05/11/28 第6回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会議事録 第6回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会                   日時 平成17年11月28日(月)                      10:30〜12:30                   場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○企画課長  ただいまから第6回労働政策審議会勤労者生活分科会基本問題懇談会を始めさせてい ただきます。本日はお忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。私 は、勤労者生活部企画課長の坂本です。座長が決まりますまでの間、事務局で議事を進 行させていただきますので、ご協力をお願い申し上げます。  本年1月に勤労者生活分科会の委員の改選が行われましたが、本懇談会の委員につき ましては、本年5月の勤労者生活分科会の際に分科会長の指名を受けまして、本懇談会 委員の全員が再任されております。お手元の資料1のとおりとなっておりますので、引 き続きよろしくお願い申し上げます。  本日は本懇談会の委員全員にご出席いただいておりますとともに、勤労者生活分科会 の委員から村井委員、新芝委員、末永委員がご出席されておりますので、ご報告いたし ます。  さて、本日の会議を始めるにあたり、新たに座長を選任していただく必要がございま す。座長は、労働政策審議会勤労者生活分科会運営規定の第9条第3項の規定により、 懇談会に属する公益を代表する委員及び臨時委員のうちから、懇談会に属する委員及び 臨時委員が選挙すること、となっております。どなたかご推薦される方はいらっしゃい ませんか。 ○藤田委員  引き続き齋藤委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○企画課長  皆様、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。それでは齋藤委員に座長をお願 いすることといたします。以後の会議の進行につきましては齋藤座長にお願いしたいと 存じます。 ○齋藤座長  引き続いて座長を務めさせていただきますが、どうかよろしくお願いいたします。最 初に、当懇談会の事務局に異動がございましたのでご紹介させていただきます。部長、 課長、補佐の3人がお替わりになったようですが、代表して、部長からご挨拶をしてい ただきます。 ○労者生活部長  おはようございます。ただいまご紹介にあずかりました勤労者生活部長の青木でござ います。本日はご多忙のところご出席を賜りまして誠にありがとうございます。今年度 は私どもの時短促進法の改正の関係でマンパワーがなかなかうまく捻出できませんで、 本懇談会も予定どおりの開催とはならず、大変申し訳なく思っております。ただ、今後 は後ほどご説明させていただくスケジュールで開催してまいりたいと考えておりますの で、よろしくお願いいたします。  財形法は、ご存じのとおり昭和46年に成立したものでございますが、その後30年余 が経過しております。その間、勤労者の財産形成に大きく貢献してきた制度であると考 えておりますけれども、財形制度を取り巻く環境は著しく変わってきております。特に ここ1、2年の環境変化の中には、財形制度の根幹に関わるものも見受けられまして、 そのような最近の動きを3点ほどご紹介させていただきたいと思います。  まず第1点目は税制改革、税制の方向でございます。ご存じのように、貯蓄から投資 へという基本方針のもとに、貯蓄優遇税制を縮減し、投資優遇税制を拡大していくこと となっております。これとの関係で、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の非課税措置を維持 していくことができるかどうか、という課題が出てまいりました。  第2点は、政策金融改革でございます。現在、経済財政諮問会議で議論されていると ころでありますけれども、独立行政法人等による政策金融機関類似の金融業務につきま しても、平成18年度中に見直す方向になっております。これとの関係では、財形融資制 度につきましても議論の対象となる可能性が出てまいりました。  3番目は、住宅政策の転換でございます。国の住宅政策は、新規住宅取得の支援から、 民間金融機関の住宅ローンの活用等を基本方向とした新たな政策への転換に向けて検討 が進められておりまして、来年の通常国会には、「住宅基本法(仮称)」が国交省から 提出される予定になっております。これとの関係では、財形住宅貯蓄や持家融資制度を 今後どのようにしていくかという課題が出てまいりました。  このような大きな環境の変化に対しまして、財形制度におきましても、的確に対応し ていくためにはどのようにすればよいのか、考え方を整理する必要があるのではないか と思っております。そのためにも、皆様方のお知恵をお借りし、財形制度につきまして の考え方の整理を本懇談会の中間報告としてまとめさせていただきたいと考えておりま すので、委員の皆様方には忌憚のない、活発なご議論をお願いし、私の挨拶のことばに 代えさせていただきます。よろしくお願いいたします。 ○齋藤座長   ありがとうございました。今後の当懇談会の進め方につきまして、資料をお配りして あると思いますが、事務局から説明していただきます。 ○企画官   お手元の資料2をご覧いただきたいと思います。今後の進め方ですが、本日第6回目 は財形貯蓄の議論の3回目ということで、これからお示しする論点についてご議論をい ただきたいと思います。それから、残った時間で財形融資の議論に入りたいと思います。 次回第7回目を来年の1月ごろ開催し、財形融資の議論の2回目と、財形給付金や助成 金等についてご議論いただきたいと思います。そして第8回目を来年の3月ごろ開催し、 これまでの議論の整理ということで中間とりまとめを行わせていただくようなスケジュ ールで今後進めたいと考えております。 ○齋藤座長  前回から少し間があいたものですから、前にどこまでやったかということは、記憶が 定かでないところもありますが、それはそれとして、とりあえず今後の進め方としては、 こんなところでよろしいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○田村委員  3月の中間とりまとめの扱いはどの辺のレベルか。要は、答申なり諮問なりという格 好までいくのか、そのレベルではなしに、単にこの議論の中の取りまとめという 扱いなのかだけ説明いただけますか。 ○企画官  本懇談会の取りまとめという位置付けのものとして、まとめたいと思います。そして、 まとめた上で勤労者生活分科会にはご報告する形にさせていただきたいと思います。 ○松井委員  取りまとめるにあたって、事務局は新しくなっているのですが、私ども委員としては ずっと同じようなことをやってきたという思いがあります。ですから、財形について、 一つの方向に結論を書くことはできないとしても、もしこういう方向にする場合はどう なのだとか、今、現状をどのように見るのか、また、現状を前提とするのか将来像を前 提とするのか。何らかの選択肢を明確にした形での取りまとめをするように、お願いを したいと思います。財形を今の形のままではもう残せない、私個人はそう思うわけです けれども、そもそも論で必要なのかどうか、仮に残すとしたら、どういう前提なのか。 そういうものがないと、3月にまとめを書いたとしても、それ以降の発展性がほとんど ないのではないかと思います。そういうまとめ方を是非お願いしたいと思います。今日 の議論も含めてそういう感触を持っておりますので、よろしくお願いいたします。 ○齋藤座長  とりあえず目処としてはそういうことで懇談会の議事を進めさせていただきたいと思 います。今日は、前回までずっとやってきたところで抜けているところもありましたし、 まだ議論があまり出ていない点もありますので、その辺の財形貯蓄の関係、それから、 時間があれば、財形融資の問題にも入って議論をしていきたいと思います。  資料3と資料4はこの前お配りして、これを基にして議論を進めてきたということが ありまして、また説明するのもどうかという気がしないでもありませんけれども、時間 が経っていますので、改めてもう一回説明していただきます。 ○企画官  お手元の資料3と資料4に沿って説明させていただきます。前回の懇談会を昨年12 月に開いてから1年ほど経っておりますので、思い出していただく意味も含めて説明さ せていただきます。  資料3は、財形制度の検討にあたっての視点ということでまとめてあります。現在、 政府でさまざまな構造改革が進められておりますが、その目指す経済社会といいますの は、国民一人ひとりの自助努力を基礎として、その自助努力を最大限引き出すことによ り活力ある経済社会をつくっていこうということではないかと考えております。そうい った中で、財形制度は財産形成の自助努力を支援する制度ですので、財形制度の必要性 がより一層高まってきているのではないかと考えております。それで、こういった視点 でご議論いただければと思います。  最近の構造改革の動きの中で財形制度と関連するもののうち、5つほどここに挙げて おります。1つ目は、社会保障の構造改革です。公的年金の給付水準が下がっていった り、企業年金や退職金の給付水準が下がっていったりする中で、老後の所得保障の面で 私的年金の果たす役割が大きくなってきているのではないかと考えております。これと の関係で、財形年金をどのようにしていくかということをご議論いただければと思いま す。  2つ目は、1つ目とも関連しますが、確定拠出年金の制度が平成13年に作られており、 施行後5年の見直しが来年の10月となっております。老後の生活資金を積み立てる自助 努力の制度という意味で、共通する側面がありますので、これとの関係をどういった形 で整理していくかということも踏まえながらご議論いただきたいと思います。  