05/11/18 労働政策審議会雇用均等分科会第54回議事録            第54回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成17年11月18日(金) 13:00〜15:00 2 場所: 厚生労働省専用第21会議室 3 出席者:    労側委員:吉宮委員、岡本委員、篠原委員、片岡委員    使側委員:川本委員、前田委員、渡邊委員    公益委員:横溝会長、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員、林委員 ○横溝分科会長  ただいまから、「第54回労働政策審議会雇用均等分科会」を開催いたします。本日は 樋口委員、佐藤孝司委員、吉川委員、山崎委員の4人が欠席です。渡邊委員は、まもな くお見えになると思います。  早速、議事に入ります。本日の議題は男女雇用機会均等対策についてです。本日は、 これまでご議論の出てきた論点ごとに検討の方向性について整理した「今後の取りまと めに向けた検討のためのたたき台」を事務局が用意しておりますので、まずそれについ て事務局から説明をお願いいたします。 ○石井雇用均等政策課長  ご説明をさせていただきます。資料「取りまとめに向けた検討のためのたたき台」を ご覧ください。これは公益の先生ともご相談をしながら、事務局として取りまとめに向 けて検討をしていくためのたたき台として作成をしたものです。まず最初に朗読し、そ の上で若干補足の説明を加えたいと存じます。                 (資料朗読)  取りまとめに向けた検討のためのたたき台。 1 男女雇用機会均等の確保について  (1) 男女双方に対する差別の禁止   ・ 現行男女雇用機会均等法(以下「均等法」という。)は女性に対する差別のみ    を禁止しているが、本来あるべき姿は男女双方の差別の禁止であることにかんが    みれば、男女双方に対する差別の禁止とすることを検討すべきではないか。   ・ 一方、均等法第9条(女性労働者に係る措置に関する特例)については、我が    国の女性の置かれた現状を踏まえれば、当面、女性に対する特例という現行の枠    組みを保持する方向で検討すべきではないか。   ・ また、「仕事と生活の調和」を均等法の目的・理念に規定するかどうかについ    ては、均等法には「仕事と生活の調和」に関する具体的措置規定がなく、「仕事    と生活の調和」という重要課題は労働関係法令全体を通じて実現されるものであ    ると見られるところ、どう考えるべきか。  (2) 差別禁止の内容等   ・ 現行均等法は募集、採用、配置、昇進、教育訓練、福利厚生、定年、退職、解    雇という雇用ステージについて均等確保のための規定を設けているが、これに加    え、配置における権限の付与・業務の配分(日常的な業務指示を除く。)、降    格、雇用形態又は職種の変更、退職勧奨、雇止め等について、差別的取扱いの禁    止の対象とすることを検討すべきではないか。   ・ なお、「募集及び採用並びに配置、昇進及び教育訓練について事業主が適切に    対処するための指針」上の「雇用管理区分」については、差別的取扱いであるか    否かを判断するに当たり、より誤解を生じず適切な比較が行われるよう、今後、    上記指針の改正を行う際に規定振りについて検討すべきではないか。  (3) 間接差別の禁止   ・ 間接差別については、我が国では明文上の規定はないものの、差別事案が複雑    化する中で形を変えた差別に対応する上で有効な概念であることから、当分科会    の中間的な取りまとめにおいて確認した間接差別概念(注)を前提に、外見上は    性中立的であって、他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の    不利益を与える基準等(以下「対象基準等」という。)を明確化した上で、直接    差別を禁止している各雇用ステージについて間接差別を禁止することを均等法に    盛り込むことを検討すべきではないか。   ・ この場合、どのようなものを対象基準等とするかについて、「募集・採用にお    ける身長・体重・体力要件」、「コース別雇用管理制度における総合職の募集・    採用における全国転勤要件」、「昇進における転勤経験要件」等から検討すべき    ではないか。   ・ 対象基準等が職務との関連性を有するか等の合理性・正当性の判断に当たって    は、予測可能性を高めるため、判断の参考となる考え方を指針で示すことを検討    すべきではないか。   (注)間接差別とは、外見上は性中立的な規定、基準、慣行等(以下「基準等」と     いう。)が、他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利     益を与え、しかもその基準等が職務と関連性がない等合理性・正当性が認めら     れないものを指す。  (4) 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止   ・ 近年、妊娠・出産・産前産後休業取得を理由とする解雇に加え、雇止め、退職    勧奨、雇用形態変更の強要等の事案が増加しており、既に育児・介護休業法にお    いて育児休業取得等を理由とする不利益取扱いが禁止されていることを踏まえれ    ば、解雇以外の不利益取扱いを禁止することを検討すべきではないか。     また、労働基準法の産前産後休業以外の母性保護措置や均等法の母性健康管理    措置を受けたこと等を理由とする解雇その他の不利益取扱いについても禁止する    ことを検討すべきではないか。   ・ 解雇以外の不利益取扱いを禁止することとした場合は、不利益取扱いの判断に    当たっての考え方を指針で示すことを検討すべきではないか。この場合、不利益    取扱いの内容としては、育児・介護休業法における不利益取扱いの禁止とされて    いる内容を基本とする方向で検討すべきではないか。   ・ また、妊娠・出産・産前産後休業取得を理由とする解雇の事案が依然として多    いことにかんがみ、解雇の禁止の実効性を確保するために、妊娠中及び産後一年    以内に行われた解雇は、事業主が妊娠・出産等を理由とする解雇ではないことを    証明しない限り、無効とすることを検討すべきではないか。  (5) ポジティブ・アクションの効果的推進方策   ・ ポジティブ・アクションに関する企業の自主的な取組を促進するため、率先し    てポジティブ・アクションを行っている企業がその取組状況を外部に開示する際    に、これを国が支援することを検討すべきではないか。   ・ その他、雇用に関する状況の把握義務付けやポジティブ・アクションの行動計    画の作成義務付け等の手法についてはどう考えるべきか。  (6) セクシュアルハラスメント対策   ・ 男性に対するセクシュアルハラスメントも対象とすることを検討すべきではな    いか。   ・ セクシュアルハラスメントの相談はなお多く、また内容に深刻なものも含まれ    ていることから、セクシュアルハラスメントについて、現行規定を強化すること    を検討すべきではないか。   ・ この場合、セクシュアルハラスメントの事後の対応措置については、事実認定    が困難な場合がある点にも留意しつつ、事業主として行うべき措置の内容を指針    においてより明確にする方向で検討すべきではないか。  (7) 男女雇用機会均等の実効性の確保   ・ セクシュアルハラスメント及び母性健康管理措置についても調停による解決が    有効であることが明らかになってきたことを踏まえ、調停の対象とすることにつ    いて検討すべきではないか。   ・ 調停の当事者及びセクシュアルハラスメントの行為者とされる者に対する出頭    要請の規定の整備を検討すべきではないか。   ・ 調停については、時効の中断、訴訟手続の中止についての規定の整備を検討す    べきではないか。   ・ 差別事案が複雑化する中にあって必要な情報が得られず是正に至らないケース    が存在しているため、報告徴収の実効性を確保するための規定の整備を検討すべ    きではないか。   ・ 均等法の実効性の更なる確保を図るため、セクシュアルハラスメント及び母性    健康管理措置についても企業名公表制度の対象とすることについて検討すべきで    はないか。 2 女性保護、母性保護について  (1) 女性の坑内労働   ・ 女性の坑内労働は現在、労働基準法上原則禁止されているが、「女性の坑内労    働に係る専門家会合」の報告にかんがみ、女性の職域拡大の観点から、女性技術    者が坑内の管理・監督業務等に従事することができるよう、例外的に妊産婦が行    う坑内業務及び一部の業務を除き、規制緩和を行うことについて検討すべきでは    ないか。  (2) 母性保護措置   ・ 労働基準法上の母性保護規定については、「母性保護に係る専門家会合」の報    告にかんがみ、産前産後休業について現行制度を変更する必要はないと考えられ    るが、今後の課題として重量物取扱いや有害物の発散する場所における業務につ    いて引き続き検討すべきではないか。                  (朗読終了)  引き続き、若干補足の説明をいたします。まず男女雇用機会均等の確保についてです が、(2)差別禁止の内容等の最初のパラグラフの上から3行目をご覧ください。「配 置における権限の付与・業務の配分(日常的な業務指示を除く。)」としています。こ こについては、仕事の与え方について含めるべきというご意見を受けて、ここで想定を しておりますのは、会社の方針として配置における権限の付与とか、あるいは配置にお ける業務の配分といったように、従前の「配置」でも読み得るものについて、これは 「配置」に含まれることを明らかにすることを検討してはどうかということです。具体 的には、例えば配置における権限の付与としては、自己の責任において決定できる契約 金額が、男性は一律1億円、女性は1,000万円とか、そういったように予め金額に差が あって、それが定められている場合。あるいは配置における業務の配分として、同じ営 業に就いていても、男性は外勤、女性は内勤と、実際そのような事例があることを労働 側からご発言があったわけですが、そうした場合を想定しています。ただ、この仕事の 与え方については、同時に日常の業務指示まで規制すべきものではないということでし たし、また、そうした個々の問題については規制になじまないとの考えから、入念的 に、「日常的な業務指示は含まない」としているところです。このパラグラフでは、そ の他降格などいくつか取り上げていますが、いずれもこの分科会で具体的に問題が生じ ているとして上がってきたものです。ただ、他にもあるのであればご議論いただきたい と思い、最後に「等」を付しているところです。  次のパラグラフは、雇用管理区分について記載しています。これは法律上の事柄では なく、指針ですが、仮に今回均等法の改正がなされれば、指針の改正になることが想定 されるわけで、その際に検討してはどうかということです。  「指針」では、差別問題を考える際に比較の対象をどのように捉えるかということ で、雇用管理区分が同じ者の間で比較をすることとしています。その雇用管理区分が同 一かどうかということの判断に当たっては、実は通達において、現在でも雇用管理区分 が同じかどうかは形式的、例えば名称などがあり得るわけですが、形式的に異なってい れば、比較の対象にならないというわけではなく、企業の雇用管理の実態に即して判断 すべきとしているところです。しかし、この考え方について、一部必ずしも理解がされ ていない面があるわけで、そういうことから雇用管理区分が同一かどうかの判断に当た っては、単に形式のみならず、企業の雇用管理の実態に即して行うことについて、通達 ではなく指針にきちんと規定するなど、規定ぶりについて検討してはどうかとしている ところです。  (3)間接差別の禁止です。ここでは、5行目に定義づけをしました「対象基準」と いうものを取り上げています。要は、一方の性に相当程度不利益を与えるかどうかとい うことで、個別にその点について判断をしないで、予め間接差別の概念の2つの構成要 素、即ち性中立的であって、一方の性に対し相当程度の不利益を与えるものとして、予 めそうした基準を明確化しておく。そういうことと併せ、間接差別概念を均等法に規定 をする場合に、その範囲はあくまで現行均等法で言う「差別」、ここでは直接差別と言 ったほうがわかりやすいかもしれませんが、そうした差別として捉える雇用ステージと 同じ範囲になるということを、後段でお示ししております。  次のパラグラフで、具体的に取り上げる対象基準等としていくつか挙げています。そ もそも使用者側の委員は、間接差別概念の導入自体に反対をされておられるところです が、間接差別としてではないけれども、取り組むことについては一定の理解をされてお られた事項があったのではないかということで、まずそうした事項から議論をしてはど うかということで、具体例を取り上げているところです。ここで捉えていく対象基準等 については、法律の上では、省令で規定をし、追加し得る枠組みとする方法が適当では ないかと思っているところです。  次は、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止です。最初のパラグラフで、原 則的な考え方をお示ししています。妊娠・出産等についてまず解雇のみならず、解雇以 外の不利益取扱いを禁止すべきではないか。そして、現在では均等法上、解雇について も労基法上の母性保護では産休しか規定がないわけですが、それ以外の労基法上の母性 保護や、あるいは均等法の母性健康管理措置についても対象として取り上げることを検 討すべきではないかとしています。  そことの関係で、下から5行目に「等」という文言を入れています。ここは若干文章 がごたごたしますので、丁寧に書き込んでいないところです。まずここの「等」で考え ていますのが、産休や母性保護措置等を取得した場合だけではなく、取得しようとした 場合、あるいは措置を受けようとした場合も、これは含めて考えていくべきではないか ということです。ちなみに、育児・介護休業法においても、休業を取得したことのみな らず、休業の申出をしたことについても、不利益取扱いの対象としているところです。 もう1つは、なお議論が分かれていたと認識していますが、妊娠・出産等起因の就労不 能や能率低下、これをどうするかという議論です。  次のパラグラフは2頁から3頁にわたっています。ここでは、不利益取扱いの内容と して、まず育児・介護休業法における不利益取扱いの禁止の内容を基本とするとしてい ます。具体的には、不利益取扱いの項目で、例えば雇止めとか、あるいは労働契約内容 の変更の強要とか、そういったものが育児・介護休業法の指針の中で例示として示され ています。もう1つは、育児・介護休業法の考えである休業期間に対応したもの以上、 言い換えれば比例的な取り扱い以上に不利益に扱うことは不利益取扱いであると、そう いった考えを基本として、さらにご議論いただくのが適当ではないか。あくまでこれは 基本としておりますので、例外というか、一部について違う考えを取り入れることはあ り得るものでありますし、また募集・採用については、元々育児・介護休業法上あがっ てこない事項ですので、基本として考えれば、この点については除外していくというこ とになるものと思っています。ただご議論はあるだろうと思っております。  それからポジティブ・アクションの効果的推進方策です。1点目は、自発的にポジテ ィブ・アクションに取り組む企業のうち、その取り組み状況を開示する企業について は、これを例えば厚生労働省のホームページなどに掲載をし、それ以外の企業に対して 参考となる取り組みの促進につなげるということで、この分科会でご紹介した東京都の 取り組みのようなことを想定いたしているところです。これについては労働側からも、 東京都の情報を積極的に出していくという取り組みは、良い取り組みであるといったご 発言があったと、記憶しております。  セクシュアルハラスメント対策についてです。補足したいのは3点目です。セクシュ アルハラスメントについては防止をしていくということは大変必要だということで、認 識の一致はあったと思いますが、なにぶん密室で行われることの多いセクシュアルハラ スメントについては、事実認定が困難な場合が多いという指摘が度々あったわけです。 そうしたようなケースがある、あり得るセクシュアルハラスメントについて、事後の対 応として、事業主として何を行うべきかということについて、これは指針でより明確に する方向で検討、としているところです。ちなみに、現行の指針では事後の対応とし て、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合における事後の迅速かつ適切 な対応を行うこととされていますが、漠とした感じでありますのが否めませんので、指 針を改正する際に何を具体的にしなければならないのかということを、もっと明確に示 すということで検討してはどうかということです。例えば、事実確認はしなければいけ ないとか、事実確認ができた場合には予め定めたルールに則って対応するとか、そうい ったようなことが考えられるのではないかと思っております。  (7)の男女雇用機会均等の実効性の確保です。この2点目についてですが、調停の 出頭の関係が書かれています。調停の出頭要請については、現在省令に定めがあるわけ ですが、当分科会でもご議論になりました、セクシュアルハラスメントの特性、即ち労 使のほかに行為者とされる者がいるという、その特性に鑑み、また事実確認が大変難し いケースがあることを想定し、行為者も含めて出頭要請をできるようにするという方向 で、規定を整備してはどうかということです。  4頁をご覧ください。最初のポツです。この差別事案が複雑化する中で、報告徴収の 実効性を確保するための規定の整備を検討すべきではないか、としています。ここにつ いて、今よりも実効性を高めるということで方策は複数あり得ると思うところですが、 例えば、報告に応じない場合においては過料、これは刑罰とは本質的に異なっており、 実際に科すためには非訟事件手続法の規定に基づき、裁判所の裁判が必要となるもので すが、こうしたものを科すことができる旨の規定を設けることが考えられると思ってい ます。  