05/11/30 今後の労働時間制度に関する研究会 第13回議事録          第13回 今後の労働時間制度に関する研究会                     日時 平成17年11月30日(水)                        10:00〜                     場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○座長(諏訪) 定刻より少し早いですが、ほぼお揃いですから、第13回の今後の労働時 間制度に関する研究会を開催させていただきます。お忙しい中をご参集いただきまして大 変ありがとうございます。本日の出欠ですが、今田委員からご欠席とのご連絡、また山川 委員から少し遅れていらっしゃるというご連絡をいただいております。  本日は、「各論点ごとの考え方のたたき台(案)」を基礎にいたしまして、これまでご議 論をしていただきました論点全体を、改めて一渡りご検討をいただきたいと考えておりま す。報告書の取りまとめに向けまして、是非、積極的なご発言のほどをお願いしたいと思 っております。最初に事務局から、前回の研究会における皆さまからのご意見や、私の考 えなどに沿いまして、「たたき台」の修正をしていただきました。そこで、その説明を最初 にお願いしたいと思います。 ○安藤監察官 今までの研究会及び座長とご相談いたしながら、資料2の「各論点ごとの 考え方のたたき台」を修正しておりますので、修正点を中心にご説明申し上げます。  資料2の7頁、労働時間規制の適用を除外する制度の在り方として、新たな適用除外制 度についての対象となる業務及び労働者のところの(1)の対象となる業務及び労働者に ついてのところで、「自律的な働き方」の基準として4つの基準を挙げさせていただいてお りますが、A)の最後の所に「業務の優先処理順位の決定権を有するものであること」と いったことを追加させていただいています。8頁の上の方に、この4つの基準のうち、B) の労働時間と遮断された賃金で一定年収以上という基準、また、C)の休暇が自由に取得 できる者といった基準が、今後考える上で重要ではないかといったことを追加しておりま す。併せて、現行の裁量労働制の対象労働者から適用除外すべき者を絞っていく方法と、 白地から適用除外すべき者を検討していく方法が考えられるのではないかといった論点を 2点ほどこの4つの基準について追加しております。  この4つの基準のうちの@)一定以上の職位・職階である者のところにつきましては、 4番目のポツの所で、会社全体でないとしても、事業・部門に関する事項(例えば、人事 など)について意思決定する者も含まれるのではないかといった論点を追加するとともに、 管理監督者とは、当初は部下を持つ者であったが、スタッフ職という職位がみられるよう になって、スタッフ職の権限、処遇等を総合勘案して、労働基準法上の管理監督者として 取り扱ってきた。そういったスタッフ職も新たな適用除外の対象者としても良いのではな いかといった論点を追加しております。  A)の基準の業務の遂行手段及び労働時間の配分の決定について、使用者による具体的 な指示が困難な業務に従事する者であって、業務遂行の結果に責任を持ち、業務の優先処 理の決定権を有するものであるといった要件については、1ポツ目の「また書き」の所で、 具体的な対象業務の決定は、労使自治にゆだねることもあり得るのではないかといった論 点を提示していますので、2ポツ目の所で、そうした場合、対象とならない業務について は、事前に明示しておくことも考えられるのではないかといった論点を追加しております。  9頁、B)労働時間と遮断された賃金制度が適用され、一定水準以上の賃金が保障され ているという基準については、7つ目のポツで、現行の企画業務型裁量制におきましても、 対象労働者の判断基準として一定の職務経験を有することとされています。こういったこ とから年収要件に加え、勤続年数や職務経験年数といったことも考慮すべきではないかと いった問題点を追加しております。4つの基準については以上です。  具体的にこの新適用除外を導入するに当たっての手続については、10頁の3、必要とな る手続のところで触れています。今回、各論点の所で詳細事項については、労使自治の決 定にゆだねるべきではないかといったことが、問題提起されていますので、(1)で労使協 議についてといった論点を追加しています。これは労使自治にある一定の事項を決定する ことがあれば、労使協議(例えば、労働組合や労使委員会)を活用することが適当ではな いかといったことを追加させていただいた上で、まず1ポツ目で、仮に必要とするのであ れば、労使協議の場としては、組合や労使委員会が考えられるのではないかといった問題 点を提起させていただいた上で、2ポツ目の所では、具体的に労使協議の場ではどういっ た事項を協議するのか。例えば、労使協議によって法律が定める要件の一部を外すという ことも考えられるのではないかといった問題点を追加しております。  10頁の最後辺りから、新しい適用除外の法的効果についてのご議論をさせていただいて います。11頁、労働時間に関する規制をどこまで適用除外すべきかといった論点について、 2点ほど問題提起を追加しております。2ポツ目の所で、深夜業に関する規定を適用除外 することの是非については、休日・休暇の取得や健康診断等の健康確保措置が講じられて いることを前提に検討すべきではないかといった問題提起を追加した上で、ポツの4番目 の所では、具体的に労働時間に関する規定のうち、どういった規定を適用除外するのかに ついては、各企業の勤務態様等に応じて、労使協議によって具体的にどの規定を適用除外 するのかを決定することもあり得るのではないかといった問題提起をさせていただいてい ます。  13頁、ここは現行の労働時間規制の在り方、特に管理監督者について論じているところ です。1番目の○、現在、深夜業に関する規定が適用されていますが、それを見直すべき ではないかという論点については、2ポツ目を追加しています。仮に深夜業を適用除外す る場合には、健康確保措置を義務付けることが必要ではないかといった論点を追加した上 で、最後の○、現行の管理監督者については、健康・福祉確保措置について規定が置かれ ていないが、健康・福祉確保措置を義務付けるべきではないかといったところについては、 2ポツ目で具体策として、深夜業に関する規定を適用除外するに当たっては、健康診断を 受診していることを要件とすべきではないかといった問題提起を追加しております。  14頁、ここは年次有給休暇、所定外労働の削減等について論じているところですが、1 年次有給休暇のうち、(1)計画年休のところの論点ですが、この計画年休がうまく活用さ れていないのは、協定で1年間の休日取得日をあらかじめ具体的に決めることを求めるな ど、弾力的な運用ができないことに原因があるのではないかといった問題提起をさせてい ただいた上で、現行労働基準法の付則で規定されていますが、年次有給休暇の取得に対し ての不利益取扱いの趣旨についても整理すべきではないのかといった論点を追加させてい ただいております。  (2)年次有給休暇の時間単位での取得についての論点ですが、ここについては15頁の 3番目のポツの所で、年休は、本来の目的である休養のための連続休暇以外に、予期でき ない事案(例えば、病気など)の緊急対応的で休むという2つの目的で、今、実際に使わ れているのではないかといった提起を追加した上で、ポツの6番目で、企業において、緊 急対応用の休暇等(例えば、病気休暇など)が用意されていれば、本来の趣旨に合致した 形での年休取得が促進されるのではないかといった問題点を追加しています。  7番目で、民間では、フレックスタイム制度が労働基準法上用意されているわけですが、 そういった制度がありながら、労働時間の弾力化の代替として、時間単位の年休を認めて しまうと、本来の連続休暇の趣旨が没却されるのではないか。仮に認めるとしても、例外 的に認める程度にしておくことが必要ではないかといった論点を追加しています。9番目 の最後のポツの所では、裁量労働制適用労働者については、労働日単位の取得を原則とす べきではないかといった問題提起を加えております。  (3)新たな適用除外制度を導入するのであれば、年休の完全取得ができる環境整備が 必要ではないかといった論点については、4番目の最後のポツを追加しています。このポ ツでは、適用除外されている労働者が一定割合以上の年休を実際に取得できなかった場合、 翌年度以降は適用除外の対象とすることを認めないとしてはどうかといった論点を追加し ています。  (4)その他の項目においては、退職時において、未消化年休が取得できないまま残っ てしまうケースが多くみられることから、何らかの方策を検討すべきではないかといった 論点を追加しております。  2所定外労働の削減の所では、16頁の(2)法定労働時間内であっても、所定労働時間 を超えた場合は、割増賃金の支払いを義務付けるといった措置も考えられるのではないか といった論点については、ポツの3番目の所で、パートタイム、嘱託といった方々が時間 的な制約を避ける、あるいは残業がないことを希望して働いているということも考慮すべ きではないかといった論点を追加した上で、5番目のポツの所では、所定外割増の取扱い については、基本的に労使で話し合って自主的に決めるべきではないかといった論点を追 加しています。  3事業外みなしのところについては、具体的な方策として、事業場内労働が総労働時間 の一定割合以下である場合においては、事業場内労働に係る時間を含めて、みなし労働時 間を設定することを認めてはどうかといったことを書いております。事務局からの資料の 説明は以上です。 ○座長 それでは皆さまからご意見をいただきたいと思います。今日は特に前の方から順 番にこの点はというよりは、皆さまが重要だと思うことからご自由にご意見をいただけれ ばと思っております。どこからでも結構ですからご指摘ください。 ○西川様 質問ですが、労働時間規制の適用除外の所で、健康確保の措置を義務付けてい くという所があるのですが、確認なのですが、これは現在どのようにして行われているの か。健康確保の措置というのが、ますます重要になってくると思うのです。13頁の一番下 の所に、「健康診断を受診していることを要件とすべき」という文章があるのですが、ただ 単に、健康診断を受診して、その受診した結果の何か判断基準みたいなものがあるのかど うかというところなのです。 ○安藤監察官 まず現行制度のお尋ねということですが、現行制度におきましてはご承知 のとおり、企画業務型の裁量労働制を規定しています労働基準法38条の4におきまして、 労使委員会で決議する事項の1つとして、労働者の健康及び福祉を確保するための措置、 当該決議を定めるところによって、使用者が講ずることについて、労使委員会で決めなさ いというような形になっていまして、具体的にそこについては法律上で、監督署に定期的 に実施状況を報告していただいています。その具体的な健康・福祉確保の内容として、こ れとこれをやりなさいよということについては、ご承知のとおり指針で定まっている形に なっています。まず企画業務型はそういう形になっているということです。  専門業務型については、38条の3で、やはり労使協定で定める事項として、健康・福祉 確保措置を具体的に定めなさいという形で書いています。その具体的な内容は、企画業務 型の方は指針という形でこういったことも考えられるのではないか、留意点という形で具 体的に書いているのです。38条の3の専門型については、具体的なことを指針で規定して いませんので、これについては通知で企画業務型の指針で書いてあるような内容と同様の ものを講じてくださいという形でご指導をしています。それが今、実際に健康・福祉確保 措置で、裁量労働制の中で行われていることです。  それ以外に、資料の中でも触れさせていただきましたが、現行の適用除外、例えば管理 監督者だとか、監視又は断続的労働に従事する者たちに対しての健康・福祉確保措置につ いては、現在、特段に規定していないのが現状です。  2つ目のお尋ねの健康診断の結果というお話ですが、これはご承知のとおり、健康診断 の結果、例えば医師の判断で休みなさいよと出たならば、使用者の義務としてその労働者 を休ませなさいということは、法律での規定は現在されていないというところです。実際 のところで健康・福祉確保措置がどのように行われているのかについては、ヒアリング等 でちょっとご議論があったと思いますので省略させていただきます。 ○小林調査官 追加で説明しますと、健康・福祉確保措置の決議の中に、実施することに ついては明示的に書くことになっていまして、6カ月ごとに措置の実施状況についての報 告をさせていまして、その中に具体的に在社時間等、会社にいた時間に応じて例えば健康 診断を受けさせるとか、こういった場合については産業医のアドバイスを受けるとかいう 措置をやっています。そういう意味で実際上の在社時間が一定を超えた場合については、 健康確保措置の一環としてそういう措置を講じていますが、その結果、その労働者がどう なったかについては把握していませんが、一定の在社時間等の時間に応じた適切な措置を やっている状況は、ある程度把握しています。 ○安藤監察官 具体的に指針では、その時間について把握したら代償休日や特別な休日を 付与することだとか、あと、把握した対象労働者の勤務状況や健康状態に配慮して、必要 な場合には適切な部署に配置転換することだといったことを、例示として指針の中では挙 げています。 ○西川様 ありがとうございました。労働時間が自由に、ある程度裁量のある人にとって は決められるという働き方になってくると、本人自身、歯止めがかからなくなって、働き 過ぎてしまうという人も出てくると思うのです。その場合に健康確保措置が重要な位置付 けになってくると思うのですが、それを今後どういうふうにして、その辺でセーフテイネ ットといいますか、設けていくかというところも重要になってくるのではないかと思いま して、質問させていただきました。 ○座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞご自由にご発言ください。 ○水町様 7頁の4つの基準という所でいくつかあります。1つはC)の休暇が自由に取 得できる者であることというのは、休暇が取得できる可能性を要件にして、実際に休暇を 取るとか、実際に休暇を取るような合意をしている、同意をしているということまでは、 ここでは要件にしないという趣旨で、たたき台(案)としては、実際に取ったかどうかは 後ほど出てくる深夜業の規制を外すかどうかの要件にするという設計なのですよね。 ○小林調査官 15頁に書いてありますが、一定割合以上の年休を実際に取得できなかった 場合について、次の年に適用除外するかどうかについて、それを要件化するかどうかご検 討をいただきたいというものです。 ○水町様 事後的にチェックをして、次の年から外すということなのですよね。 ○小林調査官 約束したが、実績や割合が低い場合に、要件として翌年度の適用をどうす るかという点です。 ○水町様 例えば1年度目は約束をしていたけれども、実際、休暇は全然取っていないと いう場合に、でもその年度は適用除外の効果をもう認めてしまうという設計にはなってい るわけですよね。果たしてそれでいいのか。年休の取得、実際に休みを取ったかどうかの チェックがどれぐらい実効的にできるかという具体的なイメージというか、実際上休みを 取ったかどうかは全然分からずに、会社で仕事をしても家で仕事をしてもいいので、フラ ンスで適用除外のときに、休暇を普通の人よりも多く取るということが法律上書かれてい て、実際上チェックができるかというと、みんな家でやったり、どこででもパソコンを使 ってできるので、実際に休暇を取られているかどうかの実効性はあまりないということな のです。それとの関係で、非常に重要な休暇が自由に取れるということとか、休暇を実際 に取るということが重要な要件となっているとすれば、それをどういうふうに実効的にチ ェックしていくかというのを少し具体的にイメージしておかないと。この要件が非常に重 要であるというのが、次の8頁の2ポツ目に「B)とC)が今後考える上で重要なのでは ないか」というふうに書かれていますが、特に@)とA)があまり重要でなくなって、C) も実際、実効性がないとなると、賃金を仕事と切り離しておけばもう何でもいいのではな いかというふうになりかねない可能性があります。@)とA)の要件もどうチェックして いくかというのが重要だと思いますが、差し当たりB)とC)の関係で、C)のところの 制度設計の仕方が、果たしてこれでいいのかなと。こういう制度設計をするのであれば、 もう少し実効性の取れるような制度設計にしないと、ちょっと危ないのではないかなとい う気が私はします。 ○大西監督課長 今の先生のご指摘というのは、C)の所の実効性と、このたたき台の(案) ですと、今はB)、C)が重要と書いていますが、C)の所の実効性がうまく担保できない のであれば、もう少し@)とA)も含めて検討をした方がいいのではないかというような ご指摘と理解してよろしいですか。 ○水町様 はい。実際に同意を要件とするという場合に、日にちまでは書き込むことはで きないにしても、何日休暇を取りますということも同意の中にあらかじめ入れておいて、 それ自体も要件に入れておくことができれば、具体的な定め方は一律には決められないの で、労使委員会の決定や労働組合との話合いの中でどうするかというのは、少し余地があ ると思います。しかし、休暇を実際に取るということも要件にしておいた方が、実効性は 少し高まるような気がするのです。実際に取ることができるという可能性だけだと、ちょ っと怖い気がします。 ○山川様 私も今の点、同じような意見です。前回もそういうお話があったと思いますが、 現在時季変更権の問題はあるとはいえ、時季指定権が労働者にあって、基本的に自由に取 れるのが原則であるという建て前でありながら、なかなか消化が進まないで、それをどう しようかというのが後で検討されている。そこに、自由に取得できるということで良いと すると、現在の年休の消化率の低さが同じように出てきて、かといって、時季変更権を制 限するというのが、適用除外の対象者にどのぐらい現実的なのかという問題もありそうな 気がします。いろいろやり方はあると思いますが、これは一種の個別的計画年休のような もので、アレンジをしていく方がいいのかなと思います。  7頁の@)〜C)のことで、たぶん考え方としては3つくらいの要件の仕組み方がある。 1つは個別レベルの問題、もう1つが集団レベルの問題、3つ目が客観的な要件設定をす るという3つのレベルでの問題の捉え方があって、それの組み合わせかなという感じがし ます。個別レベルというのは、同意ということが1つですが、この同意でも、適用除外を しますけれどもいいですかというような同意より、前回も言いましたが、もう少し契約レ ベルに徹した方が適用除外者の地位には合致しているのではなかろうかと思います。  先ほど水町さんの言われた約束というのも、単なる違法性阻却みたいな意味での同意で はなくて、契約として権利義務の世界にもっていくという要素がいろいろあるのではない かということです。集団的レベルですと、またいろいろなやり方があると思いますが、現 在のような協定とか同意、あるいは決議というようなやり方もあります。苦情処理は論点 がちょっと別になってしまいますが、苦情処理があまりうまくいっていないというのはこ の前に言いましたが、個別の問題として取り上げるだけだと、なかなか苦情をもっていけ ないので、もっと制度自体の問題を審議するような形にして、これは法律で書けないかも しれませんが、運用上、例えば仕事の割り振りの仕方に問題があるのではないかというこ とを議論するとか、そんな感じにすれば多少は違うかなというような気もします。