(1) |
被保険者数の推移
○ |
船員保険制度の被保険者数は、平成16年度62,944人であり、その減少傾向に歯止めがかかっていない状況である。これに伴い、保険料収入も依然として減少し続けており、収支が安定してきた部門もあるが、特に、長期給付を行う職務上年金部門においては、平成10年度以降単年度収支の赤字が続くなど、厳しい財政運営となっており、抜本的な財政対策が必要な状況である。
|
○ |
こうした中で、船員保険の未加入者に対する対策として、平成17年1月より適用促進対策の強化を図ったところであり、また、経済情勢の回復基調等を背景に、汽船の被保険者数に関しては下げ止まりの兆しが見られるが、長期的には被保険者数が減少し続けるものと見込まれるところである。これに関し、被保険者及び船舶所有者からは、保険財政の将来見通しを試算するに当たって、最も厳しいケースとして、将来は3万人又は3万5千人まで減少するという想定が示されたところである。 |
|
(2) |
財政面での課題
○ |
今後とも被保険者数の減少傾向が続いた場合に、保険財政にどのような影響が生じるかについて、本検討会では、一定の前提をおいた上で、疾病部門、職務上年金部門及び失業部門それぞれの機械的な財政推計を行って検証した。
|
○ |
被保険者数が平成27年度に3万人又は3万5千人となるケースについて、各部門の機械的な財政推計を行ったところ、職務上年金部門については、現行の制度と保険料率を前提とする限りにおいて、将来にわたり支払いを継続できるケースとともに、途中の年度で積立金が枯渇し財政破綻する試算結果も複数見られた。そのうち最も深刻なケースでは、平成32年度に職務上年金部門の積立金が枯渇し、支払不能に陥る可能性があることが示された。
|
○ |
船員保険の職務上年金部門は、新規受給者の将来にわたる年金給付を給付時点の船舶所有者からの保険料収入と積立金の運用収入等で賄うこととしており、今後、保険集団として規模が縮小した場合、将来の年金給付を賄うための保険料負担が過大なものとなる可能性がある。また仮に、労働者災害補償保険制度と同様に、新規受給者の将来にわたる年金給付を災害発生年度の事業主で負担する財政方式(以下「充足賦課方式」という。)に変更した場合、平成17年度末で約1,700億円の積立不足が見込まれる。 |
|
(3) |
特別会計改革との関係
○ |
1で述べたとおり、「特別会計の見直しについて−基本的考え方と具体的方策−」及び「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」において、船員保険特別会計については存廃も含めて検討すること等とされている。
|
○ |
また、平成17年11月には、財政制度等審議会において、「船員保険事業のうち健康保険制度に相当する部分については公法人化した政管健保を含め国以外の主体による運営を、また、労災保険制度及び雇用保険制度に相当する部分については労働保険特別会計との統合を検討すべきである」と指摘されており、この特別会計改革の中で船員に対する必要な保障を維持していくという観点からも、本検討会において、船員保険制度の今後の在り方について結論を出すべきである。 |
|
(4) |
社会保険庁改革との関係
○ |
船員保険の保険者である社会保険庁については、平成20年秋に、公的年金の運営を担う国の機関である年金運営新組織と、政府管掌健康保険の運営を担う国以外の公法人に分離されることが検討されており、平成18年の通常国会に関連法案が提出される予定であることから、この面からも船員保険の運営組織の見直しが避けられない状況である。 |
|