05/12/06 平成17年12月6日 医療機関のコスト調査分科会議事録 05/12/06 診療報酬調査専門組織 第10回医療機関のコスト調査分科会 (1)日 時  平成17年12月6日(火)15:00〜16:40 (2)場 所  厚生労働省 6階 共用第8会議室 (3)出席者  田中滋分科会長 石井孝宜委員 井部俊子委員 今中雄一委員          柿田章委員 近藤正晃ジェームス委員 椎名正樹委員 須田英明委員         高木安雄委員 手島邦和委員 西岡清委員 松田晋哉委員        <事務局>         堀江保険医療企画調査室長 他 (4)議 題  平成17年度調査研究結果の報告について         ・医療のIT化に係るコスト調査 中間報告     ・医療安全に関するコスト調査 中間報告 (5)議事内容 ○田中分科会長  ただいまより、第10回診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会を開催さ せていただきます。  本日は、お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。  まず、委員の出欠状況について御報告いたします。  本日は、猪口委員、尾形委員、原委員が御欠席でございます。  また、松田委員は間もなく到着されると連絡を受けております。  なお、川越委員につきましては、10月31日付をもちまして退任されていますことを御 報告いたします。  それでは、審議に入ります。  本日は、「平成17年度調査研究の中間報告について」が議題であります。  平成17年度調査研究については、8月3日及び10月5日の中医協・診療報酬基本問題 小委員会に私から報告申し上げ、御了承を得た4つの調査を行っているところでありま すが、本日はそのうち2つの調査、すなわち、「医療のIT化に係るコスト調査」、 「医療安全に関するコスト調査」について、それぞれ報告を受けたいと思います。  最初にIT化の方のつもりでしたが、松田委員が遅れておられますので、今中委員に 先にお願いいたします。「医療安全に関するコスト調査の中間報告」について、説明を よろしくお願いいたします。 ○今中委員  それでは説明させていただきます。資料は診調組コ−3とコ−4ですが、まずコ−3 をご覧ください。  1調査の概要です。  調査の目的は、医療安全の向上のために、1)安全に対する管理体制の充実、2)医 薬品の安全確保、3)医療機器の安全確保、4)医療安全に関する情報技術の活用、 5)医療従事者の質向上といった取り組みについて、どのくらいのコストがかかってい るかということを調査するものです。  医療安全のためというと医療機関の活動のほとんどすべてが入ってしまいますが、項 目については2ページ以降に詳しく載っております。1999年ごろから医療の質と安全の 確保への取り組みが進んでおり、かつ医療制度上もいろいろなルールができております ので、現在、医療安全に関係してやることが増えている状況にあります。そのころに比 べて増えている活動を一つの判断基準として調査を実行しております。  調査の対象ですが、病院、一般診療所、歯科診療所、保険薬局です。  調査対象の選定に当たっては、病院のうち、先行の厚生労働省科学研究「医療におけ る安全・質確保のための必要資源の研究」が対象としていない300床未満の病院を10施 設、一般診療所等も各10施設程度を対象として書面調査を行い、その中から各5施設を 選定してヒアリング調査を行うということで進めております。  300床以上の病院については、厚生労働科学研究で昨年度から準備を進めてきたもの がありますので、もう一つの資料の診調組コ−4の方に同様のフォーマットで結果を記 載しております。対象が違いますので多少違う点はありますが、方法はほとんど同じで す。  調査の実施体制ですが、シンクタンクへの委託調査として、当該シンクタンク内に検 討委員会を設けまして、1ページにありますようなメンバーで調査の検討を進めていま す。  2ページの2.調査内容です。  (1)病院・一般診療所・歯科診療所の書面調査項目は、項目0から項目20までありま す。これを全部読み上げると時間をとりますので、ご覧いただければと存じますが、各 調査項目ごとに調査票をつくりまして、それについて情報収集しました。  診調組コ−5に各医療機関の調査票を示しています。病院、一般診療所、歯科診療所、 保険薬局はそれぞれ状況が違いますので、それに合わせて調査項目を変えています。  (2)保険薬局の書面調査項目は4ページ、5ページに示していますが、こちらは項目 0から項目14までになります。  (3)ヒアリング調査項目ですが、大規模病院と共通する医療安全に係る取り組み、特 有の取り組み、新しい取り組み、費用負担が大きい取り組み、医療安全に係る取り組み の年次変化(増減など)等を聞いています。  6ページ、3.調査の中間報告  中間報告においては、ここの表にあります件数の書面・ヒアリング調査を実施しまし た。上の段が現在の書面調査件数で、各機関について10件ずつ行いますが、そのうちヒ アリングは5件ずつ行う予定です。  (1)コストの算出方法ですが、調査結果は、主に人件費とその他諸経費とに分類して 示しています。人件費は、国家公務員の給与を基本に、賞与、退職給付金、法定福利費 を含めた時間給を算定することによって推計しました。  (2)調査結果は7ページ以降にあります。現在進行中の状況を報告させていただきま すが、いろいろな課題があります。〔注意〕のところを読ませていただきます。  現時点では、医療の質・安全の原価の測定方法の開発段階にあり、項目それぞれの原 価の把握に改善の余地が残され、データ収集も結果の検証も途中段階にあり、項目ごと の合計値は妥当な総額にはならない。つまり、一部分しか測れてないものもありますし、 部分に直さなくてはいけないところを総額で出しているような項目もあります。  以上のようなことから、当中間報告の値は、今後の妥当な原価計算に向けての検討に 資するための参考にとどめ、制度・政策の根拠とする段階にはないことを、しっかりと 留意する必要があります。  7ページから10ページまでに調査結果があります。  7ページの病院H−01は許可病床が50〜100床、療養病床割合は42%、どのくらいの 患者数で、どういう職員がいるかということを列挙しています。  コストについては人件費とその他を分けて出しています。人員の投入量、それに相当 する人件費、その他という項目で出しています。  