06/01/11 今後の労働時間制度に関する研究会 第16回議事録 第16回今後の労働時間制度に関する研究会          日時 平成18年1月11日(水)          10:00〜          場所 厚生労働省共用第7会議室 ○座長(諏訪) 皆様、おはようございます。また、今回が新年になっての初めての会 合でございますから、本年もどうぞよろしくお願いいたします。第16回「今後の労働時 間制度に関する研究会」です。お忙しい中をお集まりいただきまして、大変ありがとう ございます。本日もよろしくご議論のほどをお願いしたいと思います。本日の出欠です が、佐藤委員からご欠席というご連絡です。  前回は報告書の素案につきましてご議論をいただきました。そこで、様々なご指摘を いただきましたので、それを踏まえて事務局に報告書(案)の手直しをしていただきま した。そこで、この報告書(案)につきまして、またご検討いただきまして、積極的な ご意見をいただければと考えております。では、事務局からご説明をお願いいたします。 ○安藤監察官 ご説明いたします。報告書の案については、前回は報告のスケルトンと いう形でご議論をいただきまして、前回各委員から各種ご意見をいただきました。そう いったご意見等を踏まえまして、今回は報告書(案)という形で記述しております。内 容等については、前回スケルトンを説明した内容と重なりますので、大きな構成を中心 にご説明したいと思います。  また、本日はこの資料の次に大きな冊子の方で、参考資料という形で添付させていた だいています。こちらの資料につきましては、いろいろデータ等、参考となるような資 料を事務局の方で、今まで研究会に提出した資料等の再度見直しをした上で、今回添付 したものです。足りない部分もあろうかと思いますので、こういった資料についても今 日はご意見をいただければと思います。  報告書(案)についてご説明を申し上げます。今回の報告書(案)では前回のスケル トンと同様3部構成としています。1、2頁が「現状認識と今後の展望」、3頁から5頁 までが「現行諸制度の現状と見直しの方向性」、6頁以降が「新たな労働時間制度の在り 方」となっています。  1番目の「現状認識と今後の展望」では、1点目として「ホワイトカラー労働者の増 加と働き方の多様化」、もう1つは「自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなくその 成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者の増加」という形で2つに分 けまして、その上で「以上を踏まえ、すべての労働者が心身の健康を確保しつつ、自ら が希望する働き方を実現することにより、その能力を十分に発揮しながら仕事と生活の 両面において充実した生涯を送ることができるよう、労働時間制度全体について検討を 加え、必要な見直しをすることが必要である」と結んでいます。  2番目の「現行諸制度の現状と見直しの方向性」では、まず最初に「現行の労働時間 に関する諸制度の現状と課題」ということで、年次有給休暇、時間外・休日労働、フレ ックスタイム制、事業場外みなし、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制、管 理監督者の7点について記述をした上で、5頁の「見直しの方向性」で、すべての労働 者が、個人の選択によって、生活時間を確保しつつ、仕事と生活を調和させて働くこと を実現するという観点からの検討を行うとともに、その中で「自律的に働き、かつ、労 働時間の長短ではなく、成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者」に ついて現行の労働時間制度では十分に対応できていない部分を検証した上で、見直しが 必要ではないかといった形で書いています。  具体的な新しい制度の在り方としては、6頁以降に記述しています。まず最初に「生 活時間を確保しつつ仕事と生活を調和させて働くことを実現するための見直し」という ことで、「年次有給休暇」を6頁の中頃から書いていまして、7頁の最後の2行目から「時 間外・休日労働」、9頁に「フレックスタイム制」「事業場外みなし」の各制度について、 今後どうあるべきかを論じています。  10頁以降から、「自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などによ り評価されることがふさわしい労働者のための制度」といったことで、まず「検討の視 点」、その上で新たな労働時間規制の適用除外の枠組み、ここでは仮置きですが「新裁量 労働制」とさせていただいています。  その新たな制度である「新裁量労働制の要件」については10頁から15頁の上の方ま で書いております。要件としては勤務態様要件と本人要件、健康確保措置、導入におけ る労使協議に基づく合意といった4要件を書いた上で、具体的にどういったものが対象 になるかは13頁の下から7行目以下に「対象者の具体的イメージ」で書いています。中 堅の幹部候補者で管理監督者の手前に位置する者、研究開発部門のプロジェクトチーム のリーダーの2通りについて記述をしています。  新しい制度の「法的効果」については14頁の中頃から下の部分に書いています。15 頁で「健康確保措置」について、具体的には、健康状況のチェックや休日の確保が必要 ではないか、といったものを書いた上で、16頁に「労使協議の役割」という形で書いて います。17頁の後ろの方で、新しい制度の「適正な運用の確保」が図られるような手法 について、苦情処理措置、また実際に法律などで定められた要件・手続に違背があった 場合の取扱いはどのようにしていくのか、ということについては18頁以降に記述をした 上で、19頁で、適正な運用の確保を図るために行政としてはどのような役割を果たすべ きか、といったことについて記述しています。  20頁以降では、新しい新裁量労働制ができるので、現行制度、とりわけ「現行裁量労 働制との関係」について記述しています。また、たびたび研究会でご議論をいただいて います現行の適用除外制度の「管理監督者との関係」については、21頁以降に記述して います。中身を省略した説明ですが、報告書の構成を中心に説明させていただきました。 ○座長 これまでに皆さんには何度もご検討をしていただいた議論を、このような形で 報告書(案)に取りまとめていただいたわけですので、最初にご質問、ご意見がありま したらお願いいたします。 ○水町様 前回との関係で2点ほど質問させていただきます。1つ目が、16頁から17 頁にかけての4つの要件の中の集団的合意、労使協議の役割についてです。前回、過半 数組合がある場合には過半数組合で、そうでない場合は労使委員会ということについて、 どのように整理されているのかというお話を少しして、これは労働契約法制での審議に よっていくということだったと思います。その点についても17頁の真ん中の辺りに「関 係審議会において」ということが書かれていますが、1つ引っかかるのは、次の「一つ の考え方として」というところから始まるところで、ここの考え方で「過半数労働組合 との適正な協議による合意を必要とし、当該事業場に過半数労働組合がない場合には労 使委員会の決議を必要とする」という1つの考え方があり得ると書いてあるのですが、 果たしてそれでいいのかというのは私自身疑問を持っていますし、この研究会でそのよ うな議論がなされた上でこういうものが出てきたのならいいのですが、この研究会では この点については実質的には議論をしないで、もう1つの所の議論に合わせてやるとい うことでしたので、ここで「一つの考え方として」という1段落を入れる意味というか、 ここで入れるのが適切かと思います。私としては議論をし始めればいろいろと言いたい ことはたくさんありますが、この場で議論をするのが必ずしも場としてよくないという ことであれば、この1段落を入れることをどうするかを考えていただきたいと思います。  もう1つはテクニカルなところになりますが、19頁で、不適正な取扱いがなされた場 合の賃金の取扱いについて「清算条項」が入っています。この清算条項を入れるときの 法的な意味という点で、理論的に問題があるのではないかと前回に申し上げました。少 し書き振りは変わっているようなのですが、「清算条項」というのは残っています。  もう少し具体的に話をしますと、清算条項というのをみなし効にするのか、推定効に するのかという問題があります。みなし効で考えた場合の問題というのは、本来適法で ないものが、この新裁量労働制もしくは新適用除外制度の中で書かれて、法律違反があ るとします。原則になると第32条になって、第37条の計算で割増賃金を計算すること になります。ただ、この場合にはみなし効でいくということになると、得体の知れない ものがそこに入れられて、でも賃金については清算条項でいくのだということになって しまって、第37条とこことの関係が論理的におかしなものになってしまうという問題が あります。  ただ、みなし効ではなく推定効とした場合はどうか。実際に労働時間管理をしなくな って、何時間働いたかというのは分からなくなるので、労働諸法の観点からはこのよう な推定効を入れて、何も証拠のない場合には推定効でいくと、ただ、労働者の方が自分 たちは何時間働いたと手帳などのメモに残していて、第37条で計算すればこの額になる といった場合には、そちらが上回っていればそちらでいくというやり方はあるかもしま せんが、そのやり方でいった場合に制度が複雑になりすぎないかという問題があります。  だとすると、原則に戻って、ここは実労働時間をカウントさせて第37条で処理すると いうのが、本来の筋かと思います。第2番目でいくか、第3番目でいくかというのは制 度の複雑さとの関係もありますが、それは選択の問題だと思います。ただ、第1のみな し効の問題というのは理論的にかなり大きな問題を残すことになるので、もしそのよう な意味であれば私は賛成できないということです。 ○座長 非常に重要なご意見を含んだご質問だったと思います。まず最初に、集団的合 意の在り方に関する17頁の1段落、この点はどう考えるか。最初に事務局側のお考えを おっしゃっていただいて、その上で委員の皆様からご意見をいただきたいと思います。 ○大西監督課長 事務局といたしましては、現行制度で労働基準法の中に、過半数組合 との労使協議という手法、あるいは企画業務型裁量労働制の労使委員会、あるいは過半 数組合がない場合の過半数代表、このような3つのツールがありますので、そのような 中での組合せとしてどのようなものが考えられるかということで、1つの考え方がある のではないかということで書かせていただきましたが、今先生のご指摘のように、果た して現在の既存の制度の枠組みの中で議論をするのか、また新しいものをここで生み出 していくのか、あるいはそれとは別にここの研究会ではあまりやらずに、もう1つの方 にポンとボールを渡していくのかというのは、もし可能であれば引き続きご議論いただ ければ大変ありがたいと思います。 ○座長 まず最初に協議の在り方、その主体をどのような組合せで考えていくかという ことで、ここについてはこれまで水町委員もおっしゃっていたような事情があって、踏 み込んだ議論は我々はあまりしていませんでした。踏み込んだ議論をしなかったから全 く書かないというのが1つです。もう1つは、多少考えられるものを書いておくのか、 その辺のところだと思いますので、他の委員の皆様からもご意見をいただきたいと思い ます。 ○荒木様 「一つの考え方として」の後に「企画業務型裁量労働制において労使委員会 の仕組みが設けられていることを参考として」とありますが、どのように参考としてい るのかが少し分かりにくいのではないかと思います。おそらく労使委員会を利用する場 合に、現行法の企画業務型裁量労働制では過半数組合があっても労使委員会でやりなさ いという制度ですので、そういうことしかあり得ないのか、それとも他の在り方がある のかということです。  ここで書かれている趣旨は、過半数組合があっても労使委員会でいきなさいという現 行法の立場が1つあるとすると、他の在り方もあるのではないか。1つはここに書いて あるように、過半数組合があればそれでいくけれども、過半数組合がない場合には労使 委員会によるという選択肢もあり得るということを示唆されているとすれば、どちらが いいということに踏み込んだ議論ではなくて、いろいろな選択肢があるということで提 示したものであれば、それはそういうことかなという気がしました。 ○山川様 私も「参考として」というのが少し気になっていまして、必ずしも企画業務 型裁量労働制の仕組みとは同じではないということで、同じではないので「参考として」 というのもあるかと思いますが、確かにこれまであまり議論をしてきませんでしたので、 どちらがということは今すぐには思い浮かばないのですが、企画業務型裁量労働制と同 様のスキームもあるでしょうし、こういった過半数組合がある場合にはそちらというこ とで、両論併記というか、特にはこだわりませんが「いくつかの考え方があり得る」と いうような書き方もできるのかと思います。  多分水町さんのご意見によれば、実質的に検討すべきことは、多様な利害を代表する のに過半数組合との協議だけでいいのか、あるいは企画業務型裁量労働制のようなもの にすべきかということだと思います。他方で労使委員会制度の手続等が非常に複雑にな っているという考慮もあるので、どちらを重視するかというところだと思います。 ○座長 守島委員に伺いたいのですが、人事管理的な観点からいくとどうでしょうか。 ○守島様 先ほどの水町委員のご意見と似たところなのですが、人事管理上労働組合と の協議というのは、今までにも非常に慣れ親しんでいますし、ある程度制度的にすっき りすると思うのですが、私もそれで本当に十分なのかなと思っています。特に、様々な 労働者の利害関係が複雑になってくると、本当にそれで十分なのかなという感覚を持っ ております。  実務上は労働時間に関する協議の場を、何らかの形で別途労使委員会のような形で設 けること、非常に難しいことではあるように思いますが、人事管理という側面から見る と、将来的にそれから得られるものも比較的多いであろうという感覚なのです。労働組 合の存在を無視するということではありませんが、何らかの労働時間に関する協議の場 を設けておくことは企業の形状からも役に立つことかなと思っています。 ○座長 そのような意見が出たところで元に戻しまして、水町委員のご意見です。ここ で議論をして結論を得ることは場として適切ではありませんので、こういう1例だけを 示すのではなく、他の例も少し書き込む両論併記というか他論併記かもしれませんが、 その形で書くか、それとも任せるのだから落としてしまうか、その辺を考えるためにも 水町委員のご意見をお願いしたいと思います。 ○水町様 私自身は、先ほど山川先生がおっしゃったように、実質的に見ても過半数組 合以外の利益がいろいろと出てきて、例えば事業場でパートタイム労働者が圧倒的に多 い場合に、パート組合が正社員の労働時間の長さを決めてしまうことが場合によっては 出てくるかもしれません。そのようなことが実質的に残された制度でいいのかという点 もありますし、そのような正社員とパートだけでない、いろいろな複雑な利益がある場 合、特に管理職の問題もあります。そういう意味では、多様な利益を吸い上げられるよ うなシステムを実質的にも作っておいた方がいいということはあります。  ただ、企画業務型裁量労働制の制度の労使委員会が形式化してしまって、年に2回20 分、30分で終わって、あまり実質的なチェックになっていないということで、過半数組 合との団体交渉なり労使協議の方が実質的にしているという実態もありますが、そうい う場合には、労使委員会の制度をもう少し実質化するためにはどうすべきかという方向 に議論がいくのが筋ではないかと思います。ただ、これは労働契約法制の中でいろいろ と議論がありますので、そういうことを考えると、「一つの考え方として」というので一 人歩きする怖さが非常にあるので、両論併記にするなり、あまり変な方向に走らないよ うにするためには、ここでは実質的に議論していないことは書かないとするか、それは 文章にもよりますが、やり方次第だと思います。 ○座長 というわけですので、書くとしたら「いくつかの考え方がある」ということを、 もう少しいろいろな検討の余地を含ませて書くか、そうでなければ、任せると言った以 上は、いろいろなことがあるけれどもそちらで然るべくやっていただきたいとするか、 ただ、やっていただきたいというときの意味、水町先生がおっしゃられたようなご意見 というのは、この中の皆様も同じだと思います。多様な現状になってきている中で、1 チャンネルだけでうまく、あるいは1人の人間だけでうまく意見を吸い上げて反映でき るかというと、ここは限界があるわけです。そのようなところを考えて、然るべくそれ を検討する場ではやってくださいと、そちらの用語だけを書くか、この辺を少し検討さ せていただくことにします。  もう1点の方、こちらも非常に重要です。不適切あるいは違法なやり方で新裁量労働 制というか、このようなやり方が行われていった場合にどのように対応するかです。と りわけ賃金額を実際にいくらとするかの部分で、水町委員から、みなし効、推定効とい う考え方、あるいは第37条の原則に戻ってやるやり方等に関して、改めて根本的なご意 見をいただきました。これもまず他の委員の先生方のご意見を聞いてみたいと思います。 その前に大西監督課長のお話を伺いたいと思います。 ○大西監督課長 みなし効がいいのか、推定効がいいのか、ご指摘の点につきましては 非常に難しい問題だと私どもも認識しております。私どもがこの清算条項というものを 考えた趣旨というのは、労働時間の新適用除外、新裁量労働制をとった人を何らかの形 で元のところへ戻すときに、今まで不適正にやっていたものをどのようにカバーしてい くのかといったときに、実労働時間をチェックしていればいいというのは1つの考え方 としてあるのですが、そうすると本来変な制度のために、例えば事業主に実労働時間を チェックしてくださいというと、事業主が実労働時間をせっせとチェックしていただく と、そこは裁量労働制という本来の趣旨のところに悪い影響を与えるのではないかとい うことです。これも現行の企画業務型のところで多少そういうことがあったということ が、この研究会の最初の方で議論がありましたので、そういうことを考慮すると、実労 働時間はカウントしないのだけれども、それに代わるような計算方法、計算のルールを 用意しておかないと、最後の場面であなたは実は今度の新しい制度の対象者ではなかっ たのですと言ったときに、じゃあいくら払うのですかという議論は困るということで、 「清算条項」という単語だけで書いてしまったというところはあるのではないかと思い ます。  それが推定効なのか、みなし効なのかは、文章を読むとみなし効のようにも見えるの ですが、それだけがこの結論としてあるわけではなくて、何か中間的なものも含めてご 指摘、ご議論いただければ大変ありがたいと考えています。 ○座長 という趣旨で原案は用意されているということですので、これを踏まえて諸先 生方からご意見をいただきたいと思います。 ○山川様 私も理論上は推定効の方かなと思っています。みなし効にする場合には、今 の36協定と同じような位置づけになって、つまり本来労働基準法とは合致しないものが 適用になるということなので、それだけの手続のようなものが必要になるかと思ってい ます。それは最終的には選択の問題ですが、推定効の方が現行法の制度との関係では素 直ではないかという感じがします。 ○座長 水町委員が問題提起をされましたが、その場合に現実の処理が複雑になりすぎ ないかという部分がありますが、そこはどうお考えですか。 ○山川様 みなし効ですと額の適正さをどう担保するかという問題が起きてくるかもし れませんが、何を定めるかにもよりますが、金額だけを定めるということでしたら、そ う複雑にもならないような気がします。  一方で、実労働時間のチェックをしたり、本人がチェックをしていたか、しなかった かによって、実際上の帰結が違ってくるのはどうかなと思います。何らかのしくみがあ った方がいいような気持はあります。 ○座長 この点について荒木委員はいかがですか。 ○荒木様 私も第37条との整合性を考えると推定効の方がいいと思います。ただ、第 37条との関係でいうと、金額を決めてしまうのはどうなのかなと、つまり、こういう定 めがなければ労働者の方で実際の時間外労働時間があったのかを立証して、それに基づ いて第37条で計算をした額を請求することになるわけです。