資料2 |
第1回検討会についてのメモ
1.石綿との関連性、石綿以外の原因
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○ | Consensus Reportでは、Great Majority の中皮腫が、石綿曝露によるものであり、中皮腫患者のおよそ80%が何らかの職業上のアスベスト曝露その他は誤診又は環境経由等によるものであると報告されている。 |
○ | 横須賀共済病院のデータでは中皮腫の4%についてはどうしても石綿曝露歴が判らなかったが、少なくとも90%以上は石綿によるものと考えて良いのではないか。 |
○ | 40〜50年前の曝露歴をきちんと聞くのは難しく、本当は職業歴があるのに十分に聞き取れていないおそれが高い。岡山労災病院の実績でも7割ぐらいしか石綿曝露であるとは確認できなかった。 |
○ | 石綿以外の原因としては、戦時中まで使用されていたトロトラスト(放射性造影剤)によるもの、放射線によるもの、人工気胸術、ウィルムス腫瘍の治療(化学療法投与、放射線照射)、遺伝によるものが報告されているが、これらを原因とするものであること、又は石綿によらないことを医学的に明らかにすることは特別な場合を除いて困難である。また、かつてポリオワクチンの中にSV40ウィルスが混入していたことが欧州において中皮腫が増加したが原因であるともいわれているが、現在は否定されている。 |
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○ | 細胞診や画像だけで簡単に中皮腫と診断している例が散見されるが、かつて127例の中皮腫診断例について詳しく調べたところ、11例は中皮腫ではなく、うち4例が胸膜炎であったことが判明したことがある。診断は正確に行う必要がある。 |
○ | 確定診断に当たっては、原則的には病理組織の診断が必要であり、病理組織を調べることが望まれる。CTや超音波ガイド下生検や、胸腔鏡下手術(VATS: Video assisted thoracic surgery)による生検を実施するが、患者の病態によっては実施できない場合もあるだろう。 |
○ | 上皮型については、単なるパパニコロウ染色による細胞診ではなく、経験ある医師による免疫組織化学染色や電子顕微鏡による観察により、中皮腫の診断をかなりの確率でもって行うことが出来るだろう。しかし、それ以外のタイプの中皮腫では細胞診だけでは診断することはできない。 |
○ | 我が国の病理診断の結果について検討を行ったところ、上皮型と診断されたものが47.3%であったが、研究班で再検討した結果、62%であることが判明している。また、日本の病理医の傾向としては、二相型と診断を付けがちである。病理診断の精度を向上させるため、医師の教育、研修が必要であり、また、今後、病理診断困難例については、病理医による病理パネル(症例検討会)の全国実施が望まれる。 |
○ | 胸膜中皮腫以外のまれな部位の中皮腫(心膜、腹膜、精巣鞘膜)については、欧米に比べて我が国に報告が多く、中皮腫以外のものが混ざっている可能性がある。特に確定診断をきちんとするべきである。 |
○ | 厚労省の研究班(がん研究助成金)で胸膜中皮腫の診断指針を来年2月にも提示すべく努力している。 |
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○ | 胸膜プラークについては、曝露後15年から30年で出現することが知られている。若年の例としては、気胸を起こした25歳の方に、プラークに詳しい医師が胸腔鏡をしたところ、画像では見つからない程度の小さなプラークが見つかったという報告を聞いている。 |
○ | 潜伏期間の長い中皮腫であれば、ほぼ全例に胸膜プラークがあると考えられるが、HRCTでも80%しか捉えられず、剖検でないと確認できない例もある。 |
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○ | 我が国の労災例では、潜伏期間は平均約40年、最小で11年6か月となっている。 |
○ | 一般的に、曝露濃度が高いと潜伏期間は短い。 |
○ | 17歳の中皮腫例の報告もあり、人口動態統計でも10代の例が認められているが、潜伏期間を考慮すると、30歳以下の症例については、特に確定診断をきちんと行うことのほか、胸膜プラークや石綿小体の確認、石綿曝露可能性の検討など、慎重に評価すべきである。 |
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○ | 中皮腫の2年生存率は30パーセントである。平均余命の中央値は15か月であり、平均値は21か月である。手術しても同じぐらいの成績に過ぎない。上皮型でI期(早期)の例では手術にてうまく摘出すれば、予後は比較的よい。 |
○ | 上皮型の予後は12か月、肉腫型が6ヶ月であるといわれている。 |
○ | 抗がん剤については、著効する例は少なく、その延命効果は小さいと聞いている。 |
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