8ページの注意書きがありますが、人員の投入量は、常勤換算して出しています。  9ページの病院H−02についても同様です。  10ページは一般診療所(有床)、11ページは一般診療所(無床)のデータです。これ についてはヒアリングの途中にありまして、十分に内容が埋まっていないデータがあり ます。  12ページは歯科診療所です。  15ページは保険薬局ですが、2つの施設をヒアリングしています。保険薬局において も、ここ数年、医療安全に関する取り組みの強化は大きなものがありまして、それに相 当する部分を数字に直しています。  16ページから19ページはヒアリング結果ですが、各施設における新しい取り組み、費 用負担が大きい取り組みをリストアップしています。診療所等では医療従事者全員でミ ーティングを行っているとか、病院では新しい職種を増員したとか採用したとか、IT の導入などがあります。  次に、診調組コ−4をごらんください。先ほど申しました厚生科学研究の「大規模病 院(300床以上)の医療の安全・質に要するコストの調査」です。  こちらはスタートが早いこともあって、1施設当たりヒアリングを何回もやっており ますので、それなりにデータは埋まっています。  しかし、これも先ほどと同様に途中の段階でありまして、項目を合算しても、それが 安全のためのコストということにはならないと考えています。  コ−3とコ−4の両者を通じて、今回お出ししているのは、検討会とか、インシデン トレポートを集めるなど、形として見えやすい部分を数字にしています。  進行中のところは、一つは、医療の安全を確保するための確認作業にどれだけの手間 が今まで以上にかかっているかというところでして、ここに載っているような額と同じ くらいの規模で、それがかかるのではないかと推測しています。  もう一つは、IT関係が医療の安全確保にかなり役立っているところもありますが、 それをどうやってIT機器の導入及び維持の費用から妥当な形で抽出するかというとこ ろが課題でして、そのあたりの検討を進めています。  形のあるわかりやすい部分プラス医療の確認とか、説明と同意に関してもかなり関係 してくると考えているのですが、医療行為の中での安全確保、質確保の部分を加えて、 IT機器の安全への貢献度の部分をこれらに加えなくてはいけないのではないかと考え ています。以上です。 ○田中分科会長  ありがとうございました。  コ−3の6ページにありますように、測定方法は開発段階で、データ収集も結果の検 証も途中段階であるということですので、最終結果ではないということを我々も踏まえ た上で議論いたしましょう。調査枠組みや調査項目等の調査の方法について、中途段階 でいくつか出ている調査結果について、どちらでも結構です。御質問、御意見をお願い いたします。 ○柿田委員  コ−4の方の病院101では人員投入量が1.4人、人件費が年間1,000万となっています が、これは専従者ということでよろしいんですか。 ○今中委員  病院によっては専従者を置いている場合もありますが、安全管理にかかわる人の人数 ですので、50%かかわっている人も算入しています。常勤換算をした人数ですから、こ こにある「人」はフルタイムエクイバレントという意味です。 ○西岡委員  私も数字で気になったところがあるのですが、コ−4で病床数が500床のところと700 床のところを比べますと、500床の方が人件費がたくさんかかって、700床はその半分で す。どのくらいの精度でこれを理解すればいいのかというのを教えていただきたいんで すが。 ○今中委員  コ−5の調査票の2ページに1.安全管理に係る組織に要する人員配置状況について という表があります。ここで医療安全管理部門のメンバーに誰がいるかというのをリス トアップしていただきまして、医師であるのか看護師であるのか、経験年数がどのくら いか、病院で働いている時間の何%を安全管理部門の仕事にあてているかということを 聞いております。この表では、ドクター1人、ナース1人であれば1+1は2人と書い ていますが、計算する時には職種によって異なる標準給与を使って計算しています。 ○西岡委員  700床というと大学病院をイメージしますと、ゼネラルリスクマネジャーが必ず専任 でおりますし、それに伴って医師が1人ないし2人は併任でおりますので、700床で0.7 人という数字が出てきたというのはどういうことなのかなと感じたわけです。そういう 規模の病院の場合はゼネラルリスクマネジャーを必ず専任で設置することという決まり があったように思いますので、この数字の信頼性が乏しくなるような気がします。聞き 取り調査をやられると、もっとしっかりしたものになるかとは思うのですが。 ○今中委員  これは聞き取りをやっております。100%専従している人間かどうかというところも 詳しく突っ込みまして、何%やっているかを聞いております。この病院は地域で立派な 機能を果たしている大きな病院ですが、今回の調査の定義に当てはまるのはこれだけの 人間しかいなかったということです。  ちなみに、病院103の方は400床しかありませんが、安全管理に係る人員配置は2.0人 になっています。  大学病院の人員投入の量は格別なところがあるかと思いますので、ぜひ大学病院も調 査したいと思っておりますが、今のところ大学病院で確約がとれているところはないこ とと、こちらからも一生懸命アプローチしてないことと両方で、現在のところ大学病院 は調査はしておりません。 ○田中分科会長  ITの方も安全の方も初めての取り組みで、まだ開発段階ですので、先生方からのア ドバイスをいただくと今中先生も助かるし、私も報告する時に、なるほどこういうこと なのかというのがわかります。それぞれ御専門の立場から、あるいは単なる興味からで も結構ですが、御質問、御意見をお願いいします。 ○井部委員  インシデントレポート作成・分析等の取り組みというのは大変興味深いんですけど、 これはどこかに計算式があるのでしたら説明をお願いしたいと思います。 ○今中委員  調査票の14ページに10.インシデントレポート作成・分析等の取組状況についてとい う項目がありますが、件数、所要時間、改善のためにどういう活動をしているか、イン シデントレポートに関係してソフトを購入しているところもありますので、設備・器材 などの情報をとっております。  簡単に終わるものもあるかと思うんですが、かなり力を入れて当事者が記入なさり、 所属長が十分読んでチェックを入れて、当事者を指導して追加記入をしてということで、 当事者と所属長の間でやりとりが発生していることが多くて、それが結構な時間になっ ています。