確定拠出年金 連絡会議 |
第14回 平成17年11月25日 |
資料3-1 |
法令解釈通知の改正について
1. |
通知改正の主旨
確定拠出年金の導入から3年以上が経過したが、現在の運用環境では想定利回りを下回るような運用結果であることも珍しくないこと、また、導入時教育において基本的な事項を習得していない加入者も見受けられること等から、導入後の教育(継続教育)の重要性が指摘されているところである。
しかし、現状では、導入から十分な時間を経ていないことから、継続教育について、特定の方法が確立されているには至っておらず、様々な取り組みが行われている状況にある。
そこで、投資教育についての法律上の努力義務を前提に、継続教育について各々の企業に応じた多様な取り組みを促すことが重要であるとの認識の下、確定拠出年金連絡会議のメンバーである企業等の取り組みを事例集として取りまとめて、広く提供するとともに、主として制度導入時の教育を念頭においていた従来の法令解釈通知を改正し、継続教育を明確に位置付けるとともに、実施に当たっての配慮事項等を示すこととしたものである。 |
2. |
通知改正の概要
投資教育の実施に当たって、必須事項と配慮事項を明確化するため、必須事項を「努めること、必要がある」とし、配慮事項を「配慮すること、望ましい」とした。
(1) |
投資教育を実施する場合の必須事項
ア. |
加入時・加入後の投資教育の計画的実施の必要性
・ |
加入時・加入後の投資教育については、それぞれの目的・重要性を有することから、その性格の相違に応じて、加入後教育を含めた計画的な実施に努めること。また、加入者等が的確かつ効果的に習得できるよう、全体の計画の中で、その内容の配分に配慮する必要がある。 |
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イ. |
継続教育における制度実態の把握の必要性
・ |
資産配分、運用指図の変更回数等の運用の実態、コールセンター等に寄せられた質問等の分析やアンケート調査により、加入者等のニーズを十分把握し、それに応じた内容となるよう、配慮する必要がある。また、運営管理機関は制度の運用の実態等を定期的に把握・分析し、事業主に情報提供するとともに、必要な場合には投資教育に関する助言をすること。 |
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ウ. |
継続教育における基本的な事項の再教育の必要性
・ |
基本的な事項が習得できていない者に対しては、制度に対する関心を喚起するよう十分配慮しながら、基本的な事項の再教育を実施すること。 |
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エ. |
投資教育を委託した場合の実態把握の必要性
・ |
事業主が運営管理機関に投資教育を委託する場合には、事業主は投資教育の内容・方法、実施後の運用の実態、問題点等について実施状況を把握すること。 |
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(2) |
投資教育を実施する場合に配慮すること
・ |
投資教育後にアンケート調査や運用指図の変更回数等により、目的に応じた達成状況を把握することが望ましい。 |
・ |
継続教育においては、より高い知識及び経験を有する者にも対応できるメニューに配慮することが望ましい。 |
・ |
継続教育については、具体的な質問等が寄せられることから、コールセンター、メール等により個別の対応に配慮することが望ましい。 |
・ |
事業主は、就業時間中における説明会の実施等、できる限り協力することが望ましく、また、加入後の投資教育についても、できる限り多くの加入者等に利用の機会が確保されるようにすることが望ましい。
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<参考>
上記のほか、改正前の通知では、「情報提供」を「教育研修」と「狭義の情報提供」の双方に使用していることから、いわゆる研修会等の教育は「投資教育」、電子メールやビデオ等の媒体を通して提供するものは「情報提供」とした。
確定拠出年金法並びにこれに基づく政令及び省令について(法令解釈)<抜粋>
第2 |
資産の運用に関する情報提供(いわゆる投資教育)に関する事項 |
1. |
基本的な考え方
(1) |
