05/10/18 第24回厚生科学審議会感染症分科会(議事録) 第24回厚生科学審議会感染症分科会                     日時 平成17年10月18日(火)                        14:00〜17:00                     場所 厚生労働省 省議室(9階) (照会)                厚生労働省健康局結核感染症課                 担当: 清水(内)2379                     平塚(内)2386     TEL : 03−5253−1111 ○前田課長補佐 それでは、定刻でございますので、これより、第24回「厚生科学審議 会感染症分科会」を開催いたします。 開会に先立ちまして、委員の出欠状況について報告をさせていただきます。 本日は、青木委員、神谷委員、北村委員、木村崇委員、坂谷委員、高松委員、田代委 員、韮澤委員、山口委員、雪下委員、吉川委員、渡邊委員から御欠席の御連絡をいただ いております。 そして、また岩本委員、木村哲委員、山川委員につきましては、所用により後ほど到 着するとの御連絡をいただいております。 また、本日の会議にも光石参考人、長尾参考人、小林参考人にお越しいただいており ます。 それでは、後の進行は、倉田会長、よろしくお願いいたします。 ○倉田分科会長 足元の悪い雨の中、お集まりいただいて、ありがとうございました。 本日もよろしくお願いします。 予定ですが、議事次第にありますように、大きな問題1つですが、これについて議事 を進めたいと思います。 事務局から資料の確認を行って、説明の方をお願いします。 ○前田課長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。 まずこの議事次第の資料でございますが、資料1「生物テロを含めた人為的感染に対 処できる総合的な感染症対策の概要」。 6ページ目から「結核予防法廃止に関する意見等とこれに対する考え方(メモ)」。 8ページ目から「結核指標の諸外国との比較(2003年)」でございます。 参考資料1といたしまして「今回、結核予防法を感染症法に統合する理由・結核病床 を有する指定医療機関と第二種感染症指定医療機関との整理」でございます。 参考資料2といたしまして「過去の審議会等における結核予防法の廃止(感染症法へ の統合)に反対する意見等(○)及びこれに対する当局の見解」というのが本資料でご ざいます。 委員のみ配布資料といたしまして、国立病院機構・結核感染症協議会、重藤委員、加 藤委員、阿彦委員、日本結核病学会、日本呼吸器学会共同声明。 あと追加で配布させていただきました、光石参考人からの資料が委員のみ配布という ことでございます。 以上でございます。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 続きまして、事務局から、結核予防法の廃止についての資料を説明してください。 ○新課長補佐 資料1をごらんいただきたいと思います。前回の審議の際の資料と、変 更部分について、主に御説明をさせていただきたいと思います。 「生物テロを含めた人為的感染に対処できる総合的な感染症対策の概要」ということ でございますが、内容につきましては感染症法の一部改正する法律案ということで検討 しておるものの内容でございます。 まず「1 定義等」についてでございますが、別紙にございます表を御審議いただい てまいりましたが、こういったものに従ってAからDに分類するということでございま す。 前回の資料におきましては、規定のレベルについて、法律または委任命令と補足書き をしておりましたが、基本的には規制対象については法律で列挙をしていくということ で分類という表現にさせていただいております。 国の責務の部分で、体制の整備その他の必要な措置と前回記述をしておりましたが、 適正な取扱いを推進するための体制の整備等ということで、これは表現の技術的な修正 でございます。 以下、管理者の責務、製造、輸入等の禁止、許可、届出、報告、取扱主任者の設置。 次のページにまいりまして、取扱基準の遵守、輸送の規制、被害発生時の措置等、事 故届、所管大臣への要請、報告徴収・立入検査でございます。 「14 改善命令」につきましては、前回の資料におきまして、勧告という規定を併記 しておりましたが、勧告については通常の行政指導の範疇に入りますので、ここには行 政処分として改善命令というものを記載させていただいております。 3ページにまいりまして、緊急時の厚生労働大臣の直接執行、罰則等については前回 と同様の記述でございます。施行記述等につきましても、基本部分は同様でございます が、禁止規定の施行日を公布の日と記述を前回しておりましたが、許可等の対象となる ものはございますので、10月1日ということに整理をさせていただいております。関係 法令の改正については前回同様でございます。 4ページでございますけれども、前回までに事務局の方から、口頭あるいは資料の一 部において御説明していたものを文章化しております。 「19 結核予防法廃止に伴い必要となる法律上の措置(結核に関する特例措置)」と いうことでございまして、結核に関する定期の健康診断、結核患者の登録、医師の指示 あるいは保健所長の職務権限、結核の一般患者に対する医療、いわゆる通院医療でござ いますが、こういったものについて法律レベルで規定をするということでございます。 また、その他これらに関係する規定についても法律事項については法律レベルで規定を するという趣旨でございます。 5ページの表については、今、申し上げた点で、若干の語句の修正がございますが、 この分類、規制の内容等については前回と同様でございますので、割愛をさせていただ きたいと思います。 続きまして、資料2でございますが、これも第1回、第2回の御審議の内容におきま して、法律事項を中心といたしまして、主要な御意見、御懸念、御指摘をいただいてお るもものについて、口頭あるいは資料の一部で御説明はいたしましたが、これを整理を して再度、表の形にしております。 「考え方」というところが当局の考え方でございます。言葉が尽くせておらず、恐縮 でございますが、おおむねこちらに書いてあるとおりでございます。 まず結核に関する感染症法の条文として、主には(1)〜(5)について、対策上必要である ので条文として位置づけることが必要であるという御意見につきましては、繰り返し申 し上げますように、結核対策の廃止は後退を意味するのではなく感染症法において的確 な措置対策を適切に講ずる趣旨であります。結核予防法の廃止に伴い、条文上、感染症 法に現在ない規定については、法律事項を法律レベルで規定をさせていただきたいとい うことでございます。 次に大きなIIの部分でございますが、感染症法そのものにも御意見をいただいており ますが、(1)〜(12)でございますが、こういったものについて法制化が必要ではないかとい うことでございます。 まず基本的な考え方といたしましては、前回御指摘もありました、いわゆる市民的及 び政治的権利に関する国際規約人権委員会の日本国政府の勧告、ハンセン病問題に関す る検証会議最終報告書並びに当審議会の意見等を参酌をいたしまして、当局といたしま しては基本原則等について一定の条文化ができないかということを検討をしてまいりた いということでございます。 まず感染症法の類型の趣旨の規定でございますけれども、現在、法律で限定列挙をし ておる1類〜3類の規定につきましては、病名を列挙するということになっております が、これにつきましては法律制定時の公衆衛生審議会で意見書をいただいております中 で、類型の趣旨というものが分類のメルクマールとして御意見として整理がされており ます。 こういったものを条文化ができないかどうかということについて、条文化をする方向 で検討をさせていただきたいと考えております。 以降、(2)〜(4)につきましては、主に人件費関係の規定について、さらなる条文の規定 ということの御意見でございますけれども、基本原則というものを条文化できないかと いう中で検討をしてまいりたいと考えております。 「結核対策に対する国の責任の明確化」でございますけれども、結核対策について国 が責任を持って対応することは当然のことでございます。感染症に関する国の責務に規 定上は読めるということにはなりますけれども、特に結核対策における国の役割、ある いは責務については厚生労働大臣が定める特定の指針というのがございますので、これ で策定をして告示という形で明示をしていきたいと考えおります。 (6)の感染症診査協議会の権限の強化、あるいは運用等に関する御意見でございますけ れども、権限の強化につきましては感染症法の従業禁止、あるいは72時間の診査の事後 評価等の権限について、条文化について検討をしてまいりたいと考えております。併せ て結核等に対する事務の円滑な執行についても検討していきたいと考えております。 (7)結核に関する目的条項、基本理念についてでございますが、これは(5)と重複いたし ますけれども、一般法の感染症法の目的規定そのものには特定疾病のみに関する規定は 設けない考えではありますが、結核対策の重要性につきましては当局としても十分認識 しておりますので、厚生労働大臣の定める指針で明記をした上で告示をしてまいりたい と考えております。 (8)〜(11)につきましては、当局の提案の中で2類感染症に結核を位置づけるという案に 関しての御指摘についてでございますが、それぞれ長期排菌者に対する規定、独居の患 者に対する規定、入院等の拒否者、多剤耐性結核に可能性が高い治療可能な患者、ある いは治療不能な方。こういった方に対する入院勧告の規定あるいは治療体制、治療とい ったものに関する御意見であります。 これにつきましては、先ほどの(1)以降、(4)まで申し上げましたような入院措置に関す る判断要素に関しましては、現在蔓延の防止の必要ということだけが条文で規定されて おりますが、これについてもいわゆる人権の制約につながる規定については基本原則の 条文化を検討したいと考えております。 また、具体的な類型の御指摘もいただきました御意見につきましては、従前からも結 核の関係の審議会等でもいろいろな御意見をいただいておりますが、こういったものを 法的根拠に有する中で、そういった条文の適用要件を処理基準という形で、法的拘束力 のある処理基準で明確化をして告示をしていきたいと。そういったものを遵守する、あ るいは規定がなければ適用できない、基準がなければ適用ができないということになり ますので、こういった形で人権侵害を未然に防いでいきたい。あるいは人権に配慮した 入院勧告、治療等を確保したいと考えております。 (8)〜(11)はおおむね同趣旨の当局の考え方になっておりますので、割愛をさせていただ きます。 BCC接種につきましては、予防接種法ということになりますが、現行の適用規定の 条項が同等あるいは相当規定がある1類疾病に位置づけるということで考えております。 なお、予防接種法全体の中で公権力行使による接種勧奨時期の在り方、疾病部類の妥当 性当につきましては、制度全体の審議をまた別途いただければと思っておりますので、 そこで議論していただくということでございます。 なお、法律事項につきましては、今回の法案は内閣提出法案ということでございます ので、これを強調する趣旨ではございませんけれども、当省におきまして、関係省庁や 与党との意見調整等を行うということとともに、政府といたしまして、さまざまな観点 から法律上、あるいは立法技術上、法制上の検討が行われた上で、最終的に閣議の決定 をさせていただくと。これを国会で御審議いただくということでございますので、念の ため申し添えをさせていただきたいと思います。 資料3については前田の方から御説明させていただきます。 ○前田課長補佐 資料3の「結核指標の諸外国との比較(2003年)」について、説明さ せていただきたいと思います。 前回の資料におきまして、新登録の肺結核患者についての国際比較について、ちゃん と比較できるデータという御意見がございましたので、出してございます。 まず新登録患者数につきましては、日本が人口10万対25、アメリカが5、英国が11、 ドイツが8、オーストラリアが5というところでございますが、喀痰塗抹陽性の肺結核 につきましては、人口10万対の罹患率は日本が9、米国が2、英国が2、ドイツが2、 オーストラリアが1という状況でございます。 この下の折れ線グラフでございます。白黒のコピーで申し訳ございませんが、1980年 時点での上から順に申し上げますと、日本、2番目がドイツ、3番目がイギリス、4番 目がアメリカ、5番目がオーストラリアというのが、この1980年の順でございます。日 本の全結核については、まだ23.3ということで、比較的高い状況にあるという状況では ございます。 以上でございます。 ○倉田分科会長 この前いろいろな先生方の御意見をいただいて、事務局が基本方針的 なものをそこに出してありますが、課長、何か付け加えることはありますか。 ○結核感染症課長 詳細な資料の説明は今、新、前田の方からさせていただきましたけ れども、基本的な部分もまた繰り返しになりますが、私どもから申し上げたいと思いま す。 感染症法と統合した場合に、結核予防法にしかない特別な規定についてはきちん と法律レベルで残していくというのが1点。法律ではなくて、もうちょっと大臣の告示 でありますとか治療基準などはその方に入ると思うのですが、そういうものについては きちんと各種のいろんなレベルの通知なり告示というようなもので、現行制度を移行し たときに漏れがないように、これはきちんと規定をしていくということを基本に考えて おりますので、そういうことで委員の先生方が御懸念になっておられますような結核対 策の後退というものにならないように、責任を持って対処したいと考えておりますので、 よろしくお願いしたいと思います。 ○倉田分科会長 どうもありがとうございました。 それでは、何か今ここで。どうぞ。 ○高橋委員 資料の質問をさせていただきたいのですが、実はこの言葉の中に当局とい う言葉がたくさん出てくるんです。前前回もかなり事務局の方から当局という言葉を随 分いただいたのですが、この審議会というのは国家行政組織法8条に基づく審議会で正 規の国家機関であって、審議の過程について、国家機関の合議体の中でやっている話な んです。 通常、当局というのは一般的な国民と権限ある行政庁との関係の間で当局と いう言葉を使うのですが、こういう審議の場で当局当局と言われると、我々は単なるヒ アリングの対象ではないかと。一般国民の意見の提出と同じ扱いをされているのではな いかという誤解を与えますので、今後はやはり事務局という正しい言葉を使っていただ きたいと思います。よろしくお願いします。 ○倉田分科会長 よろしいですか。お願いします。 ○結核感染症課長 そこは申し訳ありませんでした。以後、注意します。 ○倉田分科会長 今日は全員の委員の先生方に御意見を聞こうかと思っています。今、 説明のことに関してのみ何かあったら質問をお受けして、そうでなければ、この右回り 順に。 今、説明された資料その他に関して、何か特別ありましたら、どうぞ。 木村先生、どうぞ。 ○木村(哲)委員 資料1で御説明のあった項目は、感染症法の中にどんな形で取り組 まれるのですか。 ○結核感染症課長 附則という形で法律の中に書くというふうに考えています。 ○倉田分科会長 どうぞ。 ○高橋委員 この1〜4について、単なる通常の事業ではなくて、例えば、登録をしな かったら罰則をかけるとか、そういう不利益的な措置というのはあり得るのでしょうか。 その辺を教えていただきたいのですが。 ○結核感染症課長 その前によろしいですか。 ○倉田分科会長 どうぞ。 ○結核感染症課長 私が附則と申しましたのは、その資料2の6ページで言いますとこ ろの(1)〜(5)のことでありますので、念のために誤解のないように付け加えて発言をさせ ていただきます。 失礼いたしました。資料1の4ページの「19 結核予防法廃止に伴い必要となる法律 上の措置」という部分のことをお答えしたわけです。 ○木村(哲)委員 御質問したのは、テロ対策のことでいろんな項目が20ぐらいありま すね。それらは感染症法の中にテロ対策を入れるのだというお話だったので、どういう 形で入るのかということをお聞きしたいんです。 ○新課長補佐 条文は確定的なスタイルは申し上げられませんが、ここに書いてある事 項は法律事項として、感染症法の中に章立てを設けて、こういったものが入るというふ うに御理解をいただければと思います。こういった病原体の管理に関するそういった規 定があるということです。 済みません。高橋先生の方の御質問は。 ○高橋委員 いえ、そうやって言われたので、その資料2の方かと思って。 ○新課長補佐 失礼いたしました。 ○倉田分科会長 木村先生、よろしいですか。 ○木村(哲)委員 はい。 ○倉田分科会長 ほかに何かありますか。 それでは、先ほど言いましたように、今日御出席の先生方全員の御意見をいただくと。 それで大変申し訳ないのですが、どういう観点からでもよろしいんですが、全員にお聞 きしたいと思いますので、3分前後で要点を。