最後になりますが、女性の坑内労働のところです。このパラグラフの下から2行目 に、「一部の業務」ということを入れています。この一部の業務としては、いわゆる作 業員を想定しているところです。説明は以上です。 ○横溝分科会長  ただいまのご説明をもとに、ご質問やご意見をお受けしたいと思いますが、いかがで しょうか。 ○吉宮委員  質問ですが、3頁の(7)の男女雇用機会均等対策の実効性の確保の、一番下の「調 停については時効の中断、訴訟手続の中止についての規定の整備を検討すべきではない か」という、この現行の仕組みを、ちょっと理解不足なものですから、意味あいの説明 をいただきたいと思います。 ○石井雇用均等政策課長  現行の均等法の中で調停という手段は盛られておりますが、ここに記載をしているよ うな時効の中断、あるいは訴訟手続の中止という規定は盛られておりません。一方、か つてこの分科会でも若干状況についてご報告しましたが、今回ADR法という法律が成 立しています。この法律の成立により、民間の紛争解決事業者でありましても、その業 務が一定の認証の基準などにも適合して、なおかつそうした必要な知識など、あるいは スキルを有するものとして認証を受けた場合、その場合にはこうした民間の紛争解決事 業者が行う調停等の和解の仲介の業務については時効の中断とか、あるいは訴訟手続の 中止という特別な効果が与えられることになっています。従いまして、行政のADRで ある均等法の調停についても、同様な扱いが確保されるよう規定の整備が必要と考えた ものです。これまでADR法を審議していた司法制度改革推進本部のADR検討会で、 ADR法の施行までの間に、行政のADR機関についても必要な措置を整備することが 期待をされているということで、その必要性が認識されていることを受け、今回入れ込 んでいます。 ○吉宮委員  それでは1頁(1)についてです。3つ目のポツの、私ども随分この間の意見で主張 したところについてですが、仕事と生活の調和を均等法の目的理念に規定するかどう か。結論的に言うと、目的理念に入れることについてはなじまないというご意見が、底 辺にあるのかなというように思いました。重要課題であるという認識はするけれども、 労働関係法令全体を通じて実現されるものであるという、一部公益委員の皆さんのご意 見がここに入ってきたのかと。これは重要なテーマで、「重要課題」とここに書いてい ますから、おっしゃるとおりでして。それを均等法の目的理念に入れた場合に、「具体 的な措置規定がなく」という言い切りは、ちょっと理解しにくい。労働関係法令全体と いうのは何を指しているのか、それで私どもはどう理解すればいいのか。仕事と生活の 調和というのは、日々の生活と労働のバランスですから、労働時間短縮というのは大き な課題です。そうすると、労働基準法は1週40時間労働制をしいていますが、いまかな り長時間労働の人が増えているということで、時間外労働の規制、あるいは最近よく言 われるサービス残業の規制とか。その分野の規定はどうなのでしょう。基準法もある し、今度労働安全衛生法ですか。時短促進法ではなくて、労働安全衛生法にその措置 が、年間1,800時間という目標は消えたのですが、そこが何か規定を少し残していると 理解しています。  その分野と、育児・介護休業法ですね。育児・介護休業法は、仕事と家庭生活の両立 と。そして強いて言うなら、次世代育成支援対策推進法はどうなのだろう。これは行動 計画を企業に義務づけているだけであって、行動計画の内容については別に法律には書 いていませんから、専ら行動計画の策定を義務づけられた事業主の対応に左右されます から。いずれにしろ、基準法と労働安全衛生法ということで、そこで実現されるべきも のというように理解していいのか、わかってこない。  仕事と生活の調和ということからすると、それだけ独自に、時間短縮の結果それがで きるわけで。しかし、目的理念に仕事と家庭生活の両立が入っているわけではありませ んし、次世代育成支援法にもそれは入っているわけではありませんね。たぶん健康とい う観点ですね、安全衛生法ですから。健康確保のために時間短縮するというので、促進 法から安全衛生法に、私は変わったのではないかと思うのですけど。平等ということか らすると、均等法に盛り込むべきだし。措置規定がないという、この間の議論では、も し目的理念に入れた場合に膨大になるというご意見ですから、私どもとして提案とし て、目的は別にして理念に、「仕事と生活の調和を図ることに留意し」みたいなことを 入れれば、目的も理念を受けて対応するという、そんな法の仕組を。男女共同参画社会 基本法はそういう仕組で作っていることもあるやに認識しているのですが、そういう仕 組にすることが私は大事ではないかというように考えていまして。  この「重要課題として認識して労働関係法令全体でやるべきだ」というのは、ぱっと この文章を見たときに、想定したのは、前回のパート法の議論をしたときに、あそこに 何が書いているかというと、いま直ちに均等対遇というものをパート法に入れること は、目的はわかるが早いのではないか。いま他の所で税制の議論とか年金の議論をして いるから、そこで改正されれば、パートタイム労働者がかなり基幹的労働に入ってくる ので、それを待ちましょうということで、パート法の審議はまとめられたのですね。と ころが、税制のところは先送りされ、年金も先送りされ、その前提の均等対遇というの は更に遠くなってしまった。これも、労働法全体を通じてなんていうふうに、他のとこ ろに委ねるということからすると、同じような二の舞いを踏むのではないかということ も、感じまして。  やはりこの法律はこの法律でしっかりと受け止めて、男性も女性も仕事と生活が調和 するということを考えるべきではないかなと思います。ここは是非逃げないで、しっか り受け止めていただきたいというのが、私の意見です。これは全部言うのでしょうか、 一つずつですか。 ○横溝分科会長  この段階ごとでなくて、全体的なご意見としておっしゃっていただいて結構です。い まのことに対してご意見がある方があればどうぞ。 ○篠原委員  いま吉宮委員のほうからもありましたように、今いろいろな法律が審議、改正されて いる状況です。例えば、労働安全衛生法ですとか、あと労働時間設定改善法ということ で、いろいろな法案が改正をされております。その中で、時短促進法の中では、これは 時限立法で来年の3月までで終わってしまう、廃案になってしまうという部分から、 「労働時間設定改善法」ということで変わるというのは皆さんご存じのとおりだろうと 思うのです。いままで1,800時間ということがきちんと謳われていたものがなくなって しまうということがありますので、やはりそのバランスを取ったというところが、いち ばんネックになってくると思うので、今、吉宮委員が言われているように、この仕事と 生活の調和ということの内容は、きちんと法律の中でも明記すべきではないかというふ うに考えます。 ○横溝分科会長  他にいかがでしょうか。限定しないで結構ですから。 ○岡本委員  仕事と生活の調和が、措置規定がないということで、いわゆる法の形として技術的と 言っていいのかもしれませんが、なじみにくいというか、難しいという話もこれまであ りました。一方で、このことは非常に重要であるということは公益委員の皆さんも再三 おっしゃっていただいていたことと思っています。私は全く法のことについてわからな いので、混乱するのは、例えば弁護士会の方たちのこの均等法に対しての意見の中で も、先ほど吉宮委員も言っておりましたけれども、その理念であったり目的であったり の所に、例えば「仕事と生活の調和を図りつつ、男女の均等な機会及び待遇の確保を図 る」というふうに書いていけば、法律そのものを具体的に大きく変える必要はないので はないかという意見も寄せられておりまして。そういうことを考えますと、単純に、法 のあり方として難しい、書きにくい、書けないということがどうも私にはなかなか理解 ができないというのが正直なところです。これまで様々な意見、議論も寄せられてきま したけれども、本当にこのことをすべての労働に関する法律で、それぞれがきちんと基 本を持つということで進めていかないと、なかなか今の現状は直らないし、均等法が今 回のたたき台の中でも、私どもから言えば、前回の議論から言えば、少し進んでいると ころもあるかと思いますが、やはりきちんと実効性のあるものにはならないのではない かなという気がしておりますので、改めてそこを申し上げたいと思います。  それからもう1つ、これは質問ですが、差別禁止の内容のところで、先ほど業務の配 分について、例えばということでお話がありました。括弧内に、日常的な業務指示を除 くというのがあるのですが、これは前回の通達ですか、そこの所で、配置の考え方のと ころで、「個々の業務の遂行を命じる業務命令は、配置には含まれない」というように 書かれていたと思うのですが、この通達の文言と、この日常的な業務指示を除くという ことの違いみたいなものがあるのかどうか。