05/12/21 今後の労働時間制度に関する研究会 第15回議事録 第15回今後の労働時間制度に関する研究会                     日時 平成17年12月21日(水)                        10:00〜                     場所 厚生労働省専用第21会議室 ○座長(諏訪) おはようございます。定刻となりましたので、ただ今から「第15回今 後の労働時間制度に関する研究会」を開催します。年末のお忙しいところ、皆様におか れましてはご参集をいただきまして、大変有難うございます。本日の出欠ですが、佐藤 様から欠席のご連絡をいただいています。おそらく西川様は追っていらっしゃると思い ますので、始めます。  本日は、これまでの研究会でのご議論や、委員の皆様から事前に表明していただきま したご意見等を踏まえまして、私の方で少し考えをまとめました。それを事務局に伝え まして、報告書素案という形で今日の議論のたたき台を作成していただきました。そこ で、これをめぐって皆様にはご議論をしていただきます。全体の構成など今回の見直し の目的がわかりやすくなるように、これまでの議論の流れから少し変更している部分も ありますが、その点も含め各委員におかれましては積極的なご意見、ご示唆をいただけ ればと思っています。それでは、素案のご説明を事務局にお願いします。 ○小林調査官 全体の構成と具体的な中身についての概要について、簡単ではあります が事務局より説明します。構成は、Iとして「現状認識と今後の展望」、IIとして「現行 諸制度の現状と見直しの方向性」、IIIとして「新たな労働時間制度の在り方」という3部 構成です。  Iの「現状認識と今後の展望」は、従来からご議論いただいた環境の変化(産業構造 の変化、少子高齢化の進展)による一般労働者の抱えている労働時間等の諸問題を概観 として書いています。その中で特に、適切かつ厳正な労働時間管理を徹底するとともに、 賃金不払い残業の解消、年次有給休暇の取得促進等が必要だという現状認識、グローバ リゼーションの進展の中で企業における高付加価値な仕事の比重が高まり、また組織の フラット化、目標管理制度等の導入に伴って働き方自体が変わってきたという中で、労 働時間の長短ではなく、成果や能力により評価されることがふさわしい労働者も増え、 それに対応した労働時間制度の見直しも必要になってきているのではないか、という現 状認識をみたところです。  それを受けII「現行諸制度の現状と見直しの方向性」として、現行の労働時間諸制度 では、年休、時間外・休日労働、フレックスタイム、事業場外みなし、専門業務型裁量 労働制、企画業務型裁量労働制、管理監督者までの諸制度についてのアンケート等によ る課題を現状認識として述べています。  それを踏まえて4頁目の「見直しの検討の方向性」という項で、大きく検討するに当 たっての課題、方向について述べた所があります。特に注記すべき点としては、見直し の観点では、当面対応すべき課題と中長期的観点に立って対応すべき課題を押さえた上 で、特に労働時間は健康確保という点で重視すべきですので、健康確保を維持しながら 諸制度の見直しをするという観点が必要なこと、また企業の実態に応じた制度を設計す ることにも配慮する必要があり、その中で労使自治により制度の設計が可能となるとい うことが重要である、という認識を述べたところです。  5頁目以降の「新たな労働時間制度の在り方」で、具体的な在り方を論じているとこ ろです。大きく2つに分けて議論しています。1つ目は「生活時間を確保しつつ、仕事 と生活を調和させて働くことを図る観点からの見直し」です。労働者全体にかかわる共 通の課題ということで、見直しの視点としては生活のための時間と仕事との調和を図り ながら働くことが必要であると。それを前提とした見直しをする点。また、実際に働け るという観点で、健康確保をする意味で、実際上休める時間を確保するということが重 要ですので、生活時間と仕事の時間とを調和させるとともに、仕事をする上で労働者の 健康については、それが阻害されないように確保をすることを併せて措置することを踏 まえた検討が必要だということです。  具体的に(2)の各制度の検討としては、先に年休について書いています。年休につ いては、従来から時季指定権のもとに労働者が取るか取らないかは、労働者のイニシア ティビリティに任せているところですが、50%を割る取得率から、そのイニシアティブ を労働者に委ねているという現状のままでいいのかどうかという問題を提起した上で、 諸外国の例を踏まえながら具体的に労働者と使用者の間で年休について時季を決定する、 という見直しの観点です。  6頁にありますように、計画的付与制度の活用を促進しながら、新たな計画的な付与 の義務付け等の見直しも併せて図るべきではないか、ということを提言しています。  年休の労働日単位の取得方法は、今現在、法で規定しているところですが、仕事と家 庭の調和を図る意味で、必ずしもそのニーズを満たしていないのではないかという問題 の指摘を受けて、時間単位での取得の可能性についても記述しているところです。その 際労働日単位での取得を原則とする上で、ある程度時間単位の取得について労使の話合 いで一定の日数に限るとかいろいろな制約をして、本来の連続休暇を前提としながら、 その例外として時間単位の取得を考えていく必要があるのではないかということです。  退職時におきまして未消化年休ということが多々出てきていますので、その取扱いに ついて、その場合、未消化年休に係る年休手当請求権を退職時に清算する制度を設ける ことも考えられるのではないかと書いています。  6頁の一番最後ですが、各職場において、毎月計画的に年休取得日を調整するなどの 話合いを義務付ける、ということも方策として考えられるのではないかという点を記し ているところです。  次の7頁の時間外・休日労働についてです。具体的な提言としては、2つ目の○に健 康確保を図る観点から、時間外労働の時間数が一定の時間を超えた場合などについては、 労働者の選択を前提として、割増賃金の支払いに代えてその時間外労働の時間数に相応 する休日を付与することを義務付ける制度の検討も進めるべきではないか。  4つ目の○にありますが、36協定を締結せずに時間外労働をさせた場合や、時間外 労働の限度基準を超えて時間外労働をさせた場合には、通常よりは高い割増率による割 増賃金の支払いを義務付ける、といったことについても検討する必要があるのではない か。  フレックスタイム制です。中小企業を中心として普及が進んでいないことを踏まえて、 好事例の収集、またはフレックスタイム制自体について一定の期間本人に使用する曜日 の自由を与えていますが、その中で特定の曜日に限り通常の労働時間管理を行って、そ の他の曜日については同制度を導入できるようにする、という運用上の工夫も考えなく てはいけないと提言しています。また、事業場外みなしについても問題提起をしていま す。  次に2として「労働時間の長短ではなく成果や能力で評価されることがふさわしい労 働者のための制度」について検討をしています。検討の視点としては、年俸制や成果主 義賃金の導入が進む中で、今労働者のさらなる能力発揮を促進することが必要であり、 アメリカのホワイトカラー・エグゼンプション等の事例を参考にしながらも、我が国と 転職の容易さや過重労働の発生状況といった点に大きな違いがあることを踏まえながら、 同制度の導入を検討すべきだということを記しています。  健康の確保については、労働時間規制の適用除外をするという枠組みにおいては、過 重労働が増加するという事態が起こらぬように、制度設計に当たっては心身の健康確保 という制度を考慮しながら制度設計をする必要がある、という点が前提となるというこ とを記しています。  具体的な中身は、9頁目の「総論」に、対象労働者は具体的には労働時間の配分につ いて使用者から具体的な指示を受けないこと、あるいは労働時間の長短が直接的に賃金 に反映されるようなものではなくて、成果や能力に応じて賃金が決定されていることと いう職務要件です。(2)の本人要件としては、一定水準以上の年収を確保されていること、 また同意していること。(3)は、健康確保要件を満たしていること。また、(4)導入におけ る労使協議がなされている、という4つの要件を前提とすると書いているところです。  10頁目の(4)の次の○ですが、具体的な職務要件及び年収要件については、労使協議に 基づく合意により決定し、又は緩和することを認め、労働基準法上の免罰効を付与する ことによって、各企業ごとの実態に応じた対象者の範囲の画定を可能とすることが考え られる。  次の○は年収要件について、法定の水準を超える極めて高額の年収が保証されている 労働者については、非常に高い自律性が推定される労働者であることから、本人の同意 があれば新適用除外を受けられることとし、(4)の制度を導入するに当たっての労使協議 は不要とすることについても検討すべきではないか、という点を記しています。  11頁目以降につきましては、この対象者の具体的なイメージを書いており、具体的な 典型的な例としては、イ「企業における中堅の幹部候補者で管理監督者の手前に位置す る者」、ロ「企業における設計部門のプロジェクトチームのリーダー」といった者が、今 回の新適用除外の対象労働者となり得ることが想定されるところです。このイ・ロにつ いて具体的で客観的な基準を指標として例示すると書いておりますが、説明は省略しま す。  次に「各論」として12頁です。本人の同意を対象労働者の要件としているところです が、特に労働者本人による同意が適正に行われていることを担保する必要がありますの で、同意しなかった場合の不利益取扱いを禁止するとともに、使用者と対象労働者の間 で所定の事項を記載した合意書を作成し、当該合意書を事業場に保管することを義務付 けることが適当ではないか、と書いています。  労使協議の役割としては、新適用除外における労使協議においては要件の設定や対象 範囲の画定等を行うことになることから、労使の対等性が確保されていることが重要で ある。13頁目以降に労使の対等性について過半数組合がある場合、あるいはない場合に ついて記述をしています。  13頁目の休日の意義の手前の○ですが、新適用除外の導入等に伴う労使協議手続を行 った場合に、事後的チェックを適時適切に行うことができるようにする趣旨から、その 際の労使協議の合意書又は労使委員会の決議書をその事業場に保管させるとともに、労 働基準監督署に届け出ることを求めることも考えられる、ということも併せて記載して います。  次は健康確保を図る観点ということで、休日が確実に取れること、また14頁に、その 他の健康確保措置が講じられていることが重要ではないか、と記しているところです。 第35条の法定休日のほかに一定日数以上の休日の取得や、休日のうちの一定日数につい ては連続した特別休暇の形式で取得させることが必要ではないか。