それを単純に紙でファイルしているだけではなくて、データベースとして構 築していますので、そのための時間もとっております。  集めるだけじゃなくて、集めた後はどうなるかということもヒアリングをしまして、 どのくらい努力されているかというのを出していこうとしております。 ○井部委員  インシデントレポート作成・分析にかかる人件費は500床の病院ですと年間1,100万円、 700床ですと600万円、400床の病院は1,500万円ですから、ばらつきがあるということで すね。 ○今中委員  今のところばらつきがあります。今回はまだ途中なんですが、数病院がそろってきた 時点で病院同士を比べままして、データを収集した時のスコープの違いとか、データの 定義の違いとか、そのあたりを検証してデータをリファインしたいと思っております。 病院によって活動量が倍ぐらい違う可能性もあります。400床の病院と800床の病院では 病床数が倍違って、職員数も倍ぐらい違って、かかるお金も倍ぐらい違って当然ですし、 スケールメリットもあるかもしれませんので、大病院の間でもこの値はかなり違ってく るように感じております。 ○田中分科会長  先ほど今中先生も言われたように、医療そのものが安全と不可分であって、どこから が本質業務に上乗せされた安全コストか、医療本体に必然的に伴う安全コストかの区別 はとても難しいですね。病院の場合、医療機器のメンテナンスの費用とか医薬品の管理 というのは病院の本質業務のような気もしますよね。医薬品の管理をしない病院はあり えないし、難しくなれば薬剤師が増えます。メンテナンスも医療機器が増えれば高くな りますよね。ある角度からすれば安全のためだけど、ある意味からすると病院の本質業 務でもありますよね。こういうところは病院は正しく反応してくれるんでしょうか。こ れは安全のコストではなく、本質業務だから別にしてしまうという回答をする病院があ ると狂ってくると思うので質問します。 ○今中委員  この調査の基本的スタンスとして、安全関係でどれだけ作業量を増加させているかと いうことで考えておりまして、病床数にかかわらず同じことを聞いています。  調査票の18ページに14.医療機器・医薬品等の管理の取組状況ということで、まず医 療機器について載せております。以前は臨床工学技師が少なく、院内の各部署で医療機 器に何か起こった時に対応するという状況でした。しかしここ数年は課題が認識されて、 臨床工学技師を増員して、機器のメンテナンスを強化し、機器の管理についても一元化 しようということで、いろいろな努力が今までの医療に上乗せされていますので、その 上乗せ部分を聞くようにしています。  18ページの表には十分出ていませんが、99年当時の状況と比べて人員がどのくらい増 えたか、メンテナンスの活動量がどれだけ増えたかということを切り出せるような形で データを集めております。  医薬品についても、注射薬のミキシング、クーリーンベンチでの薬のミキシング作業 が増加していますので、数年前の状況と比べて追加している部分を聞こうという基本ス タンスでやっています。 ○田中分科会長  全部の病院が同じ回答をしてくれればいいんですが、反応が同じであるかどうか。  コ−3の9ページにあるH−02の病院では医療機器のメンテナンスフィーが700万円 と計上されてますね。医療機器をメンテナンスするというのは安全のためというよりも、 医療機器が有効に活動するためにはメンテナンスするのは当然なはずですよね。700万 円全額が安全のためのメンテナンスではなくて、医療機器が有効に稼働するためのフィ ーも含んでいるわけですよね。調査対象が共通の書き方をしてくれればいいんですが、 ある病院ではこれは医療の本質的な部分だから書かない、ある病院では全部書いた場合、 差が出るかどうかが気になるところです。同じであれば、安全の定義を調査する側で変 えてしまえばいいだけの話なので問題ないんですが、そういう意味の質問です。 ○今中委員  同じであるように努力はしております。田中先生の御質問には2つの要素がありまし て、1つは病院が同じ答え方をしているかということと、もう1つは医療機器管理、医 薬品管理のスコープをどうするか。インタビュアーは同じ意識で調査をしておりますし、 調査票を改定して、調査票の標準化を図りながら進めています。したがって、初めの方 の調査と終わりの方の調査では定義の厳密さがやや違ってくることがありますので、数 病院から答えが出てきたところで、また病院に返したり、データの不ぞろいがありそう なところはデータを取り直すということを進めていきたいと思っております。  スコープの問題につきましては、医療機器管理にしても医薬品管理にしても、この数 年間でやることが増えておりますので、増えた部分を同定して、それを原価に直そうと いう努力をしています。 ○事務局(堀江保険医療企画調査室長)  A病院とB病院とC病院を比較することに重点を置こうとすると、概念の定まったも のを選び出して、これとこれとこれだけ調べましょうという感じで、統一のとれた仕組 みでやっていくというのが、比較をする場合、あるいはどれくらいかかってるのかとい うのを調べる場合はよろしいと思います。ここでは手法の開発の部分がありまして、奥 行きが深いもんですから、それぞれの部分は相当緻密にしていただいても、特定しきれ ているかどうかの確信が持てないというところが、今の委員の間の話としてお聞きしま した。  コ−3の20ページに4.調査結果のとりまとめに向けた対応のところに、「中間報告 の調査・分析を進めるとともに、各医療機関における安全対策の導入効果と課題等につ いても把握に努め、考察を行う」とありますが、フレームというか幅の設定みたいなも のも課題が逐次出てくるような気がしているというのが私の感想でございます。 ○柿田委員  調査票の18ページに14.医療機器・医薬品管理等とありまして、問1の臨床工学技師 の活動状況のところに透析機器の管理が何%、人口心肺の管理が何%と書くわけですが、 これはリストアップされた安全関連委員でMEの人がこういう仕事をしたということを 報告させるわけですか、それとも全臨床管理MEなんですか。 ○今中委員  安全管理部門のMEではなくて、全MEです。透析機器管理、人工心肺管理は従来か らやっていますが、患者が増えたり手術が増えたら投入量が増分することもあります。 それは安全のための増分にはみなさず、通常のMEの業務とみなしています。 ○柿田委員  そこの定義をきちっと書いていただいた方がいいでしょうね。こういう部分だよとい う具体的な例をお出しいただくと、病院側としては書きやすいと思います。 ○田中分科会長  今の説明はわかりやすいですね。患者さんが増えたから増えたけど、それは安全のた めではないという統計はちゃんと取ってあるということですね。 ○今中委員  この調査票につきましては、書面だけでもできるような調査にしていきたいと思って おりますので、柿田先生の御指摘のようなガイダンス的なものを少しずつ強化していき たいと思っています。 ○西岡委員  ヒアリングをやられるとしたら、具体的な質問項目を出された方が結果を解析しやす いのではないかと思います。医療安全のためにどのくらいかかったかというぐらいだと、 問われる方も答えにくいと思いますので、そんなことも考慮していただけたらと思いま す。 ○今中委員  そのへんは考慮しておりまして、ヒアリングを重ねる中で、だんだんと質問も具体化 してきているのが現状です。安全のためというのは何%という漠然とした聞き方をして も答えはなかなか返ってきませんので、ガイダンス的なもので明示していきたいと思い ます。 ○椎名委員  1990年代と比べて増分をみるという側面があるというお話ですけど、基準になる1990 年代の資料はあるわけですか。 ○今中委員  1999年当時と2004年当時と両方のデータを取ろうということで進めておりますが、99 年当時にはやられてなかったことは現在の数値をそのまま挙げる、人数を増員した場合 は99年当時のものと比較するということで考えております。早い病院ではインシデント レポートを98年、99年からやっていますので、それは算入するという形にしています。 もう少し前からやっている病院もありますが、それは算入しないということにはしてな いです。 ○田中分科会長  ひとわたり安全についての質問、アドバイスが出ましたので、次の報告に移りたいと 思います。  もう一つの調査であります「医療のIT化に係るコスト調査の中間結果」について、 松田委員より説明をお願いいたします。 ○松田委員  それでは、「医療のIT化に係るコスト調査」の中間報告をさせていただきます。診 調組コ−2が中間報告の案ですが、この資料に沿って説明させていただきます。  まず1.調査の概要です。  (1)調査の目的ですが、医療のIT化は、1)標準化・透明化された医療情報を国民 に提供し、医療機関としての説明責任を果たすこと、2)医療の安全性の向上、3)医 療情報の共有による地域の医療資源利用の適正化、4)院内システムの効率化(ペーパ ーレス化の実現、在庫の適正化など)、こうした課題にこたえる手段として、現在、I T化が内外から要求されています。  しかし、そもそもITシステムをどう考えるかという定義が不明瞭であるという問題 もありますし、医療の各種ITシステムの導入・維持には相当のコストを要するにもか かわらず、コスト規模に見合う効率化が実際に達成されているかについての検証が今ま で少ないという状況です。  そこで、本調査は、医療のIT化に伴うコスト(導入に伴う追加的コスト、削減可能 なコスト)の実態を把握し、診療報酬体系における評価の在り方について検討するため の資料を作成するとともに、今後の医療のIT化の推進方策を検討するための資料を得 ることを目的としています。  先行研究が余りない研究ですので、医療のIT化を先進的に行っている施設を対象に 今年度は事例調査を中心にやらせていただき、医療のIT化はどの範囲を指すのか、コ ストをどの範囲でみるべきなのか、導入効果をどのような指標でみるべきなのかという ことを明らかにするプレリミナリーな研究という位置づけで今年度調査を開始しており ます。  (2)調査対象は、病院、一般診療所、歯科診療所、保険薬局など、すべての保険医療 機関を調査対象としています。  先進的な取り組みをしている病院を10施設、一般診療所、歯科診療所、保険薬局も各 5施設程度を選定し、ヒアリング調査を実施しています。  3ページの2.調査経過報告のところを先に説明させていただきます。  この調査を行うに当って、この調査の委託先であるシンクタンク内に委員会をつくっ ています。私が主査となりまして、今中・伏見・石川の3先生に委員になっていただき、 シンクタンクの研究員も交えて、検討委員会を2回開催しまして、調査設計の検討なら びに調査内容・調査対象の選定について検討し、11月から実際の調査に入っております。  実際の調査につきましては調査票を事前に調査対象の施設に送りまして、それを埋め て返送していただきます。そのデータをもとにして、シンクタンクの研究員、私どもの 委員のだれかが引率するという形でヒアリングを11月から始めております。  本日の中間報告では、病院については4事例、共同運用している隣接する2病院を1 事例、共同運用している併設診療所2事例についての調査結果が、この後に資料として つけてあります。  続きまして、2ページの(3)調査の内容です。  ここに掲げてあります基本情報、収支情報、資産情報、ITシステム・機器の概況情 報、院内システム導入・運用に関する検討体制、ITシステム・機器の個別情報、診療 報酬請求のための入力項目とシステム化の状況、DPC対応の状況、この9項目につい てヒアリング調査を行っています。  27ページの別紙に医療のIT化に係る調査のヒアリングシート案というのがあります が、この調査票を埋めていただく作業をしています。  第1の基本調査というのは施設調査と同じような項目でして、病床の状況、入院患者 の状況、外来患者の状況、承認等の状況など基本的な状況を記載していただきます。  第2の収支情報というのは年額でとる形になっています。さかのぼれるところからと いうことになりますが、平成13年度から医業収入、医業費用に分けてデータをとらせて いただく。第3の資産情報に関しては、ここに書いてあるようなことを聞かせていただ いております。今回はIT化のコストを見るということですので、医療機器と情報シス テムに関しては、これだけを切り出して情報をとらせていただいております。  第4のITシステム・機器の概況情報では、電子カルテシステム、オーダリング系の システムに分けて、ここにあるような項目について聞いています。IT化というのは各 病院の業務を補助するという観点からシステム化が進んできている経緯がありますので、 医事業務、食事業務等がありまして、個別に動いているのかどうかという情報をとらせ ていただいております。  第5の院内のシステム導入・運用に関する検討体制では、システムを専門に管理して いる部署の有無を聞いて、ある場合は常勤換算で医師が何人ぐらい、看護師が何人ぐら いという形で部署所属員数を書いていただきます。