3つ目が、住宅政策の転換です。これは先ほど部長の挨拶の中にもありましたが、住 宅政策は、新規住宅の取得の支援から、民間の住宅ローン市場の整備を中心とした内容 に今変わろうとしております。そういった新たな政策的な方向性を盛り込んだ住宅基本 法(仮称)が次の通常国会に提出される予定になっております。このように住宅政策が 変わろうとしているということを踏まえながら、財形貯蓄の制度、特に住宅貯蓄の制度 をどうしていくかということもご議論いただきたいと思います。  4つ目が税制改革の動きです。「貯蓄から投資へ」ということは2、3年前からかな り言われており、貯蓄優遇策を縮小していき、投資優遇策を増やしていくという方向で 税制を見直していこうということになっております。また、金融所得一体課税につきま しても、証券優遇税制が平成20年に切れるわけですが、その後に金融所得を一体的に損 益通算する形で課税していこうという動きもあります。こういった動きの中で、財形の 非課税措置をどういった形で今後考えていくのか、ご議論いただければと思います。  5つ目が金融システムの改革です。昨年の12月に「金融改革プログラム」が金融庁で 策定され、今後2年間をかけて「金融サービス立国の実現」をしていくこととされてお りますので、財形制度につきましても、より使いやすいものにしていくためには、どう いったことをしていったらいいのかという観点でご議論いただければと思います。以上 が制度全体にわたってご議論いただきたい視点です。  次に資料4をご覧ください。「財形貯蓄の論点」ということでまとめたもので、昨年 12月にお示しした論点と全く同じものですが、もう一度改めて、簡単に説明させていた だきます。  ここでは8つの論点を挙げてありますが、1〜4の論点は、どういった貯蓄とするの が適当か、対象者をどうしていくかという基本的な貯蓄制度の骨格に関わるものです。 そして5以下が個別の対応についての論点ということでまとめてあります。  1の論点は、企業の福利厚生との関係です。財形制度は、勤労者の自主的な財産形成 の自助努力がまずあった上で、それに対して、企業が支援をし、さらに国が援助を加え るという三者協力が原則となっております。しかし、最近、企業の福利厚生が縮小して いくという状況が見られる中で、この三者協力の原則を今後も維持していくのが適当な のか、それとも企業の福利厚生とは切り離した勤労者の自主的な資産形成の支援という 形の制度にするのがいいのか、その辺りについてご議論いただきたいと思います。  また、勤労者の資金需要なのですが、現在は老後の所得保障と住宅の2つの資金需要 の支援ということで貯蓄の制度が作られているのですが、そのほかにも教育や介護、自 己啓発等いろいろな資金需要が勤労者にはありますので、そういったもののうち、どう いったものを支援の対象としていくかについてご議論いただきたいと思います。  2の論点は、社会保障制度全体の中での財形年金の位置付けです。これは公的年金や 退職金、企業年金などの給付水準の低下が見られることから、老後の所得保障面で一定 の役割を果たしていくことができるようにするためには、財形年金の制度をどういった 形にしていったらいいのかという論点で、それについてご意見をいただきたいと思いま す。  また、これを検討していただく際に、老後の生活資金を積み立てる自助努力支援の制 度として、確定拠出年金制度が平成13年に作られておりますので、これとの関係をどう いった形で整理したらいいのか、ご議論いただきたいと思います。  3の論点は、住宅政策の転換への対応です。これも先ほど少し説明しましたように、 住宅政策が変わろうとしています。都市住宅整備公団は、都市再生機構という組織に名 前が変わり、もう新たな住宅の分譲は行わないこととされております。また、住宅金融 公庫も直接融資を縮小し、原則として廃止することとされております。こういった中で、 住宅の支援としての非課税措置として設けられている住宅貯蓄の制度をどうしていった らよいのかについて、ご議論いただきたいと思います。  4の論点は、制度の対象者の範囲をどうしていったらいいのかということです。まず (1)ですが、財形制度は勤労者だけを対象者にして制度が作られております。勤労者 と自営業者とを比べた場合に、勤労者は貯蓄や住宅などの資産形成の面で立ち遅れが大 きいということで、勤労者だけを対象に制度が作られたという経緯があります。ところ が、1や2のような、老後の所得保障を中心とした制度ということで考えていく場合に は、自営業者も同様の事情にあることから、自営業者も対象とした制度にしていくとい うことも考えられます。その点をどう考えたらいいのかについてご議論いただきたいと 思います。  (2)については、最近、貯蓄率の低い若年者が増えてきている問題やフリーターの 問題が出てきておりますが、そういったことから所得格差が広がっているという問題が あります。こういった中で、財形制度において貯蓄率の低い若者やフリーターのような 問題に対して、どういった対応の仕方があるのかを、対応する必要があるのかどうかも 含めてご議論いただければと思います。  5の論点は税制改革への対応です。(1)は、貯蓄から投資へという基本方針のもと に、貯蓄優遇策はだんだんと減らし、投資優遇策を拡充していくという方向になってお ります。現行の財形制度は安定的な運用を重視して、貯蓄性の高い金融商品に対象を限 定するということになっております。貯蓄から投資へという動きに対応する形で、投資 性の高いものも対象に含めていくことも考えられますが、そういった点について、どう していったらいいのかについてご議論いただければと思います。  (2)については、金融所得の一体課税の検討が進められておりますが、この金融所 得の一体課税が完全実施されるときには、株式の譲渡益などと預金の利子所得を含めて 損益通算をするような形で制度が実施されることになりますが、そのときには、財形の 利子非課税措置も廃止される可能性が出てくると考えられます。こういった問題につい てどのように対応していったらよいのかについてご議論いただければと思います。  6の論点は、金融システム改革の進展への対応です。平成8年以降、自由で公正な金 融システムを作ることを目的に、さまざまな金融システム改革が行われております。そ ういった中で銀行において国債や投資信託なども扱えるようになりましたし、保険の窓 口販売や証券仲介業等もできるようになっております。こういった中で、財形貯蓄につ いては、1契約1商品ということになっておりますので、1契約1商品のままでいいの か、いくつかの金融商品を同時に分散運用できるような仕組みにしたほうがいいのかに ついて、ご議論いただければと思います。  また、ペイ・オフが平成17年4月から完全実施されております。そういった中で、財 形貯蓄については、一般財形は3年経過後に預け替えできることになっておりますが、 年金や住宅につきましては預け替えはできないということになっておりますので、預け 替えができないままでいいのかどうかについて、ご議論いただければと思います。  7の論点は、労働力は流動化し、離転職比率が高まってきているということに対応す るにはどうしていったらいいかということです。これまでは、転職する場合、転職先が 財形貯蓄をやっている会社であれば、財形契約は継続できるということになっておりま す。転職する間の失業期間が、平成6年までは半年までであれば継続できるということ だったのですが、その期間を半年から1年に、平成16年には2年に延長してきた経緯が あります。そういった形で失業による中断期間を長く設定することによって、転職して も財形契約は継続できるようにしてきたわけですが、転職するまでの間の失業期間がど んどん長くなってきているという状況を踏まえて、転職するまでの失業期間を少しずつ、 2年からさらに長くしていくような方向で見直すことが今後考えられますが、そういっ た方向での見直しでいいのか、それとも、失業期間については一定の公的機関で預かり、 その間、公的機関が運用するというような、預かり機関を設けることも考えられます。 そういったことも含めて、どういった対応が考えられるのかについてご議論いただけれ ばと思います。  最後、8の論点は、勤労者自身の払い込みを認めるかどうかです。現行の仕組みでは、 事業主が給与から天引きをして払い込むことが、財形貯蓄の三者協力の原則の1つとし て事業主に求められることになっていますが、この給与天引きの事務が負担になるとい うことで、中小企業に普及が進まない原因になっております。そういった中で、今後の 制度としては、給与天引きではなくて、勤労者自身が自分で口座に振り込むことでも財 形貯蓄をやっていくような形も考えられますが、そういったことについて、どう考えて いったらよいのか、ご議論いただきたいと思います。以上、財形貯蓄の論点について説 明させていただきました。  なお、資料4の論点につきましては昨年12月に一度ご議論いただき、そのとき各委員 からいただいたご意見を資料5として各論点ごとに整理してありますので、今日ご議論 いただくにあたって参考にしていただければと思います。 ○齋藤座長  細かく設定されているものですから、いちいち試験の答案を書くように論理的に各論 点について答えを出して発言をされるのは難しいと思いますが、それはそれとして、後 の取りまとめのことを考えると事務局の立場もわからないでもないので、できるだけこ の論点に答えるような形でご発言いただければありがたいと思います。論点1〜4まで は割合に基本的なことですが、これについては前回までの間にだいぶご議論があり、見 解のご発表があったような気がしますので、それに付け加えるような形で、とりあえず 基本的な問題の1〜4についてご議論いただければと思います。何かご発言はあります か。 ○奥村委員  これまで何回も何回も同じことを言ってきているので、ちょっとしつこいと思われて いるかもしれませんが、この論点の整理以前に、財形自体の問題があると考えます。