また、実際に取得さ せるための方策としては、当該企業において対象労働者には休日の取得が適切に行われ ていないことが明らかになった場合には、当該企業における新適用除外の扱いを認めな いこととし、対象労働者全員を通常の労働時間管理に戻すことも考えられるのではない か。  その他の健康確保措置としては、対象労働者全員に対して何らかの健康確保措置を講 ずることを義務付けた上で、その実施状況について労働基準監督署への報告を要するこ ととし、実施されない場合は罰則を科すことや、新適用除外の扱いを認めないことなど の取扱いについても考えられるのではないか。  次の15頁目の新適用除外の効果としては、対象労働者について現行の管理監督者と同 様に法第4章、第6章及び第6章の2に規定する労働時間及び休憩に関する規定につい ては適用されないことをもって、法的効果とすべきではないか、と記しています。  また、新適用除外は自律的な労働者を対象とするものであるので、対象労働者自らの 判断で深夜に業務を行う場合が十分想定されるところから、健康確保措置を担保するこ とを前提として、深夜業に関する規定は除外して良いのではないか。ただし、これらの 規定のいずれもが除外されるかどうかについては、要件等を満たした場合に、各企業の 勤務実態に応じて、労使の合意により適用除外とする規定を選択できる仕組みとするこ とについても併せて検討を行うべきではないか、とも記載しています。  15頁以下に、新適用除外の適用に当たり法定の要件・手続に違背があった場合の取扱 いについて記載をしていますが、時間の関係上、説明を省きます。  お手元の17頁です。履行確保のための行政の役割として、新適用除外については、具 体的な対象者の範囲の画定とか導入及び運用について各企業の労使自治が大きな役割を 果たしている。また、過半数組合がない場合については過半数代表者等の協議ですが、 労使が対等の立場で労働条件を決定できるという仕組みが前提となっていますので、こ のような条件が確保されてない場合には、行政官庁として新適用除外の導入の手続が適 正に行われているかどうかの面から適時適切に確認することが適当である、ということ を記しています。  (4)では、新適用除外を導入するに当たりまして、現行制度との整理をどうするか について記載をしているところです。現行制度では企画業務型裁量労働制がありますが、 自律的な働き方をするという制度の趣旨から言いますと、今回の新適用除外の対象労働 者と重なる点がありますので、新適用除外の創設に伴いまして、企画業務型裁量労働制 については原則廃止することも考えられるということです。ただし、現行制度を利用し ている企業及び労働者がいることを踏まえまして、当面の間、制度を維持することにつ いても検討することが必要だとしています。  18頁目ですが、現行の専門業務型裁量労働制との関係です。業務の性質上、通常の方 法による労働時間の算定が適切でない業務がその対象であることから、新適用除外の対 象者の要件設定によっては対象者が一部重なるということもあり、重なった労働者につ いては新適用除外に移行することも考えられますが、現行の専門業務型裁量労働制の多 くの労働者については、そのまま維持するニーズも高いということで、現行制度を維持 することを前提として制度設計をすることが考えられないか、という点を書いておりま す。  管理監督者との関係です。管理監督者については、その趣旨及び対象者の範囲の明確 化を図り、例えばスタッフ職のように新適用除外の対象労働者となることがふさわしい 者については、管理監督者から除くこと等の整理が必要であることとしています。  深夜業に関する規定については今現在適用されていますが、管理監督者はそもそも労 働時間制度の適用除外であり時間管理がなされていないということを踏まえますと、深 夜業についても適用除外することが考えられる。ただし、この場合、代償措置、いわば 健康確保のためのセーフティネットとして、何らかの健康確保のための措置を併せて講 じることが必要ではないか。また、管理監督者といえども労働者であることを踏まえま すと、新適用除外において検討される健康確保措置の内容を考慮しながら、上記、深夜 業の規定の適用除外の場面に限らず、一般的な管理監督者の健康確保措置の在り方につ いても、この際検討をすることが考えられる。以上、概要を説明しました。 ○座長 有難うございました。この素案をめぐりまして皆様からご質問、ご意見等をい ただきます。 ○水町様 頁数の順番で気づいたところから申し上げていきます。まず6頁の上から2 番目の○の年次有給休暇の取得方法です。1行目に「育児のための送り迎え」が入って いますが、比較的恒常的な事案で年休を1〜2時間単位で使うのは、あまり年休の趣旨 に沿わないと思います。こういうものはフレックスとかいろいろな労働時間制度で対応 する。ただし恒常的ではないもので、労働者のゆとりという観点については時間単位で 考えるという方法。実際に年休になったら自由取得なので何に使うか自由ですが、そも そも制度を導入する際の趣旨として、こういう恒常的なものは入れない方がいいかなと 私は思います。  9頁の(1)職務要件の@)の一番最後の3行で、「この場合、追加の業務を拒否できる、 個々の業務のうちどれを優先的に処理するかについて判断できるほどの広い裁量」は簡 単に言うと、いろいろな仕事がある場合に仕事の優先度を決めるのと同時に、仕事の取 捨選択ができるというか、例えば5つの仕事を与えられたけれども、4番目と5番目に ついては後に回すとか、4番目と5番目は重要ではないからとやり過ごしたり、もう捨 ててしまってという判断自体ができるという仕事の量のコントロールが、個人として個 人の判断でできるような人という意味合いのものかという点が1つです。 ○大西監督課長 今の点ですが、先生のおっしゃった趣旨です。業務追加によって裁量 性が損なわれているというご議論があったので、例えば100あって、追加で20入ってき たら、それは120になるのではなくて、4番目と5番目の20を捨ててやはり100になる という仕事です。 ○水町様 100を受けるときに100と言われても、そのうち80ぐらいが本当に大切な所 で、場合によっては20を自分で捨てられるという判断も、追加の業務だけではなくて、 与えられて降ってくる仕事の中で恒常的にそういう判断ができるというところまで含む のかという点です。 ○大西監督課長 今直近でおっしゃったところは正確には入っていないかもしれません。 それはご議論によって入れることは可能だと思います。 ○水町様 追加とはどの時点で追加なのか。最初からドバッと仕事を与えられて、追加 されないけれども常に多いとき、休みをちゃんと取れと言われながらこのような時間で やれないよというときに捨てられるかどうか、その気持としてここに入っているかどう かという点が、仕事の量のコントロールというのは非常に重要になってくるので、ここ に入れておいた方がいいかと私は思うのですが。  続けてこれは個人的な意見ですが、10頁の一番下、法定水準を超える極めて高額の年 収が保証されている労働者は、年収要件を付けるにしても、もっと規制を外して自由に やれるようにしようという趣旨で、特に「(4)の制度を導入するに当たっての労使協議は 不要とすることについても検討すべきではないか」という所です。非常に年収が高いと いうことの持っている意味ですが、例えば、年収が1,500万円とか2,000万円をもらっ ている人が、年収が高いことをもって本当に1対1で交渉する力を持っているのか。場 合によっては3,000万円、4,000万円もらっていても非常にタイトな仕事を余儀なくさ れていて、働きすぎでという場合のチェックをどこで入れるのか。年収が高ければ、全 部クリアされるのかという点には少し疑問があるので、その場合のチェックの入れ方を 慎重にした方がいいかなというのが私の考え方です。  13頁、過半数代表、過半数組合とか、労使委員会のことです。「過半数組合がない事 業場においては」とか「過半数労働組合がある場合は」と書いてあります。ここはニュ アンスとしてぼかしてあるのかもしれませんが、例えば過半数組合がある場合には過半 数組合との協議を優先して、そうではない場合には、例えば過半数代表との交渉を複数 にするとか、労使委員会を考えるという考え方です。過半数組合がある場合にはその協 議が重要だと考えるのか、それとも企画業務型の裁量労働制みたいに、過半数組合があ る、なしにかかわらず労使委員会を優先して考えるのかで、もし前者であるとすれば、 その制度の整合性の問題が少し出てくるような気もするのです。これはここで細かく議 論するというよりも、労働契約法制の議論とパラレルに考えながら調整するということ になるかもしれませんが、その点はどういう趣旨で書かれていて、今後どういう流れに なるのかと思いました。 ○大西監督課長 その点について少し補足させていただきます。先生がおっしゃるよう に、現行の基準法では、第38条の4のようなところで労使委員会という制度と、他の部 分では過半数組合又は過半数代表という2系統の制度が併存しています。その真ん中に、 まさにこの制度をどういう具合に入れていくのかということになると思います。確かに 今の表現ぶりでは、どちらかに決めているという感じではなく、中間的なものを書いて いるということになろうかと思います。これは、まさに仕上がり具合によって現行制度 の方も多少いじって影響が出てくることも含めて考えられるのではないかと思いますの で、その点も含めて議論いただければ大変ありがたいと思います。 ○水町様 ここで議論することはないのかもしれません。仮に過半数組合があるときに は過半数組合との協議・交渉、過半数組合がないときには労使委員会ということになっ てくると、そもそもの制度の組み立て自体に問題が出てくるのかなという気がします。 そこを、少し労働契約法制の議論とも踏まえて考えるべきかなと思いました。  それから、本日は説明のところでは触れられなかったのですが、16頁の下から2つ目 の○の、「また、不適正な取扱いがなされていた期間中の労働者の賃金の取扱い」で、違 法なことがあった場合に賃金面でどのように処理するのかということで、処理が難しい ので労使の話合いで「清算条項」などをつくってその額を決めるということです。これ は、理論的にも少し難しいような気がします。実際に清算条項の額を決めるに当たって、 違法なことがあっても額はそんなに変わらないという清算条項を付けられた場合にどう なるのか。例えば1,000万という契約をした場合に、これが大体長い時間を働くことを 前提に1,000万ということを言っているから、もし違法なことがあっても清算条項は 1,020万にしますと言われた場合に、果たしてそれが理論的にも制度的に整合性がある のか。実際にそういう危険性がないのかという点が問題になり得るので、ここは違法に なった場合の法的処理については原則に戻って実労働時間で管理をして、実労働時間× 25%、もしくは50%。