(資料1)

第8回研究会における主な議論の概要
( 未定稿 )

(横浜市の現状について)

 政令指定都市は区があり、県と市町村との関係とは違う面がある。その違いは、政令指定都市は区との関係では、自治体が同じであり、福祉事務所・保健所(センター)が区に併置され、人事交流が可能であり、同格の意識がある。それだけに明確な役割分担がしにくく、双方の補完的な分担という形になりやすい。横浜市は特に区への権限委譲が進んでおり、区の独自性・自主性がでてきている。

 横浜市の場合、福祉保健センターというのが18区にある。これは福祉事務所と保健所を再構成したもので、その中に子ども家庭支援担当があり、保健師・ケースワーカー・教師・保育士・カウンセラーなど多職種が存在している特徴ある職場。母子保健事業から児童福祉までいろいろな範囲内で子どもに関することをしている。

 児童虐待把握件数の経路として一番多いのは各区の福祉保健センター。児童相談所は24時間365日の電話相談機関(虐待ホットライン)を持っているが、センターからの通報で虐待者本人からの連絡が非常に多いのが横浜市の特徴。

 各区の福祉保健センターからの通報件数が一番多い。これは、センターが母子保健事業・障害関係事業・生活保護事業等取扱うことから、通報される件数が非常に多いということ。

 虐待の危惧ありという、虐待と言い切れないが虐待の可能性があるものは、児童相談所には送られてこないで、区で担当している。

 問題は、相談情報が一方通行で、区から児童相談所にケースをあげても児童相談所から対応の報告がない。職種間の言語の違いから話しが通りにくい。児童相談所の24時間365日の虐待通報システムに来た情報が区に下りてこない。

 ケースワーカーは保健所にほとんどいなく、福祉事務所には保健師がほとんどいない体制でやってきていたが、福祉保健センターという形になって、両者が一つの係にいる状況になった。ただ、手法ないし言葉がけなどが違い、ゴールを高いところに設定し、それに近づけていこうとする保健師と、相手の状況と同じレベルで見て、それを少しでも上げていこうとするケースワーカーでは手法が違う。そのためにマニュアルを作った。残念ながら同じ係であっても仕事の区分けはある。

 区では、保健師が中心となって平成6年から「虐待」という言葉ではなく、「不適切な養育」という言葉を使ってリーフレット作成、要支援台帳づくり、不適切な養育をしている親のヘルプグループなどの母子保健・子育て支援事業を実施してきた。また、「不適切な養護支援マニュアル」も作成され、平成11年に施行された。

 乳幼児健診の欠席者への連絡・勧誘、育児支援家庭訪問事業、いわゆる「不適切な養育」をしているという家族へ保健師・栄養士・ヘルパーを派遣して見守り支援をする体制(親子のピアカウンセリング事業)を、児童相談所だけでなく区でもおこなっている。

 児童福祉法では市町村が「一次通告機関」となっているが、横浜市では児童相談所と区が並行して「一次通告機関」となっている。現実には区が虐待把握経路を一番多く持っており、地域の人が区に連絡しやすくする方向性を持つことが極めて重要。

 要保護児童対策地域協議会は、従来から市レベルでは市の子育てSOS連絡会があり、これを代表者会議として位置づけた。各区の抵抗が強く、現状としては代表者会議は市でひとつ。

 各区に従来からある実務者会議で問題となるのが、地域との連携。どこがどう連携してどのような技術的な支援をするのか、警察官・弁護士などの専門家との連携はどういう仕方が良いか、どういう連携方策があるのか。また各施設との連携や施設と地域との関係の調整をどうするかなど非常に重要な問題。

 来年度に向けて局の再編がある。平成16年度には母子保健と保育園などをまとめた子育て支援事業本部ができ、更に平成18年には児童家庭、幼稚園、障害児も含めた青少年子ども家庭局ができる予定。

 人と金がない時代で児童相談所の体制強化がどういう形でできるか苦慮している。方法の一つとして、児童相談の流れの各部門の業務を各職種で対応する、また地域との連携を合理的に直接的に連携できる体制にする。

 政令指定都市も区との連携に課題がある。区の保健師とケースワーカーが共同して児童相談に対応してほしい。
 地域では役員がボランティアでやっているが、実践研修を積んで個別的に力量を高めていくことが重要。区と一緒に行う必要がある。区との連携の仕方について、具体的には区に児童相談担当の責任者が欲しい。また、児童相談所にも区とのつながりをする全体の啓発研修ができるスタッフや係が必要。

