05/11/25 第24回社会保障審議会医療保険部会議事録                       平成17年11月25日(金)13:00〜14:45                       グランドアーク半蔵門 4階 富士東          社会保障審議会医療保険部会(第24回)議事録  星野部会長  定刻になりました。これより、第24回医療保険部会を開催いたします。  委員の皆様には、本日は御多忙の折お集まりいただき、御礼申し上げます。  開会の前に委員の異動がございましたので、御紹介させていただきます。久保田委員 が退任され、逢見委員、日本労働組合総連合会副事務局長が新たに就任されておりま す。  逢見委員  逢見でございます。よろしくお願いします。  星野部会長  本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は浅野委員、磯部委員、岩村 委員、大内委員、清家委員、西村委員、山本委員より御欠席の連絡をいただいておりま す。また、本日、箱崎委員が急遽御欠席のため、登利日本歯科医師会常務理事が出席さ れることとしておりますが、参考人として出席されることを御了承いただけますでしょ うか。 〔「異議なし」の声あり〕  星野部会長  ありがとうございます。  それでは本題に移りたいと存じます。本日は、平成18年度診療報酬改定の基本方針の 案について御議論いただき、取りまとめをお願いしたいと思っております。その後、医 療制度改革について、前回の各委員からの御質問に対する資料を事務局より説明いただ き、本部会における意見書の案について議論を進めたいと思います。医療制度改革につ いては、政府与党医療改革協議会において11月末ないし12月初旬にも取りまとめに向け た議論が行われることから、できれば本日、部会における意見の取りまとめを行いたい と思いますので、御協力をお願いいたします。  それでは、まず事務局より、平成18年度診療報酬改定の基本方針の案について説明を お願いいたします。よろしくお願いします。  麦谷課長  医療課長でございます。資料1をごらんいただきたいと思います。これまでの御議論 を踏まえ、なおかつ、前回お出ししましたたたき台にのっとって案をつくらせていただ きました。10分程度で御説明したいと思っております。  資料1、平成18年度診療報酬改定の基本方針(案)をごらんいただきたいと思いま す。私どもが想定しておりますのは、社会保障審議会医療保険部会と医療部会の連名で 中医協にお出しいただくように案をつくってございます。  まず最初の「○」でございますが、国民の健康・長寿という人間にとって一番大事な 価値を実現するためには、国民の安心の基盤として質の高い医療を効率的に提供する医 療提供体制の構築と、将来にわたる国民皆保険制度の堅持とが不可欠であるということ で、キーワードとして、質の高い医療を効率的に提供するということと、国民皆保険制 度の堅持というのをうたっております。  次の「○」でございますが、今後の基本的な医療政策の方向性として、3つほど「・ 」で書いてございます。最初の「・」ですが、前回の岩本委員からの御指摘に基づき、 患者本位という言葉がわかりにくいと言われましたので、患者本位という中身をそこに 書いてございます。医療を受ける主体である患者本人が、医療に積極的かつ主体的に参 加し、必要な情報に基づき、患者自身が選択して、患者本人が求める医療を提供してい くという患者本位の医療、このように位置づけました。患者本位の医療は、提供される 仕組みを構築していくことと、これが基本的な方向性の1つ目でございます。  2つ目は、生活習慣病予防に積極的に取り組むということで、内容は割愛いたしま す。  3つ目でございますが、人口構成等の構造変化に柔軟に対応するとともに、国民の安 心や制度の持続可能性を確保するといった観点から見直しを行い、経済・財政とも均衡 がとれたものとするために、過大・不必要な伸びを具体的に厳しく抑制することを通じ て、将来にわたり国民皆保険制度を堅持していくということが書いてございます。これ は医療部会の方で御指摘を受けて文言の修正を行ったものをここに掲げてございます。  3つ目の「○」でございますが、以上を踏まえ、平成18年度診療報酬改定は以下の4 つの視点から改定が行われるべきであるということで(1)〜(4)まで書いてございます。  (1)患者から見てわかりやすく、患者の生活の質を高める医療を実現する視点。(2)質 の高い医療を効率的に提供するために、医療機能の分化・連携を推進する視点。(3)我 が国の医療の中で今後重点的に対応していくべきと思われる領域の評価のあり方につい て検討する視点。(4)医療費の配分の中で効率化余地があると思われる領域の評価のあ り方について検討する視点、ということでございます。  次の「○」は非常に大事な「○」でございまして、具体的な診療報酬点数の設定に当 たっては、基本的な医療政策の方向性を明確にしないまま診療報酬施策によって医療機 関の診療行動や患者の受療行動を誘導しようとするのではなく、基本的な医療政策の方 向性に沿って個別の診療報酬点数を設定していく中で対応していくことを基本とするべ きである。これは前回も申し上げましたが、診療報酬点数の設営によって医療制度や政 策を引っ張るのではなくて、医療制度や政策が先にあって、それを補完するため、動く ように診療報酬点数をつくるという趣旨でございます。  2つ目の「○」ですが、一方、基本的な医療政策の方向性に必ずしも沿ったものでは ない医療については、単に点数上の評価の適正化を行うだけでなく、「必要かつ適切な 医療は基本的に保険診療により確保する」という国民皆保険制度の理念を基本に据えつ つ、特に患者の選択に係るようなものについては、保険診療と保険外診療との併用を認 める制度、特定療養費制度などの活用により、応分の負担をしていただくことも含め、 検討していくべきであるという前振りをここに掲げてございます。  先ほど申し上げた4つの視点について、それぞれ文章で説明してございます。まず 1、これは先ほど読み上げましたので省略します。  最初の「○」でございますが、患者本位の医療を実現するために、患者から見てわか りやすい医療としていく。患者に対し、医療に関する積極的な情報提供を推進してい く。患者の生活の質を高める医療を提供していくことが必要である。  次の「○」でございますが、こういったことを実現するために、診療報酬体系の見直 しに当たっては、診療報酬そのものが患者にとってわかりやすい体系とする視点に立っ て見直しを推進する。とりわけ、診療報酬上評価されている医療のうちには、実際に提 供されているが患者が明確にわからないままに費用を負担しているものもあるとの指摘 もあり、現行の診療報酬の名称等の位置づけも含め、点検を行っていくべきである。具 体的な例としましては、生活習慣病指導管理料ですとか、ある種の検査については、患 者さんはそれを受けたという自覚がないのに点数上は算定されているといったことを是 正していくということでございます。  3ページでございます。領収書のことが書いてございます。最初の「○」。患者への 情報提供の推進の観点からは、患者が保険医療機関を受診等した場合に、医療費の内容 のわかる領収書の発行を受けることができるよう、診療報酬体系を患者にとってわかり やすいものとする取り組みとあわせ、所要の経過措置を講じた上で、保険医療機関や保 険薬局に医療費の個別単価など詳細な内容のわかる領収書の発行を義務づけることを視 野に入れて、情報提供を強力に推進するべきであるということでございます。  次の「○」は省略しまして、2つ目の視点でございます。医療機能の分化・連携でご ざいますが、質の高い医療を効率的に提供するために、地域の医療機能の適切な分化・ 連携を深め、急性期から回復期、慢性期を経て在宅療養への切れ目のない医療の流れを つくり、患者が早く自宅に戻れるようにすることで生活の質を高め、また、必要かつ十 分な医療を受けつつ、在院日数を含んだトータルな治療期間が短くなる仕組みをつくる ことが必要である。このため、地域における疾患ごとの医療機能の連携体制に係る評価 のあり方について検討するべきであるということでございます。  2つ目の「○」でございますが、こうしたことを実現するために、介護保険との適切 な役割分担のもと、24時間診療ができる在宅医療や、最期を迎える終末期医療への対応 に係る評価のあり方について検討するべきであるということでございます。  最後の「○」でございますが、我が国の医療につきましては、諸外国と比べて平均在 院日数が長いという御指摘がございますので、医療機能の分化・連携を図りつつ、医療 資源を集中的に投入することにより、必要かつ十分な医療を確保しつつ、平均在院日数 の短縮を図っていくことが必要である。このため、平均在院日数の短縮促進に資するよ うな入院医療の評価のあり方や、急性期入院医療におけるDPCの支払い対象病院の拡 大について検討するべきであるということでございます。  4ページの最初の「○」は、病院・診療所の初再診料の格差の問題など、外来医療に 対する評価のあり方について検討するべきであるということでございます。  視点の3つ目でございますが、重点的に対応していくべきと思われる領域の評価でご ざいます。最初の「○」は省略いたします。  2つ目の「○」、これは御指摘に基づいて記載してございます。例えば、産科や小児 科、救急医療等については、診療科・部門による医師の偏在により、地域において必要 な医療が確保されていないとの指摘があることも踏まえ、特に休日、夜間等における医 療機関の連携体制を確保していく観点からも、これらの領域に対する診療報酬上の適切 な評価について検討するべきである。  次の「○」でございますが、IT化がおくれていると言われていますので、IT化を 推進していくことは被保険者、医療機関、保険者、審査支払機関等のそれぞれにとって メリットのあることであるので、解決すべき課題を整理しながらこれを集中的に推進し ていくための方策について検討するべきである。  