05/12/16 第56回労働政策審議会雇用均等分科会議事録           第56回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:2005年12月16日(金)  14:00〜15:00 場所:厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階) 出席者:    労側委員:吉宮委員、岡本委員、片岡委員、篠原委員    使側委員:川本委員、吉川委員、前田委員、山崎委員、渡邊委員    公益委員:横溝分科会長、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員、林委員、樋口委員 ○横溝分科会長  ただ今から、第56回労働政策審議会雇用均等分科会を開催いたします。本日は佐藤孝 司委員が欠席されております。  それでは早速議事に入りたいと思います。本日の議題は、「男女雇用機会均等対策に ついて」です。本日は、前回の分科会でご議論いただいた「雇用均等分科会報告(素案) 」について、前回のご意見を踏まえて、事務局において公益委員と相談して修正したも のを資料として用意しております。  まず事務局から修正点について説明をお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  それではご説明させていただきます。お手元の資料をご覧いただければと思います。 前回、「雇用均等分科会報告(素案)」というものを提出させていただきましたが、前回 の議論を踏まえて修正をしたものです。まず表題ですが、「雇用均等分科会報告(案)」 としております。これは前回も様々なご意見がありましたが、これを基にご議論・ご検 討いただくことについては異論はなかったということで、(案)という形にしておりま す。いずれにしても引き続きご議論いただくというものです。  内容についてですが、前文について1カ所修正をいたしております。1ページ目の四つ 目のパラグラフの最後にセンテンスを一つ追加しております。読み上げますと、「ま た、雇用形態の多様化の中で近年増加しているいわゆる非正規雇用者についても、妊娠 ・出産等を理由とする不利益取扱いやセクシュアルハラスメント等に関する相談が多く なっている」です。ここは前回、「中間取りまとめ」には記載があった非正規雇用者に ついての記述を含めるべきではないかといったご意見があったことを踏まえ、追加記載 したものです。  「記」以下については変更はありません。説明は以上です。 ○横溝分科会長  それでは前回に引き続き議論をしていただきたいと思いますが、前回示された「素案 」については、労使それぞれ持ち帰って検討されることとなっておりましたので、労使 それぞれから、検討結果をお伺いしたいと思います。まず、労側委員からお願いしま す。 ○吉宮委員  それでは、労側委員で検討した結果を意見として述べたいと思います。その前に、今 週の火曜日に新聞で拝見したのですが、「セクハラで病気は労災」と、厚生労働省が全 国に見解通知を出されました。私どもの前半の議論の中に、セクシュアルハラスメント による病気を労働災害として申請しても、なかなか取り上げられない課題があるという ことで、その改善を求めて参りましたが、いち早く対応していただき、ありがとうござ いました。ぜひ、これを実効あるものにしていただきたいということを、まず申し上げ ておきます。  私から総括的に意見を述べさせていただきまして、個別課題については、それぞれの 委員から述べさせていただきたいと思います。  最初の前書きですが、先程課長から前回の素案に加えられたものが紹介されました。 私どもの前回の意見の趣旨は、均等法は非正規労働者にも適用される法律であるという ことが、この分科会でも各側からそれぞれ出されたことですから、そのことをきちんと 明記してほしい。加えて、それをもって中間取りまとめの文言を記載しているというこ とになっているかと思いますが、中間取りまとめの2ページは、こういう文言になってい るのです。「均等法は、正規雇用者、非正規雇用者を問わずに適用対象としているもの であるが、こうした非正規雇用者も含め、継続就業を希望する女性が妊娠・出産等を理 由とした解雇や退職の強要、不利益な配置転換、パートタイムへの契約内容の変更の強 要、雇止め等について、都道府県労働局雇用均等室に相談や個別紛争の解決援助を求め る例が増加している状況にある。また、セクシュアルハラスメント、母性健康管理措置 についても、非正規雇用者からの相談が多くなってきている。」 