05/10/21 国際協力事業評価検討会(第六回労働分野)議事録  国際協力事業評価検討会(第6回労働分野) 1. 日時 平成17年10月21日(金)15:00〜 2. 場所 厚生労働省専用第16会議室 3. 出席者   【会員】吾郷眞一会員(九州大学大学院)            今野浩一郎会員(学習院大学)            末廣昭会員(東京大学)            中村正会員((財)日本ILO協会)            小野修司会員代理((独)国際協力機構)      【専門会員】藁谷栄専門会員 (外務省)            田中伸彦専門会員(厚生労働省)            木下正人専門会員(〃)            小泉潤一専門会員(〃)            釜石英雄専門会員(〃)            久知良俊二専門会員(〃)            赤塚真弥子専門会員代理(〃)    【オブザーバー】田代治徳((独)雇用・能力開発機構)            篠部悠子((財)海外職業訓練協会)            鍋島由美(ILO駐日事務所)            川上光信(中央職業能力開発協会)            福味恵(中央労働災害防止協会)            小林寛((独)高齢・障害者雇用支援機構)            横田裕子((独)労働政策研究・研修機構)            東園盛男((財)国際研修協力機構)       【事務局】金井国際協力室長、搆補佐、細川専門官                                〔敬称略〕 4.議事 ○搆補佐  ただいまより、「国際協力事業評価検討会」労働分野6回目の会合を開催いたしま す。本日より選任された専門会員をご紹介いたします。労働基準局労働安全衛生部国際 室の木下補佐及び、政策統括官労政担当参事官室の久知良補佐です。  配付資料の確認をさせていただきます。資料1は前回の「第5回検討会議事録」で、 既にご確認いただき、当省のホームページにも公表してあります。資料2は「国際協力 事業評価検討会設置要綱改正案」です。資料3は、本日ご検討いただきます、「報告書 事務局案」です。このほかに議事次第と、出席予定者ですが、不足はないでしょうか。 以後の進行は、吾郷座長にお願いいたします。 ○吾郷座長  それではまず、厚生労働省金井国際協力室長にご挨拶をいただきます。 ○金井室長  本日は、ご多忙の中をお集まりいただきましてありがとうございました。私、7月に 国際協力室長に赴任いたしました金井要です。1995年から1998年に在スリランカの大使 館に赴任した経験があり、そのときには経済協力担当の書記官で、保健医療分野、教 育、労働等、と非常に幅広いことをやってきました。ただ、当時は経済協力案件といえ ば無償資金協力で建物を建てる、学校を建てるような話が中心でしたが、最近は技術協 力、特に人の育成等に主眼が移っているように思います。  本日は、国際協力事業評価検討会(労働分野)として、過去1年半、5回に及ぶ議論 に基づく取りまとめのたたき台、原案的なものをこちらでお示ししますが、皆様のご意 見をいただければと思っております。国際協力分野は多方面からいろいろな意見があり ますが、それを集約して、今後の国際協力事業、特に国際協力の主体である外務省やJ ICA等においても取り上げていただきたいと思っております。  本日の事業評価ができるようになりますと、今後の政策プログラムや、協力方針等の 議論につながり、また必要な人材育成へも反映されていくと思いますのでよろしくお願 いいたします。本日は、これまでの議論を活かし、最終報告に向けて、より活発なご議 論が出ることを願っております。本日は所用にて途中中座するようなこともあろうかと 思いますが、よろしくお願いいたします。 ○吾郷座長  議題3「第5回検討会議事録(報告)」に移ります。事務局から報告をお願いいたし ます。 ○搆補佐  先般7月22日に開催された第5回検討会の議事録を資料1として配付しておりますこ とをご報告いたします。 ○吾郷座長  これは、皆さんに既にご確認いただいた上で、ホームページにも出ていることです。 特段のご質問がなければ次に進みます。4「国際協力事業評価検討会設置要綱の改正」 について、事務局から説明をお願いいたします。 ○搆補佐  本検討会では、吾郷会員にこれまで座長を務めていただいておりますが、前回の検討 会では、10月から半年間タイへ赴任されるとのお話がありました。これまで、座長によ る進行を前提にしており、設置要綱に特段代理の定めはありませんでしたが、これを機 に、資料2のとおり座長が不在の際の代理を選任するための規定を設けることといたし ました。検討会として予めご承認いただきますとともに、代理人の選任も併せてよろし くお願いいたします。 ○吾郷座長  これは、前回出ていた議論です。資料にあります検討会(労働分野)の運営について の、3の(4)を追加するという修正案です。たまたま本日のように帰ってきていると きもありますけれども、私が不在の間に代理の座長をたてることをオーソライズすると いう修正案です。最初の点として、この修正にご同意いただけますでしょうか。                  (異議なし) ○吾郷座長  ありがとうございました。それでは、事務局原案のとおり改正を承認し、座長代理を 選任いたします。前回の検討会では指名手続きはないものの、今野会員にお願いする方 向で話があったと思いますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○吾郷座長  ありがとうございました。座長代理は、今野会員にお願いいたします。議題5に移り ます。「報告書事務局原案について」です。本日のいちばんメインのイベントになりま す。事務局から報告をお願いいたします。 ○搆補佐  本検討会は、来年3月までとなっており、検討会の最終報告書を取りまとめる必要が あります。今回は、本年3月に出された中間報告、議論等を踏まえ、最終報告書に盛り 込むべき事項、その方向性について事務局原案として資料3に取りまとめましたので、 ご説明いたします。  目次に続き内容の1頁からご説明いたします。1「要約」は、後日、内容がほぼ固ま ってから作成したいと思います。2「労働分野の国際協力の現状」では、中間報告を元 に、これまでの推移や、3つのタイプの事業とその特性について述べることとしており ます。  (1)厚生労働省の国際協力事業というのは、厚生労働省がODA事業予算として確保 して実施している労働分野の事業ですが、毎年減少傾向にあります。  (2)は、国際機関を通じた技術協力です。具体的には国際労働機関ILOのことを 指しますが、特に分担金でない任意拠出金を念頭においた記述です。厚生労働省のOD A予算に含まれ、最終的には途上国を受益国とする協力ですが、その中間に国際機関が 介在するという点で、マルチバイプログラムといい、別途記載しています。その基本的 な特性について触れるとともに、過去の検討会にお招きした野寺元ILOアジア太平洋 総局長からの指摘事項等も折り込み、反映させることとしました。  (3)は、JICAを通じた技術協力です。JICAによる技術協力のうち、労働分 野について取り上げ、特性と、最近の状況について紹介しております。わかりやすい指 標として、長期派遣専門家、研修生の受入れ状況等を示しました。