その労働時間のカウントは難しいかもしれませんが、今不払い残 業に対しては、労働基準監督署や裁判所でいろいろな目安を使いながら、それ掛けるい くつで、具体的なものがなくても大体推定して実労働時間のカウントをしています。で すから、それでいくのが理論的な筋かなと私は思いました。  もう1つ。17〜18頁にかけてありますように、企画業務型裁量労働制は場合によって は廃止することも考えられるけれども、専門業務型裁量労働制については現行制度を維 持することも考えられるのではないか。18頁の真ん中辺り、上から3つ目の○には、「そ の際、同制度の対象労働者が過重労働に陥ることを防ぐため、企画業務型裁量労働制と 同様の運用改善を行うことがある」ということが書かれています。おっしゃるとおり、 専門業務型裁量労働制についてもいろいろな話を聞きますと、過重労働や健康阻害の問 題が出てきています。これを現行制度として維持するにしても、その場合健康確保をど うするかというのはこれから新しく設ける新適用除外と同じような観点で問題になると 思います。ここで「その際」という最後の2行がありますが、「企画業務型裁量労働制度 と同様の」という点が、もし企画業務型裁量労働制がなくなった場合になくなるので、 ここは新適用除外制と同様のと考えるとそれなら新適用除外にすべきではないかという ことになるかもしれません。とにかく、過重労働や健康問題については専門業務型を残 すとしても、そこには重要な問題として考えなければいけないということが分かるよう な表現にしてもらえればと思います。 ○小林調査官 その点ですが、17頁の最後から、企画業務型については当面の間維持す ることを前提として、維持した場合の現行制度についてどうなるかという点について書 いています。18頁の上の方に具体的な改善する方向性について、「上司による具体的な 指示や過度の追加業務の指示がなされている場合に、速やかに当該労働者を制度の対象 から外すといったことにより、制度の適正な運用を確保することが必要ではないか」と 書いています。具体的な中身については、足りないかと思いますが。 ○松井審議官 ここは、健康確保措置をしっかり講ずるということを書けばいいと思い ます。おっしゃるとおり直します。 ○水町様 それは、企画業務型が残る部分についても専門業務型が維持される部分につ いても、きちんと考えるという趣旨であれば良いです。 ○松井審議官 健康確保と、このように書きます。 ○水町様 はい、わかりました。すみません、たくさん挙げましたが、差し当たり以上 です。 ○座長 それでは、意見にわたる部分は特に事務局からお答え等要らないと思いますの で、質問にわたる部分はこれでよろしいですか。それでは、ほかの意見をお願いします。 ○山川様 よくまとまっていると思います。1つ質問で、7頁の2つ目の○のところで 代償休日の話がありますが、「有給の代償休日」と書いてあります。その「有給」の意味 について、つまり割増賃金の支払いに代えてということで割増賃金との対応関係がある とすれば、必ずしも常に有給とは限らない。有給にするという制度設計もその中身によ ってあり得ると思います。ここでの「有給」というのは、どのぐらいのものを考えてお られるのかというのが質問です。 ○大西監督課長 ご指摘の点については詳細な検討をしていません。制度設計にはいろ いろな形があると思いますので、是非ご議論いただきたいと思います。ただ、ここでの 有給というのは、むしろニュアンスとしては無給ではないというぐらいの感じで、割増 率が入っているかどうかについてはまだ詰めていないのではないかと思います。 ○山川様 今の点は、私もまだ深く考えていないので質問だけです。  2点目は、9〜11頁です。職務要件について使用者からの具体的な指示を受けないと あって、それと出勤・退勤時刻の設定がされないということは、ほぼ対応関係になって いると思います。例えば11頁に職位や業務内容が書かれていますが、これはイメージと いうことですので、これはルールの要件としては設定しないことになるのかという感じ もします。そうすると、9頁の「具体的な指示を受けない」という要件だけであるとす ると、10頁の(4)の1つ目の○に「具体的な職務要件及び年収要件については、労使協議 に基づく合意により決定する」とあります。そうすると、この具体的な職務要件という のが9頁の具体的な指示を受けないという職務要件を労使協議に基づく合意で決定でき るというと、何となく制度の本質的な部分が除かれてしまうような感じもするのです。 これまでの議論では、むしろ11頁に書かれているような職位や具体的な業務内容につい て、労使協議による合意で、ということだったように思います。そうすると、形式的な ことかもしれませんが、条文上の要件について職位のようなものが入ってこないと、一 体労使協議で決めるというのは要件上どう位置づけられるのかといった問題があるかと 思います。 ○大西監督課長 今の点につきましては、もう一度十分精査させていただきたいと思い ます。確かに山川先生がご指摘のように、ご議論いただいていたのはまさに11頁に書い てあるような職位、職階のところであったと思います。前回のたたき台の場面では、今 の職務要件と書いてあるところに職位、職階の話がありましたので、9、10、11頁で多 少整合性が取れていない点があろうかと思います。そこは、ご指摘を踏まえて精査させ ていただきたいと思います。 ○山川様 一方で、具体的な指標を例示するというのは結構なことではないかと思いま す。ネガティブリストの話がありましたが、予見可能性を高めるという点では、アメリ カでもこういう場合は一律に除くといったような両面から明確化が図られています。そ ういう方向自体は私は結構だと思います。  非常に難しいのは、先ほど水町先生も言われた15頁辺りからの要件・手続に違背があ った場合です。不備があるということの意味について、より具体化する必要があるよう に思います。例えば、記載事項が記載されていないとか、あるいは合意がないといった こと自体は、もう適用除外の制度の要件を満たさないといいますか、通常の労働時間制 度でいくしかありません。例えば、労使協議で決めた事項についてそれが必ずしも趣旨 どおり実現されていなかった場合は、程度の問題になります。一例をあげれば健康確保 措置が実施されなかった場合、全体としてそういう制度自体が存在しないに等しい場合 は、おそらく要件自体を満たさないことになると思いますが、ここに書かれているよう に軽微な場合ということもあるのかもしれません。そういう場合については、例えばア メリカでは賃金の話になるのですが、軽微な場合ですと、是正措置を講じた上で、かつ 将来に渡ってこれは守りますというようなことを公表する、ということをすれば、違反 措置の責任は問わないということになります。おそらくその哲学は、軽微なものについ てはむしろ是正措置をして予防をした方が、全体としていいのではなかろうかというこ とです。ちょっと日本の仕組みでそういうものができるのかという点はあるのですが、 法律遵守を促進するという観点から、そのような仕組みを検討する価値はあるのではな いかと思います。 ○座長 何かありますか。今の点は非常に重要で、現実に適用していくときには大問題 になるいろいろなものを含んでいます。今山川先生がおっしゃったような他国でやって いるような、一種直ちにレッドカードではなくてイエローカードを2枚ぐらい切るとい ったような仕組みを工夫できるかどうかということに関して意見はありますでしょうか。 ○松井審議官 今の点ですが、運用で処理しようという意識なのでしょうか。それとも 法令レベルというか規定上でそういう扱いを明らかにとお考えなのでしょうか。ちょっ とその辺を言っていただくと大分違うと思います。 ○山川様 その辺は、ちょっと具体的にまだ提案というほど固まっていません。アメリ カの例で申しますと、アメリカの場合もいわば割増賃金規制ですが、法文の中にこれこ れこういう措置をとった場合には、責任を問わないといったようなことがあったように 思います。  もう1つは、ちょっとアメリカと制度の仕組みが違いますが、アメリカの場合は1人 について違反行為があったらその部下について全員が適用除外の効果を失うということ があります。ここにも、若干「事業場全体について」とありますので、ちょっとそれは ドラスティックかなと思います。例えば、改善措置をとればその1人の改善措置で全体 についての効果が失われないとか、日本に適用すればそういうことだと思います。それ は、法政策なこともあり得ると思いますが、先ほど申しましたようにそのような例がこ れまで日本にあったかというようなこともありますので、とりあえずは運用で対処する ということもあり得るかなと思います。 ○松井審議官 運用の方であれば、一般的に基準法違反については監督官制度という枠 組みの中で是正勧告をして是正するかどうかを見守るというやり方と、典型的にいうと 重大違反があれば直ちに送検すると。そういう意味で、法体系には書き込まれていませ んが、長年の監督実務でいろいろな指標を作りまして、それを借用とか引用して運用面 での対応をすることもあります。ただ、それをこの研究会報告の中で一応の基準を示し、 こんなふうに運用しては、というものだとまあまあいいかなと。いきなり法律に書けと なると、アメリカの法体系のようになってしまいますね。現行法とは相当なじみの薄い ものになるかなという感じはします。 ○水町様 今言われた是正勧告と重大な法違反は、いずれにしても労基法違反の事実が ある場合にまず指導をするか、それとももういきなり入っていってやるかということで す。それは、行政の在り方としてはそういう二段構えはあるかもしませんが、これから 労働審判制などができてきて裁判所で個別の事件として争うときにはそうではありませ ん。労基法違反になるかならないか、もしくはその間にグレーゾーンを作るかという話 になった場合に、ここで言われる軽微な不備がどういうものかを明確にしておかないと、 個人として予測可能性がないですし、どうしょうもありません。果たして、この軽微な 場合というものが具体的にどういうイメージで言われているのか、その具体的なグレー ゾーンがあまりはっきりしないとなれば、やはり原則に戻って白か黒かというものにな らざるを得ないのかなという気はします。制度の設計の仕方としては実態が非常に複雑 で難しい場合もありますので、その場合は労使の話合いに委ねることになって、労使の 合意がどうなのかとか。その場合には契約書で個人の合意ということがあるかもしれま せんが、そこでグレーゾーンをどう設計するのか。山川先生がおっしゃったのは報酬ベ ースのところの苦情処理などのやり方ですか。 ○山川様 そうですね。 ○水町様 その場合には、やはり企業内で予防措置を尽くしていればという処理の仕方 ですよね。果たして、それが日本でなじむか。もしやるとしても、グレーな軽微な不備 という場合を明確に書いておかないと、個別の訴訟になったときになかなか難しいとい う気がします。 ○座長 これは、ここで結論を出すということも困難ですから、また考えて次回以降の 案に反映することにしたいと思います。