このように中間取り まとめでは、はっきりと均等法は適用対象としているということを言っているわけで、 その文言がこれに入るともっとわかりやすいと思いました。そのことを入れてもらった ことは良いと思いますが、もう少し正確に入れてもらった方が良いのではないかという のが前書きです。  それから、「記」のところですが、1番目の男女双方に対する差別を禁止する規定と、 均等法第9条について当面女性に対する特例という現行の枠組みを保持することだとい うことは、これで良いのではないかと思います。  ただし、前回も意見を申し上げましたが、たたき台に、仕事と生活の調和は重要課題 だと書いてありました。そのことが全く抜け落ちていますが、法の理念に仕事と生活の 調和を明記するということは必要であると、今でも私どもは強く思っておりますので、 意見として述べておきたいと思います。  それから2番目の、雇用ステージの差別の対象の範囲を拡大することについては、私 どもの意見を踏まえて、記載していただいたという認識をしています。加えて、そのた めの指針に事例を明らかにすることも良いのではないかと思います。  それから3番目の間接差別について、これが最大の課題だと認識していますが、最初 の「外見上は性中立的な基準等であって、他の性の構成員と比較して」という、言わば 定義を法律上明記することは良いと思います。ただ、2行目の、「一方の性の構成員に 相当程度の不利益を与える基準等」というところの書き方なのですが、これは、たたき 台の(注)をここに持ってきたと説明を受けました。しかし、たたき台の(注)には、 もっと正確に書いてあります。「基準等」ということではなくて、「間接差別とは、外 見上は性中立的な規定・基準・慣行等」と、それぞれ触れているわけです。その三つを 入れた方が正確を期すのではないかと思います。その後に、「対象基準」というものが 出てきますが、「基準等」というのは一体何なのか、わかっている人はわかるのです が、わからない人はわからないということがありますので、そこはきちんとたたき台の (注)に沿って書かれたほうが明確になるのではないかということです。  それから、定義を法律上明記した上で、何をもって対象基準とするかということにつ いて、三つに限定をするということ。この限定列挙については私どもは賛成できませ ん。なぜかということは、前回の素案段階で意見を述べさせてもらいましたが、三つと 言っても、例えば最初の「募集・採用における身長・体重・体力要件」というのは、実 際にこれを当てはめた場合に、わが国の現状からしますと、何が具体的に出てくるのか 想定できません。もっと言うと、実際的には二つの問題に限定することになるのかと思 います。いずれにせよ、間接差別というのはこの議論の中でも、例えば第52回雇用均等 分科会での議論を見てみますと、「間接差別の予測可能性を高める方法について」とい うことで、事務局から出された三つの明確な方法について議論をした分科会なのです。 ここで、公益側の委員からは、こういう限定列挙は間接差別にはなじまないという意見 を述べられていますし、仮に限定列挙した場合には問題が残るということも、議事録を 見ると公益委員から出ているわけです。こういう議論経過から見て、なぜ限定列挙にし たのかちょっと腑に落ちない。  中間取りまとめの前の議論で、公益委員からは限定列挙もあるという指摘があったの ですが、中間取りまとめ以降のパブリックコメントもいただいて、それを参考にしなが ら意見交換をし、当分科会の意見では限定列挙というのは、まさに私どもは問題がある という発言に代表されるように、なじまないと。公益の皆さんも言っていたではないか ということから申しますと、この限定列挙というのは、どうも腑に落ちない。  実際に私ども組合など労働者が取り組む場合に、限定列挙したとき、三つに限定され てそれ以外は間接差別には当たらないということになってしまいますし、判例等の動向 を見ながら三つ以外に拡げていくと書いていますが、実際に裁判に訴えた場合でも、前 回課長から、努力義務規定下における裁判例も必ずしも拘束されていないというご説明 もあったのですが、私どもはむしろ逆に、限定することによってかなり裁判にも影響を 与えるのではないかと思っています。  私のところに、住友裁判の原告からの意見・文書がありまして、この文書を見ても、 例えばコース別雇用管理区分という考え方が、実際に裁判をした場合に、あるいは紛争 調整委員会での審議に当たって、大きなマイナスに働いたという意見があるわけです。 従って、このコース別雇用管理区分がもしなかったら等々考えますと、もう少し早く解 決したのではないか。