質問というか私はこうしたらどうかとい うような建設的な意見をいただけた方がいいと思いますが、後で時間を残して、また委 員の間のディスカッション、更に質問が出るならば事務局に対する質問ということはあ ると思うし、参考人の方々もお出でですから、参考人、委員の区別なくいろいろ議論し たいと思います。 それでは、時計回りの逆で、阿彦先生から、池上先生、岩本先生というふうにお願い します。 ○阿彦委員 それでは、委員のみ配布という資料に意見を出していますので、それの 10ページからごらんいただきたいと思います。 前回提出した資料への追加になりますが、4ページにわたりますけれども、これに沿 って簡潔に説明申し上げます。 私としての意見は、本来は結核予防法の廃止、統合ではなくて、予防法の充実が望ま れる状況だということが1点。この図を描きましたが、先般の改正はこの包括的見直し の中のどちらかと言うと、効率化、スリム化、経費削減になるようなところばかり取ら れてしまって、結核を積極的に減らそうという対策は後回しになった改正だったと思い ます。 この図で言いますと「発病予防策の強化」。特に高齢者を含めた発病のおそれの高い 方々の発病前治療について、まだ取り組まれていませんし、DOTSについても25条、 26条ということで、ただ文章的にDOTSをやろうというところが高まっただけで、例 えば、低所得者等が退院後に通院DOTSをするに当たって、公費負担とかそういった ものがあれば、DOTSが非常に進むと思うんですが、そういったところがまだ未整備 だということで、本来であればこういう包括的見直しの中で、まだ着手されていない部 分や不十分な対策を早く推進すべきではないかということがあります。 健診についても一番下に書きましたが、ハイリスク者等への選択的・効率的な健診に 衣替えしましたが、これは自治事務ということで、選択的健診になったことによって全 国いろんな市町村のやり方のバリエーションが多くなっていると思うのですが、その評 価が全くまだされていない段階というところなので、まずこういう結核予防法の充実が 望まれるということが大前提だと思います。 次の11ページですが、これも似たようなものなのですが、感染症法と統合したときに 附則で対応できるとありますが、附則だけでは心配だというところが幾つかあって、1 )2)3)とありますが、目的条項の件、保健所に届出対象となる患者の定義について も、発病のおそれのある感染者も患者の定義に含めて、届出対象にできるように本当に なるのかどうかということ。 あとサーベイランスですけども、結核のサーベイランスは発生動向の調査だけではな くて、ここに書きましたが、発見の遅れ、診断精度、治療内容及びDOTSに関連して 重要な治療成功率などの対策面の評価が非常に重要なのですが、感染症第15条の条文の 中には対策の評価を目的とした条文になっていないので、このまま行った場合に対策の 評価ができなくなるのではないという心配があります。 3.ということで、両法律を統合したことによって、入院の手続や対象に関するこの 矢印に書いた3つの問題は解決すると言われていますが、統合されたことによって新た な課題がたくさんありまして、それを12ページに。短い期間なので漏れはあるかもしれ ませんが、保健所で感じているものを列記しただけでも5つは見つかりました。 1つは応急的入院の期間ですが、72時間というのは変えられないということだったの ですが、保健所に毎日塗抹陽性の患者の届出がある大都市部におきましては、診査協議 会は3日に1回以上ということになるわけですけれども、実務上は患者に対面して勧告 し、不服申立ての機会を与えるとかいろんなことを考えると、毎日届出が来る保健所で は毎日審査会を開催しないといけないだろうと。 それが現実的だということを考えると、この入院勧告時に入院予定期間を十分説明を して、これに対する患者本人の同意が得られた場合は、この応急入院期間を延長できる ような、そういう法令上の工夫ができないのかどうかということが1点目です。 2番目は、更に入院が延長になった場合に、30日を超えた場合は、大臣への不服審査 請求ができるわけですけれども、1か月を超える患者さんというのはかなりいると思う ので、それが審査請求権のある患者の頻度がかなり多い段階で、これも結核に対して適 用するのが適当かどうかということも検討はしていいのではないかと思った次第です。 3つ目は、これも法律の違いで、結核予防法の診査協議会は、患者の居住地の保健所 が行うことになっていますが、これに対して感染症法の診査協議会は、指定医療機関の 所在地を管轄する保健所が行うという大きな違いがあります。感染症法は、二次医療圏 に1か所ずつ指定医療機関を置くようになっていますので、問題ないのでが、結核の場 合、例えば、山形県で言うと、山形県は125万の人口で県内1か所しか指定医療機関は ございません。 ですから、4つ保健所がありますが、医療機関は私の村山保健所管内にしかありませ んので、統合されてこのまま行きますと、村山保健所だけで県内すべての診査を集中的 に行わなければならない。療養所の統廃合の影響で似たようなところがたくさんできて いますので、特定の保健所に診査業務が集中するという課題が出てくると思いました。 4番は、非常に重要なことだと思いますが、入院期間が感染症法を想定してつくられ た法律ですので、入院期間は統合によって短くなると思いますが、社会経済弱者が多い 状況の中で入院期間が短くなれば、通院による治療が6か月間でできるように、通院D OTSの充実が必要なわけですけれども、いろんなハンセン病の検証会議の報告や弁護 士さんの話にあったように、低所得者などの方については通院DOTSについて、勧告 による入院を終えて、退院後も35条相当の公費負担制度が継続されるような、そういう 制度にしてもらいたいというのが1つです。そうでないと充実とは言えないのではない かということです。 5番目は、輸送問題ですが、感染症法は都道府県知事、我々が知事の委任を受けて患 者さんを指定医療機関に輸送しなければならないとなっているわけですけれども、結核 の場合は輸送についての権限は規制されておりません。 今回の改正でSARSを感染性がそれほど高くないとの理由で、分類の条文化はこれ から検討ということですけれども、感染性がそれほど高くないという理由で2類に変更 するのであれば、輸送義務を課す対象疾患は1類に限定してもいいのではないかと思い ました。 4.として「生物テロ対策を契機に両法律を統合することの問題点」につい て。生物テロ対策のために多剤耐性菌の入手を困難にすることというのは重要なことで すけれども、それよりも治療を成功させて、多剤耐性患者の新たな発生を阻止すること が根本的な対策ではないかと。多剤耐性結核菌の管理を感染症法で規定するために結核 予防法が廃止されて、それによって結核対策が弱体化すれば、結果として多剤耐性結核 患者が増加して、多剤耐性菌による感染機会の拡大につながるということで、テロ対策 上も本末転倒になってしまうのではないかと思います。 結核予防法では接触者健診の対象を選ぶときや患者に対する医療を行うとき、薬剤感 受性のある結核患者と多剤耐性結核患者を区別するような対策はされておりません。こ の結核菌の適正管理について法定化することの重要性という意義は理解できますが、多 剤耐性結核菌を薬剤感受性のある結核菌と区別して管理するということの妥当性を再検 討してもらえないかどうか。 先般の会議資料では、CDCの分類ではクラスCに分類されているということですけ れども、このCFRのテロ対策に関する規制対象病原微生物のリストを見ても、アメリ カで結核菌はリストになかったと。その辺の状況も確認の上、日本で本当にCランクに しておいていいのか。結核菌と多剤耐性結核菌を分けないでDランクできちんとした管 理で十分ではないかということ。 人権擁護の観点からも、多剤耐性結核菌をテロ対策のために感染症法で規制対象にす ることは問題ではないか。なぜならば多剤耐性結核菌を排菌しながら、決定的な治療が ないまま苦悩している多くの患者さんたちがあたかもテロの凶器になり得るような偏見 を引き起こす結果になったとすれば、人権擁護の観点からも本末転倒になってしまうの ではいなかということを思いました。 今回、毎日新聞等の報道とかを拝見しても、結論ありきで、感染症法と統合するのだ と、我々の意見は聞くけれども、最後は政治判断だというような記事がありましたけれ ども、1週間ちょっとの間にない知恵を絞って、一緒になると細かいことで不都合が生 じないかということで検討しただけでも、細かい問題点はたくさん出てきますので、結 論を出すのを急ぐとやはりわからないいろんな穴がもっと出てくるのではないというこ とを危惧しておりますので、今日はたくさんの方から意見が伺えるということですけれ ども、もう少し慎重に結論を導き出していただきたいというのが結論です。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 これは順番に意見をいただいて、後の方でまた事務局としても、いろいろ議論すべき ところをしたいと。あるいは委員同士の議論をしたいと。順番に皆さんの御意見を伺う ということでいいですね。 それでは、指摘された問題のところでちょっと事実と違うところが、多分言い違いだ と思いますが、そういうところは後で修正させてもらいます。 次に、池上委員、お願いします。 ○池上委員 池上です。過去2回出席できませんでしたので、まだ皆さんの議論に追い 付いていけない点があると思いますが、懸念の点を2点申し上げたいと思います。 1点は、法律の統合とかいろいろあるときに、現場で対応している人たちのニーズを いかに従来よりも、より柔軟に把握して対応できるのかと、それが改善されるという方 向でなければ意味がないと。だから、そこをどう保障されるのかということに絞られる かと思います。それが可能であるならば、統廃合もあるだろうし、それが十分保障され ないというのであれば、それをどう保障していったらどうかということを検討すべきだ ということが第1点です。 第2点は、私はHIVに関する活動をやっておりますので、その点から申し上げます と、結核予防法における公費負担によって非常に助かっております。外国の方でエイズ を発症する方は、ほとんど結核が来られるわけで、その方たちは保険も持っておられな い、あるいは病院にもなかなか敷居が高くていけないというようなところで、結核であ ることによって何とか最低限の治療を提供することができるという現状がございます。 こういった点がよりちゃんと保障され、外来の方にも強化され、でき得るならば、も っと幅広く適用される可能性があるという方向はいずれの形にしましても、是非明確な 形で保障していただきたい。 この2点でございます。ありがとうございました。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 次に、岩本先生。 ○岩本委員 10月5日は欠席させていただきましたが、確かに結核を専門とされる先生 方の御意見等は資料でいただいてますが、やはり非常にそういう先生方からたくさんの 意見が出て、議論の時間が少ないのではないかということを大変懸念しますし、もし統 合されるのであれば、やはり2〜3年とか適当な時間を置いて、きちんと見直しをして、 その問題点を明らかにするというようなことは恐らく必要だろうと思います。 2点目は、阿彦先生がおっしゃったことですけれども、やはり感染症の法律というの は患者さんを減らし、その患者さんのためにどういうことをやるかというのが基本の法 律であって、この一連の会議の中で1回目に出ましたように、テロ対策が大事だから、 要するに結核予防法と感染症法を一緒にするというのは、やはり非常に我々もわかりに くいし、国民にとってもわかりにくい議論ではないかというように思いました。 3点目ですけれども、感染症法は類型がもともと1類〜4類までできて、それがだん だん5類分類になって、少しずつ類型化というのはその意味づけがはっきりはしてきた かと思いますが、しょせんは急性疾患、慢性疾患のいろんな病気が1つの類型の中に入 っていますので、やはり1個の法律でまとめたから、その対策を一本化するというよう なことは必ずしもとおらない。要するに、かなりここの病気の事情をその法律の中に取 り入れていくようなお考えを今後取っていただきたいということでございます。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、植田先生。 ○植田委員 5日の会に欠席しておりましたので、もう議論が尽くされた後の今日のだ ろうと思いますので、冒頭、新補佐が結核予防法廃止は結核対策の廃止、後退を意味す るものではないと明言されましたことを信じたいと。疑念が全く払拭されているわけで はございません。 と言いますのは、結核部会が意見をまとめてから国の方で法改正されまして、改正さ れた法律に関連して、さまざまな通知が出てまいりましたときに、私どもは文書の理解 に非常に苦慮いたしましたし、現在、改正された現行の結核予防法では、現場の混乱は その当初だけだからではなくて、続くだろうと予測されますので、これは何らかの措置 を打っていただきたいと国にも要望し続けております。これがもう感染症法一本で解決 されるのでしたら、私はもうよしとしたいと思います。 ただ、一番お願いしたいのは、やはり治療の保障、公費負担を今より緩く認めて、結 核の罹患状況を先進国並みに一気にしたいというのが現場の気持ちでございます。 ○倉田分科会長 事務局、後で相当整理して、お答えもかなりきついところが出てくる と思いますので、そのつもりで聞いてください。 それでは、次に、大野委員。 ○大野委員 私も前2回の会議に都合で出席できておりませんものですから、ちょっと とんちんかんなことを申し上げてしまうのかもしれませんが、先ほど、保健所の現場と いたしましてはまだ時間が足らなくてとおっしゃいましたけれども、阿彦先生がおまと めいただいたものは、まさにすべて同感でございます。この改正がありますと、現場で は相当の混乱というか、この法律がその趣旨どおりにちゃんと流れていくためには、相 当の準備期間というか、いろんな通知あるいは説明会とかそういうものが、場合によっ ては法改正そのものの作業よりも必要になってきてしまうのかなという感じは持ってお ります。 やはり慢性の感染症であるということで、ほかの委員の方々も前に御意見で出ており ますけれども、やはり患者さんとの信頼関係というのが、この結核をきちんと完治させ るためには現場で非常に必要なものでございます。そのためには本当の意味では、その 法改正というのは先ほど、池上先生もおっしゃいましたけれども、現場からの声、ボト ムアップであるべきだと思うのですが、今回はテロということもあるかもしれませんが、 こういうものがトップダウンで来るというのが、どうも現場としては大変理解できませ ん。 あとは前の先生方とかなり重なりますけれども、私は現場でほぼ20年やっている のですが、かなり結核予防法そのものを理解してきて仕事をしてきた者が、次の新しい 新人に現場で教えながらという性格がかなりあります。 そういうようなきちんとした事業の継承というようなものが、この感染症法への統合 で、また混乱が生じて、断ち切られてしまう部分も結構あるのかなというおそれを抱い ております。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、岡部委員。 ○岡部委員 今まで随分申し上げてきたのですが、プロセスの点でやはり不明であった のは、この結核予防法の廃止案が出たときに、バイオテロの話が先に出たということに ついて、やはり問題点があると思うのですが、その点は結核予防法というものに対して 充実するということが前提であることが明言であるならば、これはいつまでも議論すべ きことではないと思っています。 ただ、前書きのようなところに、結核対策を後退しないようなということでしたけれ ども、しかし、これは結核対策を充実させるためではないかと。要するにもうちょっと ステップアップするのだということが明言されていないと、その意味がないだろうと思 います。 もう一つ、プロセスですけれども、つい最近に改正を行い、その後通知が幾 つか出たりして、現場では恐らく混乱があったと思うのですが、そういう改正を行った にもかかわらず、今回廃止をして感染症法に入れるという理由も明確に述べていただき たいというのがあります。 もう一つは、感染症法側の方から見て、私の担当はサーベイランスですから、その点 から申し上げますと、感染症法の中に入っている疾患が、先ほど、ほかの委員会もあり ましたように、ほとんどが急性疾患であって、慢性疾患のサーベイランスに適していな い部分が多々あります。 例えば、1回届ければもうあと2回目は届出の必要がないのだから、その後の変更に ついては法律上全くできないというような見解で今まで来ているわけですから、もしこ れが一緒になるのであるならば、感染症法側に入っている慢性疾患のことも視点に入れ て、考え方を統一していく必要がある。違うものは違うとして明確にした上で、柔軟に 取り扱えるようにしていただきたいというのがあります。 もう一つは、この説明の中にはなく、また後で説明があるのだと思うんですが、サー ベイランスの対象疾患の中で、全数報告で3万例、4万例という疾患は含まれていない んです。