05/11/25 第6回脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会議事録 第6回 脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会                    平成17年11月25日(金)                    キャピトル東急ホテル 銀の間  佐藤座長 それではただいまから「第6回脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会」 を開催したいと思います。まず、前回検討会以降、監視指導・麻薬対策課監視指導室長 がおかわりになったので、一言ごあいさつをいただきたいと思います。  大西室長 10月31日付で中村室長の後任で参りました大西と申します。どうかよろし くお願いいたします。  佐藤座長 それでは早速議事に入りますが、まず本日の資料の確認を事務局の方から お願いいたします。  事務局 それでは本日の資料の確認をいたします。お手元の資料の1枚目。議事次第 の次から申し上げます。まず資料1。違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)対策のあり 方について提言(案)でございます。資料2は同じ題名で、その(提言案:要旨)でご ざいます。参考資料に入りまして、参考資料1番がいわゆる「ハイミナール遊び」につ いて。参考資料2がA4横でございますが、違法ドラッグ対策の流れとなっております。  それからルームペーパーといたしまして、長岡委員から御配付をいただきました、「緊 急レポート「ドラッグの罠」」でございます。これにつきましては、後ほど長岡先生の 方から御説明いただくと了解しております。以上です。  佐藤座長 それでは本日は前回の骨子を議論いたしました、この検討会の提言案とい うのが本来の主な議題でございますが、その前に前回のこの会で事務局に調べるように という要請がございましたことについて、事務局から報告をいただきたいと思います。 どうぞ。  事務局 それでは参考資料の1と2について御説明申し上げます。まず参考資料1、い わゆる「ハイミナール遊び」についてでございます。本件につきましては、前回、昭和3 0年代に猖獗を極めたハイミナールの乱用が、どのように沈静化されたかという経緯につ いて調べることが要請されたものであります。この医薬品を作っていたのはエーザイで すが、同社にも問い合わせておりますが、何分昔のことで完全な情報が得られたわけで はございませんが、警察白書等も参照いたしまして調べた限りのことを御報告申し上げ ます。  まず資料につきまして、ハイミナールにつきましては製造・販売はエーザイ株式会社。 成分は第1種向精神薬のメタカロンでございます。適応症は最終的にはここにあります ように、あらゆる不眠、鎮静、不安、その他、手術前の不安・興奮までいろいろなもの が入っております。恐らく最初に売り出されたときはもう少し、不眠とかそういったも のだけだったのではないかと思われるところです。  販売中止ないしは承認整理にいたるまでの経緯を御報告申し上げます。2.でございま す。昭和30年代に一般薬(OTC)つまり処方せんなしで買える薬として承認を受けて おります。そして社会的には昭和35年ごろ以降、睡眠薬遊びが主として少年の間で流行 しています。その代表がハイミナールであったということでございます。昭和38年には 乱用はピークを迎え、警視庁は約2,000人の少年を補導したと記録にございます。このよ うな状況にかんがみ、昭和37年6月、これらハイミナールのみならず、要指示薬になっ ていなかった、当時OTCとして薬局で買えた幾つかの睡眠薬がまとめて劇薬に指定さ れ、要指示薬になりました。その後、流行がおさまったということであります。この薬、 ハイミナールそのものにつきましては、昭和61年まで医療用医薬品として一応市場にご ざいまして、61年9月販売中止、63年3月に承認整理という事実関係になっております。  引き続きまして参考資料2について御説明申し上げます。前回、小沼先生より違法ドラ ッグの現在の行政的な対応につき、特に組織としてどういうところがやっているかとい うことを明示した上で、薬事法による規制から、麻薬または向精神薬に指定するまでの 間について、図にして、どのような規制になっているかを示すことが要請されました。 そこで一部につきましては既に説明した部分もございますが、その組織ということに重 点を置きまして図を作成しましたので説明申し上げます。左側のこの点線の中に入って いる部分が薬事法から麻薬または向精神薬に指定するまでの流れでございますが、外側、 右側の方が違法ドラッグ販売者等でございます。上の方にはWHO・UNDCPの国際 機関が書いてございます。  まず右側から申しますと、上から2つ目の丸でございますが、違法ドラッグ販売者が 販売しているものについては、都道府県の買上・収去等があり、成分分析を国立医薬品 食品衛生研究所の方で成分分析等をし、分析結果によって都道府県から指導が行われて います。矢印が左に行き、右に行くと。一方、違法ドラッグ販売業者はホームページ等 に広告を出しているわけですが、当課でインターネット広告監視を行い、問題のあるも のにつきましては警告メールを出しております。それから乱用実態調査につきましては、 現在、国立精神・神経センター、和田委員のしておられる調査でございますが、全国調 査、世帯、中学校、救急病院、精神病院、そして児童自立支援施設等におきまして、内 容の実態につきましてデータを得、これを厚生科学研究の成果として、当課に御報告い ただいております。また、もちろんこの乱用者におきましては、薬物依存症例モニター を行っているところでございます。  左側に移りまして、こういった成分に関する情報、乱用実態に関する情報、また言っ てみれば症例に関する情報といったものを当課といたしましては収集し、さらに依存性 精神毒性に関する科学的データの収集を例えば海外等から集め、さらにそれに加えて検 証試験を国立精神・神経センター等によって実施していただき、十分なデータがそろっ たところで依存性、精神毒性の評価を今度は依存性薬物検討会の方で行い、麻薬または 向精神薬に指定し得るだけの有害性といったものが立証された段階で、これらに指定し た上で指定していくという、このような流れになっております。一番上のWHOやUN DCPはもちろん条約等での物質の指定といった問題、それから一般にいろいろな薬物 の情報を当方に提供していただいているという、このような形になっております。説明 は以上でございます。  佐藤座長 ただいま御説明がありましたが、参考資料1と2でございますが、これに つきまして、何か御質問、御発言がございましたら、どうぞお願いします。ハイミナー ルについては前回どのような経緯で乱用がなくなったのかという、そのことの報告でご ざいます。よろしいでしょうか。第2の違法ドラッグ対策の流れというのは、わかりや すくまとめていただきました。これについていかがでございましょうか。どうぞ、板倉 先生。  板倉委員 実際に警告メールをお出しになっているかと思うのですけれども、それに ついて実際の効果というのでしょうか、警告メールを出された後について、どういった 状況になっているのかについて、具体的に御説明していただけるとありがたいと思いま すが。  事務局 違法ドラッグ業者に対しまして、直接インターネット広告監視をする際に、 そのサイトに対して違法事業者がいた場合には警告メール等を発しているわけでござい ますけれども、サイトは必ずしも国内のサイトだけではありませんし、海外のサイト等 もございます。もちろん警告メールにあわせて、国内の事業者さんに対しましては、こ の中には直接は書き込んではありませんけれども、都道府県等にも連絡をして、あわせ て国内都道府県から指導を行わせていただいているという状況でございます。もちろん それによって警告ルール等を有して直接ホームページ等を広告を削除していただけると ころもあれば、海外サイトのように、一部にはなかなか閉じていただけないというとこ ろもあるということでございます。  佐藤座長 ありがとうございました。  鈴木委員 1点だけ追加はよろしいでしょうか。先ほどのハイミナールの方なのです けれども、これはちょっと特殊な医薬物で、実はヒトでは内容が随分報告されまして、 動物実験の方ではサルでいろいろな検討がやられたのですけれども、サルでは依存を証 明することができなかったのですね。それで私どもは1980年代ぐらいにラットで検討を 行いまして、ラットでは証明できたということで、とかくサルが非常にいいということ で、全体的にはそうだと思うのですけれども、そういう面でサルでちょっと証明できな かった代表的な例かと思いますので、追加させていただきました。  佐藤座長 ほかにはございませんか。板倉委員。  板倉委員 ハイミナールが販売中止になった理由について、もし御存じの点がござい ましたら、教えていただきたいのですが。  佐藤座長 それは事務局、いかがでしょうか。  事務局 殊にこれについては聞いておりませんが、簡単に言えば売れなくなったから ではないかと思っています。  佐藤座長 はい、町野先生。  町野委員 済みません。ちょっとお教えいただきたいのですが、ハイミナールについ て、昭和38年度に補導したというのがありますけれども、補導というのは少年法の何か 徳性を害する行為ということですが、そちらでやられたわけですか。そしてそのことと、 現在は違法ドラッグを所持している、使用している青少年等について、補導ということ は実際に行われているのでしょうか。  事務局 昭和55年の警察白書を読みます。「睡眠薬遊びが注目され始めたのは35年ご ろからであり、この後約1年間の間にこの風潮が次第に広まり、睡眠薬を飲んで理性を 失った少年が強盗や傷害等を犯したり、不純異性行為にふけるなどの憂慮すべき状況が あらわれ、ピーク時の38年には警視庁だけでも約2,000人の少年が補導された」という表 現でございます。