○ 出向・転籍について

 1 出向者の送り出し又は受け入れを行なっている企業は全体の27.2%、企業規模1000人以上の企業では88.4%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年))

  ・ 出向への関わり方(単位:%)
図


 2 出向のルールについて、就業規則で定めている企業は47.0%であり、特に文書の規程はないとしている企業は32.2%である。文書で出向のルールを定めている企業においては、出向中の労働条件について定めている企業は35.1%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年))

  ・ 出向のルールの形式(複数回答 単位:%)(出向者を出している企業を対象に集計)
図

  ・ 出向の規程で定められている事項(複数回答 単位:%)(文書で出向ルールを定めている企業を対象に集計)
図


 3 出向期間の長さについては、ケースによりまちまちで一概にいえないとする企業が42.4%である。具体的な期間を定めている企業では、3年程度とする企業が16.7%、1年程度とする企業が16.1%であった。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年))

  ・出向期間の長さ(単位:%)(出向にかかわっている企業を対象に集計)
図


 4 出向者の賃金水準については、出向元の賃金水準とする企業が82.0%である。そのうち、出向元の賃金水準が出向先よりも高い場合の差額について、出向元企業が全額又は一部負担しているのは55.0%となっている。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年))

  ・出向者の賃金水準(単位:%)(出向にかかわっている企業を対象に集計)
図

  ・ 出向元の賃金水準が出向先よりも高い場合の差額負担(単位:%)(出向元の賃金水準で出向を行っている企業を対象に集計)
図


 5 出向をすることとなった従業員に対して事前に意向の打診を行う企業は68.2%である。
 事前に意向の打診をする企業のうち、本人の同意がなければ出向を行なわないとする企業は52.9%、出向条件などでできる配慮は行うが、同意が得られなくとも出向させるとする企業は33.1%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年))

  ・ 本人への事前の意向打診の有無(単位:%)(出向者を出している企業を対象に集計)
図

  ・ 本人の意向の尊重の程度(単位:%)(意向打診をする企業を対象に集計)
図


 6 組合員の出向につき、同意、協議等の何らかの関与を行っている労働組合は70.7%である。(厚生労働省「労働協約等実態調査報告」(平成13年))

  ・ 一般組合員の出向についての労働組合の関与(単位:%)
図


 7 転籍の送り出し又は受入れを行っている企業は全体の11.4%、企業規模1000人以上の企業では59.8%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年))

  ・ 転籍への関わり方(単位:%)
図


 8 転籍者の賃金水準については、転籍先の賃金水準とする企業が60.0%であり、転籍元の賃金水準とする企業が35.3%となっている。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年))

  ・転籍者の賃金水準(単位:%)(転籍にかかわっている企業を対象に集計)
図


 9 転籍をすることとなった従業員に対して事前の意向打診を行う企業は69.4%である。
 転籍者本人に事前に意向の打診をする企業のうち、書面で本人の同意を得る企業は34.4%、口頭で同意を得る企業は50.0%、同意がなくても転籍させる企業は13.2%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年))

  ・本人への事前の意向打診の有無(単位:%)(転籍者を出している企業を対象に集計)
図

  ・ 本人の意向の尊重の程度(単位:%)(意向打診をする企業を対象に集計)
図


 10  転籍者に対して転籍先企業に関する情報提供をしている企業は61.7%、転籍先企業での労働条件等の説明をしている企業は59.1%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年))

  ・転籍者に対する措置(複数回答 単位:%)(転籍者を出している企業を対象に集計)
図


 11  平成16年度における出向に関する民事上の個別労働紛争相談件数は、604件となっている。助言・指導申出受付件数及びあっせん申請受理件数は増加傾向にある。(厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ)

  ・ 出向に関する民事上の個別労働紛争相談件数
図

  ・ 出向に関する助言・指導申出受付件数
図

  ・ 出向に関するあっせん申請受理件数
図
(単位:件)
 (注)いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。


 12  出向・転籍に関する紛争の事例としては、例えば、次のようなものがある。

出向の根拠規定がなかった例】
 関東のA社で勤務していた労働者が、就業規則には出向規定はないにもかかわらず、1週間後から中部地方のB社に出向することを命じられた。労働者がこれを拒否したところ退職を強要され、その後懲戒解雇されたが、労働者は当該解雇を不当であるとして補償金を求めたもの。
 会社側は、労働者がプライベートな理由で拒否したものと考え、業務を優先してほしかったと主張した。

出向中の労働条件が問題となった例】
 入社30年になる管理職の労働者で、約10年前より現出向先に出向しているが、出向先の所定労働時間が出向元の労働時間よりも1日30分多いことから、この時間に対する賃金の支払いを求めたもの。
 賃金を支払っている出向元は、現在の賃金は出向先の所定労働時間全体に対するものであると主張した。

会社側が労働者に対して転籍についての同意を求めなかった例】
 A社との雇用契約で就労していたところ、突然B社からの給与通知書に署名押印を強要され、その後、何の説明もなくA社よりA社本部勤務の辞令が送付された。さらに、A社本部に出勤したところ、C社本店の商品補充業務を命じられた(A、B、C社はすべて関連会社)。
 労働者は、自分の就業場所や職務内容についていずれが正しいのか判断できない状況であり、会社が労働者を自己都合退職に追い込んでいるものと思わざるを得ず、業務を継続する気持ちにはなれないとして、精神的・経済的な損害に対する補償を求めたもの。

転籍に同意するための条件を覆されたことが問題となった例】
 会社の業績不振を理由に労働者が転籍の打診を受け、転籍元での早期退職優遇制度の適用を条件に同意したが、その後、早期退職優遇制度の適用ができないとして転籍元にとどまるよう話が一転した。このため、労働者は、会社への信頼を失い退職に至ったとして、当初の条件どおり早期退職優遇制度の適用による退職金の支払いを求めたもの。

転籍先での労働条件が問題となった例】
 労働者が、会社の収支改善のため、取引先の代理店に転籍を求められ、その際、転籍後も転籍元会社と同様の給与レベルは維持される旨の説明を受けた。労働者は、賃金が維持されることのほか、業務それ自体は現在のものを引き続き行うこと、将来は会社への復帰可能性が残されていたことを考慮して、転籍に同意した。
 しかし、実際に労働者が転籍先と打ち合わせを行ったところ、転籍先から提示された賃金は、転籍元会社の半額以下であり、転籍元も交えて話し合ったところ、転籍元と転籍先との間での話し合いは全くできておらず、結局、転籍ではなく退職勧奨であることが判明した。このため、労働者は双方に不信感を持ち、転籍先でも就業することを断ったが、転籍元に対して、事実上の不当解雇であるとして、解雇理由の文書による説明と、精神的・経済的損害に対する補償金を求めた。
 会社側は、企業の業績が悪化したため退職勧奨をせざるを得なかったと主張した。


トップへ