05/11/11 労働政策審議会労働条件分科会 第44回議事録           第44回労働政策審議会労働条件分科会                    日時 平成17年11月11日(金)                       10:00〜                    場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○西村分科会長 ただいまから第44回労働政策審議会労働条件分科会を開催いたしま す。本日は荒木委員、廣見委員、渡辺章委員、石塚委員、島田委員、奥谷委員、平山委 員が欠席されております。また、山下委員の代理として君嶋さんが出席されております。 それでは本日の議題に入りたいと思います。本日は分科会として各委員が労働現場の実 態をどのように認識するのか、また、その認識に立って、労働契約法制が必要と考える のか考えないのかといった点について、議論を深めていきたいと思っております。本日 の資料ですが、須賀委員から資料が提出されていますし、事務局においても労働関係の 実態についての資料をまとめてもらっています。それでは事務局から説明をお願いした いと思います。 ○大西監督課長 それでは資料に基づき、労働関係の実態について事務局で整理した統 計資料、実例などについて説明いたします。内容は統計の数字的なものと、いわゆる具 体的な事例としていくつか御紹介させていただきます。具体的な事例については個別労 働紛争解決制度の中でもあっせん等に至ったものについて、いくつかの幅広いものをピ ックアップしたものです。  資料の1頁です。最初のところは我が国のいわゆる労働者の人数、どのような形で構 造が変化してきているかというところです。ご存じのとおりの産業別就業人口の変化と いうことで、労働基準法が制定された昭和20年代では、いわゆる第二次産業で働く方々 が半分近くであったものが、最近では第三次産業で働く方が6割を超えているというよ うに、産業構造が変化してきているというものです。  2、3頁です。ホワイトカラーという方が増えてきているということです。ホワイト カラーについては必ずしも厳密な定義があるわけではありませんが、専門的・技術的職 業従事者、管理的職業従事者、事務従事者、販売従事者を仮にホワイトカラーと呼ぶと いうことであれば、こういう方々が最近では全体の55.2%ということで半分以上を占め るようになってきたということです。一方、製造・制作・機械運転及び建設作業者とい われる方々については、多少減ってきており、2割ちょっとになっているというような 構造変化が起こっているというものです。  4、5頁です。就業形態の多様化です。4頁はアルバイト・パート、嘱託社員、契約 社員、派遣社員という方々が最近では32.2%ということで、約3分の1を占めるように なってきています。有期契約労働者数の割合も暫時増えてきており、13.9%ということ になっています。  6頁です。このようにいろいろな方々が増えてきているということで、労働者との間 で個別の労働条件設定がどういう状況で行われているかということです。多くの企業の 場合、就業規則で当然労働条件が設定されているわけですが、就業規則はあるのですが、 それとは別に一部分について個別に労働条件を設定することがあるという企業が、全体 では32.1%あり、1,000人以上の規模の企業ですと半分以上がそういうものもあるとい う御回答をいただいており、就業規則とは別に、個別に労働条件を決めている企業も比 較的多くあるという状況です。  7、8頁です。労働組合の推定組織率です。平成16年で19.2%ということになって います。8頁で民間企業の場合には、16.8%です。  9頁です。パートタイム労働者の推定組織率は若干増えてきていますが、現在3.3% という状況になっています。  10、11頁です。企業において労働組合があるかないかということを聞いたものです。 労働組合のある事業所の割合は平成16年では34%で、平成11年に比べて少し減ってき ています。平成6年に比べると減ってきているように見えるのですが、下に書いてある ように、企業規模の調査対象が異なっていますので、直接は6年とは比較はできないと いうことです。11頁は企業における過半数労働組合の状況についてです。こちらは10 人以上の規模の事業所について調べた結果、規模計ですと過半数労働組合があると回答 した企業は、全体の6.6%で、ご覧のように規模が小さい企業と、規模が大きい企業に おいて過半数労働組合があるかないかという状況は、かなり大きく異なっているのでは ないかと考えられます。  12、13頁です。労働組合との団体交渉以外で、協議の場等がどのような形で設けられ ているかということについて調べたものです。12頁は労使協議機関で、この労使協議機 関の内容は別にかっちり固まった定義があるわけではないのですが、ここでは経営者側 と従業員の代表者とが協議、意見交換をする常設の場、そういうものがありますかとい うような形で聞いたところ、全体では29.3%ということです。これも企業の規模によっ てある割合は変わってきているところです。13頁は苦情処理機関で、こちらは個々の労 働者の不満を扱う苦情処理機関、あるいは手続を社内に設けているかどうかということ です。全体で18.6%あり、これも企業規模によってその設置の割合は異なってきていま す。  14頁です。この苦情処理機関、手続の内容についてです。中身としては人事・労務担 当部署に相談窓口を設置するというものが65.1%でいちばん多くなっているというも のです。そのほかの委員会などを設置しているというものもいくつか見られます。  15頁です。集団的な労働紛争の件数の推移です。争議行為を伴う件数については減っ てきているという感じですが、下のグラフで不当労働行為の新規申立件数は年によって ばらつきはあるけれども、それほど減少しているという感じでもないのかという具合に 思います。  16頁からは労働関係の民事事件の状況です。16頁のグラフにあるのは労働関係の民事 事件の訴訟や仮処分の新規受付件数、全国の地裁のものを調べたのですが、平成3年か ら平成6年ぐらいまでにかけて伸びて、平成6年から平成10年ぐらいまでは横這いにな って、平成10年から平成16年に至るまでだんだん伸びてきているというような状況で す。  17頁からは個別労働紛争にかかる相談の件数および内容です。これは都道府県の労働 局に設置された総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数などを表にまとめたもので す。棒グラフと折れ線グラフが重なっているのですが、折れ線グラフの総合労働相談件 数は右目盛りということで、これは平成13年25万件、平成14年62万件、平成15年 73万件、平成16年82万3,000件というものです。平成13年は10月からなので半分し かないことを、注で書いてありますが、これを除いていただきますと、14年から15年 にかけて、11万件ぐらい増えて、15年から16年にかけて9万件ぐらい増えているとい う状況です。この総合労働相談というのは、いわゆる個別紛争であるかどうかというの は別にして、いろいろ相談を受け付けて話を聞いて、アドバイスをしてあげるというよ うなものの件数です。  ですから、この82万件の中には、「制度がどうなっているのか」という御質問もあれ ば、「これは法律違反だから、労働基準監督署に行きなさい」という話もあれば、「それ は個別の労働紛争ですので、うちのほうでもう少し詳しくお話を伺いましょう」という のもあるわけです。いわゆる民事上の個別労働紛争に該当するものが棒グラフになって いますが、それは例えば平成16年ですと82万件のうちの約16万件ということです。こ の件数は平成14年度が10万件、平成15年度が14万件、平成16年度が16万件という ことで、14年から15年にかけては4万件ぐらい伸びて、15年から16年にかけては2万 件くらい伸びているという状況です。  それぞれの内容の内訳は下の円グラフで、これは平成16年度の約16万件の内訳です が、解雇が27%、労働条件の引下げが16%というような、あとはそこに書いてあるよう な状況になっています。  続いて18頁は助言・指導とあっせんの件数です。全部で82万件あって、そのうちの 16万件が個別労働紛争ですという話をさせていただきましたが、その中で助言・指導、 あっせんになっている件数は、そこのグラフにあるように平成16年度はあっせんが 6,014件で、助言・指導の申入れの受付件数が5,287件です。  19頁です。助言・指導の内容が分析されているわけですが、解雇が31.3%です。右下 にある助言・指導の手続を終了したもののうち、あっせんに移行したものは1,514件で 約3割となっております。  20頁です。助言・指導の内容を分析したもので、事業所の規模でいうと10人未満の 所で24%、10人から49人の所で31.9%という割合になっています。  21頁です。助言・指導の事例の具体例を時間の都合がありますのでいくつかピックア ップして御紹介します。例えば一番上の事案ですが、定年退職した場合に、退職の直前 に会社から退職金を2割減額するという話があったということです。助言・指導の内容 としては不利益な変更内容を判断する労働条件の変更については、労使の合意が必要な ので、よく話合いをしてくださいというようなことで、その労働者と会社と話し合った 結果、減額分についても支給されることになったということです。次は整理解雇に関す る事案で、これは配置転換をされたけれども、通勤が困難であるため別な事業所に行き たいということを言ったところ、解雇の予告をされたということです。