したがって、サーベイランスの充実ということで、この点をどういうふうにし ていくのかに関しては、かなり具体的な話を伺わないと、サーベイランスを担当する側 としては非常に困るというのがあります。 最後は、BCGですけれども、当初、予防接種法2類というのは撤回されているので、 これについてはいいと思いますけれども、むしろBCGについても予防接種法と統一の 中でやった方が、現状はかなり共通しているところもあるし、その点もすっきりするだ ろうと思いますけれども、予防接種に関する検討の方でこの1類という疾患、あるいは BCGをやることについての妥当性はやはり議論をしていただきたいということです。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、小野寺委員。 ○小野寺委員 私は都心の1,000床規模の大学病院におりますが、日常、直接、結核患 者さんを見ているわけではないです。ただ、病院としての院内感染対策という立場から は、今でも結核患者は重要であるということをお話ししたいと思います。 高齢者の増加ですとか、あるいはがんの末期患者の増加ということで、現在も予期し ない形で入院してくる結核患者は非常に多いのが現状です。診断の遅れはよく言われて いますが、かなり口を酸っぱくして、その入院時の結核も含めた検査を言っていても、 レントゲンを撮っていないという状況で、入院して大部屋に行って1週間そのままの状 況ということが今でもあります。 そういったときに、今の管轄の保健所の対応として届けて、接触者をリストアップし て、健診のシステムを利用して、その健診の体制をそのまま使えるということは大変あ りがたいことです。それが1つ。 あとは72時間という入院期間の問題ですけれども、結核がわかったときに受け入れ先 の病院というのはなかなかないのが現状だと思います。そういった意味で今の結核予防 法がなくなった場合に、そういった措置が現状のままで残していけるのかということが 1つ気がかりです。 もう一つは、やはり公費負担の問題も従来どおりする。将来的にその感染症法に組み 入られることについては理解もできるのですが、今までの先生方の議論を聞いていると、 まだまだ議論し尽くされていない部分があるのではないかと思っています。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 次に、加藤委員。 ○加藤委員 お配りされています、委員のみ配布資料の6ページでございます。 まず生物テロの対策についてですけれども、病原体管理体制を整えることには勿論異 論はありませんけれども、このCの届出の多剤耐性を一般の結核菌と別扱いにして、C の届出も必要な病原体とすることについては、以下の6つの理由から反対です。 1番、所持の届出とか輸送の手続の煩雑さから、患者の診療や疫学調査の障害になる 可能性があると。これは発生の少ない急性感染症とは違って、結核は一般開業医で治療 されている場合も少なくありません。 このような場合は、臨床検査は民間の規模の余り大きくないラボで行われることもあ りますので、所持の報告をしないために同定検査をしないとか、所持をしないようにと いうことで検査できた検体をすぐに処分してしまうというようなことがあれば、必要な 疫学調査等々の障害になる心配があるのではないかということです。 2つ目は、多剤耐性菌は日本全国700人ぐらいと思われますけれども、生物テロの起 こる確率とこの患者さん、つまり新規患者さんだけでも70〜80という数がありますから、 結核の発病率が10〜20%としますと、年間数百人の感染者が出ているわけです。 そうした場合、このテロ対策と新規に感染している人の問題のどちらが大事かとうこ とを考えたら明白のように思えます。 多剤耐性菌を排菌している患者さんはたくさんいますので、病原体だけ規制しても、 病原体の入手は可能であります。 同じような理由で、先ほど、亜彦委員からの話にございましたけれども、多剤耐性菌 の患者が危険な存在であるというような偏見に結び付く可能性があるのではないかと。 前回、坂谷委員から御指摘がありましたけれども、結核菌が生物テロに利用されやす い性質を持っているとは余り思われないと。感染率は高くありませんし、発病値が低い。 潜伏は非常に長いというようなことです。 更にアメリカにおいても多剤耐性結核菌は規制対象になっていないということをお聞 きしています。 2つ目ですね。これは前回の分科会長の御示唆に従って、もし結核予防法を感染症法 に統合する場合ということで考えてみますと、現行の感染症法が急性感染症を主に対象 としていますので、感染症法の一般法として不備な点が多々あると。これはただいま岡 部委員からの御指摘があったところであります。 結核対策に必要な要素は特例に入れるということなのですが、患者数の数を見ても2 類感染症の30倍くらいありますし、入院が必要な患者さんだけでも40倍近くある結核が 特例に位置する。これはいかがなものかと考える次第です。 逆に言うと、我が国最大の感染である結核に対して適切に対応できない一般法として の感染症は不備であるということが言えるのではないかと思います。今後もその規制が 必要な慢性感染症が出てきた場合、改めてこの特例というようなことがありますと、こ の感染症の不備が将来的に改めて問題になる可能性があるのではないかと思います。 次に、必要な項目ですけれども、これは繰り返しになりますので、簡単に言いますけ れども、政府の関与ということで、これは今の事務局の御説明で後退しないということ ですけれども、実際は地方で仕事をしていますと、地方の財政も厳しいですから、法令 の中にきちんと位置づけていかないと、なかなか対財政当局との交渉が難しいといった ことがありますので、実際ちゃんとした対策が地方でも担保できるような形にお願いし たいということです。 次に、定期健康診断。これは16年改正で改めたばかりでありますので、結果をちゃん と見ることなく特例というのもいかがなものかと思います。 外来の公費負担制度。これは今までの御意見があったとおりです。結核という疾患の 本来の性格上、是非必要ですし、ほかの感染症についても必要なのではなかろうかと思 います。特に今後、結核が経済的、社会的弱者に偏在化していますので、これは是非大 事な問題であります。 患者登録、訪問指導、DOTS。これも同様に、これは結核対策の根本ということで すので、特例という考え方は好ましくないと思います。 適正医療という考え方も今の感染症にはありません。医療の体制の確保はありますけ れども、適性医療はありません。患者の治癒率を低下して再発、多剤耐性の発生を防ぐ ということで、公衆衛生的にも非常に大事なことです。日本の多剤耐性は世界に比べて 低いレベルにいるのも、これまでの適正医療の考え方が正当であって有効に機能してい たことを示していると思います。 実際は医療基準を策定すること。結核診査協議会の診査。それに伴う公費負担がセッ トになって実効性が確保されていますので、これらは制度上確保される必要があると思 います。 次に、命令入所と公費負担ということですけれども、今、入院から命令入所までの公 費負担の問題が非常に大きな問題ですけれども、応急入院制度を適用することによって、 患者が少ないところでは問題は小さくなりますけれども、大都市で患者数が多い保健所 は対応が極めて難しいということです。 これは現行制度で命令入所を緊急に出す必要を考えてみますと、多くの場合は、患者 は既に命令を発しなくても医師の説明によって入院しているのでありますので、改めて 命令を出す必然性は余りないのではないかと思います。むしろ患者の経済的負担を考え ているから、これが問題になるわけです。 したがいまして、感染病検証会議の提言にあるように、人権的な処置に限って公費負 担をするという考え方は改めて、公共保健の目的の存在する場合には強制の要素がなく ても予算措置を講ずるよう努力するとの原則を取り入れるという提言がありますので、 例えば、個々の患者さんの公衆衛生の必要性ということの入院基準をあらかじめ示して おいて、個々の患者さんの該当する期間について結核診査協議会における診査を経て公 費負担をするという制度がもしできれば、今のように月2回程度の結核診査協議会の開 催でも十分対応できる例がほとんどでありまして、数は少ないながらも医師の説得、説 明に応じないで感染を拡大させるようなことが危惧される患者さんにつきましては、応 急入院、勧告、一連の手続によって入院させて、感染を防ぐことができるのではないか と考えます。 これはまた同じような意味ですので、今、問題になっています非結核性抗酸菌という ことが判明した場合の公費負担の問題も解決することができるのではないかと思います。 こういった議論が起こる原因を考えますと、現行の72時間の応急入院、勧告処置、 10日ごとの延長というのは、入院程度が10日ぐらいで、年間発生が3けたという急性感 染症を想定してつくられている制度です。 結核の場合は慢性疾患の感染症で初めから10日程度の入院ということは考えられませ んし、必要な塗抹陽性患者数でも40倍近い疾患ですので、同じ制度で取り扱うことは最 初から無理ではないかという気がします。これは法律論的にはいかがなものかと思いま すので、是非法律家の先生の御意見をいただきたいと思います。 前回の審議会で課長の方から、3日に1回程度の診査会の開催で対応可能ではないか という意見がありましたけれども、現場では3日に1回程度では対応不可能という意見 が出てきました。すなわち、診査協議会の審議事項というのは入院期間の延長ですので、 72時間のいわゆる応急入院の終了期限直近に延長の必要性がある状態を確認することが 必須の業務であるということですので、入院後、十分な疫学調査を行って審査会を開催 し、十分に時間をかけて審査する必要がありますので、更に患者に対面して不服申立て の機会を受けるということですので、実際、毎日届出があれば、毎日開催が必要となる という意見があります。 7番目、潜在性結核感染症の治療については、結核対策として教科書にも記載されて いる治療法ですので、現在、治療法として個々の患者さんの発生予防というだけではな くて、感染源の発生を減らすという公衆衛生学的な便益も大きいわけですから、現在、 化学予防というのを患者さんということの別にして、今、29歳という年齢制限があるわ けですが、こういった医学的な根拠を失った対象を規定していること事態、世界標準か ら大きく外れているわけです。 患者分類につきましては、現行の法律は感染性のあるかどうかということを基準にし ていると思われますけれども、結核では主に治療の必要性から患者を決めていますので、 例えば、菌が検出されなくて症状がない、エックス線の検査のみで発見された患者さん というのは、感染性という意味からしますと、患者の概念に合致しない。あるいは今、 申し上げた化学予防をするような潜在性結核感染症という人については、今の定義では 無理ではないだろうかと思います。 次は、必要な議論をきちんとすることが大事でして、強制的な入院制度については必 要なことは確かであって、この感染症に繰り込みますと、手続規定は整うことになりま すけれども、多剤耐性の結核で治療法がないといった患者さんにつきましてはきちんと 議論した上で共通の理解を形成していくことが大事ではないかと思います。もし、感染 症の見直しの必要性を申し上げましたけれども、こういうことであれば十分な議論が必 要であると考えます。 それから、今、植田委員のお話だと思いますけれども、さきの結核予防法の改正で問 題のある点は早急に正さなければいけないということで、命令入所とか公費負担の問題 で同居者のいない場合の入院医療の確保、入院から入院命令までの公費負担、結核と疑 われて入院した非結核性抗酸菌症の公費等の問題、潜在性結核感染症の資料、それから 届出の問題ということは結核の蔓延防止上、非常に問題が大きいと思います。 BCG接種につきましても、実質上6か月に限るということですけれども、既に数日 前、報道にありましたけれども、市町村による対応の格差が起きていますので、今後デ ータが出ると思いますけれども、一部の市町村では接種率の低下が予想されています。 これは1歳までやってはいけないはずですので、もう一度改正していただきたい。 更に、これも意見が出ましたけれども、対策現場の意見を十分取り入れて対処してい ただきたいと思います。 最後に、結核予防法、統合の議論がされていますけれども、もし、この感染症法統合 についての問題があるということであれば、あるいは十分に時間をかけた議論が必要で あるということであれば、今、申し上げた大きな問題につきましては早急に対応できる よう、結核予防法の再改正ということも考えていただければと思います。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、次に川城委員。 ○川城委員 意見を申し上げます。 前回でも申し上げたのですが、日本でもいずれは結核予防法というのがなくなって感 染症法1本でいける世の中に早くなってほしいと思いますけれども、今の時点では今年 4月に結核予防法の改正が施行され、続いていろんな通知がたくさん出て、保健所を始 め、いろんな現場でばたばたしている状況において、今度は予防法の廃止だということ になると、何か安定感がなくて、信頼感がなくて、一貫性がなくて、ますます現場がば たばたするのではないだろうかという意味で、少し落ち着いてやっていただいた方がい いのではないかという、この流れ全体を見て感じます。 前回も申し上げましたけれども、今いろいろな委員がいろんな細かいことをおっしゃ って、ですからそういう現場を預かっている者たちの集まりである部会を1回開いてい ただいて、そこで細かく詰めていただいて、今日もかなり、前回よりも具体的な骨組み が提示されて、すごく努力されているのはよくわかりますけれども、それを更にもっと わかりやすく現実的なものにしていって、漏れがない、後退することはないというよう なことをお互い確認し合って丁寧に進んでいくのがいいのではないかと思っております。 もう一つは、結核菌をテロの原因菌だと、日本で取り込むのだということならば、取 り込むだけではいけないのだろうか。感染症法に書き込んでおいて、予防法はそのまま にして、様子を見ながら静かに廃止の方向に持っていくという、急がないで落ち着いて やるという方針は技術的に無理なのかどうかわからなくて素人っぽい発言なのかもしれ ませんけれども、そんな単純な疑問を頭の中に持っています。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、次に喜田委員お願いします。 ○喜田委員 結論から申し上げますと、法律をつくるときに感染症法というのは感染症 の法律でありますので、結核も感染症であるには違いないので、感染症法に結核予防法 を入れ込むということには基本的には合理性があると思います。 ただ、結核予防法を廃止して一本化するという議論は前からあったと聞いております が、そのたびにもう少し待とう、時間をかけようということになってきたのだと思いま すが、バイオテロを理由に入れるのは論理的でないと思いまして、結論だけ言うつもり だったんですが、結局、いかに合理的にこの各論の結核予防と対策が分かれるか、新し い法律に入れ込んだときにそれが図られるならばそのように努力して進めるべきかと思 います。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 その次に、木村委員。 ○木村(哲)委員 いろんな問題点が出てくること、例えば医療費の公費負担をどうす るのか、その他DOTSの体制だとか、定期健診をどうするかとかいろんな問題が出て きているわけですけれども、そういうものが新しい感染症法に盛り込まれたときにどう いうふうに保障され、あるいはそれが更にどういうふうに改善されるかというところを 十分に見極めたいと思います。 ただ、私自身が委員として見極めたいということのほかに、今お話もありましたけれ ども、結核部会など専門家の意見を聞いて、落ちがない、漏れがないということを十分 見極めてもらった上でスタートするのがいいのではないかと思います。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、工藤委員。 ○工藤委員 何回か申し上げておりますので、また繰り返しになってしまうかもしれま せんが、2つの理由がございます。 1つは、まだ結核予防法をなくしていい時期ではないのではないかということが1点 でございまして、これは資料3を、先ほど前田補佐が説明されましたけれども、まさに この数字そのものにあるわけで、我が国は結核予防法がもうなくなっていい時期ではな い。 それから、これは先ほど事務局の方からも御説明があったように、感染症法の中でさ まざまな特例がくっついてきて、これは感染症法にとっても大変不幸なことで、こんな 特例だらけで、ばんそうこうを張ったような法律ということをやらざるを得ないという のはやはり時期尚早なのだと思います。 参考資料2に、先ほど御説明がありました、意見及びこれに対する当局の見解という ので、当局という言葉はおかしいのではないかという高橋委員のお話もございましたけ れども、この12ページに「厚生科学審議会感染症分科会」、まさにこの分科会の議論と 書いてありますが、これは議論という言葉は間違いでありまして、これは分科会の意見 です。