このよ うに、個別の同意ないし契約のレベルと、集団的な決議あるいは調査審議のレベルと、そ れから客観的な要件(例えば収入)、その3つをうまく組み合わせるという方向も考えられ るのかなと思います。以上です。 ○座長 非常に重要なご指摘であろうと思います。今要件の問題が出ていますから、少し これに関して、更にほかの委員の皆さまからもご指摘があればお願いしたいと思います。 ○守島様 今の点に関してなのですが、私は法律的によく分からない部分があるのですが、 議論を伺っていると、2つの議論がたぶん混在している。1つは10日間でも20日間でも いいのですが、必ず休暇を取らせるということを明記したいという部分と、それからもう 1つは本人がここで「自由に」とか「自分の判断で」と書いてありますが、自由に取れる ことを制限しないという2つがあるように、ここに書いてある文章を読ませていただくと 何となく思うのです。  たぶん今回の適用除外の中では、確かに大きな流れとして年休を確実に取っていくこと は重要だと思うのですが、適用除外の中でより重要なのは、どれだけ自由に取れるか、つ まり取ることが制限されないかがより重要なのかなというふうに考えます。それをどう実 効的にやっていくかというところになると、私はノーアイディアなのですが、そこの部分 が何かもう少し強調されてもいいように思います。手を挙げて「今日、休みたい」と言っ たときに、どこまでそれが経営側の意図によって制限されないかというところです。 ○佐藤様 今のことに関連して、特にA)遂行の手段及び労働時間の配分の決定について、 使用者の指示が困難だということの、ここで言う時間配分の決定と、それから休暇が自由 に取得できるということとの関連なのです。私は法律の専門家ではないから教えてもらい たいのですが、A)に書いてある手段は、仕事をどういう手順でやるかということですね。 時間配分の決定というのは、通常は1日当たりで例えば何時に来て、どれだけの仕事を片 付けるか、午前に片付けて午後は会議だとか、それを逆にするとかという時間配分のやり 繰りを行うことができるということが1つ、日々単位的なイメージであるのですが、実際 には仕事はいろいろスパンが1週単位とか月単位とかであるわけで、その中での問題にな ってくるとこの休暇の問題に関わってくるような気がするのです。  そこではどういうふうに関連づけて、いわゆる時間スパンというのはどういうふうに考 えたらいいのか。実態からいうとプロジェクトなどは3カ月とか半年単位ぐらいで回して いきますから、その中でどれぐらいの配分でやっていったらいいのかということは、実際 には問題になってくると思うので、日々単位はちょっと狭い話で、もう少し延ばしていく とこの休暇の問題とも関係するかなと思うのです。その辺り関連して確認したいというこ とです。 ○小林調査官 今現在の裁量制の考え方から言いますと、労働時間の配分については、労 働日とされた日において、どのぐらい仕事をするかということについては、労働者の裁量 に任されているということで、労働日を前提としたその中での自由ということになってい ます。そういう意味で労働日を自由に、その日を休日にするとかというところまで、自由 になるということについては、現行制度ではないものです。そういう意味で、現在の書き 方とするならば、労働日の中の自由な時間配分というイメージで書かせていただいて、あ とは休暇を取るとかいうのは、外枠としての労働日を休暇として、その日を要しない日と して自由に選べるというのは、外の休暇取得の自由ということで分けております。 ○荒木様 7頁で書いてある@)〜C)と、それに対するコメントですが、これは当初出 たものがそのまま維持されているということで、いろいろ両立しない記述もあって、論理 一貫したものに修正を施したものではないと私は理解しているのですが、それでよろしい でしょうか。というのは、今ご指摘であった7頁の(1)の(1)のA)遂行の手段及び労働 時間の配分の決定について、使用者による具体的な指示が困難な業務に従事する者、これ は要するに裁量労働制の発想で書かれていて、それはおかしいのではないかという話を既 にしてきたかと思います。要するに適用除外とするものは裁量的な労働だからということ だけで決まってくるのではないのではないか。要保護性の観点から適用除外とするという こともあるのではないかという議論をしたように思います。  実際、具体的にターゲットになるのは、現在41条2号で、管理職扱いされているスタッ フ管理職のようなものをこのままでいいのか、きちんと位置付けを直すべきではないかと いう論点。それから現在企画業務型裁量労働として位置付けられているもの。これは管理 監督者の一歩手前という者をどう位置付けるかというので、前の法改正においては裁量労 働制の中に位置付けられたのですが、条文の書き方も38条の4の企画業務型は、38条3 の専門業務型とは違いまして、要するに具体的な業務の指示が、業務の性質から困難であ るということではなくて、指示は可能なのだけれども具体的な指示をしないこととする者 を裁量労働の枠の内で処理した。これをどうするかがここでの問題なので、業務の性質上、 指示が困難な業務という発想から位置付けるべきではないのではないかという気がしてい ます。そういう議論は後のコメントでも拾ってありますので、この@)〜C)というのは、 それをまだ修正していないという理解でよろしいのでしょうか。 ○安藤監察官 今の位置付けとしましては、論点として出していただいたものに、各委員 からご意見を網羅的に追加している。その議論の中で報告書の取りまとめに向けて、これ とこれはおかしいのではないかという形で、研究会で収束できれば、その方向でスケルト ンを用意させていただきたいという趣旨です。  それに関連して、事務方としましては8頁で、以前は確か西川先生だったと思いますが、 新しい適用除外制度というのが現行の裁量労働制やほかの制度との関係で、どのように位 置付けられるのだといったご指摘があったと思うのです。それが見える記述として、今回 8頁の3ポツ目のところで、今の荒木先生のお話にも通ずるものがあるとは思いますが、 ほかの制度との関係でこの制度をどのように位置付けていくのかということについても、 先生方の方でご見識、お考えがあれば併せてご披露いただければと考えております。 ○水町様 2ポツ目3ポツ目の所が、具体的にどういう意図で書かれたのかを、もう少し 説明していただけますか。 ○安藤監察官 ここの記述につきましては、裁量労働制の現行の対象労働者というところ から、新しい適用除外者の人たちを、今の労働時間の適用対象者のうち、どこから移行さ せていくのかといったことの観点から、現行の裁量労働制の対象労働者から適用除外すべ き者、ほかの制度にもそれが内在しているのかもしれませんが、そういったことから絞っ ていく方法で新しい制度設計を考えていくという考え方が1つです。  もう1つはそれを置いておいて、新しい適用除外制度の骨格を固めた上で、その結果、 ほかの制度からそこの制度に入っていくという考え方もあるのではないかという2通りの、 要はここは考え方のアプローチということで、そういった2つの考え方が今回の新しい適 用除外制度の位置付けを考えていく上であるのではないかという意味合いで、ちょっと抽 象的ではあるのですが書かせていただきました。 ○水町様 考え方の筋道としては、2つの選択肢のうち、後者というのはこれまでの裁量 労働制を全く考えないで、これまでの制度との関係を考えずに新しい適用除外というもの を考えていく。そういう意味だとすると、荒木先生のお話の4つの基準の特にA)の基準 の、これまでの企画業務型裁量制との関わり合いが、むしろ重畳的なのではないかという 問題からすると、A)の要件を相対的に薄めていって外して、そしてまた別のものとして 作るというので、そういう道もあるけれども、1つ目の選択肢、裁量労働制から絞り出し ていくというのは、今の企画業務型の中で、もしかしたら裁量労働制ではなくて適用除外 に合うような形のものがあるとすれば、それは今の制度と制度的に重なるかもしれないけ れども、そういう意味ではA)の要件が今の裁量労働制と重なるような形で入ってくるか もしれないけれども、そういう形でアプローチするのかということなのですか。 ○安藤監察官 あともう1つ、その重なった場合どうするのかという問題も当然生じてく ると思いますので、その辺についても先生方のご議論も、ご見識もお借りできればという 心づもりでございます。 ○荒木様 たぶんこれは私の発言を書いていただいたのだと思います。要するに実労働時 間制を、時間にとらわれない働き方を認めるためにどう外していくかという発想からする と、現在、専門業務型とか、企画業務型を立法したときに大議論をやったように、非常に 詳細な要件を課して、そしてこういう場合にだけ認めようというふうになっていく。  それに対して現在の41条は適用除外として、天候に左右されるような農業等、それから 監視又は断続的労働、そしていわゆる管理監督者を定めている。これは労基法を最初に作 ったときからこういう者に対して労働時間規制を適用するのは合理的ではないということ から、適用除外とした訳です。  現在新しい適用除外を考えるのであれば、もともとこういう人たちに労働時間規制を適 用するのは合理的かどうかという発想から、まずどういう適用除外制度を作るかというア プローチの仕方と、現在、実労働時間制を適用されないものとして裁量労働制があるので、 その延長線上で更にもっと絞って、こういう要件があればもっと緩くしていい、というア プローチの仕方の両方があり得る。裁量労働の議論と適用除外の議論が、どうも一緒に議 論されている感じがありましたので、アプローチの仕方としては両方あり得て、場合によ っては重なってくる部分があるので整合性を取るとかいうことはあると思いますが、アプ ローチの仕方としては両方あるのではないかという問題提起をさせていただきました。 ○水町様 B)とC)が重要で、@)とA)はこの意味で相対的に重要ではないという2 ポツ目と関わってきますか。 ○荒木様 私の言いたかったのは、A)の「使用者の具体的な指示が困難な業務に従事す る者」というのは、まさに専門業務型の裁量労働の延長で考えているけれど、その延長で 考えなければいけない必然性はないのではないかという点です。 ○山川様 今の点について、どちらかということでは特にないのですが、しかし、今荒木 先生のおっしゃられた点で言えば、要は新たな適用除外制度というものを作るとするので あれば、その趣旨や性格をどのように考えるかというところに帰着するのではないか。裁 量労働的に考えた場合との違いで、先ほど荒木先生の言われたのは、要保護性というのは、 必ずしも裁量労働の中ではこれまであまり、少なくとも明確には位置付けていなかったも のですから、要保護性というのを加えるとすれば、また新しいアプローチ、つまり従前の 裁量労働とは別に考えていくこともできて、あとは調整の問題だということになるのでは ないか。それをどのように位置付けるかということになると思います。  それと今のB)とC)が重要ではないかということは、ちょっと関連しているような気 もするのです。B)というのは要保護性に関わる要素のように思いますので、もし要保護 性ということを、つまり管理職に準ずるような、あるいは経営者との立場の近さみたいな ものを考えていくとすれば、B)は重視されることにおそらくなるであろう。  C)はちょっと位置付けが違うような気が私はしています、先ほど守島先生のお話にあ ったこととちょっと関連していて、自律性というのが1つ重要な要素としてあるわけです が、自律性という位置付けで考えるか、あるいは自律性があったとしても自ら休暇を取ら ないような人をどうするのかという問題があって、これはむしろ健康確保措置というか、 いわば後見的な配慮の問題で、その2つがC)には入っているような感じがあります。 ○水町様 今、山川先生がおっしゃったこととも関わるのですが、2つのアプローチのう ち、私自身が個人的に思うのは、制度の趣旨から考えて、今の実態を見ながら適用除外を 新しいものとして考えるべきという意味では、白地から新しい制度設計をするというアプ ローチがおそらく正しいアプローチの仕方だと思います。ただ、現行制度との関係で考え ると、少なくとも今の裁量労働制の中の企画業務型裁量労働制というのは、本来法が想定 したものと実態とがかなり乖離しているようになって、その使い勝手が悪いので利用率も それほど高くない。実態として法の想定したものとうまく回っていないということを前提 に新しい適用除外を考えるときに、むしろ適用除外と全く離れた要件を付けるということ がやや無理がある。むしろ新しい適用除外の制度を考えるときに、その制度の趣旨から考 えて、例えば業務についてどう縛るかというときの要件が出てきて、むしろ白地で考えて いく中で結果として、その業務性の要件というのが今ある企画業務型と似ているかもしれ ないけれども、その場合にはそういう要件を裁量労働制と近いからあえて外して、きれい に理論的に整理するというよりも、その法の趣旨に合ったような形で要件設定をしていく ことが重要である。その場合に今ある企画業務型との整理を、結果としてどうするかとい うのは、また後で出てくる問題だと、私は思います。 ○荒木様 今の水町先生の発言には、私は全く賛成です。要するに専門業務型の裁量労働 と、企画業務型の裁量労働、これをどうも同じものと考えて議論が進んできたような印象 がありましたので、実はそこに大きな制度の目的というか、性格が違うものがあるのでは ないか。おそらくここで新しい適用除外を議論するとすれば、現在41条の2号の中で位置 付けの悪いスタッフ職のようなものが一つターゲットとなる。そして企画業務型として対 処されている者について、これは本当に業務の裁量性ということから括るのが政策的に妥 当なのだろうか。そこを再検討して、場合によっては、企画業務型に入ると思われたもの は実労働時間規制に戻した方がいいことがあるかもしれないし、もっと適用除外に近付け て処理した方が合理的だというものもあるかもしれない。その辺を切り分けていって整理 をすることが必要である。その結果として、現在、企画業務型で考慮されている要素が考 慮されるということは十分あり得ることだと思います。 ○座長 ここは非常に重要な点ですが、これまでにも議論をしてきたことが、今の議論の 中で大体焦点は明らかになっていたと思いますから、この問題、今日ここで結論を出すと いうよりは、また最終報告に向けて詰めていただくということにしたいと思います。これ 以外の論点を更に今日は一渡りご検討いただきたいと思いますので、これまで十分に議論 が尽されていない部分などもあろうかと思いますので、皆さまの更なるご指摘をいただき たいと思います。 ○佐藤 15頁の新たに修正されたという点で、上から3つ目のポツがありますが、ここは 非常に重要なところだと思うのです。年休の取得率が統計的にみてもあまり高くない、半 分ぐらいだとかということになっているのですが、なぜかということの理由をみていくと、 これもいろいろなデータがありますが、多くは同僚に迷惑がかかるとか、ここに書いてあ るとおり、いざという時、病気あるいは自分だけではなくて子どもの病気とかいう突発的 な事態に備えておくために使わないで保険としてプールしておくということとか、あと仕 事が多くて忙しいとかというのが挙がってくるのです。  ここの「二つの目的」の内の緊急対応というのはどうなのでしょうか。いわゆる統計に リライアブルなデータとして見ると、これは労使で各種いろいろな調査をしているのだけ れども、取れない理由とか、あるいは取っている場合の理由とかというのは、どういうこ とになっているか分かりますか。それが1つ、ここは重要なところなのです。  もう1つは年休を取れないというのは、消化率でいうと49%とかになるのですが、実は 個人属性でずいぶん違う可能性があって、男女でみたときにとか、女性の中でもお子さん のいる方とかいう属性をばらしていくと、取っている人はかなり取っているのだけれども、 取れない人は取れないという濃淡があるのではないかと思うのです。その辺り何か参考に なるような情報があれば追加的に教えていただきたいということです。もし、今なければ この次でもいいのです。 ○安藤監察官 今ご指摘をいただいた点も含めて、次回に資料を提出する方向で用意させ ていただければと思います。 ○小林調査官 今手元にありますのは、年休の取得のためらいしかなくて、なぜ取れない かということについては手元にあります。具体的にどういうために取れないか、セーブす る意味での統計については後ほどまた。取得しにくい環境にあるというのが一番大きな問 題なのですが、自分で緊急避難的なものとしてセーブしたいというのと、もともと取りに くくて職場に影響を与えてしまうので取りづらいという意味と2つあると思います。 ○水町様 年休のところで、15頁の時間単位の年休をどうするかで、「例外的に認める程 度にしておく」というのがポツの7つ目に線が引いてある所の真ん中ぐらいですが、これ を今回導入するかどうかは別にして、例外的にする場合にどうするかということだと、実 際働いている人に聞いてみると、事業主が時間単位で取れということを指示しないように と言っても、職場の雰囲気であったり、2時間休んで済むのだったら1日取らずに2時間 にしろというふうな雰囲気とか、無言の圧力とかを感じるようなことが、実際公務員の現 場でもそういうのはないことはないと思います。だからもし自由に取れるということで、 こういうのを広げるとしても、そういう場合には労使のチェックが必要で、労使協定なり できちんと過半数代表なり過半数組合が、うちの職場ではそういうのは大丈夫なのだよと いうことを、集団的にチェックできるような状況でないと、かなり難しいと思います。か つ、日にちとしても例えば5日程度にするというような限定をかけておかないと、かなり 難しいかなという気はします。 ○安藤監察官 今のご趣旨を確認したいのです。集団的な確認というのは、例えば1年に 1回、例えば労使協議の場、労使委員会になるのか、過半数組合との協議になるのかは分 からないのですが、例えばイメージとしては過去1年間遡って、うちの職場では年次有給 休暇がどれぐらい取得されていて、それはきちんと取れているかという形で、事後的なチ ェックをするというイメージなのでしょうか。 ○水町様 いいえ。例えば計画年休と同じように労使協議で、計画年休は何日分こういう ふうにします、個人で時間単位で取れるような部分についてはうちは危ないから認めない という所もあるだろうし、うちはそういう要望が労働者からも強いので、では3日単位で やりましょうとか、法律では上限を5日にしているので、うちは5日やりましょうという ことを、労使協定であらかじめ決めてという限定を付けておくべきなのではないですか。 ○安藤監察官 ご趣旨としては、具体的な要件は法で最低限の基準を決めておいて、3日 間だとかという具体的な取得の在り方みたいなものは労使協議に事前にチェックさせる。 ○水町様 法では例えば上限が5日で労使協定を要件にしているということを、少なくと もかけておかないと、という趣旨です。 ○座長 年休に関して、ほかにいかがですか。 ○山川様 15頁の(4)で、退職時の未消化年休の取扱いですが、現実に退職前にたくさ んの年休の取り残しがある場合にどうするかということでは、それまでに取っていれば一 番よくて、それを推進するというのが第一に考えられます。第二に退職間際になって年休 を取る時に、時季変更権の行使は認めないと、そういう見解が有力であるかと思いますが、 それが果たしてどの程度現実的なのかという問題もあるように思います。つまり引き継ぎ の必要があるけれども、それでも時季変更権の行使は認められないとすると、実際にむし ろ時季指定をしないようになってしまうのではないかという問題があって、そうなると、 もう1つは金銭でといいますか、取り残しがあった場合は年休手当請求ができるようにす る。