また、違法ドラッグを持っているだけで補導されているかどうかにつ きましても、ちょっとこちらではわからないのですが、何かありますでしょうか。そう いう状況です。  佐藤座長 よろしいでしょうか。  大西室長 恐らくは路上で酔っぱらった状況で警察が補導していると思うのです。だ から警職法がその当時できていますかね。  町野委員 警職法の保護ですね。わかりました。  佐藤座長 よろしいでしょうか。それではそのあたりで、次の議題に進みたいと思い ますが、議題1の「検討会提言案の検討」でございます。この検討会の過去5回の議論 を踏まえまして、事務局と私とで、本検討会の最終的な提言案を整理してみました。こ の案につきまして、事務局より資料に基づいて説明していただきたいと思います。  事務局 それでは説明申し上げます。資料1「違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ) 対策のあり方について(提言案)」をごらんください。なお資料2はこの要約になって おりますので、資料1について説明申し上げます。前回、報告書の骨子案ということで、 その審議をいただきました。今回お示しいたします提言案は、その骨子を前回の審議結 果に基づき、直した上でこれに肉づけしたと。基本的にはそういう形になっております。 今回はまず大段落の区切りごとに読みまして、その上でその箇所につき前回の骨子のと ころから加えたり、あるいは変更があったところ等につきまして、簡単な説明を申し上 げます。それでは「はじめに」のところから読みます。  はじめに。「脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会」は平成17年2月26日に設 置され、これまで6回にわたり、いわゆる脱法ドラッグの現状やその特徴を踏まえな がら、その規制方策や乱用防止のための啓発活動のあり方等について議論を重ねてき た。今般、これまでの議論、検討結果を取りまとめたので、ここに報告する。  なお、従前の「脱法ドラッグ」という呼称は、これらが薬事法違反である疑いが強 いにもかかわらず、法の規制が及ばないかのような誤ったメッセージを与えかねない ため、本検討会ではこれを「違法ドラッグ」へ変更すべきとの結論に達した。ただし、 これまで脱法ドラッグと呼ばれていたものと異なる物との誤解・混乱を生じないよう、 当面は「違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)」と括弧書きを付すこととした。そ こで本報告書でも、これまでの脱法ドラッグという呼称を改め、違法ドラッグ(いわゆ る脱法ドラッグ)(以下単に「違法ドラッグ」と表記。)の呼称を用いている。  「はじめに」につきましては、骨子にはなかったわけですけれども、最初に経緯を書 き、第2段落目につきましては、前回、議論のございましたこの呼称をどうするかとい った、その結論が反映されております。  続いて、1.違法ドラッグの現状に参ります。  人為的合成か天然物由来かを問わず化学物質には、麻薬等と同様に多幸感、快感な どの効果を期待して、摂取されるものがある。それらの中には、やがて乱用に伴う保 健衛生上、社会上の危害が顕著となり、また、依存性、精神毒性等の有害性が解明さ れ、麻薬に指定されるなど法的な規制がなされるものもある。(例えば、昭和45年(19 70年)に麻薬に指定されたLSD、同じく平成元年(1989年)のMDMAなど。)  違法ドラッグは、平成10年頃から一部の薬物マニアの間で流行し始めたと推定され、 現在、以下のような状況にある。  (1) 違法ドラッグは、薬事法違反(無承認無許可医薬品)である疑いが強いにもかか わらず、麻薬や向精神薬に指定された成分は含有していないため、アダルトグッズシ ョップ、インターネット等の通信販売などで「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」など と称して半ば公然と販売されており、最近では青少年を中心にその乱用が拡大する傾 向にある。  (2) そうした乱用の拡大を背景に、違法ドラッグの過量摂取や数種類の違法ドラッ グの併用によるものと疑われる中毒等の健康被害や事故(死亡例を含む。)が発生して いる。更には、違法ドラッグの使用をきっかけに麻薬や覚せい剤の使用に発展したと 思われる事例も知られており、違法ドラッグを通じて薬物乱用に対する罪悪感や抵抗 感が薄れる、あるいは、より強い刺激を求める欲求が生じることで、麻薬や覚せい剤 等へのゲートウェイ(入り口)となる危険性が高くなっている。  1.につきましては、先回の骨子から加わったりしているところはございません。  2.違法ドラッグとは。  (1)本検討会で検討した違法ドラッグ。本検討会においては1.の現状を踏まえ、 違法ドラッグの範囲を、実際に依存性等を有するか否かによらず、できる限り幅広く とらえて乱用対策のあり方につき検討を行うため、検討対象を「麻薬又は向精神薬に は指定されておらず、麻薬又は向精神薬と類似の有害性を有することが疑われる物で あって、専ら人に乱用させることを目的として製造、販売等がされるもの」とした。  (なお「乱用」とは、狭義には、本来あるべき用途や目的から外れる使用等を指す。 また、医学的な定義は必ずしも定まっていないところである。本検討会では、法に抵 触するか否かによらず、我が国の社会規範に照らして逸脱と見なされる行為としてよ り広い概念で捉えている。)  (2)違法ドラッグの特徴。こうした違法ドラッグ対策のあり方を検討するに当た って、まずその特徴的な事項として留意すべき点として、以下が挙げられる。  (限られた情報・科学的知見)。麻薬の化学構造を部分的に変化させた新たな物質や、 これまで我が国ではほとんど知られていなかった幻覚性植物等に由来するものが次々 と出現しており、また、含有成分がある程度判明した違法ドラッグであっても、容易 に販売名や包装形態等を変えて販売がなされるなど、実際にどのような物質が含まれ ているか不明なまま流通している製品が多い。  製品に含まれる成分として物質が特定された場合であっても、ほとんどの場合、依 存性や精神毒性等の有害性に関して現時点で得られている科学的知見は非常に限られ ている。  (目的を偽装した販売等)。違法ドラッグは専ら乱用に供する目的で流通しているが、 規制を逃れるため、芳香剤・防臭剤、ビデオクリーナー、研究用試薬、観賞用等と称 した上、幻覚等の作用を「誤用防止の注意書き」等で偽装し、あるいは用途を一切標 榜標祷しないまま、輸入、販売等がなされているものがほとんどである。  このような場合でも、違法ドラッグを購入、乱用する者は、別途インターネット等 を通じて、その摂取方法や効果等に関する情報を得ている。  2.につきましては、(1)の第2段落。乱用に関しまして、前回乱用に関する医学 上、法律上の定義等が議論されまして、基本的にここでは広くとらえるというコンセン サスに達したところでございます。それを反映した記載はここに挿入されたとところで ございます。  続きまして3ページ。3.現行制度における規制と問題点。  これまで違法ドラッグヘの規制対応は、麻薬及び向精神薬取締法(以下「麻向法」と いう。)と薬事法の2つの法律により行われており、その具体的な規制内容と問題点は 以下のとおりである。  (1)麻向法による対応。国では、麻薬又は向精神薬と類似の有害性が疑われる化 学物質や基源植物につき、依存性、精神毒性等に関する科学的データの収集、調査を 積極的に実施し、かかる有害性が裏付けられ次第、速やかに麻薬等に指定している。 いったん麻薬等に指定されれば、それを含有する製品に対しては厳しい取締りがなさ れることになる。  平成14年6月、サイロシビン又はサイロシンを含有するきのこ類(いわゆる「マジッ ク・マッシュルーム」)が麻薬原料植物に指定された。また、本年4月には、違法ドラ ッグの成分からAMT及び5-MeO-DIPTの2成分が麻薬に指定された。更に現在、 MBDB及び2C-T-7の2成分について麻薬に指定すべく準備が進んでいる。  (問題点)。しかしながら麻向法では、個々の物質について有害性を立証した上で、 当該物質を麻薬等に指定するため、規制範囲は指定対象となった物質を含有する製晶 に限定され、次々と化学構造が類似した物質が新たに出現し、それらを含有する製品 が目まぐるしく交代して流通する違法ドラッグを迅速かつ広範に規制することは難し い。また、有害性が疑われる物質が特定されてから、最終的にそれが麻薬等に指定さ れるまでには、科学的データの収集等のため少なくとも1〜2年の時間を要するとい う間題がある。  (2)薬事法による対応。違法ドラッグは、専ら人に乱用させることを目的として 販売等がなされている。このため国及び各都道府県では、薬事法で定義する医薬品「人 の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」(第2条第1項第3 号)に該当し、薬事法に基づく承認や許可を受けずに業として輸入、販売等がなされて いる医薬品、すなわち無承認無許可医薬晶の疑いがあると判断し、監視指導を行って いるところである。  (問題点)。2.(2)で述べたように、違法ドラッグは、人体への摂取を目的と していないかのように偽装される等、薬事法の規制対象となることが立証困難な場合 があり、取締りの実効性に支障が生じている。  また、乱用者自らが違法ドラッグを外国から直接購入し、郵送等で取りせる行為(個 人輸入)については、現行の薬事法で規制が設けられていない。近年、インターネッ トの普及に伴い、一般消費者でも安易に個人輸入を行える状況にあり、特に、青少年 が興味本位で違法ドラッグを輸入するおそれが大きくなっている。