7月26日付の意見として厚生労働省においては結核の制圧に向けて所要の施策の 推進に努められたいとして以下記載されている第3項がここの内容でございますので、 これはこの委員会の意見が現在の結核の状況を踏まえると将来的な課題であり、統合が 現時点では時期尚早であると考えるというのは平成14年のこの分科会の意見です。 これがわずか3年でひっくり返っていいという、それだけの実際の変化をもたらした とは思わないのです。これに対する御説明が、当局の意見というのが4行書いてござい ますが、こういう議論はああ言えばこう言うというような議論で、これは平成14年でも 通った議論でありまして、そういう議論を含めて、この分科会は結論を出しているわけ ですから、そして、この4月に、わずか半年経たない前ですよ。50年ぶりの予防法の大 改定を行ったばかりです。そういう中で、今度は廃止だというのは一番重要な行政に対 する一貫性、それに対する信頼度というのが国民の側に失われることを一番恐れており ます。そういう意味で、私は避けるべきだということで、やはり手続上もバイオテロは バイオテロ、結核対策は結核対策、これはちゃんと分離してきちっと議論しないと、何 かバイオテロの議論をするのかと思って伺うと、予防法廃止の議論だというような審議 のやり方といいますか、事務局の御準備なさったやり方も含めて、やはり真正面からき ちっとした議論をやられるように、私は今回、余り焦るということは本当にやめられた 方がいいと思います。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 次は、相楽委員。 ○相楽委員 私も、結核の専門ではございませんので、私が気づいた点を申し上げたい と思います。 最終的に申しますと、結核予防法を感染症法に統合するというお考えには私は賛成で す。しかし、今回のように短い期間でいろいろ問題がある中を統合するというのは問題 があると思いますので、それはもう少し待った方がよろしいのではないかと思っており ます。 内容につきまして、何点か申し上げたいのですが、病原体の分類のところで多剤耐性 結核菌をCに分類されておりますけれども、これも先ほど専門家の御意見がございまし たように、これだけたくさん多剤耐性結核菌があって、また潜伏期間も長くて、いつ発 症するかわからないというような状況でCに分類するというのは余り意味がないのでは ないかと思っております。 DOTSの件でございますけれども、私、HIVの診療にも関わっておりますが、や はり患者さんに一番大切なのは、経済的な支援と人的な支援というのが一番大切という ことを身にしみて感じておりまして、入院期間を短くするということであれば、その後 の経済的、人的な支援をきちんと与えるということが結核対策をうまく達成できる道で はないかと思いますので、そこの支援につきましてきちんとできるように図られていた だきたいと思っております。 それから、先ほどから応急入院期間についていろいろ御意見がございましたけれども、 これは現実の急性感染症であっても72時間という応急入院期間は問題がございます。ま して、結核のように非常に診断まで時間がかかるとかというような病気の場合には、こ の応急入院期間を72時間にするというのはいろいろ問題があると思いますので、もう少 し考えていただきたいと思っています。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 その次に、重藤委員。 ○重藤委員 資料の2ページですけれども、既に皆様おっしゃっていますが、今回の全 体に係る意見としてやはり手続と議論、両方足りないのではないかと思います。その結 果として、検討の時間も足りない。 今日、私の肩書きに「日本結核病学会治療委員会委員長」とわざわざ入れております けれども、今日、参考人として長尾先生にも来ていただいていますけれども、学会とし てもなかなか議論がないまま、私たちの意見として出している。委員会の委員長という ことで、ここに結核病学会の顔を出させていただきました。 全体を見て、結局時間がないので、細かいところまで私はよう検討しませんので、以 下に示します問題点を特に指摘しております。 治療に際しての入院の問題と医療費の問題です。入院に際しましては、この急性感染 症と結核という慢性感染症、特に結核の中でもいろいろな状況がありますけれども、非 常に難しい多剤耐性の患者さんまで含めた入院への対応というのは本当にじっくり検討 しなければいけない。しかも、私はまさに現場の人間と思って話しておりますけれども、 現場の人間ではわからない法的なこともすり合わせていくのがこの会ではないかと思っ て、法的なもの、行政的なもの、全部もう少し検討が要るのではないかと思います。 2ページ目の措置入院なのですが、私が一番懸念しておりますのは多剤耐性の患者さ んというのが今回テロというので浮かび上がってきていますけれども、多剤耐性の患者 さんで急性感染症にはまずないと思われます。一生排菌、感染性がある患者さんの扱い について、今日の資料にも対応が書かれていましたけれども、やはり相当心配なものが あります。 4ページ目ですけれども、公費医療に関して、結核に関しては治療全部がやはり公衆 衛生学的にも社会にも必要なものであって、医療費も全部含めて、特にDOTSをする わけですから、DOTSが入るということであって、治療全体をすべて公費負担にすべ きであると思います。 参考に、いろいろ具体的な事例、これはかなり何人かの患者さんをドッキングしてス テレオタイプに書いておりますけれども、急性感染症を扱っていらっしゃる先生方、そ れから法律家の先生方に結核という病気のイメージをつかんでいただきたいと思って、 いろんなパターンを入れております。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 次に、澁谷委員。 ○澁谷委員 私は、まず結核予防法そのものを改正するというのが筋ではないかという 立場です。もう一つは、テロの対策が必要であれば、その感染症の部分をさわればいい というふうなスタンスから現場の保健所ということでもお話をしたいと思います。 やはり、まだ現場では対応困難な事例が数多くございます。まだ15年や20年、この結 核対策というのは非常に重要な位置を占めるだろうと考えております。この審議会に出 させていただいて、いろいろ皆さんの御意見を聞かせていただいております。そして、 事務局からも御説明をいただいておりますが、なかなか私自身、事務局の説明では納得 ができない点が幾つかございます。 まず、結核予防法を廃止するという、一つの法律がなくなるということに対して国民 がどんな感情を持つだろうかということでございます。事務局は、これは偏見というこ とでいい作用なのだと御説明されたわけですけれども、私は行政におりますので、やは り結核対策の後退を国民に印象付けると感じておりますし、また国際的にもこれはなか なか説明して理解を得ることが難しいのではないかと考えております。 現実に読まれた方もあるかもしれませんけれども、BCG未接種の1歳未満児への対 策を何もやっていないと言っている自治体が4割ほどあるというようなことが報道され ております。実際に結核対策というのは少しずつ目を離していけば交代してくる可能性 が高い、まだまだそういう疾患だと考えております。 阿彦委員が先ほど詳細に述べられましたけれども、結核の対策は特に治療が予防にそ のままつながるという、現場では非常に治療の問題というのが大きいわけでございます。 医療費のことにしても、事務局が考えている以上に影響が大きいと考えております。 それから、テロ対策ということで、今回出ていたわけですけれども、やはりこれもな ぜ結核菌なのだということの説明がまだ納得ができていない部分がございます。むしろ、 私は結核菌をテロの対象にするというのは偏見を生むと考えております。 どうしても、把握をしたいということであれば、なぜなんだと。届出だけ、あるいは 報告だけを受けて国が把握をしたいということであるなら、それだけでも十分ではない かと思うわけです。耐性菌と、そのほかの結核菌というふうに分けてわざわざランクを 付けるということ、しかもCはA、Bと同じように輸送の規制まである。こういうとこ ろがやはり理解できない部分です。 したがって、私は必要であればテロ対策で感染症法の部分を改正し、結核予防法は結 核予防法で不備がある部分を改正していくのが筋ではないかと考えています。 そして、特に結核の場合は、例えば2年ごととか1年ごとに評価の見直しが必要なこ とがあれば改正するということをやはりどこかにうたっておいていただかないと、何も 評価のないまま進んでいってしまう、あるいは問題があっても改正がされないという状 況が起きてくるのではないかということも懸念をしております。 前回も申し上げましたけれども、やはりプロセスとして結核の専門家の方々の会を開 いていただいて検討するというような機会がないというのもやはり不思議な会だと思っ ておりますし、阿彦委員が先ほどちらっと言われましたけれども、15日の毎日新聞に書 かれましたように、もう結論は決まっているのだというようなことであるなら、本当に どういう改正が必要なのかというもっと丁寧な議論や詰めが必要ではないかと考えてお ります。 私の立場では、結核予防法そのものの不備を改正するのがまず先ではないかと考えて おります。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、白井委員。 ○白井委員 余りまとまらない意見になるかと思うのですが、私も自治体の現場として 以前より懸念を申し上げておりましたが、今、感染症法の中に結核予防法が統合される ということで、結核の名前がなくなるということで、現場として、自治体の職員として、 公衆衛生の担当者として、またそれぞれの専門家について、結核をおわかりの方は何を すべきかということをわかっているはずだとは思うのです。ですから、このように名前 を変えてもということがあってもできることはするつもりであるということなんですが、 ただ自治体の取扱いの方がやはり名前が変わったということで、先ほども澁谷委員がお っしゃいましたけれども、国民の意識という中で取扱いが軽くなるということが懸念さ れます。 既に、私の職場というのは保健所ではなくて、保健所のブランチとしての区 役所の中にある保健センターなのですが、区役所の業務の中で結核対策というのはかな り優先順位が低いように取り扱われております。罹患率が人口10万人に対して60という かなり劣悪な環境もあり、西成区にも環境条件が悪いというような簡易宿泊所も抱えて いる地域なのですが、それでも区役所の仕事の中での結核対策、感染症対策もそうです が、余り大きくない状況であります。 そのようなことから、自治体がそこをもう少しきちっと自分たちの地域を見直して、 自治体がちゃんと負担を付けて頑張ってというような国の全体の方針になるのかもしれ ないのですが、そこで法律の位置づけが弱くなると、やはりその根拠も難しくなるので はないかと思っております。 このような患者の多い大都市の一部として「結核審査協議会」というのは神戸市、大 阪市にも、保健所が1か所になっておりますので、年間患者数をどういうふうに処理し ていくかというような状態にはなっているのですが、毎週行いまして、大阪で100件余 り、神戸でも毎週40件余り、それを欠かさず52回ぐらい行っているのですが、その中で 人権擁護の意味で72時間を限度とするというような審査協議会を設置になりますと、や はり3日に一遍でもできないということになります。 今、審査協議会での審議の中では、人権の立場の方も入っておりますので、そういう ような位置づけもできてはきているのですが、今、一般医療の外来の診断についても、 特に専門家が治療をしているというわけではございませんので、一般医療の先生方の診 断・治療についてのアドバイスということを審査協議会で行っております。それが人権 擁護という意味とはちょっと違うようなこともしている中で、法律ができて、72時間以 内にやらなければいけないといいますと、うちのような自治体では毎日やらないといけ ないと思いますけれども、臨床家の先生の御協力を得ることが無理になります。頻回に 開かれて参加していただけるということでアドバイスの回数が多くなればいいのですが、 それは実効性が難しいということになってくるような気がします。 どうしても開くということだけでの事務的な手続を形骸化することでは回していける かもしれませんけれども、それではようやくうちの方も審査協議会の充実強化という中 でやってきた中を崩すことになりかねません。 また、法律ができますと、やはり自治体の公務員として、特に事務職の方になるかと 思うのですが、結核対策、事務職も一緒にやっているわけですが、制度を守るための、 法律のための仕事ということが増えてくるかと思います。そうなると、やはり患者さん へのケアとかDOTSということについての対応がおろそかになるのではないかという ような危惧もございます。 また、感染症全般について、類型化について問題がいろいろ指摘されておりますけれ ども、2年ごとに見直しということを繰り返していくということもあるかと思いますけ れども、何かきちっとした基礎研究をやはり充実させていただかないと、何か思いつき でいろんな類型に入っていくような感じがありますし、今、感染症の研究というのが俗 人的な専門家の先生方にお任せしているような状況もあると思いますので、やはり国と しての研究体系ということをきちっとつくっていただくことも必要かなと思っておりま す。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、次に3人の参考人の御意見も伺いたいと思います。最初に、光石参考人お 願いいたします。 ○光石参考人 前回、意見1から意見6を申し上げました。 今日は、意見7から意見10を補充したいと思います。それというのも前回いろいろな 御質問、御意見をいただいて、重藤委員からは大変大事な資料も送っていただいたりし て、いろいろと宿題を抱えた形になりました。 私は何で意見を補充するかという理由として、1つは多剤耐性結核の問題と公費負担 の問題の2つに対して、どう直面するかということを考えました。 ここにありますように、多剤耐性結核については、現在、感染性は必ずしも高くはな いけれども、今、適切な治療をやらなければ将来多剤耐性結核になる可能性が高いと。 そういう治療は可能だけれども、治療の指示に従わないような場合はどうするのであろ うか また、先ほどからも出ていますように、現在の医療水準では治癒不能というような多 剤耐性慢性排菌者の周囲に余り配慮できないようなケースをどうするか。 また、今、外来治療における公費負担というのをどう維持するか。これに対して考え ました。 まず「意見7」ですけれども、前回申し上げた意見2、つまり分類をきちんとやって、 今の感染症予防医療法という法律を改正すれば、問題1のようなケースでも、状況に応 じた介入措置を選択することによって対応が可能になるのではなかろうかというのが意 見7です。ただ、結核という病名によって感染症を分類することは避けると。 私が意見2で列挙しましたファクター、リスクの性質であるとか、期間であるとか、 蓋然性とか云々というのを挙げましたけれども、それで十分かどうかは検討することが 必要だと思います。 ここに参考のために「基本問題検討小委員会」で医学作業班が作成した結核について の再評価の基準があります。基準はここに書いたとおりで、感染力5、重症度2、予防 方法の有効性4、治療方法の有効性2。 結局、必要な措置としては、隔離2、就業制限、接触制限、接触者調査、報告という ふうに分類されています。 だから、この再評価がこのままでいいかどうかは検討すると思いますし、特に治療方 法の有効性などについての見直しが必要なように、私も素人ですがちょっと感じます。 また、リスクの期間というファクターを重症度の中での評価に取り入れてしまうこと で、処理できるのかどうかという問題があるように感じます。 「意見8」として、結局、介入措置というものは患者さんの人権への負担という点か ら考えますと、一番居住移転の自由とかというのに対する厳しいのが入院命令というこ とになると思いますけれども、そこへ行く前の定期健康診断であるとか、接触者健康診 断であるとか、患者登録であるとか、家庭訪問指導、あるいは治療勧告・命令、家庭内 分離home isolation勧告・命令をやはり新設する必要があるのではなかろうか。結局、 極端な入院命令にすぐいってしまうというのは、やはり負担が大き過ぎるのでなはいか なと。 ただ、そうしますと問題2のケースなどに対応したいと思って考えたのですが、ホー ムレスの方々のことを考えますと、これは現状のままではどうすることもできないだろ うと。やはり国か自治体が責任を持って住居等を提供することが先決になって、その上 でホームレスの方々を、場合によっては措置が必要なケースもあるのかなというふうに 考えました。 「意見9」ですが、前回の基本原則意見4の中で言った(1)と(2)を補充し たいのですが、結局、より制限的でない他の選び得る選択肢という原則というのがあり ます。