別添資料については 以前の検討会の資料として出されたものですが、最終報告としても添付することとしま した。  以上、2の現状においては、労働分野に詳しくない方にも、議論の前提となる労働分 野の状況をまず知っていただく観点から、わかりやすさに重点をおきました。  3は「国際協力事業の評価」であり、検討会の中で、評価の試行を実施した分科会で の検討がもとになっています。(1)では現存する評価手法の事例として、政策評価法 に基づく評価、外務省が実施しているODA評価、FASIDのPCM手法による事業 評価、同じくFASIDによる政策プログラム評価としてLEAD手法について紹介し ています。  別添資料は、FASIDのもので、以前の会合で出されていますが、最終報告書とし て掲載する際にはあらためてFASIDに了解を取っておくようにします。  (2)は、評価の試行を行うに至った背景として、国際協力事業の評価に関する労働 分野の現状について触れました。基本的には、例えば委託事業等については、何らかの 評価を実施しているけれども、手法や時期などから統一されている状況にはないという ことを説明しております。  それから、行政機関では、政策評価法に基づき数年前から施策の評価を実施すること になりましたが、国際協力以外も含めて評価の対象になっているものです。ILOの拠 出金に関しては、マルチバイプログラムでも、同様に内部の評価を行っているものがあ りますが、実施期間、事業規模等によりILOに評価方法についての規定があり、それ に従って実施しているということです。現在のところ日本側の方針を取り入れている現 状にはありません。  また、JICAを通じた技術協力についても、事務局案としてたたき台を示しました が、事実誤認などがあったら後日でも結構ですから訂正していただければと思います。 JICAではPCM手法を基本として事業評価を行っているものの、労働分野について は、事業規模が非常に小さいということもあり、必ずしも労働分野に適した評価手法が 開発されているとは言えない状況にあります。したがって、この検討会で当初検討する 予定であった労働分野の協力方針を策定する話に先立ち、まず労働分野の特性に対応し た評価方法をしっかり開発し、それにより、事業や協力手段を超えて比較検討できるよ うにすることが第一であるということになりました。  開発に当たっては、外務省、JICAにおいても長期間にわたり活用され、一定の実 績があるFASIDが開発したPCM手法を基本とすることになりました。労働分野に おいても適用できるかどうか、大きな問題点はないかということが課題です。  (3)は試行結果を踏まえた評価手法の改善です。評価方法を開発するため、この検 討会において評価の試行を実施することになりました。労働の中でも雇用・能力開発分 野、それから労使関係・労働基準と大きく2つの典型的な分野について分科会を設置し て検討を行っていただきました。雇用・能力開発に係る分科会としては、対象としてI LOマルチバイプログラムの「中国雇用促進プロジェクト」を取りあげて評価の試行を 実施しました。労使関係・労働基準に係る分科会においては、(財)日本ILO協会に 委託し実施している「ASEAN労使関係プロジェクト」を対象として評価の試行を実 施しました。いずれも平成16年度に完了した事業です。  評価の試行結果は第5回に報告したところですが、最終報告においては、この評価の 試行結果を記した分科会報告を別添する予定です。そこから得られた結論としては、基 本的に労働分野の国際協力事業についても、PCM手法を用いて実施することが可能と いうことですが、次のような留意点が出されております。例えば、(ア)では事業費の 内訳が明確でないと投入が適正評価できないという問題です。これは第2回の雇用能力 開発分科会で深く掘り下げて議論していただいたものです。労働分野の場合は、特性が 必ずしも事業実施というものではなく、制度を設計して受益国にその仕組みを定着させ る、あるいは定着させた後の波及を期待するというものがあります。  しかしながら、当初の事務局案では、投入全体と、事業実施の成果として活動をその まま表していたため、事業の効率性をしっかり把握・判断・評価することができないと いう指摘をいただき、協力の型に配慮して評価を行い、投入を分割・分類した上で裨益 を検討するべきであるという結論が得られました。例えば制度設計型の事業について は、事業の設計開発、事業に必要な投資といったものを、実際の維持運営費用とは区別 して評価している、また裨益期間も考慮する必要があるということです。  (イ)に関して、段階的な評価についても分科会で出ました。これは第2回労使関係 労働基準分科会です。労働分野では、長期間にわたる投入が必要な事業があり、あらか じめ決められた短い期間では必ずしも成果を上げることが難しいようなものがあります が、それは計画時にわかっている事項でもあるので、評価の中に織り込んでいかなけれ ばいけない。一方で、その期間には何も成果が出なくてよいということではなく、あら かじめ長期間の投入が必要と予想されても、より短い計画期間を設定し、その間に達成 可能な当面の目標を設定する方法があるという話が出ました。  この際には、短期間の個々の成果というのは限られたものになりますが、個々の成果 を検討するに当たっては、長期的な目標達成の一部を確実に進めたということも評価に 含めて弾力的な評価を行うことについて意見が出されております。  イとウの分類はちょっと難しいのですけれども、特にウとして留意事項の一部である と考えていただいても結構ですが、特に目標、指標の設定について、労働分野では特に 留意しないといけないということがありました。ウの(ア)ですけれども、受益者の広 がりに対する配慮について、第2回労使関係労働基準分科会で出ておりました。案件の 目標を設定するに当たり、我々が普段接する中央政府や中央の団体についとらわれがち でありますけれども、労働分野の場合には、取りまとめや議論の相手である中央政府や 国家規模の連合団体の背景に業種別の、例えば産業別労働組合があるとか、全国の中央 政府との議論も、実は地域レベルにまで広がってはじめてそれが本来の成果になる場合 もあることに目を向ける必要があります。特に、労働分野では特定の受益者がいるわけ で、こうした点に配慮した案件の目標を設定しないといけないという議論がなされまし た。  (イ)客観的な指標設定に向けての努力、これは書き方が難しいのですが、第2回労 使関係労働基準分科会で出ております。これは、ASEAN労使関係プロジェクトの評 価の試行の際に、労使関係について適切な目標設定、合理的な指標の数値化はかなり難 しいという表現が出されました。これは事業を実施する関係者、それから我々にとって もそのとおりだということであります。しかしながら、ODA事業として実施するから には、その内容を説明する義務があるわけですし、関係者以外にも説明することを通じ て様々な意見が得られてより良い事業につながることもあり、これを引き続き客観的な 指標設定、必ずしも数値目標は難しいとしても、できるだけ客観的な指標設定に努めて いかなければいけないという議論がありました。  (イ)自体は結論があるわけではないですけれども、1つの方法として指標の数値化 に当たって、例えば個々の労使関係では、信頼関係、対話の形成といったものが重要だ という意見がありました。