次の「○」。さらに、医療の安全性の向上の観点から、医療安全に係るコストの実態 を踏まえつつ、診療報酬上のさらなる取り組みの可能性についても検討していくべきで ある。これも御指摘を踏まえてここに挿入してございます。  最後の「○」でございますが、このほか、医療技術については、難易度、時間、技術 力等を踏まえた適切な評価を進めるとともに、新しい医療技術については、有効性、安 全性等のほか、その導入効果についても十分に確認した上で適切に保険導入を図ってい くことが必要であるが、その際には、保険導入手続の透明化・明確化の視点に十分配慮 していくべきだ。これも御指摘を踏まえて記載してございます。  5ページ、最後の視点でございます。医療費の配分の中で効率化余地があると思われ る領域でございます。最初の「○」は何度も出てきておりますので省略いたします。  2つ目の「○」。このため、患者の状態像に応じた慢性期入院医療の評価のあり方、 入院時の食事に係る評価のあり方、外来医療における不適切な頻回受診抑制のための評 価のあり方、コンタクトレンズ診療等における不適切な検査の適正化のための評価のあ り方、かかりつけ歯科医・かかりつけ薬局の本来の趣旨に即した適正な評価のあり方等 について検討するべきである。これは前回も書いてございました。  次は、御指摘を踏まえて記載してございます。また、医薬品については、画期的新薬 の開発を促進する薬価制度を構築していく一方で、良質かつ廉価な後発医薬品の使用を 促進することは、医療保険制度の持続可能性の維持に資するものであることから、後発 医薬品の使用促進のための環境整備の方策についても検討するべきである。  最後の「○」でございますが、このほか、医薬品、医療材料、検査等のいわゆる「も の代」については、市場実勢価格等を踏まえた適正な評価を進めるべきであるというこ とでございます。  以上、4つの視点で、最後に「終わりに」という2つの「○」は、新しく記載させて いただいたものでございます。  最初の「○」でございますが、中央社会保険医療協議会におかれては、本基本方針の 趣旨を十分に踏まえた上で、具体的な診療報酬改定案の審議を進められることを希望す る。  最後の「○」。また、平成18年度診療報酬改定の結果については、本基本方針に即し た改定であったかどうか、実際の改定の効果がどの程度あったのか等について中医協に おいて検証を行い、その結果を当部会に報告いただくことを希望するということで、ち なみに、中医協におきましては既にこの検証の部会は立ち上げて動いております。以上 です。  星野部会長  どうもありがとうございました。それでは、ただいまの件につきまして御質問その他 ございましたら、どうぞ。  多田委員  確認でございますけれども、2ページの上から2目の「○」、この中に、「必要かつ 適切な医療は、基本的に保険診療により確保する」という表現になっておりまして、こ れは国民皆保険制度の理念だということでございますが、3ページの方の上から3つ目 の「○」と、一番下の「○」のところでは、「必要かつ十分な医療」という表現が使わ れております。ここには特に差があるという意味で用語を変えて記述されているのかど うかということだけ教えていただきたいと思います。  麦谷課長  特に恣意的にこれを変えたわけではございませんで、最初の「必要かつ適切な医療 は、基本的に保険診療により確保する」というのは、あちこちで使われていますけれど も、決まった言葉でございますので、そのようにかぎ括弧で書いております。「必要か つ十分」と書いたのは説明のレトリック上書いたわけで、特に差違はございません。  星野部会長  ありがとうございました。  対馬委員  資料を出してもらって……  星野部会長  今御紹介します。今対馬委員からお手が挙がりましたが、本日は逢見委員、齊藤委 員、対馬委員から、日本労働組合総連合会、日本経済団体連合会、健康保険組合連合会 の3団体連名の意見書を提出いただいておりますので、3委員を代表して対馬委員より 説明をお願いいたします。  対馬委員  医療課長からお話がございまして、それに対する対案ないし意見が全く違うというこ とではございませんけれども、特に私どもとして強調しておきたいことについてお話し させていただきたいと思います。「記」以下を簡単に説明します。  1点目のところは、長期的に持続可能である、納得性の確保、質の高い医療の実現と いう観点から体系を構築する必要があるだろうと。  2つ目の「○」でございますけれども、これは特にIT化の加速などを通じながら、 わかりやすい体系に再構築すべきであろうと。  3つ目の「○」ですけれども、めり張りのきいた点数にすべきだろうということでご ざいます。  具体的な項目ですけれども、IT化の推進を改めて記載してございます。  2ページの「○」ですけれども、包括評価については進めていくべきだろうと。その ためにはデータの収集、蓄積が必要不可欠だろうということを書かせていただいた。  次の「○」ですけれども、レセプト、カルテのオンライン化、IT化の具体的な内容 ですけれども、それについても速やかに対応すべきだろうと。  その次ですけれども、明細書つきの領収書の発行を義務化すべきである。先ほどの資 料ですと「視野に入れて」という書き方ですけれども、義務化を早急にすべきだろうと 思っています。  2つ目、保険医療のあり方等についてですけれども、最初の「○」ですが、新規技術 の問題がよく言われますけれども、スクラップ&ビルドという視点が必要だろうと。  その次の「○」ですけれども、これは生活習慣病指導管理料等については、患者の視 点に立って再評価すべきではないかということでございます。  医薬品などについても、保険給付のあり方に関する検討について、引き続きこの部会 で行うべきであろうと。  その次の「○」ですけれども、後発医薬品について、処方せん様式の変更などでもっ て速やかに実現を図っていくべきではないか。  その次ですけれども、食費・居住費については介護保険との整合性を図るべきだろ う。  その他ということで、指導・監査体制の強化についても一言触れているということで ございます。  お時間ありがとうございました。  星野部会長  どうもありがとうございました。それ以外にも御質問等ございましたら、どうぞ。  逢見委員  ただいま対馬委員から3名連名の意見が出されましたけど、特に補強して述べたいこ とがございます。明細書つき領収書の発行という点でございますが、連合で組合員に対 して、お医者さんにかかったら領収書をもらおうという運動を進めてまいりましたけれ ども、当初は医療機関から随分拒否反応というか、違和感みたいなものがございました けれども、何年かするうちにかなり領収書を発行してくれるところもふえてまいりまし て、特に病院では、私どもの調査ではもう8割以上が明細書つき領収書を発行しており ます。これはIT化が進んだこともあると思いますし、患者負担が3割になったことも あって、何のために使われたのか知りたいという患者側の希望も強くなってきて、そう いうことが情報提供として行われるようになったんだと思います。  基本方針の案を見ますと、「所要の経過措置を講じた上で」、「視野に入れて」とい う表現がございまして、これを読む限りは、まだしばらく時間がかかりそうな感じもい たしますけれども、患者が受けた医療の内容を知るという権利を情報という形で領収書 の中に込めているわけですから、これは速やかにすべきだし、発行は義務づけるべきで あると思います。以上です。  星野部会長  ありがとうございました。ほかにございませんか。どうぞ。  漆畑委員  基本的な考え方と、3者連名の意見書ということでお聞かせいただいたんですけど、 個別なことで一個一個というんじゃないんですが、もしこの中に考え方として含むとす れば、例えば財源負担の納得性の確保、「効率的で」というくだりがありますけど、お っしゃるとおり、被保険者とか保険料を払う方が納得していただくのはもちろん大事な ことでありますから、それは否定しませんけれども、診療報酬改定の基本方針というこ とならば、医療提供側の、そこで働く人たちが疲弊しないようなこともぜひ御配慮いた だきたいと思います。世の中若干景気がよくなったのか、よくわかりませんけれども、 医療機関が従業員の募集をかけたりしますと、周辺の給料が上がってきているものです から、専門資格を持った方が、むしろ専門資格を活用しないところの方が給料が高いよ うな状況が実際に起きていまして、そういうこともぜひ御配慮いただきたいと思いま す。  それから、小さなことで恐縮なんですけど、役所の方の資料の5ページ、2つ目の 「○」ですけれども、ここに「慢性期入院医療の評価のあり方」から、「外来医療にお ける不適切な頻回受診の抑制」とか、「コンタクトレンズ診療等における不適切な検査 の適正化」とか、「不適切」という具体的な例が挙がって、これは私もそう思うんです けども、その後に、「かかりつけ歯科医・かかりつけ薬局の本来の趣旨に即した適正な 評価のあり方等について検討するべきである」ということで、もし不適切なものが含ま れるんでしたらそのことについて議論することについてはやぶさかでないんですが、効 率化余地があるという前提のもとで、しかもこの2つ目のところでは具体的な不適切な 例示があった後に「かかりつけ歯科医・かかりつけ薬局の本来の趣旨に」というのは、 意味が理解できないわけじゃないんですが、並びとしてはいささか抵抗があって、いず れにせよ、このことを消すんじゃなくて、できればこれは区別して表現していただきた いと、小さなことで恐縮なんですが、そんなふうに思います。  星野部会長  ありがとうございました。  松原委員  きょう初めてこの意見書をお出しいただいて、見せていただいて2、3どころか10個 ぐらい意見がございます。  最初の、基本方針の策定に当たってのスタンスでございますが、医療保険制度が持続 可能であればいいというわけではございません。