05/10/27 第11回振動障害の検査指針検討会議事録


振動障害の検査指針検討会(第11回)議事録

1 開催日時及び場所
 開催日時:平成17年10月27日(木曜) 午後2時から午後5時まで
 開催場所:中央合同庁舎第5号館労働基準局第1・第2会議室

2 出席者
 医学専門家:木村彰男、重松宏、髙山真一郎、樋端規邦
       原田規章、本間浩樹、宮下和久、梁井俊郎
 オブザーバー:那須吉郎、宮井信行
 厚生労働省:明治俊平、只野祐、天野敬、藤本龍太郎、伊作城青他

3 議事内容

○職業病認定対策室長補佐(天野) 
 ただいまから、第11回「振動障害の検査指針検討会」を開催いたします。委員の皆様
方におかれましては、お忙しい中をお集まりくださいましてありがとうございます。本
日は、オブザーバーとして振動障害研究センター長の那須先生にご出席いただいており
ます。那須先生には、本日の議題にあります「労災疾病研究センターの研究成果報告」
の際にご説明いただく予定になっております。以後の進行は、宮下座長にお願いいたし
ます。
○宮下座長
 議題に入る前に、本日配付されております資料の確認をお願いいたします。
○職業病認定業務第二係長(伊作)
 資料1は、「個人判定結果(症度)の比較検討-末梢循環機能検査」の表が1から7
まであります。資料2「振動障害研究センターにおける研究成果報告」、資料3「振動
障害の検査指針検討会報告書」骨子(案)、資料4「検査検討結果のまとめ(構成等)」
です。参考として「ストックホルム・ワークショップスケールによる症度分類」と、厚
生労働省の治療指針の中にある「自覚症状・身体所見及び検査成績の症度区分表」を配
付しています。
○宮下座長
 議事に沿って進めていきます。先ほど、天野補佐の冒頭のご挨拶にありましたように、
今回はオブザーバーとして、振動障害研究センター長の那須先生にご出席をいただいて
おります。後ほど、FSBP%の長年にわたるご研究の成果について解説をいただくこ
とになっております。
 本日は、議題にあるように、従来から進めております実証検査の分析の結果について
引き続きご検討いただきます。2点目に、FSBP%の研究成果のご報告をいただき、
若干の質疑をいたします。3点目は、本検討会で実証検査の検討もまだ行っているとこ
ろですけれども、全体として年末・年度末にかかり、この検討会の取りまとめの骨子を
お示ししてご検討いただくということを申し上げておりますので、そういうことを中心
に今回ご検討いただきます。
 最初に、前回からの懸案でした、各先生方からご提出いただいております検査結果、
あるいはその検査結果の評価に基づく症度といった資料を基にし、いわゆる各検査間の
相関分析と申しますか、相互の関連性等、この資料のいちばん最後にストックホルム・
ワークショップスケール(SWS)、それから厚生労働省の症度分類の資料があります
が、こういう症度と検査結果の関連性等について、作業を進めております現在の結果と
いうことで、オブザーバーの宮井先生のほうで検討していただいておりますので、冒頭
にその概略についてのご説明をいただきます。
○原田委員
 その前に私のほうで、データが間に合っていないので、そのことについてご説明させ
ていただきます。宮井先生がご検討された相関分析ですが、私が担当している3つの検
査の状況を簡単にご説明いたします。3人の担当者はなかなか忙しく作業が遅れており
ます。いちばん大きな問題は、那須先生にイギリスの状況を教えていただければと思う
のですが、FSBP%のデータが全部チェックできないのです。北海道の美唄労災病院
と岩見沢労災病院の分はこちらでチェックできるのですが、別のファイルにしてしまっ
た徳島健生病院のデータは読めなくて非常に困ってしまい、グリフィン教授の所の担当
者とうちの担当者が毎日のようにメールをやり取りしているのですけれどもうまくいっ
ていません。
 イギリスではファイルを開けることができたということでデータは送ったのですが、
日本では開けない。イギリスのほうは、Windows XPの新しいバージョンのソフトであれ
ばちゃんといくのだと、それは近々提供できるという話が来ていますけれども、その辺
は何かご存じでしょうか。
○那須先生
 バージョンは作りつつあるところですが、いつできるかは確約できません。
○原田委員
 新しいバージョンのものは、先生の所にもまだ来ていないのですか。
○那須先生
 来ていません。先生の所では、図も何も出てこないのですか。
○原田委員
 私の所の装置で(今回の調査の)3カ所分を分析して、私たちのシステムで解析しよ
うとしているのですけれどもデータが(ファイルから)出てこないのです。美唄労災病院
と岩見沢労災病院の分は出てくるのですが、徳島健生病院の分は出てこない。四苦八苦
して、3、4台の別のパソコンを使ってイギリスのOSを入れたりして、なんとか図が
見られるところまできたのですが、それ以上中には入れないという問題が発生していま
す。もしかすると、先生がイギリスの情報を持っておられないかと思ったのです。
○那須先生
 そういう話は全然出なかったです。
○原田委員
 場合によっては、イギリスへ行ってデータを解析したほうがいいのではないかと思っ
たりしています。
○那須先生
 データを送って、解析して送り返してくれと言ったほうが早いのではないですか。
○原田委員
 解析して送ってもらったのですが、全部のデータを私たちの標準のスタンダードで判
定したいところがあります。例えば、コントロール群のデータの親指のデータで、ゼロ
プレッシャーだという報告も来ているのですが、これはおかしいので、例のUKミーティ
ングが直前であったところを、無理にお願いしたものだから、向こうは急いで処理した
とのだと思うのです。
○宮下座長
 技術的な話は後にして、状況だけかい摘んでお話していただけますか。
○原田委員 
 そういうことで遅れていて、宮井先生の相関関係の解析にも入っていないという申し
訳ない状況があります。その前に1点確認しておきたいことは、データの帰属の、原則
の問題です。7つの検査のデータは、基本的には厚生労働省に帰属するということです
ね。
○職業病認定対策室長(只野)
 ご質問の意味がよくわからないのですが。
○原田委員
 どういうことかというと、基本的に今回の実証検査のデータは厚生労働省に所有権が
あり、例えば個々の研究者がそれを公表したい場合には厚生労働省の許可が要るのです
ね。
○職業病認定対策室長
 はい。
○原田委員
 それに関連して、従前お願いしているデータは、この検討会の検討の中で、個々のデ
ータを各委員が吟味する必要があると考えるデータについては提供していただける、と
いうことになっていると私は理解しています。
 何が言いたいかといいますと、この3、4カ月間お願いしているのですが、和歌山の
レーザードップラーの画像データを随分お願いしているのですけれども送っていただけ
ないのです。重松委員の担当する皮膚灌流圧測定の原データを送っていただいて、この
間チェックさせていただきましたが、計算上の誤りがあって、非常に重要な部分だった
と思いますけれども、それを修正していただくこともやっていただきました。和歌山で
保管しているか、厚生労働省で保管しているか、レーザー血流画像化装置による皮膚血
流測定の原データは山口大学でも解析できるものですから、これを従前から(送ってい
ただけるように)お願いしているのだけれども送っていただけない。これは、どうして
そういう状況になっているのか?もう3カ月経っています。
○職業病認定業務第二係長
 先生がおっしゃっているデータが、どの段階のデータかを事務局で解釈するのを誤ま
っておりました。ある程度Excelに打ち込んだ状態のものを先日お送りしてしまいまし
た。検査が終わった段階で、全く手が付いていないときのデータというということです
ね。
○原田委員
 全くそのとおりです。
○職業病認定業務第二係長
 そこのところを間違って解釈しておりまして、違うものをお送りしてしまった経緯が
ございます。
○原田委員
 うちにも装置があるので、データを送っていただくように、宮井先生にもその後、お
伝えしていましたよね。
○宮井先生
 私の所は、基本的に検討会の事務局にデータが一括管理されていて、それをいただい
て分析している状況です。この間依頼を受けた分については、解析した結果についての
報告をお送りしております。依頼された分については、事務局を通してお送りしている
状況にあります。
○宮下座長
 先生のおっしゃることはわかりました。事務局もおわかりだと思いますので、至急対
応してください。
○職業病認定業務第二係長
 はい。
○原田委員
 宮下先生もおわかりだと思いますが、どうして生のデータを送っていただけないのか
ということが気になるのです。
○宮下座長
 データの取り扱いについては、基本的に以前この会議で確認したとおりです。そのこ
とについての議論はもう必要ないと思います。私も、そのことについて事務局に何も申
しておりません。
○原田委員
 逆に言うと、そうしていただいたほうがいいのです。分析に時間がかかりますので、
よろしくお願いいたします。
○宮下座長
 わかりました。
○職業病認定業務第二係長
 至急対応させていただきます。検査した直後の状態で、何の加工もしていないものと
いうことですね。
○原田委員
 システムに入っているのを保存したものです。前にCDを送っていただいたのですが、
全然違うものが入っていました。
○宮下座長
 いまから説明をお願いするのですけれども、各先生方の検査の結果に基づく、独自に
症度設定されている部分については、どういう形での症度ということで示されているか
というコメントをいただければ幸いです。
○宮井先生
 資料1の1頁と2頁に関しては、今回基本群として分析の対象となったうちの療養群
について、ID番号と年齢、そしてSWSによる症度と、労働省分類による症度が示し
てあります。1頁は、末梢循環機能検査についての結果です。重松先生の所と私の所の
検査結果に基づいて判定された0から3までの症度が示してあります。2頁も、同じよ
うな要領で症度を記載したものです。SWSのところがRと間違っていますが、末梢神
経についての症度ということで判定された結果と、木村先生の所の検査と、髙山先生の
所の検査で、それぞれご報告いただきました症度を記載したものです。右側の端のとこ
ろには、しびれと知覚鈍麻に関して本人の自覚として、質問紙での調査に記載されてい
た部分を転記してここに載せております。
○宮下座長
 重松先生のご担当しているレーザードップラー血流計による皮膚潅流圧検査が、症度
0から3ということでお決めいただいたものと、それからSWSと労働省の症度分類と
の関連をその表に示しているのですが、重松先生、この症度0から3の意味づけについ
てご説明いただけますか。
○重松委員
 どちらの症度ですか。
○宮井先生
 1頁でも3頁でも同じです。
○宮下座長
 皮膚潅流圧検査の0、1、2、3という症度を取っていただいているのですけれども、
その評価基準についてですね。
○重松委員
 これは、そちらの基準に合わせたのだと思います。
○宮井先生
 私どもの、レーザー血流画像化装置ですと、各評価に用いた検査項目があります。そ
れの下得ポイントを下回る数を合計し、それの分布から症度を0、1、2、3と振って
ありました。各先生方それぞれ違った症度の決め方をされていると思うのですが、それ
についてどのように合計点を決め、分布を考慮し、0、1、2、3を、我々が行ったよ
うな形で出されたのかどうかということです。
○宮下座長
 1頁だと、1101Tの1番目の67歳の方の場合はSWSの症度は0と、労働省分類は2。
先生の所の皮膚潅流圧検査では1と振られています。2番目の方は0と。それが、いま
説明がありましたように、皮膚潅流圧検査から見た、あるレイティングといいますか、
評価に基づいて3段階、あるいは4段階に分類されたと考えているのです。
○重松委員
 ちょっと待ってください。
○宮下座長
 4段階に分けた症度と、SWSあるいは労働省の症度分類との関連ということで説明
を続けてください。
○宮井先生
 3頁の表3は、SWSにRと書いてあるのは間違いです。SWSと労働省分類、これ
もVSは間違いです、その両者における症度分類と、各検査において判定をしていただ
きました症度との関連についてクロス表で示したものです。Aとして末梢循環機能検査、
レーザードップラー血流計による皮膚潅流圧検査の結果で、左側の上の段がSWSにお
