これは非常に由々しき状況だと解釈すべきなのか、それともこれ はある意味でいまの経済状況であれば正しいこと、非常に適切なことであったと解釈す べきか、そこら辺のところをどなたか解説していただける方がいらっしゃいましたらお 願いできませんでしょうか。  同じように、15頁の13番目も同じなのですが、ここは希望退職の募集についてとい うことで、同じように全体の中で14.8%の企業がそれを実施したいということなのです が、同様の質問で、この数字をどのように解釈すべきかについて、例えばこの調査の主 体のほうでそのような分析のコメントがあるのかどうか。もしくは今日御出席の特に公 益の方に、どのように解釈すべきかを御教授いただけると大変助かります。 ○秋山調査官 いまの御指摘の最後のほうにおっしゃった調査分析した機関で、何か分 析のコメントがあるかということですが、これは何回も使っている統計資料で、労働契 約法制に関して、平成16年4月から研究会で議論を進める。それに並行して基礎調査と して実態がどうなっているかを知るために、既存の統計のなかったものがかなりありま したので、数字を客観的にしていただいたということで、いろいろとお願いをして調べ たものです。  そういった性格もあり、これは厚生労働省関連の特殊法人労働政策研究・研修機構で まとめた調査ですが、例えば、この5年間に解雇した企業は20.2%というのが多いのか 少ないかなど、そのような分析は特に行っておりません。 ○西村分科会長 この数字をどのように見るのか、少ないイメージなのでしょうか。 ○山下委員 私は個人的にはそのように思いました。特にいまの経済状況を考えた場合、 逆に日本の大半の企業は頑張ったというか、非常に雇用確保のほうで労使ともに頑張っ てきたのかなという印象を受けたのですが。 ○荒木委員 2頁の3のところは、解雇について聞いています。定年退職による離職、 有期契約が期間満了によって離職した人、自主的に退職した人、そういうことによる人 員減は反映されていない数字である、すなわち使用者から一方的に雇用契約を解約して、 解雇したものだけを拾っておりますので、全体として人員調整の規模と符合していない ということはあると思います。 ○田島委員 3頁の6のところなのですが、私自身は「解雇は少なくない」と思ってい ますし、トラブルも3割ぐらいが解雇についてだとこのデータでも出ているわけですか ら、少なくないでしょう。この3頁の解雇にあたって、見ていてわからないのが、解雇 理由が明示されたのが83.9%で、残りは、解雇という非常に重要な問題なのに、理由が 明示されていない。あるいは従業員本人からの意見聴取がちょうど5割ぐらいなのです が、この場合にはいわゆる労働組合としっかりと話し合ってやっているのか、あるいは 団体協議みたいな形でやっているのかいないのかというのがない。雇用の場が奪われる というのは、働く者にとっては大変なことです。ところが、こういう形でほぼ半数ぐら いの解雇が十分な話合いもなく行われているという実情を、どのように見たらいいのか。 労使の力関係を比較した場合には、やはり労働者のほうが非常に弱い立場にいるのかと、 このデータからは見ざるを得ないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 ○秋山調査官 御指摘の例えば3頁の6番の解雇手続ですが、ここは解雇に当たってど んな手続をやっていますかということで、この中に入っている意見聴取はおっしゃると おり、従業員本人からの意見聴取です。委員御指摘のあった団体協議をしっかり行って いるかどうかという観点からは、5頁に同じ労働政策研究・研修機構の一連の調査です が、8番で、解雇にあたって特に労働者側と協議しなかった企業が69.2%となっていま す。個別解雇の対象となる労働者からの意見聴取をやったのが3頁の6番で大体半分ぐ らいであり、一方、解雇にあたって労働者集団といいますか、労働組合とか労使協議機 関、従業員の代表と協議をしたのが5頁下の段のグラフの比較的少ない左のほうの数字 で、しなかったのが69.2%です。これをどう評価するかというのは、また御議論いただ ければと考えております。 ○新田委員 いまの点にも絡むのですが、紛争があって、本人と会社が話をして解決し たというのが私の所ではあるのですが、このデータでは労働組合との協議を通じて解決 とか、社内の苦情処理でというのは0.何パーセントとしか出ていないのです。そのこと と、いまもありましたが解雇のことについて、労働組合と事前の協議を終えていればも め事があってからどうこうということはないと思うのですが、労働組合に事前に説明を して、そのことと紛争のもめ事の件数はどんな因果関係にあるのでしょうか。そのよう な統計は取れていないですか。 ○秋山調査官 確認をして、あれば次回にお出しできます。 ○新田委員 そこはやはり大きな要素だと思うのです。いまも話がありましたが本人の 意見を聞くとか、例えば手続のところで複数回答とありますが、これを全部やっている 企業と一つだけしかやっていない企業という統計は取っていますか。まず理由の説明が あって、解雇日はいつですよ。理由の説明があれば解雇はいつだとか、退職があって、 処遇はどうするとか、その種の説明はあるのでしょうけれども、それを全部やった企業 の割合と、どうなのかなという企業の割合は、どうなのでしょうか。 ○秋山調査官 手元にそのようなものがあるかどうかも含めてわかりませんので、確認 をしたいと思います。 ○尾形氏(渡邊委員代理) 整理解雇と言いますか、会社都合による希望退職の募集と いう点について申し上げます。残念ながら私個人の経験で申しますと、そのようなこと をやった経験があるわけですが、一定の手続をしたほうが好ましいというのはあるかも しれませんが、労働組合との話合い、あるいは個人的な話合いも含めて、総合的に言う と、きちんと手続を踏んでやったから合意が得られたかというと、そういうことではな く、簡単に言えば解雇条件がどうなのかが重要だと思います。例えばの話ですが、もう じき定年だ。それを上回る解決金を出すならば、それは喜んで辞めましょうということ があるかもしれないし、その条件は低いから呑めませんということになるかもしれない。 あるいは次の就職先がきちんと確保できるならば、若干条件は下がっても納得しようと いうことがあるかもしれない。そういうことはまさにその時々において何がその人にと って大事なのかということが出てくるものであって、一定の手続をすべて踏まなければ、 整理解雇なり会社都合でできないのかというと、そうではないのだろうという印象を非 常に強く持っています。  例えば、整理解雇の4要件みたいなことをこれから整理されて、その手続を踏みなさ いみたいなことを、この資料の後付けの話としてやろうとされているのかどうか、その 辺はよくわからないのですが、それ自体を全部手続を踏んだからいいのかということで 言いますと、決してそんなことはなくて、手続を踏めば労使紛争はなくなるのかという と、それもないだろうと思います。したがって、手続論みたいなことに非常にこだわり を持って、何か法が作られるということになってきますと、それは逆の後付けの理由な のではないか。こう言っては裁判所とか、そういった所に失礼かもしれませんが、所詮 は後付けで理由を整理してみたら、何となくそのような要素に分けられますということ を言っているだけであって、中身は個別、それぞれそのときどきの状況で、全然違うも のになってくるかもしれない。お金で解決できるかもしれないし、あるいは職場を確保 するということが重要になるかもしれない。だから、そういうものを網羅的に全部取り 込んだような法律で、手続を何とかクリアにしようというような方法では、労使紛争は なくならないのではないかという印象を強く持っています。また、労働サイドで考えて みても、その手続さえ踏めば、では解雇できるのかと言われたら、逆に困るのではない か。もっと中身こそ大事だと感じるのではないかと思います。 ○新田委員 手続より中身こそ大事なのです。労働契約ですから対等の立場です。とこ ろがこの事業所を閉鎖するというのは経営者の判断として一方的に言うわけです。そう すると、そこはもう対等の立場ではなくなってしまいます。だから、私が言っているの は「納得性」の問題です。納得をどう取り付けていくのかということがあって、はじめ て終わることも含めて契約が全うできるのではないですかということを言いたいのです。 それが本人の意向も聞かず、説明もせず、そんなので明日から来なくていいという話で はないということを、どのようにきちんとするのか。労働側だってリストラに直面して いるところは、それは、会社の自由だと知っているわけですし、自分の能力も含めて次 の職を見付けることができるかどうかということも知っているわけですから、その上で 会社は1年辛抱すれば何とかなるならば1年辛抱する条件があったら言ってくれとか、 いろいろな話合いをするわけですから、そのようなことをやる場所があるのかどうかと いうことが、納得を得る上での重要なことではないかと私は思っています。そういう意 味で会社の労働組合に対する対応、労働者に対する対応、つまりどういう手続きがあっ たのかということと、紛争の問題とのクロスをお伺いしたわけです。 ○渡辺委員 いまちょうど私自身も考えていることなので、大変興味深いお話を聞いた のですが、定年間近であって、ある金額を上積みすることによって、円満に退職しても らえるとか、あるいは再就職先が確保されるならば、ある程度我慢するという、いわば 選択肢というのは労働者に聞かなければわからないです。