10年間に及ぶ裁判という苦しい闘いの問題点・課題が示されてい ます。最後は、和解ということで、当初この分科会で意見を述べさせていただき、和解 は判例に当たらないと言われたのですが、いずれにしろ、間接差別は時代の流れだとい うことを言われている和解もありますし、そういう意味で、裁判をする場合でも、限定 列挙をしたときのマイナス効果というのは厳然としてありますから、ぜひマイナスに働 くようなことはやめていただきたいということが間接差別の問題としてあります。従っ て、2ページの下段の「雇用管理区分」については、指針の問題ですが、私どもとして は、この「雇用管理区分」の考え方そのものが、まさに差別を改善する運動に役立たな かったと認識していますので、指針の改正のときには、ぜひこの考え方はやめるという ことをきちんと明示すべきではないかと思っています。  それから、4番目の不利益取扱いのところで、「解雇以外の不利益取扱いを禁止する ことが適当である」ということは良いと思います。  それから、「産前産後休業を取得しようとしたこと、労働基準法の産前産後休業以外 の母性保護措置及び均等法の母性健康管理措置を受けたこと」の不利益取扱いについて 禁止することも良いと思います。その判断に当たっての指針をつくることも、もちろん 良いと思いますが、「他の疾病の場合の休業等と比較して不利に扱うこと等」と一つの 不利益の事例を挙げていますが、この文言は、他の疾病と同じに扱って良いという文言 に受け取れます。私どもは他の疾病と母性保護にかかわる休業等とは違うのではないか ということを申し上げてきたわけですが、研究会報告は、「他の疾病の場合の休業等と 比較して不利に扱う」となっています。ここのところも、他の疾病の場合のレベルでO Kですよということにならないような議論をこの指針の中でしていただければという意 見を申し上げたいと思います。  それから、4の2行目の「雇用する労働者に対する解雇以外の不利益取扱い」の「雇用 する労働者」と入っていることは、ここでも議論をしましたが、妊娠・出産を理由とし て募集・採用を控える、あるいは拒絶することについて、不利益取扱いに当たるのでは ないか。これは10月28日の第53回分科会での議論の経過がありますが、この議論からす ると、「雇用する労働者」という書き方は対象を狭めると考えますので、ここについて は再考願えればと思います。  それから、5番目のポジティブ・アクションです。これは「企業の自主的な取組」を 「国が支援することとすることが適当である」ということですが、私どもが申し上げま したのは、たたき台で言いますと、「雇用に関する状況の把握・義務付けやポジティブ ・アクションの行動計画の作成義務付け」というところを、むしろきちんと措置すべき だという考えです。その理由は、男女の実質的な平等を確保するためには直接差別の禁 止・間接差別の禁止・ポジティブ・アクションの強制力を持った措置、この三つの道具 を使って実質的な男女平等を図るというのが諸外国の取組でもありますし、わが国もそ の方向に向かうべきだということからすると、企業の自主的な取組を国が支援するとい うことは非常に問題があると思います。そこで、ここの義務付けについて検討していた だきたいということです。  6番目のセクシュアルハラスメントについては、この方向で良いのではないかと思い ます。  7番目も同様です。  8番目、女性の坑内労働に関する規制緩和についても、私どもの意見を受け止めてい ただいたものと判断しております。  それから、「また」以降の引き続き検討すべきということで、母性保護規定について の「母性保護に係る専門家会合」の報告を受けた取扱いについては、引き続き検討とな っていますが、仮に、私どもの「仕事と生活の調和」という問題と「ポジティブ・アク ションの義務付け」について、どうしてもこの段階で駄目だというご意見があったとし ても、8の「引き続き検討すべき」というところに入らないというのは、やはりおかし いのではないかと思いますので、ぜひ再考をお願いしたいと思います。  総括的には以上です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。それでは次に使側委員からお願いします。川本委員、どう ぞ。 ○川本委員  前回いただいた素案についての検討状況ということでお話申し上げます。今、労側委 員からご意見がありましたけれども、それについては特に申し述べずに、あくまでも素 案についての状況です。全体的に見て、私どもには非常に厳しい内容が多いわけであり ます。