ける症度0、1-2、1-2は例数が7名でしたので一緒に示しております。それでS
WSの3です。労働省による分類のS1からS3までということです。それぞれのカテゴ
リーに、各検査において判定された症度0からIIIまでがどのように分布するかを示した
のがそれです。以下2番のレーザー血流画像化装置による手指皮膚血流検査。
 Bとして、末梢神経機能検査の神経伝導速度検査についても、同じくSWSにおける
末梢神経の症度分類0から3までです。それと労働省のNSのS1からS3までの各カテ
ゴリーに、検査結果で判定された症度がどのように分布したかというものを示したもの
です。
 4頁は、各関連する検査官における判定された症度ごとの関連性ということです。1
番は、末梢の循環機能検査として実施された、皮膚潅流圧検査と手指皮膚血流の検査に
ついて、それぞれの検査において判定された症度をそれぞれ0からIIIまでどのように分
布されたかを示したものです。なお、検査ができなかった対象者、あるいは検査が不良
でデータがうまく取れなかった者がおりましたので、それについてはすべて揃ったデー
タということで、全体の数が今回の基本療養群の全体の数に合わなくなっているところ
は、そういう理由です。
 2番目のほうは、末梢神経検査及び運動機能検査です。神経伝導速度、MRIの筋の
機能評価について、同様に症度判定として出てきた4つについて、それぞれの相関ある
いは関連性を見たものです。
 5頁、6頁、7頁に関してですが、いままでは判定結果の関連性ということでしたが、
現在、相関分析が可能である皮膚潅流圧の測定値そのもの、あるいは皮膚血流の測定値
そのものの相関関係を見たものが表5、表6になります。こちらではたくさんの測定項
目がありますので、個人評価を行う際に、代表値として用いているいくつかの中から抜
粋された測定値に関して、あるいは検査評価のパラメーターに関して関連性を見たもの
です。
 A、B、Cとありますが、Aは基本群全体です。BとCはそれぞれ振動障害療養群と
対照群に分けて相関を検討したものです。見方は、AのところでLDPIと書いてある
のは手指皮膚血流で、それぞれ浸漬前、浸漬中、浸漬後の測定値、あるいは浸漬中に対
して浸漬後にどれぐらい回復したかという回復率、この4つのパラメーターが手指皮膚
血流検査において得られております。
 皮膚潅流圧検査については、同様に浸漬前、浸漬後、さらに浸漬後での変化量、また
それを比として表した変化率、さらに浸漬後の上腕血圧に対する手指皮膚血圧、このパ
ラメーターについて、代表値として用いております。そして、その単相関の係数がそこ
に書いてあります。その数字の横に付けております*は、1つであれば優位水準0.05
で有意な相関ということです。2つであれば0.01で有意な相関というふうに示しており
ます。以下同様に、BとCについても同じような手順で単相関分析をした結果を示して
おります。
 7頁の表7は、いま相関を検討した2つの検査の代表的な測定値、あるいは評価パラ
メーターと年齢との関連性を比較検討したものです。SPP常温、回復というふうに表
現が異なっているのは間違いで、SPP常温と書いてあるのが、浸漬前です。回復と書
いてあるのは浸漬後、SPP変化量、変化率、最後の回復SPP/BPと書いてあるの
は浸漬後です。レーザーのほうも同様に、表現が少し違っております。
 結果を見ますと、基本群全体、振動障害療養群、対照群別に、それぞれ年齢との相関
を見ました。結果を見ますと、レーザー血流画像化装置による検査の代表値については、
特に対照群において年齢との相関が高い、それに対して皮膚潅流圧のほうは年齢との相
関は、レーザー血流画像化装置の手指皮膚血流よりは低いという結論が出ました。
 このように、年齢との関係がある程度示されましたので、6頁に戻り、年齢を調整し
て偏相関で2つの検査の代表値の相関分析をしたものが表6です。見方は先ほどの単相
関の分析の結果と同様です。
 基本群全体と見たときに、比較的相関係数が高いものとして得られておりますのは、
LDPIにおける各検査値と、SPPにおける浸漬後の常温血圧に対する手指皮膚血圧
の比は比較的高い。高いと申しましても0.3から0.4の範囲ですけれども、全体の中で
はいちばん高い相関関係が得られているパラメーターということになります。
 また、療養群と対照群とを比較してみたときには、それぞれ関連の仕方が両者両群間
で若干異なる傾向が見てとれました。特に、皮膚潅流圧における負荷後の変化量である
とか、負荷前に対する変化率といったものは比較的LDBPIの各データ、特に浸漬後
のデータとの相関が高く出ております。対照群においては、そういう関係が比較的低い
というところがその特徴だと考えられます。以上です。
○宮下座長
 途中のところもありますが、前回あるいは前々回から、先生方個々に分析いただいた
検査と相互の関連性を見るということで、本日はその途中をまとめたものをいまご説明
いただきました。この結果について、各先生方から追加なり、あるいはコメントをいた
だければと思います。私のほうから、この結果について少し申し上げたいと思います。
 1頁は、個人判定結果と個々のレーザードプラー血流計、私どもの画像化装置の検査
結果との関連です。個々の整合性については、必ずしも全員が一致するわけではありま
せんが、SWS、それから労働省分類を見ていきますと、よく合致するものと合致しな
いものがそれぞれあります。既存の症度分類が悪いと出ている部分については、説明が
できている部分もかなりあるのかと思いますが、これはまだきちんと整理しておりませ
ん。
 3頁は、重松先生の所との兼ね合いとなっております。まず私どもの単独で、レーザ
ードプラー血流画像化装置、表3のAの(2)がそうです。私どもの症度は、前回ご案
内しましたように、評価値の異常を示す個数で、例えば異常なしというのを0、3から
6個未満を症度Iとカウントしておりまして、9個以上を症度IIIというふうに、レーザ
ー血流画像化装置の結果からそのようにランク付けをしております。
 それで見ると、SWSのSW0、私どもは2例が取れておりませんので19例です。そ
のうち、私どもが症度0と判定されたのが19例中17例です。それから、下にVSと書い
てあります労働省分類でS1となっているのが8例です。それが8例中8例が症度0と
いうことです。
 SWSのSW3となっている5例のうち、私どものレイティングでいうと症度Iが4
例、症度IIが1例というように、やや軽症のほうに評価されている部分があります。労
働省分類で申しますと、S3が8例あり、そのうち症度II、症度IIIを合わせてそれぞれ
2例、2例ですので4例です。症度0が2例、症度Iが2例という結果でした。
 4頁は、重松先生の所と、私どもの手指皮膚血流、縦が私どものほうですが、そうし
ますと、重松先生の症度0、I、私どもの症度0、I、これがそれぞれ5、8、1、0
となっていて、0、Iの両方の区画を足すと14例で、26例中14例になります。重松先
生の0、Iを足すと15例中の14例という括りとして見ることもできます。それから、
症度II、IIIというところも、それぞれ1、2、0、1となっております。これは重松先
生の16例中の4例、私どもの5例中4例という範疇に捉えることもできるかと思います。
 先ほど宮井先生からお話がありましたように、皮膚血流については、対照群において
は年齢の影響が非常に強い相関があるということ。それから基本群、患者の群、それか
ら療養群ではそれほど見られないということがあります。そういうことも勘案して評価
しなければいけないと考えております。私からは以上ですが、重松先生はいかがですか。
○重松委員
 確認してコメントしたいと思います。
○宮下座長
 木村先生、髙山先生は表2が個人的な正中神経とMRIによる症度と、それから相関
分析をさせていただいておりますが、何かコメントがありましたらお願いいたします。
○木村先生
 私どもの症度分類は何度かご説明したかと思いますが、最初は症度分類をどのように
しようか困りました。結局何回かここでご報告してきたものを採用することになりまし
た。
 私どもは、左右の正中神経、尺骨神経に対して末梢潜時の測定、それから伝導速度の
測定、F波の測定、あるいはいろいろなところでの刺激を行い、非常に膨大な量の検査
結果、パラメーターがあります。どれを症度分類に用いていいのか悩みました。過去の
この検討会等で行ってきた研究の中で、私どもは末梢神経に関して、より末梢有意の、
すなわちディスタール有意のニューロパシーがある。それから、エントラップメントに
よるニューロパシーの頻度が高いと考えています。昨年までの検査結果からそのように
考えた訳です。従ってその辺がいちばん捉えられやすい指標ということで、正中神経に
関しても、尺骨神経に関しても、いずれも末梢の潜時、通常はリストからリスト以下の
潜時をいいますが、その末梢潜時を正中神経、尺骨神経の、各々の運動神経と感覚神経
に関してパラメーターとして採用することとしました。
 もう1つは、神経伝導速度ですけれども、正中神経の場合のエントラップメント・ニ
ュロパシーに関しては、先ほどの末梢潜時が1つの指標になるのですが、尺骨神経の場
合には、肘のところでの肘部管の問題がありますので、肘の上と下、すなわち肘上と肘
下の間の伝導速度が指標として重要となります。
 正中神経に関しては、伝導速度は前腕部の値を用いることとし、尺骨神経については
今申しあげたように肘を横切る伝導速度を用いるということで、これが各々の運動神経
と感覚神経でどのぐらいの値になるかを指標とすることにしました。
 そして先行研究にある年齢補正した値、すなわち45歳から54歳、55歳から64歳と
いうように10歳ごとに区切って、その正常値を決めて、末梢潜時に関しては正常の上限
を超えるもの、伝導速度に関しては正常の下限を下回るものを異常と判定しました。
 そういたしますと、先ほど申し上げましたように、左右の正中神経、尺骨神経で末梢
潜時が感覚と運動の両方でありますので、一側の手について末梢潜時に関しては4つ、
両側については8つパラメーターがあるということになります。それから、神経伝導速
度に関しても、運動と感覚の両方があって、正中神経と尺骨神経がありますので、片方
4ずつということで両方で8つということになります。結局、1人に関して都合16のパ
ラメーターを設置することとしました。
 この方法が良いかどうかはわからないのですけれども、先ほど言ったようなことで、
このような分析をやると意味があるのではないかと私どもは思いました。それぞれの検
査を行った被験者に対して、いまの16のパラメーターで全く異常がない群、それからち
ょうど16個ですので4つずつに分けて、1から4個の異常が出た群、5から8個の異常
が出た群、9から12個の異常が出た群、13から16個の異常が出た群というようにして
症度分類を設定させていただきました。
 そこで0を含めますと、0、1、2、3、4の5段階の症度分類ということになり、
この形で宮井先生の所にお送りしたと思っております。たしか、いちばん重症のIVの13
個以上というのはなかったと記憶しております。先生の今回の結果では4段階に分類さ
れていますけれども、おそらく私どもが0、1、2、3、4と5段階に分けたうちの、
3、4は一緒にされているというように理解しております。
○宮井先生
 そのままのものを転記しましたので、私のほうでは操作しておりません。
○木村先生
 本日私どもが持ってきたデータは5段階に分けたものになっています。仲間の先生と
相談しましたが、13個から16個というのはなかったと思いますので、III、IVをトータル
にまとめて5段階のものを4つに分けたというようにしたと思います。
 そういうことで症度分類を行い、和歌山の宮井先生のほうで整理してくださったのが
本日の結果です。それをSWS分類と労働省の分類とでたすきがけにして示していただ
いたのが、3頁のBのところです。元のデータが2頁にあるものです。
 その先になってしまいますけれども、4頁には髙山先生のほうのMRIの異常の分類
との比較が出ております。興味深い結果でMRIなどとは結構相関しているのではない
かと思います。
 ただ、この前も申し上げましたけれども、いまのような指標の取り方が良いのかどう
かは疑問です。末梢潜時以外でもアンプリチュードとかほかの指標もいっぱいあるわけ
ですし、より末梢がやられるということからは、手掌から指先までの潜時なども測って
いますので、そういう指標を使えば、よりセンシティブになるのかもしれません。しか