それはやはり手続があって、 どうやってコミュニケーションするか、紛争がなく会社の目標があって人員削減をやっ ていくかというときに、いまおっしゃったことは、まさに手続の中でこういう方法が納 得してもらえるということなのではないでしょうか。だから、手続が要らないのではな くて、円滑にそういう人事の目標を達成していくために、どういう手段を選択するかと いうその判断に、とても大切なことではないかと思うのです。実際にいつもされたこと を踏まえたお話でしたので、大変興味深かったのですが、その辺はどうなのでしょうか。 会社が労働者とのコミュニケーションなく、いくつかのオプションを出して、これを選 択しなさいという形で進むものなのでしょうか。それとも意見を聞いて、もう一度考え た上で提案するという形で結果を出していくということなのでしょうか。 ○尾形氏(渡邊委員代理) 数少ない経験で申しますと、先ほどおっしゃられたように 閉めざるを得ないという前提があって、後はどう条件を決めていくかということだけな のです。その中で、おっしゃるとおり話合いはいろいろ多々やるわけです。それでやっ たことによって、では大きく変更があるかといえば、財布は1つですから、やれること は限られていますし、お互いの妥協の中で決まっていくものだろうと思います。ですか ら、そんなに大きく変わるものではない。私が先ほど申し上げたかったのは、整理解雇 の4要件みたいなことで、一つ一つの手順を踏むことを厳格に求める。それでは手続を 踏んでいれば、内容はどうでもいいのかということではないだろうな、むしろ中身だろ うなということを申し上げたかったわけです。  その法律論争みたいなことでいうと、何か手続を踏むと、すべてをクリアしていると いうことになって、中身がどうあれ、これだけやっているのだから、では認めますかと いうようなことに陥っていくと、かえって労働者サイドとしては困るのではないですか と申し上げたかったのです。 ○渡辺委員 よくわかりました。 ○田島委員 ただその中身そのものも、手続を踏むということとは私は矛盾しないと思 っています。実は全国一般労働組合でも個別の労働相談で、解雇されたということで労 働組合に駆け込んでくる人たちを見ていると、働く者として、あるいは労働者としてプ ライドを傷付けられたとか、会社は何も言うことを聞いてくれないとか、いわゆる不当 に解雇されたという思いの中で駆け込んでくる例、あるいは紛争になる例が多いわけで す。そういう意味ではやはり手続的にしっかりやるのは重要。それとあとの補償は渡辺 委員がやったように、いままでの自分の勤務よりもプラスアルファとか、再就職あっせ んなど、いろいろな形であると思いますが、そこに納得性というか、労使が合意するよ うな中身にすることが必要だろうと思います。  7頁の10のところは極めて興味深いデータなのですが、平成13年〜15年の3年間に 解雇無効の判決を得て、4割の人たちが職場に戻っていることが分かります。全国一般 でも石川の自動車学校で女性の事務員2人が不当に解雇されて、裁判で勝って、また先 日元気に職場復帰して働いている例があります。働く者にとってはそこに戻って働くの がいちばんいいことなわけです。解雇が無効というのは、解雇そのものが不当だったと いう形で判断を受けているわけですし、こういう形のものを活かす方向に、これからも どんどんしていかなければいけないだろうと思っています。  もう一つの例を言えば、本当に会社が大変でリストラをしなければいけないという場 合には、やはり労働組合もみんなで話合いながらそれを受け入れる例も、少なくはあり ません。したがって、常に雇用を追い求めていくだけでいいのかというと、現実問題と しては解雇というか、人員の縮小などを受け入れる例があるのですが、その場合にはや はり手続的に事情の説明だとか、手続をしっかり踏むことが必要で、踏まない場合には 争っていくしかないだろうと思います。働く側が裁判で勝った場合には戻れるという道 を開くことが必要なことだろうと思っています。この10の解雇無効判決を得た労働者の 復帰状況などについて、何か事務方で分析したものがあれば伺いたいと思います。 ○岩出委員 7頁の復帰なのですが、13年〜15年に終結した和解紛争の対象として母数 も少ないのですが、これは例えば、終わった後、統計資料的にまだ辞めていないのだけ れども、少し経ったら辞めたとか、交通事故は24時間以内しか死亡事故を扱っていない のと同じようにどんなスパンで見ているのですか。そこを確認したいのですが。 ○西村分科会長 いかがですか。 ○秋山調査官 先に岩出委員の言われた質問ですが、例えば解雇の無効判決を得た後、 そのまま復帰しているかとか、辞めてしまったかということのタイムスパンの問題です が、調査の制約もあり、平成13年、14年、15年の3年間に終結した紛争について、弁 護士に聞いたものです。