あくまでも、「必要かつ適切な医療は 保険診療で確保するという理念に基づいた医療保険制度が」と、これは皆様方共通の認 識だろうと思いますので、御理解いただきたく思います。  その下の、18年度診療報酬改定において、めり張りのきいたとか、質の高い医療と か、いろいろ書いてございますが、めり張りのきいたものにつきましては、これは現場 のわかっている中医協で十分議論して決めるべきことだと思っております。  また、質の高い医療というものはどのようなものであるか、こういった議論がきちっ となされておりませんので、これも中医協で十分に議論していきたいと思っておりま す。  3番目でございますが、包括化並びにDPC制度でございます。これは私どもは、包 括化というものは必要な医療が十分に受けられなくなる可能性を踏まえて、あくまでも 必要なものは出来高で対応すべきだと思っております。ただ、出来高によって重ねるも のが利潤を上げるものであってはならないと思っておりますので、そこのところは誤解 なきようにお願い申し上げます。  4番目でございますが、2ページの2つ目の「○」、レセプトやカルテのオンライン 化でございますが、これは以前からここで申し上げていますように、これはプライバシ ーに十分配慮して行わなければならないということを申し上げてまいりましたが、これ はインターネットでは無理だと私どもは思っております。また、オンライン化につきま しては、かなりの費用がかかりますので、速やかに対応すべきということでございます が、この費用をどこが出すのか。私は、国の施策として行う以上は国が別予算で行うべ きものだと思っております。  また、領収書につきましては何度も反論していますように、現状におきましてはレセ コンのソフトを全部変えねばならないとか、さまざまな問題も出てまいります。さら に、領収書の金額を提示するのは義務だと思いますが、その中でどこまで細かい内容を 説明したらよろしいのか。簡単な説明であれば楽なわけでございますけれども、青本に おける医療システムは非常に複雑な中で、これを一々わかるように説明するというのは 恐らく無理ではないかと思っております。例えば、一般に領収書を出されるところであ っても、一つ一つについて説明ができるものとできないものとがございます。そういっ たものをきちっと整理していただいてからでなければ、誤解と混乱を招く可能性がある と思っておりますので、そこのところを対応するということを踏まえて、視野に入れて 検討するという形にしていただきたく思っております。  6番目でございますが、保険適用の継続の可否も含めた再評価、これも適切に評価し ていくのは当たり前でございますが、実際のところは、使われなくなったものは消滅し てまいります。消滅したものを消せば十分に対応できますので、そういったものを厚生 労働省も、お手数とは思いますが、適切に行っていけば対応できるのではないかと思っ ております。  また、4つ目の「○」でございます。処方せん様式の変更については中医協で今議論 しているところでございます。処方せんのあり方をどのようにするのか、ここのところ では後発医薬品の性格などについて中医協でも発言しております。これも中医協で十分 議論させていただきたく思っております。  また、最後の「○」の入院時の食費・居住費でございますが、これも何度も申し上げ ていますように、介護保険制度というのはあくまでも生活の保障でございます。命と健 康の保障であるところの医療保険制度とは全く次元の違うもので、次元の違うものを整 合性をとる必要はございません。単純に考えて、介護保険制度で導入されたから医療保 険制度で導入するという考え方は間違っておりますので、そこのところは御理解いただ きたく思います。あくまでも入院されている方の食費は治療であり、居住費というのは 別に家を構えておられる方が多いわけでございますので、そこのところを間違えずに、 介護保険とは全く違う形のものにすべきだと思っております。  最後に、医療事故の対応につきまして、こういった罰則強化、すなわち、故意で行わ れたものや重大な過失のあるものについてはもちろんそのように対応するのは当たり前 でございます。私ども日本医師会におきましても、こういった適切でない、故意や重大 な過失において問題を起こすことのある医師に対しては厳正に対処したく思っておりま す。ただ、医療事故というのは偶発的に起こることもございます。そこにおきまして、 医療の安全というのはマンパワーによって確保されるものでございますので、診療報酬 を下げればよいというものではなく、マンパワーを確保するだけの十分な診療報酬を対 応していただかなければ医療の安全は確保できません。医療事故が起きて、ぎりぎりの 状態で看護師や医師に大変な状態を負わせておいて、事故が起きたからその責任をとれ というのは私は間違っていると思います。これも中医協で申しましたが、JR西日本の 事故で見てもわかるように、余りに効率化を求めてマンパワーを削減しますと、最終的 には事故が起こります。そういったことがなきように、冷静に判断していただきたく思 っております。医療の安全が一番大事なことだと私どもは思っております。以上です。  星野部会長  どうもありがとうございました。それぞれ御意見を承りました。この基本方針は、次 の段階としては中医協で診療報酬改定という具体的な形で患者さんに対応していくとい う段取りになっていく性質のものでございまして、あくまでもここでの基本方針でござ いますので、大枠について考え方を述べておりますので、今皆様方からいただいた御意 見は、それをどう解釈するかという、それぞれのお立場からのコメンタールだというふ うに私は受けとめられましたので、この基本方針はここではこれでいこうじゃないかと いうことで、よろしゅうございますね。  なお、今の御発言はこの部会の議事録にきちんと書いてあるはずですから、もし中医 協の場等でお使いになるときは、私どもはこういう発言をしたはずだということを繰り 返しお使いになることは何ら差しさわりがない。これは公開しているわけですから。で すので、よりよき診療報酬改定がなされることを祈りながら、この基本方針は皆様とこ こで了解したということにさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。それでは、次の議題が非常にヘビーな議題でござい ますので、次に進めさせていただきたいと思います。医療制度改革について議論を進め たいと思います。まず事務局より、前回の各委員からの御質問に対する資料について説 明をお願いしまして、その後、案について改めてまた議論をさせていただきたい、こう いう段取りにしたいと思います。資料の方から先に御説明をお願いいたします。  唐澤課長  それでは資料2をごらんいただきたいと思います。国保共同事業の実例についてとい うことで、この部会において新しい共同事業の拡充というものがどんなイメージになる のかというお尋ねがございましたので作成したものでございます。  まず1ページをお開きいただきたいと思います。現行の国保財政安定化のための事業 でございまして、高額な医療費の発生による、現行70万という基準になっておりますけ れども、国保財政への影響を緩和するために市町村から拠出金を共同でプールしまし て、県単位で費用負担の調整をしております。事務局は国保連合会が実施しておりま す。それから保険者支援制度ということで、低所得者の方が多いわけでございまして、 その数に応じて保険料の一定割合を公費で補てんする措置でございます。財政安定化支 援事業は、交付税措置ということでございますけれども、国保財政の安定化、平準化に 資するために一般会計から特保特会への繰り入れを行うことができるという事業を実施 しているところでございます。この事業の中については、必要な見直しを行いつつ、新 たに保険財政共同安定化事業を創設したいと考えておりまして、現行、上の(1)〜(3)の 事業は3年間の時限措置ということになっておりまして、延長等の手続が必要になって くるわけでございます。  2ページをお開きいただきたいと思います。簡単に数字だけお話しさせていただきた いと思います。新しい保険財政共同安定化事業でございますけれども、こちらについて はレセプト1件30万円を超えるものを共同事業の対象事業にすることにしまして、財政 運営の規模を拡大して安定化を図りたい。特に年々の医療費の変動が大きな小規模保険 者等の財政安定化を図りたいと考えております。あわせて、拠出をする分でございます けれども、発生した医療費にかかわらず、被保険者数に応じて拠出する分、いわば頭割 りということになりますけれども、そういう部分を加えることにより都道府県内の保険 料平準化を図ってまいりたい。さらには、将来は都道府県単位の国保財政運営を目指し て、そういうものにつなげていきたいと考えているところでございます。事業は国保連 合会で実施していくということを考えております。  3ページをお開きいただきたいと思います。今申し上げましたことを図にしたもので ございまして、真ん中の大きな四角の上にふたのようなものがついておりますけれど も、それが各都道府県の国保連合会でございます。これが事業の主体ということになり ます。黒い部分で(1)と書いてあります部分が、著しく高額な医療費の互助事業とい うことで、70万円を超える部分を助け合いしていく。その助け合いについては、2分の 1を公費で負担しております。公費分は国と県で折半しております。そういう事業を既 に実施しております。これに加え、財源を共同でプールする、30万以上のレセプトにつ いてこの事業の対象にするということで、助け合いの事業の規模を拡大したいというこ とでございます。A町、B市からそれぞれ拠出金を出しまして、実際に発生した医療費 に応じて交付金を受けるという形で事業を実施していきたいということでございます。  4ページをごらんいただきますと、これは今申しました拡大した共同事業を、ある県 のデータに適用してみたものでございます。例えば一番上のグラフ、S市と書いてござ いますが、ここは国保被保険者数3万2000人、事業対象額は18億6000万。