しながら、今回の研究の目的がスクリーニングとして使えるものということですので、
比較的どの病院でもできるような検査ということを念頭に置きましたので、いまのよう
な検査を行い、いまのような症度分類をつくり、研究成果として報告した次第です。
○髙山委員
 私どもは何回か報告させていただきましたように、MRIによって筋肉の変化の状態
を評価しています。具体的には、末梢神経が障害されたときに骨格筋に脱神経変化とい
う変化が起こります。それをMRIでとるとT2強調画像で普段グレーに映っている普
通の筋肉が白っぽくなると、T2ハイと言っていますけれども、そういう状態になるこ
とによる神経の障害をこの筋肉が来たしているということを判断するということです。
 典型的には、連続切片でずっととっていっていたのですけれども、今回は実際的に応
用するということを視野に置き、時間のこともありますので、前腕の中央部と手掌の中
央部の2枚の横断切片で評価をするという、割合シンプルな方法にしてまいりました。
 いままで報告しましたように、その部位で各々の筋肉、いま申し上げたT2ハイとい
う脱神経変化があるかどうか。これは、まだ定性的な評価ですので、全くない、少しあ
る、うんとあるぐらいの程度で評価をせざるを得ないです。今回症度分類をした場合に、
全くないと強い変化がどこかにあるということ、もう1つは、軽度の変化が2カ所以上
にあるということがあって、4段階に分けようと思ったのですが、本当にすごく重症だ
という所見の方がいませんでしたので、0をほとんど変化がないもの、Iを1カ所に軽
度の変化が見られるもの、IIを2カ所以上に軽度の変化が見られるもの、あるいは1カ
所にはっきり重度の変化が見られるものという形で分類分けをさせていただきました。
 問題となるのは、木村先生の伝導速度との相関です。2頁の表を見ますと、重症度と
いいましてもせいぜい2が付いたのが4だけです。具体的に申しますと、例えば1103の
方は、はっきりした肘部管症候群です。肘部管症候群で、尺骨神経領域の筋肉に障害が
ある、伝導速度も尺骨神経領域の障害がそこそこにあるというのは相関をしています。
 それから1112の方は、正中神経障害みたいなのが結構強くて、手でも手掌部の母指球
筋の変化が強く見られたというのが、私どもの症度分類が高くなったとろです。これも、
エントラップメント・ニューロパシーということで説明がつきそうな症例で、こういう
症例は末梢の伝導速度とMRIによる筋の機能評価がかなり強い相関を示していること
がわかります。
 ところが、1120、それから1128の方は、MRIだけ2になっていて、伝導速度は全く
正常という方です。これは、MRIはどこがおかしいかというと、前腕のあるいは中枢
部の屈筋群、手関節を曲げる筋の変化が強くて、私どもの症度分類では2になってしま
いました。この辺は、木村先生の評価ではちょっと反映しない部分なので、私は同じ末
梢神経障害、運動機能障害といっても、調べているポイントが違うためにこういうずれ
ができたのではないかと思っています。
 いずれにしろ、いまの症度の分け方が適当かどうかはなかなか難しいのですけれども、
非常に簡便で誰が見ても大体ずれがない。2カ所軽いのがあれば、1カ所悪いのと同じ
ぐらいという形に今回してしまったために、こういう評価だったのです。そういうこと
で、木村先生との相関を見させてもらってコメントをいたしました。
○宮下座長
 重松先生はいま所用で席を外されていますので、お戻りになりましたらコメントをい
ただくことにいたします。冒頭の説明、コメントなり追加のご説明をいただきました。
全体についてのご質問なりコメントなりがありましたら少し時間を取りたいと思います。
○職業病認定対策室長
 もともとの患者群に対するSWS、あるいは厚生労働省症度分類の当てはめ方が絶対
的かというと、そういうところの問題もあります。それから今回のものが、例えば4個
あれば1にします、6個になれば2にしますというある程度の区切りでやって、一つひ
とつのパラメーターの重みづけというのは必ずしも出ていないわけですので、全部がぴ
ったり当てはまるわけはないと思います。
 例えば、症度0、1の部分と、SWSの0、1としての4つの群を一括りにして除外
されたのがどのぐらいあるのだろうかというのを見てみますと、これは意外と相関して
いると見てはないのでよろしいのでしょうか。粱井先生、このようなやり方はおかしい
のでしょうか。
○粱井委員
 そういうことだと思います。
○職業病認定対策室長
 2と3の区別がつかないのを1つにくくって見た場合にも、全体的に相関しているよ
うに見られます。
○粱井委員
 問題ないかと思います。
○職業病認定対策室長
 よろしいということですけれども、2と3を厳密に区分すべきなのでしょうか。
○木村先生
 神経障害に関してですか、すべてに関してですか。
○職業病認定対策室長
 すべてに関してです。例えば、症度2と3を仮に一括りにして、労働省方式の2と3
を一括りにしてこう見た場合に、ある程度相関してきているかとも見えるのですが、そ
ういう全体的な理解でよろしいのでしょうか。
○宮下座長
 いかがでしょうか。先ほど私がご説明させていただいたのを、たぶんいま室長が言わ
れたのだと思います。要するに、近い部分といちばん離れているエリアで見た場合に、
傾向としてどうかという見方だと思います。
 これは、判断の分かれるところだと思うのですけれども、先ほど私が口頭で申し上げ
た、よく合う部分、ですから、私どもの検査でいくと、ないという部分についてはかな
りないという形での、ですから0のところは非常に高い成果が得られているかと思いま
す。ある部分については、先ほど室長のお話で、レイティングの問題と状態との関連と
がありますけれども、わりといいところに行っているのではないかと思っております。
○粱井委員
 実際問題として、どこからどう補償するかとか鑑定の問題があるわけです。末梢循環
障害にしても、末梢神経障害にしてもいまのところ客観性がないのです。そこをある程
度決めてもらうと、現場としては助かるのですが。末梢循環、末梢神経障害なしの部分
が1つの大きな問題点であるわけです。末梢神経伝導速度は異常のない人とかそういう
ところが症度分類Iなどでやれば、ないと規定することによってだいぶはっきりしてく
ると思います。その点でいえば、先生が言われたようにはっきり分離はできる状況には
なると思います。
○原田委員
 そのときに、複数の検査をテストバッテリーとして行うわけです。その場合に、例え
ばAの検査では異常な所見は見つからないというか判定されなかった。Bの検査ではそ
の所見がある、あるいはCの検査もあるかもしれないのですけれども、その辺の総合的
な判定をどう考えるかというのは、検査間の相関表が出ていますけれども、それとの関
係ではどのように考えればいいのでしょうか。
○粱井委員
 末梢神経障害があれば、末梢循環障害もあり得るだろうということですか。
○原田委員
 例えば、末梢循環障害についての複数の検査があった場合ですね。
○粱井委員
 その辺は、3つとも全部合うということはない可能性はあります。
○重松委員
 先ほどの症度分類の話の確認を取りました。単純に皮膚潅流圧だけから見て、症度0
は関連負荷を行っても変化しなかった、むしろ上昇してしまった。血圧の上昇は十分だ
と思いますけれども、それは0です。
 潅流圧測定は、10mmマーキュリーずつ変化します。ですから、症度1の場合は10変化
したもの、2では20変化したもの、3は30以上変化したもの。単純にそれだけで分類し
ているだけで、評価尺度としてほかのあれは一切入れていないということです。一般的
に圧流量曲線というのはなかなか難しい側面がありますし、潅流圧そのものもシストリ
ックなのかダイアストリックなのかというのはいつも議論になっていて、基本的にはダ
イアストリックではないかとは言われています。
 それは、虚血のある低潅流量の場合はダイアストリックのほうを取っている。例のあ
るいは正常指の場合はどの圧を測っているのかというのがもう1つはっきりしない面も
あることはあります。あと、血流のほうは第3指ですね。
○宮井先生
 相関を取ってみたら3指です。
○重松委員
 うちは3指しか取ってないのですが、先生の所の指間ではどうだったですか。
○宮井先生
 3指による指間での分析ですね、それは個々によって若干違います。
○重松委員
 私たちは1カ所しか取れなかったのであれなのですが、指でまた違うのだと思うので
す。
○宮井先生
 そうですね。対照群については、ほぼ同様の指の値のパターンがあります。振動障害
療養群は、全くバラバラでした。
○重松委員
 レイノーの発現する指をどうするかという問題がまた出てくると思います。
○樋端委員
 それぞれの検査の持っている意味については、まだ明かでないこともいっぱいあるだ
ろうと思うのです。例えば、潅流圧でIIIが出ていて、血流量で0だという違いが出ると
いうのは、検査法の持っている本質的な問題が含まれているということだと思います。
 同じようにしびれにしても、患者が訴える神経のしびれというのは末梢由来のものも
あるし、それからエンタップメントもあるし、いろいろなものが含まれてきているとい
うことですから、それを1つにして検査をしたらこういう結果になるということであり
ます。
 それから、労働省分類の循環についていうと、冷えがある、しびれがある。こういう
ものについても、病態は非常に複雑だと思うのです。例えば、このアナストモーゼの開
き具合の問題だとか、それから攣縮の問題だとか、おそらくそれぞれメカニズムは違う
のだろうと思います。
 そういうものを、いろいろな検査で引っかけていこうということですから、データの
違いが出ても当然だと思うのです。ですから、総合的に評価するということをいちばん
大事にしないと、いまの段階では、これがいい、あれがいい、きちんとカットできると
いうデータにはならないのではないかと思っております。
○宮下座長
 まず、基本的には樋端先生が冒頭におっしゃられたように、この両者の検査は相関が
あるから意味があるとか、ないから意味がないとかという議論ではないと思います。で
すから、いまおっしゃられたように、検査の持つ特性もありますから、重松先生がご担
当されている、末梢循環の潅流圧というコンポーネントに何が大きく関与するか。我々
がやっている血流というものに何が関与するか。おっしゃられるように、それが両面か
ら見た場合によりきちんとした評価ができるという考え方も一方ではできるかと思いま
す。
○原田委員
 重松先生のデータで印刷された図を見ましたが、10mm刻みで判読するのに随分苦労さ
れて、丁寧にチェックされていることはよくわかりました。先ほどの症度0、I、II、III
のご説明の中で、変化が10、20、30で機械的に切られたということなのですけれども、
これは負荷をかけて、圧が低下した量が10、20、30と。中には上がる人もいるけれども、
それは入っていない。
○重松委員
 それは0です。
○原田委員
 上がった人は0ですね。
○重松委員
 あるいは変化がなかったです。
○原田委員
 0は下がらない、あるいは逆に少し増えるような。
○重松委員
 増える例もあったということです。
○木村委員
 ちょっと違う話になるかもしれませんが、糖尿病で末梢神経障害に関する多施設での
検討結果、すなわち100何施設のデータを拝見する機会がありました。当然末梢神経障
害なので、神経伝導検査をやっています。100何施設で、多発性の末梢神経障害をチェ
ックしているのです。神経伝導検査で行っているのは正中神経のMCVだけなのです。
従ってもしも異常がでたとしてもそれが単一の神経だけの問題であれば、他のいろいろ
な原因も考えられることになります。つまり実際にマルチセンターでいろいろな検査を
やるにあたっては、いろいろな問題があるわけで、現状としてはこのような問題もある
ということです。
 振動障害に対しては末梢神経に関してどの部分がどのようにやられているのかよくわ
からないのが現状です。そういう中でこういう検査を行い、いくつかの指標ができたと
いうことは非常に意味があると思います。特に、臨床の所見だけではなくて、それを裏
付ける客観的なデータということで意味があると言えます。ただ先ほども他の先生から
お話がありましたように、検査の限界の問題があります。例えば私の所でいえば、あく
までやりやすいということで、いちばん速い伝導速度を持つ神経を検査しているわけで
す。痛みを伝える細いファイバーなどの検査をしているわけではありません。大体太さ