我々にとっては受け身の対応を迫られているという感じであり、実は内部の議論 はまだ継続中です。回数は重ねておりますけれども継続中でして、なかなか結論を見出 せない状況が続いております。  その上で、各項目について考えを申し述べさせていただきます。まず、「記」の1の ところです。1番目、双方差別の禁止、それから女性に対する特例、均等法第9条の枠組 みの保持というところですが、この方向で進めていくことに反対はしないということで す。  それから2番目の項目です。配置の中に権限の付与・業務の配分が含まれていること を明らかにするとか、あるいは差別的取扱いの禁止の対象に降格、雇用形態又は職種の 変更、退職勧奨及び雇止めを追加する。あるいは雇用管理区分について誤解を生じずに 適切な比較が行われるよう、規定振りを見直すといった内容ですが、実はこれは内部会 合において、さまざまな異論がないわけではありませんが、この方向で進めていくこと にあえて反対はしません。  それから3番目、間接差別の禁止の項目については、議論が継続中です。内部の取り まとめに非常に苦労しているところでして、いただいた案で、ぎりぎりのところで検討 しておりますが、今のところイエスともノーともお答えができない状況にあるというこ とです。  それから4番目の妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止の部分ですが、この方 向で進めていくことにあえて反対はしません。ただし、最後の行で、「妊娠中及び産後 一年以内に行われた解雇は、事業主が妊娠・出産等を理由とする解雇ではないことを証 明しない限り、無効とすることが適当である」という文章のところですが、ここについ ては議論が継続中です。本日はここの部分についても、何ともまだお答えができない状 況にあるということをご報告申し上げます。  それから5番目、ポジティブ・アクションの項目になります。ここについては、企業 の自主的な取組という枠組みは維持してありますので、この方向で結構です。  それから6番目の、セクシュアルハラスメントの問題です。男性に対するセクシュア ルハラスメントも対象にする、あるいは事業主の配慮義務規定を措置義務規定にすると いった趣旨の部分ですが、この方向で検討を進めていくことにあえて反対はいたしませ ん。  それから7番目の項目です。調停の対象の追加あるいは当事者に対する出頭要請の規 定の整備、あるいはセクシュアルハラスメントの行為者とされる人に対する出頭要請、 それから時効の中断や訴訟手続の中止の規定を入れる、最後に企業名公表制度の対象の 追加といったところですけれども、ここについて一つ質問というか確認したいのです が、この訴訟手続の中止について、前にも一度お話いただいたのですが、もう少し具体 的にご説明いただけるとありがたいのですが。 ○石井雇用均等政策課長  ご質問をいただきましたのでご説明させていただきます。この訴訟手続の中止につい てですが、これは時効の中断とともに、いわゆるADR法の成立により一定の基準等を満 たし、かつ、認証を受けた民間の紛争解決事業者が行う調停等の和解の仲介について、 こうした特別の効果が与えられることになったということを踏まえて、規定整備という ことで今回提案したものです。  そういうことですから、ADR法と同様のことを考えているものでして、具体的には訴 訟をしている両当事者が均等法の調停によって紛争解決を図ろうという旨の合意がある 場合、当事者の共同の申し立てがなされた場合において、裁判をやっている裁判所が訴 訟手続を中止できるというものを考えています。  従って、例えば一方の当事者が訴訟が不利になりそうだから調停に切り替えたいとい うことで、一方的に訴訟を中止できるといったようなものではありません。  まず、調停で解決を図るという訴訟をしている当事者双方の合意があるというのが一 つ。そして二つ目として、共同で申し立てがなされること。それから三つ目として、裁 判所がそれが適当と判断したこと。この三つの要件を満たして初めて訴訟手続は中止さ れるという仕組みを考えているものです。 ○川本委員  どうもありがとうございました。よくわかりました。今の7番目の項目ですけれども、 この方向で検討することにあえて反対はしません。  それから8番目の坑内労働のところですけれども、ここは私どもからも要望したとこ ろでもあり、このままで結構です。  9番目、重量物を取り扱う業務や有害物の業務の関係ですけれども、これを引き続き 検討ということで、この方向で結構だと思っております。  