もちろんこれは法律の文章ではないですか ら、こういう簡単な書き方になっているということなのかもしれませんが、そこのとこ ろをお伺いしたい。  それからちょっと細かくなりますが、先ほど会社の方針として考えられる業務の配分 ということだったのですが、そこの中身については、これまで重要な会議に女性が排除 されているとか、いわゆるプロジェクト的なものに対して入っていないとか、そういう ようなことも含めて申し上げたわけです。そのことについては、今回どこかの時点でそ ういうもう少し細かい部分については議論ができることなのかどうか。やはり会社の方 針ということと、つまりそれはきちんと何かに書かれているということなのかもしれま せんが、実際には運用上そうなっているものが多いだろうと思いますので、そこの所ま できちんと見ていかないと、私どもがこれまで言ってきた改善ということはなかなかし にくいのかなと思っております。どういう段階で議論していけるのかということを、こ の先のことを含めてになるかもしれませんけれど、お伺いしたいと思います。 ○石井雇用均等政策課長  では、まず2つほどご質問があったかと思います。1つは、日常的な業務指示を除く というのと、それから個々の業務の遂行を命ずる業務命令、若干書きぶり、言い方が違 うので、その違いがあるのかどうかということです。  まず1つは、個々の業務の遂行命令は、まさにその日その日どういう仕事をしなさい ということで、本当に瞬間的な日々の業務指示であろうかと思います。それは、今、配 置の中で除外されているのは、これは「配置」という事柄の性質上当然だろうと思って いるところです。それで日常的な業務指示、これはそれほど厳密に内容を今分けている わけではありませんが、当分科会では、日常的な業務指示のことを言っているわけでは ないことは、労働側からも出てまいりましたし、また使用者側からもそういうものは含 めない、とんでもないというご意見でしたから、そこはむしろ一致した考え方だろうと いうことで捉え、文章に書きおろしたということです。  ですから若干違いがあるとすれば、日常的な業務指示のほうが、もしかしたらもう少 し広い。個々の業務の遂行を命ずる業務命令よりも、広い範囲を捉えているのではと思 っているところです。今日お示ししたばかりですし、この案について使用者側もご意見 がおありでしょうから、その状況を見ながら議論していくことになるのではないかと思 っております。  どういう段階で具体的にその中身を議論するのかということも、いま同時に若干お答 えをしたつもりになっておりますが、まさにこれはこういうこと自体受け入れ難いとい うことである可能性も十分あるわけでして。まず、一応仮に見た場合に、ではどういう ものであれば受け入れられるのかという話は、次のステップだろうと思っております。 ○横溝分科会長  他にご意見いただきたいと思います。川本委員、どうぞ。 ○川本委員  今日はたたき台というものが示されたわけですが、ご説明をお聞きしまして、また文 章を読ませていただいて、私どもが前回まで主張してきた意見と比べますれば、非常に 厳しい内容が数多く盛り込まれたなということで、率直に申し上げて、大変今困惑をし ているわけであります。  今、吉宮委員のほう、その他労働側の委員の皆さま方からいくつかご指摘、ご意見が ございましたけれども、正直な話、私どもは今意見を言おうとすると、従来言ってきた 意見をすべて申し上げなくてはいけなくなりますので、それは差し控えさせていただき たいと思っております。いずれにいたしましても、たたき台は示されたわけですので、 持ち帰り検討はさせていただいて、また意見を申し述べさせていただきたい。 ○横溝分科会長  渡邊委員、どうぞ。 ○渡邊委員  差別の禁止の内容についてお示しいただきましたけれども、特にやはり我々中小企業 というか、中小企業の経済団体としては、雇用ステージについての均等確保のための規 定は現在設けられておりますが、それに加え、配置における権限の付与とか、業務の配 分、降格それから雇用形態及び職種の変更。この辺は、非常に何かやはり経営に対する 介入みたいなものじゃないかなと思うのです。全国の商工会議所の意見を聴取しても、 そこまで均等のステージを広げるのかという意見が非常に大きい。したがって、退職勧 奨とか雇止め程度ならまだいいのですが、経営に対する、使用側に対する干渉、いわゆ る介入というような捉え方を非常に感ずるわけですので、ちょっと受け入れられないと いうのが、この案に対する1つのいちばん大きな反応ではないかと。しかし、それにつ いては前々からこの審議の過程で納得したのではないかというご意見もあるかもしれま せんけれども、どうもこの辺が非常に承服できないところです。 ○横溝分科会長  吉宮委員、どうぞ。 ○吉宮委員  一つ一つそのご意見に対してまた反論するというようなことはしたくないのですが、 いま渡邊委員がおっしゃられたこの議論経過を私なりに整理しますと、現行の雇用ステ ージについては、私どもは労働条件全般で捉えて、法が、今のステージのくくりだと漏 れている課題も出てくるのでという主張をさせていただきました。そこで公益側から も、いま厚生労働省の均等室に寄せられた相談事例を見たら、ここに挙げている、例え ば降格の問題とか職種、雇用形態というのは、フルタイム正社員からパートタイム労働 への変更とかいうことも、今の均等法の書きぶりだとなかなか対応できないけれども、 不利益取扱い的なものもあるし、解雇的なものもあるし。労働契約の変更ですから、そ ういう意味で無理して捉え、無理というか、かなり幅広く捉えているという。行政の指 導に対して、公益側から、少しそこはきちんと明記、規定ぶりを変えたほうが対応しや すいというご意見もあって。この降格なり、また雇用形態、職種の変更、退職勧奨、雇 止めというのが入ってきたと理解しています。従って、今、均等室が相談をする対応方 針の範囲で、私はこの規定が書かれたというふうに認識していますので、そこは是非ご 理解をいただいたほうがいいのではないかなと思います。  次のなお書きの、雇用管理区分についてです。今の解釈、通達を非常に正しく捉えな いで、企業がやっている場合が多いので、そこは誤解を生じないように適切に対処した いという、指針の改正のときにそのことを見直したいというたたき台になっています。 私どもとしては、雇用管理区分というものが合理性を持つかどうかということも1つあ りますし、つまり現状かなり変化しているということもありますから、その仕事に着目 した物差しで差別的なものがあるかないかを捉えるべきではないかという主張をしてき ましたから、単なる誤解という話でもないのです。指針の話ですから、ここでどうこう というのもないかもしれませんが、是非誤解が生じないようにという認識で、私どもが いるということだけ、意見を述べておきたいと思います。  それから川本委員から、全体でちょっと使用者側としては踏み込みすぎたたたき台と いう認識を示されましたが、私どもとしてはこの間接差別の禁止について、定義につい てはこの間の議論でそれぞれ確認をしたということで、これを基にして、その対象基準 というものを定めて、先ほどの事務局の説明ですと、1つは使用者側がポジティブアク ションで取り組むという事項を例にして、これを間接差別として対応したらどうかとい う指摘と、それからもう1つは、直接差別を禁止している雇用ステージについて、間接 差別を禁止するという2つの物差しの考え方が示されています。この直接差別を禁止す るものに限ってというのは、初めて出されたわけですね。この間の議論は、むしろ使用 者側は定義は了解したけれど、それがイコール間接差別禁止の明記を了解したわけでは ないというのは認識しています。公益側も含めて、間接差別というのは時代とともに変 化して、形も変わってくるわけで。例えば、ここでいうコース別雇用管理についても、 いわば一方の性に不利益を与えているという度合、構成員によっても変化しますし。A という企業では、職務の関連性も含めて合理性を持つ場合もあるし、Bという所では持 たないかもしれないという。そういう意味でケースバイケースだという話を、公益側も していますから。逆にこれで認定、やり方として限定列挙するみたいな方は、逆にいう と間接差別を有効に機能させない役割を果たすのではないかというものなのです。私ど もが認識しているのは、例示を出すことは当然必要でしょうから、これに限りますよと いう言い方は、本当にこの間接差別の効果を弱めるというか、そういうものになるので はないか。  もう1つの、直接差別を禁止しているものに限るというのは、初めて出された考え方 で、研究会報告にもこの考え方は示されておりませんね。この間、例えば賃金ものなら 除くとか。賃金関係は除くというのはアメリカの例を挙げられました。アメリカの場合 は、別な法律があって。別の法律というと、逆に言うとアメリカの間接差別の効果、差 別効果と別の法律の効果を、そんなに遜色がないものといった形になっているから、そ の他の法律に譲られても、間接差別問題は対応できるという判断だと思うのです。  