調査時点は平成16年の一定の時点において、そのときまでに回 答を寄せていただいた段階までに、勤務を継続していたか、その時点までに辞めてしま ったかという、最大3年のスパンと御理解いただければと思います。 ○岩出委員 わかりました。 ○荒木委員 この母数となっているのは、すべての解雇紛争ではなくて、回答のあった ものということですね。母数は51人ですね。 ○秋山調査官 はい。 ○荒木委員 これは全体の紛争のうち、13年〜15年に終結した解雇紛争のうちのどのく らいが捕捉できているのですか。 ○秋山調査官 結論からいうと正確にはわからないのですが、これは労働政策研究・研 修機構でやっていただいた調査です。そもそも日本全体で毎年解雇事件がどれくらいあ るか、いま解雇事件が1年間に終結をして、判決無効で確定したかどうか、そういった 件数がそもそもわからないという前提があり、労働側、使用者側それぞれの弁護士団体 に依頼をして、所属弁護士に基本的に全部調査をお願いしたものです。ただ、それが返 ってきた結果、回答をしていただいた弁護士の数が労働側の弁護士の方が53名、経営側 の弁護士の方が25名ということで、そのお答えいただいた、合わせて78名の弁護士の うち、3年間で本案訴訟判決確定で終結した解雇事件があったと回答した方が、さらに 減って29人です。その絞り込みをやっていって、その方の担当した事件で、しかも解雇 無効判決を得たけれども、辞めてしまったのでお金を得た人というように、次第に案件 を絞り込んだ結果、どんどん少なくなってしまった。それが全体の解雇事件、もしくは 解雇無効の判決が出た事件のうち、どれくらいかというのはちょっとおそらく正確には わからないのではないかと考えています。 ○奥谷委員 いま解雇の問題が出ていますが、反対に自己都合の退職の部分ですが、こ れは労使対等という部分であれば、ハンティングなどですぐに会社を辞めてしまって、 会社に不利益をもたらす場合があるわけです。そういった場合に、使用者側がその労働 者に対して、何か訴えるとか、罰金とか、そういったようなことができるのかどうかと いうのは、ほとんど泣き寝入りになっているというのが実態だと思います。ですから、 労働者側は弱いという解雇権濫用ではないですが、そういったものがこちら側にあって、 反対側に働く側の自由度があまりにもありすぎてしまって、責任というか、義務という か、そこの意識がかなり薄くなってきているというか、そういったところは、労働者側 はどう考えていらっしゃるのかということです。 ○新田委員 それは会社の方針とか、働き方とかそういうのをどのように作り上げてい くかでしょうね。会社が労働者に「俺は何とか全身全霊を会社に尽くしてやりたい」と、 どう思わせるかではないでしょうか。やはり労働組合で労使交渉をしても、結局のとこ ろ最後はどちらも誠意です。それで折り合いが付くわけですから、そういうところを会 社の社風としてどのように作れるかというところにかかっていると思うのです。 ○奥谷委員 そういった社風があって、お互いに信頼関係ができているというのは、そ れはそれでいいと思うのですが、反対にどうしようもない人たちのクビを切るというの は、結局使用者側がしますと解雇権の濫用といういまの実態があるわけです。どんな人 でもクビを切れないというところ、解雇権がないというのは、やはり使用者側からする と弱い部分で、労使対等というのであれば、そういう対等の部分を両方が持ってイーブ ンにどうさせるかというのは、働く側も選択の自由があるのであれば、こちら側も選択 の自由があるという部分を、どのように明らかにするかというのが、いちばん問題では ないでしょうか。 ○田島委員 いまおっしゃった18条の2、解雇についての規定は、使用者側に解雇権が ないと理解するものなのですか。そうではなくて、解雇権はありますが、社会通念上相 当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして、無効とするというのが 18条の2です。その濫用は駄目ですよということだろうと思いますし、あとは離職の場 合に自分が働いていて離職する場合でも、すぐに辞めてしまったら困る場合というのは 確かにあると思います。思うけれども、経営者側が定着率を上げる方策を講じるとか、 社会的な環境なども関連してくると思いますし、いまの若い人たちもだんだんに定着は するようになってきているのではないかと思います。いまの時代一旦離職してしまった ら再就職は厳しいというのが、かえって現状ではないかと理解しています。  もう一点は労働組合などがあるような職場は、その職場に定着しながらやっていこう という人たちのほうが多い。職場の環境、労使関係がよいからです。