労災保険率の設定に関する基本方針

平成17年3月25日制定

 労災保険率は、将来にわたる労災保険の事業に係る財政の均衡を保つことができるように設定することとされ、おおむね3年ごとに公労使三者から構成される審議会での審議を経た上で改定を行っている。
 平成16年3月19日に「規制改革・民間開放推進3か年計画」が閣議決定され、その中で「事業主の労働災害防止へのインセンティブをより高めるとの観点も踏まえ、業種別の保険料率の設定について、業種ごとに異なる災害リスクも踏まえ、専門的な見地から検討し、早急に結論を得る。」とされたところであり、これを受けて、厚生労働省においては学識経験者による労災保険率の設定について総合的な検討を行った。
 今般、その検討結果を踏まえ、労災保険率の設定に関する基本方針を定め、今後、この基本方針に基づき、労災保険率の設定を行うこととし、これによって、労災保険率の設定手続の透明化を図ることとする。

 業種別の設定
 労災保険率は、業種別に設定する。
 労災保険の業種区分は、労働災害防止インセンティブを有効に機能させるという観点から、作業態様や災害の種類の類似性のある業種グループ等に着目して、当該グループごとの災害率を勘案して分類することとする。
 その際には、費用負担の連帯性の下に労働災害防止活動を効果的に浸透させていくことのできる業界団体等の組織状況等について斟酌しつつ、保険技術上の観点から、保険集団としての規模及び日本標準産業分類に基づく分類等をも勘案する。

 改定の頻度
 労災保険率は、原則として3年ごとに改定する。

 算定
 労災保険率は、次に掲げる方式により算定する。

(1) 算定の方法
 算定の基礎
 算定の基礎は、過去3年間の保険給付実績等に基づいて算定する料率設定期間における保険給付費等に要する費用の予想額とする。

 業種別の料率に係る基本的な算定方式
 業務災害分の料率については、短期給付分、長期給付分に分けて、各々、次の方式により算定する。
(イ) 短期給付分(療養補償給付、休業補償給付等)
 短期給付分については、3年間の収支が均衡する方式(「純賦課方式」)により算定する。
(ロ) 長期給付分(年金たる保険給付等)
 長期給付分については、災害発生時点の事業主集団から、将来給付分も含め年金給付等に要する費用を全額徴収する方式(「充足賦課方式」)により算定する。

 全業種一律賦課方式
 給付等に要する費用のうち、以下に掲げる部分については、全業種一律賦課により算定する。
(イ) 業務災害分
a 短期給付のうち、災害発生より3年を経ている給付分
b 長期給付のうち、災害発生から7年を超えて支給開始される給付分
c 過去債務分(既裁定年金受給者に係る将来給付費用の不足額)
(ロ) 非業務災害分等
 非業務災害分(通勤災害分及び二次健康診断等給付分)、労働福祉事業及び事務の執行に要する費用分

(2) 激変緩和措置等
 算定された数値が増加した場合に、これに対応して労災保険率が一挙に引き上がる業種の労災保険率については、必要に応じて一定の激変緩和措置を講ずる。
 さらに、産業構造の変化に伴って事業場数、労働者数の激減が生じたため、保険の収支状況が著しく悪化している業種の労災保険率については、必要に応じて一定の上限を設ける。
 これらの具体的な措置については、料率改定時において、過去3年間の数理計算も踏まえて設定する。
 なお、激変緩和措置等を講ずることにより財政的な影響が出る場合には、その必要な所要額については、全業種一律賦課とする。

 労災保険率改定の手続等
 労災保険率は、労災保険率の改定に係る基礎資料を公開するとともに、これに基づく審議会での検討を経て決定する。

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