less restrictive alternativeといいますが、結局、介入措置をなるべく取らな いで済むようにするには、例えば食料とか子どものケアなどを行政が提供をするという ようなことを行うことによって、それではやりましょうということで、強制的なことが 必要でないということも起きてくると思います。あるいは、DOTを提供することを認 めるとかです。 だから、こういうふうに段階的な選択肢を選べるようにするということも、原則とし て規定する必要があるのではないか。 意見4の(2)というのは、これはいわゆる最も制限的でない他の選び得る手段という least restrictive alternativeという原則ですけれども、例えばDOTを開始する前 に は、当然インフォームド・コンセントを得るということを明記するというようなことが 原則の中に入ってくるかなという気もします。 意見9のcとして書きましたように、これはハンセン症検証会議のときの提言の中に も入れましたけれども、あれは予算をどうつけるか、つけないかということですけれど も、これはパブリックヘルスの目的がある場合には、強制の要素がなくても、強制措置 の場合には、人権に対する負担の質や程度に対応させて、公費負担を認める原則という ものを感染症予防医療法の大原則として打ち立てるということが必要ではないか。それ が意見9です。 「意見10」ですけれども、これらを法律のレベルで残すとしても、やはり結核のみに 当てはまるかどうか。これは今の法体系の中では、結核予防法だけにしかない制度が幾 つもありますが、ただ、場合によっては慢性のいろいろな感染症において起こってくる 可能性もありますから、そうするとやはり経過措置というような形で処理するのは、限 界があるのではないか。やはり、法の条文自体がちゃんとそういう原則を確立するとい うことが必要ではないかということが意見10でございます。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 次に、長尾参考人、お願いします。 ○長尾参考人 結核病学会でございます。私は、委員のみの配布資料一覧というものの 14ページを参考にしながら、お話させていただきます。 前回10月5日の審議会に、参考人として意見を述べさせていただきましたが、その最 後に結核病学会として正式な声明を出しますというふうにお話をいたしました。 以後、結核病学会として検討を行いまして、更には日本呼吸器学会にも働きかけまし て、共同で意見を述べられればということで、これまで検討してまいりまして、本日こ こに私どもの日本結核病学会と日本呼吸器学会の共同声明を出すに至りました。 先ほどまでの議論は、廃止するならばという仮定の審議、また非常に各論的な意見も ございましたけれども、学会としての若干高いところの意見ということで、今日は述べ させていただきます。 ここに1〜10までの項目を掲げてございます。 まず1は、先ほどからの議論にありましたように、結核の緊急事態宣言ができて、そ れを受けて改正を今年4月に行ったと。行ったばかりで、今この時期に急遽廃止をする というのは、余りに異常ではないかと。余りに無責任ではないかというような観点で1 つ指摘をいたします。 2番目は、余りにも今の審議は急速で、十分な審議が尽くされないうちに進んでいる ので、余り結論を出すのは時期尚早ではないかということでございます。先ほど行政へ の信頼が失われる旨の意見もございましたけれども、まさに同じことを申しております。 3番目は、今、罹患率が先進国の中では非常に高いということでして、日本では今3 万人の罹患者、2,000人を超える死亡者がいるようなとき、この重症度、感染性から見 て、二類感染症の総数をはるかにしのいでいると。このような状況は、米国の5倍ぐら いの感染率等に当たりますので、この数値をもって、むしろしばらくは単独の法を維持 することが不自然ではないということを強調したいと思います。 4番目は、やはり慢性の経過を持つ疾患でございますので、適正医療というものの担 保が必要であると。そのためには、やはり行政責任というものが十分にあるのだという ことで、今やっと軌道に乗っております日本版DOTS等のシステムを後退させてはな らない。これを廃止することによって、本当に真に充実、強化するものであればいいわ けなんですけれども、逆に先ほどからの皆さんの意見でも、やはりそこに非常に大きな 懸念を抱いているわけであります。感染症法にないものを、経過措置等でやっていくこ とはやはり無理があるのではないかということであります。 5番目は、今の日本の結核量、感染率だと、国際的に見ても行政責任というのは、ま だまだ続けていただかなくては困るということであります。 6番目は、定期健診のことですけれども、感染症法にはないと。結核の方では、一律 集団から重点化した定期健診をうたったばかりでありまして、まさにそれが今年から始 まっているところで、経過措置ということでいくと、何かやはり心配が薄れてしまうの ではないかという懸念がございます。 7番目は、もろもろの経過措置というものがあった場合、経過措置というものとほか の関連の法令と整合する場合に、片方は、経過措置で法規制というふうにおっしゃいま すけれども、やはり経過措置というものとほかの法律との整合というのは難しいことが あるのではないかというふうに懸念をいたします。 8番目ですけれども、今年4月の改正法によっては、いろいろな困難が出ているとい うことですけれども、それは現行法の柔軟な運用で対応できるのではないかというふう に考えております。 9番目ですけれども、これは先ほどからいろいろと出ておりますが「感染症分科会」 の中の「結核部会」での意見が一度もないというのは、やはりいかがなものかというこ とでございます。 10番目は、700名程度おります多剤耐性結核の患者さんに対する差別も、先ほどから 話題に出ておりましたけれども、やはり学会として指摘したいと思います。 もし、結核予防法というものがなくなったといたしますと、先ほどから話題に出てお りますように、やはり結核というものに対する意識が薄れてしまう可能性が十分にある というふうに懸念しております。 緊急事態宣言のときに、当時の厚生大臣が出した宣言の中には、やはり結核という言 葉、病気を、国民そして医療者ともに忘れかけていたからということがうたわれており ますので、今このような事態をまた起こすという懸念は避けていかなければならないと 我々は考えております。 結論といたしましては、やはり時期尚早であろうということで、これは決して反対す るわけではないのですが、将来的には勿論一本化するのですが、やはりしばらくは時間 をかけて、現行法でいくべきではないかというのが、私どもの学会の意見でございます。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、小林参考人、お願いします。 ○小林参考人 小林です。 今まで参加させていただいて、諸先生方が本当に我々患者のために御苦労もされ、そ してまたこれからも頑張っていこうという政府への激励も含めて発言されていることに ついて、大変感激しております。ありがとうございます。 そこで意見ですが、既に今の長尾先生からお話がありましたように、私どもも両学会 の声明というか談話と全く同じです。多分、同じような思いで意見を展開してきたと思 います。 私は、前回申し上げましたけれども、結核はもう治る時代になったと。私どもが闘っ た不治の病、死ぬ病から治る時代になった。このことにまず確信を持とうと。それは、 皆さん方、先生方も含めて頑張ってきたからです。だから、こういう改正はもっと進め ようではないかと。それが本来の私ども主張なのです。 ですから、不備な点がたくさん出されておりますが、そういう点も含めて本当の意味 でもっともっと結核をなくす、日本から結核をなくしていく、撲滅するという、言わば 当初の大命題に向かって頑張っていただきたいというふうに思います。 繰り返しますが、今日の2つの学会の発言といいますか、声明について全く同感であ るということを申し上げて、発言を終わりたいと思います。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 時間もあれですので、ここで10分間休憩にして続けたいと思うのですが、いかがです か。 それでは、ちょっとリラックスしていただいて、今43分ぐらいですから、53分ご ろまでの10分間です。 (休 憩) ○倉田分科会長 時間が来ましたので、あと1時間少ししかありませんので、また開始 したいと思います。 それでは、菅沼委員からお願いいたします。 ○菅沼委員 それでは、続けて意見を述べさせていただきます。 私は、結核の専門家ではありませんし、現場に勤めているわけではありませんので、 そんな生意気なことをとか言われるのかもしれないのですが、前回の法律家の参考人の 先生が、今の時代は人権の擁護の時代に入ってきて、名前を冠した法律はだんだんとや めていく方がいいようなことをおっしゃったように思いました。 感染症法と結核予防法の統合については、私個人としては両方を対比してみまして、 重複するところもあります。勿論、結核予防法でなくてはならないような部分もあるの ですが、それを1つの類の中に入れればある程度は統合は可能かなと、今までは前向き に考えて来ておりました。 細かいことは勿論いろいろございますし、これまでに今日の委員の先生方の御意見が ございましたけれども、やはり私もこの委員会にずっと出席させていただいている、こ の委員会はいろいろと活発な意見を申し述べる委員会ですけれども、これほど危機感を 持って委員の皆様方が、心配なさった意見ばかり述べるような事態はなかったと思うの です。 勿論、現場の先生とか、皆様いろいろな面から見て、やはり事務局が必ず条文化しま すとか、前向きに考えますとか言っていただいても、それは勿論信用するのですが、細 かいところで、どこかで食い違ってくるんではないかという御心配はいっぱいあると思 うんです。ですから、2週間では無理だと思ったのですが、やはり、もし結核予防法が 廃止になって、感染症法に統合されたという場合には、こういう法律になりますよとい う条文を全部つくって、皆様にお見せして、そして個々に細かいところで、これは違う、 あれは違う、ここはこうしなければ、ここに公費を入れなければいけないということを やっていただかないと、やはり短い時間でもあるし、どうしてもこの委員の先生方はと ても納得なさらないんではないかなと思うんです。 ですから、皆、今までの委員の先生方の御意見も非常に手続が足りないとか、時間が 足りないというのは、やはりそういう目の前にちゃんとしたものを見て、納得をするま での時間というのが、やはり今までは1年も2年も結核予防法の改正にもかけてまいり ましたので、それが長ければいいというものではないと思うのです。3か月も4か月も 放ったらかしで、ぽっとということもございました。 でも、短くてもよろしいのですが、やはりそういう例文をつくるという時間は非常に 大変だと思うのです。それで時間が足りないということだと思うので、私個人の意見と しては、もし事務局が、どうしても統合ということを考えたいのであれば、統合したら こういう法律というものの、まずたたき台を委員の先生にお示しいただいて、それでよ いか、悪いかというのを考えていただくのが、最初のステップではないかと思っており ます。 勿論、個人的には結核を2類に入れるということだったので、ポリオ、ジフテ リアとかと少し違いますので、2類をAとBまたは1、2と分けて、それで結核は独自 にして、そうしますと特例というばんそうこうを張るようなことではなく、2類のBの 結核に関しては結核予防法の大事な部分を全部入れるとか、それからもっとバージョン アップした充実した内容にするというようにしていったらどうかなと思ったんですけれ ども、本当にまだ委員の先生方の意見を聞いていると、時間が足りないなという気がい たします。 以上でございます。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、次に高山委員お願いします。 ○高山委員 私も都立病院の医師で結核の患者さんを診ているわけでもありませんし、 公衆衛生で結核対策に関与しているわけではありませんので、そういう者の意見として お聞きいただきたいと思います。 結核予防法を廃止して、感染症法に統一するという件に関しましては、将来的にそう なることに反対ではありません。 ただ、皆様方からたくさん意見が出ておりますけれども、現在の感染症法では急性疾 患に対応はできても、慢性疾患には十分な対応ができないのではないかという心配が出 されておりますので、その辺、急性疾患と慢性疾患を分けて、きっちり対応できるよう な変革が必要ではないかと思います。 その前に言い忘れましたけれども、結核予防法が改正されたばかりで、今、なぜテロ 対策を主な理由として、結核予防法を廃止して感染症法に入れなければならないのかと いう理由が、私個人としてはどうも理解ができておりません。 あと、現場の先生方から、いろいろと意見が出されておりましたけれども、やはり人 的な面、それから費用的な面での担保がどういうふうに取られるのかというのが明らか ではない。今、菅沼先生がおっしゃいましたけれども、そういったようなことを、やは り実際に現場を担当されている方々の意見を聞いて、その対策は本文の何条に入るとか、 あるいは本文には入れられないけれども、実施規則あるいは政令でこういうふうになる のですというところを明らかにしていただいて、現場の方々が納得できるようにしてか らでないと、ちょっと結核予防法を廃止するのは難しいのではないかと考えています。 それから、患者さんの差別のことですけれども、確かに結核という病名が法律に入る のは差別だと、それ自身私は余りよく納得できないのですが、更に多剤性結核菌のラン クを上げて特別扱いしますと、やはり多剤耐性結核菌に侵されている患者さんの差別に つながるのではないか。そちらの方を心配しております。 あと、BCGの問題ですけれども、BCGが予防接種法の中に入って、ほかのワクチ ンと一緒にいろいろ対策が考えられるということは、私はいいことだと思います。 ただ、それに関してBCGワクチンは結核予防のためのかなり重要な部分を占めてい ると思いますので、それに関して、その議論は一切予防接種関係のところにお任せして、 ここでは何もしないというのはちょっと納得できません。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、竹内委員お願いします。 ○竹内委員 何年か前に、寄生虫予防法というのがあって廃止されてしまったので、そ のときには学会の意見もろくに聞かず、何もリクエストもなく、勝手に廃止されてしま ったので、今、その恨みを晴らすわけではないのですが、まず、私は10月5日はちょ っと海外出張で出られなかったのですが、9月からのプロセスを見ていますと、後ろに いろんな方がおられる前で申し訳ないですけれども、何か足元が緩いので、9月29日 の会議のときは東京新聞が結核予防法統合化と第1面にどんと出ていたし、何か非常に 足元が危い。明確な意志、要するにタクティクスが委員に伝わっていないという欠点と いうか、デフォルトになっていると思うんです。 私は、前回のときにいなかったので、後で資料をいただいて、今日も資料があります けれども、厚い中の「生物テロを含めた人為的感染に対処できる総合的な感染症対策に おける病原微生物の管理体制(案)」というところで、まずあのときにマラリアとか、 そんなものをテロで使うばかなテロリストはいないということで外してもらったのはよ かったのですが、クリプトスポリジウムを入れてもらったのはよかったんですが、私は てっきり結核も外れているのだと思って、後で資料を見てびっくりしたのですが、まだ 入っているなと思って。 これが、結核予防法を感染症法に統合するたった一つの理由であれば、それはちょっ と余りコンビーシングではないというのが一点。 それから、話はあっちこっち飛びますけれども、今度は10ページで総合的な感染症対 策の概要というので、これは事前の準備、前々回のときは事前の準備しか書いていない じゃないかということで、そうしましたら、今度は緊急時を直接執行とか、入院措置と か、物件に関わる措置とか、消毒、交通遮断等々と入って、等というのが付いているか らすべて考えているのかもしれませんけれども、ただこの間は時間もなかったので、別 にそのままにしましたけれども、例えばリスクコミュニケーションの実施主体を厚労省 の中でどうつくるかと質問したら、前田さんが、今、研究班をつくらせて検討しており ますと、こういう審議会の分科会でそんな返答はないのはないかと。 それは、研究班から出てきた結論をそのまま取り入れてバイオテロに関するリスクコ ミュニケーションの実施主体を厚労省内部につくるのかと。ではほかとの省庁との兼ね 合いはどうなのだと。特に小泉純一郎との兼ね合いはどうなるのであろうというのは、 全く書き込まれていないし、多分考えてもいないだろうと思うのですが、やはり本当の 大型のバイオテロになったら、多分リスクコミュニケーションの実施主体なんていうの は厚労省ではなくて、多分首相なので、条文の概要を読んでも、そういうところまで考 えているようにはできていない。 