05/12/14 第35回労働政策審議会職業安定分科会議事録 第35回 労働政策審議会 職業安定分科会 1 日 時 平成17年12月14日(水)15:30〜16:30 2 場 所 厚生労働省職業安定局第1会議室 3 出席者 委 員(公益代表)           諏訪分科会長、椎名委員、白木委員、清家委員 (労働者代表)           池田委員、市川委員、成瀬委員、長谷川委員代理(末永氏) (使用者代表)           石井委員、石原委員、紀陸委員、成宮委員、山極委員、           尾崎委員代理(深澤氏) 事務局 鈴木職業安定局長、高橋職業安定局次長、大槻審議官、      生田総務課長、内田雇用開発課長 4 議 題 (1)中小企業における技能継承に係る支援策について (2)その他 5 議事内容 ○諏訪分科会長 ただいまから「第35回職業安定分科会」を開催させていただきます。 まず委員の交替がありましたのでご報告をさせていただきます。交替後の名簿はお手元 に参考までに配付してあります。新たに委員になられた方は、労働者代表の須賀委員に 代わりまして、日本労働組合総連合会総合労働局長の長谷川裕子さんが委員になられま したが、今日はご都合によりまして末永さんが代理出席となっています。どうぞよろし くお願いいたします。                 (出欠状況報告) ○諏訪分科会長 議事に入らせていただきます。本日は「中小企業における技能継承に 係る支援策について」ということで、皆さまにご議論をいただければと思っています。 本件は10月26日(金)に開催されました第22回の職業能力開発分科会におきまし て、企業における技能継承への支援について議論をされた際に、中小企業の技能の受け 手人材の確保への支援について、当分科会で検討をしていただけないかと依頼をされた ものです。そこで最初に事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○雇用開発課長 雇用開発課です。お手元の「中小企業における技能継承に係る支援策」 という参考資料です。1頁、「団塊の世代の動向」です。折れ線グラフで黄色の所が2 007年ですが、58歳から大体60歳層で、669万人という状況になっています。 その後、5年後の2012年、これは緑ですが、63歳から大体65歳層で646万人、 この人口層が非常に多い状況です。これは皆さまご案内のとおりです。  2頁、「中小企業における技能継承の状況」です。企業規模が少なくなるほど技能継 承が思うように進まない状況が顕著になっていまして、特にその中でも、そもそも若手 従業員がいない状況が、小さくなれば小さくなるほど顕著になるという状況があります。  3頁、「技術・技能継承と若年技能者の不足状況」です。これは技能・技術を「計画 的に継承を考えている」所と「継承は不十分」の所に分けて記載したものです。当然の ことではありますが、計画的に継承を考えている層については、若年層の不足状況が半 分程度。これに対して継承が不十分な層については、7割以上が不足している状況にな っています。そうした継承に対する主な問題点が下にあります。いずれも理由としては 考えられるわけですが、特に継承が不十分な層については、「継承する人材が採用でき ていない」といったものが高率を占め、そのほかにも、例えば大きな差があるのが「教 育・育成体制がない」という所が計画的に継承を考えている層と、継承が不十分な層で 大きな差が見られる状況にあります。  4頁、「危機意識を持つ要因」です。全体として一番高いのが「意欲のある若手・中 堅層の確保が難しい」。次に「技能等伝承に時間がかかり、円滑に進まない」というこ とで、人材の確保に係る点が危機意識としてかなり持たれている状況がうかがわれます。  5頁、「意欲のある若年・中堅層の確保が難しい」とする企業の割合を従業員規模別 に見たものです。300人以上に比べて299人以下で、そうした若手・中堅層の確保 が難しいとする企業の割合が相対的に高い状況になっています。  6頁、「有効求人倍率の推移」です。45歳未満と45歳以上の有効求人倍率の観点 から、若手の採りやすさの点を見てみます。構造的に45歳以上よりも45歳未満のほ うが有効求人倍率が高い状況にあります。  7頁、8頁が中小企業と大企業の格差を表す指標として掲げたものです。1つが「現 金給与総額」についてです。これも規模が小さくなるほど、大企業に比べて大きな格差 が生じている状況にあります。8頁が「法定外福利費」の関係です。これも企業の規模 別に見ると、規模が小さくなるほど、法定外福利費に使っている金額が少ない状況でし て、大企業と中小企業では賃金等の労働条件、あるいは法定外福利費といった福利厚生 面での格差が見られる状況にあります。  9頁、「資金繰り状況判断D.I.」です。黒が全体規模合計で、青が中小の平均です。 景気によりましてもちろん波があるのは確かですが、全体として構造的に中小企業のほ うが資金繰りが苦しい、という状況がこれでうかがわれます。  