募集・採用について |
採用内定について |
労働条件の明示について |
試用期間について |
配置転換について |
出向・転籍について |
人事について |
労働契約に伴う合意や義務について |
○ | 募集・採用について |
1 | 新規大学卒・大学院卒を採用内定した企業のうち、通年採用制を実施している企業は8.9%、学校名不問採用を実施している企業は43.2%である。(厚生労働省「雇用管理調査報告」(平成16年)) |
・ | 採用方法別企業数の割合(複数回答 単位:%)(新規大学卒・大学院卒を採用内定した企業を対象に集計) |

2 | 平成15年の1年間に中途採用を行った企業は全体の71.2%に上り、管理職、事務職、技術・研究職では企業規模が大きいほど、現業職では企業規模が小さいほど、中途採用を行った企業割合が多くなっている。(厚生労働省「雇用管理調査報告」(平成16年)) |
・ | 中途採用の実施状況(単位:%) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
3 | 募集・採用に関する民事上の個別労働紛争に関する相談件数は増加傾向にあり、平成16年度における採用に関する相談件数は1,882件、募集に関する相談件数は1,163件に上る。(厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ) |
・ | 募集・採用に関する民事上の個別労働紛争の相談件数 |

・ | 募集・採用に関する助言・指導申出受付件数 |
![]() (単位:件) |
(注) | いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。 |
※ | 労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争は、あっせんの対象とはならない。 |
4 | 募集・採用に関する紛争の事例としては、例えば、次のようなものがある。 |
【採用過程の補償に関する事例】 2か月間に8回の面接を繰り返した後に不採用とされたことについて、応募者が、面接打ち合わせ時間に対する補償や慰謝料を求めたもの。 会社側は、当初の応募者の説明(自己アピール)に事実と相違があったことから最終的に不採用となったものであり、当初から採用しないつもりであったわけではないと説明していた。 |
【裁判例:使用者には採用の自由があるとされた例】 労働者は、大学在学中に社員採用試験に合格し、大学卒業と同時に会社側に3か月の試用期間を設けて採用された。 会社側は、労働者が、採用試験の際に提出を求めた身上書の所定の記載欄に虚偽の記載をし、または記載すべき事項を記載せず、面接試験における質問に対しても虚偽の回答をした(具体的には、学生時代に学生運動に関与した等の事実を秘匿した)ことを理由として、試用期間の満了直前に、本採用を拒否する旨の告知をしたもの。 判決では、「憲法は、思想、信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に、他方、22条、29条等において、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ、企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであって、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない」とされた。(三菱樹脂事件 昭和48年最高裁判決) |
○ | 採用内定について |
1 | 新規学校卒業者(新規高卒者以外)の採用内定を行っている企業は全体で23.9%。企業規模300〜999人の企業では67.3%、1000〜4999人の企業では82.7%、5000人以上の企業では94.7%である。(厚生労働省「雇用管理調査報告」(平成16年)) |
・ | 新規高卒者以外の新規学校卒業者の採用内定状況別企業数割合(単位:%) |

2 | ここ5年間に採用内定取消を行った企業は全体で7.3%、企業規模1000人以上の企業では21.3%である。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | ここ5年間に採用内定取消がある企業の割合(単位:%)(無回答を除く集計) |

・ | 採用内定取消の理由(複数回答 単位:%)(採用内定取消がある企業を対象に集計) |

3 | ここ5年間に採用内定取消を行った企業のうち採用内定取消事由の定めのある企業は、全体で24.6%、企業規模1000人以上の企業では80.9%である。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 採用内定取消事由の定め(単位:%)(採用内定取消がある企業を対象に集計) |

・ | 定められている採用内定取消事由の内容(複数回答 単位:%)(採用内定取消事由を定めている企業を対象に集計) |

4 | 採用内定者に対してあらかじめ採用内定取消事由を知らせている企業は、新規学卒者の場合は34.2%、中途採用者の場合は25.5%である。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
5 | 採用内定取消に関する民事上の個別労働紛争相談件数は、増加傾向にあり、平成16年度においては、1,233件に上る。(厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ) |
・ | 採用内定取消に関する民事上の個別労働紛争に関する相談件数 |

