参考資料1

総合施設モデル事業の評価について(中間まとめ)

平成17年12月9日
総合施設モデル事業評価委員会

 「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」については、中央教育審議会幼児教育部会と社会保障審議会児童部会の合同の検討会議において、昨年末にその基本的な在り方について審議のまとめを行い、本年4月からモデル事業を実施しているところである。
 本委員会においては、この総合施設の来年度からの本格実施に向けて、現在、全国35か所で実施しているモデル事業について、その職員配置、施設設備、教育・保育の内容等の評価を行ってきたが、3回にわたる議論を踏まえ、これまでの議論の整理を行うこととした。今後、教育・保育の内容などについてさらに議論を重ね、本年度末までに最終的なとりまとめを行う予定である。

 総論
 総合施設については、「審議のまとめ」において提言されたとおり、子どもの視点に立ち、「子どもの最善の利益」を第一に考え、子どもの人間形成の基礎を培い、また、保護者や地域の子育て力を高めるために各種の支援を行う施設であるべきである。こうした理念を踏まえれば、総合施設は、親の就労の有無・形態等で区別することなく、就学前の子どもに適切な幼児教育・保育の機会を提供する機能とともに、すべての子育て家庭に対する支援を行う機能を備えるものである。

 また、「審議のまとめ」において提言されたとおり、総合施設は、こうした機能を備えたサービス提供の枠組みであり、積極的に施設の新設を意図するものではない。

 現在、モデル事業は以下の4類型で実施されている。

(1)幼保連携型(幼稚園と保育所が連携し一体的な運営を行うことで総合施設としての機能を果たすタイプ)
(2)幼稚園型(幼稚園が機能を拡充させることで総合施設としての機能を果たすタイプ)
(3)保育所型(保育所が機能を拡充させることで総合施設としての機能を果たすタイプ)
(4)地方裁量型(幼稚園・保育所のいずれの認可もないが、地域の教育・保育施設が総合施設としての機能を果たすタイプ)

 総合施設については、こうした多様な類型の施設があり得るので、地域の実情に応じて住民が選択して利用ができる施設となることが期待されるが、いずれの類型をとった場合でも子どもの健やかな育ちを中心におき、総合施設に求められる機能の質を確保する必要がある。
 このため、以下のような評価を踏まえつつ、地域の実情に応じた適切・柔軟な対応が可能となるよう、一定の指針を策定することが必要である。


 職員配置について
 0〜2歳児については、保育所と同様に8時間程度利用する子どもが典型的な利用者と考えられるところである。
 モデル事業実施施設からは、「保育所と同様の職員配置を現に行っている」、あるいは「こうした配置が本来望ましい」との回答がほぼすべてのモデル事業実施施設から得られている。これを踏まえれば、保育所と同様の職員配置とすることが望ましい。

 3〜5歳児については、0〜2歳児の場合とは異なり、幼稚園と同様に4時間程度利用する子どもと保育所と同様に8時間程度利用する子どもが同時にいることを踏まえた配置とすることが適当である。
 また、すべてのモデル事業実施施設において学級が編制されているところである。子どもの発達段階上、3〜5歳児の場合は、子ども同士の集団による活動が中心となることを踏まえれば、総合施設における3〜5歳児の4時間程度の共通の時間については、学級を単位とし、学級ごとに職員を確保することが適当であるが、8時間程度利用する子どもの中には登降園時刻が異なることも想定されるので個別の対応も必要であると考えられる。

 また、教育・保育の質の確保・向上を図るための日々の指導計画の作成や教材準備、研修等に必要な時間の確保については、午睡の時間や休業日の活用、非常勤職員の配置など、施設ごとに様々な工夫により対応されていた。
 また、総合施設においては幼児教育・保育・子育て支援等多様な業務が展開されるため、施設職員に対し園内・園外研修の幅を広げることが望まれる。


 職員資格について
 0〜2歳児については、幼稚園にとってほぼ未経験の分野であり、多くのモデル事業実施施設においても保育士資格を有する者が配置されている。
 こうした状況を踏まえれば、0〜2歳児については、保育士資格を有する者が従事することが望ましい。