さらに、国内での 販売を目的としながら個人輸入と称して違法ドラッグを大量に輸入している事例や、 個人輸入の代行を謳いつつ、実際は国内で販売を行う事例があるなど、個人輸入とい う形態が悪用されている実態もある。  3.につきましては、(1)麻向法による対応の第2段落ですけれども、麻薬等への 指定の歴史、植物もふえまして、最も新しいMBDBまで書き加えてございます。以外 は前回の骨子に肉づけしたものでございます。  4.違法ドラッグ規制の視点。  上記3.に示した現行制度における規制とそれらの抱えている問題点を踏まえ、今 後、違法ドラッグ対策の強化を進める上で、次の事項を考慮して具体的な方策を検討 する必要があるものと考えられる。(1)4迅速な規制。麻薬又は向精神薬と同様の 有害性を有することが確認された物質については、速やかに麻薬等として指定し、厳 しい規制を行っていくべきである。化学構造の一部を変化させた新たな物質等が次々 と出現することから、含有物質の有害性に関する情報が必ずしも全て集積されていな い段階であっても規制がなされるべきである。  (2)広範な規制。乱用に供する目的で流通している疑いのあるものに対しては、 用途の標榜等の如何にかかわらず、危害発生の防止を図る措置がとられるべきである。  (3)確実な規制。取締りが効果的に実施されるような仕組みがとられるべきであ る。乱用者自らが外国から直接購入すること(個人輸入)を含め、違法ドラッグの入 手機会を抑えることが考慮されるべきである。  4.は「かくあるべし」というところでございますので、前回の骨子から変えており ません。  5.違法ドラッグ規制の具体的方策の検討。  こうした視点に立ち、本検討会において違法ドラッグ規制の具体的方策につき、各 分野の専門的観点から議論を重ねたところ、おおむね以下のような意見に集約された。  (1)麻向法による規制。まず、違法ドラッグ対策を講じていく上での基本的な前 提として、麻薬又は向精神薬と類似の有害性が確認された物質については、引き続き、 速やかに麻薬等に指定していくべきである。  その一方で、麻薬等の指定に至るまでの間は有効な規制ができないこと、また、麻 薬等と類似の有害性が必ずしも見出せない物質については、現行の麻向法の枠組みで は規制できないことといった諸問題を解決する必要がある。  これらを解決する方策として麻向法の下で新たに「一括指定制度」あるいは「暫定 指定制度」を導入することが可能であるかどうかについて検討を行ったが、次に示す ように、我が国の法体系上困難であると考えられる。  (1) 一定の化学構造を有する物質群を一括して規制対象とする「一括指定制度」に ついては、指定された化学構造を有する物質でも有害性の程度に大きな差があり、中 には有害性が全く認められないものが含まれる可能性もあるため、それらに対し一律 に厳しく取り締まることは、罪刑法定主義及びそれより派生する諸々の刑法理論に照 らして問題がある。  (2) 麻薬等に相当する有害性が疑われる物質につき、それが立証されるまでの間、 暫定的に規制対象とする「暫定指定制度」については、一定期間に有害性が立証され ずに指定を解除することとなった場合、指定期間中に摘発され、有罪となった者の取 扱い等について刑事立法上の問題(処罰の必要性及び根拠の問題、国家賠償の問題等) が生じるおそれがある。  したがって、上記の問題を解決するためには、麻向法とは別の法体系による、迅速 かつ広範な規制を講じる方策を検討する必要がある。  (2)薬事法による規制。薬事法は、いわゆる「目的規制」の体系を採用し、有害 性の程度や表向きの標榜等の如何によらず、「人の身体の構造又は機能に影響を及ぼ すことが目的とされている物」を全般に規制対象としていることから、麻向法に比べ て格段に迅速かつ広範な規制が可能である。  しかしながら、現行の薬事法では、上記3.(2)で述べたように、医薬品への該 当性を立証しにくい場合が多いほか、乱用に供する目的が疑われる段階での規制や、 個人的に使用するためとして輸入される違法ドラッグヘの規制が困難である。  こうした現行の薬事法における規制の間題点について改善策を講じることにより、 違法ドラッグに対する取締りにより一層の機動性、実効性を持たせることが可能とな るものと考えられる。具体的には、以下の事項に関する法的整備を検討すべきである。  (1) 規制根拠の明確化。違法ドラッグの有効成分として使用(乱用)実態が認めら れる物質をあらかじめ明示し、そうした物質を正当な理由なく含有する製品(=違法 ドラッグ)は、表向き人体摂取を目的としない旨を標榜していたとしても薬事法の規 制対象となることを明確にする。  (2) 製品の違法性が疑われる段階での対応。違法ドラッグの有効成分とみなされる 物質を含有する可能性がある不審な製品が輸入や販売をされている等、乱用に供する 目的で流通していることが強く疑われる場合には、保健衛生上の危害を未然に防止す るため必要な措置を採ることができるようにする。  (3) 流通(輸入)の規制強化。違法ドラッグについては、販売等に対する取締りに 加え、個人が外国から直接購入すること(個人輸入)に関しても一定の規制を行い、 その入手機会を可能な限り制限する。  (3)違法ドラッグの個人的な使用のための所持及び使用に関する考察。3.(1) で述べたように、違法ドラッグ成分の中にはやがて麻薬に指定されるものがあり、麻 薬に指定された以降は、それらを含有する製品を所持したり、使用することは当然、 取締りの対象となる。そこで、違法ドラッグであっても所持や使用を規制することが できれば、取締りや啓発活動を行う上で一層効果的であり、その方向で検討すべきで はないかとの議論があった。  しかしながら、現時点で麻薬相当の有害性が立証されたといえない違法ドラッグに ついて、販売や譲渡を予定しない個人的な使用のための所持等までも規制することは、 有害性の程度に応じた規制の均衡という観点から、基本的に困難ではないかとの指摘 がある。また、5.(2)において可能な法的手当を検討すべきとしたような、流通 段階における規制・取締りの強化を図ることによって、興味本位や無思慮、あるいは 無規範な考えによる違法ドラッグの入手や使用は相当程度抑制される可能性が高いと の意見もあった。  このように、違法ドラッグの所持及び使用の規制については、現時点で直ちに法的 な措置として実現の途を探ることは難しく、また、その必然性も必ずしも高くないの ではないかと考えられ、本提言を踏まえた違法ドラッグ対策の帰趨や成果、また、そ れら対策が講じられた結果としての違法ドラッグの乱用実態等を十分に把握・検証し た上で、麻向法における麻薬や向精神薬の規制とのバランス等を含め、今後検討すべ き課題でないかと考えられる。  5.につきましては、前回(1)と(2)を挙げたところでございます。前回、いわ ゆる単純所持、使用に関し議論がございまして、それを(3)という形で反映したとこ ろでございます。前回の骨子では、有害性の程度に応じた規制の均衡という観点や、供 給サイドを規制することにより、興味本位、無思慮による所持・使用を抑制する十分な 効果が期待できると考えられることから、現時点で所持・使用までも規制する必要はな いものと考えられる。これが前回の骨子ですが、これに加え、前回の議論でそこまで断 定できるものではなくて、やはり所持規制等について、本当はできれば乱用の根絶にも つながるのではないかといった意見もございました。そこでそれを(3)に反映させた ものでございます。  それでは6.に参ります。6.違法ドラッグ乱用防止のための啓発活動。  違法ドラッグの乱用防止を包括的に推進するためには、供給側に対する規制と併せ て、違法ドラッグに手を出しやすい層に対して啓発を図っていく必要があり、保健教 育、乱用予防等の観点から議論がなされた。  (1)啓発の重要性。WHOが発行した2001年世界保健報告(World Health Rep ort 2001)によれば、物質使用(麻薬、アルコール、タバコ等の使用)は、HIV/ AIDS、結核等と並んで、生活における障害を引き起こす要因の上位を占めている。 薬物は精神を蝕み、長期の障害や後遺症を引き起こす。薬物乱用防止の啓発は、薬物 が人生を破壊することを防ぐための重要な方策である。  一方、我が国では、青少年において、違法ドラッグを含めた薬物の危険性に関する 認識・理解が十分でないことが指摘されており、青少年と日頃接する機会のある委員 からも、これを裏付ける発言があった。  青少年に違法ドラッグの乱用が誘発される背景には、それが法律に抵触しないもの であり、また、無害であるかのように誤解し、抵抗感を薄れさせていることが多いと 考えられる。青少年の薬物乱用は、後の人生に大きく影響を及ぼすため、興味本位で 手を出してしまうのを防止する啓発活動が特に重要である。  (2)啓発活動のあり方。小学校から高校にかけての教育現場に加え、地域社会に おいても違法ドラッグを含めた乱用薬物に関する正しい情報を広く伝えることを第一 とした乱用防止の啓発を継続的に行う必要があり、また、そのための体制を整えるこ とも重要である。  青少年に対する乱用防止の啓発活動においては、「その薬物が違法であって、乱用 は社会のルール違反だからいけない」というアプローチに加え、「薬物乱用は心身に 害を及ぼす(特に違法ドラッグは、将来如何なる障害を生じるか全く未知であるとい う危険性がある。)ので、自分自身の心身を大切にしていたずらに薬物に手を出すべ きでない」というアプローチが有効であり、こうした両面からの啓発が重要である。  (3)乱用実態の把握の必要性。そもそも違法な薬物の乱用については、乱用者が その事実を他人に知られたくないと考えるため、乱用実態の把握は一般に困難である。  更に違法ドラッグの場合、内容成分の表示もなく販売され、その実体が明らかでな いことが多く、また、異なる販売名等で次々と製品が登場するため、本質的に如何な る物質が乱用されているのかを把握することすら困難を伴う。  