・ | 採用内定取消に関する助言・指導申出受付件数 |

・ | 採用内定取消に関するあっせん申請受理件数 |
![]() (単位:件) |
(注) | いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。 |
6 | 採用内定に関する紛争の事例としては、例えば、次のようなものがある。 |
【採用内定の有無について意見の食い違いがあった例】 【採用内定により前職を退職した例】 前職在職中に採用確定との連絡を受け、雇用契約書(仮)を交わしたところ、約2週間後に経験不足を理由として社長の意向により採用が取り消された。しかし、採用内定取消時には既に前職の退職を決めていたことを理由に、採用内定者が経済的・精神的な損害に対する補償金を求めたもの。 会社側は、雇用契約書(仮)を交わした段階ではまだ採用内定を行ったものではなく、その後の社長面接により採用を決定することを知らせていたと主張した。 |
【使用者が採用内定当時知っていた事由により採用内定取消となった例】 【採用内定時には、採用内定が取り消され得る事由が明示されていなかった例】 3月上旬の採用面接で採用の意思表示を受け、同月、4月中旬に勤務を開始する旨の雇用契約を締結して社会保険や賃金の支払いについて質問していたところ、勤務開始日前日に勤務開始を保留とされ、4月末に「資格不適当」、「職務に対する姿勢に積極性が不足」との理由で採用内定が取り消された。 採用内定者は、学歴、職歴などは面接時に明らかにしており、契約を交わしてから1ヶ月以上経過してから問題があるとされることや、全く勤務していないのに能力不足であるとされることに納得できないため、経済的・精神的な損害に対する補償を求めたもの。 |
【採用内定取消がなされた際に、その採用内定取消事由に食い違いがあった例】 【採用内定時には、採用内定が取り消され得る事由が明示されていなかった例】 準看護師である労働者が面接を受け、その場で採用内定として約1か月後に勤務を開始することとされた。その際、資格について確認したが、正看護師・准看護師は関係なく経験を重視することを明言された。 しかし、2週間後に連絡があり、医師との協議の結果、准看護師であることを理由に採用内定を取り消すこととなった旨の通知を受けた。このため、採用内定者は、会社側の主張する理由は前言と異なり納得できないとして、経済的・精神的な損害に対する補償を求めたもの。 会社側は、准看護師であることが理由ではなく、前職の勤務先に問い合わせたところ、この労働者がまだ退職していないという回答であったため、トラブルを避けるために採用を見合わせたと主張した。 |
【裁判例:採用内定取消に当たって、解約権の濫用は許されないとされた例】 【裁判例:会社側が採用内定当時知っていた事由による採用内定取消が認められなかった例】 翌年3月に大学を卒業予定の学生が、大学の推薦を受けて求人募集に応じ、7月に筆記試験及び適性検査を受けて身上調書を提出した。学生は試験に合格し、会社側の指示により、数日後に面接試験及び身体検査を受けた上で、会社側から採用内定の通知を受けた。この学生は、会社側からの求めに応じて、所要事項を記載した誓約書を提出し、就職を予定していたところ、卒業直前の翌年2月に突然会社側から採用内定取消しの通知を受けた。 会社側は、学生がグルーミーな印象なので当初から不適格と思われたが、それを打ち消す材料が出るかもしれないので採用内定としておいたところ、そのような材料が出なかったと主張した。 判決では、「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」、「グルーミーな印象であることは当初からわかっていたことであるから、上告人(会社側)においてその段階で調査を尽くせば、従業員としての適格性の有無を判断することができたのに、不適格と思いながら採用を内定し、その後右不適格性を打ち消す材料が出なかったので内定を取り消すということは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができず、解約権の濫用というべき」とされた。(大日本印刷事件 昭和54年最高裁判決) |
○ | 労働条件の明示について |
1 | 企業が採用内定時に採用内定者(新規学卒者)に労働条件を知らせる方法は、就業規則の配布が26.8%、労働条件を書いた説明書の配布が41.2%、その他口頭で説明が67.8%となっている。何らかの書面(就業規則・説明書のいずれか又は双方)を配布している企業は全体の59.6%、書面を配布していない企業は40.4%になる。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」より再集計(平成16年)) |
・ | 採用内定時に労働条件を知らせる方法(複数回答 単位:%)(無回答を除く集計) |

・ | 採用内定時・就業開始時の書面の配布の有無(単位:%)(無回答を除く集計) |

※ | 「書面あり」は就業規則、説明書のいずれか又は双方を配布しているもの |
・ | 採用内定時・就業開始時を合わせた書面の配布の有無(単位:%)(無回答を除く集計) |

2 | 労働条件の明示に関する紛争の事例としては、例えば、次のようなものがある。 |
【実際の労働条件が募集時に示された労働条件を下回っていたと労働者が主張した例】 賞与について、求人票には「前年度3か月分」と示されていたが、実績評価の結果、実際の夏季賞与は9万円であった。労働者は、求人票等では実績評価をすることが示されていなかったことを理由に、求人票に示された3か月分(のうち夏季賞与分1か月分)と9万円との差額を求めたもの。 会社側は、求人票で示したのはあくまで前年度の実績であり、支給額を保証したものではないと主張した。 |
【入社時に明示された労働条件を労働者が主張した例】 【明示の内容が問題となった例】 7年前に入社した労働者が自己都合退職により退職したところ、退職金の金額が入社時に説明を受けた金額よりも大幅に少なかったとして、差額の支払いを求めたもの。 労働者は、入社時に、退職金は賃金×勤続年数であるとの説明を受け、その旨の資料を受け取ったと主張している。 一方、会社側は、労働者の入社1年前に退職金制度を改定し、退職金は賃金×一定率×勤続年数になっており、その旨は規定に明示され、社員はいつでも閲覧可能になっている。労働者の入社時にもそのような説明を行ったはずであり、労働者に旧規定に基づく資料を渡したことを示す資料は見つからなかった、と主張した。 |
○ | 試用期間について |
1 | 試用期間を定めている企業の割合は73.2%であり、そのうち、3か月程度よりも短く設定している企業は86.5%、6か月程度よりも短く設定している企業は99.1%となっている。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 採用された従業員に対する試用期間の有無(単位:%) |

・ | 試用期間の長さ(単位:%)(試用期間がある企業を対象に集計)(無回答を除く集計) |

2 | 試用期間がある企業のうち、これを就業規則において定めている企業は71.1%、特に文書等の規定で設けているわけではない企業は19.6%である。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 試用期間の規定の形式(複数回答 単位:%)(試用期間がある企業を対象に集計) |

3 | あらかじめ労働者に試用期間中の解雇事由を通知している企業は43.5%であり、本採用を拒否する事由を通知している企業は36.2%となっている。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 試用期間に関し雇入れの際に通知する事項(複数回答 単位:%)(試用期間がある企業を対象に集計) |

4 | 試用期間終了時の本採用拒否の有無についてみると、本採用しないことがあるが、ここ5年間に事例はない企業が58.0%となっている。一方、本採用しないことがあり、ここ5年間に事例がある企業は13.1%となっている。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 試用期間終了時の本採用拒否の有無(単位:%)(試用期間がある企業を対象に集計) |

5 | 試用期間中の賃金についてみると、本採用になる際に賃金を昇給させる、または手当などが増える企業は、全体の35.3%である。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 試用期間から本採用になる際の変化(複数回答 単位:%)(試用期間がある企業を対象に集計) |

