胸腹部臓器の障害に係るアフターケア |
労災医療専門家会議
平成17年12月12日
平成17年9月30日に取りまとめられた「胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会」(以下「障害認定検討会」という。)の報告書において、「治ゆ後においても症状の動揺を来すおそれのある傷病であって、現在設けられているアフターケア制度の対象になっていないものについては、当該傷病に係るアフターケアの新設又は拡充が望まれる」との提言がなされたところである。 これを踏まえ、胸腹部臓器の障害に係るアフターケアについての検討を行うことを目的に、平成17年11月2日から同年12月5日の間3回にわたり、労災医療専門家会議を開催し、その検討結果を取りまとめたので、ここに報告する。 なお、今回の労災医療専門家会議は、障害認定検討会の報告書を受けて、アフターケアの新設及び拡充を検討したものであるが、関連する既存のアフターケアの要綱についても、制定又は改正から相当な期間が経過するものがあることにかんがみ、現在の医療技術を考慮した見直しを行うことが望まれる。 平成17年12月12日
(関係資料)
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1 | 対象とする障害についての検討
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(参考資料)
資料3 | 障害認定検討会の報告書による障害等級一覧表(アフターケア新設等に係る障害の障害等級) |
2 | 措置内容についての検討
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(参考資料)
資料4 | アフターケア措置内容等一覧表 |
照会先 | 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課福祉係 |
TEL | 03(5253)1111(代)内線5566 03(3502)6796(夜間直通) |
FAX | 03(3502)6488 |
「労災医療専門家会議」の開催要綱
1 | 趣旨、目的 現在、実施されている労災医療におけるアフターケアの対象傷病は、18傷病に限られているためそれ以外の傷病については、治癒後に後遺 症状が残ってもアフターケアの対象になっていない。 このような現状の下、先般取りまとめが行われた障害等級認定基準の見直しに係る胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会において、認定 基準の見直しに伴いアフターケア対象疾病の新設又は拡充について、実 施すべきとの報告が行われたところである。 ついては、上記報告を踏まえた上でのアフターケア制度の見直しを医学的、専門的立場から検討する必要があることから、「労災医療専門家 会議」(以下「専門家会議」という。)を開催し、平成17年末を目処に 検討結果を取りまとめる。 | ||||||||||
2 | 検討内容 労災医療におけるアフターケア実施要綱の見直しについて検討する。 | ||||||||||
3 | その他
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「労災医療専門家会議」参集者名簿
(50音順) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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アフターケア新設等に係る障害の障害等級(胸部臓器及び泌尿器)
アフターケア新設等に係る障害の障害等級(腹部臓器)
1級 | 2級 | 3級 | 5級 | 7級 | 9級 | 11級 | |
ペースメーカ 除細動器 |
除細動器を植え込んだもの | ペースメーカを植え込んだもの | |||||
心膜の病変 | 心膜の病変(肥厚、癒着等)を残すものの、心機能の低下による運動耐容能の低下が中等度にとどまるもの | 心膜の病変(肥厚、癒着等)を残すものの、心機能の低下による運動耐容能の低下が軽度にとどまるもの | |||||
弁損傷・弁置換 | 弁を置換したもの (治ゆ後も継続的に抗凝血薬療法を行うものに限る。) |
弁を置換したもの (9級に該当するものを除く。) 弁を損傷し、心機能の低下により軽度の運動耐容能の低下が認められるもの |
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呼吸器疾患 | 動脈血酸素分圧が50Torr以下のもの
(PaO2≦50) |
運動負荷試験の検査結果により呼吸機能障害が認められるもの | |||||
動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下のもの 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外 (50<PaO2≦60かつPaCO2<37,43<PaCO2) |
動脈血酸素分圧が50Torrを超え60Torr以下のもの 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内 (50<PaO2≦60かつ37≦PaCO2≦43) |
動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下のもの 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外 (60<PaO2≦70かつPaCO2<37,43<PaCO2) |
動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下のもの 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内 (60<PaO2≦70かつ37≦PaCO2≦43) |
動脈血酸素分圧が70Torrを超えるもの 動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲外 (70<PaO2かつPaCO2<37,43<PaCO2) |
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スパイロメトリーによる検査所見が高度に該当するもの(%1秒量が35以下又は%肺活量が40以下であるもの)
(%FEV1.0 ≦35又は%VC≦40) 医師により呼吸困難度が高度に該当すると認められるもの |
スパイロメトリーによる検査所見が中等度に該当するもの(%1秒量が35を超え55以下又は%肺活量が40を超え60以下であるもの)
(35<%FEV1.0 ≦55又は40<%VC≦60) 医師により呼吸困難度が高度又は中等度に該当すると認められるもの |
スパイロメトリーによる検査所見が軽度に該当するもの(%1秒量が55を超え70以下又は%肺活量が60を超え80以下であるもの)
(55<%FEV1.0 ≦70又は60<%VC≦80) 医師により呼吸困難度が高度、中等度又は軽度に該当すると認められるもの |
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尿路変向術後 | 非尿禁制型尿路変向術を行ったものであって、パッド等による維持管理が困難であるもの | 非尿禁制型尿路変向術を行ったもの (禁制型尿リザボアを含む。) |