資 料3に「財形制度の必要性の高まり」とありますが、財形制度が果たしてきた意義は非 常に大きなものがあったと思うのですが、そもそもこういったことの関係を1〜4とし て整理するとしても、実際に勤労者の制度として普及するのかどうかという視点からす れば、例えば、中小企業に普及しないのはチェック・オフが面倒くさいということが書 いてありますが、これだけではないと、さんざん申し上げてきたのです。この1〜4に 対して何らかの答えを出したとしても、やはり中小企業には普及しないのではないかと 思われます。そうすると、一部の大企業、あるいは労働組合がしっかりしている企業の 勤労者しか利用できないことになってしまうのではないかと考えます。そうすると再び、 財形制度が一体どういう意味を持つ制度なのかということが問題になります。一部の恵 まれた環境にある、とまでは言いませんけれども、一部の勤労者だけしか利用できない 制度ということで財形制度を続けるとすると、やはり同じように、財形制度はいかにあ るべきかという問題に立ち返ってくるのではないかと思います。  実際に、加入者数が減っている、貯蓄残高は今までの累計で伸びているということは あるわけですが、いま先細りになっている。例えば、転職等流動化に対応し切れないと か、中小企業に普及し得ないという問題を抜きにして1〜4を議論したとしても、あま り具体的な解決、つまり本当に財形制度が普及するということにはならないのではない かと思うのですが、委員の皆さん、いかがですか。こういう大きな話以前の問題で、そ れこそ、中小企業に普及させるためにこういう制度を作ります、というようなことをい ろいろ議論してきたわけですが、それが「論点整理」からはスポンと抜けているのでは ないかと思います。最後のところだけ、チェックオフみたいなことだけで中小企業への 普及ができないとあるのだけれども、中小企業に財形が普及しない理由はこんなことだ けではないと、さんざん言ってきたわけです。財形制度を勤労者が利用できるようにす る仕組みが、世の中のいろいろな変化に追随できていないということを申し上げている わけです。論点として一つひとつ説明がされると、なるほどなという気はするのですが、 もっと根っこの問題として、財形制度が勤労者のために役立つ制度にするために、どう いうふうになるべきかという視点は要るのではないですか。 ○齋藤座長  論点が個別のことに細かく分かれすぎているものですから、そういうことになるのだ ろうと思うのです。おそらく、総括的な議論としては、そういう議論が当然あり得るで しょうし、それはクリアしておかなければいけないと思います。 ○奥村委員  どうしたらいいですか。 ○齋藤座長  ご議論の中身として、何回も言っておられるということを言っていただければ、後で 整理するときに事務局も楽になると思うのですが。 ○奥村委員  個別のところでの議論がいろいろあると思うのです。実際に金融システムの改革に追 随できていないとか、転職の度ごとに脱落していくというようなことが相変わらず残っ ているだけの話なので、仕組みとしては非常に問題があるということです。 ○新村委員  原理的なご議論が出たところで、私も原理的な話をさせていただきます。私もずっと 同じことを言ってきたので、そろそろ飽きてきたという感じがするわけです。これまで の議論は、いろいろ原理的な議論をしたかと思うと、またすぐ現状の制度に戻って議論 をしてきたように思えて、そこがなかなかうまくいかない理由だったような気がします。 非常に大きな環境変化が起きている中で、そもそもこの制度は何なのかというところを 白紙に戻して考えたときに、この懇談会や分科会だけで結論が出る問題ではないことも 考えられます。これはたぶん資料3に言われたこと、自助努力をどのように支援するか という話だと思うのですが、この「自助努力を必要とする人」とは一体誰なのか、そし て、どういうふうな支援が求められているのかというところがクリアできていなくて、 いつも、では現行制度という話になってしまうような気がするのです。いまの三者協力 の原則というところに基づく財形制度を出発点に、もちろん後で結び付けなければいけ ないのですが、その前に、日本国としてどのように、必要な人に必要な援助をするかと いうところの議論が大まかにでも整理できていないと、次にいかないような気がするの です。  いま私が思いますのは、昔と違いまして、自営業者のほうが資産があって豊かな時代 ではなくなった。サラリーマン階層が8割にもなっておりまして、しかもその中で、か なり高額所得のサラリーマンもいるようになりました。それから、労働市場が非常に変 わってまいりまして、非正規雇用が非常に増えております。それから、大企業と小企業 との関係も変わってきている。もちろん、住宅は14%も世帯数を上回っている等いろい ろなことが起きている中で、老後のためにでも、ライフサイクル全体についてでも、一 体どのような支援を誰が必要としているかというところの議論なしに今の制度から出発 すると、何か難しいような気がするので、いちばん原理的なところを是非押さえて、そ のときに現行制度をどう変えたらいいかという議論をしてほしいと希望しております。 非常に抽象的なことを申し上げて申し訳ございませんが、これを私の意見とさせていた だきます。 ○齋藤座長  いま言われたことについては、いかがですか。 ○田村委員  基本的には原理原則をおさえていきたいと思っています。長い目で、現行の制度で、 目的を持って貯めておられる人たちもいます。そこで、基本をおさえることは大事です けれども、あまり大きな変化ではなしに、いままでやってきた人たちの立場も考えなが らやっていかなければいけないと思います。根本的なことをおさえることは大事だと思 いますけれども、これまで入っていた人たちのニーズについても、ちゃんとおさえてい ただきたいと思います。 ○松井委員  田村委員のおっしゃるとおりなのですけれども、いままでやってきた人たちについて、 いままでと同じやり方でいいのかどうかというのは、別途議論しなくてはいけないと思 います。要するに、いままでやってきたものをそのままにすると、結論はもう見えてい て、現行の財形制度は変えないということになってしまいますので、仮に変えるとした らどんなやり方があるのか、ということまでも含めて議論しないと、意味がないと思っ ています。変えるということが前提になっていて申し訳ないのですが。 ○勝委員  今までいろいろ議論を聞き、また今日の論点整理を見まして、2つに分けて考えるべ きではないかと思います。1つは、財形というものを年金制度やその他の貯蓄制度、あ るいはタックス・シェルターといったようなもの全ての体系の中で、どのように考える かという視点があるのではないかと思います。もう1つは、先ほど事務局の方からもご 説明がありましたが、いろいろな構造変化があって、その中で財形をどのように考える かということです。これはかなり縮小的な意味合いだと思うのですが。  以前にもいろいろ意見は申し上げたわけですけれども、大きな視点で、例えばタック ス・シェルターをどう考えるか。この場合において誰が対象か、誰がいちばん必要かと いえば、あまねくいろいろな人々にそういったチャンスがあるということが必要場と思 います。  例えば、アメリカの制度ではIRA等いろいろなものあります。また、イギリスやド イツでも、一人当たりいくらという形で投資額に対して非課税になるという制度がある わけですが、そういった制度を作るのか。あるいは今の財形は残して、いまの財形とい うのは、三者協力の原則というのがある以上は、中小企業にはなかなか普及しない制度 であり、1,100万人、あるいは総額17兆円ですか、中堅以上の企業の勤労者にしか適用 されない制度であるという前提でそれを変えていくか、その2つの選択肢しかないのだ ろうと思います。ただ大きな枠組みの改革ということであれば、この審議会だけで議論 できる問題ではないのです。これは税金がかかってくるわけですから、政府全体、行政 全体で考えなくてはならない体系的な議論であるわけです。  そうすると、この部会で考える問題は、いまの三者協力という原則がある中で、また、 社会福祉にコミットできる企業は大企業にしか限られていないという現状を見れば、か なり狭いパイの中での制度を、いまの構造変化の中でどう考えていくかを考えるしかな いのか。まずそこの部分を明確にしないと、その後の議論が進まないのではないかとい う気がいたします。 ○齋藤座長  部長から、何かありますか。 ○勤労者生活部長  いま勝委員がおっしゃったことは非常にごもっともであります。役人的に申し上げま すと、基本的に各省庁の権限というものが当然ございまして、白地にものを書くという ことができれば素晴らしいのですけれども、それは他の役所の権限に踏み込むことにな ります。ですから、当然白地には書けない。もちろん他に及ぶ議論をしていただきたく ないと言うわけではありませんが、残念ながら、原則としまして、財形ということで私 どもが権限を与えられている世界というのがありまして、その世界をベースにする。も ちろん根本的に変えなくてはいけないところがあるのかもしれませんが、まずリファイ ンできるのか、できないのかというところがテリトリーとして非常に重要だと思います。  もちろん、それをやるときでも他のところに影響は当然あるわけで、その影響の度合 は、根本的になればなるほど大きくなります。ですから、根本的なご議論をここである 程度していただいて、将来の参考にさせていただきたいと思います。  大きなイメージで言いますと、当面の問題と将来の問題ということになるかと思いま す。当面の問題は、できる限り、現在のテリトリーの中でリファインできるところは何 だろうかと。それから、将来の問題として長い目で見た原理原則論だと思います。これ は国全体の話でもあり、できるかできないかも全然わからないし、役所の権限を逸脱す る部分もあるかもしれない。だけれども、こういうことも念頭に置いたら如何でしょう か、というような、そういう両方のご議論があるかと思います。