6 | 試用期間に関する紛争の事例としては、例えば、次のようなものがある。 |
【試用期間であることを労働者が知らなかった例】 【試用期間の長さ、延長が問題となった例】 期間の定めのない契約で雇い入れられた労働者が、入社して3か月が経過した時点で、「1か月試用期間を延長し、この間の勤務状況が不良であれば解雇を受け入れる」旨の誓約書への署名を求められた。就業規則には3か月間を試用期間とする旨の規定があるが、それまで労働者は、試用期間が設定されていることを知らなかった。 労働者は、上記の誓約書には署名をしたが、さらに1か月後、再度同様の書類に署名を求められた。労働者が納得いかずにこれを拒否したところ、合意退職扱いとされ、これにより経済的な損害を受けたとして補償金を求めたもの。 会社側は、労働者本人が就業規則に記載されている試用期間の定めをおそらく知らなかったということを認めた上で、改善の兆しはあるものの能力不足であるので試用期間の延長を申し入れたところ、労働者がこれを拒否したのであるから解雇ではないと主張した。 |
【試用期間中に経費削減を理由として解雇された例】 労働者は、期間の定めのないパート社員として採用された。採用時に交付された労働条件通知書には、試用期間が3か月であることが明記されていた。 ところが、採用2か月後に経費削減を理由として解雇されたため、労働者は納得がいかないとして慰謝料を請求したもの。 会社側は、解雇理由が労働者の勤務状況等ではなく会社全体の経費削減であることを認めた上で、試用期間中であり、解雇についての裁量権は会社にあると考えていると主張した。 |
【裁判例:試用期間中は本採用後に比べて広い範囲の解雇の自由が認められるとされた例】(3頁と同一の事件) 労働者は、大学在学中に社員採用試験に合格し、大学卒業と同時に会社側に3ヶ月の試用期間を設けて採用された。 会社側は、労働者が、採用試験の際に提出を求めた身上書の所定の記載欄に虚偽の記載をし、または記載すべき事項を記載せず、面接試験における質問に対しても虚偽の回答をした(具体的には、学生時代に学生運動に関与した等の事実を秘匿した)ことを理由として、試用期間の満了直前に、本採用を拒否する旨の告知をしたもの。 判決では、「(試用期間中に労働者を不適格と認めたときは解約できる旨の)解約権の留保は、大学卒業者の新規採用にあたり、採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他上告人(会社側)のいわゆる管理職要員としての適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行ない、適切な判定資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされるものと解されるのであって、今日における雇傭の実情にかんがみるときは、一定の合理的期間の限定の下にこのような留保約款を設けることも、合理性をもつものとしてその効力を肯定することができるというべきである。それゆえ、右の留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきもの」とされた(三菱樹脂事件 昭和48年最高裁判決)。 |
○ | 配置転換について |
1 | 配置転換を定期的に行う企業は全体の3.4%、定期的ではないが行う企業は全体の32.8%であり、計36.2%の企業が配置転換を行っている。企業規模1000人以上の企業では「定期的に行う」割合が46.9%となっている。 配置転換の目的としては、「従業員の処遇・適材適所」が70.1%、「異動による組織の活性化」が62.5%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 配置転換を行う企業(単位:%) |

・ | 配置転換の目的(複数回答 単位:%)(配置転換を行う企業を対象に集計) |

2 | 配置転換の発令に先立って、対象者本人に意向打診を行う企業は52.1%、一定の場合は行うことがある企業は26.8%であり、計78.9%の企業が何らかの場合に意向打診を行っている。 対象者本人に意向打診を行う場合としては、転居を伴うときが83.8%、職種限定社員や勤務地限定社員に予定外の配置転換をしようとするときが70.1%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 配置転換の発令に先立っての対象者本人への意向打診の有無(単位:%)(配置転換を行う企業を対象に集計) |

・ | 配置転換の対象者本人への意向打診を行う場合(複数回答 単位:%)(何らかの場合に意向打診を行う企業を対象に集計) |

3 | 組合員の配置転換につき、同意、協議等の何らかの関与を行っている労働組合は73.8%である。(厚生労働省「労働協約等実態調査報告」(平成13年)) |
・ | 一般組合員の配置転換についての労働組合の関与(単位:%) |

4 | 職種限定社員の予定外の職種への配置転換がある企業は25.8%、勤務地限定社員の予定外の地域への配置転換がある企業は14.0%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 予定外の職種・地域への配置転換の有無(単位:%)(配置転換を行う企業のうち、職種限定社員については職種限定社員がいない企業を除き、勤務地限定社員については勤務地限定社員がいない企業を除き、集計) |

5 | 転居を伴う配置転換(転勤)についてみると、全体では、転勤がほとんどない又は転勤が必要な事業所はない企業が65.0%となっている。しかし、企業規模1000人以上の企業では、正規従業員のほとんどが転勤をする可能性があるものが54.9%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
6 | 転勤のルールについて、就業規則で定めている企業は48.7%。一方、慣行であり特に文書の規程等はないとする企業は32.9%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 転勤のルールの形式(複数回答 単位:%)(転勤のある企業を対象に集計) |

7 | 転勤の対象者選定に当たって考慮する事項については、本人の健康状態が58.1%、親等の介護が45.1%となっている。また、転勤の実施に先立って、対象者本人に意向の打診を「必ず行う」「行う場合がある」企業が78.8%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 転勤の対象者選定に当たって考慮する事項(単位:%)(転勤のある企業を対象に集計) |

・ | 転勤の実施に先立っての対象者本人への意向打診の有無(単位:%)(転勤のある企業を対象に集計) |

8 | 配置転換に関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出受付件数、あっせん申請受理件数は増加傾向にあり、平成16年度の相談件数は5,393件に上る。(厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ) |
・ | 配置転換に関する民事上の個別労働紛争相談件数 |

