05/10/25 労働安全衛生分野のリスクアセスメントに関する専門家検討会 第2回議事録     第2回 労働安全衛生分野のリスクアセスメントに関する専門家検討会                    日時 平成17年10月25日(火)                       13:00〜                    場所 厚生労働省労働基準局第1・2会議室 ○副主任中央産業安全専門官  ただいまから、第2回「労働安全衛生分野のリスクアセスメントに関する専門家検討 会」を開催いたします。配付資料の確認をさせていただきます。次第、資料1「指針に 盛り込むべき事項(改訂版)」、資料2「別表1危険性又は有害性の分類と災害の例」 です。前回の議事内容は、資料1の中で項目別に整理しておりますので、特に議事録と しての配付はしておりませんのでご了承ください。  前回ご欠席の委員の紹介をさせていただきます。田村委員と、杉本委員です。それか ら、本日は所用により内山委員、小林委員、宮川委員はご欠席です。以後の進行は向殿 座長にお願いいたします。 ○向殿座長  前回に引き続き、リスクアセスメントに関する専門家会議を始めます。田村委員は早 目に引き上げるということですので、化学物質の爆発その他の件は少し時間を前にとい うことでやらせていただきます。この前の議論を踏まえ、「指針に盛り込むべき事項 (改訂版)」が資料1として出ておりますので、前回と同じように前半と後半に分けて 事務局から説明してもらい、それで議論しようと思います。まず、1番から8番までを 事務局から説明していただき、それで議論に入ります。 ○副主任中央産業安全専門官  資料1の2頁、1「趣旨」とあります。この資料の構成は、いちばん上に第1回検討 会でのご意見と、追加でいただいた意見を書いてあります。それを踏まえ、指針に盛り 込むべき事項として次の欄に書いてあります。意見として、リスクアセスメントの実施 がなぜ必要なのかを正しく理解してもらうための前文が必要であるということで、盛り 込むべき事項として3つ掲げております。1つ目の○は現状についての説明です。それ を踏まえて、なぜリスクアセスメントが必要かということを、2番目のパラグラフで書 いてあります。3番目のパラグラフは、指針の法的な根拠ということで、労働安全衛生 法第28条の2の第2項に基づくものであるということを書いております。  1行置きまして、あとは既存のいろいろな指針の前文をそれぞれ参考として出してお ります。1つは、化学物質管理指針。3頁では、労働安全衛生マネジメントシステムの 通達に趣旨・目的が書いてあります。マネジメントシステム指針の本文がその次の欄で す。こういう内容で作ってはいかがかということです。  4頁の2番の「適用等」については、特に論点・問題点は前回の委員会ではありませ んでした。指針に盛り込むべき事項として6点挙げております。このうち事務局の整理 として、1番の法令との関係は、1番の「趣旨」のところに入れております。5つ目、 6つ目の機械包括指針との関係、セーフティアセスメント指針との関係は、後のほうの 「リスクアセスメントに関して入手する必要のある情報の内容」のところで記述してお ります。  残りの指針の性格、業種としての適用範囲、マネジメントシステム指針との関係の辺 りを、本文に盛り込むべき事項の(1)(2)(3)ということで示しております。こ の指針は、全ての業種における、全ての危険性又は有害性を対象とするものであるとい うこと。これは基本指針で、そのほかに危険性又は有害性の種類や業種ごとの詳細指針 を策定することができる。化学物質の指針はこの詳細指針に位置づけられるというこ と。マネジメントシステム指針の「危険性又は有害性等の調査及び実施事項の特定」の 具体的実施事項と位置づけられることにしております。  解説に盛り込むべき事項として、「危険性又は有害性等の調査」の定義づけを詳しく こちらで書こうということでやっております。  5頁の3番は「リスクアセスメント関連用語の定義」については、「ハザード」と 「リスク」と「リスクアセスメント」の3つの用語について、それぞれどういう定義に するかをご検討いただきました。(1)ハザードについては、前回の検討会で、カタカ ナはできるだけ使わないほうがいいだろうというご意見をいただきました。その結果、 ハザードについては法律の用語に合わせて「危険性又は有害性」という表現にする。  (2)リスクはカタカナで表現するのですが、定義づけをしっかりするということ で、この定義づけは6頁にあります。指針に盛り込むべき事項第1回検討会提出の2番 目の段に書いてあります「危険性又は有害性により労働者に生ずるおそれのある危険又 は健康障害が発生する可能性及びその程度」をリスクの定義として指針の本文の中でき っちり書いていこうということを提案しております。定義については、いろいろなフィ ールドでいろいろな意味で使われているので、労働安全衛生の分野で使うリスクという のはどういう定義である、というのを明確にするように、というのが前回検討会での意 見でした。  7頁の(3)リスクアセスメントの定義は、「適用等」の頁で解説のところにも書き ましたが、論点・問題点として、リスクアセスメントは「措置の検討までを含む」とい うことで、措置の決定及び実行までは含まないという定義にしようということで、その ような表現にしております。リスクアセスメントとマネジメントの境界線についてもい ろいろご意見が出されておりますが、それを整理した結果が、先ほどご説明いたしまし た記述になります。  次の頁は「リスクアセスメントの実施時期」です。こちらの論点として、設計・計画 段階でのリスクアセスメントをどう取り扱うかということ。それから、「リスクアセス メントの見直し」という表現を使っておりましたが、これは「リスクアセスメントのや り直し」という表現に合わせようということです。第1回検討会でいろいろご意見をい ただいたのですが、1つは作業を開始する前はもちろんなのですが、それ以前に設備な どの設計段階からリスクアセスメントを実施する必要があるのではないかということ で、かなり多くの意見をいただきました。  リスクアセスメントの見直しの時期についても、継続向上という観点、それから知見 の集積によって新たな情報が得られる場合もあるので、それを踏まえて見直す必要があ るのではないかというご意見をいただいております。その辺りを踏まえて9頁で本文に 盛り込むべき事項として(1)から(4)までに書かれております。  まず、危険性・有害性等の調査の実施時期について、原則として以下のような一、 二、三、四の作業を実施する前に行うこととしております。そのほかに、そういう作業 に係る計画の策定時にも、それぞれ実施することが望ましいということにしておりま す。労働災害等が発生したときには、過去の調査内容に問題があるかどうかを判断して やり直すこと。(4)は経年損傷や、いろいろな知識経験の変化、知見の集積などを考 慮して定期的に調査をやり直すことということです。解説に盛り込むべき事項として は、(1)から(4)までの項目に、どのような事項が具体的に含まれるかを解説的に 書いてあります。  10頁は「リスクアセスメントの実施手順」です。こちらの論点としては、優先順位と ランク付けをどのように整理するか。数値評価をするかどうかということ。第1回検討 会での意見として、リスクアセスメント実施手順の流れを絵で見やすく示すべきである というご指摘をいただきました。ランク付けについても、例えば危険性とか有害性など いろいろな種類のハザードがある中で、種類の違うリスクをまとめて順位付けをするの か、そういうやり方を示せるのかというご意見もいただきました。優先順位を付けるの か、ランク付けをするのか、その辺りの考え方も整理すべきであるというご意見をいた だきました。  本文に盛り込むべき事項として、概ね以下の過程により実施するということで(1)か ら(6)まで挙げております。作業標準等に基づいて体系的に作業を洗い出す。その作業 に伴う危険性又は有害性を洗い出す。洗い出した危険性・有害性ごとに、誰がどのよう な災害に遭うおそれがあるのかを特定する。それぞれの危険性又は有害性ごとにリスク の見積もりで優先順位の設定を行う。それぞれのリスクについて、既存の対策を評価 し、不十分であればどのような追加対策を行うのかを検討する。その一連の流れの記録 を作成して保存する。  解説には、作業の洗い出しの際の注意事項が書いてあります。それから、穴埋めして いけばリスクアセスメントができるような基本フォーマットには既存のいろいろなもの がありますが、そういうものを参考にしながら作るということを考えております。  11頁で6番は「リスクアセスメントの対象の選定基準」です。これは、リスクアセス メントが努力義務になりますので、どこまでやったら法的な努力義務を果たしたことに なるかということで、論点・問題点として、まず軽微なtrivialなというものの定義を どう考えるか。合理的に予見可能という考え方をどう整理するか。リスクアセスメント の各作業における危険性又は有害性ごとに実施するということです。  前回の検討会でいただいたご意見として、「合理的に予見可能」という考え方につい ては、明確に説明しないといけないだろうけれども、こう書かざるを得ないだろうとい うご意見でした。ただ、土木の世界やフィールドによっては、合理的に予見不可能な災 害などもあるので、どこまでを予見可能とするかという概念はなかなか難しいという話 がありました。それから軽微、trivialの判断についても、災害の程度が小さいという だけで本当にいいのか。災害の程度が小さくても、頻度が高ければ「合理的に予見可能 」と言えるのではないかというご意見もいただきました。  その辺りを踏まえ、本文に盛り込むべき事項として、危険性又は有害性等の調査は、 作業における危険性又は有害性による災害の発生が合理的に予見可能であるものに限 る。こういうものを選定することにしております。ただ、そのうち最悪の状況下におい ても、軽微な災害しかもたらさないと予想される、いわゆる軽微なものについては調査 の対象から除外しても差し支えない。  ただ、この(1)(2)にかかわらず、以下の(1)から(4)に示しますような重大な災 害を発生させるおそれのある危険性又は有害性については、原則として調査の対象にす るということで、「過去に労働災害が発生した」「重大な傷害、後遺障害などが発生す るおそれがある」「単純なヒューマンエラーが重大な災害を発生するおそれがある」 「作業・操作方法などが複雑で、文書による手順が必要となる」そういうものについて は、たとえ軽微な災害しかもたらさないと予想されても、原則として調査の対象とする という整理にしております。作業の洗い出しについては、作業標準や作業手順等に基づ いて、体系的にするということで書いてあります。  解説に盛り込むべき事項として、前回の検討会でご意見をいただいたものとして、 「軽微な」の判断として、これはあくまで最悪の状況を想定しても軽微な災害しか発生 しないものを言うのだと。たまたま軽微な災害しか発生しないものは含まない、という ことを念押しで書いております。「合理的に予見不可能」ということについては、調査 は実施してもらうのだと。調査を実施した上で、それでも現在の知見で予見し得ないこ とについて、初めて予見不可能という。調べもしないで予見できません、というのは認 めませんという考え方を示しております。  7番は「リスクアセスメントに関して入手する必要のある情報の内容」です。リスク アセスメントに関していろいろな情報を参考にしてやっていくことになりますけれど も、これをすべて入手する必要があるという位置づけにするのか、あるいは単なる例示 列挙として、こういうのがあるので、こういうのを使ってくださいという形にするのか ということが論点です。  それでは、どういう情報が必要かということは、この指針に盛り込むべき事項(第1 回検討会提出版)という2つ目の段に6つ掲げております。前回の検討会では、これに 付け加えるものとして、災害統計には災害事例も含むということを明確にする。どうい う作業があるかを把握するために、作業標準が必要である。MSDSに関しては、単に 「説明書類」という書き方をしていたのですが、「有害性情報」という言い回しのほう がなじみやすいのではないかというお話でした。機械の世界で、MSDSに相当するも のがあるのだろうか、というご指摘もありました。  あとは、社内、同業他社、関連業界などの災害事例を追加したらどうか。それから、 労働者が日常的に感じている不安、危険などに、健康上の懸念を追加してはどうか。職 場巡視や労働者からの聞き取り、話し合いといったものを追加してはどうかというご意 見がありました。その一方で、拾い始めると切りがないので、重要なものの例示にとど めるほうがいいのではないかというご意見もありました。  これらを踏まえ、本文に盛り込むべき事項として、リスクアセスメントに関して活用 する情報として(1)から(6)までを挙げております。災害事例、災害統計等。使用 する設備材料等に係る危険性又は有害性に関する情報。当該作業にかかる作業標準、作 業手順書等。作業周辺の環境に関する情報。健康診断結果等。その他危険性又は有害性 の調査に当たる参考となる資料等ということです。  具体的にどういうものを指すかということは、解説に盛り込むべき事項の中で詳しく 書こうと思っております。具体的には、災害事例にはヒヤリハットやトラブル、社内・ 社外の災害事例なども含みます。危険性又は有害性に関する情報は、機械等の包括的安 全基準に基づきます、使用上の情報やMSDSなどが含まれます。作業手順書等の「等 」はまだ例示が示せておりませんが、何かあれば示したいと思います。  