第2回労災医療専門家会議(議事要旨)


 日時
 平成17年11月14日(月)14:00〜16:00
 場所
 中央合同庁舎第5号館専用第16会議室(13階)
 出席者
 (会議メンバー)※五十音順敬称略
奥平雅彦、尾崎正彦、小澤哲磨、木村清延、坂巻皓、佐々木時雄、杉本恒明、戸田剛太郎、中村隆一、馬杉則彦、深道義尚、本多純男、松島正浩
 (厚生労働省)
明治補償課長、渡辺補償課長補佐、藤永補償課長補佐、山下労災医療専門官、丸山中央労災医療監察官、長嶋中央職業病認定調査官他

 提出資料
 資料1 胸腹部臓器の障害に係るアフターケアの概要(修正案)
 資料2 傷病別アフターケア措置内容等
 資料3 胸腹部臓器の障害に係るアフターケア措置内容等整理表
 資料4 アフターケア新設に係る障害等級表

 議題
 傷病別アフターケア措置内容等の検討

 討議概要
(1)植え込み型ペースメーカ及び植え込み型除細動器の術後に係るアフターケアについて
 特に、除細動器が入るとうつ状態になるため、保健指導のところに、「メンタルケアを含む」という文言が必要と考える。
 ペースメーカ植込み後の者も、不安を訴えて、外来へ通ってくる方が多い。
 3年に対象期間を区切っているが、ペースメーカ及び除細動器については、「機器の挿入されている期間」といった言い方が適切である。また、人工血管、人工弁についても同じことが言えると考える。
 「向精神薬とは抗うつ剤及び精神安定剤」について、「指す」ものであるというのではなく、「含む」ものであるとしたほうが正しい言い方と考える。

(2)人工弁置換後、人工血管移植後、弁損傷及び心膜病変に係るアフターケアについて
 (1)の趣旨の3行目の「抗凝血薬療法」について、薬剤を「血液凝固阻止剤」としているので、ここも「血液凝固阻止療法」とする方が適切と考える。
 人工血管の場合、胸部に限らず、腹部、下肢のほうまで含むこともある。また、そのため「CT、MRI検査」について、胸部などといった部位を特定した言葉は入れないほうが良い。

(3)呼吸器の障害に係るアフターケアについて
 炎症反応(CRP)は、普通は血液の生化学検査の中に入っていると考えるが、査定の対象とならないよう、血液一般と生化学検査の間に「炎症反応検査」と明記すべきである。
 薬剤での「続発した気道感染や肺炎を治療」と書いているところは、一時的に起きた炎症に対して対処するためという意味であるが、表現上不適切であるなら、状態の悪化を防止するためにという言い方にするのはどうか。感染を治療するのが目的ではなくて、原疾患の悪化を防止する観点に立てば良い。

(4)慢性肝炎に係るアフターケア
 B型肝炎のHBe抗原陽性者は、血中の肝炎ウイルス量も多く、しかも増殖も旺盛であるということで、いつ再発してもおかしくない。そういった意味ではアフターケアの段階で、月1回の肝機能検査と診察が必要である。
 B型肝炎のHBe抗原が陰性化した方は、再発は非常に稀で、進行もほとんどないため、6カ月に1回程度の診察と肝機能検査、血液生化学検査で良いと考える。
 C型肝炎の感染者については、ウイルスが消えることはまずないので、いつ再発してもおかしくないということで、月1回の診察と肝機能検査を実施することが適切である。
 腹部超音波検査というのは、C型肝炎感染者についても実施するが、当然6カ月あるいは1年に1回でも良い。しかし、B型肝炎の感染者でAST、ALTが10年、20年間全く正常の者も、肝癌が発生することがあるので、6カ月あるいは少なくとも1年に1回は腹部超音波検査で肝発癌の有無を診ていく必要がある。いわゆる無症候性B型肝炎ウイルスキャリアでも肝癌になる人がいるので、そういった意味ではやらなくてはいけない。
 HCV抗体については、肝炎ウイルスが消える人はほとんどないが、希にいるので用心のために調べておいたほうが良いと考える。
 HCV抗体の抗体価が下ると、非常に稀だが、HCV−RNAが消えてしまう人がいる。そのため、HCV抗体が非常に低くなってきた場合は、HCV−RNAが本当にいるのかどうか確認する必要があるので、HCV−RNA同定、いわゆる定性反応ということで、量を調べるのではなくて、存在するかしないかを調べる検査を実施すべきと考える。
 ヘパプラスチンテストは不要というわけではないが、現在ではほぼ同じ内容のプロトロンビン時間が世界的な標準検査となっており、我が国でも劇症肝炎の診断基準や自己免疫性肝炎の治療の判定基準には、プロトロンビン時間を使っているため、プロトロンビン時間を使うべきではないかと考える。このプロトロンビン時間は重症度の判定と、もう1つは進行度の判定に有用で、慢性肝炎が進行して肝硬変に近づくと、プロトロンビン時間が延長してくるということで必要である。
 慢性肝炎の治療終了後6カ月にわたってAST、ALTが正常であることがアフターケアの対象になっており、そういった意味で薬剤の支給は必要ないと考える。