以上、前回の素案に対する私どもの検討状況をご報告させていただきました。 ○横溝分科会長  労使それぞれから検討結果のご報告をいただき、ありがとうございました。その他ご 意見がありましたらお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。  片岡委員、どうぞ。 ○片岡委員  内容に沿って、意見と質問を一度に申し上げます。「記」の2の項目に関しては吉宮 委員からも検討結果の話がありましたので、同じ趣旨で付け加えたい意見があります。 雇用管理区分の、今後法律ではなく指針という取扱いを理解しましたので、今後指針の 議論をする際には、ぜひ事務局といいますか厚生労働省としても、先ほどご紹介があっ た住友電工の和解勧告では裁判長から国への勧告が出されたことや、あるいは女性差別 撤廃委員会も均等法の指針への懸念が示されていることなどを受け止めて、それを指針 議論の中で生かして、指針について積極的な議論を進めていくようにしていただきたい と、まず一点意見として思います。  3の間接差別についてですが、これはそもそもの意見としては先程吉宮さんから示さ れましたので、限定列挙に対しては賛成できないというのは同じです。その上で、ここ で示された内容について質問と、その質問に対する理由となる意見があります。  今回、三つの対象基準が示され、それ以降「今後の判例の動向等を見つつ」という記 載があります。この判例の動向等の「等」にはどういったものが考えられているのかと いう点をまず伺いたいと思っています。そのように伺いたい理由ですが、仮にこういっ た形で規定された場合、判例の動向ということがここでは非常に強調されているように 受け止められます。先程のご紹介ではありませんが、裁判で具体的に闘って一つの結論 を出していくには、相当な時間もかかる。そういうことで考えて、その裁判の動向が今 後、先程のような不安も生じますので、積み重ねが本来あるかどうかも含め、長時間か かる裁判の動向を見るということだけでは私はむしろ問題であると思っています。仮に この内容で取り扱われた場合、恐らく現場でもさまざまな混乱を伴う事例が出てくると 思います。あるいは恐らく行政への様々な問い合わせや相談もあるだろうと想像されま す。  そういったものをきちんと受け止めているということにならないと、先程申し上げた ような判例の動向ということだけが強調されるというのは、それ自体の動向が不安であ ると同時に、長期の時間を要する闘いをまた繰り返すという状況も心配されます。その 点でここに若干不安に思いますので、少し「等」の説明をしていただきたいと思いま す。  4の妊娠・出産に係る不利益取扱い禁止のところですが、これも先程吉宮さんの方か ら具体的に指針で示すことについては賛成ということで申し上げた中で、不利益取扱い のわかりやすさというか、どのようなものを言うのか、「例えば」という使われ方で出 ている三つ目ですが、「他の疾病の場合の休業と比較して不利に扱うこと等」の「等」 ということも、もう一度これはどのようなことをおっしゃっているのか、何を指すのか 教えていただきたい。また、私はこの審議会に関わって、妊娠出産に係る様々な不利益 の実態なりを自分なりに把握してきた職場状況からすれば、本来病気と同じ扱いをすべ きでないと思っています。  子どもを産む機能や母体を保護するということで休むのと、それ以外の理由で休むの が同じように扱われるということには同意できません。自らの責任に帰するものなのか どうか、あるいは厚生労働省の研究会報告でも記載されている中では、わが国において は疾病とは異なり、妊娠・出産に関しては法による保護がなされているというようなこ と、一般の疾病等における労働不能と、保護に差を設けるのも合理性があるというよう なことも取り上げられております。とにかく現場の実情から申し上げますと、場合によ っては疾病よりも低い扱いを受けているようなこともあります。同等ということでな く、むしろ今申し上げたような理由から、本来これを比較して取り扱うことには賛成で きないというのが私自身の意見です。私の方からは以上です。質問というのは「等」の 部分が2点です。 ○横溝分科会長  では、お答え願います。 ○石井雇用均等政策課長  2カ所「等」ということで指している内容についてご質問いただきましたので順次お 答えします。  まず3ページの3のところにかかる「これ以外の基準等に係る判例の動向等」の「等」 についてです。これは判例ということになりますと、誰しも異論がない、いわゆる典型 例として判例ということを掲げておりますが、それ以外のものをあらかじめ排除しない という趣旨でわざわざ「等」という文言を付けているものです。  