これ以外の点でご意見はいかがでしょうか。 ○荒木様 既に指摘いただいた点に関連しての意見ですが、まず10頁の一番下の○で、 年収要件の高い場合には「本人の合意があれば新適用除外を受けられることとし、(4)の 制度を導入するに当たっての労使協議を不要とする」というものですよね。したがって、 (1)〜(3)は適用されるということではないかと私は理解しています。つまり、非常に年収 の高い人については労使合意まではいらないだろうということではないかと思います。 健康確保措置等々は年収の高い人であっても適用されるべきでしょうし、仕事について 具体的な指導を受けないとか賃金と切り離されているといったことは適用しても不合理 ではないと思っています。例えば、16頁の「本人同意のみで適用除外の効果が生ずる」 というのは、非常にミスリーディングではないかという気がしています。  それから7頁に、山川先生のご指摘になった「有給の代償休日」というのがありまし たね。これは、私の理解では、所定労働時間が8時間で例えば4時間時間外労働をした ときに、別の日に4時間自由な時間を与えてその分を賃金カットしたのでは意味があり ません。4時間休んでもその分は賃金をカットしないというだけです。更に、割増しと いうのは、4時間の場合には4時間だけではなくてそれにプラス25%、あるいは50%増 しということもあり得ます。その分働かなかったところを賃金カットしたのでは意味が ない、という趣旨で有給と書いているのではないかと理解しました。 ○座長 今の荒木先生のご意見について、水町先生いかがですか。 ○水町様 10頁の点で、非常に高額な人について要件を外すとすれば、労使の合意かな という気がします。健康確保措置については非常に私たちも疑問を持っていますので、 荒木先生の意見であれば納得できるというか、1つ考えられるかなとは思います。 ○座長 10頁の「(4)の」と書いてあるところの「(4)の」の位置の読み方なのではないで しょうか。(4)の労使協議は不要とする。ですから、制度を導入するに当たっての(4)のと。 そうすると、そういう誤解が生まれなくなる。(1)〜(3)は当然適用。(4)だけがという意味 で今までも議論されてきたのではないかと思います。 ○松井審議官 水町先生の最初の発言は、年収要件が交渉力格差是正の査証にはならな いのではないかと提案されたと思いましたが、そこは今ので氷解するのでしょうか。本 質的には解決されていないですよね。 ○水町様 2つ意味があります。交渉力がないときに実際はやはり集団で交渉させるべ きなのかという集団的な担保があるべきかということと、交渉力がないときに中身をき ちんとしておかなければ交渉でどんどん切り下げられてしまうおそれがあるということ です。少なくとも、後者は中身の点で健康確保措置とかそういう譲れない労働時間制度 の趣旨に関わるようなことについて確保しておけば、ある程度高い人については1番目 の集団で労使協議をして担保するというのは、制度の選択肢として外すことも考えられ るかもしれません。ただ、2つとも外すというのは大変だなという気がします。 ○座長 その点は一応の了解が得られたということで、ほかの点についていかがでしょ うか。 ○水町様 額によりますけれども。 ○座長 まあそれはどうなるかは非常に難しいです。先ほど水町先生が問題提起された 中に、専門型の裁量労働についての部分がありました。みなしでいくのか、むしろこれ も適用除外型になるのかという議論の部分は、何か意見はありますでしょうか。では、 水町先生ご自身のご意見をもう少しおっしゃっていただけますか。 ○水町様 企画業務型と専門業務型の実際の運用の状況で、入り口が明確になっている かということと、運用上過重労働があるかどうかという問題の2つがあるとします。企 画業務型の場合は両方とも結構大変で、専門業務型は入り口は結構明確にされているけ れども、過重労働がないかというとSEの問題や技術設計をしているような人の問題、 過重労働があって、実際上裁判例等でも専門業務型のようなタイプの人が過重労働の結 果過労死になるというケースも事例としてはあります。入り口の点で明確になっている という点ではいいかもしれませんが、健康確保については専門業務型にもしっかりやっ ていかなければいけないというのは、私は非常に重要だと思っています。現行制度で残 すとしても、そこはしっかりする。ただ、その場合に、「労働時間のみなし」という制度 が本当に働き方として合っているのか、労働時間のみなしという制度ではなくてやはり 適用除外にしながら新しい労働時間の趣旨に沿ったようなチェックを入れていくべきな のかについては、判断の分かれるところだと思います。ですから、今廃止した方がいい か、それとも新しい制度に一気にいくべきかという点は、実際の運用との流れの問題も ありますので、今即時に判断できないと思います。そのような労働時間の趣旨や健康問 題と実際の弊害に沿った形で今の制度を残すとしても、そういう観点から制度設計をき ちんとしておかなければいけないかなというのが、私の問題・関心です。 ○座長 そうしますと、健康確保は先ほどのような議論で一応疑問は、まあ中身次第で すが、一応枠組みとしてはクリアしたということになると、もう1つの問題ですが、そ こはいろいろなこれまでの経緯などを考えながらどう処理していくかということなのだ ろうと思います。  それでは、今の点以外で更にご意見はありますか。ほかの方々からも是非ご意見をい ただきたいと思います。 ○守島様 2、3点あります。皆様方が既に言われたことに近い部分がありますが、ち ょっと私の中でまだ明確になっていない部分がいくつかあります。水町先生が最初に言 われた追加の業務が拒否できるという部分なのですが、私も、追加の業務というよりは 業務の総量に関して調整できるとか交渉できるということが多分重要なのだろうと思っ ています。ですから、最初の段階で与えられたものにプラスアルファの部分だけ交渉す るという話ではないようには思います。ただし、そう考えたときにこの上にくる管理監 督者というのはどういう位置づけになるのか、どういう解釈をすればいいのかがちょっ と私の中ではあまり分かりません。要するに、管理監督者になった途端の方々はかなり 業務が多くて、ある意味では過重労働状態になっているというのが多分実態だと思いま す。繋岸に一歩近づいたのだからいいだろうという議論も成り立つのかもしれませんが、 そこのところをどう考えていくのかをどなたかに教えていただければなと思います。つ まり、彼等は業務を拒否する権利があるのかないのか、交渉する権利があるのかないの かというところが、ちょっと私はよくわかりません。  それから、非常に細かい点で申し訳ないのですが、先ほど水町先生が言われた6頁の 「育児のための送り迎えや通院」という話は、1つの書き方の問題もあるように思いま す。おそらく年休を使う場合は、例えば火曜日と木曜日は奥さんが子どもを送り迎えす るという話もあるのです。同時に、例えば旦那さんが急に仕事が入ったときにどうする かという、多少臨時的な要因もあると思います。原則論としては水町先生に全く賛成を します。多少そういうニュアンスも含めたワークライフバランスの臨時的な部分に対す る配慮の項目として、残しておく必要はあるのかなという気がしました。 ○座長 前の方の守島先生のご質問は、単なる意見ではなくて整合性をどう取っていく かに関する基本的な考え方を聞いています。まず、事務局ではどのようにこの点をお考 えですか。 ○大西監督課長 現在の考え方としては、管理監督者というのはある程度経営の必要性 をみて、ご自身で判断していただくというのが基本になっていると思います。現行の制 度ではこういう仕事の総量も含めて総合判断していただくというようなことになってい るのではないかと思います。ただ、この点については19頁ですが、管理監督者について 新制度を導入した場合、その辺りと整合的をつないでいくとか、あるいは現行の運用現 場で混乱しないような形でと、整合的なつなぎをしていくことを問題提起しております ので、その点も含めてご議論いただければ有難いと思います。 ○座長 今ご説明をいただきましたが、これは非常に重要で、このような改正をする際 の大事なところです。委員の皆様からご意見をいただければと思います。 ○水町様 管理監督者の要件から考えると、査定をしているなどの労務管理上の使用者 と一体的立場にあるということと、労働時間管理はいけない、特に出退勤が自由に選べ るというのと、管理監督者として適切なふさわしい処遇を、管理監督者手当をもらって いるということで、出退勤の自由は入っていますが、それ以上に、労働時間は自由にで きるかというのは入っていないのですね。仕事を選ぶ権利があるかどうか。場合によっ ては、管理監督的なことは課長なり部長なりとして、全部やらなければいけない。そこ に自由はないけれども、何時に来て何時に帰るかは自由だという点だけという要件が入 っているだけです。  そういう意味では、新適用除外の方がより時間的には自由になるかもしれない。そう いう制度の設計の在り方が辻褄が合わないかというと、上にいる人たちは下の管理監督 をして、時間は結構タイトになる場合もあるが、下の人は与えられた仕事の中で、自分 たちは仕事を選ぶこともできるし、ある程度時間は自由にできるというような人が下に いて、それを上で監督している。下の方は新適用除外で、時間の自由。むしろ使用者と の近さよりも時間の自由や仕事を選べるというようなところで、自由にしている人に新 しい制度を設けるという構造もあり得るかなという気はするのです。私の認識はそうい う感じです。 ○松井審議官 全く実在しないがあえて理論構成すると、また、整合性を整える制度に するためにする議論ですが、管理監督者は、実態論から言うと水町先生の言うようなこ となのでしょうけれど、あえて理論的に言えば、仕事の総量、つまり増減も加えて管理 監督者は法制的に自由にできるのだと、ただ仕事の総量を、下手をすると使用者サイド のグループの中から評価をマイナスに受けて、処遇が悪くなるということではないか。 観念的には、管理監督者は総量の調整もできる。ただ、グループ内で評価を受けるため に一生懸命やるから、総量調整をしていないようにみえるが、観念的にはできる。しか し実態は違う。  つまり、労働者層と違う職制に入っていると考えた方が整理しやすいのではないかと 思うのです。頂上的に労働時間を調整できるというぐらいに、総量全体も本当はできる。 ただ、使用者グループの中でいい評価を受けようとすると、目一杯、丸まま受けて削る ということはしない。むしろ付け加えることで自らアピールするという行動パターンに 陥って、みんな大変になる。だから最後のように、改めて健康確保措置でみんなを規制 してあげることで、労働者グループとしての保護を及ぼすという整理はどうでしょうか、 というようにも構成できると思うのです。  そうすると、今までの管理監督者の定義を、この研究会では定義をし直すと。