一方で、安易な数値の指標としてはセミナーを何回開催し た、何人出ているかといったものがありますが、そういう安易な数値指標をあらため、 本来の姿を反映するような指標を追求することも重要です。代わりうる指標として例示 されたのは、ネットワークの評価です。信頼関係、対話の形成の度合いについては、教 育分野で採用しているという紹介がありましたが、その中で行われるサンプリングによ って、発言の回数、発言のバランス、どういう方面から満遍なく出ていたかというよう なことをカウントして数値化するのだそうです。量的にも、質的にも指標といえるよう なものを引き続き検討していくことが、内容をわかっている関係者として必要なことで あろうという議論が出されていました。  こういうところは例示をしないとわかりづらいと思いましたので、これは会員の中か らいただいた資料を例として挙げてみました。この例示がよいかどうか検討が必要です が、最終報告の中では何らかの例示をすべきと思います。とりあえず仮置きで図を借用 して入れてあります。  9頁の(ウ)は評価の範囲に着目した目標の設定についてです。これは第1回、第2 回の分科会でずっと出ていたところ、それから第5回の本検討会においても改めて議論 がありました。労働分野においては、どこからどこまでの範囲で評価するかといったと ころが不明確なまま、案件の目標、上位目標が設定され、これがついつい事業計画者の 意図に従って高く設定される場合があり、これによって、実際には事業を実施する側で 達成可能な範囲、すなわち達成可能、あるいは何らかのインパクトを与えられるような 範囲を超えてしまうために、事業実施者に対する評価が適切に行えないということが頻 繁にあるということです。  例えば、これは例示が適切かどうかご議論いただければと思いますけれども、受益国 における全国レベルでの労働争議件数の減少、あるいは労働災害総件数の減少、失業率 の改善、これは国際協力事業を計画する側の政策目標としては妥当と言えます。ただ し、評価のための目標設定はそれではいけないのであって、その特定の協力事業を、こ れだけの期間、これだけの対象について実施すれば、果たしてこれだけの成果が本当に 得られるのかということについては大いに疑問があります。経済学的に関連付けは不適 切との意見があったように聞いております。ただし、それはまったく無関係のものとい うことではなくて、事業実施後成果が定着して、受益国の政府に取り入れられ、その中 で波及していくといったプロセスを経ることにより、ゆくゆくは客観的な効果が期待さ れるものであって、ある意味で究極の目標と考えることができます。  したがって、この事業評価という点で考えたときに、その目標設定に当たっては、そ の評価の範囲を基本的には事業実施段階と関連付けられるもの、例えば案件目標であれ ば、事業実施者が活動し、その範囲で達成可能なものとすべきでありますし、その上に 位置する上位目標であっても、これは当面広い意味では評価の対象に入りますので、正 のインパクトとして出てくるものが上位目標になるべきであるわけです。もちろん、案 件目標から上位目標に行く過程に、果たして外部要因がどの程度のものなのか、外部要 因がほとんどを占めているわけではないのかといったことを検討する必要があります。 ただし、その究極の目標は、案件の概要に記載する、あるいは別のところで総論的に書 くなどの工夫は可能であり、評価の枠の外であるということを明らかにすればいいとい うことであります。  (ア)(イ)(ウ)といった評価の指標に関する取り方については、総論としてだい ぶ議論がありました。検討会の議論はここまでです。最終報告に当たって事務局からの 提案でありますけれども、議論が煮詰まっていないものについてもいくつか例示をでき ないかと考えております。前回の検討会においても事務局から提案させていただきまし たが、最終報告の中でも何らかの形で入れることにつきご了解をいただければと思いま す。  別添10と書いてありますが、これはまだ事務局として具体的なアイディアがあるわけ ではなく、一覧表の例示をしてはいかがかと考えております。それをきっかけに議論が 深まってきて、より精度の高い指標の取り方、留意点といったものの議論につながると 考えております。以上が、この評価の試行から発展してきた議論です。  10頁の4は、第1回のこの検討会が開催されたときの経緯ですが、これを踏まえて中 間報告に示された見出しを尊重する形で作り上げております。当初の構想と違う点とし て、協力方針の考え方を議論する前に、評価手法についての議論にかなりの時間を費や したため、そこから導き出された議論が多かったということです。  (1)は、事業評価への適用についてです。これは、先ほどの3と少し重複しますけ れども、今後に向けての話ということで改めて書いております。労働分野においても、 PCM手法を適用することは有効であるということですが、一定の限界もあるということ です。では、こういう状態で今後どのようにしていくべきか、ということについては (1)の後半で書いております。簡単に申し上げますと、とりあえずまず始めてみるこ とが大切だと考えています。  2つの評価の試行をこの検討会でご議論いただいたのみでありますけれども、まずは PCM手法をとりあえず始めて、その実績を増やしていくことが必要ではないかと考え ます。そういう意味では、評価の試行を次々と実施していくという言い方もできるかも しれませんが、不完全であっても実践していくということです。  例えば、PCM手法は、本来参加型を基本としているものであります。実際に受益国 も含めた参加型というのはかなり予算もかかりますし、結果がまとまるのに時間がかか りますが、当面は、そういうところまではこだわらずに、この検討会で事務局が作業を したように、事業の計画者が作ったり、あるいは事業の実施者が簡単にPCMを自分な りに作成し、それを関係者と議論を深めるということでも出発点としてはよろしいので はないかということです。あるいは、既に委託事業や拠出金事業のように、事業実施者 が何らかの形の評価を実施している場合には、それを活かしながらPCM手法を導入 し、評価結果を得てみたらどうかということです。  PCM手法については、FASIDの資料をもとに作業をしてきましたが、一定のシ ステムができあがっているように思います。ただし、この適用に当たっては、必ずしも 本来の形式にとらわれて評価が先送りにされるよりは、労働分野として利用可能な形 で、あるいは利用可能な部分から柔軟に取り入れて、定着させることがいちばん重要で はないかと提案したいと思います。  これは、議論の中で、PCM手法を金科玉条のようにするのではなくて、柔軟に使っ ていったほうがいいという会員からのご意見を少し膨ませた結果です。重要なことは、 データの乏しい労働分野での評価の知見を数多く集積させることを通じ、それを将来へ の検討材料として活用し、議論していくことであります。  (2)PCMの事業評価については、これをどのように使っていくかということで す。PCM手法の本来の目的は、事業評価、それを通じてその後の政策立案にも反映さ せることですが、我々が活用するという観点で考えたときには、当面は事業そのものの 評価で使えるようにすればいいのではないかということです。  例えば、それは3で書きましたとおり、事業実施者と事業計画者が混同されてしまう のが問題ですが、それは、労働分野では形にならないものを成果として追求する場合が 多いため、その目的が何かということがぶれやすいということと関係があります。  