「作業周辺の環境に関する情報」のところには、作業環境測定結果や、屋外作業の場 合は周辺の地山の斜度、土質などが考えられます。健康診断結果のところには、日常の 健康不安。その他の情報としては、例えば労働者の資格・教育履歴あるいはセーフティ アセスメント指針に基づく調査結果、ということもリスクアセスメントを実施するに当 たって必要な情報と考えられるのではないかということです。  8番は「危険性・有害性の分類」です。この分類については、資料2の表と合わせて ご覧ください。ストレスや疲労といった付加的な要因についてどのような取扱いにする か、ということが論点にあります。指針の上で、どういう規定ぶりにするかということ があります。  第1回検討会でのご意見として、ストレスなどはリスクアセスメントを実施する上で どういう取扱いをしていくかということです。例えば、ハラスメントのようなものはど う扱うのか。あと気になることとして腰痛、頸肩腕といったものは含まなくてもいいの かといったいろいろなご指摘をいただいております。ハザードそのものとまではいえな いので、生理的要因に準ずる形で、付加要因として整理したいということで結論として おります。  本文に盛り込むべき事項として、危険性と有害性の分類で細かく分けると、資料2に お示ししたような危険性と有害性に分けて、それぞれ細かく分けたという形になってお ります。この分類の仕方は、労働安全衛生法のそれぞれ関係する条文に準拠した形で整 理しております。危険性については14頁にあるように、アからキまでの7つに大きく分 類し、それぞれについて具体的にどういうものが含まれるかを解説のほうで補足的に書 きたいと思っております。有害性については、アからエの4つに分類し、それぞれ細か い解説を加えていきたいと思います。  (2)として、リスクの評価に当たっては疲労等、危険性・有害性への付加的影響を 考慮する必要があると書いてあります。付加的影響の例として、15頁の(10)にありま す。例えば長時間労働等による労働者の疲労の蓄積等による影響や、深夜作業による影 響といったことがあるのではないかということで示しております。これで、8番までの ご説明を終わらせていただきます。 ○向殿座長  前回の意見と、その後の意見を踏まえて改訂版を今回お示ししました。まず、1番の 「趣旨」ですけれども、いまお話がありましたように、この前の意見に従って指針に盛 り込むべき事項を3つ入れようということです。あとは関係する資料ですが、これはい かがでしょうか。なぜリスクアセスメントが必要か、ということをちゃんと書きましょ う、ということで必要性と、法令にもちゃんと根拠があるのですよという話です。これ は、あったほうがいいに決まっていて、しかも一般的な話と法令にもちゃんと準拠して います、ということは是非付け加えるべきだということです。                 (特に発言なし) ○向殿座長  何かありましたら、後でお話を伺います。2の「適用等」については、この前も論点 ・問題点はあまりなかったということです。指針に盛り込むべき事項として、この前提 出していただいたものがあります。田村委員関係でいくつかあります。化学物質管理指 針がありますが、この件についてはいかがですか。本文に盛り込むべき事項として3つ リストアップしています。大事なことは、「本指針は全ての業種における全ての危険性 又は有害性を対象とする」というのは、たぶん従来にない包括的なものだと思います。 ○杉本委員  指針の性格で、「基本指針を踏まえ、ハザード別に詳細指針として策定する」という ことで書いてあるのですが、おそらくいまのご指摘からすると、ここは「ハザード別か つ業種別」の両方での記載が必要だと思います。 ○技術審査官  (2)で、「危険性又は有害性の種類や業種を限定した」となっておりますので、例 えば建設業みたいに業種を捉えた指針も作るから可能だと思います。「かつ」にしてし まうとちょっと難しくなりますので、化学物質指針などはハザード別指針ですし、建設 業ということになれば業種別指針ですし、両方の道を開いておこうということです。 ○向殿座長  (2)の中で業種を限定して「や」と入っていますね。この前も、これはあまり問題 のなかったところですので、次は3の「用語の定義」です。ここではいろいろ議論があ りまして、ハザードというのは、いろいろな分野で、いろいろ違った定義をしていて、 機械と化学ではちょっと違ったニュアンスがありました。機械では、危険源を記載して いる人が多いのですけれども、化学では危険源は的を射ていないような言い方だという ので、これは法令に従って「危険性又は有害性」という用語でいかがでしょうかという 提案です。カタカナはやめようという意見が出てきましたが、ハザードでは意味を違っ て捉えられる可能性があるからということでしょうか。 ○杉本委員  ハザードを、「危険性又は有害性」と定義するのか。 ○向殿座長  この上に長い説明が付いて、これこれに起因する危険性又は有害性で(以後は単に危 険性又は有害性という)というのを、ハザードという言葉を使うのはやめようというこ とが出てきました。 ○技術審査官  JISだと、先生がおっしゃいましたように、「危険源」という造語を使っております。 従来、厚生労働省でマネジメントシステム指針等で使ってきた言葉としては、「危険有 害要因」という言葉も使ってきた実績があります。  ただ、今回は法律上明確に位置づけられたということで、法令上の用語ということで 「危険性又は有害性」という形で整理させていただきました。 ○杉本委員  これから国際化を考えると、ハザードが危険性又は有害性に落ちるのはいいのですけ れども、逆に危険性又は有害性をいわゆるハザードの意味なのだと説明するのは国際的 に難しい。 ○向殿座長  国際的には、ハザードで統一していますね。それは分野で意味が違っていて、日本語 に訳すといろいろな意味が出てくる。確かにこうなってしまって、元に戻すときに、こ れは何だっけという話になると困る。 ○杉本委員  どっちが標準かというか、どっちがオリジナルかというと、今は国際化なので、国際 化の方をこう訳したのですよと。逆に、危険性又は有害性をハザードと言いますよと戻 るかどうかです。戻ればいいのですけれども。 ○田村委員  我々が通常ハザードというと、危険性・有害性を含めてハザードと言って、身近なハ ザード、エンバイロメントのハザード、あるいはヘルス・ハザードということで、国際 的にはハザードで統一しています。  だけれども、日本の歴史的な流れの中で、危険性・有害性という言葉が既に流れてし まっていますから、これを変えるというのはなかなか難しいでしょうね。そこまで変え るということであれば、それなりにやればいいのでしょうけれども、それまでの経緯を 生かしてやるということになると、いちばん近いのは危険性又は有害性なのかという感 じがするのです。 ○向殿座長  国際化を考えると、ハザードというのはカタカナであまりよくないという意見もある けれども、少し定着させたらどうかという意見が一方であるということですね。 ○田村委員  私は、そのほうがいいと思います。 ○杉本委員  もしやるのなら、括弧してハザードと書いておくといいです。 ○向殿座長  実は、これはハザードなのですよということですね。 ○技術審査官  本文中に盛り込むのは、法令上ハザードというのは使われた経験がないこともありま すので、ただ解説に書くことは十分可能だと思います。いわゆるハザードである、とい うことを解説に明記することは可能だと思います。 ○杉本委員  何か対応づけておかないと。 ○向殿座長  そうですね、解説でちゃんと残しておいていただくことにしましょう。だけれども、 国際会議その他でも、ハザードで話は全部通じています。ただ、分野によって意味が少 しずつ違っているというのは事実です。ハザードは、世界共通用語になっていて、それ は原子力から始まってすべてハザードという用語は使っています。 ○杉本委員  この前、日本人は、ハザードとリスクの違いがわからないと言われてしまいました。 BSEで、全品チェックというのはハザードの概念なのだと説明されて、なるほどと思 ったりしました。 ○向殿座長  ハザードとリスクの概念定義をちゃんとしてやらなければいけないのですが、その辺 がまだ甘かったです。危険性又は有害性を解説で、いわゆるハザードであるとしておい ていただければと思います。次は「リスク」ですが、これの日本語はギブアップして、 リスクはリスクで行こうということになりました。 ○技術審査官  法令用語上は金融リスクという用語があります。 ○向殿座長  ここで、法令上初めてハザードというのを作ったらどうですか、難しいですか。 ○技術審査官  指針ではちょっと。 ○向殿座長  難しいだろうね。とにかく、リスクは法令で使っているという事実があるわけです ね。 ○技術審査官  リスクはあります。 ○田村委員  前回も議論があったのかもしれないのですが、リスクを含む対象といいますか、内容 といいますか、それは事業所の中だけの話にするのか、あるいは事業所の外に与える影 響まで含めてやるのか、そこのところをはっきりさせておくということ。2点目は、リ スクといった場合に、我々は影響度という言葉と、被害度という言葉と使い分けていま す。影響度というのは、例えば爆発などが起こりますとエネルギーが発生し、爆風が発 生するとか、飛散物が出るとか、熱放射があるといったものを影響度というわけです。 被害度というのは、そういう影響を受ける所に、人がどれぐらいいるかによって被害の 大きさが違ってくるわけです。ですから、そこまで含めてリスクという言葉で議論する のか、あるいはフィジカルな現象である影響度だけで議論するのか、そこのところをは っきりさせておいたほうがいいのかなという気がします。 ○向殿座長  この前の議論では、ここに書いてあるように「危険又は健康障害」ということで、健 康障害ということは、ある意味では環境を経由して入ってくるというのも含めて、物理 的障害だけではなく、健康障害が発生する可能性及びその程度ということです。可能性 及びその程度ということで、可能性のほうで人間がそこにいたかいないかというチャン スまで含めて被害に遭う可能性、それからその度合。機械安全では、その組合せという 言葉を使っているけれども、改めて組合せなどと言わなくても「及び」とすればいいだ ろうというのがこの前の議論だったような気がいたします。 ○田村委員  我々の世界では、ここでいう可能性というのは、そういう現象が発生する可能性を言 って、起こった場合にどの程度影響があるかというのは先ほど申し上げた影響度、ある いは被害度、その積としてリスクということを議論しています。 ○向殿座長  危険な事故が起きる可能性、確率と、たまたまそこに人がいたりして、本当に被害に 遭うという、それを含めて可能性と言っている。ここまで含んでいるのですけれども、 ここではどこまで解釈できますか。 ○技術審査官  ご質問の影響度、被害度につきましては、10番の程度の定義のところで十分カバーで きると考えております。それから、事業所の外についても、前回内山委員からご指摘が あり、労働安全衛生法にも、公害等の法令に調和しなければならない条文がございます ので、その趣旨を踏まえた形で、当然屋外に排出するものについても、例えば環境関係 の法令に調和するようにするということは、指針上書き込むことにしております。 ○田村委員  そこのところははっきりしたほうがよい。 ○向殿座長  可能性及びその程度で、リスクの解説はいいですね。要するに、かけ算とか、引き算 とか、足し算とはここでは言わないで「及び」で表現すると。次は「リスクアセスメン ト」ですけれども、私どもが小さく考えると、検討・対策まで含めてリスクアセスメン トと言う場合があります。厳密に言うと、リスクアセスメントとリスクマネジメントと は違っています。リスクアセスメントは、要するに検討するところまでで、実際にどう いう安全対策を施すかというのはマネジメントのほうに入ると考えます。マネジメント とアセスメントはダブっているところがありますという書きぶりですね。これは、労働 安全衛生マネジメントシステムの中でも、考え方はこうですね。 ○技術審査官  アセスメントとマネジメントとは分けて考えております。 ○向殿座長  労働安全の小さい部分だと、リスクマネジメントというと、管理体制を入れて、全部 含めてマネジメントです。ある意味では、トップが入っています。リスクアセスメント というのは、現場の人間が、実はハザードを見つけて、それでどう対策するかという議 論をするところです。我々の場合、マネジメントといった場合は、トップも含めて全部 の話であって、リスクアセスメントというのは現場の人間がいかに安全を実現するか、 そのためにはどこにハザードがあって、どういう手を打てばいいかという話をするとい う、そういう使い分けをしている気がするのです。 ○杉本委員  私のイメージでは、機械というものを作る設計者がこの機能を果たすためには、ある 意味で機能ですからユーザーとしては欲しがっているわけです。ちょっと待ってくれ と。この機能を皆さんに享受していただくには、どうしても裏に残るリスクの話を聞い てもらわなければ困るというわけです。正直言って機械を設計するのは私だから、あな たたちはわからないから、私のほうから全部説明しますということで説明していきま す。  これは、こういうふうに解決しました、リスクアセスメントをやりました。でも、ど うしてもここは残ります。これについてはユーザーの皆さんに、使用時に事故を防ぐた めのリスクとして考えてくださいと言って渡すわけです。そうすると、それは全部マネ ジメントの中でマネージャーが見ていて、それで自分の労働者に提供する機械というの はいいかげんなものは許さんと、全部説明が要るというわけで、まず設計者に徹底的な 説明をさせて、残った部分は説明して、それでリスクが残って、それは安全管理に落ち て、安全管理のほうでは、それを現場でもって事故を防いでいるわけです。  