確定拠出年金は、我が国の年金制度において、個々の加入者等が自己責任により運用し、その運用結果によって給付額が決定される初めての制度である。確定拠出年金が適切に運営され、老後の所得確保を図るための年金制度として国民に受け入れられ、定着していくためには、何よりも増して加入者等が適切な資産運用を行うことができるだけの情報・知識を有していることが重要である。したがって、法第22条の規定等に基づき、投資教育を行うこととなる確定拠出年金を実施する事業主、国民年金基金連合会及びそれらから委託を受けて当該投資教育を行う確定拠出年金運営管理機関等(この第2の事項において「事業主等」という。)は、極めて重い責務を負っており、制度への加入時はもちろん、加入後においても、個々の加入者等の知識水準やニーズ等も踏まえつつ、加入者等が十分理解できるよう、必要かつ適切な投資教育を行わなければならないものであること。
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(2) |
投資教育を行う事業主等は、常時上記(1)に記した責務を十分認識した上で、加入者等の利益が図られるよう、当該業務を行う必要があること。 |
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2. |
加入時及び加入後の投資教育の計画的な実施について |
(1) |
加入時には、実際に運用の指図を経験していないことから、確定拠出年金制度における運用の指図の意味を理解すること、具体的な資産の配分が自らできること及び運用による収益状況の把握ができることを主たる目的として、そのために必要な基礎的な事項を中心に教育を行うことが効果的である。事業主等は過大な内容や時間を設定し、形式的な伝達に陥ることのないよう、加入者等の知識水準や学習意欲等を勘案し、内容、時間、提供方法等について十分配慮し、効果的な実施に努めること。
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(2) |
加入後の投資教育は、加入時に基本的な事項が習得できていない者に対する再教育の機会として、また、制度に対する関心が薄い者に対する関心の喚起のためにも極めて重要である。
加入者が実際に運用の指図を経験していることから、加入前の段階では理解が難しい金融商品の特徴や運用等についても運用の実績データ等を活用し、より実践的、効果的な知識の習得が期待される。
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(3) |
加入時及び加入後の投資教育については、それぞれ、上記のような目的、重要性を有するものであり、その性格の相違に留意し、実施に当たっての目的を明確にし、加入後の教育を含めた計画的な実施に努めること。 |
3. |
法第22条の規定に基づき加入者等に提供すべき具体的な投資教育の内容 |
(1) |
投資教育を行う事業主等は、2で述べたように、加入時及び加入後の投資教育の目的、性格等に応じて、(3)に掲げる事項について、加入時、加入後を通じた全般の計画の中で、加入者等が的確かつ効果的に習得できるよう、その内容の配分に配慮する必要がある。
また、事後に、アンケート調査、運用の指図の変更回数等により、目的に応じた効果の達成状況を把握することが望ましい。
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(2) |
特に、加入後の投資教育においては、次のような事項について配慮すること
(1) |
運用商品に対する資産の配分、運用指図の変更回数等の運用の実態、コールセンター等に寄せられた質問等の分析やアンケート調査により、対象となる加入者等のニーズを十分把握し、対象者のニーズに応じた内容となるよう、配慮する必要がある。
なお、運営管理機関は制度の運用の実態等を定期的に把握・分析し、事業主に情報提供するとともに、必要な場合には投資教育に関する助言をするよう努めること。 |
(2) |
基本的な事項が習得できていない者に対しては、制度に対する関心を喚起するよう十分配慮しながら、基本的な事項の再教育を実施すること。また、加入者等の知識及び経験等の差が拡大していることから、より高い知識及び経験を有する者にも対応できるメニューに配慮することが望ましい。 |
(3) |
具体的な資産配分の事例、金融商品ごとの運用実績等の具体的なデータを活用すること等により、運用の実際が実践的に習得できるよう配慮することが効果的である。 |
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(3) |
具体的な内容
(1) |
確定拠出年金制度等の具体的な内容
ア |
わが国の年金制度の概要、改正等の動向及び年金制度における確定拠出年金の位置づけ |
イ |
確定拠出年金制度の概要(次の(ア)から(キ)までに掲げる事項)
(ア) |
制度に加入できる者とその拠出限度額 |
(イ) |
運用商品(法第23条第1項に規定する運用の方法をいう。以下同じ。)の範囲、加入者等への運用商品の提示の方法及び運用商品の預替え機会の内容 |
(ウ) |