では日本の場合は、賃金ものは基準法4条に、同一労働と同一賃金ということで、こ れで対応できるのかなという、それからこの研究会が挙げた、パートタイム労働者の福 利厚生の問題あるいは賃金のベア、引き上げの適用関係についても現行のパート労働 法、パート法が適用できるのかと。私どもは均等対遇でやるということを、この前の見 直しで言ってきたけれど、それは通りませんでした。指針改正に終わりました。アメリ カはそういう別の法律もあって、除いているわけで。だから直接差別のステージに限定 して間接差別法理を使うというのは、初めて出された考え方で。いままでの議論として も全くなく、またそもそもの議論に戻ってしまうのではないかという懸念を持っていま す。そんなことで、是非ここは本来の間接差別の議論にきちんと対応して、例示などを 示してほしいということです。 ○横溝分科会長  では川本委員、どうぞ。 ○川本委員  先ほど、今日たたき台が示されたので今までの主張は繰り返すことは控えさせていた だきたいと申し上げたわけではありますが、いま労側のほうからはかなり従来からの主 張で、盛り込まれてない部分に対してのご意見があるようでありますので、少し申し上 げておきたいと思います。間接差別については、私どもは非常に反対であるという趣旨 のようなこと、細かいことは申し上げませんが、申し上げておきたいということは1つ 申し上げておきたい。  それから今、限定列挙については初めての考え方というふうに言われましたが、これ については私が何か言ったという話ではありません。公益委員からは、非常に予測可能 性がないという中にあって、限定列挙という考え方はあるというご発言は、確か樋口先 生でしたか、言われていた話であって、この場で出てない話ではない、私はこの場で耳 にした記憶がございますということは申し上げておきたいと思います。そのことについ て限定列挙だったらいいとか、悪いとか、そういう話は申し上げるつもりは本日はあり ません。そういう案が出てまいりましたので、いずれにしましても持ち帰って、私ども の関係者の意見を聞きながら、また考えたいと思っております。 ○吉宮委員  列挙という話は、ありましたよ。その検討する観点として、直接差別を禁止している 各雇用ステージについてという考え方は、初めて出されたのではありませんかというの で、この考え方、この間議論は全くなかったのでは。 ○石井雇用均等政策課長  いま吉宮委員から、初めてそういったような考え方を示されたのではないかというご 発言がございましたが、これは確かにこの場で議論といいますか、提案をいたしました のは初めてであるというのは、そのとおりかと思います。これは間接差別という問題を 議論するときに、まず最初に直接差別、現行の差別についての内容があるわけでして、 それで足りないからということで、間接差別というふうな、そういう議論に至ってきた という経過を、まず思い起こしていただきたいと思います。およそ、その差別という問 題で今規定されているものを飛び超えて、規定してない雇用ステージについて、間接差 別だけが規制をかけるということは、まず論理的になかなか難しいのではないか。も し、今の雇用ステージが不足というのであれば、直接差別と間接差別、両方で同じ範囲 で捉えるというのは、これは合理的なのではないか。そういう論理的な必然性から、こ ういう形で示したということです。 ○佐藤(博)委員  まず、どの範囲を間接差別の範囲にするかは、私も当然現行法の均等法、直接差別で 禁止している範囲だろうというようには思っていたので、個人的にはあまり議論しなか ったわけです。それで1頁の2で、今回とても広がるわけですね。例えば、降格とか職 種変更、雇止め。ここについては、もしこれがこちらが決まれば、当然それにリンクし て、間接差別の範囲は変わるというように、私は思っています。  もう1つ、公益の1人として、この対象基準等に限定を加えたことについては、やは りこの分科会の場でも間接差別とは何かとか、相当程度の不利益とは何かについて、相 当議論が錯綜している状況があるわけです。そういうことで、やはりこの性中立的であ って、かつ相当程度の不利益を与えるということについて、ある程度合意ができている ものをまずは定めて、そこから間接差別の考え方というものを労使ともに、あるいは働 く人が理解していくことがないと、予測可能性という点でも非常に難しいのではないか というように考えたということです。別に、これだけでもう駄目だと言っているわけで はなくて、性中立的でかつ相当程度不利益な範囲というものがある程度合意が広がって くれば、当然そこの部分は変わってくるものと私は考えています。ですから、ここでも う絶対これは動かないものだというように考えているわけではないということです。 ○吉宮委員  動かないというのは、これしかずっと10年後も20年後もこのままかどうかというよう な。 ○佐藤(博)委員  時間的な話ですか。 ○吉宮委員  ええ。 ○片岡委員  間接差別の内容については、意見としては吉宮委員がおっしゃった内容と同じです。 その上で、今やりとりがあったことに関わって、間接差別の記載のところで、この場合 どのようなものを対象基準とするかについて、先ほど使用者側から取り組む理解があっ たものから議論をしてはどうかという点で出したというご説明があったわけですけれ ど、この「等から検討すべき」というのは、ちょっとどういうことを言っているのか教 えていただきたいと思います。 ○石井雇用均等政策課長  ご質問の趣旨をもし取り違えて答えましたら、もう一度重ねてご質問いただきたいと 思います。今も使側の川本委員からご発言ありましたように、現状を申しますと、労使 の間でこの問題についての考え方は非常に乖離が大きいと認識をしています。ですから そもそも使用者側としては、間接差別の禁止というものを入れることには反対というス タンスを崩していらっしゃらないわけです。その中で、やはりこういう概念を入れるこ とについては、それは必要ではないかという観点で、何が問題かということを1つ1つ 考えながら、判断の予測可能性がつくような方式で、何かできないかということで、こ ういう提案をしたものです。  その提案をするに当たって、やはり具体的に、では限定列挙でいく場合に何と何を考 えるか。これはある程度同時に示さないと、議論がさらに進まないだろうということか ら、では何を取り上げるかということになったときに、少なくとも間接差別についてと いうことは反対でいらっしゃいますけれども、やはり身長・体重だとか、あるいは転勤 要件などについて、これは別のやり方で取り組むということはあり得るというようなご 発言があったものは、まだ議論に乗っていただく上では可能性があるだろうと。そうい う現状に照らして、そういうものを列挙してそういうものから検討してはどうか。もち ろん議論を深めていく中でこういうことも一致できるということになれば、またそれは 追加して考え得るものでしょうけれども。まずは今は天と地ほども意見は分かれている わけですから、全くその可能性がないものを例示で挙げるのはいかがなものかというこ ともありまして、まず、この3つの例を挙げているということです。 ○片岡委員  私の質問が伝わらなかったと思いますけれど、もちろん今相当な意見の違いがある中 で、このたたき台が出てきたわけですから、この前段をベースに対象基準というものと してこれが出てきたことを受けて、この審議会の中で、この審議会の1つの最終段階と いいますか、その間の中に、さらに検討を加えればこれ以外のものが入る可能性もある という意味なのでしょうか。そうではなくて、一旦これでステップとして始めて、それ でさらに、先ほど10年とおっしゃったけど、それはあまりに長いというか、見直しとい うか、そういう意味あいで次に送る、そういう時間的なものでしょうか、今回ではここ までが結論づける範囲だというように受け止められるので。 ○佐藤(博)委員  「検討すべきではないか」ですから、ここの範囲でいま事務局と詰めて我々が考え て、「ここでいいですよ」と言って出したわけではない。もちろんこれについて議論し てくださいというように提示したものです。ただ、個人的に私にはこの辺がまず1つは 可能性はあるかと思っていますが、これ以上、この後、次回の審議会で議論しては駄目 だという意味で提示したのではないと私は理解しています。まだこれはたたき台ですか ら、「たたき台」と書いてありますから。 ○川本委員  部分の話になっていますが、要するにこれはたたき台ですよね。ですから、私も持ち 帰り検討するといっているわけでして、今日出て反論を言わないとこのまま決まるのか ということでしたら、私もどうしたらいいかわからないので、これから3時間でもしゃ べり続けなくてはいけなくなるだけです。確認ですがたたき台ですよね。 ○岡本委員  もう1つ確認したいことは、先ほどの直接差別との関係ですが、これまでも議論して きた3点、ここに入ってないということで言うと、世帯主要件とか、パートと正社員と の処遇の決定に当たっての考え方、パートの福利厚生とか家族手当、いわゆる賃金とい うことにもなるわけですが、この考え方については、それも除外せずに議論ができると 考えたらいいのですか、先程の流れの中でよくわからなくなってしまったのですが。