これは定率国 庫負担分を除いた分でございますけれども、18億6000万ということで、この事業につい て、黒い太線が実績でございますが、共同事業を仮に実施したとしますと、その点線の ようにグラフの変化がなだらかなものになるということでございます。例えば14年度で すと1.8%の持ち出しになりますが、15年度は5.5%の受け取り、16年度は1.7%の受け 取り。これは3カ年でやってみたものでございますので、もう少し長くなればさらに緩 和されていくことになると思います。真ん中はT市ということで、たまたまグラフが下 の方に推移しておりますけれども、上の方が実績、下の方が共同事業を実施したと仮定 した場合の点線でございます。一番下はK町というところで、被保険者数1700人しかお りません非常に小さな町になりますけれども、高い医療費の発生で医療費の振幅が非常 に大きくなってまいります。それを点線のようなグラフで平準化して、財政の安定化を 図りたいと考えているところでございます。以上でございます。  星野部会長  どうもありがとうございました。何か御質問等ございますか。よろしゅうございます か。どうぞ。  岩本委員  質問なんですけども、この国保というのは現在の国保の状況を考えられているわけで すか。後期高齢者でやった場合にどうなるのかということもお示しいただきたいと前に 言ったんですけれども、ここから類推するに、例えば最後のK町のあたりに後期高齢者 医療制度というものができ上がった場合、もっと大変なことになるんじゃないかという 推測が働くんですけれども、そのあたりの資料というのは今後出てこないんでしょう か。  唐澤課長  高齢者医療費の方が振幅が大きいということが推測されますので、年度ごとの変動に どう対応していくかということは大きな課題でございます。このデータは各県の国保連 合会から取りだしていただきまして、レセプトの累積をして出してもらっているもので すから、老人医療についてもそういうデータを収集しているところでございます。作業 いたしまして、また考えていきたいと思います。  星野部会長  推定上の話として振幅がもっと大きくなるだろうという……  唐澤課長  多少これよりは大きくなるのではないかと。  星野部会長  実証はしてないわけですね。  唐澤課長  実証はまだこれからです。  対馬委員  健保組合の場合も高額医療費については、一般疾病が100万以上でやってるんですね。 特定疾病といいまして、人工透析などは40万以上を対象にしてやっているということ で、全体的には700〜800億ぐらいの規模でやっているんですけれども、小さい規模の健 保組合あたりは本当にばらつきが大きいものですから、それを共同事業ということでや っていきますとそういったリスクが軽減されるということもありますし、集団としての 帰属意識というものも強化されるという側面もありますので、こういった形で、国費と いうことではなくて、財源をプールしながらというのは非常によろしいんじゃないかな と思います。  星野部会長  それでは、次に移らせていただきまして、当部会における取りまとめの案について説 明をお願いしたいと思います。  榮畑課長  お手元に医療保険制度改革について(案)と題しまして、社会保障審議会医療保険部 会と書いた意見書の案を出させていただいております。かいつまんで御説明させていた だきます。  まず頭書きで、これまでの経過でございますが、24回にわたり精力的に審議を重ねて きた。中間的な議論の整理を行っていただいて、去る10月に厚生労働省試案を公表し て、その後はこれをもとに具体的な検討をしてきていただいたところである。これまで の審議を整理して意見書として取りまとめるということを書かせていただいておりま す。  基本的な考え方でございますが、世界最長の平均寿命や、高い保健医療水準を実現し てきた我が国の医療保険制度は大変大きな環境変化に直面しております。21世紀におい ても真に安定して国民の安心にこたえられるような制度としていく必要があるんだろう と思っております。その際、国民が安心できる国民皆保険制度を堅持していくことが重 要だということで、そのために、適切な方法による医療費適正化、制度体系の見直しを 通じて、給付の平等、負担の公平を図った一元化を目指すことが必要だろう。ただ、一 元化については、被用者保険と国保の一本化を目指すべきとの意見がある一方で、保険 者機能を弱体化させるような一元化に反対との意見もあったということをつけさせてい ただいております。  大きな2つ目ですが、医療費適正化に向けた総合的な対策の推進としまして、医療費 適正化そのものは、国民の生活の質の向上を図っていくことを前提に進めていく必要が あり、こうした観点から、医療そのものを効率化して、医療費の伸びを徐々に適正化し ていくような中長期的な方策を基本とするべきであるとしております。  中長期的な医療費適正化としては、生活習慣病予防、入院から在宅医療までの切れ目 ない形での地域医療機能の分化・連携、医療と介護の両面にわたる地域ケア体制の推進 といった取り組みで進める必要があるんだろうと思っております。  2ページでございます。このため、国と都道府県に共同により、生活習慣病の患者・ 予備群の減少、平均在院日数の短縮というのを政策目標として掲げて、総合的・計画的 に推進するための枠組みをつくっていくべきである。具体的には、国の主導のもと、都 道府県が計画を策定して、政策目標の実現に向けて取り組みを進めていくこととして、 中間時点なり計画終了時に検証・点検をして、政策目標の実施状況を踏まえた都道府県 の負担の特例とか、都道府県別の特例的な診療報酬の設定を行うべきである。ただ、こ れに関しては、実施状況を踏まえた特例について反対という御意見もあったところでご ざいます。  このような適正化対策を進める際には、医療費総枠管理につながるような運用をしな いことが求められているところでございます。生活習慣病予防については、保険者が積 極的な取り組みを行っていくことが求められていて、40歳以上の方について生活習慣病 に着目した健診・保健指導の事業実施を義務づけるべきでありますが、費用対効果を踏 まえつつ、市町村の協力のもと、段階的な事業展開ができるようにする必要があるとい うふうにしております。  大きな2番目でございますが、保険給付の内容及び範囲のあり方の見直しでございま す。公的保険給付の内容・範囲の見直しを初めとする、短期的な医療費適正化方策につ きましては、過度の患者負担増につながりかねない。そうなりますと公的医療保険の意 義を損なう恐れがあり、また効果も一時的であることから、国民的合意を得つつ、中長 期的な方策を補完するものとして検討していくべきである。しかしながら、これに関し ては患者に対する現行以上の負担増にはすべて反対との強い意見もあったところでござ います。  (1)高齢者患者負担の見直しでございますが、高齢者のうち現役並の所得を有する 方の患者負担については、現役との均衡を考慮して応分の負担を求めるべきとの考え方 に基づいて、2割を3割にすべきとの意見が多かった。しかしながら、慎重に対応すべ きとの意見もあったところでございます。また、新たな高齢者医療制度の創設とあわせ て、現役並所得を有する高齢者の患者負担を3割とした上で、前期の方、65〜74歳の方 を原則2割、後期の方、75歳以上の方は原則1割の患者負担とすることについては、高 齢者の患者負担をさらに求めていくべきだとの意見がある一方で、患者負担を引き上げ ることには絶対反対との意見もあったところでございます。なお、高齢者の患者負担を 引き上げる場合においても、低所得者への十分な配慮を行う必要があるとしておりま す。  (2)入院時の食費・居住費の負担の見直しでございます。介護保険で食費・居住費 を入所者負担としたことを踏まえまして、医療保険でも低所得者に配慮しつつ、療養病 床の高齢者の方については負担の見直しを行うべきとの意見があった。これに関して、 さらに一般病床についても同様の負担の見直しを行うべきとの意見がある一方、医療は 介護と同様に考えることができず、療養病床も含め、見直しは行うべきではないとの意 見があったところでございます。  3ページの(3)高額療養費でございます。総報酬制の導入を踏まえて、低所得者に 対するきめ細かな配慮を行いつつ、高額療養費の基準額、自己負担限度額の定額部分を 引き上げるべきとの意見が多かったところでございます。しかしながら、定額の限度額 を超えた部分について求められる定率負担については廃止すべきとの意見もあり、定額 部分も含めて引き上げるべきではないとの意見もあったところでございます。医療保険 と介護保険の双方を利用する場合には、両制度の自己負担額を合算した上限を設けるよ うにすべきである。  (4)現金給付の見直しでございます。傷病手当金、出産手当金については、支給額 に賞与を反映させるとともに、埋葬料については定額化すべきである。出産育児一時金 については、出産費用の水準に照らし、引き上げるべきとの意見もある一方で、少子化 対策としての政策効果や財源等の面から疑問視する意見、もし引き上げるのであれば、 それは国の予算で対応すべきとの意見があったところでございます。なお、出産に関し ては、健康診査も含めて保険適用すべきとの御意見がある一方で、保険給付の重点化の 要請や保険原則を勘案すれば適用する必要性は乏しいとの意見もあったところでござい ます。  (5)保険免責制でございます。14年の健保法改正時の規程の趣旨に照らして問題が あること、国民皆保険制度の崩壊につながりかねない等の理由から、導入すべきでない との意見が多かった。一方で、医療資源の重点投入のために保険免責制を導入すべきと の意見もあったところでございます。  3番、IT化を活用した医療保険事務の効率化等でございます。レセプトについて、 保険医療機関、審査支払機関、保険者を通じて、個人情報保護を十分確保し、解決すべ き課題を整理しつつ、段階的に原則としてオンライン化をすべきである。あわせて、医 療機関への適切なインセンティブ方策について検討する必要がある。