・ | 配置転換に関する助言・指導申出受付件数 |

・ | 配置転換に関するあっせん申請受理件数 |
![]() (単位:件) |
(注) | いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。 |
9 | 配置転換に関する紛争の事例としては、例えば、次のようなものがある。 |
【職種の限定が問題となった例】 事務職として採用され、これに1年半にわたって従事していた労働者が、現場業務であって重労働である配架作業に異動とされたことについて、契約に反しているとして、事務業務担当への再異動を求めたもの。 会社側は、社内で事務職と現場職の区別はしておらず、適材適所に配置転換していると主張した。 |
【勤務地の限定が問題となった例】 親会社から子会社に転籍するに当たり、妻の介護のため定年まで通勤時間約10分のA出張所で勤務できるという約束で転籍した労働者が、通勤時間1時間程度のB工場への異動を通告された。労働者は、妻及び本人の体調から配置転換は受け入れられないとして、A出張所での定年までの勤務又は補償金の支払いを求めたもの。 会社側は出張所の人心一新、取引業者との不明朗な関係の解消、顧客の信頼回復から転勤は絶対必要であると主張している。 会社側は、最初は通勤時間1時間半程度の本社勤務を内示したが、本人と妻の健康上の理由で転勤できないとの申し出を受け、医師の診断書を踏まえて主治医にも話を聞き、通勤1時間程度のB工場勤務を命じたものであり、十分な配慮をしていると主張した。また、就業規則に転勤の根拠規定があり、A出張所から異動させない約束をした事実はないと主張した。 |
【労働者の家庭の事情・職業設計が背景にある例】 【労働者が配置転換の理由の説明を求めた例】 総務部門に配属されたがほとんど仕事がなく、上司から専門知識を生かせる仕事を探すから配置転換に応じてもらいたいと言われ、同意した。しかし、その後、条件に合う配置転換先がないためパソコンの単純な入力業務を行う部署への異動を命じられた。同センターでの勤務は、子どもの保育園の送り迎えに支障を来たし、また、労働者の持つ専門知識を生かせる部署は他に多くあり業務の必要性や人選で正当性がないとして、専門知識を生かせる部署への再配置を求めたもの。 労働者は、再三文書で異動の理由説明や代替案の検討を求めたが、会社からは返事がなかったとしている。 |
【裁判例:配置転換命令権の濫用は許されないこと、濫用の判断基準が示された例】 労働者は、全国15か所に事務所・営業所を有する会社に入社した後、大阪、神戸の事務所に勤務していた。その後、広島営業所への転勤を内示されたが、母が高齢(71歳)であり、保母をしている妻も仕事を辞めることが難しく、子供も幼少である(2歳)という家庭の事情により転居を伴う転勤には応じられないとして、これを拒否した。会社側は他の労働者を広島に転勤させ、その後任として当該労働者に名古屋営業所への転勤を内示した。労働者がこれを同様の理由により拒否したところ、本人の同意が得られないままに転勤が発令された。労働者はこれに応じなかったため、就業規則所定の懲戒事由に該当するとして懲戒解雇された。 判決では、「転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することは許されないが、当該転勤命令について業務上の必要性が存しない場合、または業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではない」とされた。(東亜ペイント事件 昭和61年最高裁判決) |
○ | 出向・転籍について |
1 | 出向者の送り出し又は受け入れを行なっている企業は全体の27.2%、企業規模1000人以上の企業では88.4%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 出向への関わり方(単位:%) |

2 | 出向のルールについて、就業規則で定めている企業は47.0%であり、特に文書の規程はないとしている企業は32.2%である。文書で出向のルールを定めている企業においては、出向中の労働条件について定めている企業は35.1%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 出向のルールの形式(複数回答 単位:%)(出向者を出している企業を対象に集計) |

・ | 出向の規程で定められている事項(複数回答 単位:%)(文書で出向ルールを定めている企業を対象に集計) |

3 | 出向期間の長さについては、ケースによりまちまちで一概にいえないとする企業が42.4%である。具体的な期間を定めている企業では、3年程度とする企業が16.7%、1年程度とする企業が16.1%であった。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 出向期間の長さ(単位:%)(出向にかかわっている企業を対象に集計) |

4 | 出向者の賃金水準については、出向元の賃金水準とする企業が82.0%である。そのうち、出向元の賃金水準が出向先よりも高い場合の差額について、出向元企業が全額又は一部負担しているのは55.0%となっている。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 出向者の賃金水準(単位:%)(出向にかかわっている企業を対象に集計) |

・ | 出向元の賃金水準が出向先よりも高い場合の差額負担(単位:%)(出向元の賃金水準で出向を行っている企業を対象に集計) |

5 | 出向をすることとなった従業員に対して事前に意向の打診を行う企業は68.2%である。 事前に意向の打診をする企業のうち、本人の同意がなければ出向を行なわないとする企業は52.9%、出向条件などでできる配慮は行うが、同意が得られなくとも出向させるとする企業は33.1%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 本人への事前の意向打診の有無(単位:%)(出向者を出している企業を対象に集計) |

・ | 本人の意向の尊重の程度(単位:%)(意向打診をする企業を対象に集計) |

6 | 組合員の出向につき、同意、協議等の何らかの関与を行っている労働組合は70.7%である。(厚生労働省「労働協約等実態調査報告」(平成13年)) |
・ | 一般組合員の出向についての労働組合の関与(単位:%) |

7 | 転籍の送り出し又は受入れを行っている企業は全体の11.4%、企業規模1000人以上の企業では59.8%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 転籍への関わり方(単位:%) |

8 | 転籍者の賃金水準については、転籍先の賃金水準とする企業が60.0%であり、転籍元の賃金水準とする企業が35.3%となっている。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 転籍者の賃金水準(単位:%)(転籍にかかわっている企業を対象に集計) |

9 | 転籍をすることとなった従業員に対して事前の意向打診を行う企業は69.4%である。 転籍者本人に事前に意向の打診をする企業のうち、書面で本人の同意を得る企業は34.4%、口頭で同意を得る企業は50.0%、同意がなくても転籍させる企業は13.2%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 本人への事前の意向打診の有無(単位:%)(転籍者を出している企業を対象に集計) |

・ | 本人の意向の尊重の程度(単位:%)(意向打診をする企業を対象に集計) |

10 | 転籍者に対して転籍先企業に関する情報提供をしている企業は61.7%、転籍先企業での労働条件等の説明をしている企業は59.1%である。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 転籍者に対する措置(複数回答 単位:%)(転籍者を出している企業を対象に集計) |

11 | 平成16年度における出向に関する民事上の個別労働紛争相談件数は、604件となっている。助言・指導申出受付件数及びあっせん申請受理件数は増加傾向にある。(厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ) |
・ | 出向に関する民事上の個別労働紛争相談件数 |