尿禁制型尿路変向術を行ったもの (禁制型尿リザボア、外尿道口形成術及び尿道カテーテル留置を除く。) |
外尿道口形成術を行ったもの又は永続的に尿道カテーテルを留置したもの |
アフターケア新設等に係る障害の障害等級(腹部臓器)
5級 | 7級 | 9級 | 11級 | |
消化吸収障害 逆流性食道炎 ダンピング症候群 |
胃の全部を亡失し、ダンピング症候群及び逆流性食道炎を認めるもの | 外傷により小腸が切除され、残存空・回腸の長さが手術時75cm以下となったものであって、経口的な栄養管理が可能であるもの
外傷により小腸が切除され、残存空・回腸の長さが手術時75cmを超え100cm以下となったもの(経口的な栄養管理が可能であるものに限る。)であって、消化吸収障害が認められるもの 胃の全部を亡失し、ダンピング症候群又は逆流性食道炎を認めるもの 胃の噴門部又は幽門部を含む一部を亡失し、消化吸収障害及びダンピング症候群又は逆流性食道炎を認めるもの |
外傷により小腸が切除され、残存空・回腸の長さが手術時100cmを超え300cm未満となったものであって、消化吸収障害が認められるもの
胃の全部を亡失したもの (7級・9級に該当するものを除く。) 胃の噴門部又は幽門部を含む一部を亡失し、消化吸収障害又はダンピング症候群若しくは逆流性食道炎のいずれかを認めるもの |
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腸管癒着 | 腸管狭窄を残すもの | |||
小腸皮膚瘻 | パウチ等の装具による維持管理が困難な小腸皮膚瘻であって、小腸内容の全部あるいは大部分が漏出して汚染されるため、瘻孔部の処理を頻回に行わなければならないもの | 常時パウチ等の装着を要するものであって、小腸内容の全部あるいは大部分が漏出するもの
漏出する小腸内容がおおむね100ml/日以上であって、パウチ等による維持管理が困難であるもの |
常時パウチ等の装着を要するものであって、漏出する小腸内容がおおむね100ml/日以上のもの (7級に該当するものを除く。) |
常時パウチ等の装着を要しないものの、明らかに小腸内容が漏れるもの |
大腸皮膚瘻 | パウチ等の装具による維持管理が困難な大腸皮膚瘻であって、大腸内容の全部あるいは大部分が漏出して汚染されるため、瘻孔部の処理を頻回に行わなければならないもの | 常時パウチ等の装着を要するものであって、大腸内容の全部あるいは大部分が漏出するもの
漏出する大腸内容がおおむね100ml/日以上であって、パウチ等による維持管理が困難であるもの |
常時パウチ等の装着を要するものであって、漏出する大腸内容がおおむね100ml/日以上のもの | 常時パウチ等の装着を要しないものの、明らか大腸内容が漏れるもの |
人工肛門 | 人工肛門を造設したものであって、パウチ等による維持管理が困難であるもの | 人工肛門を造設したもの | ||
排便機能障害 | 完全便失禁であることが医師により明らかに認められるもの | 高度の便秘を残すもの
完全便失禁には至らないものの、漏便により常時紙おむつの装着が必要であると医師により明らかに認められるもの |
軽度の便秘を残すもの
常時紙おむつの装着は必要がないものの、明らかに便失禁が認められると医師により明らかに認められるもの |
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慢性肝炎 | 慢性肝炎(ウイルスの持続感染が認められ、かつ、AST、ALTが持続的に基準値を超えないものに限る。) | |||
膵機能障害 | 外分泌機能及び内分泌機能のいずれにも障害を認めるもの | 外分泌機能又は内分泌機能のいずれかに障害を認めるもの |
○胸腹部臓器の障害に係るアフターケア措置内容等整理表
傷病名等 | 対象者 | 期間 | 診察及び 保健指導 |
処置 | 検査 | 薬剤 | 留意事項 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1) ペ|スメ|カ等 |
植込み型ペースメーカの術後 | ペースメーカを植え込んだ者 | 機器の挿入されている期間 | 1〜3カ月に1回程度 |
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虚血性心疾患等に係るアフターケアに統合 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
植込み型除細動器の術後 | 除細動器を植え込んだ者 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(2) 心臓外傷等 |
人工弁置換後 | 人工弁置換を受けた者 | 人工弁及び人工血管を挿入している期間 | 1〜3カ月に1回程度 |
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新設 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
人工血管置換後 | 胸腹部臓器の人工血管置換を受けた者 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
弁損傷及び心膜病変 | 弁損傷及び心膜病変により心機能の低下を残す者 | 原則として治ゆ後3年間 (医学的に必要のある者は、継続することができる。) |
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(3) 呼吸機能 |
呼吸機能障害 | 呼吸機能障害を残す者 | 原則として治ゆ後3年間 (医学的に必要のある者は、継続することができる。) |
月1回程度 |
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新設 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(4) 腹部外傷等 |
消化吸収障害等 | 消化吸収障害等の後遺障害を残す者 | 原則として治ゆ後3年間 (医学的に必要のある者は、継続することができる。) |
月1回程度 |
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新設 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
ストマ造設後及び膵機能障害 | ストマを造設した者及び軽微な外瘻が認められる者 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(5) 尿路変向 |
尿路変向術後 | 尿路変向術を受けた者 | 原則として治ゆ後3年間 (医学的に必要のある者は、継続することができる。) |
1〜3カ月に1回程度 |
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尿道狭さくに係るアフターケアに統合 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
(6) 慢性肝炎 |
慢性肝炎 | ウイルスの持続感染が認められ、かつ、AST及びALTが持続的に基準値を超えない者 | 原則として治ゆ後3年間 (医学的に必要のある者は、継続することができる。) |
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アフターケアにおいて、薬剤の支給は不要とする。 | 既存の要綱の改正 |