給付の種類、受給要件、給付の開始時期及び給付(年金又は一時金別)の受取方法 |
(エ) |
加入者等が転職又は離職した場合における資産の移換の方法 |
(オ) |
拠出、運用及び給付の各段階における税制措置の内容 |
(カ) |
事業主、国民年金基金連合会、運営管理機関及び資産管理機関の役割 |
(キ) |
事業主、国民年金基金連合会、運営管理機関及び資産管理機関の行為準則(責務及び禁止行為)の内容 |
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(2) |
金融商品の仕組みと特徴
預貯金、信託商品、投資信託、債券、株式、保険商品等それぞれの金融商品についての次の事項
ア |
その性格又は特徴 |
イ |
その種類 |
ウ |
期待できるリターン |
エ |
考えられるリスク |
オ |
投資信託、債券、株式等の有価証券や変額保険等については、価格に影響を与える要因等 |
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(3) |
資産の運用の基礎知識
ア |
資産の運用を行うに当たっての留意点(すなわち金融商品の仕組みや特徴を十分認識した上で運用する必要があること) |
イ |
リスクの種類と内容(金利リスク、為替リスク、信用リスク、価格変動リスク、インフレリスク等) |
ウ |
リスクとリターンの関係 |
エ |
長期運用の考え方とその効果 |
オ |
分散投資の考え方とその効果 |
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(4) |
加入者等に、運用プランモデル(老後までの期間や老後の目標資産額に応じて、どのような金融商品にどの程度の比率で資金を配分するかを例示したモデル)を示す場合にあっては、元本確保型の運用方法(令第16条各号に規定する運用の方法をいう。以下同じ。)のみで運用する方法による運用プランモデルを必ず含んでいるものとすること。
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(1) |
投資教育を行う事業主等は、次に掲げる方法により、加入者等に提供すること。
(1) |
投資教育の方法としては、例えば資料やビデオの配布(電磁的方法による提供を含む。)、説明会の開催等があるが、各加入者等ごとに、当該加入者の資産の運用に関する知識及び経験等応じて、最適と考えられる方法により行うこと。 |
(2) |
事業主等は、加入者等がその内容を理解できるよう投資教育を行う責務があり、加入者等からその内容についての質問や照会等が寄せられた場合には、速やかにそれに対応すること。
特に、加入後の投資教育においては、加入者等の知識等に応じて、個別・具体的な質問、照会等が寄せられることから、コールセンター、メール等による個別の対応に配慮することが望ましい。
また、テーマ等を決めて、社内報、インターネット等による継続的な情報提供を行うことや、既存の社員研修の中に位置付けて継続的に実施することも効果的である。 |
(3) |
確定拠出年金制度に対する関心を喚起するため、公的年金制度の改革の動向や他の退職給付の内容等の情報提供を合わせて行うことにより、自らのライフプランにおける確定拠出年金の位置づけを考えられるようにすることが効果的である。
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(2) |
事業主が確定拠出年金運営管理機関に投資教育を委託する場合においては、当該事業主は、投資教育の内容・方法、実施後の運用の実態、問題点等、投資教育の実施状況を把握するよう努めること。また、加入者等への資料等の配布、就業時間中における説明会の実施、説明会の会場の用意等、できる限り協力することが望ましい。
加入後の投資教育についても、その重要性に鑑み、できる限り多くの加入者等に参加、利用の機会が確保されることが望ましい。 |
5. |
投資教育と確定拠出年金法で禁止されている特定の運用の方法に係る金融商品の勧奨行為との関係 |
(1) |
事業主等が上記3に掲げる投資教育を加入者等に行う場合には、当該行為は法第100条第6号に規定する禁止行為には該当しないこと。
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(2) |
なお、事業主等が、価格変動リスク又は為替リスクが高い株式、外国債券、外貨預金等(この(2)において「株式等」という。)のリスクの内容について加入者等に十分説明した上で、老後までの期間及び老後の目標資産額に応じて株式等での運用を含んだ複数の運用プランモデルの提示を行う場合にあっても、当該行為は法第100条第6号に規定する禁止行為には該当しないこと。 |