医薬食品局監視指導・麻薬対策課
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違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)対策のあり方について
(提言:要旨)
1. | 違法ドラッグの現状
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2. | 違法ドラッグとは
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3. | 現行制度における規制と問題点
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4. | 違法ドラッグ規制の具体的方策
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5. | その他の違法ドラッグ対策
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平成17年11月25日
(提言)
脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会
はじめに
「脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会」は、平成17年2月22日に設置され、これまで6回にわたり、いわゆる脱法ドラッグの現状やその特徴を踏まえながら、その規制方策や乱用防止のための啓発活動のあり方等について議論を重ねてきた。今般、これまでの議論、検討結果をとりまとめたので、ここに報告する。 なお、従前の「脱法ドラッグ」という呼称は、これらが薬事法違反である疑いが強いにもかかわらず、法の規制が及ばないかのような誤ったメッセージを与えかねないため、本検討会では、これを「違法ドラッグ」と変更すべきとの結論に達した。ただし、これまで脱法ドラッグと呼ばれていたものと異なるとの誤解・混乱を生じないよう、当面は「違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)」と括弧書きを付すこととした。そこで本報告書でも、これまでの脱法ドラッグという呼称を改め、違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)(以下単に「違法ドラッグ」と表記。)の呼称を用いている。 |
1. | 違法ドラッグの現状 人為的合成か天然物由来かを問わず化学物質には、麻薬等と同様に多幸感、快感などの効果を期待して摂取されるものがある。それらの中には、やがて乱用に伴う保健衛生上、社会上の危害が顕著となり、また、依存性、精神毒性等の有害性が解明され、麻薬に指定されるなど法的な規制がなされるものもある。(例えば、昭和45年(1970年)に麻薬に指定されたLSD、同じく平成元年(1989年)のMDMAなど。) 違法ドラッグは、平成10年頃から一部の薬物マニアの間で流行し始めたと推定され、現在、以下のような状況にある。
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2. | 違法ドラッグとは
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3. | 現行制度における規制と問題点 これまで違法ドラッグへの規制対応は、麻向法と薬事法の2つの法律により行われており、その具体的な規制内容と問題点は以下のとおりである。
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4. | 違法ドラッグ規制の視点 上記3.に示した現行制度における規制とそれらの抱えている問題点を踏まえ、今後、違法ドラッグ対策の強化を進める上で、次の事項を考慮して具体的な方策を検討する必要があるものと考えられる。
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5. | 違法ドラッグ規制の具体的方策の検討 こうした視点に立ち、本検討会において違法ドラッグ規制の具体的方策につき、各分野の専門的観点から議論を重ねたところ、おおむね以下のような意見に集約された。
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6. | 違法ドラッグ乱用防止のための啓発活動 違法ドラッグの乱用防止を包括的に推進するためには、供給側に対する規制と併せて、違法ドラッグに手を出しやすい層に対して啓発を図っていく必要があり、保健教育、乱用予防等の観点から議論がなされた。
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7. | その他の対策 5.及び6.に示した対策の実効性を高めるため、積極的に取り組むべきその他の対策としては以下が挙げられる。
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おわりに