しかしながら、薬物の乱用実態(乱用者の性別、年齢、社会階層等、乱用される薬 物の種類、量等)のデータは、その薬物の乱用防止策を策定・実施する際の基礎を成 す。特に乱用防止啓発活動においては、ターゲット集団を特定することが極めて重要 である。このため、違法ドラッグの乱用実態については、可能な範囲で早急に調査を 行うべきである。  また、何らかの薬物によると思われる急性中毒で救急治療を受けた症例の報告を集 積することでも、違法ドラッグの乱用実態の一端を知る有益な情報が得られると考え られ、このような症例をモニターするため、病院ネットワークの構築等を検討すべき である。  6.につきましては、(1)におきまして、前回、座長の御指摘がございましたとこ ろでございますが、WHOの発している警告といったものを要約して、下記薬物一般の その薬物の啓発といったものの重要性を冒頭に述べております。それから(2)啓発の あり方につきましては、第2段落でございますが、薬物が違法であるというアプローチ と、体に悪いというアプローチ。両方とも有効であるという書き方に、前回の議論に基 づき変えております。それから(3)におきましては最後の段落で、症例モニターも違 法ドラッグについて行えば、有効であるという御指摘に基づき、これも加えております。  次は7.に参ります。7.その他の対策。  5.及び6.に示した対策の実効性を高めるため、積極的に取り組むべきその他の 対策としては以下が挙げられる。  (1)インターネット監視の強化。違法ドラッグは、インターネット上で販売広告、 宣伝されていることが多い。インターネットはその手軽さや匿名性等の特性から、青 少年が違法ドラッグを安易に入手する環境を形成しやすい。また、違法ドラッグの摂 取方法や効果等、乱用を助長する情報の流布に、販売業者等が関与しているケースも あると考えられる。  国及び都道府県等は、インターネット監視の一層の強化を図り、問題のある広告等 を発見した場合には、警告メールの送信や改善指導・命令等の措置を迅速に採ること によって、違法ドラッグの入手機会を減少させるよう努めるべきである。  (2)関係機関間の連携強化。麻薬や覚せい剤等の乱用防止については、内閣総理 大臣を本部長とする薬物乱用対策推進本部の下、薬物乱用防止新5カ年戦略が策定さ れ、政府一丸となって取り組みが推進されている。  違法ドラッグが麻薬や覚せい剤等の乱用のゲートウェイ(入り口)となるおそれがあ ることにかんがみれば、違法ドラッグに関しても乱用防止に向けて連携が欠かせない。 取締りや啓発等を行う国の機関間はもとより、国と地方自治体の間においても、関係 者が日頃から円滑な情報共有を図る等、緊密に協力して効果的な乱用防止対策を実施 していく必要がある。  7.につきましては、前回の骨子から単に肉づけしたものでございます。  おわりに。今般、違法ドラッグの乱用が青少年を中心に拡大している現状にかんが み、早急に対応を検討し、措置すべきとの認識から、違法ドラッグの規制についての 具体的方策、啓発活動のあり方等をここに提言として取りまとめた。  今後、本提言を踏まえ、政府において、法的措置を含めた違法ドラッグ対策を検討 することとなるが、本検討会の成果が十分に活かされることを期待するとともに、引 き続き違法ドラッグを含む薬物乱用対策について、国と都道府県等の地方自治体がこ れまで以上に連携して取り組んでいくことを切に要望するものである。  「おわりに」は新しく加えたものでございますが、内容はこのとおりでございます。 説明は以上でございます。  佐藤座長 この別添資料の方は、これは何か説明がありますか。開催状況と用語の解 説だけでありますから、これはこれでいいですね。以上、事務局と私と相談いたしまし て、本検討会の提言案を御説明いただきました。きょうが最後のこの検討会でございま すので、残る時間を使って提言案についての御議論をいただきたいというふうに考えて おります。御質問あるいは御意見がございましたら、どうかよろしくお願いいたします。 まずは全体でどこからでもいいですから、御意見を出していただきたいと思います。三 輪委員。  三輪委員 私は定義といいますか、そういう点なのですが、2ページの上の方の3分 の1ぐらいで、括弧で(なお乱用とは)というところがありますが、やっぱりこういっ た提言は麻向法と薬事法に基づいてそれに関して行うわけなので、私としては麻向法の 1条にみだりという難しい方の「濫用」があるわけですね。やっぱりそれを出発点にし て、そして狭義とかあるいは広い概念ということを言っていただかないと、何か空中に ほうり出されたような感じがするのですね。  そこで質問なのですが、(なお乱用とは)と、この簡単な方の「乱」で結構なのです が、「乱用」とは麻向法1条の難しい方の「濫」の「濫用」があって、それは狭義の乱 用なのかどうかと。そしてそれに比べて、ここで言う易しい方の「乱用」は広い概念に やるという、そのあたりを明らかにしてもらいたいのが1点ですね。  それから一番最後の7ページ、8ページになりますけれども、第2段落で国及び都道 府県とあるのですけれども、その国というのは具体的にだれなのだというのが私の関心 なのですね。どうも行政という感じで厚労省が中心なのだと思うのですが、その後の連 携強化というところで、私は実際の刑事裁判なんかで感ずることは、薬事行政とそれか ら警察における保安ですね。薬事法違反の場合は、健康食品の場合は保安よりも生活経 済課が最近割と活発に動くのですが、あれは健康食品ですが、こちらはどちらかという と、もうまさに保安の方だと思うのですね。そうすると国と都道府県との連携というこ との中に、国は厚生省もあるし、例えば警察庁とか国家公安委員会とか、そういったも のも国のような気がするのですが、内閣総理大臣という言葉が出てきますが、その辺の ところをやっぱりはっきりさせてもらって、要するに厚生労働行政だけではないのだと。 薬事行政だけじゃないのだと。警察も巻き込んでというあたり。その2点が特にひっか かりましたので。  大西室長 失礼いたします。「らんよう」という言葉につきましては、法律上はみだ りに用いるという方が使われております。ここでは国民の皆様にわかりやすい議論をま ずはしていただくということで進めていただいておりましたので、漢字といたしまして は、「乱用」で乱れて用いるという方をお使いいただいておりますが、ここで言う狭義 の意味合いとしましては、法律上同じものを指すというふうに理解をいたしております。  恐らく三輪先生の御主旨は、最後に成果物としてまとめる段には、もうみだりという ことで、かちっと固めて用いた方がよいのではないかという御趣旨のようにも思います が、広く一般にまたマスコミの皆さんと通じましても、まずは広報に努めさせていただ くということもあると思いますので、この乱れるという文字を用いてまとめていただく のが、1つの方向性かなと存じたところでございます。それが1点でございます。  あと国と都道府県等と書いてある、その国というのは一体だれなのかという御指摘で ございますが、まさに総理を本部長としまして、薬物乱用対策の推進本部が設けられて おります。その下で厚生労働省が一番大きな柱を担わないといけないなということで頑 張らせていただいているわけでございますが、もちろん法務省さん、警察庁さん、文部 科学省さん初め、皆さん一生懸命御協力をいただいております。特に先ほど三輪先生か ら御指摘をいただきましたけれども、健康食品に関しましては、どうしてもお金が大き く動くということもあって、生活関係の部局が警察庁さんにおかれては、動かれること が多いというふうに私どもも認識をしておりますが、脱法ドラッグにつきましてはそれ とは別に、やはりゲートウェイドラッグという御表現もいただいておりますけれども、 その先にはまさに麻薬覚せい剤の乱用といったことにつながっていく可能性もあるのだ ということで、保安部局の方々もそれぞれの都道府県警における事務配分もあると思い ますけれども、関与をしていただいており、かなり本省レベルでもまめな連携をとらせ ていただいていると。大分そういう雰囲気がまた強くなってきているというふうに心強 く感じながら仕事をさせていただいているというようなところでございます。ちょっと 長くなりまして恐縮でございます。  三輪委員 よくわかりました。それでできましたら、やっぱり提言書の中に最初の方 ですと、麻向法のみだりの方の「濫用」ですね。麻向法1条濫用という言葉をその狭義 の意味の前にやっぱり入れていただきたいと思うのですね。そうすると「ああ、そうか」 と。麻向法から出て、それより広いところをやっていくのだなという感じを受けます。 それから後の方の国なのですが、今のお話でよくわかりましたのですが、要するに内閣 総理大臣が(2)で出てくるわけなのですが、それをむしろ最初に国及び都道府県とい うのは、このページの第2段落のしょっぱなに出てくると思うのですが、その前に内閣 総理大臣という言葉があればと。そして厚生労働省が柱となってという今のお話ですね。 内閣総理大臣が後から出てくるというのが、やっぱり私の頭としてはひっかかるのだと 思うのですね。その辺をちょっと工夫していただきたいと思います。  大西室長 承りました。  佐藤座長 御意見ありがとうございました  合田委員 私が感じましたのは、植物の取り扱いをどうされるのかなというのが、こ の中からは明確にされていないということです。植物のことが出てきていますのは、ま ず3ページ目のところで、(1)の麻向法による対応のところですね。ここでは「麻薬 又は向精神薬と類似の有害性が疑われる化学物質や基原植物につき」ということが出て いますが、一応麻向法は植物の対応をしていますので、これは出ています。この基原植 物のこの基源はどういう意味ですか、ちょっとよくわからなかったのですけれども、法 律上の言葉であればよろしいのですが。局方では種を規定する場合を基原というのです か。