・ | 出向に関する助言・指導申出受付件数 |

・ | 出向に関するあっせん申請受理件数 |
![]() (単位:件) |
(注) | いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。 |
12 | 出向・転籍に関する紛争の事例としては、例えば、次のようなものがある。 |
【出向の根拠規定がなかった例】 関東のA社で勤務していた労働者が、就業規則には出向規定はないにもかかわらず、1週間後から中部地方のB社に出向することを命じられた。労働者がこれを拒否したところ退職を強要され、その後懲戒解雇されたが、労働者は当該解雇を不当であるとして補償金を求めたもの。 会社側は、労働者がプライベートな理由で拒否したものと考え、業務を優先してほしかったと主張した。 |
【出向中の労働条件が問題となった例】 入社30年になる管理職の労働者で、約10年前より現出向先に出向しているが、出向先の所定労働時間が出向元の労働時間よりも1日30分多いことから、この時間に対する賃金の支払いを求めたもの。 賃金を支払っている出向元は、現在の賃金は出向先の所定労働時間全体に対するものであると主張した。 |
【会社側が労働者に対して転籍についての同意を求めなかった例】 A社との雇用契約で就労していたところ、突然B社からの給与通知書に署名押印を強要され、その後、何の説明もなくA社よりA社本部勤務の辞令が送付された。さらに、A社本部に出勤したところ、C社本店の商品補充業務を命じられた(A、B、C社はすべて関連会社)。 労働者は、自分の就業場所や職務内容についていずれが正しいのか判断できない状況であり、会社が労働者を自己都合退職に追い込んでいるものと思わざるを得ず、業務を継続する気持ちにはなれないとして、精神的・経済的な損害に対する補償を求めたもの。 |
【転籍に同意するための条件を覆されたことが問題となった例】 会社の業績不振を理由に労働者が転籍の打診を受け、転籍元での早期退職優遇制度の適用を条件に同意したが、その後、早期退職優遇制度の適用ができないとして転籍元にとどまるよう話が一転した。このため、労働者は、会社への信頼を失い退職に至ったとして、当初の条件どおり早期退職優遇制度の適用による退職金の支払いを求めたもの。 |
【転籍先での労働条件が問題となった例】 労働者が、会社の収支改善のため、取引先の代理店に転籍を求められ、その際、転籍後も転籍元会社と同様の給与レベルは維持される旨の説明を受けた。労働者は、賃金が維持されることのほか、業務それ自体は現在のものを引き続き行うこと、将来は会社への復帰可能性が残されていたことを考慮して、転籍に同意した。 しかし、実際に労働者が転籍先と打ち合わせを行ったところ、転籍先から提示された賃金は、転籍元会社の半額以下であり、転籍元も交えて話し合ったところ、転籍元と転籍先との間での話し合いは全くできておらず、結局、転籍ではなく退職勧奨であることが判明した。このため、労働者は双方に不信感を持ち、転籍先でも就業することを断ったが、転籍元に対して、事実上の不当解雇であるとして、解雇理由の文書による説明と、精神的・経済的損害に対する補償金を求めた。 会社側は、企業の業績が悪化したため退職勧奨をせざるを得なかったと主張した。 |
○ | 人事について |
1 | 人事考課制度がある企業のうち、昇進・昇格に「考課結果を重視して反映させている」「考課結果を一定程度反映させている」企業は計83.8%、給与・賞与については計96.3%である。(厚生労働省「雇用管理調査」(平成14年)) |
・ | 考課結果の反映状況(単位:%)(人事考課制度がある企業を対象に集計) |

2 | 人事考課の公開制度がある企業は、人事考課制度がある企業の26.8%である。(厚生労働省「雇用管理調査」(平成14年)) |
・ | 人事考課の公開制度の有無(単位:%)(人事考課制度がある企業を対象に集計) |

・ | 人事考課の公開制度の対象(「対象者全員」「無回答」を除き複数回答 単位:%)(人事考課の公開制度がある企業を対象に集計) |

3 | 過去5年間に懲戒解雇を行った企業は8.4%、減給を行った企業は13.0%である。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 過去5年間の懲戒処分の実績の有無(単位:%) |

4 | 80.5%の企業が懲戒処分の規定を有している。また、そのうち96.8%が就業規則に懲戒の根拠を置いている(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 懲戒処分の規定の有無(単位:%) |

・ | 懲戒処分の規定の形式(複数回答 単位:%)(懲戒規定がある企業を対象に集計) |

5 | いずれの懲戒処分についても、対象従業員にその理由を開示する企業は約8割、弁明の機会を付与する企業は7割超となっている。 |
・ | 理由の開示の実施の有無(単位:%)(処分の種類ごとに、制度がある企業を対象に集計) |

・ | 弁明の機会の付与の有無(単位:%)(処分の種類ごとに、制度がある企業を対象に集計) |

6 | 組合員の懲戒処分につき、同意、協議等の何らかの関与を行っている労働組合は82.7%である。(厚生労働省「労働協約等実態調査報告」(平成13年)) |
・ | 一般組合員の懲戒処分についての労働組合の関与(単位:%) |

7 | 69.3%の企業が何らかの休職制度を有している。(労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 休職制度・慣行の有無(単位:%) |

・ | 休職の種類(複数回答 単位:%) |

8 | 昇給・昇格、人事評価に関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出受付件数、あっせん申請受理件数は概ね増加傾向にあり、平成16年度の相談件数は、昇給・昇格に関するものが778件、人事評価に関するものが725件となっている。(厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ) |
・ | 昇給・昇格、人事評価に関する民事上の個別労働紛争相談件数 |

・ | 昇給・昇格、人事評価に関する助言・指導申出受付件数 |

・ | 昇給・昇格、人事評価に関するあっせん申請受理件数 |
![]() (単位:件) |
(注) | いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。 |
9 | 平成16年度における懲戒解雇、懲戒処分についての民事上の個別労働紛争相談件数は、それぞれ4,711件、2,068件に上る。(厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ) |
・ | 懲戒解雇、懲戒処分に関する民事上の個別労働紛争相談件数 |