(5)腹部臓器の障害に係るアフターケア
 処置の「人工肛門を増設した者及び膵液瘻が認められる者のところで、前回、資料1では膵液瘻を外瘻に直したが、「軽微な外瘻」というように直した方が、資料1のチャートに即していると考える。
 運用上のことを考え限定的に書かず、「腸管癒着等による腹部膨満感を訴える者に対して、腸管運動及び腸管内容等の確認のために、適宜レントゲン、超音波、CT検査を行う」という程度にしたほうがよい。
 「薬剤の支給」の2番目の書き方だと、逆流性食道炎は胃全摘した者にしか現れないというように読めてしまうので、「抗貧血用剤を支給し、消化管損傷後の消化管内視鏡により逆流性食道炎が確認された場合」としたほうが良い。
 4番目の外皮用剤の前には目的を明らかにする意味で、「疼痛、炎症等を軽減するために」というように書いておくほうが良い。
 胃全摘で鉄欠乏性貧血が出てくるのは、6年以降10年くらいが多いので、あえて3年間という区切りを入れないほうが運用上、扱いやすいのではないかと考える。

(6)尿路変向術後におけるアフターケアについて
 尿路変更術後の者は、第1世代で尿路ストーマの変形又は狭さく、第2世代で尿管新吻合部の狭さくが起こり、さらに代用膀胱の場合は、代用膀胱尿道吻合部の狭さくで残尿が発生することがある。そして、第3世代では、腸管を使って新しい膀胱を作り、そこに尿道を結び付けて自然排尿できるような歴史がある。その辺のことを少し文言の整理をしていただきたい。
 検査の7番の「代用膀胱造設後の状態を定期的に」のところは、尿路変向術後の者がすべて代用膀胱ではないので、もし、ここに入れるのであれば、「特に代用膀胱造設後の状態」としないといけない。
 若年者に尿道狭さくの下の方でCTなどをやると、精巣に放射線障害を起こす危険があるので、現在はどちらかというとMRIとかを代用しているというのが現状である。この辺は、若年者の精巣に対する配慮のため、厳重にチェックしていただきたい。
 尿道膀胱ファイバースコープについては、現在ほとんどCT検査とか、エックス線検査で術後管理ができるため、あえて変向した後に内視鏡を使って代用膀胱の中を診ることは稀な行為となっているが、膀胱はもうないので、もしここに「膀胱」を入れるのであれば、「代用膀胱の中」という表現にしないと辻褄が合わない。
 エックス線の回数について、今回の改正案では、1年に1回程度となっており、単純撮影及び腎盂造影に関しては、現行の回数(1年に2回)より減ってしまうことになるが、現在の医療技術に鑑みれば、1年に1回程度で足りると考える。

(7)その他
 この文章の中に「すべきである」ということで、「べき」が大変並んでいるが、こういう文書が流れると、地方の労働局などでは、アフターケアの説明書に書いてある「べきである」というのを強く取って、やらなければならない、投与すべきである、投与しなければならないというように受け取ることが往々にしてある。これは「べき」の解釈の仕方なので、特にこれを間違いであるとは、とても言えないが、何かうまい表現をされたほうが良いのではないかと考える。
 昔は災害アクシデントがほとんどであったため、労災でも症状固定としてわりにクリアにできて、アフターケアも2年、3年と言えば、ある程度それで終了できていた。しかし、今回のような後遺障害や、その他脳卒中や内臓の疾患が多くなってきているので、非常に長期にわたると、今までどおりにはいかない。
 但書きに「医学的に必要のある者については、さらに継続して行うことができる」という文言があるが、これは全部に付いている。アフターケア手帳を持っている患者たちを見ていると、どこかでチェックしなければいけないことは事実だと思う。漫然と続けるのは良くない。3年でもどこでもいいから、チェックするのが良い。しかし、こういう書き方をすると、やはり全部但書きが付いて、全部但書きどおりになってしまっている。そうすると何か違和感がある。
 アフターケアがこれだけ広くなっている現状を踏まえ、そろそろ支給期間とか但し書きの文言も考え直す時期ではないかと考える
 神経因性の膀胱・直腸障害などは、これとは別の項目として、脊損は別にアフターケアがある。今回は尿路変向を入れるという部分と、このカテゴリーに加わったように理解しております。


照会先 厚生労働省労働基準局労災補償部補償課福祉係
TEL 03(5253)1111(代)内線5566
 03(3502)6796(夜間直通)
FAX 03(3502)6488

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