の違う線維でもパラレルに障害されると言われていますけれども、パラレルではない場
合も当然あるわけです。そういう検査の限界を踏まえながら、客観的にはこういうデー
タがあるということを理解しておく必要があると思います。いずれにしても臨床的な評
価がいちばん基本になると思います。
 臨床的評価をいろいろな検査で補完していきながら、総合的に見るという立場が重要
と思います。それを裏付けるデータとしては、我々のほうの分野に関しては、今回かな
りいろいろなことができたと思いますし、かなり参考になるデータが得られていると思
っています。
○髙山委員
 宮井先生のほうへはデータを送れなかったのですけれども、運動機能障害の場合に握
力はどうかというのは皆さんが前から質問されていたことです。徳島のデータしか手元
に残っていなかったのですが、1101から1128の28名に関して、私どもでMRIの症度分
類と、握力低下がどうかということで、どこで線を引くかというのはなかなか難しくて、
MRIを片方しかやっていないので、今回は両側とも握力が25kg以下という形で線引き
をしてみました。
 そうしますと、MRIの症度分類0の方は16例中2例、症度分類Iの方は8例中2例、
症度分類IIの方は4例中3例ということで、MRIでほとんどなんともなくても握力が
落ちている人もいるのだけれども、逆にMRIではっきりした所見がある人は、ほとん
どが必ず握力も落ちている傾向が高いということがわかりました。そのデータは間に合
わなくて送れませんでした。
○樋端委員
 1103だったと思うのですけれども、MRIの測定指の所見が非常に悪いけれども、握
力は良くて、逆のデータが出た方がいたと思います。
○髙山委員
 確かに逆に出ました。私は立ち会ったのですけれども、患者は自分で自覚症状の悪い
ほうをという形で取らせてらいました。5回測りましたがバラつきがありました。1回
目と5回目では、握力が10ぐらい違う人もいるので、その辺をどのように取るかという
のは難しい問題があります。
 前から何回も言っているように、握力というのは疲れてきてしまうと思いのほか力が
入らない。それから、あまり気合が入らなくて力がないという場合もあります。確かに、
MRIで悪い人は、握力もそれなりに悪いということがわかりました。握力が悪いから、
逆にMRIの評価が悪いかというとそうでもないかもしれないです。
○粱井委員
 握力が、10kgぐらいしかない人はどのような感じなのでしょうか。
○髙山委員
 今回は、いまお話した1103の方の右側が極端に落ちているけれども、あとは悪くても
20kg近くある方ばかりなので、それほど極端な握力低下例は、今回の検査記録には入っ
ていませんでした。
○宮下座長
 いまの追加の部分にも関連するのですけれども、いわゆるこの相関分析といいますか、
この種の検討と、あとどのような観点で、特に木村先生、髙山先生は個々のデーヌ数が
多いですが。あとこういうことに踏み込んでやったらいかがかとか、そのようなサゼス
チョンなり、ほかの先生方もこのような観点で見てみたらというようなことがございま
したら、次回には、もう少しグレードアップして、分析した結果をご検討いただけると
思うのです。そういう観点からいかがでしょうか。
○重松委員
 これで見ていると個別のコメントみたいになってしまいますけれども、潅流圧変化は
大きいけれども、血流が変化しないということなのでしょうか。
○宮下座長
 それもあります。
○重松委員
 逆に言うと、そういう見方もあるんですね。これは面白いですね。
○宮下座長
 私も個別に見ているのですけれども、いま重松先生がおっしゃられましたのは。
○重松委員
 表4です。これでいくと、潅流圧は変化するが、血流は変化しないというパターンで
す。おそらくこういうデータを出したのはなかったと思うので、非常に興味があります。
あとは、FSBPが出れば、これと対比させると非常に面白いと思います。FSBPで、
指の動脈の指間動脈に近いところの圧と、末梢の皮膚のレベルでの潅流圧と血流という
のは非常に面白いですね。面白いと言ってはいけませんね、非常に興味がありますね。
 あとは、これの本来の目的は、他疾患による循環障害をどう除外するかというのが1
つの大きなポイントだと思うのです。そういう観点から見たらどうか。我々の所で、対
照群の中で30以上大きく変化するものは外しました。これも経験則になるのですけれど
も、30以上寒冷負荷で変化する対照群というのは、何らか器質的な疾患を背景に持って
いるだろうということで、コントロール群として正常群とされているわけですけれども、
一応外して勝手に検討させてもらったという側面もあります。
 最初から問題になっていることですけれども、正常群が本当に正常かという問題とか
いろいろな問題がはらんでいることははらんでいると思います。
○原田委員
 いまの点で常用者の場合の30以上の変化がある場合は外していないわけですか。
○重松委員
 それは、なかったと思います。コントロール群の中で、大きく30以上変化したものが
あって、それを外したと思います。
○原田委員
 データを吟味する前に、外す場合と、外さない場合を決めることが原則だと思うので
す。
○重松委員
 ですから、それは両方記載してあります。例えば、SPPの絶対値の変化量で見ると、
外さないでいくと0.0566というところで有意差は出ないのですけれども、コントロール
の中から大きく変化、30以上の例を対照群から外すと有意差が0.00015まで出てくる。
両方の記載はしてあります。
○原田委員
 ただ、当該の検討をしようとしている検査結果を見て、対象から外す、外さないとい
う選択をするのは無理があると思います。
○重松委員
 そうですね。例えばの話で、そのようにしたらこうなるというデータを両方出してい
るということです。
○原田委員
 その辺の評価は慎重にしないと、結局、後知恵的にというか、出てきたデータでケー
スとコントロールを選別することになるものですから、厳密な比較検討という点では、
疑問に思う点があります。
○重松委員
 今回の場合は、対照群の精査が行われていない対照群ということでしょうか。
○職業病認定対策室長
 私は、途中からこの議論に参加しているので、もしかしたら最初のほうでやっている
のかもしれませんが、コントロール群の方々は年齢も随分高い方もいらっしゃいますが、
本当に全部正常だったのでしょうか、それとも糖尿病をもっていたとか、そういうこと
は全くなかったのでしょうか。
○宮下座長
 そこは、少し議論のあったところです。
○本間委員
 私の所で対象に選んだ方は、直近の健康診断で、基本的に何も問題がない方です。た
だし、直近のといっても2カ月とか半年というのもありますので、その間のことはわか
りません。もちろんGTTのような詳しい検査をやっているわけではなくて、一般の健
康診断です。
 それから若干問題になるのは、若干だけれども振動工具を扱った人たちが中にはいま
す。この辺は厳密に議論していただいたとおりであります。
○職業病認定対策室長
 一般に年齢が60歳を超えると、健康といってもそれなりにというところがあるかと思
ってお聞きしました。
○本間委員
 岩見沢労災病院でも同じです。私の所は問診だけです。
○原田委員
 何かの疾患が、コントロール、患者の中に紛れ込んでいるということは実際にあるわ
けです。何かが後から見つかったときに、コントロールの健常者ではないということで
外してしまうと、それと同じような要素が患者の中に当然あるわけですが、そちらのほ
うは外されない、ところがコントロールのほうは外されるということになります。
○職業病認定対策室長
 それはよくわかっています。
○原田委員
 これは非常に重要なことです。
○重松委員
 対象から外す患者の中から、そういう人たちをどう除外するかというのが1つここの
テーマだと思うのです。要するに他疾患があって、背景疾患があって、それで起こって
きている病態を、本来の振動障害で起こってくる病態からどう除外するかというのが1
つのポイントだと思います。
○原田委員
 背景疾患がある場合には極力除く必要がありますし、それが実際の検査を始める前に
一定の基準で、患者群もコントロール群も同じ基準であらかじめ外しておくべきなので
す。一旦始めてしまったら、それからコントロール群だけ1つの基準を適用して抜くと
いうのは恣意的になる。
○重松委員
 データの解析の方法を論じているのではなくて、本来の目的の1つになっているのが
そういうところにあるのではないかと思ったものですから。
○原田委員
 それは、臨床研究の原則としてありますね。
○職業病認定対策室長
 私が余計なことを言ったからそういう議論になったのかもしれませんけれども、患者、
コントロールが厳密に精査されて選ばれた患者、コントロールではなかったわけです。
先ほどの話の中に、どうも神経障害の中にエントラップメントのほうの問題があったり、
むしろそちらのほうの病気かもしれないということもあるわけです。そういうことを深
くここで議論し始めますと、結果的にどれを外すとか外さないという議論になってしま
います。それはしないほうがいいし、私も先生に賛成します。
 ただし、データを見るときに、そういうことも背景事情としてわかっていたほうがい
いということで申し上げただけで、それ以上の意味はありません。
○原田委員
 そうですね、そのことは非常に重要だと思います。
○宮下座長
 この議論は、最初に対照者を選定する際に、原田委員が言われたのは、結局ある分析
の対象をどういう集団であっても、ある概念で分類した場合に、それを基本としてやっ
ていくと。我々も、基本的にその基本群、それから療養群、対照群というふうに整理し
たわけですから、その中で論じるというのが基本だということです。改めてでもないの
ですけれども、確認しておきたいと思います。
 この分析に関しましては、次回により完全なものといいますか、そういう形でご提示
できるかと思いますので、この件についての議論はここまでとさせていただきます。
 本日は、冒頭から那須先生にオブザーバーとしてご臨席をいただいておりますので、
FSBP%を中心とした研究成果についてお話を頂戴いたします。
○那須先生
 資料に頁が打ってありませんが、表紙をめくると症例数が書いてあります。参加施設
は6施設です。振動障害患者、一応患者として診たのが112名。対照群については先ほど
問題になっておりましたが、一応他の疾患が否定できるものに限定しておりますが87例。
年齢は大きく差がありまして、患者群は平均年齢が72歳、対照群は43歳。患者群のレイ
ノー現象について、これは聴き取りなのですけれども、現在もありと申告した人が70例、
過去はあったけれども現在はないが31例、レイノー現象を経験していないのが11例です。
 次をめくってください。これは各施設で質問を変えて、例えば、2回測定するところ
は20℃と22℃とか、21℃と23℃とか、22℃と24℃といった組み合わせでやってほしいと
いう要求を出しました。例えば、上から2行目の2回測定のところの人数70というのは、
室温20℃と22℃でやったのが70例です。21℃と23℃でやったのが10例というふうに見て
ください。
 いろいろ組み合わせがあるのですけれども、統計処理をするときに測定部位の近く、
手の位置の近くの室温を測定しています。その室温が、必ずしも21℃には保たれていな
いという問題がありましので、21±1℃というカテゴリーは、20℃から22℃の範囲をこ
のように表記します。23±1℃は22.1℃から24.0℃と表記しますと約束すると、測定時
の室温別対照者の数を見ると、21±1℃の人は69例、23±1℃の人は80例になります。
患者群で見ると、21±1℃、つまり20℃から22℃の範囲は101例、22.1℃から24.0℃が
112例であったということです。
 次をめくりますと対照者、振動工具を使ったことのない人たちが、年齢によってFS
BPはどう変化するかを見たものです。これはゴベンチが言っているように、統計的に
は差はありませんでした。つまり、低い室温、比較的高い室温、どちらも差はありませ
ん。問題は70歳台の症例がとほとんどなかったということです。
 次をめくりますと、これはタイトルが間違っています。対照者と振動工具使用者全員
です。レイノー現象は省いてください。図に示しますように低温の所、比較的高温の所
でも差がありそうなのです。
 次をめくりますと、室温が20℃から22℃の間、次は22℃から24℃の表記のところで、