その仕組みからすると、推 定効を設ける場合には、「何時間法定時間外労働をしたものと推定する」というあり方も あると思います。  金額の方でいくと、金額から逆算して、こういう額を決めておけばそこから逆に割っ ていって、「何時間労働したと推定した」ということが間接的に分かることになるのかと いう気もします。そこは両方あり得るのかもしれません。 ○座長 ここは非常にテクニカルな法律論のところがありますので、今両先生から推定 効の方が座りはいいけれどもというニュアンスで、その場合の推定の中身というか、基 準のようなもの、原則は何でいくかというと時間数という考え方も荒木委員もおっしゃ っていました。水町委員はいかがですか。 ○水町様 私は理論的にはみなし効は難しいと思っています。推定効の場合、先ほど両 先生が言ったように時間で定めるか、額で定めるかというのがあります。例えば額で定 める場合に、1年1,000万円と契約している場合に、額が1,100万円でいいのかという と、これは問題で、普通に働いたとしても1,000万円という場合には1,250万円、25% 増しにするのか、35%増しにするのかというところで、推定効を指針なり何らかで書か なければいけないとなったりします。時間で定める場合には、1日8時間、週40時間で 計算した場合の、法定労働時間の2割増しとか、3割増しで働いていたものとみなすの か、それが実態と合わない場合にどうなるのかを考えると、推定効にしてもかなり複雑 になるような気はします。  ただ、労働者側がきちんと時間をチェックしていないで、最終的に立証が難しくなる というのを救済するという意味では、何らかの推定効を設けて、最後の下支えを作って おくという意味もなくはないと思いますので、推定効にするにしてもそんなに複雑では ない形で明確に定められるとすれば、それはそれで1つのやり方だと思います。 ○山川様 実際の時間外労働の推定について、そんなにこだわらなくていいような気が します。推定というよりも、最低支払額というのでしょうか。水準が非常に低いという のはどうかとは思いますが、現実の時間外労働がこれだけであったと推定するというこ とを厳密に考えていくと、どのような職務をしていたかによって職務ごとに違った基準 を作るということになりかねないので、それもまたどうしたものかという感じがします。 最低支払保証額みたいな発想もあり得るかなと思いますが。 ○荒木様 時間でいくのもどうかなという気もしますが、逆に金額でいくとすると、第 37条は適用しないということにならないと、おかしくないですか。 ○山川様 実労働時間で時間外労働が立証できればそれによって、それを請求しない場 合に、少なくとも一定額は請求できるという方法もあるかもしれません。 ○座長 そこが複雑になって現実処理の問題で、適正になされていないから適用できな いことになったとき、さなきだに紛争状態になっているのに、それをさらに徒に広げる ような規定はあまりよくないと思います。  そうすると、ザックリとパッとやるというので、ちょっとみなし的に書いたけれども、 もう1つは推定効だけれどもザックリとやってしまうと。しかも、本来これは不適正な 在り方がないようにすることが目的なわけですから、仮にあったときの後始末にすぎま せんので、後始末に凝るよりは、不適正なことが起きないように抑止力な推定効の基準 を作るというのが1つなのかなと思われます。  そうすると、あまり細かくしない。しかも、その推定効のときに、使用者側が時間管 理をしていて何時間が実際だったと、これを言わせないようにしないと元に戻ってしま います。推定効に対して、実際は違うのですと言えるのは労働側だけだ。このようなや り方でないとまずいのかと思います。しかし、そうなるとまた、このように議論が非常 に複雑になっていきますので、人事管理的観点から守島先生、いかがですか。 ○守島様 正直に言うと推定効という意味を確実には理解していないところがあるので すが。 ○座長 そこは簡単にご説明しておきますと、現実のことがよく分からないわけです。 そのときに、一応このような推定でいきますよと。例えば時間で言えば、時間外はその 事業場の一般的な平均を出して、それより少し多いかもしれないというと、例えば月に 50時間やってしまったと見ますよとか、100時間やったと見て、金額で言えばそれを全 体のところにかけて、2割5分増しのような額にする、これをやってしまうということ です。  そうすると、一応の推定をするけれども、それを覆す余地は残すわけです、推定にす ぎませんから。実態はこうだったのですと、ちゃんと手帳に付けたり、何らかのやり方 でやっていたらこうなっていますと。それがそれらしいと見られたら、むしろそちらで やると、例えば推定効の50時間が80時間に変わったりと、このようなものが推定効で す。それに対してみなしは、実際に50時間やろうが、100時間やろうが、30時間とか、 80時間と決めたら、これだけで前後に動かせませんというものです。  そうすると、それが基準法第37条がいっているところの、実態に合わせて2割5分増 しでやるとの間でずれてしまうのです。ですから、第37条を外すことをしないと駄目で はないかと、荒木先生のような考え方もあります。しかし、第37条は大原則であって、 外すというのはなかなか難しいと、こういうテクニカルな議論です。 ○座長 それでは、ここはどちらかだと書かなければ報告書が書けないわけではありま せんので、さらにそれは審議会等でも詰めていくことになりますから、考え方があって、 それぞれのプラスマイナスですとか、何かを少し書いていただいて、もう1回検討の場 がありますので、それまでにいいお知恵があれば皆様から寄せていただくことにしたい と思います。 ○守島様 全く誤解をしている意見なのかもしれませんが、仮にそのような形で紛争が 現出してくるというか。使用者側がこういう時間数を働いていると推定すると、それに 対して労働者側は「こういうふうに働いていると私はノートに付けていました」という 紛争が起こり得るという話ですよね。 ○座長 推定効に対して使用者側も反証ができるようになればですね。 ○守島様 先ほど座長の言われたこととも関連するのですが、そうすると、何となく企 業の方の論理としては時間管理をやらなくてはいけない、逆に言うと、そういう場合に 対して一種の予防的な措置というか、セルフディフェンスとして、ある意味で時間管理 を労働者に知られない形でやっておくことが必要になってくるように思いますので、そ ういうことをやらせるのが果たしてこの制度の目的なのかなというのが少し気にはなっ てしまいます。  もちろん、では何もしなくていいという意見ではありませんが、何となくそういう形 でやるとなると、元の木阿弥に戻ってしまうような感じがしますので、そこの部分を少 し気をつけて考えた方がいいかなという気がします。 ○今田様 違反があった場合の取扱いというところで、今のような法律に基づくいろい ろなコメントが書かれていますが、この報告書全体の趣旨というか、流れからいって、 随分と細かいという感じがするし、逆に言えばこれだけでいいのかという気もします。 今座長がおっしゃったように、違反行為に対してどうするべきかという大きな原則のよ うなものをきちんと書いた方が、報告書としてはいいのかという感じがするのです。こ れは全く法律の素人意見なのですが、細かい割にこれだけの議論でいいのかなという違 和感が拭えないのですが、今のようなご意見を伺っていたら、私のような素人では適切 なのか適切でないのか、もっといろいろな問題があるのではないかという気がする。全 くの印象論で申し訳ないのですが。 ○松井審議官 ここで少しでも深めていただきたい議論というのは、この前のセンテン スにあるように、新裁量労働制を認めた場合「使用者は労働者の労働時間を把握してい ないことが十分想定」と書いてありますが、実際に把握しなくていい制度を設けましょ うというのが1つです。そういうことで新たに導入するということです。  もう1つは、今ここでまさに議論になっていますが、労働時間と対価を切り離した制 度を導入していいというメッセージを送りましょうと。適正にやれば認めますが、一部 瑕疵があれば元に戻しますということは、ここで合意されていると思うのです。総論で すから、既に出ているのです。ただ、その総論を言ったときに、元に戻すというときに、 時間管理もしなくていい、賃金と時間を切り離していいと認知したのに、瑕疵があった ときに戻すと言うけれども、戻し方はどうするかというところについて、方向性も何も 議論しないでというのはやや乱暴かなと思います。全く新しい概念をやっていこうとす るのですから、現行体系にどのような影響を及ぼす可能性があるとか、そういう意味で、 みなしも含めた上で意見を十分に出しておいていただいた方が、後の審議会でも役に立 つというくらいの意味づけで、ぜひ深めていただきたいと思います。 ○座長 もし、みなしでいくならば第37条との関係でいえば、何をしたってそのような 額にはいかないだろうという額にしておけば、第37条を外しても、大原則からすると法 原理からして問題はないということになると思います。 ○松井審議官 そのような案を並べておいていただかないと、例えば時間推定にしたと しても、時間掛ける賃金ですが、これを今までの基準法の法理でいう平均賃金を掛ける のか、あるいは新裁量労働制の対象になった方々の平均的な賃金を使うのか、当該者の 賃金を時間割りに戻して掛けるのかといったように、すぐにまた中途半端な処理に終わ ってしまうのです。山川先生が言うように、じゃあいきなり賃金にとなると、現行法体 系を全部適用除外するという処理も噛ませてやらないと理論不足だという整理になるの だと思うので、このような整理が要るということをある程度並べておいていただいた方 が、後々の議論のためには有意義ではないかという気がするということなのです。 ○水町様 みなし効にしてしまうときの最大の問題は、とにかく何でもぶち込んでしま えと、会社が新入社員から全員新裁量制に入れると。違反に遭った場合でも賃金はこれ だけで納まるからいいとなった場合に、制度趣旨と全然違うものが最後に賃金で処理さ れる恐れがすごく強いので、その場合は原則に戻って第37条との関係はどうなのだとい う問題があるわけで、みなし効は制度的に、理論的に難しいかと思います。  