これをご発言の中で分 けておっしゃっていただければ、私どもは非常にありがたいと思う次第です。 ○齋藤座長   要するに、この制度を議論していくにあたって、資料3に赤で書いてある「財形制度 の必要性の高まり」ということが本当なのかどうか、根本の議論はそこに帰着するのだ ろうと思うのですが、それについてはいろいろな見解があるのだろうと思います。それ はそれとして、いろいろな見解を言っていただければいいことだと思いますし、それを 基本にして具体的にいまの制度に当てはめてみると、どうなのだろうかという議論は必 要だと思います。ですから、ここの審議会の議論としてはとりあえず、ここに書いてあ るような個別の問題の議論を少ししていただいて、それが皆さんがイメージとして持っ ておられる大きい議論とどういうふうに絡んでくるかということは論点の整理、最後の 締めのところで議論していただければいいのではないかと思いますが、違いますか。 ○新村委員   私はそんなのんびりした話ではないのではないかという気がしております。むしろ既 に財形制度の存亡、財形制度が必要か否か、あるいは廃止という議論に環境はなってい るのではないかという問題意識で申し上げたわけで、国の年金制度全体を考えようとい う意味での原理原則ということではないのです。私は、そちらも踏まえた原理的な議論 が固まっていないと、小手先で現行制度を直すのではいけないのだ、もう持たないのだ という前提を持っているものですから、原理論というようなことを再度申し上げたので すが、また補足して同じようなことを申し上げました。 ○南雲委員   私は全く逆で、廃止の方向でということではなくて、むしろ、この制度を残さなけれ ばいけないし、さらにどう良い制度にしていくのかということを前提にするという立場 で前回までずっと話をしてきたのです。いまも話が出ていましたように、老後のこと等 いろいろな資金需要を考えても、いまのいろいろな雇用形態なり勤労者を取り巻く環境 下でこの1年を見ても、まさに自助努力をしながらも財形制度の必要性はより高まって きているというのが実態だと思います。そういう面では、廃止の方向というのはとんで もない話で、やはり残して、さらに良い制度にするためにどうしていくかということが ここの議論ではないか、そのことをまず申し上げておきたいと思います。  先ほど奥村委員の発言にもありましたが、私が前回申し上げたのは、中小零細で働い ていている人にこそ本当にこの制度が必要であると、中小零細への普及促進を何とかし なければならないが、残念ながら進んでいない。この辺が問題ではないかということな のです。いろいろ考えてみますと、労働組合の有無という問題もあるとは思うのですけ れども、バブル崩壊から、いろいろな雇用形態なり労使の関係の中で、三者協力の原則 がかなり形骸化されてきたのではないか、特に、中小企業で働いている勤労者というの は、この制度に入りたいのだけれども、その企業では財形は取り扱っていないとか、こ んな制度は知らなかったというのが圧倒的に多いという調査結果もあるようです。です から、中小零細への普及はもう駄目なのだということではなくて、どのように制度を周 知させ、どのようなテコ入れを行えば制度として活かしていくことができるのだろうか、 そのことを全体で考えていくことが必要ではないかと思います。労働組合がなくても労 使で協約なり労使関係を強めていこうという国の政策もあるようですが、従業員代表な り働く者の代表と労使協議会を持ちながらということがあるのであれば、その中で、こ の制度を国として、役所として、中小零細企業へも周知徹底を図りながら労使の中でど う作り上げていくのか。諦めてしまうのではなく、この制度を中小零細に活かしていく ような手立てがあるのかを考えるのが大事ではないかと思うのです。ここで申し上げた いのは、財形制度を廃止していくような方向ではなくて、もちろん制度は残し、更に良 い制度にしていく懇談会なり分科会であると位置付けたいということです。 ○藤田委員   以前から申し上げていることですが、この基本問題懇談会は基本問題を論じるところ であるということで、今まさに原理的な問題をお出しになっているのは当然のことだと 思います。ただ、原理論を具体的な制度論にどのように波及させていくかというもう問 題もあるわけです。その辺をつなぐ道としては、ニーズ論でアプローチしてはどうかと、 要するに、財形制度に対するニーズは今どうなっているのか、勤労者といっても、大企 業、零細企業、自営業等いろいろあるわけですが、それぞれニーズが違うのか。また、 どういう範囲の人たちがニーズを持っているのか、これをニーズ論に立って具体的に把 握しておく必要がある。前に、実態例について資料をお出しいただきたいということも 申し上げていたと思います。  さらには、この財形制度をどういうふうに運用していったらいいか、原則としては勤 労者の側に立ってニーズ論を展開すべきだろうと私は思いますが、勤労者だけではなく て、三者協力体制の下で、経営者の立場から言えば、今の財形制度というものに企業と してのニーズはあるのかどうか、これもニーズ論の大事な点だと思います。  そういう意味で、以前にも申し上ましたが、ニーズについても、財形制度の基本的な 目的に関するニーズと還元融資のような副次的なニーズは分けて考えるべきだと思いま す。ニーズ論に立って考えれば、原理的な問題と制度論的な問題も同時に話し合うこと ができるのではないかと、今後の議論の進め方として、ニーズ論というものも重要なカ ギになってくるのではないかと再度申し上げておきます。 ○松井委員   南雲委員のおっしゃる気持は、私は十分共有できると思います。ただ、新村委員がお っしゃられたことは、この財形制度を勤労者のみに限って維持していくことは、客観的 な情勢として、非常に難しい状況ではないかということだと私は理解しました。ですか ら、まず勤労者とか自営業者にかかわらず、今の情勢では自助努力支援を国としてやる べきであろうということは、まず間違いないと思います。その場合、ターゲットとすべ きところはどこなのか。勤労者あまねくなのか、あるいは自営業者も含めるのか、ある いは就業形態にかかわらず、それほど所得のない人たちに対する何らかの支援が必要な のか。おそらく、私が最後に申し上げたところに何らかのアプローチがあるべきだと思 うわけです。ですから、どこをターゲットとして支援が必要なのかという議論の仕方も、 藤田委員がおっしゃられたニーズ論というのは、データを出さなくてはいけないのかも しれませんが、そういうことにもなり得るのだと思います。ですから、必要性はあるけ れども、このままでは難しいという共通認識の下で議論ができればと私は思っておりま す。 ○勝委員   いまの議論に関してですが、私もニーズ論というのはもっともだと思います。ただ、 どの層がいちばん必要としているかという議論は、例えば生活保護のような最低限の生 活を保証するのに必要な制度であれば、これは必要であるという議論をすべきだと思う のです。しかし、財形はあくまで貯蓄です。現状で言えば、550万円の非課税枠を大企 業の人たち、あるいは一部の人たちだけが享受しているというのが良いのか悪いのかと いう議論であろうと思います。また、政府の非課税枠や401kの非課税枠等さまざまな 制度が重なっていて、そこにまた財形というものがある中で、全体としてどのように整 理するかという問題と絡んできます。もしそのニーズ論を言うのであれば、どこが必要 としているのかと言えば、そういった制度をすべての人がチャンスとして持つというこ とが、公平であるのだろうと思うわけです。そうすると、これは非常に大きな問題にな ります。したがって、今この懇談会では、そこの部分も理想論として、こういう制度で あるべきだ、ということで議論することは必要ではあると思うわけです。けれども、三 者協力が原則となっている以上は、現在の財形は一部の人たちだけの制度でしかない。 いくらそれを拡大しようとしても、中小企業は体力の問題で企業福祉というところにな かなか手が出せない、コストもかかるということで、これが普及しないという現状があ ります。ですから、それはそれとして残すことを前提として、制度のリファイン、全体 の構造改革に対しての制度の改善をすべきだという議論をした上で、全体の枠組みを議 論することが建設的であるのだろうと思います。 ○齋藤座長   入口の議論をやっていますと限りがなくなってしまうような感じがしますので、入口 の議論はこのぐらいにさせていただきます。ここに書いてある論点というのは、必要性 を判断するにあたって議論しておくべき論点だろうと思います。必要性をもう少し細か く議論していくとすれば、こういう論点からのアプローチというのは当然あり得るだろ うと思いますし、こういうことを議論していけば、自ずから全体の結論にもなるかもし れません。また、全体についてイメージを持っておられる方があるとすれば、そのイメ ージを基にした個別の議論も出てくるだろうと思います。全体の議論というのは以前か らだいぶ長くやってきましたし、それぞれお話があったのですが、それはそれとして、 とりあえず個別の議論をやってみて、また元に戻って考えてみるということも、当部会 としてやるべき作業の一つだろうと思います。少し細かい議論もやっていただけたらあ りがたいと思います。 ○企画官   補足させていただきたいのですが、財形貯蓄の論点ということで整理した資料4の1 〜4につきましては、先ほど来ご議論をいただいている勤労者の資産形成の自助努力の 支援が必要かどうかについてです。1〜3の論点は、勤労者の資産形成の自助努力に支 援が必要だとすると、どういった資金需要に対する自助努力の支援が必要かということ です。また、4の論点は、自助努力の支援が必要だとしても、その対象者は勤労者だけ に限るのか、自営業者も含めるのか、また、低所得者や貯蓄率の低い人やフリーターの ような人も対象に含めるかどうかです。先ほど来ご議論いただいているいろいろなご意 見、基本に遡って議論する必要があるというところの論点をブレークダウンすると、資 料4の1〜4のようなものになるのではないかと思いますので、そういった趣旨で1〜 4の論点を捉えていただければありがたいと思います。 ○奥村委員   それは今までの原理原則論の話と意味が違っていると思います。論点としてまとめら れている1を取ってみても、「企業による法定外の福利厚生の縮小が見られる中で」と ありますが、例えば中小企業は、本当に、法定の福利厚生しか行っていないという所が 多数あるのです。だから、たぶんここに書かれているのは、かなり大企業的な部分をと らえているのかなと思うわけです。法定ぎりぎりの福利厚生しか行っていない所で、財 形制度を導入していない企業は、多分たくさんあると思うのですが、企業の法定外の福 利厚生の実態とは切り離して、勤労者の自主的な資産形成の努力を行う制度とすべきか というような議論は、現実の議論ではないと思うのです。  だから、この論点というのはある意味では非常に片寄っていますよということを、実 は最初に申し上げたのです。原理原則論はどうなのですかというときに、はじめに財形 制度ありきというか、制度の多少の手直し、当面の課題整理という言い方もありました が、それだけで済む問題ですかというと、そうではないだろうと思います。ただ、当面 の手直しでとりあえずまとめろというなら、そういう議論もあると思うのですが、結局、 議論は行ったり来たりのことになると思うのです。いままでの議論が、この論点を1つ ずつやっていくことでクリアされていくのかどうか、直ちには理解できないのです。 ○企画官   今、奥村委員がおっしゃったのは、勤労者の資産形成の自助努力を支援する必要性の ところから議論する必要があるという意味でしょうか。 ○奥村委員   支援は必要だと思います。ただし、現実に勤労者といったときに、何かというと原理 原則の話になり、ニーズがどこにあるのかという問題になるのですが、これが整理され ないままに論点を1つずつ議論してもしかたがないのではないかと言っているわけです。 導入しない中小企業の人たちから見れば、1を議論したって導入しようということには ならないでしょうと言っているのです。中小企業に財形が普及しないとすれば、この財 形制度は誰が利用しているのかと問いかけられたときに、勤労者のニーズがあって利用 していますという答えができないでしょう。利用者が非常に片寄っているという問題を どう考えますかと指摘させていただいているわけです。勤労者だって自助努力はしてい るし、経営者だって支援しようと思うし、実際、国の制度をいままで利用してきたので すが、現状を見るとあまねく勤労者が利用できる実態にはなっていないと言っているわ けです。1の議論をして、こうすべきかということに関して、こうしましょうといろい ろなアイデアを出したところで、本当に勤労者のための制度になっていますか、という 質問をせざるを得ないと思うのです。 ○齋藤座長   あまり悲観しすぎな気もします。1番と6番との関係が出てくるだろうと思うのです が、例えば中小企業がなぜ福利厚生を法定外はやらないかというと、もちろん経費のこ ともある、直接お金をかける余裕がないこともあるでしょうし、ほかに手間がかかると いうこともあるでしょう。そういうことであれば、少しでもそういう手間のかかるとこ ろを何とかする工夫はないのかを考えるのも、今の段階としては必要になってくるので はないでしょうか。どれだけの中小企業がやっているかわかりませんが、給与の計算や 給与の銀行への振込みなどは、みんな外部委託してしまっているわけです。とすれば、 別にその中に財形の項目が1つ入ったからといって、中小企業の負担が増えるわけでも ないという議論ができないわけでもない。何かいろいろと工夫のしかたはあり得る気も するのですが。 ○藤田委員   先ほどのニーズ論ですが、ニーズ論というのは、ただニーズがあるかないかというこ とではなく、ニーズがあるけれど、なぜできないのか。そこには、やはりコストの発生 や負担能力が出てくると思うのです。ですから、今のお話で言えば、中小企業でニーズ はあるのにできない、コストが負担できない、負担能力が乏しい。それをしっかり理解 した上で、そこが問題だということがわかれば、コスト負担を減少する方法を考えよう ということになります。ニーズがむしろ大企業よりあるのだということがはっきりすれ ば、方向が見えてくるわけです。中小企業にとってニーズがあるのかないのか、まずそ れを議論して、その上でコストをどうするかの議論に移るべきだと思います。 ○齋藤座長   ただ、その辺のニーズ論は、これもまた議論がバックしてしまうところがあると思う のですが。 ○企画官   財形制度のニーズについても、調べたものはあります。 ○藤田委員   ここでアンケートでも出していただいたと思います。 ○企画官   藤田委員に座長をしていただいた、ニッセイ基礎研のレポートの中にも入っていたか と思います。 ○藤田委員   長年やってきて、そのように出されていますから、私は中小企業にとってニーズは高 いと判断しております。あと負担をどうするか。中小企業にとって、財形のコストは一 種の固定費になっている。ですから、福利厚生もできれば固定費ではなく、変動費に変 わるようなシステム作りを考えるべきではないか。制度論がそこから展開していくわけ ですね。そういう方向で、財形制度のあり方も議論していただきたいと思っています。 ○齋藤座長   だんだん話がどう進んでいいか、難しくなってくるのですが、いずれにしましても、 少し個別具体的な議論をしていただいて、それを基に、包括的なことをどう考えるかを もう1回やったらどうかと思うのです。その辺はまとめの段階でないとやりにくいので す。 ○松井委員   少し議論を進めるということで、書いてある根本論以外のところも申し上げたいと思 います。  4の制度の対象者の範囲のところに、フリーターなどの問題が出てきています。フリ ーターの問題は、そもそも雇用政策で何をやるべきかという問題であることはすでにご 指摘があったのですが、ここで議論すべきことは雇用政策の問題そのものではなく、財 形貯蓄の仕組みが長期継続的というのが前提になっていますので、この前提でいいのか どうかという問題に関係してくるのだろうと思います。それは6の金融システム改革の 進展への対応と7の離職転職比率の増加と、場合によって重なる部分もあるのではない かと思います。そういう意味では、こういう人たちも仮にお金の余裕があるならば、貯 蓄ができる仕組みとして設けることができるものは何であるのか、現実的に、すぐ退職 してしまう人たちに対して、企業側としてどこまで福利厚生的にフォローできるかとい うと、非常に難しい部分もあるわけです。そうすると、個人型確定拠出年金的なものが もっとあり得るのではないかなと思います。それは今の財形の仕組みではないので、個 人型で勝手にやれというのかどうかはまた別ですが、そういう論点もあり得ると思いま す。  論点3の住宅政策の転換への対応は、そもそも住宅政策そのものがどうなるのかとい う前提ですべて決められるべきであって、財形住宅貯蓄はどうしていくべきかという瑣 末な論議ではないのではないかと思います。住宅を自分で取得したい人はおそらく貯蓄 は必要でしょうが、それが財形でなければいけないかというと、また別の議論があり得 ると思います。 ○田村委員   個別の議論に入るのであれば、1〜4が最初だろうと思うのですが、やはり入口のと ころで入りやすい制度にしておく。そして、それが三者協力を原則とするならば、いま はかなり片寄った形になっていますから、そこを入りやすくする制度にする必要がある だろうと思っています。これを原則にするならば、いま言われたフリーターやニートの 人たちが入れる環境ではない。そうすると、それはポートビートのある別の制度を考え るほうがいいのであって、若干、中期長期を見通せる雇用労働者を中心とした制度を頭 に置いてやるほうがいいのではないか。  もう1つ、三者協力の原則でいくとするならば、自営業者の方たちは三者協力のとこ ろに入ってこない可能性がある。三者のうち、企業側の立場の1人が抜けますし、ある 意味では雇用労働者と違って定年がないということも言えるわけだし、自営業者の方に とっては住宅と職場が同一ということもあり得るので、ここはむしろ雇用労働者に絞り 切ったほうがいいのではないかと、私は思います。  もう1つ言うならば、あとは使い方の問題です。入口でどうやって集めるかもあると 思いますが、貯めたお金をどんな形で使うかについて、今はかなり限定された形になっ ています。住宅や年金でないと使えない、優遇税制もそれに効かないということになっ ていますから、むしろ出口では、辞めるときに課税されてもいいよと、最初から入口で その目的のための貯蓄ではなしにということにして、使い勝手のところで少し選択肢を 広げる方が入りやすいのではないか。そうすると、入口は完全に貯蓄型になるのだろう けれど、出口でこの目的に合った出し方については、税制面の優遇がある方がいいので はないかという気がします。 ○松井委員   いまの点について質問なのですが、目的外の払出しのときには、最後の利子非課税措 置の部分は、住宅でも年金でも5年間遡及で課税の取扱いになると思うのですが、田村 委員がおっしゃったのは、使うイメージがもっとたくさんあるということですか。 ○田村委員   もう少し使うイメージを広げてもいいのではないか。それはニーズが違ってきている でしょうという思いと、使う目的が違うことと、最初に入る、何年後にする予定で貯め るのではなく、貯めることを目的にしながら、使うとき、解約するときにこういう目的 で使うとなったら優遇が効くということでいいのではないか。その目的替えのときには、 課税対象になることがあってもいいのではないかということです。 ○松井委員   そうすると、払出しの目的で非課税措置として対象になるのは、年金と住宅以外に何 個かあって、それ以外は駄目だという意味合いですか。 ○田村委員   現実にそうなっていますからね。入口で目的は決めなくてもいいのではないかと。 ○南雲委員   前回、勝委員がその辺の考え方を述べられたのではないですか。 ○勝委員   前回も申し上げたのは、入り口は一般財形で、出口で住宅と年金に分けるというもの です。ただ、これは今の制度を前提にしているのではなく、全体の改革を考えた場合に 出てくる議論として申し上げました。個人がそれぞれでそういったアカウントを持つと いう意味で申し上げたのであって、先ほど2つに分けると言ったわけですが、前回申し 上げたのは全体の改革という意味で申し上げたのであって、もし今の制度を存続するの であれば、また少し違う形の議論になるだろうと思います。  三者協力を前提に今の財形をどう変えるかをまず議論すると。5と6で税制改革への 対応や金融システム改革の進展への対応がありますが、もし貯蓄から投資へという中で いまの財形を変えていくのであれば、運用する選択肢をもう少し柔軟にすることが重要 なのではないか。いま運用方法が極めて限られているので、魅力が薄いので17兆円にと どまっているわけです。そうすると、401kではないですが、そういうスイッチングで きる形で、運用をさらに柔軟にしていくといった工夫も必要なのではないかと思います。  ただ、そうすると逆の問題が出てきて、先ほどから申し上げているように、一部の勤 労者しか使えない、しかもかなり優遇されている勤労者で、正規の社員しか使えないと いうことになると、それは非常に不公平になってきてしまうので、その辺が非常に難し い問題だと思っております。いずれにしても少し問題を分けて議論するべきかなと思い ます。 ○藤田委員   田村委員のお話は、大変興味深く拝聴しました。1つは、財形制度は雇用関係の枠で 財産形成を進めていくということで、そういう意味では自営業者を外してもしかたがな い、範囲を限定すべきだということですが、これは私は正論ではないかと思います。  もう1つ大変興味深いのは、入口は一般財形として入れておいて、出口で住宅と年金 に分けていくというお考えなのです。これは面白い発想ではないか。是非、積極的にご 検討いただきたいと思います。議論の展開として、今ここで出すのがいいのかどうかは わかりませんが、私は結構な議論ではないかと考えました。 ○村井委員   私自身が制度をよく知らないところがあるので、非常に初歩的な質問なのですが、入 口のところでフリーにしておいてというのは、非常に面白い発想だと思うのです。今の 制度の上で、年金、住宅と一般の場合で、税制上の取扱いはそもそも違うのですか。な ぜそんなことをお伺いするかというと、発想としては面白いですし、後ろで問題があれ ば課税をしましょうというのは非常にわかりやすい、耳触りのいい話なのですが、課税 上なぜそこを非課税にするかという理屈づけをするときに、果たしてそこが持つのかな という疑問があるものですから、ご質問をしております。 ○勤労者生活部長   現状は皆さんご存じのとおり、一般財形につきましては以前は非課税枠があったので すが、すでに現在はありません。ですから、一般財形の方々は、ただ単に天引きをされ ていて貯まっていく、にもかかわらず残高はそれなりに保たれている世界です。他の2 つは、その目的ごとに年金と住宅で550万円が限度の形で利子非課税になっております。 ですから、村井委員がおっしゃるとおり税務上のチェックを、二重、三重に使う、悪く 言うと脱税などに使う道をどのように狭めるかは、技術的なところが大きな問題になる のだと思います。先ほどの田村委員のご指摘は非常に私どもの参考になるご意見だと思 いますが、他方で税制上それが受け入れられるような脱税防止策をセットで考えないと、 たぶん税政当局は受け入れてくれないだろうという感じはいたします。 ○村井委員  わかりました。それはそれとして、今おっしゃったのは、アイデアとしてはあり得る と思いますので、そういう場合に課税当局が納得してくれるような仕組みを考える努力 はあってしかるべきだろうと思います。  別の話ですが、1番のところで先ほどからお話を伺っていて、私自身が前回の懇談会 から参加していますので、それ以前の議論をよく知らないところがあるのですが、私の 印象としては、そもそも三者協力の原則が出来上がっている背景の1つが、前回も申し 上げましたが、日本における終身雇用を前提としたところが非常に大きいのだと思いま す。終身雇用のあり方はずいぶん変わってきているので、必ずしも終身雇用に限定され ないさまざまな雇用形態、労働形態に対応した仕組みを考えていく必要があるのではな いかということです。  もう1つは、先ほどこの制度自体がこのままでは廃止の方向へ動くのではないかとい う話もあったわけですが、私自身もそういう危機感、懸念は抱いております。なぜかと いえば、どうもお話を伺っておりますと、三者協力の原則の下に成り立っている今の制 度を、利用できる対象者自体がどんどん狭まってきている。法定外の福利厚生をやって いないような中小企業は、もともと対象になっていない。大企業でさえこういうものは 対象から外れつつあるわけですから、そういう状況の中で、なぜ特定の人だけに対する 非課税上の措置を存続する合理性があるのか。いまの税制改正に関する検討の状況を見 ていると、非常に根拠が脆弱であるという印象を持たざるを得ないと思います。ではど うするか、自営業者まで広げるのは少し行きすぎかなという印象はありますが、少なく とも中小企業の人たちでも利用できる仕組みを構築していく必要があるだろうと。なぜ 利用できないかのお話は、前回の懇談会でもいろいろ伺ったわけですが、仕組みを作っ たから利用しないのはおかしいというのではなく、中小企業の事業主や雇用者であって も利用できる仕組みを考えていくことが、この制度を存続させ、強化をしていくために は必要不可欠なのではないかと思っています。これは先ほどからのお話で言いますと、 原理原則論であるとともに、個別論としても必要不可欠な部分ではないかと思っていま す。 ○新村委員   質問なのですが、非常な低所得者は貯蓄しない、しかし相対的低中所得者で、貯蓄意 欲のある人に対する支援が必要であるという考え方を、基本的な考え方として持つべき であると思うのです。これまでずっと、中小企業への普及が大変遅れているということ で、いろいろな施策、代行制度を講じてきたと私は承っております。それでもなお、あ まりやられていないことから、現行制度は三者協力の原則に依拠してやっているわけで すが、これを取り外すことは可能なのかどうかを伺いたい。制度自体と表裏一体のもの ではないかという感じを持っておりまして、それはこれまで組合の方や先生のお話を聞 いてそう思ったのです。ここでは基本原則を維持していくべきかという問いかけがなさ れているのですが、維持しないで財形制度が成立し得るのかどうかを教えていただけれ ばと思います。 ○勤労者生活部長   今おっしゃったように、いままでは国が支援をする、ただし、国だけではなく、企業 の方も汗をかいてくださいと。実は、三者と呼ばれていますが、本人が汗をかくのは当 たりまえですが、従来は金融機関の方々も汗をかくということで、別の隠れた第三者が いたわけです。そういう中で、皆さんがやるなら国もということで、貯蓄奨励の一環と して非課税枠があったと認識しております。ただ、今、三者協力を一方的にやめたとす ると、今までの論理でいくと、それほど必要はないのですねと、逆に言うと、企業がや めるならば国もそこまでの支援はしなくてもいいのではないかという議論は、一方で必 ずあると思います。他方で、先ほど藤田委員がおっしゃったようにニーズということで、 現実に使う方々の広さにもよると思うのですが、現実にはこれだけのニーズがあって、 やはりここに国が支援するのは大変意義があるのだということをどこまで言えるかと、 国としては、そこで、わかりましたとか、わかりませんという議論になってくるのだと 思います。ですから、一方的に、ただ単に三者協力を絵に描いた餅のような形で、すぐ にやめます、やめませんという議論であれば、財形制度そのものも縮小してしまう可能 性は相当あると思います。ですが、これを発展的に何かやるために絶対必要なのです、 という議論であれば、大変だとは思いますが、論理的にはあり得る世界だと思っており ます。 ○松井委員   三者協力は継続するとしても、その中身は従来のままでいいのかどうかは十分議論し なくてはいけないと思います。事業主の最大の協力の1つは、賃金控除ということにな って、場合によって給付金のようなものも考えろという仕組みになっていると思います が、代行制度がうまく機能しないのは、事業主が賃金控除をして代行機関に送り、代行 機関から金融機関に行くという、振込手数料が2回かかる仕組みは、いまの低金利の仕 組みだと機能しないことになります。以前も申し上げているのですが、それぞれの従業 員の口座から給与支払日に自動引落しにして、この人はうちの従業員だよというお知ら せを金融機関にする仕組みも、場合によってはできるのではないかと思います。この時 代に合った形での三者協力を、もう1つ考えてもらいたいと思います。従来型が維持さ れるというのは、少し難しいと考えております。 ○藤田委員   三者協力というのは、先ほど申し上げたように雇用関係を前提にして、これを枠組み にしているということなのです。その上に立って、勤労者の財産形成の自助努力を助け ていくシステムである。これを、我々は三者協力体制と呼んでいるのだということをは っきりさせる必要がある。  その上で、いま松井委員がおっしゃったように、経営環境が非常に悪くなっておりま すから、これをどういう仕組みに変えていくかという制度論、発想が必要になってくる。 これは我々がいま議論しようとしているところですから、是非仕組みをいろいろ工夫し て、変えていく必要があるだろう。しかし、大本の枠組みは変えるべきではないのでは ないか。経営者は大変苦しいだろうと思いますが、是非勤労者のためにご協力いただき たいと思います。 ○勝委員   今の議論は非常に重要なところだと思うのですが、そもそも財形が存続している1つ の理由は、三者協力の原則があるからだと。これがある限り、それがなくなることはな いのだと思うわけですが、ただこれをあまねくニーズのある人たちすべてに広げること についてどう考えるのか。