相関するかどうかを見ました。下のところでY=0.01というのは通常の相関の方法を求
めた値です。その次のY=4.33というのは、関数関係解析で求めた相関式です。これが
どういうことか。私も最初これを要求されたときにわかりませんでした。つまり、FS
BPは不確定要素がたくさん入ってくる。不確定要素があるもの同士の相関を調べると
きに、通常の相関係数で求めるのはおかしい。そういう不確定要素がどれだけあるかを
頭に入れながら調べる方式は、関数関係解析だそうです。これは最近出てきた言葉だそ
うです。いま、検査室ではかなり問題視しているみたいです。当然同じものを測ってい
るのだから、相関するのは当たり前の話だと。その幅がどのぐらいあるかという図を一
緒に示しなさいということだそうです。2つの相関関係ではどちらも有意相関です。
 次をめくりますと、対照群の値と、レイノー現象が現在もある人、以前はあったけれ
どもいまはない人、もともとない人と分かれました。室温が比較的高い所、その次をめ
くりますと室温が20℃と非常に低い所ではこういう関係ですということです。その次の
は、室温20℃と22℃と非常に狭く取ったときにも有意相関がありました。レイノー現象
群別に見たFSBP%です。こんなところで、過去の山陰労災のデータとほぼ一緒です。
 最後から2頁目は、今回皆様がいちばんお知りになりたい数字であろうかと思います。
これは中間報告でして、もう1年症例数を増やすことになっています。今朝も議論して
きたのですが、同じ人、例えば那須が去年受けて今年も受けたときに、それを2人と計
算できるかどうかという問題です。できないとするならば、労災病院グループのデータ
はもうあまり増えないだろうと思っています。
 あまり増えないと仮定するならば、この表で見ていただきますと、室温21℃前後、20
℃から22℃の間でいきますと、cut-off値を60%とすると、特異度が98.6、70%にすると
92.7。つまり、70%とすると、正常者の約10人が患者群に入ってくる。70%にすると、
13人が患者群に入ってくる。そうすると、レイノー現象を拾うのはどのぐらいか。60%
にすれば6割しか拾っていない。70%にしても3割が落ちることになります。室温23℃
にしても、ほぼ同じことがいえます。ただ、室温を23℃と高目にしますと、cut-off値
60%にしたときにレイノー現象ありの人たちが結構落ちている。そうすると、室温23℃
群、つまり22.1℃から24.0℃というのはあまりよくない。室温は、少なくとも22℃から
下のほうがいいのではなかろうかという結論でした。
 いちばん最後の表は、ちょっと遊びでやりました。昨年度と今年受けた同じ人が46例
ありました。その中で、血管拡張剤(カルシウム拮抗剤)+プロスタグランディン製剤
を使っている人が17例ありました。この17例は、今回は3日間フラッシュアウトしてお
りますので、去年の平均血圧FSBP%と今年のFSBP%を比べるとこのぐらいの値
でした。中間報告としてはこの程度です。
○宮下座長
 ありがとうございました。他施設間で、多数例の解析の中間報告をいただきました。
○那須先生
 もう1つ中間報告で言わせていただきたいのは、初めはこの研究の中で、冷水負荷基
本テストと比較するという大きな作業仮設があったのですが、いかんせんこれだけの高
齢者ですので、医師のサイドからやめる、患者から拒否をされたということで、ほとん
ど冷水負荷を行った例数は、統計指標には耐えることはできません。
○宮下座長
 データを基にご説明いただきました。全体あるいは個別の事柄でも結構かと思います
が、少し議論にご参加いただきたいと思います。
○木村委員
 年齢の問題があると思うのですけれども、先生がお示しになられた3頁から4頁に年
齢についての記載があります。振動障害の患者は皆さん70歳を超えておられますが、こ
の対照者には70歳以上の方はなかったということですか。一応前提としては、70歳を超
えても同じようになるだろうということがあるのでしょうか。
○那須先生
 残念ながら、70歳以上で病院に来ている人で、病気のない人はいないのです。それで、
対照者がつかみにくかったということと、例えば世界でこの研究をいちばん数多くやっ
ているイタリアにボベンチという人がいます。その人も、70歳台の症例は持っていませ
ん。これはしようがないのではないですか。
○木村委員
 ただ、印象としては各年代で変わっていないから、70歳以上でも同じであろうという
ような想定はあるわけですね。
○那須先生
 あろう、という作業しかないです。
○原田委員
 他のデータでまとめてあったのは、患者群では平均年齢40歳でした。
○那須先生  
 ボベンチも、対照群は60歳台までしかないです。
○原田委員
 700例の報告がありましたけれども。
○樋端委員
 敏感度・特異度ですけれども、この健康対象者で決めているのですね。
○那須先生
 今回のデータはそうです。
○樋端委員
 3回測定した人がいるわけですけれども、この方は、この解析の中には入っていない
のですか。
○那須先生
 その組み合わせのところには入れています。
○樋端委員
 1人3回測っても1人という意味ですか。
○那須先生
 そうです、そういう意味で書いています。3回測っているのはうちの施設だけです。
○樋端委員
 3回のデータ。
○那須先生
 例えば、この室温のカテゴリーに入っていなければ外しています。どうしてそういう
ことをしたかといいますと、過去の私の経験でいくと、室温に相当影響されるというこ
とがあります。極端なことをいうと、オルセンは室温18℃で測る、それはゼロにするた
めです。そういうことがありますので、ある程度室温の影響の相関関係式を求めて換算
できれば、どの室温で検査しても1つの基準で判定できるのではないか、という仮説の
下でやりました。
○宮下座長
 温度は、測定手の近傍とおっしゃいましたか。
○那須先生
 はい。例えば私の所でいくと、室温コントロールパネルと、測定する手の近くの値は
ほぼ一緒なのです。労災病院でそういう良い施設を持っているのはうちだけなのです。
よその施設ではそういうことができないのです。どうしても室温を21℃日設定してくれ
と言っても、21.8℃とか21.9℃になるわけです。これはしようがない。そういう厳密な
ことを言うのは目をつぶったほうが現実的でないか、ということでこのような相関指数
を求めました。
○宮下座長
 そういうゾーンを設けて、そこに当てはまる分を分析対象にしたという感覚なのです
ね。
○那須先生
 はい。
○原田委員
 大変興味深くてというか、面白く聞かせていただきました。IQRがこの線内で、そ
れを超えた上の25%がプロットしてあるわけですね。下からの25%もプロットしてある。
だから、この線の間は10%の人が入っている。それで、この色が付いているところが50
%ですね。
○那須先生
 はい。
○原田委員
 対照者と振動工具使用者のレイノー現象別、室温21±1℃ですね。
○那須先生
 はい。
○原田委員
 これで、先ほどのオールセンのゼロプレッシャーという話がありましたけれども、21
℃で検査されたときに、ゼロプレッシャーになった人たちはどのぐらいの数いるのです
か。
○那須先生
 細かい数は知りません。覚えていませんけれども、例えば相関のところを見てくださ
い。21℃のときにはゼロプレッシャー、これ丸が違うでしょう。
○原田委員
 大きいですね。
○那須先生
 これは黒沢先生にお願いしたのですけれども、数が多いと言っていました。
○原田委員
 どのぐらいですか。
○那須先生
 数は聞いていません。
○原田委員
 最近は、振動障害の患者の症状は比較的軽くなってきているので状況は違うと思うの
ですけれども、北欧とかボベンチでは検査の仕方も違います。彼らのレポートを見てい
ると、かなりの患者がゼロプレッシャーになっています。
 先生の所の印象としては、例えばボベンチだと2002年の総説を見ていると、40%がゼ
ロプレッシャーだと書いているのですけれども、先生の印象としてはどのぐらいですか。
○那須先生
 ゼロプレッシャーは1割もいませんよ。逆に言えば、本人がレイノー現象と思ってい
るのが本当なのかどうかを疑わなければいけない。
○原田委員
 もう1つは、たぶん先ほど先生が言われましたのは。
○那須先生
 だから逆に、オルセンはゼロを主張していましたけれども。例えば今回、EU、フィ
ンランド、スウェーデンに行きましたが、スウェーデンはソルゲージの形が違って、ス
ウェーデン独自の方法でやっていて、それはよくないと思いました。フィンランドは、
タイプがメディマティックとHVLabです。彼らは、60%cut-offします。
○原田委員
 大体60%ですか。
○那須先生
 そうしますと、大体当たります。
○原田委員
 レポートとしては、大体その辺が多いですね。黒沢先生はちょっと高いですけれども。
○那須先生
 今朝も彼と議論しました。EUは60%だよと。黒沢さんの値は70%にしたらどうかと。
○原田委員
 文献的には80%とかがあります。
○那須先生
 黒沢さんの値が70%とすると、おしまいから2枚目を見てください、100人やれば10人
健常者がおかしいということになります。これは、ちょっと値が大きいのではないかと
いうのが私の考え方です。そうすると、振動障害者では、約3割が落ちてしまう。その
グレーゾーンを設けたらどうか。グレーゾーンの人は、日本であれば夏というシーズン
がありますので、春と秋又は冬と頻繁に検査をして、値がいつも同じようだったり、悪
くなれば認定してもいいのではないか。とにかくcut-off値を75%とか70%にするのは間
違いではないかと思います。
○原田委員
 黒沢先生の特異度、スペシフィシティーはちょっと低い値で論文で報告していますか
ら、そういうこともあるかと思います。それと、ゼロプレッシャーの件ですけれども、
1つは粱井先生は先ほど18℃と言っておられました。彼はブランケットを使って全身の
冷却をやっていますから、そういう違いもあろうかと思うのです。
○那須先生
 スウェーデンは、ボディクーリングをやっていました。ボディクーリングはどうだと
言ったら、山陰労災がボディクーリングをやめたのは、あれは非常に評判悪いからです。
患者からきついとの訴えがかなりありますので、そんなのがないかと聞いたら、実はあ
るのだ、医者としてはやりたくないと言っていました。
○原田委員
 それでゼロプレッシャーの率が高くなっているということもあろうかと思うのです。
いまの特異度、あるいは鋭敏度のところですけれども、先生が言われましたサンプルサ
イズを大きくするために、同じ被検者を入れるかどうかという話でしたね。
○那須先生
 来年ですね。
○原田委員
 いまも、ちょっとそういうことがあるかと。統計処理上の問題でいろいろなやり方が
あるかと思うのですけれども、基本的には独立したデータを取り扱う。つまり、同じ人
のデータは独立していないわけですから、その場合は解析上それなりの注意が必要です
ね。
○那須先生
 そうすると、いまの数字はベストに近い数字ですよと。
○原田委員
 なかなか妥当な数字だと思います。1つはボベンチのデータでも、再現性の検討を行
っています。
○那須先生
 10%ぐらいでしょう。
○原田委員
 CVHが10%はあると思います。結局CVというのは変動係数ですから、それが7、
8%ありますので、10ミリぐらいの差があります。再現性の問題が若干あると思います。
先ほど、プロスタグランディンにカルシウム拮抗剤を使ってという話でした。これも
(従前)お話したのですけれども、昔、カルシウム拮抗剤、ニフェジピンが有効かどう
かで検討したときに、プラセボとニフェジピンと振動障害の患者に飲んでいただいて、
それで冷水浸漬の皮膚温度、それから血圧も測ったのですけれども、明らかに有意の差
があります。ところが、これを見るとあまり差がないのです。1年間の間隔の差はある
のですけれども、これはどのように考えればいいのでしょうか。案外大事なデータなの
ですね。
○那須先生
 これはよくわからないのですけれども、まず高齢者だということ、それから常用して
いる。もう慣れてしまっているのではないですか。
○原田委員
 3日間ウォッシュアウトしても、だいぶ残っているのでしょうか。
○那須先生
 しょっちゅう飲んでいるから、その薬はあまり効かないということになってしまうの
ではないですか。臨床的にいえば、健常者であれば効くかもしれないです。
○原田委員
 プロスタグランディンですからね。
○那須先生
 極端なことを言いますと、私もやったことがあるのですけれども、点滴をして4時間
