05/10/28 労働政策審議会雇用均等分科会第53回議事録           第53回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:平成17年10月28日(金)14:00〜16:00 場所:厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階) 出席者:  労側委員:吉宮委員、岡本委員、片岡委員  使側委員:川本委員、前田委員、山崎委員、吉川委員、渡邊委員  公益委員:横溝分科会長、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員、林委員、樋口委員 ○横溝分科会長  ただ今から第53回労働政策審議会雇用均等分科会を開催します。本日は篠原委員と佐 藤孝司委員が欠席されております。  それでは早速議事に入りたいと思います。本日の議題は「男女雇用機会均等対策につ いて」と「その他」です。まず「男女雇用機会均等対策について」ですが、本日は「女 性保護、母性保護」について議論いただき、その後にこれまで取り上げた論点項目全体 について、追加のご意見があればご発言をいただきたいと思います。  なお、いろいろとご議論のありました「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁 止」と「間接差別の禁止」については、前回議論をしていただいた際に提出した資料を 用意しています。  まず「女性保護・母性保護」について、事務局から資料の説明をお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  それでは資料の説明をします。資料No.1をご覧ください。資料No.1-1を説明させてい ただきます。「女性の坑内労働に係る規制の現状と規制改革要望の内容」としておりま す。この坑内労働の関係については、既に専門家会合の報告書も提出し、現行の規制に ついて一度ご説明はしているところですが、本日提出しました資料は、現行の規定の内 容を若干わかりやすく表にまとめたものです。ここにありますように、現在でも例えば 臨時の医師の業務など例外的に女性が入坑できる業務はあるわけですが、母性保護につ いては別途規制があります。この資料はその点についても明示しております。具体的に は、妊婦については、現在行える業務においても一律女性の就労は禁止されています。 また産婦ですが、女性が申し出た場合は就かせてはならない業務とされています。  それから2ですが、規制改革要望関係で出されている内容を改めてここに記させてい ただいております。女性技術者が行う坑内工事の監督業務、監理業務、施行管理に係わ る業務について規制緩和すべきという要望が出されているところです。  また資料No.1-2をお付けしておりますが、これは坑内労働禁止に関する関係の規定で すので、説明については省略させていただきます。以上です。 ○横溝分科会長  ありがとうございました。それではこのテーマについて議論をお願いします。  はい、どうぞ。 ○吉宮委員  私どももこのテーマに関して検討を重ねてきまして、一定の取りまとめをしたところ なのですが、その前に事務局にいくつか意見、質問をしたいと思います。専門家会合の 報告についてです。  こんな文言がありまして、今後の課題というところですが、このような安全衛生の水 準が保たれていることを前提とすれば、現在では、女性の坑内での就労を一律に排除し なければならない事情は乏しくなっていると考えられている。一律に排除をしなければ ならない事情という、その一律という意味を、どのように受け止めたらいいのかです。 女子一般について規制するということではなくて、一律とは限定的なものという意味な のか。その取りまとめの次のくだりに、妊産婦についての言及がありまして、先ほど説 明がありましたように、現在、妊婦については就労禁止、産婦については申し出があれ ば就労可能ということなのですが、これについても十分な配慮というのを専門家会合が 言っております。その十分な配慮という意味は、現行の臨時的に必要な業務の方々につ いて産婦は申し出だけれども、これも見直しということを言っておられるのか。配慮の 意味をどう理解すればよいか。それをお聞きしたいと思います。 ○石井雇用均等政策課長  2点のご質問をいただきました。まず1点目ですが、女性の坑内での就労を一律に排除 しなければならない事情は乏しくなってきていると考えるという、この「一律」の意味 ということですが、これは、まさに現行の規制が女性の坑内労働についての就業を原則 禁止している、これを受けたものです。まさに原則禁止、本当に例外的なケースのみ一 部就労が認められるという、今の現行の規制の内容をとらえて一律と言っているとご理 解いただければと思います。  それから、2点目の妊産婦保護についても、「一律に排除しなければならない事情は 乏しくなっていたとしても」となっているけれども、妊産婦については特別な配慮が必 要だということで記載しているところです。ここでいろいろ書かれておりますけれど も、妊産婦について現行においても一定の規制がかかっているところです。規制をやは り維持しなければならないのではないかという観点から記載しており、特に現行の規定 について問題だとか、何か変えなければいけないとかということを念頭に置いて書いて いるものではないと理解しております。 ○横溝分科会長  よろしいですか。 ○吉宮委員  原則禁止という現行の仕組みを一律にそのまま維持する事情は乏しくなってきている ということであれば、二つの選択肢があります。一つは、女子一般まで拡げるというこ とと、そうではなくて、今臨時的な業務については必要な業務について認めるけれど、 さらに技術者というか、ある限定した者において、私どもは、規制改革要望があるから ではなくて、つまり規制改革会議だと思うのですが、そこから規制緩和しようと言って いるから検討するということではなくて、私どもの調査を見ますと、地下鉄トンネルに 従事しようとしている女性たちが今、労働基準法の制限があって自分の仕事ができない 現状にあると。したがって、それをできるようにしてほしいという要望が私どもに寄せ られていまして、そのことで専門家会合が言っているように、安全上の状況から見ると それを規制緩和してもいいのではないかという立場。したがって、先ほどの選択肢から 言うと管理・監督業務等を中心とする女性技術職員について就労可能とするということ でどうでしょうかということが私どもの考え方です。  ただし妊産婦については就労禁止ということ。先ほど、現行法における臨時に必要な 業務について妊婦については就労を禁止して、産婦については本人の申し出という、こ このところをどのように考えるか。  私どもは原則禁止と言っているのですが、建設関係の、具体的に要望があったのが公 務分野の地下鉄トンネルに従事しようとしている方々からの要望で、もう一つ現に民間 の建設関係の組合の女性労働者からもいくつか聞いたところ、技術者の中でもシールド 工法という工法がありまして、ここに従事している女性たちはかなり安全が確保されて いるし、特段禁止する必要はないのではないかという意見がある。もう一つ、山岳工法 というのがあるようでして、たぶん専門家会合は山岳工法も含めて調査をしたと思うの ですが、山岳工法については、どうも意見によりますと、まだ粉塵等が結構あって、そ こについては、技術者については良いけれども、一般作業員については十分引き続き考 慮する必要があるのではないかというご意見もありました。そんな理由もあって、管理 ・監督業務に関する女性技術者について限定的に規制を緩和するということでどうでし ょうかという提案です。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○川本委員  今のご発言で、少し確認させていただければと思います。今2点言われたと思うので すけれども、要はシールド工法等は安全だけれども山岳工法等については問題があるの で、管理・監督者については良いのではないかというお話でした。そうすると、この今 のペーパーで言いますと、一番下の行に書いてある女性技術者が行う坑内工事の監督業 務、管理業務、施行管理に関わる業務については、この中身であればOKであるというこ となのですかというのが一つ。それからもう一つ、上の表の部分なのですけれども、そ ちらで先ほど妊産婦については禁止すべきではないかということを言われたと思うので すけれども、そういう趣旨のご発言だったのでしょうか。確認です。 ○吉宮委員  先ほど専門家会合の十分な配慮という意味は、現行で認められている産婦については 就労はいいけれど本人の申し出だということも見直しなさいというのか、逆に言うと配 慮しすぎているというのか、そういうことで言っているのか。やはりそれは禁止すべき だと専門家会合がおっしゃっているのか、産婦について。  現行法は本人の申し出要件で認めているけど、そこをちょっとお聞きしたくて。その バランスはもちろん考えなくてはならないので。 ○横溝分科会長  よろしいですか。 ○吉宮委員  したがって、そこは私どもも状況を見て判断しようと思っています。 ○石井雇用均等政策課長  専門家会合について先ほどお答えしたつもりなのですけれども、再度申し上げます と、今、吉宮委員がおっしゃったように専門家会合で現行の規制が、これでは足りない という観点に立ってこの文章は書かれているのかというと、そうではありません。産婦 については、その母体の回復状況について個人差が大きいため、一律禁止ではなく個々 の申し出によることとしたほうが適当ということで現行の規制もなされているところで して、これで何か支障が生じているということではないのではないかという認識に立っ ております。  しかしながら、なぜ配慮しなくてはいけないかということについて、専門家会合につ いてはご議論いただいたものをここに記させていただいているということです。 ○横溝分科会長  それでよろしいですか。ではどうぞ、奥山委員。 ○奥山委員  専門家会合もですね、吉宮委員が事務局にお尋ねになった時に、ちょっと読ませてい ただいたのですが、必ずしも現行の産婦についての申し出の問題性まで言っていると は、理解していなかったのです。  その上で吉宮委員にお聞きしたいのですが、一応産婦については申し出がある場合に は就労させるという現行の規定をそのまま前提にした上で、今の対象労働者を女性全体 に拡大する。それから、職務内容が監督業務、監理業務、施工管理に関わるこういうと ころで書かれているのですが、この女性技術者については、産婦の場合もだめだという ご意見なのですか。つまり現行のこの枠ですね。限定されたこの業種について産婦につ いては申し出でOKとなっているわけです。だけど今度ご提案なさる、女性技術者につい ては産婦もだめだよという形のご要望というか、主張されているのですか。そこがわか らなかった。 ○吉宮委員  妊産婦禁止と確認したのです。現行の仕組みでは申し出ということですけれども、専 門家会合の報告をベースに検討したものだから、十分な配慮という意味をもう一回確認 しながら対応しようということで先ほど質問をさせてもらったのです。ですから、産婦 についても、うちの組合員の声を聞くと、シールド工法と山岳工法は環境が違うという 意見があるものだから、慎重に対応しなくてはまずいなと思って。  先ほどの質問は以上で終わって、また改めて私どももそこは検討したいと思います。 ○奥山委員  すみません。ありがとうございました。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○川本委員  今の点ですけれども、妊産婦のところの扱いですが、一応私どもとしては上の表で言 いますと、○×△という印ですが、同じ扱いでよろしいのではないかと思っておりま す。  