参考資料2

○ あっせん事例の詳細について

 【採用内定に関する例】

 准看護師である労働者が面接を受け、その場で採用内定として約1か月後に勤務を開始することとされた。その際、資格について確認したが、正看護師・准看護師は関係なく経験を重視することを明言された。
 しかし、2週間後に会社側から連絡があり、医師との協議の結果、准看護師であることを理由に採用内定を取り消すこととなった旨の通知を受けた。このため、労働者(採用内定者)は、会社側の主張する理由は前言と異なり納得できないとして、経済的・精神的な損害に対する補償を求めたもの。
 あっせん委員が会社側の主張を確認したところ、会社側は、准看護師であることが内定取消の理由ではないこと、前職の勤務先に問い合わせた際にこの労働者がまだ退職していないという回答であったため、トラブルを避けるために採用を見合わせたことを主張した。
 労働者は、会社側から早期に勤務を開始してほしいと言われたと主張していたことから、あっせん委員は、会社側に対しこれを指摘した。また、あっせん委員は、補償金について会社側の意見を聞き、会社側は、経済的損害に対しての支払いは考えていないが、精神的損害に対しては一定額を支払うことを回答した。
 あっせん委員が労働者に対して会社側の回答を伝えたところ、労働者はその内容で了解したため、会社側が解決金を支払うことにより合意が成立した。


 【試用期間に関する例】

 期間の定めのない社員として採用された労働者が、採用時に交付された労働条件通知書には、試用期間が3か月であることが明記されていた。ところが、この労働者は採用1か月半後に経費削減を理由として解雇された。このため、労働者は納得がいかないとして慰謝料を請求したもの。
 あっせん委員は、労働者に対して、解雇の経緯と会社側への要求を確認した。
 次に、あっせん委員は、会社側の主張を確認した。会社側は、解雇理由が労働者の勤務状況等ではなく会社全体の経費削減であることを認めた上で、試用期間中であり解雇についての裁量権は会社にあると考えている、法的な手続は守っていると主張した。また、会社側は、金銭解決しかないと思うが、妥当な金額を提示してほしいと要望した。
 あっせん委員は、会社側に対して、経費削減や事業縮小の場合の解雇(整理解雇)であっても踏むべき解雇の手順があり、解雇以外の手段を採ることについて検討せず、この労働者1名のみをいきなり指名解雇することは妥当とは言いがたいことを指摘した。その上で、会社の都合だけで解雇したものであるから一定額の補償が必要であることを指摘し、労働者が請求した額と同額の支払いを会社側に対して提案した。
 会社側はこれについて了承し、会社側が解決金を支払うことにより合意が成立した。


 【配置転換に関する例】

 親会社から子会社に転籍するに当たり、親の介護のため定年まで通勤時間約10分のA支店で勤務できるという約束で転籍した労働者が、通勤時間1時間程度のB支店への異動を通告された。労働者は、親及び本人の体調から配置転換は受け入れられないとして、A支店での定年までの勤務又は補償金の支払いを求めたもの。
 あっせん委員は、労働者に対して、労働者の健康状態や家庭の事情等について確認した。労働者は、A支店での勤務は多忙で、これにより体調を崩したと述べた。
 次に、あっせん委員は、会社側の主張を確認した。会社側は、支店の人心一新、顧客の信頼回復等の転勤の必要性のほか、最初は通勤時間1時間半程度のC支店勤務を内示したところ、本人と親の健康上の理由で転勤できないとの申し出を受け、医師の診断書を踏まえて主治医にも話を聞き、通勤1時間程度のB支店勤務を命じたものであって、十分な配慮をしていると主張した。
 また、会社側は、就業規則に転勤の根拠規定があり、A支店から異動させない約束をした事実はないと主張した。
 あっせん委員は、A支店の勤務は多忙で体調を崩したとしながらA支店での勤務を継続したいとする労働者側の希望には矛盾するところもあるのではないか、B支店勤務においては責任が軽減されることから、いったん異動を受け入れて体調を整えてから転職を検討してはどうかとの見解を示した。
 この結果、労働者がB支店に異動することにより合意が成立した。


 【就業規則に関する例】

 管理職について、内規によって57歳到達時以降賃金が減額となる制度があるが、これにより賃金を約8%減額された労働者が、当該減額制度が無効なものであるとして、賃金減額分の返還を求めたもの。
 まず、あっせん委員は、労働者から、請求に至った経緯について確認した。労働者は、減額制度の存在は知っていたが詳細は知らなかったこと、55歳になって賃金が減額されたことからその制度制定の理由を会社に尋ねた際には「高齢になると能力が落ちるから」と回答があったが、この理由にも納得がいかないこと、管理職でない社員については減額制度の適用がないため、年収の逆転現象が生じていて不公平であることを主張した。
 次に、あっせん委員は、会社側の主張を確認した。会社側は、この制度は約20年前に57歳定年を60歳定年に延長した際に制定したものであり、約5年前にも説明を行っており、内規もあると主張した。また、あっせん委員は労働者の請求について会社側の意見を聞き、会社側は、減額分の支払い請求には応じられないと回答した。
 よって、双方の歩み寄りが見られなかったことから、打切りとなった。

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