 3〜5歳児については、モデル事業実施施設においては、教育・保育を担当する職員の7割が幼稚園教諭免許と保育士資格を併有している。特に学級担任は両資格の併有者がほとんどであるが、保育所型の施設を中心に保育士資格のみを有する者を充てている施設もある。一方、幼稚園教諭免許のみを有する者が長時間保育に従事している施設もある。
 こうした状況を踏まえると、3〜5歳児については、両資格を併有することがより望ましいことはもちろんであるが、常に両資格の併有を義務付けるのではなく、学級担任には幼稚園教諭免許を求め、8時間程度利用する子どもの保育を担当する者には保育士資格を求めることを原則としつつ、他方の資格のみを有する者を排除することのないよう配慮することが望ましい。


 施設設備について
 園舎、保育室、運動場の広さについては、ほぼすべてのモデル事業実施施設が幼稚園・保育所のいずれの基準も満たしているところである。
 こうした状況を踏まえれば、基本的にはこれら双方の基準を満たすべきと考えられるが、既存施設が総合施設になることが困難とならないような対応が必要である。

 給食についてはすべてのモデル事業実施施設が実施しているが、乳幼児の食事についてきめ細やかな対応を図り、食育を推進する観点から、調理室についてはその設置が望ましい。
 しかしながら、既存施設が総合施設になる場合、調理室を整備することは困難な場合もある。こうしたことから、モデル事業実施施設の中には外部搬入方式により給食を実施している施設もあるが、一部の施設については子どもの年齢に応じた給食の提供等の面できめ細やかな対応が行われていない状況も懸念されており、子どもの育ちに悪影響がないよう、十分な配慮が望まれる。従って仮に外部搬入方式をとることを認める場合でも、調理機能、栄養面、衛生面、個々の子どもの年齢・発達や健康状態に応じた対応等につき、一定の条件付けが必要と考えられる。

 運動場についても施設の同一敷地内にあるか隣接しており、専ら施設による利用が可能なものであることが望ましいが、モデル事業実施施設の中には、近隣の公園などを活用することで遊び場を確保している施設もある。こうした近隣の公園などを運動場とすることを認める場合でも、運動場としての機能を果たし得るかどうかという観点から、施設を取り巻く地域環境等一定の条件付けが必要と考えられる。

 なお、低年齢児、特に0・1歳児は幼稚園にとって未経験の分野であり、遊具などを含め、幼稚園の施設設備を総合施設としてこうした子どもの利用に供する場合には、子どもの安全や発達の特性を考慮した環境の確保に特に留意する必要がある。


 教育・保育の内容について
 利用時間の相違や幼稚園児・保育所児の別にかかわらず一貫したカリキュラムが必要であると考えられ、多くのモデル事業実施施設においてもこうしたカリキュラムを既に用いている。
 従って、総合施設における教育・保育の内容については、幼稚園教育要領及び保育所保育指針を踏まえながら、子どもの1日の生活のリズムや集団生活の経験年数が異なることなどの総合施設に固有の事情も盛り込んだ総合施設の教育・保育の内容や運営に関するガイドラインを定めることが適当であると考えられる。

 その際、同年齢保育と異年齢保育の両方を施設それぞれの工夫で適切に組み合わせていくことが望ましい。

 また、小学校教育と適切に連携を図ることが必要である。

 併せて、総合施設における教育については、受験などを念頭に置いた知識の獲得を先取りするような、いわゆる早期教育を推進するものではないことについて周知していくことが求められる。


 子育て支援について
 ほぼすべてのモデル事業実施施設が何らかの子育て支援を実施しているが、その利用者からは「親子とも友だちをつくることができた」「職員への相談や、母親同士の会話を通じて子育ての悩みが解消された」など肯定的な評価が極めて多い。
 このように、園児のみならず、在宅の子育て家庭を含めたすべての子育て家庭に対する支援の充実が求められており、子育て支援は、地域の様々な人々の参加も得つつ、総合施設が自ら取り組むべき必須の機能とすべきである。この際、「審議のまとめ」において提言されたとおり、単に親の育児を肩代わりするのではなく、親の育児力の向上を支援するものとすることが必要である。

 モデル事業実施施設における子育て支援については、各施設で開催日数などにばらつきがあるが、保護者が利用したいと思ったときに利用可能な体制の確保が期待される。
 その際、教育・保育に従事する職員が子育て支援に必要な能力を涵養していくことが望まれる。

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