したがって、もっ ともっと労働組合を作っていくことが必要だとは私自身は思っています。 ○岩出委員 7頁に同じく解雇無効判決を得た場合の云々というテーマなのですが、た またま日弁連で昨日、労働審判の模擬審判があったのです。そのときに裁判官との質疑 や議論をしました。審判の中で金銭解決が提示できるかできないかという議論があるわ けです。その中で、金銭解決を提案する場合はどんな場合が考えられるかという話の中 で、規模や解雇の経緯があるのですが、そういう意味で比較的小さな企業ではなかなか 戻りにくいというのがあると思うのです。その中で母数が少ないので分類しにくいと思 うのですが、規模別とか何かの分類はされているのでしょうか。 ○秋山調査官 おそらくないと思います。 ○岩出委員 解雇理由は、例の前回の議論のときにも基本的に差別的な解雇はできない という結論になったはずなのですが、この場合に理由は分類されていますか。 ○秋山調査官 整理解雇とか普通解雇ですとか、そういった程度の分類であればされて いると思います。 ○岩出委員 そうですか。いまのは後で結構です。 ○秋山調査官 それでは整えてまた提出いたします。 ○西村分科会長 7頁の50人についてはある程度データがあるのですか。例えば規模と か理由というのは。少ない母数ですからフォローしようと思ったらできるということで しょうか。 ○秋山調査官 解雇の紛争のあった会社の規模は取っていなかったのではないかと思い ます。ただ、解雇の理由については多分取っていると思いますので、そこはできる限り 整理をしてお出ししたいと思います。 ○西村分科会長 先ほど奥谷委員の19頁の20番の関連の自己都合で退職する、2週間 とか1か月前に予告をして退職をする、これは法的な権利ですから、別にこれについて 異議を述べられているわけではないのですね。 ○奥谷委員 はい、そうです。 ○西村分科会長 2週間前に予告をして辞めると言いながらもう来ないとか、そういう 話ですか。 ○奥谷委員 はい。 ○西村分科会長 そういうデータはあるのですか。例えば自己都合の場合というのはな いのでしょうか。要するに自分で1カ月前に予告をする。しかし全然来ない、そういう 話ですね。そういう手続を踏んでいるのに来ないというような、そのようなデータはな いのですね。 ○秋山調査官 おそらくないと思います。 ○西村分科会長 もう一つ報告がありますが、この点について何か質問はありませんか。 ○新田委員 一点いいですか。6、7にかかる7頁上のほうの退職理由の変更というの は何なのですか。一旦解雇の話があって、解決のために解決金を支払いますよというの がいちばん多かったけれども、次いで退職理由の変更が13.4%あるのですが、この退職 理由の変更というのは何なのですか。 ○秋山調査官 この調査票で退職理由の変更について、例えばという例が書いてあり、 本人の非行などの理由による解雇を変更して、経営上の理由による解雇に名目上すると か、自己都合退職にするとか、そういったものを指して、退職理由の変更という聞き方 をして、取ったデータです。 ○渡辺委員 紛争のときに解雇を撤回して、同日付けで退職にするということで、両方 の名誉を傷付け合わないという解決の仕方を、私などもよくやっています。 ○新田委員 そうしないと退職金も出ない。 ○渡辺委員 もちろん退職金は出ます。 ○新田委員 なるほどね。 ○西村分科会長 それではこの点について、何か御質問、御意見がなければ次の有期労 働契約についての御報告をお願いします。 ○大西監督課長 それでは資料No.4の「有期労働契約について」を御説明いたします。 1頁です。我が国の雇用者数に占めるパート、アルバイト、契約者の嘱託等の比率は増 加傾向にあり、平成17年においては、そういった方々は32.2%になっているという結 果です。  2頁です。有期契約労働者の定義がそこに書いてありますが、このような方々の割合 が平成6年〜16年にかけてこのような形で増えてきています。実際の数字は2頁の真ん 中の箱の表の中に書いてあるものです。  3頁、4頁に棒グラフが並んでいますが、使用者が有期契約労働者を雇用する理由と しては、人件費節約のためが67.6%という具合に多くなっています。有期の方の中で、 例えば臨時雇という方では、臨時・季節的な業務のような変化への対応が多いというこ とですが、契約社員では専門的な能力の活用が49.6%、あるいは経験等を有する高齢者 の活用が44.6%という具合で、3頁上段の棒グラフは黒い網掛けと斜線と白でそれぞれ 棒の高さがだいぶ違っていますので、理由についてもいろいろと分かれているという感 じです。  労働者の側が有期労働契約で就業する理由が3頁の右下にありますが、期間中は雇用 が保障されているが28.4%で、現在従事している仕事は有期契約は一般的だからが 28.3%ということで多くなっています。