【 | 雇止めに関する事例】
60歳の定年後1年契約で再雇用された労働者について、若返りのため次回の契約は更新しないとの通告を受けたが、就業規則には65歳までの再雇用が規定されており、他に62歳以上の労働者も多くいるにもかかわらず、自分のみ1年で契約が更新されないことは納得がいかないとして、残り4年分の賃金相当額の補償金の支払いを求めたもの。
会社側は、当該労働者について指導しても業務の改善が見込めないことから退職してもらうこととし、本人も引継ぎを行っており退職に合意していたものと考えていたと主張した。
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【 | 雇止めに関する事例】
契約社員として1年契約を更新し3年間勤務していた労働者が、3年目の契約期間満了の約3か月前に、契約期間満了ということで雇止めの通告をされた。雇止めの理由は特に示されず、契約期間満了時に雇用を終了するとだけ通告されたものである。
労働者は、営業成績もよく、残業も相当行ってきた中で雇止めとなることには納得がいかないとして、雇止めを受け入れず会社側との話合いを求めたが、話合いの機会は得られなかった。そこで、労働者は、会社側に対して、復職又は経済的・精神的損害に対する補償金の支払いを求めたもの。
会社側は、理由がなくても、期間満了で終了と会社側が決定したのであるから、更新はないと主張した。
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【 | 労働契約の終了が解雇であるか有期労働契約の契約期間の満了(雇止め)であるかが問題となった事例】
勤続4年になる労働者が、会社側から1年契約の契約期間の満了による雇止めの通知を受けた。労働者は、会社を辞めさせられる理由の明示を求めたが、会社側は一方的に期間満了というのみで納得できず、これは解雇であるとして経済的な補償金の支払いを求めたもの。
労働者に対して雇入れ通知書は年度ごとに交付されており、労働者は、初年度に交付された通知書については本人がサインしたが、それ以降の年度に交付されたものについては、当該年度が始まった後に渡されたものであり、サインをしていないと主張した。
会社側は、労働者は1年契約のパートタイマーとして雇用されたものであり、就業規則にはパートタイマーの契約期間は1年以内の有期と定めていること、次年度以降はそれぞれ口頭で契約を更新したが、本件の契約期間満了時には契約の更新をしていないので、労働契約は終了したものであると主張した。
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【 | 裁判例:雇止めについて、解雇に関する法理を類推すべきとした例】
契約期間2か月と記載してある労働契約書を取り交わした上で基幹臨時工として雇い入れられた労働者について、会社側は、契約が5回ないし23回にわたって更新された後に、雇止めの意思表示をした。
この会社における基幹臨時工は、採用基準、給与体系、労働時間、適用される就業規則等において本工と異なる取扱いをされ、本工の加入する労働組合にも加入できないが、その従事する仕事の種類、内容の点において本工と差異はなかった。これまで基幹臨時工が期間満了によって雇止めされた例はなく、自ら希望して退職する者のほか、そのほとんどが長期間にわたって継続雇用されていた。
また、労働者の採用に際しては、会社側に長期継続雇用、本工への登用を期待させるような言動があり、この労働者も期間の定めにかかわらず継続雇用されるものと信じて契約書を取り交わしたのであって、本工に登用されることを強く希望していたという事情があった。さらに、契約更新に当たっては、必ずしも契約期間満了の都度直ちに新契約締結の手続がとられていたわけではなかった。
判決では、「本件各労働契約は、当事者双方ともいずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり、したがって、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各雇止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示にあたる」とする原判決について、「そうである以上、本件各雇止めの効力の判断に当たっては、その実質にかんがみ、解雇に関する法理を類推すべきであることが明らか」であるとした。(東芝柳町工場事件 昭和49年最高裁判決)
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【 | 裁判例:解雇に関する法理が類推適用された上で、雇止めが有効とされた例】
工場に臨時員として雇用され、期間2か月の労働契約を5回更新した労働者について、会社側は不況に伴う業務上の都合を理由に契約の更新を拒絶した。
この工場の臨時員制度は、景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり、採用も学科・技能試験等は行わない簡易な方法で決定されていた。工場は、一般的には単純な作業、精度がさほど重要視されていない作業に臨時員を従事させる方針をとっており、労働者も比較的簡易な作業に従事していた。
会社側は、臨時員の契約更新に当たっては、契約期間満了の約1週間前に本人の意思を確認し、当初作成の労働契約書の「雇用期間」欄に順次雇用期間を記入し、臨時員の印を押捺させていたものであり、労働者と会社側との間の5回にわたる労働契約の更新は、いずれも期間満了の都度新たな契約を更新する旨を合意することによってされてきたものである。
判決では、「5回にわたる契約の更新によって、本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいは上告人(労働者)と被上告人(会社側)との間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできない」としつつ、「工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人(労働者)との間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によって雇止めするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反または不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。しかし、臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである」として雇止めを有効とした原判決を認容した。(日立メディコ事件 昭和61年最高裁判決)
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【 | 試行雇用契約に関する事例】
新たに採用された労働者が、入社直後に2か月間は試用期間であることを告げられ、また、就労開始後約1か月を経過した時点で、就労開始日から2か月の有期労働契約であることを内容とする契約書に署名、押印を求められ、労働者はこれに署名した。当該契約期間満了の5日前に、労働者は、会社側から翌月以降の雇用継続はできない旨を通告された。
労働者は、(1)面接時にも、入社後も長期間の継続勤務を希望していることを上司に伝えていること、応募のきっかけとなったハローワークの求人票には期間の定めのある契約であることが記載されていなかったことから、自らが署名した契約書はあくまで試用期間中の臨時的な契約であって、試用期間中に重大な失敗がない限り、雇用は当然継続し、本採用されるものと考えていたこと、また、(2)雇用継続ができない理由は、「言い訳が多い」等と聞いており、納得がいかないことを挙げ、雇用継続を求めた。
会社側は、(1)あくまで契約期間2か月の有期労働契約であり、採用を決める各支店の店長にも長期雇用を期待させる言動は取らないよう十分注意している、(2)契約期間の満了による当然の雇用関係の終了であって、労働者が主張しているような理由ではないと主張した。
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【 | 裁判例:雇用契約に期間を設けた趣旨が労働者の適性を判断するためのものであるときは、特段の事情が認められる場合を除き、その期間は試用期間であるとした例】
労働者は、社会科担当の教員(常勤講師)として採用されその職務に従事していたが、会社側は翌年3月18日に労働者に対し、労働者と会社側との間の雇用契約は同月末をもって終了する旨の通知をした。
採用面接の際、理事長は労働者に対し、採用後の身分は常勤講師とし、契約期間を一応4月1日から1年とすること及び1年間の勤務状態をみて再雇用するか否かの判定をすることなどにつき説明をした。
また、同年5月中旬には、労働者は会社側から求められるままに、同年4月7日ころに予め会社側より交付されていた「労働者が3月31日までの1年の期限付の常勤講師として採用される旨の合意が労働者と会社側との間に成立したこと及び右期限が満了したときは解雇予告その他何らの通知を要せず期限満了の日に当然退職の効果を生ずること」などが記載されている期限付職員契約書に自ら署名捺印していた。
判決では、「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である」とされた。(神戸弘陵学園事件 平成2年最高裁判決) |