将来的には今中先生がやられている ような形で、こういうものをコスト計算することが可能ではないかと思います。そのほ かシステム運用等に係る院内の検討委員会の有無、この2つに分けています。  31ページの第6からはITシステム・機器の個別情報を聞く形になっています。  (1)〜(n)と書いてありますが、システム種類のところにあります電子カルテ、オーダ リング系、臨床検査系など、それぞれについて1枚ずつ書いていただきます。項目とし ては、システムの製品名、契約形態については購入、リース、レンタルなどに分かれま す。契約内容についても、保守を含めた契約になっているのか、そうじゃないのか。そ れによってコストが違ってきますので、そういうことも聞いています。  そのほか導入目的、導入前の状況。導入費用については初期投資、調達方法、維持費 用などについて聞かせていただきます。  導入に伴う院内体制の変更。導入効果としてコストはどうなったか。そのほか何かい いことがあったかということを聞かせていただいております。この部分は具体的な金額 よりは、定性的にこういう効果があったということを記載していただきます。  システム導入の評価については、購入価格は適正だったか、機能・仕様はどうか、サ ポート体制はどうかということを聞いています。  第7は診療報酬請求のための入力項目とシステム化の状況です。これまで整備したシ ステムによって診療報酬請求のための事務作業がどのように向上したかということを聞 いています。  第8はDPC対応の状況です。今回の対象施設はDPC対応施設がかなり多く入って おりますので、DPC対応の状況についてもIT化に関する情報をとらせていただいて おります。  このヒアリング調査票を最初に送りまして、これを埋めていただいて、その結果を踏 まえて訪問調査をやらせていただきました。  ヒアリングの概要ですが、全体をお話しする前に、一つだけ事例を紹介させていただ きます。  6ページの4.ヒアリング事例の概要を見ていただきたいと思います。  どういう形でヒアリングをやったのかということですが、実際に病院に行きまして、 情報関連部門の担当者、事務の方、それを使っている医師、看護師、OT・PTの方た ちと個別にインタビューをさせていただくという形でヒアリングをしています。  ヒアリングに当たっては、ヒアリング結果に基づいて、まず(1)システム・機器の構成 について聞いています。この病院の場合は電子カルテシステムを中心として、薬剤シス テム、検査システム、病院管理システム、医事システム、内視鏡・超音波システムを独 自に開発してきて、そのインターフェースをつくり込んでいるというマネジメント型と いう形でやっています。  (2)電子カルテシステム導入の目的について、ヒアリング結果から次のようなことを聞 いています。  1.医師・看護師等コメディイカルが情報を共有化することによって業務の効率を向上 したい。どういうことかというと、リハビリテーションをやる場合、OT・PTの方が カルテを自分のところへ持っていく。その間、病棟にはカルテがなくなってしまって、 医師・看護師が何かを記入したり参照することができない。電子カルテを導入すること によってOT・PTが自分のリハビリ室で患者さんの基本的な情報が見られるようにな った。それが人件費の点でも業務効率の点でも効果があったといわれております。  2.リスクマネジメントの向上として、転記による情報伝達の誤りがなくなった。薬に 関する配合禁忌・投与量の誤りの防止が可能になった。医師の字が読めるようになって 間違いが少なくなったということです。  3. DPCへの対応がちゃんとできるようになった。  4. 病院と併設診療所の間の情報の共有化ができるようになった。  そのほか検査予約、画像診断の予約が効率的にできるようになった。そういうことを ヒアリングで聞いています。  (3)システム導入・運用に係る各種コストとしては、1)ベンダーへの支払いについて、 合計料、年間保守料を聞くと同時に、1床当たりの費用、単年度医業収入に対する比率 について聞いています。  2)院内パワーのところでは、どういう人員体制でやっているか。多くの施設がシス テムを専門に管理する部署を設定していますが、何名でやっているのか、どのように調 達しているのかということを聞きます。  ユーザーの意見を聞きながらシステムを常に改善しなければなりませんので、各部署 の委員が集まってシステム運用等に係る院内検討委員会・ワーキンググループが設置さ れています。だれが参加して、年に何回やっているのかということを聞きます。  この病院の場合は12名で構成される検討委員会を月1回、年12回開催している。それ 以外に医事システム月例会を年12回開催しているということで、情報化に関する取り組 みはかなりのものであるということがわかります。  システム導入に伴って院内でメンテナンスする仕組みが必要になりますので、スタッ フの研修会等もやっているようです。  入力作業を効率化するために医療秘書を配置して、入力を補助するという形でやって います。もともと病院の各部署でセクレタリーが機能するという歴史があったのでそう いう形でやっているようですが、それによって医師の診療効率の向上がみられるという ことで、これも特徴的なところかもしれません。  いい面だけではなくて、どのような問題点、課題があるかということも聞いています。 レセプト電算処理システムをうまく回すために標準マスターが必要である。医療行為に 関しても薬剤に関してもマスター化がかなり進んでいますが、材料のマスターの整備が 不十分であるために、その部分にコストがかかっているという問題点が出ています。  (4)システム導入の効果にはどういうものがあったのかを聞いています。  1)削減可能コストとして、紙カルテの保管スペースの削減が可能になったというこ とです。ただし、患者への説明などにシステム内のデータをプリントアウトする機会も 増えるため、実際にはペーパーレス化は進んでいないということです。  2)その他の効果としては、情報の共有化、安全性の向上、業務の効率化について、 ここに書いてあるような回答をいただいております。  ほかの病院についても、このような形でヒアリングをさせていただいております。  4ページに戻りまして、(4)ヒアリング結果の概要です。繰り返しになるかと思いま すが、ここまでの中間調査の概要について説明させていただきます。  (1)コスト範囲ですが、医療のIT化に係るコストを考える時には「ベンダーに支払う 導入保守費用」と「院内人件費」に大別できると思います。  