そ もそもこれは均等研の報告書に出されてきた例ということで議論してきたことですの で、そこで直接差別で賃金差別のことが書かれてないということで入ってないというこ とになると、なぜこれまでに長い間議論してきたのかと。正直にそこはわからなかった のですが、どうなのですか。 ○石井雇用均等政策課長  重ねてのお答えになると思いますが、これはたたき台でして、まずここから議論して はどうですかということですので、労働側としてはそもそも限定列挙することに反対で いらっしゃるし、例示としていろいろなものを示すべき、研究会で示した7つの事例を 含めるべきというご発言であったわけですから、もちろんそれ以外の議論ができないも のではないと、それはそのように受け止めています。  ただ、研究会で示されたからというのは、実は研究会はあくまで研究会でして、まさ に研究会は間接差別の概念とか、諸外国の動向とか、それを整理して、また間接差別に ついては長らくどのようなものが間接差別に当たるか当たらないか、そこをまず整理し なくてはいけないという大きなタスクがありまして、かなり研究会の先生にもご苦労を いただきながら7つの事例を出したということでして、これがそのままイコール使用者 側が受け入れて間接差別として入るというものでは全くないわけです。これはあくまで 提案といいますか、1つの素材として出した例に過ぎないわけでして、そこにあるから 当然ここに入ってこなくてはいけないと、そういう論理必然性は実はなくて、まさにそ れをどうするかという問題をこの分科会の中でご議論いただいてきていると、また今も ご議論いただいているというように認識をしているところです。 ○岡本委員  ただ、直接差別で直接的に禁止されていないものを間接差別では禁止できないという 話があったものですから、そこはこの3点がそこに該当するのかしないのかというとこ ろがわかりにくかったということですので、議論ができるのであればそれは今後の議論 ですから構いませんが。 ○佐藤(博)委員  これは研究者という公益としてということですが、たぶん経営側はもちろんこれはた たき台だということですから、次の議論はここも範囲内という、ということではないよ うに出されていると理解していますが、だからといって、では議論をずっと広げていく のかということなのです。そういう選択もあると思います。そうすると、当然、川本さ ん、経営側が言われたように間接差別はもともと入れるのは反対だと言われているので す。その並行の議論をずっとやっていくのは自由です。ただ、どの程度まとめていくの かを考えていだく必要もあるかと思っています。我々はこれを1年、2年議論してもい いと思いますが、それが本当にいろいろな不利益の問題が起きています。そのままをず っと放置していていいのかという気もしますので、その辺はいろいろ100%いずれかが 納得するものはなかなか難しいと思っています。ですから、その辺を広げてもいいと思 いますが、他方でどこでまとめていくのかも考えながら議論していただくとありがたい と思っています。 ○吉宮委員  私は例示を示すことは別に決して反対しているわけではないです。要するに、例示イ コールこれ以外は間接では言わないという書き方はなぜ出てくるのかと。間接差別の定 義からしても、ここで言っている規定、基準、慣行等が一方の性に不利益取扱いを与え るということは、これまでの議論で逆に言うと何でも俎上に上り得るかもしれない。し かし、格差があるからイコール間接差別とは言わないということがあるわけであって、 それを労使の合意だからと言って限定する方法が間接差別のものの考え方でできるのか と。例示としてあるだろうということの例示ならいいけれども、これ以外、当面は認め ないみたいに言うのは、間接差別の定義から言うと、この議論は公益も含めて理解でき ない、なぜこういう規制があるのかと。もちろん樋口先生が限定列挙方式をポンと言わ れました。それは覚えています。しかし、そのことが間接差別という法理からするとで きるのかということは疑問です。 ○佐藤(博)委員  法律家ではないのでわかりませんが、間接差別のが均等法に入り、例えば省令で基準 等が示されて、指針で参考程度という合理性の判断が決まるとしますね。そうしたとき に、例えば裁判所等々に持っていくものとしてこれに限定されることはないと思いま す、わかりませんが。ですから、それ以外のものの判例も出てくるかもしれないと思い ます。ですから、たぶんこれしか判例で間接差別は出てこないというものではないので はないかと。これは法律家ではないからわからないのですが。 ○鈴木均等業務指導室長  今回議論しているのは均等法で禁じている間接差別をどうするかという議論ですの で、もちろん今佐藤委員がおっしゃられたようにそれ以外のものが間接差別として、例 えば民法の原則とか、不法行為とか、債務不履行とか、そういう原則の中で違法なもの とならないというお墨つきを与えるものではありません。ですから、この中に規定しな かったからそれが全部自由だということは、他にもいろいろ法律があるわけですから、 そういう意味で違反するものが、当然均等法で漏れたとしても禁止されるわけですの で、そこはご理解いただきたいと思います。 ○吉宮委員  ということは、限定でいく方針はどういう効果をもたらすのですか、そういう言い方 をされてしまうと。 ○鈴木均等業務指導室長  均等法上だめだというものを当面ここから始めていこうと。ただ、今現在、要は日本 では間接差別法理はありませんので、ゼロからどこまで今回やっていくかということで す。例えば、今ある判例法をギュッと縮減しようというものではないはずです。 ○吉宮委員  先程のはただ例示に入るのでしょう、今ここで書いている「この場合」という書き方 は。 ○石井雇用均等政策課長  まだこれはたたき台でして、これがどうなるかをまず留保した上で申し上げます。 ○吉宮委員  事務局の思いから単なる例示ではないのでしょう。 ○石井雇用均等政策課長  ここで示したものについて、この審議会でいいのではないかと話に仮になったとしま す。なったとしたときにどうなるかと言いますと、まず私どもは行政の機関であります ので、そういうまさに間接差別にここで上げたもので合理性がないようなものがあった ときには、それは行政指導の対象にしていくということになるわけです。これが最初に 現れてくるものです。また、そういうものを巡って紛争がもしあったとしたときの対応 も、当然、今の他の差別と同じように対応していく、労働局長の紛争解決援助等がある わけですが、そういうものの対象になってくるということでして、放置しておけば今は そういうものにならないだけです。今、室長からゼロと申し上げましたが、まさにそう いうことは格段に違ってくるということになると思います。 ○片岡委員  私は今のご説明に対しては、あるいは室長のご説明には、現実はそうならないのでは ないかと少し不安があるのです。というのは、1つは、これは今たたき台ですが、これ を読むと、合理性の判断の所は指針で示すと。ですから、これは前段としては、普通に 読み取ると、基準が示され、そして合理性、正当性に当たっての指針が出るという関係 になる。そういう意味では非常に基準そのものがこの範囲を示すことになる、そういう 内容に思えるのです。  そうすると、均等法で規定することを今議論している、あるいはそれ以外の民法を云 々とおっしゃったけれども、よく聞かれるのが、均等法にそれが入ってくると、それ以 外のもので争う場合でも、均等法ではどういうものを言っているかということに戻る、 そういう使われ方はあるのではないかと私は思うのです。つまり、また均等法の範囲に 限定されるという効果が、もう一方でほかに判断できる場所があるにしても影響を受け る。そういう意味では、先程吉宮委員がおっしゃったように、労働側委員が言っている 1つの組立てとしては、例示を示すことについては賛成ということで言ってきています ので、そうしなければ、示された判断基準によって間接差別に対する事柄は非常に限定 されてしまうという心配というか不安が私は拭えないと思います。 ○吉宮委員  他の所で私も検討する意味でお聞きしたいのですが、妊娠・出産の所のこの会の議論 で「原職復帰」、あるいは「原職の仕事が変化して存在しない場合には、原職相当職に 復帰」というのは、諸外国でも定めているし、これは必要でしょうねという議論は、た ぶんこの分科会でかなり合意が得られた話だと見ているのですが、これはどういう扱い になるのかというのが第1点です。  3頁の「不利益取扱いの内容は育児・介護休業法における不利益取扱いの禁止とされ ている内容を基本とする方向で検討すべきではないか」ということは、逆に言うと、こ れまで議論していた例の募集・採用においての不利益な取扱いを行うことについては駄 目と、不利益取扱いの禁止には入れないということにしたということについて、もしし たのなら、なぜそうしたのかということをお聞きしたい。  ポジティブ・アクションについて、最初の東京都方式みたいのを労側も言ったからと いうご説明があったのには、私どもが重視したのは「その他」の所です。