ただ、推定効にした場合に1つの在り方としては、報酬の額を決めて契約書の中に書 くので、例えばその50%とか、少なくともそれが推定効として働くというような、これ は法律上では書けないと思うので、指針なりでそのような取扱いをすることにして、そ れよりも実際の労働時間はたくさんあって、25%、35%を掛けたら通常の額掛ける50% よりも上だった場合には、それはそれを請求させることは方法としてあるかもしれませ ん。ただ、果たしてそれがいいのかどうかは議論が必要かと思います。 ○松井審議官 今言われたように、みなし効のときに座長が言われたように、相当高い 額でみなすと処理をしてしまうと、今言われたような恐れがあります。 ○水町様 そうなった場合に、1日15時間、16時間働いたと考えて、それに25%、35% を掛けた額をみなし効にしてしまうことが、法の在り方として通常かどうかというとこ ろがあります。それぐらいやらないと、みなし効として第37条を適用しないというのは 難しいと思います。 ○座長 全体のバランスの問題ではあると思いますが、ある意味で、こういう新裁量労 働のような新しい考え方を入れるのだから、それだけの決意で入れる、きちんとした要 件等を整えてくださいよ、それに沿って適切な運用をしてくださいと強いメッセージだ ということになれば、それはペナルティを高めに科すことは可能だと思います。基準法 の中でも、場合によっては賃金額を実際より加算して払えということを裁判所を通じて なら可能だとなっています。それは1つだと思います。ただ、全体のバランスがあるの で、ここだけを突出させてやることが本当にできるかどうかはもう少し考えないといけ ないかもしれません。 ○荒木様 この新裁量労働制の人たちはものすごい長時間労働になるのが前提のような 感じもありますが、本来は固めて働くこともあればそうではないこともある。違反自体 はよくないのですが、それに対して懲罰的な賠償をここで持ち込むとすると、これは随 分思い切ったことになって、いろいろ議論をさらにしないといけないと思います。その 点で言えば、推定効であれば原則に戻るので、第32条、第37条の世界に戻ります。そ のときに、労働者も使用者も実労働時間の立証はできない。立証できなければ、現在の 裁判所は具体的な立証がされていなければ一銭も払わなくていいとなりかねない。それ は不都合であるので、その場合にはこの時間は働いたであろうということを決めて、こ れも使用者が一方的に決めるのではなくて、ここに書いてあるように「労使委員会の決 議等で決める」、すなわち労使で、我が事業場ではこの新裁量労働制で働く人は仮に実労 働時間をカウントしたらこのくらいですよね、というのをあらかじめ決めておいてもら うというのが、制度としては一番現行法と無理がないのではないかという気がします。  そうではなくて、新しい制度なので絶対に違反がないようにものすごいペナルティを 付けるということであれば、今度は第37条などは適用除外にして、新制度違反そのもの にサンクションを科すのだということになってきます。それはあり得ないでもないので すが、現行法の第32条、第37条に戻るということからすると、時間外労働の推定規定 を置くというのが整合的かなという気はしています。 ○山川様 技術的なことになってしまうのですが、労働時間の推定でしたら事実の推定 ということで、比較的説明がつきやすいことはあるのですが、先ほど言ったような複雑 な問題が時間の推定にすると出てきてしまうのです。  賃金の推定というのは一体どのようなことなのか、つまり賃金債権が発生するのは法 的な効果なので、賃金がいくらだというのは「推定」という言葉とは合わないような気 もしなくはないのです。そこはテクニカルな話なのかもしれません。  もう1つは、先ほどの最低保障ということの意味は、割増賃金の一部として少なくと もこういう額は支払うことを約するという発想であれば、それを上回る額については実 際上の立証に応じて請求ができる、そういう決め方もあり得るかと思います。そうなる と推定というコンセプトと少し離れてしまうのですが、払われた場合には割増賃金に充 当するというような扱いで、それを超える額を定める場合は労使委員会の決議ないし指 針のガイドラインという意味のものになるかもしれませんが、いくつか技術的には選択 肢はあり得ると思います。 ○座長 それでは、ここはこれ以上詰めるのは非常に難しい上に、こんな議論を始める と我々ロイヤーは大好きですから、一晩だって議論してしまうことになるので、研究会 の報告書全体のトーンとのかかわりで言えば、今田委員のおっしゃられたのはまさしく バランスのとれている意見でして、ほかの部分はここまで議論していないのに、ここだ け一生懸命、しかも本来あってはならなくなったときのことを一生懸命やるというのは、 どうもバランスが欠けている感じもするので、これを踏まえて少し報告書には反映させ るということで、これ以外のテーマに進みたいと思います。  ほかのテーマでどうでしょうか、ノンロイヤー側からのご議論をいただきたいと思う のです。それとのかかわりで、この中で新しい裁量労働制を入れたときに現実の適用は どうなるかということで、イメージをするために、プロジェクトリーダーなどを挙げて いますが、それは典型的にふさわしいのは何かという例で挙がっているのですが、今度 は逆にふさわしくないものはネガティブリストで外す。つまり一般的にやっていいのだ けれども、ある枠の中に入っているものは駄目という、このネガティブリストで具体例 が挙がっていないのです。そこで、具体例のイメージを委員の皆様からご指摘いただけ たら、この中にぜひ書き込んだ方がいいのではないかという感じがいたしています。そ こでご意見をいただきたいのですが、守島委員お願いできますか。 ○守島様 おそらくポイントは2つあります。裁量的に労働することが望ましいという ことと、時間をかけることと成果が連動することがない、その2つがポイントだと思い ます。  おそらく世の中に裁量的に労働することが望ましい仕事は非常に多くあると思います。 ここにも書いてあるように、成果との相関が実際にはあるという仕事が多くて、具体的 には営業職の比較的中レベル程度ぐらいまでの仕事というのは、多少クリエイティビテ ィがかかわる部分というのは多いにあると思うのですが、時間をかけてお客さんの所へ 何回行くとか、電話を何軒かけるというところは非常に多いので、営業職の一部です。 あとは「企画調査」という形で我々は議論してしまいますが、調査的な仕事も、それほ ど高度なレベルでないとすれば、ある程度時間と成果の関係は大きく出てくるかと思い ます。例えばそういう2つの仕事というのは、おそらくネガティブリストの中に含まれ るタイプの仕事ではないかと思います。 ○座長 ほかにいかがでしょうか。こういうのは対象から外すと例示できるものは、い かがでしょうか。 ○今田様 要件を満たしていたとしても営業職、調査職というのはネガティブリストと して外すということですか。 ○座長 形式的には要件を満たしたように見える場合でも、いろいろな考慮で最初から そこは駄目ですということです。 ○今田様 そしたらネガティブリストに挙げるに当たっては、この議論によれば、要件 とは関係なく、網をかけるということですよね。要件は満たしているが、駄目と。おっ しゃったように時間と成果が強く相関する仕事であるため、裁量性のない長時間になる 可能性のある仕事ということですよね。 ○守島様 おそらく3つ要件があると思うのですが、1つは成果と時間との関連がどれ だけ強いかということです。それは職種の問題とかかわってきます。あとは年収のレベ ルの問題と、裁量です。  今私が挙げたような仕事というのは、年収の部分で比較的クリアされた上でもう1回 ということになるのかと思います。例えば、この中にも書いてありますが、年収要件を 企業の業種によっては外すというようなことが、多少下げるということを議論していま したが、そういう時点でどういうタイプの仕事なのかということがかかわってくるのか と思います。それだけで判断するというよりは、総合的な判断の1つのポイントとして、 ネガティブリストに挙げるのであればということです。 ○今田様 こういう要件をきちんと厳密に立てて、その上でネガティブリストという論 理立てというのはすごく難しいのではないかと思います。 ○水町様 物の製造とか現業というのはあり得るのですか。条文などには「ホワイトカ ラー」というのは書きませんよね。ネガティブリスト化するのでしたら、そこをどうす るのかというのを、「ホワイトカラーに適用する」と書くわけではないので。 ○座長 物の製造も考え方によっては、神様のような人がいたときに、それをこれから 外さなければいけないという意味はないのですよね。 ○水町様 そういうことを考えるかというところが、営業もスーパー営業マンがいて、 人の10分の1で10倍稼ぐ人がいたらどうするか。 ○今田様 新しい裁量労働制を定義するに当たって新たな要件を準備したわけですよね。 なのに、また職務によってネガティブリスト化するというのは疑問です。何らかの懸念 があるからそういうことをする必要があるということでしょうが。こういうものを立て ることで論理矛盾が起きないかと思います。組立てとして難しいような気がします。言 い出したらネガティブリストは切りがないのではないでしょうか。 ○松井審議官 今言われたことは、ここで書き込んでいる要件はある意味ではオールマ イティかどうか自信がないことの裏返しなのです。「事務系職種と技術系職種の違いなど を考慮する」と書いた途端に、「主にホワイトカラー系の方についての要件を考える」と いうことで一般化して書いたのですが、技術系にも働くのではないかと思い始めてこう いう論文になったのです。  それで改めて、もう1回この要件でカバーされていないところを除いておくという手 続は要らないでしょうかと、こういう構成です。一般要件がどちらかの職種にカチッと はまるものであれば、全然問題ないと思います。そういう意味では、この要件のかけ方 が多少まだ自信のない要件になっていると思います。特定の職種などに特化できないも のになってはいないだろうかということなのですが。そういう疑念がないというのであ れば、こういうネガティブリストは一切要らないとなります、そこを検証していただき たいと思います。 ○水町様 これは労働時間ではないのですが、アメリカの労使関係法(NLRA)の適 用除外のところで、看護師で2、3人の部下を抱えたような、婦長ではないけれども中 間的な立場にある看護師が適用除外になるかというところで、2、3人抱えていて、そ の統活をしているので適用除外になるかどうか。