【 | 出向の根拠規定がなかった例】
関東のA社で勤務していた労働者が、就業規則には出向規定はないにもかかわらず、1週間後から中部地方のB社に出向することを命じられた。労働者がこれを拒否したところ退職を強要され、その後懲戒解雇されたが、労働者は当該解雇を不当であるとして補償金を求めたもの。
会社側は、労働者がプライベートな理由で拒否したものと考え、業務を優先してほしかったと主張した。
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【 | 出向中の労働条件が問題となった例】
入社30年になる管理職の労働者で、約10年前より現出向先に出向しているが、出向先の所定労働時間が出向元の労働時間よりも1日30分多いことから、この時間に対する賃金の支払いを求めたもの。
賃金を支払っている出向元は、現在の賃金は出向先の所定労働時間全体に対するものであると主張した。
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【 | 会社側が労働者に対して転籍についての同意を求めなかった例】
A社との雇用契約で就労していたところ、突然B社からの給与通知書に署名押印を強要され、その後、何の説明もなくA社よりA社本部勤務の辞令が送付された。さらに、A社本部に出勤したところ、C社本店の商品補充業務を命じられた(A、B、C社はすべて関連会社)。
労働者は、自分の就業場所や職務内容についていずれが正しいのか判断できない状況であり、会社が労働者を自己都合退職に追い込んでいるものと思わざるを得ず、業務を継続する気持ちにはなれないとして、精神的・経済的な損害に対する補償を求めたもの。
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【 | 転籍に同意するための条件を覆されたことが問題となった例】
会社の業績不振を理由に労働者が転籍の打診を受け、転籍元での早期退職優遇制度の適用を条件に同意したが、その後、早期退職優遇制度の適用ができないとして転籍元にとどまるよう話が一転した。このため、労働者は、会社への信頼を失い退職に至ったとして、当初の条件どおり早期退職優遇制度の適用による退職金の支払いを求めたもの。
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【 | 転籍先での労働条件が問題となった例】
労働者が、会社の収支改善のため、取引先の代理店に転籍を求められ、その際、転籍後も転籍元会社と同様の給与レベルは維持される旨の説明を受けた。労働者は、賃金が維持されることのほか、業務それ自体は現在のものを引き続き行うこと、将来は会社への復帰可能性が残されていたことを考慮して、転籍に同意した。
しかし、実際に労働者が転籍先と打ち合わせを行ったところ、転籍先から提示された賃金は、転籍元会社の半額以下であり、転籍元も交えて話し合ったところ、転籍元と転籍先との間での話し合いは全くできておらず、結局、転籍ではなく退職勧奨であることが判明した。このため、労働者は双方に不信感を持ち、転籍先でも就業することを断ったが、転籍元に対して、事実上の不当解雇であるとして、解雇理由の文書による説明と、精神的・経済的損害に対する補償金を求めた。
会社側は、企業の業績が悪化したため退職勧奨をせざるを得なかったと主張した。 |