オリジンがどこだったか、種を規定するときにはこの漢字がこの字ではないので、 ちょっとそこも確認していただきたいのですが、ここで一応麻向法自身で植物を対応す ると書いていますね。  違法ドラッグの中にも当然化学物質由来のものが当然ありますけれども、やっぱり乱 用が始まるものの中には、当然植物がある程度あります。例えば4ページ目のところで、 4.の(1)の最初の○ですね。「麻薬又は向精神薬と同様の有害性を有することが確 認された物質について」とあります。この物質が化学物質だけなのか、それともいわゆ る植物も含むのかということは、ただ物質だけ出てくるとよくわからない。例えば「物 質等にして植物を含む」とするか、それとも、この物質は常に何らかの、ただ化学物質 だけではなくてほかのものの広く意味があるのだよという定義をどこかで置くか、とい うことが必要なのではないかと思います。  それをずっと後ろに行きますと、例えば5.の(1)の最初のところでも、また「向 精神薬と類似の有害性が確認された物質について」と言っています。この物質がまたど の物質かわからない。ずっと行きまして、5ページ目の(2)薬事法による規制のとこ ろの(1)規制根拠の明確化というところで、「違法ドラッグの有効成分として使用(乱用) 実態が認められる物質をあらかじめ明示し」とあります。そうするとまたここの物質が どれを言っているのか。化学物質しか書かれていないのではないかという気がしたので すが、麻向薬品という考え方からしますと、成分本質(原材料)という形で書かれてい ますから、その中の一番最初の有効成分としてというのは、そこに対応された言葉なの かどうかがよくわからない。  ですから何らかの形で当然違法ドラッグの場合には、麻薬も同じですけれども、化学 物質だけが指定されるわけではなくて、植物もその中に組み込まれることがありますか ら、それが適切に読み込まれるような言葉を入れて、植物もありますよということを明 示をしていただきたいなと思います。以上です。  佐藤座長 事務局、何か。  村上課長 合田先生の御指摘は、まず全くそのとおりだと事務局も考えていまして、 例えば3ページのところの(1)の麻向法による対応の1行目に書いてございますよう に、「麻薬又は向精神薬と類似の有害性が疑われる化学物質や基源植物」というような 言い方になっておりまして、それをひっくるめて物質というふうに言って、その後の方 では単なる物質というふうに取りまとめさせていただいているというふうに認識をして おります。ですから、そういう意味で先生がおっしゃっておられますように、この物質 というのは広く、いわゆる化学物質とそれから植物基源の物質も含むという整理になろ うかというふうに考えております。  佐藤座長 ちょうど国際疾病分類のICD-10とか、アメリカ精神医学会のDSM-IV-Rとい った診断分類法には、サブスタンス・ユーズ, 物質使用と表現されています。ですから 物質を細かに分かれにくいので、さっき課長さんがおっしゃったように、最初に出てく るところの物質のところに、こういったものを含むというようなことがあれば、その後 はわかりやすくなるのではないでしょうか。それも御検討ください。ほかには何か。ど うぞ。  倉若委員 1、2点よろしいでしょうか。まず最初の脱法ドラッグの検討会で、17年 2月26日が1次ということなのですが、私は2月22日に開始したような気がします。  次に、4ページの脱法ドラッグのところの5の「具体的な方策の検討」を読んでいる ところなのですが、麻向法による規制というところで、表現しておられますけれども、 最終的には一括指定制度あるいは暫定指定制度については、今後、麻向法に触れていか ないのだというような表現に受けとめられるので、そうであればこの辺は確かに法体系 上困難であるにしても、検討課題的に提言として残していった方が、いいのではないか なという気がいたしました。  もう1点は、6ページの方の「使用のための所持及び使用に関する考察」のところで ございますが、後段の「このように、違法ドラッグの所持及び使用の規制については、 現時点で直ちに法的な措置として現実の途を探ることは難しく、また、その必然性も必 ずしも高くないのではないかと考えられ」ということなのですが、現実、この脱法ドラ ッグ検討会についても、こういった高いから社会的なその問題があるというようなこと もある中で、報告書の中でその必然性も必ずしも高くないという考えは、ある意味では 削るべきではないかなと。強いて言うのであれば、規制については本提言を踏まえて一 気に飛んでしまった方が、現時点の「直ちに云々」というその1、2行をあえて表現す るのではなくて、なくした方がいいのではないかなと私自身は思います。必然性がある ということで、この検討会もあるのじゃないかなと思っておりますので。以上でござい ます。  佐藤座長 ただいまの御指摘の2点につきまして、最初の一括指定については、随分 議論があったところでありますが、どうぞ。  三輪委員 実は私もほとんど同じ考えを持っているのですが、前回よりは大分表現が 進んだので、こんなところかなと思っていたら、やはり満足されていないのがよくわか りました。私なのですが、今に関連して、例えばこれは麻向法で行くというのが、一括 指定にしても暫定指定にしても基本になる。それを今後検討すべきではないかと、実は 私も思っているのですね。その具体的な方策というのは、この前ちょっと提案させても らいましたけれども、毒劇法の3条の3だったでしょうか。要するに所持、使用をみだ りにという。みだりに所持、使用あるいは吸引をやってはいけないと。あの方法でどう してもあれをやらないと所持、使用までは規制できないと。それには今ここで罪刑法定 主義その他があって、一度摘発して後からそれが除外されたらどうなるのだというふう な話もあるのですが、その一括暫定指定をそういった乱用の疑われているものについて、 麻向法の何らかの根拠で、みだりに使用・所持を禁止して、それの違反の刑罰は、刑の バランスを考えてかなり軽いものにする。そしてそれだと本当に麻薬に行けば麻薬、そ うじゃなかったらそれは解除されるわけですけれども、そういうみだりにというあの毒 劇法3条の3の方式をとらないと、いつまでたっても所持と使用というのは規制できな いのではないか。  結局、ここの6ページの中ほどの今後検討すべき課題であるというのは、麻向法と薬 事法のその間の空白地帯がどうしてもやっぱり埋められなかったという、これが結論に なっているわけですよね。だからそこを実は責めているわけで、そうなってくるとやは り今後検討課題というのを、大分前回より進んで私もいいかなと思ったのですが、もう 一歩踏み込んで、例えば具体的なやり方としてはそういった方法ですね。暫定あるいは 一括、それをみだりにという毒劇法的なという、その辺を意識したもう少し前向きな表 現にならないかと。カットすべきところはカットするというのも、もちろん大いに結構 なのですけれども、そんなふうに思います。  合田委員 一括指定の件ですが、ここで麻向法については一括指定は難しいと書かれ ていますけれども、薬事法による規制の(2)の中で特に(2)ですね。製品の違法性が疑 われる段階での対応という部分に、一括指定という言葉を入れたらどうですか。薬事法 は多分一括指定は可能だろうと思うのです。何らかの構造式か何かの形で、こういうも のは疑われるから、一括指定をするという。例えば現実の取り締まりを考えてみた場合 に、ある一定の名前で、例えばMDMAの麻薬になりましたけれども、そういう構造で 売っていても、実は置換基の部分が若干異なっている場合がありますね。そういうもの は一括指定で取り締まりさえすれば、何も問題がないですね。ですから薬事法はある程 度疑いの段階でも明確なのだから、薬事法の(1)で規制根拠の明確化で、物質を何か規制 させるときに、それはある程度の構造式の一括指定みたいなものをここに組み込めば、 三輪先生とか倉若先生が言われている部分が、かなりこの解決として現実に出口が出て くるのではないかと思うのですが、どうですか。  佐藤座長 事務局、何か御意見ありますか。  村上課長 一括指定の問題がお話になっておりますが、その一括指定のことについて だけ申し上げますと、例えばトリプタミン骨格を持ったものということになりますと、 今現在、デザイナーズドラッグと言われているものの中に、トリプタミン骨格を持った ものがたくさんありますが、その一方でアドレナリンとかエフェドリンのように、正規 の医薬品としての承認があって、かつ依存性も認められていないようなものも、またそ の中に入っているわけでありまして、そういう意味で一括指定として実際に試験検査を する上では、基本骨格に着目して、その基本骨格を持ったものを含んでいるかどうかと いう検査をするのは、それは実施することはできると思いますが、一括指定としてそう いう基本骨格だけをつかまえて指定をするというのは、なかなか検討をしないと実行で きないのではないかと懸念をしているところでございます。  合田委員 トリプタミン骨格という話に絞ってしまうと、余りに広いので非常に難し いと思うのですけれども、かなり構造は絞れると思います。ただ、ある部分は自由であ ると。そこにどういうアルキル基がついても自由であると。何かそういうような形は現 実的にあってもいいのではないかなと思います。これは提言なので、そういう可能性も 考えるとか何か、そういうような形を入れておいて、現実的な道があるかどうかという ことは、実際にはこの後の法制化の部分で考えていただくという形にはならないですか。 薬事法の場合には、多分疑いで行けるというところは今まで議論がありまして、明確に そういう合成をすること自身が、違法目的以外には合成していないのだから、そこであ る程度一括指定と読み込めるというように私は考えるのですけれどもね。  佐藤座長 ほかに御意見は。板倉委員。  板倉委員 6ページの(3)のところですけれども、素人というか消費者の方から、 ここの文章を読みますと、やはり「目の前で乱用の目的で使用されるにしても違反にな らない」というように文章自体が読み取れてしまうのですね。