それからもう一つ。解禁の部分については、女性技術者に限られた形になっておりま すけれども、先ほど吉宮委員から、作業員のところは粉塵の問題があるというご判断で す。その意見は、私どもとしても検討してみたいと思います。幅広でと、私どもは思っ ておりますので、少しここは検討させていただきたいと思います。以上です。 ○横溝分科会長  はい、わかりました。他に何かご意見はありますか。よろしいでしょうか。はい、ど うぞ。 ○佐藤(博)委員  確認なのですが、作業法で粉塵があっても現行法の労働安全法令上やるべきことはや った上で、それでも粉塵が出てしまうのか。それは当然やるということですが、それを 前提の上で、もちろん違法のところはあるかもしれません。基本的には、そういうもの をきちんとした上でも問題があるかどうかということで、考えていただければ良いかな と思っています。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○吉宮委員  今、女性就労は禁止されていますから、就労した場合どういう影響があるかというこ とは、全くデータがないわけですよね。それで現に民間の建設関係の方がいろいろ仕事 をしながら感じることが出ているものだから。 ○佐藤(博)委員  基本的には男性についての基準はあるわけですよね。それをきちんと措置した上の状 況を前提として、そこに出る状況というのが問題なのかどうかと議論していただかない と。もし男性でも問題があれば、それはきちんとしてもらわなければ困るわけですか ら、という趣旨です。 ○横溝分科会長  はい、それでよろしいですね。他にこの問題についてご意見ありませんか。  なければ、次にこれまでに取り上げた論点項目全体についてご議論をお願いしたいと 思います。なお、関連資料については、以前の分科会で提出された資料と同様ですの で、説明は省略したいと思います。ではどうぞ。 ○川本委員  ペーパーの順番でいきますと、妊娠・出産のところが前回確か時間切れで、もし今回 改めて議論するということであれば、意見を申し上げたいと思っております。 ○横溝分科会長  そうでしたね。はい、どうぞ。 ○川本委員  「妊娠・出産を理由とする解雇その他の不利益取扱いについて」ということで、資料 No.2-1ということになっております。前回、私も意見は言っておりダブりますけれど も、申し上げます。左側と右側に事項と不利益取扱いの内容として考えられる事例とい うことで左と右に分かれております。アルファベットが打ってありますが、左側につい ては、一番下の(I)「妊娠・出産起因の労働不能・能率低下があったこと」というとこ ろがありまして、ここについては、私どもはノーワークノーペイの考え方、あるいは能 率が落ちた場合については、働き方に見合った賃金という考え方を持っております。つ まり公正性の観点から見ても、能率低下に合った賃金という考え方でよろしいのではな いかということを主張させていただいたところです。  それから右側の方ですけれども、右側の一番下で(j)のところです。「募集・採用に おいて不利益な取扱いを行うこと」ということで、とらえ方の例として、要は「妊娠・ 出産の関係で職務の主要な機能を果たせるにもかかわらず採用を拒否することは不利益 取扱いと言えるのではないか」というところですが、ここは前回一度触れたのですけれ ども、もう1回改めてということなのですが、基本的には、募集・採用という部分とい うことについては、採用の自由権というのは、経営側にとって、大幅に認められている 問題でもあり、今後もそうあるべきだと考えております。  実は、契約締結の自由の、この採用の自由権あるいは契約内容の自由の問題あるいは 契約解消の自由と大きく分けて三つあると思うのですが、契約内容については、労働基 準法その他できちんと最低基準が決まっている。あるいは、契約解消については解雇権 の濫用の法理というのが積み上がってきて、労働基準法にも反映されることになってい るということです。したがって、やはり採用の部分の自由というのは基本的には自由度 というのはとても大事だと思っているところです。もちろん今は制約がありまして、こ の均等法で「女性であることを理由として」ということですから、それはもちろん禁じ ているわけですけれども、その他の自由度というものは確保しておく必要があると思っ ております。もう少し具体的に言いますと、採用の時というのはいろいろな中身で選考 するわけでありまして、能力を見たり、あるいは試験結果を見たり、あるいは面接を通 してその人の感じで判断をしたりします。採用については、何と言いますか、これだか らというのではなくて、非常にいろいろな要素を考えつつ、判断をしているところでし て、ここの部分に不利益取扱いとしての概念を持ち込むことについては、賛同しかねる ということだけ申し上げておきたいと思います。以上です。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○吉宮委員  これまでの議論を踏まえて、いくつか残っていると思うことを申し上げたいと思うの ですが、不利益取扱い禁止というのは、絶対にきちんと法律上明記すべきだということ で、何が不利益取扱いに当たるかということで、それぞれ議論をしないと労使のこれか らの取り組みも必要でしょうからここで議論します。  これはあくまでも、育児・介護休業法も多分例示という分け方をしているわけで、こ れ以外は不利益取扱いとは言わないという意味で議論しているわけではない。それを前 提にして、ポイントは、育児・介護休業法の不利益取扱いの指針を、妊娠・出産でも当 然やるべきだということを前提にしながら、さらにその育児・介護休業制度と妊娠・出 産の違うところはどこなのかということは、やはりあるわけです。  特に、これも言ってきたのですが、育児・介護休業制度は男女ともに取れるのです が、それはあくまでも請求すればという話で、請求すれば権利が発生するという。とこ ろが、出産の産前産後については、特に産後休業6週間という強制休業というのがある わけで、そこが非常に大きな違いとしてある。その産後6週間の強制休業をどのように して、例えば賃金上の取扱いとして、それを反映させるのか。あるいは昇進・昇格など に伴う、就労しないという事の評価をどう考えるかということは明らかに違うわけで す。そこのところの議論が残っているということです。  特に賃金について、使用者側はノーワークノーペイということですが、これに対して 6月の分科会で申し上げましたが、確かに民法もノーワークノーペイと言っているけれ ども、もう一方で民法はそれに伴う危険負担をどちらが負担するかということも言って いるのです。なぜ休業をしたかという理由に伴うのだという議論もありまして、そこで 強制休業というのはやはり妊娠・出産に伴う母体保護ということもあって定めているわ けですから、そのところの強制休業のところ、不就労を出勤と見なすというか、賃金に ついて有給とかということは言うつもりはありませんけれども、現行60%の医療保険か ら出ている、その取扱いについてどういう性格かと聞いたときに、生活保障ですとお答 えになったのですが、60%はどういう意味合いで出産に伴うものが支払われているの か。その根拠とも関連するのですが、そこのところをどのように理解すればいいのか。 昇進・昇格については、出勤と見なすということは、私はすべきだと思うのですが、特 に6週間というところがあるわけで。加えて、年次有給休暇の資格要件も出勤率という のを基準に定められていて、そこに産前産後休業については出勤したことと見なすとい う規定があります。その辺のところも産後6週間という強制休業という性格から定めて いるのか、その辺の議論がまだ不十分だと思いまして、この議論は残っているというこ とで、提起したいと思います。  二つ目に不利益の考え方が、先ほど川本委員がおっしゃったように左側の妊娠・出産 の内容と考えられる事項で、(A)から(H)までは私どももOKなのですが、残るは(I)のと ころをどう考えるかということが唯一残っています。その前にまず大前提として確認し ておきたいのは、諸外国もそうですが、研究会も、産休後の原職または原職相当職への 復帰を求めるのは、諸外国では大勢になっているし、合理性があると言っているわけ で、ここの確認を、例示であってもぜひしておきたいと思います。  問題は先ほど言った考えられるところの(I)の話なのですが、この書き方がどうなの かという、前回も指針の話を今ここで詰めているのですねという話をしたところ、い や、法律条文になるのだという話もあれば、そうではないという話もありました。いろ いろな選択肢があるのでしょうが。いずれにしても、私どもは妊娠・出産に起因する労 働不能・能率低下というのは当然あり得る話で、子どもを胎内に抱えるということに伴 って、その前とは明らかに違うわけです。もう一方で母性健康管理措置というのが事業 主に課されていて、それは適用しなくても、出勤したけれど、なかなか思うように仕事 がはかどらないということもあり得るわけで、そのことが原因で能率低下したから、休 まない人とのバランスの確保の観点からも、きちんと賃金なり処遇なりをきちんと評価 して、不利益として扱えることについては反対です。  それから右側の事項の例の「募集・採用についての不利益取扱い」つまり、(a)から (i)までは、これは育児・介護並びですから、これでOKなのですが、(j)については、こ れも前回申し上げたのですが、例えば母性保護条約の9条2項ですか、わが国は批准して いないけれども、ここの議論をする際に条約なども視野に入れて検討すべきだと思うの です。そこでは、言うまでもありませんが、女性の就業申し込み時の妊娠検査またはそ のような検査結果の証明を求めることの禁止を含めて、9条1項の措置の話をしているわ けですけれど、そこはきちんと踏まえてやると。職務上、妊娠・出産というのは、設問 することがどのように必要性が出てくるかということも考えるわけですが、いずれにし ろそういう観点からこの問題については慎重に扱われるべきだということと、それから 加えて申しますと母性保護条約8条1項は、解雇等の問題と不利益取扱いについて、きち んと挙証責任は使用者が負うべきだと書いてあるわけです。ここも私どもは、そういう 立場で、今回の不利益取扱い等について検討すべきではないかということを申し上げた いと思います。  それからもう一つは、公益の委員から盛んに、全体は正社員の話をしているわけでは なく、非正規社員の方も対象になるということも指摘がありますが、特に妊娠・出産の 不利益取扱いに対し、非正規社員の方も当然対象になります。ここで問題になりました 有期契約労働者の問題が議論になったと思います。  そこで育児・介護休業法は前回の改正で、すべての有期契約労働者に適用されず、限 定的にされました。しかし妊娠・出産はすべての有期契約労働者に適用される話で、例 えば契約を更新しない、契約回数を急に引き下げたことは、当然ブレーキになっていま す。そこも十分念頭に入れて、私は対応すべきではないかと思います。ぜひ残された課 題について議論していただきたいです。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○岡本委員  今のに関連しますが、先ほど募集採用において企業側の採用の自由権というお話があ りました。それぞれの企業が求める人材は、いろいろとあると思います。どういう形で 採用していくのか、どういう試験を受けさせるのかは、確かに企業の裁量権だと思いま す。ここでは、その上で職務の主要な機能を果たせるにもかかわらず、採用を拒否する ことが書かれています。つまり状況的にはすべてクリアをしていたとしても、妊娠をし ているという事実1点のみで、採用を拒否することまで、私は採用の自由権にはならな いではないかと思います。  