ぐらいは皮膚温度がダーッと上がっているのです。そういう状況下でやれば。これを逆
に見ていただくと、標準偏差が大きいでしょう。
○原田委員
 大きいですね。
○那須先生
 それは、そういうものが反映しているかもしれません。
○原田委員
 そうですね、そういう点では、先ほど先生は遊びと言われましたけれども、なかなか
重要なデータかと思います。
○那須先生
 これは、全く遊びでどうなっているのかなと思っただけです。臨床的にはあまり問題
にしなくてもいいかなと。この辺りについて、重松先生どうなのですか。
○重松委員
 これぐらい大きさがありますよね。
○原田委員
 私が多少やったときには、ウォッシュアウトを1週間だか2週間やったのですけれど
も、それでも完全に全員がやめたのは3日間でした。
○職業病認定対策室長
 那須先生は、FSBP%を長くやってこられたのでお聞きしたいのですけれども、文
献などを読みんでみますと、ECのクライテリアなどでは60~70%、それからイタリア
は60%という数字を出しているかと思うのです。先ほどの説明でも、先生は60%ぐらい
か、あるいは70%かなということで2つのところをご説明されました。それに対して原
田先生は75%という文献もあるということをおっしゃいましたけれども、大体どの辺が
国際的な水準と見られるでしょうか。
○那須先生
 数字までしっかり教えてくれたのはフィンランドですけれども、60%がデファレント
です。60~80%がプロバブル。イギリスのグリフィンのデータでいくと、やはり60%以
下がデファレント、80%までがプロバブル。プロバブルの範囲は再検査。何カ月か、1
年か2年のインターバルを置いて再検査する。
 私がいちばん大きく聞いたのは、過去、国同士、例えばイギリス、フランス、ドイツ、
各国で独自に決めていましたが、EUとなって、いますべてISOでスタンダーライズ
しようとしています。その動きでおそらく統一するでしょう。
○原田委員
 まだこれはもっと先の話です。
○那須先生
 先の話ですけれども、彼らはそれを待っているわけです。
○原田委員
 考えているのでしょうか。
○那須先生
 極端なことを言うと、今回私がイギリスでお訪ねしたのはグリフィン教授で、この人
は医者ではありませんので、いろいろ調べて後でメールを送ってくれました。簡単に言
うと、日本の混迷期と一緒なのです。いまヨーロッパの人は何を考えているかというと、
認定以前の予防をどうするかです。検査項目は日本と同じようにたくさんあります。そ
のたくさんある項目の中で、認定の項目は何かと聞くと、FSBP%しかない、ほかの
ものはカウントしないというのがフィンランド、スウェーデンの考え方です。
 なぜカウントしないかという理由は、はっきりしたエビデンスがないのです。照会す
るというエビデンスはあるのですけれども、計測結果でその信頼性がかなり高いという
エビデンスはないという考え方なのです。
 どうしてそういう考え方ができるのかと聞いたのですけれども、極端なことを言うと
レイノー現象が出ても仕事はできる。労働能力のディスアビリティの程度は10%前後と、
かなりシビアな状態になっても。したがって、補償体系が違うから、一般労働者はレイ
ノー現象が出ていても仕事を継続しています。そこが国としての政策が全然違うからな
んとも言えないわけです。向こうの人たちは、その仕事に耐えることができなくなって
転職したときの賃金の差額は補償されます。その人が職が見つからないときにはどうす
るのだと聞いたら、それがいちばん社会問題で、私が聞いたのは医者でしたから、俺た
ちにはわからんということでした。
○職業病認定対策室長
 先ほどのご説明で、60~80%がプロバブルだとおっしゃいましたけれども、その可能
性がその後どう判断されるのですか。
○那須先生
 その間でありますと、例えば65%であればレイノー現象がある可能性が非常に高いと。
だけれども国の基準としては60%にしているから、65%の人は次のシーズンまで待てと。
例えばフィンランドの場合は、この前行ったときにもう12℃でしたので、半年後にまた
検査をすると言っていました。
○樋端委員
 レイノーがないケースの場合のこの検査の評価ですが、結構パーセントが低いのがこ
のデータでも出ていますね。
○那須先生
 その辺りは聞き漏らしています。またメールで確認します。本人は、レイノーはない
と言っているのだけれどもどうするのかと。おそらくそれは認定していないと思います。
スウェーデンは、まず問診でレイノー現象を確認すると言っています。それからこれを
測る。おそらくフィンランドも同じことだと思います。いまでもない。本人が受けなか
ったら駄目だと。自覚症状はなくて検査は悪い、というのは次だけだと、こう思うので
す。
○原田委員
 先ほどのヨーロッパのお話に関心があるのですが、北欧はもともとFSBP%の検査
の発生の地ということもあって、フィンランドのオウルに行ってピロカンヌスの検査を
見たこともあります。ボベンジの所へも行ったりもしましたけれども。ピロカンヌスは
10℃10分の日本のやり方の冷水浸漬もやったと論文に書いています。ただ、北欧では伝
統的にFSBPを重視するということがあるかと思います。
 イギリス国内でもいろいろ議論があるみたいです。例の4つの検査でのテストバッテ
リー、FSBP%と皮膚温、振動感覚、温冷感覚の4つの検査で総合的に評価しようと
いうことについてのイギリスの状況はいかがでしたか。
○那須先生
 HSEは主張しています。あそこはプリベンションが目的でしょう、予防が。
○原田委員
 そうですね、そう役割を持っている機関ですね。HSEのリーフレットなどにもそれ
は紹介されていますよね。
○那須先生
 はい。
○原田委員
 臨床の先生方はあまりそういう発想はない。
○那須先生
 グリフィンに聞いたのですけれども、よくわからないということでした。
○原田委員
 グリフィンはMDでないと。
○那須先生
 それと、職業病認定方式が、日本の想像外のところが結構あります。したがって非常
に複雑で、聞いてもちょっと理解できないです。例えば認定を裁判でするとか言うので
す。そのときにどんな医者が証言するのか、医者の好みでいろんな検査しているのだと。
○原田委員
 医師の判断ですね。
○那須先生
 いま、イギリスは日本の初期と一緒です、いまの現状と。悪く言えば、日本よりも遅
れています。
○原田委員
 私もそう思いますけれども、遅れているというか、歴史の流れがヨーロッパと日本で
はちょっと違うのです。
○那須先生
 日本は、国としての制度がちょっと遅れているから。
○原田委員
 そのシステムがですね。
○那須先生
 研究は進んでいますが、仕組みは遅れている。
○原田委員
 日本は、予防対策を立てるということで、衛生管理のシステムをつくって、ここ30年
ぐらい急速にやってきたのだけれども、欧州は科学的な検討を着々とやってきたという
歴史的な経過の違いがあります。それが、いまそういう状況を生み出していると私は思
います。
○職業病認定対策室長
 原田先生は、いわゆるマルチのFSBP%をやられて、これからデータを出されると
思いますけれども、印象的にはこういう傾向ですか。
○原田委員
 このデータは、リーズナブルだと思います。ただ、今回のプロジェクトでのFSBP
で気になるのは、この間もお話しましたけれども、ある程度、測定にテクニシャンが習
熟することも必要ですね。
○那須先生
 その点メリマティックと、今回先生方が使われたHVLabは全然違うのです。メリマ
ティックのほうがうんと楽で簡単なのです。あまり間違いはないです。HVLabのほう
は、測定中の間違いがいっぱい起こるわけです。特に電極がずれるとか外れるとか。
○原田委員
 そうですか。
○那須先生
 でしょう。それで先ほど言われたゼロとか、あれは電極がずれたものだと思います。
○原田委員
 私もそうだと思います。
○那須先生
 その点について、うちは、シーズンが間に合いませんでしたので、私が被検者になっ
て、ときどき実習をさせていたのです。今回正直言って私がイギリスへ行ったのは、あ
の電極の形状を変えてほしいという要請に行ったのです。
○原田委員
 何か要請に行かれたという話も聞きました。
○那須先生
 最初メールでやり取りしていたのですが、現行どおりやれということしか言ってきま
せんので、行ってきました。それで説明して、絵を描いて、こういうふうにしたいのだ
と。それでいま改造のトライをしているけれども、ケーブルが手に入らない。
○原田委員
 まだですね。いずれは換える。
○那須先生
 いや、換えてくれないと日本は使わないと私は言ったのです。
○原田委員
 ですので、そういう要素があるものですから、多分、メディマティック以上に、一度
に4本の指を検査するには習熟が要るのですが、今回その問題がちょっと。
○那須先生
 HVLabの装置は、いまの形状では日本に導入して、誰も測れないと思います。
○原田委員
 測れるようになるのに半年かかりました。これは試行錯誤で、データだからコツがわ
かったのですが。
○那須先生
 だから、メリマティックのものであれば、大体間違いなくわかりますね。HVLabの
装置も、私の要請どおりになりましたら、使いやすくなると思いますが。だから、先生
のところは、ちょっと間に合わない。
○原田委員
 半年間、試行錯誤して、大体コツはわかったので、私たちの教室ではかなり安定して
測れる状況になっているのですが、そのコツをちゃんと習熟するためには、やはり少し
トレーニングが要るということです。
○宮下座長
 あと、よろしゅうございますか。那須先生ありがとうございました。大変貴重なデー
タと、ディスカッションに参会していただきまして、ありがとうございました。
 それでは3番目の議題ですが、検討を進めながらの話ですが、とりまとめということ
も視野に入れながら、時間的な経過もありますので、そろそろ方針なり構成案なりを吟
味していただくということで、事務局のほうで、これはまだ叩き台ですが、少し具体的
なものを案としてご提示していただいておりますので、まずその概要についてお願いし
ます。
○中央職業病認定調査官(藤本)
 資料番号3、「振動障害の検査指針検討会報告書」骨子(案)を配布させていただい
ております。
 項目の1、「はじめに」として、検討の趣旨、目的について記述をする。1点目とし
て、振動障害の業務上外の判断は、昭和52年5月28日付の基発第307号「振動障害の認
定基準について」により行われていること。2点目として、現行認定基準に示された検
査手技は、安全性、客観性等の観点から問題点がかねてより指摘されていること。3点
目として、労災請求・労災認定をめぐる近年の状況。4点目として、当検討会において
は平成13年11月の中間報告、それから平成14年度、平成15年度、平成16年度にかけて実
施された委託研究等も踏まえて、7検査の実証検査を行い、その他の検査についても併
せて検討したということです。
 項目の2、「振動障害の検査指針に係る検討経過」です。平成13年11月の中間報告、
それから平成14年度から16年度の委託研究報告の概要について紹介し、振動障害の検査
指針検討会の設置・検討に至る流れを概括的に記述するということです。
 平成13年11月の報告書については、現行の認定基準を前提としつつ、安全でかつ客観
的に振動障害が存在することを確認するための精密検査及び振動障害と類似疾患を鑑別
しうる検査手技としてどのようなものがあるかについて、末梢循環障害、末梢神経障害
の検査手技を中心に検討して、現行の検査手技以外で、振動障害の診断を行う際に利用
すれば、より的確な診断が可能となると思われる検査手技について、スクリーニングと
して有効、精密検査として有効、鑑別診断として有効の3種類に分類を行い、その導入
に当たっての留意点についての検討を行ったものです。
 なお、課題として、臨床データの集積、認定基準で示されている検査手技との比較、
その他検査手技を用いた場合の測定条件、評価基準等についても、引き続き検討するこ
とが必要であるということにされたわけです。
 平成14年度の委託研究においては、実用化が可能な検査手技とされた各検査の事例収
集を中心に、検査手技の確立と評価基準について研究を行い、これらの研究を相互に連
携させて、現行の検査手技及び評価基準の問題点についての研究を行ったものです。
 その結果、レーザードップラー血流計による皮膚潅流圧測定をはじめとする4検査に
ついて、新たな検査法として期待される可能性が示唆されたものです。