労働分野においては、事業計画者である我々が、計画立案を超えて実施段階にまで深 く関与しているという実態とも密接に関係しています。事業の実施に積極的に関与する ことは、より良い事業の実施につながると思っております。ただし評価ということにな ると、役割分担に重複が生じてしまうために、これは一度切り分ける必要があると考え ます。ここをすっきりさせるために、当面は、PCMで実施する事業実施の評価を事業 実施活動に絞った評価に限定したほうがよいのではないかということが(2)です。  (3)は、政策・プログラムの評価についてです。先ほどの(2)で目的を制限する こととありましたけれども、結果的には事業評価からかなりの情報、知見が出てくるわ けで、例えば好事例であるとか、失敗例、教訓などを踏まえて、個々の事業だけではな くて、プログラムレベル、政策レベルで計画立案をする際に活用することは可能である わけです。場合によっては協力対象国・地域、それから協力テーマの優先順位を定める ことにもつながっていくのではないかと思います。  その場合には、いま行おうとしている事業評価の枠を超えて、プログラムのレベル、 政策レベルで評価したり、モニタリングをしたりといったことが必要になります。これ は、FASIDのLEAD手法をはじめ多くの手法があります。ただし、我が国では政 策評価法に基づく評価手法が既に始まっており、義務的な実施手法を1つもっているわ けです。したがって、LEAD手法、その他既存の評価プログラムを否定するわけでは ないが、実施が義務づけられている手法として政策評価法による政策評価を基本とする のが順当ではないかと考えます。もちろん、PCM手法から得られる事業評価の集積を 順次反映させることにより、政策評価法に基づく評価においても、内容面で充実を図る ことが可能となって、それはひいては我々の政策立案へのより一層の活用につながると 考えております。  (4)は、当初の目的であった協力方針策定についてです。協力方針の策定が必要で あることは、検討会開始当初から今に至るまで変わっておりませんし、その間にもOD A予算はだいぶ削減されており、より重要度が増しているということが言えます。対象 国・地域、分野をどのようにするのかという方針決定は、限られた予算の中で効率的に 進めていく中で、不可欠であろうと思います。  また、予算が削られていくということは、ODAの労働分野であれば労働分野のOD Aに対してより一層の理解を得なければならないわけであり、政府部内、国民にわかり やすいような協力方針を策定し、理解を求めることが必要であります。こういう協力方 針策定については、引き続き検討していかないといけないということであります。  ただし、これまでの検討を振り返る限り、具体的な方針と明言できるものはなく、せ めて別添のような形で方針を例示できればよいという考えです。その策定に当たって は、厚生労働省の各部局、専門会員からもご意見をいただくこととしたいと思います。 ただし、最終的に例示が基本的に総花的になってしまう場合には、例示の意味はなくな ります。  それから、事務局としては、活用しやすい形での取りまとめにも関心があります。つ まり、アジアのように我々がこれまで実績のある地域については、実績を踏まえた優先 順位や方向性につき議論の蓄積がありますが、それ以外の地域、例えば政府がアフリカ に協力の重点をおくとして、厚生労働省が、アフリカ協力を労働分野全体として議論を 重ねてきたとは言えません。  そういうものを、例えば対アフリカ協力ではこういった方向で取り組んでいく、とい うようなものを何らかの形で作れれば、外務省が中心で作られている国別援助計画の中 で反映していただいたり、それを厚生労働省の考えとして全体像を示し、現地在外公館 との有意義な議論に活用できると考えております。  (5)は、発展段階に応じた協力実績の分析です。これは、前回少しご説明しており ますけれども、念頭に置いているのはJICAを通じた労働分野の技術協力などです。 これは、労働分野でもかなりの実績があると思いますけれども、バランスよく出ている かどうかということで、少しいままでの実績を整理して今後につなげたいというもので す。私どもの理解が正しければ、案件形成や採択は政府が実施し、その採択後の執行を JICAが実施するという整理になっていると思います。  この案件形成では、労働担当官のいる在外公館等を通じて、かなりきめ細かなやり取 りをした上で採択され、事業の成功につながった技術協力プロジェクトがかなりあるわ けで、その案件形成の過程、ノウハウを、ほかの地域、より発展段階の低い国に対して 活用できないかということです。何らかの形でデータベース化し、派遣実績であると か、その事業そのもののデータベース、情報だけではなくて案件形成の背景になるもの まで含めたデータベースを作ることにより、在外の日本大使館やJICA事務所のう ち、必ずしも労働分野に詳しい担当官がいないところで活用してもらうことが有効なわ けです。  (6)はさまざまな協力手段の連携についてです。これは、大きく分けて労働分野で は3つの協力のタイプがあるということです。一部での連携はあった、あるいは重複の 調整をするとか、実施段階で連携をしていくという経緯はありましたけれども、連携に ついてもっと積極的に進めていくことはできないかということの提案です。検討会の議 論の中でも出ていましたし、検討会にお招きしたILOの野寺元総局長からも出ていた 意見だと思います。具体的にアからエまで例示してみました。事実関係等で不適切な点 はないかどうか、後ほどご意見をいただきたいと思います。もともと一部では行ってい ますが、積極的に推進するという方針を明らかにしたいと思います。  (7)は、他のドナーの動向の把握の必要性についてです。他のドナーがどのように 動いているかというのは、我々はなかなか情報を持っていませんが、情報がないことに よって国際協力が互いに近接したり、ぶつかったりということがあるのではないかとい う指摘がありました。  これが事実とすれば、複数のドナーが同一地域、同一テーマで協力をしていて、目的 はそれぞれ違っても、実際の現場では同じような人が掛け持ちで作業をやっているとい うような状況となり、こうした調整されない国際協力が乱立すると、ドナーのほうが被 援助国に対して、援助を売り込むような事態を招きかねません。我々として困る以上 に、本当によろしくないのは、援助を受ける側の自立的発展性に大きなマイナスになる ということです。  このため、他ドナーに関する体系的な情報をもっていないという現状を少しでも改善 するため、日本労働政策研究・研修機構に委託し、米国、英国、国際機関等の動向につ いて基本的な情報を収集しているところです。本検討会においても参考となる事項と思 われますので、報告書にも概要などを別添し、今後に活用したり、引き続き情報の充実 に努めるようにしていきたいと思っております。  最後に、5「人材育成のための検討」についても一言触れておきたいと思います。人 材育成の検討というのは、労働分野の国際協力の中核は人と人との協力であり、相手国 側の育成も大事だが、援助国側に人材がいることが大前提なわけで、協力事業に携わる 日本人の人材育成についても、これまで検討会の中で議論が出されたと理解しておりま す。  