判例は適用除外になると認めているの ですが、実際上その人たちはかなりハードに働いていて、かつ医療関係のところではか なりハードワークで、時間と成果と関連しているけれども、日本で言う労働組合上の保 護を受けられない。そういう議論が学説の判例の中で分かれています。仮にそういう場 合、もしかしたら1から3の要件に当たりそうなのだけれども、それをするとハードワ ークや医療の現場の問題などで、やはり外しておくべきなのではないかという意味でネ ガティブリストを設けるのであれば、それは意味があるような気がします。ただ、そう なると、いろいろなところでいろいろなことが考えられるので、大変なことになると思 います。 ○座長 また、ここもロイヤーが大好きな議論になってきてしまいました。 ○山川様 あまり詳しいことを申し上げないことにします。アメリカの公正労働基準法 の規則の改正に当たっても、この辺は大議論になって、消防士と警察官とか、職種につ いて外すということは例としてあります。訴訟が多数起きて、労使のせめぎ合いみたい なものの中でそれが決まっていったような実態があります。ここでなかなか決められな くて、これをやり出すとそれこそ、細かくヒアリングなどしないとなかなか決められな いような感じもします。そういうことを検討するということで、具体例を書き込むのは ちょっと難しいかなという気もします。 ○座長 それはネガティブの具体例や要件ということですね。 ○山川様 はい。 ○守島様 10頁の一番上のところに、タイトルとして「労働時間の長短ではなく成果や 能力などにより評価されることがふさわしい労働者のための制度」と書いてある。今議 論していることというのは、特定の労働者や職種に関して、こういう制度を適用するこ とがふさわしいかどうか。多分、その議論を始めているのだと思います。そのことを議 論することは非常に重要なポイントで、多分議論すべきということは書き込む必要があ ると思います。ただ、そこに関して何らかの結論を出すというのは、多分この研究会の キャパシティーではないだろうという気がします。  逆に言うと、ネガティブリストという書き方も1つで、先ほどはそういう考え方でご 意見を申し上げました。やはり成果主義的な、成果によって測る、能力によって測る労 働者というのはどういうタイプの労働者なのかを是非これからも議論していかなくては いけない、というところが1つのポイントなのだろうと思います。 ○荒木様 アメリカの例は客観的に、適用除外か否かを法で定めるので大議論になって います。我々の要件はまず年収要件もありますが、その次に本人が「適用除外にしてほ しい」「適用除外になって良い」と言っていることを要件としてかけているわけです。ま ず、年収で客観的に要保護の観点から大丈夫だろうという、相当高い縛りをかける。さ らに、自分が時間に測られる就業よりも、時間に縛られない働き方をしたいと、本人が 望んで同意している。  そのような要件をかけていますので、例えば仮に技術系で非常に高い賃金をもらって いて、自分は時間で払われるよりもこの方がいい。時間でいくらというよりも、技術系 でも年俸制の方がいい。そういう人たちがいたときに、「あなたの職種はこの制度は適用 できません」ということまで言う必要があるのかどうか。私は必ずしもないような気も します。ただ、全部は分かりません。そういう職種があるかもしれませんが、必ずネガ ティブリストを設けなければいけないような制度設計にはなっていないのではないかと いう気もしています。 ○座長 13頁は「ネガティブリスト化することについても検討すべきである」というこ とですから、いかにも保険をかける書き方になっているわけです。まさしく、こういう 事も付随的に書いてあるというところです。具体例を出せと言っても、一応は出せます が、詰めて考えるとなかなか難しい部分がある。それで尽きているかというと、とても そのようなことはこの研究会のワークの中では不可能ということでもあります。  他方、水町委員もおっしゃられていたように、いざというときのことを考えるとやは り保険のようなものをかけておいた方がいいのではないかということです。この辺の趣 旨を踏まえて、「を」ではなくて「も」という感じで、最終報告書にも一応記載はしてお くという程度でいかがでしょうか。要件を詰めていけば確かに無駄と言えば無駄、盲腸 のようになることもあり得ると思いますが、新しい方向へ進んでいくときにはできるだ けいろいろな形で安全弁は付けておいた方がいいような感じもしないではありません。 今田委員もおっしゃられたように、その安全弁の設計がやたらに複雑になってしまうと、 これまた安全弁として機能しなくなります。この辺の議論はその程度でよろしいでしょ うか。  もう1点、これの中で新裁量労働制を入れて、そこにスタッフ管理職というか、一種 のみなし管理職みたいな人をも、そちらの側に再整理していくことをしていったときに、 従来型の管理職との関係もこのままでいいのかどうかということに関しては、さらに詰 める余地があろうかと思われます。この点についても報告書ではそれなりに書いてはあ るのですが、さらにご意見をいただければ、最終報告書にする際に助かると考えます。 この点はいかがでしょうか。 ○水町様 21頁から22頁のところ、適用除外制度が「新裁量労働制」というネーミン グに前回から変わっていることとの関係もありますが、基本的にはこの原案を見るとこ ろ、これまでの管理監督者の中からスタッフ管理職を外して、新しい制度に持ってくる。 この裁量労働制は適用除外というよりも、裁量労働制の新しいタイプのものとして位置 づける。従来の企画業務型については、従来の企画業務型、専門業務型、両方の裁量労 働制とのかかわり合いも少し整理しながら、新しいタイプの裁量労働制にするというこ とですね。  1つ気になっていたところは管理監督者自体をどうするか。スタッフ管理職がそもそ もの管理監督者の考え方と合わない、というのはこれまで荒木先生が主張されてきて、 私もそう思います。新しい制度のもとで整理するのはいいと思いますが、残された管理 監督者をどうするか。スタッフ管理職ではない、管理監督者の定義が今裁判でかなり争 われています。会社側が負けて残業手当を払わなければいけないケースがかなり出てき ていますので、これをそのまま手をこまねいて何もしないということでいいのか。多分、 ここの表現ですと21頁の真ん中あたり、「その対象者の範囲の明確化及び適性化を図り」 というところで管理監督者の定義、特に第41条2項でしたか、あそこの定義自体もより 明確化する形で法の整備を図るという趣旨として読んでいいのでしょうか。その場合、 果たしてより明確化する場合、どういう形で明確化することをお考えになっているのか を原案とのかかわりで説明していただければと思います。 ○大西監督課長 明確化するというのは、基本的には先生がご指摘いただいたように、 今の制度における管理監督者の条文がいいのかどうかも含めて、もう少しクリアになら なければいけないのではないかということだと思います。その場合、どういうものをど ういうように明確化するか。その辺の議論については本研究会で今まで行われていなか ったようでした。私どもの(案)でも「明確化した方がいいのではないですか」と、具 体的なものはできればご議論していただきたいと考えています。 ○座長 どこまで書き込むかはまたあとで考えることにします。とりあえず、ここは問 題意識だけであって、中に深く入り込んでいませんでしたから、ご議論いただきたいと 思います。 ○荒木様 スタッフ職を管理職扱いしたことで、管理監督者の概念が拡張したというこ とがありますので、それを元に戻すということであれば現行の第41条2項は文言を変え なくてもいいのかもしれません。その解釈、何も権限がないのに管理監督者と同等の処 遇をされている者というのは、今度新しい裁量制で適用除外となるという整理をすれば、 文言自体はいいのかなという気もしています。 ○守島様 議論は大変よく分かります。現場である人がスタッフ管理職なのか、純粋な 管理監督者なのかということの境界を実際、どう付けているか。権限がある・なしとい うのは確かに1つの明確なルールではあるのですが、先ほど水町委員が別のコンテクス トで言われたように、部下が1人、2人いるようなタイプの人たちに関して、管理監督 者だから今我々が新適用除外の制度で考えているような、ある程度保護的な健康確保措 置などを本当にやらなくていいのかというのは前から疑問に思っていました。今はある 意味、スタッフ管理職を離して、このカテゴリーにというのはよく理解できるのですが、 報告書には関連していないのかもしれませんが、管理監督者に対して特に下のレベル、 いわゆる中間管理職の下の人たちに対して多少保護というか、ここで我々が適用除外で 考えているようなタイプのものを少し拡大していくような考え方も逆にあるような気が しています。  そこまでやると、逆に今度は企業側のインセンティブとしても、その方々というのは いろいろな意味でコストが高くなってくるわけですので、純粋な意味での管理監督者と いうのは、管理監督者の形で割り出してくる方向に動くのかなという気もちょっとしま す。1つの考え方として、法律的な議論はよく分からないのですが、今の中間管理職の 下の人たちに対して、ここで我々が考えているようなレベルの適用、保護というものを 少し拡大していくという考え方もあるようには思います。 ○座長 健康確保措置は21頁の下から4行目、5行目あたりでも前から議論をして、ち ょっと書いてある部分です。これも議論し始めると切りがなくなるのです。例えば、新 裁量労働制で全部まとめてしまうというのも1つの考え方かもしれません。既存の管理 監督者というのはなくしてしまう。こういうものが一方の極論であるかと思うと、他方 で従来のものは荒木委員がおっしゃったようにより古典的なもので純化させておいて、 それ以外の部分に関しては新裁量労働制の中で対応していく。  もちろん、古典的な形で管理監督者を置いていても、健康管理のような部分に関して はやはり新たに対応措置を考える云々といったように、いろいろなことが考えられます。 守島委員のおっしゃられたとおり、現場ではそのようにきれいに境界線があるわけでは ないわけです。