定義を し直して、本当に厳格にするということを打ち出していただければ、論理的な整合性は 整えられると思うのです。 ○守島様 そうなってくると、一体どういう世界を我々は前提としているかというと、 管理監督者がいて、彼ら彼女らはある程度の労働時間、出退勤に関する自由を持ってい るとか、それらに対するコントロールがあっても、実態的にはそうでないと。今ここで 議論しているのは、そのすぐ下の人たち、かなり高いレベルなのでもっと労働時間を自 由にしろという話になってくるのだと思うのです。  そうなってくると、逆に管理監督者の管理監督という、なぜ彼らが、いわゆる時間規 制から外れているかというところの根本業務が、さらに難しいというか、さらに多くの 仕事を抱えるようになってくるので、まさにおっしゃるように、また今田先生もおっし ゃっているように、最後の健康確保という部分をもっと強化していかないと。そういう 社会にどんどん入っていくと、やはりファーストラインの管理監督者は一番割を食って しまうような世界をつくっているのかなという感じがしています。ちょっと感想めいて 大変申し訳ないのですが、それが1つです。  もう1つは、先ほどの専門型の裁量労働制に関してです。専門型裁量労働制は、私も 正直に言うとそんなに詳しいわけではありません。実態を見ていると、彼ら彼女らは仕 事の総量に関するコントロールはほぼないが、仕事の順番というか、いつやるかに関し ては割合と自由度を求めるし、また求めていい仕事のタイプかなという気がいたします。  そういう意味で、基本的に専門型をなくすという議論は全然されていないのですが、 そういうタイプの人たちがかなり存在する世の中になってきて、心理的、所得的にも低 いというか、ここで議論されている人たちよりは低いレベルなので、そういう人たちに 関しては専門型を残して、労働時間管理、みなし的なものをやっていくのは必要なので はないかという気はします。 ○山川様 先ほどの追加の業務ということですが、私はどちらかというと審議官のご意 見と同じような形で、管理監督者の方が、少なくとも新適用除外の方よりも総量では逆 に少なくなってしまうというのは、実態はともかく、本質的にはあるのではないかと思 います。ここで「追加の業務は拒否できる」と書いてある表現の問題ではないかと思う のです。例えば、あるプロジェクトを任されて、大体終わりそうですと言ったときに、 それではこのプロジェクトの報告書を作ってくれと言われても、嫌ですとは言えないの ではないか。問題は報告書を作るときの時間的な拘束がなく、その時間をどう配分する かは自由であるということです。  あと3時間しか就労時間がないときに、報告書も作れと言われると、それは事実上で きないという問題もあるのですが、表現上の問題として、自ずと追加の業務ができない とまで言いきっていいかどうか。実際上、よく言われているような裁量性が失われるよ うなことになった場合に問題があるにしても、業務命令自体の拒否権があるとまでして いいのかどうか、ちょっと私は疑問があります。 ○座長 その点、前の議論ではプロジェクトをやって、その報告書というと、追加の業 務というよりは関連した業務なのだろうと思います。プロジェクトが、例えば10日で終 わる、それを8日で頑張ったら2日あるのだから、それではこれをちょっとやってと、 これが追加の業務ではないかと思うのです。全然関係ない別のことが、ひょいとそこに 入り込んでくる、そうすると切れ目なく働き続けなければいけなくなるのはまずいだろ うと、そういうことは、ちょっと勘弁してくださいよ、と言えるようにした方がいいの ではないかという心ではないかと思うのです。 ○山川様 それは時間との関係でということになるのでしょうか。あと2日という時間 があるが、その2日を、これをやれというのはいけないということでしょうか。 ○荒木様 最初の9頁の@)は、「職務遂行の手法とか労働時間の配分について具体的な 指示を受けない」ということを具体化したものではないかと思うのです。仮に追加の業 務を言われて、それは1カ月後でもいいから、こちらの業務をやらなければいけないの だからこちらをやってくれと言われたのに、いいえ、それは追加業務ですから拒否でき ます、というのは現実性のない議論だと思います。あくまで時間配分、仕事のやり方に ついて裁量性があって、それが自分で調整できることの一側面でしょう。プロジェクト が決まっていてここまでやらなければいけないと言われながら、同時に、明日までにこ れもやれと、それではもう徹夜でやらなければいけませんよ、という追加の業務につい ては、上の方に戻って具体的な指示を受けないという評価はもうできないのではないか ということです。そういうことを表現したものと取るべきであって、その点では「追加 業務を拒否できる」という表現は一人歩きしまして、実際の監督業務では「追加の業務 も入っている」と言って、これは適用除外はあり得ませんというような運用になるとす ると、裁量的な働き方、それに対して処遇の面でも確保するという、制度の趣旨から離 れていく可能性があるのではないかと思います。ですから、こういう表現はちょっとど うかなと思います。  むしろ後の方の「個々の業務のうちどれを優先的に処理するかについて判断できるほ どの広い裁量が与えられている」というものの一場面として、一杯一杯のときに、これ も同時に、この日までにやれという指示には従う必要はないという趣旨に理解すべきで はないかと思います。 ○座長 大体趣旨は皆さんお分かりだろうと思いますが、書き方で誤解を受けたり、現 実に適用するときに、まさに角をためて牛を殺してしまうようなことにならないように 少し工夫をしていただくことにします。 ○今田様 健康確保措置がとても重要なものとして位置づけられていますが、適切な健 康確保措置がやられている、いないの判断が重要になるのかなと思うのですが。具体的 な健康確保措置について考え方はあるのですか。この点に関しては、ここでは深く議論 していないように思いますが。 ○松井審議官 アイディアを出していただければということです。13頁の下から健康確 保措置の典型例で休日がこんなに意味があって、これは確実にということがベースです ね。それから展開して、14頁の下、その他健康確保のための措置で、ここに、例えばこ ういうことをもって健康確保措置を出していただいて、ステージアップしたいのです。  役所の中で言いますと、健康確保措置というか、安全衛生部系統のいろいろな業務が あります。今までの議論では、そこまで突っ込んだ議論は出ていませんので、一人書き するのもどうかなということなのです。安衛法のシステムですと、産業医がいて事前チ ェック、いろいろな治療体制、特別健康診断など諸々の措置がありますから、それをう まく組み合わせていけというご提案でもいいと思うのです。むしろ全体として、こうい った取扱いをするする上で欠かせない大きな柱として健康確保措置を立てるということ であれば、もう少し具体例を書き込んだ方が、全体の落ち着きはいいと思います。  そういう意味で、具体的に今あるかと言われると、問題提起をさせていただいている というレベルで考えているわけです。 ○今田様 裁量労働特有の働き方に伴う健康確保について、どういう枠組みが考えられ るのか。 ○松井審議官 例えば、ここでいうと心身の健康確保の中で、むしろ心の方かも分から ないですね。こういう方はメンタルヘルス、フィジカルとメンタルでいうとメンタルの 方に重心を置いた健康確保措置をしっかりやれというのが、バランス上必要ではないか という気もします。そういったことで、方向性を出していただいて、詳しいことはしっ かり審議会でという投げ方もある。方向性だけを出すというのもありますし、その中で 具体例で、こんなことを措置の重要パーツとして必ず組み込め、というご提言がいただ ければと思うのです。 ○水町様 これまでの議論を踏まえた書き方になっていたのではないかと私は思ってい たのです。これまでの議論では、とにかく休日を取らせる。法定休日と週休2日にして、 それで年休も確実に取らせて、とにかく健康を確保できるような休日を取らせてと。こ この中には、その中でも一定の連続休暇を与えることが1つの柱になっている。  もう1つは、休日を取らせるだけでは十分でないかもしれない。ストレスなどいろい ろな問題があるので健康診断をやる。それは普通の定期健康診断だけではなく、特別健 康診断、産業医がいる場合、有所見の場合は面接指導を行うとか、健康診断等の形でも 安全衛生面からきちんとチェックをするという、その2つの柱でと。それが健康確保措 置の第3の要件の中にきちんと入り込んでいると思って読んでいたので、その点は何も 言いませんでした。14頁以降のものも、それと組み合わさった、要件の1つの例として 書かれているのです。  休日を取らせるということと、健康診断の面ではしっかりケアをすることが要件の1 つの重要なポイントだと思いますので、その意味が込められて書かれていると思ってい ました。 ○座長 それから休暇が取れるように注意する。そういうのは今まで議論してきて、あ ちこちに散らばって書いてあると思います。 ○水町様 それと先ほどの総量規制の問題です。仕事の面で裁量があるといっても、実 際上、例えば年に120日、130日休日を取らせて、その中でも連続休暇を取らせて、健 康面で配慮しながら働かせる対応として、およそ考えられないような仕事が与えられ、 実際上休暇を取るのが難しい形での総量を与えるのは難しい。逆に、そういう量を使用 者が与えた場合に、どうチェックできるかという場合に、チェックする道としては労使 が話し合って、労使のところで決めるというやり方もあるかもしれないし、個人がそれ について拒否できると書くと大変なのかもしれませんが、交渉して、仕事の量について やることができるという意味が、先ほどの仕事の取捨選択のところにうまく入ってくる ようにしないといけないと私は思います。 ○座長 もう1つ悩ましいところは、安衛法でもありますが、働く側も一種の努力義務 として自分の健康管理をきちんとやらなければいけない。この点は労働時間や仕事で裁 量性が高まれば高まるほど、その人たちはそういうところの管理をきちんとやるという ことに関しては、やはり自覚的になってもらわなければいけないのですが、ただそれを、 いわば口実にして使用者側が全く責任を負わなくていいというようにはいかない。この 辺のところをどのように組み合わせていくかということなのだろうと思います。 ○水町様 理論的に悩ましいのが、同意のときに個別に休日を何日取るという契約書を 取ります。その中に健康診断として、こういう健康診断を受けるということを契約書の 中に入れます。使用者側がそうするということではなくて、労働者も健康診断を受けに 行く義務を負うと書いた場合、それで労働者が受けなかった場合に、その合意がないか ら新適用除外から外れるかということを言えるかが、理論的にはすごく難しいところで、 そこを要件としてどう整理するかです。  