以上のような実態も踏まえつつ、10頁、「中小企業が人材の採用・育成について望 むサービスや支援策」を取った統計があります。これは中途採用者と新規学卒者に分か れています。中途採用者の場合について多いのが、転職希望者についての情報提供のサ ービスです。その次に公共職業安定所など公的職業紹介制度の拡充、といった情報提供 やマッチングの事業に対するニーズが高いというのが一つあります。下から4番目の「採 用に関する費用についての資金助成」も、かなり高い割合になっているという状況です。  新規学卒者の採用・育成について望むサービスや支援策です。一つは学校とのネット ワーク作り、あるいはトライアル雇用的なものといいますか、インターンシップ等を行 うためのシステム、中小企業全般のイメージアップを図るような活動といったところに 対するニーズが高い。その他に労働条件の向上への支援、そして採用に関する費用につ いての資金助成。年金・保険、退職金等制度の充実に対する支援のところが高い比率に ある状況です。  11頁、これは「団塊世代退職に係わる中小企業の具体的なニーズ」を見たものです。 一番高いのは能力開発施策になるかと思いますが、技術、ノウハウの伝承手段をきちん と確立していくということです。二つ目として、人材の獲得手段の充実が挙げられてい ます。これは前の頁で言いますと、例えば転職希望者についての情報提供サービスであ るとか、あるいは安定所等のマッチング機能の充実の統計の結果と、ある程度リンクし ているものではないかという気がしております。以上が中小企業における技能継承に係 る実態及びニーズの資料、ということで説明いたしました。  今日はこうした支援策の方向についてご議論をいただくということで、まずは中小企 業における技能継承をめぐる実態がどういうものになっているのか。そうした中小企業 における人材確保の支援として、どのようなものが必要になってくるのだろうか、具体 的な方向はどうかといったことについて、是非ご議論をいただければと思っています。 よろしくお願いいたします。 ○諏訪分科会長 ただいま内田課長から実態がどうであるかということ、それから支援 が必要かどうかという点、更に支援をするとしたらどんな方向で行うべきかという3点 を中心にご議論をいただけないだろうかということでした。どうぞ皆さまから自由にご 質問、ご意見をいただければと思います。 ○池田委員 いま内田課長から中小企業の実態について報告がありました。私は全国建 設労働組合総連合、70万を組織している組織の組織部長です。そして、小泉内閣が言 われているように、「もう踊り場から出て景気は回復した」というふうに言われていま す。それは確かに事実です。それはどういうことかというと、どんどん二極化が進んで いる。実は1カ月前に日経新聞が建設業のゼネコンの調査をしました。大手ゼネコンは 5社なのですが、大成建設、大林組、鹿島建設、清水建設、竹中工務店ですが、これで 1兆円の経常利益を上げています。更に17社があります。それを見ますと1兆2,0 00億の経常利益を上げています。まさに小泉さんが言っている景気はその部門におい ては、私は正確だと思います。  しかし、一方の極では中小業者にとっては、非常に落ち込んでいるわけです。実はう ちの組合は賃金労働者ではなくて、10人以下の工務店も入っています。毎年工務店の モニター調査をしています。1年間は3月から4月までの調査です。今回は平成16年 の4月から平成17年の3月までの実績です。この調査はどういう層がやられているか というと、工務店で45建連組合、924人のモニターがいます。そのモニターにお願 いをしてアンケート調査をしました。回答数が549名、61.3%です。その概要に ついて全てやりますと相当時間がかかりますから、1つは資金繰りの問題、2つ目には 利益、所得がどのようになっているのか。その2点だけを報告しておきたいと思ってい ます。  まず資金繰りです。549人のうち有効回答が529人、「資金繰りが容易」と答え た方が143人、27%です。「大変厳しい、貸し渋りや貸し剥がしで大変厳しい」と いうのが177人、33.5%です。「まあ不変」というのが209人、39.5%、 「その他」が20となっています。ですから「大変厳しい」という方が34%いますか ら、先ほどの調査のように、大変資金繰りは困っているわけです。  次に収益の問題です。ではどのように儲かっているのか。先ほど私が言った大手のゼ ネコンと比べて、10人以内の工務店はどうなっているかというと、まず「昨年より収 益が増加した」という方は59人、10.8%しかいません。「所得が減少してしまっ た」という方が304人、55.8%です。「まあ横這いだ」という方が180人、3 3.4%、その他「無回答」が4名ですが、圧倒的に減少している。これが建設業の1 0人以内の工務店の実態です。  なぜ収益が減少したかの理由を複数回答を取っています。何といっても1番目が完成 工事高が減少したという方が202人、69.7%、70%です。2番目が驚くなかれ、 「請負単価が低下した」。