だから、皆さん結核のことばかりおっしゃっていますが、私は、むしろそっちの方が 気になっているので、その辺のところは、やはりもう一回条文にする際に、他省庁との 連携とか、内閣府の中には安全対策管理、テロに関する集中した本部があるので、そこ との連携とか、そういうのはきちんと書き込んでもらいたい。 だから、厚生労働省に関しては、これで十分だと思われるかもしれませんけれども、 バイオテロというのは、一厚生労働省の感染症法が対応するだけの問題ではないので、 その辺の認識は、もう少しきちんと持っていただきたい。 それから、結核予防法を感染症法に統合するというのは、私は基本的には賛成です。 しかしながら、それはいわゆる感染症の行政対応する流れとしては、ある意味では自然 の流れだろうと思います。 しかしながら、やはり学会が2つもそろって理事長名で、こういう共同声明を出して いるのと、現場の先生方が、これは嫌だ、あれは嫌だ、これもだめだ、あれもだめだと 言っているのは、やはり進め方として、タクティクスとして、やはり余りうまくないと。 やはり、これはもう一回タクティクスを練り直して、どういう形にするかは知りませ んけれども、だけど一旦ステップバックしてタクティクスを考え直して前へもう一回出 るべきではないかと思います。 先ほどいろんな方が意見を申し上げたんですが、私ごときが結核について何を申し上 げることもないんですが、やはり一番私がこれだけはと思ったのは、研究をもっと盛ん にしてくれという御意見がどなたからかありましたけれども、まさにそうで、結核の遺 伝子をクローニングして、ワクチンのキャンディデートだというのは、新興・再興感染 症の方から山のように出てきますが、これはそうではなくて、社会技術面での結核の扱 いに関して問題が提起されているという面が多いので、そういった面で、HIV・エイ ズもそうだったんですが、社会技術面での対策をもう一回再構築するという研究という のは、多分必要なのだろうと思うのです。 それは、何というか、緊急研究とか、いろいろお金もあるのでしょうから、その辺で 対応して、やはり少なくとも結核病学会と呼吸器学会が一応賛同できるような案をつく っていただきたいと思います。 やはり、余り拙速にやると、多分かえってまずいのだと思います。もう一回タクティ クスをきちんと整理し直して、やはり押さえるべきところは押さえてやるのが筋だと思 います。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、丹野委員お願いします。 ○丹野委員 29日のときに最初にお話があったのは、テロの未然防止ということで、病 原体の管理をきちんとやると。それを今国会に出さなければいけないので、それに合わ せて結核予防法もということだったかなと思ったのです。 病原体の管理につきましては、大変重要かなと思っております。そのときにもちょっ とお尋ねしたのですが、これはテロの関係だから、国だけが把握しているという話をち ょっと伺って、でも現実にはBテロは必ず地域で発生しますので、感染症として必ず出 てきますから、私は病原体については、各自治体がきちんと把握できるような体制は是 非取っていただきたいし、第一報は必ず保健所に行くと思っておりますので、そこのと ころはお願いしたいと思います。 先ほどからも話が出ておりますけれども、多剤耐性結核菌につきましても、この視点 で必要なものを入れるということで、ある程度病原体の方については、それでできるの かなと思っております。 それから、結核予防法に関しまして、これにすぐ統合するというのは、やはり私は現 状ではちょっと無理ではないかと思っております。 確かに、今、法律というのは、新しくできるものというのは、不備のまま、未熟のま ま結構成立して、それからきちんと肉を加えていくというのが結構ありますけれども、 これは今まできちんとできていた結核予防法を廃止するということですので、やはりそ んな短期間で穴を埋めて、そしてきちんとしたものができるとは思えませんので、やは り結核予防法をきちんと見直しするということが大事かなと思っております。 実際に法律の名前がなくなるというのは、趣旨は必ず入っているといっても、最初の 数年間はある程度理解して、みんな進むのでしょうが、必ず後退すると思っております し、それから保健所における保健師等の人の配置、それから財政的なものというのも必 ず削られる方向で行くと思います。 先ほど遺伝子解析の話もありましたけれども、現在、少し結核につきましても遺伝子 解析を進めて、集団発生のときの対応をどうふうにしていったらいいかというのが、今、 少しずつ逆に進んでいるところです。そこはとても重要なところだと思っておりますの で、実際に衛生研究所として、菌の遺伝子解析をしますと、最初は1つの集団かと思っ ている中に、幾つかのパターンがあって、そこがハイリスクグループだけかと思うと、 そうでないところというのも幾つかあります。 ですから、やはりそこのところは、法がなくなるとかなり後退していくと思いますの で、もう少し慎重に考えていただけたらありがたいと思っております。 そういう意味で、今国会に出すということで急いでいるとは思いますけれども、テロ の関係の病原体というところだけとっても、かなりきちんと詰めていかなければいけな いものがあると思っておりますので、そこをまず出して、そして結核予防法については、 やはり部会等できちんとたたいていく必要があるかなと思っています。 現状では、例えばDOTSをやるといっても、人材といいますか、人の配置がなかな か保健所にはされません。これは総務省から人の削減というのがあります。大蔵省は財 源の削減、そういうものがどんどん来ますので、法律がなくなれば、これは必ず実際の 現場では対応ができなくなっていくという可能性があると思っています。 ですから、そこら辺は、きちんと対応を考えて検討して、将来的にはここの前の審議 会のときにも、平成13年でしたか、平成14年でやったときに、将来は統合もいいだろう というのがありますけれども、今はきちんと結核予防法を整備していくということが大 事ではないかと思っています。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、次に廣田委員お願いします。 ○廣田委員 長いこと議論されたといいますか、話題になってきた両法の統合というこ とが今回バイオテロということで、これに絡めて出てきたわけですけれども、バイオテ ロ絡みでこの話が出てきたというよりも、私は恐らくバイオテロということで、各省庁 が同時に動くことによって、長年議論してきた両法の統合が横並びで通せるのではない かというお考えもあるのではないかと思うのです。 恐らく、どんなに機が熟して、さんざん十分な時間をかけて法案をつくっても時間切 れで審議もされないとか、それで結局廃案になったとか、そういうことは当然あるわけ で、そういうことを考えて横並びですっと行けると、これはひょっとしたら本当にいい 機会であるかもしれないと。 そう考えれば、いつまで経っても、まだだめだ、まだだめだという状況というのは当 然あるだろうと思うので、それを考えれば、結核感染症の方で、こういう動きをされた というのは、私は合理性があるのだろうと思います。 私も職場の近くが西成で、さんざん患者を診ているわけですけれども、もし統合が進 むとして、今や治療が最高の予防と言われているわけですから、絶対に微塵も後退させ ていただいては困ると思うのは、登録と公費医療とDOTSです。この3本は微塵も後 退してもらっては困ると思います。 特にDOTSについては、予算と人員の強化が図られるという前進が絶対に必要だと 思います。 もう一つ私が感じますのは、2つが統合されたときに、統合によって結核対策にもい いし、従来の感染症対策にもいいというところ、ちょっと明るいものが見えると、もっ と安心できると思います。 私が思うに、1つは結核の登録制度みたいなものが従来の感染症にも何かに応用でき ないかとか、あるいはこれは当然そういう方向に行くと思うのですが、特定感染症予防 指針が結核についてもつくられて、なかなか結核が少なくならないところで、この予防 指針がつくられることによって周知が図られて前進するという期待を私は持ちます。だ から、そういったいいところがちょっと見えたらいいなと思います。 それから、条文を出してくれというのは、多分私は無理だろうと思うのですが、そう いったポイント、ポイント、例えば登録であるとか、検診であるとか、予防接種である とか、医療費の公費負担であるとか、そういった部分についての骨格といいますか、統 合したときの模式図みたいな骨格を示していただければ安心できる部分も出てくるので はないかと思います。 先ほどメディアの報道のことが出てきたのですが、すべてのメディアが一斉に同じよ うに書いているというのであれば別ですけれども、やはりこれはある記者の方がそう思 って、ある記事を書いたと冷静に考えて、余りそれに目くじらを立てる必要はないので はないかと思います。 以上でございます。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、深山委員お願いします。 ○深山委員 結核以外の感染症指定医療機関で働いている者です。 私個人としては、結核予防法という名前がなくなる行政的な重要性というのはちょっ と理解できないような立場におりますけれども、名称はどちらでもいいのかなと、感染 症法に入っても構わないのではないかと考えております。 ただ、勿論内容が問題なのであろうと考えておりまして、いろんな委員の先生がおっ しゃってくださったように、具体的に見せていただかないと、賛成していいのやら、反 対していいのやら何ともお返事ができないという段階ではないかと考えています。 まず、結核に対しても72時間とするつもりではないのであろうと思うんですが、そう いうことも全部健康診断等も含めて具体的に示していただければ、もうちょっと賛成か 反対か言えると思います。 そのほか、細かい質問、意見等に関しては、もう出尽くしましたので、繰り返しを避 けたいと思います。 以上です。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 では、松本委員お願いします。 ○松本委員 私は、医者でもないし、専門家でもないです。それでいろいろお話を聞い ていると、いろいろ出ているようなんですが、わからない。でもこれはあるかもしれま せん。 それで、地方を預かる身としてちょっとお話ししたいと思います。いろいろ御意見を 聞きながら、結核というのは最も大きな感染症ではないかなという感じを持っておりま す。 そういうことを考えますと、やはり十分な強化といいますか、対策関係をやって もらいたいという感じを持ちました。 それとともに、地方にとりましては財源問題なのです。それで、現在、BCG予防接 種関係においては、自治事務として一般財源を充てているわけです。それで運用をやっ ているわけでございますが、それで保護者からは費用を取っていないということで、公 費負担で対応をしております。 そういうことで、今後の問題として、今、盛んに三位一体の改革ということを言われ て、我々が提案したりなんかも、地方六団体でやっているわけですが、この件について 税財源の移譲関係はなかったのではないかと思うんです。 そういうことを考えますと、地方の立場といたしましては、今までどおり、やはり地 方交付税の中にこれを現在と同様に措置をお願いしたいと感じます。 この前も少し申し上げたのですが、生物のテロ対策、話を聞いていてびっくりしてい たわけですが、地方にとって、これがもしも起こった場合、これはできません。やはり 国で十分対応をしてもらうことを切にお願いしておきます。 それと、こういう場面で言うのは、ちょっと筋違いかもしれませんが、保健所の所長 さんたちもたくさんいらっしゃるものですから、常日ごろちょっと思っていたのですが、 我々の小さいときは、結核というのはあそこが結核、あそこの家庭が結核ということを 知っていたわけですね。それで医療関係の進歩によって、本当を言えば、結核はなくな ったという感じを持っておりました。 しかしながら、今、結核関係が大分話に出てきているわけでございますが、我々、町 役場あるいは事業所関係、検診関係で把握はできるのです。 しかしながら、住民が結核患者というのがわからないのです。それで保健師なんかは そういうことがわからないし、ときたま保健所の所長さんの方に連絡を取って、聞き合 わせをするのですが、絶対に教えてくれないです。町としては把握はできておりません。 そういうことで、把握ができれば町としても何かの支援といいますか、手助け関係、 また都会ではホームレスがいたり、我々のところもやはりそういうのがいます。駅舎の 中に泊まったり、そういうこと等を考えますと、やはり把握も幾らか必要ではないかと いう感じを持っております。 そういうことで、人権問題、人権の保護の問題、その範囲の問題、それから情報の公 開ということもあるわけですね。エイズというのは、これは絶対守らなければいけない わけですが、結核関係はある程度薬なんかでもなくなってくると、そういう関係ではあ るから、幾らかは町の保健師ぐらいには教えていただいたらなという感じがするわけで す。これはここで言うことではなかったかもしれませんが、そう感じておりますので、 ちょっと付け加えさせていただきます。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、南委員お願いします。 ○南委員 私は、メディアの立場ですが、ここにはメディアの立場の方がほかにいらっ しゃらないのですが、そのメディアを代表してということは、とても言えないので、個 人的な所管と国民の立場でどうかという視点で幾つかのことを申し上げたいと思います。 事務局の御説明で法改正といいますか、結核予防法を廃止して統合するということと結 核対策とは別だというのはよく理解できるんですけれども、やはり現実にこれだけ専門 家の先生方、それから自治体で直に患者さんに接している方々がこれだけ反対、もしく は危惧する声があるというのは、やはり過去にこの会議でも余り例がないことで、それ を押し切ってでもどうしても今というのが、私は個人的にはどうしても納得ができない。 何か事務局として、ここを今どうしてもこれをという何か核心的なおっしゃらないこと があるのかなという印象を受けました。 それで、先ほどちょっと廣田先生が言われたことが、それを読み解くかぎになるのか なと思いましたけれども、そういうことがもしあるのであれば、率直に御説明いただき たいと思います。 それから、国民の立場ということで言えば、テロというのは、結核予防とか、感染症、 特に結核というのは患者さんも非常に多いわけで、国民の言わば日常生活のレベルだと 思うのです。 テロというのは、非常に怖いですけれども、やはり非日常のことです。勿論いつ起こ るかわからない最大限の危機管理をしなければいけないことですけれども、この非日常 の危機管理のために、日常生活における医療や患者さんの生活というものをどこまで管 理していいのかということをやはり考えないといけないと思います。 それは、両方の重さを単純に比較するということはできないので、やはりそれは丁寧 な議論とか、各論にわたる議論をかなり丁寧にしないと非常にまずいだろうと思います。 やはりそれを一番直に感じていらっしゃるのは、現場の先生や臨床科の先生方ですの で、その声は最大限尊重していただきたいと思います。 最後に、人権という問題がよく出てくるし、私どもメディアもやはり人権擁護という ことをよく書くわけですけれども、最近の感染症や障害者や何かの議論の中で、私は誤 解を恐れずに申し上げたいのですが、人権を守って、基本的な権利である医療の権利を 失うということが間々あるのです。 これは、私どもも非常に注意しなければいけないことであるとともに、やはり行政も そこになかなか立ち入れない部分があるということも十分理解できますので、これはや はり国民のそういう現実への理解というものを求めていく必要があると思います。 非常に直接的な意見でなく、申し訳ないのですが、やはりこの議論はもう少し丁寧に 重ねる必要があると思います。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 次に宮村委員お願いします。 ○宮村委員 結論は、また後で述べたいと思いますが、私は微生物を扱っている基礎研 究者として、ちょっと別の側面からコメントを述べたいと思います。 今回の対策の概要というのは、生物テロを含めた人為的感染に対処できる総合的な感 染症対策として、それぞれの病原体をどう扱ってどう対応するかということが、まず第 一にやったのだと思います。 テロというのは、非常に悪魔の所産であって、私たちが予想できないわけです。予想 できることは、我々が日常使っている病原体、それから病院で病原体として排出される ような場合、そういうものをきちんとコントロールしておくということは、感染症の拡 大を予防する大原則だと思います。 したがって、ありとあらゆるチャンスをとらえて、いわゆる登録して病原体をコント ロールするという責任を持って扱うという大原則をやるいいチャンスだということは論 を俟たないのではないかと思います。 