 要保護児童対策地域協議会を地域の他のセクションに働きかけられる力量を持たせたい。横浜にはNPOが十分に出来ていない。いかに作るか大事な役割。

 虐待や非行を未然にどう防ぎ、家族再統合をどう図るか、そして最大の課題は受け入れる里親・施設をどう増加させるのか。子どもの安心・安全・安定した生活をどう支援するかに児童相談所の役割がある。

 診療所から重度の虐待事例は入院が保証され、虐待対策委員会から団体として児童相談所に連絡がある。児童相談所は法医学の科学的な目を利用して、第三者的な鑑定を可能にする体制をつくりたい。

 地域の人が虐待の通告先をどのように分けているかだが、はっきり分けていない。従来、区は「不適切な養育」について行っていたので、主に「虐待に至る前」を担当するというイメージが昔から培われている。明らかな虐待になれば児童相談所であるが、それまでは区でがんばる形になっている。

 中央児童相談所では「はまっ子24時間」という無料ダイヤルの電話を設置し、24時間365日行っている。5人の非常勤嘱託職員が対応。時間内は虐待対応チームに電話がかかり、夜間・休日・土曜日は5人が交代で受ける。1年間に1,000件連絡あり、そのうち150件が虐待通報。

 区は、子ども家庭支援センターに子育て全体に関する相談窓口が一つある。また、福祉保健センターの総合相談窓口がある。これは老人から子どもまでのすべての相談を受ける窓口。双方の窓口から来た相談を子ども家庭相談担当が担当を決めて実際のケースワーキング等の支援を行う。

(神戸市について)

 神戸市では平成14年2月に死亡事例があり、それを踏まえて平成14年3月に保健と福祉が一緒になった区における「子育て支援室」を立ち上げた。こども家庭センター(児童相談所)と各区の連携を細やかにして、虐待を未然に防ごうということで発足した。また、子育て支援室とこども家庭センター(児童相談所)の連絡会も始まり、各区と本庁の中にプロジェクト組織が設置された。

 子どもの命や健全育成を考えると母子保健から進むという考え方があり、児童相談所と各区は上下がなく、子育て支援室とはフィフティフィフティの間柄でいく。

 虐待ケース(疑いを含む)への対応として、ケースを把握し、普通一般からの相談・保健事業・福祉サービスの中で発見してすぐに子育て支援室で調査をする。区に通告があったケースや保健事業に発展したケースについてケース検討会を行い、アセスメントをして、援助方針を決定する。そのときにチェックリストを使って緊急性の判断をする。各区の子育て支援室はケース検討会というものを各室で持って、そのケースの対応方針を決定している。

 区の子育て支援室とこども家庭センターとの連携では、原則として各区、9区と1支所あり、10か所毎月1回定期連絡会を開催している。両方が共有しようと思うケースについて、援助体制・具体的な方法を検討する連絡会「区子育て支援室・こども家庭センター事例検討会」を開催している。定期的に児童福祉司と保健師が顔を合わせることによって、個々のケース対応だけでなく、お互いの専門性に合う動き方や業務内容を知る良い機会になった。

 課題としては、どう情報交換している中で、意志伝達がうまくいっていない。

 連絡会の検討ケースとしてあげられたケースは、こども家庭センターの児童福祉司などからケースワークなどのアドバイスができるようになっている。

 今後の問題は、区の子育て支援室では、今は虐待対応だけを行っているが、今後は非行問題にも対応できる職員の配置が必要。また児童相談所の養護や育成という部分のケースについても、子育て支援室との連携・情報交換が必要となってくる。

 通報先としては、児童相談所にも、区の子育て支援室にも通報がある。子育て支援室が始まって4年経つが、学校からの相談の件数は低い。それは学校は主に児童相談所へ非行や不登校の相談をしてきたので、学校の先生は軽度のケースでも児童相談所へ相談へ行く状況。区の子育て支援室への通報は、民間・一般市民からが多い。

(三鷹市について)