ただ、これについ ては、オンライン化に関しては時期尚早との意見もあったところでございます。また、 被保険者証の個人カード化を進めるべきである。  4番、保険料賦課の見直しでございます。標準報酬月額の上下限の範囲の拡大及び標 準賞与額の範囲の見直しを行う必要がある。また、これについては、国保保険料の上限 額の引き上げについても検討すべきとの意見もあったところでございます。  4ページでございます。5番でございます。医療に関する積極的な情報提供としまし て、診療報酬体系を患者にとってわかりやすいものとする取り組みとあわせ、現状を考 慮して所要の経過措置を講じた上で、保険医療機関や保険薬局に医療費の個別単価な ど、詳細な内容のわかる領収書の発行を義務づけることを視野に入れて情報提供を強力 に推進するべきである。  IIIでございます。保険者の再編・統合等。被用者保険、国保それぞれについて、歴 史的経緯とか実績を十分尊重しながら、保険者の財政基盤の安定を図るとともに、保険 者としての機能を発揮しやすくするために、都道府県単位を軸とした再編・統合を推進 する必要があるとしております。  1の国保でございますが、都道府県単位での保険運営を推進するために、各市町村に おける高額療養費の発生リスクを都道府県単位で分散させるとともに、保険財政運営の 安定、平準化を促進する観点から、共同事業の拡充等を図る必要があるとしておりま す。また、国保の財政基盤強化策については、引き続き措置を講じる必要がある。こう した取り組みだけではなく、そもそも構造的な問題に対応する抜本的な措置が必要だと の意見もあったところでございます。また、国保組合の国庫補助については、所得調査 の結果等を踏まえて、財政力に応じて適切に見直すべきである。また、被用者保険との 制度上の区分という観点から、制度そのもののあり方を見直すべきとの意見もあったと ころでございます。  2つ目、政管健保でございます。国と切り離された全国単位の公法人において運営さ れるようにすべきであるとしております。その際、財政運営は都道府県単位を基本とし て、都道府県ごとに地域の医療費を反映した保険料を設定すべきであるとしておりま す。一方で、医療保険制度の公的な性格を踏まえ、全国一律の料率にすべきとの意見も ございました。  3の健保組合でございます。健保組合の再編・統合については、健保組合の自主性・ 自律性を尊重しつつ、同一都道府県内における健保組合の再編・統合の受け皿として、 地域型健保組合の設立を選択肢の一つとして認めるべきであるとしております。  5ページでございます。IVでございます。新たな高齢者医療制度の創設でございま す。1番、後期高齢者医療制度でございます。基本的な枠組みとしまして、高齢者の医 療制度について、現行の老健制度を廃止して、高齢者の保険料、社会連帯による相互扶 助の考え方に基づく国保及び被用者保険からの支援並びに公費を財源とする新たな独立 した制度を創設すべきという意見が多かった。ただし、被用者保険の加入期間が長期に わたる退職者をそれぞれの被用者保険が抱えるという新しい制度を創設すべきとの意見 もあったところでございます。  (2)被保険者として、独立した高齢者の医療制度を創設する場合の被保険者として は、75歳以上の者とすべきとの意見がある一方で、75歳以上とした場合には、65〜74歳 について財政調整を行う仕組みは、制度が複雑になるとの観点から、65歳以上の者とす べきとの意見もあったところでございます。  (3)運営主体でございます。これについては、都道府県単位を軸とした保険者の再 編・統合の方向性に沿って考えるべきであるが、具体的には、市町村をベースとした広 域連合等を活用すべきとの意見、公法人とすべきとの意見、都道府県とすべきとの意 見、国とすべきとの意見があったところでございます。一方、保険者をだれにするにし ても、適用・徴収は市町村が実施すべきである。また、保険料を年金から徴収する仕組 みを設けるとともに、保険リスクを広域単位でできる限り軽減すべきである。さらに、 高齢者保険料について統一的な保険料を設定すべきとの意見や、近い将来に都道府県単 位での財政への展望を示すべきとの意見があったところでございます。  (4)費用負担でございます。高齢者保険料負担については、低所得者に対する適切 な軽減措置を講ずるなど、現行の国保における仕組みも勘案して設計すべきである。ま た、国保及び被用者保険からの支援については、加入者数に応じた負担とすべきとの意 見が多かったが、所得にも着目した負担とすべきとの御意見、稼得年齢を考慮して、例 えば20歳以上、また40歳以上とすべきとの意見もあったところでございます。  (5)高齢者の診療報酬については、高齢者の心身の特性等にふさわしい診療報酬体 系として、高齢者医療の質を向上させるよう十分配慮すべきである。また、高齢者の診 療報酬設定に当たっては、老年疾患の重症化予防の観点も踏まえつつ、リハビリによる 身体機能の維持、QOLの保持・向上等に十分配慮すべきであるということにしており ます。  2つ目、前期高齢者医療制度でございます。(1)保険者間の負担の不均衡の是正と いうことで、独立した高齢者の医療制度の対象を75歳以上とする場合においては、前期 高齢者についても保険者間の財政調整を行うことが必要となるところでございます。一 方で、保険者間の財政調整そのものは法制的に問題があり、かつ、保険者の自主性・自 律性を損なうものであることから反対との御意見もあったところでございます。これに 関しては、制度が複雑になることから、前述のとおり、独立制度の対象を65歳以上にす べきとの意見がある一方で、所得格差を考慮した十分な調整を行うべきであり、対象年 齢も退職時または55歳程度にまで下げろとの御意見もあったところでございます。  (2)退職者医療制度でございます。保険者間の財政調整を拡大するものであり、現 行制度からの円滑な移行を図るための経過措置として一定期間存続させることについて も反対との意見がある一方、経過措置ではなく、恒久措置として存続させるべきとの意 見もあったところでございます。  以上のように、医療保険制度改革について、当部会として共通認識を得られた点があ る一方、意見の隔たりが大きかった点もあるが、医療制度の構造改革が強く求められて いる中で、厚生労働省においては、当部会における種々の意見に十分留意しつつ早急に 検討を進め、医療保険制度改革の成案を得、実現するよう求めるとさせていただいたと ころでございます。以上でございます。  星野部会長  それでは早速御意見、御質問等ございましたら、どうぞ。  齊藤委員  3点要望したいと思います。まず、1ページの基本的考え方にある1つ目の「○」に ついてです。3行目の「21世紀においても真に安定し」という前に、「経済・財政とも に均衡を図ることで」という文言を追記願いたいと存じます。医療保険制度の財源の多 くが、現役世代や企業の負担する保険料と税で賄われているということでありますの で、経団連としてずっと言ってきたことなのですけれども、そういう文言を入れていた だきたいというのが1点目です。  2点目が、同じページの医療費適正化に向けた総合的な対策の推進にある1つ目の 「○」についてです。3行目では、「中長期的な方策を基本とすべきである」となって いますけれども、医療費の適正化については、厚生労働省の試案で整理されていますよ うに、医療の効率化を図る中長期的な方策と、公的保険給付の内容・範囲の見直し等の 短期的な方策を組み合わせて取り組むというものであります。短期的な方策が欠落して いるのであり、ここを修正願いたいというのが2点目です。  3点目ですけれども、2ページの3つ目の「○」についてです。2行目に「医療費総 枠管理につながるような運用をしないことが求められる」となっていますが、「個別政 策の目標だけでは医療費適正化の実現に不十分であることから、経済との整合性のある 絶対値目標が適切であるとの意見があった」と、追記いただきたいというのが3点目で す。以上でございます。  松原委員  今おっしゃった3点とも反対でございます。1番目の経済についてですが、「21世紀 においても安定し」、というのは非常によい文章だと私は思っております。  2番目は、改革する医療保険制度の中で「中長期的な方策が基本」ということでござ います。もし必要であれば短期的なことを考えることもあるかと思いますが、これは先 の話でございますので、私は「中長期的な方策を基本」ということで、ここに短期的な ものに触れる必要はないと思います。  3番目でございますが、医療費総枠管理制、これは必要な医療を給付することができ なくなる制度でございますので、これに賛成するような文章は反対でございます。  星野部会長  ありがとうございました。  対馬委員  数点申し上げたいと思うんですけれども、1点目は、1ページの基本的な考え方の2 つ目の「○」ですけれども、ここでまた「一元化を目指すことが必要である」という文 章があるわけです。8月の取りまとめの段階でも随分議論が分かれたところでして、最 終的には部会長の御裁断ということで文章もしていただいたということです。それをま たその後、こういった方向での議論がなされないままに「一元化を目指すことが必要で ある」というのは、これまでの部会の議論を無視している。もとに戻していただきたい と思います。8月段階での預かりになって、それを部会長の裁断でもって直していただ いた文章に改めていただきたいということです。  それから、5ページのところになります。高齢者医療制度のところですけれども、今 回の高齢者医療制度について、私どもとしては極めて強い問題意識を持っているという ことは再三申し上げましたので繰り返しません。文章上、これまでの議論を整理したこ の点についてだけ申し上げます。(2)ですけれども、4行目、「制度が複雑になると の観点から、65歳以上の者とすべきとの意見があった」ということですけれども、私ど もは制度が複雑になることだけを申し上げているのではありません。