最高のリスクアセスメントを、まず最初の設計屋がやったというのが12100であり、 12100で設計しても絶対安全ということではありませんから、これを安全管理の中でや ってくださいというのを、マネジメントのほうで全部見ていて、いいかげんなことはや っていないぞというのを全部通していくと、10のマイナス何乗みたいな話があっても伝 達するのだけれども、それをやらないと教えないなどと言われたら、もしかしたら設計 屋のほうは、あなたたちが全部見つけなさいなどという話になったらハインリッヒの法 則ではないけれども、全部疑ってかかってしまうという話になります。  本当は、最高のリスクアセスメントをやれるのは、機械を作る担当の人が、俺は知っ てるぞというところを最高にやって渡していく。それを、上から全部見ていて、正当な 流れであって、それで労働災害が起こるならば、やるべきことをやった後で起こるので 不可抗力という話になるのではないかというのが私のイメージなのです。 ○向殿座長  前回も相当議論して、この労働安全衛生の立場で設計者に対してもリスクアセスメン トをちゃんとやれと言うべきであると。当然下りてきたものに対しても、現場ではいろ いろ調整とか再構成とかあるから、それはちゃんとリスクアセスメントをして、日夜あ る意味ではヒヤリハットを見ながらリスクアセスメントしながら改善していく、という のが我々のイメージなのです。労働安全衛生マネジメントシステムとして、メーカー側 に対してリスクアセスメントはやるべきだということを明確に書けるか、という話にな るというのがこの前の話でしたね。 ○技術審査官  第28条の2は、基本的に雇用する自分の労働者の安全のためのリスクアセスメントの 努力義務になります。一方、お話の件では、設計者がユーザーの安全に責任を持つこと になります。その部分は、第28条の2という今回の努力義務からははみ出てしまいま す。 ○安全課長  8頁のところに同じ議論があります。 ○杉本委員  私も、議事録を全部読んできたのですけれども、本日の話もあったかもしれません。 社内の設備関係で、技術屋が労働者に渡すときに、どうしてもここはJCOではないけ れどもバケツでやってほしくないといいますか、安全のマニュアルどおりやってほしい といいますか、そういうものは技術屋のほうが、物を作る側のほうが知っているわけで すね。  それで、逆に言えば限界がありますから、そこのところはこういうふうにやってもら いたいというのは、労働者に渡す手前のところまでだというのはメーカーもあるけれど も、自分の所の社内でも作るわけで、導入する設備屋がいるわけです。やはり、社内の マネジメント体系は、労働者に渡すまでのところを最高のレベルでやったかどうかとい うのが問題になるのでというのが私の考え方です。 ○向殿座長  リスクアセスメントの定義としては「検討すること」でいいと思うのです。いまの話 は次の問題になるのですが、これはこれでいいとして、リスクアセスメントの実施時 期、いつ、どこで、誰がやるのかというのが、前回いちばんもめたところというか、議 論したところです。  こう見ると、指針に盛り込むべき事項で、前回の検討結果から、リスクを伴う作業を 実施する前に行うということになって、要するにどういう時期に行うかということです けれども、労働災害が発生したらちゃんとやるとかいろいろある。そうでなくても1年 に1回はやりなさいという記述なのです。  リスクとか危ないところを知っているのは設計者に決まっているから、設計者に対し ても安全な機械をちゃんと導入しろと言いたいけれども、我々労働安全衛生法のほうか ら言うと、実は事業者が作業者の安全衛生管理を見守るという立場からいうと、そうい う安全な機械を導入しなさいということは言えるけれども、こういう機械を作らなけれ ばいかんと、メーカー側に対してリスクアセスメントをやらなくちゃいかん、という話 になれるかということになるのだと思うのです。  導入するときには、「リスクアセスメントしているのでしょうね」とちゃんと聞い て、それでドキュメンテーションをちゃんと見せてもらって、ここにはこういうハザー ドがある、それを引き受けて我々はちゃんとマネジメントシステムでやりましょうと。 それで、いじったり変えたりするときは、ちゃんと同じようなリスクアセスメントをや りますよという流れのような気がするのです。 ○技術審査官  お話のところは、解説に盛り込むべき事項の1番目にあります。設備等の設置後に改 善措置を講ずることが困難となることが多いですので、「新たな機械設備を外部から導 入・購入しようとする場合には、その機械設備のメーカーに対し、当該設備等の設計・ 製造段階から危険性又は有害性等の調査を実施することを求める」という形で記載して おります。 ○向殿座長  これは解説でいいですね。本文に入れるのは強すぎますか。 ○技術審査官  先ほど言ったように、法律上の趣旨がありますので、解説がいちばん適切かと思いま す。 ○梅崎委員  前回お願いして入れていただいた28頁の「リスクアセスメントの実施体制等」で、主 体は安全衛生担当者がやるのですが、そこに生産技術者、あるいはプロセスエンジニア 等に参加してもらって、そこできちんと技術的なことはカバーしていく。そういう実施 体制が28頁のところで入っているのですが、その辺のところで担保していくというの が、第28条の2の条件の下で、かつ技術者を参加させて、適切なリスクアセスメントを 実施するということでのいちばんのポイントになるのではないかと思います。 ○向殿座長  そういう意味では、28頁のところでそういう話が入ってくるので、それと全体をうま く踏まえれば、いま我々が望んでいることは大体実現できるという話ですか。 ○梅崎委員  事業者が自ら使う設備を発注する、というところにおいては確実に技術者が参加して いく。そして、そこの下でリスクアセスメントが実施されるというところまではこれで 担保できると思います。 ○毛利委員  (2)にそういう感じはかなり入れてあるんですね。 ○向殿座長  本文に盛り込むべき事項。 ○毛利委員  アンダーラインが引いてありますからね。 ○技術審査官  危険な作業を実際に実施する前の、いわゆる基本計画であるとか設備計画といった段 階においてきちんとやってほしい。これは「望ましい」となっております。 ○毛利委員  ここまでぐらいしか書けないということですね。 ○梅崎委員  技術者が参加していく、というのをどこかで担保しておかないと、なかなか安全衛生 担当だけではできないと思います。 ○向殿座長  言われるままに導入して、その後は、というのはね。これは、機械の話で私たちはし ゃべっていますけれども、化学のほうはどうですか。 ○田村委員  同じだと思います。 ○杉本委員  私が苦労してやった北九州のある大きい会社ですが、現場の改善提案を持ってやって いくのですが、最高の機能の設備を作って、これを安全のために機能を落とすというこ とはあり得ないというわけです。機能に安全の問題が出てきて、それで、これは危険を 全部現場にあげるから、そこで全部使いこなしてくれという歴史でずっと来たというわ けです。それで、世界一といいますか、技術を持った大きな会社ですが、それが1年間 に4人殺してしまったのです。それを現場で見せてもらったら、すべからく悉くといい ますか、機能というものに対して生ずる危険については、それを使いこなすアイディア を現場でつくって、最高のものを転がしていくといいますか、そういうふうにやるので す。  私はその会社にだいぶ意見を言ったのですけれども、設備屋が、ここに問題があるの ならきちんと分析をして、ここに問題があるのですという形で労働者に、あるいは安全 管理に落としていかないとね。考えてやりなさいということで来ているのです。設備屋 の慎重さというか、責任というのが現れてこないと、あの大きな会社で1年間にポンポ ンポンと人が死んでしまうのです。そういう問題から気になってしようがないのです。 ○向殿座長  私もその発言は非常によくわかります。現場での事故というのは、設計者と技術者が 対応すれば止まるものが多いのです。それを、機能を優先して、コストも優先して、あ とは現場に任せてしまう。現場は注意して一生懸命やっていて、それで事故が起きると いうのは日本における共通の現象なのです。そういう意味で、減らすためにはメーカー が設計以外もちゃんと作れということを言いたいのだけれども、これは厚生労働省の立 場でどこまで言えるかという話になるのだと思います。だから、こういう書きぶりで、 解説のところとか、いま言ったところで。 ○杉本委員  そういう実質的な話が出てくればいいのだけれども。 ○向殿座長  実は、そういうイメージが。 ○杉本委員  いまのような話で私の知っている会社といいますか、いちばん大きい会社ですけれど も、そこに渡したらほら見ろで、やはり現場でリスクアセスメントをやればいいではな いかと。我々の問題は、現場のリスクアセスメントを巻き込むというか、彼らに体系的 にやらせる。いままでみたいに、ただ単に自主管理改善でもってポンとやるのではなく て、もうちょっと体系的に我々が送り込んだ危険性をそのまま評価してうまくやってく れよ、というほうへ行ってしまうのではないかと思います。事前に最高のものをやった ので、どうしても残るのだという手続がないと、解決されないままという気がするので す。 ○向殿座長  解説に書いてある、ここは非常に重要なのです。 ○杉本委員  それが現れてくるほうがいいと思います。 ○技術審査官  (2)のところで、いわゆる計画の段階がいちばん大事だということです。もちろん 設計も計画に事実上含まれます。特に設備の設計というのは。 ○杉本委員  確かにそうです。 ○技術審査官  機械は計画とは言わないかもしれませんけれども、プラントであれば計画は設計を含 むということですので、大体は反映できると思います。だいぶご指摘いただきましたの で、表現ぶりはまた検討させていただきます。 ○向殿座長  本質的に、日本の場合はこれがかなり重要で、国際的な流れから日本が遊離している のはそこなのです。それで事故の数が減らないのです。 ○杉本委員  イギリスなどを見てみますと、注意書きのわからない外国人労働者、いま訓練中の未 熟練者、髪の長いハイヒールを履いたご婦人、パートのお母さんとパートのお母さんの 周りにまとわりついている子供たち、この彼らが事故を起こさないということを証明し てくれれば認証を出します。  ある会社は、本当に素晴らしい労働者で構成されていて、教育訓練はバッチリです。 だけれども、下請が入るとポッと死んでしまいます。つまり、優秀な労働者でないと運 用できないシステムにしてしまったのです。本社で死んだのは1人だけで、あとはみん な関連会社の人たちです。本当に教育を積んだ人が、本当に教育を積んだ形でもって作 り上げているラインだから、ど素人だとスッとやられてしまうというのがありました。 ○向殿座長  そういうイメージが、機械安全の分野ではあり、設計者に対して、メーカーに対して もっと責任を持ってやれと言いたいのです。そういうニュアンスが少しでも出ればいい わけです。  次は5番目の「リスクアセスメントの実施手順」です。リスクアセスメントの手順は 大体決まっていてやり方もある、ランク付けをするというような話が前回出ておりまし た。本文に盛り込むべき事項というのは以下の過程でやりましょうということです。ま ず、体系的に作業を洗い出して、危険性又は有害性をちゃんと洗い出す。  (2)は危険源ですね。危険性又は有害性はハザードですから、ハザードを洗い出して、 どのような災害に遭うおそれがあるのかを特定して、災害の程度や発生可能性からその リスクの大きさを見積もって、危ないものに順番を付けて設定をし、それに従ってちゃ んと対策をしていくという一連の流れをちゃんと記述しておきなさい、というリスクア セスメントの流れを文章で書いたということです。記録をちゃんと保存すること、とい うのは入れるべきですね。 ○毛利委員  作業標準のない会社はどうするのだと。なければ困るのですけれども。 ○技術審査官  作業の洗い出しは、とにかく体系的にやることが大切です。10頁のいちばん下にプレ ス機械のトライアルというのがあります。これは委託事業でやっているもので、実際に 中小のプレス屋にリスクアセスメントをやらせたところ、ヒヤリハット事例とか災害事 例だけをリスクアセスメントするという事例が続出しました。これは、最初に作業を体 系的に洗い出すということを強調する必要があるということで入れております。  作業標準等がない場合についても、それを機会に作っていただくとか、あるいは現場 の人間であれば作業手順というのはプロセスごとに言えるはずですので、それを洗い出 すということになろうかと思います。 ○毛利委員  表現を工夫していただいたらいいかもしれません。いきなりそこでスキップされてし まうと問題ですから。 ○杉本委員  洗い出しというのを英語でいうと、ハザードはIdentifyなのです。ハザードは、同定 とか特定とかいうのです。洗い出しというと、いままでわかった病原菌ではないけれど も、それはこの病原菌ですというのが特定です。わかっているものに、これですよとい うわけです。洗い出しというと、自分の所を見て、ほかにないというか、独特のという か、ほかの所とは関係づけないで定義してしまうわけです。安全のハザードのほうは、 既にあるものでわかっているものをこれですと言っているわけです。そういう言い方で すよね。だから、洗い出しというのはそういう意味かどうか。 ○毛利委員  Identifyを、洗い出しという表現のほうがいいだろうということでお使いになってい るのですよね。 ○杉本委員  そうです。 ○毛利委員  一時、Identifyは特定という言葉がだいぶ使われていました。 ○技術審査官  特定とIdentifyがどの程度きっちり対応するのかというと、たくさんあるものの中か ら特定するというふうに一般的な日本語ではあると思いますので、Identifyという英語 とはちょっと語感が違うのかと思います。一般的に日本語でいちばん幅広く探していく というのがいちばんいいかなということで、いろいろなテキスト等で使われる[洗い出し 」という言葉を選んだのです。 ○杉本委員  リスクを機械屋にやってもらうと、自分の言葉で書いてくるのです。自分の言葉でど んどん書いていくから同定といいますか、Identifyになっていないのです。 ○向殿座長  普通はハザード、リスクがダーっとあって、これがあるかどうかというチェックをし ていく。 ○杉本委員  いま200ぐらいありますね。その200の中でこれはありました、これはありません、こ れはありましたといくわけです。そうではなくて、リストも何も読まないで危険を探す わけです。危険がありました、こういう危険がありましたと書いていくわけです。それ で、昔の分析の仕方に変わりがないというか、標準化されていない。 ○向殿座長  それを洗い出しと言われてしまうと困るのです。 ○杉本委員  これは、そういう意味です。同じ原因なのだけれども、読んでいて言葉が全部変わっ てくるのです。本当はそうならないようにというので、あの200のリストが載っている わけです。 ○向殿座長  ハザードリストは、電気の危険源だ、なんだの危険源がダーっとあって、広がって ね。 ○杉本委員  分野によってリストが……あると客観的にね。 ○向殿座長  客観的、網羅的に、体系的にチェックできるんです。 ○建設安全対策室長  いずれにしても、法令的に見て洗い出すという言葉が使えるかどうかもわからないき わどい言葉だと思います。いまのご議論を踏まえ、こちらのほうで言葉を考えたいと思 います。 ○向殿座長  特定とか同定とかいろいろな言葉を使っていますからね。 ○田村委員  確認したいのですけれども、先ほど説明のあったランク付けというのは定量的ではな くてということでいいのですね。あと分野が違うと危険性のレベルの考え方も違いま す。その辺りは分野、あるいは業種別に、それぞれ優先順位を決めなさいという理解で よろしいのですか。 ○毛利委員  後のほうで出てきます。 ○技術審査官  見積もりの方法のところで記述がございます。 ○向殿座長  分野によって違うし、非常に重要なのです。要するにステップとしてはこういうステ ップでやりましょうということでよろしいですか。リスクアセスメントの実施手順と。 それから、「リスクアセスメントの対象の選定基準」ということで、合理的に予見可能 という話が出てきます。それから軽微とは何かという話。合理的に予見可能ということ は、合理的に予見可能でないのはいいわけです。合理的予見可能についていかがです か。 ○田村委員  予見する人のレベルによってだいぶ違いますよね。ですから、一応やってみろという ことなのでしょうね。 ○技術審査官  調査はちゃんとしてくださいということを前提にしています。この言葉は、HSEの reasonbly foreseeableの直訳で、国際的にはかなり通用している言葉です。 ○向殿座長  要するに、合理的に予見可能なものは全部対象にしなさいと言っているわけですね。 ○杉本委員  精神といいますか、考え方の強さ、要するに傾向といいますか。これもステイト・オ ブ・ディ・アートで不安は危険とみなしましょうと。これはちょっと心配だなというと きには、まあいいかではなくて、これはわからないから危険に入れておきましょう、と いうことを国際規格は当てにしているのです。  だからその精神がなければ、リスクが小さいからいいやというところへ行くのです。 それで、残ったいくつかだけで終わってしまうのです。本当は、いまの不安を危険とみ なすのだという前提でいくと、いまみたいに合理的に予見できるものは、みんな対象と なりますから、なるべく重要なものと考えるという気質の中で言うから、あまり決めな くてもいいのです。そういうことの申し合わせがないと、勝手に確立されてしまうと ね。 ○向殿座長  いまいちばん問題なのは、化学のほうでは予防原則というのがあって、要するにわか らないものはやめようという話。これは、わからないものはやってしまおうという、機 械はみんなそうですよ。だから、危なくない、これは大丈夫だ、危ないところを見つけ て大丈夫だ、それで行こうと。要するに予見不可能なものはしようがないからないもの にしましょうという話なので、態度が反対なのです。 ○技術審査官  いまのことにつきましては、11頁の下のほうの本文に盛り込むべき事項の(2)で、 最悪の状況下においても、軽微な災害しかもたらさないと予想される危険性又は有害性 以外は全部やると。ですから、最悪の状況を想定して、本当に赤チン程度しか起きない ようなもの以外はやりなさいという押さえはしてあります。  ここを機械の前提ですべてを語られますと土木工事などは成立し得ないこととなりま すので、そこは業種横断的な指針ということで、ある程度リーズナブルな表現をさせて いただいております。 ○杉本委員  いまおっしゃったとおりで、できる状況の中で最善のことをやりなさいと。だから、 低い所も高い所もあるのだけれども、わかっていることはまず最小限やって、また不安 だと思うところはわかっていることの上に乗せておきなさいという意味なのです。業種 によってみんな変わるけれども、それはそれぞれの立場によってレベルが変わってきて も、やはりそれは最善という気持はね。 ○向殿座長  その当時わかっている最善を尽くせというのが基本的なのです。予防原則というのは ほとんど認められていないでしょう。そんなこと誰もできなくなってしまいます。そう いう概念があって、この場合我々が普通に考えて、危ないなと思われるものがあったら 全部対象にしなさいと言っているという解釈で、最善の努力をしてリスクを見積もり、 本当にこれは大丈夫だと思ったときには切ってもいいという解釈ですね。 ○田村委員  軽微の定義は、リスクということがベースの判断でよろしいのですね。 ○技術審査官  軽微は災害の程度ということで考えております。 ○向殿座長  程度であって、頻度は入れない。 ○技術審査官  ですから、2段階構成になっております。まず災害として予見可能かどうか。要する に、ニューオリンズの災害のような、わからないものはわからないと。ただし、仮にわ かったものであっても、非常に軽微な災害しか起こり得ないようなものは除いていいと いう2段階で考えております。 ○田村委員  リスクの場合は、要するに起こる可能性と、起こった場合にどの程度影響を与えるか ということで、リスクを表せますね。ですから、例えば非常に確率が低くても、起こる と大きな影響を及ぼす場合と。 ○技術審査官  すみません。私の説明がちょっとよくなかったようです。(1)と(2)を見るとわ かるのですが、災害、ハームの発生が合理的に予見可能。要するにこれは確率の概念で す。確率的に予見可能かどうかで、まず切る。わからないものはわからない。仮にわか ったものであったとしても、今度ハームで見て、ハームが非常に軽微なものであれば、 これもやらないでいいと。そういう2段階で確率と。 ○向殿座長  軽微なリスクという意味ではないですか。 ○技術審査官  ではなくて、軽微な災害ですから、ハームです。軽微なハームなものは除くと。 ○田村委員  発生する可能性が多いものについては、まず必ずやるということですか。影響は非常 に小さくても。 ○向殿座長  小さくても頻度が多いものはやるのかということですか。 ○田村委員  そうではなくて、むしろリスクの。 ○技術審査官  いや、これはそうではなくて、非常に頻度は高くても、本当に最大限考えても赤チン にしかならないようなものはやらないでいいという考え方です。 ○田村委員  だから、その辺の基本的なベースの考え方としては、リスクがベースだと非常にわか りやすいのですけれども。 ○技術審査官  リスクは結果的に出てきますので、いわゆる洗い出しなどの段階で、リスクはまだ明 らかでないわけですね。確率は確率、ハームはハームと独立した存在になっております ので、まずは確率で考えて、非常に低いものを除く。それから、ハームで考えて、非常 に小さいハームしか予想されないものは除く、という2段階でスクリーニングを行いま す。 ○田村委員  ただ、確率が低くても、起こると非常に大きな影響を及ぼす可能性があるものについ ても、除いてしまうことになるのでしょうか。 ○技術審査官  それは予見可能であればやらなければいけない。当然そういうことになると思いま す。 ○田村委員  確率が低くてもですね。 ○技術審査官  確率が低くても軽微ではありませんから、やるということです。 ○安全課長  ですから、(1)(2)の両方の要件。 ○田村委員  だから、そこで誤解のない表現になっていればいいと思います。 ○技術審査官  もう少し十分に解説をしたいと思います。 ○向殿座長  軽微は、大した怪我でなければ、頻度はいくらあっても構わないという解釈をされて しまうとうまくないというお話ですね。 ○田村委員  私はそれでいいと思います。 ○向殿座長  そういう話で、初めから入れない。 ○技術審査官  スクリーニングですから、確率が非常に低くて、予見不能なものはやらないでいい。 それから、予見可能であったとしても、赤チン程度しか起きないものもやらないでい い。それ以外のことは全部やるということです。 ○向殿座長  だから、いいのではないですか。赤チン災害は入れなくてもいいという話ですね。 ○田村委員  折角リスクという言葉があるわけですから、リスクをベースにした統一的な議論がい ちばんわかりやすいと思うんです。だから、頻度でも、どの程度の頻度を言うのか、あ るいは影響度はどの程度を言うのかという辺りは、また議論になりますよね。 ○技術審査官  ですから、これはリスクアセスメントを実施する前の段階で、要するに対象を選ぶと きの判断ですから、そのときにリスクを判断基準にするというのは論理矛盾になります ので、確率と程度で分けて考えています。 ○田村委員  定量的ではないにしても、確率がわかって影響度がわかれば、リスクはある程度わか りますよね。 ○技術審査官  そうですね。そういう意味ではリスクを考慮していると言えますが、文章上は一応、 リスクという言葉を使ってはおりません。 ○向殿座長  これは要するに、リスクアセスメントをやる前の話で、どういう危害、危険源、ハザ ードを対象にするかといったときに、頻度がめったに起きそうもない、初めから考慮す るのはやめましょう。そんなのをやると、リストマトリクス、ものすごく大きくなって しまうからという話ですね。それから、また大きく言えば大したことない、どう考えて も小さい、赤チン程度にしかならないものは、最初から対象外にしましょう。そんなも のを入れると、またものすごくリストが大きくなってしまうというので、リスクを評価 したとき、やはりレベルが小さいことになるので対象外だから、初めからある意味では 考える範囲を狭めようということで落とそう、というのがこの発想ですね。だから、リ スクというのは、そのあとで初めて出てくるという。 ○安全課長  そのあと出てきたリスクを評価して、対策を検討するか、しないかという、それはま たちょっと後ろのほうです。 ○田村委員  ただ、問題はスクリーニングで大事なものが抜けないかと、そこだけです。 ○技術審査官  向殿座長がおっしゃるように、ある程度のリスクのものはカバーされているというこ とです。確率が0でなくて、ハザードも0に近くないものは全部カバーされているとい う意味では、ある程度のリスクがあるものはこのスクリーニングを経ても残ると。大事 なものは残るということです。 ○田村委員  抜けないようになっていれば、いいと思います。 ○技術審査官  その辺は明確にしたいと思います。 ○向殿座長  そうですね。スクリーニングで最初に抜けてしまったら、あとはもうどうしようもあ りませんからね。評価もできないからね。 ○杉本委員  参考意見なのですが、労働安全の場合は、例のリスクベネフィット、詳細論理です ね。そうすると、その最後のときに許される部分があるのです。そうなると、これは小 さな確率はあり得ないなという判断と、これは軽微だなというのが、まずいちばん最後 の残存リスクの考え方にあって、ある程度労災を認めていきますというか、小さいもの として認めていくといいますか、赤チンを認めていくというか、そういう選択の自由が あるのではないかと思うのです。正否判定は別ですよ。だから、どうもいまの最初のリ スクとはいえ、一つひとつ考えてどちらが小さいというなら、リスクが小さいと最初か ら言って、最初の許容リスクの中に入れてしまって、検討しやすくするというのは労働 安全では許されるのではないかと。 ○田村委員  基本的には、それでいいと思います。リスクアセスをやって、頻度も小さい、あるい は影響も少ないということになれば、マネジメントの段階でそれはもう何も対応しない わけです。だから、結局同じことだと思うのです。 ○杉本委員  労働安全の場合どうも何か、自由というか、許容範囲は最初から認めてくれているよ うなところが、逆にほかのところと違う特徴ではないかという気がします。 ○向殿座長  例えば化学の場合は微妙なとき、実は放っておくと、えらいことになってしまうとい うことがあり得るわけですね。普通使ってみれば何の問題もないから、もう対象外だと いうのが、知らぬ間にどんどん増えて、ある閾値を超えたり何かすることは起こり得 る。 ○田村委員  表現をまず納得されればいいのではないかと思います。 ○向殿座長  わかりました。