導入保守費用としては、本体価格、システム保守料、ネットワーク価格、ネットワー ク保守料などで、かなり大きな額になります。  院内の人件費としては、システム専門管理部署・他部署における兼務職員の人件費、 システム導入に伴う職員の教育に係る人件費などに分けて考えることができるだろうと いうことがわかってきました。  (2)導入効果ですが、コスト削減としては、ペーパーレス、フィルムレスということが あるようです。ただし、ペーパーレスに関しては先ほど申しましたように、実際には紙 がなくなることはありませんので、この部分はまだまだ検討の余地があるかと思います。 電算システムが入ったことによってデータ入力作業、レセプトの集計作業、仕分け作業 に要する時間の短縮による人件費の削減効果があるのではないかという回答が得られて います。  その他の効果としては、情報の共有化・明確化に伴う安全性の向上、業務の軽減、人 員の適正配置といったものが挙げられていました。文字が電子化されたことにより誤読 文字・文章が減少した結果、安全性・正確性の向上が図られ、薬品の誤処方がなくなっ たということがあるようです。  一方、思い込みによる間違いが出てくるようです。いろんな人の電子カルテが同時に 開ける機能があるために、AさんのものをBさんと思い込んで入力してしまうという間 違いが起こるという事例もヒアリングでありました。そういうところは考える必要があ るのではないかと思いました。  業務の軽減としては、臨床検査システムの導入に伴って採血用スピッツの自動作成が 可能となり、看護師の業務軽減が図れたということがあります。  その一方で、オーダリングと連動させてやっている場合、クリニカルパスを走らせる 時点で薬の定期処方が走ってしまう。途中でバリアンスが発生すると、それを全部破棄 して、そのあとすべて臨時処方でやらなくてはいけないということで薬剤部の業務が多 くなるということもあります。システムの内容とあわせて検証が必要だろうと考えてい ます。  人員の適正配置については、電子カルテシステムの導入により、病歴室のスタッフが 情報を整理する業務から開放されて、地域医療連携センターでの新規業務(電話予約サ ービスなど)に配置転換することができたということもあります。  また、システム導入により院内事務文書の形式が統一化された結果、各科間の人員の 配置転換が容易になったということもあります。  以上が調査の中間報告ですが、今後、残された期間で他の施設に同様の調査を行い、 3月に向けてまとめていきたいと考えております。以上です。 ○田中分科会長  ありがとうございました。ただいまの報告に対して、先ほどと同様、調査の枠組み、 調査結果について御意見、御質問、アドバイスをお願いいたします。 ○近藤委員  今回の調査は、コスト規模に見合う効率化が達成されたのかということを検証したい というのが一番の目的で、これはやりにくいところだとは思うんですが、今後のインタ ビューにだけでも反映できないかなと思った視点があるので、質問を兼ねて申し上げた いと思います。  1点目は、費用対効果の相対的な評価です。コストは明確に出てきていて、効果は定 性的に測っているんですが、これだけ投資をして、再びこういう投資を繰り返しますか とか、ほかの医療機関にも同様の投資を勧めますかとか、この効果に対して、市場で入 手しうる最小のコストで導入できたと思われますかとか、このコストに対して最大の効 果が得られたと思いますかとか、そういう相対の評価があると、それぞれの医療機関の 感触がわかるかなと思いました。  2点目は費用の方です。費用対効果をみる時に、この効果に対して市場で入手しうる 最小のコストかということの検証なんですが、この場合は病床規模が100〜600ぐらいで 投資規模が4億〜19億と幅があって、ITのコストはばらつきが大きいと思います。各 医療機関の中でどこまで集中購買をしているのかとか、標準カスタマイズの度合いをど れだけとって最適化しているのか、その際にどれだけ業務プロセス全体を見直して、そ もそもIT化で固める業務を効率化しているのかとか、パイロット的な導入の場合はベ ンダーも安く入れるという前例もあるので、そういうことをどれだけやっているのか。  そういったコスト管理意識というか、購買スキルとかITアーキテクチャーをつくる 能力が該当医療機関でどれだけ高くて、どこまで徹底しているのかというところが何ら かの形で評価できるといいなと思いました。  3点目は効果のところです。これは定性的に大きなオープンクエスチョンで聞いてお られると思うんですが、2つの軸で厳密に聞けると評価がしやすいなと思いました。1 つは、だれの視点の高価なのかということですが、医療機関の経営者の視点もあるでし ょうし、職員の方々の視点もあるでしょうし、患者にとっての価値もありうると思いま す  もう1つの軸として評価項目で経済的なものと医療的なものがあって、経済的なもの の中でもコスト、スピード、質があると思います。医療機関のコストも見えますし、職 員の業務も見えやすいと思うんですが、その他のところはアンケートや定性的に出にく い。医療機関全体のシステムが固まると全体の業務のスピードが上がったりするとか、 患者さんが興味があるアウトカムが出るようになって、診療報酬はついてないけど、今 後、重要な価値だというものもあるかもしれない。効果の方を立体的にとらえることが できるといいなと思いました。 ○田中分科会長  こういう研究一般に対する希望だと思いますが、この研究に全部取り入れるのは無理 だと思います。 ○松田委員  まだ8施設ほどヒアリングがありますので、近藤委員から御指摘いただいた点は、そ の時に聞かせていただきたいと思います。一部、聞いてあるものもあります。導入コス トについて、それが価格に見合うものであったかどうかということは聞いておりますの で、その視点でまとめたいと思います。  IT化のコストのばらつきというのは御指摘のとおりです。そこで問題になるのは、 どこからどこまではIT化するのかという各医療機関の方針と、カスタマイズするかし ないかということがありますので、その点については情報をいただいております。安く あげているところはカスタマイズしないで、パッケージにこちらが合わせるという形で 運用しているところもあります。  今回は、どちらかというとトップランナーの病院は避けています。ベンダーと組んで 自分たちでシステムを開発してきて、安い価格であったり、パイロット的なところで別 のお金がかかったりしています。