不公平であると か、不透明であるとか、そういったこともありますから、せめて「制度が複雑になるな どの観点から」と、「など」は少なくとも入れていただきたいと思います。  それから、(4)の費用負担のところですけれども、2つ目の「○」のところで、 「加入者数に応じた負担とすべきとの意見が多かったが」ということですが、これにつ いてとりわけ異論があるわけじゃないんですけど、前にも強く申し上げましたけれど も、実加入者数ではない、調整された加入者数で負担すべきということになっておりま すので、ここは極めて問題である。したがって、「調整された加入者数ではなく、介護 保険同様、実加入者数で負担すべきだとの強い意見があった」というようなことを入れ ていただければと思います。  それから、6ページですが、(1)負担の均衡の2つ目の「○」ですけれども、前期 高齢者にかかわることですけども、「制度が複雑になることから」と書いていますけれ ども、これも私どもは制度が複雑になることだけを申し上げているのではありません、 いろんな問題があるということですから、せめて「など」は入れていただきたいと思い ます。  今回の文章ということではないんですけれども、私どもとしては、こういったいろん な制度を立てた上で、最終的にどうしてもプラスマイナスが出てくるということで、そ れが各制度間のプラスマイナスだけの数字は一応出されているわけですけれども、例え ば健保組合1500数10組合ありますので、それが一体どういった形で変わってくるのかと いうのは全くわからないわけです。したがって、各項目別に現行と、今回の新しい制 度、特に高齢者医療制度を立てた場合に、全体にどういう影響があるのかという試算、 シミュレーションの結果についてはきっちり出していただきたいという資料要求をお願 いしたいと思います。以上です。  星野部会長  資料請求はいかがですか、課長。  榮畑課長  個別組合の影響は確かに大事なところでございます。私どもも問題意識を持って何か できないかということで、今知恵を絞っているところでございます。ちょっとお時間を いただければと思います。  それと、各項目ごとにと言われましたのは、ちょっとその項目という意味の趣旨がよ くわからないところなんですが。  対馬委員  今回変えているところがいろいろあるわけでして、例えば退職者医療制度を入れたこ とによってどうなのかとか、私どもとしては稼得年齢じゃない、例えば乳幼児が入って いるとか、そういったこともあります。前期高齢者で財政調整を行っていくといった、 幾つかのファクターがあると思いますので、ファクターごとにどういう影響があるのか ということをお出しいただきたいという趣旨です。  榮畑課長  財政試算は制度改正全体でやっているところでございまして、各項目ごとに影響を出 せるかどうか余り自信がないのでございます。そこはちょっと精査させていただければ と思っているところでございます。今のお話も含めまして、何かできるかどうか、ちょ っと考えさせていただきたいと思っております。  対馬委員  ぜひよろしくお願いしたいと思います。  星野部会長  どうもありがとうございました。河内山委員から手が挙がりましたが、後期高齢者医 療制度の創設に関して河内山委員から、最初から御発言の申し入れがございまして、一 番後ろに河内山委員の資料が提出されていますので、それを参考にしながら、河内山委 員からどうぞ。  河内山委員  取りまとめの際に意見を申し述べる機会をいただいて大変ありがたく、また恐縮に存 じております。  これまで全国市長会としましては、厚生労働省試案にあります後期高齢者の運営主体 を市町村が担うことは到底できないということを繰り返し申し上げてまいりました。最 近では市長会の決議において市町村が運営主体となることについて断固反対であるとい う決議もいたしました。しかしながら、一方で、我々は保険料の徴収や、どなたが被保 険者であるかという適用の事務、これは都道府県にもできないであろうし、国において もできないであろう、このことについては私どもが一生懸命仕事としてさせていただく ということを述べてまいりました。同時に、全国町村会、国保中央会ともに、後期高齢 者についての運営主体の問題については市長会と同じスタンスでこれまで対応してまい ったところでございます。  そういうことでございますが、いよいよ部会としての医療制度改革についての議論の 取りまとめが行われるという段階になりまして、私どもがこのことについて、市町村は 担えないということだけを言い続けておりましても、厚生労働省の試案には明確に、市 町村が運営主体であるというふうに明記されておりますので、私どもとしても対案を出 しませんと、市長会として反対はしたけども最終的に市町村が運営主体であるというふ うに政府案、あるいは今月末にも予定されている政府与党合意で明記されることについ ては、さらに困った状態であるということでございまして、厚生労働省の皆様方にぜ ひ、さらなる検討を促し、市町村を単独の運営主体としないことについてこの際申し上 げたいと思っております。  そこで出しました資料でございますが、これまで市長会としても、新しい高齢者医療 制度はできれば国一本の制度、あるいは国等が保険者として実施すべきであると主張し てまいりましたが、地域保険に任せられるような生易しい問題ではないことから、これ はオールジャパンの問題として国において最終的な責任を担うべき医療制度だというこ とを記述しております。  2点目でありますけれども、地域保険とされておりますけれども、財政運営はその他 の国保、健保、政管健保ともに、都道府県単位を軸とした運営が目指されているという 方向性と軌を一にするために、都道府県単位を軸とした運営とするべきであると。運営 をする仕組みでありますが、公法人または広域連合、しかも都道府県も国も重層的に責 任を担うということを明確にした運営形態であるべきだということでここに記述してお ります。できれば公法人または広域連合どちらかに絞るべきだと思いますけれども、市 長会で議論しまして、両方の考えがございます。公法人で行うべしという市町村もおい でになるし、広域連合もいいのではないかという方もおいでになりますので、これは両 方書いておりますがそういう事情でございます。なお、広域連合で行う際には、既に実 施している実績・経験から、議会等の位置づけであるとか、あるいは業務を広域連合で 行うがゆえの非効率性も指摘されておりますので、そのことについては付言いたしたい と思います。なお、このことについては昨日、この部会の委員でもあられます全国町村 会の山本会長からお電話をいただきまして、「広域連合として実施することが望ましい のではないか」という伝言を承っておりますので、あわせてお話し申し上げたいと思い ます。  以下、低所得者の対策、これは国保も同様でございますが、大変大きなリスクを抱え るわけでございますが、一つには低所得者の方を排除できない地域型の保険であること から、このリスクの分散について書かせていただいております。  また、保険料率については都道府県内同一とする。  5つ目に、これは公法人あるいは広域連合とした際には、試案で示されている財政安 定化策の内容は若干変わってくると思われますけれども、その充実についてさらに具体 化を検討いただきたいということでございます。  最後には、保険料徴収等の事務は市町村が委託を受けて行うということを記述してお ります。  以上申し上げましたけれども、市町村が単独で担うような代物ではないということを 重ねて申し上げますとともに、低所得者の方もたくさんおいでになるというリスク、徴 収ができないときのリスク、給付費=医療費が高騰する可能性が非常に高いというリス ク、その3つのリスクについて適切な分散策、あるいは財政の面からいいますと安定化 策について、真剣に御検討いただきまして、時間はございませんが、政府案の中に市町 村が保険者ではないという政府案が取りまとめられるように心から願いまして、発言を 終わらせていただきたいと思います。以上でございます。  星野部会長  ありがとうございました。ほかに御意見ございませんか。どうぞ。  逢見委員  私からはIIの医療費適正化に向けた総合的な対策の推進に関して、幾つか意見を述べ させていただきます。  まず高齢者の患者負担見直しでございますが、前回意見を申し上げて、部会長からの 個人的な意見もちょうだいいたしましたけれども、重ねて意見を申し上げるつもりはご ざいませんけれども、例えば高齢者で療養病床に入院している方については、この制度 が変わりますと食費・居住費の負担の見直しに加えて、患者負担の見直しがされるとい うことになるわけです。そうすると、かなり負担が急激にふえる、同じ入院という状態 が続いていて、ある時期から急激にふえるということになるわけで、仮に負担の見直し をするとしても、激変緩和という措置が必要なのではないかと思います。低所得者への 十分な配慮は重ねてお願いしたいと思います。  それから、入院時の食費・居住費の見直しについては、介護保険制度との負担の均衡 ということが試案に入っているわけですが、試案の参考資料を見ますと、介護では4万 2000円、医療では4万6000円という食費の格差がございまして、負担の均衡という視点 で出された試案にしては差があるではないかというのがございまして、こうした点につ いてどのような考え方に基づいてこの案が出されているのか、もう一度確認したいと思 います。  それから、高額療養費については、ここでは「定額部分を引き上げるべきとの意見が 多かった」という案になっておりますが、私はかわったばかりで過去の議論を知りませ んけれども、傍聴していた連合の事務局の意見を聞きますと、引き上げるべきとの意見 が多かったという認識ではないと聞いておりますので、ここは「意見があった」とすべ きではないかと思います。そもそも高額療養費については、定額負担に加えて定率負担 を入れたこと自体が反対であると思っておりますので、これを2%にするという試案に ついては強く反対しておきたいと思います。  