・ | 懲戒解雇、懲戒処分に関する助言・指導申出受付件数 |

・ | 懲戒解雇、懲戒処分に関するあっせん申請受理件数 |
![]() (単位:件) |
(注) | いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。 |
※ | 「懲戒処分」に「懲戒解雇」は含まれない。 |
10 | 人事に関する紛争の事例としては、例えば、次のようなものがある。 |
【労働者が公正な人事評価を求めた例】 【労働者が人事評価結果の説明を求めた例】 事前の説明なく経営不振及び業績評価を理由に給与及び賞与が減額されたとして、労働者が、減額分の支払い、正当な業績評価及び評価の具体的内容の説明を求めたもの。 会社側は、給与及び賞与の減額は、業績評価の結果と、前年度の業績不振による一律1〜2割カットによるものであり、2割カット分は既に元に戻していると主張した。 |
【降格の根拠が問題となった例】 中途採用で入社した労働者について、個別の契約書において、入社時の役職は営業副統括者、職務等級X−2として月給約40万円、二年度目以降は月給・賞与とも業績評価の対象とするとされていた(就業規則の降格規定の有無は不明)。 ところが、入社から5か月後に、業績が上がらなかったことを理由に統括付きへ降格され、職務等級もX−2からX−1へ降格、月給は約40万円から約30万円へ減額と通知された。 労働者は、業績評価はあくまで二年度目以降からの約束であった、また、当初の契約以上に兼務を課せられたため、5か月では業績を上げるために十分な時間がなかったとして、賃金の減額分の差額の支払いを求めた。 会社側は、労働者が降格に合意していたと主張した。 |
【降格・降給の手続が問題となった例】 年俸950万円の課長職として採用された労働者が、入社5か月後に部長職を兼ねることになり、年俸1000万円とする旨の昇給辞令を受けた。しかし、1か月後に部長職の兼務を解き、課長職に専念するよう口頭で通知された。その際、降給の辞令は交付されなかった。 夏季賞与については、年俸950万を基準に計算した額が労働者に対して支払われた。これに対して、労働者は、年俸を1000万円から950万円に引き下げることは聞いていない、部長職の兼務を解かれたときも、年俸が下がるものとは理解していなかったとして、差額を請求したもの。 会社側は、部長職の兼務を解くことに労働者が同意した際に、年俸も元に戻ることについても当然了解されたものと考えたと主張した。 |
【懲戒の正当性が問題となった例】 労働者が、同僚に対して交友関係に関する中傷をしたとして、これを理由とする懲戒処分通知書が交付され、降格がなされたが、この懲戒処分が不当であるとして、降格に伴って減額された賃金の補償を求めたもの。 会社側は、中傷について労働者は始末書も提出しており、事実であって懲戒は正当であると主張したが、労働者は、確かに始末書は提出したが、定年を控えてトラブルを起こしたくなかったからであり、始末書の提出自体も不本意であったと主張した。 |
【懲戒が均衡を欠くかどうか問題となった例】 【懲戒理由の明示がなかった例】 タクシー運転手である労働者が、タクシー同士の追突事故を起こした。労働者はその後も乗務を続けていたが、一週間後に約20日間の自宅待機を命ぜられた。労働者は入社して10年になり、いままで小さな事故を起こしたことはあるが、自宅待機を命じられたのは初めてである。 労働者は、自宅待機を命じられた際に十分な理由の説明がないこと、通常、待機期間は親睦会の代表が窓口になって会社と話し合い1週間から10日間くらいとなるのが普通であるのに、そのような手続も踏まれず、長すぎると感じることから、納得がいかないとして、休業による経済的・精神的損害に対する補償金の支払いを求めたもの。 会社側は、労働者に追突事故について注意したところ、反省の色が見られず、安全運転が危ぶまれることからやむなく自宅待機を命じたと主張した。 |
【懲戒に際して弁明の機会付与の手続が問題となった例】 前社長の死亡後、不正な経理が判明したことからこれを理由に経理担当の労働者が懲戒解雇されたことについて、労働者が、自分は社長の指示に従って職務を行っていたに過ぎないとして、懲戒解雇の撤回を求めたもの。 会社側は、本人から事情を聴取して労働者が他の役員に報告すべき義務を怠っていたと判断し、懲戒解雇理由を説明した際に「わかりました」との回答があったことから、本人が懲戒に値する行為を行ったことを認めたとして懲戒解雇を通知したとする。 一方、労働者は、会社側三人に対して自分一人で説明を聞かされ、理由も分からないまま「わかりました」と言ってしまったと主張した。 |
【裁判例:懲戒には、あらかじめ就業規則の規定が必要とされた例】 4月1日から新たな就業規則を実施することとした会社側は、6月2日に労働者代表の同意を得た上で、6月8日に所轄労働基準監督署長に届け出た。新旧の就業規則には懲戒解雇事由が定められており、所定事由があれば懲戒解雇することができる旨定めていた。 会社側は、同年6月15日、同社で設計業務に従事していた労働者が「得意先の担当者らの要望に十分応じず、トラブルを発生させたり、上司の指示に対して反抗的担度をとり、上司に暴言を吐くなどして職場の秩序を乱したりした」との理由で、新たな就業規則の懲戒解雇に関する規定を適用し、労働者を懲戒解雇処分に付した。労働者は、解雇の前に会社側の担当者に対して、就業規則について質問したが、その時点では旧就業規則が労働者の就労場所に備え付けられておらず、担当者は、就業規則は本社に置いてあるから見ることができると回答した。 労働者は、本件懲戒解雇は就業規則に違反して無効であると主張した。 判決では、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する」とされ、「そして、就業規則が法的規範としての性質を有する(中略)ものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する」として、就業規則の周知の有無を認定しないまま懲戒解雇を有効とした原審の判断を破棄した。(フジ興産事件 平成15年最高裁判決) |
【休職後の復職先・復職の可能性が問題となった例】 私病により5か月間休職している労働者が、医師から「このままなら翌月より就労可能」と言われたため会社側にその旨連絡したところ、会社が「医師が就労可能と判断しても適切な職場がなければ復職させない」としたとして、就労可能の判断が出れば復職できることの確約を求めたもの。 同時期に会社側は希望退職の募集を行っていたことから、労働者は、会社側が、労働者を希望退職させるよう圧力をかけてきたものと考えた。 |
【休職後の完全復職・慣らし勤務が問題となった例】 病気休職中の労働者が、復職可能との診断書を添えて復職を願い出たが認められず、上司に「仕事ができるはずがない」等といわれ復職できなくなったとして、精神的・経済的損害に対する補償を求めたもの。 会社側は、以前、半日勤務等の慣らし勤務について労働者と合意したが、労働者は半日出勤ができずに欠勤(休職)を続けていた状態であり、そのような段階で完全な復職が希望されたことから、勤務ができるかどうか判断できないため再度の慣らし勤務を提案したものであると主張した。 |
○ | 労働契約に伴う合意や義務について |
1 | 二重就職者の数は15年前に比べて約1.5倍に増加している。(総務省「就業構造基本調査」) 一方、正社員の副業を禁止する企業も、10年前に比べて増えている。(労働政策研究・研修機構「雇用者の副業に関する調査研究」(平成16年)) |
・ | 二重就職者数(本業が雇用者であり、かつ、副業が雇用者である者の数) |