即ち指値発注なのです。もうお客さまの言う値段でやらなく てはいけない。あるいは元請の言い値でやらなくてはならない。そういうのが197名、 67.9%、68%です。3番目がやはり町場でも「競争の激化」です。これが132 人、45.5%ですから、非常に厳しいわけです。  もう少し言わせていただきたいのですが、では、平成17年の4月から18年の3月 までの見通しを取ってみました。景気の見通しは「良くなる」という方が48名、9% しかおりません。「悪くなる」と答えた方が254人、47.7%ですから、48%で す。次に「変化がない」だろうというのが232人、43.2%です。  次に資金繰りです。資金繰りが「良くなる」という方が69人しかいません、13. 3%です。「厳しくなる」という方が44%、「変わらない」という方が42%ですか ら、これは大変なことです。更に収益の見通しですが、「増加する」と答えた方が29 人、5.5%。「減少」という形が287人、54.3%。「横這い」が213人、4 0%ですから、40.3%です。ですから、内田課長が資料で示したように、本当に二 極化がものすごく進んでる。全建総連70万の平均年齢が50.05歳です。まさに50 歳を過ぎている。  そこでいちばん大きな問題は、仕事確保もありますが、後継者の問題なのです。後継 者の問題はいま一言では言えませんが、やはり相当厳しい、特に町場の建設職人になる 方がいません。なぜかといったら3Kどころではない、7Kから8Kあるのです。きつ い、汚い、危険というのは3Kですが、それ以上あるのです。従って後継者の問題を本 当にしないと、建設業は大変なことになる。平成9年にして685万いた建設就労者が 平成17年の2月には584万になっているので、100万人減っている。私は更に減 っていくだろうと思っています。そうすると、後継者問題はこれから少子化で、団塊の 世代の1947年から1949年の方が、2007年問題で相当減ってしまう、大変な 問題を抱えている。そういう時に技能継承に係る支援策は、私は非常にタイミングがい いのではないかと見ているわけです。  私は建設業ですが、内田課長にお聞きしたいのは、他の産業も私が示した調査、この ようなことがあり得るのか。知り得るかぎり是非お知らせ願えればありがたいと思いま す。 ○雇用開発課長 この資料の中でも示していますし、中央会(全国中小企業団体中央会) にも実態を聞かせていただきました。それによりますと、中央会の調査の中でも後継者 の不足が非常に大きな問題であること。それに対して、採用に関するコストも含めた資 金面での問題が大きなネックであること、という調査結果があるということを伺いまし た。そうしたことを踏まえますと、産業が建設業にかかわらず、そうしたニーズという か実態はやはりあるのだろうと思っています。なお、そうした個々の支援策を講じてい く中で、いま池田委員から3K以上の職種だという時に、単純に雇入れのための何かイ ンセンティブを与えるだけでは難しくて、やはり職場の魅力を高めるようなことも併せ てやっていかないと、多分こういった支援はうまくいかないのだろうと考えます。 ○成宮委員 いまの中小企業のものづくりの製造業の世界、若干偏った話ですが、経済 産業省あるいは中小企業庁の世界です。これからの日本の産業、ものづくりの屋台骨を 支えていくような、少し古い言葉で言うと外貨の稼ぎ頭になるような産業というのは、 高度な情報家電とかロボットだとか、ある意味では高度技術産業です。そこをどうやっ て力を付けてもらうかを経済産業省等が一生懸命にやらなければいけない、という議論 をここ2、3年やってこられているわけです。実は情報家電であり、あるいはそれに使 ういろいろなデバイスだ、電池だ、ロボットの部品だといっても、実際そういうものづ くりを支えているのは中小企業が圧倒的に多い。  共通基盤技術的な産業、例えば鋳造だとか鍛造だとか、表面処理、メッキ、金属加工 といったような、非常に中小企業性の高い業種なのです。そうい所が日本にはまだまだ、 かなりのレベルの研究開発力も潜在的に持っている中小企業が集積していることの強み が、そう簡単にすぐに中国に全部取って代わられるようなことにはならないというため の強みではないか。ところが、そこのところがガタガタと崩れていこうとしている。こ れをなんとか食い止めないと、上部構造というか表面的な華々しい高度技術産業の所だ けをどうしようこうしようと一生懸命に言っていても始まらない、ということに改めて 気づいたというか、認識を深めて、いまそこの議論を一生懸命中小企業庁もやっている わけです。  中小企業にとってみると、ある特化した分野でものすごい能力は持っていても、これ だけ世の中の技術の動向がどんどん動いていくと、限られた力をどちらの方向に向けて やっていけばいいのか。間違った方向に行ったら、良い物は出来たけれどもニーズが全 然ないというところをやってもしようがない。