それから、現金給付については、出産手当金については以前も前委員から意見を申し 上げたところでございますが、ILO103号条約の母性保護条約を我が国はまだ批准し ておりませんが、批准できていない理由の一つが、出産手当金が6割にとどまっている ということでありまして、今回、総報酬制に基づいたという部分があるものの、7割と いう部分が入っていないという点について、ILO103号条約を批准できるような水準 にすべきだということを申し上げたいと思います。  それから、IT化については、「段階的に原則としてオンライン化すべきである」と いう、「段階的に原則として」という部分は、非常に時間がかかることを意味している ように思いますので、ここは「速やかに」とすべきだと思います。  それから、領収書の部分については「視野に入れて」という部分を削除すべきだと思 います。以上です。  星野部会長  ありがとうございました。今御質問が1つありましたね。どうぞ答えてください。  今別府課長  保険課長です。食費についてのお尋ねがありましたのでお答えいたします。介護保険 の4万2000円と医療保険の4万6000円で違うではないかというお話ですが、介護保険は 介護保険制度から外に外しましたので、基本的には自由料金になっていて、4万2000円 とおっしゃっているのは、低所得者に対する補足給付を行う際の基準額だという点がま ずあります。医療保険の方は今も食事の療養費というのがありますので、これを活用し て制度を仕組もうと考えております。いずれにしても、介護保険の実際の徴収金額等を 見ながらこの辺は精査していきたいと思っております。  それからもう一点、出産手当とILO103号条約の御発言がありましたが、ボーナスを 反映させると標準報酬の3分の2ぐらいの水準はクリアするのではないかと思っており ますので、この点に関してはILOの条約の条件をクリアできるのではないかと考えて おります。ただ、ILOの条約はこの部分以外に幾つか問題があるようでございますの で、直接この点だけで批准へは結びつかないのではないかと考えております。以上で す。  逢見委員  じゃあILOの水準の現金給付のデータを出していただきたいと思います。  星野部会長  よろしくお願いします。どうぞ。  多田委員  先ほどの対馬委員の御発言に絡んでの話ですが、1ページの一元化、これは我々の悲 願として常に主張してまいりましたし、ぜひこのままで進めていただきたいと思いま す。むしろ4ページの2つ目の「○」でございますが、ここで「各保険者の歴史的経緯 や実績を十分尊重しながら」という表現が入っておりますけれども、尊重というのがど の程度のことかわかりませんけれども、一元化という方向に向けて、それをやや否定す るようなニュアンスの用語が使われているように思いますので、御再考いただければと 思います。  星野部会長  ありがとうございました。  登利参考人 明細のわかる領収書について、義務づけることを視野に入れると、「視 野に入れる」を取れという御発言をいただきましたが、我々としましては、明細のわか る領収書ということに対して、出すことについてはやぶさかではない。ただ、診療報酬 の中身について、患者に説明しにくい部分が我々の分野でもございます。どこまでの明 細のわかる領収書を出すのかにつきましては、かえって患者さんと先生の信頼関係を失 うというような部分も十分残っておりますので、「現状を考慮して視野に入れて」とい う、この文章で私はいいのではないか。早急にということはかえって、余り性急過ぎて 混乱を招く恐れがあると考えております。  星野部会長  ありがとうございました。どうぞ。  井伊委員  3ページのIT化のところですが、「医療機関への適切なインセンティブ方策につい て検討する必要がある」とありますが、支払機関から保険者への電子化を進めることも 重要だと思いますので、そのインセンティブに関しても明記することが必要ではないで しょうか。電子化によって、一次審査は基本的に機械で審査をして、二次審査は医学的 な判断が必要になりますので、精緻な審査を人間が行うというように、IT化によって 支払機関の役割が変わると思います。どういう役割を担うようになるのか、そのあたり も明記していただければと思います。  星野部会長  ありがとうございました。どうぞ。  対馬委員  多田委員の発言ですけど、このあたりは随分前に北郷委員とも被用者側と議論した経 緯もありますし、意見としてはわかりますけれども、これはあくまでも医療保険部会と して合意ができていることは合意ができている、という整理で来ているわけですから、 しかも1人の方だけが異論を唱えているというのであればまだしも、複数の委員がそう ではないと言っている中において意見が分かれているというのを、あたかも全員が意見 が一致しているような書きぶりというのはできないだろうと思います。  漆畑委員  ちょっと経緯を教えていただきたいんですが、2ページの生活習慣病に関係するとこ ろで、4つ目の「○」なんですが、2行目に、「40歳以上について」と書いてあるんで すが、40歳以上というのはどんな経緯で40歳ということが書かれるようになったのか教 えていただきたいと思います。  大島室長  現行の老人保健事業で市町村が健診事業を行っておりますけれども、そちらが40歳以 上を対象年齢としていますので、それを踏まえて今回の保健事業の対象も40歳というふ うにしてございます。  漆畑委員  経緯はわかりました。一定の事業として行うものの40歳以上というのはわからないわ けでもないんですが、実際に生活習慣病の発症予防について健診も含めて行うとすれ ば、やはり40歳ではなくてもっと若い年齢から行うべきでありまして、制度改革の案と すれば、無理やり40歳じゃなくてもいいんじゃないかなという感じがします。  大島室長  その点に関しまして、厚生労働省の試案の中では、医療保険者においては40歳未満の 方についても事業実施に努めるものとするということで位置づけしております。  岡谷委員  5ページなんですけれども、新たな高齢者医療制度の創設というところで、仮に後期 高齢者医療制度というものがつくられていったときに、(5)の最初の「○」なんです が、「高齢者の心身の特性等にふさわしい診療報酬体系とし、高齢者医療の質を向上さ せるよう十分配慮すべきである」と、2行で書いてあるんですけれども、高齢者の医療 のあり方をきちんと議論して考えていく、例えば若い人たちに提供するような医療のや り方をそのまま高齢者に持っていくということではなくて、高齢者の特性ということを 十分に考えた医療のあり方ということをきちんと議論して、高齢者医療制度を確立する ならしていくということをお願いしたいと思います。  星野部会長  特に修文が必要だとかそういうことではないんですね。  岡谷委員  ええ。たった2行で、これが何を具体的に意味するのかというのが非常にわかりにく いんですけども、表現しようとしていることはわからないでもないですので。  星野部会長  ありがとうございます。どうぞ。  松原委員  オンラインの件でございますが、学者の先生方は今のルールをすべて適用して、コン ピューターで一次審査すれば非常に効率的だと思われるのも理解できます。というの は、他の自然科学の分野では確かにそのようであると思っておりますが、医療の分野に おいては非常にあいまいなまま置いておかれた問題が多々ございます。一例としまして 私がいつも申し上げているのは、医薬品の適用外投薬の問題でございます。医薬品とい うのは、日本においては最初に申請したときの病名だけが尊重されて、審査するときは その病名がなければ使えないという原則になっております。ところが、審査委員会はか つての通知に従って、薬理作用に基づいて安全性・有効性が確立された医薬品について は、医師が薬理作用で判断して投薬したものを審査委員会が認めれば使えるようになっ ております。アメリカやヨーロッパでは、最初に申請するときの病名と実際に使うとき の保険用の病名は異なっております。最初の申請のときはいろいろな治験とか費用のか かる問題がございますが、実際に使うときになれば、それまでの学術上の知識によって 薬理作用があれば使えるようになっております。それを証明するような別の基準がござ います。ところが日本においては、医薬品局によって承認された病名だけが保険適用で きる形になっておりますので、これをオンラインで全部やりますと、かなりのものが実 際上使えて、しかも安全で何年も使っていたにもかかわらず、保険者のところで適用外 になってしまいます。そういった諸問題があり、また、ほかにも薬用量の問題もござい ます。薬用量は、書いてある用量よりも1.5〜2倍まで認めるところもあります。各々 の患者さんの特性、体重とか体質がございますから、そのようなものに合わせて医師は 処方しております。そこのところを余りにも一律に切りますといろんな問題が出てくる ので、医薬品局が決めておられる病名とか薬用量とか、そういったものを現状に合わせ た上でやらなければ問題が起きるということを申し上げているわけでございます。それ は今ある青本、つまり中医協で決めたいろいろな通知、告示の中の問題点の一つでござ います。そういったものを改善すればIT化することについては大賛成でございます が、実際に今のあいまいなまま、日本がこれまであいまいなまま置いていたものがかな り多かったということでございますが、それを実行したときにはいろんな問題が起きる ので、そちらをまず規制改革の中で直していただいて、直って適切な形になれば推進し たいと思っております。そこで「段階的に」という言葉が出ますので、申しわけござい ませんが、そのあたりは自然科学であるにもかかわらず社会適応のところであいまいな ところがあるので、御理解いただきたく思います。患者さんは人間です。人間は個々ば らばらです。ばらばらだから適用するのにいろいろな方法をとらねばならないというこ とでございますので、数学のようにはいかないということでございます。  