例えば労使でコンセンサスができたものというのは当然入ってくると思っています。 これは前回もご説明しましたが、この「対象基準等」というのは省令で書いていくこと を想定していますので、省令ということになりますとこれは分科会に諮ることになるわ けです。分科会で合意が得られるものであれば、これはその対象になりうると理解して いるところです。それが1点目です。  それから2点目です。これは3ページの下の方の4の項目にかかるところです。「休業 等と比較して不利に扱うこと等」の「等」ですが、例えばここには、まさに育児・介護 休業法における不利益取扱いについて書かれた指針の内容でいろいろ取り上げられてお ります項目について、それを念頭においているものです。例えば降格をさせることと か、あるいは退職または正社員をパート等の非正規社員とするような労働契約内容の変 更の強要だとか、いろいろなことが書かれていますが、ここですべて書き尽くすという のはなかなか難しいので、そういった諸々のことを含めて盛り込んでいるつもりです。 以上です。 ○横溝分科会長  はい。それでは他にございますか。岡本委員、どうぞ。 ○岡本委員  仕事と生活の調和について再度申し上げたいと思います。実は昨日、経営労働政策委 員会報告という日本経団連が出している『経営者よ 正しく 強かれ』という冊子を読 ませていただきました。その中に男女共同参画の促進とワークライフバランスという項 目が設けられていまして、私はこれを読んで非常に経営者の高い見識のもとにまとめら れたと思いました。女性経営者の方がかなり関わって書き込まれたということも伺って いますので、非常にそのことを心強く感じたわけですが、何ページかにわたってその記 述がされていました。経営者の皆さんには今更言う必要はないかと思いますが、その中 でワークライフバランスについて、男女を問わず従業員の仕事と家庭生活との両立を支 援する仕組みを作っていくことが望まれるという書かれ方がされていて、その両立支援 のためにはインフラというハード面のみならず、企業風土というソフト面の改革も求め られる。子育ては女性だけが担うものではないという考え方の定着は、すべての従業員 にとって働きやすい職場作りをすることを企業のトップは理解すべきであろう。女性の みならず男性高齢者などすべての従業員を対象にワークライフバランスの考え方を企業 戦略の一環として組み入れていくことが、長期的に見て高い創造力を持つ人材を育成 し、競争力の高い企業の基盤を作ることになる。こうした書き方がされていました。  このような考え方に基づけば、具体的にこれをどのように実現していくのかというこ とが求められていると思います。特にまだまだ女性の働き方が男性の働き方中心で議論 されている実情を考えれば、今回の均等法は男女双方の差別を禁止ということになりま すが、やはりこの均等法の中で具体的に理念を掲げながら行動していくと言うのでしょ うか、取り組んでいく、これは特に労使が取り組んでいくということが非常に大事なの ではないかなと感じております。このことが書かれているということから言っても、私 はやはりきちんと労使でこの考え方に沿って取り組めるようにしたいと思いますし、そ れを担保するものとして、是非今回の法律に理念として仕事と生活の両立ということを 記述してほしいと強く思っています。  この中の議論では、再三、法制局としてテクニカルな部分でできないという話があり ましたが、本当にそうなのかなと、やはり相変わらず疑問に思いますし、納得もできま せん。  均等法は特に厚生労働省が経営者なり労働者を指導していく、そのための担保にする 法律という色合いが強いのかもしれませんけども、一方でやはりこの均等法を基に労使 の職場での議論というものが進められていく、改善されていくのだということを考えれ ば、ぜひ血の通った法律改正にしていただきたいと思います。それが1点です。  それから多分、今日が意見を申し上げる最後の場になるのかもしれませんが、私たち 女性は約10年ぶりのこの均等法改正に非常に大きな期待を寄せてきました。それはこれ まで、各NGOも含めた団体から私たち労使にさまざまな意見書を送られてきたことも含 めて期待が大きかったと思いますし、他の分科会に比べて傍聴の方が毎回非常に熱心に 参加されているというところから見ても、今回の均等法改正に大変大きな期待があった と思います。  しかし残念ながら、一番大きな課題であった間接差別の部分については、やはり限定 列挙方式にしていくことのマイナス面というものをどうしても否めませんし、特に均等 法は先ほども前文には書かれましたが、非正規の方たちが寄せる期待というものは非常 に大きかったと思います。