これも基本的に は当事者でよく話合いをしてくださいということで、解雇の回避努力など4つの要件が あるというのが判例などでよく言われているので、そういうのもよく話をしてください ということで、これも話し合った結果、別の工場で勤務するようになったということで す。ここに書いてあるのは、いずれも労使がそのように主張しているということですの で、私どものほうでこれがいいとか悪いとか判断を加えているわけではなく、こういう ことをお互いに主張しており、そういう御相談をしたらいかがですかという話で、そう いう解決になったという例を5つほど挙げております。  23頁です。あっせんです。全部で6,014件受理したわけですが、これについては解雇 の比率が40.5%ということで、少し高くなっているという傾向があります。あっせんの 処理状況は23頁の下の円グラフですが、あっせん案を受諾して合意成立したのが約半分 の44.9%、打ち切りが45.9%、申請の取下げは結論はどうなったかよくわからないので すが8.2%ということで、大体合意成立と打ち切り半々ぐらいという大きな見当ではな いかと思います。  24頁です。これについて労働者の状況等が書かれています。事業所の規模としては10 人未満のところが21.8%、10人から49人のところが34.2%というような状況です。  25頁です。これまで御説明してきたことを都道府県別に数字を挙げたものです。いち ばん下の欄がこれまで御説明した全体で82万件、個別労働紛争になったのがそのうち 16万件、助言・指導が5,200件で、あっせんについては6,014件あったという関係です。  26頁から後はあっせん事案を中心に、どういう紛争が起こっていて、どういう実態で あるのかというのをいくつか御紹介しています。まず、26、27頁はいわゆる入り口の段 階で、募集・採用に関するものです。相談件数は上のグラフにあるように、採用に関す るものが1,882件、募集に関するものが1,163件、助言・指導になるとそれぞれ43件と 14件になっています。あっせんのグラフがないのは、下にあるように募集・採用に関す る事項については、一応あっせんの対象にならないという整理になっていますので、あ っせんについては件数はありません。27頁については一つで、採用内定取消しについて の件数です。これについては相談件数は1,233件あり、助言・指導73件、あっせんにな っているものが140件あるというものです。  28、29頁です。募集・採用段階におけるあっせんの事例としていくつか御紹介させて いただきます。例えば28頁のいちばん上の事例ですと、求人票に賞与について記載があ ったので、これだけもらえるのかと思っていたら、実績評価でそこまではもらえなかっ たというものです。労働者側は記載があっただけくださいと主張して、会社側は求人票 で示したのはあくまでも前年度の実績なので、支給額を保障したものではないという主 張をしていたものです。この事例はたしか打ち切りになったと聞いています。  28頁の上から3つ目、採用内定に関する事例では、ある労働者が前職在職中に、新し い会社から採用内定という連絡を受けたので、雇用契約書(仮)を交わしたところ、2 週間後に社長の意向によりそれが取り消されたというので、これは前の会社をもう辞め てしまったので、経済的、精神的な損害についての補償金を求めたものです。会社側は これに対して雇用契約書(仮)を交わした段階では採用内定を行ったものでなく、社長 面接で最後決定するのだということはきちんと知らせていたと主張して紛争になったと いうものです。私どもが約600件の事例を調べているわけですが、こういう採用内定に 関する事例としては、20件ぐらいがあっせん事例としてあったというものです。  28頁の下のところから試用期間に関する事例があります。期間の定めのない契約で雇 い入れられた労働者が、入社して3か月を経過した時点で、1か月間試用期間を延長す るという誓約書の署名を求められたということですが、労働者のほうとしてはその試用 期間が設定されているということを詳しく知らなかったということです。会社側として は、労働者本人が就業規則に記載されている試用期間の定めをおそらく知らなかったの ではないかとは思うが、やはり試用期間の延長は申し入れました、と。労働者がそれを 拒否したので会社としてはこれは解雇だとは思っていない、という主張をされたという ものです。この事案については、結局解決金を支払うという方法で進んでいったと聞い ています。  30、31頁です。労働条件の引下げに関する民事紛争です。非常に増加傾向にあり、16 年度で2万8,887件ということで、全体で約16万件の16%を占めているものです。助 言・指導の件数は31頁にあるように817件あり、あっせんの件数は32頁にあるように 807件です。  この事例は33、34頁にいくつか紹介していますが、大体600件ぐらいの中では30件 弱ぐらいがこういうような形のパターンのものです。これもいくつか紹介していますが、 33頁のいちばん上の事例ですと、就業規則についてですが、管理職については内規で55 歳以降賃金は減額になるという制度があるというのですが、労働者は制度の存在は知っ ていたけれども、詳しい話は知らなかった。実際に賃金が下がったのでどうしてだと聞 いたら、高齢者だと能力が落ちるからという具合に答えられたのだけれども、労働者と しては納得がいかないということなので、賃金減額分の返還を求めたものです。会社側 としては制度は20年前に55歳定年を60歳定年に延長したときに作ったものであるから、 10年前にもう説明しているし内規もあるということを主張しているものです。このケー スについては内規についてはもう少し明確なものにするということですが、返還につい ては打切りになったと聞いています。  次の事例は就業規則の不利益変更に関する事例で、10年前にA社の子会社としてB社 が分離独立したときに、A社からB社に転籍した労働者がB社の倒産によって解雇され たということです。B社ではもともとA社と同一の退職金制度があり、これを3年前に 減額したわけですが、その際に当該変更について各労働者と覚書みたいなものを交わし たけれども、就業規則の退職金の規定については変更しなかったというものです。労働 者の側からはこの退職金制度の変更については十分な説明がなかったので、説明があれ ば覚書は受諾しなかったということで、いわゆる退職金規程のほうが有効ではないかと いうことです。会社側のほうは覚書を各個人別に交わしているから、退職金制度という のは有効なのだということを主張しているというものです。  34頁の最後の例ですが、個別の労働契約の変更に関する事例というものもあり、例え ばインストラクターとして週3日勤務の条件で5年間勤務している労働者なのですが、 会社側が経営難を理由に週1日勤務にしてくれと言ったところ、インストラクターはそ れはいやだと言ったということで、労働者としては経済的、精神的損害に対する補償金 を支払ってと。会社側としては不当解雇ではないし、誠意として最終月の賃金を上乗せ して支払っているのだから問題はないのではないかということで、紛争が起こっている というものです。  35頁です。配置転換、出向等に関するものです。配置転換に関する個別紛争の相談件 数は5,393件で、いわゆるあっせんに至ったものが194件で、これも先ほどの解雇に比 べて少ないものの結構な数があるというものです。出向に関しては36頁にあり、相談が 604件で、あっせんは8件という状況です。  37頁です。事例が紹介してありますが、例えば配置転換に関する事例ですと、一番上 に事務職として採用されて、事務の業務に携わっていた労働者が、現場業務であって重 労働である配架作業に異動になった。これは契約違反だと。事務の業務への再異動を求 めたものですが、会社側としては事務職とこういう作業労働者の区別は特にないので、 適材適所で配置転換したということで争いになっているケースです。  出向に関する事例では37頁の上から3つ目、関東のA社で勤務していた労働者が、就 業規則の出向規定がないにもかかわらず、B社に出向を命じられた。これを拒否したと ころ、懲戒解雇になってしまったというものです。会社側はプライベートな理由で拒否 したものと考えて、業務を優先してほしかったという具合に主張したという例です。  37頁の転籍に関する事例は、ちょっと中身が複雑で、A社で雇用契約により就労して きたところ、突然B社からの給与通知書がきたが、その後何の説明もないのでA社での 勤務を続けていた。だから給与の当事者はB社で、勤務はA社だと。それからさらにC 社本店での勤務を命じられた。A、B、Cは全部関連会社なのですが、そのようにいろ いろな複雑な形態になっていたので、これは労働者が就業場所や職務内容が複雑なので、 会社が自己退職に追い込んでいるのではないかということを思って、補償を求めてきた というものです。  38、39頁です。人事に関する処遇などに関する相談件数です。昇給に関する相談件数 は778件で、あっせんに至ったものが15件、人事評価に関するものが725件であっせん に至ったものは40件です。  39頁です。懲戒に関するものです。これはわりと数が多くなっていて、懲戒解雇、懲 戒処分についての相談件数は4,711件と2,068件で、あっせんの件数については129件 と50件で、わりと数が多くなっています。  40頁です。人事評価、懲戒に関する事例についてですが、人事評価に関する事例につ いては事前の説明なく、経営不振および業績評価を理由として給与、賞与が減額された ということで、これを何とかしてほしいというものです。会社側としてはいわゆる給与、 賞与の減額は業績評価の結果と、前年度の業績不振による1、2割のカットであるとい うことです。これについてもあっせんの結果、両者がよく話合いをするということで決 着したと聞いています。