片方から赤、片方から白というようになっているわけではないだけに、 この辺のところはなかなか悩ましいところだと思います。 ○水町様 それとの関わりですが、先ほど荒木先生がおっしゃられたこととは意見が違 うのです。実際上、裁判で問題になっているのはスタッフ管理職よりもラインにおける 管理職が裁判で争われている。例えばカラオケ店長や銀行の副支店長という人たち、ス タッフというよりもラインの中にいるなかで、その人たちが今の要件で言う第41条2項 に当たるかが争われている。  実際上、なぜそこで争いがあるかというと、教科書を読んだり見たりすると三要件と いうものがあって、「三要件を満たすときには管理監督者に当たる、それを実質的に判断 する」と書いてある。裁判というのはその実質的な観点から行います。企業の実務だと おそらく、例えば課長以上や副部長以上はもう管理監督者に入るというように、かなり 形式的に当てはめてしまっているので、本当は三要件に即して実質的に判断すべきとい う点と企業の形式的な対応がかなりずれている。  だとすると、残された、本来かつてからあった管理監督者についても三要件というも のがあって、それに即して実質的に判断されることを明確にしておくことが重要だと思 います。ただ、法律上の第41条2項を改正するのか、それとも第41条2項の解釈とし て「このような解釈でないとこういうことになる」ということを指針の中で明確な形で 示すのか。そういうやり方はあると思います。  裁判でいろいろな問題があって、実際上、遡って賃金を払うとなるとかなり割増賃金 を払うという、事後的な処理でうまくいかない場合もあります。そこの明確化について は、やれることはやっておくことが必要かなと思います。 ○座長 ここは議論のあるところだと思います。 ○山川様 法律をどうするかという点はともかくとして、今水町さんが言われたような 3つの要件といわれているものが必ずしも要件であるかどうかも、今の通達の文言上か らはどうもはっきりしない面があると思います。少なくとも通達をもう少し明確化する なり、格上げするなりして、企業としてもっと判断しやすい基準を作った方が紛争の予 防にも役立つのではないかと思います。  欲を言えば、企業ごとに管理監督者がどういうものであるかという基準を、自ら通達 なりに即して判断できるような仕組みがあれば一番いいかなと思います。おそらく、裁 判例で争われているような企業は、通達に即してこれを管理監督者にしようというプロ セスは多分取っていない。法律のことを意識せずに、このポストには要するに残業手当 を払わないということになっているような疑いもないではありません。少なくとも法律 要件の該当性をきちんと判断し得るようなプロセスを取れるように、最低限、現在の通 達をもっと明確化することが必要であるように思います。 ○松井審議官 今の表現だけ少し粗く書いてあるのは、21頁のパラグラフで「他方で、 労働基準法制定時にあまり見られなかったいわゆるスタッフ職」、そのうちに「処遇の程 度等」と三要件のうちの1つを入れて、「処遇の程度等にかんがみ管理監督者として取り 扱うべき者が出てくる」と、行政実務をさらっと書いています。ところが、次の「この ため」から、ここは大胆に言っていただいているのですが、「本来の制度趣旨に照らして、 その対象者の範囲の明確化及び適性化を図り」のあと、「例えばスタッフ職のように」云々 は、スタッフ職全部がこの会議の中では管理監督者ではないというように言っていただ いているようにも読めるのです。そこまで、今の議論は多分行っていない。あえてこう やっていますが、もしやるのであれば、例えば「新裁量労働制の対象者となることがふ さわしいようなスタッフ職については」というぐらいにしておかないと、丸のままとい う感じがちょっとします。 ○座長 それはそのとおりです。いわゆる、スタッフ管理職は分解されるだろうという ことを今までも議論してきましたから、再整理が必要だというのはそのとおりです。こ の点、法律家はそういう議論をするのですが、守島委員はどうですか。 ○守島様 私もまさにそのとおりだと思います。スタッフ職と言ったときに様々なもの があって、管理監督者よりもより曖昧な概念ですので、それをどう分けていくかは多分 これから議論をしていかなくてはいけないポイントだと思います。書き方としては今言 われたような形でかまわないと思います。  ただ、次のセンテンス、これは昨日から気になっているのですが、「賃金台帳等により 明らかにしておく」ということが果たして本当に可能なのか、良い方法なのかというの は私としては疑問があります。できるかどうか全然分からないのですが、もう少し労使 協議的なニュアンスをここに組み込むことが可能なのかどうか。  なぜかというと、スタッフ職という管理職が何かという区分けは、多分定期的に変わ っていくものですので、定期的に変更する何らかのメカニズムをそこに組み込んでおか ないとならないだろうと思います。賃金台帳は10年変わらないということはないのかも しれませんが、比較的固定的なものですので、それをどう変更していくかということは 考えておかないといけないのかなと思います。 ○座長 それでは、賃金台帳云々の趣旨について、大西監督課長、お願いします。 ○大西監督課長 賃金台帳というのは表現がまずかったかもしれませんが、基本的にそ のときどきの賃金を誰にどういうように払っているかというものです。今、守島委員が おっしゃったような10年前のものを使うということではなくて、例えばある人がいわゆ る管理監督者の手前の位置にいたときから管理監督者にポンと変わったときに、そこに 出てくる賃金というのは多分変わるわけです。管理監督者であれば管理監督者らしい賃 金を払われて、そうでなければ時間外手当が払われる。そのようなものがもし明らかに なっていけば、ここの会社ではこういう人たちが管理監督者ということがよく分かるの ではないかという感じで、ここは書いてあります。固定的に決めるというよりは、むし ろ日々の流れを追いかけていくような仕組みが何かないかということでございます。多 分、今、守島委員からご指摘いただいたことと方向は同じではないか、そういうことを 書きたかったのではないかという気がしています。 ○荒木様 現状では、管理監督者かどうかを捕捉するシステムはないのです。結果的に、 訴訟などになれば管理監督者だったということで争われます。適用除外ということで、 そもそも割増賃金を払う対象でない人である、ということは、きちんと賃金台帳等で明 示する制度を作っておくのが良いのではないかということだと思います。それはそうか なという気がしています。 ○座長 したがって、今はそれを書くようになっていませんから、こういうことも書き なさいということを1項目増やさなければいけないわけです。その上で、賃金台帳を見 ればパット分かる、少なくとも形式的には分かる。このような仕組みも要るのではない かという提言です。ここはよろしいですか。  管理監督者との関係の再整理も議論し始めたら切りがありませんので、これもこの程 度にさせていただきたいと思います。残りの時間で、ほかのいろいろなところもご議論 いただきたいと思います。時間外の扱い、年休の問題、健康確保措置等の問題、それぞ れ議論をすれば切りがない。これまでも随分してきたわけですが、切りがないわけです。 改めてご意見があれば、是非いただいておきたいと思います。 ○守島様 2点あります。1つは書き振りの問題です。11頁、「一定水準以上の額の年 収が確保されていること」というパラグラフをご覧ください。年収額の水準が云々、で きるほどの処遇を受けている労働者である、というようにこのセンテンスは流れます。 それはあまりにも極論ではないか。そのあと13頁に、「自律性が推定されること」とい う言葉が出てきます。少なくとも「推定される」というような書き振りにしておかない と、年収が高いから自律性が高いという、世の中的な心理ではないと思います。そこは 書き方を変えた方がいいかなという気がします。それが1点です。  もう1点、これは前回も申し上げて、いろいろな意味でこの研究会の意図、あるいは 座長の意図と関連する部分でもあります。16頁の上、「連続した特別休暇」という部分、 ものすごく強調はしませんけれども、「連続した」という形のものまで縛ってしまう必要 があるのかなという気がします。この時点では、具体的な方法論はともかくとしても、 特別休暇の形式、「連続した」という言葉を除いた形で「特別休暇の形式で取得させるこ とも考えられるのではないか」という程度の書き振りでも意味は伝わるのではないかと いう気がします。これについてはいろいろなご議論がおありになると思います。正直に 言うと、前回も申し上げましたけれども、「連続した」ということがこういう形で可能な のかというのは多少疑問のあるところです。以上です。 ○松井審議官 後者のところ、16頁の1、2行ですが、上の1行で「一定日数以上の休 日の付与」と明示しましたので、次のところでは休日のうち「一定日について」に重き を置いています。そこで「連続した」と書かないと「一定日数以上の休日の付与」でま たかぶってしまいます。すべてということではなく、例えば2日ぐらい連続があれば、 3日、4日という議論のところで「特別」を薄めたつもりなのですが、それでも「連続」 という言葉がわずらわしいですか。 ○守島様 いや、前回よりは確かに分かりやすく、受け入れやすくなっていることは認 めます。この書き振りでも絶対反対ということは申しませんが、意見としては先ほどの ようなことを申し上げておきたいと思います。 ○座長 守島委員の前段の部分は、あまり現実と違い過ぎる部分が起きるのはよろしく ないので、書き方を少し工夫したらいいのではないかというご意見を承っておこうと思 います。 ○山川様 そもそも、ホワイトカラーを対象とする制度かどうかという点とのかかわり ですが、11頁の3段末尾のところ、職位、職階については一律の要件を設けることが困 難である、とあります。これとひょっとしたら同じことになるかもしれませんが、職務 内容が入っていない。考え方としては、職務内容についてもなかなか一律に決められな いという議論があったと思います。そうすると、使用者から具体的な指示を受けないこ とが要件の中核である。ということは、客観的な職務内容自体は要件に入らないという 書き方になっているわけです。  