結局このことを突き詰めていくと、企業は妊娠をしている方たちを採用していくに は、リスクが大き過ぎるということを、裏を返せば言っているようにしか、ある意味聞 こえない。そういう考え方が根底にあるとすれば、妊娠・出産の議論は、全く前に進ま ないのではないのかと思います。ぜひ妊娠をしている事実をもって採用を拒否すること は不利益取扱いだと、きちんと書き込んでおく必要があると思います。 ○横溝分科会長  どうぞ、前田委員。 ○前田委員  今のご意見ですが、有期契約社員が非常に多くなっているところでは、職務の主要な 機能を果たせるということについて、例えばこれからすぐ産休に入るであろう方、その 会社に育児休業の制度があれば取るであろう方がみえたとき、それを断ってはいけない とすると、人がいなくて、退職補充で採用するときに、その目的が達せないことになり ます。繁忙期のための要員の採用ということもある。今のご意見だと、日本の実情には 少しなじまないのではないかと思います。 ○横溝分科会長  どうぞ。 ○川本委員  (j)の話です。言葉が適切でなかったら許していただきたいのですが、率直に申し上 げます。採用のときに先ほどいろいろな条件で最終的に選考をして決めていくと言いま した。例えば、その人の感じがわが社には向かないと言って採用しない。この人はタイ プ的に少し暗いから、うちの会社の職務には向かないと思って採用しないこともあり得 る。もちろんその逆もあって、採用することもあります。そういう場合に、主要な職務 の機能を果たせると考えられたときでも、そのことをもって採用しないのではなく、他 の理由で採用しないことは多いにあり得ます。それをどう説明するか大変難しい場合が 多々あるということを考えると、これが法律で不利益取扱いに入ってくることは、非常 に対応を苦慮しなければいけないと思っています。  それからもう1点、先ほどの確認ですが、産前・産後の関係で、要は出勤と見なすと いうお話がありました。これについて、右側のところで言いますと、(g)「減給をし、 又は賞与等において不利益な算定を行うこと」とあって、不利益の取扱いの例がありま す。休業期間中の話であるとは言いながらも、「日割りで算定対象期間から控除するこ と等専ら休業期間は働かなかったものとして取り扱うことは、不利益な取扱いには該当 しないが、休業期間を超えて働かなかったものとして取り扱うことは、不利益な算定と 捉える。」となっていますが、要するにここがこれでは不足だというご指摘でしょう か。言われた意見の確認です。 ○横溝分科会長  いかがですか。 ○片岡委員  前田さんがおっしゃった点について私はこう思っています。先ほど有期契約の場合 に、ある一定の期間に何か目的があるプロジェクトとか、一時的な業務のカバーとして 必要とされる。そういうときに応募する立場から考えれば、例えば私が今職がなくて、 とにかく有期契約の仕事に就きたいが、仮に自分が妊娠をしているときに、どういう募 集内容か、どういう仕事が求められているか、その期間や、もともとの有期契約労働と いうことが、きちんと受ける側に伝わるものが用意されていれば、一つの判断として、 私は今これは難しいとなることです。採用のときに拒否できないということでなく、仮 に妊娠をしている人が応募することは当然あり得ます。それは募集する側のきちんとし た対応ということです。そうでないと有期契約といえども、いわゆるそれが雇用形態だ けの取扱いで、雇ってみたら妊娠をしていたとか、産休が目の前だとか、そのことを回 避すると私には受け取れました。そうではなく、現実的な対応をすればきちんと受ける 側は、対処できる問題ではないかと思いました。その点をまず申し上げたいです。 ○吉宮委員  川本委員のご質問について言いますと、要するに産後休業の6週間については、労働 基準法で強制的に就業させてはならないとあります。これは正しいと思います。それは 育児・介護休業法と少し違う点です。それを受けて賃金上、あるいはこれから昇進・昇 格等の待遇上の、どのようにそれを取り扱うかということはあります。賃金について は、出勤と見なした場合でも有給にするか、賃金を払わないでやるかという取扱いがあ ります。特に有給でも出勤扱いにしたからといって、賃金を払いなさいとまで言ってい ません。  したがって60%という医療保険から出ている性格との関係もありますが、賃金上につ いて、有給にしなさいと私は言っていません。しかし昇進・昇格の取扱いについて、不 就労と扱うのと、賃金は払っていないけれども就労と見なすのでは、多くの企業は就労 したか、就労していなかったかが、かなり昇進・昇格の基準になっていることが多いと 思います。それを考えると、産前・産後休業の産後6週間は、出勤したものと見なして 対応することがいいのではないかと思います。  育児・介護休業とどこが違うのかといった議論もある。そのところの議論が残ってい ると提案しているのです。 ○佐藤(博)委員  確認です。産前・産後を含めて、休業している期間、賃金を払えという意味ではな い。その後の昇進・昇格とか退職金等の勤続年数を見るようなものに、何か配慮が必要 ではないかというご意見ですか。 ○吉宮委員  そうです。 ○樋口委員  質問よろしいでしょうか。 ○横溝分科会長  どうぞ。 ○樋口委員  (j)の、均等研報告を参考にこういった事例が出ているということですが、職務の主 要な機能が果たせるにもかかわらずとありますが、果たせるかどうかは雇った結果論と してわかるわけです。今から雇うというときに、果たせるかどうか、どう見通せるかと いうことが、実は重要なポイントになってきます。例えば妊娠しているがゆえに、職務 の主要な機能が果たせないと経営側が判断した場合は、該当することになるのか、どう なのでしょう。  この均等研の報告の中身と関連しているのですが、果たせるにもかかわらずと、何か 客観的に書いてあるのですが、実は客観的な話ではないです。今から雇うわけですか ら、どう見通せるのかという話だと思うのですが、そこはどう解釈しているのでしょう か。 ○奥山委員  報告を出したときの議論、かなり前ですので細かなところまで記憶は定かではありま せん。この趣旨は要するに、妊娠している女性が、仮にある会社の募集採用に応募した 場合に、妊娠していることで、うちの仕事には向かないとする場合については、妊娠を 理由とする方に重きを置いています。  妊娠・出産を理由とすることは、日本の均等法の中では女性差別・性差別という枠で つかまえないで、別の枠でつかまえています。諸外国では妊娠・出産にかかわることを 理由とする取扱いを、性差別の枠の中に入れています。つまり不利益取扱いとしてで す。そういうことを、ここで言おうとしています。  理屈から言えば、妊娠・出産を理由とするような形で募集・採用を拒絶した場合につ いては、一般的に不利益取扱いにあたるだろうと考えています。  ただし今日、皆さんがおっしゃっている議論から踏まえると、原則的にはそうだけれ ども、仮に会社側が、こういう仕事に就くとき、妊娠・出産が、職務の主要な機能を果 たさない場合は拒否する。それは特別の合理的な個別の理由に当たり得るのではない か。そういう分け方で、理論上はいけると思います。  ただおっしゃる通り募集した時点で、この職務にというのは、この言葉だけだとわか りにくいかもしれません。 ○横溝分科会長  それでいいですか、樋口委員。 ○奥山委員  要するにわが国の場合は、募集・採用の仕方が、新規学卒一括採用という形で、あま り特定の職種を限定しないで、採用するのが従来のやり方です。そのあと適材適所を考 えて特定の仕事に就けていくという形です。アメリカやヨーロッパは、基本的にはジョ ブで、その仕事について、妊娠・出産を考えたときにどうなるかと議論しますので、特 定の職種において、妊娠・出産が合理的な理由になるのが難しいという前提がある。  ですから日本の募集・採用に当てはめると、この言葉の持っている意味が、わかりに くいところがあるかもしれません。 ○樋口委員  先ほどからの議論を聞いていて、例えば数カ月後には出産することが予定されてい る。そのときには休暇も取ることが想定されています。想定とは、ここで言う職務の主 要な機能を数カ月後には果たせなくなることがわかっているわけです。これがわかって いる上で採用しないことは、不利益な取扱いになるのかが、議論になっていると思いま す。それは職務を果たせると考えるのでしょうか。数カ月後には果たせなくなるという ことが分かっている。そこのところはどう解釈するのか、法律上どうなっているのでし ょうか。 ○横溝分科会長  どうぞ。 ○奥山委員  私が答えるべきことかどうかわかりませんが、労働法上の法理からすると、そういう 有期の人を募集・採用する場合、近々にそういう状況になることが、わかっているよう なときは、個別のケースとして、それは拒否をするような場合でも、合理的な理由があ ると裁判所は言うかもしれません。  一般的に正社員の場合には一時的な状況ですから、それをもって拒否するというの は、合理的理由なしとなると思います。そういう点では結局雇用形態がどうか、どうい うところに勤務させるかとか、それが事前にわかっていれば、そういうことを考慮の上 で使用者側が出してくる。そういう拒絶の理由との合理性の比較考量で判断されるので はないでしょうか。 ○樋口委員  わかりました。 ○横溝分科会長  それでいいですか。どうぞ吉川委員。 ○吉川委員  先ほど川本委員と前田委員からも話がありましたが、採用については、例えばどうい う内容だから自分にはできると応募者の方は思っても、採用する側と価値観の違いもあ りますし、考え方の差があります。本人がいくらできると言っても、採用側の感覚と違 うのであって、私は採用のところは、もっと自由に先ほど川本委員がおっしゃった方向 でいくべきだと思います。この内容が果たせるにもかかわらずといった先生のご発言と も相共通するところがあると思います。 ○横溝分科会長  どうぞ。 ○奥山委員  私の先ほどの発言は、募集・採用において不利益な取扱いをどう評価するかというと きに、例えば、妊娠・出産を理由として採用を控える、拒絶することについては、基本 的には、個人の考え方としますと、不利益取扱いに当たると考えます。  ただし、それを法律上どう救済するかはまた別で、今まだ議論が出ていません。例え ば日本の裁判所では三菱樹脂事件最高裁判決で、思想・信条を理由とする本採用拒否の ケースがありました。採用の自由を最大限に前提において、基本的には不法行為にも該 当しないという裁判所の判断です。学者はそれに対して、かなり疑問を持っています。  けれどもそういう観点からしたら、それは不利益取扱い、差別的な取扱いとしても、 救済をどうするかとなるときに、採用強制までやれるか、あるいは損害賠償の請求がで きるかどうかとなりますと、今の現行の裁判所の考え方からすれば、かなり難しいとこ ろがあります。それを別途、置いて考えると、不利益取扱いにあたると私は考えている わけです。その場合、個別に見たときに、先ほど樋口先生がお出しになったような、そ のような状況ではできないような仕事にすぐに就けなければいけないということがある のであれば、それを理由にして、すみませんけれども、この仕事を予定していますので 無理ですと言っても、合理的な理由になり得ることはあると言っているだけで、募集採 用が全くフリーだという意見ではありません。 ○横溝分科会長  どうぞ。 ○川本委員  今、先生が言われた妊娠・出産を理由として、職務の主要な機能を果たせるとするな らば、そのときに採用拒否したことは不利益取扱いに当たるのではないかということで すが、会社は、その人が妊娠していることをもって採用を拒否したわけではない、ほか の理由ですと。例が悪いかもしれませんが、何となくこの人は暗いから会社に合わな い、採用しないということがあった場合、先ほど言ったように、実際救済という話にな って、例えば損害賠償要求が起きたら、どういうふうに説明できるか非常に難しいで す。