今般、違法ドラッグの乱用が青少年を中心に拡大している現状にかんがみ、早急に対応を検討し、措置すべきとの認識から、違法ドラッグの規制についての具体的方策、啓発活動のあり方等をここに提言としてとりまとめた。 今後、本提言を踏まえ、政府において、法的措置を含めた違法ドラッグ対策を検討することとなるが、本検討会の成果が十分に活かされることを期待するとともに、引き続き違法ドラッグを含む薬物乱用対策について、国と都道府県等の地方自治体がこれまで以上に連携して取り組んでいくことを切に要望するものである。 |
(別添1)
(敬称略 五十音順) |
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用語解説
麻薬:
中枢神経に作用して精神機能に影響を及ぼす物質のうち、強い依存性を有し、乱用された場合に、保健衛生上の危害及び社会的な弊害(有害作用)を生じるおそれの強いものが、麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)で「麻薬」として指定されている。大別すると、次のようなものがある。
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麻薬原料植物:
麻薬として指定された物質を自然に生成する植物(維管束植物の他、きのこ類等の菌類、コケ類、藻類等を含む。)のうち、麻薬成分を製造(抽出)する基原となり得るものが、麻薬及び向精神薬取締法おいて「麻薬原料植物」として指定されている。 指定された植物は、その栽培が原則禁止されるほか、法の規定により、それ自体も麻薬として輸出入、譲渡・譲受、所持、使用等が規制されることとなる。 なお、大麻草及びけしについては、それぞれ個別の取締法*が制定されているため、麻薬及び向精神薬取締法に基づく「麻薬原料植物」には指定されていない。
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向精神薬:
中枢神経系に作用して精神機能に影響を及ぼす物質のうち、麻薬ほど強くはないが依存性があり、乱用されるおそれがある、又は乱用された場合に有害作用を生じるおそれのあるものが、麻薬及び向精神薬取締法で「向精神薬」として指定されている。 向精神薬には、医療分野で幅広く使用される有用なものがあり、また、乱用された場合の有害性の程度も様々であるので、医療上の有用性と乱用された場合の危険性を物質毎に勘案し、第1種向精神薬、第2種向精神薬及び第3種向精神薬に区分し、これら区分に従って段階的な規制としている。 |
依存性:
依存とは、生体と物質(薬物)との相互作用の結果として生じる精神的ときに身体的な状態をいい、その物質の精神的な効果を体験するために、当該物質を連続的あるいは周期的に摂取することへの強迫(欲求)を常に伴っている行動等によって特徴づけられる。 依存性とは、物質が有する依存を形成する性質のことで、依存形成性ともいう。依存性が「強い・弱い」というのは、依存をより生じやすいかどうかを表したものであって、依存性が弱いとされる物質でも、乱用によりいったん依存が形成されると離脱することは容易でない。 |
精神毒性:
薬物の連用によって正常な精神機能、現実認識に障害を来す特性。どのような精神障害を生じるかは薬物によって異なり、例えば、幻覚性麻薬ではパニック障害や不安、大麻では無動機症候群や思考力低下等が知られている。 我が国において最も問題となっているのは、覚せい剤(メタンフェタミン)に起因する、幻覚や被害妄想等を伴う精神障害であり、日常生活への適応を困難にするのみならず、ときに衝動的に反社会的な行動に至る場合があり、通り魔的な殺傷事件等、重大な社会的危害が発生している。 |
医薬品:
薬事法(昭和35年法律第145号)第2条第1項において、「医薬品」とは次のいずれかに該当するものとされている。
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無承認無許可医薬品:
製造等*を行い、又は輸入した医薬品を販売又は授与することを、薬事法上「製造販売」といい、同法第12条により、業として医薬品の製造販売を行うには、厚生労働大臣の許可を受けなければならないとされている。
これらに違反する医薬品を総称して、「無承認無許可医薬品」という。 なお、医薬品を一般に対し販売又は授与するには、薬局又は医薬品販売業として都道府県知事の許可を受けなければならないとされている(同法第24条他)。 薬事法で規定する医薬品(「医薬品」の項参照。)には、承認や許可を受けることが想定されないようなものも含まれ、違法ドラッグもそのひとつであるが、医薬品全体の安全性の確保を図る観点から、従来より薬事法に基づき、そうした製品の流通を取締り、市場から排除する措置が講じられてきている。 |
罪刑法定主義:
ある行為を犯罪として処罰するためには、犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を、予め法律において明確に規定しておかなければならないとする原則であり、憲法第31条、第39条前段、第73条第6号ただし書により規定されている。 罪刑法定主義より派生する諸々の刑法理論のうち、違法ドラッグ対策の検討においては、特に、次の2つの原則に留意すべきとされた。
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