星野部会長  私が言うのは余計な話なんだろうと思うんですけど、ITの話にしても、領収書の話 にしても、私のような素人が聞いていますと、「段階的」とか「視野」とか非常に巧妙 な言葉が入り過ぎているんですよね。お二人の話を聞いていますと、要するに技術的な 整備がちゃんとあればいいんだよと、我々もそういうのを願ってますよというふうに聞 こえるんですね。だったらそういうふうに素直に書けばいいんじゃないですか、こうい うところに。  松原委員  適用外投薬の問題は私は何度も厚生労働省さんにお願いしているにもかかわらず、適 切な回答が返ってまいりません。そこのところはぜひ規制改革会議で、やっていただき たいのはそのあたりだと思っております。また、中医協のさまざまな議論の積み重ねで 非常にわかりにくい制度になっているというところを改善するには、一朝一夕にはでき ないのではないかと思っております。すぐに極めて明瞭な方法になるということはあり 得ないので、十分に1号側、2号側で議論していき、互いの認められるところまで落ち ついて初めてできている問題でございますので、そこのところはすぐにというわけには いかないのですが、しかし、日本の国であるべき姿にはしなければならないと思ってお りますので、そのように努力するつもりです。  対馬委員  今のお話ですけれども、中医協の支払い側の委員の立場として言わせていただきます と、今松原委員が言われたのは中医協の委員全体の合意だということでは決してござい ませんので、どちらかというと診療側サイドの意見でありまして、私ども支払い側とし ては大いにIT化を進めていくべきだという議論をしていまして、今の体系が極めて複 雑であることは事実ですけれども、だからとって明細書つき領収書を出してはならない ということにはならない。出すことによって中身が極めて複雑とかわかりにくいとかそ ういったことが明らかになってきます。そのこと自体がまた診療報酬体系の複雑さを簡 素化していく、是正していくことにもつながっていきますので、まずはIT化をできる だけやってみようじゃないかということがあって、だけどもここのところはすべて機械 でやるわけにはいかないと。ここは人間としての判断が入るよねという議論じゃない と、いつまでたっても進まないのではないかということで、私どもとしては強く主張し ているということだけは申し上げておきたいと思います。  星野部会長  ありがとうございました。ほかにございませんか。  一本化するのは、全く意見が対立していてどうも難しいなと思う箇所もありますが、 雰囲気としてはだんだん収れんしているように思うんですね。どうでしょうか、きょう 積極的にここで、例えば対馬委員のように、文言上「など」を入れてくれれば結構だ と、結構とは言わなかったけども、なるべくなら入れてくれよという意見というのは文 言上修理すれば、お互いに納得しながらできちゃうんですが、一番難しいのは、私の思 いつくのは、高齢者医療制度の運営主体の問題なんでしょうね。そこらあたりがここで 本当に書けるのかどうか。  それと関連して前回山本委員が言われたように、少なくとも長期的には一元化を入れ なきゃ我々は主体なんて言われたってけ飛ばすよという言い方をしたもんだから、今度 の文章はそっちだけを片一方とってるんじゃないかなとも思わない節もないではないと いう、文言上あっちを取ってこっちに入れるとか、非常に事務方の苦労はよくわかるん だけど、すっきりするところはすっきりした方がいいんだろうという気がするんだけ ど、ここのところが一番大変な問題だし、新聞などを見ていても、各党まで寄ってたか っていろいろ議論があるところのようでありますし、ここはどうやっていくんでしょう かね。  きょう事務方が出してくれた文章というのは、かなりいろんなふうにとれるんです ね。こんなあいまいな文章が残ってもしょうがないのかなという気もしないではないん ですけど、一歩進めようとしたらばらばらになっちゃうというようなことがありますよ ね、中に。だから、どうでしょうか、きょうここですぐに決めないで、皆さんがもしよ ければ予備日を一応、たしか30日だったですかね、とってあるから、もう一回そこで最 終的に決めるということにするか。きょうは皆さん非常に効率的にやっていただいたも のですから時間がまだあるから、ここでもういいよというところまでいけるならいいん ですが、少しお互いにどこで寄せてくるのかということを時間を稼いだ方が……松原さ んのところも時間があった方がいいでしょう。すぐ決めちゃっていいですか。  松原委員  私は適切であれば構わないと思っております。  星野部会長  構わないですか。やっぱり河内山さんのところですかね、そうすると。対馬さんのと ころはどうでしょうか。  対馬委員  一元化の問題を、部会長がこの前整理していただいた……  星野部会長  向こうの整理に戻れば別に基本的にはいいと。  対馬委員  そうです。  星野部会長  これは議事録に残すような話じゃないんだけど、要するに主体の問題が決まれば大抵 のことがすーっと氷解する部分が多いんじゃないかなと。あと対馬さんのところだと、 年齢のところがあるんですよね、本当はね。ここを強行突破しちゃうかという考え方も ないことはないけども、ここでは並列に書いてますから、年齢の取り扱い方というのは 行政・政治マターでやっていただくしかないんだろうと思うので、そういうところは我 が部会としては、だらしないかもしれないけど、並列は並列でいっても、だれかが選択 できるような案が出ているというところまでいけばいいかなというふうになるのかなと 思ってるんですが。  どうでしょうか。きょうここで私に一任いただいて、皆さんの御意見について、事務 方には申しわけないんだけど、各御発言の趣旨を各委員から承りながら、私の責任で調 整させていただくという形をとるか、あるいはもう一回ここで議論していただいてやる ということにするか、その分かれ道だと思いますが。  もしよろしければ、お任せいただきまして、皆様方のところに事務方が出向いて御意 見を……事務方は忙しくて大変なんですけど、それを何らか調整させていただくという 格好で仕上げていくという方法をとった方が、皆さん年末でお忙しい最中だから、もう 一回30日にやるということよりはいいかなと私は思うんですけど、運営は皆さんと一緒 にやっていくものですから、30日にもう一回やろうじゃないかというお声が多ければ30 日にもう一回やるということもやぶさかではございませんが、いかがでしょうか。  河内山委員  確認なんですが、30日の政府与党の医療制度改革協議会というのは午後設定されてる んですか。  榮畑課長  政府与党医療協議会は内閣官房、官邸の方で日程設定をしておりますから、まだ具体 的には決まってございません。11月の下旬から12月初旬にかけて取りまとめるというこ とでございます。  河内山委員  一点だけ、各委員のさまざまな御発言というのは全部試案に沿ったものもあれば、沿 ってないものもあるので、別にそれはどれが重くてどれが軽いという話では全くないと 思うんですが、私が申し上げましたように、試案に書いてあることと全く違うことを、 ああせい、こうせいと言っていることについては、我々としては試案どおりでは困るん だという……また、困るんだということだけ言っても厚生労働省の方々も困るんだろう と思うんです。ですから、それは我々としては、市長会にしましても町村会にしまして も、最大の関心事ではあります。ですから、その行方がどうなるのかということについ ては最後まで部会で見守った上でという決め方をしていただく方が我々としては、全国 の組織ですから、私としても説明責任はつくことはつくんですね。しかし、それはなか なか厄介な話なので、部会に具体的なことが示せるような状況でもないということであ れば、私の個人的な感覚からすると、皆さん方を煩わせるのも申しわけないなという感 じがしております。  星野部会長  もっと単刀直入に言っちゃえば、きょう出てる案みたいなふにゃふにゃの案でそのま ま主体のところは過ぎちゃうという方が、本当の意味で実現するのにはいいかもしれな い。つまり、ここで実現できないことを言っても、ああ、あんなこと言ってるんだなで 終わっちゃうのが一番困るんですよね。わかっていてそういうことをするのがね。だか ら、わからないでやっちゃうのはバカだということになるわけですけど、わかっている のにそういうことをするのはうまくないので、そういう意味では、事務方が頭をひねり ひねり、大変ひねった後の文章がきょうの段階ではできていて、もうちょっといい文章 ができるのかもしれませんけど、ここが一番肝心なところじゃないかなという気がする んですね。  そういう前提で、河内山さんたちが、この段階ではそうしようということを、「うん 」と言わなくてもいいんですけど、「ノー」と言わなければいいんですけど、というこ とを言ってくだされば、まあ座長にお任せいただいて、きょうの文章をベースにしなが ら御意見を承って、それぞれ皆さんのところには接触するように事務方にはしてもらい ますが、そういう格好で最終まとめをしていくという格好で、それじゃあやらせていた だきます。どうでしょうかって聞かれても皆さんもお困りになるんですね。どっちにい ったってパーフェクトにはできませんからね。そうしてもらった方がいいんじゃないか と思いますので、そんな方向で、次回はやらないで、そういう格好での取りまとめで進 めさせていただきたいと思います。  どうも本当にありがとうございました。長いことお知恵をいただきまして、まだ終わ ってませんけど、皆さんが一堂に会して、皆さんのお顔を見ながら発言するのはこれで 終わりかもしれませんが、本当に一生懸命やっていただきましてありがとうございまし た。  また、事務方は大変な苦労をしたと同時に、またしてるわけでございますので、改め て事務方にも御礼申し上げたいと思います。  本日はこれで終わりとしたいと思います。どうも本当にありがとうございました。御 協力感謝します。                                    (終了) (照会先) 保険局総務課企画調査係 代表 03−5253−1111 内線 3218