そうすると13頁、上から5行目から6行目にかけて、「具体的な対象労働者の職務内 容及び年収額の要件について、労使協議に基づく合意により決定する」とあります。こ こでは職務内容が労使合意で決定するべき要件となっているので、もし職務内容自体が 要件でないとすると、これは要らないことになるのではないか。もし、要らないとする と、要件ではなくて対象労働者の決定の問題であるということになるのか。あるいは、 労使協議で決めることとしても、職務内容自体も一応要件として位置づけられるのかど うか。その辺が不明確な感じがします。もし、職務内容自体が客観的な要件でないとす れば、11頁の先ほどのところ、職位、職階のほかに職務内容も加わることになるような 気がします。前回も申し上げた点で、両方あり得るかと思いますが、要するに職務内容 が客観的要件になって労使合意で決めるという説明にするか。あるいは職務内容は要件 ではなくて、単に労使合意で決定すべき対象労働者の範囲の問題なのかは、前後で整理 しておいた方がいいように思います。 ○座長 非常に重要なご指摘です。大西監督課長、お願いします。 ○大西監督課長 研究会でご議論いただいた要件と、それを具体化、客観化するとき、 途中に客観的要件が決められるのかどうかという議論がありました。確かに十分整理さ れていない部分もあるのですが、かえって趣旨から言うと、要するに具体的な指示を受 けないというのが本当の要件であろう。それは具体的、客観的に外から見て「この人は そのような人ですね」というものがある程度分けられる指標としてこの職位、職階があ るのかないのか。今は部長、課長などと言っているけれども、それに当てはめると入る 人もいれば入らない人もいる。本当の要件と客観的な指標はちょっとずれるのではない か、という議論を踏まえて11頁、あるいは13頁で、そこは具体的に決めていただけれ ばいいのではないかということで書きました。山川先生のご指摘からいうと、本当の要 件というよりは当てはめの方に近いことを念頭に置いて原案を書いています。それでい いのかどうかはご議論だと思います。 ○山川様 その場合は11頁で、職位、職階のほかに職務内容も加わる。逆に、13頁で は、要件としての使用者から具体的指示を受けないことについては労使合意では外せな いという理解でよろしいのでしょうか。つまり、労使合意で具体的な指示をしてもいい ということを年収が特に高い人でないものについてまで定めると、ちょっと根本がずれ てくるような気がします。つまり、職務内容の要件について労使合意で決定するという ことは、具体的指示を受けないという要件については外されるという理解でよろしいの でしょうか。 ○大西監督課長 具体的指示を受けない、という要件を外すという議論は研究会ではな かったと思いますので、一応そのようなことは念頭に置かないで書いています。 ○座長 ここは用語の問題の部分と、中身の実態の問題が複雑にからんでいますから再 整理をして、次回の報告書ではもう少しすっきりと、論理的に補完させた方がいい感じ がしますので、それを心がけてみたいと思います。 ○水町様 言葉の使い方が非常に重要なので確認しておきたいと思います。11頁、先ほ どのところの1段目では、「労働時間の配分が労働者の裁量に任されていることの客観的 な要件としては、使用者による出退勤時刻の設定がされない」。これは要件なので、労使 協議の中でも対応はいろいろあるかもしれないけれども外せない。その次、「この場合」 の最後のところ、「業務量のコントロールができるほどの広い裁量が与えられていること が必要である」、これもそういうことが必要な要素なのだということです。ただ、それは 職位、職階や業務内容によっていろいろな対応があり得るだろうから、それがどういう 場合に当たるかは労使協議の中で話合い、合意で決めていいというようにこの文章を理 解する。次にもし書き換えられるとしても、それを中心にというように理解してよろし いですか。 ○座長 基本要件の部分は労使協議で変えてしまうわけにはいかない。ただし、現実に それぞれの事業場、企業ごとの現状との間で判断をしていくときに、どれがそれに当た ると見ていくかが労使協議の場での判断を尊重するということになるのでしょうか。た だし、要件から外れるということはできないわけです。要件にかなっているけれども、 ここではそれを新裁量にはしません、ということは労使協議の場ではできるということ です。 ○水町様 特に、2つ目のところを要件として入れるかどうかを少し考えました。今ま での裁量労働制でも具体的な指示を受けないというのが入っていたので、それと第2の 点、「業務量のコントロールができるほどの広い裁量」をここでもきちんとした要件とし て、労使協議の中でも本質的な要素で、これは要件になるというものを入れ込むのか。 それとも、これはいろいろ複雑な要素の中の1つに過ぎなくて、場合によってはなくて もいいと考えるか。研究会の議論では2つ目の要素が非常に重要なものなので、1つの 要件的なものとして考えるべきというように理解していました。そこをどう考えるかの 確認をしておきたかったのです。 ○座長 ここの部分は再確認なのですが、委員の先生方からのご意見をいただいておき たいと思います。 ○荒木様 労働時間配分で「具体的な指示を受けない」というのが要件で、それを判断 する基準がブレイクダウンして書いてあるということではないかと思います。出退勤時 刻もその1つですし、業務量のコントロールができなければ、要するに間接的に時間を 指示されているのと変わらないことになり、そういう状況ではいけないということです。  逆に言うと、ほかにもっとブレイクダウンした基準が入るかどうか。この2つだけが 要件だと言い切ってしまうと、それはそれで硬直的になりますので、要件としては使用 者から労働時間配分について具体的な指示を受けない、ということが要件と確認し、そ の判断要素としてこういうものがあるという理解ではないでしょうか。 ○山川様 そこが明確ではありませんでした。必ずしも、研究会の中でもどちらかに決 めていたわけではなかったように思います。そこは実際上はそれほど変わらないのかな と思っています。労使合意で対象者を定めるということはどの道やらなければいけない ですし、労使協議に基づく合意で導入をするということが、年収額が特に高い労働者を 除けば前提となっています。そうなると、労使協議で定めたものを、客観的な要件を満 たしていないからということで覆すような状況になると、実際上使いにくいということ もあります。ただ、そういうことはあまり起きないのではないか。つまり、労使協議が 成立しなければそもそもこの制度は導入できないわけです。 ○座長 年収が非常に高い人を除けば。 ○山川様 ですので、例えば使用者からの具体的な指示を受けないような職務であるこ とが要件となっていると読んでも、実際上、あまり変わりがないのではないかという感 じがします。 ○松井審議官 13頁から入ると、「企業ごとの実態に応じた対象労働者の範囲の画定を 可能とするため、法令に基本的な要件を定めた上で」という文章が生きるとすると、法 令で書く要件は少なくともここの議論で、「使用者からの具体的な指示を受けないこと」 と書くのはOKなのです。これに例えば号立てして、受けていないということは、すな わち出退勤時刻が設定されないことであるとともに、業務量コントロールができるほど 広い裁量があることを明示的に書けというイメージで言われているのか、いや、具体的 な指示を受けないことだけ書いておいて、それを判断していくときに個別の要素を考え ると出退勤はどうか、裁量はどうかということを判断するというように流しているので す。その際、そうは言っても、これももう少し職位、職階など、個別の指標というもの を使ってあぶり出す操作ができないでしょうかというのが「また」以降の議論です。そ のときに一定の職位、職階、言われた職務内容などについて、例えばこういうものは指 示を受けないものという対応関係があるので、それまで書き込むとしたら企業ごとの対 応は無理だから、「具体的な指示を受けない」という要件を定めた上で、具体的な対象労 働者については協議で決定する。ただ、協議でストレートに決定するのではなくて、個 別に誰々というのではなく、そのときに例えば複数束ねられる職務内容を共通の基準に してみたり、年収をというぐらいの意味で書いていると思っています。  そこで山川先生が言われたのは、後ろで職務内容を引くのであれば、前のところで職 位、職階職務内容も引いておけということになります。水町先生が言われたのは具体的 な要件として指示を受けないこととして、時刻設定、広い裁量を今言った条文の解釈的 なものとして観念していけばいいのか、先ほど言った基本的な要件を書き込めというイ メージなのか。そこが分かれば、自分としては大体ここの議論は整理できるような気が しています。どのようなイメージなのでしょうか。 ○水町様 私のイメージは、法例上の書き込みは@)、A)、(1)、(2)、(3)というところで、 例えば健康確保措置についても、健康確保措置を講じることということを法令上の要件 として定める。具体的にはどういうことなのかといったら、健康診断なり休日保障なり、 法令上の要件をブレイクダウンしたものだけれども、これを外したら法令上の要件が満 たさないというイメージです。ここでも果たして、ブレイクダウンしているけれども、 法令上の要件を構成する不可欠の要素なのか、それともこれは例示的なものであって総 合判断の中でされるのか。そのときにやはり外せないのは、何時に出てきて何時に帰っ てもいいということも1つですが、具体的に労働時間管理がされていない。  これまでの裁量労働制とちょっとニュアンスが違うのは、業務量に対してもコントロ ールができるほどの裁量が与えられているのが新しい裁量労働制の中で必要な要件、要 件を具体的に説明した本質的なものとして入っているのではないか。これまで、そうい う議論で進められてきたのではないかと認識していましたし、そう思っています。 ○座長 今の水町意見に対してはいかがですか。 ○荒木様 言葉の使い方かもしれませんが、要するに「具体的な指示を受けない」とい うことをどういう基準で判断するか。すなわち、それが言い換えになれば要件というこ とになります。しかし、このほかにも具体的な指示を受けないかどうかを判断する要素 があるかもしれない。ですから、全部、完全に分解できているかというとまだ分からな い点もある。