そのような方法もあり得て、学説では少数説かもしれませんがあったと思いますので、 消化促進という観点からは、現実的に言えば、年休手当を認めるような方向の方が現実的 かなという感じはあります。 ○荒木様 私も同感でして、いわゆる年休の買上げはドイツでも認められていないのです が、しかし、例外的に退職時にある年休権の買上げはドイツでも認めているのです。日本 では、時季変更権は、事業の正常な運営を妨げる場合において、使用者が行使して、他の 時季に年休を与えることができるというものです。したがって、退職時は他の時季に年休 を与えることができないので、時季変更権は行使できないという解釈になっているかと思 います。しかし、それは実態として合理的な処理とは言えないわけです。労働関係が続い ていく場合にはこの解釈でいいのですが、もう労働関係が終了するというのが分かってい るという場合には、別のより合理的な処理を導入することも十分に考えられることで、日 本でもそういう対処を考えていいのではないかという気が私もします。 ○水町様 ドイツでも、という話がありましたが、フランスでも買上げは認められていな いのです。退職をした後の例外的なのですが、ドイツとかフランスではもう既に年休日が 年度の始めに決まっていて、それで途中で辞めたときに消化できなかった。これはカレン ダー通りで分かるのです。その場合に買上げは認められているけれども、日本の場合はあ らかじめ年休をカレンダーで決めるということを実際にやっていないとすれば、そして後 になって退職時には年休が買上げられますよと言ったら、では、働いて最後の1年だけか もしれませんが、年休を取らないで買上げてもらおうというインセンティブに働くとする と、最後の1年だけだとしてもドイツとフランスと同じように議論できるかなと、年休取 得を抑制する方向に働くのではないかと私は思います。 ○座長 ポイントは、一方で年休取得を労働者側の心理とし抑制することになるけれども、 他方でいえば真面目な労働者であればあるほど、その引き継ぎのために働いてしまって、 たくさん残していた、これまでも残していたであろう未消化の年次有給休暇分が何か使用 者へのプレゼントになってしまうというのも、あまりにもおかしいのですね。ですから、 事前的にそういう制度をつくることにより、年休取得が抑制されるのは好ましくないが、 事後的に何らか起きてしまったときには、やはり利害の調整という措置は必要です。この 利害調整措置が今までなかったことがおかしいではないか、というのが山川、荒木両先生 のお考えです。  水町先生のお考えは、それを安易につくると、年休抑制、取得抑制になるということで、 少しその次元が違う問題という感じがします。 ○水町様 制度設計をどうするかですね。あらかじめ法律でそう書いてしまうと、次元が まさに一緒になってしまい、じゃあ買い取ってもらおうというインセンティブが働くので はないかと思います。 ○山川様 別に深く考えていなかったのですが、1つあるのは、日本ではもともと時季指 定権は労働者側にあるから、それは行使できるので時季指定権を行使する。しかし、退職 間際に時季変更権が行使された場合に、年休手当だけは認めるという方向が1つあるかも しれません。もう少し強めに、時季指定権自体の行使が抑制されてしまうことを考えれば、 「年休が残っているのですけれどもどうしましょうか」という一種の催告というか、使い 方について労働者に問い合わせる、そういう形で消化の促進を図るというやり方もあるか もしれません。全く何もせずに、あとになって年休手当を請求しようということよりは促 進が第1であると。そういうやり方を何となく考えられるかなと思います。 ○松井審議官 もしこの買上げを例外的に認めていいということでいくと、「当該企業が計 画年休制度を導入し、完全実施している企業においては」とかいうぐらいに要件をかける。 ちょっと発想は違いますが、そうすれば宣伝効果のときも、悪用はなくなるのではないで しょうか。それは、現実は別として、今言われた理屈に対してです。 ○水町様 例えば、計画年休で決まっていたが、取れなかった場合については買上げとか、 時季指定はしたけれども、変更権を行使されて取れなかった場合については、ある程度の 弊害は克服できるかもしれません。 ○松井審議官 少し工夫があればという感じがします。 ○諏訪座長 というわけで、これはまた工夫をしていただくということで、年休取得の問 題は、本当に頭の痛い問題ですので、他にもご示唆があれば、ご意見をいただきたいと思 います。 ○守島様 少し抽象的な話になってしまうかもしれませんが、年休取得を促進することを、 どういう社会というか、どういう状況の中で今考えているかというと、大きな流れは、賃 金と労働時間の切り離しをたぶん前提としているように思います。要するに成果主義の流 れということです。  成果主義への流れがこれからどんどん起こってくると、それを放っておくと、1つは働 く側とすれば、成果が上がるほど賃金が上がっていくわけですから、そうするとどんどん 労働投入量が大きくなる。その動きと、年休を取得したい、取得させたいという動きをど うマッチさせるかというところが、非常に大きな問題のように思います。  そう考えていくと、荒療治かもしれませんが、例えば年休取得がある一定の割合以下に なった場合、何らかの形のディスインセンティブを企業に提供するような仕組みにでも極 端に言えばする。成果主義の流れというのは、エコノミックインセンティブで起こってい る話ですから、こちら側で何らかのディスインセンティブを導入しない限りは、その2つ の流れを何らかの形でどこかで調和させようというのは、国民の意識が大きく変われば別 かもしれませんが、何となくないように思います。逆に言うと、これをこれだけでとらえ るというのは、多少危険というか、段階的にはしょうがないのかもしれませんが、もう少 し大きなフレームワークの中で考えた方がいいように思います。抽象的な議論になって申 し訳ありません。 ○諏訪座長 非常に重要なご指摘だと思います。企業全体で見て、例えば取得率が30%で ある、40%であるという場合、一定の促進計画を立てさせて、1年経っても促進ができて いなかったとしたならば、何らかのペナルティーが働くとか、企業全体でこれはまずいな という、企業名公表でもいいかもしれません。こういうディスインセンティブみたいなも のがないといけないのではないかというご指摘だと思います。  これは年休制度そのものの問題だけではなく、1つのアイディアだと思います。 ○松井審議官 年休が請求権であるという前提をする限り、今言われたディスインセンテ ィブを一般化することはすごく難しいと思います。その条件で今のアイディアを借用すれ ば、例えば新たに導入する適用除外というシステム導入は、当該企業での年休取得率が何 パーセント以上のとき、先ほど山川先生が言われたように、客観基準みたいにしてやるこ とでバランスのとれたシステムとしなければ導入させないとか。そういうアイディアもあ る気がします。その水準をどうするかはもめるにしても、それを要件にするか、考慮要素 にするかとか、レベルはあるのですが、そうすると少しは言われたものが具体化するよう な気がします。 ○水町様 1つ適用除外のところが、深夜業を外すという話で、今健康確保措置、健康診 断を受けることとなっていますが、C)の基準のところで話した休暇を自由に取るという のを、実際に休暇を取る約束をすることで要件化できるとすれば、適用除外の要件を、深 夜業を外すというところで、健康診断と休暇を取らせるということをそこにも組み込んで いき外すことが、1つ休暇の促進につながるかもしれません。要件化を具体的に制度化す ることは少し難しいかもしれませんが、うまくできるならばそちらにもつなげていけるよ うな気がします。 ○松井審議官 水町先生が最初に言われた、時間と報酬を切り離したときのお休みという 概念は、自宅でも仕事をするような場合をどう考えるか、という点についてもう少し深め ていただけないのか。  例えば、契約レベルになってしまいますが、1年間のうち何日間は、当該企業のための 仕事をしなくていいと定義するわけです。そのための作業や束縛を受けない日というぐら いの概念をしっかりつくって、それが何日というようにしないと、報酬と切り離されてい るし、法律上、労働時間概念とは切り離されてしまうのです。自分たちで勝手に労働時間 を決めてやることができればいいでしょうが、それを抽象化すると、当該企業のために奉 仕する日というか、拘束される自らの活動拘束する日は何日で、逆にされない日は何日と か、こんなことをまず書いておく。  それから先ほど言ったチェックですが、そうやりながら自ら、実際頭の中でついつい仕 事に入ってしまい、そういう作業をしたときには、外部から点検しようがないですよね。 そういう意味では、この場合の休日というのは、あくまで契約ベースで、約束をどうした かであって、それを実行したかどうかはたぶんチェックできないのではないかと思います。 ○水町様 そう思います。 ○松井審議官 それでいいのだろうと思うのですが、本当にどうかということです。 ○水町様 荒木先生がご専門の労働時間概念の問題ですが、私的活動の自由との関係も出 てきて、できることは使用者が指揮命令によって労働をさせるということ、労働義務を消 滅させることしかできないのです。 ○松井審議官 そうです。自らいく場合は。 ○水町様 実際やったことを黙認しているのも労働時間になり得るのですが、黙認も何も しないで勝手に遊びをするか、釣りをするか、本を読むか、ついつい自分の自由時間の中 で仕事をしてしまったと。それは使用者が黙認していなければ、そもそも法的に労働時間 とは言えないことになってしまいます。法的な線引きとしては、そういう義務を明示、黙 示の形で負わせるかどうかというので、その義務を負わせないということまでがぎりぎり できることで、それをあまり明確に書いてしまうと、世間に与える効果というのはいろい ろあるかもしれません。法的に言うと、そういうことにならざるを得ないのではないか。 ○松井審議官 その業務を解除する日というのが何日もあったときに、最後、年休を取得 することができるということと、一定程度させなければならないとするか、一定程度整理 ができると思うのです。  つまり、契約ベースでここまで使用者からの命令をかけない日が何日間ありますよとい うことで足りるとすると、それはできるということでもあるし、ある意味で契約ベースで は最低限これだけという、両方の要請を契約ベースが満たしているのです。実行したかど うかを考え始めると、ややこしくなるのですが、そこで出ている問題を深掘りしなくても いいかなと思います。 ○水町様 少なくとも、事前にすべての休暇日を特定するということは、できる場合もあ るでしょうし、ただ自律的な働き方という場合だと、1年の初めに全部決めておくという のは実際上難しいかもしれません。例えばゴールデンウィークとか、夏休みとか、盆、お 正月、バカンスで、全体で休むのは特定しておいて、その他の日については、何日取ると いうことを契約上約束させておいて、事後的なチェックとしては、本当に何日取ったかを 見る。それは事後チェックで終わらないで、事前に要件としてそういうことを入れておい て、より実効性を高める方法が、取る可能性の一番高いところではないかと思います。 ○松井審議官 そうすると、適用除外をしようとするときに、どの程度ややこしさを感じ るかとか、わずらわしさを感じるかですから、あとはその程度です。全体の日数だけを決 めておいて、どこに割り付けるかは契約別で決めないとか、あるいは最低何日間分だけは、 1年のうちどの時季に取得するとして、あとはロットだけというか、量だけを決めておく とか、こういう調整があれば、義務的なものと、取得できる日的な分け方になっていると いう感じがします。 ○荒木様 現在の年休制度のように、労働者の方に時季指定権があるということから出発 していくと、これをきちんと消化させるのは非常に難しいのです。そこで本当に年休をみ んなが取れるようにするためには、やはり使用者の方で年度当初にきちんと調整して、こ の人は20日間はこの時期、この時期に取るのだというのが判っている必要がある。それが 判らないと、企業としても業務体制は組めませんので、直前に時季指定されても、「そんな、 急に言われても困る」ということで、時季変更権の行使に至ってしまうことになりかねな い。  ですから、第39条を全部変えるか、もしそれがドラスティック過ぎるとすれば、今回も し適用除外の要件として考える場合には、事前にちゃんと年度計画で、この人はこういう ふうに年休を消化するのだという計画を立てさせることもありうる。ただ、適用除外で問 題となっている管理監督的な人たちは、専門業務みたいな人と違って、組織全体との絡み があり、年度当初から何日から何日と決めることは難しいでしょう。しかし、例えば8月 と決めて、具体的な日は、7月の終わりまでに特定するという粗々な決め方でもいいけれ ど、とにかくこの頃に10日取る計画を予め立てさせる、こういう工夫が1つです。  もう1つは、裁量労働的に働いていると、ものすごく仕事が集中して、その間に1日は 急遽休まないともたないとかいうこともある。そうすると、計画的に取る長期の休暇と、 仕事の波があって、しかも自分のやり方もあって、ここでは休まないときついというとき に自由に休めることも重要だと思います。  現在の仕組みは、自由年休は5日確保して、5日を超える部分については計画年休の対 象となしうるのですが、新しい適用除外者については、自由年休分を上積みする。そして 計画年休もきちんと取れる。そういう両方の手当をすることもアイディアとしてあるので はないかと思います。 ○諏訪座長 年休に関して他にいかがですか。細部で議論し始めるとキリがないところは いろいろあるかと思います。例えば、年休が時間単位になると、その1日分の標準労働時 間は何時間なのかという問題も起きてくるのです。契約ベースでいけば所定時間になると 8時間の人ばかりではありませんからどうするかとか。あるいは現実ベースでいけば、10 時間働く日やいろいろありますから、それが恒常化している職場もあり得ます。  というわけで、技術的に考えると、これ以外にもたくさんあるかと思いますが、ここで はそこまで踏み込むわけにはいきませんので、年休に関する議論はこれぐらいにします。 すぐ後ろにある所定外労働の削減も、また頭の痛い問題ですので、もし何らかご指摘があ ればご意見をいただきたいと思います。15頁以下です。 ○佐藤様 所定外もそれ自体が裁量や適用除外とは別にこういう難しい問題としてこれま であって、なかなかなくならないという問題があったわけですが、今回問題になってくる と、裁量に加えて、例えば新たな適用除外を入れたときに、今ある残業への影響がどうな るかということがあると思うのです。そのときに懸念されるのは、1つはそういう時間の 長さをもう少し助長するようなことになってくるので、何らかの措置が必要になってくる のだろう。考えられているのは、健康確保措置というような位置づけになってくると思い ます。  時間の長さでこなし切れない労働量が発生する。それをどう規制するかというのは、時 間の長さの管理をとったときには、仕事量そのものを規制する何かが必要になってくるの が筋です。しかし、それは実際には難しいわけです。それは法律で書くことは極めて困難 である。ということになってくると、1つは常態化しているもので働くことから脱出する 方向というか、移っていくということが、例えばアメリカの場合でもあると聞いています。 そういう時間制度とはフェーズの切れた仕組みの中にバトンタッチしていくようなことが 1つ考えられるのではないか。  もう1つは、それ自体をなくしていくための考え方としては、割増率をもう少し上げて、 今までの2割5分とか、そういうものを上げていくという考え方があるわけです。しかし これもやっかいな問題があって、もちろん全部ではないにしても、調査などをやってみる と、所定外の賃金による住宅ローンへの組込みとか、そういう生活費に組込んでいる部分 もないわけではない。そういう部分について言うと、ますます割増を増やすと助長してし まう可能性もないわけではない。逆に長くなってしまうことも懸念としては考えられる。  割増の引上げということも当然1つの議論の中に上がってくると思いますが、そこを一 律的に上げるという考え方だけでいくと、かなり危険な部分もあるのではないかと思いま す。そういう意味で言うと、今回の修正の中で自主的に決める部分があるのかなというと ころの中で、どう調整していくかになってくるのかなと思います。 ○山川様 必ずしも所定外に限らず、つまり法定外にもかかわることですが、前から代償 休日のようなものを考えてはどうかと思っていました。つまり、今の佐藤先生とのお話と の関係では、割増賃金という形で時間外に対応するのではなく、休日をその分与えるとい う形で対応することも1つの選択肢としてはあり得るのです。それを促進する政策的な手 法をどうするかなど難しいところはあると思いますが、1つの発想としては、もともと健 康確保といった労働時間制度の趣旨からすれば、工夫を考えてもいいのではないかと思い ます。 ○諏訪座長 つまり、総労働時間数を減らすと考えると、残業がある月に非常に高くなっ たような場合には、あるところから先の部分は賃金で補償するのではなく、休日で代償を 与えていくという発想を入れてはどうかということですね。 ○山川様 その場合、それぞれニーズがあるので難しい点もあるのですが、うまく各当事 者というか、事業場レベル、あるいは労使のレベルでニーズに合わせた設計ができるかと 思います。あまり具体的な手法までは思い浮かびませんが。 ○松井審議官 あくまで労使でそういう環境づくりということになるのでしょうか。例え ば、法律で仕掛けてというのはありますか。 ○山川様 もちろん法律でということもありますが、なければ労使でということもあるで しょうし、選択肢としてはいろいろあるように思います。 ○松井審議官 全くの空想で、すぐやるかどうかは別として、仕掛けとして、例えば所定 外労働が今の基準、指針で定めている一定時間以上超えたら、超えた割合に応じて、これ は請求権ではなく、使用者の義務として何日分休暇を上乗せしろとかしなければならない とか、仕掛けはすぐ掛けられますよね。いわゆる残業規制をするということです。36協 定で決めたとしても、36協定で決めた時間外の条件が一定以上になった場合、その合意 は否定しないわけですから、超えたところの何時間を積み上げて、一定時間以上だと何日 分を使用者の方から必ず休暇を与えろとか。 ○山川様 休暇の方に仕組んで、上乗せ休暇というのを位置づける。 ○松井審議官 そちらの方に戻すとか。 ○山川様 なるほど。そういうこともありますね。 ○松井審議官 それは合意できるかどうかは別としても、アイディアとしてはあると。そ ういうものを先取りして、自主的にやっておいたらどうですかと。そうしないとあとから 制度的に仕掛けますよとか。そういう研究報告でやっていくこともあると思います。 ○諏訪座長 ドイツの例もありますから、荒木委員から補足的にご意見をいただけますか。 ○荒木様 ドイツは1938年の法律では、時間外労働に対して割増賃金規制があったのです が、1994年の法改正で割増賃金の規定を削除してしまい、時間外労働は時間で返す、つま り労働解放をすることにより償うことになっているのです。ですから、ドイツの法律上は 割増賃金規定はなくなっています。  代償休日とよく言われますが、休日ではなく、代償的な労働解放時間を付与する。1時 間時間外労働をした場合、1.25時間分自由時間を与える。それが割増賃金の代わりという 発想も制度的にはあり得るところです。それをどう制度に仕組むか、使用者として割増賃 金で払うのか、自由時間で払うのか、これを選択できるとすることもあり得ます。それは 労使で決めた場合にだけ使えるとすることもあり得る。もし労働時間削減のより強い政策 的な要請があるとすれば、解放時間の割増率を1.25より高くするとか、いろいろなことが アイディアとしてはあり得るのではないかと思います。 ○諏訪座長 この辺が日本の現実と、ワークライフバランスの問題、総労働時間数の削減 の観点、この辺でどんな基本哲学を持って臨むかということが1つあります。  その先には、テクニカルにどのように仕組むか。これはバリエーションは無限と言って いいほどありますから、いろいろあり得ると思います。 ○守島様 今の議論は基本的には大賛成というか、理解できるのですが、ただ、労働者と いっても一様ではないだろう。つまり、時間と賃金のチョイスを何らかの形で、今は企業 という話でしたが、働き側にもある程度のチョイスを与えていかないと。例えばある時期、 男性で小さい子どもがいる場合には、時間で返してもらっても、奥さんが家にいればそれ 程必要がないこともあるかもしれません。その辺の選考度合は個人のライフステージや、 状況によって変わってくるので、1つの基本哲学としては、個人にもある程度のチョイス を与えていかないと、全国すべての労働者一律に「時間です」「賃金です」という考え方も これからは合わないように思います。 ○水町様 私も基本的な哲学は賛成です。記憶が定かではないのでいい加減なことを言う かもしれませんが、フランスでは割増賃金と代償休日と並立なのです。それをどちらにす るかというのに、おそらく労使の合意、労働協約が入ってきて、労働協約の中でどちらに するかという選択性がある。ですから、個人の選択というよりも、集団的なチェックがあ って、どっちにするかという選択がなされていたような記憶があります。もし中長期的に そういう制度設計を考えていこうという場合には、そういうことも参考になるかもしれま せん。 ○山川様 その意味では制度としては労使合意でつくって、選択は個人にゆだねるとか、 いろいろな方法があるかもしれません。 ○諏訪座長 それではこれが1つの考え方です。時間で戻すということになれば、時間外 労働の削減というよりは、総労働時間のある一定幅の中に納めるという考え方です。むし ろこちらの方が合理的なのかもしれないというわけです。今後検討していただくことに対 して、それ以外にご意見をさらにいただきたいと思います。 ○守島様 細かい点ですが、場所的には戻ってしまうのですが、7頁の、なぜ労働時間規 制の適用を除外するか、これは書き方の問題で、深い論点ではないのですが。2カ所ばか り、「完全な成果主義」という言葉が出てきます。これは理解できるのだが、何を意味する か議論すると難しいので、皆さん方が議論されている労働時間と賃金が分離された、遮断 されたというイメージの言葉に書き換えた方が、必要性を議論する中ではいいのではない かと思います ○西川様 確認ですが、10頁に「個別の同意」について書いてありますが、これは現在は 企画業務型裁量労働制の対象労働者に関して、同意を得るという文言があるということで すが、この点について前からいろいろと考えていたのですが、この同意を現状ではおそら く、同じ業務に就いていても、同意をした人としない人では、労働時間の適用のされ方が 違うと考えていいかと思いますが、労働時間の性質は、業務の性質に含めてしまうのか、 そうではなくて労働時間というのは、業務とは別個のものと考えるかによって、この辺が 変わってくると思います。  特に企画や管理職の人たちは、専門の人たちとは違い、専門の人たちは専門職を自ら選 択して、それに従事していると考えていいかと思います。企画の人や管理職の人は選択の 自律性というか、その辺は下がってくるかもしれません。その場合、この同意を業務に就 いてからするのか。業務に就く際に、この業務にはこういう労働時間がセットになって付 いてきますよと、それに対して同意するのか。その辺のレベルの考え方が2通りあると思 います。  現状は、業務は同じだが労働時間は違うものが適用されるとなってしまうと、同じ業務 に就いている人から、不公平感というか、そういう問題も生じてくる可能性もあるかと思 います。その同意のレベルをどこに置くかも議論した方がいいのではないかという気がし ますが、いかがですか。 ○小林調査官 法律上の文言としては、第38条の4、決議事項の中の6号に、「第2号に 掲げる労働者の範囲に属する労働者を対象業務に就かせたときは第3号に掲げる時間労働 したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならない」ということです。 当該業務に就いたときに、何時間あなたは働いたこととみなすということについての同意 を取りつけるということが決議事項になっています。 ○西川様 業務とセットになっているということですか。 ○小林調査官 その業務に就いたときに何時間働くとみなされるか。 ○安藤監察官 おそらく今の西川委員のご指摘は、会社に入って具体的に企画のセクショ ンなりに属したときに、会社の方針として、適用除外制度というのが労働時間制度にあっ て、それを我が社としても導入したいと思うと。そのときに、あなたはどれに同意します かというレベルの同意が1つあるということと、そもそも労働契約の入口では、職種や労 働契約のところにあるので、そこでの同意を要件にするのかという2通りに分けて、議論 すべきではないのかというご指摘なのかなと私は理解していますが、よろしいですか。 ○西川様 そうですね。 ○松井審議官 全く違うように聞こえたのですが、適用除外の話を考えておられますよね。 ○西川様 必ずしも適用除外ではなくて、同意というのを考えたときにですね。 ○松井審議官 同意は、一般的には仕事に就く際に、同意をということでかけようという 雰囲気でやっていますよね。私の解釈が間違っていればいいですが、西川委員が言われた のは、例えば管理職というAという仕事をやっていて、ある時から同意したら、同意しな い方は今までどおりの管理職であるし、同意した方だけが適用除外制度の対象になるとな ったときに、かれこれの差について当事者が納得するのかとか。その場で変なことが起こ らないだろうかとか、そういう問題視ではないかと。 ○西川様 そういうことです。 ○松井審議官 よろしいですか。そうすると、企画業務も同じことが起こると思うのです。 今度やろうとする適用除外対象者に、結果として、今管理職として分類されている方は適 用除外になり得るし、企画裁量的な業務で対象になっている方もなり得る、という前提を 入れた上になるのですが、前者の管理職については、あまり問題は起こらないような気が します。既に41条でいわば管理職になったというポジションになれば自動的に適用除外に 入っていますから、この方々が新しい適用除外になるとしても、そこのギャップはないの です。ただ、同意ということをかませることで、あれ、何で今度は同意かと、逆に起こる ような気がするのです。  同意をするときに、適用除外をするときに要件のかませ方ですが、年収とか客観要件が あって、この方が1,000万円とか2,000万円とかすごい高水準になると、それは一定程度 みんなに分かれば、この方の年収はボンと跳ね上がったのだから、差があっても仕方がな いのではないかと転換される。そういう意味では、新しい制度、いわゆる適用除外に入る ときに、客観的な要件をどう仕組むかで合理化できるのではないかと思います。特に企画 業務であれば、ずっと今までやっていましたと。みなし労働時間制でしたと。しかし、適 用除外をするための仕組みが導入されて、当該企業で適用除外とやりましょうとなったと きに、個別同意したときに、実はあの適用除外を入るためには、何千万とか高額をもらう ようになったということもあり同意したのだし、似たような仕事をしているけれども、た ぶん責任が違うのではないかとか。そのように合理化されていくのではないかと思います。 要するに、要件をどうするかということと、同意というものは必ず関係しながら考えられ るのではないかと思います。業務や時間ではなく、むしろ新しい制度をどういう形で要件 付けするかということに大きく依拠しているのではないかと思います。 ○諏訪座長 よろしいですか。 ○西川様 もう少し考えておきます。 ○佐藤様 先ほど守島先生がおっしゃったこととの関係ですが、新たな制度を入れる場合 の導入の理念というか、哲学はまさに重要であり、そこは基本的にはきちんとしなければ ならないということで、そこで理念をどうするか書きぶりが問題になるのですが、完全な 成果主義の導入が困難になっているから、それをやるためではなく、あくまでも自律的な 働き方を促すためにやるのだというところから入っていかないと、現行でいろいろな裁量 があるけれども、疑似的な裁量になっている部分があってまぎれ込んでいるとか、こうい う問題は実際問題としてありますから、そういうことにならないような理念を立てないと、 すっきりとした話にはなっていかないだろうということです。そういう意味で言うと、「自 律的な働き方」という切り口から入っているわけですから、それを素直に書いた方が分か りやすいのではないかと思います。  それとの関連で言うと、(1)の(1)の「自律的な働き方とは」の中身で、「仕事だけでは なくプライベートも充実させることができる働き方」は少し変で、私生活をエンジョイし ながら仕事もやることが自律的ではないわけで、@)〜C)の中身の詳細は詰めていかな ければならないにしても、こういうことであるならば、それに合った書きぶりに変えてい った方がギャップがないのではないかと思います。  もう1つは、西川委員が言われたことは私なりに思ったことは、同意の問題は現行でい ずれにしろ別として考えると、専門と企画と考えたときには、専門の場合にはある種の職 種の目鼻立ちがはっきりしていますし、それ自体としてかなり職業キャリアの展開を想定 できるような話の中に組み込まれている性格が強いと思います。しかし、現行の企画はそ うではなく、例えば総合職として採用されて、配属やキャリア形成がいろいろある中で、 たまたま本社等の重要な指揮等を行う場に配属されて、企画的な仕事にキャリアの中で配 置されてくるという人たちもかなりいるわけです。そのときに本人がそこを望んでいるわ けではないが、本社の企画的な業務に入ってきた。