ですから、そうするとこ ういうことが問題だと、友達なんかが目の前でそういうことをやっていて、自分はやっ ていなくて、それを見ていたときに、何も手を打てなく、違反にもならないという感じ であると、自分がそれに誘い込まれることも含めて、問題が出てくるようにも読み取れ なくはないということが1点あります。  それからここで、「販売や譲渡を予定しない個人的な使用のための所持等までも規制 することは」と書いてありますけれども、いわゆる販売も譲渡もいけないのだというこ とが、先に言葉として書かれていないので、ここら辺のがどうもよくわからない。だか らここの乱用の部分を加えるか、加えないかという以外に販売や譲渡というのは、もう その時点で違反になるということが明確に文章として伝わるようになっているべきなの ではないかなと感じられました。  佐藤座長 町野委員。  町野委員 幾つか問題があると思うので、順番にやはりやられた方がいいと思います けれども、その一括指定の問題も麻向法の一括指定の問題と薬事法の問題とは、かなり 性格も違うと。麻向法の方に入りますと。これはもちろん所持とかそちらの方まで強い 規制が及んで来ますから、どちらに入れるかはかなり大きな問題はあるように思います。 そういうわけですので、結局、問題はやはり今の個人輸入とか輸入とか、あるいは所持、 使用をどうするかという問題。そこから入っていって、どちらに規制をかけたらいいか ということになる。一括してまたそこで考えるかというような問題になる。そういうあ れだろうと思いますけれども、やはり所持をまず何とかしたいと。所持、使用を規制し たいというお考えが、皆さん、お強いかどうかといったことが非常にあれだろうと思い ます。報告書の内容として、それを盛り込むかどうかですね。これを変えるかどうかと いうことだろうと思いますけれども。  佐藤座長 ほかの委員で、どなたか御意見はございますか。以前にも、この議論がご ざいました。同じような意見があったと思うのですが、今違法ドラッグと称されるもの は、その有害性についての根拠がまだはっきりしていない、疑わしい。依存性について も、まだ十分な確証はない。そういう毒性についてまだはっきりしないというものにつ いて、一括指定のような形で規制するのがいいのではないかという話がございました。  それから臨床の方で、精神医学の委員の2人の方からだったかと思うのですが、こう いうふうな薬事法で製造や流通を取り締まる、そういう意味で違法だということを徹底 すれば、それだけでもかなり乱用が減るのではないかという御意見がありました。とり あえず今回は、疑わしいわけでありますから、まだそこまでストリクトでなくて、とり あえず薬事法によって迅速に規制をかける。まずそこから始めるということで、議論が 終わったと私は認識しているのでございます。それでうまく行かないときには、次の手 立てを考える必要がある、そういうふうな認識でした。事務局、何か、今私が説明した ようなことが経過のように思うのですが、いかがでしょうか。  村上課長 そのとおりでございます。  佐藤座長 ではそういう形で検討させていただきたいと思います。この問題は大きな 問題ですので、十分な御議論をここでしておいていただいた方がいいと思いますが、ほ かにはございませんか。どうぞ。  三輪委員 5ページの下から4行目に、「強く疑われる」というとことろがあります が、これは気持ちはよくわかるのですけれども、「強く」ということを書いたために、 かえって漏れてしまう。「これは強くないんだよ」と言われればそれまでですのでね。 この「強く」はむしろ除いた方がいいのではないでしょうかね。  佐藤座長 それからまた6ページの真ん中あたりで、「また、その必然性も必ずしも 高くないのではないか」というこれは、これを入れなくても「有害性の程度に応じた規 制の均衡」というような表現で前の方にも書いてございますので、必ずしもなくてもい いのではないかという御意見が先ほど出されました。この2点を削っていいかどうかと いうことにつきましてお諮りいたしますが、御意見はございますか。強くというのは、 どこまでが強いのかという議論になって、将来そのあたりの判断に疑問が残るというこ とですね。それから先ほどの必然性も必ずしも高くないというのは、何だか腰が引けて いるようでというような印象がある。  小沼委員 そこの「また」以降の文は私が主張した部分なのですけれども、実際には 可能性をただ推測しているだけなのです。ですからこの文言は削って結構だと思います。  佐藤座長 そうですか。今井先生。  今井委員 同じですけれども、6ページのところの「また、その必然性も必ずしも高 くないのでは」というところですが、今回の提言はやはり麻向法での対応は厳格で、か つ機動性に欠けるので、薬事法での対応をできる範囲で考えるという方向で議論がなさ れてきたと思います。そうした場合には、やはり所持、使用の規制というのは、そもそ もその法体系上無理でございますので、こういった書き方になっていると思うのですけ れども、私はこれでも素直で問題ないと思うのですが、一般に対するメッセージとして は、これを削ることも今回の提言としてはいいのかなという気がしております。  それと少し言葉の定義等がずっと議論されていますので、少し気づいたことを申し上 げますと、1ページの「はじめに」というところの2段落目の4行目のところで、「脱 法ドラッグと呼ばれていた物と異なるもの」となっていまして、この「物」という漢字 を使うのと「もの」という平仮名を使うのが少し混乱しているようですから、これも統 一された方がよいかと思います。  それから2ページで、三輪先生が最初に御指摘になった乱用の意義というところなの ですが、私も同じような感想を持っているのですけれども、ここで注記されているのは、 結局狭義の意味ではないのですよね。ですから、なお「乱用とは」というところの次の 「狭義には」というのを削除して、続いていった方が読みやすいと思います。「乱用と は、本来あるべき用途や目的から外れる使用等を指す」と。この概念について、医学的 な定義は必ずしもないことから、本件等会では、このように広い意味で使うことにした とされますと、法律用語としての難しい濫用の字と、ここで書いてあるみだりにという 字の違いがはっきりされますので、そのように注記を入れた方がよいかと思います。  三輪委員 済みません。麻向法1条は全く触れないということですか。文章に出ない ということですか。  今井委員 それは入れてもいいと思いますが、ここで使っているのは広い意味であっ て。  三輪委員 よくわかりますけれども、いきなりここで使うことに、私は疑問を感じて いるのですね。やっぱり出発点をきちんとしてもらいたいと。  佐藤座長 これは前回私も話しましたが、乱用の定義は、アメリカ精神学会もWHO も少し変わってきております。以前は、本来あるべき用途・目的や使用方法から外れる 使用を乱用と呼ぶということでありました。みだりに使うというまさにその意味だろう というふうに考えております。したがって、麻向法でいう濫用というのがありましたね。 あの一文にある濫用という言葉をここにも入れて、それを乱用という。そういう工夫を すればいいという御指摘かなと思ったのですが、よろしいでしょうか。では事務局の方 でまたお考えください。ほかにはいかがですか。どうぞ。  町野委員 先ほどの必然的ではないというのを削除してもいいというようなあれでし たけれども、私はやはりちょっと削除してしまうというと、やはりいろいろ考えた末、 こうしたのですよね。私は余り出ていないのですけれども。つまり向精神薬の場合につ いては自己使用は処罰されていないですね。これを一遍にするわけにいかないというこ とがあるし、あるいは先ほどの劇毒法の方はとにかく青少年の保護ということが非常に 中心であるわけですし、しかも薬物としての悪い作用といいますか、それは恐らく麻薬 などより激しいのじゃないかとお医者さんたちは言われていたところですから、これは かなり特殊なものだと思うのですね。  ですからそういうことを考慮の上、やはり現在の段階では必然とは言えないけれど、 それほどまでする法的な現在のやり方を全部改めてまで、このようにする必要性はない のではないかと、そう皆さんはお考えになられたのではないかと私は思いますけれども、 これを全部取ってしまうということは、結局今まで皆さん方が検討されて、私は実は余 り出ていないので大きなことは言えないのですけれども、かなりこの報告書の意図を半 分ぐらいなくしてしまうことになるのじゃないかと思いまして、あえて残せと強く主張 するつもりはないですけれども、削ってしまうのはかなりもったいない話であるという ふうに私は思います。「必然性」という言葉はまた考慮を要するとは思いますけれども。  佐藤座長 これは小沼先生が先ほど入れるようにという御提案でしたか。  小沼委員 はい、そうです。私は少なくとも実際問題としては、こういう状況になっ たものですけれども、それが言えるのは実際にはこの脱法ドラッグという全く問題にな っていないで、もっと大きな例えばブタンガスの問題とかは、そういうものは全然規制 されていないでいるわけなのでね。だからそれに比べたら、もうこの脱法ドラッグに関 しては、ここに書いてあるような見込みで流れていくと思うのです。だからこんなふう に申したわけなのです。  佐藤座長 先ほどは、必要は必ずしもないというふうにおっしゃったのですが、いか がいたしましょう。今井先生。  今井委員 町野先生がおっしゃったとおりでございまして、ここでの議論では基本的 に薬事法の枠内でいったときに、法的に無理であるということを踏まえた上で、ではあ と現実の状況をどう評価するかに関しては、恐らく意見が分かれておりまして、もちろ んそういうものは特に青少年の保護という観点から、どうして川下の自己使用等を規制 できないのかという御意見があったところですが、今回、薬事法の枠内で処理せざるを 得ないという前提があったときには、こういった表現になるのかなという方向で、議論 が収れんしたかに記憶しております。  