1 | 有期労働契約の利用の制限
(1) | フランスでは、期間の定めのない契約を締結することが労働契約締結の原則とされている。(労働法典L.121-5) |
(2) | 有期労働契約は、いかなる理由であっても、企業の通常のかつ恒常的な活動に関わる職務に継続的に人材を供給することを目的としてはならず、また、そのような効果をもたらしてはならない。
有期労働契約は、労働法典に列挙された(1)欠勤労働者等の特定の労働者の代替、(2)企業の活動の一時的増加、(3)季節的業務、または活動の性質及び業務の一時性ゆえに期間の定めのない契約を利用しないことが慣行となっている活動部門での雇用等の場合に限り締結できる。(L.122-1、122-1-1、122-2) |
(3) | (1)集団的労使紛争(ストライキ)のために労働契約が停止している労働者の代替を目的とする場合、(2)命令で定める特に危険な作業を行うことを目的とする場合、(3)経済的理由による解雇の対象となった職務に関し、当該解雇から6か月以内に、業務の一時的な増加を理由として有期労働契約を利用する場合には、有期労働契約を締結することはできない。ただし、(3)の場合には、更新を予定せず契約期間3か月以内の契約等は、例外的に許容される。(L.122-2-1、122-3) |
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2 | 有期労働契約の期間及び更新等の制限
(1) | 契約期間は、原則として最長18か月とされている。(L.122-1-2) |
(2) | 有期労働契約の更新は、1回に限り行うことができる。その際、当初の契約期間と合わせた全期間が、法定の最長期間(18か月)を超えてはならない。また、更新時に有期労働契約を利用する理由が存在することが必要である。(L.122-1-2) |
(3) | 有期労働契約の期間満了後、更新期間を含めたこの契約期間の3分の1(更新期間を含めた契約期間が14日未満の場合には、当該期間の2分の1)に当たる期間が経過する前には、当該職務に人材を供給する目的で有期労働契約を利用することができない。(L.122-3-11) |
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3 | 書面性の要件
有期労働契約は、書面によって締結され、かつ、その利用目的を明確に定めたものでなければならない。(L.122-3-1)
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4 | 有期労働契約の終了
(1) | 有期労働契約は、期間満了により当然に終了する。(L.122-3-6) |
(2) | 期間満了により契約が終了し、その後期間の定めのない労働契約により契約関係が継続されない場合には、原則として、使用者は労働者に対し賃金に加えて雇用の不安定さを補償するための手当を支払わなければならない。その額は、契約期間中に労働者に支払われる総報酬の10%(労働協約により、引上げ又は一定の場合に6%までの引下げが可能)である。(L.122-3-4) |
(3) | 当事者の合意がある場合を除き、有期労働契約は、労働者の重大な非行又は不可抗力による場合以外には、労使のいずれからも期間満了前に解約することはできない。ただし、労働者は、別の使用者によって期間の定めのない契約で採用されたことを証明すれば、有期労働契約を解約することができる。
使用者が不当に中途解約した場合、上記(2)の手当とは別に、期間満了までに労働者が受け取ったであろう報酬額以上の額の損害賠償請求権が労働者に付与される。労働者が不当に中途解約した場合、使用者に、被った損害に対応する損害賠償請求権が付与される。(L.122-3-8) | |
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5 | 平等取扱原則等
(1) | 明示の立法規定がある場合及び労働契約の解消に関する規定を除いて、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に適用される立法及び労働協約の規定並びに慣行から生じる規定は、有期契約労働者にも適用される。(L.122-3-3) |
(2) | 有期契約労働者の報酬は、同等の職業格付けでかつ同等の職務に従事する期間の定めのない労働契約の労働者が、同一の企業において試用期間後に受け取る報酬の額を下回ってはならない。(L.122-3-3) |
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6 | 有期労働契約の利用に関する報告等
(1) | 労働者数300人以上の企業では3か月ごと、それ以外の企業では半年ごとに、使用者は、期間の定めのない労働契約、有期労働契約等雇用形態別のそれぞれの労働者数及び有期労働契約等を利用するに至った理由を企業委員会に報告しなければならない。(L.432-4-1) |
(2) | 有期労働契約が濫用的に利用されている場合、又は企業内で有期労働契約の利用が大きく増加している場合、企業委員会(これがない場合には従業員代表委員)は、労働監督官に調査を求めることができる。その場合、使用者は、企業委員会(従業員代表委員)に、労働監督官からの調査報告及びこれに対する回答を通知しなければならない。(L.432-4-1) |
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7 | 違法な有期労働契約の効果
(1) | 使用者が上記1~3の法規制に違反した場合、期間の定めのない契約が締結されたものとみなされる。また、この場合、使用者は賃金1か月分以上の賠償金を支払う。(L.122-3-13) |
(2) | 上記(1)の対象となる法規制や平等な報酬支払いを履行しないこと等の法規制に違反した使用者は、3,750ユーロの罰金を支払う。(L.152-1-4) |
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