例えば東京都 の例は、今企業が自主的にやったものについて公表したりして都が応援しているという かそのような仕組みですが、例えば神奈川県はまた違うのですよね。私はまだ神奈川県 のほうがもっといいと思うのだけど、神奈川県は駄目、東京はいいという話もまたなか ったという気が私はするのだけれども、そこの議論はどうなっているのか。私どもは 「その他」に書いているように「義務づけ」という「ポディティブ・アクションの重要 性」は、使用者側の方もかなり積極的に発言されたというふうに認識していまして、そ れほど負担もかかるということでもないだろうということで、工夫によって。したがっ て、「その他」は是非どう考えればいいかというのを議論しますが、そこにポイントが あります。  セクシャルハラスメントですが、2つ目のポツの「現行規定を強化することを検討す べき」は、現行規定は、要するに予防配慮義務で、事前の措置ですね。このところで評 価すると。 ○石井雇用均等政策課長  「配慮義務」がいまの規定です。「予防」という言葉は付いていません。 ○吉宮委員  付いてないということは事後も。 ○石井雇用均等政策課長  そうです。 ○吉宮委員  事後も含めたところを強化すると。 ○石井雇用均等政策課長  規定の中身について強化すべきではないかということは言いました。今の規定は配慮 しなければならないということです。その規定を強化してはどうかという提案です。別 に事後が排除されたわけではありません。 ○吉宮委員  (7)は3つ目はまだ深く理解しているということではありませんが、1つは、この 間の裁判の争いを見ているときに、労働者側が差別のいろいろな資料を集めて、それで 苦労されているのです。その資料がなければ判定しにくいというのは当然あるわけで、 その情報を持っているのは使用者、事業主でありますから、事業主に判定に当たって資 料提供を義務づけるみたいな主張があれば、出しなさいというのはなぜできないのか。 私の認識は再三この場で言ったと思うのですが、人権擁護法案は政府案として登場しま せんが、あの中にはそういう書き方があったわけで、せめてそのことは入れるべきでは ないかというのが主張です。なぜそれが、これはまた議論、今後しましょうと言えばい いのですが。  2つ目に、差別認定の、差別はしてないという争いは、当然、使用者側が言うわけで すから、その説明責任は使用者にあると。間接差別も、職務の関連性とか合理性につい て方便の機会は使用者はあるわけで、もう1つ、妊娠・出産、解雇について、使用者が 正当性を説明できねば無効とすることも使用者の説明という流れからすると、均等法全 体の差別については、使用者がもしいろいろな争いについて、言い分については使用者 が言うというか、差別ではないということを、そういう責任を課すことが必要ではない かということで、これこそがまさに迅速に解決し、かつ判定をしやすいものになるの で、その所はなぜ消えたのかお聞きしたいです。 ○石井雇用均等政策課長  何点かいただきましたが、順次お答えします。1点目、「妊娠・出産等を理由とする 不利益取扱い」で「原職復帰」「原職相当職」、まさにそういう類の事項も育児・介護 休業指針の中にも規定があるわけでして、そういうものについても当然、不利益取扱い の中身として含まれてくると思っています。合意が得られているかどうかについて言え ば、これはまさに今日たたき台としてお示しした中身の1つのパーツであるに過ぎない わけでして、それも含めての議論がこれからスタートしたということではないかと思っ ているところです。  「募集・採用」についてこれは含まれないのかと。冒頭の説明の中で、これは育児・ 介護休業の考え方を基本としているということからすると、これはまず入ってこないだ ろうと申し上げました。ただ基本であるから、含めるかどうかについての議論は可能と 申し上げたところですが、「募集・採用」については、入ってからとでは若干違いがあ るということと、現実問題として妊娠をしたことを理由として採用を拒否されたとか、 そういうことについての相談はあまり見ませんで、入っていらっしゃる方の問題、とり わけ解雇とかそれに近い類の事案が非常に多いということで、救済の対象はむしろそち らを重視したほうがいいのではないかと。なおかつ募集・採用、入口のところですか ら、実際にそれが妊娠・出産を理由とした雇入れ拒否だとしても、それが認められたと きに雇入れを命ずることができるかというと、その辺はいま日本の法体系はそうなって いるわけではありませんで、実際上の効果もなかなかどういうものになるか認め難い、 見られないことがありますので、そういったことでここは難しいのではないかと思って いるところです。  3点目、「ポジティブ・アクション」の関係です。ポジティブ・アクションについて 確かに労働側委員から主としてご主張がありましたのは、計画策定についての義務づ け、あるいはここで記載をしていますが雇用状況の把握の義務づけといったことです し、またその1つ、自治体で行われている例として神奈川の例についての引用もあった というのは、そのとおりであろうかと思います。  しかしながら、ポジティブ・アクションの議論につきましてもかなり労使の間で意見 が割れていたという事実があります。とりわけポジティブ・アクションの普及の必要性 は否定をしないけれども、あくまで自主的な取組みとさせてほしいというところの強い 主張はずっと変わってこなかったということがあります。ポジティブ・アクションは、 要するにトップの決断、意志がない限り、なかなか濃い中身の有効な取組みにならない ということがあるわけでして、それを促す方策として、いまこの時点で義務化はこの状 況ではなかなか難しいものがあるのではないかと思っています。ただ大変重要な問題で すから、この場で引き続きのご議論をいただきたいということで、どう考えるべきかと しているところです。  セクシュアルハラスメントについては途中でお答えしましたのでよろしいかと思いま すが、裁判、実効性の確保の関係で何点かあったかと思いますが、訴訟の際に人権擁護 法案であったような事業主に対して資料を提出させるというお話であったかと思いま す。差別認定という話もあったと思います。いずれにしても、ここについては、現行の スキームで十分であるというのが使用者の主張であったことを思い起こしていただけれ ばと思います。  ここも政府から独立した性差別の委員会を設置するとか、大変盛りだくさんのご主張 がある中で、非常にここも内容、主張の点では乖離が大きかったところです。確かに人 権擁護法案の中ではいろいろアクティブなことが書かれていたわけですが、それとて、 いま使用者側がこれでいいとおっしゃっていたのではないわけでして、なかなかこれに ついて難しさがあるのではないかと。限られた時間の中で意見集約を図っていくという タイムスケジュールを考えたときに、難しいのではないかと思っているわけです。  立証責任の関係について、間接差別と妊娠理由の解雇の所について例示を挙げられま して、これはなぜ全体にかけられないかというご質問もありましたが、まず間接差別に つきましては、そもそもこの間接差別概念というものがもともとアメリカで生まれて、 それがヨーロッパに渡って、考え方、概念自体はほぼ一致していて、国によってその考 え方が違うわけではないということです。3つの構成要件から成り立っていると。その 中にもともと入っているわけでして、これを入れるか入れないかというときには、自ず と付いてくる問題と理解をしています。  もう1つ、妊娠を理由とした解雇でないことの証明の話につきましては、これはすで に裁判実務として定着を見ているということがありますので、それはむしろ実態的に見 て、今回新たに負担になるものではないのではないかという観点で、これらの裁判実務 のスライドという形でご提案申し上げているわけです。それに対して全般的な立証責任 の話はどうかということについては、これはまだ定着を見ているわけではありません で、そういう状況から見ても自ずと違いはあるのではないかと思った次第です。 ○鈴木均等業務指導室長  補足的なことです。人権擁護法案の話が出ましたが、たぶん訴訟援助のお話をされて いるかと思いますが、人権擁護法案の訴訟援助は使用者から資料を出させるのではなく て、行政機関が持っている資料を訴訟に当たってご利用いただくというスキームですの で、若干お話と違いますので、念のために申し上げておきます。 ○片岡委員  1点質問で、妊娠・出産に関する項目の3頁の「解雇の立証責任」にかかわる所です が、例えばこれは雇止めの場合でも同じように扱われると理解してよろしいのでしょう か。 ○鈴木均等業務指導室長  「解雇無効と立証責任の転換」の所だと思いますが、雇止めは対象にしていません。 と言いますのは、雇止めの無効というとそもそも何かというと契約の更新の強制になり ますので、これはたぶん日本では法律効果としては出しにくいものですので、そこまで 規定したものではありません。 ○佐藤(博)委員  渡辺委員から、1頁で、今回、均等法の範囲が従来の雇用管理のステージから広がる ことがかなり経営側の裁量に対する干渉ではないかというご意見があったのですが、従 来の雇用管理ステージの範囲について、男女差別が起きないようにちゃんとやっている 企業であれば、これから入る部分は当然やっているはずだと思います。