企業の存亡にも係わるということで、こ ういう基盤技術、要素技術を必要としているユーザー側の産業、更にもっと最終的なユ ーザー、それからこういうシーズを持っている中小企業の人たちが一定の方向性をもっ て、今後どういうところが本当に欲しいのだというところ、これは実は企業秘密の問題、 どういう方向に企業が開発していくかという問題でもあるので、そう素直には出てこな いのです。そこを何とか、その問題意識を持ってやっていこうではないかという議論を しています。  そういうことをやって、ある程度の方向性の中で、具体的に、ではこういうものに使 う、いまうちの持っているこの技術はこういう方向に進めていけば可能性がある、とい うことでやることになると、これは業界全体でということではなくて、特定のユーザー と特定の技術を持った中小企業がいくつかでグループを組んで、共同で特定の物の開発 をやっていく仕組かなという議論をしています。  ところがその議論をやっている中で、この中小の要素技術、基盤技術を持った企業の 人材の問題が大きな問題になってきます。ここにあるような話は企業のサイズで書いて ありますが、同じサイズでもかなり研究力、開発力を持った所と、そうではない所もあ りますが、これはそういう所もそうではない所も大雑把で言えば同じような状況にあり ます。そういう所をなんとか強化していく方策。産業政策の面での強化策を一方で検討 をしていただいていますが、そこだけ動かそうとしても、企業の人材の問題を一緒に解 決をしていかないと、絵に描いた餅に終わってしまうという危機感があります。従って この問題意識は正しい問題意識だと思いますし、これをどう対処するのかについては、 是非何らかの方向を出して、それなりの支援をするというご議論を是非いただきたいと 思います。 ○諏訪分科会長 ほかの委員の皆さまからもお願いいたします。 ○市川委員 この分科会で労使が同じようなことを言うのは珍しいかもしれません。い ま成宮委員の言われたような、私の所属します労働組合は、中小企業の機械、金属関係 の労働組合です。2,000ぐらいの企業別の単組があるのですが、80%は300人 以下の小さい所で、金型だとか機械加工、鋳物、鍛造といった中小の職場。東大阪だと か、大田区とかという所を多く抱えています。  世界に通用する物、最終的に出来る物を支えているのはその小さな所の技術です。つ い先日も金型の問題で、中国との比較をNHKで特集をした番組をやっていましたが、 それでもまだ日本には中国に勝てるものがまだある。でもこのままでいったら非常に危 ない。こういう危機意識は大変です。  私ども年に2回加盟組合に対して景況の調査をD.I.で調査していますが、ここにき て経営の状態とか景気の動向が良くなってはいるのですが、やはり技能工の不足感、あ るいは、技能工の中でも熟練工の不足感が非常に高くなっています。これは企業規模別 に見ても、中小であろうと大企業、1,000人以上であろうと100人以下であろう と同じように、この不足感が非常に高い。そこを支援していくことは、この問題は重要 な問題であると認識しています。  先ほども出ましたが、私ども経産省のものづくり国家戦略何とかという仰々しい懇談 会があるのですが、そちらでもその問題意識はあります。経産省は経産省でまた何かそ ういう支援策をされていると聞きますので、そこがどういうことをやるのか。厚生労働 省的にはどういうことをやるのか。いまは国としてパッケージで支える、経産省でも似 たようなことをやっているというのは困ります。厚生労働省ならではの、ここをやるの だという視点からの支援策を考えていただく、あるいはこの場で議論をしていくことが 重要かなという感想をもちました。  ちょっと余計なことかもしれませんが、いま非常に良くなってきています。この良く なってきている時に支援策をしましょうというのは、天気が晴れてから傘を差し出され ているという気がするのです。実は私どもの組合は産別が1999年に統一して新しい 組合になったのですが、その時に47万人いた組合員がこの5、6年間で10万人減っ ているのです。中小で技術はあってもコストとか、あるいは関連の倒産で煽られて資金 ショートして倒産してしまう。これで既にずいぶん高度熟練者が違う業界で職を探さざ るを得ない。  ここにきてやっといい方向だなと思ったら支援策だ。小泉さんは自由競争というのか、 市場原理でいくのだとおっしゃいますが、政府の役割は困ったときに傘を差し出してほ しい。これは別に反対しているのではないのですが、惜しむらくはちょっと時期を、私 のところで既にずいぶん倒産していった中小のことを考えると、なぜあの時にという気 がするということを蛇足ながら付け加えました。 ○諏訪分科会長 ほかにご意見ご質問がございますでしょうか。 ○石井委員 ニーズは確かにそういう面で技術継承、熟練工の継承という意味では、大 変大事なことですし、それをサポートすることに対しては、それなりの価値があると思 うのです。実態のほうから考えると、例えば10人以下の中小企業において、持ってい る技術、これはそこにいる人間、そこにいる従業員にノウハウが集約されているわけで すから、何らかの形で外部から人を採用していくといっても、育っていくには相当の時 間がかかる。