パート労働法が改正にならなかったことからも、この均等法 の改正に対しての期待が非常に大きかったと思うのですが、残念ながら今回の改正の中 身を見れば、一番大きく期待をしていた雇用管理区分の問題や、間接差別のところが十 分ではないということについては、大きな落胆は否めないのではないかと思います。是 非再度私たちの抗議を受けとめていただいて、間接差別についても例示を指針で書いて いくという形で次への展開というものに期待を込められるようにしていただきたいと感 じています。  前も申し上げましたが、もちろん厚生労働省の皆さん方もまとめていくことでの大変 なご苦労が10年前もあったかと思いますが、20年前に「醜いアヒルの子」と言われて、 20年間かかって様々な努力をしながらやっとここまできた。より一層良いものにしてい くために、是非「白鳥」にしていただきたいと思いますので、改めてこれまで申し上げ てきた労働側の意見を強く受け止めていただきたいと思います。以上です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。 ○川本委員  先程、前回いただきました素案についての検討状況ということで申し上げたわけです けれども、今労働側からまたこの中身につきまして様々なご意見があったわけでござい ます。  個々について特に反論はいたしませんが、今までもずいぶん議論してきたことだろう と思っております。けれども、今のご意見を踏まえて、もしもこの案を直していくとい うことになれば、私どもはもう一回内部的にもゼロベースで検討し直さなくてはならな くなるというような状況になると思っています。  それからもう一つ申し上げておきたいのは、日本経団連が出しました経営労働政策委 員会報告のご紹介をしていただいたわけでございますが、これは非常に私どももその問 題については意識をして書いています。女性経営者の方たちにももちろん意見を聞いて いますが、別に女性経営者が言ったから書いたわけではないということはあえて申し上 げておきたいと思います。これは男性経営者でもたくさん出ている話です。  それからもう一つ申し上げておきたいのは、従ってこれを何かしらの法律にという話 で書いているわけではなく、是非企業の皆さんにおわかりいただけるようにという意味 で、啓蒙としてさせていただいている部分なのだということでございますので、そこは 誤解のないようにお願いしたいと思っています。以上です。 ○横溝分科会長  他にいかがでしょうか。 ○篠原委員  私の方も意見ということで3点述べさせていただきたいと思います。  今労働側の皆さま方の方からもご意見がいろいろありましたけれども、やはり仕事と 生活の調和というのが「記」以降に入っていないというところが非常に残念だなと思っ ています。日本人の一労働者ということで考えれば、一人ひとりの働き方が男性とか女 性とかは関係なく、個人一人ひとりとして元気に働くための法律と考えておりますの で、是非この仕事と生活の調和という部分を理念の中に入れていただきたかったという ところがあります。また改めていろいろな場においても、このような発言をしていきた いと思っています。  それとこれも意見になるわけですが、ちょうどこの「記」という前の前文のところ は、この今回の法案の中身の全体的な総括ということで書かれているのではないかと思 うのですが、前の中間報告の中ではそのポジティブ・アクションについて触れられてお りました。ただ今回のこの案の中では、この前文の中にそのポジティブ・アクションが 見えないと思っております。  やはりなかなか社会全体にとして大きな広がりをもった動きには至っていないという ことで、中間的なとりまとめの中には前文に入っていましたが、今回の案の中に入って いません。是非もっともっと社会的にこのポジティブ・アクションを認知させるために も、このような部分の取組が必要ではないかということで今回義務化を要求申し上げた のですけれども、今現在はこの義務化という部分がそれぞれの個別の労使の自主的な努 力ということになってしまっているというところになります。やはりこれは社会的な問 題だと思いますので、その部分においては前文に入ってないというのが少し残念だと思 っております。  それと最後に吉宮委員の方からもご意見がありましたが、こちらの方の労働側の意見 ということで、非典型労働者の部分において数行入れていただきました。