・ | 正社員の副業に関する取扱い(単位:%) |

2 | 企業が副業を規制している理由としては、「業務に専念してもらいたいから」が78.1%である。(労働政策研究・研修機構「雇用者の副業に関する調査研究」(平成16年))労働者が副業を行っているのは、本業の就業時間後や、本業の仕事のない日が約4割である。(三和総合研究所「二重就職に係る通勤災害制度創設のための調査研究」(平成16年)) |
・ | 正社員の副業規制理由(複数回答 単位:%)(副業を禁止していない企業を除き集計) |

・ | 二重就職者が副業やアルバイトをしている時間帯(複数回答 単位:%)(副業やアルバイトをしている労働者を対象に集計) |

3 | 退職する従業員に対して秘密保持を義務付けている企業は33.7%、競業避止を義務付けている企業は3.7%である。また、これらの義務は47.9%の企業において就業規則で規定されていた。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)) |
・ | 退職する従業員に課す義務(複数回答 単位:%) |

・ | 退職者に義務を課す規定の形式(退職する従業員に何らかの義務を課す企業を対象に集計) |

4 | 海外留学制度を設けている企業のうち、早期退職した労働者から費用の返還を求めている企業は40.9%。そのうち、留学後5年以内に退職した者から返還を求めることとしている企業が88.9%である。(厚生労働省労働基準局監督課調べ(平成17年)) |
・ | 早期退職者に対する海外留学費用の返還制度の有無(単位:%)(海外留学制度がある企業を対象に集計) |

・ | 返還を求める対象者(単位:%)(留学費用の返還制度がある企業を対象に集計) |

5 | 仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる労働者の割合は6割を超えている。ストレスの内容をみると、職場の人間関係のほか、仕事の質、仕事の量の問題が多い。(厚生労働省「労働者健康状況調査」) |
・ | 強いストレス等を感じる労働者の割合(単位:%) |

・ | 強い不安、悩み、ストレスの内容(平成14年)(3つまでの複数回答 単位:%)(強い不安、悩み、ストレスのある労働者を対象に集計) |

・ | 健康管理やストレス解消のために会社に期待する内容(平成14年)(3つまでの複数回答 単位:%)(会社に期待することがある労働者(全体の65.1%)を対象に集計) |

6 | 賠償に関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出受付件数、あっせん申請受理件数は、平成15年度と平成16年度を比較すると、ともに増加している。(厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ) |
・ | 賠償に関する民事上の個別労働紛争相談件数 |

・ | 賠償に関する助言・指導申出受付件数 |

・ | 賠償に関するあっせん申請受理件数 |
![]() (単位:件)
|
※ | 「賠償」については、平成15年度から集計対象項目となった。 |
7 | いじめ・嫌がらせに関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出受付件数、あっせん申請受理件数は、ともに増加している。(厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ) |
・ | いじめ・嫌がらせに関する民事上の個別労働紛争相談件数 |