契約書に書くという意味で、総務的な義務を負うとすることはできると思いますが、 効果との関係で、使用者がその場合に処罰されることはなかなか難しいでしょうし、民 事上の効力としてどうなるかという点も、なかなか悩ましいところであります。でも、 契約書に書かせることが重要なことだと思います。 ○座長 効果をどうするかは難しいですね。使用者側はきちんと行くように言っていた のに、本人は忙しいし、自分はこういうようにやりたいからと言って行かなかったとき、 だからといって裁量労働制から外したら、労使双方とも新適用除外から外したら、そん なことは全く自分たちも考えていなかったというようになることは事実ですが、他方、 そのぐらいまで厳しくやれば、健康確保に関しての実効性は高まる。一罰百戒的に高ま る。この辺をどうしていくかということですが。 ○山川様 今の点も先ほどの法違反の効果との関係に関わってくるかなというように思 います。例えば健康確保措置を実施しなかった場合、先ほど水町先生が言われたように 契約として捉えていますので、契約違反としての損害賠償責任、おそらく慰謝料が中心 になるのでしょうが、それを追求できるという手法はあり得ると思います。そうすると、 例えば具体的な指示を行ってはいけないと言っているのに、恒常的に行ったら制度の適 用自体アウトですが、そうではなくて、ある時だけ指示を行ってしまった場合や、誤っ て賃金カットをした場合については、契約レベルでの履行責任の追求とか損害賠償請求 がありえ、賃金カットの場合は、それを補填して、さらに先ほど言いましたような形で、 将来に向けて是正しますということもあるかもしれません。  合意書という形で、契約レベルでやることにした以上は、労働審判制などの適用に当 たっても契約責任について検討していく、例えば休日が与えられない場合も、1日だけ 与えなかった場合に、全体として適用除外が受けられないということはドラスティック すぎるように思いますので、休日が与えられなかった部分について後に与えていれば、 あとは、その日に休日が取れなかったことによる慰謝料の問題にするとか、かなり契約 的な手法を取り入れて、それと労基法としての、全体的な効果の発生が外れるというこ とを区別してもいいのかなと思います。仕切りをどうするかは問題ですが。 ○座長 要するに、制度の趣旨を没却するようなときと、そこまではいかないが、しか しながらバランスを取るためには是正させなければいけないという場合の振り分けです ね。 ○水町様 その場合に、契約書にあまり大きな期待を持ちすぎると、実際上、契約違反 の場合に個々の労働者が労働審判を起こして訴えることができるかを考えた場合、ほと んど実効性が期待できないので、その場合の制度趣旨との関わりをどう考えるかです。 二段構えにすることは考えられますが、契約で処理する分野を広くして、この場合は労 基法違反にはならないという範囲を広くすると、尻抜けになるというか、法の趣旨を侵 害するような事態がいっぱい出てくるかなという気がしますので、そこは注意が必要か なと思います。 ○山川様 契約である以上拘束力があるので、前提としては行為規範として守らなけれ ばいけません。実際上、在職中、しかも新適用除外に当たる人がそんなに頻繁に裁判所 に行くとは思えません。1つは行為規範です。もう1つ言い忘れたのは、中間的な部分 については、やはり苦情処理の中で個別的苦情というよりも、全体として運用を改善す べきであり、そのような中間的な対応が、まさに苦情処理の問題になるのかなと思いま す。どの程度実効性あるものにするかは別ですが。 ○座長 もう1つは、先ほどの労基法運用上の是正勧告のような運用上の工夫で、少し 警告を出すというような、この辺の組み合わせで対応していくしかない、どれか1つで というのはなかなか難しいだろうと思いますね。 ○松井審議官 今の議論の整理のためにということで申し訳ないのですが、導入におけ る労使協議という要件もありますが、適用除外を導入するために協議して、当該事業場 で適用除外という手法を導入しますよという労使の協約や、システムとしての合意は要 請するのでしょうか。そして、当該事業所内で、そういうものも導入すると合意をした 上で、個々の同意ということに絡めて対象者ごとに個別契約をする。そういう構成にな って議論されているのか、その辺がどうもはっきりしないのです。協議というのは単に 話合いだけですね。話合いをした成果で、当該事業所で適用除外というものを、こうい う基本要件を満たすことはやりますよと宣誓して、署名で明らかになる。それが個別に 適用されるときに、同意ということに絡めて言われた個別契約をすると。  そうすると、制度導入についての可否の要件と、個々の方についての適用の可否の、 適当、不適当という2つに分けられるわけです。そうすると、制度導入に当たっての手 続瑕疵であれば全体的に無効になりますし、個人ごとの契約レベルでの約束違反であれ ば個々の行為の取消し、あるいは、無効と。制度全体を左右させないという整理もでき ると思うのです。そこをもう少し分けてやった方がいいかなという気がしてきたのです。 全体が何かホワッとしているという感じがします。 ○座長 まず、非常に高い年収という場合には協議が外れると一応考えておくと、この 場合は専ら契約合意のところだけです。そうではなくて、これ以外の労使協議と個別の 合意が、いわば頂上的に要件として課されているような人の場合の協議は、まずどのレ ベルを要求するのか、それから合意というのは相互の関係をどう位置づけるかという問 題提起だと思います。 ○山川様 私はそこのところは、労使協議に基づく合意だと思っております。つまり、 協議をしていれば最終的に過半数組合なり代表者が反対しても導入できるというもので はなかったのではないかなという理解です。そうだとすれば、単なるといいますか、手 続的な話合いをしたという要件だと、さらに協議の位置づけについては別途考える必要 がありそうな感じがします。 ○松井審議官 今は「合意により決定」と書いてありますから、合意なしでは駄目にし ているのです。合意を労働協約のようなもので締結するというところまで高めているの でしょうかという質問です。あるいは、そういうものがないときは就業規則だけで代替 することもやるのかなとか。あるいは、過半数組合がないときの過半数代表による労働 協約的なものが、きちんとあるということをやった上で、個別に契約していくというイ メージかなと。そこがまだホワッとしているのかなと思いまして。 ○座長 そこは労働契約法制での議論との関わりがあって我々は深く議論していないと ころなのです。 ○山川様 労働協約として、労使委員会でも良いということになると、労使委員会が労 働協約の締結権を持つかという、ちょっと大きな問題になりますが。 ○松井審議官 そこを整理しつつ、あるいは、そういう問題があるといって触れておく というか、もう少し踏み込んで書いておかないと、関係がどうかなという気がしている のです。 ○荒木様 労使協議というのは同意を要求しないものを普通指しているわけですから、 この表現はどうかなというのがありました。書かれた趣旨を忖度すると、合意というか 同意というとイエスと言うかどうかという問題です。それに対して、あえて協議と書か れているのは、次のようなことを考慮したからでしょうか。本来的な法の要件は(1)(2)(3) です。(1)のような要件設定の趣旨は、かつて議論があったように、これこれこういう業 務だったらいいとか、この業務だったらいけないとか、そういうことは法律では決めな いということです。法律上は具体的な指示を受けないとか、賃金と労働時間というもの が直接的にリンクしていないそういう仕事であればいいのだと。具体的には、自分の企 業ではどういうものになるかを労使で話し合って、これだったらこの要件を満たします ね、こういった業務だったら新適用除外になりますね、というのを決める。そうすると 「決める」というのが入りますので、同意とか合意と、イエスかノーかという問題では なくて、「こういうものですね、我社では」ということを具体化してもらうということが 入るので、あえて労使協議という言葉を使われたのかなと推測したのです。  いずれにしても、それについて労使が、これでいいというような合意に達するという ことはよくて、労使が話し合ったが、意見が対立したけど協議はしました、というので いいという趣旨では全くないと私は解釈します。 ○座長 だんだん細部のところに皆様の目が移ってきていまして、かなりテクニカルな 議論も増えてきましたが、もう少し大局的なご指摘をいただきたいと思います。 ○水町様 今のことに関することで、労使の合意と同意の点、個人の同意の点、10頁の 2の(2)で、これを要件としてどうかませるかです。法律の中で要件としてどこまで 書いて、それ以外は契約の内容にするかという場合に、同意として、例えば導入に同意 するというのと、それプラス休暇を何日取って、年収をいくらにして、それで健康確保 措置の中で健康診断をすることを合意するということまでは法律の要件にする。一方で、 休日を取っているかいないかという話は(3)の健康確保措置の要件を書くので、適用対象 の除外、新適用除外から外れるということになるでしょう。年収の要件で、年収の要件 を守らなかったりした場合には、(2)の@)の要件に外れることになって、それは要件に 関わることだと。それだけ法律事項として書いておくとすれば、あとは(2)の@)の要件 とか、(3)の要件に触れない契約違反については、契約の範囲内でするというような処理 が考えられて、そこの割振りをどうするかという点で、処理することになるのかなとい うように思います。 ○座長 補足的なご意見としてありがとうございました。 ○西川様 1つはコメントです。先ほど今田先生と松井審議官からご発言がありました が、非常に大事なポイントと思い聞いておりました。適用除外の人に対する健康確保の ところです。前に私も一度発言したことがあるのですが、この内容というものが、おそ らく松井審議官がおっしゃったように、体の方から心の方に移ってきているという問題 はものすごくあると思います。今まで健康確保の基準とされていたものと異なる基準が 必要になってくると思うのです。おそらく心はメンタルな部分で、ストレス等は目には 見えないのですが、体の場合は症状として現われます。メンタルの部分は症状に現われ ないという部分もありまして、その辺をどういうようにして健康維持していくかという 問題が大きくなってくるのではないか、というのが1つの感想です。  それから、先ほどから何度か出てきておりますが、6頁の有給休暇の時間単位のとこ ろです。既にご議論は尽くされたと思いますが、「育児のための送り迎え」というのがあ ります。これは水町先生からもご発言がありましたが、やはり通常ではない、何か病気 になったり、育児だけではなくて介護も含めた言葉も必要ではないかという感想を持っ ております。  あとは少し細かい点になりますが、11頁の対象者の具体的イメージのところです。 