それに対して何らかの助成をするというイメージがわからないというか、 どういう手立てがあるのか。具体的に資金が要るということは、例えば採用していくの に職安を通さないで、人材銀行から人材を採るためにお金がかかるので、それを補助し ていくということであると、中小企業にとって果たして、うまくそういうものを活用で きるような体制をどうやって整えていったらいいのかなという感じがするのですが、い かがですか。具体的なことなのです。 ○諏訪分科会長 内田課長どうぞ。 ○雇用開発課長 先ほど説明した資料の11頁に、団塊の世代の退職に係わる中小企業 の具体的なニーズとして、人材を獲得したいということが確かに一番多くて、その獲得 手段を充実すべきだという話が非常に多いのです。その後ろのほうに、作業効率化とか、 簡素化という話も実はありまして、これは要するに、団塊の世代が引退していく中で、 そうした技能継承の方向を簡素化とか効率化の方法でやっていこうという話も、おそら くニーズとしてはある程度あるのだろうと思います。我々としてもそうしたニーズを無 視してまでこうした経済的な支援策をやるのは、なかなか難しいのだろうとまず思って います。  それから、どういう採用コストに支援をしていくのかという点ですが、採用コストを 考えた時に、まず1つ大きいのは賃金があります。後は例えば、若い人がいなくて十分 に技能継承が行われていなかった所については、そもそもそうした採用をして訓練をす るというシステム自体が不足している場合については、そうしたシステムを作るコスト もあるのではないかと思います。そうしたコストについて、我々は何らかの形で支援が できれば一番良いのではないかと考えます。  一方で先ほど池田委員からありましたように、3K職種で、そもそも人があまり行き たくないと思っている所に、仮にそういうことをやっても、これは単に一過的な経済的 な支援だけに終わってしまうという部分も、もしかしたらあるのかもしれない。そうし た意味で言うと、一過性の単なるコストの経済的な支援というよりは、若年者が何らか の形でその職に就きやすくするということも含めた支援を少し考えた方が良いのではな いか。ご意見をお聞きしていて、そのように考えているところです。 ○石井委員 賃金の補助といま言われましたが、どういうことですか。 ○雇用開発課長 雇入れ支援として考えた時には、いま賃金助成という方式を助成金の 中で一部とっているものがあります。そういうものを一応賃金助成と私どもは考えてい ます。 ○石井委員 ただ、10人以下の中小企業になりますと、自分の息子もその後を継がな いというケースが多いのです。ということは、そこの企業にいま3Kとか7Kとかと言 われていますが、息子でさえもそこに勤めたいという気にならない場合も多々あると思 うのです。そういう所に果たして賃金の補助金を出すからといって、うまく人材が集ま るかどうか。むしろそういう環境づくりのほうがもっともっと大事で、そこへ人が集ま るような環境。  もう1つ、仕事が面白いものであれば、必ずそこには人が入って来ると思うのです。 だから自然淘汰されている過程の中で補助金を出していくと、なんとなく支援だけをや っているという形ですが、やはり中小企業を伸ばすための技術の承継とは何であるか、 という方向性が必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○雇用開発課長 おっしゃるとおりだと思います。一過性の効果があまり期待できない ような単なる賃金助成というのは、いまの雇用保険三事業をめぐる状況から見ても、慎 重に考えるべきところは慎重に考えなければいけない。それだけでは無理だということ だろうと思いますので、やはり環境整備という観点からの支援をもう少し組み合わせて いくなり、考えていくことは重要だと思います。  どういう技能を継承すべきなのだろうかという点に関しても、なかなか難しい課題で すが、私どももいま中小企業庁とこうした対策について話し合いをしています。その中 で中企庁で、どういった技能が今後我が国の発展にとって必要なのかということも検討 している状況なので、そうした所とタイアップする形で、どういったものを技能継承し ていくか、そのためにどういうところを支援していくのかということは考えていかなけ ればいけないと思っています。 ○成宮委員 たぶん、おっしゃるとおりで、団塊世代、2007年問題にどう対応して いくかということを考えるのであれば、ここに具体的なニーズがいくつか挙がっている わけですが、そういったニーズを考えれば、どういう手段でそこを補っていくというか サポートしていくかというのは、1つで万能というのは絶対にないので、どういうもの をどういう組合せの仕方で、かつ省庁間のあれがあるのであれば、それがうまく連携を しながら、政府にとってもコストが極小化され、なおかつ効果は高くなるような組合せ をよく検討をしていただくことが必要になってくると思います。 ○雇用開発課長 人材確保と言った時に、単に雇入れが実現するだけで済むわけではな くて、技能継承ですから当然定着もしなくてはいけないということはあると思います。 そういうことで、おっしゃるとおり、対策を何か1個ポンと打てば、それだけで効果が 上がるというのは、なかなか難しい部分が確かにあるかもしれないということで、その 辺について合せ技的な形で、どういう施策を打てるかというのは、今日のご議論を踏ま えながら私どもも考えていきたいと思います。 ○長谷川委員代理(末永氏) 2007年ということですが、再来年のことなので、す ぐにきている問題なので、ここでどうだこうだ言うよりは、中小企業庁がやるとか、厚 生労働省がやるとか分けるとかいうのではなくて、即効性があるものを、やれる所がで きるだけ早くやることが必要なのではないかと思います。  あとは技能継承で助成金だということだと思うのですが、能開から振られたというと ころもありまして、能開でやる部分と安定で扱う部分を整理して考えるべきではないか と思います。例えば2007年に技能五輪がありますが、その中でヒアリングで聞いた のですが、技能五輪の選手を育てるためには、マンツーマンで指導をしていかないとい けなくて、選手を育てるほうは能開の部分でやり、指導者のほうは例えば安定の部分で やるとかというふうに分けて、助成金とか支援の仕方を考えるべきではないのかと思い ます。  あとは安定ということで定着をすることが重要だと思います。これもヒアリングで最 近聞いたのですが、1年以上定着していると結構定着率が高い、という話を聞いたこと があります。1年以上継続して働いた所に対して助成金を出すということも、効果が上 がっていいのではないかと思います。 ○諏訪分科会長 公益委員の方々から何かありませんか。 ○白木委員 一般的過ぎるのですが、いま若年技能者に対する需要があるけれども供給 が追い付かない状況になっているという認識は一致しているのかと思います。その場合 の対策は、要するに供給側が絶対的に足りないのか、あるいはあるけれどもミスマッチ が起こっているのかという認識を分ける必要があると思います。おそらくミスマッチの ほうではないかと思います。  最近の若い人で仕事をしていない人も数百万いるとかいう数字が出ていますが、そう いうことからしますと、どういう形でその非労働力化しているところから、労働力化さ せるかとか。安定のところでいけば、そういうところが重要になってくるのではないか と思います。あるいは産業間、規模間でどういう形で中小企業を魅力的なものにして動 かしていくかと。非労働力のところ、ボーダーの辺に相当若い人がいらっしゃるような 感じがするのですが、その辺を中心にターゲットを絞って、中小企業は魅力的ですよと いう形の、何かマッチングできると1つの政策なのかなという感じがします。 ○雇用開発課長 おっしゃるとおりだと思います。実はこの技能継承の問題、受け手の 問題は若年者対策にも裏腹でなり得る話で、できればそういうことでこれから位置付け ていければ良いのではないか。何分にも議論が始まって、下りてきたのが先々月なもの ですから、まだ十分な詰めができない状況なのです。いまニートが大体64万人ぐらい、 フリーターが213万人、失業者も150万人ぐらいいますので、400万人ぐらい。 今はもう少し増えているかもしれないという状況にあるので、そうした方達がちゃんと した職業に就くと、ちゃんとした技能継承をしていくのは非常に重要な課題と言います か、そちらの方面からの対策ということで考えても良いのかもしれないと思います。そ ういった意味で、能開局と今後議論をしながら連携を取って、諸政策の体系を作ってい かなければいけないと思っています。 ○清家委員 白木委員が言われたことに私も賛成です。今日お話を伺っていますと、労 使双方がこの必要性を共有されていて、そういう政策を進めることは必要なのだろうと 思いますから、それは是非進めていただきたいと思います。これは一般財源でやるにし ろ、雇用保険等のお金を使うにしろ、当たり前のことですが、その政策による外部効果 と言いますか、つまり社会全体にとってそれが必要であるからこの政策をやらなければ いけない、という理屈付けをしっかりしておいていただきたい。  それは先ほど来成宮委員、市川委員が言われたような、日本のこれからの食扶持にな るような産業の基盤をきちんと維持していくということとか、あるいは白木委員が言わ れたように、本来そういう能力開発をすれば、しっかりと技能を磨き、しっかりとした 仕事ができるはずの人たちが十分に活用されていない状況、これは社会全体にとっての コストロスですから、それを改善することに資するとか。もちろん労使が共通に是非お 願いしますということは良いことなのですが、その上でやはり理屈として、社会全体と してコストをかけてこういう政策をやる必要がある、というロジックだけはしっかり作 っておいていただきたいと思います。 ○山極委員 10頁を拝見いたしまして、中小企業が人材の採用・育成について望むサ ービスの下のほうの段の、「新規学卒者の採用・育成について望むサービスや支援策」 の中で、いちばん高いのが企業のイメージアップをはかるような活動、ここはとても大 きいことだと思います。実は私たちの会社だけではなくて、3年ぐらい前でしたかキム タクが出た番組で、全日空の女性の整備士が出ました。あの後、全日空のあの整備士を 見て、かなりの人がああいう職業に就きたいのだということで、いまの若い人たちはち ょっとしたイメージでかなり違ってくるのです。私たちの会社でもそうです。例えばこ んな人が活躍しているとか、この仕事は面白いとかいう人を見せますと、一気にアクセ スが増えるのです。ですから、会社がどういうことをやっているのかとか、あなたが活 躍できる土壌があるのだとか、それからこういう人がいるのだ、みたいなことを身近に 等身大で伝えると、相当反応があるのです。私たちが見た時に、本当にそういう努力を されているのかなと、もっとアクセスをするような、決して難しいことではなくて、い ま技能者がいらっしゃる、そういう方々をもっともっと見せてあげるとか、それをずっ と継続的になさることも重要だと思うのです。自分たちの体験でそう思いました。 ○諏訪分科会長 ほかにご意見いかがでしょうか。 ○紀陸委員 この人材といった場合に、基本的に若い人、いまニート、フリーターの話 が出ましたが、それだけではなくて2007年問題というのは高齢者の方々のリタイア です。高齢者の方々も大企業から、あるいは中堅企業から出た方が中小企業に入りやす いように、いまそういうのはたくさんあるのでしょうけれども、いろいろなミスマッチ が各年代層にあるはずです。それを新たな支援策を打つ中で回収していくというのは、 実は容易なことではないと思うのです。若者の人間像を高めるという委員会があります ね、これから走るのでしょうが、そういう中の施策としてこれを狙うのでしたら、ミス マッチからではなく新たな手立てとして何が必要なのか、そこをもう少し詰めないと。 単にお金を付けたからといって、成功する確率はあまりないと思います。  いま山極委員が言われたのは非常に大事で、私どもも中小企業委員会をやっていて、 そこで人材確保の手立てとして何があるか。やはり地元で我が社はこういうことをやっ ています、とかいうことを発信し続けている企業。地元の中学校、高校、大学とかに社 長なり人事担当の人が粘り強くやっている企業でないと、人は来ないのです。しかも定 着されない。その企業が地元で認知される所はパイプがだんだんできてくるのです。そ して会社というイメージが周りの人たちに認知されると、人も採りやすくなるし、かつ 定着度が高いのです。そうではない中小企業が圧倒的に多いわけです。  そういう中で某かの賃金助成を付けたところで、単発というか、ちょっとしたあれは いいのでしょうが、継続的に効果が出るかというとそうではなくて、その企業自身の体 質改革がないと外からお金を使っても、そういうものは結局無駄遣いに終わってしまう のだと思うのです。だからミスマッチ解消をいかにやるかということと、本当に意欲の ある企業に意味のある助成は何かということを考えないと。  結局、これ基本的には30億からのお金が出るのでしょう。我々としては内容を見ない と簡単には、一般論としてはいいのですが、その施策の内容の些細を伺わないと、簡単 にイエス、ノーとは言えない。これはスケジュール的には来年4月とかに内容はなるの ですか。 ○雇用開発課長 はい、一応、今日ご議論をいただきまして、それで必要性について、 大体合意いただければ、今日の議論を踏まえて具体的な施策の内容を考えて、実施時期 は18年度中のものもあれば、当然のことながらもっとじっくり議論をして、予算の大 きなものが伴うなら19年度ということになろうかと思いますが、そうしたことで施策 の方向を打ち出した上で、必要な施策を順次追っていく。  法改正ができるかどうかということも我々検討していますので、法改正を仮に念頭に 置くとすると、1回1月ぐらいに何らかの方向を出していただいて、その後ずっと議論 をしても良いと思いますが、そうしたことができればと思っています。 ○諏訪分科会長 ほかにいかがでしょうか。 ○市川委員 この種の支援策というと、例えば三事業から何らかに関して、金銭的な補 助というか支援をするという対策しかないのですか、という素朴な疑問があります。こ れをやった企業に対して、三事業から例えば1人何万出します。これだけが人材確保と か、技能の支援策なのかなというのは常に思うところです。これは職業安定ですから雇 用の安定とかを図るために、何か補助金をつくって出せばいいや、という支援策ではな いのではないかといつも思うのですよ。三事業でこういうことをやります、ああいうこ とをやりますと。そういう仕組というのは、政策そのものというのか、支援策というと それだけなのですか。 ○雇用開発課長 10頁の資料の「採用・育成について望むサービスと支援策」という 中で、新規学卒者と中途採用者両方に共通して高いものとして、確かに「採用に関する 費用についての資金助成」があります。