そうではなくて、従来からあるようなパッケージをそ のまま導入するとか、部分的にカスタマイズしているところで、ほかの医療機関がこれ からIT化を考える上で参考になるような事例を中心にIT化のコストを見せていただ いています。  ITストラクチャーについても、院内にメンテナンスできる人間がいるかどうかも聞 いておりますので、そういう視点で今の御質問について、最終的な報告案には記載させ ていただきたいと思います。  効果のところは、そういう軸で聞いておりませんでしたので、だれの視点からの効果 を考えるかということについては、この後の調査ではその部分を切り分けて評価をして みたいと思います。  患者さんに対する効果としては、連携をやっているところが今回の調査対象の中に1 カ所ありまして、そこは外から自分のカルテが見られるという仕組みをつくっておりま すので、そこの患者さんにそのへんのところをお聞きして、今の御質問にこたえるよう な形で報告書をまとめたいと思います。 ○手島委員  6ページのA病院とD病院を比べてみますと、図が描いてありますので、Aに対して Dの方が複雑な感じがするのですが、コストのところを見ますと、A病院では1ベッド 当たり190〜200万円に対してD病院は270〜280万円ということで、コストが高い方が効 率なり、そのコストに見合うだけいいものなのかという疑問があります。  もう一つは、D病院は複雑なシステムがうまく連携しているのかどうか。最近、患者 の個人情報に対して過敏ではないかと思うのですが、いろんな人が簡単にアクセスでき ないようなシステムになっていて、Dのようにいくつもシステムがあるということは、 このシステムはだれとだれがアクセスできるという制限をたくさんかけていて、そのた めに重複した情報をいろんなところで持っているのではないかという感じがします。医 療職というのは個人情報保護法にかかわらず身分法なり刑法で守秘義務がかかっていま すので、そんなに神経質にならなくてもいいのではないかという気がしてるのですが、 そのあたりはいかがでしょうか。 ○松田委員  A病院とD病院の違いは、A病院はDPCで支払いを受けていない病院で、DPCの 調査対象施設にはなっておりますが、支払いは受けておりません。D病院はDPCの対 応病院でして、しかも電子レセプトに完全対応している数少ない病院の一つです。そう いうことで、かなり情報化を進めている施設ですので、1床当たりのコストがかなり違 ってきています。  個人情報の保護については、医療職間ではすべて見られる形になっていますが、どち らの施設の場合も書き込みができるかどうかに関してはアクセス権限を設定して、中身 が書けないようになっている。そういう形で運用しています。 ○事務局(堀江保険医療企画調査室長)  1床当たりのコストというのは、A病院の場合は5年リースの総額になってる、D病 院は一部が購入ですが、B病院は購入の部分が多いといったことで、費用の支払いの形 態はそれぞれに違うわけですね。  病床の規模に応じて、ITシステムを組む時の目安として1床当たりのコストが使わ れますので、A病院の規模なら190〜200万、D病院の規模なら270〜280万ということが 示されているわけで、それを横に比べて、この病院は多いとか少ないといっても余り意 味がないのではないかというふうに読ませていただきましたが、それで正しいんでしょ うか。 ○松田委員  それで結構だと思います。IT化の範囲と、どこまでカスタマイズ化しているかとい うことはそれぞれの病院のIT化のポリシーによって違います。こういうもののコスト の高い安いというのは病院間で比較するというよりも、それぞれの施設がどういうポリ シーに従ってIT化をやっているのか、投資した効果に対してどのくらい効果が上がっ ているのかということですので、施設間で単純に比較できるようなものではないと考え ています。 ○石井委員  7ページの真ん中へんの〔参考1〕に「コストの総額を病床数で除した」と書いてあ るんですが、ここの「コストの総額」の定義をもう一回、言っていただけますでしょう か。説明を聞けば聞くほどわからなくなりました。 ○松田委員  システム導入・運用に係るベンダーへの支払いというコストです。人件費は一切含ん でおりません。 ○石井委員  年間保守料は? ○松田委員  年間保守料は含んでいます。 ○事務局(堀江保険医療企画調査室長)  7ページの1)ベンダーへの支払いのところを見ますと、4億4,700万円という計の 部分と年間保守料2,200万円とあります。6ページの方は病院が特定されないように病 床数をぼかしてありますが、7ページの数字を200〜299床で割り返したものという感じ でよろしいと思います。 ○石井委員  かかったコストに対して削減可能なコストという議論がされてるんですが、現実に削 減されたコストという概念はないんですか。削減可能な議論ではなくて、現実的にふえ たコストはこれだけある。場合によってはメディカルセクレタリーみたいなものがふえ た。削減可能という議論ではなくて、結果的に削減されたというのは認識しないんでし ょうか。  コンピュータシステムをどんどん入れていけば日常の処理業務は分散されていって、 月末月初の集中業務は解消されるわけですから、例えば医事職員の残業代は大幅に下げ られたりするはずなんですが、そういう視点で、現実的に削減されたコストをどこかで 取り込むという発想はないんでしょうかという質問です。 ○松田委員  それは来年度調査でやりたいと考えています。今年度はIT化によってどういうコス トが削減可能なのかということをお聞きして、それを次回の調査で項目立てをしていっ て、その部分の実際のデータを出していただく。そういう2段階で考えております。今 年度も最初からそれをやりたいと考えたんですが、受け入れ側の負担が大きいだろうと いうことで、今年度はこういう形でやっています。この中のいくつかの病院は実際にそ ういうデータをつくっています。D病院はそういうのをつくっていますので、それを出 していただければ、事例という形で効果を数字とともに出すことは可能だろうと考えて います。 ○椎名委員  先ほどの今中先生の中間報告と松田先生の中間報告で重なり合ってる施設というのは いくつかあるんですか。 ○今中委員  1施設ぐらいあるかもしれません。調査のスタートに当たって、共有できるようなデ ータは共有していくという方向性で始めた調査です。重なり合った施設も入れていくと いう方向性だったと思います。 ○松田委員  医療の安全性向上ということがありますので、両方の委員会に今中先生と私が入り合 うということで、重なってる施設を設定させていただいて、整合性をもった分析にした いと思います。 ○事務局(堀江保険医療企画調査室長)  10月5日に中医協にお出しした資料の中に、調査の効率化を図る観点から一部、同一 の施設を対象とすることが考えられるとありますが、それに先立つ9月26日のコスト分 科会でその討議をしております。その条件として、それぞれの調査に松田先生、今中先 生にお入りいただいて進めていただくということで、今までのところ具体的に重なって いるのが1病院であったということです。 ○西岡委員  松田先生の調査の場合はIT化で成功している病院ばかりなのでしょうか。成功して ないところも入れば、もう少し費用の形が変わってくるのかなと思うのですが、そのあ たりはどうなんですか。 ○松田委員  このあと大学病院等もいくつかヒアリングをすることになっていますが、余りうまく いってない事例も入っております。 ○西岡委員  そういう事例があった方がわかりやすくなるのかなと感じました。 ○井部委員  うまくいってないというのは、どういう点でうまくいってないんでしょうか。 ○松田委員  近藤委員の言葉をかりれば、相対的にうまくいってない。鳴り物入りで始めたけど、 期待どおりの成果が出ていないという事例がいくつかありますので、そういうところに 行って、畑村先生のあれじゃないですけど、失敗から学ぶというのも必要な視点だと思 います。どうしてうまくいかなかったのか、どうして予定されていたことができなかっ たのかということをお聞きしたいと考えています。  例えばパスのIT化をやって、システムが止まってる施設がかなりあるんですけど、 そういうところを見せていただいたりとか、つくり込み過ぎた電子カルテがどういう状 況になっているのかということも少し見たいと思っています。 ○石井委員  もう一回、確認させてください。7ページの〔参考2〕に単年度医業収入の約10%と 書いてあるんですが、A病院は50〜60億円の収入がありますので、5〜6億円という話 になるわけです。年間保守料2,250万円で、5年間という勝手な前提をつけたとすると、 5年分の保守料と、上にある4億4,700万の初期の投資コストと医業収入との対比とい うイメージでよろしいんでしょうか。  「実際には複数年に及ぶ支払い費用を試みに単年度医業収入比でみた」という意味が よくわからないんです。全体でみると50〜60億の10%だから5〜6億円なので、算式を 考えると、4億4,700万円に、年間2,250万が5年分ぐらいかかったイメージかなと勝手 に推測したわけです。このシステムに投資して、更新するまでの総コストを単年度の売 上げで割り返した比率ですかという質問をしてるんです。 ○事務局(堀江保険医療企画調査室長)  私の理解では、5年でみてるというのがA病院の例ですので、このシステムの一区切 りができるという意味合いで4億4,700万円に2,200万円×5をとって、それを年間50〜 60億で割り返した。 ○石井委員  ということは1年間で2%ぐらいかかってるという見方になるんですかね。単年度の コスト負担で考えると、総収入に対してこのシステムに係る直接的なコストは2%であ る。総売上の2%もかかってるということですかね。 ○松田委員  確認しまして、答えさせていただきたいと思います。 ○石井委員  もう一つは、かなり大きな投資になるんですが、買った場合は固定資産税がかかって、 買わなかった場合は固定資産税がかからないとか、いろんな議論があるんですね。いろ んな開設主体がありまして、買った場合は固定資産税はかからないけど、借りた場合は リース会社が勝手に利ざやを入れてるとか、総コストをどうやってつかむのかなという イメージをもう少し緻密にしていただいた方がいいのかなと思いました。 ○松田委員  そういう部分は今回はみておりませんので、ヒアリングを追加して、その部分を明ら かにしたいと思います。 ○近藤委員  リースの場合は単年度換算して2%という概念はありうると思うんですが、購入した 場合は機械によって減価償却が違うので、購入を売上概念に変える時には、今の計算式 の立て方だと、すべてのシステムが5年減価償却で横に比較しているような設定になっ てるわけです。減価償却の期間が違うのであれば、購入の部分は減価償却でリース換算 に戻して、それで売上げて比較する、そういう方法にもっていきたいわけですよね。わ かりました。確認です。 ○松田委員  もう一つのコスト調査の方でもそうなんですが、どういう形でそれを取得しているか によってコストの単位が違ってきますので、全部を同じリース期間であるという形で考 えて、リースに換算したらいくらという形でコストを算定したいと考えております。 ○田中分科会長  ひとわたり御質問及び次年度へのアドバイスが出たということにさせていただきます。 今中先生、松田先生どうもありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたしま す。  本日出た御意見は調査結果そのものを直せということではなくて、来年度以降のアド バイス、本年度調査の結果の読み方の確認と理解いたします。  本日御議論いただいた「医療安全に関するコスト調査」の中間報告、「医療のIT化 に係るコスト」の中間報告の内容については本分科会において了承し、中医協・診療報 酬基本問題小委員会の求めに応じ、私から報告したいと思います。  なお、この2つの調査については、結果が取りまとめられた段階で、改めて当分科会 に報告を求めることといたします。お二人の先生は御苦労ですが、取りまとめに向かっ て御努力いただきたいと思います。  なお、誤解のないように申し上げますが、当分科会で議論されている内容は、中医協 ・診療報酬基本問題小委員会の了解を得て、初めて成案となるものであり、報道等に当 たっては、その旨御留意いただきますよう、よろしくお願いいたします。  よろしければ、本日予定しておりました議題につきましては以上であり、本日の分科 会は終了したいと思います。  次回の開催について、事務局より説明をお願いいたします。 ○事務局(堀江保険医療企画調査室長)  次回の日時につきましては、おって御連絡申し上げたいと思います。 ○田中分科会長  それでは、第10回診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会を終了させて いただきます。  本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。 【照会先】 保険局医療課保険医療企画調査室 厚生労働省代表03−5253−1111(内線3290)