三輪委員 私も法律家なのですけれども、法律の論文を書くときにはまさにこれでい いと思うのですね。だけどこの提言は「だれに向けて、どういう目的でされる提言か」 ということを考えると、やっぱりゲートウェイドラッグですから、青少年保護そのこと 自体は、町野先生も毒劇法に関して言われていることですので、程度の差はあるかもし れないですけれども、やはりそういった青少年保護ということに焦点を当てて、この提 言をするとなったら、私は法律家の立場を一応おさめて、その立場に徹底して、この委 員として参画したいと。そしてこの委員会の流れはどちらかと言えば、小沼先生がこう いう提言をされていますけれども、実はそうじゃないんだという、より消費者寄りの発 言が非常に強い。そういう流れで、むしろこれは町野先生がお考えになっているのとは 逆の流れでこの委員会は来ているというふうに、私自身は認識しております。  倉若委員 私の方としましても、この提言で行きますと、一般消費者の方はこの検討 会の方では、違法ドラッグの所持、使用の規制については、認めているのだというよう な提言を出しているというふうに受けとめざるを得ないというふうに先般伺っている中 なので、先ほど来、法律的にはいろいろ駆使しなければいけないという部分があるし、 法律改正云々にもまた時間もある意味ではかかるのかもしれません。そういう部分から すれば、ここで提言としてそれを出されてしまうと、ある意味ではほかから見れば、変 な言い方をしますと「おお、いいんだ、いいんだ」と、そういう形になるのではないか ということで、先ほどちょっと申し上げさせていただいたということなのです。  町野委員 きょうでおしまいのようで、どれだけの余裕があるか私はわかりませんけ れども、基本的に私はやっぱり規制をすべきだという具合に書くといいますか、そっち の方向を打ち出すことについても、かなり疑問がありまして、先ほどちょっと質問いた しましたとおり、もし自己使用だとか所持というのを規制し得るということですと、や はり取り締まりというのはそこに当然入る、警察が出てくるということですね。それだ けのリスクを負っていいのかと。そこまでの今そういう段階に到達しているのかという のは、私はかなり疑問に思っているところがあります。そして何と言っても、これは確 かに新聞報道で、これから脱法ドラッグ自己使用オーケーという具合に報道されるとい うことは、それは怖いですけれども、それはやっぱりジャーナリストの方にきちんとそ のことを説明するということが、まず先決ではないでしょうか。向精神薬もその意味で は現在自己使用オーケーなのですね。その限りで規制はないわけですから、そういうこ とをやっぱり十分説明するのが先ではないかという具合に私は思います。  そして報告書の書き方ですけれども、確かにこの書き方だけでそのまま行きますと、 ちょっと誤解を招く可能性がありますので、今のような多くの問題でゲートウェイドラ ッグとして使われることもあり、それからいろいろな青少年保護の観点から、ある範囲 で規制すべきであるという見解もかなり強かったと思われるけれども、現在の法律の考 え方自体を根本的にやっぱり変更すると。特に向精神薬の自己使用は不処罰であるとい うような状態。それらのことやあるいは単純所持は処罰されていないのがかなりあるわ けですから、それとの均衡から考えて、現在のところではこれはする必要はないであろ うと。必要ないと言いますかそういうことはできないであろう。それでも結構ですけれ ども、また将来事態が変わればといいますか、その必要性が生じたときは全体的にやっ ぱり麻向法の改正も含めた上で、全部やらなければいけない時代も来るかもしれないと いうことではないだろうかと思います。そこまでもう、きょうじゅうに書き直す暇はな いと言われると、仕方がありませんけれども。  佐藤座長 これまでの議論は脱法ドラッグが覚せい剤濫用などのゲートウェイドラッ グになり、そして日本では大人は覚せい剤が主な乱用薬で長期持続性の脳障害や精神毒 性を残しますので、そういうことを予防しよう、それが社会的な利益になるというスタ ンスでやってまいりました。法的にはそういう慎重論もございますが、そうした主旨を 踏まえてこれまで5回議論を重ねてまいりましたので、根本的にそれを「必要はない」 とするyおうな立場では、ちょっとこれまでの議論とは外れてまいりますので、従来の 流れで考えさせていただきたい。そんなふうに思います。いかがでしょうか。ほかには。 長岡先生。  長岡委員 日々高校生を相手に授業を行っている者としまして、7ページの方の啓発 活動のあり方の中にあります2段落目に、青少年に対する乱用防止の啓発活動について は、「その薬物が違法であって、乱用は社会のルール違反だからいけない」というのが あります。中高生はどちらかというと、あいまいな表現よりもはっきり言った方がわか りやすいかなというのが実はあるのですね。今の生徒はいろいろな生徒がいますが、例 えば授業をやっていて感じるのは、あいまいな言葉よりも、薬物乱用については犯罪な のだと。その次に来るのは、病気のものなのだというそういう教え方というのも一部で しています。ルール違反であるとか、それはだめだよとか、そういう表現を生徒にしま すと、なかなかそれがいいように生徒はとってしまいますので、逆にそれは犯罪である という言葉というのが、どこかに入れていただければなというふうに思います。  ただ、6ページの下の(1)啓発の重要性の中の一番下ですが、青少年違法ドラッグ のということから、次の7ページの2行目にありますように、私たち現場で生徒に教え ているときには、違法ドラッグのみを教えているわけではなく、要するに薬物全般につ いて生徒に教えていて、その中で違法ドラッグがあるということを教えていますので、 特別に違法ドラッグについてだけではないということです。ですからここでは違法ドラ ッグのことについて検討しておりますが、現場の立場から言いますと、薬物についてど うであるかということについては、はっきりした言葉が欲しいなというふうに思ってお ります。いかがでしょうか。  佐藤座長 薬物について、違法ドラッグになるわけでございますが、具体的にはどう いうふうな。  長岡委員 具体的にはこの表現の中でどこか「犯罪である」という言葉というのは入 れられないものなのでしょうか。これはとても奇抜な言葉で、もしかしたらこういう表 記の中にそういうものを入れるということについては、ちょっと私はこういう会議は初 めてなのでどうかと思いますが、ただ、あいまいな言葉といいますか、生徒に対して現 場の中でどうであるかと教えるときに、ここで書いて、もちろんルール違反だからとか、 そういう言葉の表現の仕方というのもあるのかもしれませんが、そういう犯罪であると いうことの表記はしていただけないのでしょうかということです。  三輪委員 これは思いつきですから、どうぞ軽く聞いていただきたいのですが、違法 ドラッグ売買は犯罪である。これは言えると思いますね。ただそれは売り主だけなので すよ。だから違法ドラッグ売買は売り主にとって犯罪であると、それを言わないで、「違 法ドラッグ売買は犯罪である」。これは完璧に言えると思いますね。もしも突っ込まれ たら、買い主はどうかと聞かれると、買い主は直罰の規定はないのですけれども、売り 主には違法ですから、ある意味では共犯として、買い主も犯罪たり得るという、非常に かすかにほんのわずかですが、たり得るということで、少なくとも違法ドラッグ売買は 犯罪である。これは言えると思いますね。  佐藤座長 よろしいでしょうか。  長岡委員 はい。  佐藤座長 ほかには何かございますか。  今井委員 今の三輪先生の御発言ですが、それをこの中に書かれたらどうかという御 提言ですか。そういうわけではなくて。そうですか。それはわかりました。結構です。  三輪委員 それはもうお任せします。  長岡委員 今の犯罪ということについては、要するに予防啓発活動とか違法ドラッグ のことなのですが、やっぱり薬物乱用ということを授業として教えていますので、その 立場からすると、やはりそういうことも1個入れていただければなというふうに思った のですね。それとその中で違法ドラッグもあるということで、そういう意味で話をしま した。  佐藤座長 どうもありがとうございました。ほかに。三輪先生。  三輪委員 そうすると長岡先生、今の続きなのですけれども、最初の方に「無承認無 許可医薬品」という言葉がはっきりとここへ出てきているのです。その売買は薬事法24 条かな。それを受けた84条ですか、それによって犯罪であると。それはさらりと書ける と思いますよ。それを先生が「ほら、このとおり、ここに犯罪の根拠があるでしょう」 と言うのはあれです。ですから今の箇所に、社会ルール違反のところに犯罪であると書 いたら、これはどぎつ過ぎますけれども、工夫はあるような気がしますけれどもね。  佐藤座長 どうもありがとうございました。どうぞ。  板倉委員 私も先ほど意見を言ったのはそういう意味で、6ページの(3)に、販売 や譲渡は違反であるということがはっきりしていれば、つながってくるのではないかな と思ったのですね。それと乱用については、どう考えたらいいか非常に心配です。とい うか、乱用しているのを見ていても、何も言えなければ自分が巻き込まれないようにす るだけしかない状況というのは、結構、若い人たちに言うときに、「あれは本人の責任 なのだから、ああしたら後、大変になるよ」というだけで済むのかどうか。そういう状 況で、どういうふうにして拒めるのかは、実態として非常に心配な部分はあります。限 界というのはわかっているので、どう文章を直したらいいかというところまでのコメン トはできませんけれども。  佐藤座長 恐らく先ほどの使用所持を禁じるかどうかという議論になるのだろうと思 うのです。