こうした点から、どういう形かは分かりません が、何らかの効果的な資金助成を考えても良いのではないかということは、一つあると 思います。それ以外に、例えば中途採用者で申しますと、転職希望者への情報提供サー ビスであるとか、あるいは公共職業安定所などの公的職業紹介制度の拡充のニーズも非 常に強いので、こうした対策も当然ニーズが高いわけですから、検討をしなければいけ ないのだろうということで、全体としていくつかメニューを検討していくのが良いのだ ろうと思います。 ○成宮委員 技能伝承に係る支援策はどうすべきだという問題提起の仕方がされてい て、たまたまいまこの分科会なので、頭の中にあるのがその部分ということかもしれま せん。これは能力開発の所などでも、最近非常に頻繁に会合を開かれているのでご議論 がされているのだろうと思うのです。  例えば11頁で、「技術、ノウハウの伝承手段」をどうするのだとか、伝承すべき中身 をどうするのだなんて言われてしまうと、そんなところが必要なのかとなりますが。具 体的にどう伝承のシステムを作っていけばいいのか、ということに悩みがあるという所 が多いのだとすれば、職業能力開発のコンテクスの中でそういうものに対して、どうい う改善策を提示していくのかということ。たぶん、全部、この分科会で議論をしてしま おうとすると、何かそれだけで本当に意味があるのですかという疑問が必ず出てきます ので、そういうところをある程度踏まえた形でのご議論の中で、こういう位置付けです ということが必要かなという気がします。 ○諏訪分科会長 ほかに何かございますか。 ○長谷川委員代理(末永委員) その他で全然違う話で恐縮なのですが、言ってこいと 言われましたので。雇用保険の料率についてです。雇用保険特会では現在1兆9,00 0億円程度の積立金残高がありまして、本年度末には2兆円を超えることが予想される。 先日、改正された財制審でも雇用保険制度の国庫負担のあり方の見直しをすべきではな いか、という議論も行われるようになってきています。積立金残高が膨れ上がれば、こ ういった圧力が出てくる。また、積立金残高が膨れ上がれば変な話も出てきます。過去 にもこういった経緯があったことはご存じと思います。少なくともこれ以上の積立金を 増やさないための工夫が必要ではないかと思われます。 ○諏訪分科会長 それではほかに関係してご議論等ありますか。特にないようでしたら 今日の議論はこの辺りでとしたいと思います。皆さまのお話を伺っていて、要するに目 先の措置というか、欲しいと言われてそれを与えれば、いつでもいいというわけではな い。やはり本人にとって長い目で見ていちばんいいという支援こそが必要だということ が、今日のご意見の中にありました。と同時に、緊急性というのもありますから、どう しても緊急に、2007年問題のようなことで技能継承がパタッと切れてしまうことは 大変な損失になるので、それへの対応もあるということだろうと思います。その点は是 非事務局にもいろいろとお知恵を絞っていただき、次回に出していただきたいと思いま す。  出てこなかったものの中で気になるのは、若者にとって就職先を選ぶ時、何を考える かというと、自分の人生の40年、50年をその業界とかその職種に預けるものですか ら、そこへ入ったら自分のキャリアはどうなるのだろうかということを非常に心配する わけです。キャリアが袋小路に入ってしまって、展望がなくなる。従って中小企業が出 すべきイメージのいちばん重要なものは、この分野に来てこうなれば、あなたは一生を 通じて充実した職業人生が送れますよという、このイメージといいますか、シグナルの 発信なのではないかと思われます。その意味ではイメージアップというのは、単に一般 的なイメージアップではなくて、そうした側面ではないのかなという感じがいたします。  他方でいま職人ブームが大変起きています。あれはやはり生涯を通じて伝統産業の職 人になれば、それなりに一生手に職を付けてやっていける、ということに対して夢をか ける若者がいるということなのだろうと思われます。従って中小企業もそういう意味で は職人技をたくさん持ってやっているわけですから、こういう伝統産業だけではなくて、 我々の業界もこうで、仮にある一定の方面の製品とか何かが将来先細りになっても、そ こで培った技能だとか経験は必ず関連の所で役に立つ、といったキャリアの展望をうま く出せるかどうかが大きいのかなという感じがしました。  我々、職安分科会としてはこういう部分を前へ出しながら、政策的な支援をいろいろ とご検討をいただきたいと思います。次回に当分科会として一定の取りまとめをいたし たいと思っておりますので、その節にはよろしくお願いいたします。                 (署名委員指名)  本日の会議は以上で終了させていただきます。お忙しいところを大変ありがとうござ いました。 (照会窓口)                         厚生労働省職業安定局総務課総務係 TEL:03-5253-1111(内線 5711) - 1 -