採用ではそういう見地で採っていますから、そうするとそれは妊娠を理由に断った のではないですかと言われたときに、非常に答えにくい話になることも含めて、ここの ところは私は採用権の自由で考えるべきなのではないかと言っています。 ○横溝分科会長  はい。 ○今田委員  この、職務の主要な機能が果たせるにもかかわらずというのは、要するに、妊娠して いるから不利益なのではなく、合理的な理由がないにもかかわらず、妊娠を理由として 採用しなかった場合には不利益であるということでしょうか。  先ほどのように暗いからというのは、ある職務に必要な明るいパーソナリティーを必 要とする、そういう人を採りたいという人事戦略上の発想から、暗い人は採用しなかっ た。結果としてそれは不利益ではない。たまたまその人が妊娠していたのかもしれない けど、それは妊娠を理由としたわけではないと、そういう理解でいいのですか、川本委 員。 ○川本委員  ですから、それが合理的な理由として果たして認めてもらえるのだろうか。もっと極 端にすれば、この人は何となく私は好きではない、この会社に採用したくないと、そう いうこともあるわけです。  採用というのは、実は感性に基づいているところもあるわけで、非常に縛りをかけに くいと申し上げています。ですからこの合理的理由というのは、どう話すか非常に難し いということです。 ○横溝分科会長  そうすると川本委員は、妊娠したことを理由として、本当は暗いから会社は採らなか った。極端に言えば、会社に合わないから採らなかったのに、労働側が、私が妊娠した ことに名を借りて採用しなかったということを恐れてという意味ですか。 ○川本委員  そういうことが起きたときに、その説明で通るのでしょうかと言ったときに、合理的 理由かどうか非常に難しい。判断できない問題ではないだろうかと思っています。した がって、これを一律に不利益取扱いとして禁じることは、難しい話ではないでしょう か。 ○今田委員  難しいけれども合理性をきちんと立証するという責任はある。そういう文脈で、難し いからそれは今しないと言うのは、議論の立て方としてはどうでしょうか。 ○横溝分科会長  前田委員、どうぞ。 ○前田委員  今、日本の企業の中で、採否の連絡をするのに、採用できなかった理由を公にして通 知している会社はほとんどないと思います。採用をしましたということと、今回は残念 ですがご縁がありませんでしたということしか言っていないと思います。従って、こう いう問題が起きたときには非常にトラブルになりやすいと思います。 ○佐藤(博)委員  基本的に今、日本の特に正社員の採用の仕方が、職務を限定して採っているわけでは ないので、その上にできた採用の慣行があるわけです。その全体に影響を及ぼすのでは ないかと言われています。ですから妊娠のことだけ議論して、これは不合理じゃないか という議論が成り立ったとしても、全体の影響まで議論して、考えなければいけないこ とで、他の採用の仕組みまで影響してくる。そこまで視野に入れた上で、やるかやらな いかという話だと思います。それを問題提起されています。 ○横溝分科会長  そこまで視野に入れて法規制するかということでしょうか。はい、どうぞ。 ○奥山委員  議論の方向がずれるかもしれません。基本的な市民法の原理・原則の下で契約の自由 があるわけです。企業側に採用の自由は、基本的には大幅に認められています。今、個 別の法規で採用の自由が少しずつ抑えられてきていても、原理・原則は、契約の自由、 採用の自由があります。使用者は、採るか採らないか。採る場合、どういう方法で採る か、何人採るか、すべて基本的に自由です。そういう自由と、例えば思想・信条を理由 として採用を拒否する自由、あるいは今日議論している妊娠・出産を理由として採用を 拒否する自由と、理論的には少し違います。そのときに暗いから、あるいは会社の社風 に合わないから、切るという切り方。これは必ずしもただちに違法だとは言えないと思 います。  仮に切られた人が、たまたま妊娠していたときに、それは口実で、妊娠していること を理由に採用を拒否されたとして、女性が裁判所に行って、それを理由として採用を拒 否されたと言う。  会社側の方はそうではない。要するに社風に合わなかったとしたとき、どれが決定的 な採用拒否についての動機付け、理由になるかは、基本的に裁判所が基本的に最終的に 判断することです。そういう問題は、妊娠・出産にかかわらず、差別が成立するかどう か、違法な差別が評価されるかどうか、常につきまとう問題ではないでしょうか。だか ら私は、採用の自由を否定するのではなくて、それが前提にあった上での議論をしてい ます。  企業にとって採用の自由は根幹です。憲法の22条と29条に基づく大きな権利ですか ら、それは否定されるべきでないと思います。それは一つ押さえておいて、その上で個 別の事情が出てきたときに、どう絡まるかだと思うのです。 ○横溝分科会長  ご意見ありますか。 ○片岡委員  今の現行法では、解雇のみ禁止をしていることに加えて、不利益な取扱いを禁止する ことは、大変重要で急務と思っています。どういう法律の見え方になるかによって、雇 う側も雇われる側も十分それを理解した上で、雇う雇われるという関係になっていく。 そういう点でも、例えば法律が不利益取扱いを禁止して、ここで示された資料でいえ ば、(a)から(h)が具体的に法律として見えるということは、今申し上げたように不利益 を被らない効果も期待できますし、生じさせないという人事管理や労務管理も期待でき ると、私は思っています。原則の意見として、不利益取扱い禁止を法制化することが大 変重要だと思っています。  その上で、先ほど吉宮さんが例示は例示であり、例示以外は含まないのではないこと と、育児・介護休業と並ぶとして、育児・介護休業以外に、妊娠・出産という機能を考 えた上で、加える例示も先ほどおっしゃったので、その意見に賛成をします。なお具体 的に、例えば指針の中で示す必要があると思っているのは、例示(a)から(i)に流れてい く流れというのは比較的わかりやすいことを書いていると思うのです。例えば、先ほど から出されていることを私なりに例示として明らかにすべきだというのは、採用時に妊 娠・出産の質問をするということはあってはならないということが例示されることが非 常に重要だということと、妊娠している事実を確認しないということも、そういう例示 の中で見えるということは必要だと思います。この間、妊娠・出産で辞める人が多い状 況をどうしていくかという一方の働き続ける環境づくりと同時に、少子化の問題を考え る上でも妊娠・出産の不利益取扱い禁止を男女平等の基盤にすることは、大変重要とい うお話をしてきたと思います。こういうことが入り口のところで明らかにされないと、 妊娠・出産を躊躇するというか生まない選択につながると私は非常に容易に想像できま す。  もう一度パブリックコメントやこの間連合が、実態調査を行った中で挙げられている 職場で起きていることを確認すれば、今申し上げた2点はこの例示の中できちんと、も ちろんそれ以外に身分変更や通えない所への転勤といった問題があるのですが、それは 比較的この中で、重ねて見えると思いました。  もう一度整理しますと、指針の中に妊娠・出産の質問禁止、妊娠している事実の確認 等はだめなのだということを入れていく必要があると思います。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○奥山委員  吉宮委員に確認も含めてお尋ねしたいのですが、先ほども言いましたように良いか悪 いかは別にして日本の現在の裁判所の考え方としては、この募集・採用という入り口の ところでは最大限に採用の自由を認めるような形の判断をしているわけです。そういう 判断の下で仮に考えるとするならば、こういう妊娠・出産を理由とする採用の拒否を不 利益取扱いだ、しかも違法だという形で考えたときに、どのような救済と言いますか、 それに対する法的な対応というものをお考えになっているのか。今片岡委員がおっしゃ ったように、間違っていたら訂正していただきたいのですが、妊娠・出産を理由とする 採用のところでの指針で、書くとすれば指針で落とし込んでいくと思うのですが、その ときに、面接の際に使用者は妊娠というようなことについての事実も聞いてはいけない というような中身にしなければいけないというようなことでの発言だったのでしょう か。 ○片岡委員  その点だけでいうと私の意見は、聞くことは不利益に該当するということです。 ○奥山委員  ということは聞いてはいけないということですね。 ○片岡委員  はい、そうです。 ○吉宮委員  この議論は均等法の募集・採用について禁止したときに議論がありまして、女性であ ることを理由として採用しなかった、違反だから採用しろと言うのかというときに、そ こまでは無理だという話があったのです。今おっしゃったのも、妊娠・出産を理由とし て採用できないというときに、採用しろというところまで法律は求めるのかというの は、少し議論を要するのだと思います。  ただ、逆にお聞きしたいのですが、ドイツの規定で、日本の法律もドイツの影響は大 きいと思いますが、女性労働者の採用に際し自らが妊娠していることを使用者に告げる 義務はなく、使用者からの質問に答える義務もないという条文です。この場合、使用者 側がこれに違反した場合、強制的に言わせたというようなときに、損害賠償をどのよう に求めているのかわかれば。 ○奥山委員  ドイツの場合も採用強制まで確かしていないと思います。不確かなのでペンディング にしておいていただきますけど、1カ月か2カ月くらいだったら実費、交通費ですね、東 京で試験をした時に大阪から来たとか全国からというと、宿泊費や交通費など実費がか かります。その実費弁済とそれから1カ月か2カ月くらいの損害賠償となり、採用強制は やっていないと思います。  アメリカは法制の枠組みが違いますからこういう差別禁止法はエクイティという法理 に基づいていて、採用の強制はやるのですけれど、他の日本が伝統的モデルにしている ような国での採用強制は、私は不勉強かもしれませんけれども無いです。まして、今日 本の裁判所は不法行為にも該当しないという原則で考えているものですから、仮にこれ をだめですと言ったときに、どういうような救済の手だてを考えられるのかなと思い、 そういうのがなければ、なかなか議論をしてもというと怒られますが、難しいと思いま す。 ○吉宮委員  均等法の募集・採用のところの議論と類似しているのかなと。厳格に言うと議論して いませんけれど、損害賠償についてはまだ検討していませんので、皆さんの議論を踏ま えながら対応していくことも必要だと思っています。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○佐藤(博)委員  先ほど吉宮委員が言われた産前産後の休業のところの扱いで、賃金についてはまだ入 られているわけではない。昇進・昇格、例えば退職金という話なのですが、そのときに 例えば昇進・昇格について、ある程度、職能資格制度などで滞留年数を満たした上で、 一定の能力というものは多いです。そうしたときに、滞留年数を見るときには例えば2、 3カ月抜けている場合には見ないで、だけど能力の方では、下駄をはかせろではないで すよね。能力で見るのは、当然妊娠・出産の時期に休んでいても他の人と同じ能力の人 もいれば落ちる人もいる。それを見ることまで見るなと言われるのかどうか確認したい のが一つです。  もう1つ退職金について、これは賃金と同じところがあって、退職金の部分にも算定 しろと言うと、経営側にとって明らかに持ち出しです。そうしたときに、その賃金につ いて経営側に出せと言ってないということは、多分女性を雇うとコスト増となるという ことは女性の雇用機会にマイナスだというご判断があると思うのですけれども、退職に ついても同じことが起きる。