いま一部の人たちが享受しているタックスシェルターをすべ てのニーズのある人に広げた場合、これは企業ではなく個人単位になっていかざるを得 ないわけです。そういった考え方は、私自身は非常に重要だと思うし、必要だと思うし、 貯蓄から投資へということでも合致するし、先ほど言われたように入口が一般財形で、 出口のほうで押えていくのは、非常に人々のニーズに合うものだと思うわけですが、そ れが本当にすべての人に行き渡らせる余裕が国にあるのかという問題が別にあるわけで す。今、財形を考える場合は、三者協力原則はベースにならざるを得ない、これがある から財形は生き残っているのだと考えるべきなのかなと思います。 ○田村委員   根本のところで、常に出てくるのですが、本当に財形を必要としている人たちにとっ ては、投資を求めているものなのでしょうか。貯蓄から投資へというニーズがあるので はなく、むしろ貯蓄の意識が高く、投資を考えられる人はもう少し余裕のある人たちで、 財形は利用していないのではないかという気もするのです。同じように401kを導入さ れたところで、これもなかなか伸びないのは、個々人が投資に対する判断をしなければ ならないわけですから、ある意味では貯蓄は関接投資で金融機関等に任せているわけで すから、あまり強く投資を意識するよりは、貯蓄というか、将来の安定性のための福利 厚生の一環だという考え方が根本にあってしかるべきだという気がしますが。 ○松井委員   田村委員がおっしゃることは、十分よくわかります。ただ、もし財形の魅力づけとい う1つの視点が入るならば、安定的な商品は確定拠出年金のように必ず1つ入れておく。 それ以外のオプションを設けることは、そういうものだよと教える前提でやってもいい のではないかと、私は思います。すべて財形で、全部安定的でなければいけない、すべ ての方がそう思うのではないのではないか。確かにそういう方は少ないと思いますが、 それは単なるオプションだと考えれば、決して問題はないのではないかと思います。 ○田村委員   労使交渉のようになってしまいますが、401kを入れたときに、そういうオプションを 考えるためには個々人の投資に対する教育や周知が必要なわけです。その時間帯は必ず 費用も含めて使用者側にご負担いただいているわけです。振込手数料云々を言う以前に、 使用者側の負担がかえって増えると思いますので、そんなオプションは逆に使用者側が 乗ってこないのではないかという気がします。 ○松井委員   そこまで教育が必要かどうかというと、全部教育を財形で義務づけることは、もとも と前提としてはおりません。ただ、いまの非課税措置維持云々の話がありますが、いま の利子利息の状況を見ると、非課税措置があろうがあるまいが、財形に貯蓄として入れ ようとする魅力が本当にあるのですかと、労働側に問うてみたいです。安定していてい いということであったとしても、仮にデフレの状況が若干でも脱却したら、実質金利は マイナスになることは十分想定できますので、オプションを設けることまで否定する必 要はないのではないかと私は思います。 ○新芝委員   今の議論で、将来的なそういう検討もあると思うのですが、選択肢として、別に投資 をしたければ現状でも株式投資もできますし、401kが入っている所であればできますの で、そういう意味では何を財形に求めるかだと思います。先ほどから議論が出ている三 者協力を初めとする部分に安心感、安定感を期待して入っている方が多いと思うので、 将来的な議論として投資の部分もあるかもしれませんが、優先課題としては、今、財形 が持っている独自性をいかに保って広げていくかが、まず議論するテーマではないかと 思います。そういう意味では、資料3の「財形制度の必要性」にも賛成ですし、資料4 の「三者協力の必要性」についても、ここの部分は独自性を保つということではますま す必要な点だと私は思っております。 ○奥村委員   財形の魅力がないとか、リスクを感じるということは、いまの財形制度では枠組みを ガチッと固められてしまっていて、自由化の流れに沿っていないところが問題ではない かと指摘させていただいているわけです。若年層は貯蓄率が低いというのは前回も出て いたと思うのですが、最初に借金をして、後から返していくライフスタイルもある。お そらく、これは資産の流動化になるのだと思うのですが、いろいろなライフスタイルに 合わせた形での仕組みを作るためには、とにかく貯蓄だと、こつこつ働いて積み重ねて いけということではなく、制度自身はもっと間口が広く、自由に設計することが今後の 時代には必要なのではないかという気がします。  最初に出ていた、入口で全部入って、出口でレッドカードもあるのだ、ということで すが、もともと一般財形のマル優が廃止された経緯からすると、加入時点でマル優適用 で、その後、それも非常に長期に貯蓄した場合で、要件違反の場合は5年しか遡及しな いとなると、とてつもなく現実的な話ではなく、おそらくマル優があればそれが1つの 魅力になるだろうという、非常に限定された議論になっているのではないかと思います。 こういった議論をやっているから、財形はだんだん硬直化していったのではないかと思 うのです。少なくとも、財形に関して、みんなに入ってもらう、商品はこういったこと に固定するという、ようなことをし始めて、さらにその預け替えはできない、リスクを 回避することもできない、企業が選んだ金融機関でしかできないといった、そういった 制約がどんどんついてくると、皆さんいろいろなニーズを持って、いろいろなライフス タイルで生活設計されていると思うのですが、そういったことにますます応えられない ことになってしまうと思います。鶏が先か卵が先か、だんだんわからなくなるのですが、 制約を加えれば加えるほど、制度は魅力がないものになってくるとしか思えません。  余計なことを言えば、最初にお金を貸してあげますと、そのあと賃金控除か口座振替 か知りませんが、返してくださいというライフスタイル支援制度があってもいいのでは ないですか。そういう仕組みに変えていくという発想があってもいいのではないかとい う気もします。 ○藤田委員   貯蓄から投資へという合言葉を財形に適用すべきかどうかは、確かに議論があると思 います。ですが、1つ考えなくてはいけないのは、ニーズがあるか、必要があるかとい うことの1つに、今の制度がニーズを充足しているか、満たしているかがあるのです。 非課税枠は550万、しかも今の金利は低金利で、貯めても貯めても住宅を買う、あるい は老後の年金資産にすることはかなり難しい状況、ニーズになかなか達しないという問 題があるわけです。それを充足させるためにはどうしたらいいかが、もう1つ問題とし て浮き上がってくる。その場合、多少リスクを取っても投資的な金融商品を購入できな いかというニーズも出てくるわけですから、それにどう応えていくか。長期にわたって 財産形成をしなくてはいけない、したがって安定的な運用が必要であることは重々わか ります。それとの見合いで、現行の枠の中では財形とは謳っていても、ニーズを満たす ことはなかなかできないという不満も同時にあるということです。この審議会でも、550 万の非課税枠をもっと、例えば1,000万にしてくれという話をしてきたと思います。そ ういう中で、この問題も考えていかなくてはいけない。極端にリスクのあるものは選べ ないと思いますが、本人の選択によって判断してもらう範囲のものであれば、現状から 言ってやむを得ないのではないかと考えております。 ○齋藤座長   いろいろ議論してきましたが、時間も過ぎてしまいましたので、とりあえずこの問題 はこの辺にして、次回に改めて財形融資の議論をしていきたいと思います。今日はペー パーの説明をしていただいて、次回は引き続いて融資のことを議論していきたいと思い ます。 ○企画官   資料6として、「財形融資の論点」ということで整理をしました。  融資の論点は、I「当面の課題」、II「将来的な課題」の大きく2つに分けておりま す。IIの「将来的な課題」ですが、融資の必要性について、財形融資制度をこれまでど おり継続していく必要があるのか、廃止してもいいのかどうかという議論があり得ると 思いますので、その論点についてはIIで整理しております。それに対して、Iの「当面 の課題」については、現行の財形融資制度を継続することを前提にした場合でも、いく つか論点が出てくることになりますので、継続することを前提に出てくる論点として整 理しました。  まずIの「当面の課題」です。1の論点「財形融資の実施主体」ですが、転貸融資と 直接融資という2つの枠組みに分け、転貸融資については雇用・能力開発機構、直接融 資については住宅金融公庫などで融資を実施しております。  資料2−2の1頁をご覧ください。融資の実施主体として、一番上に雇用・能力開発 機構という独立行政法人の箱がありますが、ここを実施主体として企業や事業主団体、 福利厚生会社を経由して勤労者にお貸しする転貸融資を行っております。もう一方の実 施主体として、直接融資は、転貸融資を受けられない勤労者に対して住宅金融公庫など が直接お貸しする形で実施しております。こういった形で、転貸融資と直接融資の2つ の制度に分け、2つの実施主体で融資を行っているというやり方になっております。  これに関連して(2)ですが、転貸融資と直接融資と分け、複数の実施主体で融資を 行っている仕組みについては、業務の効率化の観点から1つの実施主体でやることも考 えられるのですが、こういったことについてどう考えていったらいいかという論点です。  (1)に戻りますが、雇用・能力開発機構についての論点です。現在、労働保険特別 会計については、特会改革の一環として見直しが進められており、雇用保険の三事業や 労災保険の労働福祉事業については、大幅に事業を縮小していく方向で検討が進められ ています。その一環として、雇用保険三事業などは多くの部分が独立行政法人にお金が 流れておりますので、独立行政法人の業務を見直すことによって、雇用保険三事業など の予算額も減らしていくということで、セットで作業が進められております。