ただし、具体的な検討を行うためには、その前提となるような、例えばODAの将来 予測や受益国側の体制変化など広い意味でのニーズがどのようになるかの把握や、日本 側の協力事業のあり方などのデータがなければ意味がありません。協力事業のあり方に ついては、ようやく個々の事業評価についての検討がなされたところであり、政策全 体、事業のあり方については今後の検討課題となるわけです。したがって、人材育成に ついての検討もそこに合流する議論になりますので、来年度以降に検討を開始すること にしたいと思います。  最終報告として事務局で作成した原案は以上でありますが、4と5を見るとわかると おり、当初の検討事項に照らしてみるとすべてを結論づけられるわけではなく、引き続 き検討すべき事項が残されています。最終報告をできるだけ早い時期に取りまとめた上 で、新年度から新しい形で検討を開始すべく準備している段階です。 ○吾郷座長  詳しい説明をいただきましたが、4の(3)あたりまでは今までの検討会でかなり詳 しく議論しておりまして、とりわけ評価方式の手法については、随分時間をかけてまい りました。4の(4)(5)(6)(7)、5の「人材育成のための検討」について は、あまり時間をかけられなかった気がいたします。  そういうこともあって、本日の議論は、今まで大体合意が得られており、かつ、中間 報告でも相当しっかりまとめられていたことについて、さらにご意見がおありの場合は いただいて、まだ十分に取り上げられていなかった点について、最終まとめが次にもう 一回ありますが、時間はそれほどないと思います。今まで十分検討してこなかったとこ ろにも重点を置いて、自由にいろいろご意見をいただけたらと思います。今まである意 味では時間をかけてきた評価手法のまとめについて、何かご意見がおありでしたらお願 いいたします。 ○末廣会員  やや細かいことを含めて5点ほどお伺いします。最初に3頁ですが、「世界銀行や欧 米諸国によく見られる、独自の分析と報告書の取りまとめ、相手国政府への提言」以下 の4行です。私の理解では、世界銀行などは、予め設定された問題関心と分析枠組みに よる相手国政府への政策提言という手法をとるのに対して、日本の場合は、きめ細かな 指導と対話を通じた人材育成や制度の整備を重視したと明記したほうがよいと思いま す。「自立的な発展」というのは、世界銀行も、日本政府も目指しているはずです。そ ういうコメントは、ここで一つひとつ出すよりは、あとでまとめてやるということでよ ろしいでしょうか。 ○搆補佐  今日でも結構ですし、別途いただくことでも構いません。時間的な関係で会合を重ね ることができなくても、その間にしっかりメール等で十分な時間をかけてやり取りをし て、ご意見をいただくようにしたいと思います。 ○末廣会員  次は大きい問題です。7頁の(3)のイの「試行結果に基づく結論」は、この主張で 結構ですが、「ただし、評価に当たり次のような点に留意する」という書き方でいいの かどうか。PCM手法の場合には、まず計画があって、それに対する現状と実績を一括 して捉えて、それを5項目評価で実施する。しかし、計画時点での目的なり達成目標 は、それぞれ実績との関係で性格が違う場合がありうるので、現状と実績を一括して取 り上げるわけにはいかないという主張ですので、「ただし」以下を明確にして、PCM 手法は使えるけれども、一括しては扱わないという形で続けたほうが分かりやすいので はないかという気がしました。  そのあとの(ア)の「制度設計型、事業実施型などさまざまな協力の型があり、事業 総額のみを取り上げたPDMでは」で、PDMは別に事業総額とは関係ないので、事業 総額のみを取り上げるのであれば、PDMの言葉は取ったほうがいいと思います。  同じ問題で8頁に行きますと、ウの(イ)の「セミナー開催などの活動自体を成果と することなく」という問題提起も全く同じで、PCMの5項目評価の中身が、どちらか というと妥当性や効率性になっていますが、実はインパクトとかその後の自立的発展性 を考えたら、セミナーの開催頻度よりは、そのあと作られたネットワークの活動などを 見て評価しなければいけないこと、PCMのどこに焦点を当てるかによって評価方法も 変わるということを明示したほうが、外の人に分かりやすいのではないかという印象を 持ちました。 ○搆補佐  労働分野では、特にそういうところに重点を置いたほうがいいという方針です。 ○末廣会員  目標達成度からは、開催頻度が大事であるが、それではインパクトなどが測れない欠 点があるというように、具体化したほうがいいと思います。  10頁ですが、以上のことを認めていただけるとすると、4の(1)の第1パラグラフ の下から3行目に「PCM手法をその本来の形式にとらわれることなく」となります と、前の主張なり議論が全部否定されてしまいますので、「PCM手法の利点を活かし つつも云々」と変えたほうがよいと思います。ここでひっくり返す必要はないのではな いかという気がいたします。3以下はあとにします。 ○吾郷座長  それも事務局のほうで考慮していただくとして、他に11頁辺りまでについてご意見が おありでしょうか。  言葉の問題ですが、技術援助で「援助」という言葉と「協力」という言葉が入り乱れ て使われていますが、これでいいのでしょうか。と申しますのは、ある段階で技術援助 という言葉は国連では使われなくなって、「テクニカル・コーペレーション」に変わっ ています。日本でもそういうことが起きたのか、それとも別の使い分けがなされている のか、あるいはそんなやかましいことを言わないで、意味はたぶん一緒なのでしょう が、時と場合に応じて使っているのか、ご存じの方がいらっしゃいますでしょうか。 ○搆補佐  事務局では、援助というのは基本的に使わないほうがいいと考えています。この表題 にもあるとおり、協力という話でなるべく統一しました。ただし、被援助国といったと きには書きかえづらく、そのまま残しています。 ○吾郷座長  JICAはどのように使い分けていますか。 ○小野会員代理  やはり西欧型だと援助という考え方が強いと思いますが、JICAの場合は昔から自 助努力やパートナーシップ型のところに重きを置いているので、できるだけ協力を使っ ています。近ごろは西欧のドナーたちも、相手側の自助努力も必要で、キャパシティ・ ビルディングという観点から、単に一方的な援助ではなく、相互方向性の持つ援助が重 要だということで、コーポレーションというか、協力に重きを置いているのではないで しょうか。「アシスタンス」という言葉はだんだん少なくなってきていると思います。 ○吾郷座長  厳然に分かれているわけではないのですね。 ○小野会員代理  厳然には分かれていませんね。 ○吾郷座長  ほかにございませんでしたら、11頁以降のあまり議論されていなかった点についてご 意見をいただきたいと思います。 ○末廣会員  11頁について、まず(4)に対象国・地域について優先順位を定めると書いてありま すが、どういう理由、どういう基準で定めるかが書いてありません。そのすぐあとに評 価をしたあと検討するとなると、あまりいい結果が得られない国・地域については優先 順位を下げると読めなくもないので、優先順位を定めるその根拠は何なのか、どういう 理由で定めるのかを明記してもらったほうがいいと思います。  細かい表現の問題ですが、12〜13頁の「草の根人間の安全保障無償協力」というのが あって、ここにILOのマルチバイプログラムの専門家の派遣による協力では、なかな か得られない建物や機材を、草の根無償のほうに期待すると書いてありますが、これは 訂正が必要かと思います。