懲戒に関する事例としては、上から2つ目の事例で、同僚に対 して交友関係に関して中傷をしたということで、懲戒処分通知書が交付され、降格がな されたけれども、これも不当であるというものです。労働者は途中で始末書を出してい るわけですが、労働者は始末書を出したのは、定年を控えてトラブルを起こしたくなか ったからであり、始末書の提出自体も不本意であったと主張しているという事例です。  41頁から44頁までが解雇・退職に関する個別紛争で、件数も多くなっており、全体 の3割を占めています。相談件数では4万9,031件あって、全体の27.1%になっていま す。  42頁です。助言・指導の件数が1,736件で、これも全体の31.4%を占めています。あ っせん件数は2,519件で、全体の40.5%ということで、あっせんまでいくと割合が高く なっているという特徴があるわけで、それだけ深刻な問題を扱っているということです。  45頁です。解雇に関する事例についてあり、私どもが調べた中でもいわゆる普通解雇 に関するものが190件強ぐらい見つかり、整理解雇と退職についてもそれぞれ40数件あ り、個々の事例をいろいろ調べさせていただいたところです。普通解雇に関する事例で 一番上にあるように、顧客からのクレームを理由に解雇通告を受けた労働者が解雇撤回 か配置転換を求めたところ、使用者は表向き顧客の担当を変えるという慣習がないから 解雇させざるを得ないと回答し、それに対して労働者は納得がいかないとして復職また は補償金の支払いを求めたというものです。会社側は配置転換に関する規定はあるのだ けれども、配置転換を行った事例がないということで、配置転換はできないと主張して いたものです。これについても解決金という方向で解決をしていると聞いています。  整理解雇に関する事例は上から3つ目、会社側が新たな機械を導入した後に解雇され、 解雇理由について説明を求めたところ、「ただのリストラだ」と言われたという事例です。 これについては最終的には和解の方向で解決をしていったというものです。  退職に関する事例はちょっと複雑なのですが、45頁のいちばん下、労働者が退職を申 し出るメールを社長に送ったのだけれども、専務から慰留を受けて、撤回してまたその 旨をメールしたというもので、そのときに労働者としては退職の意思そのものを撤回す るつもりでやっていたところ、4か月後に別の取締役から、退職を希望するというメー ルを前に送っていたので、これは退職なのだと言われたということです。労働者側は退 職希望は撤回したといってメールを送ったと主張し、会社側はそれは退職の時期を決算 業務終了まで延期したものだと受けとめていたという争いになったものです。これにつ いては解決金という形で解決の方向に向かったと聞いています。  47頁です。有期労働契約に関するものです。これについては個別の相談件数が5,242 件、雇止めに関してあっせんを受理したものが249件あったというもので、これについ て一定数の紛争があると認識しています。  48頁です。具体的な事例として、雇止めに関する事例も当たってみたところ40数件 あったわけですが、例えば一番上の事例ですと、定年後1年契約で再雇用していた労働 者について、若返りのために次回の契約は更新しないという通告を受けていたが、就業 規則には65歳まで再雇用の規定があるので、自分だけ更新されないのは納得いかないと いうことです。会社側は当該労働者について指導しても業務の改善が見込まれないから 退職してもらうということで、本人も了解したものと考えていたというものです。  48頁の一番下の例は、試行雇用契約に関する事例です。これは数は少ないのですがこ ういうケースもあったということで、新たに採用された労働者が、入社直後には2か月 間は試用期間だということを告げられていたのだけれども、途中で2か月の有期労働契 約であるということで、署名、押印を求められて、雇用継続はできない旨を通告された というものです。労働者のほうは当然試用期間だと考えていたわけですが、会社側はあ くまでも2か月の有期労働契約であるということで、紛争になったものです。  49、50、51頁についてはその他、なかなか分類しがたいものが雑多に入っていますの で、いくつか御紹介させていただきました。件数としてはそれぞれのカテゴリーではあ まり多くないのですが、いろいろな種類のものがあるというので、いくつか例を紹介し ています。50頁の一番上のものはいわゆる兼業に関するものです。アルバイトとして労 働していた者が、会社側のほうから特に労働者の兼業については昼間別の企業で働き、 深夜に自分の会社で働くのは過重労働になるのではないかというようなことも理由に挙 げつつ、解雇したけれども、労働者側としてはそういった兼業というのは入社当時から 了承されていたものだということで、復職とか有給休暇の付与を求めたものです。  二つ目は秘密保持義務に関するもので、会社から秘密情報の保持や著作物の取扱いに ついて同意書の署名を求められて、労働者がこれを拒否したところ、退職を勧奨された という事例です。  三つ目は競業避止義務です。A社を自己都合退職した労働者が、下請のB社に再就職 をした。A社もB社もいわゆる同じC社に対して営業行為をやっているため、いわゆる 誓約書に署名を求めたところこれを拒否したために、退職金を支払わなかったという事 例です。  50頁の一番下です。いじめ・いやがらせに対するものです。1例を挙げています。こ れもいろいろなバリエーションがあったものです。  52頁です。いままで私どもの総合労働相談ということですが、東京都の労働相談情報 センターというのが従前からやっており、経年的にとれるので御紹介させていただきま すと、平成3年度の約3万1,000件から6年度、9年度、13年度まで上昇して、その後 多少減ってきているという件数です。以上、資料の説明をさせていただきました。 ○西村分科会長 それでは続きまして、須賀委員から出されている資料についてお願い いたします。 ○須賀委員 お手元に私から提出した資料がありますので、御参照いただきたいと思い ます。私ども連合ではそこに記載のように、「なんでも労働相談ダイヤル」ということで、 ときには集中的に、不払残業、俗にいうサービス残業ですが、その撲滅のためのキャン ペーンを行ったり、通年的に相談を受け付けるということで、常設電話を持っており、 そういう体制の中で集約してきたものです。集中的に行うときには本部を中心に対応す るのですが、通年的に設けている常設の相談ダイヤルは、地方連合会に電話が直通でつ ながるような体制を採っています。この資料は相談の状況を1年間についてまとめたも のです。最初に全体の総括がありますが、組合の結成等の運営にかかわる部分から、先 ほど紹介がありましたセクハラ、いやがらせを含む差別的な取扱いなどさまざまな相談 が私どもの所にも寄せられています。また、分類ができないものまで含めると、結構な 数が寄せられており、1年間の総計では記載のように6,377件です。このうち、労働契 約や就業規則にかかわることという形で整理ができるものは、右側の2段目にある労働 契約から、その下の賃金、労働時間、解雇、退職等を含め、全体の70%、4,462件が5 つのカテゴリーに分類できるのではないかと考えています。  次頁です。具体的な相談事例を記載させていただきました。契約の成立から終了まで という流れに沿って、具体的な事例を載せさせていただいています。非常に簡単なまと めになっていることをまずお断りしておきます。  それぞれの事例について少し紹介したいと思います。ここに挙げたのは、先ほど紹介 をした6,000件強の中身、とりわけ労働契約関係でという紹介をした4,500件弱の内容 から抜粋したものです。まず、募集・採用関係では求人票では、これは多分ハローワー クでの求人票ということで考えていただいていいと思いますが、「賞与、昇給あり」とい うことになっていたものが、実際に職場に入って周辺の人に聞いてみると、そんなもの はないということだった。求人票と実態が違うということ。就業規則の関係では就業規 則をまず見せてもらえない。あっても古い。また、中には更新がされていて、その更新 されていた内容が監督官庁に届けられていない。そういういろいろな齟齬がある中で、 ラジオ体操を真面目にやらなかったという理由で査定を悪くさせられたというようなこ と、あるいは2つ目にあるように、就業規則を見せてほしいと言ったら、「それを見ると あなたが不利になりますよ」と言われたというような事例があります。次に配置転換、 出向、転籍の関係のそれぞれの事例を挙げています。転勤を断ったところ、その場合に は解雇もあると言われて困っているのだけれども、どうしたらいいでしょうかという相 談があります。  2つ目は、会社を休んでいて出勤をしたら配転を命じられた。通勤ができる距離でも なかったので、断ったら「家を替わったらどうですか」と言われた。3つ目は栄養士と して勤務をしていたわけですが、隣の県に転勤命令されて、仕事自体も栄養士からウエ イトレスに代わっていたというような、かなり悪質な事例もありました。  損害賠償と誓約書等の関係で、個人情報保護法の施行に伴い、誓約書への署名等を求 められるケースが増えており、そうしたものに基づくあまりにも実態とは合わない、実 質的にはその誓約書にサインをすれば、かえって非常に大きな制約を受けてしまうとい う趣旨での訴えが出てきています。損害賠償の関係では会社に損害を与えたということ で、それを給与から差し引かれた。あるいはそのことをきちんと誓約書の形で事前の了 承を求められたという事例が挙がっています。  契約の変更では正社員として入社したのだけれども、ミーティングの態度が悪いとい うことで、契約社員に急に変えられた。そして、その契約社員への変更の際に、正社員 になるチャンスはあると言われたのですが、その後、大したミスもないのに正社員にな るという話は全くなされていないのだけれども、こういう扱いをされていいのかという 相談です。  