そのほか、勤務時間、日数を短くしたいので正 社員として働けないといった理由もあるということです。  4頁です。少し古い調査ですが、有期契約労働者が就業している理由は、勤務場所の 都合がよかったが39.7%、正社員として働ける職場がないが26.7%という結果です。ま た、4頁の下のほうで、使用者がパートを雇用している理由は、平成17年の調査ですが 人件費が割安だから66.5%、1日の忙しい時間帯に対応するためが40.2%というような 結果になっています。  5頁の右上の棒グラフですが、一方、パート労働者がパートを選択した理由というの が自分の都合のよい時間、あるいは日に働きたいが42.7%、勤務時間・日数が短いが 42.4%というものが多いわけですが、少し減りますが28%前後の方が家事・育児の事情 で正社員として働けない、あるいは正社員として働ける会社がないといったものも理由 として上がっています。  5頁の下、有期契約労働者の平均契約期間は13.3か月で、平均契約更新回数は4.9 回、通算勤続年数は平均5.7年となっています。就業形態別に見ますと、嘱託社員のと ころでは白抜きの6か月超〜1年以内で73.3%と多くなっているのが見てとれます。  7頁です。契約期間を書面で有期契約労働者に通知している事業所は、契約社員につ いて95.5%、長時間のパートタイマーについては87.6%という具合になっています。短 期のパートでも88.9%という具合になっています。  有期契約労働者の現在の契約期間終了後の希望については7頁の下にありますが、現 在の契約を更新し、引き続き有期労働契約で働きたいという人が50.1%、次いで正社員 として働きたいが19.8%です。8頁の上の段です。現在の契約期間満了後、会社が契約 を更新するつもりだと思う人は全体の87.0%いたという具合です。  8頁の真ん中の棒グラフですが、有期契約労働者の働き方について見ると、主に正社 員の指示に従って仕事を行っている人が26.9%、主に自主的に判断し、(本人の裁量で) 仕事を行っている人が30.6%、その半々ぐらいというのが真ん中で41.4%という結果に なっています。また下の棒グラフですが、有期契約労働者の役職については役職に就い てない方が61.5%ありますが、多少高めの役職に就いている方もいくらかはいらっしゃ るということです。  8頁の下から9頁にかけてです。有期契約労働者の賃金ですが、契約社員では正社員 の8割以上とする事業所が最も多く、嘱託社員、短時間のパートタイマー、長時間のパ ートタイマーは正社員の6割以上8割未満という会社が多くなっています。若干ですが 正社員よりも高いというような事例もあるようです。パートタイム労働者と一般労働者 の賃金格差の折れ線グラフについては、9頁の下にあり、女性の方は最新のデータでは 65.7、男性だと50.6という見解になっています。  10頁です。有期労働契約者がその働き方について不満を感じるかどうかということで、 不満を感じるが48.6%、ないが49.7%です。そのうち、不安・不満を感じた方のうちで 具体的な内容を聞いたのが10頁の棒グラフです。昇進・昇給がないが38.2%、賃金が 低いが37.4%、退職金がないが37.0%、賞与がないが35.2%という具合になっていま す。契約が更新されるかわからないが30.9%で、正社員になれないが28.5%という具合 に続いています。  11頁です。有期労働契約の契約期間の上限延長に関するトラブル等について、これは 監督署に上がってきたものを監督課で整理してまとめたもので、一応74件の相談等があ ったということです。その中で期間の定めのない労働契約を締結して、労働者に対して 使用者が有期労働契約への契約変更を申し入れたことによるトラブル例と分類されたも のが57件あったというものです。  11頁の下ですが、正規従業員を採用するに当たり、その能力を判断するために有期労 働契約を締結している事業場は全体の26.8%で、これは50人未満の所で28.4%と多く なっていて、1,000人以上で19.7%という具合に、企業規模とは別の大小の比較になっ ています。  12頁で雇止めと呼ばれているものに対する個別労働紛争の相談件数で5,242件、指導 申出受付件数は179件、あっせん申請受理件数が249件です。  13、14、15頁についてはそれぞれの事例と裁判例が示されています。いくつか御紹介 しますと、13頁のいちばん上のもので、60歳の定年後1年契約で再雇用された労働者に ついて、契約更新しないという通告を受けたけれども、ほかの方で働き続けている方が いる。自分のみが1年契約で更新されないのは納得いかないとして、補償金の支払いを 求めたというものです。