そもそも「草の根人間の安全保障」は、外務省のホームペー ジを見てもわかりますように、国とか地方自治体ではなくて、特定の個人やコミュニテ ィを対象に、末端まで協力の手が届くことを目的としているわけで、国を通じて建物や 機材だけを供給する従来型の経済協力への反省からでてきた考え方だと思います。だと すると、「草の根に建物を期待する」というのは、制度の趣旨に合わない考えですか ら、むしろ削除したほうがいいと思います。本来は人を派遣して、つまり国が建物など でカバーできないところを草の根でカバーするのが目的であって、結果的に無償協力を 使って、建物とか機材が購入されたとしても、目的はそこにはないのです。本来は政府 が全体的に協力する中で不足するあるいはカバーし切れない分野をNGOやNPOの人 たちに頼むわけですね。 ○吾郷座長  草の根は少額ですから、建物は建てられません。 ○搆補佐  建物というのは、しっかりした鉄筋などであって、ILOのマルチバイプログラム が、1例を挙げれば、山村地域での女性の地位向上で、手に職を付けさせたり、マーケ ティングを少しずつ教えたりするときに、その自立発展を促すために現地にサポートす る。実際にはILOの専門家を通じてNGOなどを支援する形をとりますが、それが政 府ではないという意味では変わってきます。それに必要な、例えば小屋のようなもの や、活動をするための市場であって、屋根が付いた程度の物で、建物と土地で数百万円 あればなんとかなります。本来受益国の政府が現場に対してやるべきところを、代わっ て一時的にILOがやって、活動主体はNGOである。そこのところで欠けている部分 を協力できないかという話です。 ○吾郷座長  それだと原則は円借款、もしくは無償援助でしょうね。国際機関は無償援助はノンロ ーンと言って、ローンとノンローンに分けていますが、本来は無償援助か円借款でやる べきで、草の根に持っていくには無理があると思います。ほかにございませんでしょう か。 ○小野会員代理  11頁の(4)の今後の協力方針策定についてで、末廣会員からもご発言がありました が、どのようなフレームワークで考えていくのだという場合、1つは今まで援助してい たASEANや、特にGNPが1人当たり1,000ドルを超えたような国と、またまだそ こまで行かないような国に対してどうするかは、1つの協力の手法のフレームワークと して全く違うと思います。  そういう意味では、マレーシア辺りでも職業訓練、能力開発よりも労働安全衛生など にだんだん軸足が移っていたという歴史がありますし、反対に日本側が提供できるノウ ハウとして労働分野で、例えばアフリカ辺りの年のGNPが200ドル、300ドルの国に は、どのようなアプローチができるかというのは、かなり明確に違うものが出てくるの ではないかと思います。厚生労働省の持っているいろいろな知見が、どこに、どのよう にはまっていくかと、あとは向こう側のニーズがどのようなことがあるかという、ニー ズのとらえ方で、そこはちょっとマトリックス的なところで、できるところ、できない ところがある程度明確になってくるのではないかと思います。 ○吾郷座長  それ以外にいかがでしょうか。私から1つ質問ですが、先ほどのご説明の中にあっ た、別添資料の最後にあるJILPTに委託されたほかのドナーの援助状況、協力状況 の報告書はいつごろ出来上がってくるのですか。 ○搆補佐  今年度の研究ですので、最後はギリギリ3月です。本日添付したのは目次だけです が、いま中身をまとめてもらっており、ドラフトが少しずつ上がってきています。年内 ぐらいを目処に、この概要が書けるような原案が得られると思います。 ○吾郷座長  これはかなり面白い情報が出てくる可能性があります。本来なら、この検討会でもそ の情報をもとに検討できたらよかったような気がします。それがこの検討会の最後の報 告書と並列のような形で出てしまいますと、それをどのように我々の検討会の中に取り 込むことができるかは難しいですね。いまおっしゃるように、途中で出てくる段階で、 少しずつインプットしていければいいと思いますが。 ○搆補佐  今までは議論を重ねてきて紙になるものがなかったのですが、いま議論をまとめて分 担して執筆している段階です。例えば、ある部分は10頁のところもあるし、20頁のとこ ろもあるし、添付資料を付けたりしていますので、全部ではかなりの分量になると思い ます。基本的には参考として概要を添付するつもりですが、途中段階で原文のドラフト をお見せすることは可能です。 ○吾郷座長  年度内ということでしたら、JILPTのほうとしてもそのつもりでやっているでし ょうから、12月に出せと言っても出てこない可能性はありますね。 ○搆補佐  この検討会を念頭において、早めのスケジュールで進めております。 ○吾郷座長  これは検討会とは別に進行していたプロジェクトなんですか。 ○搆補佐  単年度プロジェクトでお願いしています。ただ、ここで何らかの形で合流するという ことは考えていましたので、少し早めています。例えば、検討事項の中にはもう少し時 間のかかる部分、例えば、これ以外に援助を受ける被援助国の材料を集めるとなると、 かなり手間がかかるので、最後の3月でいいと言っていますので、あるいは書きぶりを 直したりすると、まとまるのは3月になります。ただ、基本構想に関する部分は年末ぐ らいには欲しいと言っていますので、そのスケジューで進んでいます。ドラフトでお見 せすることは可能かと思います。 ○末廣会員  JICAで3年前でしたか、千葉大学の広井良典先生を中心にして、ソーシャル・セ ーフティネットの研究会ができました。そこで世界銀行、アジア開発銀行、ILOその 他の機関が、労働保護とソーシャル・セーフティネットについてどのようなアプローチ や課題設定をしているのか、その整理と実績の紹介があったと記憶しています。この研 究会の報告書は良くできていたと思いますので、是非取り寄せて参考にされたらと思い ます。世界銀行がソーシャルプロテクションに方針を変えていく、その流れも整理して ありますので。 ○吾郷座長  私が聞き間違ったのかもしれませんが、JILPTの調査の対象がアメリカとイギリ スと国際機関と言われたと思いますが、アメリカとEUではありませんか。 ○搆補佐  英国で、米英です。EUは仏、独を選ぶと思いますが、言葉の問題などもあり、基本 的に何も詳しい資料がないところからスタートする前提で、アクセスがしやすいことに 配慮しました。英国であればDFID辺りを調べなければいけません。 ○吾郷座長  いわば英、米とEUで、イギリスがどちらに入るか知りませんが、援助合戦でもあり ませんが、アジアを草刈り場のようにして入ってこようとして、競争している部分があ りますので、EUを調べない手はないような気がします。 ○搆補佐  ヨーロッパの国ということですか。 ○吾郷座長  EUの援助政策というのが重要だと思います。 ○搆補佐  可能な範囲でということですが、受益国側からも調べることにもしています。例え ば、ラオスについては、フランス、ベルギー辺りからの援助も情報が集まってくるかな と思います。この部分は残念ながら12月には間に合いません。 ○吾郷座長  ほかにございませんか。 ○今野会員  11頁の(4)の「協力方針策定に向けての考え方」と関連して、これまでの会議でも 話が出たかもしれませんが、お客さんがここにいて何か援助しましょうということです が、日本の援助のリソースを考えたときに何が強いのかという観点はなくてもいいので すか。つまり、お客さんがいて、政府のODA大綱では、この幅でやりましょうと言っ ています。この幅の中でどこの選択をするかは、お客さんが欲しいからやるというのも 1つですが、うちはこれが強いから非常に効果があるのだという、強みみたいなものが 日本は何だろうか、という観点はなくていいのですか。大変抽象的だし、難しいとは思 うのですが。 ○搆補佐  それは人材育成にもつながっていくのではないでしょうか。この分野が強いというの は、こういう人材がいるのではないかという話になると思います。 ○今野会員  それでもいいのですが。 ○搆補佐  これまでの実績で成功している分野は、強みとしてあげていいと思います。 ○今野会員  まず、そこをどう判断しているかですね。普通リソースというのはお金というといち ばん簡単ですが、お金以外に人もありますし、人が行ったときのバックの支援体制にあ るかもしれないし、技術もあるかもしれませんし、情報もあるかもしれませんが、そう いうのを全部含めて、日本はどこが強いと思っているのですかね。 ○金井室長  私からも、逆に先生方にお聞きしたいです。 ○今野会員  本当はODAも一種の資源配分だとすると、そこがないと最適な資源配分はできない と思います。 ○搆補佐  今野会員が言われているのはごもっともだと思いますが、私ども当事者が、ここはそ うですというのは出てこないのが現状です。例えば、厚生労働省であれば、各部署でそ れぞれ強みを挙げることはできるのですが、他と比べて、こちらの協力分野よりもこち らのほうが強いとか、そういうことが今まで議論されてなかったのです。比較の問題 で、例示はできると思うのですが、比較をするためのツールがなかったことが、ネック になっていることもあります。事務局が例示をすることによって一覧にして議論する機 会を、例えば最終報告の別添で少しずつでも積み上げることは可能です。 ○今野会員  もう少し一般的な質問で、例えば、労働分野でなくてもいいのですが、JICAなど で援助するときに、「やはり日本はこういう資源が強くて、だからこういう観点や入口 から援助していくのだ」ということをやっていないのですかね。普通に考えると、本当 はそういう観点がないと何をするかは出ないはずです。極端なことを言うと、お客さん が言うとおりにやる以外ないわけです。自分が何の強みがあるということがないと、お 客さんがこちらが欲しいと言ったら、そこに資源を出しますということになるのです。 弱くてもいいかな、というので出すということですよね。 ○吾郷座長  労使関係などは、強いのではないですか。 ○中村会員  日本ももう少し謙虚さを捨てて開き直れば、かなり強い面は多いでしょね。あまりに も臆病に謙虚になると、ほとんど強みがなくなってしまう。その点に関しては二つの面 があって、分野と人材の双方から見ないといけないでしょう。分野ではここが強いが、 それでは経験を途上国に伝える人材は居るのかという問題があります。何れにしても双 方について、あまり日本的な謙虚さで構えていったら、強みは何もなくなってしまう。 もっと自信を持っていいのだろうとは思います。そうすると、かなりの分野で強い面が あると思います。 ○釜石専門会員  実績的に言いますと、職業訓練分野の協力というのはJICAを通じて、相当な実績 があるという状況ですが、それは日本で雇用・能力開発機構、その前の雇用促進事業団 の時代から国内で多様な職業訓練を実施していたためです。職業訓練センターの設置運 営のノウハウもある、それを海外に移転していくということで、また雇用・能力開発機 構は全国組織ですから、人も専門家として出しやすかったということもあって、やりや すい協力として実績が積み上がってきたことはあると思います。 ○今野会員  それはもしかしたら、そういうバックを考えると、ほかの国と比べても強いと。 ○釜石専門会員  そうですね、相対的には強いのではないかと思います。 ○小野会員代理  現場から言えることは、右肩上がりのASEANのタイやマレーシアなどで職業訓練 の人材をそのまま養成して、それが日系企業等につながっていくという好循環はある程 度あると思います。ただ、ほかの国で職業訓練や技術教育などで言われているのは、相 対的な訓練をやる前に、資格制度を立ち上げるのは、西欧やイギリスのほうが強いで す。  彼らから言われているのは、一つひとつの職業訓練や現場に入って、実際にものづく りの講師を入れたり、向こうから日本に呼んできて、研修員を、実際に自分たちの手を 汚して物を作る生産管理ラインの人たちをつくる協力は、日本はある程度秀でているの ではないかと、ほかのドナーが言っています。全体的な青写真を作って、どのような職 種の分野を組み立てて、そこでどのようなカリキュラムを作っていくかは、西欧のほう がまだまだ強いかなという感じを持っています。 ○末廣会員  中村会員がおっしゃったように、分野と人材で言えば、日本は中小企業育成では強い 分野だし、中小企業診断士や中小企業金融でも実績があるわけです。ところが、すでに 自由化を終えた国に対して、国際的経験の豊かな人がアメリカのベンチャー型ビジネス もにらんで制度設計をやろうとすると、日本にはそういう人がなかなかいない。こうい う人材と分野とのギャップが出てきています。  ですから、通過危機後のタイに対する中小企業支援では、1950年代後半から1960年代 までの日本における中小企業近代化促進法の経験を活かそうとして設計したのですが、 国際化してしまい、グローバル化したタイに対して、過去の日本の経験がそのまま適用 できるのかどうかについては、そのあといろいろと議論や見直しがありました。つま り、分野と人材のずれみたいなものがはっきりしてしまったのです。 ○今野会員  いまおっしゃられた例でも、強いのが中小企業で、ベンチャーは弱い。どんな場合で も全部に強いなどというのはあり得ませんので、どこかが強くて、どこかが弱いのは当 たり前の話で、弱いところを強くするのも戦略ですが、強いところだけを活かすお客さ んを相手にするのも戦略です。そこはいずれにしても何が強いかを意識していないと戦 略は出ません。もし後者の戦略でいったらASEANは相手にしないで、アフリカに行 くということになるし、ASEANにどうしても行きたいのなら、ベンチャーのところ を強くするにはどうしたらいいかという戦略もあります。いずれにしてもODAの機関 や専門の人たちというのは、そういう視点でODAのあり方を考えて、あるフレームを 提示して、分析結果を出しているということはないのですか。これを読むと、そういう 視点は全くないという感じはします。 ○搆補佐  個人的な意見になってしまうかもしれませんが、今まではサプライ側の、日本がこれ をやりたいという形での協力の推進の仕方はあまりよろしくないと言われてきて、そこ を引っ込めているようなところがあったのかと思います。 ○今野会員  これが強いとか、弱いとか、そういうことですか。 ○搆補佐  あまり出し過ぎるのは良くないという風潮があったように思います。逆に途上国にニ ーズがあって、我が国のODAの方針として、そこは強力にやっていかなければいけな いという話になれば、それは何とか強くしていこうという方向の議論をしてきたように 思います。  