イ・ロとあり、イの「企業における中堅の幹部候補者である管理監督者の手前に位置す る者」の方はイメージできるのですが、ロでは「企業における設計部門のプロジェクト チームのリーダー」を具体的な例として挙げております。これが果たして代表的な例と してふさわしいかどうかというのがあります。私などはプロジェクトチームというと、 結構クロス・ファンクショナルな、部門をまたいだプロジェクトをイメージするのです。 設計部門のプロジェクトというと、もうちょっと限定されるようなイメージがあります。 そことも関わるのですが、ロについての具体的な基準が@)からずっと続いており、そ のA)の部分は「その者が一定以上の技能又は技術を有して一定範囲の設計を任されて いること」となっています。これは多分、その前のイの条件の「一定以上の職位、職階」 あるいは「一定年数以上の職務経験」と対応した形になっていると思うのですが、ロの A)の「一定以上の技能又は技術」あるいは「一定範囲の設計」というのは非常に意味 が分かりにくく、しかも、技能、技術という言葉は非常に曖昧な言葉で、技能とか技術 といいますと、どちらかと言うとブルーカラーの労働者をイメージさせる部分がありま すが、この人たちは知識労働者であるとか、そちらの方のイメージがありますので、も う少し知識であるとか、技術という言葉はスキルということですから大丈夫かもしれま せんが、その辺の言葉を工夫された方がよろしいのではないかというのがあります。  12頁では、これも前に一度申し上げたと思いますが、各論の前の○ですが「労働時間 の長短と成果の大小の間の相関が強い業務は対象とすべきではない」と書いておられま す。これは成果でいいのか、あるいは評価の方がいいのかという問題があります。成果 と書いておられますが、どちらがいいのかなと思っています。 ○松井審議官 6頁のところの議論が相当出ていますが私なりに整理させていただきま す。年休を時間単位で取れるようにするというのは、要件的には恒常的なものと突発的 なものにまず分けて、突発的なものが生じたときに、例外的に時間刻みで取れるという 整理が制度的にはシンプルで、正しいのではないかというのが水町先生のご指摘だと思 います。これは整理としてすごくいいと思います。ところが、そういうように整理した 後で、結果、突発的と言われている中からはみ出るかもしれないが、例えば一生を通じ て考えると、育児は突発的かもわからないし、介護も一時的かもわからないから、そこ で時間を利用するのも認めていいのではないかと言われたように思ったのです。ですか ら、介護も排除していないと思うのです。  いわゆる、形式面の整理と実態運用上の差を認めていいのではないかというぐらいの 話ではないかと思うのです。それを正面から何でもかんでも、アドホックにいいのでは ないかというのはどうも。何で1日単位で年休を与えているかという論理構成に影響を 与えるのではないか、というように聞こえましたので、間を取って、例えば「原則とし て突発的な」といった書き方にしておいて、運用面で弾力的な扱いを認めるぐらいでも いいかなという気もしたのですが。どうでしょうか。そうしないと両方の意見がうまく いかないと思います。 ○座長 これは非常に重要な論点が浮上してきましたね。つまり、言うまでもなく年休 に関しては、利用目的は問わないと言ってやってきた、これが原則と。それで、今度は 新しく時間単位といったような、非常に例外的な措置をとっていくときには、この使用 目的を制限するのか、それとも制限しないのか。もう既にそれの総量、何日分をこのよ うに振り替えるという部分はこの中に書き込まれていますが。その辺のところは例示が あるだけに、ちょっと曖昧になっています。そこをはっきりさせておいた方がいいと思 いますので、委員の皆様からご意見をいただきたいと思います。 ○水町様 私が話をしたことは、ちょっと誤解があったかもしれません。基本的には、 年休は自由原則で、何に使うかは自由ですし、申告をしろと言われても言わない自由が ある。それで何に使ってもいいのです。育児でも介護でも何に使ってもいいのですが、 年休の趣旨を基本的に遡っていくと、休んでリフレッシュするということであって、恒 常的に育児や介護をするような事情があったり、恒常的なものを前提に時間単位で年休 を取るということを政府の報告書として、政府の報告書かどうかわかりませんが、こう いう報告書として、前提に時間単位にするということはすごく違和感があります。年休 は自由利用ですが書き方としては、突発的、個人的な事情であったり、そのために年休 を使ってワークライフバランスを考えるという趣旨で導入することになるのかなと思い ます。もし限定を付けるとなると、非常にプライバシーに対する介入で、何で取るのだ、 この理由では取らせないというやり取りになってプライバシーの介入になるので、限定 はできないと私は思います。 ○今田様 前の年休の議論のときにも言わせていただきましたが、有給休暇をフレキシ ブルに使用するというのはワークライフバランスから必要だということは分かりますし、 それは重要な視点であると思います。一方、有給休暇は、水町先生がおっしゃったよう な本来的な趣旨があり、ぶつ切れで、特に生活に必要な時間を有給で消化するというの は、かなり慎重になる必要があるのかなと思います。というのは、これまでのいろいろ な調査を見ていると、有給は、実態は育児や介護や本人の病気などに使われている場合 が多い。ただでさえ有給の消化率が低いのに、実際に使われているのがそうだとしたら 問題だと思います。多分、働いている人たちにとっては、有給を貯めて何かのときにと いうような感じで、いわば保険のようなものとして位置づけされている。だから、書き 方はかなり慎重にした方が良いと思います。事務局がおっしゃりたいことはよく分かり ますし、「1日」などとリジッドではなく、柔軟の方がいいという意見もあるのですが。  休業制度を今後拡大整備するという観点からいうと、有給がそういう形で消化される のは改善されるべきだと思います。育児や介護、あるいは看護などという休業制度を職 場に定着させていくという観点から言えば、労働時間の報告書としては、そちらの方向 に少し力点を置いて、訴えていくということを是非していただきたいし、したいと思い ます。 ○座長 この報告書も一応、本来は病気休暇等の制度の導入促進で対処すべきであるが といって、緊急非難的にこういうような対応措置もということで議論をしているわけで す。 ○荒木様 年休制度の目的についてはいろいろな理解があり得ると思います。法律でい いますと、水町先生は、年休の目的は休養というようなことをおっしゃったのですが、 ドイツは確かにErholungsurlaubといって、休養のための休暇という目的をはっきり書 いています。したがって、休養しないために年次有給休暇を使ってはいかんということ になっています。ドイツは自由利用ではない、休まなければいけないのです。休暇中ア ルバイトなどをやっていたら適法な有給休暇権の行使は認められないということになり ます。  日本の法制度は、年休の使途については一切規定は置いていません。したがって、休 養しなければいけないという要請も現行法上はないのです。その結果、実態的なことを 申しますと、ヨーロッパでは非常にアブセンティズムが多いという問題がありました。 つまり労働者は勝手に休んでいるのです。土日の明けの月曜日の午前中は休む人が多い。 日本では、「すみません今日寝坊しちゃいました、これ有給で対処してください」とか。 そういうことが日本でアブセンティズムが顕在化しない理由だというようなこともあり ます。そういうように日本では、年休制度はいろいろな目的のために使うことを認めて きたことがあると思います。したがって、年休の目的はこれだ、現行法上の解釈として それしかないかというと、必ずしもそうは言えないのだろうと思います。  ここで時間単位の取得を認めようとすれば、そういう必要性があるということだけを 言えばいいのであって、突発的に保育園から電話がかかって、お子さんが高熱を出しま したのですぐ来てください、と言われたので2時間早目に帰るというときに、有給で対 処してくださいと、目的云々ではなく、そういう有効な有給の使い方もありますと言え ばいい。制度的には別途何々休暇とかをつくることも将来的にはあり得ますが、現在有 給休暇が全然消化されていない中での対処の方法としては、1つ有効な政策としてあり 得る、という点のことを書いておけば、それで済むのではないかという気がいたします。 ○座長 それは現行制度をあくまでも前提としての考え方ですよね。ですから、我々の ところでも最初のところにちょっと書いてあるように、今のような時季指定権の方式で やりきれるかどうかという、正確には、それだけで対応しきれるかということです。そ この新しい制度設計をしていくときにはまた新しい考え方で、その趣旨を見直すことは あり得るだろうけれど、現行法で、ここ半世紀にわたって運用されてきて、固まってき ている流れ等を考えると、荒木先生は今のような考え方が適当ではないかとおっしゃら れたわけですね。 ○松井審議官 今の整理でいきますと、座長が言われたように、使用者側から年休の時 季指定をさせるという新しい仕組みを考えるときには、やはり年休の目的もある程度特 化するというものとワンセットでという議論になっていいのではないでしょうか。すぐ できないことは分かりましたが。そうした上で、休みを目的ごとに設けていくという整 理ができるから、ある意味で病休などいろいろな要求ごとの休暇をきちんと揃えていく、 それが将来ビジョンだと。しかし、そこまでいかない中での現行の運用はということで、 二段構えで構成した方がきれいかなという気がしたのです。それぐらいの整理はできる のではないでしょうか。 ○荒木様 年休をどう使うという制度設計の話に戻りますと、現行法は、計画年休を導 入しており、そのときの自由年休は5日間確保するわけです。計画年休というのは、い ろいろ制度の仕組み方はありますが、これは労使で決めると、そこで労働者個人は選べ ない。これは、趣旨からすると、まさにヨーロッパ的な休養、休暇的なものを主として 考えている。なぜ5日間確保したかというと、有給を自由に使いたいと。病気のために 取っておきたいという人もいるでしょう。ですから5日間は自由年休に確保しようとい うことで法改正をやったわけです。  つまり、現行法上自体、有給休暇は1つの目的でなければいけないということにはな っていないし、今後、こういう時間決めの年休、これも上限を設けるということもあり ますが、それは自由年休の中の一部分に絡んでくる。そういう整理になってくると思い ます。年休全体が1つの目的でなければいけないということにする必要もないのかなと 感触は持っています。 ○松井審議官 それはある程度動態的に脚色すると、年休は完全に体の休暇を確保する ためのもので、あるべき姿を並べまして、それで計画年休はその過渡期だと。20日のう ちの一定部分は目的を付すということを頭に置きながら計画年休制にし、自由な年休は 今までの運用をやっていく。折衷説で今動いている。継続年休制度を100%適用してい く。