次は7「リスクアセスメントに関して入手する必要のある情報の内容 」です。要するに、どういう情報を提供するか。実はMSDSみたいな話が出てきて、 有害情報、これは薬品の化学のほうではもう普通の言い方ですが、機械情報、機械でこ ういうのはあるのかというような。 ○技術審査官  先ほどの説明の補足で、13頁の解説に盛り込むべき事項の中ですが、これは全部「例 えば」ということにしております。ここにあることを全部やらなければいけないことに はしていないということです。 ○向殿座長  化学物質のMSDSに相当するものは、機械安全でいうと、包括安全の使用上の情報 というのは、たぶんそれに相当するのでしょうね。ここにはこういうハザードがありま す、リスクがありますと、ちゃんと添付してメーカーはユーザーに渡すというやり方。 ○技術審査官  前回のご議論は、そういうのは取扱説明書に書いてあるというように伺ったのです。 ○毛利委員  (4)は、少し欲張りすぎているのではないか。 ○技術審査官  建設業の場合は非常に重要です。例えば地山が崩れるというときに。 ○毛利委員  作業環境測定結果も入っているわけですよね。だから、作業環境測定の結果と、こう いう土木のほうの状況と、一緒にこの項目に押し込んでしまうというのは、ちょっと欲 張りではないかと。 ○技術審査官  性質が異なるものを1つにしているのはよろしくないと。 ○毛利委員  はい。 ○技術審査官  ただ、周辺環境という意味においては。 ○毛利委員  もう少し言葉をうまく。 ○安全課長  特記したほうがよろしいですか。作業環境測定を特記したほうが、別にしたほうが。 ○毛利委員  ただ、このように離れたものがちょっと異質すぎるのではないかということですか ら、ちょっと言葉の表現でも変えるとか。 ○技術審査官  ただ、概念的には周辺の環境ですよね。 ○毛利委員  むしろ、この前、内山委員が言われた工場周辺の状況といったものまでも関係あるの かもしれませんね。だから、幅広く。 ○技術審査官  これは特に重要になるのは建設業を想定しておりますので、これは要するに地山の角 度であるなどといったものが鍵になる、ハザードが鍵になることが非常に多いですか ら、これは絶対書かざるを得ない。 ○安全課長  作業周辺で言うと、作業環境測定はおかしいです。作業をやっている所の場所だか ら。 ○建設安全対策室長  安衛法の世界だと、作業環境測定は「健康診断結果等」のほうに近いかもしれないで すね。 ○毛利委員  これは(5)とかに入ればよいのではないか。 ○技術審査官  わかりました。これは(5)のほうに。 ○建設安全対策室長  いずれにしても、ちょっと整理します。 ○向殿座長  いかがでしょうか。ここに書いてあるようなものを、とにかく情報として提供すべき だということ。ヒヤリハットは、ちゃんとこの災害事由の中に入ると書いてありますの で、問題はないかと。よろしいですか。次は8「危険性・有害性の分類」ということ で、ハザードの分類の話です。これは先ほど言いましたように、本文に盛り込むべき事 項として、「危険性・有害性」というように分けている。危険性はどちらかというと機 械などに関連するものが多いのですが、有害性はどちらかというと化学薬品、その他も 含めているのだと思います。 ○技術審査官  この分類は、基本的には労働安全衛生法等の法令に基づく分類を前提にはしておりま すが、さまざまな指針等を全部見て、漏れがないように確認してあります。それから、 前回の説明でちょっと付け加えさせていただくと、これはあくまでいわゆる危険性・有 害性の洗い出しのために使うものですので、ほかに良い分類があれば、別にそれを使う ことを妨げるものではないということは明記したい。これを絶対使わなければいけない というものではないと。 ○毛利委員  (2)があるのは大変良いことだと思いますね。それぞれの業種などで、自分に適し たものを持ってきて使えばいいわけですから。 ○向殿座長  実は場合によっては、基本的にはこれを種に、機械独特、その施設独特のハザード、 リスクが出来上がるわけです。だから、大枠はこれで決めているにしても、現場では個 別にこれに付け加わって、いろいろなものが入ってくると。 ○毛利委員  事業場や仕事の種類によって、それぞれ違う。 ○向殿座長  種類によって違うし、状況等も違いますからね。独特の何か。 ○毛利委員  それぞれ自分に合ったものを作ったほうがよろしい。 ○向殿座長  こういう観点から、ちゃんと網羅的に漏れがないように見なさいという意味と解釈を しましょう。 ○田村委員  「爆発性の物等」という表現は、これはもう法令等でオーソライズされている言葉な のですね。また設定で代用してあるわけですね。 ○技術審査官  はい。 ○田村委員  わかりました。あと解説に盛り込むべき事項の中の(2)の「硫酸その他の腐食性液 体等が含まれること」というのはちょっとこちらとは違って、むしろ有害性のほうにか かわるのではないかという気がするのですが、これはいかがでしょうか。腐食性液体と いうことを言っていますからね。 ○向殿座長  そうか。いまは(1)のイに入っているわけですね。 ○田村委員  そうですね。これは性格からいくと有害性のほうに移すべきではないかという気がし ます。 ○技術審査官  ここで言っているのは、おそらく腐食によって爆発等の危険があるということなのか もしれません。ご指摘を踏まえて、精査させていただきます。 ○向殿座長  それでは、この分類は、もし何かご議論があればまたあとで付け加えていただくこと にして、一応ここまで終わりたいと思います。田村委員が途中で退席ということなの で、9、10が田村委員にいちばん関連しているような気がしますので、9、10をやっ て、説明して議論してから残りをやりましょう。 ○技術審査官  それでは、9、10だけ説明いたします。まず、「危険又は健康障害の程度の評価に当 たって配慮すべき事項」として、論点を4つほど挙げております。程度の評価の尺度に はどういったものがいいのか。化学物質の場合出てくる予防原則について、どう記述を するか。それから、あくまで程度の測定の場合には「最悪の状況を想定」するのだとい うことをいかに徹底するか。付加的要因としての生理的要因についてどうするかという ことです。前回のご議論では、予防原則については、発生が合理的に予見可能なものと 矛盾しますので、その矛盾についての取扱いを明記するということでした。毒性です が、急性毒性、あるいは慢性毒性といった用語についてはGHSなど、それぞれ用語は違 いますので、それを明記してほしいということ。中小企業等も含めて簡素化できない か、というご意見もありました。  これを踏まえて、参考資料18頁のプレス機械のリスクアセスメントのトライアルの内 容によると、危険又は健康障害の程度の評価は非常に過小評価する傾向があります。例 えばプレスの機械にはさまれたのを軽傷で済ませるなどといった傾向が続出しましたの で、最悪の状況を想定する必要がある。それから、意見が分かれた場合、多数決や平均 をとってしまうというケースも続出して、これもきちんと最も厳しい意見を出したもの を踏まえて、最悪のケースを議論して決定するということを明記したいということで す。  下のほうにHSEの英文があります。これは予防原則について記述があります。下線 が引いてありますが、上の下線部で書いてあることは、何らかのharmful effects つま り有害性があると信じるにたるそこそこの理由がある、good reasonです。ただし、そ れが科学的に完全に証明されているわけではないというときに予防原則は適用になる、 ということです。下のほうに書いてあるように、具体的に何をするかというと、その有 害性を推定する、assumptionをして、あとは通常のリスクアセスメントの手続に基づい て実施するのが予防原則だ、という解説が付いております。  こういったことを踏まえて、本文に盛り込む事項ですが、17頁に戻って、一般原則と しては程度の判断には最悪の状況を想定して、最も重篤な災害程度を予測する。尺度に ついては、傷害や疾病等の種類にかかわらず、基本的には労働能力の損失を尺度にする のがいいのではないかということです。物理的な危険性については、これははさまれ・ 巻き込まれ等ですので、エネルギーの大きさが評価の対象になるだろう。化学物質の物 理的な危険性については、前回「物理化学的」という表現を使っておりましたが、用語 的におかしいということで、先生にご示唆をいただいた「化学物質の物理的な危険性」 という表現に変えております。ここでは化学物質の物理的・化学的性状、あるいは使用 量といったものが評価の指標になる。  有害性については、健康影響情報、あるいは侵入経路、標的臓器といったものが評価 の指標となる。ここで予防原則について、「有害性が科学的に完全に立証されていない 場合でも、一定の根拠がある場合は、その根拠に基づき、有害性が存在すると仮定して 評価することが望ましい」ということを明記しております。生理学的要因(深夜業・連 続作業等による疲労等の影響)についても評価しなさいという形です。  解説では、先ほど説明した予測に当たっては多数決でも平均でもなく、議論して決め るという原則。物理的危険については、高さ、重さといったものがある。化学物質の物 理的危険については、爆発下限温度、爆発のしやすさ、爆発時の加速度等といったもの が評価の対象になる。有害性については、発ガン性等のいわゆる有害性に加えて、評価 に当たっては、ばく露濃度と毒性を考慮してハザードグループを作成するような、IL Oのコントロールバンディングといったものも参考にして構わないということです。  次の頁ですが、毒性の区分についてはさまざまな分類がありますので、この指針では あまり言及せずに、化学物質管理指針のほうでご議論いただくようにしたいと考えてお ります。予防原則については、解説として「予防原則にのっとり、完全に因果関係が立 証されていない場合にあっても、複数の文献で有害性が指摘されている場合等一定の根 拠があるとみなされる場合は、それら文献の内容に基づき、有害性を推定する」という ことを入れています。  20頁の10、「危険又は健康障害が発生する可能性の評価に当たって配慮すべき事項」 ですが、ここで可能性の論点としては、可能性の尺度として有害性についてはばく露を どう使うのか、あるいは健康障害の尺度をそろえることができるのか、あるいは行動災 害をどうするのかという論点があります。前回の議論では「可能性」と「確率」につい て若干議論がありましたが、結論としては可能性は確率を含んでいる。厳密に言うと、 可能性がきちんと定量的に評価される場合は確率という整理ではないかという議論があ りました。  これについては、21頁の下に辞書の定義がありますが、可能性というのはできる見込 みであって、論理的に矛盾が含まれていない意味で、考え得ること。確率については、 事柄の起きる確かさを数量的に表したものということで、先ほどの解釈と矛盾はないと いうことです。  20頁に戻りますが、物理化学的危険については、原文が「physical hazard」という ことで、「化学物質の物理的危険」という表現に変えております。ばく露については、 ばく露ではなくて、可能性という概念でいいのではないかというご指摘もあったという ことです。こういったことを踏まえて、本文に盛り込む事項としては、物理的な危険に ついては、危険へのばく露の頻度等、危険事象の発生確率、あるいは危険回避の可能 性、環境、要因、これはJISそのものです。化学物質の物理的危険については、化学 物質の使用量、使用環境。有害性については取扱量・濃度、接触の頻度、ばく露量、侵 入経路といったものを評価することにしております。  解説では、確率と可能性の議論をもう一度解説しております。尺度ですが、危険が発 生する可能性の尺度は、頻度がいろいろなものでよく使われているのですが、あえて明 記はしないということです。それから、健康障害が発生する可能性の尺度についても、 濃度であったり、ばく露の頻度、ばく露の量、単位時間当たりのばく露の量であった り、非常に複雑ですので、ここではあえて触れないという整理をしたいと思います。物 理的な危険については、ここにあるような周辺環境といったものも含まれるということ です。行動災害については「リスク見積もりに当たって配慮すべき事項と重なりますの で、ここでは記述しないと整理しております。 ○向殿座長  この辺は確かに議論のあるところです。田村委員、何かあったらよろしくお願いしま す。 ○田村委員  17頁の「解説に盛り込むべき事項」の中で、化学物質の物理的な危険としての特性に 関する表現がいくつかありますね。爆発下限温度というのは、我々の分野ではあまり耳 慣れない言葉なのですが、これは何を意味しているのか、あるいは爆発時の加速度とい うのも一般的にはあまり使わない言葉なのですが、これは何を意味しているのか。おそ らくいちばんポイントになるのは、爆発あるいは火災ということを考えると、爆発と火 災が起こりやすいかどうかということと、起こった場合の威力はどうか。その2つが一 般的に我々が使う言葉なのですが、この辺りは少し整合をとったほうがいいような気が します。 ○技術審査官  爆発下限温度については、確かに爆発下限濃度のほうがよかったかもしれません。い わゆる下限値と言われているものです。加速度等については、確かにもっと、もし爆発 したときの爆発力を表せる指標があれば、教えていただければと思います。 ○田村委員  爆発したこと、あるいは爆発のとき発生するエネルギーなどですね。 ○毛利委員  この9と10の有害性のところは、どの程度書くべきか、化学物質管理指針との兼ね合 いではどうなるのかと思って心配なのですが。