 平成15年度の委託研究においては、平成14年度に引き続いて、レーザードップラー血
流計による皮膚潅流圧測定をはじめとする4検査について、振動障害の認定を受けてい
る方々に対する検査を実施し、実証検査結果を基に、新しい諸検査の各障害に対する有
効性、相互の検査方法の間での関連性、それから現行の通達に示されている既存の検査
方法との関連性等について検討を行ったものです。
 平成16年度委託研究においては、室温、冷却温度等の検査条件との関係、あるいは加
齢による検査値への影響、それから振動障害以外の類似疾患との鑑別、さらにそれらを
加味した診断のための評価基準の設定等についての検討を行ったところでございます。
 5番目としては、先ほどお話がございましたが、那須先生がご研究されております、
指動脈血圧測定の研究の状況についてです。
 項目の3、「検討会の設置」について。検討項目、現行の検査手技の医学的妥当性及
び有効性の限界、新たな検査手技に係る評価基準の策定、新たな検査体系の在り方等に
ついて検討を行っていることについての記述です。
 項目の4、「振動障害の検査手技に関する国際動向」です。振動障害の検査手技に関
する国際動向を紹介して、国際標準化機構において、国際標準化の取り組み状況、ある
いは標準化作業の進捗状況等についての記述でございます。
 項目の5、「現行検査手技の医学的妥当性と有効性の限界」、これは第1回目の検討
会の資料、これは資料を最後のほうに添付しておりますが、これに基づいて検査項目、
検査手技、指摘事項についての記述でございます。
 項目の6、「新たな検査手技に係る評価基準の策定」です。今回実証検査を実施して、
それぞれご担当された先生方に、検討結果について概説をしていただくというものです。
なお、その場合には、委託研究の結果についても、併せてお願いできないかと考えてお
ります。
 それから、平成13年度の中間報告においては、サーモグラフィー等との検査について
も報告がなされておりますので、その概略について再掲していただきたいと考えており
ます。
 この中で、その他の検査として、まだこれはご相談もしていないのですが、宮下先生、
木村先生、高山先生にお願いできないかと考えております。
 検討会としてヒヤリングした検査ということで、前回近藤先生をお招きして、全身空
冷負荷検査についてのお話を伺ったところでございます。今日また那須先生からもお話
を伺ったところでして、こういったことについても記述させていただきたいと思います。
 項目の7、「新たな検査体系の在り方」、これについては、今後ご検討いただくとい
うことですので、その検討結果について記述するというものです。
 項目の8、「検査手技別評価基準」、これは各検査手技ごとに評価基準あるいは参考
値等について記述するというものです。末梢循環障害、末梢神経障害、運動機能障害と、
それぞれについて記述をお願いしたいと思っております。さらに、検査精度をより上げ
るためのいろいろな検査手技を組み合わせて、それを評価することはできないかという
ことについて、記述をお願いしたいと思っております。
 それから、他疾患との鑑別についてですが、鑑別疾患、鑑別診断の要件、検査方法等
について、これについては樋端先生、本間先生、梁井先生にお願いしたいと思っており
ます。
 項目の9、「まとめ」ですが、1点目としては、平成13年11月の中間報告については、
スクリーニング、精密検査、鑑別診断の3種に分類を行って、的確な診断が可能となる
検査体系の方向性について示されたわけですが、本検討会としてこの報告内容について
の評価をいただけないものかと思っております。2点目としては、検討会で検討した検
査手技、平成13年11月の中間報告で評価した検査手技と、現行認定基準で示しておりま
す各検査手技と比較して評価をいただきたいと思っております。3点目として、7番目、
8番目の項目で示されている新たな検査体系についての提言をいただきたいと思ってお
ります。そして最後に今後の課題でございます。以上でございます。
○宮下座長
 これは、それこそ報告の骨子、叩き台の前段階ということで、今日この方針をご承認
いただいてという段取りではございません。何よりまだ検討会の議論が続いております
し、冒頭申し上げたように、事務局としてこれまでの経過、それから本検討会を設置し
た目的背景から、この本検討会の報告として取り上げて検討をこの委員会でもいただき
たいということも踏まえてのことでございます。
 それで、少し具体的なことを申し上げますと、この是非論にかかわらないところです
が、3頁を開けていただきたいのですが、本委員会で、「新たな検査手技に係る評価基
準の策定」、このタイトルはタイトルとしてご覧いただいて、要は本検討会で検討して
おります実地検査ですが、このまとめを、6のこの項目で各先生方にご担当いただいた
もの、それから、7もそうですが、8、先生方ご担当の評価基準、この並びでいきます
と6、7、8ということになっています。実際の進め方について、座長が示させていた
だきますが、資料番号4をご覧いただきたいと思うのです。これは、委託報告書のある
部分、構成案を参考にして書かせていただいているのですが、これは扱いとしては、実
地検査の、各先生方ご担当いただいた部分を1つのまとめとして考えております。そし
てその必要といいますか、部分を骨子案のところに再掲なりをしていただくということ
を考えておりまして、この実地検査については、1つのまとまりとして、これからお示
しするような構成案で、ひとまとめのものをお作りいただいてはどうかと考えておりま
す。
 そういうことで、まず全体の対照者の特性とかプロフィールも含めて、対照者をご選
定いただいた樋端先生、本間先生、梁井先生、対照者全体の詳細の記載をお願いしては
どうかと考えております。それを踏まえて、各先生方にご担当いただきました検討結果
を、随時、これは目新しいことは何もないのですが、先生方ご担当の対照者、それから
採用された方法、結果の分析で、一応特徴がございますが、同じ基調でと思っておりま
して、基礎統計、分析結果、症度分類、評価基準と書いております。これは僭越ですが、
この次の資料で具体的に示したいのですが、あとは考察、まとめと今後の課題というこ
とで、大体の歩調を合わせていただいてはどうかと思っております。
 次の頁で、この書式を先生方に、このとおりやっていただくということではなくて、
このコンポーネントといいますか、「参考」と書いております。これは私どもの書式で
恐縮ですが、最初に「基本統計」と書いてあります。例えば対照者の全体の測定の概要、
ここでは指ごとに療養群の、この場合ですと、レイノー、レイノーなし、対照群という
こと。全体の測定の概要をお示しいただくとなっております。2頁目も同じですが、こ
れは比較です。療養群と対照群の比較をしていただく。
 あと、症度分類、あるいは分析の中で、例えば5頁の表3、これはSWS、その次が
労働省分類ですが、この分類に当てはめた場合に、検査の結果がどのようになるかを概
説していただいたらどうか。ですから、共通してSWSと労働省分類、そういった分類
でのご検討を、これだけということではないのですが、これも基本的にやっていただい
たらどうかということでございます。
 それで、あと症度分類、先ほど宮井先生のほうから、今日相関分析ということで、結
果をご報告申し上げたのですが、先生方の検査の中でレイティングした、先ほど各先生
からもご紹介がありました評価ですね、そういう分類で個々に当てはめた部分が7頁で
す。これは、私ども前回ご紹介させていただいたと思うのですが、ちょうどこの表5-
(1)で、左からIDがあって、それから年齢、被検側、それからSWS、労働省分類、
そして中段に異常所見数、症度区分ということで、重複になりますから、詳細は省略し
ますが、異常所見数をカウントした根拠というものを、以下右のほうに示してあります。
そういうわかるものを添付していただいた上で、異常所見数、症度区分と示していただ
くと、よりわかりやすいのではないか。併せて結果の4番目の評価基準をお示しいただ
く。
 何度も申しますが、この方式でということではないのですが、スタンダードな項目、
あるいは、書いていただくコンポーネントとして、そのようなことをご提案申し上げた
い。そして最後に、考察、まとめと課題ということで、共通する分析を、最小限この程
度ご提案させていただいて、また先生方のお考えをお伺いしようということです。
 戻りますが、事務局から資料3に基づいて報告書を、事務局として平成13年の検討会
の結果、平成14年以降の委託研究の概要、それを踏まえた形で、今回の検討会の内容を
盛り込み、さらにそれを含めて評価、この検討会でのそれらの再評価を得ておまとめい
ただきたいということです。
 今後の進め方としては縷々書かれておりますので、ここで1から順に今日叩いて完璧
なものに仕上げていくという作業は考えておりません。むしろこのまとめ方も、いま検
討しております検討結果、これも重視していきたいと思うのですが、何回か議論を重ね
てまとめの作業を進めていきたい。ただ、私も座長としては、別途資料番号4でお示し
いただいた作業は、なるべく段階的に、あるリミットをもって進めていただければあり
がたいということです。その上でそれを、先ほど言いましたように議論をしながら、全
体の報告書としてまとめていきたいと考えております。この骨子について、ご質問も結
構ですが、今日の時点で何か、ここは議論しておいたほうがよいという基本的なこと、
あるいはお気づきの点がございましたら、お伺いしたいと思いますが、いかがでしょう
か。
○木村委員
 資料4ですが、結果の示し方で、3番の症度分類、評価基準のところがちょっとよく
わかりにくかったです。これは症度が先になってしまっていますが、こういう評価に基
づいて症度分類をしたらこうなったとか、そういう風に解釈してよろしいでしょうか。
○宮下座長
 ええ。それとやはり、臨床的にと申しますか、先ほど来、検査値の解釈の仕方がござ
いますね。
○木村委員
 一緒のことですね。どういうふうにしたかという問題は。
○宮下座長
 そうですね。ただ、これまでの検討あるいはこれからの検討で、取り入れていただく
ところは、取り入れていただいてよろしいかと思うのですが、いままでのものをフィッ
クスして、この方法でないと私はこうしませんというよりも、もう少し多面的に、やは
りこういうふうな項目、あるいは評価を付け加えたほうがいいというふうなことは、少
し時間をかけて議論したいと思います。
○木村委員
 そういうことは加えてもいいということですね。
○宮下座長
 はい。
○木村委員
 評価基準によって症度分類をつくったりしているわけで、順番などがどうなのかとい
うことです。
○原田委員
 この症度分類というのは、例えばSWSとか、労働省分類とか、その分類による分析
結果ということではないわけですね。
○宮下座長
 私の説明がちょっと誤解を招いたかもしれませんが、1つ症度分類という共通の物差
しということでは、労働省分類とSWSに基づいた、先ほどの5頁、6頁のSWSを1
つの物差しに、それから、労働省分類での1つの物差し、これに基づいて検討結果がど
のような値を示しているかを、基本的に各検査で、1つのスタンダードとしてまとめて
はいかがかと。
○原田委員
 それですから、ここで(3)「症度」と書いてあるのは、SWS、あるいは労働省の
症度分類のことをいっているわけですね。
○宮下座長
 はい。
○原田委員
 先ほどの木村委員のご質問で。
○木村委員
 私は個々の症度を。
○原田委員
 この後思われたわけでしょう。
○宮下座長
 はい。
○原田委員
 ですから、4との関連はどうなりますか。
○宮下座長
 ですから、ちょっと紛らわしいのですが、私は当初、分析結果で、基本的な分析で、
その2つのスケールをもって分析をスタンダードに入れていただくということで申し上
げたかと思うのです。ですから、そういう意味で、3、4にこだわりません。
○木村委員
 いまのお話ですと、大体3番目で、SWSとか労働省の症度分類で、自分たちの結果
がどのようなものであるかということですね。そこら辺を踏まえながら、自分たちの検
査結果を評価基準として、自分たちの分野における症度としてどのようにしていくのか、
というような流れと考えてよろしいわけですか。
○宮下座長
 はい、そういう理解でお願いしたいと思います。対照者の記述を3先生に、全体のど
ういうふうな。先ほどの対照群の議論もございましたが、そういう記述で、対照者の選