しかも使用者側が時季指定権などというものを考え始めたときには、年休について の意義付けや目的をしっかりぶら下げてやる、という方向性を出すとか、何かあってい いかなという気が今したのです。それで現状は、いずれにしても過渡期だというぐらい の整理がきれいかなという気もちょっとしたのです。 ○座長 そこは他の諸制度との間の相互の関係ですからね。結局、年休はいろいろなも のをやった残余の部分の処理に使われてきているというのが、多くの人もよく知ってい るとおりです。他のいろいろな問題がうまく整理されないと今おっしゃられたところは、 一元的にはなかなか確定できないかもしれない。今回そこまでいくわけではありません ので、然るべき書き方を工夫することにして、現行のそういう多重性を持っている目的 が、こういう状況の下でワークライフバランスや緊急事態への対応などを考えると、時 間単位を一定日数分に限ってという方向を打ち出すということで、この点はよろしいで すね。 ○山川様 有給の点は今まとめられたようなことで賛成です。それとは別に、2頁の表 現上の問題です。結局、議論の出発点のところから自律性がいろいろ議論の対象になっ ていて、2頁の1段落目では、評価の問題として新たな制度の設計の要請と言われてい るように読めるのです。「労働時間の長短ではなく成果や能力に評価されることがふさわ しい」と。これはそのとおりではあるのですが、その以前の問題として、自律という言 葉を使うといろいろ議論が出てきてしまうのですが、要は、この報告書の表現で言えば、 使用者から職務の遂行方法や労働時間の配分について具体的な指示を受けない働き方が 適切な労働者であるというのが前提ではなかろうかと思います。評価と労働の対応に関 係なくその成果で評価できるというようなことよりも、むしろ働き方がプロジェクトリ ーダーとか、管理監督者の一歩手前といったような人については適切でありヒアリング などでも、休みがきちんと取れるのであれば好きなように働くことが自分にとって一番 やりやすいのだ、ということも労働者側から出ていたように思います。健康確保の問題 は別として。  それから、働き方の面も、自律という言葉を使うかどうかはともかくとして、2頁の 頭に、あるいは、どこかに入れておいてもいいのではないかと思います。いつの間にか 議論していくうちにそのところが消えていったのか、あるいは弱くなっていったような 気がします。これは表現上の問題です。 ○座長 どちらが実態でどちらが陰かというと、評価はどちらかと言うと陰の問題では ないかというご趣旨ですよね。 ○山川様 そうです。 ○座長 ですから、実態の部分はなかなか特定しづらいことはあるけれども、少なくと もその趣旨みたいなものは、もう少し書かれた方がいいのではないかというご指摘だと 思います。 ○守島様 2点あります。1つは年休、休日の問題です。14頁の一番上のところに、連 続した特別休暇の形式で取得させることが必要ではないかと書いてあります。この研究 会では、そういうことはいいことだという前提でずっと動いてきたのですが、何となく 皆様方のご意見を伺っていると、この方々というのは管理監督者の一歩手前にいる、あ る意味ではラインに乗った人だというイメージが非常に強くなってくるのです。現在ス タッフ職と呼ばれている人たちが、あるプロジェクトが終わったからといって、一定の 連続休暇を取るという状況は、現実的には非常に考えにくいのではないかと思うのです。 現在、部下なし管理職と呼ばれている人たちが、休日を取っていないということが問題 だというのはよく分かるのですが、その人たちが、例えばプロジェクトが終わったから、 あなた1週間休んでください、5日間休んでください、3日間休んでくださいというの は、何か現実的にはすごく難しいように思いますので、少し書き方が強すぎるのかなと 思っています。  ある一定数を取らなければいけないというのは確かにそのとおりで理解できるのです が、それに関して「連続」ということで、それも重要だと分かるのですが、何か「連続 して」というのは、実態的に労務管理の場面でどのようにするのか、完全に特殊な、例 えばハイレベルのSEなどでプロジェクトが終わったら、基本的には仕事は来ないよ、 仕事が来ないというか拒否しても大丈夫だよという人たちなら分かるのですが、皆様方 の議論を先ほどから伺っていて、「連続」と「必要ではないか」とがくっ付いてくると少 し強すぎるかなという感じがいたしました。 ○水町様 実態として、そういう人たちはゴールデンウィークや夏休みも働いているの です。ゴールデンウィーク1週間、夏休み1週間を取るのも難しい実態にある。 ○守島様 実際問題としてそういう方も多いと思います。どういう労働者を前提とする か。もちろん休日を取ってほしいというのは分かるのですが、プロジェクトの切れ目は その他の社会的な動きと、例えばゴールデンウィークと連動していないので更に難しい のではないかという気がするということが1つあります。 ○松井審議官 今言われた実態がもしあるとすればというか、あると思うのですが、こ の報告書はそういったやり方を改めるべきではないかという提言にすべきではないかと いう気もするのです。つまり、世のプロジェクトチームが使える方を酷使し続け、とに かくフルに使うこと自体はミクロ、個別の競争する企業群にとってはいいとしても、ト ータルで労働者全体で考えると、本当にいいのだろうかと。ある意味ではマクロの視点 から、そこの慣行を少しでも変えましょうと。そのための大きな枠組みを提言するとい う意味付けはいるのではないかという気もするのです。だから、難しいからこそ工夫し ながら、皆が納得しながらこういう状況をつくっていくと。  その言い方がきつすぎてパンとはねるというのであれば表現の仕方を変える必要があ るとしても、基本コンセプトは、うんと働いた後はしっかり休んで、その人自身、長い 生涯にわたっての労働力の劣化を防ぐし、労働者像全体として、使用者群もそういった ものに配慮した使い方を全体でしていこうということではないかという気がするのです。 そういう意味では、提言的な要素はあっていいのではないかという気がします。 ○守島様 私もそこのところは反対はしません。先ほど西川先生がいわれたイとロの2 つの労働者タイプがある中のロについては、今言ったようなご議論はすごく分かるので すが、イに関しては、私も間違えているのかもしれないのですが、現実的に、本当にこ んなことができるのだろうか。  例えば夏休みに合わせて、何かどこかの時点でボーンという形はあり得ると思います が、メンタルヘルスの議論をするとなると、ある程度、1つのプロジェクトが終わった ところで休んでほしい。その休みが半年後にくるとか、3カ月後にくるということも多 分想定されていると思うのですが、そういうことが本当にできるのかなと思います。提 言をするという意味はすごくいい。私もそういう世界になってくるといいと思いますが、 実際どうやって処理するのかなというのは、すごく難しいと思います。提言的だという 意味であれば構わないのですが、そこの部分に疑問があったという話です。 ○今田様 守島先生がおっしゃりたいのは、実態上、慣行上というか、難しいというこ とと。職務の中身から難しいということではないわけですね。 ○守島様 職務の中身から慣行にいくわけです。 ○今田様 でも、そこには2つ違いがあって。 ○守島様 そう、違いがあって。私の言っているのは、ある特定の職務に関して、プロ ジェクトが終わったからといって連続的な休暇を与えるのは非常に難しいタイプの職務 があるのではないだろうか、という考え方だということを以降に書いてあるわけです。 ○座長 ここは水掛け論になりますね。そういうように連続的に仕事をやっているよう なタイプだって、欧米だったら長期休暇を取っているではないかということになります から、だからある部分で考えるべきだというように見るか、それとも現状で考えると、 そのような夢物語を言っても何の現実性があるのだというところだと思いますから、書 き方その他、工夫をします。趣旨としての方向は、どなたも反対ではありませんから、 趣旨は生き残るようにしたいと思います。 ○荒木様 守島先生が言われたのは、連続した形で与えるのがどうかということだと思 うのです。新適用除外も休日規制は外れるわけですね。それとも、これは適用するので すか。 ○松井審議官 そこは労使間によります。 ○荒木様 そこと関連していて、現在の適用除外のように休日も適用除外をするという のは問題だということで、休日規制には服するということであれば、何も必ず連続して 与えなければいけないということにはならないかもしれない。あるいは、休日規制を直 接適用にするのは難しいとしたら、ある程度積み立ててもいいけども、その場合は、そ の分どこかできちんと取りなさいと。それは必ずすべての場合、毎週同じように週休を 取っている人に連続して取りなさいというのは、あまり現実的ではない。これは年休と は別に、法定休日のほかにというのですから、そういう週休の話をしているわけですか ら、それが必ず連続でなければいけないというのは、ちょっとどうかなという気は私も いたしました。 ○座長 少し硬直的な書き方になっていますから、そこを工夫するということで。時間 が大変迫ってまいりましたので、ほかにご指摘いただく点ありますでしょうか。よろし いでしょうか。  今日が最後ということではありませんので、少し全体の構成を改めて見ますと、ちょ っとあっちこっちに、どうも一貫していないのではないか、整合性が取れていないので はないかという部分も改めて見えてきました。そこで、今日の皆様のご議論を踏まえ、 次回、この素案のバージョンアップに努めさせていただこうと思います。是非、事務局 におきましても報告書素案を修正する上で今日出たご議論を、よく反映するようにお願 いをしたいと思います。  委員の皆様には、本日十分に展開できなかったような部分につきまして、ご意見があ りましたら、私あるいは事務局の方に早めにお伝えいただければと思っております。ど うぞよろしくお願いいたします。  そこで今後の進め方ですが、事務局から次回の会合についてのご連絡をお願いしたい と思います。 ○安藤監督官 次回の会合は、年が明けまして1月11日(水)10〜12時まで、厚生労 働省共用第7会議室(5階)で開催いたしますので、ご参集いただくようお願いいたし ます。 ○座長 これ以外に何か事務局からお伝えいただくことはありませんか。よろしいです か。次回が最後というわけでは必ずしもありません。大変長い研究会になっておりまし て、皆様にはご負担をかけておりますが、あと少しで何とか締めくくりがつくのではな いかと思っておりますので、今後とも皆様にはよろしくお願いしたいと思います。では、 本日の会合は、以上で終了させていただきます。皆様、どうぞ良いお年をお迎えくださ い。                   照会先:厚生労働省労働基準局監督課調整係                   電話 :03-5253-1111(内線5522)