化学物質管理指針もリスクアセスメント をどこまで書けるのかというのをいま議論している最中で、あまり詳しいことはどうも 書きようがなくて、書けないというところがたくさんありそうで。その前提として、こ こにどういう言葉が書いてあると、ちょうどうまい具合に収まるのか、いまのところ見 通しがつきにくいと思うのです。ここで9と10、それぞれどういうことを書くかという と、似ていたり、ちょっと違っていたり、この辺の整合性もしっかり見ないといけない と思うのです。それと化学物質管理指針との兼ね合いがあるので、少し時間をかけて、 ここはゆっくりと見たほうがいいのかと。化学物質管理指針を進めていったら、こちら に戻るということもあり得るでしょうかね。 ○技術審査官  基本的にこれはすべての災害、すべてのハザードをやるということですので、化学物 質について、化学物質だけ非常に詳細な記載をするというのは、ちょっとなじまないと いうことです。化学物質に特有な問題であるのであれば、それは化学物質管理指針のほ うで書くべきではないかということを考えております。 ○毛利委員  そういう意味で、あまり書かないほうが無難では。 ○技術審査官  中途半端に書くよりは委ねたほうがと考えているところですが。 ○毛利委員  その辺はだんだんと調整するということで。 ○技術審査官  化学物質管理指針の検討も並行して行っておりますので、連携をとりつつ行っていき たいと思います。 ○毛利委員  化学物質管理のほうの委員会等の議論と、組み合わせて考えていただくということ で。 ○向殿座長  そういう意味で、包括的ですよね。 ○技術審査官  はい。 ○毛利委員  特に物理的危険性のところをどのようにするか困っているところで、その辺の見通し がついたところで、こちらと整合性をとらせるということでお願いしたいと思います。 それともう1つ、17頁の真ん中からちょっと上のところ、先ほどのHSEから持ってき た健康障害は、いままで国内ではあまりこのように言われていなくて、むしろ有害性情 報が全然ないものはいったいどうするのだと。有害性情報がなければ、それは有害性情 報を何とか手に入れて判断しなさいと。手に入らないなら、それはもう有害だと思っ て、使わないか、気を付けて使うということがよく言われているのですが、あまり難し いことを書いても、こういうことが判断できる人は非常に限られていますから、そこは ちょっと英国とは違うところで。 ○技術審査官  これはHSEから一応引用させていただいていますが、HSEは国際的な文献は全部 網羅して調べてくれております。一言で言うと、統一された定義はされていないという ことを前提にした上で、国際的に唯一言われているのはリオ・デ・ジャネイロの環境サ ミットでのものしかないので、非常に抽象的な表現しかない。あとはいろいろな文献を HSEなりに調べた結果、現時点ではこれがいちばん国際的に通用するのだろうという 記載になっております。 ○毛利委員  有害性情報とか、こういったところが理解できる人というのは非常に限られているも のですから、あまり難しいことを書いてもいけないのではないかという気がしました。 ○向殿座長  これは、ある意味では目新しいというか、あれですね。ちゃんとした定義はないかも しれないのですが、それなりにこれは納得できるような内容のような気がします。で も、現実にはいま言われたような意味での予防原則みたいな話が実はある。 ○毛利委員  一応、先ほど申し上げたようなことが大変わかりやすいですから。 ○技術審査官  これは硬軟両方ありまして、非常に厳しいタイプの予防原則というのは、毛利委員が いまおっしゃったような予防原則という言葉はないわけではないのですが、それが国際 的コンセンサスになっているわけではないということなようです。少なくとも案のよう な記述をすれば、誰も反対しないと、そういう段階のようです。ここに書くべきかどう かということに関しては、「望ましい」という形で押さえておりますので、やらなくて もいいわけです。前回、内山委員からもかなりご指摘がありましたので、ある程度位置 づけるべきではないかと。 ○向殿座長  これは書いたほうがいい。望ましいという形ではなく、表に出しておいたほうがい い。こういうのはこれから必ず重要な議論になると思いますので、こういう議論は早め に出しておいたほうがいいと思います。 ○田村委員  20頁の10の「指針に盛り込むべき事項」の上から3つ目、これは同じことが21頁にも 関係していますが、ここでは「物理化学的危険」と書いていますが、「物理化学的危険 に起因する災害等については、以下の点を配慮」という所で、「化学物質の使用量」は 結構だと思います。「化学物質の使用環境」というのは、理解としては、要するに化学 物質を扱っているときの条件等を含めた意味での環境、ということでいいのですね。も う1つ大事なのが抜けているのは、化学物質の特性です。特性と使用条件によって、発 生する可能性が議論できますし、特性と量によって影響度の大きさがまた議論できると 思いますので、特性はもう必須の。 ○技術審査官  特性と申しますと、具体的に。 ○田村委員  例えば爆発下限界、あるいは引火点、あるいは発火点など、そういう特性がずらっと 入ってくると思います。それはおのずと21頁の上のところにも、全く同じ形で入ってく ると思います。 ○向殿座長  用語はどうですか。「物理化学的」というのは何か変だから、化学物質の物理的危険 のほうが、まだいいのではないか。 ○田村委員  まだ近いですね。我々はフィジカルハザードという言葉を使おうと思っているのです が、やはり日本語ということになると物理化学的というと、ちょっと何か変な感じがし ますね。 ○向殿座長  ちょっと引っかかる感じですから、化学物質の物理的危険のほうがまだいいかなとい う感じではいます。 ○梅崎委員  17頁の一般原則、これがこの指針のいちばん大事なところなのかと思います。結局、 この指針のいちばんの特徴というのが、ハームに対して「最悪の状況を想定した最も重 篤な災害程度を予測する」というところだと思います。ですから、ここはこの部分に入 っているのですが、むしろここが本当の趣旨に入っていくようなものなのかなというよ うにも、ちょっと思うのです。結局、この指針のいちばんの特徴、労働安全衛生のリス クアセスメントとしても、いちばんの特徴というのは、ハームに対しての最悪時の評 価。それから、ポッシビリティ、シビアリティーの中で、どちらかというとシビアリテ ィーに重点を置いたような評価というのが、どうも今回の指針のいちばんのポイントに なってくるのではないかと思いますので、その特徴というのをいちばん最初の趣旨に反 映できれば。 ○向殿座長  「本文に盛り込むべき事項」の一般原則の1番目、「最悪の状況を想定した最も重篤 な災害の程度を予測する」と、これでは弱すぎますか。 ○梅崎委員  いや、これが結局、趣旨そのものなのではないか。まさにこのとおりのことなのでは ないかと思うのですけれども。ですから、ずっと先を読んで出てくるのではなくて、む しろ最初にポーンとコンセプトが出てくると、やはりガイドラインのコンセプトがはっ きりしてくるのではないかというようにちょっと思ったのです。これがどうもこのガイ ドラインのいちばんの基本コンセプトなのかというように、ちょっと見ていて思ったの です。 ○技術審査官  一応、事務局としては色をあまりつけておりませんで、リスクというのは可能性と程 度ですのでという形です。御指摘については重要ではありますが、どこまで重要かとい うところは、まだそこまでは議論していないですから。 ○向殿座長  解説にもいまの話をちゃんと書くと。平均を取らないでちゃんと書くということで、 かなりウエイトが置いてあることは事実です。いま梅崎委員は、これをもっと表に出し て、はっきりさせたほうがいいという話で、リスクということを考えると、いま言った シビアリティーと頻度と両方兼ねているので、こちらだけあまり際立たせるのもどうか なという話だと思いますけれどもね。ちょっとこの辺のニュアンスが、最初に読んだと きにわかるような書きぶりはありますかね。難しいかね。 ○技術審査官  検討させていただきます。 ○毛利委員  これ自体完全に理解してもらうというのが非常に大事だと、私も思います。 ○向殿座長  梅崎委員の言うように、それがわかるような書きぶりをどこかに入れていただけると ありがたい。9と10はよろしいですか。フィジカルハザードは、英語を使うわけにいか ないからしょうがないですよね。よろしいですか。9、10は非常に重要なところだと思 います。 ○技術審査官  確認したいのは、もう1ついわゆる尺度ですね。尺度は、できれば理想的にはすべて のハザードについて1つの尺度で評価できれば、優先順位を付けるときに非常に都合が いいわけですが、ちょっと難しいのではないかというのが事務局の結論なのですが。 ○向殿座長  難しいですよ。先ほど田村委員が言われたように、程度という、リスクのランク分け というか、クラス分けにしても、ある分野のこのクラスがこの分野のこのクラスに相当 するかというのは、たぶん難しいのではないかという気がしますね。大事なのは、その 分野ごとに自分たちで考えて、ちゃんとクラス分けして、それでここまで許す、許さな いという議論をすることに意味があって、だんだんリスク評価が慣れてくると、頻度、 シビアリティを合わせて、何か他の分野と比較が可能になってくるというように思うの です。当面それを頭に置いてやるのは、非常に難しいことになるという気がしますが、 どうですか。 ○毛利委員  事業場だと、優先順位を決めるということが決まれば、もうそれで行動が起こせるわ けです。種類が違うハザードやリスクでも、このリスクとこのリスクと、片方は健康の 問題、片方は火災爆発する問題、どちらを先にやろうかというのは、そこの価値観で優 先順位を付けていってもらえれば、それでいいのか。あえてランクとか点数とか決めな くたって、何項目かあるうち、どれとどれをいちばん最初にやろう、これが終わったら その次はこれをやるという方向付けをしてもらえれば、それでリスクアセスメントの目 的はかなり果たせるのではないかと、私はそのように思います。 ○向田座長  いまの場合は同じ現場で、例えばこちらは爆発で、こちらがはさまれたと。そういっ たときに、どちらのリスクが大きいかといったときに、いま頻度とシビアリティを考慮 して、上下を付けると。ある分野、例えば機械の分野のリスクの評価の仕方、尺度と、 全然違った分野のリスクの尺度を比較して、どちらが危ないかと言いたい。そのために は、尺度を共通にしようという話が起こるわけです。それはまだ早いのではないかとい う話です。 ○技術審査官  早いか遅いかは別として、現時点ではちょっと難しい。 ○向殿座長  難しいという話ですね。 ○毛利委員  それは、こういう尺度でやりなさいということは、できないのだと思いますよ。発ガ ン物質にばく露して、20年後にガンになるリスクと、今日ここで手をはさむかもしれな いというリスクと、どちらを先に。それは手をはさむほうが先かもしれませんけれど も、ガンのほうも大事だということで。 ○田村委員  今後、労働能力の損失というものをうまく表現できると、1つの尺度として、あるい は使えるのかもしれませんね。 ○技術審査官  いわゆる程度のほうは、最終的に人体への影響ということで、怪我であろうが、病気 であろうが、たぶんそれはできると思います。確率の可能性の概念は非常に難しい。 ○向殿座長  統計データがないものもあるしね。時間ファクターがあって、何年後に起きるなどと いう話になるとものすごく。 ○技術審査官  事業場の人にとって、どういうポリシーで優先順位を決めるとか言えればいいのです が、それも何かありませんか。先ほど出たように発ガンと怪我があると。どちらがとい うときに、優先順位を決めるときに示唆されるプリンシプル、原則が何かあればいちば ん助かるのです。 ○向殿座長  これは価値観によるから難しいね。 ○毛利委員  事業主の価値観でしょうね。 ○向殿座長  それから、それを受ける、要するに、もしユーザーと事業者がいた場合、作業者の間 の合意だとかそういう話。その産業分野。それから、ある意味では歴史的経緯があっ て、終戦後はよかったのですが、いまはどうだなどという話もいろいろあって。許容可 能なリスクはその時代の何とかという話と同じで、やはり一義的に決められないかもし れないね。それはきっと文化によっても違うでしょう。何を優先するかというと、やは り価値観ですね。価値観というのは一種の文化で、文明みたいに数字でパッと横並びで きないところに問題がある。 ○梅崎委員  その価値観を明確にしてもらうということが、このリスクアセスメントのいちばんの 目的なのではないか。いままでは何か事故が起きたから、後追いでとにかくやらなけれ ばならない。だけど、そうではなくて、まず経営のトップとして、事業主として何を本 当に守っていこうとして、そこにどういう優先順位で価値観を持って対応していくのか と、これがはっきりしないと、本当はきちんとしたものがあるべき。 ○向殿座長  本来もうちょっと大きく言うと、要するに事業者にとっては儲けよりも、実は作業者 とか安全のほうが価値として上ですよと。何かあったときは、儲けは無視しても、安全 のほうにウエイトを置きましょうという、そのトップの価値観が非常に重要なのです。 それは本当に大事。ここへくると、この事故とこの事故と、どちらが大事かという話、 手を打つべきかという話だから。 ○梅崎委員  そこはやはり最悪の状況を想定してという、このプリンシプルがいちばん大事になっ てくるのかなと。 ○向殿座長  それで、比較できないものはランク、機械などはランク付けで、これはランク4だと 言った場合、同列、危ないと。比較不可能だけど、両方ともランク4で手を打たなけれ ばいけないのだと、そういうイメージで決めてしまうのでしょうね。いやいや、これは 難しい。 ○杉本委員  これもいろいろな数字、リスクを出すではないですか。それで、今年は0.7だったの を0.6にしましたということですよ、目標は。優先順位ではないと。私は優先順位とい うのは、これを半分にします。これは3分の2にしよう。これは今年、技術が新しいの が生まれたから、法律ができるから下げましょうみたいなことであって、やはり目標を 定めて自制的にやっていくわけですから、これはもちろん後回しであってもいいと。そ ういうことだと私は思っているのです。  そうなると、最悪の状況をへたに設定されると、勝手に「これ最悪だよ」などと言っ てしまうと、「こっちは危険だよ」というので、かえってもともと安全なものが最悪に されたおかげで後回しになっているというか、ほかのものが重要なものが回ってしまう わけですから。優先順位よりも、むしろ今年の度数率は3分の2にしましょうではない のですが、もちろん0が理想的なのですが、やはりそういう目標をやっていくために は、いままでの危険源を分析して、いろいろな条件を測ってきてリスク解析をやったか ら、そのことが明確に出てきているというところに、私は価値があるのだと思うので す、この労働安全の場合はね。だから、かえってあまり言わないでね。 ○梅崎委員  そういうことも含めてのプリンシプルが、最初に趣旨として明確になっていると、非 常に中小・零細も含めて、リスクアセスメントをやるときにやりやすいのではないか。 どういうスタンスでやっていけばいいか。 ○杉本委員  あまり何に使うかで、いまの優先順位などというように言わなくてもいいのではない かという。 ○技術審査官  事務局的な説明としては、やはりリスクが高いもの順にやってもらわないとやはり困 るわけで、要するに高いものを放っておいて低いものをされたら困りますから、優先順 位というところは外せないところです。いままでの話ですと、あまり厳密に考えないで も、とにかく高いものは高いもので潰していく。別に1年に1個しかできないわけでは ないわけで、それぞれの分野の最高ランクになったものを順番にやっていけばいい、と いう割切りは確かにあるかといま思いました。 ○向殿座長  包括的にはそのぐらいでいいと思う。現実にはいろいろな立場があるから、やはり価 値観というのはそういうものだ。利用者ごとにまた時代とともに考えていくべきもので はないか。 ○杉本委員  それから、例えば発ガン性の物質だと、確率なのです。どこに放射線が入ったかによ って、ガンになるかどうかは、本当にわずかなシーベルトであっても、それを浴びれ ば、発ガンするかどうかというのは確率ですよね。だけど、放射線でも火傷だったら、 ある程度エネルギーなのです。エネルギーでもってやると、はっきりとこれ以下なら大 丈夫だというようになるのですが、いまの電磁線の場合は、本当にガンになるかならな いかというのは大きさではないのです。確率なのです。確率でもって起こる災害という のは、ちょっとでもやったらどうしようもないですから、やはり分けて見るべきではな いかと私は思っているのです。アメリカの原子力の本には、というように書いてあるの です。  そういう確率論といいますか、発ガン性みたいなものは一度浴びると、わずかなもの であっても必ず確率が0でないから駄目。だから、リスク、リスクというのも、どうも 確率、確率でなって、昔やってはいけないというのは確率で話をしてはいけないといい ますか、証があればそれははっきりさせなさいという精神からちょっと後退しているの ではないかと思うのです。 ○向殿座長  これはかなり本質的な議論で、ここで議論すべきかどうかは別問題として、そういう 問題はあるのです。ガンみたいなものは、ある意味、情報が関連しているだけで、ちょ っとした情報だけでガッと書かれてしまうというと、火傷みたいにエネルギーだけで評 価できるという話とは、ちょっと確率の意味が違うのです。 ○杉本委員  サービス用ロボットの手は目をつくのです。だから、ロボットの手は確率論なので す。衝突して良いか悪いかというのはエネルギー論なのです。完全にサービス用ロボッ トは分けていますから、これはどこに当たるかですよね。ここは全然関係ないのです が、これに当たると。 ○向殿座長  当たる場所が悪いと。 ○杉本委員  そう、やられますからね。これはもう手があるかどうかで、その確率は0ではなくな るのです。だけど、衝突の場合は速度下げると、「まあ、痛いけどしょうがないか」と いうのは言えるのです。だから、エネルギーの考えでそれを証と捉えるか、確率という のは証がないというわけだから。 ○向殿座長  それは生物でも、要するに正常でないものが出てくる確率というのは、ある程度統計 的にわかっている。本当に確率であって、わからない。原因がわかればいいのですが、 実はわからない、不確定性原理みたいな話になってしまって、結局、確率ではこう起き るけれども、なぜそうなっているかわからないというようなものと、いま言った物理的 にぶつかる確率という概念はあるのですが、ぶつかったらこれ以上だともう必ず駄目に なってしまうし、これ以下だとぶつかっても平気ですと、そういう話とは分けて考えな ければいけない。 ○杉本委員  分けて考えなければいけない。というのは、いままでの電磁放射線の労働省のテキス トの解説書に出ているわけです。 ○向殿座長  放射線は、要するに閾値があるのかないのか、だいぶもんで比例になっているのか、 ある閾値までは無限に構わないのかという話と、ちょっと絡む話で。 ○杉本委員  そういうのは、はっきり放射線の安全の話の中に、労働省のテキストの中に出ている わけで、ちょっと気になるところがありました。それは認識だけどね。 ○向殿座長  あとよろしいですかね。それでは、次にいきましょう。11から最後までお願いしま す。 ○技術審査官  時間がありませんので、ごく簡単に説明いたします。11の「リスク見積もりの方法」 については、論点としてはまず多様性を認める。それから、先ほど申し上げたとおり、 目的は優先順位の策定であることを明確にしたいということです。本文に盛り込む事項 としては、目的として優先順位を決定するのだということを明確にする。方法は、あえ て本文上は明確に書かない。あくまで程度とその発生の可能性の両者を考慮して見積も る。それから、優先順位を定めるものであるので、必ずしも数値化する必要はなくて、 定性的な分類でも構わないという明記にしたい。解説のほうで、尺度については労働能 力の損失を使いますが、それ以外の例えば確率の可能性の部分については触れない。  それに加えて、見積もりの方法としては、1つはマトリクスがあるということ。それ から、いわゆる関数としてかけ算・足し算等があるということ。向殿座長にご紹介いた だいた、いわゆる分岐法(Decision tree)による方法があると。 ○向殿座長  分かれてくるのは、リスクグラフという用語はあります。 ○技術審査官  そういった方法もあるということをご紹介するにとどめるということです。  23頁の12「リスク見積もりに当たって配慮すべき事項」については、前回もほとんど 議論はありませんでしたが、JISの安全機能・安全方策あるいは予想可能な、あるい は意図的・非意図的な誤使用、危険行動についての記述を、ヒューマンファクタも含め て入れるということです。  24頁の13の「リスク低減措置の必要性の判断基準」です。これについて前回相当議論 がありましたが、結論としては「許容可能なリスク」という表現は避けて、「適切なリ スク低減」という用語を使う。その適切なリスク低減の解釈として、ALARPの原理 を使うということです。本文に盛り込む事項としては、リスク低減にかかるコストが、 低減されるリスクの効果と比較して大幅に大きく、両者に著しい不均衡が発生する場合 を除き、適切なリスク低減のための措置を実施しなければならない。ただし、前項の規 定にかかわらず、死亡、後遺障害や重篤な疾病をもたらすおそれのあるリスクに対して は、必ず何らかのリスク低減措置を実施しなければならない、という2段構えにしてお ります。解説の中で、「合理的に実現可能な程度に低い」というALARPの概念を説 明しており、両者に著しい不均衡がある場合はやらないでいいということです。  26頁の14「リスク低減措置の検討に当たって配慮すべき事項」として、前回「本質安 全」と「本質的安全」の違い、あるいは「工学的措置」との違いといった議論もあった わけです。それから、環境に対する影響の議論がありました。本文に盛り込む事項の整 理としては、優先順位を1、2、3、4として、危険性又は有害性の除去又は低減、工 学的対策、管理的対策、個人用保護具の使用という優先順位を定める。  解説の中で、危険性又は有害性の除去又は低減は、設計や計画の段階からやることだ という位置づけにする。工学的対策は、その段階でできなかったものに対して、インタ ーロック等により安全装置を付ける。管理的対策は、その上記2つにより除去し得なか ったものについて、マニュアルの整備等、管理的対策で対応すること。個人保護具は最 後の手段だということを明記したい。環境の問題に関しては、労働安全衛生法27条第2 項に、「公害その他、一般公衆の災害を防止するための法令の趣旨に反しないように配 慮する」という記載がありますので、それを明記してあります。  28頁の15は実施体制です。ここも相当議論があったところですが、コンサルタントの 活用は差し支えないということ。それから、例のプロセスエンジニアの問題、これも活 用する。建設業はかなり体制が複雑ですので、それの特別配慮ということです。本文に 盛り込むべき事項としては6点あります。(1)は、やはり事業場トップがしっかりす る。(2)は、安全管理者、衛生管理者のような、いわゆるスタッフ職が管理する中 で、ラインの職長等がやる。(3)は、それとともに、設備に係る調査等に当たって は、生産技術者、プロセスエンジニアといった方にもきちんと参加していただく。(4 )は、安全衛生委員会の活用で、労働者も当然参画していただく。(5)は、専門的な 知識を必要とする場合は、外部のコンサルタント等の助力を得ることも差し支えない。 (6)は、教育の実施ということを明記するということです。解説についてはいくつか ありますが、建設業にあっては元方の作業の工事主任といったものも含まれる、という ことを明記したいということです。  16「その他留意事項」は実は前回の資料には全く入っていなかった問題ですが、管理 権限の有無とリスクアセスメントは非常に大きな問題があります。それから、管理権限 を有する者から、いかに使用する者に情報提供するか、あるいは混在作業による危険と いうのがあります。大きく3点ありますが、1は機械等に管理権限のある事業者の留意 事項として、請負業者に機械等を貸して使用させる場合にどうするか。これはやはり貸 す者、管理権限を有する人間が、自分でその機械に対してきちんとリスクアセスをし て、対策もとって、その上で残留リスク等の内容について請負業者に渡して、請負業者 はそれに基づいて自分でリスクアセスをするという流れを明記する。  請負業者に対して、化学物質等爆発等の危険がある機械を改造させるような場合があ ります。そういったものについても、機械等のリスクアセスメントを事前に実施して、 その結果をきちんと伝える。例えば危ない物質が入っているのであれば、それに対する 対応も請負業者がきちんとできるようにする。  混在の問題ですが、これは複数の請負人が同一の場所で作業することによって発生す る災害です。これは元請しかその情報は持っていないわけですので、元請がきちんとリ スクアセスメントをする。その情報を十分に下請に伝えた上で、下請のほうは、混在し ておりますので自社の労働者のみならず、他社の下請業者も含めたリスクアセスメント を十分やってもらう必要があるということです。  最後は、危険な場所において作業を行う。これは、下請の場合は、元請にここでやれ と指定される場合があるわけです。その場所に危険がある場合があります。そういった 場合、やはり元請が責任を持って、その危険性を事前に調査した上でその情報を下請に 渡して、下請はそれに基づいて調査を実施した上で作業を開始する、という流れが必要 ではないかと考えております。説明は以上です。 ○向殿座長  いかがでしょうか。見積もり方法はいいですね。11「リスクの見積もり」、かけ算、 足し算、マトリクス。杉本委員、マトリクス法というのは、数値を入れるとき、かけ算 ・足し算などでやって、バサッとやってランクを付ける場合もありますね。だから、マ トリクス法というのは、かけ算・足し算のやり方を包含しているのか、それともマトリ クス法というのはある意味で一般的で、こことここの組合せのときは、我々はリスク3 にしましょうと合意して作っていく場合もあるのですが、機械的にやりたかったら、計 算をして数値でバタバタッとやってしまう手もあるわけで、マトリクス法といった場合 はどこまで言う。 ○杉本委員  あれは両方言いますよ。 ○向殿座長  全部含めてマトリクス法と言われている。 ○杉本委員  はい。その足し算・かけ算の方法は君たちに任せる。広い目で見たらどちらでもいい のです。理論的には信頼性だからかけ算でいくのか、信頼性工学の期待値の問題ですか らね。と思ったのですが、結局、足し算も足してこれだけ大きくなりましたと言って、 足し算でALARPを作っているのです。足し算で、いちばん上の、ALARP以上の 処理を超えていて、それも結局両方なかったら、それをしようと超えませんから、かけ 算的な特性は持っているので、そのやりたい方法でといいますか、あったほうでやれる のだなというのが私の見方です。 ○向殿座長  これはどうでもいいのですが、解説に盛り込むべき事項の(1)と(2)とあって、(1)が マトリクス法で、いま言った、みんなで相談したら、まあそれでいきましょうと。