定の方法なりグルーピングなり、それから一覧表に、最終的にどのように収載するかは、
また議論していただきますが、整理をしていただくということで、3人の先生にお願い
したいと考えています。
○本間委員
 こういう書式で記載してくれというものを言っていただいたほうが。
○職業病認定対策室長
 まず事務局のほうで、もともと患者・対照群を50/50にしたときから絞っていった過程
のものがいまありますので、それを整理して、こういうことで対照を選んだということ
を下書きし、それを3先生にお送りします。それで、ここはこういう検討も加えてこう
なったということのご意見をいただいて、それでまとめるということで。そうでないと、
3人の先生にお集まりいただくのは、なかなか困難だと思いますので、私どもが中間と
いうことでよろしいでしょうか。
○本間委員
 予め送ってありますよね。
○職業病認定対策室長
 ええ。
○本間委員
 労働省、SWSの症度も付けて。それをもう1回入れていただいていますか。
○職業病認定対策室長
 はい。
○宮下座長
 それでよろしいですか。
○本間委員
 はい。
○職業病認定対策室長
 それでは確認ですが、調査結果の評価につきましては平成14年度からの委託調査研究
報告も踏まえて評価してほしいと思います。FSBP%については、那須先生の分が今
日も出ましたが、原田先生にこれも併せて評価していただくことができますでしょうか。
同じFSBP%という括りではあるわけですね。マルチとシングルとの違いはあります
が。
○原田委員
 マルチとシングルの違いもありますし、さっきの機械の操作性の問題もありますし。
ですから、今回のプロジェクトの状況と、かなり経験豊かなというか、山陰労災を中心
とした測定とは、併せて議論ができにくい部分がありますね。だからやはり、別のほう
がいいように思いますが。
○職業病認定対策室長
 FSBP%その1、その2という形でまとめてしまいますか。それで、その2の部分
は、私どものほうで那須先生のほうからデータをいただきながら、文面もチェックして
もらい、それを原田先生に見てもらうというようにしましょうか。
○原田委員
 2頁の(5)との関係ですか。2頁の(5)に、那須先生というか、山陰労災で那須先生の3
カ年計画がありますが、さっきのデータには、これ以外のデータがたくさん入っている
わけですね。それを。
○那須先生
 今日の分は、これとは全く関係がないです。
○原田委員
 全然関係ない。ですから、それについての1項を設けようという話でしょう。という
か、先のデータを取り込もうという。
○職業病認定対策室長
 FSBP%に対する評価というものをどうするかという問題になります。
○原田委員
 これは、基本的にはどうなのでしょうか。そもそも当初のこの検討会に反映する内容
として、那須先生の所の研究の結果も含めて評価するという流れだったですね。
○宮下座長
 流れはそうです。いまのお話は、その延長ということです。
○職業病認定対策室長
 つまり原田先生のご担当の部分に、併せて書いていただけますか。それとも、別に書
いてくれということですか。
○原田委員
 そうですね、それはやはり那須先生に書いていただいて。
○職業病認定対策室長
 那須先生がメンバーでないものですから。
○原田委員
 そうですか、それを取り込むという。
○樋端委員
 ただ、実証検査で同じ患者さんを対象にした一連の検査と、那須先生がなさった検討
とは、また対象が違うものですから。
○職業病認定対策室長
 もちろんそうです。
○樋端委員
 だからそういうことは明確になっているような記述の仕方をするべきだと思うのです。
○職業病認定対策室長
 もちろんそうです。ここの中にも書いてあるように、実証検査の結果はこうであった、
平成14年から平成16年の委託研究の結果はこうであったと。
○樋端委員
 ですから、そうなると、追加論文という形になりますね。
○職業病認定対策室長
 ええ。
○宮下座長
 それと、先ほど事務局との話で申し上げたのですが、このストーリーで、いまの樋端
先生のご発言のように、ずっと流していきますと、その中に我々の実証検査をすべて入
れていきますと、いまの参照すべき、あるいは以前に検討した部分との議論が、ある部
分少し不明確になる。ですので、いま申し上げたように、この実地検討の部分について
は、実地部分の検討の報告書という形でひとまとめにして、この流れで、以前このよう
な結果、あるいは限界、そういうことがあって、今回ここの、この別に示したような内
容からこういうことが言えて、こうだよという、そういう流れになろうかと、私はその
ように理解しております。
 あとこれの資料として、詳しくはここを見てくださいということでありますけれども、
それは事務局としてはいかがですか。
○職業病認定対策室長
 結構だと思います。
○宮下座長
 私はそのほうが、この中に全部流し込んで、ある部分はものすごく多くて、それが終
わってまとめというふうに、結果的に厚さは同じでも、報告書としての整理の仕方とい
うのは、私が申し上げたほうがクリアになるのではないかと、座長としては考えるので
すが。よろしいでしょうか。
○職業病認定対策室長
 はい、わかりました。
○原田委員
 別の項を立てるということですね。
○宮下座長
 ええ、ですから、別項といったら何ですが。
○原田委員
 別の項をね。
○宮下座長
 ええ。
○原田委員
 それはやはりそのほうが混乱がないように思います。関連してよろしいですか。
○宮下座長
 どうぞ。
○原田委員
 まだまだ骨子は検討するということですが、4頁の(6)の冷水負荷皮膚温検査と振動感
覚閾値の検査ですが、この並びでいうと、循環関係は循環関係、神経関係は神経関係に
並べていただければと、いま思ったのですが。
○宮下座長
 はい、失礼しました。
○原田委員
 もう1点、これはどういうスケジュールでまとめるかという時間的なリミットもあろ
うかと思うのですが、基本的にはやはりこの報告書については、確認ですが、全員の確
認の上に完成する、了解の上に完成するというふうに理解してよろしいですね。
○宮下座長
 この委員会としてまとめるということです。
○原田委員
 委員会として責任をもってまとめる。ですから、全委員がちゃんと了解した上でとい
うことですね。
○宮下座長
 議論に参画して、そして取りまとめたものということになります。
○原田委員
 全員が了解して出されるというふうに理解してよろしいですね。
○宮下座長
 そういうことです。
○原田委員
 そういうことですね。
○職業病認定対策室長
 そうです。
○原田委員
 わかりました。
○職業病認定対策室長
 つまり、検討会として報告してくださいとお願いしているわけです。
○原田委員
 そうですね。いつ頃がタイムリミットになるのでしょうか。
○職業病認定対策室長
 前回だったと思いますが、座長が、できれば1月くらいに取りまとめたいというお話
がありましたが、ちょっと遅れていますので、まあ大丈夫かなと私は思っていますが、
いまから、それでは来年にしましょうというわけにもいかないので、それを目標にして
はいかがでしょうか。
○宮下座長
 そうしましたら、この骨子の案の構成、またご議論いただいてもよろしいのですが、
この線に沿って取りまとめの作業を進めていく中で、議論を何回かしていきたいと思っ
ておりますので、これは、違うものが突然出てきて、こうしましょうということにはな
らないのですが、この本委員会での検討報告書ですので、議論しながら、あるものに収
束できればと思っております。
○樋端委員
 「その他の検査」のところで、痛覚検査の曖昧さということがずっと言われてきて、
痛覚検査に代わる温冷覚検査の問題については、この前の会議でもちょっとお話させて
いただいたのですが、触れなくてよろしいですか。4頁の(8)です。
○宮下座長
 いかがでしょうか。これは、温冷覚検査、その他の検査で。
○梁井委員
 温冷覚は、ものすごく差があるのではないですか。
○樋端委員
 私がやった経験では、もちろんバラつきは当然あるのですが、振動障害の認定患者を
対照にした場合、かなりシャープな差が出るのです。それは、伝導速度などと相関させ
た検討はしていませんが、かなりシャープです。
○梁井委員
 高いですか、低いですか。
○樋端委員
 熱くなるのを感じる温度はかなり高くないと感じない。低くすると、相当低くしない
と冷たいと感じないです。先生、どうですか。
○那須先生
 温冷覚というのは非常にいいのですが、値段が高すぎます。
○樋端委員
 値段が高い。ただ、スウェエーデン辺りではかなりやられている。
○那須先生
 いや。
○樋端委員
 もうやってないのですか。
○那須先生
 あまりやっていない。要するに、HVLabの機械はみんな高いから、あまりやってい
ません。
○宮下座長
 いまのご提案については、その検査の意義、それから装置、そういうことのご紹介な
り限界なり、あるいは問題点なりということで、どうでしょうか。ほかの検査も、ここ
に挙がっていない検査で、このいまの温冷覚だけではなく、ここに挙がっている以外で、
もしご提案があれば、それを一括して、どういう基準、あるいはどういう判断で当委員
会として採択といったらおかしいですが、述べておくかどうかというあたりも、改めて。
いま樋端先生のを契約するということではないのですが、お考えいただくということで
いかがでしょうか。ほかにいかがですか。
○木村委員
 資料4のほうで、この対照というのはみなに共通ですね。2番目の「各検査ごとの対
照」というのは、その中で、例えばできなかったとか、そういう意味で、この中から選
ぶと、そういう意味ですね。
○宮下座長
 そういうことです。
 ありがとうございました。それでは次回のことですが、進め方として、この報告、特
に資料番号4を、次回までに完璧にとか、そんなことは思っていないのですが、この構
成で、おおよそご賛同いただきましたので、各先生方には鋭意、このまとめの作業、こ
れは検討ももちろん含まれるわけですので、お進めいただきたいと思います。あるいは
また事務局のほうで、この骨子案についての記載も、少し実際に進めていただいて。で
すので、次回は少しお時間をいただいてといっても、年内に1回させていただいて、そ
こからの議論は、少し詰めて、急ぐわけではないですが、何回か十分時間をとって議論
したいと思いますので、早く合意に至ればそれで結構なのですが、次回と次々回くらい
を決めさせていただきたいと思います。
 それで、まず次回ですが、もし先生方、検討結果のおまとめを概略、大体の線でつく
っていただけるということでしたら、11月下旬、いまから1カ月後くらいを目途におま
とめいただいて、以後修正していただいてもちろん構いません。追加していただいても
構わないのですが、そういうふうにしていただいて、そして事務局からもこの検討会の
案文を整理していただいて、これも11月中くらいにしますと、先生方のお手元に12月
の初めに、すごく粗いものになると思うのですが、あるまとまったものがお手元に届い
て、それをお目通しいただいた上で、次回の具体的な1回目の議論ができたらと思って
おります。
                              (日程調整)
 それでは次回、第12回は12月15日(木曜日)の午後2時からということで。第13
回は、年明け1月5日(木曜日)、午後2時からということでお願いいたします。場所
は追ってご連絡いたします。
 お忙しいところを恐縮ですが、この線に沿ったご検討の結果をおまとめいただくとい
う前提で、これはもちろん修正も追加も結構ですが、進められたところで結構ですので、
あるいは完全に近いほうがよろしいのですが、11月の28日、月曜日に、事務局までお
届けいただいて、12月のその会議の前の週には、事務局と私のほうで少し整理させてい
ただいたものをお送りして、それを通読していただいた上で、15日の第12回の検討会
でご議論をいただきたいと思います。長時間ありがとうございました。
○職業病認定対策室長補佐
 熱心なご議論ありがとうございました。それでは、次回12月15日ということで、よろ
しくお願い申し上げます。本日はどうもありがとうございました。


                【照会先】
                 労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室
                 職業病認定業務第二係
                 TEL03-5253-1111(内線5571)