・ | いじめ・嫌がらせに関する助言・指導申出受付件数 |

・ | いじめ・嫌がらせに関するあっせん申請受理件数 |
![]() (単位:件)
|
8 | 労働契約に伴う合意や義務に関する紛争の事例としては、例えば、次のようなものがある。 |
【労働者の兼業が問題となった例】 アルバイトとして、2か月契約を更新して約7か月勤務していた労働者が、契約期間中に解雇(会社側は雇止めを主張)された。 会社側は(1)経歴詐称、(2)労働者の兼業(昼間は別の企業で働き、深夜に当該会社で働いているため過重労働となること)、(3)勤務態度等を解雇理由としたが、労働者は(1)経歴詐称については以前の話合いで問題にしないとされており、(2)兼業も入社当時から了承を得ていたものであり、(3)有給休暇の申請をしたことが理由としか考えられないとして、復職や有給休暇の付与等を求めたもの。 |
【在職中の秘密保持義務に関する合意が問題となった例】 会社から、機密情報の保持や著作物の取扱いについての同意書に署名を求められ、労働者がこれを拒否したところ、退職を勧奨され、また、社内ネットワークやメールの使用を停止された。このため、労働者が、「同意書に署名しなかったことを理由に解雇等の不当な取扱いを行わないこと」の確認を求めたもの。 |
【退職後の競業避止義務に関する合意が問題となった例】 A社を自己都合退職した労働者が、A社の下請であったB社に再就職した。A社は、労働者の退職から約1か月後に、労働者に対して、(1)A社在籍中に得た情報・ノウハウを漏洩・使用しないこと、(2)A社の取引先であるC社に対して営業行為を行わないこと等を内容とするに誓約書に署名を求めた。労働者が既にB社でC社の業務を受注・実施していることから署名を拒否したところ、A社は、労働者が署名をしないことを理由に退職金を支払わなかった。 このため、労働者が退職金規程に基づく退職金の支払いを求めたもの。 会社側は、在職中から会社のデータの持ち出しがあり、また、得意先であるC社を持っていく形となっていることから、退職金を満額支給することはできないと主張した。 |
【研修費用の返還が問題となった例】 入社1年後に退職した労働者が、在職中に受けた研修の費用約200万円の返還を求められた。入社時に交わした雇用契約書には、入社後2年以内に退職する場合には、教育研究費を返金する旨の規定があったが、金銭消費貸借の契約書はなかった。約1か月の研修期間中は、通常業務には従事しなかった一方、賃金は支払われていた。 労働者は、社会保険労務士に相談したところ、研修費用の返還は労働基準法第16条違反であり返還の必要はないと言われたとした上で、会社の業務をする上で必須の研修であること、本人に自発的な受講の意思がないこと、研修費用を会社側に立て替えてもらったという認識がないこと、雇用契約書に署名したのは署名しなければ入社させてもらえなかったからであること、また、他の労働者の退職が相次ぎ会社の将来性がなくなり、1年間で退職せざるを得なくなるとは思わなかったことから、返還には応じられないと主張した。また、労働者は、研修費用が高額であることは承知していたものの、金額は知らなかった。 会社側は、通常は資格を持った労働者を採用しており、労働者の採用は異例であるが十分に相談の上採用したものであって、資格を得るための研修は労働者自身が受講を決めたものである、労働者が取得した資格は他社でも通用可能なものである、研修費用は立て替えたものである以上、返還請求は正当であると主張した。 |
【裁判例:使用者は労働者の安全に配慮する義務があるとされた例】 反物、毛皮、宝石の販売等を業とする会社において、以前当該会社で就労していた者が宿直中の労働者を殺害して反物類を盗み逃走したため、殺害された労働者の両親が、会社側に対し損害賠償の請求をしたもの。 判決では、「雇傭契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)を負つている」とされた。(川義事件 昭和59年最高裁判決) |
【いじめ・嫌がらせに対する会社の措置が問題となった例】 労働者が、職場責任者から無視をされ続ける等のいじめを受け、事業主にも相談したものの有効な措置が取られないため退職せざるを得ないとして、会社都合退職としての退職金の支払いを求めたもの。 会社側は、労働者の申出を受けて調査をしたがいじめの事実は認められなかった、労働者と職場責任者を交えての話合いの場を設け、その場で職場責任者が謝罪したことから、和解したものと考えていたと主張した。 |
【労働者の個人情報の取扱いが問題となった例】 労働者が病気休職中に、上司が労働者に無断で労働者が通院する病院に症状を確認するための電話をした(病院は守秘義務を理由に回答しなかった)等として、精神的苦痛に対する補償金を求めたもの。 会社側は、病院と接触を取ったのは、(医師の就労可能との診断書を受けて、)業務について医師に理解を求めるためであったと主張した。 |
【労働者の損害賠償義務が問題となった例】 総務担当者が退職したところ、在職中に会社会計に不足を生じさせたとして損害賠償を請求され、いったんは全額を支払った。しかし、そのうちの一部(約15万円分)については自分だけの責任ではなく総務部門全体の管理体制の問題であり、自分のみが負担することには納得いかないとして、当該部分の返還を求めたもの。 |
【裁判例:労働者の損害賠償義務が問題となり、使用者の請求が制限された例】 石油等の輸送・販売を業とする会社で運転業務に従事する労働者が、業務上タンクローリーを運転中、追突事故を起こした。このため、会社は、使用者責任に基づき、追突された車両の所有者に対してその損害賠償を支払い、また、破損した会社のタンクローリーの修理費及び修理のための休車期間中の逸失利益としての損害を被った。 そこで、会社側は、労働者に対し、追突された車両への損害賠償分の求償と、会社が直接被った損害に対する賠償を請求した。 判決では、「使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被り又は使用者としての損害賠償責任を負担したことに基づき損害を被った場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し右損害の賠償または求償の請求をすることができる」とされた。(茨石事件 昭和51年最高裁判決) |
民事上の個別労働紛争相談の経年変化 |
助言・指導申出受付の経年変化 |
あっせん申請受理の経年変化 |
労働関係民事通常訴訟事件の推移 |
不当労働行為審査の経年変化 |
組合員数が減少した理由 |
○ | 民事上の個別労働紛争相談の経年変化
|
・ | 民事上の個別労働紛争の相談内容の経年変化 |

・ | 民事上の個別労働紛争の相談に係る就労状況の経年変化 |

(注) | いずれも、平成13年度は平成13年10月から平成14年3月まで。 |
※ | 資料出所:厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室 |
○ | 助言・指導申出受付の経年変化
|
・ | 助言・指導申出受付内容の経年変化 |

・ | 助言・指導申出受付に係る就労状況の経年変化 |

・ | 助言・指導申出受付に係る事業場規模の経年変化 |

(注) | いずれも、平成13年度は平成13年10月から平成14年3月まで |
※ | 資料出所:厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室 |
○ | あっせん申請受理の経年変化
|
・ | あっせん申請受理内容の経年変化 |

・ | あっせん申請受理に係る就労状況の経年変化 |

・ | あっせん申請受理に係る事業場規模の経年変化 |

(注) | いずれも、平成13年度は平成13年10月から平成14年3月まで。 |
※ | 資料出所:厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室 |
○ | 労働関係民事通常訴訟事件の推移
|
・ | 当事者別新受件数の推移 |

・ | 請求類型の推移 |

※ | グラフ中の数字はそれぞれの項目ごとの件数、欄外の数字は年合計件数を表す。 |
・ | 終局事由別既済件数の推移 |

※ | グラフ中の数字はそれぞれの項目ごとの件数、欄外の数字は年合計件数を表す。 |
※ | 最高裁判所事務総局行政局調べ(法曹時報第57巻第8号ほか) |
○ | 不当労働行為審査の経年変化
|
(1) | 不当労働行為審査の終結状況別終結件数(初審)
(単位:件) |
※ | ( )内数字は、分離命令件数で外数である。 |
(2) | 申立人別申立件数(初審) |

※ | グラフ中の数字はそれぞれの項目ごとの件数、欄外の数字は年合計件数を表す。 |
(3) | 労組法第7条該当号別申立件数及び構成比率(初審)
|
※ | 各号別の件数は、申立の内訳を整理し集計したものであり、その合計は申立件数とは一致しない。 |
※ | 各号別の構成比率は、申立件数に対するものである。 |
≪参考≫労働組合法第7条
第1号 | : | 労組加入等による不利益取扱い及びいわゆる黄犬契約 | |
第2号 | : | 団交拒否 | |
第3号 | : | 使用者による支配介入、経理上の援助 | |
第4号 | : | 労働委員会への申立等を理由とする不利益取扱い |
(4) | 企業規模別申立件数(初審) |

※ | グラフ中の数字はそれぞれの項目ごとの件数、欄外の数字は年合計件数を表す。 |
※ | 資料出所:平成16年「労働委員会年報」(中央労働委員会事務局編) |
○ | 組合員数が減少した理由
|
(複数回答、単位:%)
![]() |
※ | 資料出所 | : | 厚生労働省「労働組合実態調査」(平成15年) |