国に出せというのは別だと思いますが、企業に負担させる ということはどの企業も同じように妊娠する人が同じ比率で発生すればいいですが、そ んなことはないです。退職金についてはどう考えられるのかと聞きたいのですが。 ○吉宮委員  出産後の能率低下というものをどう考えるのかというのは、理想的に言うと休暇中に 失ったさまざまな会社情報それから能力の訓練というのを、もう一度出産後の休暇明け に事業主の皆さんに出来る限り能力の維持ができるように、訓練・研修をしてもらうと いうことなどは、当然あっていいと。育児・介護休業制度も復帰プログラムみたいなも のの用意を求めていますから、そういうことをやった上で、かつ能力低下を見ないとい うことを私は言うつもりはありません。  それから、出勤と見なした場合に全部100%見るのか、あるいは2分の1まで見なして 見るのかとか、そういう選択はあると思います。現に今の日本の中にあるように聞いて いますから、そこは相談であって、ゼロだということは強制休業ということを法律でう たっていることからすると少し乱暴すぎるのではないかという見解なのです。2分の1を どうかというのは、なかなか言いにくいのですが。 ○横溝分科会長  どうぞ。 ○佐藤(博)委員  実際上ここに上げているような不利益取扱いで現在均等室に相談が持ち込まれるもの がどのぐらいか、論理的にこういうことがあるからここまでカバーすべきだということ と、実際上どういう問題が多くてもちろん100%問題であれば想定すべきだという議論 はあると思うのですけれども、問題が多くて実際上こういうことがあると思うのです。 解雇させるようなところは不利益で休んでいたところは賃金を引いていたり、セットに なっていることが多いと思うのです。普通はそういうことをやっていなくて、解雇をや るようなところはいろいろなことをやっているというパターンが多いのではないのです か。例えば解雇や降格をきちんとやっておけば事実上、下の方もカバーされる可能性も あるのではという気がしますので現状はどうなっているのか少し教えていただけるとあ りがたいです。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○石井雇用均等政策課長  一度この分科会にも均等室に寄せられた相談というものを資料としてご提示したこと があります。今非常に多いのは解雇です。それと並んで多いのが有期であれば雇止め、 退職の勧奨、それから最近多いと思っておりますのは身分変更の強要、こういったもの であるということは先ほど、佐藤委員おっしゃった通りです。 ○横溝分科会長  よろしいですか。 ○佐藤(博)委員  はい。 ○横溝分科会長  どなたか先ほど挙手なさいませんでしたか。川本委員ですね。先ほど手を挙げていた のは。いいですか。 ○川本委員  先ほど佐藤委員の方から賃金の関係の話があり、能力で見るのは大丈夫だというお話 がありましたけれど、その能力とよく言われますが、会社の管理というのは、現在はど ちらかというと潜在能力ではなく発揮能力ということになっているので、それは働いて いる姿を見て評価されていると思っておいていただいた方がいいということで少し申し 上げました。  ただ、先ほどからゼロでいいのかという話ですけれども、ゼロでいいのではなくて、 私はむしろなぜ会社側が払わなければいけないのだろうと、そういう率直な疑問です。 強制ということであればそれは企業にその部分をペイしろという話ではなくて、それは 違ったところの話になるのではないかと。企業は皆さんが一生懸命働いてくれる中で商 売をして、売り上げを上げ、その中の付加価値を上げて、そこから分配ということで賃 金を払っている、または逆に賃金を払った上で、一生懸命働いてもらうということにな っているわけですが、その部分をそこまで払えとなると非常にきつい話だと思っており ます。そのことにつきまして退職金等も絡んでくると思っています。  それから先ほど片岡委員から(A)から(H)それから(a)から(i)というお話がありました けれども、私は(I)と(j)が反対ということを申し上げたのですが、その他のところにつ きましてはそれなりに前向きに検討していきたいと思っています。まだ結論めいたこと は言えないのですが、前向きに中身について今日のご意見も基に精査をしていきたいと 思っています。ただ先ほど昇進・昇格について反映しないと言いました。これも結構難 しい話でありまして、ちょうど大事な評価の期間にお休みを取られていたときに、果た してその部分についてすべて出勤したものと見なして前の評価のままで引っ張って昇進 ・昇格を判断するということが、従業員内の公正性に合致するかという問題もあると思 っています。そういうことも含めまして改めてまた内部で検討したいと思います。以上 です。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○吉川委員  今の内容と同じなのですけれどもポジティブ・アクションのところで、中小企業は実 際には、やっているのだけれども意外と気がついていないという文言がありましたけれ ど、まさにそういう状況と同じで、賃金については当然強制の休業ですから支払いをし てないのが現実ですけれども、中小企業の場合は一人一人の存在が非常に大きなウエイ トを占めますので、ある意味で個人の能力が非常に出産に対しては、はっきり表れるケ ースが非常に多いです。出産で休んだ後も前と同じように能力を発揮している人は結構 いらっしゃいますので、そういう方についてはお休みしようがしまいが昇進・昇格に入 っていかざるを得ないというか、入れなければ陣容が不足してしまうという状況があり ますので、この辺については非常に個人差があるのと、大きい企業と小さい企業の差と いうものもあると思います。それについては意外と既に取り入れているところもあるの ではないかというふうに感じますが、退職金等につきましては、全体のことからいきま すと考慮するのではないかと感じております。 ○横溝分科会長  他にありますか。山崎委員。 ○山崎委員  先ほどからいろいろとレベルの高いお話をされているのですが、中小企業の場合、例 えば採用の場合も本当に小さい零細は、社長が経営者であり従業員であるのです。そう しますと例えば同族会社で固められていておりますので、身内が妊娠した、あるいは失 礼ですが近所のおばさんが妊娠されたといった場合に、職をある程度探すようなことも 考えてうちは人があれだから来ていただいて、軽い仕事、事務からやってみないかと、 妊娠するとお金もいるし大変だろうからという、結構そういう実態が多いのです。今の 議論とはかけ離れていますけれど、そういう実態もあるのですから、一概に不利益があ るからとは本当に小さい所というのは割り切って考えられないところがあると思いま す。少しその実態についてご理解いただければと思います。 ○横溝分科会長  はい。 ○吉川委員  そういう小さい所だけでなくて100人未満くらいの会社というのは昇進・昇格につい ては先ほど申し上げたように、そういうことを言っていられない、人材が必要ですから 昇進・昇格の対象に入れているというのが現実だと思います。 ○横溝分科会長  はい、岡本委員。 ○岡本委員  いろいろな事例があると思いますので、それぞれもう少しきちんと細かく議論を指針 の段階でしなくてはいけないと思うのですが、だいぶ昔に私どもが提出した資料だった と思うのですが、大企業なのかもしれませんけれども、そもそも産前産後休暇を取った ということをもって昇進・昇格要件から外すというようなことも、実際就業規則に書か れていたりすることがあるわけです。  特に産前産後休暇というのは1年間休んでいるわけではなくて、育児休職であればま だ昇進・昇格期間として判定期間としてわかりますけれども、半年でもないもっと短い 期間をなぜ要件にしていくのか。つまり初めから外してしまうというようなことは明ら かに不利益な取扱いではないかと思うのです。  それぞれの実態がどのような期間で昇進・昇格を見ているのかということも、多分企 業によって違うと思うのですけれども、その辺りはきちんと見ておいていかないといけ ないと思います。 ○横溝分科会長  だいぶ時間も経過しておりますので、不利益取扱いについては皆さんそれぞれ持ち帰 ってご検討というご発言も出ておりますので、項目にとらわれずと言いながら変ですけ れども、間接差別に関してのご意見があれば。 ○吉宮委員  その前に言い忘れたのというか、先ほどの母性保護との関連で言うしかなかったので すが、政府の与党の少子化対策で、出産一時金を引き上げるというような話が出ている のですけれど、今回の議論のテーマでいうと私は前から医療保険から出る給付金につい て、60%でなく70%(3分の2)以上というILOの条約もあるから、それを検討するべきだ と。経営の皆さんも企業よりも社会的にというご意見もあるので、私の言っていること は全く俎上に上ってなくて、出産手当金ですか、出産費用に掛かるものだけを上げると いう話です。樋口委員からは3分の2というのは割合なのか額なのかと言われています が、ILO条項では3分の2というのがあるので、その辺の批准というのも私も視野に入れ ているものですから、出産一時金のところにぜひ、今予算編成期ですけれど当分科会で まとめて、これはタイミングがあるものですから、ぜひ私どもは具体化してほしいと言 うことを申し上げたいと思います。 ○横溝分科会長  それはこの改正案とは別にとおっしゃるのですか。 ○吉宮委員  切り離すと思うのですが、この取扱いは早くやらないと間に合わないというか、医療 保険の改正もこれではということですが、厚生労働省といっても多分事務局は厚生行政 で違うとおっしゃると思うので、ぜひ当分科会で意見を反映させてもらいたいと思いま す。 ○石井雇用均等政策課長  よろしいですか。  中間取りまとめのときにも労働側からそういう意見があったということでして、その 資料につきましては、担当部局の方には伝えてあります。しかしながら今おっしゃられ たように検討する場が別で、それから恐らくタイミング的に集約する時期もほぼ同時と いうことになるのでないかと思いますので、またこういうご意見があったということ は、担当の方に伝えておきたいと思います。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○吉川委員  先ほどの採用の不利益取扱いのところに戻りますけれども、あまり多くを法制化して いって結局は裁判うんぬんということは、会社にとっても本人にとっても非常にマイナ スな要素が多いわけですから、そういう意味では紛争を起こすための、起こすためとい う言葉は少し適切ではないですけれども、そういう要件をあまり私は作るべきではない のではと思います。話し合えばそれなりにわかることはたくさんあると思いますので、 規定をそう多く作るということに対して反対をいたします。ですから、採用に関する自 由というのはもっと開いておくべきだというふうに申し上げたいと思います。 ○横溝分科会長  ご意見どうぞ。林委員。 ○林委員  募集・採用の件なのですけれども、要するに明らかな出産を理由とする募集・採用と いうのまでできないと言うことはおかしいわけでして、例えば片岡委員がおっしゃられ たように、今まで1次面接、2次面接と通っていっていい雰囲気で来たのに、出産や妊娠 を聞かれて、それでがたんと方向が変わったとか、ある意味では明らかに妊娠等を理由 とするものであるということが推測されるというようなものについては、この中で扱わ れる不利益取扱いとして扱われるべきであろうと。ただ今の判例は企業の自由を認めて おりますから、そういうかなり明確なものに限っては、不利益取扱いになるというぐら いになるのではないかというような気がします。 ○横溝分科会長  何かありますか、はい。 ○川本委員  間接差別の方の関係でご質問もあるものですから、資料No.3ですが、間接差別の導入 につきまして、私どもも定義につきましては、ここの一番上に書いているもので確認を させていただいたわけでございますけれども、間接差別概念導入そのものにつきまして は賛同しかねると主張をずっとしてきたわけでございます。ただ、その過程で後ろに別 紙がついておりまして(1)〜(7)がありましたけれども、これにつきましては、間接差別 の概念を導入するのではなくポジティブ・アクションのところで取り込むという考え方 もあり得るのではないかというような主張をさせていただいて、その際に細かいことは 言っておりませんが、(1)から(4)というようなこのそのままの中身ということではな く、このようなものについてはポジティブ・アクションで、あるいは(5)から(7)のよう なものにつきましては、そこの対象とすべきではないというようなことを申し上げた経 緯がございます。その際に奥山委員にご質問なのですが、私が主張したときに委員の方 から、もしもそういうことであるならば今のポジティブ・アクションの規定のままでは だめなのではないかというようなご発言があったかと思うのですけれど、どういうご趣 旨だったのか、もう一度承ればと思うのですけれども。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○奥山委員  今のご質問は、間接差別とポジティブ・アクションが二つ絡まった形でのお話になろ うかと思うのです。この問題について私もこれまでこの委員会でも2、3お話をさせてい ただいたわけですけれども、報告書の中でもきちんとそれは説明していますように、基 本的には間接差別の概念とポジティブ・アクションという施策とは全く道具としては違 うものなのです。間接差別のところで結果の平等やポジティブ・アクションとの違いを 少し説明したものが3項目ほどあります。間接差別はあくまでも結果としてそういうも のが違法な差別に当たると言うような概念で構成されているわけです。  対しましてポジティブ・アクションというのは、ある使用者の行為が違法になるかど うかということではなくて、それぞれ企業・職場の中で女性労働者の能力発揮のために 従来の違法とは言えないまでも障壁になっているような制度とか慣行とか基準とかそう いうものを変えて見直して雇用管理の改善を果たしていこうというための制度なわけで す。そういう点では、私は何度も言いましたように、ポジティブ・アクションをやるか ら間接差別はいいのだと言うような議論にはつながらないということです。  仮に今川本委員がおっしゃったような議論に乗るとするならば、現状のポジティブ・ アクションはあくまでも自主的な取り組みという形で設定をしておりまして、その設定 も情報の提供や助言という形になっている。そのままではポジティブ・アクションとい う形である程度中身的には重なる部分もありますから、ポジティブ・アクションでバッ クアップすることも大事だと思いますけれども、現状の20条の枠組みの中での対応だけ では、間接差別に代えてポジティブ・アクションで押していけばいいだろうということ には、なかなかならないのではないかということで、もしそういうことをやるのであれ ば別途ポジティブ・アクションについてもう少し実効性の図れるような手だて、例えば 雇用状況分析とか、それをあるしかるべき組織に報告するとか、それから報告の上でそ の辺は少しいろいろな議論があろうかと思いますけれども、行動計画を立てるところま である。もちろんすべての事業所とはなかなかいかないでしょうから企業規模を考えな がらそういうところまである程度やっていただくような仕組みにしていかなければ、難 しいと思っているのです。  そういう点では、繰り返しになりますが間接差別の問題とポジティブ・アクションの 実効性の問題とは少し理屈の上でも実態的にも違うものだということです。仮にそれを 少し除いてポジティブ・アクションの施策の問題についても、今のような状況では女性 労働者の公正な雇用機会の確保と処遇の方にはなかなかつながりにくいところがあるの ではないかというふうに考えています。 ○川本委員  どうもありがとうございました。よくわかりました。 ○横溝分科会長  片岡委員。 ○片岡委員  今のご説明を伺った上で川本委員に教えていただきたいのですけれど。例えば一番わ かりやすい例が(1)だと思うので、先ほど(1)から(4)はポジティブ・アクションでやる のが望ましいと前回区分けをなさったのですけれど、この(1)というのはポジティブ・ アクションをやるとなると例えばどういうことを考えられるのか、少し教えていただけ ますでしょうか。ポジティブ・アクションと間接差別という違いがあるので、わかりや すくしたいので教えてもらいたいのですが、どうでしょうか。(1)の募集・採用にあた って身長・体重・体力を要件というのをやっていますと、これでポジティブ・アクショ ンで男女の差を埋めていきますというとき、どういうことをやるのですか。 ○川本委員  要するに例えば(1)に左側と右側の説明がありますけれども、これがこのままがいい かどうかは別問題として、ここに書いてあるような内容に前向きに取り組んでいます。 つまり募集・採用にあたって、一定の身長・体重・体力を要件とするような場合におい て、職務関連性が無いのにこういうことはしないように努めてくださいとか、あるいは 職務関連性がある場合にこういう要件をすることについて、ちょっと前の方ですかね、 そういうことから、職務関連性が無いのにこういうことはしないように、前向きに取り 組んでください。そのような話になるということです。  この組み合わせになるというようなイメージです。 ○片岡委員  合理性のある使用者側の抗弁があれば、それは間接差別とはならないということであ って、それをポジティブ・アクションというふうには言わないのではないかなというの が、今の説明では、私はそう受け取るのですが、違いますか。 ○川本委員  先ほど奥山先生もご説明したように、ポジティブ・アクションと間接差別そのものの 概念とは実は取扱いが最終的には違うわけであります。  したがって、違反になるという概念をまだ持ち込むのは早いのではないか。したがっ て反対だという趣旨を申し上げた中で、それであれば、まずこういう概念を企業は前向 きに取り組むことによって浸透させていくということもあっていいのではないかという ことで、ここに書いてあるような内容について、要は違反にはならないけれど、ポジテ ィブ・アクションで主体的に前向きに取り組んでいく、こういう考え方を入れていくと いうことを推し進めたらどうだろうか、という趣旨で申し上げたということでありま す。 ○佐藤(博)委員  ポジティブ・アクションでやればいいっていう意味じゃないですよ。現行のポジティ ブ・アクションで言えば、例えば女性の採用というのをやれているかどうかとか、配置 がどうなっているか、昇進について見直していくわけですね。  ある会社で採用を見たら、採用だけじゃなくて応募も女性は少ない。そうすると、こ れはどこに原因があるのかと考えるわけです。例えば大卒を採るのだが、女子学生のと ころに募集要項が行っていない、というところから始まって、あるいは採用の条件に身 長が書いてある。例えばですよ、こういうことを見直していって、なぜ女性が採れない のかっていうような原因があれば、それを変えていくというのがポジティブ・アクショ ンです。その中の一部に入り得る可能性はある。  つまりこんなもの必要ないのに、昔は仕事がそうだったけど、変わったにもかかわら ず残っていたということに気づいて、変えるということはあり得るだろう。ですから、 ポジティブ・アクションの中に入ってくるとは思います。  例えば採用の見直しっていうのは、現行のポジティブ・アクションで企業が取り組ん でいるっていうのはそういうことです。例えば採用で採れていないとすればどこに問題 があって、情報提供に問題があるのだろうか、採用基準に問題が、あるいは面接担当者 がやはり男女で見ているのか、というようなことを洗い出していくことです。すると当 然、このような採用基準も入ってくる可能性はあると思います。 ○横溝分科会長  はい。 ○吉宮委員  各論で議論してきて、今日も最後の議論と認識しますと、使用者側の皆さんは、間接 差別というものは無限に広がっていくと、対応に大変だというのを心配されているのだ と思います。  この間の議論で、私どもは、ちょっと発言に誤解があったら、整理しないといけませ んが、男女の格差がありますと、格差があることがすべて間接差別というふうに私も言 っていません。  あることの要因をまず分析して、その男性グループ、あるいは女性グループを見たと きに、ある性のグループに、その規定なり慣行が大きな影響を与えているということが まず特定されて、その規定・基準・慣行などが、どうもその要因になっていれば、その 要因がどういうふうに成り立っているか、その正当性を使用者側が、こういう理由でこ ういう規定があるということを説明するわけです。それが合理性を持てば、別に間接差 別ではないわけです。  それは、各企業、例えば私どもは、転勤要件のコース別雇用管理をすべて間接差別と は言ってないわけですよ。それは、Aという会社のコース別雇用管理と、Bというコース 別雇用管理があって、同じ転勤要件を付けていても、Aという会社は、例えば本人が選 択する機会が開かれていて、女性もそういう諸条件を満たして転勤をしている実態があ り、あるいは相互転換制度もあるとかですね。こういう要件があって、そういうことを 努力しているが男女間格差があるという場合と、Bという企業は全くその実態としては ありますけど、10年間全くそれは使われていませんねというときに、これは機能してい ない場合の転勤要件の企業の問題は明らかに違うわけです。それはいろいろと言ってい るわけですよ。  だから、これしか間接差別と言わないというのは、また言いにくいのであって、あく までこれはケースバイケースで判断して、ただ理屈はここに書いているように、規定が 性に中立だということがあり、どちらかの性に不利益を与えているかという判断があっ て、それは職務上の合理性があるかないか、いくつかのクリアすべき点があるわけで す。  ですから私は、最初に言いましたけど、企業の規定というのは、こういった理由で設 けていますというのがあるわけでしょう。男と女を差別する対応を設けているなんてな いはずです。そういうことを説明する案に納得できれば、別に言わないわけですから、 そこはぜひご理解いただきたいと。  俎上には上りますよ。上りますけれども、それは厳格に言ったら、合理性を持つ場合 は、再三言いますように、間接差別と言わないわけですから、そういうことの理解をい ただきたい。  それから2つ目に、研究会報告にもありますように、この考え方は、別にわが国だけ が初めてやるわけではないのですね。諸外国は既にやっているわけですよ。日本は逆に 言うと遅れているわけです。遅れているという認識をぜひ持ってほしい。先進的な取り 決めだともし思っているなら、改めていただいて、あんまり言いたくはありませんけれ ども、国連からも日本の差別の定義というのは狭いねと言われて、勧告されているわけ です。遅れているという認識をぜひお持ちいただきたいというのが、2つ目です。  3つ目は、男女間の賃金格差の研究会もいくつか賃金格差の要因を指摘しています。 そこでは雇用管理区分の話もコース別雇用管理の話もあるし、家族手当の問題もその要 因だと言われています。  コース別雇用管理つまり職階が、かなり差別格差の要因になっているという原因を考 えますと、性を理由にした差別だけではとらえにくい今の男女間の問題を、この間接差 別という考え方を取ることを導入したことによって、いわゆる不合理な男女間格差をな くしていこうということも公言するわけですから、ぜひそういうことを使用者の皆さん にご認識いただいて、前向きな姿勢を示していただきたいと申し上げたいと思います。  