会社側としては指導しても業務の改善が見込めないから退職し てもらうこととし、本人も引継ぎを行っており、退職に合意していたものと考えていた と主張している例です。  3つ目の例は、労働契約の終了が解雇であるか、雇止めであるかということが、勤続 年数との関係で問題になった事例が掲げられています。これは勤続4年になる労働者が、 雇止めの通知を受けたというのですが、会社の一方的な期間満了というのが納得できな いので、これは解雇であるとして経済的な補償金の支払いを受けたものであるというこ とです。ここについて労働者側は、初年度に交付された通知書には本人がサインしたけ れども、その後の通知書は年度が始まった後に渡されたのでサインしていないと主張さ れている。他方、会社側としては1年契約のパートタイマーで雇用された者であり、就 業規則にもちゃんと定めているし、口頭で契約を更新したということを主張されている 例です。  14頁です。雇止めについて解雇に関する法理を類推すべきであるとした例ということ で、昭和49年の東芝柳町工場事件というのがあります。ちょうど頁の真ん中辺りで、「判 決では」と書いてあるところがありますが、「本件各労働契約は、当事者双方ともいずれ かから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思があった ものと解するのが相当であり、したがって、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも 期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければな らず、本件各雇止めの意思表示は右のような契約を終了される趣旨のもとにされたので あるから、実質において解雇の意思表示にあたる」という原判決について、「そうである 以上、本件各雇止めの効力の判断に当たっては、その実質にかんがみ、解雇に関する法 理を類推すべきであることが明らか」であるとしたという最高裁の判決です。  その次は昭和61年の日立メディコ事件で、解雇に関する法律が類推適用された上で、 雇止めは有効であるとされた事例を紹介しています。15頁の真ん中の段では、試行雇用 契約に関する事例ということで、紹介しています。新たに採用された労働者が、入社直 後2か月間は試用期間であることを告げられ、また契約開始後1か月を経過した時点で 就労開始日から2か月の有期労働契約であることを内容とする契約書に署名、押印を求 められ、労働者はこれに署名したということで、会社側から翌月以降の継続雇用はでき ないということを言われた。労働者側は入社後も継続雇用を希望しており、ハローワー クの求人票には期間の定めた契約が記載されていなかったことから、本採用されるもの と考えていたということと、継続雇用ができない理由は「言い訳」等と聞いており納得 いかないということから継続雇用を求めた。会社側はあくまでも契約期間2か月の有期 労働契約であり、採用を決める各支店の店長にも長期雇用を期待させる言動をとらない ように十分注意してありますとか、契約期間の満了には当然の雇用契約の終了であるか ら、労働者が主張しているような理由でないという主張をしたというものです。  最後は裁判例で、神戸弘陵学園事件の平成2年最高裁判決というのも付けています。 有期労働契約の資料については、こちらのものと参照条文と、最後に諸外国の制度の概 要ということでドイツとフランス、イギリスについてそれぞれ御紹介していますので、 御参照いただければと思います。 ○西村分科会長 それではいつものように御質問、御意見をどうぞ。 ○岩出委員 具体的に4頁から10頁にかけての非正規雇用とか有期雇用に関して、必ず 労働者側からのクレームとして正社員になれないからというのを見ると、正社員になれ ないことに対する不満を持っている方というのは、大体4分の1ぐらいで一定している のです。具体的に言うと、4頁の正社員として働く場所がないというのが26.7%、5頁 の正社員として働ける場所がないというのが26.5%、10頁の正社員になれないというの が28.5%で、大体同じような割合で推移しているのですが、この属性を知りたいのです。 年齢層、男女別など、どのような定めがあるのでしょうか。ややニート問題とも絡んで くると思うのですが、あれば教えてください。 ○秋山調査官 手元にはありませんので、ちょっと調べさせていただきます。 ○田島委員 折角、参考資料4で諸外国の有期労働契約に係る法制度の概要が資料とし て出されているので、これについても説明をお願いしたいと思います。 ○大西監督課長 わかりました。まずドイツですが、有期労働契約の利用の制限という ことで、労働契約の期間の定めは客観的理由により正当化される場合に許容されている というものです。