次頁です。何の事前説明もなく、突然パートという勤務形態に変更されて、翌日から 勤務時間も9時〜15時でいいと言われたという事案。会社に損害を与えたということか ら、1年更新の契約社員に変更させられた。どうして1年の有期にするのかということ についても説明がなかったという事例です。また、いままでは営業係長をしていたのだ けれども、よその県の倉庫係として配転を命じられた。それに伴って降格、あるいは賃 金の切下げということがあったし、親の関係があって配転に応じられないとしたときに、 そうした取扱いを受けたという内容です。  次には、週6日勤務だったものを、週3日勤務に減らされた。そのことについて訴え たのだけれども、いじめがそこから始まって、結局我慢できずに自ら退職を選択したと いうケースもあります。さらに、これも最近増えている話なのですが、企業組織の再編 に伴い、当初はパートとして日給が1万8,600円あったが、親会社に吸収されて、何の 説明もなく日額が6,000円に下がっていたという事例です。「どうしてですか」と説明を 求めたところ、親会社の方針だからということだけで、それ以上の説明をしてくれなか ったということです。  また、新聞で合併の記事を見て、その際にリストラは当然あるだろうということで当 時うつ病で休職中であったその人が、リストラの対象になるのではないかと心配をして 電話をしてきたということもありました。  セクハラ、いじめ等の関係については次に記載させていただいています。上司がセク ハラの加害者であるにもかかわらず、被害者のほうが解雇された事例。社長秘書として 勤務をしているのだけれども、何度も体を触わられた、やめてほしいと言ったら、上司 から異動を伝えられたという事例。いじめの関係では上司からのいやがらせで、自ら退 職をした。仕事も教えてくれず、研修等にも行かせてもらえなかった。ほかの人にはそ ういうことをきちんと対応していた。差別的な扱いを受けたということでのいやがらせ の内容です。また、会社がいじめ、セクハラ、不当な配転等を退職を強要する態度で行 い、サービス残業の密告者扱いもされ、それに耐えられずに退職届を出したら、それは 受理をしてもらえないということで、うつ病の状態にある、という相談もありました。  また、いじめによって体調をくずしたので、休んでいたところ、刑事事件に巻き込ま れ精神的に落ち込んで休んでいたところ、退職届を出すように強制されたという事例が あります。  懲戒の関係では一つだけしか載せていませんが、3年前に喧嘩があって、懲罰委員会 にかけられたわけですが、それが3年後に始末書を書かされたというような事例。私傷 病による解雇ではてんかんの持病をお持ちだった相談者が、そのことが会社にわかった 時点で、一方的に解雇されたという事案です。同じような一方的な解雇の関係ですが、 「今日限りで辞めてくれ」と突然社長から言われて、「理由は」と言ったら前日退社の際 に社長に挨拶しなかったという無謀な社長もいます。朝礼のときに全員の前で解雇しま したということを言われた。本人には事前に何の説明もなかったというようなことがあ ったということです。  最後に有期契約の更新についてで、あと2か月で更新の時期がくるというときに、「次 も更新してください」と会社にお願いしてもいいのだろうか、更新前にはいつも会社が どのように対応してくれるのか心配になるという、非常に弱い立場の労働者の相談事例 を挙げました。  いずれにしても先ほど事例として紹介したように、契約の内容の一方的な変更による 相談が経年的に増えてきているということについても、追加的に補足して、説明を終わ らせていただきます。 ○西村分科会長 ありがとうございました。いま労働関係の実態および労働紛争の実態、 個別労働関係を中心として、事務局および須賀委員から説明があったわけですが、こう いったことを踏まえ、御自由にいろいろ御質問、あるいは御意見を伺っていきたいと思 いますが、いかがでしょうか。 ○岩出委員 厚生労働省が出した資料の17頁で、相談件数が82万件とかなり多いので すが、労働者、使用者両方だと思うのです。助言・指導やあっせんについても労働側か らと、それと使用者側からのもあると思うのですが、相談件数は労使両方ともかなりあ ると思うのですが、その割合というのはあるのでしょうか。 ○秋山調査官 相談件数は大体82万件くらいありますが、労働者からの相談が大体50 万件、事業主からの相談が大体24万件、あとはその他がありますが、大体そんな割合で、 労働者が2、事業主が1という割合になっているようです。 ○岩出委員 その場合、組合のほうも同じく聞きたいのですが、相談を受けた場合、ど ういう基準で回答なさるのか、どういうものをベースとして回答されたりしているのか、 聞きたいです。何か文献とか、そういうものを使っているのか、根拠になるものはどん なものか。 ○秋山調査官 助言・指導の場合のですね。 ○大西監督課長 私どもの資料の21頁ぐらいでいくつか書かれていますが、いわゆる判 例を説明したり、例えば21頁の真ん中辺り、整理解雇に関する事案で、判例上整理解雇 については使用者による十分な回避努力など4つの要件が求められているということで、 こういう判例を紹介することもありますし、あるいは82万件の相談の中には、制度がど うなっているのかというのも非常にたくさんあるわけですから、こういうような法律制 度があるという具合に説明する場合もあります。また、お互いによくわからないという か、多少感情的になって、来ていただいた場合には、冷静になってお互いに対応してく ださいというように御説明する場合もあるかと思います。これについてはいろいろなケ ースがあり、特に統計的に何パーセントという感じでとっているわけではありません。 ○岩出委員 たしかJILさんが相談事例集を出していますね。我々も編集者に入って いたのですが、その頼まれたときには、そういった紛争調整委員会のあっせんとか、相 談員のテキストとして使うような話はあったのですか。そういうものを一定の文献とし て使われているのでしょうか。そういうのは考えられていないのですか。 ○大西監督課長 いま御指摘いただいた資料は地方に配付していると聞いています。で すからそういうようなものを使いながら相談させていただいていると思います。 ○西村分科会長 この19頁のいちばん下で、助言・指導を実施したもののうち、解決し たものが61.2%、手続を終了したもののうちあっせんへ移行したものが29.7%というの は、この2つを足して100%になるとそういう話ですか。 ○大西監督課長 それは解決しなかったものです。 ○秋山調査官 この2つの下のほうの関係は、若干母数が違いまして、※の上のほうは、 助言・指導を実施したもののうちですので、円グラフの100%ではなくて、その中の 94.7%の実施のうちの関係したものがこれだけだということです。下のほうの※のほう が、円グラフ全体の5,279件のうち、あっせんに移行したものがこれだけあるというこ とです。そういう意味では部数で5%ほどの違いがあります。 ○新田委員 資料を見せてもらったのですが、大変な揉め事があるのですが、全体とし てきちんと就業規則があって、契約書も交わされているとか、通知書が出ているという ものと、一から労働基準法を説明しなければいけないという経営者もいることがあるの ですが、その辺のところは何か統計を取っておられますか。きちんとしたことができて いない場合に紛争が起こるケースはどの程度の割合でしょうか。 ○秋山調査官 きちんとしたものができていないというのは程度にもよりますし、なか なか統計は取りにくいのですが、最初の監督課長の説明と重なるかもしれませんが、と にかく相談があれば、揉め事であれ何でも相談に乗ると受け付けたのが、82万件ぐらい あります。その中には解雇や労働条件の引下げ、解雇は怪しからんとか、労働条件の賃 金を切り下げられてやっていけないという、民事的な不満が16万件あります。その他に 法令制度の問合せ、中には全く知らないで聞いてきた人もいるでしょうし、こういう場 合にはどうしたらいいかと聞いてきたのもあるでしょうし、中身はさまざまですが、そ ういったものが約50万件です。80万件のうち法令制度の問合せが50万件ぐらいで、よ く聞いてみたら監督署につなげば基準法違反がありそうなので、監督署を紹介しますと か、均等室のほうで行政指導ができそうなのでそちらにつなぎますと、法律の施行に関 するものが16万件ぐらいと。このような振分けはあるのですが、言われたような事業主 が全く中身を知らなくて、一から説明しなければいけないものがどのくらいかの統計ま では出にくいところですので、そこは御了解いただければと思います。 ○新田委員 こういう統計を取っていかれるときに、その辺のところをきちんとしてい かないと、これからの対応として入口の問題としていろいろなことが出てくるのだと思 うのです。  揉め事についてかかわっていかれるときに、いろいろデータなり、資料なりの現物を 要求されていると思うのですが、その辺もきちんと踏まえて進めていかないと把握しき れないと思います。  そういう意味では、事例を見ていても、法や協約の存在や内容をきちんと理解してい れば揉めることもないのではないかということもあるのだと思います。そういう意味で、 監督指導されることと同時に、きちんと状況を把握して、示していただけたらと思いま す。 ○久野委員 資料2の23頁の「あっせん申請に係る内容」というところで、打切りが 46%あります。この打切りの根拠というか、その場合に例えば法令などの他に、外国で の事例なども参考になさっているのか。つまり打切りがあるということが問題で労働契 約法をつくりたいと聞いておりますが、打ち切っている理由はわかっているのですか。 ○大西監督課長 あっせんというのは労使の両当事者が、ここで解決しましょうという ことで、あっせんに乗ってくるかこないかというのを決めるわけです。そうすると、基 本的に強制ではありませんので、労使のどちらかが「このテーブルには乗りません」と いう場合には、打切りが起こるわけです。 ○久野委員 一方が取り下げたということですか、しかし取下げは8.2%ありますが。 ○秋山調査官 こちらの打切りには、話が全然つかないので、ここのテーブルでは解決 しませんということで片方が出てこないからというものが含まれます。 ○久野委員 片方が出てこないから、あっせんのしようがないからということですか。 ○秋山調査官 そういうことです。 ○田島委員 あっせんは一方が不同意であれば打切りになるのは当たり前で、そういう ことがあるのは常識的な範囲ではないかと思います。  質問ですが、少し遡って4頁の「就業形態の多様化」ですが、一般的に非正規とか、 非典型と言われている層がずっと増えていて、2割から3割になっています。最近の調 査でも働く女性の半分以上が、この範囲に入ります。こういう形で、非正規の人たちが どんどん増えていく傾向のままでいいのか。その場合に、例えば処遇の格差の問題や有 期労働契約の入口の規制について、例えば諸外国で入口の規制などは行われていないの か。このまま放置したら私は社会的な不安の問題も出てくるのではないかと思うのです が、その点について分析していますか。 ○大西監督課長 今日は手元に資料を用意していないのですが、委員が想定している入 口の規制に当たるのかは定かではありませんが、諸外国の有期労働契約について多少の 研究は進めておりますので、もし必要がございましたら資料として提出させていただけ るのではないかと思います。 ○君嶋氏(山下委員代理) 先ほどの23頁の資料ですが、打切り45.9%のその後につ いてのデータはお持ちでしょうか。 ○大西監督課長 ございません。 ○谷川委員 この6頁の資料は平成16年の労働者との間の個別の労働条件の設定の有 無ですが、この経年変化などを調べたものはあるのですか、このような労働条件の設定 をするのが増えてきているのか、減ってきているのか、横ばいの状況なのか。それと17 頁ですが、こちらは相談の件数が増えてきているという、相関のようなものがわかるよ うなものはあるのでしょうか。 ○秋山調査官 いま御指摘の6頁の資料自体は、単発で平成16年に行われたものですの で、この調査としては時系列では比較できません。ただ、今回直接お出ししていなくて 口頭で恐縮ですが、今年の10月に発表された「平成16年労使コミュニケーション調査」 というものがありますが、その中で過去5年間において、労働条件の個別的な決定、例 えば従業員個人が使用者側と目標管理等について話し合って、賃金などの労働条件を決 めていくやり方、こういった個別的な決定の対象となる労働者の割合が増加したか、減 ったか、変わらないかを聞いた調査がありまして、「過去5年間の個別的決定の対象とな る労働者が増えた」と答えた企業が12.8%、「ほぼ変わらない」が51.8%、「減少した」 が7.4%ということで、過去5年間で個々に個別的労働条件の決定をする労働者が増え ていると答えた企業のほうが約12.8 %で、減少した7.4%に比べると多いかと。それが どの程度多いかというのは評価の問題ですが、そのような調査がございます。 ○西村分科会長 続きの質問の紛争が増えた関係は。 ○谷川委員 いまの状況ではあまりよくわかりませんが、個別的労働条件の決定が増え ていることと紛争相談件数との関係はどうですか。 ○西村分科会長 それは関係ないということですかね。 ○谷川委員 相関分析はできないということですね。 ○岩出委員 資料2の12頁の労使協議機関についてお聞きしたいのですが、これは企業 に聞いたということですね。下のほうに、「労働組合あり」で、67.5%に設置されていて、 7.0%が必要あるとして検討されているということですね。逆に組合のほうから必要性が あるかどうかと、そういう調査をしたことはないでしょうか。 ○大西監督課長 いま手元にある資料の中では委員の御指摘の資料がありませんので、 あるかどうか探してみたいと思います。 ○久野委員 労働組合の組織率がどんどん減ってきていますが、それに関してどういう 理由で減ってきているかという調査はございますか。つまり、いま2割を切っていると いうことですが、それはどういう理由かとか、いろいろなデータをお持ちでしょうか。 ○秋山調査官 あまり手元に正式に分析したものはないのですが、いちばん数が利くの だろうと思うのが9頁にありますが、パートタイマーの労働者の組織率は増えています が、パートタイマーの数からすると3.3%でかなり少ないと思われます。初めのほうの データにあったように、世の中全体でパートの方や非正規の方が増えてきている、一般 に言われているのが、労働組合でパートの方の組織化の運動を進めておられているとは 言え、なかなかパートの方も組合に入ってメリットがあるのかどうかということで、パ ートや非正規が増えていること、組織率が低い方が増えていることによって、かなり組 織率が下がっているようなことは大きな要因としてあるのではないかと考えています。 ○久野委員 それが減っているから、こういう訴えや苦情相談が増えていることに関連 はしないのですか。つまり、組合に訴えられないから苦情として出てくるという可能性 はあると思うのですが。 ○大西監督課長 委員が御指摘の可能性というのは、組合がなぜ減っているのかとか、 組合が減っているから苦情が増えてきているのではないかというのは、直接にこうだか らこうだという形では1つの資料で説明するのは困難ではないかと思います。いろいろ な資料を総合した場合に、私どもで判断するものではなく、いろいろな資料からどうい う分析を考えるかということも含めて、この場で御議論いただければ大変ありがたいと 考えています。  ただ、1つの資料で直接にお答えするようなものはありませんので、私どもに「こう いう資料を」ということで要求していただいた上で、この場でどういうことなのかの分 析も含めてお願いできればありがたいと思っています。 ○田島委員 例えば11頁に過半数労働組合の状況があるのですが、例えば100人以下で 3つの労働組合があると、そのうち1つは過半数未満で、2対1ぐらいの比率になって いると。労働者が労働組合をつくりたくても、組合を歓迎しないような経営者が多くて、 組合を本当につくろうと思ったら、退職というか、いろいろなことを覚悟しながら立ち 上がる現状というのが、中小企業の場合には結構多いのです。  そういう中で組合づくりを一生懸命努力しているけれども、相変わらず過半数を下回 る労働組合があまりにも多すぎます。これはやはり組合を嫌悪する傾向がないのかなと いう問題があると思います。  そういう中で、15頁で、集団的な労使紛争の数は減ってきていますが、先ほど課長が 説明された下の表では、申立件数、初審そのものはここ10数年間それほどは減っていま せん。我々の経験では例えば不誠実団交とか、団交拒否という形は結構申し立てる事例 は多いのです。そういう意味では、相変わらず組合嫌悪という姿勢はあるだろうと思い ますし、そういうところに組合づくりの阻害要因があるのかと思います。  あと組合の組織率が減っているのは、先ほどの非正規問題と、産業構造ががらっと変 わってサービス業中心になっていて、一度に1カ所に働いている仲間だと組合づくりは しやすいわけですが、あちこちに散らばった労働という現状の中で、労働組合は努力し ながらも組織率が低下している傾向があるのかと思います。  この不当労働行為の中身を、ぜひ教えてほしいと思います。また、過半数に満たない 労働組合が多い傾向について分析する必要があると思います。単に組織率が下がった、 集団的な労使関係が低下しているという一言で片付けるのではなくて、労働組合をつく ることに対しての阻害要因をきちんと分析する必要があると思うのですが、その点につ いてはどうでしょうか、厚生労働省のほうで分析はされていますか。 ○大西監督課長 不当労働行為の新規申立の内容については、もう少し詳細に資料を見 れば中身が出てくると思います。どういう形で公表できるかは別にしてですね。  いま委員から指摘がありました、過半数組合があるのかないのか、組合はあるけれど も過半数ではなくて、過半数組合がどういう位置付けになっているのかというのは、い まお答えできる資料は手元に持ち合わせていませんが、少し勉強させていただきたいと 思います。 ○新田委員 6頁の資料ですが、「労働者との間で個別に労働条件を設定することがあ る」という問い掛けについて、こういう答えがあったということですが、就業規則とは 別にというのは、どんな項目なのかということを知りたいということと、労働組合があ っていろいろな労働条件を議論しているところでの状況はどのようになるのでしょうか。 ○大西監督課長 後ろのほうについては、いま手元に資料がないのでクロスできるかど うかは後ほど回答させていただきたいと思います。  どのような中身が、個別に行われているかということについては、多少聞いた数字が あります。複数回答ですので、このような個別の労働条件の設定があるといって、「ある」 と答えた方の中で、どのような内容ですかと聞いたときの複数回答の資料を申しますと、 賃金・労働時間が、それぞれ7割以上で、勤務をする日については5割ちょっとと言う のが多くなっています。 ○新田委員 少し私自身がイメージできないのですが、労働組合のあるところで交渉を して条件を決めます。例えば賃金で言えば、成果主義を導入しましょうとして、その上 で具体的には個別に本人と話をして、目標を決めてということを、ここでは言っている のでしょうか。 ○大西監督課長 いま委員の御指摘の点は、調査項目との関係で、この調査からはわか りにくいのかと思います。