個別に議論をすることは、やぶさかではございませんけれども、時間がありませんか ら。 ○横溝分科会長  どなたかありませんか。 ○樋口委員 確認したいのですが、川本委員からは、(5)、(6)、(7)というのは同意しがたいという ようなお話だったのですが、労働側は(5)、(6)、(7)というのは、間接差別に該当する というふうに、判断してよろしいのでしょうか。  労働組合によっては、むしろこれを要求しているということもかなりあるのですが、 そういうふうに考えて、よろしいでしょうか。 ○吉宮委員  川本委員は、(5)、(6)、(7)は別の法律もあるから、そこで用意したらどうかと思う けれども、諸外国も確かに、アメリカなんかは賃金を扱わないというのは、賃金に関係 ある法律を別に用意してあるわけで、ここで言うと(6)と(7)、パートについて、いわゆ る定期昇給については、正社員だけ適用してパートは適用しない。あるいは福利厚生に しても、そういうことで取り扱った場合に、今の雇用機会均等法は、パートはですね、 対応できるのかということです。アメリカが行っている対応では対応できないと思いま す。用意されていません。  そういう意味では、今正社員とパートの均等待遇と言われたときに、やっぱり圧倒的 に女性ですから、私は俎上に上ると思います。(5)も(6)も(7)も決めつけるのは避けて、 ケースバイケースがありますから、これは俎上に上ると思います。間接差別を議論する 場合に、除外はできないという認識を持っています。 ○樋口委員  俎上に上るというのはどういう意味ですか。ここで議論する俎上に上るということで すか。 ○吉宮委員  ええ。 ○樋口委員  裁判なり何なりで俎上に上るという意味ですか。 ○吉宮委員  例えば、研究会報告の世帯主要件で、家族手当等の支給要件について、使用者側の抗 弁においては、この場合は合理性を持つのではないかとありますよね。その説明を一応 議論しないと。全部の家族手当は間接差別に当たりますよと、ケースに応じて違います から、それは議論しないとならない。  俎上に上るというのは、そういう意味で言っています。 ○樋口委員  個別労働組合によって、それに対する考え方がかなり違っていると認識していますの で、労働側として、そこのところを一致した意見として出せるのでしょうか。 ○吉宮委員  ご心配いただいているのですね。  川本委員は、主に家族手当などは労使間で積み上げた制度だとおっしゃって、まさに 制度を性に中立なのかという基準で見直そうというのが間接差別ですから、家族手当は 今まではそれで良かったかもしれないけれど、女性は20%台の雇用事情の時代と、40% がもう働きすぎだという中での諸手当の問題も違うわけで、そういうときは、私どもと しては、全部の組合は網羅できませんが、連合としては、家族手当を春の取り組みでも 取り上げようじゃないかと提案しますし、やめた後どうするのだという話は当然ありま す。  その配分の仕方ですね。それは各企業知恵を出し合ってやってくださいと言っており まして、そういう意味で私どもは、そういう議論をしていますから、連合の中は合意を 取り付けていると認識しています。 ○横溝分科会長  はいどうぞ。 ○佐藤(博)委員  間接差別を入れるとき、定義はこういうものだと言ったときに、間接差別の適用範囲 はどこまでかということで、労働側は現行の均等法の直接差別と同じように、採用から 退職までのすべてについて対象にすると。つまりそれについてどこか、例えば賃金だけ 外すとか、そういうことはせず、まず全部だと。  その上で大事なのは、合理性・正当性について、労使である程度合意ができてない と。それから外れるものが不利益取扱いということです。そうしたときに、多分樋口委 員が言われたのは、項目によっては、合理性・正当性についての理解が、現行で組合の 中でも相当乖離があるのではないかと、その認識はあると理解しているわけですね。 ○吉宮委員  はい。 ○佐藤(博)委員  つまり組合も、何が正当性かということについて意見が分かれている。 ○吉宮委員  だから、格差イコール間接差別とは言っていないわけですよ。男女間格差があるか ら、全部間接差別とは言っていないわけです。  パートと正社員と格差がありますね。パートは圧倒的に女性が多いですね。男女明ら かに職業差があることは、事実ですよね。その上で、格差がどういうものなのか、さっ き言った定期昇給制度をパートに適用しないのはなぜかということを、身分が違うこと は該当しないだろうし、佐藤委員とこのパートについて言い合えるのは、人事の割合が 違うんだと、人材育成の仕組みが違うんだということを、かなり議論したけれど、同じ ような議論を多分、法律をめぐって、定昇の適用はしなくていいという議論はあると思 いますが、それは個別の議論として残っているのです。 ○樋口委員  まさに人材活用の仕組みや運用が実質的に異なることというのが入っているのです よ。これが間接差別に該当するのかどうかということです。 ○吉宮委員  それは入っていますけれど、それは使用者が多分そう言ったとしても、それは実態を 議論しないとわからないと思います。 ○佐藤(博)委員  それについて言うと、UIゼンセン同盟のパートの指針とか、今日電機連合はいらしゃ っていないが、基本的にはこれです。UIゼンセン同盟も電機連合もこれでいいと言って いるのです。確認していただいて、多分間違いはないと思う。だけど連合は違うって言 っているのです。  そういう距離がある場合でも、正当性について、組合の中でも相当距離があるという ことについてまで、それは裁判所に任せればいいというふうに議論するかどうかだと思 います。  UIゼンセン同盟の指針も電機連合も、基本的にこれにのっとってできています。これ はつまり、合理的だというのが説明です。 ○横溝分科会長  はいどうぞ。 ○片岡委員  最後の裁判までというのが、私は理解できていないのですけれども。 ○佐藤(博)委員  つまり誰が判断するのかと言うと、これだけ差があるわけですから、どこかに持って いくしかないわけです。 ○片岡委員  もし、吉宮委員の意見を超えてしまったら訂正してもらいたいのですけども、連合傘 下何百万、その労働組合全部一致して、この場合、内容に同様の答えを持っているかと いうと、それはそうでないと思います。これからどう努力するかということは、限られ た組織率ですが女性の役員を含めて、環境づくりに一生懸命やって、法改正に向かって いかなければいけないなと思っています。  ただ、非常に感情論になるのですが、今の労働組合の規定の中にも、女性労働者とい う視点で見たときに、一致されていないものがたくさんあります。  間接差別が俎上に載ったからではなく、家族手当の問題は、労働組合の中で、執行部 に対して、その合理性や公平性を十分訴えてきたけれど、今までの労働組合というのは やはり男性中心型の、あるいは世帯主を基準とした賃金体系や、そういう仕組みの中で それが当然という論理で、執行部も労使交渉をするという枠組みであったために、なか なか日の目を見なかったけれど、今からこのことは労働組合の中には、それはおかしい ということ。  間接差別というものが出てきたということをさらに活用して、長くなりましたが、私 は、いろいろ労働組合の中でも意見が分かれるのは、とりわけ、女性労働者の立場でこ こに参加するということもあっていいと思います。  その点では、その分かれている状況があるから、労働組合大丈夫かということは、よ けいなお世話だと。 ○佐藤(博)委員  私は全部一致しないと決めないと言っているのではないのです。ある程度のコンセン サスは必要じゃないかと言っているのです。 ○横溝分科会長  そちらが先でしたので、川本委員。 ○川本委員  今話になっている意見と質問とをしたいと思います。  一つは今の家族手当の関係で、手当そのものの話と、世帯主の要件の話と両方あった と思いますけども、私としては、一つは労使の話し合いの積み上げの結果、今多くの企 業さんで、こういう家族手当があったり、それに世帯主要件がかかっているのかな、 と。今のお話のように、それを労働組合として、また話し合いによって変えていこうと するならば、それでおやりになればいい話ではないのかなというのが一つ。  それから、実は世帯主要件というのは、個人が自己に有利と判断して、選択をしてい けるようなものだろうと思っているわけであります。それを申し上げておきたいと思い ます。  それから括弧書きの中に、例えば主たる生計維持者とありますが、これはこれで、 今、共稼ぎが増えてきておりますので、ある意味では、この主たる生計維持者も、来年 どうなるかとか、再来年どう変化するかとは、実はわからなかったりして、その都度、 この福利厚生のところが特にそうでしょうけども、影響を受けるのかなという気もいた しておるところです。  それから、もう一つ申し上げたかったのは、先ほどパートの定昇というお話がござい ました。パートと言ってもなかなか定義が難しくて、労働時間が短い人ですけれども、 その中には契約上は有期契約で、例えば6カ月契約の方とか、1年契約の方、あるいはそ の中で更新をされていくという方、いろいろいらっしゃるわけですが、そもそも有期と いう概念の中では、定期に昇給しますという概念は、通常は向かないだろうなと思いま す。  したがって、多くの企業では更新する場合に、その人の仕事ぶりを見たり、あるいは 仕事の中身が変化する場合において、例えば時給であれば時給を変化させる、要するに 上げる場合や、当然そういうこともありますが、定期昇給制度として、お持ちのところ はほとんど無かろうと思います。要するに長期勤続を前提の考え方になってくるもので すから、ということを申し上げたかったなということであります。  それから質問をしたかったのは、(3)のところに募集・採用にあたって、一定の学歴 ・学部を要件とした場合というのがありまして、この学歴というのは、日本の場合は、 新卒採用、一括採用主義でやっておりますので、あまりここに入っているものは向かな いなと。ポジティブ・アクションでするにしても、学歴というのは向かないかなと思っ ております。  学部というのが書いてありますが、これはどんなイメージを描かれてここに入ってい るのかなと、何か実態等があって、こういう問題が何かあって間接差別として取り上げ たのか、どういうイメージから取り上げられたのかなと、ご説明いただければと思いま す。 ○石井雇用均等政策課長  研究会報告をまとめる際に、具体的な例ということで、いろいろ先生方から出し合っ ていただき、上がってきたということでございますが、この研究会では諸外国の状況に ついても集めておりまして、主としてアメリカでよくこういう問題提起が起こっている ということが念頭にあったと思います。  例えば技術系の仕事、研究員のようなところで、必要な資格として一定の資格、学部 を出ているとか、大学院を出ているとかそういったものを付したことを巡って争われた 事案がございまして、そんなようなことが念頭にありました。ただその場合、多くの場 合、技術系ですとアメリカでもやはり女性の方が少ないというこがあって、そういう問 題が念頭にあって、こういう事例が出てきたというふうに記憶いたしております。 ○横溝分科会長  奥山委員、ありますか。 ○奥山委員  いえ、その通りです。 ○横溝分科会長  いいですか。はい。 ○吉宮委員  川本委員は、私への質問だと思うので。  一つは家族手当の話で、家族手当で世帯主要件を持っているのをすべて議論せずに、 間接差別だとは言っていないわけです。  それは、いわば抗弁として、なぜ世帯主要件を付けているかということに、本人の選 択権があるじゃないかと使用者がおっしゃったときに、そうだよという合理性を持つか 持たないかという議論はあります。  