あとはILOマルチバイの場合は、少し違って、最終的な対象は受益国であったとし ても、間にILOが入るものですから、我が国が弱い部分であっても、やりたければI LOのノウハウを生かしてある程度進めることはできる。それがむしろ国際社会に対し て発信する形になるので、我が国の重点分野をほかの国にどうアピールすべきかという 観点でも検討していて、そこは我が国の強みを少し抜きにして議論ができていたので す。 ○今野会員  そこは単純に言ってしまうと、弱みをアウトソーシングして、そこを使うという戦略 なのでしょうね。 ○搆補佐  それも1つはあると思いますが、それはごく一部です。 ○今野会員  すごく一般的な話ばかりで申し訳ないのですが、そういう観点がないと、おいしいお 客があったときに、ドナーは全部過当競争をしますね。みんな強みを意識しないで、何 でも参入しようと思えば、当然そうなりますね。 ○中村会員  今野会員の今の流れの話は面白いのですが、日本側の強みというものをもう少し分析 して、うまくいきそうなことをどんどんやったほうがいいと思います。そのときに分野 と人材の二方面から見ていきますが、分野と人材の双方について、政策レベルの問題な のか、実行レベルの問題なのかで随分違うと思います。政策レベルで、特に政府関係の 政策策定に絞ってみると、日本の公務員は異動があまりにも多く、諸外国に比べて一分 野に秀でているという者が居ないから、非常に弱いということはあります。とは言うも のの、私の経験では実際に援助の実態を見ていると、各国から出ている専門家も、そん なに高いレベルではないと言えますから、その点でもあまりにも日本人は謙虚になり過 ぎて機会を逃しているのではないでしょうか。 ○吾郷座長  いまは5の「人材育成のための検討」という項目の話にだいぶ移ってきていると思い ます。どちらかというと、平成18年度以降に検討するという予定で、今回の報告書には あまり入れないということですか。 ○搆補佐  事務局で過去の議論をレビューしたこところ、あまり十分な議論がなされてはおら ず、まとまった報告にはならなかったのです。ただし、来年度の検討に当たり、例えば 人材育成というのは非常に概念が広いので、このままでは「では、どこをやりましょう か」という議論で、初年度の数カ月、1、2回は潰れてしまうおそれがあります。もし 可能であれば、こういうところが課題で、こういうところをまず優先して検討しない と、というものがあれば、ご意見をいただければ有難いことだと思います。 ○今野会員  一般論であると、ODAに限らないのですが、人材育成問題は泥沼で、結局人材育成 と言っても何をするかが決まらない。ベースの部分はありますが、人材育成というの は、最初に何をしたいかが決まらないと出ないのです。それをしないと泥沼の議論に陥 り、すべての分野を同じように育成するというつまらない結論になります。結局、財源 や人材の質に帰着したり、スーパーマンを描くとか、スーパー人材を育成するシステム を作るみたいになってしまうのです。やはり何をしたらいいかが最初ですね。 ○搆補佐  個人的な意見を申し上げますと、先ほど今野会員が言われた強みと弱いところという 話が、人材についても非常に関係してくると思います。例えば、我が国が国際協力をし たい分野で、人材がいないということがあったときに、全然いないのではなく、弱点が あるために、完成した適材を選定して派遣ができないというケースは多々あります。そ こを、あと一歩で条件を満たすようなところを優先して育成するという方法が1つある かと思います。  例えば、中小企業で強いという話が末廣会員からありましたが、中小企業のエンジニ アや労務の部分などは、労務管理についてのノウハウを持っていますが、そういう人た ちは国際畑ではなく、一般には国内一筋と考えられます。端的に言えば、語学ができて 労務管理が非常に得意で、かつ海外の労務の事情を知っているという人はごく少ないわ けです。しかし、語学や海外の情報について研修し、育成することで、どこでも通用す るような人がたくさんいるのではないか、そういう場合に何とかできないかという議論 があるかと思います。ほかにもあると思いますし、それをやっていくことによって、付 加価値が高い養成ができるのではないかと思います。 ○末廣会員  今野会員の話と結び付きますが、11頁の(4)で、単に予算が削減されているから選 択と集中の戦略を今後とらなければいけないという論理だけではなく、私の理解では、 実はインフラだけを作っている時代ではなくて、その次のステップとして、労働環境の 問題や新しい問題に対しても積極的に協力する必要があるという、新しい時代に対応し た理由を挙げていく必要があります。かつそうなれば、日本が比較優位を発揮できる分 野はここであるということを見極めていく、そういう論理を立てなければいけないので はないかと考えます。  タイ国別経済協力計画の策定に参加したときも、「日本は自分の比較優位を明確にし て、他のドナーや国際機関とは別個に独自の貢献をすべきである」という点を、案件を 採択するときの条件に入れました。選択と集中の戦略を重視するというのは、各国の国 別援助計画の中の大きな柱になっていますから、それが労働分野では何なのか、それは どういう観点からということを、もっと明記してもよいかと思います。 ○吾郷座長  そろそろまとめに入らなければいけないと思いますが、事務局から特にこれだけは議 論しておきたいということがありましたらお願いいたします。 ○搆補佐  先ほどの協力方針については、これまでの議論の実績というのはなく、ここでの議論 は限られた時間ですが、たたき台を作るための助言、アドバイスはいただいたように思 いますので、それを踏まえて下案を事務局で作りたいと思います。集まっての検討の場 はないのですが、前もってこの議論を踏まえて、こういうものを作ってみましたという ことで、予め照会してご意見をいただくような形で、少しでも進めてみたいと思いま す。  全体もそうですが、今日初めて本文をお出しした次第で、この時間の中ですべてコメ ントをいただくことは不可能だと思いますので、検討会終了後にご意見をいただいて、 それを踏まえて書直しをし、コメントを踏まえて書き直した部分は、改めて会員、専門 会員の皆さんにお見せすることとします。具体的には、メールなどでやり取りをして、 ご意見をいただく時間をしっかり取るようにしたいと思います。 ○吾郷座長  わかりました。ということですので、今日はこの資料に基づいて、かなりご意見を出 していただきましたが、さらに気が付かれた点、事務局側でまとめられたことについて 会員に配っていただいた上で、それに再コメントをするという形で進めたらいいのでは ないかと思います。  そういうことで今回は次回の日程を決めることはできないと思いますので、12月か1 月になるかもしれませんが、そこで最終的にもう一回集まっていただく。メールで意見 交換をするという形にさせていただきたいと思います。仮に1月に最後の会合をするこ とになった場合に、私がたまたまいるときは座長をさせていただきますが、そうでない 場合は、先ほど決めていただいたように座長代理の今野会員にお願いいたします。それ では、今日の議事を終了いたします。どうもありがとうございました。                                     (了) (照会先) 厚生労働省国際課国際協力室 国際協力室長補佐 搆 03-5253-1111 内線7303