追加いただい たことに対してはお礼を申し上げたいと思うわけなのですが、更にいえばこの○という 部分の中で、一つの○の項を起こしてでも書くべき問題ではないかと思います。特に厳 しい環境にさらされている非典型労働者の方々に対しての部分においては、三行だけで は少し淋しいという感想も含めて意見を述べさせていただきたいと思います。 ○横溝分科会長  はい、吉宮委員。 ○吉宮委員  先程、使用者側からそれぞれ項目ごとに意見が示されまして、間接差別のところと4 番目の妊娠出産の妊娠中及び産後一年以内の解雇の無効の問題については継続中とおっ しゃいました。  私どもの意見について、今川本委員から私どもの意見を入れて文章修正をしたら、ゼ ロベースで検討しなければならないということを言われたのですが、逆に今度使用者の 継続検討で、3と4のところに文章をこう加えよとか削除せよとか言われたら、私どもも ゼロベースでいかなくてはまずいのです。継続検討というのは、どのように考えればよ いのか。私どももこれを再検討する意味でもその辺はどう理解したら良いのでしょう か。 ○横溝分科会長  いかがですか。 ○川本委員  結論を出したくないと申し上げたのではなくて、結論を出すべく回数を重ねてやって いるということであります。したがって内部的な会合の中でいろいろな意見が出ている と承知いただければいいかと思います。 ○横溝分科会長  そういうことでよろしいですね。他にご意見がないようでしたら。  はい、ございますか。 ○片岡委員  自分の意見で不十分な点があったので付け加えます。  先程、妊娠・出産の不利益取扱いにかかわる「等」の説明を伺うことと、他の疾病と の比較でということについては賛同できないと申し上げました。今後指針の中で、何が 不利益扱いかをご議論をされていくということになると思うのですが、例えばここで 「他の疾病の場合の休業等と比較して不利に扱う」ということをこの時点で入れるとい うことがなく、削除するということができるのかできないのか。私は削除して、その上 で今後指針の議論の中で、それぞれの実態・実情を踏まえて、何を指針としていくかと いうことにしていくとする方がいいと思うのです。ここでこの例が出されるということ は、この三つの例は指針の前提といいますか、入るものと理解しておかなければいけな いのかと思いまして、削除ということを改めて意見に追加ということで申し上げたいと 思いました。 ○横溝分科会長  関連ですか。 ○川本委員  はい、関連です。  当然、議論の場でございますので様々な意見が出てよろしいかと思いますが、私ども も今までの審議過程の中でいろいろなご意見を申し上げ、且つ労働側の方あるいは公益 委員の先生からもご意見がある中で、このようなところを書き込んできたということだ ろうと思っています。  従いまして当然指針につきましてもポイントとなる部分は今回ここに書いていただい ているということで、ここに書いていただいている内容を前提に私たちは内部でずっと 検討を進めてきているということでした。先程、前回で示されました素案に対してどの ような取組状況かというご説明をいたしましたが、あくまでもそれは素案に書いてある 内容を前提として考えたものであるということでございます。念のために申し上げてお きたいと思います。 ○横溝分科会長  様々なご意見をいただきました。もちろん議論の場で議論を交わすことで合意に達す るということが非常に大切なことですから、回を重ねましていろいろご議論いただきま した。それをまとめてこの案という形でお示ししておりますので、それに対して今日い ろいろご意見いただきましたけれども、まだ引き続き検討中というご意見もありました し、意見がまだ割れているというものもありました。  ただし、今、これでまとめの段階に入っておりまして、次期の通常国会に法案として 提出する予定でございます。そのためには、その報告は年内に取りまとめるということ が必要と思いますので、皆さん各委員におかれましてはその方向でご配慮・調整よろし くお願いいたしたいと思います。  篠原委員と渡邊委員に議事録署名をお願いします。  今後の予定につきまして事務局よりご連絡をお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  次回の開催につきましては日時、場所ともに現在調整中でございますので、決まり次 第ご連絡をさせていただいきたいと存じます。 ○横溝分科会長  それでは本日の分科会はこれにて終了いたします。          照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)