それを今は薬事法で、流通を規制することで減るのではないかというリアリ スティックオプティミスム的なところがあるわけでありますが、法体系上、そういうふ うにならざるを得ないということがあったわけでございます。ですから、もしこれでさ らに事態が改善しなければ、先ほどの御議論のような意見があったということになるの ではないでしょうか。  合田委員 最初の議論の方に戻りますけれども、薬事法上での一括指定のことについ て、それが結論として、これはできないという方向なのですか。それとも何らかの形で 組み込むことを考えるとか、そういうような形を入れるという方向なのですか。結論が 出ていないような気がしたのですか。  佐藤座長 何か事務局はお考えがありますか。  村上課長 この取りまとめた文章の中では、麻向法に基づいて一括指定は無理でしょ うということが書いてありまして、薬事法による規制において、規制根拠の明確化の中 で、どのような指定をするのかというのは、むしろこれからのこの今回の御提言を踏ま えた行政側の対応にかかっているのではないかと思いますので、それはまた別途、考え なくてはならないことだと思います。だからここに書いてある麻向法で一括というのは 難しいのではないかということで、薬事法については、規制根拠の明確化というところ で、そのどのようなものが対象になるか明らかにすべきだと書いてあるわけであります。  佐藤座長 よろしいでしょうか。ですから、いずれ将来、使用、所持を取り上げない といけない時代が来ないとも限らないという状況なのですが、現時点ではまだそれだけ の規制するほどのエビデンスがない薬でございますし、ただいまの課長の説明にとどま らざるを得ないということであったと思います。どうぞ。  町野委員 今の一括指定の問題ですけれども、この薬事法の6ページの規制根拠の明 確化で、おっしゃる主旨は、ここのところで一括指定の趣旨を明確にすればいいという、 そういうことですよね。ですから書き方として、正当な理由なくという言葉は若干意味 がわからないところがありますけれども、後の方でその趣旨を明確に、要するに一括し て規制するということですよね。この特定の物質を含むということについては。そうい うやり方ですから、その表現を変えていただくということではいかがでしょうかという ことが1つです。工夫していただくということですね。  もう1つは、先ほど犯罪という言葉をどこかに入れるという問題ですけれども、問題 はやっぱりこれは刑法の授業じゃないのですね。やはり教育の現場でどのように指導す るかということでございまして、やはり自己使用とか所持をしているとかいうのが、そ れはよくないということはそれはわかっている。何でよくないかというと、やっぱり犯 罪を誘発するということですよね。多くにはゲートウェイのドラッグでございまして、 様々な覚せい剤あるいは麻薬等にまで行って。それは大きな犯罪を誘発する可能性があ ると。それは本人のやっぱり健康にも重大な被害があるということですから、そのよう なことを踏まえて、犯罪との関係を指摘されるというのは、私はそれは当然のことだろ うと思います。ただ、そこで、刑法の授業のように売買は犯罪であるとか、それはもち ろん現場におられる先生方のやり方次第だろうと思いますけれども、そういうことより、 今のような主旨を明確にすることの方が大切ではないかと思います。  合田委員 私が言っている一括指定というのは、構造式としての一括指定をイメージ しているのですが、特に最初のところの乱用の狭義の方の定義でけれども、「本来ある べき用途や目的から外れる使用等を指す」と書いているのですけれども、合成物の場合 には、本来あるべき目的はないですね。これ以外に目的はないですね。そういうような もので、明らかに合成物であるというようなものについては、何らかの形で行動意識に 基づいて、一括指定をしていくというのは、非常に現実的な方策じゃないかなと思いま すが。ここしか目的がないものについて何か可能であれば、それは現実的かどうかとい うのはまた別問題ですけれども、そういう部分について、例えば規制根拠の明確化とか 何かその文章の中に、それを検討するとか、何かそういう文章を1行入れてもらえない かなというのが、私自身の要望なのですが。目的がないものについては、そういう方向 で持っていっても、特に大きな問題はないのではないかという気がしますが。  佐藤座長 きょうはいろいろ活発な御議論をいただきました。大体御意見をいただい たというふうに思っております。一括指定をめぐって、それをどういうふうに文案へ盛 り込んで反映させていくかという問題が残っておりますが、それ以外につきましては、 大筋において語句の訂正とか、あるいは文章の文言の削除、そのところにとどまったの ではないかと理解させていただいております。きょうの御議論の結果をどういうふうに 提言に反映させるかということでありますが、ここから後の作業は座長の私と事務局の 方へお任せいただいて、後日、案のとれた提言を先生方の方へ送付させていただく。そ ういう扱いにさせていただきたいのですが、いかがでございましょうか。御承認いただ けますでしょうか。ありがとうございました。  こういったことはインプリメンテーションといいますか、それがどう実践されて、社 会にどんなふうに還元されるかというのが非常に大切でございます。今回の審議結果の 主旨を事務局でわかりやすい形でおまとめいただいて、一般の教育の場などで活用でき る資料をつくっていただければありがたいと思うのですが、この点についても、事務局 ではいかがでしょうか。よろしいですか。  それでは最後に、長岡会員からアナウンスがございますので、よろしく。  長岡委員 先生方のお手元にこういう「緊急レポート:ドラッグの罠」というパンフ レットがあるかと思いますが、ちょっと後ろを見ていただきたいと思います。私が監修 させていただいて、隣にいらっしゃる鈴木先生に薬学の監修をやっていただきました。 東映という会社の方でビデオをつくらせてもらいました。生徒に対して20分間で、余り 長いと生徒が飽きてしまうというのがありますので、大体20分がちょうどいいのですね。 その20分のうち前半を薬物に関して、鈴木先生の方から知識の伝達、それから後半の方 は私の方で、私の学校の生徒を使ったのではなく、東映の役者さんを使って、薬物に誘 われた状況として、誘われたときに断り方についてもそうですけれども、薬物に誘われ るときに手を出してしまいそうなときに、気持ちの中でどういうふうに揺れ動くか。そ して揺れ動いたときの心の中の言葉をたくさん並べて、どういう断り方ができるかとい うようなことを、実際に生徒を使って授業をやっているような、グループディスカッシ ョン、それからブレーンストーミング、ブレーンライティングという手法でやっている ものを紹介してあります。  結局、先ほどから出ていますけれども、生徒に教えるときに薬物乱用に関しては、使 ってはだめ、もちろん買ってもだめ、譲り受けてもだめと、さっきやりました2つと譲 り受け、譲り渡し、そういった4つはだめであるという話も含めながら、まず生徒が手 を出さないというようなことを、断り方について重点的に行っているビデオです。この 場をお借りしまして、こういうものをつくって、とにかく中高生も非常に多いです。は っきり言って今MDMAの乱用は相当だということも、先生方は一番御存じだと思いま すが、現場としては駅で立っていて人に声をかけられたとか、「先生、こうやって声か けられたよ」という話はもうかなり聞きます。そういう中で「どういうふうにして断っ たの」と聞くと、「逃げた」とか、「授業でこういうふうにやったから、こういう言葉 を使った」とか、そういう効果もあらわれています。ただ、これは逆に言うと、現場で こうやってかなり一生懸命にやっている先生はいいのですが、なかなか全国の先生方が 薬物に関して関心がある先生ではないので、どんどん広めていければなと思います。  先週、ちょっと青森の方まで行ってきましたが、青森までになると薬物って何って。 何って言ってもなかなか理解してもらえないところがありまして、やはりこういうこと でもう全国に提唱していければいいかなと思っています。ありがとうございました。  佐藤座長 どうもありがとうございました。実は依存性薬物情報検討委員会でしたか ね。小沼先生なんか。精神科とかそういうふうなところへ精神障害で来る子供の有機溶 剤が、大人の覚せい剤を抜いていた時期があったのですが、非常に最近はその有機溶剤 が減ってきたのですね。これは学校教育とか啓発活動の成果が大きいのじゃないかと思 っておりますので、ぜひこのビデオを活用して、普及啓発をしていただきたいというふ うに思います。  それでは村上監視指導・麻薬対策課長、何かございますか。  村上課長 本日まで6回にわたりまして、大変御熱心かつ詳細にわたる御議論を重ね ていただきまして、大変ありがとうございます。本日いただきました御提言は、もちろ んこれから座長の御指示によりまして修文をさせていただきまして、できるだけ早く最 終案として確定させていただきたいと存じますが、それをいただきまして、私どもとし ては薬事法を改正をする作業をさせていただきたいというふうに考えております。  事務局の作業を終えた後、次期の通常国会に提出をいたしまして、そこで立法府によ る御審議をいただくということができればというふうに思っておりまして、それに向け て事務局として、できる限り迅速、的確に作業を進めていきたいというふうに考えてい るところでございます。6回にわたりまして、大変貴重な御意見学識及び御見識を賜り まして、大変ありがとうございました。最後に当たりまして一言ごあいさつを申し上げ ます。ありがとうございました。  佐藤座長 それでは本当にありがとうございました。                                    (照会先) 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課 TEL:03(5253)1111(内線2761)