そのために、今、結核が俎上に上がって、多剤耐性菌をクラスに分けてということで、 芋づる式に前からの結核予防法での問題点を感染症法に統合することによって解決でき る点もあれば、逆にそこが未知数である点もあるということで、皆さんの満足がいかな いのだと思うのです。というのが私のコメントであります。 最終的には、結核予防法がいつの日にか感染症法に統合されて、それが具体的に結核 の予防に非常に貢献するという方向に行くのが理想だと思います。 ○倉田分科会長 それでは、次に山川委員お願いします。 ○山川委員 私は、法律家の立場から意見を申し上げたいと思います。法律家でござい まして、感染症一般の問題、それから結核予防や治療の問題については全くの門外漢で ございまして、先日来のこの会議での先生方の御意見を伺って、その御意見を前提にさ せていただいて法律家としての意見を申し上げるということになると思います。 私は、ここで問題になっている結核予防法と、それからまだ法律の全貌は明らかにな っていませんけれども、現在の感染症予防法を改正して、生物テロ対策の意味合いを兼 ねた、そういう新しい法律を改正によってつくっていくと。 この2つの法律については、それぞれ立法の必要性、それからそれを行うことの正当 性があるものと思います。 生物テロの対策については、これは厚生労働省だけの管轄ではなくて、恐らく法務省 や警察庁等もいろいろ対策を考える中での一環であろうと思いますので、これだけが生 物テロ対策の手段というわけではないと思います。 政府の生物テロ対策の全貌が、少なくともここでは見えておりませんので、私どもは ごく限られた厚労省の考え方を前提にして議論せざるを得ないと思うのですが、生物テ ロ対策のための特別立法が必要であって、それが正当であると、これは恐らく国民的に 議論が一致するところであろうと思います。 もう一つの結核予防法についてですけれども、ではこれが今、その必要性、正当性に ついてどうなのかと、これは先ほど来、先日来お伺いしておりますけれども、なお結核 が我が国最大の感染症であるということ。それから、対人口の罹患率というのが、国際 的にも先進国の中で最も高くて、先生方のお言葉を借りれば、恥ずかしいような高水準 にあるという2つの事実自体は、争いようのない事実であるのだろうと思います。 そうだとすると、現在の結核予防法は、強制入院等の点について、一部手続的にもう 少し人権保障の観点から改正を考えるべきではないかという議論もあるだろうと思いま す。その限りで、一部改正が必要なのかとは思いますけれども、予防治療、その他の対 策を含めて、結核予防法自体が、もう存在意義を失ったと、これは廃止してよろしいと いう段階でないことは明らかであろうかなと思います。 それを前提にいたしまして、事務局の結核予防法を、この際テロ対策立法の立案に併 せて廃止し、その中に統合したいと。その統合によっても結核対策を新しく改正される 法律の本体条文であるだとか、附則であるだとか、それから省令や告示等によって後退 させることはないとおっしゃっておられます。 ただ、この点は具体案が示されていないこともありまして、条文を今すぐ示せという のは、内閣法制局等とのすり合わせの関係もありますので難しいと思いますけれども、 そこまでには至らないにしろ、もう少し具体案を示してほしいという意見が先生方から いっぱい出ておりましたけれども、これが出ていないこともあって、結核予防法を廃止 し、新しく改正される感染症予防法に統合するということの必要性についての説明責任 といいますか、立証責任がどうも伺っていると十分に果たしているとは思えない。 結核予防法のように、我が国の戦後の感染症予防の中で大きな役割を果たしてきて、 今なお単体の法律としての必要性についてだれも争っていない、単体といいますか、内 容自体についての必要性はだれも争っていない、そういう法律を大きく改正しようとい う場合には、改悪になっては勿論困るわけでありまして、改正によってよりよくできる のだということについて納得させる事実を示し、説明していただく必要があろうかなと 思うのです。この点が特に欠けているのではないかと。改正によってよりベターなシチ ュエーションというのはどうやって出てくるのかというのが不明であるという点が治療 や予防に携っている現場の先生方、行政担当の方々が一番不安に思っておられることで はないかと思うのです。 更に、感染症対策によって、急性の感染症対策によって慢性疾患である結核に特異な 問題点が十分にカバーできなくなるのではないかという御不安についても、やはり事務 方の説明は説得不十分、立証責任不十分という感じを拭えないのであります。 先ほど、日本結核病学会と、日本呼吸器学会の2つの学会の共同声明を拝見いたしま したけれども、日本のこの問題に関する一番責任ある団体の共同声明ということである としますと、私はこれを拝見しまして、非常に説得力があるものだなと思いましたけれ ども、このようなものが出てきていて、この不安を払拭できないということは、厚労省 事務方として十分な説明責任、立証責任を果たしていないのではないのかなという感じ を受けざるを得ないのです。 これまでの議論を伺っておりますと、本当の理由がほかにあるのではないかというこ ともおっしゃっておられる先生がおられますけれども、少なくとも事務案というのは、 頭でだけ考えて、慢性疾患である結核の治療や予防の現場や、あるいは実態を十分に考 えておられないのではないのかという感じを拭えません。 結論ですけれども、結核菌がバイオテロに利用される蓋然性は少ないという先生方の 御意見。 それから、アメリカが、これはテロ対策の御本家ですけれども、結核をバイオテロ対 策の対象から外しているという客観的事実。 それから、これまでの審議の経過にやや拙速感があると、そういうことにかんがみて、 私としては今回バイオテロの対策のための改正を結核予防法の改正とは切り離して、別 途成立させて、結核については、でき上がった感染症対策法、新しい法律を見た上で、 例えば半年とか1年ぐらいとかで期間を切って、それで継続審議をされて、それで意見 が一致すれば、今回改正する感染症対策法をもう一回改正すればいいのではないのかと 思います。 以上が結論なのですが、行政当局にとって言えば、法律の改正というのは、大きなエ ネルギーを要することで、なかなか大変で、今回一遍にやりたいというお気持ちがある のだろうというのはよくわかるんですが、私は結核予防法と感染症の予防及び感染症の 患者の医療に関する法律をちょっと見てみたのですが、結核予防法は、昭和になってか ら合計10回の改正を経ています。昭和26年に制定されたんですけれども、昭和26年以降、 昭和の代においては全部数えておりませんが、恐らく二十数回、平成になってから10回 の改正を経ています。 それから、感染症予防法の方は、平成11年の施行なのですが、わずか5〜6年の間に、 平成11年、平成15年、平成16年と3回の改正を経ています。 したがって、改正はそれなりに大変なことではあると思いますけれども、比較的頻繁 に行われていることでもあります。 このようなことも踏まえまして、私は感染症対策、生物テロ対策を先行させて、政府 の他の部局、省庁との連携もあろうことですから、これはこれとして成立させて、結核 の問題は切り離して、その代わり無期限に延ばすというのではなくて、半年なり1年間 と継続審議の期間を切って、それで作業を進めて議論をまとめると。それで議論がまと まれば、今回改正される感染症予防法を、もう一度結核予防法の観点から改正するとい うことを考えたらいかがなのかなと思います。 以上であります。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、山田委員お願いします。 ○山田委員 もう大分議論が出尽くしてきているようで、残りわずかで言うことが余り ないのですが、1つは病原体の規制ということに関して、確かに日本で人に感染する病 原体の規制は今まで全くなくて、研究者の独自性に任されていたというのは事実であり ます。 一方、動物に伝染病を起こす病原体については、伝染病予防法というもので規制がき つくかかっていて、私どもから見れば、人の健康より動物の健康あるいは産業の方が大 事なのかという思いがあったので、是非とも病原体の管理ということはきちんとやるべ きであるということは非常に賛成です。 そのときに、バイオセーフティー、要するに研究者自身の問題もありますし、そこで 働いている仲間のこともあります。そういう人たちに扱っている病原体が感染しないよ うにということをやるのがバイオセーフティー。そのバイオセーフティーをきちんと国 としてガイドラインなり法を固めて、こういうやり方をやりなさいと、やることは非常 にいいことだと思います。 一方、バイオテロの場合には、バイオセキュリティーという別の言葉になると思うの ですが、要するに、それを意図的に使う連中がいるから、もっと管理をきつくして、か ぎのかかるところへ入れて、場合によっては警備員を付けるとか、何かした者には罰則 を与えるとか、そういうことも必要だと思います。 そのときに両者をごっちゃにして、この病原体をこう規制しますとやると、非常に将 来問題が起こることも起こり得る。 ところが、そこの議論が今回、結核の方の議論に大分取られてしまって、今の時点で はほとんど煮詰まっていないと思います。 例えば、多剤耐性結核菌について、私の個人的なことを言えば、バイオセーフティー 上はきちんとした管理が必要だろうと。ただし、バイオセキュリティー、要するにバイ オテロの病原体として皆さんお使いになりますか言えば、今まで議論が出ていたように、 バイオテロの病原体として備えるべき特徴というのは、これっぽっちも持っていなくて、 しかもただの脅しにもならないわけですね。患者さんはたくさんいるわけだから、まい たって、まいた効果すらわからない。 そういうものを本当に使うかどうか。だから、バイオセーフティー上は重要です。だ けどバイオセキュリティー上は別かもしれない。そこを切り離して、一つひとつの病原 体について議論すべきだろうと。そこがまだできていないということであります。 結核については全く素人なのですが、今までのお話を聞いている限りにおいては、現 行の予防法でも対策が不十分であって、排菌している感染者の数は減っていないという ことをお聞きすれば、それは対策を強化すべきである。その対策を強化するときに、オ プションが2つあって、一方では結核予防法を改正するか、もう一方は感染症法に組み 込むか。 結局、感染症法に組み込むことによってできるということが事務局の御説明だと思う のですが、そこは、やはり先ほどから議論が出ているように具体性に欠けているような 気がします。 例えば、今日配られた中で、最後に「なお」というところがあって、条文化を検討す るというのがたくさん出てきて、最後に「内閣提出法案については」というただし書き があって、ここを読むと、検討はするけれども、こういう状況がある限りにおいて、こ こでは約束できませんとおっしゃっているのではないかと、そうすると、皆さんが心配 されていることの一つひとつに対して、ここは本当にできるのかどうかという不安が払 拭できない。やはり、今、たくさんの方がおっしゃったような、もう少し具体性を持っ て、この感染症法に組み入れても、本当に後退しないのですよということが説得できる だけの説明というか、そこに時間をかけるべきではないかと思っています。 以上です。 ○倉田分科会長 それでは、次に吉澤委員お願いします。 ○吉澤委員 もうあらかたの先生方が、すべての意見を言われたので、今更何も付け加 えることはないのですが、まず、バイオテロのことを考えますと、ここに書いてある病 原体のことですが、前回か前々回に申し上げましたが、増やしてばらまいて病気にして パニックにする、それがバイオテロだと思いますが、結核菌がこれに対応するとは到底 考えられない。これは前にお話ししたとおりです。 今、議論が少し混乱しているのは、その病原体に感染したホストの病気の問題と、病 原体の管理の問題がまぜこぜになっているのではないかと思います。バイオテロを防ぐ ための措置というのは、やはり病原体の管理。 もう一つはここに書いてあるのは自然界に存在する病原体で、少し病気が重いものを 順番に並べてあるにすぎないわけで、これはピントがずれるかもしれませんが、その病 原体をいじったときに、もっとビルレントなものがいっぱい出てくる。 そうすると、いじりやすい病原体と、現時点の自然界でビルレントなものと、それを 区別して、一つひとつについて管理の方式を考えるというのが本来のバイオテロの対策 の本筋ではないかと思っています。 結核との関係ですが、これは先ほど申し上げましたように、病気を宿主、患者という 病人を対象とした病気のコントロールの問題と、バイオテロの問題は、やはりちょっと 違うのではないかと思います。 やはりだれが聞いてもテロ対策からいきなり結核予防法の廃止というところへは、余 りにもジャンプが激しくて、とてもついていけないというのがまずあります。私たち結 核についてはよくわからない状態でここに座っておりまして、3回ほどここで聞かせて いただいて、少しずつ結核についてわかり始めたというのが現状です。 事務局の方は、感染症法と一緒にすることによって、結核対策を後退させないとおっ しゃっていますが、具体的に、結核をやっている先生方が、いろいろ心配なことがいっ ぱいあるわけです。 そうすると、具体的にこの問題については、こういう措置をすることによって、こう いうふうに後退させないという具体性を持ったものを出していただかない限り、賛成か 不賛成かと言われても、到底私たち意見を述べることはできないと思いますので、具体 的に申し上げますと、前回も前々回も出ていたと思いますが、結核予防法の問題に関し ては、やはり結核の専門の先生方の部会を開いて、そこで今申し上げた、もし法を改正 したときに、どう具体的に後退させないのか、何が問題であって、その問題点をこうい うふうにすることによって後退させないというところの具体的なものを出していただい て、そしてここでまた見せていただくと討議になるのではないかと。そういう形のもの が出てきたら、ある程度理解をするところにまで我々は到達するというのが実際だと思 います。 大体そんなところです。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 それでは、最後になりますが、高橋先生お願いします。 ○高橋委員 倉田先生の横で最後にさせられて、何かゼミに遅刻した学生が先生の隣で 言わされているような感じがしてあれなのですが、冗談はさておき、先ほど山川先生が おっしゃったことというのは、さすが、私がこちらに厚生労働関係の仕事を始める前か ら、法曹の方としてずっと長年このようなお仕事に関わってこられて、非常にバランス の取れた適切な発言だったと思います。そういう意味では非常に感服いたしました。賛 成するところが多いと思います。 ただ、それでは私の意見が終わってしまうので、若干これまでいろいろと審議に参加 してきた観点から、幾つかのことを加えさせていただきたいと思います。 まず第一点は、私自身は、先ほど前々から申し上げておりましたけれども、別に統合 に全く反対するつもりはありません。法律的に透明性の観点でありますとか、国民への 理解の観点ですとか、統一的な執行の観点から統合するということは、当然のことなが らあり得るということでずっと申し上げてきたわけです。 ただ、今回の統合の議論については、若干疑問が幾つかあって、多分あともう一回だ と思いますが、私は4回ぐらいやって、優秀な事務局の方がきちんと問題点を整理され れば、きちんと解決してうまくいくのであろうと思って議論に参加してきたわけですが、 しかしながらちょっと予想とは外れて、現在のところ幾つか疑問があると思わざるを得 ないと思います。 それは、いわゆる改正の理由で結核予防法が差別と偏見の温床であるということを、 まず改正の第1点にされているということについて、若干これは非常に疑念を持たざる を得ないと思っています。 これまでの医療とか、行政的な措置の対象として、特定の疾患を対象にして、何か法 律を仕組もうということであれば、これは当然のことながら、国民の人権を守る、つま り感染を受けないという国民の人権を守る。それから、当該人権を守るという点では、 医学的な必要があれば、それをきちんと仕組むべき話だと私は思います。 差別や偏見というのは、例えば、らい予防法であるとか、エイズ予防法については医 学的な根拠がないにもかかわらず、法律でそれを継続してきたというところに重大な差 別や偏見の温床があったと私は考えております。 そういうことで言うと、差別や偏見の問題というのは、医学上必要だった場合はちゃ んと仕組んだ上で、それを解消するための十分な措置をほかに取るというのが本来の在 り方ではないかと私はまず考えます。 そういうことを結局突き詰めていくと、法律では特定の疾患を対象にした措置は取れ ないということにつながりかねない要素があると思うわけです。 現に、光石先生の方からは、法律では感染類型、病名を対策に仕組むべきではないと いう御意見をいただいているわけですが、そうすると、法令もしくは通達レベル、つま り法令にない根拠で措置を取るということにならざるを得ないと。これは法治主義の観 点からいって、逆に非常に危険なことだと思います。 更に言いますと、いろいろとこの辺は、我々の法律家の頭で考えていることですので、 やはり立法するには立法事実が必要だと。