例えば、昇進だ けについて不利益は扱えないだろう、降格の所は不利益がある、普通はそうはなってい ないはずだと思いますし、職種の変更も普通の人事管理で言えば配置に入るわけでしょ う。ですから、配置も合理的に能力に応じてやっていれば職種の変更もそれほど困るわ けではないのです。広がって困る企業は、多くの場合、従来の部分についてもきちっと やれてない会社ではないかと思いますので、従来の範囲の雇用管理ステージできちっと 取り組んでいる企業について、それが困る企業はないのではないかと理解しています。 ○川本委員  今、部分的な話になっているので、私は先ほどからどうしようかと思ってずっと困惑 しているのですが、つまり、非常に私どもは反対してきて、前回まで意見は申し述べて きているわけです。このたたき台が出てきた理由といえば、要するに公益委員並びに事 務局として労使の隔たりが大き過ぎるので、何とかこのたたき台の線で改めて検討して くれないかという趣旨で出されたものだと思っているので、今日、改めて持って帰りま すと言っているわけでして、やろうと思ったら私は全部反対はいっぱいあるわけです。 それを続けるのでしょうかと申し上げたい。いまのお話も私どもは全部反対です。た だ、下手に言うと、部分的にここが反対している、ではそちらはいいのですねというこ とになります。私どもはほとんどこれは全部反対です。したがいまして、持ち帰り検討 させていただく。一応たたき台が出てきた以上は、それなりの重いものとも受けとめて いるので、そういうご返事をさせていただいているということです。 ○岡本委員  今のご意見ですが、確かに今日出てきたことではあるのですが、時間もない中でどう これからまとめていくかというときに、どこがいちばん焦点になっているのかと。いま 労働側もすべてのことを言っているきらいはあるかもしれませんが、そういったところ が、正直言ってこれまでの議論の中でも経営者側の方のお話の中身がよくわからない。 よくわからないというのは、つまりそこにどの程度こだわっていらっしゃるのかという ことも含めて、比較的議論は労働側ばかりが言っている場面もありましたし、そういっ た意味で私たちとしても、ではこの先まとめていくのにこれは公益委員の方たちも悩ま れるところかもしれないのですが、そういう意味で正直言って今日私たちとしては、こ だわっていきたいところも含めて申し上げているのです。このあといろいろな議論もあ るかもしれませんから、そこで追い追い経営者側の考え方も出てくるのかもしれません が、私たちも経営者側がどこまでどういうところに大きくこだわっているのかが正直見 えない中で、実は困惑しています。  ついでですから1つこれも確認というか質問ですが、セクハラの所で今回、先ほどの ご説明で予防も事後もということでよくわかりました。この措置義務になっていくこと からいうと、これまで申し上げてきたのは、セクハラの申し出を理由とする不利益取扱 いの禁止については、これまでは指針の中で「留意をしなければならない」という書き 方だったと思うのですが、このことがこのたたき台で言えば強化することの方向で行く 場合に、「不利益取扱い禁止」については当然入ると思ったほうがいいのでしょうか。 というか、そういう考え方でこれは書かれているのでしょうか。それともそこは含めて それも議論ですということでしょうか。 ○石井雇用均等政策課長  すでにセクシュアルハラスメントの申し出をしたことによる不利益取扱いについて は、指針の中で明記はされているわけです。したがいまして、重ねてそれを法律にとい うご趣旨だとは伺いましたが、明記する必要はないのではないかと。今でもそれは事業 主が行うべき中身の1つとして入っているわけでして、何らそのことによってその効果 が少ないのではないわけですので、これは今考えていない案として提案をしています。 ○岡本委員  つまり留意という言い方できちんとできているということですか。 ○石井雇用均等政策課長  指針の中身で記載をされているということです。 ○片岡委員  先ほど室長が私の質問に答えていただいたことを、例えばたたき台で差別禁止の内容 にいくつか加わる、いまたたき台が出ている中で1つ「雇止め」が入っていますが、そ のこととの関係も含めて質問したいのですが。 ○鈴木均等業務指導室長  少しわかりにくいかもしれませんが、法律上違法となることと無効となることは実は 別の問題でして、ここで今おっしゃられている「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱 いの禁止」などの部分では、不利益取扱いは当然違法になるわけです。現在、性差別の 分野で均等法第8条第1項において、例えば男女で解雇に差を付けたら、その時点で違 法になります。ただし、均等法上違法という効果はあっても、無効になるとは書いてい ませんで、それは結局、民法第90条であるとか、労基法第18条の2とか、例えば不当な 解雇は無効になると。違法な解雇は不当ですから当然無効になるわけですが、そういう 条文を経由しないと無効にはならなかったわけですが、それを今回は均等法の中にちゃ んと「無効」と書きましょうという話です。 ○片岡委員  解雇は無効と。 ○鈴木均等業務指導室長  はい。雇止めの話が出ましたので、では雇止めが無効というのは、あれは契約を締結 しないことです。雇止めはそもそも新しい契約をしないことですから、それが雇止めな ので、それが無効となると、しなかったことの無効はいったい何だろうとなると、それ は法律上表現できませんと申し上げたわけです。 ○篠原委員  これもとても単純な質問ですが、4頁目のいちばん上のポツの「報告徴収の実効性を 確保するための規定の整備について」は、もしかするといままでの話の中に出てきたか もしれませんが、もう1回具体的に聞かせていただくとありがたいのですが。 ○石井雇用均等政策課長  先ほどと同じ説明になってしまって恐縮ですが、ここにつきましては、「報告徴収を することができる」という規定が均等法第25条にあるわけです。現に報告徴収、均等室 の職員が事業所に出向いて行って、もし均等法違反があった場合には指導申し上げてい るところです。しかしながら、均等法違反があるかどうかに当たってまず情報がない と、適切な情報が開示されないと、それが本当に違反かどうかわからない。とりわけ最 近、差別事案が複雑化していまして、かつてのように、何か1つ就業規則を見れば直ち に差別かどうかわかる状態ではない状況もあります。そうした中でここで言っているの は、いま均等法で報告徴収に行ったときに、報告しようとした書類を出してくださらな い、要は協力していただけないケースがあるわけでして、ここの実効性を高める方策を 考えてはどうかということです。いろいろ実効性を高める方策はあり得るわけですが、 事務局として今考えているのは、例えば報告をしない場合には過料、これは刑罰とは本 質的に異なっているものでして、これは実際に科すためには非訟事件手続法に規定があ りまして、その規定に基づいて裁判所の裁判が必要になるわけですが、いずれにしまし てもそういうものを科すことができる旨の規定を設けることが考えられるのではないか と思っているところです。他にもやり方はあり得ると思いますが、例えばそういうもの が実効性を確保するための規定の整備として考えられるのではないかと思っているとこ ろです。 ○吉宮委員  出産手当金は全く形は見えないのですが、これはもし措置するのなら医療保険法の改 正になるから書いてないということですか。母性保護条約の批准のためにも3分の2以 上をクリアするためには、いまの健康保険の60%ではクリアできないので。全くその形 がないので、これは均等法ではないのでということですか。 ○石井雇用均等政策課長  この間たしか吉宮委員からそういうご発言がありましたので、今まさに審議をしてい るところの担当部局には、こういったご発言がありましたということをメモとともにお 伝え申し上げています。しかしながらこの分科会は医療の分科会ではありませんので、 ここでどうこうということはできないわけです。いずれにしても医療の分科会の担当部 局にはお伝え申し上げているということです。 ○横溝分科会長  よろしいですか。それでは、本日はこれまでとします。今後の進め方ですが、今後、 議論をまとめていただくに当たりましては、たたき台についての本日のご議論を踏まえ て、事務局において公益委員の協力もいただきながら、分科会としての報告案をまとめ ていきたいと思います。そういう方向でいかがですか。ご異議がなければそのような形 で進めます。今回の議事録の署名委員は岡本委員、川本委員にお願いします。では、今 後の予定について事務局からお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  次回の開催ですが、日時、場所ともに調整中ですので、決まり次第またご連絡をしま す。 ○横溝分科会長  本日はありがとうございました。          照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)