今後、雇 用・能力開発機構についても業務の見直しが進められることが想定されます。その際、 能力開発に特化していく方向で検討が進められることが考えられますが、雇用・能力開 発機構で実施している財形融資の業務が、これまでどおり実施できなくなる可能性もあ ると考えております。その場合には、財形融資の実施主体は、雇用・能力開発機構に代 えてどこにしたらいいのかという論点です。1つの案としては、中小企業の退職金共済 をしている勤労者退職金共済機構で実施していただくことも考えられるのですが、その 辺りについてご意見を伺いたいと思います。  2の論点は「財形融資の資金調達方法」です。現行の仕組みは、雇用・能力開発機構 や住宅金融公庫が資金調達を行うときの応諾義務を、財形貯蓄をしている金融機関に課 しており、それに基づいて随意契約を結ぶことによって、雇用・能力開発機構や住宅金 融公庫は資金調達を行っております。この仕組みについて、より競争性、透明性を高め る方向で改善することが考えられるのですが、1つの方法として入札によって調達する 方法などが考えられます。そういったことについて、どう考えていったらいいかご意見 を伺いたいと思います。  3の論点は「事業主の負担軽減措置の取扱い」についてです。財形融資を受けるため には、三者協力の原則の一環として、事業主が勤労者に対して、負担軽減措置として最 初の5年間にわたって1%の利子補給か、年3万円の住宅手当を支給するか、いずれか を事業主にしていただくことが要件となっております。この要件について、いくつかの 問題が生じてきている状態にあります。  (1)は、国家公務員の住宅手当の問題です。国家公務員の住宅手当は、平成15年の人事 院勧告で基本的に廃止の方向で対処することとされております。現在のところまだ廃止 されてはいないのですが、これが廃止された場合には、国家公務員については事業主の 負担軽減措置がなくなることから、財形融資を受けることができない状態になります。  (2)は、民間の勤労者についても、事業主の負担軽減措置を会社にしていただけないと いうことで、財形貯蓄をしているにもかかわらず、財形融資を受けられない勤労者も見 られる状況にあります。こういった状況の中で、事業主による勤労者の負担軽減措置の 要件を外していったらいいのか、今後とも継続していったらいいのかについてご議論い ただければと思います。仮に三者協力の要件の1つとしての負担軽減措置を外すとした 場合には、財形融資は民間の住宅ローンとあまり変わらないことになり、こういう融資 が必要なのかどうかという議論も波及して出てくると思っております。  4の論点「財形融資の対象とする資金」についてです。現行の制度は、住宅融資と教 育融資を行っておりますが、勤労者のライフステージの節目ごとに必要となる資金につ いては、下の(1)〜(4)のような資金のニーズもあると考えておりますが、こういったメニ ューを対象としていく必要があるかどうかについてご議論いただきたいと思います。  他方で政策金融の見直しや縮小が求められる中で、融資のメニューについても、民間 金融を補完するものとして見直していくことが求められてくると思いますが、そうした 場合には、現行の住宅や教育からどういった分野にシフトしていけば、民間金融を補完 し、バッティングしないものになるのかについても、併せてご議論いただきたいと思い ます。  (2)ですが、3つの融資のメニューが並んでおります。これらは実績がほとんど上 がっていない状態にありますので、こういった制度をどうしたらいいかについてご議論 いただきたいと思います。  3頁目、II「将来的な課題」です。融資の制度が今後とも継続していく必要があるの か、廃止してもいいのかどうかに関わる論点です。現在、融資のメニューとして行って いる教育や住宅の融資については、民間で幅広く行われるようになっていたり、政策金 融の議論の中でも、民間金融を補完するものとして見直していくことが求められる可能 性が、今後出てくるのではないかと考えております。そういったことを踏まえて、財形 持家融資、教育融資について今後どうしていくかについての議論です。  まず持家融資ですが、住宅政策が変わっていこうとしているということで、公的な住 宅融資としてはこれまで3つの融資がありました。1つ目は住宅金融公庫の融資、2つ 目は年金の住宅融資、3つ目は財形融資です。住宅金融公庫の融資は、平成19年度から は基本的には行わないこととされ、年金の住宅融資は平成17年度末で廃止されるという ことで、財形融資だけが残る状況になっております。このような中で、財形融資の将来 的な意義や必要性をどう考えるかについてご議論いただきたいと思います。財形融資に ついては、三者協力の原則として貯蓄とセットになっているということで、50万円以上 の貯蓄残高があることが要件となっていたり、事業主の負担軽減措置として一定の支援 を引き出すという側面があることから、民間の住宅ローンとは性格が違うと考えており ますが、そういったことを踏まえて、将来における意義、必要性はどうかということを ご議論いただければと思います。  教育融資についても、同じような融資が国民生活金融公庫で行われておりますが、政 策金融改革の一環として見直しが予定されております。他方で財形の教育融資について も、三者協力の原則として貯蓄とセットの制度になっているという面で、民間の教育ロ ーンなどとは違う性格を有していることがあるのではないかと思っております。そうい ったことも踏まえて、将来における意義、必要性をどう考えていったらいいのかについ てご議論いただきたいと思います。  最後に、勤労者の資金需要への政策的な支援の仕方の問題ですが、民間金融を補完す る方法でやることが求められてきております。民間金融を補完する方法としては、将来 的にはどういった支援方法をとっていったらいいのかについてご議論いただきたいと思 います。その場合、大きく2つの方法があるのではないかと思っております。1つは、 民間金融とバッティングしない分野を見つけ出し、そこを融資の対象としていくことで す。2つ目の方法としては、住宅金融公庫の証券化支援の事業のように、民間金融を補 完するような支援の仕方を考えていく方法も考えられると思います。そういったことも 踏まえてご議論いただければと思います。以上です。 ○奥村委員   この形で本当に議論ができるかどうかよくわからないのです。要は将来的な課題が基 本だと思います。『財形融資の論点』の基本的考え方は、当面、制度を改善する、いや 、国の行政の方針が変わってきたので、それに合わせなければいけないということのよ うなのですが、本当に財形融資制度が必要かどうかという基本がないままに当面どうす るかを議論しても、民間の金融機関でできるものは民間に任せるという方針の中でどう するのかという議論が出たときに、小手先だけで改善してしまうと非常にまずいことに なるのではないかという気がするのです。  もう1つ、これは前から言っているのですが、財形の融資制度は財形に魅力をつける という目的もあったのではないかと思うのですが、財形を利用している人は誰かとなっ たときに、利用できる人が非常に片寄っているということで、結果として本当に勤労者 のための制度になっているかどうかの疑問があります。確かに魅力のある制度だという 気はするのですが、実際に国庫からの補助やいろいろな財源を確保してやられているこ とが、本当に効率的になっているのかどうか、これも理解できません。これまでにも何 回も言っているのですが、なかなか資料も出てこないし、そういう意味では納得ができ ないということが多々あるので、次回この話に触れる場合、1つには融資制度はどうい う枠組みでできていて、民間の金融機関に比べて本当に効率的になっているのか、こう いった制度を作ってきたことが財形制度の魅力を上げて、現実に財形の加入率等を上げ てきたのかどうかを、まずきちんと説明をしてください。制度を具体的にどうするかと いう技術的な話をしていると、今も原理原則の話をしましょうという委員の皆さんの議 論だったのですが、原理原則を離れたテクニカルな議論だけになってしまうと思われま すし、本当の意味で財形が普及する形での議論につながっていかないのではないかとい う気がします。 ○勤労者生活部長   今のご指摘ですが、原理原則論は、先ほどのIIの将来にわたってという所で、おっし ゃいますように、いま世の中はそれほど甘くないという、現実にいろいろ変わってきて いる、その中で、そもそも論が必要だと思っております。ですから、そもそも論はそこ で是非やっていただければと思います。ただ、そもそも論ですぐにできるかといいます と、私どものマンパワーや省全体としての法律案を出し得る順番などがあるものですか ら、少なくともあと1年、2年は法案化できない可能性が、厚生労働省全体の中でそう いう状況にあります。そうしますと、当面の間は法改正をある程度しないでやっていか ざるを得ない状況になるのかなという感じがしております。その意味で、大きな法改正 をする話、あるいは要る要らないの話、根本論は大きなIIで、法改正もある程度必要な のかもしれませんが、法改正でなければ対応できない面と、他の面でも対応できるもの もありますので、いろいろご議論を頂戴して、当面の間どのようにやっていくのかとい う形で出したわけです。 ○齋藤座長   先ほど言われた資料は調整をして、今までもたくさん出ていますが、今、言われたこ ととぴったり合っていないかもしれませんから、合う資料を作っていただきたいと思い ます。  それでは、今日はこの辺にしたいと思います。次回は1月ごろということで、後日、 事務局で日程の調整をいたします。本日の議事録の署名についてですが、従来どおり座 長の私と座長が指名する委員ということで、労働者側から南雲委員、使用者側から奥村 委員によろしくお願いいたします。  それでは、今日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。 照会先:厚生労働省労働基準局勤労者生活部企画課財形管理係 (内線5368)