では、結核感染症という単独の法律をつくっ たことによって、これまで差別や偏見の温床になっていたという立法事実があるのかど うかということを、もしそういう立法事実があれば、事務局の方から提出していただき たいと。 それがなければ、結局頭の中の空論と空論の争いでしかないという点で、そういうこ とで立法事実もないのに変えるということについては、非常に疑念があると思います。 そういう意味では、こういうことを頭出しして改正するというのは、実は今後の厚生 労働省行政を縛ることになるのではないかということで、私は非常に疑念があります。 反対というわけではないのですが、厚生労働省の方として、これからどうされていくの かということについて疑念があるということでございます。 第2点は、優秀な方ですから、我々が法的な疑念を出したら、たちどころに解決して、 解決策を出していただけるのであろうと思っていたのですが、前々回申し上げましたが、 入院命令について御専門の方からも出てきましたが、慢性疾患であるということに着目 してきちんとした法的仕組みを取るというところの御提案をまだいただいてないという ことは、非常に心配な点でございます。 基本的に案を見ますと、法定受託事務の事務処理基準であるという案が出ております が、これは法治主義の観点から非常に困るわけです。要するに、この事務処理基準とい うのは、昔の機関委任事務で言えば通達だったわけで、何の法令上の形式も指定されて いない、お役所の一遍の通知で事務処理基準というものが定められるわけです。それが 重大な慢性疾患に関する運用基準となるということについては、これは法治主義の観点 から言って非常に疑念があると思わざるを得ないと思います。それはもろもろ全部、入 院関連のものは事務処理基準でお決めになるということについては、これは非常に私と しては疑念を持たざるを得ないと思います。 人権、人権とおっしゃるなら、この慢性疾患の入院という問題。例えば、オンブズマ ン制度とか、いろんな慢性疾患に対して患者の人権を守りながら治療していくというと ころについての法的な知恵というのはあるはずなので、それを無視して単に制度的に事 務処理基準を決めておしまいということでは、これは整合性が取れないのではないかと いうふうに思います。 更にいろいろとあって、例えば、資料の6ページにありますけれども、任意入院等の 任意性の原則とか、必要最小限の強制措置の原則とか、インフォームド・コンセントの 原則、プライバシーの原則とあるのですが、実はこういうことは行政法の一般原則であ って、これを法令上仕組むといって法制局を通るのかなとちょっと心配なところがあっ て、要するに、一般基準なわけですね。こういう一般基準を単独のいろんな法律に仕込 んでいくということだと、今まで我が国は全部の法律にこういう原則を書かなければい けないことになりかねないわけで、そこは内閣法制局の関係で、これは通るのかなとい うのは心配なところもあるし、これをやりますと言って実際内閣法制局で止まってしま いましたということになると、これは厚生労働省としても困るんではないかと思います。 その辺、あと1回ありますので、是非その辺の法的問題、仮に解決できればそれは結 構だと思いますし、よくよく御検討いただきたいと思います。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。 一応全員の委員の方々の御意見をいただきましたが、整理するとそんなにたくさんで はなくて、きちっとしたものとして整理できると思うのですが、幾つかのところに既に 文章でも書かれていることです。 何人かの方がおっしゃいましたように、実験室における病原体の管理という話、患者 さんの管理の話がごちゃごちゃになって、患者さんの管理はそもそものテロ対応の話と 全く関係ない話で、そこのところを一緒にされると大変なことになるということがある わけで、どうもそこの議論があると。 そういうことが懸念されるような話になってしまうと、これもまたちょっと困ること なので、今、幾つかいろいろ委員の方々が指摘されたことに関しては、全然方向違いの ところに、みんな一定のところに来ていると思うのですが、時間が来ておりますが、課 長、今日指摘された問題については、あとどのようにするかお願いします。 ○結核感染症課長 説明不足だという御意見が1つ大きなところかなというふうにお聞 きをしておりまして、資料でも御説明はしてないのですが、今のいろんな御議論に対し て、すべて網羅的にお答えするのは時間もありませんし、簡単に基本的なところだけ、 繰り返しになる部分がありますがお話をさせていただきたいと思います。 本体の資料の9ページをごらんいただきたいのですが、ここに書いてあります。まず 最初に申し上げたいのは、なぜ今、結核予防法を感染症法に統合すべきと事務局は考え ているかということなのですが、この資料では2つ書いてありますけれども、順番がど うかというような御指摘もありましたが、3つあると考えております。 1つは、順番が前後しますけれども、テロ対策との関係で結核菌を、結核患者さんの 管理ではないですよ、結核菌をシャーレーとか試験管で持っているヒトに対する規制を どうするかという話があって、それは感染症法の中でほかの微生物も含めてテロ対策と いうことで管理の強化をしていこうという中で結核菌をそこできちっと位置づけるべき か、放っておいていいのかという議論が1つあります。 事務局としては、なかなか使いにくい菌だということは、我々も専門家からお聞きし ておりますけれども、しかし、具体的にどうすればということを私は言いませんけれど も、使われるおそれが、一定のことが危惧されるんではないかと。したがって、国民の 安全を守っていくという観点からは、きちっと結核菌、特に治療法が厳しいと言われて いる多剤耐性結核菌については、きちっとした管理を求めるべきではないかというのが、 事務局の今の段階での考えとして御提示させていただいているわけです。そのテロの関 係が1つ出あります。 テロだけで説明をすると、非常に違和感があるというのは、よくわかります。テロだ けの問題ではありませんで、この前も若干申し上げましたし、ここにも書いてあります けれども、公衆衛生上の問題があるということが2番目の理由です。もうちょっと具体 的に言いますと、現行の結核予防法では同居者がいる方に限定された命令入所をかける 場合には、同居者がいなければいけないと。同居者がいない方については命令入所をか けることができないと、条文上ではそうなっております。 それから、強制的に入院を命令する措置を取るためには、感染症法は72時間以内の対 応でいいんですけれども、結核予防法の場合は必ず結核審査会が前置されていなければ いけないということで、結核審査会を毎日開くのは大変だというお話がありましたけれ ども、結核予防法で迅速な対応をしようとすれば、毎日のようになるのはわかりますけ れども、むしろ感染症法で72時間ということになれば、必ずしも前置する必要がありま せんので、その一定機関については行政の判断で対応ができるということで、そういう 結核予防法上の不備と言いますか、不都合な部分、これは私など就任してまだ2か月足 らずでありますけれども、いろんな方から御指摘いただいております。例えば、衛生部 長の代表の方でありますとか、保健所長さんの代表の方でありますとか、それは1度や 2度ではありません、こういう問題があるという御指摘をいただいているということは 事実であります。 そういった問題を早く解決しなければいけないということは、地方で保健所、都道府 県で、あるいは市の保健所もあると思いますけれども、そういうところで御勤務されて いて、結核対策に御尽力いただいている方々の御意見ということで、私たちは受け止め ているということで、そこは何らかの形で解決が必要ではないかというのが2つ目の理 由です。 もう一つは、ハンセン病の例の報告書の関係でありますけれども、やはり単独の法律 というものをずっと残しておくということは、人権侵害につながるんではないかという 御指摘があるというこの3つなんでありますけれども、これは前回皆さんに御議論いた だいた14年以降に発生してきたものであって、それ以前にあった、偏見の問題はそれ以 前もあったと思いますけれども、その以外の2つの点については、それ以後生じてきた 事情であるということで御説明をさせていただきたいと思っております。 先ほど若干廣田委員の方からも御指摘ありましたけれども、どなたかの委員さんが結 核予防法は、既に十何回改正していると、改正はそれほど難しくないという御指摘があ りましたけれども、実はその多くが他法令が変わったことによる、事実上直接的に結核 予防法を改正してということではなくて、ほかの法令が改正されたことによって自動的 に変わってきたということでありまして、結核予防法のそもそもの大きな改正というの はしばらくされてなくて、前回の改正が50年ぶりとか言われていた大改正で、そんなに 頻繁にしている話ではないんです。 勿論、テロにつなげてということは、皆さんには非常に違和感があるというのはよく わかりますけれども、厚生労働省の中でも法律が、例えば、結核感染症課が所管してい る法律だけでも、検疫法、結核予防法、感染症法という3つありますので、政府にたく さんある法律の中で、やはり改正の作業をしていこうとすると、プライオリティーとい うものもありますし、なかなかいつでも熟したときにすぐ改正の手続に入れると。いろ んな政治情勢の中で必ずしもそういうものでもないということがあって、今回そういう ような各種の問題点、3年前以降に生じた問題点について今回解決すべきではないかと いうのが、今回御提案をするに至った事務局からの考え方の整理であります。 その後の皆さん方の御意見の中て、どちらかというと統合した場合にこういう懸念が あるというお話があって、その御懸念をいただいて、それに対する御説明をまとめさせ ていただいているという作業になってきておりましてので、そもそも感染症法、全体の 絵がどうなっているのかというよりは、ここをどうするんだと、予防法の廃止に特化し たような議論になっていたということは、確かにそういうことでありますので、そこは 説明不足があったということについては、反省しなければいけないと思いますし、そこ は改めて先生方にお示しをするということはしたいと思います。 もう一つ、私の方が思いますのは、時期尚早、時期尚早と言って、例えば感染症法の 成立時も時期尚早という話がありました。それから、3年前にも時期尚早というお話が ありましたけれども、そこはなかなか明確にこういうときに至ったら時期尚早ではない んだということが、多少いろんな意見の違いがあると思いますけれども、むしろ今、問 題となっている結核をより解決するために、公衆衛生上の措置も実態に合わせるように し、統合することによって懸念されるものをきちっと担保していこうということで、基 本的にはそう考えておりますので、次回もうちょっと感染症法全体の絵をお示しすると いうことで、改めて対応したいと思いますけれども、そんなところで総論的なお話にな りました。 ○倉田分科会長 ありがとうございました。いろいろ御意見を整理して、それに対して どういう、今、納得されてないということが大部分ですので、病原体管理の問題と結核 患者の話は全く関係ない。つまり病原体を管理するためにどうするかというのが、この テロの話なんです。そこに結核医療とか、そこのところもきちっとしておかないと、こ の問題はごちゃごちゃになったままで収集が付かなくなると思っております。 私は、バイオセーフティーとバイオセキュリティーのことをずっとやってきまして、 患者の問題にバイオセーフティーの問題がいくということは今まであり得なかったこと です。そこをはっきり区別しておかないと、何人かの方が指摘したとおり皆さん納得で きないんです。私は最後に言っているわけですが、最初にこれを言ってしまうとお話に ならないので言いますと、こういう議論は何度もやってきておりますけれども、そこの ところを間違えないでほしい。 先生方もごっちゃにしないでほしい。テロを未然対策、病原体管理というのは世界の どこでもやっていることで、やってないのは先進諸国で日本だけなんです、その中でど うやっていくかというのは、その国の事情もあって、それは日本と世界が一致してない、 国々によって一致しないのは当然のことなので、それはいいんです。そこに入れるか、 入れないかという議論も皆さんの中で、患者を入れるんじゃないです。病原体を実験に 使う、それからいろんなラボで使う、それはこういう施設の中で、こういう設備で、こ ういう服装でやってくださいというのがそもそもです。 今、山田さんがセキュリティーの問題を強く言われましたが、それをどうしていくか というときに、力を持って暴力的に犯す話と、あるいはそこで使っている人が。これは SARSでも、使っている人の体に自然に付いて出ていってしまって、ばらまいて、ほ かに感染させて、9例の感染者を出して1例亡くなったというのが昨年中国にありまし たけれども、それを本人は認識してないんです。ですから、バイオテロと言うんだけれ ども、テロもどきなんだけれども、実験が下手くそで全くわけのわからないことをやっ ていた。そうすると、これは無意識のうちに菌を持ち出したということになりますね。 それを周りに感染させてしまったということなので、テロの現象になっていますが実際 はテロではなくて、実験をやるにふさわしい技術も知識もない人がやっていたというだ けの話なんです。 しかし、それだけでは困る。テロの病原体というのはきちっとそこで管理して、簡単 にはアプローチできないようにするということが1つです。 それから、扱っているときにきちっと扱う、この2つの問題は、先ほど言われたバイ オセーフティーとバイオセキュリティーの2つがきちっとなされないといけないので、 患者どうこうの話じゃないと、そこは間違えないでほしい。そういう議論になると混乱 してバイオテロの対象になるのかと。そうじゃないと。 例えば、エボラの患者さんがいたら、これはバイオテロの一番最高にランクされてい るじゃないかと、そういうことじゃないんです。取った菌を増殖して管理しという話な ので、そこのところを間違えないで考えていただかないと、この問題は幾らやっても解 決できません。それに対するきちっとした説明も、最終的に未然防止だと、未然防止は 結構だというのは当たり前の話で、そのときにきちっと病原体管理の話と結核の話をご ちゃごちゃにして議論されては困るんです。 そういうことで、今日皆さんの意見は全部聞きまして、ほとんど3つぐらいの意見で、 結核関係の方、感染症関係の方、それ以外の方々も、疑問視している、危惧している、 この問題に関して次回きちっとした説明のようなものが出せるかということだと思いま す。そうしないと、みんなノーと言っているのに、法律ができ上がってしまったという ことになると非常に困りますね。分科会長は名立たるばかがという話になるのは、私困 りますから、それはバイオセキュリティーでいろいろなことをやっておりまして、ごち ゃごちゃにされると、私としては非常に心外なことになりますので、ここのところは意 見を聞いてよくわかりましたし、予想していたとおりになりましたが、ここのところを きちっと事務局で整理していただいて、それでどのような回答が出せるか、説明ができ るかに尽きると思うんですが、そこのところをきちっと次回やれるようにしていただい て、どういう提案を、私がするのか、事務局からしていただくか、それも今後検討しま すが、次回のスケジュールはいつですか。 ○前田課長補佐 次回の分科会につきましては、11月2日、水曜日、15時より九段会館 で予定いたしておりますので、よろしくお願いいたします。 ○山川委員 何時までですか。 ○前田課長補佐 15時〜17時の予定でございます。 ○倉田分科会長 どうぞ。 ○阿彦委員 1点要望があるんですけれども、会議資料の取扱いなんですけれども、今 日も公開の会議ですけれども、委員のみ配布というのもありますが、厚生労働省のホー ムページを拝見しますと、この分科会の資料などもダウンロードできるように公開にな っているんですけれども、前回の資料を拝見すると、例えば我々側から出した今回の問 題についてのいろんな問題点とか、議事についての資料などはダウンロードできない状 態で、どちらかというと、これは言い方悪いですけれども、厚生労働省の事務局側に都 合がいいものだけダウンロードできるような状態に、そうじゃないことはわかるんです けれども、そういう状態ではなくて、やはりすべての資料、委員のみ配布ではなくて、 国民の前にすべて公開してほしいということを要望したいと思います。 ○倉田分科会長 それについては、いかがですか。 ○前田課長補佐 委員のみ配布資料及び議事録については、ホームページで公開したい と思います。 ○倉田分科会長 委員のみのものに関しては、公開しないんですか。 ○前田課長補佐 いいえ、公開いたします。 ○倉田分科会長 そうすると、資料を出していただいたときに、委員のメンバーのみと いう格好で出された方も、パブリックにするということを了承してない方もいらっしゃ いますけれども、そこは一個一個了承を取ってください。 それでは、15〜16分超過いたしましたが、今回はこれで終わりにしたいと思います。 ありがとうございました。 2