 三鷹市は人口17万人。「子ども家庭支援センター」は東京都独自の制度で、「子どもと家庭に関するあらゆる相談に応じ」それと同時にさまざまなサービスを提供しながら子どもと家庭に対する支援を、ネットワークを中心に行っていくのが基本的な機能。

 「要支援家庭サポート事業」は「見守りサポート事業」「虐待防止支援訪問事業」「育児支援ヘルパー事業」がある。「見守りサポート事業」は虐待ということで児童相談所がいったん受理したものの、程度が軽く中程度のものは再度市区町村へ戻されて、市区町村の子ども家庭支援センターを中心に見守りサポートを行っていくもの。
 また、児童養護施設に措置された子どもが、家庭あるいは地域に戻ってきたときに、戻ってきた段階で親あるいは子どもの中にまだ相当の問題が残っている場合、福祉士を中心に福祉指導となる。ある一定程度安定してきていれば、こども家庭支援センターが中心で行う。

 「虐待防止支援訪問事業」は虐待に至る前のところでできるだけ地域に出かけていって予防的な活動を行うもの。乳幼児健診の未受診家庭以外にも、虐待通報が寄せられたが、待っていても来ない方に対し、どんどん出かけていく。

 「育児支援ヘルパー事業」は支援が必要な家庭に、ヘルパーを含めてサービスを行っていくもの。

 職員は常勤は3人。1人は保育士でセンター長。嘱託職員は、精神保健福祉の資格を持っている方に週30時間、相談員をお願いしている。

 ファミリーサポートセンター事業を子ども家庭支援センターに組み入れて、支援センター事業と併せてリンクするよう行っている。

 児童福祉司がバーンアウト状態という話も出たが、市区町村の支援体制が整えば整うほど職員の勤務体制がどんどん大変になっていくように思う。

 「三鷹市子ども家庭支援ネットワーク」は要保護児童対策地域協議会へ衣替えする予定。現場の療育関係のケースワーカーの必要性を感じたところからスタートしたと聞く「子どもの相談連絡会」がそもそもの始まり。

 平成14年に教育委員会を意識的に組み込んでネットワーク構成機関にした。

 子ども家庭支援センターは、子どもと家庭に関することはどんな事でも相談して下さいというスタイルでおこなっている。さまざまな相談があるが、相談があった場合には、できるだけ子ども家庭支援センターで丁寧に話しを聞くことを心がけている。そして各機関につなげていく。

 三鷹市の総合保健センターでは、乳幼児の相談ももちろん、虐待を働いた親への親支援にも相当力を入れている。また保健師の訪問活動や、臨床心理士による個別相談もあり、個別相談は親の辛さがある程度はっきりした場合には、保健センターを紹介していくことが多い。

 親子関係で煮詰まっている場合などは、時間単位で子どもを預けることができる一時保育やファミリーサポートセンター、緊急一時保育というサービスを提供することもある。そういうサービスを提供しながら相談に乗っている。

 近隣通報も含め虐待の相談・情報が寄せられた場合には、ネットワークを通じて子ども家庭支援センターへ情報が寄せられる。通告先は学校からのも含めてほとんど子ども家庭支援センターになる。児童相談所へ通告があることもある。どちらに情報が寄せられてもネットワークを使って情報収集をしてアセスメントをして、協力・連携して動いていく。また、児童相談所へ相談が寄せられてもまず、子ども家庭支援センターへ連絡をもらって、情報収集をして、それを児童相談所へ返しながら処遇方針について一緒に相談する流れ。

 三鷹市のような中規模以下の自治体だと、相談スタッフをどのように養成するかが大きな課題。

 ネットワークを使って支援していくと電話で何度もやり取りして時間的な負担は大きいが、いろいろな人の専門性に頼りながら一緒に動ける点で、精神的にずいぶん楽。

 基本的には重いものを含めて子ども家庭支援センターで相談を受けている。親との関係が続く中で、限界となったときは児童福祉司役割を取っていただく。どこかの機関の職員と親がつながっていることで、ネットワークというのは非常に有効。

 何でも相談できる子ども家庭支援センターが、第一義的な相談窓口になるのは有効。

 子ども家庭支援センターには、子どもの相談コーディネイトというか、職員体制として10人は必要。学校などから相談が寄せられるが、動き切れていないことが出てきている。このままだと相談を寄せた、情報を寄せたはいいが、何もしてくれない、動かないということが出てくるのではないか心配。

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