要件としては「具体的な指示を受けない」ということになっていて、その 判断指標が少なくとも2つ挙がっていると理解しておけば足りるのではないかと思いま す。  もう1つ、こういう書き方をしたときに気になるのは、実は現在の裁量労働制の問題 にもあるように、具体的な指示を受けないことが365日、1日たりとも指示されていた らアウトであるという運用になりますが、現在、大学教員も50%を超えない限りは具体 的に時間的な拘束があったとしても、全体的に裁量的に働いていればかまわないという アプローチが認められています。全部要件だとすると、その一点だけでも満たしていな いとほかの点では全部、この制度がふさわしい人にも適用してはならない、となるのは 必ずしも適切ではないと思います。そういう点も考慮する必要があるかと思います。 ○山川様 今の荒木先生のご意見に賛成です。先ほどの点から言うと、実際上、対象労 働者を労使協議で決めるということからするとそれほど差がない。整理すると、先ほど 審議官が言われたようなことに近いのですが、11頁の2段落目はある意味で職務にかか わることのような気がします。つまり、広い裁量が与えられている職務である。職務と 先ほどの職位、職階を一緒にと申しましたが、ちょっと重みが違うような気もします。 つまり、2段落目が職務の話で、その他の指標として職位、職階のようなものが考えら れると思います。「指標」という言葉が良いかどうか。要件の言い換えになると、荒木先 生が言われたようにそれで尽きてしまうことにもなる。「指標」の意味にもよりますが、 少なくとも2段落目は指標としても非常に重要なものであって、その他に職位、職階と いうものもあるとすれば一応整理ができそうです。  そうなると、こちらは単なる平仄の問題ですが、13頁の職務内容は具体的な対象労働 者の範囲というぐらいにすれば、いろいろなものが含まれてくるのではないか。むしろ、 11頁の方が、もし条文化するとした場合にはどういうように書くのか。若干、基本哲学 にもかかわらないでもないような気もします。職位、職階というのは割と経営者への近 さを示す指標で、職務についてはどちらかといえば裁量度に関する指標で、自律型労働 時間制度といっても、経営者への近さだけでは管理監督者と同じになってしまいます。 経営者への近さと、表現はともかく「自律性」、その2つの発想からできた制度だとする と、自律性というのは非常に重要な指標である。全くの思いつきですが、そのような位 置づけになるでしょうか。 ○西川様 先ほどの職位、職階と職務の区別なのですが、おそらく職位、職階というの は組織での機能や役割に関するものであって、その下に職務というものがあると思いま す。ですから、職務というのは裁量労働制が適用される人についてはかなりフレキシブ ルに変わる可能性があると思います。だから、職務を職位、職階と同等に扱うのは危険 性があるのではないか。むしろ、職務内容など上からいろいろ指示があるかもしれませ ん。今度はこれをやってくれ、あれをやってくれとフレキシブルに変わってくるもので ある。職位、職階とはまた違った概念であって、その辺は労使の協議に任せる。フレキ シブルな形に残しておいた方がいいのではないかという気がします。 ○守島様 皆さんがおっしゃるとおりだと思います。ここで重要なのは多分職務内容が どうこうという話ではなくて、働き方の問題だと思います。基本的に働き方について条 件、基準なのかという議論はあったとしても、物事を言っているわけです。そういう意 味では非常に重要で、今の西川先生のご意見等も含めてこれは残しておくべき要件だと 思います。重要なのは、働き方に関して、こういう働き方をする人たちはこのような時 間管理をやっていこうというのが基本的な制度だろうと思います。それを職務で切ると いうのはちょっと難しいかなという気がします。 ○水町様 1つだけ言わせていただきます。集団的な合意も入るし、個人の同意も入り ますけれども、今実際に非常に過酷な労働を自発的に、ないしは非自発的に強いられて、 過重労働なり過労死、過労自殺になっている人たちというのは、かなり裁量的な働き方 をしながら、自分でも半分納得しながら、労働組合という多数組合がある状況でそのよ うな状況が起こっているというのは、いろいろなヒアリングをしたり話をすればすぐ分 かることだと思います。そういう場合、特にこれまでの裁量労働制の場合は仕事のやり 方、労働時間の配分については裁量があると言われていました。とにかくどんどん仕事 が入ってきて、ノルマを課せられ、これまでの締切りでやれというようにされたときに、 精神的に負担がかかってかなり過重なところになっていくことが医学的にも言われてい ます。また、そのような調査結果もあります。それを健康診断のところでうまくチェッ クできればいいのですが、必ずしもチェックできないことがあるかもしれないとすれば やはり要件のところ、特に実質的な要件として、業務量のコントロールが自分の裁量で できることもここで入れておくことが重要だと思います。守島先生の哲学という観点か らも、仕事のさばき方を自分でできるというところも、条文上は入れなくてもいいかも しれませんが、それをブレイクダウンした本質的な、非常に重要な条件として入ってい ることが重要だと思います。 ○座長 荒木委員は、それが重要だということは否定していないわけですね。 ○荒木様 はい、おっしゃっていることには全く賛成です。このほかにも実はあるかも しれないということです。 ○水町様 要件とのかかわり合いで実質的に重要なのは仕事のやり方、労働時間の配分、 仕事の量のコントロールです。1番目、2番目だけでなくて、3つ目を入れることが非 常に重要だと思います。仕事の内容、職階などは会社によっていろいろ違うので、それ は労使の話合いに委ねていいと思うのですが、この3つは労使の話合いだけには委ねら れない実質的な要件かなと思います。 ○座長 荒木委員、今の部分も結論的には特に異議はないですか。 ○荒木様 13頁の職務内容は、もともと前回までは10頁の(1)、「勤務態様要件」が確か 「職務内容」と書いていたと思います。これを受けて、13頁は(1)の要件及び年収の額、 そういう流れで書かれていたのではないかと思います。そうすると、実際上は具体的な 指示を受けないという、11頁の@)を緩和することは考えられないので、むしろA)が 当該企業ではどうなのか。それを具体的に考えるというところかと思います。そういう ことも合わせると、山川先生がおっしゃったように、「対象労働者の範囲及び年収の額の 要件について」という書き振りでここはいいのではないかと思います。 ○座長 業務量のコントロールというか、一旦仕事が終わったらまた次をやれ、時間に 余裕があるではないか、これをやれというやり方は非常によろしくないというのは、こ の研究会の冒頭から皆さんの議論にあった部分かと思います。そういう趣旨を活かしつ つ、再整理をしていただきたいと思います。その上で次回、さらに文言等は詰めて考え るということでお願いできればと思います。  今回で16回目です。これだけやってきたから今日はもうあまりないのではないかとい うことで、冒頭、わざわざ「積極的にご議論を」と言ったのですが、尽きないというこ とがよく分かりました。今日は時間ですから、この辺で終わらせていただきたいと思い ます。事務局においては、本日いただいたご意見をさらに報告書(案)の中に盛り込む べく修正をしていただきたいと思います。ただしこの研究会の時間で、例えば今日です と、年次有給休暇や時間外労働の部分などはほとんど議論できませんでした。まだまだ 言い残したことがありましたら、できるだけ気がついたときに事務局なり、私にお寄せ くだされば幸いです。  それから、安藤監察官が冒頭でおっしゃっていましたが、参考資料はこれまで研究会 で出されたものを再整理していただいたものがほとんどです。それだけにまだ足りない ものがある。あるいは、場合によってはこれは要らないというものもあるかもしれませ ん。そのようなことがありましたら、これも次回の研究会までに合わせて事務局にご示 唆をいただければと思っています。よろしくお願いします。 ○荒木様 1点だけ、ネーミングについて、新たな適用除外については「新裁量労働制」 とされ、現行のものは「みなし時間制」と呼ぶと整理がされています。もっと良い名前 があればと思っています。というのは、みなし制の方はここでは効果を言っているわけ です。そうであれば、「適用除外制」と「みなし制」が平仄が合っているわけです。それ に対して、現在の裁量労働制というのは「みなし制」と呼んでも、専門業務などはまさ に裁量的なので、これは裁量制と呼んでもおかしくない。もう1つ、「新裁量労働制」を 違う言葉にならないか。現在の裁量労働制に対して、もっと違う言葉で新しいものがで きたことを明確にする。「新裁量労働制」と言うとどうしても今の裁量労働の効果、また みなし制かという印象を受けられるかもしれない。次回までに検討していただければと 思います。 ○座長 ありがとうございます。そこは私も気になっているところです。「新裁量労働制」 と言ったときは裁量であるから適用除外になるというように、言わば要件の方を言って いる。「みなし時間制」と言ったときには、今度は要件は言わないで効果でみなしだから と言う。要件で統一するか、そうでなければ効果で統一するか、あるいは両方を含めた 新たなネーミングを考えるか。コピーの才能のある人でないとなかなか難しいのですが、 これは宿題にさせていただきたいと思います。気づいたらできるだけ早く、メールなど で事務局におっしゃっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。ほかに よろしいでしょうか。最後に、今後について事務局よりお願いします。 ○安藤監察官 次回の会合は1月25日(水)10時から12時まで、厚生労働省17階専 用第21会議室で開催したいと思います。ご参集いただくよう、お願いいたします。 ○座長 本日の会合は以上で終了いたします。年の初めの大変お忙しい時期にご参加い ただき、いつも以上に活発なご議論をいただきました。どうもありがとうございました。 また、次回もよろしくお願いいたします。                    照会先:厚生労働省労働基準局監督課調整係                    電話 :03-5253-1111(内線5522)