労働組合の有無の場合のクロスは、集計表の原表を当たると 採れそうですので、後ほど整理をして御連絡したいと思います。 ○新田委員 どこまでのことをこのように個別にやられているか、それでいいのかどう かという危惧を持ちました。 ○大西監督課長 いまの御指摘の趣旨は、労働組合があって、就業規則をつくっていて、 就業規則の中身とは別に。 ○新田委員 「別に」と書いてありますからね。 ○大西監督課長 就業規則から取り出して、こういうところがあるのが、就業規則のつ くり方と個別の労働契約との関係でどういう具合になっているのかをもう少し詳しくと いうことですか。 ○今田委員 多様化で、正社員やアルバイトなど、就業形態の違いによって、いろいろ な紛争というか、違うと思うのです。このデータの20頁で、労働者の状況はこのような 形で出ているのですが、これと状況別の助言・指導などの種類別のものはあるのでしょ うか。例えばパートの人たちはこのような傾向、正社員はこのような傾向ということで、 おそらく違うと思うのです。それと労働組合があるかないかと、そういう状況で紛争の 種類や助言・指導のあり方というのは違うと思います。 ○大西監督課長 紛争の場合は結局問題になっているところをお聞きするわけですから、 全ての場合について、「あなたのところに労働組合はありますか」というのはお聞きして いないので、それはきれいに取ることは難しいのではないかと思います。 ○今田委員 就業形態についてはどうですか。 ○大西監督課長 就業形態については、明らかに有期雇用で雇止めに関する事例の48 頁のようなものは、これはパートであることはわかります。中には正社員から有期に替 わってくれとか、試用期間だったと思ったら有期契約だったという場合には、そもそも それがどちらに入っているかということ自体の議論になってくると思いますので、事例 を見てどのくらい取れるかは研究してみたいと思いますが、必ずしも雇用形態自体のと ころに紛争があるケースもありますので、そういうものを含めてもう少し研究してみた いと思います。 ○須賀委員 今田委員の御質問に答える立場ではないのですが、実際に相談を受けてい る側からすると、本人は無期だと思っているのだけれども、よくよく聞いてみたら有期 だったとか、先ほどの事例報告であったように、急に明日からとか、その日になってみ んなの前で説明もなく急に言われたとか、統計的にはそのようなものがあったほうがい いのでしょうけれども、相談事例から分けることはものすごく大変です。 ○今田委員 例えば、多様化が進行して、パートタイマーや期間雇用の人たちが増えて きて、そのような人たちが増えることに伴っていろいろな紛争が発生して、正社員は正 社員なりの企業の産業構造の変化とか、いろいろな紛争が起きてきて、それに労働組合 がどのような集団的な役割を担う、担わない、それが弱体化していて、非常に錯綜した 状態で、全部が紛争を生み出しやすくなっている状況があって、そういう意味でこうい う労働契約法制の必要性があるのではないかという議論なわけです。  だから、いまあえて申し上げたように、就業形態別の紛争の特色みたいなものがあれ ば原因もわかるわけだし、それに対する対処方法もわかるのではないかと、そういう議 論で申し上げたのです。 ○須賀委員 いろいろな要因が複雑に絡み合って、結果的にいまの状況ができてきてい るのではないでしょうか。もちろん労働組合の組織率が下がってきていて、それに伴い 一定の担保する機能が下がってきているという面もあるのかもしれませんし、個別化さ れてきていることが要因の一つであることも事実だろうと思います。  いずれにしても、いろいろな相談者の内容を聞いてみたり、私どもなりに集計、分析 したものを見てみると、一つ二つの事情ではなくて、いろいろな事情が複雑に絡み合っ ているのが実態ではないでしょうか。ただし、そういうことをきちんと決めてあげなけ ればいけないという、ある意味労働契約法の必要性は、こういうものを経時的にやれば やるほど強く感じるのが実態だと思います。 ○大西監督課長 私どものほうでも、今日紹介させていただいた事例の中でも、一つの ケースで2つ、3つの論点があるというのは当たり前の話です。ただ、委員におっしゃ っていただいた、何が問題なのかをよく見極めて解決策を提示していくのは非常に大切 なことだと思いますので、今後に問題状況の分析をもう少し掘り下げた資料を用意させ ていただきたいと思います。 ○須賀委員 先ほど岩出委員から、12頁の資料で「これは経営側について調べたもので、 労働組合側に尋ねたものはないのですか」と御質問がありました。一般的なケースでは、 常設の協議機関というものは、普通は労働組合は全部求めるものなのです。断るのは相 手なのです。たから、当然相手のほうに「ありますか、ありませんか」と聞くのが当た り前の話であって、労働組合に聞いたら、あります、ありませんは答えられるでしょう けれども、そのことも含めてその事情については御理解いただいていますよね。 ○岩出委員 いや、そうと思われていますが、昔の場合は労使協議機関に対する反発も あったと思っているのです。労使協議制度自体に反対した組合もありましたので、そう やって聞いているのですが。 ○須賀委員 なるほど。 ○岩出委員 あるかないかしかわからないのですが、制度というのは実は労使委員会に 関係するのです。例えば裁量労働制の労使委員会の場合の運用状況とか、選任手続きの 実態、あるいは労使協議会に他の組合があれば組合が出てくるのでしょうし、ない場合 はどう選ばれているとか、そういう調査は何か資料はあるのでしょうか。 ○大西監督課長 今日手元には用意していませんが、企画業務型裁量労働制の労使委員 会については労働基準監督署に届出がありますから、その設置数や対象労働者数などに ついては一定の資料がございます。 ○岩出委員 選ばれ方はどうですか。 ○大西監督課長 選ばれ方については直接の統計資料という形ではございませんので、 別の資料を当たってみたいと思います。 ○田島委員 厚生労働省のデータと連合のデータで極めて共通しているのは、一つは就 業規則についてです。就業規則は労働基準法で10人以上の事業場は作成を義務付けられ ているし、決めなければいけない項目は定まっているし、みんながきちんと見られるよ うになっていなくてはいけません。しかし、本人は全く知らないとか、知らされていな いという事例は多いわけです。労働基準法そのものは強行法規ですし、これは最低やら なければいけないものです。しかし、働いている本人が知らない現実があまりにも多す ぎる中で、そういう強行性を契約を考える場合にも配慮しないといけないのではないか。 いまでさえなかなか開示しないという形、あるいは本人たちが知らないうちに内容が変 わっているという事例も相談ではあります。就業規則問題については、これだけ法律で 定めているのに何で徹底していないのかということに対しては、検討されてきましたか。 いかがでしょうか。 ○西村分科会長 使用者の方はいかがでしょうか。先ほど田島委員から、労働組合の組 織がなかなか進まないのは組合に対する嫌悪もあるという話もありました。いま就業規 則は労働基準法できちんと決まっているのに、それを十分わかっていない、知っていな い人も少なくないと。このような御意見について経営者の側としてはどのように思われ ますか。いまでも労働組合に対して嫌悪感を持っている事業主がいるのか、という話も あります。それと就業規則の問題について、あまり認識していないのではないかという 話ですが、いかがでしょうか。 ○渡邊委員 当社の事例でしかわからないのですが、うちの会社も組織率が5割を割っ てしまうと困るので、会社側から労働組合に入ってくれと頼んでいるのがうちの会社の 事例です。そうでないと、過半数の代表者でなくなるため、やりにくいというのがいま の実情です。  就業規則の件ですが、当社の場合は社内のイントラネットのほうに全部入っています から、本人がアクセスすればいつでも見ることができるようになっています。ただ、法 律で決められているのだから当然やるべきだと思うし、それに対して労働者から求めら れたら開示するのは経営者の義務だと思っています。 ○原川委員 労働組合の組織率が低いというのは、嫌悪感がないとは言えないと思いま すが、それが主な原因かどうかということは、中小企業470万全体からすると、一概に 言い切ることはできません。ただ、いつも私は申し上げているように、中小企業という のは組織、特に中小零細などでは、組織的に整備されているという会社、例えば総務部 門がしっかりしているとか、そういった面での整備された企業というのは少ないことも あろうかと思います。  就業規則については、これは現在でも開示するというのが当たり前になったと思いま すので、こういったことについては経営者の不知、徹底不足もあるのではないかと思い ます。こういうことのPRをしていくべきではないかと思います。 ○田島委員 いまの点ですが、労働組合の組織率は嫌悪感だけで低いわけではなくて組 合の努力不足もあるだろうし、そういう要因もあるということで理解しておいてくださ い。全部そのことに押し付けようという趣旨ではありません。 ○須賀委員 せっかく使用者の方がたくさんお見えですので、特に団体での扱いのこと をお聞きしたいのですが、CSRとか、コンプライアンスを各団体がいろいろなところ で一生懸命おっしゃっています。会員にそれを徹底されていると思うし、私ども労働組 合の中でも、そういうことを自らチェックしろと、我々労働組合そのものもステークホ ルダーであり、その一端を担っているのだということで取り組んでいるのですが、法令 遵守とまでは大きく出ませんが、例えば就業規則を整備しましょうとか、直近のものを 監督官庁に届けましょうというような、会員に対する御指導をなさった御経験があるの かどうかをまずお伺いしたいと思います。  