すべては世帯主要件を付けていることが、総じて女性が支給世帯主でない場合が多く て、選択とはいうものの、事実上の選択になっているかはわかりませんけれども、要す るにその議論は残っているけれども、家族手当かつ世帯主要件が、全てイコール間接差 別だという決め付けはしていないわけですよ。しかし俎上には上り得ると言っているわ けです。  それから有期についても、確かにおっしゃるように、有期は期限付きだから、正社員 と違うから、定昇について、定昇の仕組みはこうで有期は適応していませんという使用 者側の理由に合理性があればいいわけであって、持つ場合もあるし、持たない場合もあ る。そういう意味で私は、あくまでも研究会も例示であって、抗弁も示していますが、 世帯主要件は原資がないからと言って世帯主に絞っていますということは、果たして合 理性を持つか、持たないかの議論はあるわけです。世帯主要件イコール間接差別に当た りますよとは決め付けてないわけです。そういうものだと私は思う。  だから労使で長年積み上げてきたのも事実だし、そのことが現状の男女間の格差を生 み出している要因であれば、その公正さを確保するために、制度なり慣行を見直すの が、間接差別ですから、労使で積み上げたとしても、やっぱりここでスクリーニングす るということは、当然出てきましょう。  最後に、佐藤委員から労働組合はどうかというような話もありましたけれど、前回も ありました。1995年の均等法改正のとき、深夜労働について、あるいは時間外労働につ いて、女性の緩和についてですね、反対している組合あるじゃないかということはあり ました。しかし私どもは、そこは男女平等と法の下の平等というのがありましたけれ ど、それは納得いただいて、反対した組合からは確かに不満も残ったかもしれない、そ れでもやはり雇用の均等確保とはどうするべきかという意味でクリアしてきたわけで す。  今度の問題もまさに、片岡さんがおっしゃったように、今までの作られた制度・慣行 を、男女平等という視点からどう各論に入れるかということが議題なので、そこはチャ レンジしますよと、私も言っているわけです。  UIゼンセン同盟と電機連がこうだから、お前らできるのかと言われても、こういう言 い方をされると私は。 ○佐藤(博)委員  私の言い方が悪かったのか、吉宮委員と同じで、どの制度がいい悪いの話ではなく、 合理的かどうかですよね。現状で大丈夫なら、合理性、正当性について相当意見の幅が あるという例で言っただけなのです。  ある程度のコンセンサスで、全部が一致する必要はないのですよ。でもそれは、かな り大きいのではないかと、危惧して言っているのです。それは混乱を招くだけではない かと、危惧して言っているというだけです。 ○横溝分科会長  はい。 ○樋口委員  誤解のないように、私も家族手当制度はおかしいと個人的には思っています。思って いる時の合理性というのに、果たして家督責任というのが合理性として認められるかど うか、例えば生産性が違うとか、あるいは職業能力が違うとか、そういった職場におけ る違いに限定して合理性というふうに呼ぶのか、それとも働く労働者の背後にある生活 を考慮して、例えば家督責任のある世帯主とかいうようなことまで含めて、それも合理 性の中に入れるという考え方があるかどうかによって、だいぶ合理性の意味が違ってく るわけです。  労働組合の立場からも、今まではどちらかというと、それは生活も含めて合理的だと いうふうに言っていて、多分使用者側もそういうのを含めて生活給というのは合理的だ と言ってきたと思いますが、そこの考え方を切り替えるかどうか、合理性というもの は、あくまでも職場における責任であるとか、職能であるとか、あるいは生産性、パフ ォーマンスによる違いというものに限定しますということなのかどうか、議論しとかな いと、今度は話が、それも合理的ですという話になってくると、ややこしい話になるの で、確認しておきたいということなのですけれど。 ○吉宮委員  今度の2006の連合だけの方針ですけれども、世帯主要件をなくそうという提案をして いるわけです。それは、賃金とは何ぞやという議論とも絡んで、今おっしゃったよう に、歴史的に積み上げられた生活保障的な賃金制度から、基本給とは何か、基本的賃金 とは何か、独自の手当とは分けなければいけないですけど、いずれにせよ、生活保障的 にやってきた賃金制度と、いろいろな生き方が増えた中で、家族の多い少ないで賃金の 制度が違うというのはいかがなものか。  合理性を持つか持たないかという議論は当然あって、多分、世帯主要件を外すという ことは、合理性を持たないということだから、連合は提案しているわけですよね。そう いう意味で私は、川本さんがおっしゃった、年功制全てが間接差別に当たるんじゃない かと、当たるかも知れません。しかしそれは、さっきも言ったように合理性の話で議論 すれば、現状、制度上持つかもしれないということもあるかもしれない。  そういう意味で、そういうテーマだと私は認識していますから、使用者側があまり恐 れるというか、広がるのではないかというのは、今言った制度を説明してもらえればい いわけで、男女間の格差について、こういう理由であるんだということであれば、正当 性を持つのですから、自然体でやっていただければいいと思うのですけれど。  間接差別という言葉自体が新しいというふうに思っているかもしれませんが、内容的 にはそういうふうに組合は努力しているわけですよ。  ある意味、いつも中小労働組合から反発があります。間接差別の法理でもって、なか なか賃金が上がらないのに、8,000円なり10,000円なりの手当が減ってしまうことにつ いてどう考えるのかと。そういうとき、何を言っているのかと私は言っています。確か に個別に言ったらあります。しかし私は、そういう時代の流れを踏まえましょうと言っ ているんです。 ○樋口委員  お願いしたいのは、合理性という言葉が、人によって違って伝えられている。合理性 というのは何かというのは統一して出てこないと、逆にこれは違法だということになっ たときに、基準は裁判官に任せますとはいかないでしょうということだと思います。 ○横溝分科会長  はいどうぞ。あまり時間がないので。 ○奥山委員  すみません、今の議論を聞いていて、私個人がわかりにくかったのは、合理性という 意味ですね。  聞いていますと、ある方は、家族手当の支給制度、これを廃止しようとするときに、 先ほどからは組合の中ではかなり賛否両論があると、だから一枚岩になってないのにこ ういうところで、世帯主条項は別にして、家族手当ての支給制度が消えるようなところ につながるような議論をしていいのですかという合理性の問題と、それからそれを間接 差別の土俵に上げたときに、要するにこういう世帯主基準というものが適応した結果、 家族手当の支給につながるときに、世帯主の概念が、今までの実態ですと、ほとんど請 求者である夫である男性のほうに振り分けられた。その結果、こういう基準を当てはめ て家族手当の支給をしたときに、女性がほとんど支給されなかったときの職務関連性に ついての合理性とは少し違う。  だから、合理性という言葉はわからないので、職務関連性として、そういうような要 件を立てることが、結果として要するに適法ですよと。したがって違法な間接差別に当 たりませんよと言うときの正当性の意味で、合理性をおっしゃっているのか、聞いてい てよくわからなかったのですが。 ○吉宮委員  言っている意味は、後者です。もう一方では、しかし賃金制度の問題もあるというこ とを踏まえてですね。 ○樋口委員  時には雇用主だけではなくて、労働組合の要求としてそういったものが出てきたとき に、両方罰するというという話になってくるのか。 ○奥山委員  現実には、そういうことはあり得るかもしれない。 ○横溝分科会長  いつも古い話をして恐縮なのですが、家族手当を世帯主に係らしめていることに、か なり問題があるのですよ。住民基本台帳法という法律に世帯主という言葉があるのです が、その住民基本台帳法には世帯主要件は何も書いてないのです。世帯主という項目が あっても、あと世帯員というのがあっても、その住民基本台帳法上に世帯主とはこうい うものだということが何も書いてないのです。  とても古い話なのですけれども、昭和42年に法務省が通達を出して「その世帯を主宰 する者であり、主として世帯の生計を維持する者を世帯主とする」というものです。若 い人はきっとびっくりすると思いますが、昭和43年に自治省通達というのが出ておりま して、これが男女差別だというので大きな議論があったのですが、これは「夫が不具廃 疾等のため無収入で、妻が主として世帯の生計を維持している場合は妻を世帯主とする 」ということで、妻が世帯主になるには、夫が不具廃疾か無収入でなければ妻は世帯主 になれないという、そういうものが自治省通達として平気でまかり通っていた時代があ りました。自治省通達はだいぶ前に廃止になりました。ですから、法律上の要件ではな いのです。いろいろな世の中の流れとともに変わっていく。ご参考までに世帯主条項と いうものは、そういうものです。  いろいろご議論がありますが、この際言っておきたいということがあれば。どうでし ょうか。なければ本日は、もう一つ報告があるのです。でもどうしてもというのなら、 おっしゃってください。 ○片岡委員  では一言だけ。何だか労働組合の中の議論に終始した感があるので。やはり間接差別 の概念というか、性中立であってという説明書きがされている研究会報告を率直に受け 止めれば、これが法制化されることによって、おそらく労働組合がある所では非常に自 主的な取り組みが進むであろうという期待と、もっと期待として高いのは労働組合がな い所が圧倒的に多いという中で、働く当事者が、法律を根拠に意欲的な働き方をしたい ということを前提に、これはおかしいということを雇われた関係の中で解決していくと いう、そういういわゆる法律ができてOKではなくて、法律を武器として使いながら良い 働き方をする、良い働き方をしてもらいたいという関係が一番だと私は思います。労働 組合の中の問題では非常に乱暴な言い方をして申し訳ありませんでした。その点心配し ていただいてありがとうございますと申し上げた上で、女性労働者が使える定義として きちんと法律に入れたいと思います。 ○横溝分科会長  前向きなご議論でまとめていただいたところで、その他の議題がありますので、よろ しくお願いします。 ○麻田職業家庭両立課長  資料のNo.4をご覧いただきたいと思います。「次世代育成支援対策推進法」に基づく 「一般事業主行動計画策定届出」の届出状況ですが、3カ月ごとに発表しております。 301人以上企業に策定届出の義務がありますが、9月末現在で301人以上企業のうち84.4 %に当たる企業から既に届出が行われています。また、策定届出が努力義務になってい る301人以下の企業については、届出をしているのは1,146社です。都道府県別の状況で すが、3ページの右側に届出の率を出しておりますけれども、11県において100%の届出 率、26道県において90%台の届出率となっております。  今後も督促・勧告を順次実施しまして、100%を目指したいと考えておりますし、ま た中小企業に対する積極的な周知・啓発にも努めて参りたいと考えております。以上で す。 ○横溝分科会長  どうもありがとうございました。それでは、本日はこれで終わりにさせていただきた いと思います。本日の署名委員は、吉宮委員と山崎委員にお願いします。よろしくお願 いします。  次回の予定について事務局からご報告があります。 ○石井雇用均等政策課長  次回の開催ですけれども、日時・場所とも調整中ですので、決まり次第ご連絡をさせ ていただきます。 ○横溝分科会長  本日はありがとうございました。 照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)