しかしこういう制度になっていますよ となると、やはり同意の要件がそれだけ強まってくるのかなと聞こえたのですが。そうい う意味では、現行の裁量の場合でも、同意の要件の強さがあるのかなと受け止めたのです。 その辺は考えた方がいいのではないかということです。 ○松井審議官 現行企画裁量などは、実際の労務管理のプロセスというか、企業内処遇を 考えると、違和感があるというぐらいの意味ですか。要するに、業務命令をかけて仕事を やっていて、平の従業員だったのを企画型の業務に就けるときに、この人についてだけ同 意がいるというのは、労務管理上変だという意味ですか。そういう捉え方もあるというこ とですか。 ○佐藤様 いろいろなキャリアの目鼻立ちからすると、専門に比べると企画の方が少しボ ンヤリしています。その分、ある種いいのですかという同意が必要になってくる部分があ るのではないか。現行の趣旨がどういうことの中で企画について同意があるのかというの は、法的には詳しくは知りませんが、印象的にはそう受けるのです。 ○松井審議官 なるほど。法的な整理をざっくばらんに申しますと、正規の労働時間を適 用するというのが基準法のノーマルな世界ですが、例外的にみなし制度を適用するときに、 いわば業務型は客観的に明らかですから、制度の趣旨、目的も明白ですから、説明責任を 果たさなくても例外扱いが可能だということで導入したと。  ところが、企画裁量的なものは、どんな仕事にも企画という概念はありますから、世の 中のあらゆる業務に企画という概念がある。その中で、すべての企画について裁量を認め るとなると、労働時間制が崩壊しますから、例外的なものにしなければいけないというの がまず走りだったのです。例外的なものにするために、枠組み、委員会制度を作るとか、 集団的な合意をやり、かつ、それだけでは当該者が納得しないのではないかという恐れを、 そちらの方からアプローチして、当該者も納得づくで正規の時間規制の外にいくことを合 理化しようという意味づけで作ったのです。  ところが利用する方から見ると、「何でここだけ同意か」という、状況がよく分からない のです。そこでそれを中和させるために、個々の同意をしていることを明確に要件化しな いで、同意をとってやっていきますよという、ルール作りをしましたということをチェッ クしようと。こういうふうになっているわけです。労使委員会で同意をとってやることを ルール化しましたよ、というところまでで止めている。すごく中途半端になっていると思 っています。それは両方の要請を満たしながら、当初の例外の世界を作るという目標を完 結しようとした加減があるのです。そう理解しています。 ○守島様 今の点で、私も全部分かっているわけではないのですが、企業側からすると、 たぶん企画型の裁量労働制に乗せていくというのは、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、 ある意味では特別待遇だよねと、もしくはプロモーションだよねと。そういう認識が普通 に時間管理されている人たちよりは、ワンクラスか0.5クラス上という認識でやっている のだと思います。  それをやっているときに、具体的にどのようにそれをやるかという中で、この同意が出 てくるのです。極端な言い方をすると、「あなた昇進させてあげましょう」「今度あなた課 長でしょう」というところと、そんなにメンタリティーは変わらないのではないかと思っ ています。そう考えますと、いろいろな意味でバッファーが付いていますからそんなに面 倒くさくない。大きく違和感を感じているというのは、実際の実務をやる部分ではあるの かもしれませんが、コンセプトとしては、違和感はないように思います。ですから、企画 業務型についての一番の問題は、限定的であるという部分がどちらかというと大変です。 実際に運用していくときにどうかということに比べれば、そんなに大変ではないと。 ○守島様 先ほど佐藤さんが言われたことと多少関連するのですが、確かに自律的な働き 方を求めるということが1つはあるので、それは私は大切なこととして忘れてはいけない と思います。同時に、こういうことを考えていく背景には、先ほどから何度も皆さん方は おっしゃっていますが、労働時間と成果、もしくは労働時間と賃金というものを切り離し た方が、より本人にとっても、社会にとっても、企業にとってもいいタイプの労働者がカ テゴリーとして出てきましたし、また増えてきた。そこの部分を創造的と呼ぶのか、いろ いろ呼び方はあるでしょうが、その認識は必要で、それを多くの企業では実質的にはスタ ッフ専門職、スタッフ管理職、部下なし何とかという、部下なしができる理由は別にもあ るのですが、そういう形での処遇を実質的には行っていて、その人たちが非常に曖昧な位 置づけに、これまでの労働時間という考え方からするときていたよねと。企画にしてみる 人もいるでしょうし、専門にしてみる人もいるでしょうし、いろいろな人がいるのですが、 たぶんそこのカテゴリーがこれからは増えていく、もしくは増えてきたことを認めること が1つの変更の大前提だと思います。  そう考えていくと、その裏に本人の実績というのがあるのですが、企業側の要因として そういう自由な労働時間の管理から、自由な働き方をすることによって、本人に分配する 部分も含めてトータルになることが高まっていく、ということが1つの前提としてあると 思います。「『自律的な働き方』を希望する労働者のニーズに応え」だけでもない。ですか ら、それはどういう書き方をするか難しいのですが。この部分も同時に考えていかないと、 こういう考え方は普及していかないように思います。 ○松井審議官 その関係で、ものすごく大雑把なもう1つの柱で是非深めていただきたい のは、これを対象とする方々は、あくまで労働者という範疇の方であるとすると、その方 について最小限、あるいは最大限、健康を確保しなさいよという命題を我々としてぶつけ るべきかと。それは自分でやりなさいと。権利で止めておくのか、いわば使用者にも絶対 ここまでは酷使してはいけないという、何か枠組みをはめるのかどうか。そこはもう1つ の大きな柱だと思います。年間365日のうち、365日ずっと働き続けるという枠組みで今 言われた成果と賃金を離すというのか、365日あるのだけれども、極端に例えば200日の 中で勝負しなさいというぐらいにするか。そこが結果で、そのときのコンセプトは、その 者についての健康、あるいは人間としての生き様と、そこの部分についてお節介をやくか どうかみたいな話、どの程度やくか入れていただかないと、と思うのです。 ○守島様 その点は私もそうだと思っています。今言ったような前提に基づいて、具体的 には労働者の顔というか、像が見えてくるわけなので、その人たちについてどのような保 護的な措置をしていくか。その問題はあると思うのです。それとくるめて考えなければい けないのですが、前提としてはいくつか別のものを置いていった方がいいと思います。  今日も少し議論になりましたが、そう考えていくと、今の管理監督者で、完全にフリー であるという状況がいいことなのか、下ろすことによって起こってくる問題は、逆に上に も浸透していくわけで、そこまで本当に考えていかないと、審議官がおっしゃったことは 結論が出ないように思います。私としては、今の中間管理職は多分に労働者性を持ってい るように思いますが、保護という言い方が好きではないのですが、彼らの健康確保や休暇 の取得をもう少し積極的に考えていいように思います。 ○水町様 まさに私も同感で、労働時間制度が何でそういう趣旨を持ったものとして生ま れてきたか。守島先生がおっしゃるように、労働時間と賃金を切り離すような形態の社会 実態としての労働者が増えてきたのだが、あえて労働時間と賃金をリンクさせる形で労働 時間制度がこれまでずっと作られてきた背景には、いくつか理由があるのです。働く人の 身体の保護の問題、精神的な保護とゆとりの問題、あとワークシェアリングの問題です。 ここで重要なのは1番目と2番目で、どういうふうに肉体の保護や精神のゆとりを考える かというと、やはり賃金と連結させるのが一番伝統的であり、一番簡単だったのです。し かし、それを切り離すというので、今議論をしているときに、一番重要なのは、それを切 り離したときに肉体的な保護やゆとりをどうするかという観点からすると、それをちゃん としないと、実態として賃金と労働時間が離れている実態が増えているとしても、これま での労働時間法制の趣旨からすると、それをちゃんとケアしないと法制面で外すというの は非常に難しいと思います。先進国の中で肉体的な弊害や精神的な弊害が出ているのは、 まさに日本なのです。これから議論する中で一番大切だと思うのは、精神的な問題や肉体 的な問題を担保する健康を確保するための措置とか、休暇をどう与えていくかという措置 の実効性をきちんとチェックしないと、なかなか難しいと思いました。 ○諏訪座長 非常に重要な、基本哲学の部分の議論が今展開されたわけですが、これに絡 めて何かございますか。よろしいですか。それでは、今日は今の重要なご発言を最後とし て、この辺りで研究会を終わらせていただきます。  次回は、本日いろいろとご議論していただいたご意見を踏まえて、また資料等でも修正、 追加をしていただいて、研究会としての報告の素案の作成を念頭に、さらに引き続き活発 にご議論をしていただきたいと思います。事務局にはまた準備をお願いしたいと思います。 次回の会合の予定をご連絡いただきます。 ○安藤監察官 次回の会合は、12月9日(金)17時から19時まで、場所は厚生労働省専 用第21会議室で開催いたしますので、ご参集いただきますようお願いします。 ○諏訪座長 どうぞよろしくお願いします。本日の会合は以上をもって終了いたします。 お忙しい中、ご参集いただきましてありがとうございました。                         照会先:厚生労働省労働基準局監督課調整係                     電話 :03-5253-1111(内線5522)