(2) は、実はもうかけ算又は足し算みたいな、ある関数でもって、誰がやっても同じような 答えが出るようにしましょうという話。(1)と(2)は、マトリクス法という意味では同じ グループかなと、そういう。 ○技術審査官  実は(1)、(2)は両方、関数といえば関数で、マトリクスも行列ですので、関数と言っ てしまえば全部同じで、そういう意味ではあえて分ける必要があるのかどうかという議 論は確かにあります。 ○向殿座長  そういう意味では(1)と(2)は本質的には同じなのではないかという。見積もりの方 法、見積もりに当たって配慮すべき事項、これはJISにかなり書いてある内容です。 ○梅崎委員  「予想可能」は、もしJISに合わせるなら「予見可能」。 ○技術審査官  整理させていただきます。 ○毛利委員  なぜ「予測」と「予想」と使い分けたのかなと思ったのです。 ○向殿座長  JISは「合理的予見可能」と書いてあります。 ○技術審査官  foreseeableは予見と訳されることが多いようです。ちょっと検討させていただきま す。 ○向殿座長  解説の中には、意図的な誤使用、ヒューマンファクタに配慮、そのようなものも、一 応書くということ。 ○毛利委員  ALARPを入れるというのは大変画期的なことで、良いことだと思うのですが、や はりグッドプラクティスの方法も、世間相場でこの程度はということを、1つの参考に してくれということを入れてあげると、わかりやすいのではないかな。 ○向殿座長  グッドプラクティスの話が解説か何かに入ることは難しいですかね。 ○技術審査官  ALARPの非常に論理的な説明と比べると、世の中の標準的なというところが非常 に恣意的かつ曖昧になりますので、ちょっとALARPと同レベルでは語れないことに なると思います。ただ、解説で言及することは可能だと思いますが。 ○毛利委員  結局はコストベネフィットで一生懸命考えても、グッドプラクティスに落ち着いてし まうというのが現実かと思うのです。ですから、そんなこともちょっと触れていただく と。 ○技術審査官  理論的なバックグラウンドを十分勉強して、検討させていただきます。 ○向殿座長  グッドプラクティスというのは、文科省も使っています。教育のグッドプラクティス と。GPというのはグッドプラクティスの略です。ALARPの原理、それから許容可 能なリスクというのはやめて、適切なリスク低減。JISも結局、最後はこれになった のです。国際規格でも、最初は「許容可能な」という言葉をずっと使っていて、最後の 最後になって、許容可能な判断をどうするのだという話になって、適切なリスク低減 と、それが妥当なような気がします。だいぶ国際会議で議論しました。  14の「リスク低減措置の検討に当たって配慮すべき事項」、この「本質安全」と「本 質的安全」の解釈は、これは私の勝手な解釈ですが、たぶんいいと思うのです。本質安 全というのは、初めから危険性・有害性を除去すること。本質的安全というのは、それ プラスエネルギーを下げたり、被害を低くするというような設計方策をいうと。だか ら、JISでは「本質的安全」と「的」を入れて使っています。昔から本質安全と言っ ているのは、初めからそういう危険がないように設計することを「本質安全」というと いう解釈で言ったのですが、杉本委員、合っていますか。いいですか。 ○杉本委員  12100の話だと、両方本質安全ですね。本質安全設計ですね。 ○技術審査官  27頁に出ているISOのガイドでは、「本質安全設計」と言っています。JISのB の9700では「本質的」と言っております。 ○向殿座長  ISO12100では本質的を入れた。 ○杉本委員  いや、英語では違いがあるのですか。 ○向殿座長  英語に違いはない。これは訳したグループが違うのです。訳したグループが違うと、 経済産業省は非常に困るのです。我々のときは「本質」と「本質的」とちゃんと意味を 考えて分けて、あそこに書いてあるのは本質的であるというような解釈で、あの表では 本質的と書いてあるのですが、ガイド51は別のグループがJIS化していて、そこでは 本質安全と。 ○技術審査官  我々としては、対策優先順位という中で、そこの概念的な議論をする意味はあまりな いものですから、設計段階でやるということを第一優先順位に挙げておけば、先生のご 意向は踏まえているのではないかと。 ○向殿座長  そうです。1の有害性除去又は低減でもう十分です。これは本質的安全設計。 ○杉本委員  本質安全という言葉はないでしょう。 ○技術審査官  訳によって両方あるんです。「本質安全設計」というものと「本質的安全設計」と。 ○杉本委員  設計が付いているのですね。だから、設計の段階ですよね。いままで我々が言ってき たような、労働省が言ってきたような人間に頼らない安全などを「本質安全」と言って しまおうというわけではないわけですね。 ○技術審査官  そうなのですが、JISは何となく違うようです。 ○向殿座長  JISは違いますね。 ○杉本委員  これははっきり、いままでの人間に頼らない安全といいますか、自動を停止する安全 というか、それを本質安全とか本質安全的とか言ってきたのですが、それはもう考え方 をJISに変えるわけですか。 ○技術審査官  ですから、それはあまり明確に書かないと。あくまでも危険性又は有害性の除去又は 低減で、その定義としては「設計や計画の段階からハザードを除去又は低減する措置」 にして、本質とかそういう言葉は使わないことで考えております。 ○向殿座長  そろそろ我々研究者が概念を明確にして、一般に広げたほうがいいですよ。それで、 人間に頼らないものを本質安全、では安全装置を付けたら、全部本質的安全設計かとい う話になるのです。これからその辺の議論はちゃんとしたほうがいいと思います。 ○杉本委員  ISOの国際会議がありましてね、あのあとから私にメールがどんどん入ってきて、 誰かの講演で日本の本質安全の話が何かあったんですって。「全然違う。びっくりしま した」ということが海外のある委員長からきまして、わりとみんな見ているのです。 ○向殿座長  本質は確かに使ったことがある。 ○杉本委員  まさに人間を頼らない安全を本質安全と言っているということが読み切れなくて、 「どういう意味だかわからない」と言うから、日本ではこうだと。 ○向殿座長  意味が違っているのですか。 ○杉本委員  でも、説明すればそうかと納得する。 ○向殿座長  でも、言葉としては、専門用語としてはやはり違っているのですね。 ○杉本委員  機械の本質安全設計できるのかと。 ○向殿座長  なんだよね。 ○杉本委員  自動車会社すごいなあと。 ○向殿座長  自動車を本質安全設計できたら大変なことになる。わかりました。15が実施体制の話 で、これはいいことに、事業者トップがちゃんと関与すること。しかも、生産技術者、 プロセスエンジニアがちゃんと入れと言っているのと、できたら外部コンサルタント、 要するに技術のことは現場でわからない場合、外から入れることもよろしいというよう なことを、実は入れていただいております。  今日初めて議論したのは、最後の「その他留意事項」です。これはどうですか。管理 権限がある者、これはあれですね。要するに下請や何かがいて、混在しているときの権 限の話ですね。 ○技術審査官  そうですね。特に製造業の場合、生産機械を当然、元請が持っているのですが、それ を下請に使わせるというケースが非常に多いということです。 ○向殿座長  安衛法では、責任は全部、元請にあるわけでしょう。 ○安全課長  あるものとないものがあって、これはちょっと法律といいますか、いわゆる実態論的 に規制を受ける側なり、実態を見ていただかないと、学術的な立場というよりは、むし ろ実態的なほうかなと。いまはまだ原案ができていない、いわゆる論点だけはちょっと 入れてあるのですが。 ○向殿座長  いま大きく3つ論点が出ておりますが、こういう議論もちゃんとして盛り込みたいと いうことですね。これもまたあとでちょっと読んでいただいて、議論、その他、意見が あれば出していただければと思います。  総括的に一応、今日の議論は終わりましたが、何かまとめてご意見があれば。 ○毛利委員  フォームを作るというのがありましたね。それは例ですね。例示ですね。 ○技術審査官  はい、あくまで雛形です。 ○向殿座長  例示です。当然、それでなくてはいけないというわけではないです。分野によってい ろいろなパターンがあったり。 ○毛利委員  例示だと、もうそのとおりにやらなければいけないと思ってしまう人がいて、どうも うまくいかないというクレームがついたりして困ります。化学物質管理指針のときも、 フローチャートみたいなものが付いていて、それは例示だと断っているのですが独り歩 きしてしまって、必ずこういうようにやらなければいけない、こういうようにさえすれ ばいいと。そう思われてしまっている嫌いがありますね。 ○技術審査官  複数示すなり、それはちょっと検討させていただきます。 ○毛利委員  そうですね。1つだけだと、もう何かこれ1つと。それを見た途端に、それしかやっ たらいけないと思ってしまう人がよくいると思います。 ○安全課長  建災防の委託事業のリスクアセスメントの標準的なマニュアルというのがあるのです が、加工できるようにCD-ROMを付けているのです。自社に合わせられるように。だか ら、あくまでも1つの例ですから、自社で変えてよろしい。CD-ROMを付けて、勝手に変 える。性格はそういうものだと。 ○向殿座長  そういう意味では2つぐらい例示しておけば、もうこれは例だとわかりますね。1つ ではないということがわかれば。 ○毛利委員  わかればいいです。 ○向殿座長  ご意見があったら今週中に事務局に電子メールその他でお送りいただきたい。 ○毛利委員  先ほど梅崎委員もおっしゃいましたが、中小企業その他で広くやってもらわなければ いけないというところからいくと、どうもいかにも取っ付きにくい、難しいものになら ざるを得ないというところが心配なのですが、しょうがないですね。 ○技術審査官  それは指針は多少難しくなっても、テキストなりこのパンフレットでわかりやすく書 くとか、いろいろ工夫はできると思います。 ○安全課長  業種別に解説本みたいなものを業界団体に作っていただくということも考えられます し、そこはいわゆる法令の委任を受けた指針と普及用資料とで。 ○向殿座長  毛利委員の言うことはよくわかります。こういう意味ではやはりちゃんとしたものを 作って。 ○安全課長  定義づけなどは、やはりきちんとしておかないと。 ○向殿座長  それに対して、現場に普及する場合は、やはりそれなりの対応をちゃんとして、中小 企業は中小企業向けに。 ○毛利委員  目的が違うということですね。 ○安全課長  そうですね。普及は普及で別の手段があると。 ○梅崎委員  そのとき、別表1をいかにうまく作っていくかというのが、たぶんいちばん大事なこ とになってくるのかと思います。 ○向殿座長  こういう例ですね。 ○毛利委員  リストですね。結局、チェックリストみたいなものになる。 ○向殿座長  チェックリストみたいなほうがやりやすいですね。 ○毛利委員  だから、良いチェックリストを作る。結局チェックリストでいいのですね。 ○梅崎委員  それとともに、国際整合化と中小零細も使えるようなものが別表1でうまく作り上げ ていければ。 ○向殿座長  絡むから、ある意味では国際整合性をもって、ある程度一致していないとうまくない ですね。これは非常に重要で。 ○杉本委員  ある会社で本社が3,000人。日本にある会社です。海外にも3万人いるわけです。ヨ ーロッパとアメリカなのですが、その会社、安全関係に指導者がいなければいけないの です。日本方式でいったら総スカンだったのです。建家が3カ月スタートしなかった。 それで、どうやったかというと、向こうのやり方でもって、設計者責任で全部やって、 できないところを整理して、できないところをやるのは構わないのですが、事前にでき るところを手を抜いているというので総スカンを食ったと。その上に逆に日本のその残 った部分をお願いして、それに自主管理を起こしたら最高によかったというのです。い ま全部それに切り替えているというので、研究会をやっているのです。やはりこれから は日本方式の良いところを上に乗せて、下のところはグローバルに通用するものをなる べく適用していくと指導力が出てくるというのです。 ○向殿座長  基本は世界的な標準をちゃんと適用して、その中に日本の良さを生かせば、ものすご いことが起きるのです。だから、世界的なものを無視して、日本の良さだけやって、そ れを外国に持っていくと、本当にひどい目に遭うのです。わかりました。ということ で、まだご意見があるかもしれません。ある場合は今週中にいただければと思います。 私の役割はこれで終わります。 ○技術審査官  火曜日ぐらいでも結構です。ただ、業界ヒアリング等は並行してさせていただくかも しれませんが、随時いただければと思います。 ○副主任中央産業安全専門官  今後の日程ですが、第3回の検討会は、ご都合の合わない委員の先生もいらっしゃっ て申し訳ないのですが、11月18日(金)午後3時から5時で開催したいと思います。こ れまでの間に、事務局のほうでいくつか業界団体に対して、この案に対するヒアリング を行って、その結果も含めて第3回の検討会でお示ししたいと思いますので、よろしく お願いいたします。 ○向殿座長  よろしいですか。今日はお暑い中をお集まりいただきまして、ありがとうございまし た。ちょっと遅れてしまって申し訳ありません。                  照会先:厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課                           EL:03-5253-1111(内線5487)