客観的な理由が特に存在している場合として、そこに書いてあるよう に、労働に関する経営上の需要が一時的に存在する場合等というものが一応法律に書か れているものです。客観的な理由によらない有期労働契約については、2年間までは客 観的な理由が存在しない有期労働契約を締結できるということと、2年間の期間内であ れば3回まで更新ができるというようなことが書かれています。書面性の要件について は、この有効な期間設定は書面によらなければならないということです。  4番は期間の定めが無効である場合には、有期労働契約は期間の定めがなく締結され たものとして取り扱われるということです。また、有期労働契約の終了については、暦 に従って期間が定められていると有期労働契約が合意された期間の満了をもって終了す るというもの、あるいは目的によっている場合には目的の達成によって終了するがこの 2週間という通知の期間があるということが定められています。あと3、4、5とあり ますが省略させていただきます。  平等取扱いの原則については、有期契約労働者は労働契約に期間の定めがあることを 理由に、期間の定めなく雇用された労働者に比べて、不利益な取扱いを受けてはならな い。ただし、客観的な理由により異なる取扱いが正当化される場合はこの限りではない という具合に書かれています。使用者の情報提供義務としては、補充されるべき期間の 定めのない労働ポストに関する情報の提供といったものが定められていることになって います。  フランスにおいては有期労働契約の利用の制限ということで、フランスは期間の定め のない契約を締結することが労働契約締結の原則とされているということです。有期労 働契約はいかなる理由であっても企業の通常の、かつ恒常的な活動に関わる職務を継続 的に人材供給することを目的としてはならず、そのような効果をもたらしてはならない というようなことも定められています。具体的には有期労働契約については3頁の真ん 中ですが、原則として最長18か月とされているわけで、書面性の要件としては書面によ って締結され、かつ、その利用目的を明確に定めたものでなければならないということ になっています。契約の終了については期間満了により、当然終了するということのほ か、(2)に書いてあるようなことも行われているということです。  4頁のいちばん上では、当事者の合意がある場合を除き、期間満了前の解約をするこ とはできないということ、労働者は別の使用者によって期間の定めのない契約で採用さ れたことを終了すれば解約することはできるということも書かれています。平等取扱原 則については、期間の定めのない労働契約を締結している労働者については立法及び慣 行から生じるものについては有期労働契約労働者にも適用されるとなっています。  利用の報告については労働者数300人以上の企業では3か月ごとに、それ以外の企業 では半年ごとに企業委員会に報告しなければならないと定められており、違法な有期労 働契約の効果については、期間の定めのない契約が締結されるものとみなされるという ようなことになっています。  イギリスにおいては有期労働契約の反復更新の制限ということですが、有期労働契約 の期間については、特に制限はありません。ただし、有期労働契約を初めて締結したと きから4年を経過した後に更新された場合、又は新たな有期労働契約が再締結された場 合には、客観的な理由に基づいて正当化される場合を除き、新たな契約における期間の 定めは無効になり、当該被用者は定めのない被用者となるということになっています。  有期労働契約の終了ですが、有期労働契約の期間満了による雇止めは解雇として取り 扱われます。したがって、雇止めは公正でなければならないというようなことが定めら れています。平等取扱原則については、客観的な理由に基づいて正当化できない場合に は、やはり比較対象というのは同等の地位にある常用雇用者と比較して、不利益な取扱 いをしてはならないということが規則で定められているわけです。  最後にアメリカですが、これについては期間の定めのある労働契約を締結することを 禁止するということは特段設けられていません。 ○西村分科会長 時間がきておりますので、これについての議論は次回にさせていただ きたいと思います。次回の日程についてお願いします。 ○大西監督課長 次回の労働条件分科会は2月9日午前10時から12時まで、厚生労働 省17階専用第21会議室で開催する予定ですので、よろしくお願いいたします。 ○西村分科会長 本日の分科会はこれで終了したいと思います。本日の議事録の署名は 田島委員と原川委員にお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。 (照会先)      労働基準局監督課企画係(内線5423) 1