それから、これは監督をされる立場の方にお聞きしたいのですが、就業規則は一度届 ければいいということなのですが、先ほどの相談の事例でもありましたように、ものす ごく古い、実は先々代の昭和27年に届けた就業規則というのもあって、社長はもう2代 替わって3代目になっているというような就業規則もあるやに聞いています。そういう ことに関して、監督する立場でどのようにお考えになっているのでしょうか。 ○大西監督課長 就業規則については、当然労働基準法で改定していただいたら監督署 に届け出ていただくということで、それは現行と一致しているのが当然です。具体的に 監督等でどうやっているかと言いますと、基本的には労働条件の考え方ですので、集団 指導でやっていっています。事業所はたくさんありますので、悉皆で事業所に入って就 業規則は合っていますかとはできないので、基本的には集団指導でやっています。  もう一つは、通常事業運営されている企業において法律は知っていただいているとは 思うのですが、新しく事業を興したところについて、労働関係法令をあまりよく知らな い人が経営者になって、人をポンポンと雇っていくというケースも多いわけですので、 そういう方については新規に起業された方を対象とした、労働法制の中身を説明するサ ービスを事業としてやっていっています。やはり周知活動に力を入れていっているとい うのが現状としては中心になっております。 ○紀陸委員 個別紛争が非常に増えているのがいくつか示されているのですが、本当に トラブルの件数が増えているのか、あるいは相談しやすいから同じ人が何回も相談する のかとか、いろいろな事情があるのだと思うのです。電話相談に同じ人が何回か掛ける のを1件1件カウントしているのかもしれないし、ちょっとわからないと思うのです。  いずれにせよ、先ほどのお話で、平成14年度、平成15年度、平成16年度と相談件数 がすごい数だと思います。どのような事情で10万を超える単位で増えているのか、把握 するのは非常に難しいのだと思うのです。データ的にやるには、ここに平成16年度の内 訳が円グラフで出ているのですが、時系列的に各年遡ってもなんでしょうけれども、何 年かおきに、どういう事件が増えているのかとか、規模別にはどうなのかとか、労働者 の就業状況はどうなのかとか、あっせん申請の内容でもそうですし、助言・指導申出の 内容でもそうですが、少し前に遡って、こういうものが問題として新しく出ているとか、 割合として増えているとか、そうすると背景事情で納得できるのかという感じがします。 こんなに数が増えていくのは本来は少し不思議だと思います。本当にトラブル自体が多 くなっているのか、雇用の多様化でなっているのか、権利意識が強まっているから出て きているのか、組合の相談機能が落ちているからなのか、会社の苦情処理窓口が適切に 機能していないからなのか、いろいろな理由があるのだと思うのですが、それを調べる のは非常に難しいと思います。だから、ある程度データで取り得る円グラフなりを少し 遡って資料として出していただけますか。 ○大西監督課長 いまの御指摘には大変に難しい事項が含まれています。円グラフは御 用意できると思いますので、できる範囲ですぐに用意させていただきたいと思います。 その他の点につきましても、逐次分析を重ねて資料提出させていただきたいと思います。 ○紀陸委員 16頁の労働関係の民事事件の伸びもそうですが、どういう事件が増えてい るのかと。それから、先ほどの17頁の上の紛争相談件数と総合労働相談件数ですが、何 でこんなに増えるのだというのがあります。非常に不思議な感じがするのです、60万、 70万とそんなに増えるのかと、働いている人の数は同じですから。本当かなという感じ もしないではないのです。トラブル件数がそんなに多いのかというのはちょっと不思議 です。 ○松井審議官 最後の質問のところだけですが、ここで出てきている統計資料は個別労 働関係紛争の解決の促進に関する法律を平成13年に作って、そこで我が行政機関の出先 で、状況を把握し報告することになってから、初めてまともに集計が始まったのです。  そのシステムを国会で議論をしてつくるときに、すでにそういった事実が発生してい まして、それまでの基準行政ではそういった事案に十分に対処するシステムがないから という認識で作り上げていますから、いまの数字が多い少ないという話は別としまして、 間違いなく個々の人の労働に纏るいろいろな苦情や相談事が、いろいろな働き方の変わ り目の中で出ていたという事実がスタートにあることだけは押さえていただきたいと思 います。  伸びが大きいのは、そういうものができたので、いままで潜在化していた方が相談に 行けるようになったということで、触発したところはあるかもしれませんが、間違いな くベースとしてそういうものが増えてきている、そういう構造にあるということがスタ ートだということは言えると思います。そこをさらに掘り下げて、どちらの要因ですか というのは、なかなか調べづらいのではないかという気がします。 ○紀陸委員 実際に以前に遡れるものと、遡れないものというのはあるわけですね。 ○松井審議官 そうですね。 ○西村分科会長 ドイツで労働裁判制度がありまして、いまはもっと増えていると思い ますが、1年に大体60万件以上と言われています。日本の3分の2の国ですから、日本 で言えば90万件というレベルだと思うのです。日本で5,000数百万人の労働者がいて、 例えば民事の労働に関する通常訴訟で3,000件というレベルは圧倒的に少ない。これは チャンネルがないという証拠みたいなもので、個別紛争に関するあっせんや助言・指導 というのが、随分活用されてきているという背景には、潜在的な民事の紛争があるとい うのが大前提ではないかとは思います。これがどんどん増えるというのが、制度が整備 されてきて、だんだんそれが周知されてきて、そこへ行けば何とかなるんだということ が影響していると思いますが、潜在的に労働民事事件があるのではないかと思います。 ○山口委員 関連してですが、産業構造の変化だけではなくて、企業の置かれている、 社会的、経済的環境の変化が非常に大きく、急に紛争が出てきたということではなくて、 いままでも潜在的にあったことが、審議官がおっしゃったように訴え出るところが公に できたからというところもあります。いままでは企業と労働者の関係が比較的ウエット な労働契約というか、家族的な関係にあり、一つマイナス面があっても全体的に長期に 雇用されるとか、いろいろな面で総体的に契約が成り立っていたところがあります。と ころが企業の環境が大変厳しくなって、弱い立場の中小企業などでは、いままでのウエ ットな関係が保たれなくて、大変押し迫られたような状況になり、そうすると労働相談 でもありますように、なり振り構わずというか、こんなことまでやるのかというような 事象になってきていると思うのです。  紛争はいままでなかったわけではなくて、そのぐらいはあるのだろうなと我慢してい たところが、単に権利意識が高まったというだけではなくて、もう我慢していたら自分 自身の生活も成り立たないというように認識されてきた部分も、大きくあると思うので す。そういう意味からも、企業がウエットな関係を保てない、ドライにならざるを得な いというような状況になってきたら、ここでドライな労使の関係の中に、適切に当ては めるというか、そこをつなぐ法律が必要なのだというのは、まさしくこのデータで言わ れているところなのではないかと思います。  最初のほうに岩出委員が、「労働相談のときに何を根拠にして答えていらっしゃるので すか」という質問がありましたが、それがまさしくその部分で、紛争当事者の企業も大 変なエネルギーを使うところですので、それを回避する意味でも、今後も増加すると思 われる紛争を大きく削減するためにも、本当にきちんとした法律としての契約法が必要 だと今日の御説明で実感させていただきました。 ○須賀委員 岩出委員の質問に答えていなかったものがあったのですが、どうやって対 応しているのですかということですが、私どもも長年この労働相談を積み上げてきてい まして、一応のマニュアルを持っています。それから、地方で実際に答えているのは、 地労委の経験もあるアドバイザーを複数名置いていますので、その方々を中心に答える 体制を取っています。場合によっては事案ごとに弁護士、顧問弁護士あるいは連携を取 っている弁護士の方がいますので、弁護士に相談すること、あるいは弁護士を紹介する ことも含めて、相談の体制はきちんと取れていると考えています。 ○岩出委員 そうなりますと、連合の組合員に限らないわけですよね、そこから組織に つながっていくことはあまりないのですか、組合の組織化というか。 ○須賀委員 それは大いにあります。 ○小山委員 先ほど来の話で、特に労働相談をやっていてもそうなのですが中小企業で 働いている労働者からの相談が多いです。突然明日から来なくていいよとか、就業規則 はどうなっているのですかと聞いたら、ほとんどの場合はそんなものは見たことはあり ませんという、そういう相談者からの話があります。それから、先ほどあった労働組合 に対する嫌悪というのも、特に中小企業で非常に多いです。  そうすると、基本的に中小企業の事業主の皆さんに、契約の意識がない、労働者を雇 ってやっているのだという意識が非常にまだまだ強いわけです。そこで対等に労働条件 を決めようなどという意識は毛頭ないというのが、いまの実態だろうと思います。労働 組合の組織率の分野でいけば、その分野は1.2%しかないというのが現実です。  そこでお聞きしたいのは、そういう中小企業者の人が採用するときの契約に対する意 識とか、そこで就業規則等の労働基準法の最低限の遵守等に対して、その実態を調査さ れたようなデータはないでしょうか。 ○大西監督課長 意識調査ということですか。 ○小山委員 意識と実態の両面です。 ○大西監督課長 手元にありませんので、あるかないか調べてみたいと思います。 ○小山委員 なければやっていただきたいと思うのです。その基本的な契約の意識を持 っていただかないと、いつまで経っても紛争は増えるばかりだというのが、いまの実態 だと思います。ぜひそのような調査をお願いしたいと思います。 ○西村分科会長 小山委員のお話にもありましたが、就業規則について経営側として周 知徹底を図るというスタンスはおありになるのでしょうか。 ○原川委員 もちろんあります。それは我々事業主の団体としましても一生懸命、基準 法等の遵守は積極的に言っています。 ○渡邊委員 先ほどの小山委員の話と似ているかもしれませんが、10人以上の企業で就 業規則を出していない企業など、そのような統計はあるのですか。 ○大西監督課長 届出のない企業ということですか。 ○渡邊委員 何パーセントぐらいが届けていないのかとか、その辺のデータはあるので すか。 ○大西監督課長 ちょっと見てみます。 ○西村分科会長 もうだいぶ前ですが、中小企業における就業規則の研究というのがあ りましたが。 ○新田委員 36協定の届出はどうですかね。新人が入ってきます、オリエンテーション をやります。「労基法を知っていますか」と尋ねたところ、学校で労働基準法を勉強しま したと、ほとんどこの程度ですね。ということは、働く者も中小企業の経営者も、とも に学校で習っている程度であると。基本の基を習わずにきているところが、もともとに あるのです。それから、日本的な風土として契約の観念も疎いことがあると思います。  ところが世の中の変化で言えば、きちんと物事を決めないと進まないところにきてい ることから言えば、これからの議論になるのでしょうけれども、その必要性というのは 本当に大事なところだと思います。 ○松井審議官 いまの関係で先ほどからの話を整理しますと、労働基準法第15条という のがありまして、「労働条件の明示」ということで、労働契約を締結するときに労働者に 対してちゃんと明示しなさいと。ですから、法体系としては、個別の契約をして相手方 に示せという命令はかかっているわけです。そういう命令がかかっている法律があるの だけれども、知らないという不知が許されないことが一つなのです。そういう意味では、 基準法の中身をもっと周知することを、いままでもやってきましたが、これから個別化 する中でいままで以上に個々の方に浸透させることは要るかと思います。そういう意味 では行政も重要ですが、使用者側の方、特に契約するときに自分のほうから、法律があ るのだから個々の条件をしっかり言いましょうということをもっとやるということです。  そうなるとその話が飛び火するのは、例えばこれを義務化して、罰則をかけて周知と やるのか、労使が目覚めて、個別契約なのだから自分たちが主体的にということでやっ ていくか、そのような問題がすぐに出てくると思うのです。  就業規則については、そのような中で、中小では先ほど言われた総務部門の管理能力 等々も考えて、いまは10人以上でなければならないというか、作成し、行政官庁に届け なければならないとか、変更したときにも同じようにしなければならないというのは10 人以上としています。ここでザッと見ていただければわかると思うのですが、個別紛争 の起こっている中身は10人未満の企業でたくさんあります。そうすると、そこは就業規 則は義務付けられていないところもあります。また、労働組合の組織率も規模別からい くと、規模が小さくなればなるほどできていません。ですから、いろいろなものが総合 的に作用しまして、いま言った状況があるわけです。  それを少しでも、ある意味で労使が個別の契約を自覚して、条件設定をきちんとして いく考え方を変える動機付けとして、新しいルールづくりとか、そういう視点で何か要 るのではないかと捉えていただけないかと思うのです。  先ほどあった就業規則も、使用者が定めるのですが、行政機関としては、使用者が定 め変更したときに届け出ていただくのです。変更しろとはなっていないのです。先ほど 言った昭和27年の就業規則を見ますと、その事業体がこれでずっとやっていると言えば、 そのままなのです。経営者が経営形態を改めて、労働条件を変えることの痛切性を感じ て、それを改めたときに変更すると、我々が変えているのだということがわかるという 法体系なものですから、その範囲でしか指導できないところもあるのです。そういう意 味では、こういった労働条件設定についての主体的な動きは労使が話し合って、ある意 味では使用者のほうもしっかりリードしていただくことをやっていただかないと、法律 作りました、罰則つけましたから世の中はうまくいきますというものではないと思って います。 ○西村分科会長 今日のお話を伺っていますと、労働紛争は多様な原因で生じています から、労働契約の問題だけではないと、もちろん労働基準法や労働組合法の問題もある と思います。労働組合が団体交渉できちんと労働条件の規制をやればそれで済むような ところもたくさんあるかもしれません。労働基準法をきちんと承知させて、きちんと効 果的に実行させていくことで、多くの紛争がなくなることも確かだろうと思います。  他方で、須賀委員が出された相談事例を見ていても、募集・採用から配転・出向、転 籍、損害賠償ですね。労働基準法の問題と重ならないところがたくさんあるわけであり まして、労働関係にかかわるルールの必要性、明確化は必要ではないかということで、 概ね各委員の共通したところではなかろうかと思います。  次から、労働契約の成立から終了にわたる個別的な項目について、少し掘り下げた議 論をしていきたいと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。 ○紀陸委員 何となく新しい法律を作る必要性が前提になっているということはうかが えるのですが、私どもは、まさにデータにありましたように現行法ですら十分に周知徹 底されていない。先ほど須賀委員が言われたように、私ども会員企業の外のところで問 題が起きている実態がはっきり出ているわけです。ですから、実はいまの基準法、いま の契約法をある程度常識的なところで理解できるところは、そんなに変なトラブルは起 きていないのではないかと思うのです。  法が不備だからトラブルか起きているというのではなくて、常識的なこと、いきなり 呼びつけて首を切るという甚だしいものもあります。そのようなことは普通の会社であ ればやらないわけです。普通の会社ではやらないようなことをやっている会社があるか ら、トラブルとして出てくるわけです。それは法を新しく作ることによって本当に減る のかというとそうではないと思います。そういう部分があるのは我々は否定しませんが。 いまの基本的なことすら知らない事業主がたくさんいるわけです。そこからトラブルが 起きているとすれば、新しい法律を作ることによってトラブルが減ると考えることはで きにくいわけです。  いまの基準法でも、常識的なところでやっていれば深刻な個人と会社のトラブルは起 きないで済むのだと思うのです。まずそれをやってということのほうが私は大事だと思 っているのです。確かに300人以上のところにも問題は起きていますが、問題はそれ以 外のところで非常に多いと。それで法律を作ってやろうというのは本末が転倒ではない かという感じがします。 ○西村分科会長 個人的な話ですが、個別紛争の問題に関して京都で労働局のあっせん の委員をやっていまして、労働基準法に違反していれば、これは監督署が出て行って是 正することで基本的に終わってしまいます。そういうケースもあるわけで、それがない とは言いません、確かにたくさんあるのだろうと思います。  ところが、ああいったところから出てきている問題というのは、まさに労働基準法で は対処できない問題なのです。今日挙げられたケースも、不利益変更の問題、労働契約 の変更の問題といったことがすごく多いのです。だから、基準法の徹底が大きな柱であ ることは否定できないと思いますが、それで足りるのかと言えば、そうではないのかと 思います。  例えば、33頁のケースですが、就業規則の不利益変更に関する事例ですが、退職金の 約7分の1の退職金しか支給されない。使用者のほうは労働基準法で言われていること は全部やったと。労働者代表に事情を説明したし、監督署にも届け出たと。このように 言います。そうするとそれで済むのかというと。そういう問題が典型的に出てきている わけで、必要性がないとは言えないと思います。 ○紀陸委員 常識ある企業は7分の1までは下げないですね。一切契約法の改正がノー だと言っているのではなくて、やるのであれば条件付きで考えていまして、決して入口 からノーだと申し上げているわけではないです。 ○西村分科会長 労働関係にかかわるルール、契約的なルールの必要性は否定できない のではないかと思います。 ○紀陸委員 できるだけシンプルに、シンプルでないと徹底しないのです。複雑なもの では駄目です。いまの法体系も全然理解されていないところがたくさんあるので、でき るだけシンプルに任意規定で。 ○西村分科会長 時間をオーバーしているので、これで終わらせていただきたいと思い ます。次回については先の特別国会で成立した、労働時間等の設定の改善に関する特別 措置法に基づく政省令や指針についての議論も含めて、さらに労働契約法にかかわる議 論を深めていきたいと思います。 ○大西監督課長 次回の日程ですが、11月25日(金)午後5時から7時までで、場所 は17階の厚生労働省専用18、19会議室です。 ○西村分科会長 それでは本日の分科会をこれで終了します。本日の議事録の署名は田 島委員と谷川委員にお願いいたします。お忙しい中ありがとうございました。                     (照会先) 労働基準局監督課企画係(内線5423)